(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001526
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】水系現像廃液の処理方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/40 20060101AFI20231227BHJP
G03F 7/00 20060101ALI20231227BHJP
G03F 7/42 20060101ALI20231227BHJP
C02F 1/04 20230101ALI20231227BHJP
【FI】
G03F7/40
G03F7/00 502
G03F7/42
C02F1/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100234
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 晃直
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 亮介
【テーマコード(参考)】
2H196
4D034
【Fターム(参考)】
2H196AA02
2H196LA25
4D034AA20
4D034BA03
4D034CA12
(57)【要約】
【課題】水系現像廃液から、現像促進剤を含む回収液を回収する方法の提供。
【解決手段】水系現像液を使用したフレキソ印刷原版の現像によって生じた水系現像廃液の処理方法であって、
現像残渣と現像促進剤と水とを含む水系現像廃液から、前記現像促進剤と前記水とを含む回収液を回収する工程を含み、
前記現像促進剤が、下記式(A1):
式(A1):R
1O(A
1O)
nR
2
(式中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、炭素数2~6のアルキル基又は炭素数2~6のアルケニル基であり、
A
1は、炭素数2~4のアルキレン基であり、
nは、1~5の整数である)
で表される化合物を含む、
水系現像廃液の処理方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系現像液を使用したフレキソ印刷原版の現像によって生じた水系現像廃液の処理方法であって、
現像残渣と現像促進剤と水とを含む水系現像廃液から、前記現像促進剤と前記水とを含む回収液を回収する工程を含み、
前記現像促進剤が、下記式(A1):
式(A1):R1O(A1O)nR2
(式中、
R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数2~6のアルキル基又は炭素数2~6のアルケニル基であり、
A1は、炭素数2~4のアルキレン基であり、
nは、1~5の整数である)
で表される化合物を含む、
水系現像廃液の処理方法。
【請求項2】
前記回収が、蒸留による回収である、
請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記蒸留が、100hPa以下で実施される、
請求項2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記回収が、前記水系現像廃液の体積を、前記水系現像廃液の回収前の体積を基準として、1/7~1/2倍の範囲に減少させる、
請求項3に記載の処理方法。
【請求項5】
前記水系現像廃液が、界面活性剤を更に含み、
前記界面活性剤が、下記式(B1):
式(B1):RO(AO)pH
(式中、
Rは、炭素数10~20のアルキル基、又はアリール基であり、
Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、
pは、1~50の整数である)
で表される化合物を含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項6】
前記式(B1)において、
Rが、炭素数10~18のアルキル基、又はアリール基であり、
Aが、炭素数2~4のアルキレン基であり、
pが、6~10の整数である、
請求項5に記載の処理方法。
【請求項7】
前記回収液に含まれる前記式(A1)で表される化合物の量が、前記水系現像廃液に含まれる前記式(A1)で表される化合物の量を基準として、25質量%以上61質量%以下である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項8】
前記水系現像廃液が、消泡剤を更に含み、
前記回収液が、前記消泡剤を更に含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項9】
