(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152579
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】セルおよび電子機器
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20241018BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20241018BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20241018BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20241018BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20241018BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20241018BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20241018BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/58
H01M4/136
H01M4/13
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/587
H01M4/38 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023210709
(22)【出願日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】202310407390.3
(32)【優先日】2023-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社AESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】曲 楊▲ルー▼
(72)【発明者】
【氏名】徐 永剛
(72)【発明者】
【氏名】曹 玉浩
(72)【発明者】
【氏名】張 曉兵
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ04
5H029HJ19
5H050AA08
5H050AA15
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB11
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA19
(57)【要約】
【目的】セルおよび電子機器を提供する。
【解決手段】セルおよび電子機器において、第1正極フィルムおよび第2正極フィルムは、それぞれ正極集電体の2つの対向する表面に配置される。第2正極活物質のグラムあたりの容量は、第1正極活物質のグラムあたりの容量よりも大きい。第1負極フィルムおよび第2負極フィルムは、負極集電体の2つの対向する表面に配置される。OI
2-OI
1>5であり、OI
2は、第2負極フィルムのOI値であり、OI
1は、第1負極フィルムのOI値である。セル内で正極と負極が合理的にマッチングされるため、セルの全体的なエネルギー密度および容量を最大限に生かすことができ、同時に、安全性も考慮することができる
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルの厚さ方向に沿って交互に配置された正極板および負極板を備え、正極板と負極板の間にセパレータが設けられたセルであって、
前記正極板が、正極集電体、第1正極フィルム、および第2正極フィルムを含み、前記第1正極フィルムおよび前記第2正極フィルムが、それぞれ前記正極集電体の2つの対向する表面に配置され、前記第1正極フィルムが、リン酸塩材料を含む第1正極活物質を含み、前記第2正極フィルムが、前記第1正極活物質のグラムあたりの容量よりも大きいグラムあたりの容量を有する第2正極活物質を含み、
前記負極板が、負極集電体、第1負極フィルム、および第2負極フィルムを含み、前記第1負極フィルムおよび前記第2負極フィルムが、それぞれ負極集電体の2つの対向する表面に配置され、前記第1負極フィルムが、第1負極活物質を含み、前記第2負極フィルムが、第2負極活物質を含み、OI2-OI1>5を満たし、OI2が、前記第2負極フィルムのOI値であり、OI1が、前記第1負極フィルムのOI値である、セル。
【請求項2】
前記第1正極フィルムが、前記セパレータを介して前記第2負極フィルムに隣接しており、前記第2正極フィルムが、前記セパレータを介して前記第1負極フィルムに隣接している、請求項1に記載のセル。
【請求項3】
前記第1正極フィルムと前記第2正極フィルムの厚さ比が、(1.1~2.5):1である、請求項1に記載のセル。
【請求項4】
前記第1正極活物質および前記第2正極活物質が、
a.前記リン酸塩材料が、リチウム鉄リン酸塩および/またはリチウムマンガン鉄リン酸塩であることと、
b.前記第2正極活物質が、リチウムマンガン酸塩、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸塩、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、およびリチウム過剰のリチウムマンガン系材料のうちの1つ以上を含むことと、
c.0.1Cの電流密度における前記第1正極活物質のグラムあたりの放電容量が、127Ah/g~160mAh/gであることと、
d.0.1Cの電流密度における前記第2正極活物質のグラムあたりの放電容量が、180Ah/g~210mAh/gであることと、
の条件のうちの1つ以上を満たす、請求項1に記載のセル。
【請求項5】
前記第1正極活物質および前記第2正極活物質が、
e.前記第1正極フィルムの質量に基づいて、前記第1正極活物質の質量含有率が、92%~97%であることと、
