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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152609
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】挟持装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/12 20060101AFI20241018BHJP
   B25B 5/10 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F16B2/12 B
B25B5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018200
(22)【出願日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2023065257
(32)【優先日】2023-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】510202167
【氏名又は名称】Next Innovation合同会社
(72)【発明者】
【氏名】道脇 裕
【テーマコード(参考)】
3C020
3J022
【Fターム(参考)】
3C020CC02
3C020CC06
3C020EE01
3C020FF00
3J022DA12
3J022DA15
3J022EA41
3J022EB03
3J022EC02
3J022FB06
3J022FB12
3J022GA06
3J022GA13
3J022GB32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡易な構造により強固に保持対象を挟持して保持する手段を提供する。
【解決手段】進退可能な軸支部及び軸支部に対向配置される受部を保持する保持体と、軸支部に挿設され、受部と対向する押圧部により保持対象を押圧する押圧体と、押圧体のロック機構とを有し、押圧体は軸支部に螺進可能な軸部と、軸部の先端部に回転可能な押圧部とを有し、押圧部は、軸部進出時に保持対象を押圧し、軸部は外周面に適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された軸支部の孔部と螺合する第一螺旋溝と、第一螺旋溝の一部の領域で重複するように形成され、リード角及び/又はリード方向に対して相異なる方向に設定された第二螺旋溝の両ネジ部を有し、ロック機構は第二螺旋溝の雌ねじ体と、回転規制体とを有し、回転規制体は雌ねじ体に係合する第一状態と、雌ねじ体から退避している第二状態との間で遷移し、第一状態のとき雌ねじ体の回転を抑制することを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
進退可能に軸支する軸支部及び該軸支部に対向配置される受部を定位置に保持する保持体と、上記軸支部に挿設され、上記受部と対向する押圧部によって保持対象を押圧し得る押圧体と、上記押圧体の退避方向の変位を抑止するロック機構とを有し、
上記押圧体は、上記軸支部の孔部内で螺進して進退自在に軸支される軸部と、該軸部の先端部に回転可能に設けられた押圧部とを有し、
上記押圧部は、上記軸部の進出時に上記保持対象を押圧し得、
上記軸部は、外周面に適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された上記軸支部の孔部と螺合する第一螺旋溝と、該第一螺旋溝が形成された領域の少なくとも一部の領域で重複するように形成され、上記リード角及び/又はリード方向に対して相異なるリード角及び/又はリード方向に設定された第二螺旋溝とからなる両ネジ部を有し、
上記ロック機構は、上記軸部の上記第二螺旋溝に螺合する雌ねじ体と、該雌ねじ体の回転を抑制する回転規制体とを有し、
上記回転規制体は、上記雌ねじ体に係合する第一状態と、上記雌ねじ体から退避している第二状態との間で遷移し、上記第一状態のとき上記雌ねじ体の回転を抑制することを特徴とする挟持装置。
【請求項2】
前記雌ねじ体は、外周面に凹凸部分を有し、
前記回転規制体は、前記雌ねじ体を囲繞し、且つ内周面に上記凹凸部分に嵌り得る凹凸を有することを特徴とする請求項1記載の挟持装置。
【請求項3】