前記消泡剤が、シリコーン化合物を含む、
請求項8に記載の処理方法。
【請求項10】
前記回収液を、フレキソ印刷原版の現像に再利用する工程を更に含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項11】
前記回収液が、水系現像液と混合される、
請求項10に記載の処理方法。
【請求項12】
前記回収液の量が、前記回収液と前記水系現像液との混合液における前記式(A1)で表される化合物の濃度が0.15~0.30質量%の範囲内となるように、調整される、
請求項11に記載の処理方法。
【請求項13】
前記回収液を、現像されたフレキソ印刷版のリンスに再利用する工程を更に含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系現像廃液の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂を有する印刷版は、コンピュータ上で処理された情報を印刷版状に直接描画してレリーフを作製するコンピュータ製版技術(以下、「CTP技術」と称する)により、製版することができる。その中でも、凸版印刷の一種であるフレキソ印刷は、印刷版にゴムや合成樹脂等の柔らかい材質を用いていることから、種々の被刷体に適用可能であるという利点を有している。
【0003】
CTP技術による印刷版(特にフレキソ印刷版)は、感光性樹脂上の赤外線吸収層にレーザー描画を実施し、感光性樹脂層を感光して硬化させ、未硬化部を現像し、得られた版を乾燥させるとともに後露光する、という手順を経ることにより得られる。フレキソ印刷版は、溶剤現像液で未硬化部を溶解現像する溶剤現像、界面活性剤を有する水系現像液で未硬化部を剥離現像する水系現像、又は、印刷原版を加熱して未硬化部を不織布でふき取る熱現像、を実施することによって得られるが、これらの中で溶剤現像及び水系現像を実施すると、それぞれ溶液の廃液が生じる。
【0004】
溶剤現像においては、現像後の溶液を蒸留により回収して再利用することが行われており、水系現像においても、減圧蒸留により回収した水を再利用する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2003/005129号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水系現像液は現像促進剤を含む場合があるが、現像を繰り返すことによって、現像促進剤の濃度が徐々に減少する。これに対し、未使用の水系現像液を継ぎ足すことによって、現像促進剤の濃度を維持することが可能であるが、水系現像液の使用量が増加するという問題が存在する。
【0007】
そこで、本発明は、水系現像廃液から、現像促進剤を含む回収液を回収する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態として、例えば、以下のものを挙げることができる。
[1]
水系現像液を使用したフレキソ印刷原版の現像によって生じた水系現像廃液の処理方法であって、
現像残渣と現像促進剤と水とを含む水系現像廃液から、前記現像促進剤と前記水とを含む回収液を回収する工程を含み、
前記現像促進剤が、下記式(A1):
式(A1):R1O(A1O)nR2
(式中、
R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数2~6のアルキル基又は炭素数2~6のアルケニル基であり、
A1は、炭素数2~4のアルキレン基であり、
nは、1~5の整数である)
で表される化合物を含む、
水系現像廃液の処理方法。
[2]
前記回収が、蒸留による回収である、[1]に記載の処理方法。
[3]
前記蒸留が、100hPa以下で実施される、[2]に記載の処理方法。
[4]
前記回収が、前記水系現像廃液の体積を、前記水系現像廃液の回収前の体積を基準として、1/7~1/2倍の範囲に減少させる、[1]~[3]のいずれかに記載の処理方法。
[5]
前記水系現像廃液が、界面活性剤を更に含み、
前記界面活性剤が、下記式(B1):
式(B1):RO(AO)pH
(式中、
Rは、炭素数10~20のアルキル基、又はアリール基であり、
Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、
pは、1~50の整数である)
で表される化合物を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の処理方法。
[6]
前記式(B1)において、
Rが、炭素数10~18のアルキル基、又はアリール基であり、
