(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152611
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】樹脂発泡体および発泡部材
(51)【国際特許分類】
C08J 9/12 20060101AFI20241018BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241018BHJP
C09J 7/26 20180101ALI20241018BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20241018BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C08J9/12 CES
C09J7/38
C09J7/26
B32B5/18
B32B27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024019555
(22)【出願日】2024-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2023065163
(32)【優先日】2023-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児玉 清明
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 彰吾
【テーマコード(参考)】
4F074
4F100
4J004
【Fターム(参考)】
4F074AA24
4F074AA25
4F074AA28
4F074AA98
4F074AB05
4F074AC19
4F074AD11
4F074AG02
4F074AG10
4F074BA32
4F074CA22
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA24
4F074DA33
4F074DA47
4F100AK01A
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4F100CB05B
4F100JA13A
4F100YY00A
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA04
4J004CB04
4J004FA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】二酸化炭素排出量低減に寄与し得、かつ、優れた衝撃吸収性を有する樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】[1]本発明の1つの実施形態による樹脂発泡体は、気泡構造を有する樹脂発泡体であって、石油由来の樹脂の含有割合aが50重量%以下であり、かつ、下記式(1)を満たす。
[見かけ密度(g/cm
3)]<-0.0025×[石油由来の樹脂の含有割合a(%)]+0.48(1)
[2]上記[1]に記載の樹脂発泡体において、当該樹脂発泡体が有する気泡のアスペクト比が、4以下であってもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気泡構造を有する樹脂発泡体であって、
石油由来の樹脂の含有割合aが50重量%以下であり、かつ、下記式(1)を満たす、樹脂発泡体。
[見かけ密度(g/cm3)]<-0.0025×[石油由来の樹脂の含有割合a(%)]+0.48 ・・・(1)
【請求項2】
前記樹脂発泡体が有する気泡のアスペクト比が、4以下である、請求項1に記載の樹脂発泡体。
【請求項3】
前記樹脂発泡体の50%圧縮荷重が、40N/cm2以下である、請求項1に記載の樹脂発泡体。
【請求項4】
前記樹脂発泡体の25%圧縮荷重が、25N/cm2以下である、請求項1に記載の樹脂発泡体。
【請求項5】
前記樹脂発泡体の平均気泡径が、200μm以下である、請求項1に記載の樹脂発泡体。
【請求項6】
前記樹脂発泡体の見かけ密度が、0.4g/cm3以下である、請求項1に記載の樹脂発泡体。
【請求項7】
前記樹脂発泡体の気泡径の変動係数が、0.6以下である、請求項1に記載の樹脂発泡体。
【請求項8】
植物由来のポリオレフィン系樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂発泡体。
【請求項9】
前記植物由来のポリオレフィン系樹脂として、植物由来のポリオレフィンを含み、
該植物由来のポリオレフィンの温度230℃におけるメルトフローレートが、20g/10分未満である、請求項8に記載の樹脂発泡体。
【請求項10】
前記植物由来のポリオレフィンの溶融張力が、10cN以上である、請求項1に記載の樹脂発泡体。
【請求項11】
前記植物由来のポリオレフィンの融点+20℃におけるダイスウェル比が1.5以下である、請求項8に記載の樹脂発泡体。
【請求項12】
前記樹脂発泡体を形成する樹脂組成物の融点+20℃におけるダイスウェル比が1.5以下である、請求項1に記載の樹脂発泡体。
【請求項13】
前記植物由来のポリオレフィン系樹脂として、植物由来のポリプロピレン系重合体を含む、請求項8に記載の樹脂発泡体。
【請求項14】
前記植物由来のポリオレフィン系樹脂が、ポリオレフィン系エラストマー以外のポリオレフィンとポリオレフィン系エラストマーの混合物であり、
該ポリオレフィンとして、植物由来のポリオレフィンが用いられ、
該ポリオレフィン系エラストマーとして植物由来のポリオレフィン系エラストマーまたは石油由来のポリオレフィン系エラストマーが用いられる、
請求項8に記載の樹脂発泡体。
【請求項15】
片面または両面に、熱溶融層を有する、請求項1に記載の樹脂発泡体。
【請求項16】
請求項1に記載された樹脂発泡体から構成された樹脂発泡層と、該樹脂発泡層の少なくとも片側に配置された粘着剤層とを備える、発泡部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂発泡体および発泡部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の画面保護、基板の保護、電子部品の保護等のため、クッション材として発泡部材が多用されている。近年、電子機器の薄型化の傾向に応じて、クッション材が配置される部分のクリアランスを狭くすることが求められている。さらに、電子機器の小型化、多機能化等に伴い、使用される電子部品も小型化する傾向にあり、衝撃吸収性に優れながら、より薄いクッション材(発泡部材)が求められることがある。また、環境配慮の要望が高まる昨今、上記クッション材(発泡部材)についても、二酸化炭素排出量の低減が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-186504公報
【特許文献2】特開2015-034299公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、二酸化炭素排出量低減に寄与し得、かつ、優れた衝撃吸収性を有する樹脂発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の実施形態による樹脂発泡体は、気泡構造を有する樹脂発泡体であって、石油由来の樹脂の含有割合aが50重量%以下であり、かつ、下記式(1)を満たす。
[見かけ密度(g/cm3)]<-0.0025×[石油由来の樹脂の含有割合a(%)]+0.48 ・・・(1)
[2]上記[1]に記載の樹脂発泡体において、当該樹脂発泡体が有する気泡のアスペクト比が、4以下であってもよい。
[3]上記[1]または[2]に記載の樹脂発泡体において、当該樹脂発泡体の50%圧縮荷重が、40N/cm2以下であってもよい。
[4]上記[1]から[3]のいずれかに記載の樹脂発泡体において、当該樹脂発泡体の25%圧縮荷重が、25N/cm2以下であってもよい。
[5]上記[1]から[4]のいずれかに記載の樹脂発泡体において、当該樹脂発泡体の平均気泡径が、200μm以下であってもよい。
[6]上記[1]から[5]のいずれかに記載の樹脂発泡体において、当該樹脂発泡体の見かけ密度が、0.4g/cm3以下であってもよい。
[7]上記[1]から[6]のいずれかに記載の樹脂発泡体において、当該樹脂発泡体の気泡径の変動係数が、0.6以下であってもよい。
[8]上記[1]から[7]のいずれかに記載の樹脂発泡体は、植物由来のポリオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。
[9]上記[8]に記載の樹脂発泡体は、上記植物由来のポリオレフィン系樹脂として、植物由来のポリオレフィンを含み、該植物由来のポリオレフィンの温度230℃におけるメルトフローレートが、20g/10分未満であってもよい。
[10]上記[1]から[9]のいずれかに記載の樹脂発泡体において、当該植物由来のポリオレフィンの溶融張力が、10cN以上であってもよい。
[11]上記[8]の樹脂発泡体において、上記植物由来のポリオレフィンの融点+20℃におけるダイスウェル比が1.5以下であってもよい。
[12]上記[1]から[11]のいずれかに記載の樹脂発泡体において、当該樹脂発泡体を形成する樹脂組成物の融点+20℃におけるダイスウェル比が1.5以下であってもよい。
[13]上記[8]から[12]のいずれかに記載の樹脂発泡体は、上記植物由来のポリオレフィン系樹脂として、植物由来のポリプロピレン系重合体を含んでいてもよい。
[14]上記[8]から[13]のいずれかに記載の樹脂発泡体において、上記植物由来のポリオレフィン系樹脂が、ポリオレフィン系エラストマー以外のポリオレフィンとポリオレフィン系エラストマーの混合物であり、該ポリオレフィンとして、植物由来のポリオレフィンが用いられ、該ポリオレフィン系エラストマーとして植物由来のポリオレフィン系エラストマーまたは石油由来のポリオレフィン系エラストマーが用いられていてもよい。
[15]上記[1]から[14]のいずれかに記載の樹脂発泡体は、片面または両面に、熱溶融層を有していてもよい。
[16]本発明の1つの実施形態による発泡部材は、上記[1]から[15]のいずれかに記載の樹脂発泡体から構成された樹脂発泡層と、該樹脂発泡層の少なくとも片側に配置された粘着剤層とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、二酸化炭素排出量低減に寄与し得、かつ、優れた衝撃吸収性を有する樹脂発泡体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の1つの実施形態による発泡部材の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.樹脂発泡体
A-1.樹脂発泡体の概要
本発明の実施形態による樹脂発泡体は、石油由来の樹脂の含有割合aが50重量%以下であり、かつ、下記式(1)を満たす。
[見かけ密度(g/cm3)]<-0.0025×[石油由来の樹脂の含有割合a(%)]+0.48 ・・・(1)
なお、石油由来の樹脂の含有割合aは、樹脂発泡体を構成する樹脂の総量を基準とした含有割合である。
【0009】