前記雌ねじ体の外形形状は、一端部から中途部にかけてテーパ状のテーパ領域と、該中途部から他端部にかけて軸心と略平行な直筒領域とを有することを特徴とする請求項1記載の挟持装置。
【請求項4】
前記回転規制体を付勢する付勢部材を有し、
前記回転規制体は、上記付勢部材による付勢によって前記第一状態が維持されることを特徴とする請求項1記載の挟持装置。
【請求項5】
前記第一状態又は前記第二状態の何れか一方のときに露出し、他方のときは被覆される状態視認機能を設けたことを特徴とする請求項1記載の挟持装置。
【請求項6】
前記状態視認機能は、前記軸支部及び/又は前記雌ねじ体に配されることを特徴とする請求項5記載の挟持装置。
【請求項7】
前記回転規制体は、前記軸支部に対してスライド可能に相対変位し得、
前記回転規制体は、溝形状或いは凸形状の案内部を有し、
前記軸支部は、上記案内部に嵌合し得る、凸形状或いは凹形状の係合部を有することを特徴とする請求項1記載の挟持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挟持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、重ね合わせた二つ以上の保持対象を保持する部材として、開口を挟んで一対の対向する腕部を有するネジ式クランプが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなネジ式クランプは、クランプ本体の一方の腕部に受け金を装着し、他方の腕部に締結ボルトを螺合させて装着する。締結ボルトの一端部にはハンドルが設けられ、ハンドルの操作によって締結ボルトが回転しながら、受け金の方向に移動する。そして、締結ボルトの先端部が保持対象を押圧すると共に、押圧されている保持対象を受け金が支持し、結果として保持対象を挟持圧接させて固定する。
また、一般的に重ね合わせた二つ以上の保持対象を保持する方法として、保持対象を貫通するボルト孔にボルトを挿通し、該ボルトをナットにより締結することでボルト、ナットで保持対象を挟持する、貫通接合が広く行われている。このような貫通接合ではボルトに生じている引張力を利用して保持対象を押圧している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-217456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載されたネジ式クランプは、腕部に対して締結ボルトが螺合している為、締結ボルトには、保持対象を介して振動や軸直交方向の力が伝達してしまい、軸方向のガタ付きの原因となってしまう。従って、強くねじ締めを行っていても一度ガタ付きが発生してしまうと、ねじ締め状態が容易に解けて、結果保持対象が挟持できなくなるという問題がある。
また、保持対象のボルト孔にボルトを挿通し、ボルトとナットで保持対象を挟持する貫通接合の場合、保持対象にボルト孔を設けるための加工等が必要となる。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みて本発明者の鋭意研究により成されたものであり、保持対象を極めて強固に挟持して保持するための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の挟持装置は、進退可能に軸支する軸支部及び該軸支部に対向配置される受部を定位置に保持する保持体と、上記軸支部に挿設され、上記受部と対向する押圧部によって保持対象を押圧し得る押圧体と、上記押圧体の退避方向の変位を抑止するロック機構とを有し、上記押圧体は、上記軸支部の孔部内で螺進して進退自在に軸支される軸部と、該軸部の先端部に回転可能に設けられた押圧部とを有し、上記押圧部は、上記軸部の進出時に上記保持対象を押圧し得、上記軸部は、外周面に適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された上記軸支部の孔部と螺合する第一螺旋溝と、該第一螺旋溝が形成された領域の少なくとも一部の領域で重複するように形成され、上記リード角及び/又はリード方向に対して相異なるリード角及び/又はリード方向に設定された第二螺旋溝とからなる両ネジ部を有し、上記ロック機構は、上記軸部の上記第二螺旋溝に螺合する雌ねじ体と、該雌ねじ体の回転を抑制する回転規制体とを有し、上記回転規制体は、上記雌ねじ体に係合する第一状態と、上記雌ねじ体から退避している第二状態との間で遷移し、上記第一状態のとき上記雌ねじ体の回転を抑制することