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特開2024-152624軟磁性合金粒子およびこれを用いるインダクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152624
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】軟磁性合金粒子およびこれを用いるインダクタ
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/153 20060101AFI20241018BHJP
   H01F 1/38 20060101ALI20241018BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20241018BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01F1/153 133
H01F1/38
H01F17/04 F
H01F27/29 F
H01F27/29 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024034363
(22)【出願日】2024-03-06
(31)【優先権主張番号】10-2023-0049600
(32)【優先日】2023-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 成 宰
(72)【発明者】
【氏名】鄭 鐘 鎬
(72)【発明者】
【氏名】黄 智 フン
(72)【発明者】
【氏名】金 智 惠
(72)【発明者】
【氏名】姜 炳 守
(72)【発明者】
【氏名】金 晋 模
【テーマコード(参考)】
5E041
5E070
【Fターム(参考)】
5E041AA19
5E041BD03
5E041CA01
5E041NN01
5E041NN06
5E070AA01
5E070BA12
5E070CB02
5E070CB13
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】実装部品などとの接続性を向上させた印刷回路基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明による軟磁性合金粒子は、ナノ結晶および非晶質を含み、Fe(鉄)およびGe(ゲルマニウム)を含み、非晶質内のGe平均含有率をGe(a)(at%)とし、ナノ結晶内のGe平均含有率をGe(c)(at%)とする時、Ge(a)-Ge(c)>0である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ結晶および非晶質を含み、Fe(鉄)およびGe(ゲルマニウム)を含み、
前記非晶質内のGe平均含有率をGe(a)(at%)とし、ナノ結晶内のGe平均含有率をGe(c)(at%)とする時、Ge(a)-Ge(c)>0であることを特徴とする軟磁性合金粒子。
【請求項2】
前記軟磁性合金粒子は、下記の組成式1で表されることを特徴とする請求項1に記載の軟磁性合金粒子。
組成式1
FeCoGe
前記組成式1において、a、b、c、dは、それぞれ対応する元素の原子百分率含有量(at%)を示し、0<a≦90、0≦b≦10、0<c≦5、0<d≦20、a+b+c+d=100であり、
前記Mは、B、P、Cu、Nb、Cr、C、Ni、Al、Mn、Ag、Zn、Sn、As、Sb、Bi、N、O、S、またはこれらの組み合わせを含む。
【請求項3】
前記Mは、Siを含まないことを特徴とする請求項2に記載の軟磁性合金粒子。
【請求項4】
0.5≦c≦4であることを特徴とする請求項3に記載の軟磁性合金粒子。
【請求項5】
70≦a≦80であることを特徴とする請求項3に記載の軟磁性合金粒子。
【請求項6】
2≦b≦6であることを特徴とする請求項3に記載の軟磁性合金粒子。
【請求項7】
75≦a+b≦90であることを特徴とする請求項3に記載の軟磁性合金粒子。
【請求項8】
10≦d≦20であることを特徴とする請求項3に記載の軟磁性合金粒子。
【請求項9】
0.1≦Ge(a)-Ge(c)≦0.7であることを特徴とする請求項3に記載の軟磁性合金粒子。
【請求項10】
前記Mは、B、P、Cu、またはこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項3に記載の軟磁性合金粒子。
【請求項11】
前記軟磁性合金粒子の結晶化度が59%以上および70%以下であることを特徴とする請求項3に記載の軟磁性合金粒子。
【請求項12】
前記ナノ結晶の平均結晶サイズが20nm以下であることを特徴とする請求項3に記載の軟磁性合金粒子。
【請求項13】
軟磁性合金粒子を含む磁性物質を含むボディと、
前記ボディ内に配置されたコイルと、
前記ボディの外部面に配置される外部電極と、を含み、
前記軟磁性合金粒子は、ナノ結晶および非晶質を含み、Fe(鉄)およびGe(ゲルマニウム)を含み、非晶質内のGe平均原子含有率をGe(a)(at%)とし、ナノ結晶内のGe平均原子含有率をGe(c)(at%)とする時、Ge(a)-Ge(c)>0であることを特徴とするインダクタ。
【請求項14】
前記軟磁性合金粒子は、下記の組成式1で表されることを特徴とする請求項13に記載のインダクタ。
組成式1
FeCoGe
前記組成式1において、a、b、c、dは、それぞれ対応元素の原子百分率含有量(at%)を示し、0<a≦90、0≦b≦10、0<c≦5、0<d≦20、a+b+c+d=100であり、
前記Mは、B、P、Cu、Nb、Cr、C、Ni、Al、Mn、Ag、Zn、Sn、As、Sb、Bi、N、O、S、またはこれらの組み合わせを含む。
【請求項15】
前記Mは、Siを含まないことを特徴とする請求項14に記載のインダクタ。
【請求項16】
0.5≦c≦4であることを特徴とする請求項15に記載のインダクタ。
【請求項17】
前記軟磁性合金粒子の結晶化度が59%以上および70%以下であることを特徴とする請求項15に記載のインダクタ。
【請求項18】
前記ナノ結晶の平均結晶サイズが20nm以下であることを特徴とする請求項15に記載のインダクタ。
【請求項19】
前記コイルは、支持部材と、前記支持部材の上面および下面にそれぞれ配置された上部コイルおよび下部コイルとを含み、
前記上部コイルおよび前記下部コイルは、前記支持部材を貫通するビアを介して電気的に連結されることを特徴とする請求項13に記載のインダクタ。
【請求項20】
前記ボディは、モールド部、前記モールド部の一面上に配置されたカバー部、および前記モールド部の一面から突出したコアを含み、
前記コイルは、前記モールド部の一面と前記カバー部との間に配置され、前記コアは、前記コイルを貫通することを特徴とする請求項13に記載のインダクタ。
