(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152635
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】単結晶の製造方法、単結晶、圧電素子、超音波モータ、光学機器、振動装置、塵埃除去装置、撮像装置、超音波プローブ、超音波診断装置、超音波診断システム、および電子機器
(51)【国際特許分類】
C30B 29/32 20060101AFI20241018BHJP
H10N 30/853 20230101ALI20241018BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20241018BHJP
H10N 30/095 20230101ALI20241018BHJP
H10N 30/093 20230101ALI20241018BHJP
C30B 11/00 20060101ALI20241018BHJP
C01G 23/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C30B29/32 C
H10N30/853
H10N30/20
H10N30/095
H10N30/093
C30B11/00 Z
C01G23/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024045263
(22)【出願日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2023066551
(32)【優先日】2023-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】古田 達雄
(72)【発明者】
【氏名】松田 堅義
(72)【発明者】
【氏名】上林 彰
【テーマコード(参考)】
4G047
4G077
【Fターム(参考)】
4G047CA07
4G047CA08
4G047CB04
4G047CC03
4G047CD03
4G047CD08
4G077AA02
4G077AB01
4G077BC42
4G077CD10
4G077EA02
4G077ED01
4G077ED02
4G077HA04
4G077HA11
(57)【要約】
【課題】圧電素子としたときに圧電定数と機械的品質係数がより大きい単結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】マトリクスを加熱することによる単結晶の製造方法であって、マトリクスとペロブスカイト型の種単結晶とを準備する第1の準備工程と、前記マトリクスの表面と前記種単結晶の表面とが接して配置された一体物を準備する第2の準備工程と、前記一体物を、室温から前記マトリクスの液相開始温度まで昇温させる第1の昇温工程と、前記一体物を、前記液相開始温度から前記マトリクスの液相終了温度まで昇温させる第2の昇温工程と、前記一体物を、前記液相終了温度で加熱する加熱工程と、前記加熱がされた後の前記マトリクスからペロブスカイト型の単結晶を得る工程とを含み、前記第2の昇温工程における昇温レートが、前記第1の昇温工程における昇温レートより小さい単結晶の製造方法である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクスを加熱することによる単結晶の製造方法であって、
マトリクスと種単結晶とを準備する第1の準備工程と、
前記マトリクスの表面と前記種単結晶の表面とが接して配置された一体物を準備する第2の準備工程と、
前記一体物を、室温から前記マトリクスの液相開始温度まで昇温させる第1の昇温工程と、
前記一体物を、前記液相開始温度から前記マトリクスの液相終了温度まで昇温させる第2の昇温工程と、
前記一体物を、前記液相終了温度で加熱する加熱工程と、
前記加熱がされた後の前記一体物から単結晶を得る工程と
を含み、
前記第2の昇温工程における昇温レートが、前記第1の昇温工程における昇温レートより小さい単結晶の製造方法。
【請求項2】
前記単結晶は、Ba、Ti、ZrおよびMnを含む請求項1に記載の単結晶の製造方法。
【請求項3】
前記単結晶は、Ba、Ti、およびZrを含むペロブスカイト型の酸化物とMnを含有し、
前記Tiおよび前記Zrの和に対する前記Zrのモル比であるxが0.01≦x≦0.13であり、
前記Mnの含有量は、前記酸化物100質量部に対し金属換算で、0.04質量部以上1.16質量部以下である請求項1に記載の単結晶の製造方法。
【請求項4】
前記単結晶は、Ba、Ti、Zrを含むペロブスカイト型の酸化物を含み、
前記Tiおよび前記Zrの和に対する前記Zrのモル比であるxが、0.01≦x≦0.03であり、
前記Tiおよび前記Zrの和に対するBaのモル比であるaが、0.976≦a≦1.020であり、
前記単結晶は、Mn、Biを含有し、
前記Mnの含有量が、前記酸化物100質量部に対し金属換算で、0.04質量部以上1.16質量部以下で、
前記Biの含有量が、前記酸化物100質量部に対し金属換算で、0.04質量部以上0.53質量部以下である請求項1に記載の単結晶の製造方法。
【請求項5】
前記種単結晶は、Ba、Ti、およびZrを主成分とする請求項1に記載の単結晶の製造方法。
【請求項6】
前記種単結晶は、Ba、Ti、およびCaを主成分とする請求項1に記載の単結晶の製造方法。
【請求項7】
前記マトリクスが成型体であることを特徴とする請求項1に記載の単結晶の製造方法。
【請求項8】
前記マトリクスの相対密度が、93%以上100%以下である請求項1に記載の単結晶の製造方法。
【請求項9】
前記マトリクスが、前記単結晶を構成する元素を含む多結晶である請求項1に記載の単結晶の製造方法。
【請求項10】
前記第2の昇温工程における昇温レートが、時間平均で1時間あたり1℃以下である請求項1に記載の単結晶の製造方法。
【請求項11】
Ba、Ti、およびZrを含むペロブスカイト型の酸化物とMnとを含有する単結晶であって、
前記Tiおよび前記Zrの和に対する前記Zrのモル比であるxが、0.01≦x≦0.13であり、
前記Mnの含有量が、前記酸化物100質量部に対し金属換算で、0.04質量部以上1.16質量部以下である単結晶。
【請求項12】
前記Tiおよび前記Zrの和に対する前記Zrのモル比であるxが、0.01≦x≦0.03であり、
前記Tiおよび前記Zrの和に対するBaのモル比であるaが、0.976≦a≦1.020であり、
前記単結晶は、Biをさらに含有し、
前記Biの含有量が、前記酸化物100質量部に対し金属換算で、0.04質量部以上0.53質量部以下である請求項11に記載の単結晶。
【請求項13】
最長部が、1mm以上100mm以下である請求項11に記載の単結晶。
【請求項14】
相対密度が、93%以上100%以下である請求項11に記載の単結晶。
【請求項15】
機械的品質係数Qmが、500以上である請求項11に記載の単結晶。
【請求項16】
複数の電極と、請求項11から15のいずれか1項に記載の単結晶とを有する圧電素子。
【請求項17】
請求項16に記載の圧電素子を配した振動体と、前記振動体と接触する移動体とを有する超音波モータ。
【請求項18】
駆動部に請求項17に記載の超音波モータを備えた光学機器。
【請求項19】
請求項16に記載の圧電素子を振動板に配した振動体を有する振動装置。
【請求項20】
請求項19に記載の振動装置を振動部に有する塵埃除去装置。
【請求項21】
請求項20に記載の塵埃除去装置と、撮像素子ユニットとを有する撮像装置であって、
前記塵埃除去装置の振動板を前記撮像素子ユニットの受光面側に設けた撮像装置。
【請求項22】
請求項16に記載の圧電素子を有し、前記圧電素子によって送受信する超音波プローブ。
【請求項23】
請求項22に記載の超音波プローブと、画像出力部とを有する超音波診断装置。
【請求項24】
請求項22に記載の超音波プローブと、前記超音波プローブから出力された信号を送信する送信部と、前記送信部から送信された信号を受信する受信部とを有する超音波診断システム。
【請求項25】
請求項16に記載の圧電素子を備えた圧電音響部品を配した電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は単結晶の製造方法と単結晶に関する。また、本発明は前記単結晶を用いた圧電素子、超音波モータ、光学機器、振動装置、塵埃除去装置、撮像装置、超音波プローブ、超音波診断装置、超音波診断システムおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸バリウムなどの単結晶を作製するための方法として、種となる単結晶をマトリクスに接合させて熱処理することで単一の結晶粒のみが大きくなる異常粒成長を発生させ、その異常粒を切り出すことで単結晶を得る固相法が特許文献1で公開されている。
特許文献1には、チタン酸バリウムにZrやMnを置換してもよい記載があり、熱処理温度についての記載もある。しかし、熱処理時の昇温過程の昇温レートや時間などについては特に記載がない。
【0003】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、熱処理温度を調整するだけでは、単一の結晶粒を大きくする異常粒成長が困難な材料組成があることが分かった。
【0004】
一方、圧電性を有する単結晶を超音波モータなどの共振デバイスで用いる場合、圧電定数と共振の鋭さを表す機械的品質係数が大きいことが求められる。圧電定数と機械的品質係数が小さいと、動作に必要な電力が高くなる。そのため圧電定数と機械的品質係数の大きい単結晶が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術のように熱処理温度を調整するだけでは、単一の結晶粒のみを大きくする異常粒成長が困難な材料組成があり、そのような組成の単結晶は得られないという課題があった。
【0007】
本発明は、この様な課題を解決するためになされたものであり、より幅広い材料組成に対応できるようにすることで、圧電素子としたときに圧電定数と機械的品質係数がより大きい単結晶の製造方法を提供することを目的の1つとする。
また、本発明は圧電素子としたときに圧電定数と機械的品質係数がより大きい単結晶を提供することを目的の1つとする。
加えて、本発明は、圧電定数と機械的品質係数がより大きい圧電素子を用いた超音波モータ、光学機器、振動装置、塵埃除去装置、撮像装置、超音波プローブ、超音波診断装置、超音波診断システム、および電子機器を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、
マトリクスを加熱することによる単結晶の製造方法であって、
マトリクスと種単結晶とを準備する第1の準備工程と、
前記マトリクスの表面と前記種単結晶の表面とが接して配置された一体物を準備する第2の準備工程と、
前記一体物を、室温から前記マトリクスの液相開始温度まで昇温させる第1の昇温工程と、
前記一体物を、前記液相開始温度から前記マトリクスの液相終了温度まで昇温させる第2の昇温工程と、
前記一体物を、前記液相終了温度で加熱する加熱工程と、
前記加熱がされた後の前記一体物から単結晶を得る工程と
を含み、
前記第2の昇温工程における昇温レートが、前記第1の昇温工程における昇温レートより小さい単結晶の製造方法である。
【0009】
また、本発明は、
Ba、Ti、およびZrを含むペロブスカイト型の酸化物とMnとを含有する単結晶であって、
前記Tiおよび前記Zrの和に対する前記Zrのモル比であるxが0.01≦x≦0.13であり、
前記Mnの含有量が、前記酸化物100質量部に対し金属換算で、0.04質量部以上1.16質量部以下である単結晶である。
【0010】
また、本発明は、複数の電極と、上述の単結晶とを有する圧電素子である。
また、本発明は、上述の圧電素子を配した振動体と、前記振動体と接触する移動体とを有する超音波モータである。
また、本発明は、駆動部に上述の超音波モータを備えた光学機器である。
