(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001525
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】LIDAR装置
(51)【国際特許分類】
G01S 17/34 20200101AFI20231227BHJP
【FI】
G01S17/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100232
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅重
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA07
5J084AA10
5J084AB01
5J084AB07
5J084AB20
5J084AC02
5J084BA03
5J084BA48
5J084CA08
5J084CA31
5J084CA48
5J084CA49
5J084CA70
5J084DA09
5J084EA04
(57)【要約】
【課題】LIDAR装置において、測定感度および測定精度の低下を抑制する。
【解決手段】LIDAR装置100は、送信波を送信する送信部10と、送信波を走査する走査部20と、反射波を受信する受信部30と、反射波をサンプリングデータに変換するデータ変換部40と、サンプリングデータを保持するデータ保持部51と、周波数解析を実行し測距点データを取得する周波数解析部52、53、54と、第1解析対象データセットを対象とした周波数解析の結果を利用して取得された測距点データが示す複数の測距点からなる点群と、第2解析対象データセットを対象とした周波数解析の結果を利用して取得された測距点データが示す複数の測距点からなる点群と、を生成する点群生成部55と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LIDAR装置(100)であって、
サンプリング区間を任意に設定可能な変調方式で変調する送信波を送信する送信部(10)と、
予め設定された走査角度の範囲内において前記送信波を走査する走査部(20)と、
前記送信波が物体に反射して生じる反射波を受信する受信部(30)と、
前記走査角度の範囲で受信する前記反射波を、サンプリングデータに変換するデータ変換部(40)と、
前記サンプリングデータを保持するデータ保持部(51)と、
前記データ保持部から前記サンプリングデータを、前記走査角度以下である第1角度の範囲ごとに読み出して得られるひとつまたは複数の第1解析対象データセットと、前記第1角度よりも小さい第2角度の範囲ごとに読み出して得られる複数の第2解析対象データセットと、をそれぞれ対象として周波数解析を実行し、前記周波数解析の結果を利用して前記LIDAR装置を基準とした測距点の距離および方向の情報を少なくとも含む測距点データを取得する周波数解析部(52、53、54)と、
前記第1解析対象データセットを対象とした前記周波数解析の結果を利用して取得された前記測距点データが示す複数の測距点からなる点群と、前記第2解析対象データセットを対象とした前記周波数解析の結果を利用して取得された前記測距点データが示す複数の測距点からなる点群と、を生成する点群生成部(55)と、
を備える、
LIDAR装置。
【請求項2】
請求項1に記載のLIDAR装置であって、
前記複数の第2解析対象データセットは、前記第2角度の2つの範囲であって、互いに一部が重複する前記第2角度の範囲ごとに前記サンプリングデータを読み出して得られる少なくとも2つの前記第2解析対象データセットを含む、
LIDAR装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のLIDAR装置であって、
複数の前記周波数解析部を備え、
前記複数の周波数解析部は、前記複数の第2解析対象データセットのうち、互いに異なる前記第2解析対象データセットをそれぞれ対象とする前記周波数解析を並列して実行する、
LIDAR装置。
【請求項4】
請求項1に記載のLIDAR装置であって、
前記第1解析対象データセットを対象とした前記周波数解析の結果における前記反射波のピーク強度が予め設定された閾値以上である場合に、前記周波数解析部は、前記第2解析対象データセットに代えて、前記サンプリングデータを前記第2角度よりも小さい第3角度の範囲ごとに読み出して得られる複数の第3解析対象データセットを対象として、前記周波数解析を実行して前記測距点データを取得する、
LIDAR装置。
【請求項5】
請求項4に記載のLIDAR装置であって、
