(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152509
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】絶縁体、静電容量式センサ、把持センサ、及びステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20241018BHJP
B62D 1/06 20060101ALI20241018BHJP
G01V 3/08 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B62D1/06
G01V3/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066746
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(71)【出願人】
【識別番号】591015784
【氏名又は名称】共同技研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 啓宏
(72)【発明者】
【氏名】小幡 佳司
(72)【発明者】
【氏名】濱野 尚
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 達雄
(72)【発明者】
【氏名】能宗 孝充
【テーマコード(参考)】
2G105
3D030
4F100
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB04
2G105EE01
2G105HH02
3D030DA26
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3D030DB13
4F100AB01D
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4F100AK01A
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4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】曲面用静電容量式センサに用いる絶縁体であって、耐薬品性が向上され、且つ柔軟性も良好な絶縁体、及びそれを備える静電容量式センサを得ること。
【解決手段】絶縁体は、曲面用静電容量式センサで使用する絶縁体であって、第2の熱圧着層と、前記第2の熱圧着層上に積層された中心層と、前記中心層上に積層された第1の熱圧着層と、を備え、前記第1の熱圧着層及び前記第2の熱圧着層は、それぞれ架橋構造を有しCOOH基及びOH基を有しない熱可塑性樹脂で形成され、前記中心層は、前記第1の熱圧着層及び前記第2の熱圧着層の熱可塑性樹脂よりも柔らかく、架橋構造を有する絶縁性の熱可塑性樹脂で形成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面用静電容量式センサで使用する絶縁体であって、
第2の熱圧着層と、
前記第2の熱圧着層上に積層された中心層と、
前記中心層上に積層された第1の熱圧着層と、を備え、
前記第1の熱圧着層及び前記第2の熱圧着層は、それぞれ架橋構造を有しCOOH基及びOH基を有しない熱可塑性樹脂で形成され、
前記中心層は、前記第1の熱圧着層及び前記第2の熱圧着層の熱可塑性樹脂よりも柔らかく、架橋構造を有する絶縁性の熱可塑性樹脂で形成される、
絶縁体。
【請求項2】
曲面用静電容量式センサで使用する絶縁体であって、
中心層と、
前記中心層上に積層された第1の熱圧着層と、を備え、
前記第1の熱圧着層は、架橋構造を有しCOOH基及びOH基を有しない熱可塑性樹脂で形成され、
前記中心層は、前記第1の熱圧着層の熱可塑性樹脂よりも柔らかく、架橋構造を有する絶縁性の熱可塑性樹脂で形成される、
絶縁体。
【請求項3】
前記熱圧着層のガラス転移温度は、5℃~40℃の範囲内にあり、
前記中心層のガラス転移温度は、-40℃以下である、
請求項1又は請求項2に記載の絶縁体。
【請求項4】
前記中心層の熱可塑性樹脂は、フィラーを含み、
前記中心層の熱可塑性樹脂は、COOH基又はOH基を有する、
請求項1又は請求項2に記載の絶縁体。
【請求項5】
破断強度が少なくとも10.0N/10mmである、
請求項1又は請求項2に記載の絶縁体。
【請求項6】
破断伸びが少なくとも200%である、
請求項1又は請求項2に記載の絶縁体。
【請求項7】
曲面用静電容量式センサであって、
シールド電極と、
前記シールド電極上に積層された請求項1に記載の絶縁体と、
前記絶縁体上に積層された、静電容量を生じさせるセンサ電極と、を備える、
静電容量式センサ。