Aが、炭素数2~4のアルキレン基であり、
pが、6~10の整数である、[5]に記載の処理方法。
[7]
前記回収液に含まれる前記式(A1)で表される化合物の量が、前記水系現像廃液に含まれる前記式(A1)で表される化合物の量を基準として、25質量%以上61質量%以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の処理方法。
[8]
前記水系現像廃液が、消泡剤を更に含み、
前記回収液が、前記消泡剤を更に含む、[1]~[7]のいずれかに記載の処理方法。
[9]
前記消泡剤が、シリコーン化合物を含む、[8]に記載の処理方法。
[10]
前記回収液を、フレキソ印刷原版の現像に再利用する工程を更に含む、[1]~[9]のいずれかに記載の処理方法。
[11]
前記回収液が、水系現像液と混合される、[10]に記載の処理方法。
[12]
前記回収液の量が、前記回収液と前記水系現像液との混合液における前記式(A1)で表される化合物の濃度が0.15~0.30質量%の範囲内となるように、調整される、[11]に記載の処理方法。
[13]
前記回収液を、現像されたフレキソ印刷版のリンスに再利用する工程を更に含む、[1]~[12]のいずれかに記載の処理方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水系現像廃液から、現像促進剤を含む回収液を回収する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の方法を実施する装置の一実施形態の模式図を示す。
【
図2】
図2は、現像したフレキソ印刷原版の枚数と、現像液タンク中の水系現像液のDBDG濃度との関係(推移)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0012】
<水系現像廃液の処理方法>
本発明の一実施形態は、水系現像液を使用したフレキソ印刷原版の現像によって生じた水系現像廃液の処理方法であって、現像残渣と現像促進剤と水とを含む水系現像廃液から、前記現像促進剤と前記水とを含む回収液を回収する工程(以下「回収工程」という。)を含み、前記現像促進剤が、下記式(A1):
式(A1):R1O(A1O)nR2
(式中、
R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数2~6のアルキル基又は炭素数2~6のアルケニル基であり、
A1は、炭素数2~4のアルキレン基であり、
nは、1~5の整数である)
で表される化合物を含む、水系現像廃液の処理方法に関する。
【0013】
本実施形態に係る方法では、現像を繰り返すことによって減少する現像促進剤を、水系現像廃液から回収する。例えば、現像促進剤の濃度を維持するために継ぎ足す水系現像液の溶媒として、水の代わりに、現像促進剤を含む回収液を使用することによって、継ぎ足す水系現像液の量を低減しながらも、水系現像液中の現像促進剤の濃度を維持することができる。
【0014】
本実施形態に係る方法について、当該方法を実施する装置の一例を使用して説明する。
図1は、現像システム1を示す。現像システム1は、
フレキソ印刷原版4を現像する現像装置2と;
現像装置2の内部に配置された、水系現像液を貯める現像液タンク21と;
現像装置2の内部に配置された、フレキソ印刷原版4の表面を擦るブラシ5と;
水系現像廃液を蒸留する減圧蒸留装置3と;
減圧蒸留装置3の内部に配置された、水系現像廃液を貯めて濃縮する濃縮釜31と;
現像原液を現像液タンク21に供給する現像原液供給管61と;
水を現像液タンク21に供給する水供給管62と;
現像液タンク21に貯まった水系現像液を、フレキソ印刷原版4に供給する現像液循環管63と;
現像液タンク21に貯まった水系現像液を、濃縮釜31に送出する廃液送出管64と;
濃縮釜31に貯まった水系現像廃液から回収された回収液を現像液タンク21に返送する回収液返送管65と;
濃縮釜31内で濃縮された水系現像廃液を排出する濃縮廃液排出管66と;
を備える。
さらに、濃縮釜31と現像液タンク21との間に、水系現像廃液を貯蔵する現像廃液タンク(図示せず)を設けてもよく、また濃縮釜31から分離回収した回収液を現像装置2へ直接送るのではなく、例えば回収液貯蔵タンク(図示せず)をさらに設けることもできる。
【0015】