また、本発明は、上述の圧電素子を振動板に配した振動体を有する振動装置である。
また、本発明は、上述の振動装置を振動部に有する塵埃除去装置である。
また、本発明は、上述の塵埃除去装置と、撮像素子ユニットとを有する撮像装置であって、上述の塵埃除去装置の振動板を前記撮像素子ユニットの受光面側に設けた撮像装置である。
また、本発明は、上述の圧電素子を有し、前記圧電素子によって送受信する超音波プローブである。
また、本発明は、上述の超音波プローブと、画像出力部とを有する超音波診断装置である。
また、本発明は、上述の超音波プローブと、上述の超音波プローブから出力された信号を送信する送信部と、前記送信部から送信された信号を受信する受信部とを有する超音波診断システムである。
また、本発明は、上述の圧電素子を備えた圧電音響部品を配した電子機器である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来の製法では作製できなかったBa、Ti、およびZrを含むペロブスカイト型の酸化物とMnを含有する組成など、幅広い材料組成に対応できる単結晶の製造方法およびその単結晶を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態を説明するための概略図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態を説明するための概略図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態を説明するための概略図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態を説明するための概略図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態の熱処理の昇温プロファイルを説明するための概略図である。
【
図6】本発明の圧電素子の構成の一実施態様を示す概略図である。
【
図7】本発明の超音波モータの構成の一実施態様を示す概略図である。
【
図8A】本発明の光学機器の一実施態様を示す概略図である。
【
図8B】本発明の光学機器の別の一実施態様を示す概略図である。
【
図9】本発明の光学機器の一実施態様を示す概略図である。
【
図10A】本発明の振動装置を塵埃除去装置とした場合の一実施態様を示す概略図である。
【
図10B】本発明の振動装置を塵埃除去装置とした場合の別の一実施態様を示す概略図である。
【
図11A】本発明の塵埃除去装置における圧電素子の構成の一例を示す概略図である。
【
図11B】本発明の塵埃除去装置における圧電素子の構成の他の一例を示す概略図である。
【
図11C】本発明の塵埃除去装置における圧電素子の構成の他の一例を示す概略図である。
【
図12A】本発明の塵埃除去装置の振動原理の一例を示す模式図である。
【
図12B】本発明の塵埃除去装置の振動原理の他の一例を示す模式図である。
【
図13】本発明の撮像装置の一実施態様を示す概略図である。
【
図14】本発明の撮像装置の一実施態様を示す概略図である。
【
図15】本発明の超音波プローブの一実施態様を示す概略図である。
【
図16】本発明の超音波診断装置の一実施態様を示す概略図である。
【
図17】本発明の超音波診断システムの一実施態様を示す概略図である。
【
図18】本発明の超音波診断システムの一実施態様を示す概略図である。
【
図19】本発明の電子機器の一実施態様を示す概略図である。
【
図20】本発明の実施例におけるマトリクスの熱処理後の状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明は、幅広い材料組成に対応できる単結晶の製造方法およびそれにより得られる単結晶を提供するものである。
また、本発明の単結晶は、圧電素子として、半導体などの電子デバイス、発光素子、光学素子、エネルギー変換素子、センサなどのさまざまな用途に利用することができる。
【0014】
<第1の実施形態>
第1の実施形態は単結晶の製造方法についてである。
本発明の単結晶の製造方法は、
マトリクスを加熱することによる単結晶の製造方法であって、
マトリクスと種単結晶とを準備する第1の準備工程と、
前記マトリクスの表面と前記種単結晶の表面とが接して配置された一体物を準備する第2の準備工程と、
前記一体物を、室温から前記マトリクスの液相開始温度まで昇温させる第1の昇温工程と、
前記一体物を、前記液相開始温度から前記マトリクスの液相終了温度まで昇温させる第2の昇温工程と、
前記一体物を、前記液相終了温度で加熱する加熱工程と、
前記加熱がされた後の前記一体物から単結晶を得る工程と
を含み、
前記第2の昇温工程における昇温レートが、前記第1の昇温工程における昇温レートより小さい。
以下に、発明を理解するための基本的な事項の説明と共に、各項目を説明する。単結晶などの一部の物質については、第2の実施形態でも説明する。
【0015】
〔発明を理解するための説明1〕
(単結晶の説明)
単結晶とは、単一の結晶粒からなり、結晶粒の内部は、どの部分においても原子配列の向きである結晶軸が全て同一であるものをいう。ただし、本発明の単結晶は、単結晶内部に、転位などの格子欠陥や空孔、空隙を内包していてもよい。また、相転移による結晶系の違いや自発分極の向きの違いなどにより発生するドメイン構造を内包していてもよい。
【0016】
(ペロブスカイト型)
ペロブスカイト型とは、岩波理化学辞典 第5版(岩波書店、1998年2月20日発行)に記載されているような、理想的には立方晶構造であるペロブスカイト構造(ペロフスカイト構造とも言う)を指す。ペロブスカイト型の酸化物は一般にABO3の化学式で表現される。AサイトやBサイトの元素とO元素のモル比は1対3で表記されているが、元素量の比が若干ずれた場合(例えば1.00対2.94~1.00対3.06)でも、当該酸化物がペロブスカイト型を主相としていれば、ペロブスカイト型酸化物といえる。
【0017】
また、A元素、B元素、O元素がそれぞれ単位格子の対称位置から僅かに座標シフトすると、ペロブスカイト型の単位格子が歪み、正方晶、菱面体晶、斜方晶といった結晶系となる。本発明の単結晶は、好ましくはペロブスカイト型酸化物からなるが、その単結晶の結晶系はA、Bを構成する単一または複数の元素によって立方晶のみならず、正方晶、菱面体晶、斜方晶といった結晶系をも取り得る。酸化物がペロブスカイト型であるか、またその結晶系が何かは、例えば、X線回折や電子線回折による構造解析から判断することができる。その場合、必要に応じて試料を粉末にしてから測定してもよい。
【0018】
以下に、本発明の単結晶の具体的な製造方法について説明する。
図1は本発明の種単結晶2とマトリクス1の一体物の一実施形態を示す概略図である。
図1において、種単結晶2はマトリクス1の上部に設けられており、マトリクス1の表面と前記種単結晶2の表面とが接して配置された一体物となっている。
本発明の単結晶の製造方法は、たとえば
図1に示すような一体物のマトリクス1を加熱することによる単結晶の製造方法である。
【0019】
〔第1の準備工程〕
本発明の単結晶の製造方法は、マトリクス1と種単結晶2とを準備する第1の準備工程を含む。
(マトリクスの説明)
本発明のマトリクス1は成型体または焼結体であることが好ましい。マトリクス1の形状は特に限定されないが、直方体形状や円盤形状など平らな面を有する形状であると、種単結晶2と接して配置しやすいため好ましい。
【0020】
(マトリクスを作製するための原料粉末)
本発明のマトリクス1に使用する原材料は、本発明の単結晶を構成する構成元素を含んだ酸化物、炭酸塩、硝酸塩、蓚酸塩などの固体粉末、またはこれらの混合粉末である。
原材料に含まれる鉛(Pb)の含有量が1000ppm未満であると環境への負荷が小さくより好ましい。
【0021】
マトリクス1の原材料を構成する好ましい元素としては、例えば、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Zn、Ge、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Sn、Sb、Ba、Hf、Ta、Bi、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Ybが挙げられる。
【0022】
前記原材料は、均質化を目的として熱処理をしてあっても良く、熱処理後に解砕してあってもよい。原材料を均質化するための熱処理は800℃以上1300℃以下の範囲で行うと、熱処理後に解砕しやすいので好ましい。
【0023】
本発明の単結晶を製造する場合は、構成元素を含んだ酸化物、炭酸塩、硝酸塩、蓚酸塩、酢酸塩などの固体粉末から成型体を作り、その成型体を常圧下で焼結する一般的な手法を採用することができる。原料としては、Ba化合物、Ti化合物、Zr化合物、Mn化合物、Bi化合物などの化合物から構成される。
【0024】
使用可能なBa化合物としては、酸化バリウム、炭酸バリウム、蓚酸バリウム、酢酸バリウム、硝酸バリウム、チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウムなどが挙げられる。これらBa化合物は商業的に入手可能である高純度タイプ(例えば、純度99.99%以上)の化合物を用いることが好ましい。
【0025】
使用可能なTi化合物としては、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウムなどが挙げられる。これらTi化合物にバリウムなどのアルカリ土類金属が含まれる場合は商業的に入手可能である高純度タイプ(例えば、純度99.99%以上)の化合物を用いることが好ましい。
Tiの市販原料に不可避成分として含まれる程度のNbと、Zrの市販原料に不可避成分として含まれる程度のHfは含んでいてもよい。
【0026】
使用可能なZr化合物としては、酸化ジルコニウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウムなどが挙げられる。これらZr化合物にバリウムなどのアルカリ土類金属が含まれる場合は商業的に入手可能である高純度タイプ(例えば、純度99.99%以上)の化合物を用いることが好ましい。
【0027】
使用可能なMn化合物としては、炭酸マンガン、酸化マンガン、二酸化マンガン、酢酸マンガン、四酸化三マンガンなどが挙げられる。
【0028】
使用可能なBi化合物としては、三酸化二ビスマス、硝酸ビスマス、フッ化ビスマス、炭酸ビスマス、水酸化ビスマスなどが挙げられる。
【0029】
また、本発明に係る前記圧電材料のAサイトにおけるBaの存在量とBサイトにおけるTiとZrのモル量の比を示すaを調整するための原料は特に限定されない。Ba化合物、Ti化合物、Zr化合物のいずれでも効果は同じである。
【0030】
(マトリクスを作製するための原料の造粒)
本発明の単結晶の製造方法に使用するマトリクス1の原材料は造粒されていても良く、その造粒方法は特に限定されない。造粒する際に使用可能なバインダーの例としては、PVA(ポリビニルアルコール)、PVB(ポリビニルブチラール)、アクリル系樹脂が挙げられる。上記混合粉末に添加するバインダーの量は1質量部から10質量部が好ましく、成型体の密度が上がるという観点において2質量部から5質量部がより好ましい。造粒粉の粒径をより均一にできるという観点において、最も好ましい造粒方法はスプレードライ法である。
【0031】
(マトリクスを作製するための原料の成型体)
本発明の単結晶の製造方法に使用するマトリクス1の成型体は、上記原材料を所望の形状に固めた成型体であり、その製造方法は特に限定されない。成型体とは原料粉末、造粒粉(バインダー)、もしくはスラリーから作製される固形物である。
【0032】