【請求項21】
前記ボディは、前記磁性物質を含む複数の磁性シートを含むことを特徴とする請求項13に記載のインダクタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟磁性合金粒子およびこれを用いるインダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電子素子の小型化および高集積化に伴い、電源電圧(Power Supply Voltage)が低くなり、これによって同一電力を送出するために電流値が増加している。そこで、高電流でもインダクタの性能が維持される金属インダクタ(Metal Inductor)が適用されているが、最近は、より高い電流で使用するために、金属の中でも高電流特性を有する、言い換えれば、飽和磁化(Ms;Magnetic Saturation)値の高い材料を適用している。
【0003】
既存のFeベースの軟磁性材料では、Siのような元素の含有量を調節して磁歪を0に近づけることによって電磁気特性を改善した。しかし、Siの含有量を増加させる場合には、Feのような金属の含有量が減少してMs値を向上させにくいという問題点が存在した。
【0004】
また、Feのような金属の含有量が過度に高い場合には、Ms値を増加させることはできても、熱処理時にナノ結晶が局部的に成長するという問題があった。これによって不均一な結晶が成長して軟磁性材料の電磁気特性が阻害されるという問題点が存在した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-206836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、電磁気特性を改善しながらも高い飽和磁化特性を維持できる軟磁性合金粒子を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記軟磁性合金粒子を用いるインダクタを提供することにある。
【0007】
しかし、本発明が解決しようとする課題は上述した課題に限定されず、本発明に含まれている技術的思想の範囲内で多様に拡張可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様による軟磁性合金粒子は、ナノ結晶および非晶質を含み、Fe(鉄)およびGe(ゲルマニウム)を含み、前記非晶質内のGe平均含有率をGe(a)(at%)とし、ナノ結晶内のGe平均含有率をGe(c)(at%)とする時、Ge(a)-Ge(c)>0である。
前記軟磁性合金粒子は、下記の組成式1で表される。
組成式1
FeCoGe
前記組成式1において、a、b、c、dは、それぞれ対応する元素の原子百分率含有量(at%)を示し、0<a≦90、0≦b≦10、0<c≦5、0<d≦20、a+b+c+d=100であり、Mは、B、P、Cu、Nb、Cr、C、Ni、Al、Mn、Ag、Zn、Sn、As、Sb、Bi、N、O、S、またはこれらの組み合わせを含む。
【0009】
前記Mは、Siを含まない。
前記において、0.5≦c≦4であってもよい。
前記において、70≦a≦80であってもよい。
前記において、2≦b≦6であってもよい。
前記において、75≦a+b≦90であってもよい。
前記において、10≦d≦20であってもよい。
前記において、0.1≦Ge(a)-Ge(c)≦0.7であってもよい。
前記Mは、B、P、Cu、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
前記軟磁性合金粒子の結晶化度が59%以上および70%以下であってもよい。
前記ナノ結晶の平均結晶サイズが20nm以下であってもよい。
【0010】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様によるインダクタは、軟磁性合金粒子を含む磁性物質を含むボディ、前記ボディ内に配置されたコイル、および前記ボディの外部面に配置される外部電極を含み、前記軟磁性合金粒子は、ナノ結晶および非晶質を含み、Fe(鉄)およびGe(ゲルマニウム)を含み、非晶質内のGe平均原子含有率をGe(a)(at%)とし、ナノ結晶内のGe平均原子含有率をGe(c)(at%)とする時、Ge(a)-Ge(c)>0である。
前記軟磁性合金粒子は、下記の組成式1で表される。
組成式1
FeCoGe
前記組成式1において、a、b、c、dは、それぞれ対応する元素の原子百分率含有量(at%)を示し、0<a≦90、0≦b≦10、0<c≦5、0<d≦20、a+b+c+d=100であり、Mは、B、P、Cu、Nb、Cr、C、Ni、Al、Mn、Ag、Zn、Sn、As、Sb、Bi、N、O、S、またはこれらの組み合わせを含む。
【0011】
前記Mは、Siを含まない。
前記において、0.5≦c≦4であってもよい。
前記軟磁性合金粒子の結晶化度が59%以上および70%以下であってもよい。
前記ナノ結晶の平均結晶サイズが20nm以下であってもよい。
【0012】
前記インダクタにおいて、前記コイルは、支持部材と、前記支持部材の上面および下面にそれぞれ配置された上部コイルおよび下部コイルとを含み、前記上部コイルと前記下部コイルは、前記支持部材を貫通するビアを介して電気的に連結可能である。
前記インダクタにおいて、前記ボディは、モールド部、前記モールド部の一面上に配置されたカバー部、および前記モールド部の一面から突出したコアを含み、前記コイルは、前記モールド部の一面と前記カバー部との間に配置され、前記コアは、前記コイルを貫通する。
前記インダクタにおいて、前記ボディは、前記磁性物質を含む複数の磁性シートを含むことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による軟磁性合金粒子によれば、電磁気特性を改善しながらも高い飽和磁化特性を維持できるという効果がある。
【0014】
ただし、本発明の多様かつ有益なメリットと効果は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施例による軟磁性合金粒子を透過電子顕微鏡(Transmision Electron Microscope:TEM)で観察した写真である。
図2】従来の軟磁性合金粒子を透過電子顕微鏡(Transmision Electron Microscope:TEM)で観察した写真である。
図3】一実施例による軟磁性合金粒子のTEM分析(上段)によりspot定量分析をしてline profile(下段)で示す図である。
図4】一実施例による軟磁性合金粒子のTEM分析(上段)によりspot定量分析をしてline profile(下段)で示す図である。
図5】一実施例によるインダクタの透過斜視図である。
図6図5のI-I’方向の切断面を概略的に示す断面図である。
図7図6のA領域を拡大した図である。