現像システム1では、現像液タンク21に貯まった水系現像液が、現像液循環管63を介してフレキソ印刷原版4に供給されながら、フレキソ印刷原版4の表面がブラシ5で擦られる。フレキソ印刷原版4から除去された現像残渣は、水系現像液と共に現像液タンク21に戻る。新たなフレキソ印刷原版を現像する度に、必要に応じて、現像原液供給管61及び水供給管62を介して現像原液及び水が現像液タンク21に供給され、また、現像液タンク21から、廃液送出管64を介して水系現像液(水系現像廃液)が濃縮釜31に送出される。濃縮釜31に貯まった水系現像廃液から、減圧蒸留によって、現像促進剤と水とを含む回収液が回収され、回収液返送管65を介して現像液タンク21に返送される。減圧蒸留によって濃縮された水系現像廃液は、濃縮廃液排出管66を介して排出される。
【0016】
本実施形態に係る方法では、水系現像液を使用したフレキソ印刷原版の現像によって生じた水系現像廃液を処理する。
本明細書において「水系現像液」とは、水を溶媒として含む現像液を意味する。
本明細書において「水系現像廃液」とは、現像に使用され、廃棄された水系現像液を意味する。ここで「廃棄」とは、例えば
図1でいうと、現像液タンク21から濃縮釜31に送出されたことを意味する。
【0017】
(回収工程)
本実施形態に係る方法の回収工程では、水系現像廃液から回収液を回収する。水系現像廃液は、現像残渣と現像促進剤と水とを含む。回収液は、現像促進剤と水とを含む。
【0018】
本明細書において「現像残渣」とは、現像の際に現像液に混入する不純物(例えば、現像されたフレキソ印刷原版から除去された未露光部の樹脂)を意味する。フレキソ印刷原版の感光性樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、疎水性樹脂、親水性樹脂、及びそれらの組み合わせが挙げられる。疎水性樹脂を使用する場合には、疎水性樹脂に親水性を付与することが好ましい。疎水性樹脂に親水性を付与することにより、疎水性樹脂を水系現像液で現像することが容易になる。
感光性樹脂層を構成する樹脂の主成分は、好ましくは、
疎水性樹脂をカルボン酸又はその塩類で変性した樹脂;
疎水性樹脂を主成分とした疎水性成分と、親水性樹脂を主成分とした親水性成分との混合体;
疎水性樹脂と親水性樹脂とを化学的に結合させた樹脂;
疎水性樹脂の原料となる疎水性モノマーと、親水性樹脂の原料となる親水性モノマーとをブロック共重合させた樹脂;
等である。
【0019】
現像促進剤は、下記式(A1):
式(A1):R1O(A1O)nR2
(式中、
R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数2~6のアルキル基又は炭素数2~6のアルケニル基であり、好ましくは炭素数2~6のアルキル基であり、より好ましくは炭素数4のアルキル基(ブチル基)であり、
A1は、炭素数2~4のアルキレン基であり、好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2のアルキレン基(-CH2CH2-)であり、
nは、1~5の整数であり、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2である。)
で表される化合物(以下「化合物(A1)」という。)を含む。
【0020】
水系現像廃液に含まれる化合物(A1)の量は特に限定されないが、現像装置の現像速度を高める観点から、下限は、好ましくは0.05質量%であり、より好ましくは0.15質量%であり、上限は、好ましくは0.40質量%であり、より好ましくは0.30質量%である。前記下限及び上限を適宜組み合わせて数値範囲を画定することができる。例えば、水系現像廃液に含まれる化合物(A1)の量は、好ましくは0.05~0.40質量%であり、より好ましくは0.15~0.30質量%である。
【0021】
現像促進剤は、下記式(A2):
式(A2):R3O(A2O)mH
(式中、
R3は、炭素数3~8のアルキル基、又は炭素数3~8のアルケニル基であり、好ましくは炭素数3~8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数6のアルキル基(ヘキシル基)であり、
A2は、炭素数2~4のアルキレン基であり、好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2のアルキレン基(-CH2CH2-)であり、
mは、1~5の整数であり、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2である。)
で表される化合物(以下「化合物(A2)」という。)を更に含んでいてもよい。
【0022】
