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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152653
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】消しゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   B43L 19/00 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
B43L19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024060536
(22)【出願日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2023065519
(32)【優先日】2023-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 成政
(72)【発明者】
【氏名】横田 愛実
(57)【要約】      (修正有)
【課題】消し屑が消しゴム本体にくっついて離れず、くっついた消し屑が手で簡単に除去できる消しゴムであり、消し屑が消しゴム表面にも紙面にも残らず簡単につまんで捨てられて、机の上をキレイに使うことができる。
【解決手段】本発明は、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステル、充填剤、安定剤を少なくとも含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体と、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステルと、充填剤と、安定剤と、を少なくとも含む消しゴム組成物。
【請求項2】
前記塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体が平均重合度1000以上2000以下かつ酢酸ビニルの含有量が3重量%以上8重量%以下、であることを特徴とする請求項1に記載の消しゴム組成物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛筆やシャープペンシル等の筆跡を消去するための消しゴムに関し、更に詳細には、適度な硬度と消字性があり消し屑が消しゴム本体から離れず、消し屑を捨てる際には本体から離れずにくっついている消し屑を指でつまみ、簡単に除去できる消しゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消しゴム組成物は、基材樹脂としてポリ塩化ビニル、塩化ビニルの共重合体、天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性エラストマーなどを使用したものが知られている。ポリ塩化ビニルを基材樹脂とした消しゴム組成物は消字性が優れていることから広く使用されている。
【0003】
鉛筆やシャープペンシルの筆跡は、紙との擦過で摩耗した鉛筆やシャープペンシルの芯の粉が紙面に付着したものである。この芯の摩耗粉が消しゴム表面や消し屑表面に付着することにより紙面から取り除かれて、筆跡が消去される。このため、従来の消しゴム組成物では、紙表面の芯の摩耗粉を消しゴム表面に付着させ、摩耗粉の付着した消しゴム表面を摩擦による表面摩耗で消し屑として排出し、新しい消しゴム表面を露出させる。というサイクルを繰り返す必要があり、排出された消し屑は紙面や机上から回収して廃棄する必要があった。
【0004】
消し屑が細かく散らばってしまうと回収し捨てるのに手間がかかるため、特開2010-167717号公報(特許文献1)の実施例には、塩化ビニル樹脂とシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステルと充填材として炭酸カルシウムを含有する消しゴム組成物を60℃以上150℃未満で攪拌又は混練した後に成形する消しゴムの製造方法により、消し屑のまとまり性を向上させて消し屑を集めやすくする製造方法が記載されている。
【0005】
特開2014-54812号公報(特許文献2)の実施例には、塩化ビニル樹脂とアジピン酸系ポリエステルとガラス転移点(Tg)が0℃以下の液状アクリルポリマーと充填剤として炭酸カルシウム、安定剤としてステアリン酸カルシウムステアリン酸亜鉛混合物を含有することにより、優れた消字性と消し屑の集まりやすく、可塑剤の移行性が優れる消しゴム組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-167717号公報
【特許文献2】特開2014-54812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、可塑剤としてシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステルを混合時に加熱撹拌し、その後成形することで、消し屑のまとまり性が向上する旨が記載されている。特許文献2には、可塑剤としてアジピン酸系ポリエステルに、ガラス転移点(Tg)が0℃以下の液状アクリルポリマーを併用することにより消し屑のまとまり性を向上する旨が記載されているが、どちらも消し屑のまとまり性は向上するが筆跡の消去に伴い消し屑が消しゴム表面から離れて排出されることには変わりがなく、消し屑が散らばりにくくても、最終的に紙面や机上の消し屑を集めて回収し、廃棄する必要があることには変わりがない。
【0008】
また、近年リビング学習が注目を集めているが、食卓での学習になるため、このような場合は特に食事前の清掃のしやすさや、衛生面から消し屑が散乱しない消しゴムが要望されるようになっている。
【0009】
本発明は、筆跡消去時に生成される消し屑の一部が常に消しゴム表面と繋がったまま新旧の消し屑が合一して生成される消しゴム組成物を提供することを目的とする。この消しゴム組成物は、最終的一つにまとまり、消しゴム本体にくっついた消し屑を途中でちぎれたりせず消しゴム表面から消しカスを手でつまんで一度で簡単に除去することができ、消し屑が紙面や机上に散らばらずに簡単に捨てられて、机の上をキレイに使うことができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステル、充填剤、安定剤を少なくとも含む消しゴム組成物を第一の要旨とし、前記塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体が平均重合度1000以上2000以下かつ酢酸ビニルの含有量が3重量%以上8重量%以下、であることを特徴とする消しゴム組成物を第二の要旨とするものである。
