(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152493
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】圧電振動デバイス、スピーカユニット、及びイヤホン
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20241018BHJP
H03H 9/02 20060101ALI20241018BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H04R17/00
H03H9/02 A
H04R1/10 104Z
H04R1/10 104A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066720
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】江口 貴啓
【テーマコード(参考)】
5D004
5D005
5J108
【Fターム(参考)】
5D004AA02
5D004AA09
5D004BB01
5D004CD07
5D004DD01
5D004FF09
5D005BA06
5D005BA08
5J108AA08
5J108BB07
5J108CC04
5J108EE03
5J108EE07
5J108GG03
5J108GG04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小型で、低音域の音圧を高めた圧電振動デバイス、スピーカユニット、及びイヤホンの提供を目的とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る圧電振動デバイス1は、長尺のフレーム10と、前記フレームに支持されるとともに、前記フレームの長手方向に延びる長尺の第1振動板20と、前記第1振動板上に配置された圧電層30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のフレームと、
前記フレームに支持されるとともに、前記フレームの長手方向に延びる長尺の第1振動板と、
前記第1振動板上に配置された圧電層と、
を備える、圧電振動デバイス。
【請求項2】
前記フレームは、
第1長辺部と、
前記第1長辺部に対向する第2長辺部と、
前記第1長辺部の一端及び前記第2長辺部の一端をつなぐ第1短辺部と、
前記第1短辺部に対向するとともに、前記第1長辺部の他端及び前記第2長辺部の他端をつなぐ第2短辺部と、
を備え、
前記第1振動板は、前記フレームの前記第1短辺部及び前記第2短辺部の少なくとも一方に支持される、
請求項1に記載の圧電振動デバイス。
【請求項3】
連結体を介して、前記第1振動板に接続され、前記第1振動板の振動に連動して振動する第2振動板をさらに備える、
請求項1又は2に記載の圧電振動デバイス。
【請求項4】
圧電振動デバイスを備え、
前記圧電振動デバイスは、
長尺のフレームと、
前記フレームに支持されるとともに、前記フレームの長手方向に延びる長尺の第1振動板と、
前記第1振動板上に配置された圧電層と、
を備える、
スピーカユニット。
【請求項5】
前記圧電振動デバイスを収容する長尺筒状の筐体をさらに備え、
前記筐体は、
第1開口部と、
第2開口部と、
を備え、
前記筐体の内部に、前記圧電振動デバイスによって隔てられた、第1空間及び第2空間が形成され、
前記第1開口部は、前記第1空間に連通し、
前記第2開口部は、前記第2空間に連通する、
請求項4に記載のスピーカユニット。
【請求項6】
スピーカユニットを備え、
前記スピーカユニットは、圧電振動デバイスを備え、
前記圧電振動デバイスは、
長尺のフレームと、
前記フレームに支持されるとともに、前記フレームの長手方向に延びる長尺の第1振動板と、
前記第1振動板上に配置された圧電層と、
を備える、
イヤホン。
【請求項7】
前記スピーカユニットは、前記圧電振動デバイスを収容する長尺筒状の筐体をさらに備え、
前記筐体は、
第1開口部と、
第2開口部と、
を備え、
前記圧電振動デバイスによって隔てられた、第1空間及び第2空間が、前記筐体の内部に形成され、
前記第1開口部は、前記第1空間に連通し、
前記第2開口部は、前記第2空間に連通する、
請求項6に記載のイヤホン。
【請求項8】
前記スピーカユニットにおいて、前記圧電振動デバイスの長辺部または前記圧電振動デバイスを収容する長尺筒状の筐体の長手方向が、使用者の耳の外耳道の奥行方向に沿って配置される、