f.前記2正極フィルムの質量に基づいて、前記第2正極活物質の質量含有率が、94%~98%であることと、
g.前記第2正極活物質の質量含有率が、前記第1正極活物質の質量含有率よりも大きいことと、
の条件のうちの1つ以上を満たす、請求項1に記載のセル。
【請求項6】
前記第1負極フィルムおよび前記第2負極フィルムが、
a.前記第1負極フィルムのOI値OI1が、2~15であることと、
b.前記第2負極フィルムのOI値OI2が、15~50であることと、
c.OI2-OI1が、5~15であることと、
の条件のうちの1つ以上を満たす、請求項1に記載のセル。
【請求項7】
前記第1負極活物質および前記第2負極活物質が、それぞれ独立して、黒鉛およびシリコン材料のうちのいずれか1つまたは両方を含む、請求項1に記載のセル。
【請求項8】
前記第1負極フィルムの厚さおよび前記第2負極フィルムの厚さが、
a.前記第1負極フィルムの厚さと前記第2負極フィルムの厚さが、互いに同じであるか、または異なることと、
b.前記第1負極フィルムおよび前記第2負極フィルムの厚さが、50μm~100μmであることと、
の条件のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1に記載のセル。
【請求項9】
前記第1負極フィルムの質量に基づいて、前記第1負極活物質の質量含有率が、93%~98%であり、
前記第2負極フィルムの質量に基づいて、前記第2負極活物質の質量含有率が、95%~98.5%である、請求項1に記載のセル。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のセルを含む、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルおよび電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2021年、中国における新エネルギー車の販売が330万台を超え、2022年には、中国における新エネルギー市場の年間総販売台数が550万台を超えた。その大部分は、リチウムイオン電池を採用している。世界的には、新エネルギー車の急速な成長について一致した意見があり、リチウムイオン電池の開発は、黄金時代に入っている。
【0003】
近年、リチウムイオン電池が急速に発展し、その間、大部分の性能指標が基本的に改善された。現在、エネルギー密度、安全性、およびコストは、主なセル供給業者にとって最も関心のある課題となっている。
【0004】
しかしながら、従来のリチウム鉄リン酸塩パワーセルの重量エネルギー密度は、一般的に、160Wh/kg~190Wh/kgである。リチウム鉄リン酸塩と類似する構造およびエネルギー貯蔵メカニズムを有するリチウムマンガン鉄リン酸塩は、理論的な容量がリチウム鉄リン酸塩と同等であり、より高い電圧プラットフォームを有するため、より高いエネルギー密度を提供することができるが、それでも200Wh/kgを超えることは難しい。三元系リチウムイオン電池は、エネルギー密度が比較的高いが、高価格および熱安全性が消費者をためらわせる。したがって、業界では、三元系正極、リチウム過剰のリチウムマンガン系正極などの高エネルギー密度正極材料と共に、リン酸塩正極材料を使用することを選択している。
【0005】
一般的なリン酸塩正極および三元系材料は、スラリー内で混合することによって使用される。リン酸塩は、導電性が低いため、より多くの導電剤を必要とする。また、比表面積が大きいため、より多くのバインダーが必要である。結果として、電極板中の主成分の比率が低くなるため、セルの全体的なエネルギー密度に影響を与える。同時に、イオン伝導性および電子伝導性が低いリン酸塩正極材料は、三元系材料の表面に吸着する可能性があるため、三元系材料の容量性能に影響を与える。
【0006】
また、リチウム鉄リン酸塩、リチウムマンガン鉄リン酸塩、三元系正極材料、リチウム過剰のリチウムマンガン系材料などの材料は、それぞれ適した負極グラファイト材料を有する。混合された正極を使用する場合、グラファイトの選択に新たな課題を提起することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先行技術における二次電池の正極材料と負極材料のマッチングの困難さ、およびそれがセルの全体的なエネルギー密度と容量性能に与える影響を解決するために、本発明は、セルおよび電子機器を提供する。本発明のセルは、正極と負極が合理的にマッチングされるため、セルの全体的なエネルギー密度および容量の性能を最大限に生かすことができ、同時に、安全性を考慮することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、主に、下記の技術方案により上記の技術課題を解決する。
【0009】
第1の態様によれば、本発明は、セルの厚さ方向に沿って交互に配置された正極板および負極板を含むセルを提供し、正極板と負極板の間には、セパレータが設けられる。正極板は、正極集電体、第1正極フィルム、および第2正極フィルムを含み、第1正極フィルムおよび第2正極フィルムは、それぞれ正極集電体の2つの対向する表面に配置される。第1正極フィルムは、リン酸塩材料を含む第1正極活物質を含み、第2正極フィルムは、第1正極活物質のグラムあたりの容量よりも大きいグラムあたりの容量を有する第2正極活物質を含む。負極板は、負極集電体、第1負極フィルム、および第2負極フィルムを含み、第1負極フィルムおよび第2負極フィルムは、それぞれ負極集電体の2つの対向する表面に配置される。第1負極フィルムは、第1負極活物質を含み、第2負極フィルムは、第2負極活物質を含み、OI2-OI1>5を満たす。ここで、OI2は、第2負極フィルムのOI値であり、OI1は、第1負極フィルムのOI値である。
【0010】
第2の態様によれば、本発明は、さらに、上述したセルを含む電子機器を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の肯定的で進歩的な効果は、以下の通りである。本発明は、異なる負極組成物に対して異なる正極組成物を選択することにより、混合システムにおけるマッチングを最大限に生かし、高エネルギー密度、高安全性、および低コストの組み合わせを実現する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例1~実施例2において作製されたセルの概略的構造図である(1:負極集電体;2:正極集電体;4:第2正極フィルム;5:第1正極フィルム;6:第2負極フィルム;7:第1負極フィルム)。