前記複数の第3解析対象データセットは、前記第3角度の2つの範囲であって、互いに一部が重複する前記第3角度の範囲ごとに前記サンプリングデータを読み出して得られる少なくとも2つの前記第3解析対象データセットを含む、
LIDAR装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のLIDAR装置であって、
複数の前記周波数解析部を備え、
前記複数の周波数解析部は、前記複数の第3解析対象データセットのうち、互いに異なる前記第3解析対象データセットをそれぞれ対象とする前記周波数解析を並列して実行する、
LIDAR装置。
【請求項7】
請求項1に記載のLIDAR装置であって、
前記周波数解析部は、前記第1解析対象データセットを対象とした前記周波数解析の結果における前記反射波のピーク周波数に応じて間引き間隔を設定し、
前記第2解析対象データセットに代えて、前記サンプリングデータを前記間引き間隔を空けて前記第2角度の範囲ごとに読み出して得られる複数の第2解析対象間引きデータセットを対象として、前記周波数解析を実行して前記測距点データを取得する、
LIDAR装置。
【請求項8】
請求項7に記載のLIDAR装置であって、
前記複数の第2解析対象間引きデータセットは、前記第2角度の2つの範囲であって、互いに一部が重複する前記第2角度の範囲ごとに前記サンプリングデータを読み出して得られる少なくとも2つの前記第2解析対象間引きデータセットを含む、
LIDAR装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のLIDAR装置であって、
複数の前記周波数解析部を備え、
前記複数の周波数解析部は、前記複数の第2解析対象間引きデータセットのうち、互いに異なる前記第2解析対象間引きデータセットをそれぞれ対象とする前記周波数解析を並列して実行する、
LIDAR装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、LIDAR装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時間経過とともに変調する連続波を送信し、送信した連続波と、被測定物体からの反射波との位相差を利用して、被測定物体との距離を測定する技術がある。特許文献1に記載の測距システムは、被測定物体との距離に応じて解像度を変化させることにより、測定効率の低下を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の測距システムでは、被測定物までの距離が遠い場合や被測定物の反射率が低い場合といったSN比が低くなる状況では、被測定物を検出できないことがある。また、このような状況において被測定物を検出するために測定時間を長くすると、分解能が低下し、被測定物の位置を精度よく特定できないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、LIDAR装置(100)が提供される。このLIDAR装置は、サンプリング区間を任意に設定可能な変調方式で変調する送信波を送信する送信部(10)と、予め設定された走査角度の範囲内において前記送信波を走査する走査部(20)と、前記送信波が物体に反射して生じる反射波を受信する受信部(30)と、前記走査角度の範囲で受信する前記反射波を、サンプリングデータに変換するデータ変換部(40)と、前記サンプリングデータを保持するデータ保持部(51)と、前記データ保持部から前記サンプリングデータを、前記走査角度以下である第1角度の範囲ごとに読み出して得られるひとつまたは複数の第1解析対象データセットと、前記第1角度よりも小さい第2角度の範囲ごとに読み出して得られる複数の第2解析対象データセットと、をそれぞれ対象として周波数解析を実行し、前記周波数解析の結果を利用して前記LIDAR装置を基準とした測距点の距離および方向の情報を少なくとも含む測距点データを取得する周波数解析部(52、53、54)と、前記第1解析対象データセットを対象とした前記周波数解析の結果を利用して取得された前記測距点データが示す複数の測距点からなる点群と、前記第2解析対象データセットを対象とした前記周波数解析の結果を利用して取得された前記測距点データが示す複数の測距点からなる点群と、を生成する点群生成部(55)と、を備える。
この形態のLIDAR装置によれば、第1解析対象データセットを対象とする周波数解析によってSN比の低い物体であっても感度よく検出するとともに、第2解析対象データセットを対象とする周波数解析によってSN比の高い物体については分解能よく検出できるので、物体検出の感度および分解能の低下を抑制できる。