請求項6又は請求項7に記載のイヤホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイス、スピーカユニット、及びイヤホンに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電層と、圧電層に積層された振動板とを備えた圧電振動デバイスは、スピーカユニットのドライバとして利用されている。特許文献1に、板状の振動体と、振動体の表面に設けられた板状の圧電体とを有する複数の圧電振動子と、可撓性を有し、複数の圧電振動子のそれぞれの振動を伝達する振動伝達部と、を備えた圧電振動装置等のスピーカユニットが開示されている。また、特許文献1に、スピーカユニットを備えたイヤホンが開示されている。
【0003】
また、微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems:MEMS)における微細加工技術等によって作製された、小型の圧電振動デバイスが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧電振動デバイスが小型化されることで、圧電層の面積が小さくなる。そのため、特に、低音域の音圧が小さくなることが想定される。
【0006】
特許文献1に開示のイヤホンは、耳の外耳道より外側に装着される。すなわち、特許文献1に開示のイヤホンは、使用者の鼓膜から離れた位置に配置される。したがって、特許文献1に開示のイヤホンのように、小型の圧電振動デバイスを設ける場合、十分な音圧を有する低音域の音波を鼓膜まで伝達できない可能性がある。
【0007】
本発明は、小型で、低音域の音圧を高めた圧電振動デバイス、スピーカユニット、及びイヤホンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る圧電振動デバイスは、長尺のフレームと、前記フレームに支持されるとともに、前記フレームの長手方向に延びる長尺の第1振動板と、前記第1振動板上に配置された圧電層と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小型で、低音域の音圧を高めた、圧電振動デバイス、スピーカユニット、及びイヤホンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る圧電振動デバイスの斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る圧電振動デバイスを別の角度からみた斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態の変形例1に係る圧電振動デバイスの斜視図である。
【
図4】第1実施形態の変形例1に係る圧電振動デバイスを別の角度からみた斜視図である。
【
図5】第1実施形態の変形例2に係る圧電振動デバイスの斜視図である。
【
図6】第1実施形態の変形例2に係る圧電振動デバイスの他の構成例を示す断面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るスピーカユニットの斜視図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係るスピーカユニットを正面側からみた斜視図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係るスピーカユニットを背面側からみた斜視図である。
【
図10】本発明の第3実施形態に係るイヤホンの使用状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明の実施形態について説明する。各図面において、同一の部材には同一の符号を付す場合がある。また、各図面の説明において、既に説明した部材と同一の構成部についての説明は省略する場合がある。
【0012】
各図面において、方向表現として、X軸、Y軸及びZ軸を有する直交座標を用いる。X軸、Y軸及びZ軸は、互いに直交する。X軸に沿うX方向は、実施形態に係る圧電振動デバイスの幅方向を示すものとする。Y軸に沿うY方向は、実施形態に係る圧電振動デバイスの奥行き方向を示すものとする。Z軸に沿うZ方向は、実施形態に係る圧電振動デバイスの厚さ方向を示すものとする。X方向、Y方向、Z方向のそれぞれにおいて、矢印の向く側を「+側」といい、その反対側を「-側」という。X方向及びY方向を「面内方向」という場合がある。Z方向を「面直方向」という場合がある。ただし、これらは、実施形態に係る圧電振動デバイスの使用時における向きを制限するものではなく、実施形態に係る圧電振動デバイスの向きは任意である。
【0013】
[第1実施形態]
<圧電振動デバイス>
図1及び
図2を参照して、本発明の第1実施形態に係る圧電振動デバイス1の全体構成の一例を説明する。