【
図2】本発明の実施例1~実施例2において作製されたセルの簡略化された構造図である(1:負極集電体;2:正極集電体;3:セパレータ;4:第2正極フィルム;5:第1正極フィルム;6:第2負極フィルム;7:第1負極フィルム)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下のテキストにおいて、本発明をより詳細に説明し、本発明をより理解しやすくする。理解すべきこととして、本明細書および特許請求の範囲において使用される単語または用語は、一般的な辞書で定義されている意味を有するものと解釈すべきではない。さらに理解すべきこととして、単語または用語は、発明者がその単語または用語の意味を適切に定義し、本発明を最も良く解釈することのできる原則に基づいて、関連する技術的文脈における意味および本発明の技術的概念と一致する意味を有するものと解釈すべきである。
【0014】
セル
【0015】
本発明の第1の態様に基づくセルにおいて、
【0016】
正極の2つの表面は、それぞれリン酸塩材料および高密度活性物質を採用し、それぞれ一対一の関係で、負極の高エネルギー密度フィルムおよび高速充電高動力学フィルムに対応する。正極と負極は、互いにマッチングし、エネルギー密度と高速充電性能のバランスを実現する。
【0017】
正極板
【0018】
本発明において、第1正極フィルムは、セパレータを介して第2負極フィルムに隣接しており、第2正極フィルムは、セパレータを介して第1負極フィルムに隣接している。
【0019】
本発明において、第1正極活性物質として、リン酸塩材料は、本分野において一般的に使用されている正極リン酸塩材料であってもよく、好ましくは、リチウム鉄リン酸塩および/またはリチウムマンガン鉄リン酸塩である。リン酸塩材料を使用することによって、システムコストを削減し、安全性能を向上させることができる。
【0020】
好ましくは、第1正極フィルムの質量に基づいて、リン酸塩材料の質量含有率は、92%~97%であり、例えば、94%または95%である。
【0021】
好ましくは、リン酸塩材料の0.1Cの電流密度におけるグラムあたりの放電容量は、160mAh/gまたはそれ以下であり、より好ましくは、127mAh/g~160mAh/gであり、例えば、141mAh/gまたは157mAh/gである。
【0022】
本発明において、第2正極活性物質は、本分野において一般的に使用されている高エネルギー密度活性物質であり、それを使用することによって、電池のエネルギー密度および低温サイクリング性能を向上させることができる。
【0023】
好ましくは、第2正極活性物質は、リチウムマンガン酸塩、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸塩、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、およびリチウム過剰のリチウムマンガン系材料のうちの1つ以上を含む。
【0024】
第2正極活性物質がリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物またはリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物を含むとき、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物またはリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物において、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物またはリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の質量に基づいて、Niの質量含有率は、60%またはそれ以上である。
【0025】
好ましくは、第2正極フィルムの質量に基づいて、第2正極活性物質の含有量は、94%~98%であり、例えば、96%である。
【0026】
好ましくは、第2正極活性物質の0.1Cの電流密度におけるグラムあたりの放電容量は、180mAh/g以上であり、より好ましくは180mAh/g~210mAh/gであり、例えば、198mAh/gである。
【0027】
いくつかの好ましい実施形態において、第2正極活性物質の含有量は、第1正極活性物質の含有量よりも大きい。
【0028】
いくつかの好ましい実施形態において、第1正極活性物質は、リチウムマンガン鉄リン酸塩であり、第2正極活性物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物である。
【0029】
リチウムマンガン鉄リン酸塩は、好ましくは、LiMn0.6Fe0.4PO4であり、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物は、好ましくは、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2である。
【0030】
いくつかの好ましい実施形態において、第1正極活性物質は、リチウム鉄リン酸塩であり、第2正極活性物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物である。
【0031】
リチウム鉄リン酸塩は、好ましくは、LiFePO4であり、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物は、好ましくは、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2である。
【0032】
本発明において、第1正極フィルムと第2正極フィルムの厚さ比は、好ましくは、(1.1~2.5)であり、例えば、1.98:1または1.63:1である。