成型体を作製する手段としては、一軸加圧加工、冷間静水圧加工、温間静水圧加工、鋳込成形と押し出し成形などを用いることができる。また、スラリー状態の原材料を、ドクターブレード法を用いてシート状にして乾燥させても良く、そのシートを重ねて目標とする形状に成型してもよい。シートは、乾燥する前に脱気工程を行うと、密度が大きくなるため、そのシートを用いたマトリクス1の密度も大きくなり、そのマトリクス1を用いて作製された単結晶も密度が大きくなるので好ましい。
【0033】
本発明の単結晶の製造方法におけるマトリクス1が成型体であることが好ましい。さらに、マトリクス1が、本発明の単結晶の製造方法によって製造される単結晶を構成する元素を含む多結晶であることが好ましい。このようにすることで、領域の大きな単結晶を得ることができる。この場合も
図1のように、マトリクス1の上に種単結晶2を載せ、マトリクス1と種単結晶2を接して配置すればよく、このような状態で熱処理を行うと、マトリクス1が収縮すると共に種単結晶2がマトリクス1に僅かに食い込んでいくため、マトリクス1と種単結晶2がより接した状態になる。つまり、マトリクス1と種単結晶2の接触面積が大きくなる。
【0034】
成型するときに種単結晶2を成型体の中に入れる方法もあるが、熱処理時に成型体と種単結晶2との収縮量の違いで大きく変形する場合や割れ、クラックが発生する恐れがある。従って、マトリクス1が成型体の場合は、種単結晶2はマトリクス1のそれぞれの1表面に接して配置することが好ましい。
【0035】
マトリクス1と種単結晶2は接するように、上下に配置することが好ましい。さらに、マトリクス1と種単結晶2の上に重石を乗せると、マトリクス1と種単結晶2が接しやすくなるため好ましい。熱処理時の変形などによりマトリクス1と種単結晶2が離れる方向の力が働いたとしても、重石によりそれを抑制する方向に力が働くため、より接しやすくなる。
【0036】
種単結晶2がマトリクス1と接する側の面の面積は、マトリクス1が種単結晶2と接する側の面の面積以下であることが好ましい。マトリクス1よりも大きい部分の種単結晶2は、マトリクス1の単結晶化に寄与しないため無駄になる。そのため、種単結晶2は出来るだけ小さい方がよい。
【0037】
ただし、種単結晶2が小さすぎると、マトリクス全体にまで単結晶領域を広げるための熱処理時間が長くなる。従って、種単結晶2のマトリクス1と接する側の面の面積は、マトリクス1が種単結晶2と接する側の面の面積の50%以上100%以下であることが好ましい。
【0038】
(焼結)
マトリクス1を焼結体として使用する場合、上記成型体を焼結すればよく、その焼結手段は限定されず、焼結方法としては、電気炉による焼結、ガス炉による焼結、ホットプレス法、通電加熱法、マイクロ波焼結法、ミリ波焼結法、HIP(熱間等方圧プレス)、フラッシュ焼結法などが挙げられる。高温時に高圧となるホットプレス法や通電加熱法、HIPなどは、マトリクス内の空隙を小サイズ化もしくは少数化できるため好ましい。マトリクス内の空隙の体積が小さいと、そのマトリクス1から得られた単結晶の密度は大きくなるので好ましい。
【0039】
マトリクス1の相対密度が93%以上100%以下であると好ましい。マトリクス1の相対密度が93%以上100%以下であると、前記マトリクス1から得られた単結晶の密度も大きくなる。
相対密度は、前記圧電材料の格子定数と前記圧電材料の構成元素の原子量から理論密度を算出し、その理論密度と実測した密度との割合である。格子定数は、例えば、X線回折分析により測定することができる。密度は、例えば、アルキメデス法により測定することができる。
【0040】
焼結体の組成と格子定数から求められる理論密度(ρcalc.)に対する測定密度(ρmeas.)の割合、つまり相対密度(ρcalc./ρmeas.)が93%以上であると相対密度が十分に高いといえる。
【0041】
(種単結晶)
本発明の単結晶の製造方法に使用する種単結晶2は、バルクでも薄膜でもよいが、マトリクス1と接する領域でマトリクス1との格子定数の不一致や熱膨張差によって種単結晶2に応力が発生し破損する可能性があるため、強度が高いという点で厚みが10μm以上のバルクであることが好ましい。また、マトリクス1と種単結晶2はほぼ同じ組成であることが好ましい。種単結晶2は、市販の酸化物単結晶、半導体単結晶、フッ化物・アルカリハライド単結晶、金属単結晶、合金単結晶などから選択して準備すればよいが、マトリクス1との格子定数の不一致や熱膨張差による応力が発生しにくいためペロブスカイト型の単結晶がよい。
【0042】
本発明の単結晶の製造方法に使用する種単結晶2はBa、TiおよびZrを主成分とする単結晶であることが好ましい。また、本発明の単結晶の製造方法に使用する種単結晶2はBa、Ti、およびCaを主成分とする単結晶であることが好ましい。
【0043】
種単結晶2がBa、Ti、およびZrを主成分とする単結晶またはBa、Ti、およびCaであると、マトリクス1との格子定数や線膨張係数が近いため、応力が発生しにくく、作製した単結晶が割れにくいため好ましい。
【0044】
種単結晶2として用いるペロブスカイト型の単結晶としては、BaTiO3、BaZrO3、SrTiO3、CaTiO3、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3、KTaO3、KNbO3、SrRuO3、LiNbO3、LaNiO3、AgNbO3、CdTiO3やこれらの固溶体などが挙げられる。
また、本発明の製造方法に使用する種単結晶2として、本発明の単結晶の製造方法で得られた単結晶を用いてもよい。
【0045】
〔第2の準備工程〕
本発明の単結晶の製造方法は、マトリクス1の表面と種単結晶2の表面とが接して配置された一体物を準備する第2の準備工程を含む。
(研磨)
本発明の単結晶の製造方法は、上述のように焼結して得られたマトリクス1や種単結晶2を研磨する工程を有することが好ましく、マトリクス1および種単結晶2の研磨した面を接して配置して一体物とすることで、より接する面積を増やすことができる。研磨した面は鏡面であると種単結晶2とマトリクス1の接する面積をさらに増やせるので好ましい。マトリクス1を成型体として使用する場合は、成型体を作製するときの型の面が鏡面であると、その面で押された成型体の面も鏡面となり好ましい。
【0046】
研磨の方法としては、機械研磨や化学研磨、CMP研磨があり、これらを組み合わせて研磨してもよい。
機械研磨とは、機械を使って行う研磨のことを指し、機械研磨を行う場合は、研磨機、ラップ盤、ポリッシングマシーン、バフ研磨機から選んで使用すればよい。また、細かい砥石を用いた精密研削機などを用いる工程を、研磨工程とすることもできる。
化学研磨とは、研磨用の溶液に試料を浸して、酸やアルカリの力によってその化学反応で試料の表面を腐食させる研磨方法である。例えば、円盤型の定盤の上に研磨パッドを貼り、その上に化学成分や微細な粒子を含んだ液体の研磨材を垂らし、回転させながら磨くロータリータイプで行う方法がある。
CMP研磨とは、機械研磨と化学研磨とを組み合わせた手法で、砥粒が試料の表面を削っていくという機械的な作用だけでなく、砥粒と試料との間や研磨液や研削液との間で化学作用を起こし、その物理研磨と化学反応とで表面を平面化していく方法である。
鏡面は化学研磨やCMP研磨により作製することができる。
【0047】
(匣鉢、セッタ、ビーズ、重石)
図2、
図3、
図4は、本発明の単結晶を作製するための構成を示す概略図の一例である。
図2はマトリクス1と種単結晶2の一体物の上に重石4が載っており、前記一体物はビーズ5を介してセッタ6上に設けている。
図3は、これらを匣鉢7の中に入れたもので、
図4は
図3の匣鉢7に蓋8をしたもので、匣鉢7に蓋8をした状態で電気炉に入れて加熱する。
【0048】
マトリクス1と種単結晶2は接するように、上下に配置することが好ましい。さらに、マトリクス1と種単結晶2の上に重石4を乗せると、マトリクス1と種単結晶2が接しやすくなるため好ましい。熱処理時の変形などによりマトリクス1と種単結晶2が離れる方向の力が働いたとしても、重石4によりそれを抑制する方向に力が働くため、より接しやすくなる。
【0049】
マトリクス1を加熱するときに、マトリクス1と種単結晶2は匣鉢7の中に入れて熱処理を加えることが好ましく、蓋付きの箱型であると炉の汚染などの影響が受けにくく、好ましい。
【0050】
マトリクス1と種単結晶2は、マトリクス1や種単結晶と反応しにくいセッタ6の上に載せて熱処理を加えるとよい。セッタ6の材質は、例えば、アルミナ、ジルコニア、ジルコニアを表面にコートしたアルミナ、安定化ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを用いればよい。セッタ6上に安定化ジルコニアなどのビーズ5やマトリクス1を高温で焼結して粉砕した粉末や白金シートなどを設置して、その上にマトリクス1と種単結晶2を置いてもよい。反応しにくいかどうかの判断が難しい場合は、実際にそれぞれの材質で試して、加熱したときの跡が最も残りにくいものを選べばよい。
【0051】
〔発明を理解するための説明2〕
(マトリクスの液相)
本発明の単結晶の製造方法に使用するマトリクス1は液相開始温度と液相終了温度を有している。
【0052】
(液相)
本発明における液相はマトリクス1の少なくとも一部が液相となっている状態を言い、固相と液相が共存する状態も液相である。その状態や温度は、例えば顕微鏡用加熱ステージ(LINKAM社製)に試料を入れて昇温し、マトリクス1の表面を顕微鏡観察することで確認できる。具体的には、昇温中にマトリクス1の粒界の少なくとも一部が確認できなくなったときが液相になった温度が液相開始温度であり、さらに昇温してマトリクス1の粒界が少なくとも一部発生したときが液相終了温度である。
【0053】
また、別の手段として、液相は急冷されると非晶質となることから、マトリクス1を液相温度付近まで昇温し、熱せられたマトリクス1をそのまま室温の水道水などに入れて急冷した後、X線回折で構造解析し、非晶質領域の有無で液相となる温度は確認できる。
【0054】
ただし、本発明における液相開始温度は、準備工程での不純物のコンタミや成型時の圧力ムラ、空隙などの影響でばらつきが生じる。そのため、上記手段で液相が確認できる最低温度の±50℃以内の範囲を液相開始温度とする。また、上記手段で液相が確認できる最高温度の±50℃以内の範囲を液相終了温度とする。
【0055】
種単結晶2とマトリクス1の界面が液相になると、種単結晶2の単結晶である領域の界面が徐々にマトリクス1側に広がる。このとき、表面エネルギーの差によってマトリクス1の結晶粒が単結晶に取り込まれていると考えられる。そのため、マトリクス1の結晶粒が大きすぎると表面エネルギーの差が小さくなるために、マトリクス1が単結晶に取り込まれにくくなる。
【0056】
従って、マトリクス1を焼結体として準備する場合は、焼結の際に結晶粒が大きくなりすぎない温度で焼結しておくことが好ましい。結晶粒を大きくさせない手段として、加熱時の雰囲気を窒素やアルゴンなどの還元雰囲気にして焼結する方法を使用してもよい。マトリクス1を焼結体として使用する場合、マトリクス1の好ましい結晶粒の粒径は50μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
【0057】
ここで「粒径」とは、顕微鏡観察法において一般に言われる「投影面積円相当径」を表し、結晶粒の投影面積と同面積を有する真円の直径を表す。本発明においては粒径の測定方法は特に制限されない。例えば試料の表面を偏光顕微鏡や走査型電子顕微鏡で撮影して得られる写真画像を画像処理して求めることができる。対象となる粒径により最適倍率が異なるため、光学顕微鏡と電子顕微鏡を使い分けても構わない。試料の表面ではなく研磨面や断面の画像から円相当径を求めてもよい。
【0058】
(加熱方法)
後述する、第1の昇温工程、第2の昇温工程と加熱工程において、マトリクス1と種単結晶2の一体物を加熱する方法は特に限定されないが、多数を一度に加熱でき、生産コストを抑えられるという点で、電気炉による焼結が好ましい。
【0059】
〔第1の昇温工程〕
図5は本発明の単結晶の製造方法の昇温工程を示す概略図である。