図1は、第1実施形態に係る圧電振動デバイス1をZ方向+側からみた斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る圧電振動デバイス1をZ方向-側からみた斜視図である。
【0014】
圧電振動デバイス1は、
図1及び
図2に示すように、フレーム10と、振動板20と、圧電層30と、第1電極パッド41と、第2電極パッド42と、を備える。本実施形態の圧電振動デバイス1は、Y方向の長さに比べて、X方向の長さが長い長尺形状を有する。本実施形態において、圧電振動デバイス1の長手方向は、X方向に対応する。圧電振動デバイス1の短手方向は、Y方向に対応する。ただし、圧電振動デバイス1の長手方向は、X方向に限定されず、Y方向等の他の方向であってもよい。
【0015】
フレーム10は、圧電振動デバイス1の土台となる長尺の部材である。本実施形態において、フレーム10のX方向に沿う長さは、Y方向に沿う長さに比べて長い。フレーム10の長手方向は、X方向に対応する。フレーム10の短手方向は、Y方向に対応する。ただし、フレーム10の長手方向は、X方向に限定されず、Y方向等の他の方向であってもよい。
【0016】
フレーム10は、
図1及び
図2に示すように、枠状の形態を有する。フレーム10は、第1長辺部11aと、第2長辺部11bと、第1短辺部11cと、第2短辺部11dと、を備える。また、第1長辺部11a、第2長辺部11b、第1短辺部11c、及び第2短辺部11dによって囲まれた領域に、フレーム10を面直方向に貫通する開口部12が形成される。なお、第1長辺部11a及び第2長辺部11bは、圧電振動デバイス1の「長辺部」の一例である。第1短辺部11c及び第2短辺部11dは、圧電振動デバイス1の「短辺部」の一例である。
【0017】
本実施形態の第1長辺部11a及び第2長辺部11bは、それぞれX方向に沿って延びる。第1長辺部11a及び第2長辺部11bは、それぞれ、帯状の形態を有する。また、第1長辺部11a及び第2長辺部11bは、ほぼ同じ長さを有する。第1長辺部11a及び第2長辺部11bは、互いに平行であることが好ましい。ただし、第1長辺部11a及び第2長辺部11bの形態や、第1長辺部11a及び第2長辺部11bの位置関係は、これらに限定されない。
【0018】
本実施形態の第1短辺部11c及び第2短辺部11dは、それぞれY方向に沿って延びる。第1短辺部11c及び第2短辺部11dは、それぞれ、帯状の形態を有する。また、第1短辺部11c及び第2短辺部11dは、ほぼ同じ長さを有する。第1短辺部11c及び第2短辺部11dは、互いに平行であることが好ましい。ただし、第1短辺部11c及び第2短辺部11dの形態や、第1短辺部11c及び第2短辺部11dの位置関係は、これらに限定されない。
【0019】
第1短辺部11cは、第1長辺部11aのX方向-側に位置する一端11a1、及び第2長辺部11bのX方向-側に位置する一端11b1をつなぐ。また、第2短辺部11dは、第1長辺部11aのX方向+側に位置する他端11a2、及び第2長辺部11bのX方向+側に位置する他端11b2をつなぐ。
【0020】
第1長辺部11aは、第1短辺部11c及び第2短辺部11dのそれぞれと略直角に交わる。また、第2長辺部11bは、第1短辺部11c及び第2短辺部11dのそれぞれと略直角に交わる。すなわち、フレーム10は、長方形の平面形状を有する。また、開口部12も同様に、長方形の平面形状を有する。ただし、フレーム10及び開口部12の平面形状は、これに限定されず、楕円形、平行四辺形等の他の形状であってもよい。
【0021】
第1長辺部11a及び第2長辺部11bは、例えば、第1短辺部11c及び第2短辺部11dの長さに対して、3倍以上、10倍以下の長さを有することが好ましい。ただし、第1長辺部11a及び第2長辺部11bの長さは、これに限定されない。
【0022】
フレーム10は、Si(シリコン)基板やSOI(Silicon On Insulator)基板等の半導体基板や絶縁体基板を加工して得られるものであってもよい。また、フレーム10は、振動板20と一体であってもよいし、振動板20と別体であってもよい。フレーム10と振動板20とが一体である場合、ウェットエッチングやドライエッチング等の加工プロセスを用いて、加工前のフレーム10の所定箇所を除去するなどして、フレーム10の第1短辺部11c及び第2短辺部11dの間に延びる振動板20を形成してもよい。
【0023】
フレーム10は、例えば、圧電層30を駆動するための駆動回路を備えていてもよい。駆動回路は、フレーム10の内部や、フレーム10における第1長辺部11a、第2長辺部11b、第1短辺部11c、及び第2短辺部11dの少なくとも1つの辺部の下面等に形成されてもよい。