上記樹脂発泡体は、気泡構造(セル構造)を有する。気泡構造(セル構造)としては、独立気泡構造、連続気泡構造、半連続半独立気泡構造(独立気泡構造と連続気泡構造が混在している気泡構造)などが挙げられる。好ましくは、樹脂発泡体の気泡構造は、半連続半独立気泡構造である。代表的には、本発明の樹脂発泡体は、樹脂組成物を発泡させることにより得られる。上記樹脂組成物は、樹脂発泡体を構成する樹脂を少なくとも含有する組成物である。
【0010】
本発明の実施形態によれば、石油由来の樹脂の含有割合aを上記範囲とし、かつ、見かけ密度(g/cm3)と石油由来の樹脂の含有割合a(%)とが上記関係を満足することにより、二酸化炭素排出量が抑制された樹脂発泡体を提供することができる。また、本発明によれば、見かけ密度と石油由来の樹脂の含有割合aとに着目し、これらの関係性を最適化することにより、二酸化炭素排出量の低減と衝撃吸収性とを両立することができる。上記樹脂発泡体は薄層ながらも、衝撃吸収性および柔軟性に優れる点でも有利である。換言すると、衝撃吸収性の向上を図りつつ、同時に、二酸化炭素排出量低減を実現したことが、本発明の大きな成果のひとつである。
【0011】
樹脂発泡体中、石油由来の樹脂の含有割合aは、好ましくは45重量%未満であり、より好ましくは40重量%未満である。このような範囲であれば、上記効果が顕著となる。
【0012】
好ましくは、上記樹脂発泡体は、植物由来の樹脂を含む。より好ましくは、植物由来のポリオレフィン系樹脂を含む。さらに好ましくは、植物由来のポリプロピレン系樹脂を含む。植物由来のポリプロピレン系樹脂を用いれば、上記効果が顕著となり、さらには、耐熱性に優れる樹脂発泡体を得ることができる。
【0013】
なお、石油由来の樹脂と植物由来の樹脂とは、バイオマス度(標準現代炭素に対する試料炭素の14C濃度の割合)で区別できる。石油由来の樹脂は、14C(放射性炭素14、半減期5730年)が含まない。一方、植物由来の樹脂は、14C(放射性炭素14、半減期5730年)を含む。上記植物由来の樹脂のバイオマス度は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。樹脂中の14Cの濃度は、加速器質量分析により測定することができる。
【0014】
樹脂発泡体中、植物由来の樹脂の含有割合bは、好ましくは50重量%より多く、より好ましくは45重量%以上であり、さらに好ましくは40重量%以上である。このような範囲であれば、上記効果が顕著となる。
【0015】
1つの実施形態においては、「-0.0025×[石油由来の樹脂の含有割合a(%)]+0.48」で算出される値は、好ましくは0.01以上、0.03以上または0.05以上であり得る。また、「-0.0025×[石油由来の樹脂の含有割合a(%)]+0.48」で算出される値は、0.5以下、0.4以下または0.3以下であり得る。
【0016】
A-2.樹脂発泡体の特性
上記樹脂発泡体の見かけ密度は、好ましくは0.4g/cm3以下であり、より好ましくは0.3g/cm3以下であり、さらに好ましくは0.2g/cm3以下であり、さらに好ましくは0.1g/cm3以下であり、さらに好ましくは0.08g/cm3以下であり、さらに好ましくは0.05g/cm3以下であり、さらに好ましくは0.04g/cm3以下であり、さらに好ましくは0.03g/cm3以下である。また、樹脂発泡体の見かけ密度は、好ましくは0.01g/cm3以上であり、より好ましくは0.02g/cm3以上であり、さらに好ましくは0.03g/cm3以上である。見かけ密度にて発泡性を判断できる。本発明においては、見かけ密度を上記範囲とすることにより、薄層でありながら、柔軟性および衝撃吸収性に優れる樹脂発泡体を得ることができる。また、二酸化炭素排出量の低減も可能となる。見かけ密度の測定方法は、後述する。
【0017】
上記樹脂発泡体の気泡率(セル率)は、好ましくは97%以下であり、より好ましくは96%以下である。上記樹脂発泡体の気泡率(セル率)は、好ましくは30%以上であり、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは60%以上である。このような範囲であれば、適度な柔軟性を有する樹脂発泡体を得ることができる。
【0018】
上記樹脂発泡体の気泡数密度は、好ましくは30個/mm2以上であり、より好ましくは50個/mm2以上であり、さらに好ましくは70個/mm2以上であり、さらに好ましくは80個/mm2以上であり、さらに好ましくは90個/mm2以上であり、さらに好ましくは100個/mm2以上であり、特に好ましくは110個/mm2以上であり、最も好ましくは120個/mm2以上である。このような範囲であれば、好ましく柔軟性を有し、かつ、打ち抜き加工性に優れる樹脂発泡体を得ることができる。また、気泡数密度が高いほど、圧縮した際にエネルギーを蓄えやすくなり、圧縮回復力に優れる樹脂発泡体を得ることができる。樹脂発泡体の気泡数密度の上限は、好ましくは400個/mm2であり、より好ましくは350個/mm2であり、さらに好ましくは、300個/mm2であり、さらに好ましくは250個/mm2であり、特に好ましくは200個/mm2である。樹脂発泡体の気泡数密度とは、樹脂発泡体の不作為に選択された断面で観察される気泡断面における数密度であり、樹脂発泡体断面の画像解析により求めることができる。
【0019】
上記樹脂発泡体の平均気泡径(平均セル径)は、好ましくは200μm以下であり、よりに好ましくは155μm以下であり、さらに好ましくは145μm以下であり、さらに好ましくは130μm以下であり、さらに好ましくは110μm以下であり、さらに好ましくは90μm以下であり、さらに好ましくは80μm以下であり、さらに好ましくは70μm以下である。このような範囲であれば、衝撃吸収性に優れる樹脂発泡体を得ることができる。1つの実施形態においては、樹脂発泡体の平均気泡径(平均セル径)は90μm以下である。また、上記樹脂発泡体の平均気泡径(平均セル径)は、好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは20μm以上であり、さらに好ましくは40μm以上である。平均気泡径(平均セル径)が上記範囲であれば、柔軟性および応力分散性に優れ、衝撃吸収性が好ましく発現する樹脂発泡体を得ることができる。また、圧縮回復性にも優れ、打ち抜き加工性および繰り返し衝撃に対する耐性に優れる樹脂発泡体を得ることができる。平均気泡径の測定方法は、後述する。
【0020】
上記樹脂発泡体の最大気泡径(セル径)は、好ましくは400μm以下であり、より好ましくは300μm以下であり、さらに好ましくは250μm以下であり、さらに好ましくは220μm以下であり、さらに好ましくは170μm以下であり、さらに好ましくは150μm以下であり、さらに好ましくは130μm以下であり、さらに好ましくは120μm以下であり、さらに好ましくは110μm以下であり、さらに好ましくは100μm以下である。また、上記樹脂発泡体の最大気泡径(セル径)は、好ましくは40μm以上であり、より好ましくは60μm以上であり、さらに好ましくは70μm以上であり、特に好ましくは80μm以上である。このような範囲であれば、衝撃吸収性に特に優れる樹脂発泡体を得ることができる。1つの実施形態においては、樹脂発泡体の最大気泡径(セル径)は、170μm以下とされる。
【0021】
上記樹脂発泡体の気泡径(セル径)の変動係数は、好ましくは0.6以下であり、より好ましくは0.55以下であり、さらに好ましくは0.5以下であり、さらに好ましくは0.45以下であり、さらに好ましくは0.40以下である。このような範囲であれば、衝撃による変形が均一になり、局所的な応力負荷が防止され、応力分散性に優れ、かつ、衝撃吸収性に特に優れる樹脂発泡体を得ることができる。当該変動係数は、小さいほど好ましいがその下限は、例えば、0.15(好ましくは0.1、より好ましくは0.01)である。気泡径の変動係数の測定方法は、後述する。
【0022】
上記樹脂発泡体の気泡構造が半連続半独立気泡構造である場合、その中の独立気泡構造の割合は、好ましくは40%以下であり、より好ましくは30%以下である。本明細書において、樹脂発泡体の独立気泡構造の割合は、例えば、温度23℃、湿度50%の環境下で、測定対象を水分中に沈め、その後の質量を測定し、その後、80℃のオーブンで十分に乾燥させた後、再度質量を測定して求められる。また、連続気泡であれば水分を保持できるため、その質量分を連続気泡として測定して求められる。
【0023】
上記樹脂発泡体が有する気泡のアスペクト比は、好ましくは4以下であり、より好ましくは3以下であり、さらに好ましくは2以下であり、さらに好ましくは1.5以下であり、特に好ましくは1.3以下である。このような範囲であれば、衝撃吸収性に優れる樹脂発泡体を提供することができる。樹脂発泡体が有する気泡のアスペクト比は、例えば1以上であり、好ましくは1.1より大きい。樹脂発泡体が有する気泡のアスペクト比の測定方法は、後述する。
【0024】
上記樹脂発泡体の気泡壁(セル壁)の厚みは、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.3μm以上であり、さらに好ましくは0.5μm以上であり、特に好ましくは0.7μm以上であり、最も好ましくは1μm以上である。また、上記樹脂発泡体の気泡壁(セル壁)の厚みは、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは8μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下であり、特に好ましくは4μm以下であり、最も好ましくは3μm以下である。このような範囲であれば、適切な強度を有する樹脂発泡体を得ることができる。このような樹脂発泡体は、打ち抜き加工性に優れ、打ち抜き時の千切れ、発塵、切れ残り等が防止される。また、気泡壁の厚みが上記範囲であれば、柔軟性および応力分散性により優れる樹脂発泡体を得ることができる。気泡壁の厚みは、樹脂発泡体の気泡部の拡大画像を取り込み、同計測器の解析ソフトを用いて、画像解析することにより、測定することができる。
【0025】
上記樹脂発泡体の50%圧縮荷重は、好ましくは40N/cm2以下であり、より好ましくは20N/cm2以下であり、さらに好ましくは10N/cm2以下であり、さらに好ましくは5N/cm2以下であり、さらに好ましくは4N/cm2以下であり、さらに好ましくは3N/cm2以下であり、さらに好ましくは2N/cm2以下である。このような範囲であれば、好ましい柔軟性および衝撃吸収性を有する樹脂発泡体を得ることができる。樹脂発泡体の50%圧縮荷重の下限は、例えば、0.5N/cm2である。樹脂発泡体の50%圧縮荷重とは、圧縮率が50%となるまで圧縮したときの応力(N)を単位面積(1cm2)当たりに換算したものである。
【0026】
上記樹脂発泡体の25%圧縮荷重は、好ましくは25N/cm2以下であり、より好ましくは15N/cm2以下であり、さらに好ましくは10N/cm2以下であり、さらに好ましくは6N/cm2以下であり、さらに好ましくは5N/cm2以下であり、さらに好ましくは3N/cm2以下であり、さらに好ましくは2N/cm2以下であり、さらに好ましくは1.5N/cm2以下である。このような範囲であれば、好ましい柔軟性および衝撃吸収性を有する樹脂発泡体を得ることができる。樹脂発泡体の25%圧縮荷重の下限は、例えば、0.5N/cm2である。樹脂発泡体の25%圧縮荷重とは、圧縮率が50%となるまで圧縮したときの応力(N)を単位面積(1cm2)当たりに換算したものである。