【請求項8】
曲面用静電容量式センサであって、
請求項2に記載の絶縁体と、
前記絶縁体の前記第1の熱圧着層上に積層された、静電容量を生じさせるセンサ電極と、を備える、
静電容量式センサ。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の静電容量式センサを備える、
把持センサ。
【請求項10】
請求項9に記載の把持センサを備える、
ステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁体、静電容量式センサ、把持センサ、及び把持センサを備えるステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量式センサは、平面に限られず平面でない面(曲面)においても一般的に用いられている。例えば、特許文献1には、触感が良好で、従来よりも熱伝導性が高い静電容量結合方式センサが開示されている(段落0007)。又は、特許文献2には、耐熱性が高く、薄型化が可能で触感が良好な静電容量結合方式センサが開示されている(段落0009)。特許文献1及び特許文献2には、これらの静電容量結合方式センサが、いずれも自動車などの車両のステアリングホイールに取り付けられて使用されることが開示されている。
【0003】
曲面に用いられる静電容量式センサは、取付け先の立体形状に追従する必要があり、平面に用いられる静電容量式センサにはない特性が要求される。例えば、静電容量式センサが有する絶縁体は、絶縁性を維持するために必要な厚みを確保しながら、耐薬品性を担保しようとすると硬くなりすぎてしまい静電容量式センサの曲面への追従性が悪化する。一例として静電容量式センサをステアリングホイールのリムへ取り付けて把持センサとして用いる場合に柔軟性が低下すると取付作業が困難になる。このように、曲面に用いられる静電容量式センサは、曲面の形状に合せられるようにある程度の柔らかさが常に要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/077788号
【特許文献2】国際公開第2020/194931号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、静電容量式センサに用いる絶縁体であって、耐薬品性が向上され、且つ柔軟性も良好な絶縁体、及びそれを備える静電容量式センサを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様の絶縁体は、曲面用静電容量式センサで使用する絶縁体であって、第2の熱圧着層と、前記第2の熱圧着層上に積層された中心層と、前記中心層上に積層された第1の熱圧着層と、を備え、前記第1の熱圧着層及び前記第2の熱圧着層は、それぞれ架橋構造を有しCOOH基及びOH基を有しない熱可塑性樹脂で形成され、前記中心層は、前記第1の熱圧着層及び前記第2の熱圧着層の熱可塑性樹脂よりも柔らかく、架橋構造を有する絶縁性の熱可塑性樹脂で形成される。
【0007】
本発明の第2態様の絶縁体は、曲面用静電容量式センサで使用する絶縁体であって、中心層と、前記中心層上に積層された第1の熱圧着層と、を備え、前記第1の熱圧着層は、架橋構造を有しCOOH基及びOH基を有しない熱可塑性樹脂で形成され、前記中心層は、前記第1の熱圧着層の熱可塑性樹脂よりも柔らかく、架橋構造を有する絶縁性の熱可塑性樹脂で形成される。
【0008】
本発明の第3態様の絶縁体は、本発明の第1態様又は第2態様の絶縁体において、前記熱圧着層のガラス転移温度は、5℃~40℃の範囲内にあり、前記中心層のガラス転移温度は、-40℃以下である。
【0009】
本発明の第4態様の絶縁体は、本発明の第1態様~第3態様の何れか1の態様の絶縁体において、前記中心層の熱可塑性樹脂は、フィラーを含み、前記中心層の熱可塑性樹脂は、COOH基又はOH基を有する。
【0010】
本発明の第5態様の絶縁体は、本発明の第1態様~第4態様の何れか1の態様の絶縁体において、破断強度が少なくとも10.0N/10mmである。
【0011】
本発明の第6態様の絶縁体は、本発明の第1態様~第5態様の何れか1の態様の絶縁体において、破断伸びが少なくとも200%である。
【0012】
本発明の第7態様の静電容量式センサは、曲面用静電容量式センサであって、シールド電極と、前記シールド電極上に積層された本発明の第1態様の絶縁体と、前記絶縁体上に積層された、静電容量を生じさせるセンサ電極と、を備える。
【0013】
本発明の第8態様の静電容量式センサは、曲面用静電容量式センサであって、本発明の第2態様の絶縁体と、前記絶縁体の前記第1の熱圧着層上に積層された、静電容量を生じさせるセンサ電極と、を備える。
【0014】
本発明の第9態様の把持センサは、本発明の第7態様又は第8態様の静電容量式センサを備える。