【0033】
本発明において、第1正極フィルムの厚さは、50μm~120μmであり、好ましくは、60μm~100μmであり、例えば、76μmまたは91μmである。
【0034】
本発明において、第2正極フィルムの厚さは、30μm~90μmであり、好ましくは、40μm~70μmであり、例えば、47μmである。
【0035】
本発明において、マッチングした容量を有する負極材料を必要とする異なる容量の正極活性物質が選択される。適切な厚さ比が選択されたとき、負極の前面と背面の厚さ差が小さくなるように制御することができるため、負極の加工に有利である。
【0036】
本発明において記載されている厚さは、以下の方法に基づいて計算される。
【0037】
第1正極フィルムの厚さをh1、第1正極フィルムの特定放電容量をx1、および第2負極フィルムの特定放電容量をx2とし、第1正極活性物質の割合をy1、第2負極活性物質の割合をy2、圧延後の第1正極フィルムの密度をz1、および圧延後の第2負極フィルムの密度をz2とし、N/Pをa1とする。その場合、第2負極フィルムの厚さh2は、以下の式で計算される。
【0038】
【0039】
第2正極フィルムの厚さをh3、第2正極フィルムの特定放電容量をx3、および第1負極フィルムの特定放電容量をx4とし、第2正極活性物質の割合をy3、第1負極活性物質の割合をy4、圧延後の第2正極フィルムの密度をz3、および圧延後の第1負極フィルムの密度をz4とし、N/Pをa2とする。その場合、第1負極フィルムの厚さh4は、以下の式で計算される。
【0040】
【0041】
N/Pは、1.02~1.14であり、a1≧a2である。N/Pは、「単位面積あたりの負極の容量/単位面積あたりの正極の容量」を表し、一般的には、充電容量の比率である。
【0042】
z3>z1、およびz3-z1>0.4g/cm3である。正極フィルムの圧延工程では、一定の圧力およびロールギャップ幅を設計する必要があるため、第1正極フィルムの密度z1と第2正極フィルムの密度z3は、異なる。
【0043】
いくつかの特定の実施形態において、第1正極フィルムの厚さは、50μm~120μmであり、第1正極フィルムの密度は、2.2g/cm3~2.6g/cm3であり、第2正極フィルムの厚さは、30μm~90μmであり、第2正極フィルムの密度は、3.3g/cm3~3.7g/cm3である。
【0044】
本発明において、第1正極フィルムは、一般的に、第1正極導電剤、第1正極バインダー、および第1正極分散剤をさらに含み、第2正極フィルムは、一般的に、第2正極導電剤、第2正極バインダー、および第2正極分散剤をさらに含む。
【0045】
第1正極導電剤および第2正極導電剤は、導電性であり、電池内で化学変化を引き起こさない限り、特に限定されない。具体例としては、天然黒鉛または人工黒鉛などの黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、熱カーボンブラック、およびカーボンファイバーなどの炭素系材料、銅、ニッケル、アルミニウム、および銀などの金属粉末または金属繊維、酸化亜鉛ウィスカーおよびチタン酸カリウムウィスカーなどの導電性ウィスカー、二酸化チタンなどの導電性金属酸化物、またはポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー等が含まれる。
【0046】
第1正極フィルムにおいて、第1導電剤の含有量は、好ましくは、1%~3%であり、例えば、2%である。ここで、百分率は、第1正極フィルムの質量に対する第1導電剤の質量の百分率である。
【0047】
第2正極フィルムにおいて、第2導電剤の質量比は、好ましくは、0.5%~2%であり、例えば、1.5%である。ここで、百分率は、第2正極フィルムの質量に対する第2導電剤の質量の百分率である。
【0048】
第1正極バインダーおよび第2正極バインダーは、正極活物質粒子間の結合および正極活物質と正極集電体の接着を強化するために用いられる。それらの種類は、特に限定されず、バインダーの具体例としては、フッ化ポリビニリデン(polyvinylidene fluoride, PVDF)、フッ化ポリビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene, PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose, CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(ethylene-propylene-diene monomer, EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン-ブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber, SBR)、フッ素ゴム、またはその各共重合体が含まれ、上記のうちの任意の1つ、あるいは2つ以上の混合物を使用することができる。
【0049】
第1正極フィルムにおいて、第1バインダーの含有量は、好ましくは、1.5%~4%であり、例えば、3.5%である。ここで、百分率は、第1正極フィルムの質量に対する第1バインダーの質量の百分率である。第1正極フィルムにおいて導電剤およびバインダーの比率を増安ことにより、リン酸塩材料の電気化学的性能を向上させることができる。
【0050】
第2正極フィルムにおいて、第2バインダーの質量比は、好ましくは、0.5%~2%である。ここで、百分率は、第2正極フィルムの質量に対する第2バインダーの質量の百分率である。
【0051】
好ましくは、第2正極バインダーの含有量は、第1正極バインダーの含有量よりも低い。
【0052】
第1分散剤および第2分散剤は、本分野において一般的に使用されている活性物質の分散均一性を改善することのできる物質であってもよい。
【0053】
第1正極フィルムにおいて、第1分散剤の含有量は、0%~1%であってもよい。ここで、百分率は、第1正極フィルムの質量に対する第1分散剤の質量の百分率である。
【0054】