【0027】
上記樹脂発泡体の厚みは、好ましくは8000μm以下であり、より好ましくは5000μm以下であり、さらに好ましくは4000μm以下であり、特に好ましくは2000μm以下である。また、樹脂発泡体の厚みは、好ましくは100μm以上であり、より好ましくは200μm以上であり、さらに好ましくは300μm以上であり、特に好ましくは400μm以上である。このような範囲であれば、微細かつ均一な気泡構造を形成することができ、優れた衝撃吸収性を発現し得る点で有利である。
【0028】
上記樹脂発泡体の圧着時厚み変化率は、好ましくは5%以下であり、より好ましくは4%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは2%以下であり、最も好ましくは1%以下である。このような範囲であれば、回復性が良好であり、打ち抜き加工性に優れる樹脂発泡体を得ることができる。なお、本明細書において、「樹脂発泡体の圧着時厚み変化率」は、樹脂発泡体と粘着体とを積層し、5kgローラーで3往復し圧着して貼り合わせ、30分間経過させた際の厚み変化率であり、下記式で求められる変化率である。
圧着時の厚み変化率[%]=(圧着前の厚み-圧着後の厚み)/圧着前の厚み)×100
【0029】
上記樹脂発泡体の衝撃吸収性は、好ましくは40%以上であり、より好ましくは55%以上であり、さらに好ましくは60%以上であり、特に好ましくは70%以上であり、最も好ましくは80%以上である。衝撃吸収性は、以下のようにして測定される。
・衝撃力センサー上に、樹脂発泡体、両面テープ(品番:No.5603W、日東電工製)、PETフィルム(品番:ダイヤホイルMRF75、三菱樹脂製)をこの順に配置して試験体を形成する。PETフィルム上方50cmの高さから、66gの鉄球を試験体に落下させて、衝撃力F1を測定する。
・また、衝撃力センサーに直接、上記のように鉄球を落下させて、ブランクの衝撃力F0を測定する。
・F1、F0から、(F0-F1)/F0×100の式により、衝撃吸収性(%)を算出する。
【0030】
上記樹脂発泡体の応力保持力は、好ましくは60%以上であり、より好ましくは63%以上である。また、上記樹脂発泡体の応力保持力は、好ましくは100%以下であり、より好ましくは95%以下である。このような範囲であれば、応力分散性に優れ、薄膜でも優れた衝撃吸収性を発揮し得る樹脂発泡体を得ることができる。本明細書において、上記応力保持力とは、樹脂発泡体(幅10mm×長さ100mm)を長さ方向に300m/minの速度で20%延伸し、延伸直後の引張強度と、延伸後120秒保持した後の引張強度との比率(120秒保持後の引張強度/延伸直後の応力保持力×100)である。
【0031】
1つの実施形態において、樹脂発泡体を構成する樹脂として、融点(樹脂発泡体を構成する樹脂の融点)+20℃におけるダイスウェル比が1.5以下の樹脂が用いられる。すなわち、1つの実施形態においては、樹脂発泡体を形成する樹脂の発泡前の融点+20℃におけるダイスウェル比が、1.5以下である。ダイスウェル比が上記範囲の樹脂を用いれば、気泡サイズの小さい気泡を含み、密度の低い樹脂発泡体を得ることができる。このような樹脂発泡体は、衝撃吸収性に優れる。また、二酸化炭素排出量が少ない点でも有利である。樹脂発泡体を形成する樹脂の発泡前の融点+20℃におけるダイスウェル比は、好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1.25以下である。上記樹脂(発泡前)のダイスウェル比の下限値は、例えば、1.05(好ましくは1.02、より好ましくは1.01)である。また、樹脂発泡体を構成する樹脂(すなわち、発泡後の樹脂)の融点+20℃におけるダイスウェル比は、好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1.25以下であり、さらに好ましくは1.1以下である。上記樹脂(発泡後)のダイスウェル比の下限値は、例えば、1.05(好ましくは1.02、より好ましくは1.01)である。本明細書において、ダイスウェル比とは、溶融状態の測定対象サンプル(樹脂、樹脂組成物)をダイより吐出させたときの吐出された樹脂の直径をダイの直径で割った値を意味する。ダイスウェル比は、融点+20℃で溶融状態にした樹脂を、長さ10mm、口径1mmφのダイを用い、せん断速度20mm/sで押し出し、得られた紐状の成形物の直径を測定して、成型物の直径(mm)/ダイ口径(mm)の式により、算出される。また、樹脂の融点は、示差走査熱量(DSC)測定で得られる吸熱ピークのピークトップ温度により測定される。示差走査熱量(DSC)測定は、示差走査熱量計(例えば、商品名「Q-2000」、TA Instruments社)を用いて、サンプル重さ3mg、昇温速度10℃/min.の条件にて測定される。ピークを2つ以上有する場合は、高温側のピークトップ温度を融点とする。
【0032】
上記樹脂発泡体を構成する樹脂の溶融張力は、好ましくは10cN以上であり、より好ましくは15cN以上であり、さらに好ましくは20cN以上であり、特に好ましくは25cN以上である。また、樹脂発泡体を構成する樹脂の溶融張力は、好ましくは50cN以下であり、より好ましくは45cN以下である。このような範囲であれば、気泡サイズの小さい気泡を含み、密度の低い樹脂発泡体を得ることができる。このような樹脂発泡体は、衝撃吸収性に優れる。また、二酸化炭素排出量が少ない点でも有利である。溶融張力は、測定対象化合物の融点+20℃における溶融張力である。溶融張力の測定方法は下記のとおりである。
【0033】
・樹脂の溶融張力測定方法
測定対象サンプル(樹脂、樹脂組成物)を、ツイン・キャピラリー・レオメーター「RH7-2型」(ロザンドプレシジョン社製)を用いて、当該樹脂の融点よりも20℃高い温度、オリフィス径1mmφの条件で、押出速度8.8mm/分で溶融ストランド状に押し出し、ストランドを引き取り速度0.5m/分で引き取り、引き取り速度を0.1m/分ずつ上げていき、ストランド状の樹脂が破断した時の溶融張力を、「溶融張力」とする。
【0034】
上記樹脂発泡体の形状としては、目的に応じて、任意の適切な形状を採用し得る。このような形状としては、代表的には、シート状であり、この場合、本発明の樹脂発泡体は樹脂発泡層として扱い得る。
【0035】
上記樹脂発泡体の形状がシート状の場合(すなわち、樹脂発泡層の場合)、その厚みは、好ましくは5000μm以下であり、より好ましくは4000μm以下であり、さらに好ましくは3000μm以下であり、特により好ましくは2500μm以下である。また、樹脂発泡体の厚みは、好ましくは30μm以上であり、より好ましくは35μm以上であり、さらに好ましくは40μm以上であり、さらにより好ましくは45μm以上である。本発明の樹脂発泡体は、薄型であっても、優れた衝撃吸収性を発揮し得る。このような樹脂発泡体は、微小クリアランスに適用される保護材として好適に用いられ得る。
【0036】
本発明の樹脂発泡体は、その片面または両面に熱溶融層を有していてもよい。熱溶融層を有する樹脂発泡体は、例えば、樹脂発泡体を構成する樹脂組成物の溶融温度以上に加温された一対の加熱ロールを用いて、樹脂発泡体(または樹脂発泡体の前駆体)を圧延することにより、得られ得る。
【0037】
熱溶融層の気泡率(セル率)は、好ましくは30%以下であり、より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、特に好ましくは5%以下であり、最も好ましくは0%である。熱溶融層の厚みは、好ましくは0.60mm以下であり、より好ましくは0.40mm以下であり、さらに好ましくは0.20mm以下である。また、熱溶融層の厚みは、好ましくは0.05mm以上であり、より好ましくは0.07mm以上であり、さらに好ましくは0.09mm以上である。
【0038】
A-3.樹脂発泡体の形成方法
上記樹脂発泡体は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法によって形成することができる。このような方法としては、代表的には、樹脂材料(ポリマー)を含む樹脂組成物を発泡させる方法が挙げられる。樹脂組成物は、任意の適切な樹脂材料(ポリマー)を含む。
【0039】
1つの実施形態においては、上記樹脂組成物の融点+20℃におけるダイスウェル比が1.5以下(好ましくは、1.25以下)の樹脂組成物が用いられる。このような範囲であれば、気泡サイズの小さい気泡を含み、密度の低い樹脂発泡体を得ることができる。このような樹脂発泡体は、衝撃吸収性に優れる。また、二酸化炭素排出量が少ない点でも有利である。上記樹脂組成物のダイスウェル比の下限値は、例えば、1.05(好ましくは1.02、より好ましくは1.01)である。なお、樹脂組成物の融点とは、樹脂組成物中の化合物の内、最も高い融点を有する化合物の融点を意味する。
【0040】
上記樹脂組成物の溶融張力は、好ましくは10cN以上であり、より好ましくは15cN以上であり、さらに好ましくは20cN以上であり、特に好ましくは25cN以上である。また、樹脂組成物の溶融張力は、好ましくは50cN以下であり、より好ましくは45cN以下である。このような範囲であれば、気泡サイズの小さい気泡を含み、密度の低い樹脂発泡体を得ることができる。このような樹脂発泡体は、衝撃吸収性に優れる。また、二酸化炭素排出量が少ない点でも有利である。上記のとおり、溶融張力は、測定対象化合物(すなわち、樹脂組成物)の融点+20℃における溶融張力であり、樹脂組成物の融点とは、樹脂組成物中の化合物の内、最も高い融点を有する化合物の融点である。
【0041】
上記ポリマーとしては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エステル系樹脂、ゴム系樹脂などが挙げられる。上記ポリマーは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
ポリマーの含有割合は、樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは30重量部以上であり、より好ましくは35重量部以上であり、さらに好ましくは40重量部以上である。また、ポリマーの含有割合は、樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは95重量部以下であり、より好ましくは90重量部以下であり、さらに好ましくは80重量部以下であり、特に好ましくは60重量部以下である。このような範囲であれば、柔軟性および応力分散性により優れる樹脂発泡体を得ることができる。
【0043】
1つの実施形態においては、上記ポリマーとして、ポリオレフィン系樹脂が用いられる。
【0044】
好ましくは、ポリオレフィン系樹脂として、植物由来のポリオレフィン系樹脂が用いられ、より好ましくは植物由来のポリプロピレン系樹脂が用いられる。植物由来のポリオレフィン系樹脂(好ましくは、プロピレン系樹脂)と、石油由来のポリオレフィン系樹脂とを併用してもよい。
【0045】
ポリオレフィン系樹脂の含有割合は、上記ポリマー100重量部に対して、好ましくは50重量部~100重量部であり、より好ましくは70重量部~100重量部であり、さらに好ましくは90重量部~100重量部であり、特に好ましくは95重量部~100重量部であり、最も好ましくは100重量部である。
【0046】