【0007】
本開示は、種々の形態で実現することも可能である。例えば、LIDAR装置を備える車両、物体検出方法、これらの装置および方法を実現するためのコンピュータプログラム、かかるコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態のLIDAR装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】第1実施形態の物体検出処理の手順を示す説明図である。
【
図3】各データセットのサンプリングデータの読み出し範囲を表す説明図である。
【
図5】第2実施形態の物体検出処理の手順を示す説明図である。
【
図6】第3実施形態の物体検出処理の手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
A-1.装置構成:
本実施形態のLIDAR装置100は、送信波としてレーザ光を照射し、送信波が物体に反射して生じる反射波を検出することにより、LIDAR装置100を基準とした物体の距離、方向および相対速度を測定する。本実施形態のLIDAR装置100は、車両に搭載されて、車両の周囲に存在する物体、例えば、他の車両、歩行者や建物等を検出する。
【0010】
図1に示すように、LIDAR装置100は、送信部10と、走査部20と、受信部30と、データ変換部40と、処理部50と、制御部60とを備える。処理部50は、データ保持部51と、複数の周波数解析部52~54と、点群生成部55とを備える。
【0011】
送信部10は、送信波を生成し、送信波を送信する。本実施形態では、送信部10は、時間経過とともに周波数が増加変調する送信波と、時間経過とともに周波数が減少変調する送信波との2種類の送信波を並列して送信する。このような方式で送信波を送信することにより、任意のサンプリング区間でサンプリングデータを取り出しても、対象物体の位置および速度を測定できる。また、走査部20が駆動することにより、走査部20は、予め定められた走査角度の範囲内において、連続的に送信波を送信することができる。
【0012】
受信部30は、送信波の送信方向に存在する物体に送信波が反射して生じる反射波を受信する。データ変換部40は、反射波と送信波との周波数差信号(以下、「ビート信号」とも呼ぶ)から、予め設定されたサンプリング周波数でサンプリングデータを取得する。サンプリング周波数は、予め実験等により特定された、ビート信号がとり得る最大周波数に対して、少なくとも2倍の周波数となるように設定されている。サンプリングデータは、データ保持部51に保持される。
【0013】
周波数解析部52~54は、後述する測距点出力処理において、データ保持部51から読み出したサンプリングデータを対象として周波数解析を行うことにより得られる周波数スペクトルを利用して、測距点データを取得する。本実施形態では、周波数解析部52は、高速フーリエ変換(以下、「FFT」とも呼ぶ)を行う。また、本実施形態では、測距点データは、LIDAR装置100を基準とした物体の距離、方向および相対速度の情報を少なくとも含む。
【0014】
点群生成部55は、後述する測距点出力処理において得られる測距点データが示す測距点を複数マッピングすることにより、点群を生成する。測距点は、上述した走査角度の範囲内において、送信波が反射された点を表す。
【0015】
制御部60は、マイクロコンピュータを中心とした論理回路として構成される。制御部60は、より具体的には、予め設定された制御プログラムに従って演算などを実行するCPUと、CPUにおいて各種演算処理を実行するのに必要な制御プログラムや制御データ等が予め格納されたROMと、同じくCPUで各種演算処理をするのに必要な各種データが一時的に読み書きされるRAMと、各種信号を入出力するポート部等とを備える。制御部60は、後述する物体検出処理において、かかるLIDAR装置100の制御を行う。
【0016】
A-2.物体検出処理:
本実施形態のLIDAR装置100は、
図2に示す物体検出処理を実行することにより、車両の周囲に存在する他の車両、歩行者や建物等を検出する。
図2のステップS100において、送信部10は、予め設定された走査角度の範囲内において、送信波を送信する。LIDAR装置100は、車両の走行中、本ステップを繰り返し実行する。
【0017】
ステップS100と並列して、受信部30が、走査角度の範囲内において予め設定された角度の範囲の反射波を受信すると、データ変換部40は、受信した反射波をサンプリングデータに変換する(ステップS200)。本実施形態では、LIDAR装置100は、0.6°の角度範囲の反射波を受信すると、受信した反射波をサンプリングデータに変換する。変換されたサンプリングデータは、データ保持部51に保持される。