第2正極フィルムにおいて、第2分散剤の含有量は、0%~1%であってもよい。ここで、百分率は、第2正極フィルムの質量に対する第2分散剤の質量の百分率である。
【0055】
本発明において、正極板の作製方法は、第1正極フィルムの原料混合物と第2正極フィルムの原料混合物をそれぞれ正極集電体の2つの表面に塗布して、正極板を得るステップを含む。
【0056】
本発明において、表面密度は、一般的に、単位面積あたりに塗布される原料混合物の質量を指し、1つの表面を指す。
【0057】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、第1正極フィルムおよび第2正極フィルムの表面密度は、15mg/cm2~32mg/cm2であってもよく、好ましくは、20mg/cm2~25mg/cm2であり、例えば、22mg/cm2である。
【0058】
いくつかの好ましい実施形態において、第2正極フィルムの表面密度は、第1正極フィルムの表面密度よりも小さい。
【0059】
いくつかの好ましい実施形態において、塗布中の第2正極フィルムの原料組成物の表面密度は、塗布中の第1正極フィルムの原料組成物の表面密度の60%~95%である。
【0060】
負極板
【0061】
本発明において、OI値は、配向度を指し、XRDによって測定されたデータに基づいて計算することができる。OI値は、負極フィルムのX線回折スペクトル中の004特性ピークのピーク面積と、負極フィルムのX線回折スペクトル中の110特性ピークのピーク面積の比率である。
【0062】
本発明において、OI1=C004/C110であり、ここで、C004は、第1負極フィルムのX線回折スペクトル中の004特性回折ピークのピーク面積であり、C110は、第1負極フィルムのX線回折スペクトル中の110特性回折ピークのピーク面積である。
【0063】
OI2=C’004/C’110であり、ここで、C’004は、第2負極フィルムのX線回折スペクトル中の004特性回折ピークのピーク面積であり、C’110は、第2負極フィルムのX線回折スペクトル中の110特性回折ピークのピーク面積である。
【0064】
本発明において、XRDは、ブルカー(Bruker)D8A25 X線回折計を用いて測定される。
【0065】
負極フィルムのOI値の大きさは、負極フィルム内の負極活物質粒子の積層配向度を反映することができるため、サイクリング過程における負極板の膨張に直接影響を与える。充電過程において、リチウムイオンは、正極活性物質から脱離して、負極活性物質に挿入されるため、負極フィルムのOI値は、リチウムイオン電池の充電速度およびサイクル寿命に大きな影響を与える。
【0066】
OI2とOI1の差が5よりも大きいとき、負極板の2つの表面上の異なる活性物質の高エネルギーおよび高速度特性を十分に利用することができる。具体的に説明すると、高エネルギー活性物質は、グラムあたりの容量が高く、配向度が高いという利点を有するため、エネルギー密度をさらに高めることができる。先行技術では、高OIと低OIを有する活性物質を混合して一緒に使用するが、低OI値を高OIと混合すると、通常、優れたレート能力および高い動力学性能を生み出すことができない。本発明では、高OI値と低OI値を有する活性物質をそれぞれ負極集電体の2つの対向する表面に塗布するため、高動力とエネルギー密度の組み合わせを両立させることができる。
【0067】
いくつかの特定の実施形態において、第1負極フィルムのOI値OI1は、2~15であり、好ましくは、4~10である。
【0068】
いくつかの特定の実施形態において、第2負極フィルムのOI値OI2は、15~50であり、好ましくは、15~40である。
【0069】
いくつかの好ましい実施形態において、OI2-OI1は、5~15であり、例えば、12または14である。
【0070】
本発明において、第1負極活性物質および第2負極活性物質は、それぞれ独立して黒鉛およびシリコン材料のうちの1つまたは2つを含むことができる。黒鉛は、天然黒鉛または人工黒鉛を含み、シリコン材料は、シリコン-カーボン材料またはカーボン-シリコン-酸素材料のうちの少なくとも1つを含む。
【0071】
理解すべきこととして、シリコン-カーボン材料は、シリコン元素と炭素元素の両方を含む材料を指す。例えば、シリコン-カーボン材料は、シリコンナノ結晶粒子が炭素骨格の孔に充填された構造を有する。理解すべきこととして、シリコン-酸素-炭素材料は、シリコン元素、酸素元素、および炭素元素を同時に含む材料を指す。例えば、シリコン-酸素-炭素材料は、シリコンナノ結晶粒子が二酸化シリコンマトリックス内に分散して複合体を形成し、元素炭素が複合体の外表面に包まれた構造を有する。
【0072】
本発明において、第1負極フィルムの質量に基づいて、第1負極活性物質の質量含有率は、93%~98%であり、例えば、96%である。
【0073】
本発明において、第1負極フィルムの質量に基づいて、第1負極フィルムは、さらに、0.2%~1.5%の第1負極導電剤、1%~3%の第1負極バインダー、および0.01%~1.5%の第1負極分散剤を含むことができる。
【0074】
本発明において、第2負極フィルムの質量に基づいて、第2負極活性物質の質量含有率は、好ましくは、95%~98.5%であり、例えば、95%である。
【0075】
いくつかの特定の実施形態において、第1負極活性物質と第2負極活性物質の種類は、互いに同じであり、第1負極活性物質の質量含有率は、第2負極活性物質の質量含有率よりも低い。第1負極活性物質と第2負極活性物質の質量含有率が上記の条件を満たすとき、電池の容量保持率を効果的に改善することができる。
【0076】
本発明において、第2負極フィルムの質量に基づいて、第2負極フィルムは、さらに、0.2%~1.5%の第2負極導電剤、0.5%~2%の第2負極バインダー、および0.01%~1.5%の第2負極分散剤を含むことができる。
【0077】