ポリオレフィン系樹脂としては、好ましくは、ポリオレフィンおよびポリオレフィン系エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、より好ましくは、ポリオレフィンとポリオレフィン系エラストマーとが併用される。ポリイレフンおよびポリオレフィン系エラストマーはそれぞれ、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書において、「ポリオレフィン」と称する場合には、「ポリオレフィン系エラストマー」は含まれないものとする。
【0047】
ポリオレフィン系樹脂としてポリオレフィンとポリオレフィン系エラストマーを併用する場合、ポリオレフィンとポリオレフィン系エラストマーの重量比率(ポリオレフィン/ポリオレフィン系エラストマー)は、好ましくは1/99~99/1であり、より好ましくは10/90~90/10であり、さらに好ましくは20/80~80/20であり、特に好ましくは30/70~70/30である。1つの実施形態においては、ポリオレフィンとポリオレフィン系エラストマーの重量比率(ポリオレフィン/ポリオレフィン系エラストマー)は、好ましくは25/75~75/25であり、より好ましくは35/65~65/35である。このような範囲であれば、圧縮回復性に優れて、打ち抜き加工時に加工前後での形状変化(特に、厚み変化)が抑制され、かつ、適切な強度を有し、打ち抜き加工性に優れた樹脂発泡体を得ることができる。
【0048】
1つの実施形態においては、ポリオレフィンとして、植物由来のポリオレフィン(好ましくはポリプロピレン系重合体)が用いられ、ポリオレフィン系エラストマーとして植物由来または石油由来のポリオレフィン系エラストマーが用いられる。この場合、ポリオレフィン(すなわち、植物由来のポリオレフィン)の重量比率は、ポリオレフィンとポリオレフィン系エラストマーとの合計重量に対して、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは53重量%以上であり、さらに好ましくは60重量%以上であり、さらに好ましくは70重量%以上である。このような範囲であれば、本発明の効果が顕著となる。ポリオレフィン(すなわち、植物由来のポリオレフィン)の重量比率の上限は、ポリオレフィンとポリオレフィン系エラストマーとの合計重量に対して、例えば、99%(好ましくは100%)である。
【0049】
ポリオレフィンとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なポリオレフィンを採用し得る。このようなポリオレフィンとしては、例えば、直鎖状のポリオレフィン、分岐鎖状の(分岐鎖を有する)ポリオレフィンなどが挙げられる。1つの実施形態においては、ポリオレフィン系樹脂として、分岐鎖状のポリオレフィンが用いられる。この実施形態においては、ポリオレフィンとして、分岐状のポリオレフィンのみを用いてもよく、分岐状のポリオレフィンと直鎖状のポリオレフィンとを併用して用いてもよい。分岐状のポリオレフィンを用いることにより、平均気泡径が小さく、衝撃吸収性に優れる樹脂発泡体を得ることができる。分岐状のポリオレフィンの含有割合は、ポリオレフィン100重量部に対して、好ましくは30重量部以上であり、より好ましくは50重量部以上である。また、分岐状のポリオレフィンの含有割合は、ポリオレフィン100重量部に対して、好ましくは100重量部以下であり、より好ましくは80重量部以下である。
【0050】
ポリオレフィンは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせてもよい。1種のポリオレフィンを用いる場合、当該ポリオレフィンとして、植物由来のポリオレフィンが用いられ得る。2種以上のポリオレフィンが用いられる場合、そのうち、少なくとも1種が、植物由来のポリオレフィンであり得る。植物由来のポリオレフィンの含有割合は、ポリオレフィン配合量100重量部に対して、好ましくは50重量部以上であり、より好ましくは80重量部以上であり、さらに好ましくは90重量部以上である。特に好ましくは、用いられるポリオレフィンのすべてが、植物由来のポリオレフィンである。植物由来のポリオレフィンとは、上記のとおり、14C(放射性炭素14、半減期5730年)を含むポリオレフィンを意味する。
【0051】
上記ポリオレフィンとしては、例えば、α-オレフィン由来の構成単位を含むポリマーが挙げられる。ポリオレフィンは、α-オレフィン由来の構成単位のみから構成されていてもよく、α-オレフィン由来の構成単位と、α-オレフィン以外のモノマー由来の構成単位とから構成されていてもよい。ポリオレフィンが共重合体である場合、その共重合形態としては、任意の適切な共重合形態を採用し得る。例えば、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーなどが挙げられる。
【0052】
ポリオレフィンを構成し得るα-オレフィンとしては、例えば、炭素数2~8(好ましくは2~6、より好ましくは2~4)のα-オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-へプテン、1-オクテンなど)が好ましい。α-オレフィンは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0053】
ポリオレフィンを構成するα-オレフィン以外のモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニルアルコールなどのエチレン性不飽和単量体が挙げられる。α-オレフィン以外のモノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0054】
ポリオレフィンとしては、具体的には、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(プロピレンホモポリマー)、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレンとエチレン以外のα-オレフィンとの共重合体、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体、エチレンとプロピレンとエチレンおよびプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体、プロピレンとエチレン性不飽和単量体との共重合体などが挙げられる。
【0055】
1つの実施形態においては、ポリオレフィンとして、プロピレン由来の構成単位を有するポリプロピレン系重合体が用いられる。ポリプロピレン系重合体としては、例えば、ポリプロピレン(プロピレンホモポリマー)、エチレンとプロピレンとの共重合体、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体などが挙げられ、好ましくはポリプロピレン(プロピレンホモポリマー)である。ポリプロピレン系重合体は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
上記植物由来のポリオレフィンは、好ましくは、植物由来のポリプロピレン系重合体である。植物由来のポリプロピレン系重合体は、植物由来のプロピレンのホモポリマーであってもよく、植物由来のプロピレンとその他のモノマーとのコポリマーであってもよい。コポリマーである場合、当該コポリマー中、植物由来のプロピレンに基づく構成単位の含有割合は、植物由来のポリプロピレン系重合体100重量部に対して、好ましくは50重量部以上であり、より好ましくは70重量部以上である。
【0057】
上記植物由来のポリプロピレン系重合体は、バイオマスを原料として製造されたポリプロピレンであり得る。例えば、発酵生産されたプロパノールを脱水して製造したバイオプロピレンを用いて製造されたポリプロピレン系重合体でもよい。また、バイオエチレンの合成反応の際に生成したバイオプロピレンを用いて製造されたポリプロピレン系重合体でもよい。さらにバイオエタノールから合成したバイオプロピレンを用いて製造されたポリプロピレン系重合体でもよい。
【0058】
ポリオレフィンの温度230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.25g/10分以上であり、より好ましくは0.3g/10分以上であり、さらに好ましくは0.35g/10分以上である。また、ポリオレフィンの温度230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは20g/10分以下であり、より好ましくは10g/10分以下であり、さらに好ましくは6g/10分以下であり、さらにより好ましくは5g/10分であり、特に好ましくは1g/10分以下であり、最も好ましくは0.6g/10分以下である。なお、本明細書において、上記メルトフローレート(MFR)は、ISO1133(JIS-K-7210)に基づき、温度230℃、荷重2.16kgf(21.2N)で測定されたMFRをいうものとする。1つの実施形態においては、樹脂発泡体を構成するポリオレフィンのメルトフローレートによって、当該樹脂のダイスウェル比およびせん断粘度が制御される。
【0059】
上記植物由来のポリオレフィンの温度230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは20g/10分未満であり、より好ましくは10g/10分未満であり、さらに好ましくは6g/10分未満であり、さらにより好ましくは5g/10分未満であり、特に好ましくは1g/10分未満であり、最も好ましくは0.6g/10分以下である。また、上記植物由来のポリオレフィンの温度230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.25g/10分以上であり、より好ましくは0.3g/10分以上であり、さらに好ましくは0.35g/10分以上である。このような範囲であれば、本発明の効果が顕著となる。特に衝撃吸収性に優れる樹脂発泡体が得られる点で有利である。
【0060】
1つの実施形態においては、上記植物由来のポリオレフィンの融点+20℃におけるダイスウェル比は、1.5以下(好ましくは、1.25以下)である。このような範囲であれば、気泡サイズの小さい気泡を含み、密度の低い樹脂発泡体を得ることができる。このような樹脂発泡体は、衝撃吸収性に優れる。また、二酸化炭素排出量が少ない点でも有利である。上記植物由来のポリオレフィンのダイスウェル比の下限値は、例えば、1.05(好ましくは1.02、より好ましくは1.01)である。
【0061】
上記植物由来のポリオレフィンの溶融張力は、好ましくは10cN以上であり、より好ましくは15cN以上であり、さらに好ましくは20cN以上であり、特に好ましくは25cN以上である。また、植物由来のポリオレフィンの溶融張力は、好ましくは50cN以下であり、より好ましくは45cN以下である。このような範囲であれば、気泡サイズの小さい気泡を含み、密度の低い樹脂発泡体を得ることができる。このような樹脂発泡体は、衝撃吸収性に優れる。また、二酸化炭素排出量が少ない点でも有利である。
【0062】