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の挟持装置は、前記雌ねじ体は、外周面に凹凸部分を有し、前記回転規制体は、前記雌ねじ体を囲繞し、且つ内周面に上記凹凸部分に嵌り得る凹凸を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の挟持装置は、前記雌ねじ体の外形形状は、一端部から中途部にかけてテーパ状のテーパ領域と、該中途部から他端部にかけて軸心と略平行な直筒領域とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の挟持装置は、前記回転規制体を付勢する付勢部材を有し、前記回転規制体は、上記付勢部材による付勢によって前記第一状態が維持されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の挟持装置は、前記第一状態又は前記第二状態の何れか一方のときに露出し、他方のときは被覆される状態視認機能を設けたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の挟持装置は、前記状態視認機能は、前記軸支部及び/又は前記雌ねじ体に配されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の挟持装置は、前記回転規制体が前記軸支部に対してスライド可能に相対変位し得、 前記回転規制体は、溝形状或いは凸形状の案内部を有し、前記軸支部は、上記案内部に嵌合し得る、凸形状或いは凹形状の係合部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構造によって、極めて強固に保持対象を挟持してその締結状態を保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の挟持装置を示す斜視図である。
図2】本実施形態の挟持装置を示す断面図である。
図3】本実施形態の本体部を示す斜視図である。
図4】本実施形態の軸部を示す図である。
図5】軸部と押圧部との係合例を示す断面図である。
図6】支持部材の構成を示す図である。
図7】雌ねじ体を示し、(A)は斜視図、(B)は側面図である。
図8】回転規制体を示し、(A)は上面図、(B)はA-A断面図である。
図9】回転規制体の状態を示し、(A)は第一状態を示す図、(B)は第二状態を示す図である。
図10】挟持装置の操作例を示す図である。
図11】挟持装置の他の例を示し、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の挟持装置の実施形態を、図面を参照して説明する。図1は本実施形態の挟持装置1を示す斜視図、図2は本実施形態の挟持装置1を示す断面図である。挟持装置1は、略コ字形、略C字形又はG字形或いはU字形又はV字形を成す本体部100に押圧体10と支持部材20を装着したものである。
また、挟持装置1は、押圧体10と支持部材20との間に一対の保持対象を配し、押圧体10の先端部が保持対象を押圧し、支持部材20が当該保持対象を支持する。これにより、押圧体10に働く圧縮軸力によって一対の保持対象を接合する。挟持装置1は、押圧体10のガタ付きによる保持力低下を抑制する構造を有し、押圧体10が保持対象を押圧すると共に支持部材20が保持対象を支持して一対の保持対象を接合する状態を強固に維持することが出来る。
尚、ここでは一対の保持対象を接合するものとしているが、これに限らず、三つ以上を重ねたものを保持対象としてこれを接合するようにしてもよく、逆に保持対象は単体の物であってもよい。
【0016】
図3は本実施形態の本体部100を示す斜視図である。本体部100は、軸支部2と該軸支部2に対向配置される受部3を有する。軸支部2は、押圧体10を進退可能に支持する為の孔部6、案内溝8等を有する。孔部6は、軸支部2と受部3の配列方向と略平行な方向に穿孔され、内周面に右ねじの螺旋条6aが形成される。案内溝8は、後述する回転規制体50をスライド可能に案内する為の溝であって、軸支部2の外周面の幅方向両側に凹設され、孔部6の軸方向と略平行に延びている。また案内溝8は、底面に回転規制体50の抜け止めの為の係合突起8aを有することもできる。
【0017】