【0015】
本発明の第10態様のステアリングホイールは、本発明の第9態様の把持センサを備える。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、静電容量式センサに用いる絶縁体であって、耐薬品性が向上し、且つ柔軟性も良好な絶縁体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ステアリングホイールの断面において中心となるステアリング芯金5から最表面の本革1までの層構成を例示する概略図である。
【
図2】ステアリングホイール及びその断面を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0019】
まず初めに本開示に係る静電容量式センサの一実施形態として、静電容量式センサがステアリングホイールに取り付けられて用いられる場合の例を説明する。本開示に係る静電容量式センサは、ステアリングホイールに取り付けられると(巻き付けられると)把持センサとして機能することができる。なお、「把持センサ」とは、ステアリングホイールの把持状態を検知するセンサである。把持センサは、環状のステアリングホイールの全周(又はその一部)を被覆するように取り付けられる。
図1にステアリングホイールの断面において中心となるステアリング芯金5から最表面の本革1までの層構成を例示する。
図1に示すように、ステアリング芯金5はステアリングポリウレタン4に覆われる。その上にヒータ3が取り付けられ、更にその上に把持センサ2が取り付けられ、最表面が本革1となるように最終的に本革1で覆われる。
図2にステアリングホイール及びその断面を例示する。
【0020】
[把持センサ2]
把持センサ2を
図3及び
図4に例示する。以降においては、シールド電極を有する把持センサを把持センサ2aとし(
図3)、シールド電極を有さない把持センサを把持センサ2bとする(
図4)。特に区別する必要がない場合は、把持センサ2とする。同様に、把持センサが有する絶縁体は、3層構造のものを絶縁体20aとし(
図3)、2層構造のものを絶縁体20bとする(
図4)。特に区別する必要がない場合は、絶縁体20とする。
【0021】
図3に示す把持センサ2aは、センサ電極24、絶縁体20a、及び、シールド電極25を備える。
図4に示す把持センサ2bは、センサ電極24、及び、絶縁体20bを備える。把持センサ2aと把持センサ2bにおいては、センサ電極24は共通である。各部について以下に詳述する。
【0022】
[絶縁体20]
本開示に係る絶縁体は、絶縁性、耐薬品性、柔軟性がそれぞれ良好となるように、複数の層を有し、層毎に役割を配分することにより、トレードオフの関係にある機能が両立するように構成されている。なお、柔軟性とは、やわらかく、しなやかな性質であり、シート状に形成すると少なくとも筒状に丸めて円柱を形成できる程度のしなやかさをいう。
本開示に係る第1態様の絶縁体は、
図3に示す絶縁体20aであって、第2の熱圧着層としての熱圧着層23と、熱圧着層23上に積層された中心層21と、中心層21上に積層された第1の熱圧着層としての熱圧着層22を備える。
又は、本開示に係る第2態様の絶縁体は、
図4に示す絶縁体20bであって、少なくとも中心層21と中心層21上に積層された第1の熱圧着層としての熱圧着層22を有する。
絶縁体20aと絶縁体20bにおいては、中心層21及び熱圧着層22は共通である。
【0023】
[中心層21]
中心層21は、絶縁体20において絶縁性を担保するための層である。中心層21は、絶縁性を有し、後述の熱圧着層22、23よりも柔らかい熱可塑性樹脂脂から形成されることが好ましい。
【0024】
中心層は、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂としてはアクリル系樹脂を挙げることができる。アクリル系樹脂としては、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの重合体であってもよく、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを主成分とする共重合体であってもよい。アクリル系樹脂は、透明性、耐久性、耐候性に優れ、加工がしやすく、好ましい。
【0025】
中心層の熱可塑性樹脂は、架橋構造を有することが好ましい。架橋構造を有することにより、中心層の耐薬品性を向上させることができる。架橋構造により、高分子間の動きを抑制できるため、エタノール等の薬品が内部に侵入して中心層が膨張するのを抑えることができる。更に、架橋構造により熱圧着層22、23との密着性を向上させることができる。更に、架橋構造により、高温下での変形を抑制することができる。
