(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152538
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】基礎を損傷した原子炉圧力容器の倒壊対策
(51)【国際特許分類】
G21C 13/024 20060101AFI20241018BHJP
E02D 27/34 20060101ALI20241018BHJP
E02D 37/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G21C13/024 100
E02D27/34 Z
E02D37/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023075867
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】504211142
【氏名又は名称】森重 晴雄
(71)【出願人】
【識別番号】520086209
【氏名又は名称】森重 茂美
(71)【出願人】
【識別番号】520086210
【氏名又は名称】北村 康文
(71)【出願人】
【識別番号】520086221
【氏名又は名称】千代谷 晴菜
(71)【出願人】
【識別番号】515186770
【氏名又は名称】森重 晴貴
(71)【出願人】
【識別番号】520086232
【氏名又は名称】梅津 晴賀
(71)【出願人】
【識別番号】520086243
【氏名又は名称】小牧 晴絵
(71)【出願人】
【識別番号】520086254
【氏名又は名称】森重 はるみ
(72)【発明者】
【氏名】森重 晴雄
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046DA42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】炉心溶融により高温の核燃料が原子炉を支える基礎のペデスタル内に溜まり、コンクリートが溶融し、鉄筋が剥き出しとなり原子炉の耐震性能が失われた場合の原子炉圧力容器の地震時原子炉倒壊対策を行う。
【解決手段】原子炉上部に地震時振れ止めの働きをするスタビライザ上部に高さを合わせて原子炉を取り囲む壁に断面放射状にボーリングを複数個所明け、そのボーリング管に壁外側から発砲ウレタンを注入しながらスタビライザ上面に発砲ウレタンを敷き詰め硬化させた後、その上にコンクリートまたは発砲ウレタンを僅かずつ打設し養生させながら、またコンクリートまたは発砲ウレタンを積層させ原子炉圧力容器と原子炉圧力容器を囲む建屋との間にコンクリートまた発砲ウレタンを充填する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉心溶融により高温の核燃料が原子炉圧力容器を支える基礎のペデスタル内に溜まり、コンクリートが溶融し、鉄筋が剥き出しとなり原子炉圧力容器の耐震性能が失われた場合、原子炉圧力容器の上部に地震時振れ止めの働きをするスタビライザの高さに合わせて原子炉圧力容器を取り囲む壁に断面放射状にボーリングを複数個所明けそのボーリング管に原子炉建屋の壁外側から原子炉圧力容器と原子炉遮へい壁の間、原子炉遮へい壁と格納容器の間及び格納容器と原子炉建屋の間にそれぞれ、発砲ウレタンを注入しながらスタビライザ上面に発砲ウレタンを敷き詰め硬化させた後にその上に発砲ウレタン又はコンクリートを僅かずつ打設し養生させながら、順次発砲ウレタン又はコンクリートを積層させ原子炉圧力容器と原子炉圧力容器を囲む建屋との間に発砲ウレタン又はコンクリートを充填し建屋内に原子炉圧力容器の上部を固定させ地震時の原子炉圧力容器倒壊対策を行う。
【請求項2】
原子炉圧力容器を取り囲むコンクリートは十分な放射線の遮蔽性能を有するが、原子炉圧力容器の倒壊対策を行う作業員が近づくことが困難な場合、建屋の外部からボーリングを行い、ボーリング管を通し発砲ウレタン及びコンクリートを注入する。
【請求項3】
原子炉圧力容器の上部と周囲の建屋の間にコンクリートを充填し拘束させ原子炉圧力容器の倒壊対策を行っても、原子炉圧力容器の地震力を受ける建屋側が損傷し、十分な耐力がない場合、建屋の外部からボーリングを行ったボーリング管を地盤から補強する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎を損傷した原子炉圧力容器の倒壊対策である。