受部3は、孔部6の軸心に沿って対向する受側孔部5を有する。受側孔部5は、孔部6と同軸上に形成されていてもよく、或いは孔部6に対して軸直交方向にずらした位置に形成されていてもよい。受側孔部5の内周面には、右ねじの雌ねじ螺旋条5aが形成される。受部3は、受側孔部5に被摺接部22(後述する)の雄ねじ部が螺合して一体的に固定される。
【0018】
(押圧体10について)
押圧体10は、軸部12、保持対象を押圧し得る押圧部14、軸部12を進退操作可能とする為の操作部16等を有する。
図4は、本実施形態の軸部12を示す図である。軸部12は、一端側と他端側とでそれぞれ異なる雄ねじ構造を有する。具体的には、一端側には孔部6のねじ形状に対応する右ねじの螺旋溝(第一雄ねじ螺旋溝)を形成した被支持ねじ部12aを配し、他端側に右ねじの螺旋溝(第一雄ねじ螺旋溝)と左ねじの螺旋溝(第二雄ねじ螺旋溝)とが同一領域に重複形成された両ねじの雄ねじ螺旋溝の両ねじ部12bを配する構成とする。尚、軸部12の雄ねじ構造は、これに限定するものではなく、一端側から他端側まで両ねじ部としてもよい。
【0019】
両ねじ部12bは、右ねじである第一雄ねじ螺旋溝及び左ねじである第二雄ねじ螺旋溝の二種類の雄ねじ螺旋溝が同一領域上に重複形成したものである。両ねじ部12bには、軸心(ねじ軸)に垂直となる面方向に連続する略三日月状のねじ山が、軸部12の一方側(図4の右側)及び他方側(図4の左側)に交互に設けられており、ねじ山をこのように構成することで、右回りに旋回する螺旋溝及び左回りに旋回する螺旋溝の二種類の螺旋溝を、ねじ山同士の間に形成することが出来る。
この両ねじ部12bには、押圧体10が緩み方向に変位するのを防止する為の左ねじの雌ねじ螺旋条を有する雌ねじ体40(図2参照)が螺合する。
【0020】
押圧部14は、軸部12に対して別体とし、軸部12の先端部に回転自在に装着してもよい。押圧部14は、保持対象に当接し得る凹凸面を有し、軸部12の先端部に着脱交換可能に形成される。
【0021】
図5は軸部12と押圧部14との係合例を示す断面図である。押圧部14は、軸部12に対して回転自在に装着されていればよく、適宜方法によって装着し得るものである。例えば、図5(A)に示すように、押圧部14は、軸部12の先端を覆うように外周面を囲繞可能な断面凹形状を有するものとし、且つ内周面に径方向内側に突出する凸部14aを有する。一方で軸部12には、先端側の外周面に周回状の周回溝18(図3図5参照)を形成する。凸部14aは、軸部12の外周面に干渉し、且つ周回溝18に嵌り得るように突出長さ等が設定される。従って、押圧部14は、凸部14aが周回溝18に嵌合することで、軸部12に対して回転自在に装着される。
【0022】
押圧部14は、凸部14aを設ける代わりに、図5(B)に示すように内周面に環状の凹溝部14bを設け、O字状やC字状等の弾性リング15を介在させることで、軸部12に回転自在に装着してもよい。即ち、弾性リング15を凹溝部14bに沿って押圧部14の内周側に嵌入させると共に、周回溝18に沿って軸部12の外周側に嵌入させることで、押圧部14は、軸部12に対して回転自在に装着される。
【0023】
操作部16は、軸部12の一端部に配され、外周形状が孔部6の内径よりも大きい外寸、且つレンチ等の締結工具に係合し得るように六角形状に設定される。勿論、操作部16の外周形状は、六角形以外の多角形状、軸心を挟んで互いに平行な二つの面からなる二面幅を少なくとも一組以上形成した形状、複数の凹凸を含んだ形状等の他、円形状であって端面に六角穴等の多角形状の孔を有する形状もあり得、締結工具と係合させ得る構造とするとよい。
【0024】
(支持部材20について)
図6は支持部材20の構成を示す図である。支持部材20は、被摺接部22に対して傾動部26を傾動自在に接続させて成る。また被摺接部22と傾動部26とは、ボルト34によって接続される。
ここで、被摺接部22は、受側孔部5に螺合する雄ねじ体であって、雄ねじ体の頭部に相当する部分として、傾動部26を当接させる凹球面状の凹状面24を有する。また凹状面24の中央部には内ねじ25が形成される。
【0025】
傾動部26は、複数の微小凹凸が有して保持対象を支持する支持面28、支持面28の裏面側に配されて凸球面形状で、上記凹状面24の曲率半径以上の曲率半径を有する凸状面30を有する。また、支持面28の中央部には、ザグリ加工が施されると共に貫通孔32が穿孔される。
【0026】
ボルト34は、貫通孔32よりも大径で支持面28の中央部にザグリ部分に位置する頭部36、内ねじ25に螺合する雄ねじ部38等を有する。またボルト34は、頭部36と雄ねじ部38との間に、内ねじ25に対するねじ込み深さを規制する円筒部39を有する。