図8】他の実施例によるインダクタの透過斜視図である。
図9図8のII-II’方向の切断面を概略的に示す断面図である。
図10】他の実施例によるインダクタの透過斜視図である。
図11図10のIII-III’方向の切断面を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。図面において本発明を明確に説明するために説明上不必要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一の参照符号を付した。また、図面は本明細書に開示された実施例を容易に理解できるようにするためのものに過ぎず、図面によって本明細書に開示された技術的思想は限定されず、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含む。これとともに、図面において一部の構成要素は誇張したり省略されたり、または概略的に示されており、各構成要素の大きさは実際の大きさを完全に反映するものではない。
【0017】
明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0018】
明細書全体において、「積層方向」といえば、構成要素が順次に積層される方向であり、シート状の構成要素の広い面(主面)に垂直な「厚さ方向」になり、図面においてはT軸方向に相当する。
【0019】
そして、「側方」といえば、シート状の構成要素の周縁から広い面(主面)に並行に延びる方向で、「平面方向」になり、図面においてはL軸方向に相当する。
【0020】
そして、図面におけるW軸方向は、「幅方向」になる。
【0021】
以下、図面を参照して、多様な実施例と変形例を詳細に説明する。
【0022】
[軟磁性合金粒子]
図1は、一実施例による軟磁性合金粒子を透過電子顕微鏡(Transmision Electron Microscope:TEM)で観察した写真である。参照のために、透過電子顕微鏡(TEM)イメージを二進化するなどの方法で、明暗差のある部分を区分して非晶質部分とナノ結晶部分との境界を定義できる。
【0023】
図1を参照すれば、一実施例による軟磁性合金粒子は、ナノ結晶および非晶質(amorphous phase)を含み、Fe(鉄)およびGe(ゲルマニウム)を含む。
【0024】
一実施例による軟磁性合金粒子は、下記の組成式1で表される。
【0025】
[組成式1]
FeCoGe
上記組成式において、a、b、c、dは、それぞれ対応する元素の原子百分率含有量(at%)を示し、0<a≦90、0≦b≦10、0<c≦5、0<d≦20、a+b+c+d=100である。
Mは、B、P、Cu、Nb、Cr、C、Ni、Al、Mn、Ag、Zn、Sn、As、Sb、Bi、N、O、S、またはこれらの組み合わせを含む。
【0026】
一実施例において、Mは、B、P、Cu、またはこれらの組み合わせを含む。
【0027】
一実施例において、Mは、Siを含まない。
【0028】
組成式1において、aは、Fe(鉄)金属の原子百分率含有量を示し、70≦a≦80であるとよい。
【0029】
組成式1において、bは、Co(コバルト)金属の原子百分率含有量を示し、2≦b≦6であるとよい。
【0030】
組成式1において、75≦a+b≦90であるとよい。a+bが75未満であれば、飽和磁化値が低くて高電流特性が良くないことがあり、a+bが90を超えると、ナノ結晶のサイズを制御しにくくなって電磁気特性が良くないことがある。
【0031】
組成式1において、10≦d≦20であるとよい。
【0032】
cは、Ge(ゲルマニウム)元素の原子百分率含有量を示し、0.5≦c≦4であるとよい。cが0.5未満であれば、ナノ結晶のサイズを制御しにくくなって電磁気特性が良くないことがあり、cが4を超えると、相対的に金属であるFe、Coの含有量が少なくなって高電流特性を確保できないという問題がある。
【0033】
具体的な一例として、組成式1は、Fe79.4CoGe0.5105.5Cu0.6、Fe79.4CoGe10Cu0.6、Fe79.4CoGe10Cu0.6、Fe78.4CoGe10Cu0.6、またはFe77.4CoGe10Cu0.6であってもよい。
【0034】
一実施例による軟磁性合金粒子において、非晶質内のGe平均含有率をGe(a)(at%)とし、ナノ結晶内のGe平均含有率をGe(c)(at%)とする時、Ge(a)-Ge(c)>0である。
【0035】
Ge(a)は、軟磁性合金粒子の非晶質部分を構成する原子全体に対して、Ge元素が含まれる平均含有率(at%)を意味する。また、Ge(c)は、軟磁性合金粒子のナノ結晶部分を構成する原子全体に対して、Ge元素が含まれる平均含有率(at%)を意味する。
【0036】
図3および図4は、一実施例による軟磁性合金粒子のTEM分析(上段)によりspot定量分析をしてline profile(下段)で示す図である。参照のために、透過電子顕微鏡(TEM)イメージを二進化するなどの方法で、明暗差のある部分を区分して非晶質部分とナノ結晶部分との境界を定義する。図3および図4にて、相対的に明るい部分がナノ結晶であり、相対的に暗い部分が非晶質(amorphous phase)に相当する。
【0037】
図3および図4を参照すれば、Ge(a)およびGe(c)は、透過電子顕微鏡(TEM、Transmission Electron Microscope)に設けられたEDS(Energy Disperse X-Ray Spectrometer)を用いたライン(line)分析により測定する。
【0038】
具体的には、いずれか1つのナノ結晶粒子の表面を基準として、ナノ結晶粒子の内部に20nm、外部に200nmだけspot定量分析したline profileにおいて、ナノ結晶粒子内部での最大値と非晶質部分での最大値とを比較する。
【0039】
また、平均を測定するために、上記で説明した分析を5point以上繰り返し、その平均値を算出する。
【0040】
図3および図4を参照すれば、一実施例により、Siを含まず、Si元素よりも原子量が相対的に大きいGeを含む軟磁性合金粒子の場合、Ge元素がナノ結晶よりも非晶質に多く存在することを確認できる。
【0041】
一実施例において、0.1(at%)≦Ge(a)-Ge(c)≦0.7(at%)である。Ge(a)-Ge(c)値が0.1(at%)未満であれば、Geがナノ結晶のサイズを制御しにくくなって電磁気特性が良くないという問題があり、Ge(a)-Ge(c)値が0.7(at%)超過であれば、高電流特性が低下するという問題がある。
【0042】
一実施例において、軟磁性合金粒子の第1結晶化温度(Tx1)と第2結晶化温度(Tx2)との差が100℃を超えることがある。第1結晶化温度(Tx1)と第2結晶化温度(Tx2)との差が100℃未満であれば、Tx1とTx2との差が狭くなり、その結果、均質なナノ結晶組織を得ることが困難になって、軟磁気特性が低下する。