図5に示すように、本発明の単結晶の製造方法は、一体物を室温からマトリクスの液相開始温度まで昇温させる第1の昇温工程51を含む。
【0060】
液相開始温度まで昇温させる第1の昇温工程51では、マトリクス内でほぼ均一な結晶粒の成長が行われる。前述のようにマトリクス1の結晶粒が大きくなりすぎると、マトリクス1が単結晶に取り込まれにくくなるため、第1の昇温工程51は結晶粒が大きくなりすぎないように、短時間に設定することが好ましい。
【0061】
(雰囲気)
ここで、加熱するときの雰囲気は、酸素を含むとより液相が広がりやすいため、より早く大きい単結晶を作製することができる。そのため、加熱するときの雰囲気は酸素を含むことが好ましい。
【0062】
(第1の昇温レートの数値限定)
本発明の単結晶の製造方法における第1の昇温工程51の昇温レートは時間平均で1時間あたり100℃以上であることが好ましい。
第1の昇温工程51の平均昇温レートが時間平均で1時間あたり100℃以上、さらに好ましくは1時間あたり150℃以上であると、第1の昇温工程51でマトリクス1内の結晶粒が大きくなりすぎず、より安定して単一の結晶粒からなる単結晶を種単結晶2から広げることができる。
【0063】
〔第2の昇温工程〕
また、
図5に示すように、本発明の単結晶の製造方法は、前記一体物を前記液相開始温度から前記マトリクスの液相終了温度まで昇温させる第2の昇温工程52を含む。雰囲気については同様であるので説明を省略する。
【0064】
第2の昇温工程52では、種単結晶2とマトリクス1の界面が液相になり、単結晶界面がマトリクス1側に広がる。ただしその温度が、種単結晶2に接するマトリクス1の結晶粒の方位の違いなどで場所によって異なる組成の場合は、マトリクス1中の異なる方位の結晶粒の界面も同時に広がり、単一の結晶粒である単結晶が得られない場合がある。
【0065】
従って、第1の昇温工程51における室温から前記液相開始温度に至るまでと比べ、第2の昇温工程52における前記液相開始温度から前記液相終了温度に至るまでの昇温レートを小さくすることで、単一の結晶粒からなる単結晶を種単結晶2から広げることができる。
昇温後、液相終了温度で保持することで種単結晶2から広がった単結晶をさらに大きくすることができる。
【0066】
(第2の昇温レートの数値限定)
本発明の単結晶の製造方法は、第2の昇温工程52における昇温レートが、前記第1の昇温工程51における昇温レートより小さい。
本発明の単結晶の製造方法における第2の昇温工程52の昇温レートは時間平均で1時間あたり1℃以下であることが好ましい。
第2の昇温工程52の平均昇温レートが時間平均で1時間あたり1℃以下、さらに好ましくは時間平均で1時間あたり0.65℃以下であると、より安定して単一の結晶粒からなる単結晶を種単結晶2から広げることができるため好ましい。
【0067】
〔加熱工程〕
本発明の単結晶の製造方法は、一体物を、液相終了温度で加熱する加熱工程を含む。加熱方法は上述の通りである。第2の昇温工程の後に、続けて加熱工程が行われることが好ましく、液相終了温度での加熱における加熱時間は250~350時間であることが好ましく、300時間程度であることがより好ましい。このようにすることで、領域の大きな単結晶を成長させることができる。
【0068】
〔単結晶を得る工程〕
本発明の単結晶の製造方法は、加熱がされた後の前記一体物からペロブスカイト型の単結晶を得る工程を含む。
第2の昇温工程の後にマトリクス内のどの領域が単結晶であるかは、顕微鏡で粒界があるかどうかを確認すればよい。粒界が無ければ単一の結晶粒からなる単結晶である。また、X線回折による構造解析や電子線回折を用いても確認できる。
【0069】
単結晶領域以外の多結晶部や種単結晶2部は、ワイヤーソーやダイシングソー、ウォータージェット切断、放電加工、レーザー加工、研磨加工などで除去すれば、単結晶領域のみを得ることができる。
【0070】
第2の昇温工程の後に液相終了温度で一定時間保持した場合も同様の方法で前記マトリクス1から単結晶を得ることができる。
【0071】
本発明の単結晶はBa、Ti、ZrおよびMnを含むことが好ましく、このようにすることで、安定してペロブスカイト型の単結晶を得ることができる。特に、BaとTiに対し、ZrとMnの両方を含むことで、種単結晶2とマトリクス1の界面以外の部分に異常粒成長が発生しにくくなる。種単結晶2とマトリクス1以外の部分に異常粒成長が発生すると、その部分は種単結晶2とマトリクス1の界面から広がる単結晶の成長を妨げてしまう。
【0072】
本発明の単結晶は、Ba、Ti、およびZrを含むペロブスカイト型の酸化物とMnを含有する単結晶であって、TiおよびZrの和に対するZrのモル比であるxが0.01≦x≦0.13であり、前記酸化物100質量部に対し金属換算で、前記Mnの含有量は0.04質量部以上1.16質量部以下であることが好ましい。このようにすることで、より種単結晶2とマトリクス1の界面以外の部分に異常粒成長が発生しにくくなる。
【0073】
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、単結晶についてである。
本発明の単結晶は、
Ba、Ti、およびZrを含むペロブスカイト型の酸化物とMnとを含有する単結晶であって、
前記Tiおよび前記Zrの和に対する前記Zrのモル比であるxが0.01≦x≦0.13であり、
前記Mnの含有量が、前記酸化物100質量部に対し金属換算で、0.04質量部以上1.16質量部以下である。
【0074】
ここで、Mnの「金属換算」による含有量とは、以下のものを示す。前記単結晶から蛍光X線分析(XRF)、ICP発光分光分析、原子吸光分析などによりBa、Ti、Zr、Mnの各金属の含有量を測定する。その含有量から、下記一般式(1)で表わされる酸化物を構成する元素を酸化物換算し、その総質量を100としたときに対するMn質量との比によって求められた値を表す。
Baa(Ti1-x,Zrx)O3 (1)
前記Ba、Ti、およびZrを含むペロブスカイト型の酸化物とMnを含有する単結晶は圧電性を有し、鉛を使わない圧電材料の中では高い圧電定数と機械的品質係数を有する。本発明の単結晶は、鉛を使用していないために環境に対する負荷が小さい。
【0075】
圧電性を有する単結晶を超音波モータなどの共振デバイスで用いる場合、共振の鋭さを表す機械的品質係数が大きいことが求められる。機械的品質係数が小さいと動作に必要な電力が高くなったり、圧電素子が発熱して駆動制御が困難になったりする。そのため機械的品質係数の大きい単結晶が求められる。また、単結晶の圧電定数が小さいと、必要な振動振幅を得るために駆動電圧を大きくする必要があり、駆動電圧を大きくすると材料の誘電体としての容量成分に起因する電流が大きく流れるため、結果として消費電力が高くなる。
【0076】
前記一般式(1)で表わされる酸化物は、Aサイトに位置する元素がBaであり、Bサイトに位置する元素がTi、Zrであることを意味する。ただし、一部のBaがBサイトに位置してもよい。同様に、一部のTiとZrがAサイトに位置してもよい。
前記一般式(1)における、Bサイトの元素とO元素のモル比は1対3であるが、元素量の比が若干ずれていてもよい(例えば、1.00対2.94~1.00対3.06)。
【0077】
本発明の単結晶は、前記一般式(1)において、AサイトにおけるBaのモル量と、BサイトにおけるTiとZrのモル量との比を示すaは、0.965≦a≦1.020の範囲であることが好ましい。
【0078】
本発明の単結晶は、前記一般式(1)で表わされるペロブスカイト型の酸化物を主成分として90モル%以上含むことが好ましい。より好ましい範囲は95モル%以上である。
aが0.965より小さいと空隙が多数発生し、強度が低下する恐れがある。一方で、aが1.020より大きくなると第1の昇温工程でマトリクス1の粒径が大きくなり過ぎ、加熱時に単結晶の領域が広がりにくくなり、単結晶の作製が困難になる恐れがある。
空隙が小さくなり、加熱時に単結晶の領域が広がりやすくなる好ましいaの範囲は、0.985≦a≦1.000である。
【0079】
前記一般式(1)において、BサイトにおけるZrのモル比を示すxは、0.01≦x≦0.13の範囲である。xが0.13より大きいとキュリー温度が低くなりすぎて、高温耐久性が充分でなくなり、xが0.01より小さいと室温における圧電定数が小さくなる。
【0080】
なお、キュリー温度(Tc)とは、材料の強誘電性が消失する温度をいう。通常Tc以上で圧電材料の圧電性も消失する。Tcの測定方法は、測定温度を変えながら強誘電性が消失する温度を直接測定する方法や、微小交流電界を用いて測定温度を変えながら比誘電率を測定し比誘電率が極大を示す温度から求める方法がある。
【0081】
本発明の単結晶の組成を測定する手段は特に限定されない。手段としては、X線蛍光分析、ICP発光分光分析、原子吸光分析などが挙げられる。いずれの手段においても、前記単結晶に含まれる各元素の質量比および組成比を算出できる。
【0082】
本発明の単結晶は、前記範囲のMnを含有すると、室温領域において機械的品質係数が向上する。ここで、機械的品質係数とは圧電材料を振動子として評価した際の振動による弾性損失を表す係数であり、機械的品質係数の大きさはインピーダンス測定における共振曲線の鋭さとして観察される。つまり振動子の共振の鋭さを表す定数である。機械的品質係数が高いほうが振動で失われるエネルギーは少ないため、機械的品質係数が向上すると、前記単結晶を圧電素子として電圧を印加し駆動させた際の、消費電力が小さくなる。
【0083】
Mnの含有量が0.04質量部未満であると、室温領域において機械的品質係数が150未満と小さくなる。機械的品質係数が小さいと、前記単結晶と一対の電極よりなる圧電素子を共振デバイスとして駆動した際に、消費電力が増大する。好ましい機械的品質係数は、200以上であり、より好ましくは400以上である。さらに好ましい機械的品質係数は、700以上である。この範囲であれば、デバイス駆動時において、消費電力の極端な増大は発生しない。一方で、Mnの含有量が1.16質量部より大きくなると、単結晶の絶縁性が低下する。例えば、単結晶の周波数1kHzにおける誘電正接が0.01を超えたり、抵抗率が1GΩcmを下回ったりすることがある。誘電正接は、インピーダンスアナライザを用いて測定することができる。誘電正接が0.01以下であると、単結晶を圧電素子として用いて高電圧を印加した際でも、安定した動作を得ることが出来る。
単結晶の抵抗率は、1GΩcmあれば分極することができ、圧電素子として駆動させることができる。より好ましい抵抗率は50GΩcm以上である。
【0084】
Mnは金属Mnに限らず、Mn成分として単結晶に含まれていれば良く、その含有の形態は問わない。例えば、Bサイトに固溶していてもよいし、単結晶中の空隙との界面に含まれていてもかまわない。または、金属、イオン、酸化物、金属塩、錯体などの形態でMn成分が単結晶に含まれていてもよい。より好ましくは、絶縁性や焼結容易性という観点からMnは存在することが好ましい。Mnの価数は一般に4+、2+、3+を取ることができる。結晶中に伝導電子が存在する場合(例えば結晶中に酸素欠陥が存在する場合や、Aサイトをドナー元素が占有した場合など)、Mnの価数が4+から3+または2+などへと低くなることで伝導電子をトラップし、絶縁抵抗を向上させることができるからである。
【0085】
一方でMnの価数が2+など、4+よりも低い場合、Mnはアクセプタとなる。アクセプタとしてMnがペロブスカイト型の単結晶中に存在すると、結晶中にホールが生成されるか、単結晶中に酸素空孔が形成される。
【0086】
加えた多数のMnの価数が2+や3+であると、酸素空孔の導入だけではホールが補償しきれなくなり、絶縁抵抗が低下する。よってMnの大部分は4+であることが好ましい。ただし、ごくわずかのMnは4+よりも低い価数となり、アクセプタとしてペロブスカイト構造のBサイトを占有し、酸素空孔を形成してもかまわない。価数が2+あるいは3+であるMnと酸素空孔が欠陥双極子を形成し、単結晶の機械的品質係数を向上させることができるからである。仮に3価のBiがAサイトを占有すると、チャージバランスをとるためにMnは4+よりも低い価数を取り易くなる。