【0027】
円筒部39は、内ねじ25に係止されると共に貫通孔32に遊嵌するように、内ねじ25の山径よりも大きく貫通孔32の内径よりも小さい外径を有する。円筒部39は、軸方向長さを貫通孔32の深さよりも長く設定にすることが好ましい。このようにすれば、傾動部26に掛かるボルト34の軸力が所定以上となるのを規制し、凸状面30と凹状面24との間の摩擦抵抗を低減乃至非接触状態とすることができる。
【0028】
尚、ボルト34は、雄ねじ部38の基端部側に外形を拡径させた段部を設けることでもねじ込み深さを規制し得る。即ち、内ねじ25の開口縁に係止される段部を設け、ボルト34の内ねじ25に対するねじ込み深さを規制してもよい。
【0029】
(ロック機構について)
また、本実施形態の挟持装置1には、押圧体10の保持対象から離間する方向(退避方向)の変位を抑止、即ち緩み方向の回転を規制するロック機構が配設される。ロック機構は、両ねじ部12bに螺合する雌ねじ体40と、雌ねじ体40の回転を規制する回転規制体50等を含んで成る。
【0030】
図7は雌ねじ体40を示し、(A)は斜視図、(B)は側面図である。雌ねじ体40は、内周面に左ねじ螺旋条42を有する。従って雌ねじ体40は、押圧体10の両ねじ部12bに螺合し、被支持ねじ部12aには螺合し得ない。
【0031】
雌ねじ体40は、外周面における軸方向に沿う形状が、略テーパ状のテーパ領域44と軸心と略平行な直筒領域46を有する。即ち、一端部から中途部にかけて外寸が徐々に拡がり、該中途部を境界に他端部まで外寸が略一定となるように、外形形状が設定される。更に雌ねじ体40の外周面には、回転規制体50に対し軸心回りに回り止めする略平目ローレットH等の軸方向に沿った凹凸状の条部が周方向全域に亘って設けられている。勿論、条部の形状はこれに限定されないが、頂部が狭く、相手方への条部が容易に、条部と条部の間の谷部(溝部)に入り込むように構成すると好い。
【0032】
図8は回転規制体50を示し、(A)は上面図、(B)はA-A断面図である。回転規制体50は、軸支部2の外周面を囲繞し(例えば図1参照)、且つスライド可能に設置されて雌ねじ体40に係合している第一状態と、雌ねじ体30から退避している第二状態との間で遷移する。また回転規制体50は、囲繞部52、係合凸部54、被付勢部56、規制内周面58等を有して成る。
【0033】
囲繞部52は、軸支部2を囲繞し且つ軸支部2に摺接し得、軸支部2の外周面に沿った内周形状を有する。係合凸部54は、囲繞部52の内周面よりも径方向内側に突出して軸支部2の案内溝8に嵌合することで、回転規制体50がスライド方向に対する直交方向に変位するのを規制する。
【0034】
被付勢部56は、軸支部2と軸方向の一端面に対向し、回転規制体50を軸支部2に対して軸方向に沿って離間させる方向に付勢するばね部60(弾性部材)を設置する為の設置面等を有する。尚、被付勢部56には、ばね部60を保持する為の保持片や凸端等の保持構造が形成されていてもよい。また、図2における軸支部2には、被付勢部56に対向する箇所にばね部60が進入し得る穴が形成されているが、軸支部2と被付勢部56との間にばね部60を配設可能な空間が在れば、当該穴を設ける必要が無いことはいうまでもない。
【0035】
規制内周面58は、内部空間を画定する内周面であり、雌ねじ体40に対して周方向に係合して回転を規制する。即ち、規制内周面58は、軸方向に沿う内周面が軸心に対して傾斜し、雌ねじ体30と同様の略平目ローレットHを周方向に沿って複数有する。また規制内周面58は、テーパ領域44のテーパ角と略平行な傾斜面を有する。従って、規制内周面58は、テーパ領域44における外周面と重なって、且つ互いのローレットHによる凹凸が嵌ることで面接触し、且つ周方向に係合して雌ねじ体40の回転を規制する。勿論、ここでの略平目ローレットHの形状は、必ずしも平目状でなければならないというものではなく、相手方の条部が容易に谷部(溝部)に入り込むように構成されていればよい。
【0036】
回転規制体50は、軸支部2の案内溝8に沿ってスライドし得、図9(A)に示すように押圧体10に螺合している雌ねじ体40を囲繞している第一状態と、図9(B)に示すように操作部16側に変位して雌ねじ体40から離間している第二状態との間で状態が遷移する。
具体的に、回転規制体50は、ばね部60の付勢によって第一状態となる。即ち、回転規制体50は、ばね部60の付勢によって強制的に軸方向に変位し、規制内周面58が雌ねじ体40を囲繞し周方向に係合する。