【0043】
軟磁性合金粒子をなす非晶質は、示差走査熱量測定(DSC)によって得られるDSC曲線の加熱過程に、結晶化を示す発熱ピークを少なくとも2つ有している。
【0044】
発熱ピークのうち、最も低温側の発熱ピークはa-Fe一次相が晶出する第1結晶化を示し、その後の発熱ピークはFe-B化合物の二次相が晶出する第2結晶化を示す。
【0045】
ここで、第1結晶化開始温度Tx1は、DSC曲線のベースラインから最も低温側の発熱ピークである第1ピークに到達するまでの第1上昇部のうち最も正の傾きが大きい点を通過する接線である第1上昇接線と、ベースラインとの交点の温度として定義される。
【0046】
また、第2結晶化開始温度Tx2は、ベースラインから第1ピークの次の発熱ピークである第2ピークに到達するまでの第2上昇部のうち最も正の傾きが大きい点を通過する接線である第2上昇接線と、ベースラインとの交点の温度として定義される。
【0047】
一実施例において、軟磁性合金粒子は、下記の数式1によって計算された結晶化度が40%以上または59%以上であるとよいし、75%以下または70%以下であるとよい。軟磁性合金粒子は、結晶分率が60%水準に改善されるので、high Msの面でも有利な結果を確保できる。
【0048】
[数式1]
結晶化度(%)=〔Ic/(Ic+Ia)〕×100
【0049】
上記数式1中、Icは、軟磁性合金粒子のX線回折分析スペクトルにおいて結晶質ピークの散乱強度の積分値の和であり、Iaは、軟磁性合金粒子のX線回折分析スペクトルにおいて非晶質ハロー(halo)の散乱強度の積分値の和である。
【0050】
軟磁性合金粒子の結晶化度は、X線回折分光法によって取得したグラフに基づいて計算することができる。X線回折分析スペクトルから、入射するX線の波長λおよび入射角θと格子面の間隔dとの間には2d・sinθ=nλの関係が成立するが、この関係式をブラッグ(Bragg)式と呼ぶ。これによって、入射角が定められると、格子間隔dが求められる。
【0051】
しかし、非晶質材料では、規則的な原子配列構造でないランダムな配列が現れるため、複数のX線回折が特定の波長に現れず、回折角15°~35°の領域で広いハロー(halo)パターンが現れる。もし、回折角10°~60°の範囲で特定の角度に現れるピーク(peak)がなく、diffuse haloパターンが現れると、結晶化度が0%の非晶質材料と判断できる。ただし、X線が露出する軟磁性合金粒子の面は、有機物のほかに汚染物質が含まれていてはならない。回折パターンに影響を与える要素がない条件で測定された結果に限って信頼度が高い。
【0052】
もし、軟磁性合金粒子に結晶が存在すれば、測定回折角の範囲に1つ以上の結晶質ピークが存在する。ピークが存在するというのは、XRDパターングラフにおいて回折角2θ=5°以上50°以下での範囲の最大強度を縦軸の全面積としたX線回折図上において、少なくとも肉眼でピークを認識できるか、または波形処理装置がバックグラウンドノイズと明確に区別してピークとして認識できる場合を意味する。
【0053】
この時、結晶化度が高ければ、ハロー領域が減少し、結晶化度が100%の材料ではハロー領域が存在しない。結晶質と非晶質とが混在している場合、強度(Intensity)および回折角の範囲からなるグラフの結晶質ピークの領域とハロー領域の面積を相対比で計算して結晶化度を計算することができる。
【0054】
軟磁性合金粒子のナノ結晶は、無定形のgrainであってもよい。
【0055】
一実施例において、軟磁性合金粒子のナノ結晶の平均結晶サイズが20nm以下、例えば、18nm以下であってもよい。
【0056】
一例として、ナノ結晶の平均結晶サイズは、XRDグラフのメインピークの半値幅(FWHM、Full Width at Half Maximum)を用いたシェラー方程式(scherer equation)を用いて計算することができる。
【0057】
他の方法としては、ナノ結晶の平均サイズは、軟磁性合金粒子を切断した断面の走査電子顕微鏡(SEM)イメージにおいて少なくとも100個のナノ結晶の最大長軸を測定してサイズ分布曲線を作成し、D50を計算してこれを平均サイズとしてもよい。
【0058】
上記で説明した軟磁性合金粒子は、Si元素は含まず、Si元素よりも原子量が相対的に大きいGe元素を含み、熱処理時にGe元素がナノ結晶よりも非晶質に多く存在する。これによってGe元素がナノ結晶の成長を防止する抑制材の役割を果たすことによって、ナノ結晶のサイズを一定のサイズ以下に調節して、透磁率およびコアロスのような電磁気特性を改善することができる。
【0059】
また、第2結晶化温度を上昇させて、ナノ結晶形成のための熱処理工程ウィンドウが改善されて均質なナノ結晶を得ることができ、結晶分率を高く改善することができる。これによって高い飽和磁化(Ms)特性を維持できるというメリットがある。
【0060】
[インダクタ]
以下、上述した軟磁性合金粒子を含む磁性物質を含むインダクタ100の一例を説明する。インダクタの種類としては、薄膜型インダクタ、積層型インダクタ、巻線型インダクタ、または巻き型インダクタを含み、下記においては、まず、薄膜型インダクタを説明する。
【0061】
図5は、一実施例による薄膜型インダクタの透過斜視図を概略的に示す図であり、図6は、図5のI-I’方向の切断面を概略的に示す図であり、図5に示したインダクタの断面図を概略的に示す図である。一実施例による薄膜型インダクタ100は、軟磁性合金粒子を含む磁性物質を含むボディ110、ボディ内に配置されたコイル130、およびボディ110の外部面に配置される外部電極161、162を含む。
【0062】
ボディ110は、薄膜型インダクタ100の外観をなす。
【0063】
ボディ110は、コイルの積層方向に対向する上面および下面と、側方に対向する側面と幅方向に対向する正面とを含む六面体形状であり、プリント回路基板の実装時、ボディの下面(他面)は、実装面であり。各面の出会う角は、グラインディング(Grinding)などによって丸くされてもよい。
【0064】
ボディ110は、コイル130を形成した後、その上部および下部に磁性物質を含むシートを積層した後、これを圧着および硬化して形成される。
【0065】
ボディ110は、磁性物質を含み、磁性物質は、一実施例による軟磁性合金粒子を含む。
【0066】
図7は、図6のA領域を拡大した図である。
【0067】
図6および図7を参照すれば、磁性物質は、樹脂20と、樹脂に分散している粗粉磁性粒子11または微粉磁性粒子12とを含む磁性粒子を含む。一例として、樹脂20をマトリックスとして、粗粉磁性粒子11および微粉磁性粒子12が一定の比率で混合されて分散している。
【0068】
粗粉磁性粒子11は、平均粒径が10μm~30μmの粒子であり、微粉磁性粒子12は、平均粒径が1μm~10μmの粒子である。
【0069】