架橋度合いは、熱可塑性樹脂の伸び率が200%以下の範囲で引張強度が2MPa以下であることが好ましい。この範囲であると、柔軟性を担保でき、把持センサを取り付けるときの巻付け易さ(巻付け性)が良好となる。なお、伸び率及び引張強度は、幅10mmのサンプルをクランプ間距離20mmに固定し、引張速度200mm/minで引っ張った時の値である。
【0026】
架橋剤は特に限定されず、静電容量式センサの製造時に一般的に使用されているものを使用することができる。架橋構造により、上記のとおり、耐薬品性、耐熱性、強靭性を向上させることができる。架橋剤は、2官能~3官能のものであれば特に限定されない。例えば、水酸基を有するモノマー、カルボキシル基を有するモノマー、グリシジル基を有するモノマー、アミド基を有するモノマー、ニトリル基を有するモノマー等を挙げることができる。添加量は、中心層を構成する熱可塑性樹脂の質量に対して、0.01質量%~3質量%が好ましい。
【0027】
中心層の熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が-40℃以下であってもよい。好ましくは、-60℃以下である。ガラス転移温度が-40℃以下であると、耐脆化性を向上させることができる。更に、伸縮性、強靭性を向上させることができる。
ガラス転移温度は、ガラス転移温度の異なるアクリル系樹脂の材料を調整して、調整することができる。具体的には、熱可塑性樹脂の原料に以下のモノマーを追加することで調整することができる。モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アルキル基が置換又は未置換であり且つ1~20個の炭素原子を有する、例えばアクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキルエステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル段ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸イソノニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジメチル網のエチル)、酢酸ビニル、スチレン等を挙げることができる。
【0028】
中心層の熱可塑性樹脂は、COOH基やOH基を有していない熱可塑性樹脂であってもよい。COOH基やOH基はエタノールとの親和性が高いため、COOH基やOH基を有していない熱可塑性樹脂では、耐薬品性のうち耐エタノール性を向上させることができる。
又は、中心層の熱可塑性樹脂は、COOH基やOH基を有している熱可塑性樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂がCOOH基やOH基を有すると、後述する無機フィラーと水素結合を形成するため好ましい。なお、無機フィラーに対し、COOH基やOH基のモル比は0.5~1が好ましい。
【0029】
中心層の熱可塑性樹脂は無機フィラーを含んでもよい。無機フィラーを添加すると、伸縮性や強靭性を向上させることができる。更に、薬品の進入がない無機フィラーを添加すると、薬品が進入してしまう高分子材料の比率を下げることになり、耐薬品性を向上させることができる。
添加する無機フィラーは、モース硬度が1~3であることが好ましい。この範囲であると、モース硬度が高すぎて研磨剤の働きで機械にダメージが入ることを回避できる。
無機フィラーとしては、非金属のフィラーや絶縁性を有するフィラーが好ましく、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク、マイカ等を挙げることができる。
無機フィラーは、中心層の熱可塑性樹脂と水素結合を行い、膜強度を増加させるので、中心層の伸縮性・強靭性を向上させる。なお、配合量は、中心層の熱可塑性樹脂の質量に対し10~40質量%が好ましい。
なお、中心層において、架橋剤のモル数換算での架橋の度合いを、後述する熱圧着層22、23と同程度とした場合であっても、無機フィラーを添加することで、中心層の柔軟性を維持する又は向上させることができる。
【0030】
中心層は、無溶剤型樹脂のUV効果による成膜が好ましい。この方法により、膜厚を安定化させることができる。溶剤型を使用した場合、乾燥工程で溶剤が蒸発して厚みが下がり厚膜化が不良となることがある。
【0031】
中心層の厚みは、絶縁性を担保できれば特に制限されない。静電容量式センサで一般的に用いられている厚みであればよい。好ましくは5μm~500μmであり、より好ましくは10μm~450μmであり、更に好ましくは15μm~400μmである。
【0032】
[熱圧着層22、23]