水系現像廃液に含まれる化合物(A2)の量は特に限定されないが、現像装置の現像速度を高める観点から、下限は、好ましくは0.20質量%であり、より好ましくは0.25質量%であり、上限は、好ましくは0.70質量%であり、より好ましくは0.60質量%である。前記下限及び上限を適宜組み合わせて数値範囲を画定することができる。例えば、水系現像廃液に含まれる化合物(A2)の量は、好ましくは0.20~0.70質量%であり、より好ましくは0.25~0.60質量%である。
【0023】
水系現像廃液は、界面活性剤を更に含んでいることが好ましい。界面活性剤は、現像残渣と結合等をしやすく、現像残渣と現像促進剤との結合等を阻害するため、回収工程における現像促進剤の回収率を向上させることができる。
【0024】
界面活性剤は、現像促進剤の回収率を向上させる観点から、ノニオン系の界面活性剤が好ましく、下記式(B1)で表されるポリアルキレングリコールであることがより好ましい。
式(B1):RO(AO)pH
(式中、
Rは、炭素数10~20のアルキル基、又はアリール基であり、
Aは、炭素数2~4のアルキレン基であり、
pは、1~50の整数である)
【0025】
式(B1)において、
Rは、好ましくは炭素数10~18のアルキル基、又はアリール基であり、
Aは、好ましくは炭素数2~4のアルキレン基であり、
pは、好ましくは6~10の整数である。
【0026】
式(B1)で表されるポリアルキレングリコールは、好ましくはポリオキシアルキレンアルキルエーテルである。
【0027】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、下記式(B1-1)又は(B1-2)で表される化合物であることが好ましい。
式(B1-1):R4O(CH2CH2O)pH
式(B1-2):R4O(CH2CH2O)p1(CH(CH3)CH2O)p2H
【0028】
式(B1-1)中、R4は、炭素数1~20のアルキル基であり、pは、1から50の整数である。
式(B1-2)中、R4は、水素又は炭素数1~20のアルキル基であり、p1とp2との合計は1~50の整数である。-(CH2CH2O)p1(CH(CH3)CH2O)p2-部分は、ランダム重合体であっても、ブロック重合体であってもよい。
【0029】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、市販品を用いてもよい。市販のポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、特に制限されないが、例えば、日本乳化剤株式会社製のニューコール(登録商標)NT-3、ニューコールNT-5、ニューコールNT-7、ニューコールNT-9、ニューコールNT-12、ニューコール2302、ニューコール2303、ニューコール1203、ニューコール1204、ニューコール2303-Y、ニューコール2304-YM、ニューコール2304-Y、ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテル(ニューコール1004、ニューコール1006、ニューコール1008)、ポリオキシエチレントリデシルエーテル(ニューコール1305)、ニューコール2306-Y、ニューコール2306-HY、ニューコール2308-Y、ニューコール2308-LY、ニューコール708、ニューコール709、ニューコール82、ニューコール85、ニューコール1210、ニューコール1902-Y等が挙げられる。
【0030】
式(B1)で表されるポリアルキレングリコールは、好ましくはポリオキシアルキレン多環フェニルエーテルである。
【0031】
ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテルは、下記式(B1-3)で表される化合物であることが好ましい。
式(B1-3):R4O(CH2CH2O)pH
【0032】
式(B1-3)中、R4は、多環フェニルであり、pは、1から50の整数である。
【0033】
ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテルとしては、市販品を用いてもよい。市販のポリオキシアルキレン多環フェニルエーテルとしては、特に制限されないが、例えば、ニューコール703、ニューコール704、ニューコール2604等が挙げられる。
【0034】
水系現像廃液に含まれる界面活性剤の量は特に限定されないが、下限は、現像促進剤の回収効率を高める観点から、好ましくは1.0質量%であり、より好ましくは1.5質量%であり、上限は、現像工程における現像速度を高める観点から、好ましくは10質量%であり、より好ましくは6.0質量%である。前記下限及び上限を適宜組み合わせて数値範囲を画定することができる。例えば、水系現像廃液に含まれる界面活性剤の量は、好ましくは1.0~10質量%であり、より好ましくは1.5~6.0質量%である。