【0024】
次に、振動板20は、可撓性を有する長尺の板材である。また、振動板20は、矩形の平面形状を有する。振動板20は、圧電層30の振動に伴い振動する。振動板20が振動することで、圧電振動デバイス1から、振動周波数に対応する音域の音波が発せられる。なお、振動板20は、「第1振動板」の一例である。
【0025】
振動板20の長手方向は、フレーム10の長手方向と平行である。すなわち、振動板20は、フレーム10の長手方向に沿って長く延びる。また、振動板20の短手方向は、フレーム10の短手方向と平行である。本実施形態において、振動板20のX方向に沿う長さは、Y方向に沿う長さに比べて長い。振動板20の長手方向は、X方向に対応する。振動板20の短手方向は、Y方向に対応する。
【0026】
振動板20は、フレーム10の開口部12の少なくとも一部と重なるように配置される。すなわち、振動板20の下面は、開口部12と向き合う。これにより、振動板20は、面直方向に自由振動することができる。
【0027】
本実施形態の振動板20は、いわゆる両持梁状で、フレーム10に支持される。具体的には、
図2に示すように、振動板20の第1短縁21は、フレーム10の第1短辺部11cに連なる。これにより、振動板20の第1短縁21は、第1短辺部11cに支持される。また、振動板20の第2短縁22は、フレーム10の第2短辺部11dに連なる。これにより、振動板20の第2短縁22は、第2短辺部11dに支持される。
【0028】
これに対して、振動板20の第1長縁23は、フレーム10の第1長辺部11aと隙間を隔てて対向する。すなわち、フレーム10の第1長辺部11aと、振動板20の第1長縁23とは、離れて配置される。また、振動板20の第2長縁24は、フレーム10の第2長辺部11bと隙間を隔てて対向する。すなわち、フレーム10の第2長辺部11bと、振動板20の第2長縁24とは、離れて配置される。
【0029】
このように、振動板20が両持梁状にフレーム10に支持されることで、振動板20が振動する際、振動板20の第1長縁23及び第2長縁24がフレーム10に拘束されない。その結果、振動板20の振幅を大きくすることができ、振動板20から発せられる音波の音圧を高めることができる。
【0030】
本実施形態の振動板20は、Siから構成される。ただし、振動板20の材料は、これに限定されない。振動板20の他の材料として、GaAs(ガリウム砒素)等の半導体、SiO2(二酸化ケイ素)、サファイア、アルミナ、石英等の誘電体、アルミニウム、チタン等の金属、PI(ポリイミド)、エポキシ、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ポリオレフィン等の樹脂、ゴム等が挙げられる。
【0031】
次に、圧電層30は、印加された電気エネルギーを機械エネルギーに変換する圧電材料を含んで構成される層である。圧電層30は、圧電振動デバイス1の振動源として機能する。圧電層30は、交流信号の入力に応じて、面直方向に共振振動する。
【0032】
圧電層30として、ZnO(酸化亜鉛)、AlN(窒化アルミニウム)、及びPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等を含む圧電薄膜が挙げられる。圧電層30がAlN膜の場合、AlN膜は、不純物を含んでもよいし、含まなくてもよい。AlN膜に含まれる不純物の例として、Sc(スカンジウム)、Er(エルビウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)等の希土類金属元素、Hf(ハフニウム)、Ti、Ta、及びNb等の遷移金属元素、及びMg(マグネシウム)等のアルカリ土類金属元素が挙げられる。
【0033】
圧電層30は、振動板20上に配置される。圧電層30は、振動板20の上面のほぼ全面に成膜されることが好ましい。圧電層30が、振動板20の上面のほぼ全面に成膜されることで、長尺な圧電層30を形成することができる。この場合、圧電層30におけるX方向に沿う長さは、Y方向に沿う長さに比べて長い。圧電層30の長手方向は、X方向に対応する。圧電層30の短手方向は、Y方向に対応する。
【0034】
圧電層30及び振動板20は、それぞれ、長尺形状を有する。すなわち、圧電層30及び振動板20において、振動方向に対して垂直な方向(面内方向)の長さが長い。これにより、圧電層30及び振動板20を介して、十分な振幅を有する長波長側の音波を伝搬させることができる。その結果、圧電振動デバイス1から発せられる低音域の音圧を高めることができる。
【0035】
圧電層30は、単層の圧電膜から構成される、いわゆるユニモルフ型の圧電層であってもよい。また、圧電層30は、互いに異なる2層の圧電膜から構成される、いわゆるバイモルフ型の圧電層であってもよい。