【0087】
非磁性(反磁性)材料中に微量に添加されたMnの価数は、磁化率の温度依存性の測定によって評価できる。磁化率は超伝導量子干渉計(SQUID)や振動試料磁束計(VSM)や磁気天秤により測定できる。測定で得られた磁化率χは一般的に式2で表わされるキュリーワイス則に従う。
(式2) χ=C/(T-θ) (C:キュリー定数、θ:常磁性キュリー温度)
【0088】
一般的に非磁性材料中に微量に添加されたMnは、価数が2+ではスピンS=5/2、3+ではS=2、4+ではS=3/2を示す。よって単位Mn量あたりに換算したキュリー定数Cが、各Mnの価数でのスピンS値に対応した値となる。よって、磁化率χの温度依存性からキュリー定数Cを導出することで試料中のMnの平均的な価数を評価することができる。
【0089】
(最長部)
本発明の単結晶は、最長部が1mm以上100mm以下であることが好ましい。
最長部をこの範囲にすることで、幅広いデバイスに適用することが出来る。
最長部が1mm以上であると、加工容易になる。また、最長部が100mmを超えると単結晶を作製するのに非常に時間が掛かるため、最長部が100mm以内であると、生産コストの面で好ましい。
【0090】
(相対密度)
本発明の単結晶は、相対密度が93%以上100%以下であることが好ましい。
相対密度が93%より小さくなると、機械的強度が低下する恐れがある。
【0091】
本発明の圧電材料のより好ましい相対密度は95%以上100%以下の範囲であり、さらに好ましい相対密度は97%以上100%以下の範囲である。相対密度が95%以上であると、加工時に破損しにくくなり、97%以上であると、切断加工および研磨加工時のチッピングが減少する。
【0092】
(機械的品質係数)
本発明の単結晶は機械的品質係数Qmが500以上であることが好ましい。
単結晶の機械的品質係数が500以上であると、駆動させるのに必要な電力が小さくなり、単結晶の発熱を抑えることが出来る。
【0093】
(正方晶系の単結晶)
本発明の単結晶は、前記Tiおよび前記Zrの和に対する前記Zrのモル比であるxが0.01≦x≦0.03であり、前記Tiおよび前記Zrの和に対するBaのモル比であるaが0.976≦a≦1.020であり、前記単結晶はBiをさらに含有し、前記Biの含有量は、前記酸化物100質量部に対し金属換算で、0.04質量部以上0.53質量部以下であることが好ましい。
【0094】
圧電性を有する単結晶を超音波モータなどのデバイスで用いる場合、耐電圧を示す抗電界は大きい方が好ましく(例えば2.5kV/cm以上)、抗電界が大きい単結晶は高い電圧で駆動しても、圧電性能が劣化しにくい。
【0095】
前記Ba、Ti、およびZrを含むペロブスカイト型の酸化物とMnおよびBiを含有する単結晶は、鉛を使わない圧電材料の中では圧電定数と機械的品質係数、抗電界がいずれも大きい。
【0096】
本発明の単結晶は、Biの含有量が前記金属酸化物1モルに対して0.04質量部以上0.53質量部以下で含有することで、3価のBiがAサイトを占有することができる。これにより、チャージバランスをとるためにBサイトのMnは4+よりも低い価数を取り易くなり、Mnによる機械的品質係数の向上効果をさらに高めることができる。
【0097】
また、前記一般式(1)において、BサイトにおけるZrのモル比を示すxは、0.01≦x≦0.03の範囲である。xが0.03以下であると室温25℃で単結晶が正方晶系となり、抗電界が大きく、耐電圧性が優れる。xが0.01以上であると室温25℃において高い圧電定数が得られる。
【0098】
本発明の単結晶は、Mnの含有量が前記金属酸化物1モルに対して0.002モル以上0.050モル以下で含有すると、室温25℃において抗電界が増大する。前述のように価数が2+あるいは3+であるMnと酸素空孔が欠陥双極子を形成して内部電界が生じると、その内部電界は外部電界による分極の反転を妨げるため、抗電界が向上する。
【0099】
<応用例>
以下に、本発明の応用例を説明する。
(圧電素子)
本発明の圧電素子は、複数の電極と、上述の単結晶とを有する。
図6は本発明の圧電素子の構成の一実施形態を示す概略図である。本発明に係る圧電素子は、第一の電極11、単結晶部22および第二の電極33を少なくとも有する圧電素子であって、前記単結晶部22が本発明の単結晶であることを特徴とする。
【0100】
本発明に係る単結晶は、少なくとも第一の電極11と第二の電極33を有する圧電素子にすることにより、その圧電定数を評価できる。前記第一の電極11および第二の電極33は、厚み5nmから10μm程度の導電層よりなる。その材料は特に限定されず、圧電素子に通常用いられているものであればよい。例えば、Ti、Pt、Ta、Ir、Sr、In、Sn、Au、Al、Fe、Cr、Ni、Pd、Ag、Cuなどの金属、合金およびこれらの化合物を挙げることができる。
【0101】
前記第一の電極11および第二の電極33は、これらのうちの1種からなるものであっても、あるいはこれらの2種以上を積層してなるものであってもよい。また、第一の電極11と第二の電極33が、それぞれ異なる材料であってもよい。
【0102】
前記第一の電極11と第二の電極33の製造方法は限定されず、金属ペーストの焼き付けにより形成してもよいし、スパッタ、蒸着法などにより形成してもよい。また第一の電極11と第二の電極33とも所望の形状にパターニングして用いてもよい。
【0103】
(分極処理)
前記圧電素子は一定方向に分極軸が揃っているものであると、より好ましい。分極軸が一定方向に揃っていることで前記圧電素子の圧電定数は大きくなる。
【0104】
前記圧電素子の分極方法は特に限定されない。分極処理は大気中で行ってもよいし、シリコーンオイル中で行ってもよい。分極をする際の温度は単結晶が相転移する温度が好ましい。例えば60℃から150℃の温度が好ましいが、素子を構成する単結晶の組成によって最適な条件は多少異なる。分極処理をするために印加する電界は8kV/cmから20kV/cmが好ましく、単結晶が室温と同じ結晶構造となる温度まで環境温度を低下させてから電界の印加を終了することが良好な圧電定数を得られるため好ましい。
【0105】
なお、本発明に係る圧電素子は、本発明の単結晶を多数枚積層したもの、または多数の圧電素子を重ねて棒状にして厚み方向の変位を利用するものとしての積層圧電素子も含まれる。
【0106】
(超音波モータ)
本発明の超音波モータは、上述の圧電素子を配した振動体と、振動体と接触する移動体とを有する。このようにすることで、鉛を含む圧電素子を用いた場合と同等以上の駆動効率を有する超音波モータを提供できる。
図7は、本発明の超音波モータの構成の一実施態様を示す概略図である。本発明の圧電素子が単板からなる超音波モータを、
図7に示す。
超音波モータは、振動子201、振動子201の摺動面に不図示の加圧バネによる加圧力で接触しているロータ202、ロータ202と一体的に設けられた出力軸203を有する。前記振動子201は、金属の弾性体リング2011、本発明の圧電素子2012、圧電素子2012を弾性体リング2011に接着する有機系接着剤2013(エポキシ系、シアノアクリレート系など)で構成される。本発明の圧電素子2012は、不図示の第一の電極11と第二の電極33によって挟まれた単結晶で構成される。本発明の圧電素子に位相がπ/2の奇数倍異なる二相の交番電圧を印加すると、振動子201に屈曲進行波が発生し、振動子201の摺動面上の各点は楕円運動をする。この振動子201の摺動面にロータ202が圧接されていると、ロータ202は振動子201から摩擦力を受け、屈曲進行波とは逆の方向へ回転する。不図示の被駆動体は、出力軸203と接合されており、ロータ202の回転力で駆動される。単結晶に電圧を印加すると、圧電横効果によって単結晶は伸縮する。この電気エネルギーから機械的なエネルギーへの変換効率は電気機械結合係数の大きさに依存する。金属などの弾性体が接着剤などによって圧電素子に接着されている場合、弾性体は接着剤を介して単結晶の伸縮によって曲げられる。ここで説明された種類の超音波モータは、この原理を利用したものである。
【0107】
(光学機器)
本発明の光学機器は、駆動部に上述の超音波モータを備える。このようにすることで、鉛を含む圧電素子を用いた場合と同等以上の動作速度と動作効率を有する光学機器を提供できる。
【0108】
図8Aおよび
図8Bは、本発明の光学機器の好適な実施形態の一例である一眼レフカメラの交換レンズ鏡筒の主要断面図である。また、
図9は本発明の光学機器の好適な実施形態の一例である一眼レフカメラの交換レンズ鏡筒の分解斜視図である。カメラとの着脱マウント711には、固定筒712と、直進案内筒713、前群鏡筒714が固定されている。これらは交換レンズ鏡筒の固定部材である。
【0109】
直進案内筒713には、フォーカスレンズ702用の光軸方向の直進案内溝713aが形成されている。フォーカスレンズ702を保持した後群鏡筒716には、径方向外方に突出するカムローラ717a、717bが軸ビス718により固定されており、このカムローラ717aがこの直進案内溝713aに嵌まっている。
【0110】
直進案内筒713の内周には、カム環715が回動自在に嵌まっている。直進案内筒713とカム環715とは、カム環715に固定されたローラ719が、直進案内筒713の周溝713bに嵌まることで、光軸方向への相対移動が規制されている。このカム環715には、フォーカスレンズ702用のカム溝715aが形成されていて、カム溝715aには、前述のカムローラ717bが同時に嵌まっている。
【0111】
固定筒712の外周側にはボールレース727により固定筒712に対して定位置回転可能に保持された回転伝達環720が配置されている。回転伝達環720には、回転伝達環720から放射状に延びた軸720fにコロ722が回転自由に保持されており、このコロ722の径大部722aがマニュアルフォーカス環724のマウント側端面724bと接触している。またコロ722の径小部722bは接合部材729と接触している。コロ722は回転伝達環720の外周に等間隔に6つ配置されており、それぞれのコロが上記の関係で構成されている。
【0112】
マニュアルフォーカス環724の内径部には低摩擦シート(ワッシャ部材)733が配置され、この低摩擦シートが固定筒712のマウント側端面712aとマニュアルフォーカス環724の前側端面724aとの間に挟持されている。また、低摩擦シート733の外径面はリング状とされマニュアルフォーカス環724の内径724cと径嵌合しており、さらにマニュアルフォーカス環724の内径724cは固定筒712の外径部712bと径嵌合している。低摩擦シート733は、マニュアルフォーカス環724が固定筒712に対して光軸周りに相対回転する構成の回転環機構における摩擦を軽減する役割を果たす。
【0113】
なお、コロ722の径大部722aとマニュアルフォーカス環のマウント側端面724bとは、波ワッシャ726が超音波モータ725をレンズ前方に押圧する力により、加圧力が付与された状態で接触している。また同じく、波ワッシャ726が超音波モータ725をレンズ前方に押圧する力により、コロ722の径小部722bと接合部材729の間も適度な加圧力が付与された状態で接触している。波ワッシャ726は、固定筒712に対してバヨネット結合したワッシャ732によりマウント方向への移動を規制されており、波ワッシャ726が発生するバネ力(付勢力)は、超音波モータ725、さらにはコロ722に伝わり、マニュアルフォーカス環724が固定筒712のマウント側端面712aを押し付け力ともなる。つまり、マニュアルフォーカス環724は、低摩擦シート733を介して固定筒712のマウント側端面712aに押し付けられた状態で組み込まれている。
【0114】