ポリオレフィンの重量平均分子量は、好ましくは50000以上であり、より好ましくは55000以上であり、さらに好ましくは60000以上である。また、ポリオレフィンの重量平均分子量は、120000以下であり、より好ましくは110000以下であり、さらに好ましくは100000以下である。このような範囲であれば、当該樹脂のダイスウェル比およびせん断粘度を好ましく調整することができる。また、ポリオレフィンの分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、好ましくは7~10であり、より好ましくは6~9である。このような範囲であれば、当該樹脂のダイスウェル比およびせん断粘度を好ましく調整することができる。重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定(溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により求めることができる。
【0063】
ポリオレフィン系エラストマーとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なポリオレフィン系エラストマーを採用し得る。このようなポリオレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレン、塩素化ポリエチレン、ポリオレフィン成分とゴム成分とが物理的に分散したエラストマー、ポリオレフィン成分とゴム成分とがミクロ相分離した構造を有したエラストマーなどの、いわゆる非架橋型の熱可塑性オレフィン系エラストマー(TPO);マトリックスを形成する樹脂成分A(オレフィン系樹脂成分A)およびドメインを形成するゴム成分Bを含む混合物を、架橋剤の存在下、動的に熱処理することにより得られ、マトリックス(海相)である樹脂成分A中に、架橋ゴム粒子がドメイン(島相)として細かく分散した海島構造を有する多相系のポリマーである動的架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマー(TPV);などが挙げられる。
【0064】
ポリオレフィン系エラストマーは、好ましくは、ゴム成分を含む。このようなゴム成分としては、特開平08-302111号公報、特開2010-241934号公報、特開2008-024882号公報、特開2000-007858号公報、特開2006-052277号公報、特開2012-072306号公報、特開2012-057068号公報、特開2010-241897号公報、特開2009-067969号公報、再表03/002654号公報などに記載のものが挙げられる。
【0065】
ポリオレフィン成分とオレフィン系ゴム成分とがミクロ相分離した構造を有したエラストマーとしては、具体的には、ポリプロピレン樹脂(PP)とエチレン-プロピレンゴム(EPM)とからなるエラストマー、ポリプロピレン樹脂(PP)とエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)とからなるエラストマーなどが挙げられる。ポリオレフィン成分とオレフィン系ゴム成分の重量比(ポリオレフィン成分/オレフィン系ゴム)は、好ましくは90/10~10/90であり、より好ましくは80/20~20/80である。
【0066】
動的架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマー(TPV)は、一般的に、非架橋型の熱可塑性オレフィン系エラストマー(TPO)より、弾性率が高く、かつ圧縮永久歪みも小さい。これにより、回復性が良好であり、樹脂発泡体とした場合に優れた回復性を示し得る。
【0067】
動的架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマー(TPV)とは、上述したように、マトリックスを形成する樹脂成分A(オレフィン系樹脂成分A)およびドメインを形成するゴム成分Bを含む混合物を、架橋剤の存在下、動的に熱処理することにより得られ、マトリックス(海相)である樹脂成分A中に、架橋ゴム粒子がドメイン(島相)として細かく分散した海島構造を有する多相系のポリマーである。
【0068】
動的架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマー(TPV)としては、例えば、特開2000-007858号公報、特開2006-052277号公報、特開2012-072306号公報、特開2012-057068号公報、特開2010-241897号公報、特開2009-067969号公報、再表03/002654号等に記載のものなどが挙げられる。
【0069】
動的架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマー(TPV)としては、市販品を用いてもよく、例えば、「ゼオサーム」(日本ゼオン社製)、「サーモラン」(三菱化学社製)、「サーリンク3245D」(東洋紡績株式会社製)などが挙げられる。
【0070】
ポリオレフィン系エラストマーの温度230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは1.5g/10分以上であり、より好ましくは2g/10分以上である。また、ポリオレフィン系エラストマーの温度230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは25g/10分以下であり、より好ましくは20g/10分であり、さらに好ましくは15g/10分である。このようにすれば、ポリオレフィン系エラストマーの溶融張力が好ましく調整され、その結果、本発明の効果が顕著となる。
【0071】
1つの実施形態においては、温度230℃におけるメルトフローレート(MFR)が上記の範囲内で異なる2種以上のポリオレフィン系エラストマーが併用される。この場合、温度230℃におけるメルトフローレート(MFR)が、好ましくは1.5g/10分以上8g/10分未満(より好ましくは2g/10分~5g/10分)のポリオレフィン系エラストマー(低MFRポリオレフィン系エラストマー)と、温度230℃におけるメルトフローレート(MFR)が好ましくは8g/10分~25g/10分(より好ましくは9g/10分~20g/10分であり、さらに好ましくは10g/10分~20g/10分である)のポリオレフィン系エラストマー(高MFRポリオレフィン系エラストマー)とが併用され得る。このようにすれば、ポリオレフィン系エラストマーの溶融張力が好ましく調整され、その結果、本発明の効果が顕著となる。
【0072】
上記低MFRポリオレフィン系エラストマーの高MFRポリオレフィン系エラストマーに対するの配合比(低MFRポリオレフィン系エラストマー/高MFRポリオレフィン系エラストマー;重量比)は、好ましくは1.5~5であり、より好ましくは1.8~3.5であり、特に好ましくは2~3である。このような範囲であれば、ポリオレフィン系エラストマーの溶融張力が好ましく調整され、その結果、本発明の効果が顕著となる。
【0073】
ポリオレフィン系エラストマーの溶融張力は、好ましくは5cN以上であり、より好ましくは10cN以上である。また、ポリオレフィン系エラストマーの溶融張力は、好ましくは50cN以下である。1つの実施形態においては、樹脂発泡体を構成するポリオレフィン系エラストマーの溶融張力によって、当該樹脂のダイスウェル比およびせん断粘度が制御される。
【0074】
ポリオレフィン系エラストマーのJIS A硬度は、好ましくは30°以上であり、より好ましくは40°以上であり、さらに好ましくは45°以上であり、最も好ましくは50°以上である。また、ポリオレフィン系エラストマーのJIS A硬度は、好ましくは95°以下であり、より好ましくは90°以下であり、さらに好ましくは88°以下であり、特に好ましくは85°以下であり、最も好ましくは83°である。なお、JIS A硬度とは、ISO7619(JIS K6253)に基づいて測定される。
【0075】
1つの実施形態においては、上記樹脂発泡体(すなわち、樹脂組成物)は、充填材をさらに含み得る。充填材を含有させることにより、気泡壁(セル壁)を変形させるのに大きなエネルギーを必要とする樹脂発泡体を形成することができ、当該樹脂発泡体は、優れた衝撃吸収性を発揮する。また、充填材を含有させることにより、微細かつ均一な気泡構造を形成することができ、優れた衝撃吸収性を発現し得る点でも有利である。充填材は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
上記充填材の含有割合は、樹脂発泡体を構成するポリマー100重量部に対して、好ましくは10重量部以上であり、より好ましくは30重量部以上であり、さらに好ましくは50重量部以上である。また、上記充填材の含有割合は、樹脂発泡体を構成するポリマー100重量部に対して、好ましくは150重量部以下であり、より好ましくは130重量部以下であり、さらに好ましくは100重量部以下である。このような範囲であれば、上記効果が顕著となる。
【0077】
1つの実施形態においては、上記充填材は無機物である。無機物である充填材を構成する材料としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウムウィスカ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、結晶質シリカ、非晶質シリカ、金属(例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル)、カーボン、グラファイト等が挙げられる。
【0078】
1つの実施形態においては、上記充填材は有機物である。有機物である充填材を構成する材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド等が挙げられる。
【0079】
上記充填材として、難燃剤を用いてもよい。難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤などが挙げられる。好ましくは、安全性の観点から、ノンハロゲン-ノンアンチモン系難燃剤が用いられる。
【0080】
ノンハロゲン-ノンアンチモン系難燃剤としては、例えば、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ニッケル、コバルト、スズ、亜鉛、銅、鉄、チタン、ホウ素等を含む化合物が挙げられる。このような化合物(無機化合物)としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム・酸化ニッケルの水和物、酸化マグネシウム・酸化亜鉛の水和物等の水和金属化合物などが挙げられる。
【0081】
上記充填材は、任意の適切な表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、シランカップリング処理、ステアリン酸処理などが挙げられる。
【0082】
上記充填材のかさ密度は、好ましくは、好ましくは0.8g/cm3以下であり、より好ましくは0.6g/cm3以下であり、さらに好ましくは0.4g/cm3以下であり、特に好ましくは0.3g/cm3以下である。このような範囲であれば、分散性よく充填材を含有させることができ、充填材の含有量を少なくしながらも、充填材添加効果が十分に発揮され得る。充填材の含有量が少ない樹脂発泡体は、高発泡、柔軟、かつ応力分散性および外観に優れる点で有利である。充填材のかさ密度の下限値は、例えば、0.01g/cm3であり、好ましくは0.05g/cm3であり、より好ましくは0.1g/cm3である。