第1負極導電剤および第2負極導電剤は、電極が良好な充放電性能を有することを保証するために使用される試薬であり、天然黒鉛および人工黒鉛などの黒鉛材料、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、および熱カーボンブラックなどのカーボンブラック材料、カーボンファイバーおよび金属ファイバーなどの導電性繊維、フルオロカーボンパウダー、アルミニウムパウダー、およびニッケルパウダーなどの金属粉末、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー、二酸化チタンなどの導電性金属酸化物、またはポリフェニレン誘導体から選択することができる。
【0078】
第1負極バインダーおよび第2負極バインダーは、活性物質と導電剤の間の結合に役立ち、且つ活性物質と集電体の組み合わせに役立つ成分であり、一般的に、ポリビニリデンジフルオライド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose, CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸(polyacrylic acid, PAA)、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(ethylene-propylene-diene terpolymer, EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン-ブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber, SBR)、フッ素ゴム、およびさまざまな共重合体から選択することができる。
【0079】
本発明において、第1負極フィルムの厚さと第2負極フィルムの厚さは、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
【0080】
いくつかの特定の実施形態において、第2負極フィルムの圧縮密度は、第1負極フィルムよりも大きい。
【0081】
いくつかの特定の実施形態において、第2負極フィルムのグラムあたりの容量は、第1負極フィルムよりも大きい。
【0082】
いくつかの特定の実施形態において、第2負極フィルムの厚さは、第1負極フィルムよりもわずかに大きい。
【0083】
本発明において、第1負極フィルムの厚さは、50μm~100μmであってもよく、好ましくは、50μm~60μmであり、例えば、52μmである。
【0084】
本発明において、第2負極フィルムの厚さは、50μm~100μmであってもよく、好ましくは、50μm~60μmであり、例えば、54μmである。
【0085】
いくつかの特定の実施形態において、第1正極活物質は、リチウムマンガン鉄リン酸塩であり、第2正極活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物であり、第1負極活物質は、人工黒鉛であり、第2負極活物質は、人工黒鉛である。ここで、OI2-OI1は、10である。
【0086】
いくつかのさらに特定の実施形態において、第1正極活物質は、リチウムマンガン鉄リン酸塩であり、第1正極フィルムの厚さは、91μmであり、第2正極活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物であり、第2正極フィルムの厚さは、47μmであり、第1負極活物質は、人工黒鉛であり、第1負極フィルムの厚さは、52μmであり、第2負極活物質は、人工黒鉛であり、第2負極フィルムの厚さは、54μmであり、OI2-OI1は、10である。
【0087】
いくつかの特定の実施形態において、第1正極活物質は、リチウム鉄リン酸塩であり、第2正極活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物であり、第1負極活物質は、人工黒鉛であり、第2負極活物質は、人工黒鉛である。ここで、OI2-OI1は、12である。
【0088】
いくつかのさらに特定の実施形態において、第1正極活物質は、リチウム鉄リン酸塩であり、第1正極フィルムの厚さは、76μmであり、第2正極活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物であり、第2正極フィルムの厚さは、47μmであり、第1負極活物質は、人工黒鉛であり、第1負極フィルムの厚さは、52μmであり、第2負極活物質は、人工黒鉛であり、第2負極フィルムの厚さは、54μmであり、OI2-OI1は、12である。
【0089】
本発明のいくつかの特定の実施形態において、第1負極フィルムおよび第2負極フィルムの表面密度は、7mg/cm2~20mg/cm2であってもよく、好ましくは、8mg/cm2~12mg/cm2であり、例えば、10mg/cm2である。
【0090】
本発明において、負極板の作製方法は、第1負極フィルムの原料混合物と第2負極フィルムの原料混合物をそれぞれ負極集電体の2つの対向する表面に塗布して、負極板を得るステップを含む。
【0091】
本発明において、セルの作製方法は、本分野における従来の方法を採用することができ、一般的に、正極板と負極板を圧延(rolling)およびスリット(slitting)加工した後、切断、積層、または巻き取りプロセスによって正極板、セパレーター、および負極板を順番に積み重ねて、セルを形成するステップを含む。
【0092】
電子機器
【0093】
本発明の第3の態様に基づく電子機器は、上述したセルを含む。
【0094】
例示的には、本発明の電子機器は、モバイルデバイス(例えば、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノート型パソコン、ビデオカメラ、携帯型プリンター/コピー機など)、電気自動車(例えば、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶および衛星、エネルギー貯蔵システム、バックアップ電源などであってもよいが、本発明はこれに限定されない。
【0095】
本分野の一般的な知識に基づいて、上記の好ましい条件を任意の方法で組み合わせることにより、本発明のより優れた例を得ることができる。下記の例に基づいて、本発明をさらに説明するが、本発明は、記載された例の範囲に限定されるものではない。下記の例において特定の条件が記述されていない任意の実験方法は、従来の方法および条件に基づいて、または製品取扱説明書に基づいて、選択することができる。