【0036】
次に、第1電極パッド41は、圧電層30の共振周波数に対応する交流信号を入力するための電極である。第1電極パッド41は、
図1に示すように、圧電層30上に配置される。
【0037】
第2電極パッド42は、
図1に示すように、圧電層30上において、第1電極パッド41とは異なる位置に配置される。本実施形態の第2電極パッド42は、例えば、グランドと電気的に接続される。
【0038】
第1電極パッド41及び第2電極パッド42の例として、Au(金)、Mo(モリブデン)、Ru(ルテニウム)、Ir(イリジウム)、Al(アルミニウム)、Pt(白金)、Ti(チタン)、W(タングステン)、Pd(パラジウム)、Ta(タンタル)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Nb(ニオブ)、または、これら何れかの金属の合金、これら何れかの金属の化合物、あるいは、これら何れかの金属、合金、化合物を適宜積層した積層膜が挙げられる。ただし、第1電極パッド41及び第2電極パッド42は、これらに限定されない。
【0039】
本実施形態の第1電極パッド41及び第2電極パッド42は、圧電層30の同じ端部側に並べて配置されている。第1電極パッド41及び第2電極パッド42が、圧電層30の同じ端部側に並べて配置されることで、第1電極パッド41及び第2電極パッド42のそれぞれに接続される配線を、圧電振動デバイス1の同じ端部から引き出すことができる。これにより、圧電振動デバイス1の省スペース化を図ることができる。その結果、圧電振動デバイス1をさらに小型化することができる。
【0040】
[第1実施形態の変形例1]
次に、
図3及び
図4を参照して、第1実施形態の変形例1に係る圧電振動デバイス1Aを説明する。
図3は、第1実施形態の変形例1に係る圧電振動デバイス1AをZ方向+側からみた斜視図である。
図4は、第1実施形態の変形例1に係る圧電振動デバイス1AをZ方向-側からみた斜視図である。なお、変形例1において、第1実施形態と同一の構成部についての説明を適宜省略する。
【0041】
変形例1に係る振動板20Aは、ダイヤフラム状にフレーム10Aに支持される。具体的には、振動板20Aの4つの端縁が、それぞれ、フレーム10Aの異なる位置に連なる。すなわち、
図3及び
図4に示すように、振動板20Aの第1短縁21Aは、フレーム10Aの第1短辺部11cに連なる。また、振動板20Aの第2短縁22Aは、フレーム10Aの第2短辺部11dに連なる。また、振動板20Aの第1長縁23Aは、フレーム10Aの第1長辺部11aと連なる。また、振動板20Aの第2長縁24Aは、フレーム10Aの第2長辺部11bと連なる。これにより、フレーム10Aと振動板20Aとが、隙間なく一体状に連なる。なお、振動板20Aは、「第1振動板」の一例である。
【0042】
フレーム10Aにおいて、第1長辺部11a、第2長辺部11b、第1短辺部11c、及び第2短辺部11dによって囲まれる、凹状の中空領域12Aが形成される(
図4参照)。振動板20Aは、中空領域12Aを覆う。振動板20Aの下面は、中空領域12Aと向き合う。これにより、振動板20Aは、中空領域12Aに面して、フレーム10Aにいわゆる膜状に支持され、面直方向に自由振動することができる。なお、第1長辺部11a及び第2長辺部11bは、圧電振動デバイス1Aの「長辺部」の一例である。第1短辺部11c及び第2短辺部11dは、圧電振動デバイス1Aの「短辺部」の一例である。
【0043】
変形例1においても、圧電層30は、振動板20Aにおける上面のほぼ全面に成膜されることが好ましい。すなわち、変形例1においても、フレーム10Aの長手方向に延びる長尺の振動板20A及び圧電層30が設けられる。これにより、振動板20A及び圧電層30を介して、十分な振幅を有する長波長側の音波を伝搬させることができる。その結果、圧電振動デバイス1から発せられる低音域の音圧を高めることができる。
【0044】
[第1実施形態の変形例2]
次に、
図5及び
図6を参照して、第1実施形態の変形例2に係る圧電振動デバイス1Bを説明する。
図5は、第1実施形態の変形例2に係る圧電振動デバイス1BをZ方向+側からみた斜視図である。
図6は、第1実施形態の変形例2に係る圧電振動デバイス1Bの他の構成例を示す断面図である。なお、変形例2において、第1実施形態及び変形例1と同一の構成部についての説明を適宜省略する。
【0045】
変形例2に係る振動板20Bは、片持梁状にフレーム10Bに支持される。振動板20Bがフレーム10Bに片持梁状に支持される構造であれば、フレーム10Bの構造及び振動板20Bの構造は、限定されない。フレーム10B及び振動板20Bの一例として、以下が挙げられる。なお、振動板20Bは、「第1振動板」の一例である。