【背景技術】
【0002】
福島第一原子力発電所1号機原子炉圧力容器の基礎であるペデスタル内部を東京電力が調査した所、ペデスタル表面のコンクリートが溶融し内部の鉄筋が剥き出しになり、耐震性能が損なわれている。原子炉圧力容器の倒壊対策が求められる。
【先行技術文献】
【0003】
特になし。
【特許文献】
【0004】
特になし。
【発明の概要】
【0005】
炉心溶融により高温の核燃料が原子炉圧力容器を支える基礎のペデスタル内に溜まり、コンクリートが溶融し、鉄筋が剥き出しとなり原子炉の耐震性能が失われた場合、原子炉圧力容器の上部に地震時振れ止めの働きをするスタビライザ上部に原子炉圧力容器を取り囲む壁に高さ断面放射状にボーリングを複数個所明けそのボーリング管に壁外側から発砲ウレタンを注入しながらスタビライザ上面に敷き詰め硬化させた後にその上に発砲ウレタンあるいはコンクリートを僅かずつ打設し養生させながら、また発砲ウレタンあるいはコンクリートを積層させ原子炉圧力容器と原子炉圧力容器を囲む建屋との間に発砲ウレタンあるいはコンクリートを充填し建屋内に原子炉圧力容器の上部を固定させ地震時の原子炉圧力容器の倒壊対策を行う。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
損傷したペデスタルには使用済み核燃料を主とする燃料デブリが侵食しており強い致死放射線が発するとともに中性子と水素が発生している。
【0007】
侵食した部分を補強すると中性子が集積されやすくなり臨界の危機を迎える。
また侵食した部分を補強すると水素が集積されやすくなり水素爆発の危機を迎える。
【0008】
原子炉圧力容器は冷態状態といえども20℃程度の温度変化が想定され原子炉圧力容器の上部で最大4mm程度伸びがあると想定される。この熱伸び対策を行う必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
原子炉圧力容器は運転時の温度300℃を考慮すると上部で約60mmくらい伸びる。原子炉圧力容器の上部を固定すると熱応力が発生し損傷する。したがって原子炉圧力容器は熱伸びに対して逃げ対策が実施されている。原子炉圧力容器の耐震支持部は下部のペデスタルと上部のスタビライザがある。ペデスタルは岩盤に固定されているが、スタビライザは原子炉圧力容器の熱伸びを逃す仕組みがある。
一方 ペデスタルは底部にインナースカートが挿入されている。このインナースカートは床から1000mm出てペデスタルに挿入されている。インナースカートのウェブ部分は30mmで直径6200mmのリング状である。炉心溶融後もペデスタルを支えている。
現在、インナースカートの内側のコンクリートは露出しており原子炉圧力容器の転倒力を負担することは期待できない。しかし鉛直力は最大40万t負担する。事故前の原子炉圧力容器とペデスタルは約1500tである。事故後もインナースカートは原子炉圧力容器とペデスタルの鉛直荷重は負担できる。しかし地震時に発生する転倒力は負担できない。
他方 今後 原子炉圧力容器内の核燃料はほとんど放出され水冷され冷温状態が続いており今後原子炉圧力容器が温度変動が20℃を超えることはまずない。現在、スタビライザ位置の原子炉圧力容器の熱伸びは最大で4mm程度であり熱伸び対策を行う積極的に必要はない。したがってスタビライザ部分を固定し原子炉圧力容器の転倒対策が行える。原子炉圧力容器の基礎であるペデスタルを固定するより原子炉圧力容器の上部のスタビライザを固定する方がはるかに効果的な原子炉圧力容器の転倒対策になる。
原子炉圧力容器と周囲の原子炉建屋には三層の空間が円周状に取り囲んでいる。
一つ目の第一層は原子炉圧力容器と原子炉遮へい壁との空間である。幅は約500mmと想定される。この間にRPVスタビライザがある。二つ目の第二層は原子炉遮へい壁と原子炉格納容器との間の空間である。幅は約500mmと想定される。この間にPCVスタビライザがある。三つ目の第三層は原子炉格納容器と原子炉建屋の空間であり約100mmある。この三層の空間のスタビライザから高さ1mまでコンクリートを充填し原子炉圧力容器と原子炉建屋を固定しようとするものである。施工手順としてはスタビライザのある第一層と第二層は発砲ウレタンをこのスタビライザ上面に注入しウレタンの床をつくり、その上にコンクリートを養生しながら順次打ち込む。第3層はスタビライザがなく発砲ウレタンの床をつくる補強材がないが間隔が100mmしかなく、発砲ウレタンの空気率を調整すれば鉄とウレタンの付着力で床ができる。原子炉圧容器が最大4mm熱変位する可能性がありこれに対策が必要であれば三層に充填するコンクリートは一部、柔らかい発砲ウレタンに変え熱変位を吸収させる