ボディ110内に存在する磁性粒子の直径は、ボディ110の断面で測定される。具体的には、ボディ110の中心を通るL-T方向断面に対して、T軸方向の等間隔の複数の領域(例:10個の領域)を走査電子顕微鏡で撮影した後、イメージ分析プログラムを用いて磁性粒子の直径を得ることができる。この場合、ボディ110の外郭領域は、圧着工程などによって磁性粒子が変形したり破壊されうるので、これを除いて磁性粒子の直径を測定する。例えば、ボディ110の表面から5%あるいは10%内の長さに相当する領域は除外可能である。
【0070】
磁性粒子としては、業界で用いるものであれば制限なく使用可能である。一例として、磁性粒子としては、フェライトまたは金属系軟磁性材料を使用することができる。
【0071】
フェライトとしては、Mn-Zn系フェライト、Ni-Zn系フェライト、Ni-Zn-Cu系フェライト、Mn-Mg系フェライト、Ba系フェライト、またはLi系フェライトなどの公知のフェライトを含むことができる。
【0072】
金属系軟磁性材料としては、Fe、Si、Cr、Al、およびNiからなる群より選択されたいずれか1つ以上を含む合金であってもよく、例えば、Fe-Si-B-Cr系非晶質金属粒子を含むことができるが、これに限定されるわけではない。
【0073】
一実施例において、磁性粒子は、軟磁性合金粒子を含み、一例として、粗粉磁性粒子は、軟磁性合金粒子である。
【0074】
樹脂は、絶縁性樹脂であり、エポキシ(epoxy)樹脂、ポリイミド(polyimide)樹脂、液晶結晶性ポリマー(Liquid Crystal Polymer)、またはこれらの組み合わせを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0075】
軟磁性合金粒子は、ナノ結晶および非晶質を含み、Fe(鉄)およびGe(ゲルマニウム)を含む。
【0076】
軟磁性合金粒子は、下記の組成式1で表される。
[組成式1]
FeCoGe
【0077】
上記組成式において、a、b、c、dは、それぞれ対応する元素の原子百分率含有量(at%)を示し、0<a≦90、0≦b≦10、0<c≦5、0<d≦20、a+b+c+d=100であり、
Mは、B、P、Cu、Nb、Cr、C、Ni、Al、Mn、Ag、Zn、Sn、As、Sb、Bi、N、O、S、またはこれらの組み合わせを含む。
【0078】
Mは、B、P、Cu、またはこれらの組み合わせを含み、Siを含まない。
【0079】
cは、Ge(ゲルマニウム)元素の原子百分率含有量を示し、0.5≦c≦4であるとよい。cが0.5未満であれば、ナノ結晶のサイズを制御しにくくなって電磁気特性が良くないことがあり、cが4を超えると、相対的に金属であるFe、Coの含有量が少なくなって高電流特性を確保できないという問題がある。
【0080】
軟磁性合金粒子において、非晶質内のGe平均含有率をGe(a)(at%)とし、ナノ結晶内のGe平均含有率をGe(c)(at%)とする時、Ge(a)-Ge(c)>0である。
【0081】
Ge(a)は、軟磁性合金粒子の非晶質部分を構成する原子全体に対して、Ge元素が含まれる平均含有率(at%)を意味する。また、Ge(c)は、軟磁性合金粒子のナノ結晶部分を構成する原子全体に対して、Ge元素が含まれる平均含有率(at%)を意味する。
【0082】
インダクタ100において、Ge(a)およびGe(c)を測定する方法は、次の通りである。
【0083】
インダクタボディ110のW軸方向の中央からL軸方向およびT軸方向に切断した断面サンプル(以下、「断面サンプル」という)において、樹脂に分散している軟磁性合金粒子を透過電子顕微鏡(TEM、Transmission Electron Microscope)に設けられたEDS(Energy Disperse X-Ray Spectrometer)を用いてライン(line)分析する。
【0084】
インダクタボディ110の断面サンプルは、例えば、インダクタ100をエポキシ混合液に入れて硬化させた後、インダクタボディ110のL軸方向およびT軸方向の側面をW軸方向に1/2地点まで研磨(Polishing)し、固定後、真空雰囲気のチャンバ内に維持して用意する。
【0085】
具体的には、軟磁性合金粒子に含まれるいずれか1つのナノ結晶粒子の表面を基準として、ナノ結晶粒子の内部に20nm、外部に200nmだけspot定量分析したline profileにおいて、ナノ結晶粒子内部での最大値と非晶質部分での最大値とを比較する。また、平均を測定するために、上記で説明した分析を5point以上繰り返し、その平均値を算出する。
【0086】
軟磁性合金粒子は、下記の数式1によって計算された結晶化度が40%以上または59%以上であるとよいし、75%以下または70%以下であるとよい。
【0087】
[数式1]
結晶化度(%)=〔Ic/(Ic+Ia)〕×100
【0088】
上記数式1中、Icは、軟磁性合金粒子のX線回折分析スペクトルにおいて結晶質ピークの散乱強度の積分値の和であり、Iaは、軟磁性合金粒子のX線回折分析スペクトルにおいて非晶質ハロー(halo)の散乱強度の積分値の和である。
【0089】
具体的には、軟磁性合金粒子の結晶化度は、インダクタボディ110の断面サンプルから軟磁性合金粒子のXRDグラフを得た後、数式1によって計算可能である。ボディの断面サンプルを約20um以上に粉砕し分級して得られたサンプルを通して軟磁性合金粒子のXRDグラフを得ることができる。
【0090】
軟磁性合金粒子に含まれるナノ結晶の平均結晶サイズは、20nm以下、例えば、18nm以下であるとよい。
【0091】
一例として、ナノ結晶の平均結晶サイズは、XRDグラフのメインピークの半値幅(FWHM、Full Width at Half Maximum)を用いたシェラー方程式(scherer equation)を用いて計算することができる。
【0092】
具体的には、ナノ結晶の平均結晶サイズは、インダクタボディ110の断面サンプルから軟磁性合金粒子のXRDグラフを得た後、半値幅を用いて計算することができる。ボディの断面サンプルを約20um以上に粉砕し分級して得られたサンプルを通して軟磁性合金粒子のXRDグラフを得ることができる。
【0093】
一例として、ナノ結晶の平均結晶サイズは、ボディの断面サンプルの走査電子顕微鏡(SEM)または透過電子顕微鏡(TEM)イメージにおいて、粒径が10μm~30μmの粗粉磁性粒子に相当する軟磁性合金粒子内で測定することもできる。具体的には、断面サンプルを撮影したイメージにおいて、L軸方向の中央地点を基準点とし、T軸方向に所定間隔の複数の領域(例:10個の領域)で観察される粗粉磁性粒子の内部に生成されたナノ結晶のサイズを測定し、その平均値を計算して導出できる。複数の領域の間隔は、走査電子顕微鏡(SEM)または透過電子顕微鏡(TEM)イメージのスケール(scale)により調節可能であり、等間隔であってもよい。この時、複数の領域は、すべてボディ内に位置しなければならず、10個の地点がすべてボディ内に位置しない場合、基準点の位置を変更したり、10個の地点の間の間隔を調節する。