【0046】
フレーム10Bは、第1長辺部11aと、第2長辺部11bと、第1短辺部11cと、第2短辺部11dと、を備える。また、第1長辺部11a、第2長辺部11b、第1短辺部11c、及び第2短辺部11dによって囲まれた、中空領域が形成される。
図5に中空領域は示されていないが、フレーム10Bにおいて、振動板20Bが被さった領域に、中空領域が形成されている。なお、第1長辺部11a及び第2長辺部11bは、圧電振動デバイス1Bの「長辺部」の一例である。第1短辺部11c及び第2短辺部11dは、圧電振動デバイス1Bの「短辺部」の一例である。
【0047】
振動板20Bは、
図5に示すように、フレーム10B上に配置される。振動板20Bには、振動板20Bの面内における所定方向に沿って延びた線状の第1スリット231、第2スリット232、及び第3スリット233が、設けられる。第1スリット231、第2スリット232、及び第3スリット233のそれぞれは、振動板20Bを面直方向に貫通する。
【0048】
第1スリット231は、振動板20Bの第1短縁21Bと隣り合うとともに、第1短縁21Bと平行に延びる。第2スリット232は、振動板20Bの第1長縁23Bと隣り合うとともに、第1長縁23Bと平行に延びる。第3スリット233は、振動板20Bの第2長縁24Bに隣り合うとともに、第2長縁24Bと平行に延びる。
【0049】
第2スリット232及び第3スリット233は、互いに平行であり、かつ、ほぼ同じ長さを有する。また、第1スリット231は、第2スリット232及び第3スリット233の一端同士(振動板20Bの第1短縁21Bに近い側の端部)をつなぐ。これにより、第1スリット231、第2スリット232、及び第3スリット233によって、一連の貫通路が形成される。その結果、第1スリット231、第2スリット232、及び第3スリット233に囲まれた、片持梁状の振動領域240が形成される。
【0050】
振動板20Bにおいて、第2短縁22Bの近傍には、第2短縁22Bと平行なスリットは、形成されていない。そのため、振動領域240において、振動板20Bの第2短縁22B側が固定端241に相当する。すなわち、振動板20Bにおける固定端241の領域は、フレーム10Bの第2短辺部11dに支持される。また、振動領域240において、固定端241から第1短縁21B側に延びる部位は、他の部材に拘束されず、自由振動することができる。なお、第1電極パッド41と第2電極パッド42は、固定端241側に配置される。
【0051】
変形例2においても、圧電層30は、振動領域240のほぼ全面に成膜されることが好ましい。すなわち、変形例2においても、フレーム10Bの長手方向に延びる長尺の振動板20B及び圧電層30が設けられる。これにより、振動板20B及び圧電層30を介して、十分な振幅を有する長波長側の音波を伝搬させることができる。その結果、圧電振動デバイス1Bから発せられる低音域の音圧を高めることができる。また、振動板20Bは、片持梁状にフレーム10Bに支持されている。そのため、他の構造によって振動板20Bがフレーム10Bに支持される場合に比べて、振動の際の振動板20Bの変位量を増やすことができる。その結果、圧電振動デバイス1から伝搬する低音域の音圧をさらに高めることができる。
【0052】
さらに、
図6に示すように、圧電振動デバイス1Bは、振動板20Bの振動領域240と連結するメンブレン245を備えてもよい。メンブレン245は、可撓性を有する膜(板)状の部材であって、振動領域240の振動に連動して振動する。メンブレン245は、
図6に示すように、連結体280を介して、振動領域240と連結していてもよい。
図6に示される連結体280は、棒状の部材であるが、これに限定されない。なお、メンブレン245は、「第2振動板」の一例である。
【0053】
振動板20Bの振動領域240のみを振動させる場合、第1スリット231、第2スリット232、及び第3スリット233の長さや幅によっては、第1スリット231、第2スリット232、及び第3スリット233が、振動領域240の振動によって押し出された空気の逃げ道となる可能性がある。このように、振動領域240の振動によって押し出された空気が、第1スリット231、第2スリット232、及び第3スリット233を通じて逃げてしまうと、十分な音圧(音量)を有する音波が得られないおそれがある。これに対して、振動領域240に連動して振動するメンブレン245を別途設けることで、メンブレン245の振動を介して十分な音圧を有する音波を得ることができる。
【0054】