【0018】
LIDAR装置100は、データセットDS1を対象とする測距点出力処理(ステップS300)、データセットDS2を対象とする測距点出力処理(ステップS400)およびデータセットDS3を対象とする測距点出力処理(ステップS500)をそれぞれ並列して実行する。データセットDS1は、予め設定された第1角度の範囲ごとにサンプリングデータを読み出して得られるデータセットである。データセットDS1は、本開示における「第1解析対象データセット」に相当する。また、データセットDS2およびデータセットDS3は、予め定められた、第1角度よりも小さい第2角度の範囲ごとにサンプリングデータを読み出して得られるデータセットを意味する。データセットDS2およびデータセットDS3は、本開示における「第2解析対象データセット」に相当する。本実施形態では、
図3に示すように、第1角度は0.6°であり、
図2のステップS200において変換されたサンプリングデータ全体を読み出して得られるデータセットに相当する。また、本実施形態の第2角度は0.4°であり、データセットDS2とデータセットDS3とは、互いに重複する角度範囲に属するデータを含む。
【0019】
本実施形態では、後述する測距点出力処理において、LIDAR装置100は、データセットDS1を対象とする周波数解析を周波数解析部52、データセットDS2を対象とする周波数解析を周波数解析部53、データセットDS3を対象とする周波数解析を周波数解析部54において実行する。LIDAR装置100は、いずれのデータセットを対象とする測距点出力処理においても同様の処理を実行するので、以下の説明では、
図4に示す、データセットDS1を対象とする測距点出力処理を例に説明する。
【0020】
ステップS310において、LIDAR装置100は、データセットDS1を周波数解析部52に読み出す。
【0021】
ステップS320において、周波数解析部52は、データセットDS1を対象として周波数解析を実行し、測距点データを取得する。上述のように、周波数解析部52は、データセットDS1を対象として周波数解析を行うことにより得られる周波数スペクトルを利用して、測距点データを取得する。なお、本ステップで実行される周波数解析は、一般的にFMCW方式の測距で実行される周波数解析と同様の処理である。
【0022】
ステップS330において、点群生成部55は、データセットDS1に対応する測距点データを示す測距点を出力する。本ステップの終了後、データセットDS1を対象とする測距点出力処理は終了する。
【0023】
図2に示すように、データセットDS1~DS3のすべてを対象とする測距点出力処理の終了後、LIDAR装置100は、再びステップS200を実行する。LIDAR装置100は、車両の走行中、予め設定された角度の範囲の反射波を受信するごとに、ステップS200~ステップS500の処理を繰り返し実行する。このように、LIDAR装置100は、上述の処理を繰り返し実行し複数の測距点を出力して点群を生成することにより、走査角度の範囲内に存在する物体の位置を特定する。
【0024】
以上説明したLIDAR装置100によれば、データセットDS1を対象とする周波数解析によってSN比の低い物体であっても感度よく検出するとともに、データセットDS2およびデータセットDS3を対象とする周波数解析によってSN比の高い物体については分解能よく検出できるので、物体検出の感度および分解能の低下を抑制できる。
【0025】
また、データセットDS2とデータセットDS3とは、互いに重複する角度範囲に属するデータを含むので、サンプリングデータにおいて物体が存在することを示すデータが互いに異なる2つのデータセットに分割されて、物体を適切に検出できなくなる可能性を低減できる。
【0026】
また、LIDAR装置100は、3つの周波数解析部52~54を備えるので、各周波数解析部において、互いに異なる解析対象データセットをそれぞれ対象とする周波数解析を並列して実行でき、LIDAR装置100の処理性能の低下を抑制できる。
【0027】
B.第2実施形態:
第2実施形態のLIDAR装置100は、データセットDS1を対象とした周波数解析の結果における反射波のピーク強度に応じて読み出し角度を設定し、かかる読み出し角度の範囲ごとにサンプリングデータを読み出す点において、第1実施形態のLIDAR装置100と異なっている。
【0028】