従って、不図示の制御部により超音波モータ725が固定筒712に対して回転駆動されると、接合部材729がコロ722の径小部722bと摩擦接触しているため、コロ722が軸720f中心周りに回転する。コロ722が軸720f回りに回転すると、結果として回転伝達環720が光軸周りに回転する(オートフォーカス動作)。
【0115】
また、不図示のマニュアル操作入力部からマニュアルフォーカス環724に光軸周りの回転力が与えられると、マニュアルフォーカス環724のマウント側端面724bがコロ722の径大部722aと加圧接触しているため、摩擦力によりコロ722が軸720f周りに回転する。コロ722の径大部722aが軸720f周りに回転すると、回転伝達環720が光軸周りに回転する。このとき超音波モータ725は、ロータ725cとステータ725bの摩擦保持力により回転しないようになっている(マニュアルフォーカス動作)。
【0116】
回転伝達環720には、フォーカスキー728が2つ互いに対向する位置に取り付けられており、フォーカスキー728がカム環715の先端に設けられた切り欠き部715bと嵌合している。従って、オートフォーカス動作或いはマニュアルフォーカス動作が行われて、回転伝達環720が光軸周りに回転させられると、その回転力がフォーカスキー728を介してカム環715に伝達される。カム環が光軸周りに回転させられると、カムローラ717aと直進案内溝713aにより回転規制された後群鏡筒716が、カムローラ717bによってカム環715のカム溝715aに沿って進退する。これにより、フォーカスレンズ702が駆動され、フォーカス動作が行われる。
【0117】
ここで本発明の光学機器として、一眼レフカメラの交換レンズ鏡筒について説明したが、コンパクトカメラ、電子スチルカメラ、カメラ付き携帯情報端末など、カメラの種類を問わず、駆動部に超音波モータを有する光学機器に適用することができる。
【0118】
(振動装置および塵埃除去装置)
本発明の振動装置は、上述の圧電素子を振動板に配した振動体を有する。このようにすることで、鉛を含む圧電素子を用いた場合と同等以上の振動能力を有する振動装置を提供できる。
粒子、粉体、液滴の搬送、除去などで利用される振動装置は、電子機器などで広く使用されている。
【0119】
以下、本発明の振動装置の一つの例として、本発明の振動装置を用いた塵埃除去装置について説明する。
【0120】
本発明に係る塵埃除去装置は、振動装置を振動部に有する。このようにすることで、鉛を含む圧電素子を用いた場合と同等以上の塵埃除去効率を有する塵埃除去装置を提供できる。
【0121】
図10Aおよび
図10Bは本発明の塵埃除去装置の一実施態様を示す概略図である。塵埃除去装置310は板状の圧電素子330と振動板320より構成される。振動板320の材質は限定されないが、塵埃除去装置310を光学デバイスに用いる場合には透光性材料や光反射性材料を振動板320として用いることができる。
【0122】
図11Aから
図11Cは
図10Aおよび
図10Bにおける圧電素子330の構成を示す概略図である。
図11Aと
図11Cは圧電素子330の表裏面の構成、
図11Bは側面の構成を示している。圧電素子330は
図10Aに示すように単結晶331と第1の電極332と第2の電極333より構成され、第1の電極332と第2の電極333は単結晶331の板面に対向して配置されている。
【0123】
図11Bにおいて圧電素子330の手前に出ている第1の電極332が設置された面を第1の電極面336、
図11Aにおいて圧電素子330の手前に出ている第2の電極333が設置された面を第2の電極面337とする。
【0124】
ここで、本発明における電極面とは電極が設置されている圧電素子の面を指しており、例えば
図11Aおよび
図11Bに示すように第1の電極332が第2の電極面337に回りこんでいてもよい。
【0125】
圧電素子330と振動板320は、
図10Aおよび
図10Bに示すように圧電素子330の第1の電極面336で振動板320の板面に固着される。そして圧電素子330の駆動により圧電素子330と振動板320との間に応力が発生し、振動板に面外振動を発生させる。本発明の塵埃除去装置310は、この振動板320の面外振動により振動板320の表面に付着した塵埃などの異物を除去する装置である。面外振動とは、振動板を光軸方向つまり振動板の厚さ方向に変位させる弾性振動を意味する。
【0126】
図12Aおよび
図12Bは本発明の塵埃除去装置310の振動原理を示す模式図である。
図12Aは左右一対の圧電素子330に同位相の交番電圧を印加して、振動板320に面外振動を発生させた状態を表している。左右一対の圧電素子330を構成する単結晶の分極方向は圧電素子330の厚さ方向と同一であり、塵埃除去装置310は7次の振動モードで駆動している。
図12Bは左右一対の圧電素子330に位相が180°反対である逆位相の交番電圧を印加して、振動板320に面外振動を発生させた状態を表している。
塵埃除去装置310は6次の振動モードで駆動している。本発明の塵埃除去装置310は少なくとも2つの振動モードを使い分けることで振動板の表面に付着した塵埃を効果的に除去できる装置である。
【0127】
(撮像装置)
本発明の撮像装置は、上述の塵埃除去装置と撮像素子ユニットとを少なくとも有する撮像装置であって、上述の塵埃除去装置の振動板を撮像素子ユニットの受光面側に設ける。
このようにすることで、鉛を含む圧電素子を用いた場合と同等以上の塵埃除去機能を有する撮像装置を提供できる。
図13および
図14は本発明の撮像装置の好適な実施形態の一例であるデジタル一眼レフカメラを示す図である。
【0128】
図13は、カメラ本体601を被写体側より見た正面側斜視図であって、撮影レンズユニットを外した状態を示す。
図14は、本発明の塵埃除去装置と撮像ユニット400の周辺構造について説明するためのカメラ内部の概略構成を示す分解斜視図である。
【0129】
カメラ本体601内には、撮影レンズを通過した撮影光束が導かれるミラーボックス605が設けられており、ミラーボックス605内にメインミラー(クイックリターンミラー)606が配設されている。メインミラー606は、撮影光束をペンタダハミラー(不図示)の方向へ導くために撮影光軸に対して45°の角度に保持される状態と、撮像素子(不図示)の方向へ導くために撮影光束から退避した位置に保持される状態とを取り得る。
【0130】
カメラ本体の骨格となる本体シャーシ300の被写体側には、被写体側から順にミラーボックス605、シャッタユニット200が配設される。また、本体シャーシ300の撮影者側には、撮像ユニット400が配設される。撮像ユニット400は、撮影レンズユニットが取り付けられる基準となるマウント部602の取り付け面に撮像素子の撮像面が所定の距離を空けて、且つ平行になるように調整されて設置される。
【0131】
ここで、本発明の撮像装置として、デジタル一眼レフカメラについて説明したが、例えばミラーボックス605を備えていないミラーレス型のデジタル一眼カメラのような撮影レンズユニット交換式カメラであってもよい。また、撮影レンズユニット交換式のビデオカメラや、複写機、ファクシミリ、スキャナなどの各種の撮像装置もしくは撮像装置を備える電子機器のうち、特に光学部品の表面に付着する塵埃の除去が必要な機器にも適用することができる。本発明の撮像素子ユニットとして撮像ユニット400を適用できる。
【0132】
(超音波プローブ)
本発明の超音波プローブは、上述の圧電素子を有し、圧電素子によって送受信する。このようにすることで、鉛を含む圧電素子を用いた場合と同等以上の送受信性能を有する超音波プローブを提供できる。
【0133】
図15は本発明の超音波プローブの一実施態様を示す概略断面図である。
図15の超音波プローブ1100は圧電素子1101とバッキング材1102と音響整合層1103と音響レンズ1104より構成されている。
図15に示すように、複数の圧電素子1101は、バッキング材1102上に配列して接着されており、その反対側の送受信面となる面には音響インピーダンスを整合させるための音響整合層1103が設けられている。
【0134】
音響整合層1103は単層でも複数層でもよく、好ましくは2層以上である。音響整合層1103に用いられる材料としては、例えばカーボン、アルミ、アルミ合金(例えばAL-Mg合金)、マグネシウム合金、マコールガラス、ガラス、溶融石英、コッパーグラファイト、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABC樹脂、ポリフェニレンエーテル、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、ナイロン、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などを用いることができる。
【0135】
また、バッキング材1102は、天然ゴム、フェライトゴム、エポキシ樹脂、塩化ビニル、ポリビニルブチラール、ABS樹脂、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂、またはこれらに金属粉末を混入したもの、または炭化タングステンなどの超硬材を用いることができる。
【0136】
圧電素子1101は、一体であっても、複数に分割されていてもよい。
図15では分割して設けた場合の例を図示している。それぞれの圧電素子の電極には、フレキシブルケーブル(不図示)が接続されており、圧電素子によって送受信される信号を入出力できる。
音響レンズ1104は音響整合層1103に接着されている。音響レンズ1104は、圧電素子1101から被検体に向けて送信される超音波を収束するための部材であり、
図15の例では円弧状の形となっている。なお、音響レンズ1104の材料としては、例えばシリコーン系樹脂(ゴム)を主成分とするゴムが一般的に使用される。
【0137】
この超音波プローブ1100を使用する際には、フレキシブルケーブルを通じて圧電素子1101に交番電圧を印加し、圧電効果によって圧電素子を振動させることで圧電素子1101から超音波を送信させる。このとき、超音波が当たる被検体の音響インピーダンスが小さい場合、もしくは、水や空気を介して被検体に超音波を当てる場合、音響整合層1103があることで、音響インピーダンスが大きく変化することによる反射波を抑制でき、被検体へ超音波を効率良く照射できる。そして、受信時には、被検体内部から反射した超音波によって圧電素子1101が振動し、この振動を圧電効果によって電気的に変換して受信信号を得る。送信時、受信時に電気エネルギーと機械エネルギーの変換が行われるが、このときの変換効率は電気機械結合係数の大きさに依存する。
【0138】
(超音波診断装置)
本発明の超音波診断装置は、上述の超音波プローブと画像出力部(画像表示部ともいう。)を少なくとも有する。このようにすることで、鉛を含む圧電素子を用いた場合と同等以上の駆動効率を有する超音波診断装置を提供できる。
図16は、本発明の超音波診断装置の一実施態様を示す概略図である。
図16の超音波診断装置1110は、超音波プローブ1100とケーブル1111と駆動制御部1113と画像表示部1112と画像処理部1114で構成されている。超音波プローブ1100のフレキシブルケーブルと駆動制御部1113はケーブル1111で接続されており、駆動制御部1113からケーブル1111を介して超音波プローブ1100の圧電素子1101に交番電圧が印加される。超音波プローブ1100から超音波が被検体内に照射されると、被検体内部から反射した超音波が再び超音波プローブで電気信号に変換されて、ケーブル1111を通して、画像処理部1114へ入力される。画像処理部1114では、駆動制御部1113から出力される交番電圧に対する遅延時間や信号強度の変化から演算して画像データを作成する。作成した画像データは画像表示部1112に出力される。
【0139】
(超音波診断システム)
本発明の超音波診断システムは、上述の超音波プローブと、上述の超音波プローブから出力された信号を送信する送信部と前記送信部から送信された信号を受信する受信部を有する。このようにすることで、鉛を含む圧電素子を用いた場合と同等以上の駆動効率を有する超音波診断システムを提供できる。