【0037】
尚、雌ねじ体40の直管領域46の外寸を規制内周面58の最大内寸を超える長さとすれば、回転規制体50は、ばね部60の付勢により変位し得る範囲が雌ねじ体40により規制され、軸方向位置が第一状態となる位置で固定される。
【0038】
一方で、回転規制体50は、外力によってばね部60の付勢力に抗して反付勢方向に変位したとき(図9(B)参照)、雌ねじ体40に対する周方向に係合した状態が解除されて第二状態となる。
【0039】
次に押圧体10を軸方向に沿って進退させるための操作について説明する。押圧体10は、軸部12の被支持ねじ部12aの第一雄ねじ螺旋溝と孔部6の右ねじの螺旋条に螺合している。よって押圧体10は、軸部12における第一雄ねじ螺旋溝が形成されている範囲で軸支部2に対して軸方向に進退可能である。
【0040】
具体的に操作部16にトルクを印加することで、押圧体10を進退操作することが出来、操作部16を軸支部2に対する締付方向に回転させたとき、押圧体10は受部3に向かって進行する。操作部16を緩み方向に回転させたとき、押圧体10は、受部3から退避する。
尚、押圧体10を進退操作するとき、予め雌ねじ体40を軸支部2に当接し得ない箇所に位置させておくものとする。これは雌ねじ体40が軸支部2に当接することで、押圧体10の進退を妨げてしまうことを防ぐ為である。
【0041】
ロック機構による押圧体10の緩み方向の回転抑止は、雌ねじ体40が軸支部2に当接し且つ回転規制体50が第一状態のときに発揮される。これは(1)押圧体10の緩み方向の回転を規制すること、(2)振動等によって雌ねじ体40が回転し得るのを規制することの二つのことを同時に成すことが出来るからである。
【0042】
上記(1)について
雌ねじ体40が軸支部2に当接しているとき、軸支部2及び雌ねじ体30に対して操作部16に左回りのトルクを印加しても、押圧体10は軸支部2及び雌ねじ体30に対して回転し得ない。これは、押圧体10が左回りに回転する場合、軸支部2の押圧体10に対する相対変位の向きが雌ねじ体40側であり、一方で雌ねじ体40の押圧体10に対する相対変位の向きが軸支部2側である。従って、軸支部2及び雌ねじ体40が相対する向きの螺進が規制され、押圧体10の左回り(軸支部2に対する緩み方向)の相対回転を規制し、軸支部2に対する緩み方向の変位を規制することができる。
【0043】
上記(2)について
回転規制体50が第一状態のとき、規制内周面58が雌ねじ体40に対して周方向に係合し、雌ねじ体40の回転を規制する。従って、保持対象や挟持装置1自体が振動したとき、その振動が雌ねじ体40に伝達したときや、雌ねじ体40に軸直交方向の力が伝達したときに、雌ねじ体40が押圧体10に対して緩み方向に回転することを防止する。換言すれば、雌ねじ体40が外部からの振動等やその他の外力によって回転して軸支部2から離れることを防止することができる。
【0044】
このように、ロック機構は、雌ねじ体40が軸支部2に当接し、且つ軸支部2に対する相対位置が変わらないように、回転規制体50が第一状態となって雌ねじ体40を支持することで、押圧体10の緩み方向の回転(変位)を規制することができる。
【0045】
挟持装置1の使用方法の一例について、図10の挟持装置1の操作例を示す図を参照して説明する。ここで挟持装置1は、保持対象Oを上下方向で挟持し、保持対象Oの上方には軸支部2や押圧体10が位置し、保持対象Oの下方には受部3や支持部材20が位置しているものとする。
また予め回転規制体50は、ばね部60の付勢力に抗する外力によって所定位置で保持され、第二状態が維持されているものとする。
【0046】
保持対象Oが軸支部2と受部3との間に進入し得る程度に押圧体10を上昇させて支持部材20から退避させ、軸支部2と受部3との間隙を拡げる。また、押圧体10の軸部12に螺合している雌ねじ体40は軸支部2に当接しないように、押圧部14に隣接させる等、押圧部14近傍に位置させる(例えば、図10(A)参照)。
【0047】
保持対象Oを配した後、図10(B)の矢印で示すように操作部16を締付け方向(右回り)に回転させ、押圧部14と支持部材20との間で保持対象Oを挟持する位置まで押圧体10を下降させる。
次に、図10(C)に示すように雌ねじ体40を反押圧部14向きに螺進させる。即ち、雌ねじ体40を押圧体10に対する締付向き(操作部16側から見て右回り)に回転させて上向きに螺進させる。雌ねじ体40は、回転が規制される位置、即ち軸支部2に当接している位置に配される。