圧電振動デバイス1Bが備えるメンブレン245の支持構造は、特に限定されないが、例えば、振動板20Bの少なくとも上方側を覆うハウジング246をさらに設け、ハウジング246の例えば上面に形成された開口の縁247に、メンブレン245を支持させる構造が挙げられる。
【0055】
メンブレン245のような第2振動板の構造は、限定されない。また、メンブレン245のような第2振動板は、第1実施形態に係る圧電振動デバイス1や、変形例1に係る圧電振動デバイス1Aにも、設けられてもよい。
【0056】
[第2実施形態]
<スピーカユニット>
次に、
図7~
図9を参照して、本発明の第2実施形態に係るスピーカユニット70の構成例を説明する。
図7は、本発明の第2実施形態に係るスピーカユニット70をZ方向+側からみた斜視図である。
図8は、スピーカユニット70を正面側からみた斜視図である。
図9は、スピーカユニット70を背面側からみた斜視図である。なお、第2実施形態において、第1実施形態及び第1実施形態の各変形例と同一の構成部についての説明を適宜省略する。
【0057】
スピーカユニット70は、
図7に示すように、圧電振動デバイス1Bと、圧電振動デバイス1Bを収容する筐体71と、を備える。なお、筐体71に収容される圧電振動デバイスは、第1実施形態の変形例2に係る圧電振動デバイス1Bに限定されない。すなわち、第1実施形態に係る圧電振動デバイス1又は変形例1に係る圧電振動デバイス1Aが、筐体71に収容されていてもよい。
【0058】
筐体71は、長尺筒状の形態を有する。また、筐体71の内部は、中空である。具体的には、筐体71は、前壁72と、背壁73と、前壁72及び背壁73をつなぐ側周壁74と、を備える。なお、前壁72は、「第1壁」の一例である。背壁73は、「第2壁」の一例である。
【0059】
本実施形態において、筐体71のX方向に沿う長さは、Y方向に沿う長さに比べて長い。筐体71の長手方向は、X方向に対応する。筐体71の短手方向は、Y方向に対応する。ただし、筐体71の長手方向は、X方向に限定されず、Y方向等の他の方向であってもよい。
【0060】
圧電振動デバイス1Bが筐体71に収容された際、圧電振動デバイス1Bの両端が、筐体71の前壁72及び背壁73にそれぞれ支持される。本実施形態において、
図8に示すように、フレーム10Bの第1短辺部11cは、筐体71の前壁72に支持される。また、
図9に示すように、フレーム10Bの第2短辺部11dは、筐体71の背壁73に支持される。これにより、圧電振動デバイス1Bは、水平姿勢で、筐体71に収容される。
【0061】
図8及び
図9に示すように、筐体71には、圧電振動デバイス1Bによって隔てられた上部空間71Uと下部空間71Bが形成される。振動板20B及び圧電層30は、上部空間71U側に配置される。これに対して、フレーム10Bは、下部空間71B側に配置される。なお、上部空間71Uは、「第1空間」の一例である。また、下部空間71Bは、「第2空間」の一例である。
【0062】
図8に示すように、前壁72の上方側には、半円形の第1開口部721が設けられている。上部空間71Uは、第1開口部721を介して、筐体71の外側に連通する。振動板20Bの振動によって発せられる音波のうち、振動板20Bから上方側に伝搬する音波は、第1開口部721を通過して、筐体71の外側に伝搬する。なお、第1開口部721の形状は、半円形に限定されない。第1開口部721の形状は、例えば、円形、楕円形、扇形、三角形等の多角形等であってもよい。
【0063】
図9に示すように、背壁73の下方側には、半円形の第2開口部722が設けられている。下部空間71Bは、第2開口部722を介して、筐体71の外側に連通する。振動板20Bの振動によって発せられる音波のうち、振動板20Bから下方側に伝搬する音波は、フレーム10Bの中空領域を通過する。また、フレーム10Bの中空領域を通過した音波は、第2開口部722を通過して、筐体71の外側に伝搬する。
【0064】
仮に、筐体71に第2開口部722が設けられない場合、筐体71の内部で、振動板20Bから上方側に伝搬する音波と、振動板20Bから下方側に伝搬する音波とが、互いに打ち消し合ってしまう。その結果、筐体71の外側に、十分な音圧の音波が伝搬しない事態が生じ得る。これに対して、筐体71に第2開口部722を設けることで、振動板20Bから下方側に伝搬する音波を筐体71の外側に逃がす通路が形成される。これにより、振動板20Bから上方側に伝搬する音波と、振動板20Bから下方側に伝搬する音波とが、筐体71の内部で互いに打ち消し合う事態を防ぐことができる。その結果、筐体71の外側に、十分な音圧の音波を伝搬させることができる。
【0065】
第2開口部722の形状は、半円形に限定されない。第2開口部722の形状は、例えば、円形、楕円形、扇形、三角形等の多角形等であってもよい。