【発明の効果】
【0011】
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体は塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を柔らかくする可塑剤と混合しペーストを作製した後に、加熱することで塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体に可塑剤を吸収させ流動性がなくなる状態、いわゆるゲル状態にすることで消しゴム組成物を得る。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体はエステル基を持つため、酢酸ビニル部位にポリ塩化ビニルより可塑剤が浸透しやすい。そのため、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル部位のゲル化が進み強度が上がることで、消しゴム組成物の摩耗時に、ポリ塩化ビニルと比較して塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体が部分的に分断されにくくなる。これにより、消しゴム組成物の消去時の摩耗により生成した消し屑の一部が、消しゴム表面と繋がり離れないという性能を持つため、さらに消去を続け消しゴム組成物が摩耗すると消し屑の消しゴム本体と繋がっていた部分も摩擦により消しゴム表面から離れる。しかし、新たに生成した消し屑は消しゴム表面と繋がったままであり、さらに前の消し屑と撚れて合一することで、消し屑は常に新たに消しゴム表面と繋がる部分を持つため従来の消しゴムのように消し屑が適当な大きさになったところで排出されることがない。しかし摩擦により新しい消しゴム表面を露出させることはできるので消し屑自体の生成は阻害されないため継続して消去できる。
【0012】
更に可塑剤のシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステルは塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の分極結合部と電気的に吸着する作用を持つエステル基と、分極結合部の分子間隔を広げる作用を持つナフテン環とアルキル基からなる。ナフテン環を持つことで、フタル酸系エステル等の他の可塑剤と比較して塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の分極結合部の分子間隔を広げる力が強く、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の塩化ビニル部位を分断しやすくなり、酢酸ビニル部分でつながった消しゴム本体と消し屑の繋がった部分の強度を、合一してまとまった消し屑部分の強度より小さくすることができるため指でつまみ一度で簡単に除去できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体は、消しゴム組成物の樹脂基材である。具体的には、ソルバインA(平均重合度420、酢酸ビニル含有量3重量%)、同AL(同300、同2重量%)、同C(同420、同13重量%)、同C5R(同350、同21重量%)、同CH同650、同14重量%)、同CL(同300、同14重量%)、同CN(同750、同11重量%)、同CNL(同200、同10重量%)、同M5(同430、同14重量%)、同TA3(同350、同4重量%)、同TA5R(同300、同1重量%)、同TAO(同360、同2重量%)、(以上、信越化学工業(株)製)、リューロンペーストK650(同1,000、同4重量%)、同750(同1,250、同5重量%)、同751(同1,300、同5重量%)、同850(同1,600、同5重量%)、同952(同1,800、同7重量%)(以上、東ソー(株)製)、PCH-175(同1,650、同5重量%)、同843(同1,800、同8重量%)、同12(同1,550、同5重量%)、同72(同1,800、同8重量%)、PBM-6(同900、同3重量%)、カネビニールM1008(同780、同5重量%)、同MA1008(同720、同7重量%)、同MB1008(同680、同10重量%)、同HM515(同450、同17重量%)、同HM317(同370、同20重量%)、同T555(同370、同15重量%)、同T5HX(同480、同10重量%)、同T518A(同480、同18重量%)、同T428A(同370、同26重量%)(以上、(株)カネカ製)等が挙げられる。
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の平均重合度は消字性の観点から1,000以上、より好ましくは1,300以上、さらに好ましくは1,500以上であり、平均重合度は1,000以上となると得られる消しゴム組成物の硬さと弾性が十分になり、十分な消字性が得られる。また塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の平均重合度は3,000以下、より好ましくは2,500以下、さらに好ましくは2,000以下である。平均重合度は3,000以下となると得られる消しゴム組成物は十分に摩耗し、消し屑が発生するため、十分な消字性が得られる。また塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量は消し屑くっつき性の観点から、3重量%以上、より好ましくは4重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上であり、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量が3重量%以上となると可塑剤が塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体に浸透されやすく、得られる消しゴム組成物は良好な消し屑くっつき性が得られる。一方で塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量は消字性の観点から8重量%以下、より好ましくは7重量%以下、さらに好ましくは6重量%以下である。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量が8重量%以下となると塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体における塩化ビニル部位の分極による結合が多くなることから、得られる消しゴム組成物は硬さと弾性が十分になり、紙面に押しつけた消しゴム組成物を擦った際に大きく変形することなく、十分な消字性が得られる。