【0035】
水系現像廃液は、無機塩基を更に含んでいてもよい。無機塩基は、pH調整剤として機能することができる。無機塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、塩化リチウム、及び臭化リチウムが挙げられる。
【0036】
水系現像廃液に含まれる無機塩基の量は特に限定されないが、現像残渣の分散粒径を大きくして回収液への混入を抑制する観点から、水系現像廃液のpHが9以上になるよう添加されることが好ましく、経済性の観点からpHが12以下になるよう添加量を調整することが好ましい。
【0037】
水系現像廃液は、消泡剤を更に含んでいてもよい。回収工程において消泡剤が一緒に回収されると、再利用のために回収液を返送する際に泡立ちによるトラブルが発生することを抑制することができる。
【0038】
消泡剤としては、例えば、シリコーン化合物を挙げることができ、有機変性シリコーン、パーフルオロアルキル基含有シリコーン、フッ素変性シリコーンを含む化合物を使用することができる。水系現像液への分散性を高める観点から、エマルション型消泡剤を使用することが好ましい。市販品を入手して使用することができ、例えば、信越化学工業製のKM-73、KM-73A、KM-73E、KM-70、KM-71、KM-75、KM-7750D、KM-85、KM-89、KM-90、KM-98、KM7752、KM-72、KM-72S、KM-72GS、KM-72F、KM-72FS等が挙げられる。
【0039】
回収工程は、蒸留で実施することが好ましく、減圧蒸留で実施することがより好ましい。減圧条件は、好ましくは120hPa以下であり、より好ましくは100hPa以下であり、更に好ましくは80hPa以下である。減圧条件で蒸留を実施することにより、水の沸点を下げ、回収液の回収を少ないエネルギーで行うことが可能となる。圧力の下限は特に限定されないが、例えば10Paとしてもよい。減圧条件は、好ましくは10~120hPaであり、より好ましくは10~100hPaであり、更に好ましくは10~80hPaである。
【0040】
蒸留温度は、所定の圧力条件における水の沸点に応じて適宜変更すればよい。特に限定するものではないが、蒸留温度は、好ましくは65℃以下であり、より好ましくは50℃以下であり、更に好ましくは40℃以下である。蒸留温度の下限は特に限定されないが、例えば20℃、又は30℃としてもよい。前記下限及び上限を適宜組み合わせて数値範囲を画定することができる。例えば、蒸留温度は、好ましくは20~65℃であり、より好ましくは20~50℃であり、更に好ましくは30~40℃である。蒸留温度を上記の範囲に設定することで、現像促進剤の回収効率を制御しつつ、蒸留回収時の消費電力を抑制することができる。
【0041】
回収工程において、水系現像廃液に含まれる化合物(A1)の量を基準として、回収液に含まれる化合物(A1)の量の下限は、好ましくは25質量%であり、より好ましくは30質量%であり、回収液に含まれる化合物(A1)の量の上限は、好ましくは61質量%であり、より好ましくは60質量%である。前記下限及び上限を適宜組み合わせて数値範囲を画定することができる。例えば、回収液に含まれる化合物(A1)の量は、好ましくは25以上61質量%以下であり、より好ましくは30以上60質量%以下である。このような量で回収することにより、回収液を再利用した際の水系現像液中の化合物(A1)の濃度を一定の範囲内に制御しやすくなる。
【0042】
水と、化合物(A1)との蒸発比率は、蒸留温度に依存して変化するため、蒸留温度を変化させることにより、水系現像廃液からの化合物(A1)の回収率を調節することができる。
【0043】
回収工程を終えるタイミングは特に限定されないが、例えば、水系現像廃液の回収前の体積を基準として、水系現像廃液の体積が1/7~1/2倍、又は1/5~1/3倍に減少した時に終了してもよい。
【0044】
(再利用工程)
本実施形態に係る方法は、回収工程に加えて、
回収液を、フレキソ印刷原版の現像に再利用する工程、及び/又は、
回収液を、現像されたフレキソ印刷版のリンスに再利用する工程、
を更に含んでいてもよい。
【0045】
回収液を現像に再利用する場合には、回収液を水系現像液と混合することが好ましい。本文脈における「水系現像液」には、未使用の水系現像液と、使用済の水系現像液とが含まれる。
【0046】
「未使用の水系現像液」とは、現像に使用されていない水系現像液(この用語は、現像原液も包含するものとする。)を意味する。例えば
図1でいうと、「未使用の水系現像液」は、現像原液供給管61から供給された現像原液、及び水供給管62から供給された水(又は現像原液のみ)である。