熱圧着層22、23は、絶縁体20においてセンサ電極24やシールド電極25、及び中心層21との接着性(又は密着性)を担保し、更に耐薬品性を有する層である。よって、熱圧着層は熱をかけることでセンサ電極24やシールド電極25との接着が可能となる熱可塑性樹脂(ホットメルト)で形成されることが好ましい。熱圧着により接着が可能となるため、常温(熱したり冷やしたりしない自然な温度、例えば20℃±15℃(5~35℃))での把持センサの取付け時にベタツキが無く、作業性を向上させることができる。このように別途接着剤を用いることなく、熱圧着層と、センサ電極やシールド電極を接着することができる。
【0033】
熱圧着層は、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂としてはアクリル系樹脂を挙げることができる。アクリル系樹脂としては、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの重合体であってもよく、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを主成分とする共重合体であってもよい。アクリル系樹脂は、透明性、耐久性、耐候性に優れ、加工がしやすく、好ましい。
熱圧着層の熱可塑性樹脂と中心層の熱可塑性樹脂は、同一であってもよく異なっていてもよい。また、熱圧着層22の熱可塑性樹脂と熱圧着層23の熱可塑性樹脂は、同一であってもよく異なっていてもよい。
【0034】
熱圧着層の熱可塑性樹脂は、COOH基やOH基を有していないことが好ましい。COOH基やOH基はエタノールとの親和性が高いため、COOH基やOH基を有していない熱可塑性樹脂を用いると、耐薬品性、特に耐エタノール性を向上させることができる。
【0035】
熱圧着層の熱可塑性樹脂は、架橋構造を有することが好ましい。架橋構造を有することにより、熱圧着層の耐薬品性を向上させることができる。架橋構造により、高分子間の動きを抑制できるため、エタノール等の薬品が内部に侵入して熱圧着層が膨張するのを抑えることができる。更に、架橋構造により中心層21やセンサ電極24及びシールド電極25との密着性を向上させることができる。更に、架橋構造により、高温下での変形を抑制することができる。
【0036】
熱圧着層は、電極に導電布電極を用いた場合、熱圧着で導電布を熱圧着層に食い込ませ接着させることが可能となるため好ましい。熱圧着時に熱圧着層が低弾性の場合は導電布から裏抜けし、高弾性の場合は導電布が食い込まない。よって、架橋剤により分子量を調整して熱圧着層には導電布が食い込む程度の適度な弾性を持たせることが好ましい。
【0037】
架橋剤は特に限定されず、静電容量式センサの製造時に一般的に使用されているものを使用することができる。架橋構造により、上記のとおり、耐薬品性、耐熱性、強靭性を向上させることができる。架橋剤は、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、金属キレート系架橋剤等を挙げることができる。添加量は、熱圧着層を形成する熱可塑性樹脂の主剤に対し質量比で、0.05質量%~1質量%が好ましい。
【0038】
熱圧着層の熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が5℃~40℃の範囲であってもよい。好ましくは10℃~30℃である。ガラス転移温度が5℃~40℃の範囲であると、タック(ベタツキ)が発現せず取り扱い易く、更に耐薬品性を向上させることができる。更に、伸縮性、強靭性を向上させることができる。
ガラス転移温度は、熱可塑性樹脂の原料に以下のモノマーを追加することで調整することができる。モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アルキル基が置換又は未置換であり且つ1~20個の炭素原子を有する例えばアクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキルエステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル段ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸イソノニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジメチル網のエチル)、酢酸ビニル、スチレン等を挙げることができる。
【0039】
熱圧着層の熱可塑性樹脂は、カーボンブラックなどの添加物を含んでもよい。カーボンブラックを添加すると、熱圧着層に着色(黒色化)が可能となり、更に、熱圧着層のベタツキを抑制することができる。
熱圧着層は、絶縁性が必ずしも必要ではないが、絶縁性を有していてもよい。