【発明の効果】
【0010】
原子炉圧力容器の耐震性能を得ること。
【0011】
作業員の安全確保が行えること。
【0012】
燃料デブリから発生する中性子が集積されることなく臨界が回避できる。
【0013】
燃料デブリから発生する水素が集積されることなく水素爆発が回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は福島第一原子力発電所1号機原子炉圧力容器の基礎であるペデスタルの損傷状況とスタビライザの位置関係を示している。原子炉圧力容器(RPV)1を支えるペデスタル4に高温の燃料デブリ8が落下し、ペデスタル損傷5が見られる。ペデスタル入口部右側の損傷状況を示した写真を16に示す。鉄筋18が剥き出しとなり、テーブル状の堆積物19がある。事故後、地震経過後の座屈等の変形20が見られない。原子炉圧力容器(RPV)1は原子炉遮へい壁6に囲まれその外側に原子炉格納容器(PCV)2あり、さらにその外側に原子炉建屋3がある。原子炉格納容器(PCV)2と原子炉建屋3との間に隙間9があり、約10cmとされている。原子炉圧力容器(RPV)1の上部はRPVの転倒に繋がる水平方向の地震力13はスタビライザ7が支持にされている。スタビライザ7はスタビライザ配置イメージ10の通り原子炉遮へい壁6を境にPCVスタビライザ11とRPVスタビライザ12から成る。PCVスタビライザ11は地震時にPCVと原子炉遮蔽壁を水平方向14の拘束方向18に拘束する。RPVスタビライザ11は地震時にRPVと原子炉遮蔽壁を水平方向15の拘束方向18に拘束する。
【
図2】
図2はペデスタルの水平及び鉛直断面図である。ペデスタル4は底部にインナースカート23が挿入されている。このインナースカート23はペデスタル4の床から1000mm出てペデスタル4に挿入されている。インナースカートのウェブ部分は幅30mmで直径6200mmのリング状である。炉心溶融後もペデスタル4を支えている。現在、インナースカート23の内側のコンクリートは露出しており原子炉圧力容器の転倒力を負担することは期待できない。しかし鉛直力は最大40万t負担できる。事故前の原子炉圧力容器とペデスタルは約1500tである。事故後もインナースカートはペデスタルを支えており原子炉圧力容器とペデスタルの鉛直荷重を負担できる。しかしインナースカートの内側のコンクリートが剥離しているので地震時に発生する転倒力は負担できない。
【
図3】
図3はペデスタルが損傷した場合原子炉圧力容器の耐震補強策である。原子炉圧力容器(RPV)1上部に地震時振れ止めの働きをするスタビライザ7上部の高さに合わせて原子炉圧力容器(RPV)1を取り囲む壁に断面放射状にボーリングを複数個所明けそのボーリング管に原子炉建屋3の壁外側から原子炉圧力容器(RPV)1と原子炉遮へい壁6の間、原子炉遮へい壁6と原子炉格納容器(PCV)2の間及び原子炉格納容器(PCV)2と原子炉建屋3の間にそれぞれ、発砲ウレタン21を注入しながらスタビライザ7上面に発砲ウレタン21を敷き詰め硬化させた後にその上にコンクリート22または発砲ウレタンを僅かずつ打設し養生させながら、順次コンクリート22または発砲ウレタン21を積層させ原子炉と原子炉を囲む建屋との間にコンクリート22または発砲ウレタン21を充填し原子炉建屋3内に原子炉圧力容器(RPV)1を固定させ地震時における原子炉圧力容器の倒壊対策を行う。
【産業上の利用可能性】
【0015】
特になし
【符号の説明】
【0016】
1.原子炉圧力容器(RPV)
2.原子炉格納容器(PCV)
3.原子炉建屋
4.ペデスタル
5.ペデスタル損傷範囲
6.原子炉遮へい壁
7.スタビライザ
8.燃料デブリ
9.PCVと原子炉建屋その隙間
10. スタビライザ配置イメージ
11. PCVスタビライザ
12. RPVスタビライザ
13. RPVの転倒に繋がる水平方向の地震力
14. PCVと原子炉遮蔽壁を水平方向に拘束
15. RPVと原子炉遮蔽壁を水平方向に拘束
16. ペデスタル開口近傍右側
17. 拘束方向
18. 鉄筋
19. テーブル状の堆積物
20. 事故後、地震経過後の座屈等の変形が見られない
21. 発砲ウレタン
22. コンクリート
23. インナースカート
24. 基礎
25. ドライウェル
26. ドライウェルスカート
27. 床ドレンサンプ