【0096】
実施例1
【0097】
(1)正極板の作製
【0098】
第1正極フィルムの原料混合物A1の作製:リチウムマンガン鉄リン酸塩(LiMn0.6Fe0.4PO4)、導電剤SP、およびバインダーPVDFを95.5:2:2.5の質量比で混合し、攪拌機で十分に攪拌した後、固形分含有率が55%の溶媒N-メチルピロリドンを添加して攪拌し、均一に混合して第1正極スラリーA1を作製した。0.1Cの電流密度におけるLiMn0.6Fe0.4PO4のグラムあたりの放電容量は、141mAh/gであった。
【0099】
第2正極フィルムの原料混合物A2の作製:LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、導電剤SP、およびバインダーPVDFを97:1.5:1.5の質量比で混合し、攪拌機で十分に攪拌した後、60%の固形分含有率で溶媒N-メチルピロリドンを添加し、攪拌して均一に混合することにより、第2正極スラリーA2を作製した。0.1Cの電流密度におけるLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2のグラムあたりの放電容量は、198mAh/gであった。
【0100】
第1正極フィルムの原料混合物A1および第2正極フィルムの原料混合物A2を22mg/cm2の表面密度で集電体上に均一に塗布した後、コーティング乾燥機を用いて処理し、指定されたサイズの正極板を作製した。
【0101】
(2)負極板の作製
【0102】
第1負極フィルムの原料混合物B1の作製:人工黒鉛、導電剤SP、バインダーSBR+PAA、および分散剤CMCを96:1:2:1の質量比で混合し、攪拌機で十分に攪拌した後、固形分含有率が58%の溶媒N-メチルピロリドンまたは無菌水を添加して攪拌し、均一に混合して第1負極スラリーB1を作製した。
【0103】
第2負極フィルムの原料混合物B2の作製:人工黒鉛、導電剤SP、バインダーSBR+PAA、および分散剤CMCを95:1.5:2.5:1の質量比で混合し、攪拌機で十分に攪拌した後、固形分含有率が56%の溶媒N-メチルピロリドンまたは無菌水を添加して攪拌し、均一に混合して第2負極スラリーB2を作製した。
【0104】
第1負極フィルムの原料混合物B1および第2負極フィルムの原料混合物B2を10 mg/cm2の表面密度で集電体の2つの表面に均一に塗布して、第1負極フィルムおよび第2負極フィルムを作製した後、コーティング乾燥機を用いて処理し、指定されたサイズの負極板を作製した。第1負極フィルムの配向度OI1は、8であり、第2負極フィルムの配向度OI2は、18であった。
【0105】
(3)電解液の作製:
【0106】
有機溶媒は、エチレンカーボネート(ethylene carbonate, EC)、エチルメチルカーボネート(ethyl methyl carbonate, EMC)、およびジエチルカーボネート(diethyl carbonate, DEC)の混合物であり、EC、EMC、およびDECの体積比は、20:20:60であった。湿度が<10ppmのアルゴン雰囲気グローブボックス内で、十分に乾燥したリチウム塩(LiPF6)を上述した有機溶媒中に溶解して、均一に混合した後、LiPF6の濃度が1mol/Lの電解液を得た。
【0107】
(4)セパレータの作製:厚さが12μmのポリプロピレン製セパレータを選択した。
【0108】
(5)セルおよびリチウムイオン電池の組み立て:正極板、負極板、およびセパレータに対して圧延-スリット加工および切断-積層加工を行い、セルを作製した。その後、ベアセル(bare cell)JRをシェル内に配置して、湿度が450ppmまたはそれ以下となるように十分に焼成し、電解液注入、電池化成、シーリング、検査を含む工程を行って、角型硬質殻リチウムイオン電池を作製した。組み立てられたセルの構造は、
図1および
図2に示した通りであり、負極集電体1の対向する2つの表面には、それぞれ第1負極フィルム7および第2負極フィルム6が設けられ、正極集電体2の対向する2つの表面には、それぞれ第1正極フィルム5および第2正極フィルム4が設けられている。また、第1正極フィルム5および第2負極フィルム6は、セパレータ3を介して隣接しており、第2正極フィルム4および第1負極フィルム7は、セパレータ3を介して隣接している。
【0109】
実施例2
【0110】
第1正極フィルムの原料混合物中の第1正極活物質をリチウム鉄リン酸塩(LiFePO4)に置き換えた。ここで、0.1Cの電流密度におけるLiFePO4のグラムあたりの放電容量は、157mAh/gであった。
【0111】
第1負極フィルムの配向度OIは、8であり、第2負極フィルムの配向度OIは、20であった。
【0112】
他の配合成分および作製方法は、実施例1と同じであった。
【0113】
比較例1
【0114】
実施例1の第1正極フィルムの原料混合物A1を塗布することによって、正極板の第1正極フィルムおよび第2正極フィルムの両方を作製した。
【0115】
実施例1の第2負極フィルムの原料混合物B2を塗布することによって、負極板の第1負極フィルムおよび第2負極フィルムの両方を作製し、第1負極フィルムおよび第2負極フィルムの配向度OIは、いずれも18であった。
【0116】
他の配合成分および作製方法は、実施例1と同じであった。
【0117】
比較例2
【0118】
実施例1の第2正極フィルムの原料混合物A2を塗布することによって、正極板の第1正極フィルムおよび第2正極フィルムの両方を作製した。
【0119】
実施例1の第1負極フィルムの原料混合物B1を塗布することによって、負極板の第1負極フィルムおよび第2負極フィルムの両方を作製し、第1負極フィルムおよび第2負極フィルムの配向度OIは、いずれも8であった。
【0120】
他の配合成分および作製方法は、実施例1と同じであった。
【0121】
比較例3
【0122】
実施例1の第2負極フィルムの原料混合物B2を塗布することによって、第1負極フィルムを作製し、実施例1の第1負極フィルムの原料混合物B1を塗布することによって、第2負極フィルムを作製した。第1負極フィルムの配向度OIは、18であり、第2負極フィルムの配向度OIは、8であった。