図17および
図18は、本発明の超音波診断システムの一実施態様を示す概略図である。
図17の超音波診断システム1120は、超音波プローブで得られた信号が送信部1121から送信され、その信号は受信部1122で受信される。受信した信号は、画像処理部1114で画像データが作成され、画像表示部1112で出力される。送信部1121と受信部1122の距離は、遠く離れていてもよい。送信と受信の手段は、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)などの無線通信を用いてもよいし、ネットワークケーブルを接続し、ネットワーク回線を介してもよい。
図18では、出力された信号を画像処理部1114で画像データを作成し、そのデータを信号として送信部1121から送信され、その信号は受信部1122で受信される。受信した信号は画像表示部1112で出力される。
【0140】
(電子機器)
次に、本発明の電子機器について説明する。本発明の電子機器は、上述の圧電素子または上述の積層圧電素子を備えた圧電音響部品を配する。このようにすることで、鉛を含む圧電素子を用いた場合と同等以上の発音性を有する電子機器を提供することができる。圧電音響部品にはスピーカ、ブザー、マイク、表面弾性波(SAW)素子が含まれる。
【0141】
図19は本発明の電子機器の好適な実施形態の一例であるデジタルカメラの本体931の前方から見た全体斜視図である。本体931の前面には光学装置901、マイク914、ストロボ発光部909、補助光部916が配置されている。マイク914は本体内部に組み込まれているため、破線で示している。マイク914の前方には外部からの音を拾うための穴形状が設けられている。
【0142】
本体931上面には電源ボタン933、スピーカ912、ズームレバー932、合焦動作を実行するためのレリーズボタン908が配置される。スピーカ912は本体931内部に組み込まれており、破線で示してある。スピーカ912の前方には音声を外部へ伝えるための穴形状が設けられている。
【0143】
本発明の圧電音響部品は、マイク914、スピーカ912、また表面弾性波素子、の少なくとも一つに用いられる。
【0144】
ここで、本発明の電子機器としてデジタルカメラについて説明したが、本発明の電子機器は、音声再生機器、音声録音機器、携帯電話、情報端末など各種の圧電音響部品を有する電子機器にも適用することができる。
【0145】
前述したように本発明の圧電素子は、超音波モータ、光学機器、振動装置、塵埃除去装置、撮像装置、超音波プローブ、超音波診断装置および電子機器に好適に用いられる。
【0146】
本発明の単結晶および圧電素子は、上述のデバイス以外に、モータ、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、圧電アクチュエータ、圧電センサ、強誘電メモリなどのデバイスに用いることができる。
【実施例0147】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
以下に示す方法によって、本発明の単結晶および圧電素子を作製した。
【0148】
(実施例1)
原料粉末としては、平均粒径100nmのチタン酸バリウム(BaTiO3、Ba/Ti=0.999)、ジルコン酸バリウム(BaZrO3、Ba/Zr=1.002)四酸化三マンガン(Mn3O4)およびBaのモル数の和に対する、TiとZrのモル数の和の比aを調整するために酸化チタンを用いた。これらの原料粉末を、チタンとバリウムを主成分とする組成式Ba0.985(Ti0.93,Zr0.07)O3の比率になるように秤量した。この酸化物100質量部に対して、Mnの含有量が金属換算で0.12質量部になるように添加した。さらに、このMnを添加した酸化物を、ボールミルを用いて24時間の乾式混合によって混合した。得られた混合粉を造粒するために、混合粉の3質量部のPVAバインダーを、それぞれスプレードライヤー装置を用いて、混合粉表面に付着させた。
【0149】
次に、得られた造粒粉を、試料側になる面が鏡面加工してある金型に充填し、プレス成型機を用いて200MPaの成型圧をかけて直方体状の2つの成型体を作製した。この成型体は冷間等方加圧成型機を用いて、さらに加圧しても構わない。
【0150】
次に、上記成型体の内、一方を顕微鏡用加熱ステージ(LINKAM社製)に試料を入れて昇温し、マトリクス1の表面を顕微鏡観察した結果、液相開始温度は1320℃、液相終了温度は1385℃であった。
【0151】
次に、もう一方の成型体を電気炉に入れ、1300℃の最高温度で5時間保持し、合計24時間かけて大気雰囲気で焼結し、直方体状の12mm×18mm×1.3mmのマトリクスを得た。
【0152】
そして、得られたマトリクス1を構成する結晶粒の平均円相当径(JIS R1670に準拠)と相対密度を評価した。その結果、平均円相当径は4μm、相対密度は98%であった。なお、結晶粒の観察には、主に偏光顕微鏡を用いた。小さな結晶粒の粒径を特定する際には、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた。この観察結果より平均円相当径を算出した。また、相対密度は、上述の通り、理論密度に対する実測密度のことであり、理論密度はX線回折から求めた格子定数と秤量組成から計算し、実測密度はアルキメデス法を用いて評価した。
【0153】
次に、得られた直方体状のマトリクスに対して、研磨機を使用して厚さ1.0mmになるように砥粒の番手を変えながら両面を研磨し、最後に鏡面になるように、仕上げとして化学研磨を行った。
【0154】
次に、匣鉢7として、ジルコニアがコートされたアルミナ匣鉢、セッタ6として、ジルコニア製セッタ、重石4として、ジルコニア製セッタ(大きさが50mm×50mm×1mm、重さが20g)、ビーズ5として、ジルコニア製ビーズを準備し、
図3のように配置し、
図4のように蓋8をした状態で電気炉に入れ、加熱した。
【0155】
ここで使用した種単結晶2は、10mm×10mm×1mmのBaTiO3(Physcience Opto-electronics社製)の主面と側面がいずれも(100)面である基板で、両面が鏡面研磨されているものを用いた。
【0156】
加熱時の昇温プロファイルは
図5に示すように、第1の昇温工程51として室温から液相開始温度である1320℃まで、8.8時間掛けて昇温レート150℃/hで昇温し、その後、第2の昇温工程52として1320℃から液相終了温度である1385℃まで、100時間掛けて昇温レート0.65℃/hで昇温した。その後、加熱工程として1385℃で300h保持し、最後は放冷により室温まで降温した。なお、第1の昇温工程51、第2の昇温工程52と加熱工程は大気中で行った。
【0157】
図20は加熱後のマトリクス1で、単結晶育成部3が種単結晶2から広がっていることが分かる。加熱後のマトリクスを光学顕微鏡で観察したところ、単結晶育成部3(種単結晶から広がった領域)は、粒界の無い単結晶であることが確認できた。
【0158】
次に、種単結晶2の部分を研磨により除去し、単結晶の部分をダイシングソーで切り出し、単結晶を得た。また、得られた単結晶の最長部は17mmであった。
【0159】
次に、研磨した単結晶に対して、X線回折により結晶構造を解析した。その結果、ペロブスカイト型の(100)配向の単結晶に相当するピークのみが観察された。また、得られた単結晶の相対密度を測定したところ、97%であった。
【0160】
次に、ICP発光分光分析により得られた単結晶の組成を評価した。結果を表1に示す。その結果、Ba、Ti、Zr、Mnは、秤量した組成と加熱後の組成が一致していた。
【0161】
次に、前記単結晶の両主面にDCスパッタリング法により厚さ400nmの金電極を形成した。なお、電極と単結晶の間には、密着層として30nmのチタンを成膜した。
この電極付きの単結晶を45°方向が長辺になるように、つまり(100)面が上下面かつ(110)面が側面になるように10mm×2.5mm×0.5mmのサイズで切断加工し、短冊状の本発明の圧電素子を作製した。得られた圧電素子を、ホットプレートの表面を60℃から100℃になるように設定し、前記ホットプレート上で1kV/mmの電界を30分間印加し、分極処理した。
【0162】
次に、本発明の単結晶を有する圧電素子の静特性として、分極処理した圧電素子の圧電定数d31および機械的品質係数Qmをインピーダンスアナライザ(AgilentTechonologies社製 4294A)を使用して室温(25℃)にて共振反共振法により評価した。その結果を表2に示す。なお、共振反共振法とは、インピーダンスアナライザを用いて得られる共振周波数および反共振周波数の測定結果を得て、その測定結果を用いて電子情報技術産業協会規格(JEITA EM-4501)に基づいて、計算により求める方法である。
【0163】
次に圧電素子の抗電界を評価した。強誘電体・圧電体評価システム(RADIANT TECHNOLOGIES. INC.社製 LCII)を用いて、電界に対する分極量から得られるPEヒステリシスカーブから分極量0の時の電界を読み取り、この値を抗電界とした。この時の抗電界は1.6kV/cmであった。
【0164】
次に短冊状の圧電素子の消費電力を評価した。消費電力は、交番電圧を印加し、変位量が1.0μmになるように交番電圧の大きさと周波数を変化させたときの消費電力の値を電力計で測定した。この際、変位量はレーザドップラ振動計によって測定した。このときの消費電力は16mWであった。
【0165】
(実施例2)
表1に示すように、成型体をマトリクス1として使用する以外は、実施例1と同様の工程で、本発明の単結晶および圧電素子を得た。
続いて、実施例1と同様の工程で、本発明の単結晶の組成、最長部、相対密度、圧電定数d31、機械的品質係数Qmおよび消費電力を評価した。その結果を表1と表2に示す。
【0166】
(実施例3)
表1に示すように、成型体をマトリクス1として使用することと、種単結晶2として(Ba0.78Ca0.22)TiO3を使用する以外は、実施例1と同様の工程で、本発明の単結晶および圧電素子を得た。
種単結晶2の(Ba0.78Ca0.22)TiO3はフローティングゾーン法により作製したものを使用した。
続いて、実施例1と同様の工程で、本発明の単結晶の組成、最長部、相対密度、圧電定数d31、機械的品質係数Qmおよび消費電力を評価した。その結果を表1と表2に示す。
【0167】
(実施例4)
表1に示すように、成型体をマトリクス1として使用することと、種単結晶2としてBa0.990(Ti0.93Zr0.07)O3を使用する以外は、実施例1と同様の工程で、本発明の単結晶および圧電素子を得た。
種単結晶2のBa0.990(Ti0.93Zr0.07)O3は実施例1と同様の工程で作製し、種単結晶部から広がった単結晶部を切り出したもので、ここではこの単結晶を種単結晶として使用した。
続いて、実施例1と同様の工程で、本発明の単結晶の組成、最長部、相対密度、圧電定数d31、機械的品質係数Qmおよび消費電力を評価した。その結果を表1と表2に示す。
【0168】
(実施例5と6)
表1に示すように、成型体をマトリクス1として使用することと、第1の昇温レートまたは第2の昇温レートを変更したこと以外は、実施例1と同様の工程で、本発明の単結晶および圧電素子を得た。
続いて、実施例1と同様の工程で、本発明の単結晶の組成、最長部、相対密度、圧電定数d31、機械的品質係数Qmおよび消費電力を評価した。その結果を表1と表2に示す。
【0169】
(実施例7から12)
表1に示すように、成型体をマトリクス1として使用することと、チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、四酸化三マンガン、酸化チタンの添加量を変更したこと以外は、実施例1と同様の工程で、本発明の単結晶および圧電素子を得た。