【0066】
[第3実施形態]
<イヤホン>
次に、
図10を参照して、本発明の第3実施形態に係るイヤホン80の構成例を説明する。
図10は、本発明の第3実施形態に係るイヤホン80の使用状態を示す模式図である。なお、第3実施形態において、第1実施形態、第1実施形態の各変形例、及び第2実施形態と同一の構成部についての説明を適宜省略する。
【0067】
図10に示すように、イヤホン80は、第2実施形態に係るスピーカユニット70と、スピーカユニット70に連結された摘み部81と、を備える。スピーカユニット70は、イヤホン80の先端側に配置される。また、
図10に示すように、スピーカユニット70は、長尺形状を有するため、使用者の耳の9E1に挿入することができる。すなわち、音源である圧電振動デバイス1Bの第1長辺部11a、第2長辺部11b及び筐体71の長手方向が、鼓膜9E2に向かう外耳道の奥行方向に沿うようにして配置されることで、圧電振動デバイス1Bを、外耳道9E1の内部に配置することができる。これにより、圧電振動デバイス1Bを使用者の鼓膜9E2に近い位置に配置することができ、十分な音圧を有する低音域の音波を鼓膜まで伝達することができる。なお、第1実施形態に係る圧電振動デバイス1、及び第1実施形態の変形例1に係る圧電振動デバイス1Aを用いた場合に関しても、同様の効果が奏される。
【0068】
以上、好ましい実施形態等について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、上述した実施形態について、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、種々の変形及び置換を加えることができる。
【0069】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 長尺のフレームと、
前記フレームに支持されるとともに、前記フレームの長手方向に延びる長尺の第1振動板と、
前記第1振動板上に配置された圧電層と、
を備える、圧電振動デバイス。
<2> 前記フレームは、
第1長辺部と、
前記第1長辺部に対向する第2長辺部と、
前記第1長辺部の一端及び前記第2長辺部の一端をつなぐ第1短辺部と、
前記第1短辺部に対向するとともに、前記第1長辺部の他端及び前記第2長辺部の他端をつなぐ第2短辺部と、
を備え、
前記振動板は、前記フレームの前記第1短辺部及び前記第2短辺部の少なくとも一方に支持される、
前記<1>に記載の圧電振動デバイス。
<3> 連結体を介して、前記第1振動板に接続され、前記第1振動板の振動に連動して振動する第2振動板をさらに備える、
前記<1>又は前記<2>に記載の圧電振動デバイス。
<4> 圧電振動デバイスを備え、
前記圧電振動デバイスは、
長尺のフレームと、
前記フレームに支持されるとともに、前記フレームの長手方向に延びる長尺の第1振動板と、
前記第1振動板上に配置された圧電層と、
を備える、
スピーカユニット。
<5> 前記圧電振動デバイスを収容する長尺筒状の筐体をさらに備え、
前記筐体は、
第1開口部と、
第2開口部と、
を備え、
前記筐体の内部に、前記圧電振動デバイスによって隔てられた、第1空間及び第2空間が形成され、
前記第1開口部は、前記第1空間に連通し、
前記第2開口部は、前記第2空間に連通する、
前記<4>に記載のスピーカユニット。
<6> スピーカユニットを備え、
前記スピーカユニットは、圧電振動デバイスを備え、
前記圧電振動デバイスは、
長尺のフレームと、
前記フレームに支持されるとともに、前記フレームの長手方向に延びる長尺の第1振動板と、
前記第1振動板上に配置された圧電層と、
を備える、
イヤホン。
<7> 前記スピーカユニットは、前記圧電振動デバイスを収容する長尺筒状の筐体をさらに備え、
前記筐体は、
第1開口部と、
第2開口部と、
を備え、
前記圧電振動デバイスによって隔てられた、第1空間及び第2空間が、前記筐体の内部に形成され、
前記第1開口部は、前記第1空間に連通し、
前記第2開口部は、前記第2空間に連通する、
前記<6>に記載のイヤホン。
<8> 前記スピーカユニットにおいて、前記圧電振動デバイスの長辺部または前記圧電振動デバイスを収容する長尺筒状の筐体の長手方向が、使用者の耳の外耳道の奥行方向に沿って配置される、
前記<6>又は前記<7>に記載のイヤホン。
【符号の説明】
【0070】
1,1A,1B 圧電振動デバイス、10,10A,10B フレーム、20,20A,20B 振動板、30 圧電層、41 第1電極パッド、42 第2電極パッド、245 メンブレン、70 スピーカユニット、71 筐体、71U 上部空間、71B 下部空間、721 第1開口部、722 第2開口部、80 イヤホン