【0123】
他の配合成分および作製方法は、実施例1と同じであった。
【0124】
比較例4
【0125】
実施例1の第2負極フィルムの原料混合物B2を塗布することによって、第1負極フィルムを作製し、第1負極フィルムの配向度OIは、18であった。
【0126】
第2負極フィルムの配向度OIは、20であった。
【0127】
他の配合成分および作製方法は、実施例1と同じであった。
【0128】
比較例5
【0129】
実施例1の第1正極フィルムの原料混合物A1を塗布することによって、正極板の第1正極フィルムおよび第2正極フィルムの両方を作製した。
【0130】
第1負極フィルムの配向度OIは、18であり、第2負極フィルムの配向度OIは、7であった。
【0131】
他の配合成分および作製方法は、実施例1と同じであった。
【0132】
比較例6
【0133】
実施例1の第2負極フィルムの原料混合物B2を塗布することによって、負極板の第1負極フィルムおよび第2負極フィルムの両方を作製し、第1負極フィルムおよび第2負極フィルムの配向度OIは、いずれも18であった。
【0134】
残りは、実施例1と同じであった。
【0135】
実施例1~実施例2および比較例1~比較例6のフィルムの厚さは、表1に示した通りである。
【0136】
【0137】
実証例1
【0138】
実施例1~実施例2および比較例1~比較例6から作製された電池に対し、45℃および1Cの充電または放電電圧の条件の下で、0~1000サイクル後の容量保持率をテストした。結果は、表2に示した通りである。
【0139】
【0140】
【0141】
表2および表3からわかるように、本発明は、正極材料と負極材料を合理的にマッチングさせる。これらのマッチング条件の下で、実施例1および実施例2から作製された電池は、エネルギー密度が高く、サイクリング性能に優れているという利点を有する。具体的に説明すると、エネルギー密度は、246wh/kgまたはそれ以上にまで達することができ、1000サイクル後の容量保持率は、90.32%またはそれ以上になることができる。
【0142】
実施例1と比較例1を比較すると、比較例1は、同じ第1正極フィルムおよび第2正極フィルムを採用し、いずれもリン酸塩正極であり、また、同じ第1負極フィルムおよび第2負極フィルムを採用し、いずれもOI値が高い負極であった。このことからわかるように、比較例1は、実施例1と同等の容量保持率を有していたが、そのエネルギー密度は、実施例1よりも低く、193wh/kgしかなかった。
【0143】
実施例1と比較例2を比較すると、比較例2は、同じ第1正極フィルムおよび第2正極フィルムを採用し、いずれも8系列の高ニッケル三元系正極であり、また、同じ第1負極フィルムおよび第2負極フィルムを採用し、いずれもOI値が低い負極であった。このことからわかるように、比較例2は、正極材料の高エネルギー密度特性を保持していたが、1000サイクル後の容量保持率は、85.22%しかなく、実施例1よりも低かった。
【0144】
実施例1と比較例3を比較すると、比較例3において、第1負極フィルム(低OI値)は、第1正極フィルムに隣接しており、第2負極フィルム(高OI値)は、第2正極フィルムに隣接していた。そのエネルギー密度は、実施例1と同等であったが、そのサイクリング安定性は、実施例1よりも低かった。
【0145】
実施例1と比較例4を比較すると、比較例4において、第1負極フィルムおよび第2負極フィルムは、いずれもOI値が高い負極材料を採用し、OI2-OI1の差は、2であった。その結果、1000サイクル後の容量保持率は、90.1%であり、エネルギー密度は、248wh/kgであった。
【0146】
実施例1と比較例5を比較すると、比較例5において、第1正極フィルムおよび第2正極フィルムは、いずれも同じリン酸塩正極材料を採用した。そのエネルギー密度は、191wh/kgしかなく、1000サイクル後の容量保持率は、89.5%しかなく、いずれも実施例1より低かった。
【0147】
実施例1と比較例6を比較すると、比較例6において、第1負極フィルムおよび第2負極フィルムは、いずれもOI値が高い同じ負極材料を採用し、OI2-OI1の差は、0であった。そのエネルギー密度は、実施例1と同等であったが、そのサイクリング安定性は、実施例1よりも低く、1000サイクル後の容量保持率は、87.62%しかなかった。
【0148】
上記の比較からわかるように、本発明の正極材料と負極材料の間の特別なマッチング関係により、優れたエネルギー密度およびサイクリング性能が生み出されている。
【0149】
実証例2
【0150】
実施例1~実施例2、比較例1、比較例2、および比較例6から作製された電池に対し、45℃および1Cの充電または放電電圧の条件下で、1000回サイクル後にセルの負極を分解し、ICP試験分析を行った。結果は、表4に示した通りである。
【0151】
【0152】
表4からわかるように、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、および比較例6から作製されたセルは、サイクル後のICP試験元素分布も異なっていた。1000サイクル後、負極板上にCoおよびNiが存在したため、その正極に使用された材料がニッケル、コバルト、およびマンガンを含んでいたことを示唆している。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明が提供するセルは、二次電池に適用することができる。
【0154】
上述した具体的な実施形態は、本発明の目的、技術方案、および有益な効果をさらに詳細に説明している。理解すべきこととして、上記の説明は、単なる本発明の具体的な実施形態であり、本発明を限定するためのものではない。本発明の精神および原則の範囲内で行われる任意の修正、同等の置き換え、変更などは、本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0155】
1 負極集電体
2 正極集電体
3 セパレータ
4 第2正極フィルム
5 第1正極フィルム
6 第2負極フィルム
7 第1負極フィルム
【外国語明細書】