続いて、実施例1と同様の工程で、本発明の単結晶の組成、最長部、相対密度、圧電定数d31、機械的品質係数Qmおよび消費電力を評価した。その結果を表1と表2に示す。
【0170】
(実施例13から17)
表1に示すように、成型体をマトリクス1として使用することと、チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、四酸化三マンガン、酸化チタンの添加量の変更および三酸化二ビスマスの添加以外は、実施例1と同様の工程で、本発明の単結晶および圧電素子を得た。
続いて、実施例1と同様の工程で、本発明の単結晶の組成、最長部、相対密度、圧電定数d31、機械的品質係数Qmおよび消費電力を評価した。その結果を表1と表2に示す。
【0171】
(比較例1)
原料粉末としては、平均粒径100nmのチタン酸バリウム(BaTiO3、Ba/Ti=0.999)、ジルコン酸バリウム(BaZrO3、Ba/Zr=1.002)四酸化三マンガン(Mn3O4)およびBaのモル数の和に対する、TiとZrのモル数の和の比aを調整するために酸化チタンを用いた。これらの原料粉末を、チタンとバリウムを主成分とする組成式Ba0.985(Ti0.93,Zr0.07)O3の比率になるように秤量した。この金属酸化物100質量部に対して、Mnの含有量が金属換算で0.12質量部になるように添加した。さらに、このMnを添加した酸化物を、ボールミルを用いて24時間の乾式混合によって混合した。得られた混合粉を造粒するために、混合粉の3質量部のPVAバインダーを、それぞれスプレードライヤー装置を用いて、混合粉表面に付着させた。
【0172】
次に、得られた造粒粉を、試料側になる面が鏡面加工してある金型に充填し、プレス成型機を用いて200MPaの成型圧をかけて直方体状の2つの成型体を作製した。この成型体は冷間等方加圧成型機を用いて、さらに加圧しても構わない。
【0173】
次に、上記成型体の内、一方を顕微鏡用加熱ステージ(LINKAM社製)に試料を入れて昇温し、マトリクス1の表面を顕微鏡観察した結果、液相開始温度は1320℃、液相終了温度は1385℃であった。
【0174】
次に、もう一方の成型体を電気炉に入れ、1300℃の最高温度で5時間保持し、合計24時間かけて大気雰囲気で焼結し、直方体状の12mm×18mm×1.3mmのマトリクス1を得た。
【0175】
そして、得られたマトリクス1を構成する結晶粒の平均円相当径と相対密度を評価した。その結果、平均円相当径は4μm、相対密度は98%であった。なお、結晶粒の観察には、主に偏光顕微鏡を用いた。小さな結晶粒の粒径を特定する際には、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた。この観察結果より平均円相当径を算出した。また、相対密度は、X線回折から求めた格子定数と秤量組成から計算される理論密度、アルキメデス法による実測密度を用いて評価した。
【0176】
次に、得られた直方体状のマトリクス1に対して、研磨機を使用して厚さ1.0mmになるように砥粒の番手を変えながら両面を研磨し、最後に鏡面になるように、仕上げとして化学研磨を行った。
【0177】
次に、匣鉢7として、ジルコニアがコートされたアルミナ匣鉢、セッタ6として、ジルコニア製セッタ、重石4として、ジルコニア製セッタ(大きさが50mm×50mm×1mm、重さが20g)、ビーズ5として、ジルコニア製ビーズを準備し、
図3のように配置し、
図4のように蓋をした状態で電気炉に入れて、加熱した。
【0178】
ここで使用した種単結晶2は、10mm×10mm×1mmのBaTiO3(Physcience Opto-electronics社製)の上下面と側面がいずれも(100)面である基板で、両面が鏡面研磨されているものを用いた。
【0179】
加熱時の昇温プロファイルは、室温から液相開始温度である1320℃まで8.8時間掛けて昇温レート150℃/hで昇温し、その後も1320℃から液相終了温度である1385℃まで同じ昇温レート150℃/hで昇温した。その後、1385℃で300h保持し、最後は放冷により室温まで降温した。
【0180】
加熱後のマトリクスで、単結晶部が種単結晶から広がる領域は見られず、単結晶を得ることが出来なかった。
【0181】
(比較例2)
表1に示すように、第1の昇温レートと第2の昇温レートを変更した以外は、比較例1と同様の工程を行った。
加熱後のマトリクス1で、単結晶部が種単結晶から広がる領域は見られず、単結晶を得ることが出来なかった。
【0182】
(比較例3)
表1に示すように、チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、四酸化三マンガン、酸化チタンの添加量の変更および三酸化二ビスマスの添加以外は、比較例1と同様の工程を行った。
加熱後のマトリクス1で、単結晶部が種単結晶から広がる領域は見られず、単結晶を得ることが出来なかった。
【0183】
(比較例4)
原料粉末としては、平均粒径100nmのチタン酸バリウム(BaTiO3、Ba/Ti=0.999)、ジルコン酸バリウム(BaZrO3、Ba/Zr=1.002)およびBaのモル数の和に対する、TiとZrのモル数の和の比aを調整するために酸化チタンを用いた。これらの原料粉末を、チタンとバリウムを主成分とする組成式Ba0.985(Ti0.93,Zr0.07)O3の比率になるよう秤量した。これらの粉末を、ボールミルを用いて24時間の乾式混合によって混合した。得られた混合粉を造粒するために、混合粉の3質量部のPVAバインダーを、それぞれスプレードライヤー装置を用いて、混合粉表面に付着させた。
【0184】
次に、得られた造粒粉を、試料側になる面が鏡面加工してある金型に充填し、プレス成型機を用いて200MPaの成型圧をかけて直方体状の成型体を作製した。この成型体は冷間等方加圧成型機を用いて、さらに加圧しても構わない。
【0185】
次に、成型体を電気炉に入れ、1300℃の最高温度で5時間保持し、合計24時間かけて大気雰囲気で焼結し、直方体状の12mm×18mm×1.3mmの焼結体を得た。
【0186】
次に、得られた直方体状の焼結体に対して、研磨機を使用して厚さ1.0mmになるように砥粒の番手を変えながら両面を研磨し、最後に鏡面になるように、仕上げとして化学研磨を行った。
【0187】
次に、匣鉢7として、ジルコニアがコートされたアルミナ匣鉢、セッタ6として、ジルコニア製セッタ、重石4として、ジルコニア製セッタ(大きさが50mm×50mm×1mm、重さが20g)、ビーズ5として、ジルコニア製ビーズを準備し、
図3のように配置し、
図4のように蓋をした状態で電気炉に入れて、加熱した。
【0188】
ここで使用した種単結晶2は、10mm×10mm×1mmのBaTiO3(Physcience Opto-electronics社製)の主面と側面がいずれも(100)面である基板で、両面が鏡面研磨されているものを用いた。
【0189】
加熱時の昇温プロファイルは、室温から液相開始温度である1320℃まで8.8時間掛けて昇温レート150℃/hで昇温し、その後も1320℃から液相終了温度である1385℃まで同じ昇温レート150℃/hで昇温した。その後、1385℃で300h保持し、最後は放冷により室温まで降温した。
【0190】
加熱後のマトリクス1には、単結晶育成部3が種単結晶から広がっており、加熱後のマトリクス1を光学顕微鏡で観察したところ、単結晶育成部3(種単結晶から広がった領域)は、粒界の無い単結晶であることが確認できた。
次に、種単結晶の部分を研磨により除去し、単結晶の部分をダイシングソーで切り出し、比較例4の単結晶を得た。
【0191】
次に、研磨した単結晶に対して、X線回折により結晶構造を解析した。その結果、ペロブスカイト型の(100)配向の単結晶に相当するピークのみが観察された。
また、得られた単結晶の相対密度を求めたところ、97%であった。また、得られた単結晶の最長部は15mmであった。
【0192】
次に、ICP発光分光分析により得られた単結晶の組成を評価した。その結果、Ba、Ti、Zrは、秤量した組成と加熱後の組成が一致していた。
【0193】
次に、前記単結晶の表裏にDCスパッタリング法により厚さ400nmの金電極を形成した。なお、電極と単結晶の間には、密着層として30nmのチタンを成膜した。
【0194】
この電極付きの単結晶を45°方向が長辺になるように、つまり(100)面が上下面かつ(110)面が側面になるように10mm×2.5mm×0.5mmのサイズで切断加工し、短冊状の比較例4の圧電素子を作製した。得られた圧電素子を、ホットプレートの表面を60℃から100℃になるように設定し、前記ホットプレート上で1kV/mmの電界を30分間印加し、分極処理した。
【0195】
次に、比較例4の単結晶を有する圧電素子の静特性として、分極処理した圧電素子の圧電定数d31および機械的品質係数Qmをインピーダンスアナライザ(AgilentTechonologies社製 4294A)を使用して室温(25℃)にて共振反共振法により評価した。その結果を表2に示す。
【0196】
次に圧電素子の抗電界を評価した。強誘電体・圧電体評価システム(RADIANT TECHNOLOGIES. INC.社製 LCII)を用いて、電界に対する分極量から得られるPEヒステリシスカーブから分極量0の時の電界を読み取り、この値を抗電界とした。このときの抗電界は0.8kV/cmであった。
【0197】
次に短冊状の圧電素子の消費電力を評価した。消費電力は、交番電圧を印加し、変位量が1.0μmになるように交番電圧の大きさと周波数を変化させたときの消費電力の値を電力計で測定した。この際、変位量はレーザドップラ振動計によって測定した。このときの消費電力は31mWであった。
【0198】
以下の表1では、実施例、比較例の実施の結果、単結晶が得られる場合は、「単結晶であるかどうか」の欄にAを記載し、単結晶が得られない場合は、「単結晶であるかどうか」の欄にBを記載した。
【0199】
【0200】
【0201】
(実施例18)
実施例4の圧電素子を用いて、
図7に示される超音波モータを作製した。作製した超音波モータにおいて、交番電圧の印加に応じたモータの回転が確認された。
【0202】
(実施例19)
実施例13の超音波モータを用いて、
図9に示される光学機器を作製した。作製した光学機器において、交番電圧の印加に応じたオートフォーカス動作が確認された。
【0203】
(実施例20)
実施例4の圧電素子を用いて、
図10Aおよび
図10Bに示される塵埃除去装置を作製した。作製した塵埃除去装置において、プラスチック製ビーズを散布し、交番電圧を印加したところ、良好な塵埃除去率が確認された。
【0204】
(実施例21)
実施例15の塵埃除去装置を用いて、
図13に示される撮像装置を作製した。作製した撮像装置を動作させたところ、撮像ユニットの表面の塵を良好に除去し、塵欠陥の無い画像が得られた。
【0205】
(実施例22)
実施例4の圧電素子を用いて、
図15に示される超音波プローブを作製した。作製した超音波プローブにおいて、交番電圧の印加によって超音波が送信され、被検体内部からの反射による受信信号が確認された。
【0206】
(実施例23)
実施例17の超音波プローブを用いて、
図16に示される超音波診断装置を作製した。
作製した超音波診断装置を動作させたところ、被検体内部の画像が鮮明に出力された。
【0207】
(実施例24)
実施例17の超音波プローブを用いて、
図17に示される超音波診断システムを作製した。作製した超音波診断システムを動作させて画像表示部へ表示させたところ、被検体内部の画像が鮮明に出力された。
【0208】
(実施例25)
実施例4の圧電素子を用いて、
図19に示される電子機器を作製した。作製した電子機器において、交番電圧の印加に応じたスピーカ動作が確認された。
本発明の単結晶の製造方法は、幅広い材料組成に対応でき、また本発明の単結晶は圧電定数と機械的品質係数が大きい。よって、本発明の単結晶は、超音波モータ、塵埃除去装置、超音波プローブなどの多くの機器にも問題なく利用することができる。