【0094】
軟磁性合金粒子は、先に説明したものと同一であるので、残りの説明は省略する。
【0095】
一実施例において、軟磁性合金粒子の表面には、絶縁特性付与およびインダクタンス確保のために、絶縁膜(図示せず)が追加的に配置される。
【0096】
絶縁膜は、1層以上配置され、最大3層配置されてもよい。一例として、絶縁膜は、エポキシ(epoxy)樹脂、ポリイミド(polyimide)樹脂、液晶結晶性ポリマー(Liquid Crystal Polymer)、またはこれらの組み合わせを含む有機膜であってもよいし、酸化ケイ素(SiO)、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)を含む無機膜であってもよいし、FeO(酸化鉄)またはCrO(酸化クロム)のような金属酸化膜であってもよい。絶縁膜が金属酸化膜の場合、金属酸化膜は、軟磁性合金粒子に含まれる金属元素を含むことができるが、これに限定されるわけではない。
【0097】
絶縁膜の厚さは、軟磁性合金粒子の粒径の1~20%であるとよい。
【0098】
絶縁膜の厚さが軟磁性合金粒子の粒径の20%を超えると、むしろ透磁率および磁化率が減少するので、できるたけ厚さを薄くすることが好ましい。
【0099】
コイル130は、ボディ110内に配置されてインダクタの特性を発現させる役割を果たす。一例として、インダクタ100がパワーインダクタとして活用される場合、コイルは、電場を磁場として貯蔵して出力電圧を維持することによって電子機器の電源を安定させる役割を果たす。コイルは、巻線工法によって形成される巻線タイプ、薄膜工法によって形成される薄膜タイプ、または積層工法によって形成される積層タイプのいずれでもよいが、以下では、一例として薄膜タイプのコイルを説明する。
【0100】
コイル130は、支持部材120の上面および下面にそれぞれ配置される上部コイル131および下部コイル132を含む。上部コイル131および下部コイル132は、支持部材120を基準として対向配置されたコイル層である。
【0101】
上部コイル131および下部コイル132は、支持部材120上でメッキ(plating)工程またはフォトリソグラフィ工法によってメッキ層として形成される。
【0102】
コイル130は、電気伝導度に優れた材質として、例えば、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)などから選択された1種の金属、またはこれらの合金で形成されるが、通常の導電性材質であれば制限なく採用可能である。
【0103】
支持部材120は、上部コイル131および下部コイル132を支持できるものであればその材質や種類が特に限定されず、例えば、銅箔積層板(CCL)、ポリプロピレングリコール(PPG)基板、フェライト基板または金属系軟磁性基板などであってもよい。また、絶縁樹脂からなる絶縁基板であってもよい。絶縁樹脂としては、エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂、ポリイミドのような熱可塑性樹脂、またはこれらにガラス繊維若しくは無機フィラーのような補強材が含浸された樹脂、例えば、プリプレグ(prepreg)、ABF(Ajinomoto Build-up Film)、FR-4、BT(Bismaleimide Triazine)樹脂、PID(Photo Imagable Dielectric)樹脂などが使用できる。剛性維持の観点からは、ガラス繊維およびエポキシ樹脂を含む絶縁基板を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0104】
支持部材120の上面および下面から中央部を貫通するホールを形成し、ホールは、磁性物質で充填されてコア部150を形成する。磁性物質で充填されるコア部を形成することによってインダクタンスを向上させることができる。
【0105】
支持部材の両面上に積層された上部コイル131と下部コイル132は、支持部材を120を貫通するビア140を介して電気的に連結される。
【0106】
ビア140は、機械的ドリルまたはレーザドリルなどを用いて貫通ホールを形成した後、貫通ホールの内部にメッキで導電性物質を満たして形成される。
【0107】
ビア140は、支持部材120の両面上にそれぞれ配置された上側の上部コイル131および下側の下部コイル132を電気的に連結さえできれば、その形状や材質は特に限定されない。ここで、上側および下側は、図面においてコイルパターンの積層方向を基準として判断する。
【0108】
ビア140は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、スズ(Sn)、金(Au)、ニッケル(Ni)、鉛(Pd)、またはこれらの合金などの導電性物質を含む。
【0109】
上部および下部コイル131、132は、絶縁層133で被覆されて、ボディ110をなす磁性物質と直接接触しない。
【0110】
絶縁層133は、上部および下部コイル131、132を保護する役割を果たす。
【0111】
絶縁層133の材質は、絶縁物質を含むものであればいずれも適用可能であり、例えば、通常の絶縁コーティングに使用される絶縁物質、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、液晶結晶性ポリマー樹脂などを含むことができ、公知の感光性絶縁(Photo Imageble Dielectric:PID)樹脂などが使用されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0112】
絶縁層133は、気相蒸着などの方法で形成されるが、これに限定されるわけではなく、絶縁フィルムを支持部材の両面に積層することによって形成されてもよい。
【0113】
一実施例によるインダクタ100は、上部および下部コイル131、132と電気的に連結され、ボディ110の外部面に配置される外部電極161、162を含む。
【0114】
外部電極161、162は、ボディ110の両側面に露出する上部および下部コイル131、132のそれぞれの引出端子と電気的に連結される。
【0115】
外部電極161、162は、インダクタ100が電子機器に実装される時、インダクタ内のコイル130を電子機器と電気的に連結させる役割を果たす。
【0116】
外部電極161、162は、導電性金属を含む導電性ペーストを用いて形成され、導電性金属は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、および銀(Ag)の少なくとも1つ、またはこれらの合金であってもよい。