【0048】
そして、回転規制体50を第一状態に遷移させる。即ち、回転規制体50に作用させている外力を解放し、ばね部60によって付勢されている回転規制体50は、規制内周面58が雌ねじ体40に係合する位置まで下降して第一状態となる。
【0049】
以上、説明したように本実施形態の挟持装置1によれば、ロック機構によって押圧体10が軸支部2に対して緩み向きに相対回転するのを規制し、軸部12が孔部6内で軸方向にガタ付くことが無く、また保持対象等から伝達した振動や軸直交方向の外力等が作用しても、極めて強固に保持対象を挟持、保持することができる。
【0050】
尚、挟持装置1は、回転規制体50が第一状態或いは第二状態の何れかの状態であるかを外部から視認可能な部位を有することができる。例えば、図1等に示す挟持装置1は、回転規制体50が第一状態のとき、操作部16近傍で軸支部2の一部が露出するので、この露出部分において視覚的に回転規制体50の状態を容易に認識し得る状態視認機能を設けてもよい。
状態視認機能としては、周囲から明確に区別して認識し得るような文字、記号、図形及び/又は色彩等の他、発光体等によって視認させるものであってもよい。勿論、状態視認機能は、文字、記号、図形、色彩の内、一つ以上のものと発光体とを組み合わせたもの等もあり得、更に上記例だけに限定されるものでは無い。
【0051】
また、回転規制体50が第二状態のときは、雌ねじ体40のテーパ領域44が露出するので、該テーパ領域44に状態視認機能を設けてもよい。この場合はテーパ領域44の状態視認機能を視認することで、回転規制体50が第二状態であることが認識できる。
また、状態視認機能は、軸支部2の露出部分とテーパ領域44の何れか一方に設けてもよいが、両方に設けてもよく、その場合、第一状態と第二状態の何れであるかが明確となるように、各状態視認機能を互いに異なるものとする。
また、回転規制体50の一部に、表裏に貫通した貫通部(開口、穴、切欠部)を設けることで、回転規制体50が第一状態と第二状態とで貫通部の位置が変位することと、軸支部2の露出領域が変わることを利用して露出色を相異させることで状態を視認可能とさせてもよい。
【0052】
尚、被支持ねじ部12aと両ねじ部12bが有する第一雄ねじ螺旋溝が右ねじの螺旋溝であって、両ねじ部12bが有する第二雄ねじ螺旋溝が左ねじの螺旋溝であるものとして説明したが、第一雄ねじ螺旋溝が左ねじの螺旋溝であって、第二雄ねじ螺旋溝が右ねじの螺旋溝であってもよい。その場合、軸部12の孔部6には左ねじの螺旋条を形成し、雌ねじ体40の内周面には右ねじの螺旋条を形成するものとする。
【0053】
また上述した実施形態においては、軸支部2が案内溝8を有し、囲繞部52が凸部54を有するものとしたが、これに限定されるものではなく、軸支部2に対し囲繞部52がスライド可能に係合していればよい。ここで図11は挟持装置70の他の例を示し、(A)は斜視図、(B)は平面図であり、挟持装置70は、案内溝の代わりに案内凸部72を具えた軸支部2と、係合凸部の代わりに係合凹部74を具えた回転規制体50を有している。
案内凸部72は、軸支部2の外周面から外側に突出し軸方向に延在し、係合凹部74は、案内凸部72を嵌合させる溝形状を有する。このような案内凸部72と係合凹部74を嵌合させることで、回転規制体50は、軸支部2に対して軸方向にスライド可能に係合し得る。
【0054】
案内凸部72を設ける構成とした場合、軸支部2は、軸部12等から受ける応力に対する強度を向上させることができる。例えば押圧体10と支持部材20とによって保持対象を保持しているとき、保持対象、押圧体10の軸部12等を介して軸支部2に外力が掛り得る。このような外力が作用した際、案内溝等に応力が集中するのを防止して軸支部2の強度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0055】
1…挟持装置、2…軸支部、3…受部、5…受側孔部、6…孔部、8…案内溝、10…押圧体、12…軸部、12a…被支持ねじ部、12b…両ねじ部、14…押圧部、16…操作部、20…支持部材、22…被摺接部、24…凹状面、26…傾動部、28…支持面、30…凸状面、32…貫通孔、34…ボルト、40…雌ねじ体、50…回転規制体、100…本体部。
図1
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図11