【0040】
熱圧着層の厚みは、接着性と耐薬品性を担保できれば特に制限されない。静電容量式センサで一般的に用いられている厚みであればよい。中心層よりも薄いことが好ましい。好ましくは3μm~100μmであり、より好ましくは5μm~90μmであり、更に好ましくは10μm~80μmである。
【0041】
[物理的特性]
本開示に係る絶縁層は、破断強度が少なくとも10.0N/10mmであり、好ましくは10.0N/10mm以上である。また、本開示に係る絶縁層は、破断伸びが少なくとも200%であり、好ましくは200%以上である。なお、破断強度及び破断伸びは、幅10mmのサンプルをクランプ間距離20mmに固定し、引張速度200mm/minで引っ張った時の値である。
更に、本開示に係る絶縁層は、導電布電極との密着力が少なくとも3.5N/25mmであり、好ましくは3.5N/25mm以上である。なお、導電布電極との密着力は、電極を垂直方向に引張速度50mm/minで引張った際の荷重を密着力とした値である。
【0042】
[静電容量式センサ]
図3に示すように、静電容量式センサ2aは、絶縁層20aがセンサ電極24とシールド電極25に挟まれるように構成される。センサ電極24は、車両の運転者の手がステアリングホイールに接触していることを検知するための電極である。センサ電極24及びシールド電極25は、導電布電極であってもよい。静電容量式センサ2aの製造方法は、公知の技術を使用することができる。
図4に示すように、静電容量式センサ2bは、絶縁層20bの熱圧着層側にセンサ電極24が積層される。静電容量式センサ2bの製造方法も同様に、公知の技術を使用することができる。
なお、本開示による静電容量式センサは、熱圧着層を有するため、電極に導電布電極を使用する場合、導電布電極が熱圧着により熱圧着層に中に埋め込まれ、熱圧着層と導電布電極との密着性を向上させることができる。
【0043】
センサ電極24(及びシールド電極25)は、検出装置(不図示)に電気的に接続される。検出装置は、車両ECU(Electronic Control Unit)であってもよく、静電容量式センサ専用の検出回路であってもよい。更に、検出回路は車両ECUに電気的に接続されてもよい。このように、運転者がステアリングホイールを把持しているかどうかが検知される。
【0044】
[ステアリングホイール]
本開示に係る静電容量式センサを取付け、把持センサとして使用するステアリングホイールは、
図2に示すように、車両を操縦するために運転者により把持される管状の部材である。なお、
図2の例ではステアリングホイールは円環状であるが、形状はこれに限定されない。例えば、楕円形状であってもよい。運転者が把持しやすい形状であることが好ましい。
また、
図2に示すように、ステアリングホイールの環状方向(円環形状に沿った方向)に直交する断面では、ステアリングホイールの中心にはステアリング芯金5が配置されており、ステアリング芯金5を囲むようにステアリング芯金5がステアリングポリウレタン4に覆われる。ステアリングポリウレタン4は更にヒータ3に囲まれる。ヒータ3にはその表面に把持センサ2が巻付けられ、最表面が本革1となるように把持センサ2は最終的に本革1で覆われる。なお、ヒータ3は、例えば、
図1に示すように、発泡ポリウレタン31と、両面テープ32と、ヒータ線33から形成することができる。発泡ポリウレタン31中にヒータ線33が埋め込まれ、発泡ポリウレタン31の両面には、ステアリングポリウレタン4及び把持センサ2にそれぞれ接着するように、両面テープ32が設けられる。また、最表面は、本革1に変えてゴムや合成皮革であってもよい。
本開示に係る静電容量式センサは、センサの長手方向がステアリングホイールの環状方向に沿うように巻きつけられて、ステアリングホイールに取り付けられると、把持センサとして機能することができる。
【0045】
以上、本開示に係る静電容量式センサを把持センサとして使用する場合を例として説明したが、本開示に係る静電容量式センサの用途はこれに限定されない。ステアリングホイール以外の立体的曲面に取り付けて使用することができる。例えば、車両のインパネ(インストルメントパネル)等に搭載される各種スイッチにおいて立体的な意匠を有する箇所にタッチセンサとして用いてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1・・・本革、2、2a、2b・・・把持センサ、20、20a、20b・・・絶縁体、21・・・中心層、22・・・熱圧着層、23・・・熱圧着層、24・・・センサ電極、25・・・シールド電極、3・・・ヒータ、31・・・発泡ポリウレタン、32・・・両面テープ、33・・・ヒータ線、4・・・ステアリングポリウレタン、5・・・ステアリング芯金、