【0083】
上記充填材の数平均粒子径(1次粒子径)は、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは3μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。このような範囲であれば、分散性よく充填材を含有させることができ、かつ、均一な気泡構造を形成することができる。その結果、応力分散性および外観に優れる樹脂発泡体を得ることができる。充填材の数平均粒子径の下限値は、例えば、0.1μmである。充填材の数平均粒子径は、水100gに充填剤を1gを混合して調製した懸濁液をサンプルとして、粒度分布計(MicrtracII、マイクロトラック・ベル株式会社)を用いて、測定することができる。
【0084】
上記充填材の比表面積は、好ましくは2m2/g以上であり、より好ましくは4m2/g以上であり、さらに好ましくは6m2/g以上である。このような範囲であれば、分散性よく充填材を含有させることができ、かつ、均一な気泡構造を形成することができる。その結果、応力分散性および外観に優れる樹脂発泡体を得ることができる。充填材の比表面積の上限値は、例えば、20m2/gである。充填材の比表面積は、BET法で、すなわち、吸着占有面積が既知である分子を、液体窒素による低温下で、充填材表面に吸着させ、その吸着量から測定することができる。
【0085】
樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分が含まれていてもよい。このような他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。このような他の成分としては、例えば、ゴム、樹脂材料として配合されているポリマー以外の樹脂、軟化剤、脂肪族系化合物、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、分散剤、可塑剤、カーボン、帯電防止剤、界面活性剤、架橋剤、増粘剤、防錆剤、シリコーン系化合物、張力改質剤、収縮防止剤、流動性改質剤、ゲル化剤、硬化剤、補強剤、発泡剤、発泡核剤、着色剤(顔料や染料等)、pH調整剤、溶剤(有機溶剤)、熱重合開始剤、光重合開始剤、滑剤、結晶核剤、結晶化促進剤、加硫剤、表面処理剤、分散助剤などが挙げられる。
【0086】
上記のとおり、樹脂発泡体は、代表的には、樹脂組成物を発泡させて得られる。発泡の方法(気泡の形成方法)としては、物理的方法や化学的方法など、発泡成形に通常用いられる方法が採用できる。すなわち、樹脂発泡体は、代表的には、物理的方法により発泡して形成された発泡体(物理発泡体)であってもよいし、化学的方法により発泡して形成された発泡体(化学発泡体)であってもよい。物理的方法は、一般的に、空気や窒素等のガス成分をポリマー溶液に分散させて、機械的混合により気泡を形成させるもの(機械発泡体)である。化学的方法は、一般的に、ポリマーベースに添加された発泡剤の熱分解により生じたガスによりセルを形成し、発泡体を得る方法である。
【0087】
発泡成形に付す樹脂組成物は、例えば、構成成分を、任意の適切な溶融混練装置、例えば、開放型のミキシングロール、非開放型のバンバリーミキサー、1軸押出機、2軸押出機、連続式混練機、加圧ニーダーなど、任意の適切な手段を用いて混合することにより調製すればよい。
【0088】
・樹脂発泡体を形成させる実施形態1
樹脂発泡体を形成させる一つの実施形態1としては、例えば、エマルション樹脂組成物(樹脂材料(ポリマー)などを含むエマルション)を機械的に発泡させて起泡化させる工程(工程A)を経て樹脂発泡体を形成する形態が挙げられる。起泡装置としては、例えば、高速せん断方式の装置、振動方式の装置、加圧ガスの吐出方式の装置などが挙げられる。これらの起泡装置の中でも、気泡径の微細化、大容量作製の観点から、高速せん断方式の装置が好ましい。樹脂発泡体を形成させるこの一つの実施形態1は、どのような樹脂組成物からの形成にも適用可能である。
【0089】
エマルションの固形分濃度は、成膜性の観点から高い方が好ましい。エマルションの固形分濃度は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上である。
【0090】
機械的撹拌により起泡した際の気泡は、気体(ガス)がエマルション中に取り込まれたものである。ガスとしては、エマルションに対して不活性であれば、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切なガスを採用し得る。このようなガスとしては、例えば、空気、窒素、二酸化炭素などが挙げられる。
【0091】
上記方法により起泡化したエマルション樹脂組成物(気泡含有エマルション樹脂組成物)を基材上に塗工して乾燥する工程(工程B)を経ることによって、本発明の樹脂発泡体を得ることができる。基材としては、例えば、剥離処理したプラスチックフィルム(剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム等)、プラスチックフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)等が挙げられる。
【0092】
工程Bにおいて、塗工方法、乾燥方法としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な方法を採用できる。工程Bは、基材上に塗布した気泡含有エマルション樹脂組成物を50℃以上125℃未満で乾燥する予備乾燥工程B1と、その後さらに125℃以上200℃以下で乾燥する本乾燥工程B2を含んでいることが好ましい。
【0093】
予備乾燥工程B1と本乾燥工程B2を設けることにより、急激な温度上昇による気泡の合一化、気泡の破裂を防止できる。特に、厚みの小さい発泡シートでは温度の急激な上昇により気泡が合一化、破裂するので、予備乾燥工程B1を設ける意義は大きい。予備乾燥工程B1における温度は、好ましくは50℃~100℃である。予備乾燥工程B1の時間は、好ましくは0.5分~30分であり、より好ましくは1分~15分である。本乾燥工程B2における温度は、好ましくは130℃~180℃以下であり、より好ましくは130℃~160℃である。本乾燥工程B2の時間は、好ましくは0.5分~30分であり、より好ましくは1分~15分である。
【0094】
・樹脂発泡体を形成させる実施形態2
樹脂発泡体を形成させる一つの実施形態2としては、樹脂組成物を発泡剤により発泡させて発泡体を形成する形態が挙げられる。発泡剤としては、発泡成形に通常用いられるものを使用でき、環境保護及び被発泡体に対する低汚染性の観点から、高圧の不活性ガスを用いることが好ましい。
【0095】
不活性ガスとしては、樹脂組成物に対して不活性で且つ含浸可能なものであれば、任意の適切な不活性ガスを採用し得る。このような不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素ガス、空気などが挙げられる。これらのガスは混合して用いてもよい。これらのうち、樹脂材料(ポリマー)への含浸量が多く、含浸速度の速いという観点から、二酸化炭素が好ましい。
【0096】
不活性ガスは超臨界状態であることが好ましい。すなわち、超臨界状態の二酸化炭素を用いることが特に好ましい。超臨界状態では、樹脂組成物への不活性ガスの溶解度がより増大し、不活性ガスの高濃度の混入が可能であるとともに、急激な圧力降下時に不活性ガスが高濃度となるため、気泡核の発生が多くなり、その気泡核が成長してできる気泡の密度が、気孔率が同じであっても他の状態の場合より大きくなるため、微細な気泡を得ることができる。なお、二酸化炭素の臨界温度は31℃、臨界圧力は7.4MPaである。
【0097】
樹脂組成物に高圧の不活性ガスを含浸させることにより発泡体を形成する方法としては、例えば、樹脂材料(ポリマー)を含む樹脂組成物に不活性ガスを高圧下で含浸させるガス含浸工程、該工程後に圧力を低下させて樹脂材料(ポリマー)を発泡させる減圧工程、および、必要に応じて加熱により気泡を成長させる加熱工程を経て形成する方法などが挙げられる。この場合、予め成形した未発泡成形体を不活性ガスに含浸させてもよく、また、溶融した樹脂組成物に不活性ガスを加圧状態下で含浸させた後に減圧の際に成形に付してもよい。これらの工程は、バッチ方式、連続方式のいずれの方式で行ってもよい。すなわち、予め樹脂組成物を、シート状などの適宜な形状に成形して未発泡樹脂成形体とした後、この未発泡樹脂成形体に、高圧のガスを含浸させ、圧力を解放することにより発泡させるバッチ方式であってもよく、樹脂組成物を加圧下、高圧のガスと共に混練し、成形すると同時に圧力を解放し、成形と発泡を同時に行う連続方式であってもよい。
【0098】
バッチ方式で発泡体を製造する例を以下に示す。例えば、樹脂組成物を単軸押出機、2軸押出機等の押出機を使用して押し出すことにより、発泡体成形用樹脂シートを作製する。あるいは、樹脂組成物を、ローラ、カム、ニーダー、バンバリ型等の羽根を設けた混練機を使用して均一に混練しておき、熱板のプレスなどを用いて所定の厚みにプレス加工することにより、未発泡樹脂成形体を作製する。こうして得られた未発泡樹脂成形体を高圧容器中に入れて、高圧不活性ガス(超臨界状態の二酸化炭素など)を注入し、未発泡樹脂成形体中に不活性ガスを含浸させる。十分に不活性ガスを含浸させた時点で圧力を解放し(通常、大気圧まで)、樹脂中に気泡核を発生させる。気泡核はそのまま室温で成長させてもよいが、場合によっては加熱することによって成長させてもよい。加熱の方法としては、ウォーターバス、オイルバス、熱ロール、熱風オーブン、遠赤外線、近赤外線、マイクロ波などの公知や慣用の方法を採用できる。このようにして気泡を成長させた後、冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化することにより発泡体を得ることができる。なお、発泡に供する未発泡樹脂成形体はシート状物に限らず、用途に応じて種々の形状のものを使用できる。また、発泡に供する未発泡樹脂成形体は押出成形、プレス成形のほか、射出成形等の他の成形法により作製することもできる。
【0099】
連続方式で発泡体を製造する例を以下に示す。例えば、樹脂組成物を、単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用して混練しながら、高圧のガス(特に不活性ガス、さらには二酸化炭素)を注入(導入)し、十分に高圧のガスを樹脂組成物に含浸させる混練含浸工程、押出機の先端に設けられたダイスなどを通して樹脂組成物を押し出すことにより圧力を解放し(通常、大気圧まで)、成形と発泡を同時に行う成形減圧工程により発泡成形する。また、連続方式での発泡成形の際には、必要に応じて、加熱することによって気泡を成長させる加熱工程を設けてもよい。このようにして気泡を成長させた後、必要により冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化してもよい。また、高圧のガスの導入は連続的に行ってもよく不連続的に行ってもよい。さらに、混練含浸工程および成形減圧工程では、例えば、押出機や射出成形機を用い得る。なお、気泡核を成長させる際の加熱の方法としては、ウォーターバス、オイルバス、熱ロール、熱風オーブン、遠赤外線、近赤外線、マイクロ波などの任意の適切な方法が挙げられる。発泡体の形状としては、任意の適切な形状を採用し得る。このような形状としては、例えば、シート状、角柱状、円筒状、異型状などが挙げられる。