【0117】
外部電極161、162は、ペースト層上に形成されたメッキ層を含むことができる。
【0118】
メッキ層は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、およびスズ(Sn)からなる群より選択されたいずれか1つ以上を含み、例えば、ニッケル(Ni)層とスズ(Sn)層が順次に形成される。
【0119】
以下、巻線型インダクタ200および積層型インダクタ300についてより詳しく説明する。以下、巻線型インダクタ200および積層型インダクタ300の構成のうち薄膜型インダクタ100と差異のある部分についてのみ説明する。その他の残りの構成は、薄膜型インダクタ100での説明がそのまま適用可能である。
【0120】
図8は、他の実施例による巻線型インダクタの透過斜視図を概略的に示す図であり、図9は、図8のII-II’方向の切断面を概略的に示す図であり、図8に示したインダクタの断面図を概略的に示す図である。
【0121】
一実施例による巻線型インダクタ200は、軟磁性合金粒子を含む磁性物質を含むボディ210、ボディ内に配置されたコイル230、およびボディ310の外部面に配置された外部電極261、262を含む。
【0122】
一実施例において、ボディ210は、モールド部211、モールド部211の一面上に配置されたカバー部212、およびモールド部211の一面から突出したコア250を含み、コイル230は、モールド部211の一面とカバー部212との間に配置され、コア250は、コイル230を貫通する。
【0123】
巻線型インダクタ200のボディ210は、モールド部211と、モールド部211の一面上に配置されたカバー部212とを含み、モールド部211の一面から突出するように配置されたコア250をさらに含む。この時、コイル230は、モールド部211の一面上に配置され、コイル230がコア250を囲む形態を有する。
【0124】
ボディ210は、磁性物質を含み、磁性物質は、一実施例による軟磁性合金粒子を含む。つまり、モールド部211、カバー部212、およびコア250の少なくとも1つは、軟磁性合金粒子を含む磁性物質を含む。一例として、モールド部211は、金型内に磁性物質を充填して形成される。他の例として、モールド部211は、金型内に磁性物質と樹脂とを含む複合物質を充填することによって形成される。金型内の磁性物質または複合物質に高温および高圧を加える工程を追加的に行うが、これに限定されるわけではない。モールド部211とコア250は、上述した金型によって一体に形成されて相互間に境界が形成されていない。カバー部212は、樹脂に磁性物質が分散した磁性複合シートをモールド部211およびコイル230上に配置した後、加熱加圧して形成される。
【0125】
巻線型インダクタ200において、引出部(図示せず)は、モールド部211を貫通し、外部電極261、262に連結可能である。
【0126】
ボディ210内の磁性物質と軟磁性合金粒子に関する説明は、一実施例による薄膜型インダクタ100での説明が同一に適用可能である。
【0127】
巻線型インダクタ200において、コイル230の表面は、絶縁層231によって覆われ、絶縁層231は、ボディ210の磁性物質とコイル230との間を絶縁する機能を果たす。絶縁層231は、先に説明した絶縁層133に関する説明が同一に適用可能である。
【0128】
巻線型インダクタ200は、薄膜型インダクタ100と比較する時、コイル230の構成および支持部材の有無に差異がある。
【0129】
コイル230は、巻線タイプであり、支持部材を含まない。コイル230は、金属線および金属線の表面を被覆する絶縁層231を含む銅ワイヤ(Cu-wire)などのメタルワイヤを巻いて形成された巻線コイルである。メタルワイヤは、平角線であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0130】
図8には、コイル230がアルファ(α)形態の巻線で示されているが、これは例示に過ぎず、コイル230は、エッジワイズ(edge-wise)巻線であってもよい。
【0131】
図10は、他の実施例による積層型インダクタの透過斜視図を概略的に示す図であり、図11は、図10のIII-III’方向の切断面を概略的に示す図であり、図10に示したインダクタの断面図を概略的に示す図である。
【0132】
一実施例による積層型インダクタ300は、軟磁性合金粒子を含む磁性物質を含むボディ310、ボディ内に配置されたコイル330、およびボディ310の外部面に配置される外部電極361、362を含み、ボディ310は、磁性物質を含む複数の磁性シートを含む。
【0133】
ボディ310内の磁性物質と軟磁性合金粒子に関する説明は、一実施例による薄膜型インダクタ100での説明が同一に適用可能である。
【0134】
一例として、ボディ310は、磁性物質を含む複数の磁性シートを厚さ方向に積層した後に焼成したものであり、このようなボディ310の形状、寸法および磁性シートの積層数は一実施形態に示されたものに限定されない。
【0135】
複数の磁性シートの一面にはコイル330形成のための導体パターンが形成され、磁性シートの厚さ方向には、上下に位置した導電パターンを電気的に接続させるための導電性ビアが貫通形成される。
【0136】
したがって、各磁性シートに形成された導体パターンの一端は、隣接する磁性シートに形成された導電性ビアを介して互いに電気的に連結されてコイル330を形成する。
【0137】
コイル330の表面は、絶縁層331によって覆われ、絶縁層331は、ボディ310の磁性物質とコイル330との間を絶縁する機能を果たす。絶縁層331は、先に説明した絶縁層133に関する説明が同一に適用可能である。
【0138】
コイル330の両端は、ボディ310を介して外部に引出されるようにして、ボディ310に形成された一対の外部電極361、362と接触しながらそれぞれ電気的に連結可能である。
【0139】
特に、コイル330の両端は、ボディ310の両端を介して引出され、一対の外部電極361、362は、コイル330が引出されたボディ310の両端に形成される。
【0140】
導体パターンは、磁性シートを形成するためのグリーンシートに導体パターン形成のための導電性ペーストを厚膜印刷、塗布、蒸着、およびスパッタリングなどをして形成することができるが、これに限定されるものではない。
【0141】
導電性ビアは、それぞれのシートに厚さ方向に貫通孔を形成した後、この貫通孔に導電性ペーストなどを充填して形成することができるが、これに限定されるものではない。
【0142】
また、導体パターンを形成するための導電性ペーストに含まれる導電性金属は、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、および銅(Cu)のうちの1つ、またはこれらの合金などからなるものを使用することができ、本発明はこれに限定されるものではない。