図5に示すように、LIDAR装置100は、ステップS200の後に、データセットDS1を対象とする測距点出力処理を、後述するデータセットDS2AおよびデータセットDS3Aを対象とする測距点出力処理に先行して実行する(ステップS300)。
【0029】
ステップS340Aにおいて、LIDAR装置100は、データセットDS1を対象とした周波数解析の結果における反射波のピーク強度に応じて、サンプリングデータ読み出し時の読み出し角度を設定する。LIDAR装置100は、例えば、ピーク強度が予め設定された閾値の6倍である場合、上述した第1角度の1/6の大きさである第3角度を読み出し角度として設定する。ピーク強度が大きい場合、物体のSN比が高い可能性が高い。したがってこの場合、物体のSN比が低い場合に比べて少ないサンプリングデータ数でも物体の位置を特定できる。このため、本実施形態では、読み出し角度として、第2角度よりも小さい第3角度を設定するようにしている。
【0030】
LIDAR装置100は、データセットDS2Aを対象とする測距点出力処理(ステップS400A)およびデータセットDS3Aを対象とする測距点出力処理(ステップS500A)をそれぞれ並列して実行する。データセットDS2AおよびデータセットDS3Aは、第3角度の範囲ごとにサンプリングデータを読み出して得られるデータセットを意味する。データセットDS2AおよびデータセットDS3Aは、本開示における「第3解析対象データセット」に相当する。
【0031】
以上説明した第2実施形態のLIDAR装置100によれば、データセットDS1を対象とした周波数解析の結果における反射波のピーク強度に応じて読み出し角度を設定し、かかる読み出し角度の範囲ごとにサンプリングデータを読み出す。これにより、物体のSN比ごとに適切な分解能で測定を行うことができ、物体検出の感度および分解能の低下をより抑制できる。
【0032】
C.第3実施形態:
第3実施形態のLIDAR装置100は、データセットDS1を対象とした周波数解析の結果における反射波のピーク周波数に応じて間引き間隔を設定し、かかる間引き間隔を空けてサンプリングデータを読み出す点において、第2実施形態のLIDAR装置100と異なっている。
【0033】
図6に示すように、LIDAR装置100は、データセットDS1を対象とする測距点出力処理(ステップS300)の後、データセットDS1を対象とした周波数解析の結果における反射波のピーク周波数に応じて、サンプリングデータ読み出し時の間引き間隔を設定する(ステップS340B)。LIDAR装置100は、例えば、ピーク周波数がサンプリング周波数の1/4以下である場合、間引き間隔を「1」として設定する。間引き間隔を「1」として設定した場合、周波数解析部53および周波数解析部54は、後の測距点出力処理においてサンプリングデータを「1点おき」に読み出す。この場合においても実効的なサンプリング周波数はピーク周波数の2倍以上となるので、サンプリング周波数が測定対象信号の周波数の2倍以下である場合に、測定対象信号の周波数が実際とは異なる値として検出される、エイリアシング現象の発生を抑制できる。
【0034】
LIDAR装置100は、データセットDS2Bを対象とする測距点出力処理(ステップS400B)およびデータセットDS3Bを対象とする測距点出力処理(ステップS500B)をそれぞれ並列して実行する。データセットDS2BおよびデータセットDS3Bは、間引き間隔を空けて、上述の第2角度の範囲ごとにサンプリングデータを読み出して得られるデータセットを意味する。データセットDS2BおよびデータセットDS3Bは、本開示における「第2解析対象間引きデータセット」に相当する。
【0035】
以上説明した第3実施形態のLIDAR装置100によれば、データセットDS1を対象とした周波数解析の結果における反射波のピーク周波数に応じて間引き間隔を設定し、かかる間引き間隔を空けてサンプリングデータを読み出す。これにより、少ないデータ数で周波数解析を実行でき、LIDAR装置100の処理性能の低下を抑制できる。
【0036】
D.他の実施形態:
(D1)上記実施形態において、送信部10は、時間経過とともに周波数が増加変調する送信波と、時間経過とともに周波数が減少変調する送信波との2種類の送信波を並列して送信するが、本開示はこれに限定されない。送信部10は、上記の変調方式に限らない、サンプリング区間を任意に設定可能な変調方式で変調する送信波を送信してもよい。例えば、送信部10は、時間経過とともに周波数と振幅とが変調する送信波を送信してもよい。
【0037】