【0100】
樹脂組成物を発泡成形する際のガスの混合量は、高発泡な樹脂発泡体発泡体を得られ得る点で、例えば、樹脂組成物全量に対して、好ましくは2重量%~10重量%であり、より好ましくは2.5重量%~8重量%であり、さらに好ましくは3重量%~6重量%である。
【0101】
不活性ガスを樹脂組成物に含浸させるときの圧力は、操作性等を考慮して適宜選択できる。このような圧力は、例えば、好ましくは6MPa以上(例えば、6MPa~100MPa)であり、より好ましくは8MPa以上(例えば、8MPa~50MPa)である。なお、超臨界状態の二酸化炭素を用いる場合の圧力は、二酸化炭素の超臨界状態を保持する観点から、好ましくは7.4MPa以上である。圧力が6MPaより低い場合には、発泡時の気泡成長が著しく、気泡径が大きくなりすぎて、好ましい平均セル径(平均気泡径)を得ることができない場合がある。これは、圧力が低いとガスの含浸量が高圧時に比べて相対的に少なく、気泡核形成速度が低下して形成される気泡核数が少なくなるため、1気泡あたりのガス量が逆に増えて気泡径が極端に大きくなるからである。また、6MPaより低い圧力領域では、含浸圧力を少し変化させるだけで気泡径、気泡密度が大きく変わるため、気泡径及び気泡密度の制御が困難になりやすい。
【0102】
ガス含浸工程における温度は、用いる不活性ガスや樹脂組成物中の成分の種類等によって異なり、広い範囲で選択できる。操作性等を考慮した場合、好ましくは10℃~350℃である。未発泡成形体に不活性ガスを含浸させる場合の含浸温度は、バッチ式では、好ましくは10℃~250℃であり、より好ましくは40℃~230℃である。また、ガスを含浸させた溶融ポリマーを押し出して発泡と成形とを同時に行う場合の含浸温度は、連続式では、好ましくは60℃~350℃である。なお、不活性ガスとして二酸化炭素を用いる場合には、超臨界状態を保持するため、含浸時の温度は、好ましくは32℃以上であり、より好ましくは40℃以上である。
【0103】
減圧工程において、減圧速度としては、均一な微細気泡を得るため、好ましくは5MPa/秒~300MPa/秒である。
【0104】
加熱工程における加熱温度は、好ましくは40℃~250℃であり、より好ましくは60℃~250℃である。
【0105】
1つの実施形態においては、所定の工程を経て発泡構造体を得た後(例えば、<実施形態1>または<実施形態2>の方法により樹脂発泡体を得た後)、発泡構造体を薄膜化し、次いで、ロール圧延して、樹脂発泡体が得られる。このような工程を経ることにより、アスペクト比が適切に調整された樹脂発泡体を得ることができる。また、厚みの薄い(例えば、0.2mm以下)の樹脂発泡体を得ることができる。
【0106】
発泡構造体の薄膜化は、任意の適切なスライサーを用いて行うことができる。薄膜化後の発泡構造体の厚みは、好ましくは0.01mm以上であり、より好ましくは0.05mm以上であり、さらに好ましくは0.1mm以上であり、特に好ましくは0.15mm以上である。また、薄膜化後の発泡構造体の厚みの上限は、好ましくは3mm以下であり、より好ましくは2mm以下であり、さらに好ましくは1.5mm以下であり、さらに好ましくは1mm以下であり、さらに好ましくは0.8mm以下であり、特に好ましくは0.5mm以下である。このような範囲であれば、樹脂発泡体中の気泡数が特に好ましく調整されて打ち抜きによる潰れが生じ難く、そのため、打ち抜き加工性に特に優れる樹脂発泡体を得ることができる。
【0107】
好ましくは、上記ロール圧延に用いられるロールは加熱ロールである。当該ロールの温度は、好ましくは150℃~250℃であり、より好ましくは160℃~230℃である。
【0108】
発泡構造体の圧延率(圧延後の厚み/圧延前の厚み×100)は、好ましくは80%以下であり、より好ましくは10%~80%であり、さらに好ましくは20%~75%であり、特に好ましくは30%~75%である。このような範囲であれば、アスペクト比が適切に調整された樹脂発泡体を得ることができる。
【0109】
B.発泡部材
図1は、1つの実施形態による発泡部材の概略断面図である。発泡部材100は、樹脂発泡層10と、樹脂発泡層10の少なくとも一方の側に配置された粘着剤層20とを有する。樹脂発泡層10は、上記樹脂発泡体により構成される。
【0110】
上記発泡部材が有する樹脂発泡層の厚みは、好ましくは30μm以上であり、より好ましくは35μm以上であり、さらに好ましくは40μm以上であり、特に好ましくは45μm以上である。また、上記発泡部材が有する樹脂発泡層の厚みは、好ましくは5000μm以下であり、より好ましくは4000μm以下であり、さらに好ましくは3000μm以下であり、より好ましくは2500μm以下である。樹脂発泡層の厚みが上記範囲内にあることにより、該樹脂発泡層は、微小クリアランスに対しても容易に追従し得る。また、樹脂発泡層の厚みが上記範囲内にあることにより、気泡を均一に含有することができ、優れた衝撃吸収性を発現し得る。
【0111】
粘着剤層の厚さは、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは6μm以上であり、さらに好ましくは7μm以上であり、特に好ましくは8μm以上である。また、粘着剤層の厚さは、好ましくは300μm以下であり、より好ましくは200μm以下であり、さらに好ましくは100μm以下であり、最も好ましくは50μm以下である。粘着剤層の厚さが上記範囲内にあることによって、本発明の発泡部材は、優れた衝撃吸収性を発揮できる。
【0112】
粘着剤層としては、任意の適切な粘着剤からなる層を採用し得る。粘着剤層を構成する粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤(合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤など)、ウレタン系粘着剤、アクリルウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤、ゴム系粘着剤などが挙げられる。粘着剤層を構成する粘着剤としては、好ましくは、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤から選ばれる少なくとも1種である。このような粘着剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。粘着剤層は、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。
【0113】
粘着剤としては、粘着形態で分類すると、例えば、エマルジョン型粘着剤、溶剤型粘着剤、紫外線架橋型(UV架橋型)粘着剤、電子線架橋型(EB架橋型)粘着剤、熱溶融型粘着剤(ホットメルト型粘着剤)などが挙げられる。このような粘着剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0114】
粘着剤層の水蒸気透湿度は、好ましくは50(g/(m2・24時間))以下であり、より好ましくは30(g/(m2・24時間))以下であり、さらに好ましくは20(g/(m2・24時間))以下であり、特に好ましくは10(g/(m2・24時間))以下である。粘着剤層の水蒸気透湿度が上記範囲内にあれば、本発明の発泡シートは、水分による影響を受けずに衝撃吸収性を安定化させることができる。
【0115】
粘着剤層を構成する粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含んでいてもよい。
【0116】
他の成分としては、例えば、他のポリマー成分、軟化剤、老化防止剤、硬化剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、熱重合開始剤、光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤(顔料や染料など)、溶剤(有機溶剤)、界面活性剤(例えば、イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤など)、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤など)などが挙げられる。なお、熱重合開始剤や光重合開始剤は、ポリマー成分を形成するための材料に含まれ得る。
【0117】
本発明の発泡部材は、任意の適切な方法によって製造し得る。本発明の発泡部材は、例えば、樹脂発泡層と粘着剤層とを積層して製造する方法や、粘着剤層の形成材料と樹脂発泡層を積層した後に硬化反応等によって粘着剤層を形成させて製造する方法などが挙げられる。
【実施例0118】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。なお、「部」と記載されている場合は、特記事項がない限り「重量部」を意味し、「%」と記載されている場合は、特記事項がない限り「重量%」を意味する。
【0119】
<評価方法>
(1)見かけ密度
樹脂発泡体の密度(見かけ密度)は、以下のように算出した。実施例・比較例で得られた樹脂発泡体を20mm×20mmサイズに打ち抜いて試験片とし、試験片の寸法をノギスで測定した。次に、試験片の重量を電子天秤にて測定した。そして、次式により算出した。
見かけ密度(g/cm3)=試験片の重量/試験片の体積
(2)25%圧縮荷重
JIS K 6767に記載されている樹脂発泡体の圧縮硬さ測定方法に準じて測定し
た。具体的には、実施例・比較例で得られた樹脂発泡体を30mm×30mmサイズに切り出して試験片とし、圧縮速度10mm/minで圧縮率が25%となるまで圧縮したときの応力(N)を単位面積(1cm2)当たりに換算して、25%圧縮荷重(N/cm2)とした。
(3)50%圧縮荷重
JIS K 6767に記載されている樹脂発泡体の圧縮硬さ測定方法に準じて測定し
た。具体的には、実施例・比較例で得られた樹脂発泡体を30mm×30mmサイズに切り出して試験片とし、圧縮速度10mm/minで圧縮率が50%となるまで圧縮したときの応力(N)を単位面積(1cm2)当たりに換算して、50%圧縮荷重(N/cm2)とした。
(4)平均気泡径(平均セル径)、最大気泡径(最大セル径)、気泡径(セル径)の変動係数
樹脂発泡体を、カミソリ刃を用いて、樹脂発泡体の主面に対して垂直方向(厚み方向)に切断し、計測器としてデジタルマイクロスコープ(商品名「VHX-500」、キーエンス株式会社製)を用い、樹脂発泡体の切断面画像を取り込み、同計測器の解析ソフトを用いて、画像解析することにより、数平均気泡径(平均セル径)および最大気泡径(最大セル径)を求めた。なお、取り込んだ拡大画像の気泡数は400個程度であった。また、セル径の全データから標準偏差を計算し、以下の式を用いて変動係数を算出した。
変動係数=標準偏差/平均気泡径(平均セル径)
(5)気泡径アスペクト比
計測器としてデジタルマイクロスコープ(商品名「VHX-2000、キーエンス株式会社製)を用い、下記の方法で、実施例・比較例で得られた樹脂発泡体が有する気泡のスペクト比を測定した。