【0143】
軟磁性合金粒子は、その優れた特性によって、上記で説明したような薄膜型、巻線型、または積層型インダクタのボディに含まれることによって、電磁気特性を改善しながらも高い飽和磁化特性を維持することができる。
【0144】
上記で説明したインダクタ以外にも、軟磁性合金粒子は、トランス、モータ、またはモータの固定子(stator)などの磁性製品に使用できる。
【0145】
以下、発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記に記載の実施例は発明を具体的に例示または説明するためのものに過ぎず、これによって発明の範囲が限定されてはならない。
【0146】
[実施例]
【0147】
(製造例1:軟磁性合金粒子の製造)
Fe、Co、Ge、B、PおよびCu原料を用意し、用意した原料を下記の表1に示すような組成式となるように称量する。称量した原料を混合し、アーク溶解法を用いて母合金を製造する。製造された母合金を溶融させた後、急速冷却設備で急速冷却させて軟磁性初期合金を製造する。
【0148】
軟磁性初期合金を下記表1の熱処理温度(℃)まで熱処理して、下記表1の組成式で表される実施例1~5、比較例1~11の軟磁性合金粒子を製造する。
【0149】
【表1】
【0150】
(製造例2:インダクタの製造)
製造例1で製造した軟磁性合金粒子を樹脂に分散させた形態の磁性物質を含むボディを製造し、そのボディを含んでインダクタを製造する。
【0151】
[実験例]
【0152】
(実験例1:非晶質相と結晶相のGe含有量の差分析)
実施例および比較例で製造されたインダクタに含まれる軟磁性合金粒子の非晶質相と結晶相のGe含有量およびその差を分析する。
【0153】
インダクタをエポキシ混合液に入れて硬化させた後、インダクタボディのL軸方向およびT軸方向の側面をW軸方向に1/2地点まで研磨(Polishing)し、固定後、真空雰囲気のチャンバ内に維持してインダクタボディの断面サンプルを得る。
【0154】
得られたインダクタボディの断面サンプルに対して、樹脂に分散している軟磁性合金粒子を透過電子顕微鏡(TEM、Transmission Electron Microscope)に設けられたEDS(Energy Disperse X-Ray Spectrometer)を用いてライン(line)分析する。
【0155】
具体的には、いずれか1つのナノ結晶粒子の表面を基準として、ナノ結晶粒子の内部に20nm、外部に200nmだけspot定量分析したline profileにおいて、ナノ結晶粒子内部での最大値と非晶質部分での最大値とを比較する。spot定量分析をそれぞれ6pointずつ実施し、Ge含有量の平均を算出する。
【0156】
この時、非晶質相と結晶相でのGe平均原子含有率(Ge(a)、Ge(c))(単位:at%)および含有量の差(Ge(a)-Ge(c))(単位:at%)を、下記の表2に示す。
【0157】
下記の表2を参照すれば、非晶質内のGe平均原子含有率(Ge(a))がナノ結晶内のGe平均原子含有率(Ge(c))よりも高いことを確認できる。これによって、原子量が(Si元素などより)相対的に大きいGe元素が非晶質内に残存して、軟磁性合金粒子内でナノ結晶の成長を抑制する役割を果たすことが分かる。
【0158】
【表2】
【0159】
(実験例2:DTA分析)
実施例および比較例の軟磁性合金粒子を急速冷却リボン設備を用いて20umの厚さのリボン形態に製造して、DTA分析を実施する。これによって第1結晶化温度(Tx1)および第2結晶化温度(Tx2)を確認して、表1に示す。
【0160】
表1を参照すれば、実施例1~5では、第2結晶化温度(Tx2)が上昇しながら、第1結晶化温度(Tx1)と第2結晶化温度(Tx2)との差が100℃を超えて、ナノ結晶形成のための熱処理工程ウィンドウが改善されることを確認できる。
【0161】
(実験例3:結晶サイズおよび結晶分率分析)
まず、実施例および比較例で製造されたインダクタボディの断面サンプルから軟磁性合金粒子のXRDグラフを得る。
【0162】
軟磁性合金粒子に含まれるナノ結晶の平均結晶サイズは、XRDグラフのメインピークの半値幅(FWHM、Full Width at Half Maximum)を用いた、下記の数式2で表されるシェラー方程式(scherer equation)を用いて計算する。その結果を表1に示す。
【0163】
【数2】
【0164】
数式2中、Dは平均結晶サイズ、λはXRDターゲットの波長、βは半値幅(FWHM)、θはXRDグラフピーク(peak)2θの半値である。
【0165】
表1を参照すれば、実施例1~5は、ナノ結晶の平均結晶サイズが20nm以下(約17nm水準)であることを確認できる。これに対し、比較例1~11は、ナノ結晶の平均結晶サイズが20nmを超える水準であることを確認できる。
【0166】
また、XRD分析後、データフィッティング(data fitting)をして、上記で説明した数式1を用いて、非晶質と結晶質との面積比を通して、結晶分率を計算する。
【0167】
表1を参照すれば、実施例1~5の結晶分率は59%以上に改善されることを確認できる。これに対し、比較例1~11の結晶分率は59%未満であることが確認できる。
【0168】
(実験例4:電磁気的特性評価)
周波数1kHzにおける透磁率と、0.2T、100kHzの磁場下でコアロスを測定して、表1に示す。
【0169】
表1を参照すれば、実施例1~5は、透磁率が5300以上、コアロスが1590mW/cc以下で、電磁気的特性に優れていることを確認できる。これに対し、比較例1~11は、透磁率が5300未満、コアロスが1590mW/cc超過で、電磁気的特性が低下することを確認できる。
【0170】
さらに、表1を参照すれば、実施例1~5は、上記で説明した効果を示すと同時に、比較例1~11と比較した時、Ms値が類似の水準であることを確認できる。
【0171】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の詳細な説明および図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属することは言うまでもない。
【符号の説明】
【0172】
11:粗粉磁性粒子
12:微粉磁性粒子
20:樹脂
100、200、300:インダクタ
110、210、310:ボディ
120:支持部材
130、230、330:コイル
131:上部コイル
132:下部コイル
133、231、331:絶縁層
140:ビア
150、250:コア
161、162、261、262、361、362:外部電極
211:モールド部
212:カバー部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11