(D2)上記実施形態において、LIDAR装置100は、サンプリングデータ全体に相当するデータセットを第1解析対象データセットとして読み出すが、本開示はこれに限定されない。LIDAR装置100は、ステップS200において反射波を受信する角度よりも小さい角度を第1角度として、サンプリングデータをかかる第1角度の範囲ごとに読み出して得られる複数のデータセットを第1解析対象データセットとしてもよい。
【0038】
(D3)上記実施形態において、LIDAR装置100は、予め設定された角度の範囲の反射波を受信するごとに、測距点出力処理を実行するが、本開示はこれに限定されない。LIDAR装置100は、走査角度全体の範囲の反射波を受信した後に、測距点出力処理を実行してもよい。
【0039】
(D4)上記実施形態において、データセットDS2とデータセットDS3とは、互いに重複する角度範囲に属するデータを含むが、本開示はこれに限定されない。データセットDS2とデータセットDS3とは、互いに重複する角度範囲に属するデータを含まなくてもよい。かかる形態によれば、データセットごとに周波数解析の対象となるデータ数が少なくなるので、LIDAR装置100の処理性能の低下を抑制できる。
【0040】
(D5)上記実施形態において、LIDAR装置100は、3つの周波数解析部52~54を備えるが、本開示はこれに限定されない。LIDAR装置100は、周波数解析部をひとつだけ備えてもよい。かかる形態によれば、複数のデータセットを対象とする周波数解析を並列ではなく順に実行するので、物体検出処理における周波数解析の煩雑化を抑制できる。
【0041】
(D6)上記実施形態において、LIDAR装置100は、データセットDS1、データセットDS2およびデータセットDS3を対象として測距点出力処理を行うが、本開示はこれに限定されない。LIDAR装置100は、さらに、第1角度よりも小さい角度であって、第2角度とは異なる角度の範囲ごとにサンプリングデータを読み出して得られる複数のデータセットを対象とする測距点出力処理を行ってもよい。かかる形態によれば、物体のSN比に対して適切なサンプリングデータ数で周波数解析を実行できる可能性が高まるので、物体検出の感度および分解能の低下を抑制できる。
【0042】
(D7)上記第2実施形態において、LIDAR装置100は、データセットDS1を対象とした周波数解析の結果における反射波のピーク強度に応じて、読み出し角度をひとつ設定するが、本開示はこれに限定されない。データセットDS1を対象とした周波数解析の結果における反射波のピークが複数ある場合に、LIDAR装置100は、各ピークの強度に応じて、複数の読み出し角度を設定してもよい。例えば、ピーク強度が閾値の6倍であるピークと、ピーク強度が閾値の2倍であるピークとが存在する場合、LIDAR装置100は、読み出し角度として、第1角度の1/6の大きさである角度と、第1角度の1/2の大きさである角度との2つの角度を設定してもよい。さらにLIDAR装置100は、設定されたそれぞれの角度の範囲ごとにサンプリングデータを読み出して得られる複数のデータセットを対象として、測距点出力処理を実行してもよい。かかる形態によれば、複数の物体の測定における、物体検出の感度および分解能の低下を抑制できる。
【0043】
(D8)上記第2実施形態において、LIDAR装置100は、データセットDS2およびデータセットDS3に代えて、データセットDS2AおよびデータセットDS3Aを対象として測距点出力処理を実行するが、本開示はこれに限定されない。LIDAR装置100は、データセットDS2およびデータセットDS3に加えて、データセットDS2AおよびデータセットDS3Aを対象として測距点出力処理を実行してもよい。
【0044】
(D9)上記第3実施形態において、LIDAR装置100は、データセットDS2およびデータセットDS3に代えて、データセットDS2BおよびデータセットDS3Bを対象として測距点出力処理を実行するが、本開示はこれに限定されない。100は、データセットDS2およびデータセットDS3に加えて、データセットDS2BおよびデータセットDS3Bを対象として測距点出力処理を実行してもよい。
【0045】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0046】
本開示に記載の制御部およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部およびその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…送信部、20…走査部、30…受信部、40…データ変換部、51…データ保持部、52、53、54…周波数解析部、55…点群生成部、100…LIDAR装置