【0047】
「使用済の水系現像液」とは、現像に使用されたが、廃棄されていない水系現像液(言い換えると、現像に再度使用される水系現像液)を意味する。例えば
図1でいうと、「使用済の水系現像液」は、現像液タンク21に貯まっている水系現像液である。
【0048】
回収液が水系現像液と混合される方式は特に限定されない。例えば、回収液が未使用の水系現像液と混合されてから、使用済の水系現像液と混合されてもよいし、回収液と未使用の水系現像液とが、それぞれ別々に、使用済の水系現像液と混合されてもよい。また、未使用の水系現像液は、フレキソ印刷原版に供給され、一度現像に使用されてから、使用済の水系現像液と混合されてもよい。
【0049】
再利用される回収液の量は、回収液と水系現像液との混合液における化合物(A1)の濃度が所定の範囲内となるように、調整されることが好ましい。本文脈における「水系現像液」には、未使用の水系現像液と、使用済の水系現像液とが含まれる。そのため、化合物(A1)の濃度とは、例えば
図1でいうと、回収液と、未使用の水系現像液と、使用済の水系現像液と、が混合された後の現像液タンク21に貯まっている水系現像液中の濃度である。前記所定の範囲内とは、好ましくは0.15~0.30質量%の範囲内である。
【0050】
本実施形態に係る方法では、回収工程と再利用工程とを繰り返し実施することが好ましい。これにより、現像を繰り返し行っても、化合物(A1)の濃度を一定の範囲内に維持し続けることが可能である。
【実施例0051】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0052】
実施例及び比較例で使用した装置は以下のとおりである。
・現像装置:旭化成社製 AWPTM-DEW 4260 PLF
・減圧蒸留装置:Veolia社製 R-150
【0053】
実施例及び比較例で使用した水系現像液(現像装置の現像液タンク内に貯蔵)は以下の成分を含む。
・溶媒(水、又は、水と下記回収液と混合液)
・界面活性剤(商品名:ニューコールNT-7、日本乳化剤株式会社製)(1.0質量%)
・界面活性剤(商品名:ニューコールNT-9、日本乳化剤株式会社製)(1.0質量%)
・現像促進剤(ジエチレングリコールジブチルエーテル(DBDG))(0.2質量%)
・現像促進剤(ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(HeDG))(0.3質量%)
・pH調整剤(炭酸カリウム)(0.5質量%)
また、使用した感光性樹脂版は以下のとおりである。
・AWPTМ‐DEW(1.14mm、BLサイズ)
【0054】
[実施例1]
現像液タンクに400Lの水系現像液(溶媒:水)を入れた現像装置を用いて、フレキソ印刷原版を現像した。具体的には、1枚の原版を現像する毎に、15Lの新たな水系現像液(溶媒:水)を現像液タンクへ追加し、同じ量の水系現像液を現像液タンクから廃棄した。この操作を5枚の原版について行い、廃棄された水系現像液(廃液)を、蒸留温度30~40℃、釜内圧力30~80hPaの条件で減圧蒸留し、1バッチ64Lを16Lへと濃縮(4倍濃縮)し、回収液(蒸留液)を得た。なお、減圧蒸留を行う前に、水系現像廃液に信越化学工業製KM-7750Dを消泡剤として加えた。これにより、減圧蒸留中の水系現像廃液の発泡(界面活性剤による)を抑制した。
上記以降の原版の現像については、現像後に現像液タンクへ追加する新規水系現像液の溶媒を、水から、回収液と水との混合液(質量比3:1)に変更して、同様に、現像を繰り返した。すなわち、5枚の原版の現像→蒸留回収→5枚の原版の現像→蒸留回収の操作を繰り返し行った。
本実施例では、廃液の複数のバッチについて蒸留を行い、それぞれのDBDG回収率は38~51%の範囲内であった。
DBDG回収率(%)=
{[回収液中のDBDG量(g)]/[廃液中のDBDG量(g)]}×100
水系現像廃液や回収液中のDBDG濃度は、ガスクロマトグラフィーによる定量分析を行うことにより求めた。
現像した原版の枚数と、現像液タンク中の水系現像液のDBDG濃度との関係(推移)を表1及び
図2に示す。
【0055】
[比較例1]
回収液を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様に現像を繰り返した。現像した原版の枚数と、現像液タンク中の水系現像液のDBDG濃度との関係(推移)を表1及び
図2に示す。
【0056】
【0057】
表1及び
図2の結果から明らかなように、回収液を再利用することによって、現像を繰り返し行ってもDBDG濃度を一定の範囲内に維持することができた。