樹脂発泡体を、カミソリ刃を用いて、樹脂発泡体の主面に対して垂直方向(厚み方向)に切断し、切断面をマイクロスコープ(例えば、キーエンス製「VHX-2000」)を用いて、所定面積(3mm2)範囲を倍率100倍で観察し、気泡一個の厚み方向の長さと厚み方向に直行する方向の長さを測定した。同様の測定を所定面積内に存在する全ての気泡に対して行った。
気泡のアスペクト比は、厚み方向に直行する方向の長さ÷厚み方向の長さで計算され、全ての気泡で同様の計算を行い、平均した値を「樹脂発泡体が有する気泡のアスペクト比」とした。
(6)溶融張力
樹脂発泡体に含まれる樹脂(植物由来のポリプロピレン系重合体)を、ツイン・キャピラリー・レオメーター「RH7-2型」(ロザンドプレシジョン社製)を用いて、当該植物由来のポリプロピレン系重合体の融点よりも20℃高い温度、オリフィス径1mmφの条件で、押出速度8.8mm/分で溶融ストランド状に押し出し、ストランドを引き取り速度0.5m/分で引き取った。引き取り速度を0.1m/分ずつ上げていき、ストランド状の樹脂が破断した時の溶融張力を、「溶融張力」とした。
(7)ダイスウエル比
計測器として伸長粘度計(商品名「RH-7」、マルバーン社)を用いて、樹脂発泡体を構成する樹脂の融点よりも20℃高い温度にて、シリンダーにサンプル(サイズ:5mm角)を投入し、7minかけて溶融状態にする。その後、せん断速度20mm/sの速度で溶融物を長さ10mm、口径1mmφのダイに押出し、得られた紐状の成型物の直径をデジタルノギス(商品名「CD67-s PM」、株式会社ミツトヨ社)を用いて測定し、下記の式からダイスウェル比を算出した。
ダイスウェル比=成型物の直径(mm)/ダイ口径(mm)
上記サンプルとしては、樹脂発泡体に含まれる植物由来のポリプロピレン系重合体および樹脂発泡体を形成する樹脂組成物を用い、これらサンプルについてダイスウェル比を測定した。
(8)衝撃吸収性
衝撃力センサー上に、樹脂発泡体、両面テープ(品番:No.5603W、日東電工製)、PETフィルム(品番:ダイヤホイルMRF75、三菱樹脂製)をこの順に配置して試験体を形成した。PETフィルム上方50cmの高さから、66gの鉄球を試験体に落下させて、衝撃力F1を測定した。
また、衝撃力センサーに直接、上記のように鉄球を落下させて、ブランクの衝撃力F0を測定した。
F1、F0から、(F0-F1)/F0×100の式により、衝撃吸収性(%)を算出した。
(9)原材料由来のCO2発生量[kg/m2]
石油由来の樹脂を製造する際に要するCO2発生量を1.8kg/kg-樹脂、植物由来の樹脂を製造する際に要するCO2発生量を1.0kg/kg-樹脂とし、発泡体1m2に含まれる石油由来の樹脂の重量をwp、植物由来の樹脂の重量をwbとした時に、発泡体の原材料由来のCO2発生量は、1.8×wp+1.0×wbで算出できる。
【0120】
〔実施例1〕
植物由来のポリプロピレン系重合体(Borealis社製、商品名「BA110CF」、MFR:0.85g/10分)56重量部、ポリオレフィン系エラストマーA(メルトフローレート(MFR):15g/10min)49重量部、水酸化マグネシウム10重量部およびステアリン酸モノグリセリド1重量部、カーボンブラック10重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13MPa(注入後12MPa)の圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、樹脂100重量部に対して5.2重量部の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出し、厚さ1.0mmにスライスして、シート状の樹脂発泡体を得た。
得られた樹脂発泡体を上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0121】
〔実施例2〕
植物由来のポリプロピレン系重合体(Borealis社製、商品名「BA110CF」)の配合量を65重量部とし、ポリオレフィン系エラストマーAの配合量を35重量部とし、二酸化炭素ガスの注入量を、樹脂100重量部に対して5.5重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂発泡体を得た。
得られた樹脂発泡体を上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0122】
〔実施例3〕
植物由来のポリプロピレン系重合体(Borealis社製、商品名「BA110CF」)の配合量を65重量部とし、ポリオレフィン系エラストマーAの配合量を35重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂発泡体を得た。
得られた樹脂発泡体を上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0123】
〔実施例4〕
二酸化炭素ガスの注入量を、樹脂100重量部に対して5.8重量部としたこと以外は、実施例2と同様にして、樹脂発泡体を得た。
得られた樹脂発泡体を上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0124】
〔実施例5〕
植物由来のポリプロピレン系重合体(Borealis社製、商品名「BA110CF」、MFR:0.85g/10分)65重量部、ポリオレフィン系エラストマーA(メルトフローレート(MFR):15g/10min)35重量部、水酸化マグネシウム10重量部、およびステアリン酸モノグリセリド1重量部、カーボンブラック10重量部を、日本製鋼所(JSW)社製の二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に成形した。このペレットを、日本製鋼所社製の単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、13MPa(注入後12MPa)の圧力で、二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスは、樹脂100重量部に対して5.8重量部の割合で注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出し、厚さ2.0mmにスライスして、シート状の樹脂発泡体を得た。
さらに、一方のロールが200℃に加熱された一対のロールにおけるロール間(ロールとロールの間の隙間)に、上記発泡構造体を通過させて、厚みが1.0mmの樹脂発泡体Bを得た。なお、ロール間のギャップ(隙間)は、厚みが1.0mmの樹脂発泡体Bが得られるように設定した。
【0125】
〔実施例6〕
植物由来のポリプロピレン系重合体(Borealis社製、商品名「BA110CF」)の配合量を65重量部に代えて、植物由来のポリプロピレン系重合体(SABIC社製、商品名「Rely 61EK61PS」、MFR:0.3g/10分)65重量部を用い、二酸化炭素ガスの注入量を、樹脂100重量部に対して5.5重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂発泡体を得た。
得られた樹脂発泡体を上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0126】
〔実施例7〕
植物由来のポリプロピレン系重合体(Borealis社製、商品名「BA110CF」)の配合量を65重量部に代えて、植物由来のポリプロピレン系重合体(SABIC社製、商品名「Rely 71EK71PS」、MFR:0.3g/10分)65重量部を用い、二酸化炭素ガスの注入量を、樹脂100重量部に対して5.5重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂発泡体を得た。
得られた樹脂発泡体を上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0127】
〔実施例8〕
植物由来のポリプロピレン系重合体(Borealis社製、商品名「BA110CF」)の配合量を75重量部とし、ポリオレフィン系エラストマーAの配合量を25重量部とし、二酸化炭素ガスの注入量を、樹脂100重量部に対して5.2重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂発泡体を得た。
得られた樹脂発泡体を上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0128】
〔実施例9〕
植物由来のポリプロピレン系重合体(Borealis社製、商品名「BA110CF」)の配合量を75重量部とし、ポリオレフィン系エラストマーAの配合量を25重量部とし、二酸化炭素ガスの注入量を、樹脂100重量部に対して5.4重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂発泡体を得た。
得られた樹脂発泡体を上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0129】
〔実施例10〕
植物由来のポリプロピレン系重合体(Borealis社製、商品名「BA110CF」)の配合量を65重量部とし、ポリオレフィン系エラストマーAの配合量を35重量部とし、二酸化炭素ガスの注入量を、樹脂100重量部に対して6.2重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂発泡体を得た。
得られた樹脂発泡体を上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0130】
〔実施例11〕
植物由来のポリプロピレン系重合体(Borealis社製、商品名「BA110CF」)の配合量を65重量部とし、ポリオレフィン系エラストマーAの配合量を35重量部とし、二酸化炭素ガスの注入量を、樹脂100重量部に対して6.4重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂発泡体を得た。
得られた樹脂発泡体を上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0131】
〔比較例1〕
植物由来のポリプロピレン系重合体(Borealis社製、商品名「BA110CF」)の配合量を65重量部に代えて、植物由来のポリプロピレン系重合体(Borealis社、商品名「BC250MO」、MFR:4g/10分)65重量部を用い、二酸化炭素ガスの注入量を、樹脂100重量部に対して5.5重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂発泡体を得た。
得られた樹脂発泡体を上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0132】
〔比較例2〕
植物由来のポリプロピレン系重合体(Borealis社製、商品名「BA110CF」)の配合量を65重量部に代えて、植物由来のポリプロピレン系重合体(Borealis社、商品名「BB125MO」、MFR:1.3g/10分)65重量部を用い、二酸化炭素ガスの注入量を、樹脂100重量部に対して5.5重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂発泡体を得た。
得られた樹脂発泡体を上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0133】