このような好ましい塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体は具体的にはリューロンペーストK650、同750、同751、同850、同952、PCH-175、同843、同12、同72等が挙げられる。
使用量は消しゴム組成物全量に対して6重量%以上45重量%以下、好ましくは8重量%以上40重量以下、さらに好ましくは10重量%以上35重量%以下である。上記塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体は単独でも2種以上併用してもよい。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体としては、ペーストレジンが可塑剤等との混和及び加工が容易な点で好ましい。
【0014】
本発明の樹脂基材は、本発明の効果を損なわない範囲で、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体に加えて、塩化ビニル系樹脂を使用することができ、例えば、塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-アクリル酸メチル共重合体、塩化ビニル-メタクリル酸メチル共重合体、及び塩化ビニル-アクリル酸オクチル共重合体等が挙げられる。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体に加えて使用する塩化ビニル系樹脂の含有量は、消し屑くっつき性の観点から重量比で、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体:塩化ビニル系樹脂=1:0.70以下が好ましく、1:0.25以下がより好ましく、塩化ビニル系樹脂は極めて少量か全く添加しないことがより好ましい。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体に加えて使用する塩化ビニル系樹脂は具体的には、ポリ塩化ビニルとして、TK-500、同600、同700、同800、同1000、同1300、同1400、同1700E、同2000E、同2500LS、同2500HS、同2500PE、GR-800T、同1300、同1300S、同2500S、ビニブラン271、同278、同690、同902、同900、同603、同985、同700、同701、715H(以上、信越化学工業(株)製)TH-500、同640、同700、同800、同1000、同1300、同1400、同1700、同2000、同2500、同2800、同3000、同3800、TU-300、同400(以上、大洋塩ビ(株)製)、ZEST700L、同700Z、同700G、同800Y、同800Z、同1000H、同1000Z、同1000S、同1300Z、同1300SI、同1400Z、同1700ZI、同2000Z、同2500Z、同PQB83、同PQLT、同PQ92、同P22、同PQ130、同PQ137、同P21、同PQHT、同PQHH、同PN900(以上、新第一塩ビ製)、S-400、S1006、S1007、S1008、S1001、S1001N、S1003、S1003N、S1004、KS-1700、同2500、同3000、PSH-180、同161、同261、同247、同985、同945、同947、PSM-154、同162、PSM-176、PSL-180、同675、同685、PSH-10、同31、同24、同90、PSM-30、同31、同271R、PSL-31、同275、同290R、PBM-B5F、PS-300K、XPS-300L(以上、(株)カネカ製)、T70A、K72Z、K75Z、200、T80A、K80、K94Z、T10Z、732、310、K615、616、630、K640、K670、800、860、810、772、815A、762、761、960(以上、東ソー(株)製)、塩化ビニル-エチレン共重合体としてTE-650、同800、同1050、同1300、同1700、同2200、同2800(以上、大洋塩ビ(株)製)、塩化ビニル-エチレン-酢酸ビニル共重合体としてTG-110、同120、同130、TG-40(以上、積水化学工業(株)製)、塩素化塩化ビニル樹脂として、H305、H536、H547、H516、H527、H727、H716S、H829(以上、(株)カネカ製)、HA-05K、同15E、同15F、同15H、同17F、同27F、同25H、同24KL、同28K、同27L、同35F、同31K、同53K、同58K(以上、積水化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0015】
可塑剤としてシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステルが必須である。このシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステルの量は、消去性の良い消しゴム組成物とするために、重量比で塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体:シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステル=1:1.30以上1.60以下が好ましい。シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステルの量を重量比で塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体:シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステル=1:1.30以上とすることにより、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステルを吸収した塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体に粘着性と弾性が出ることで、得られた消しゴムの表面に黒鉛等の筆跡を良く付着させ十分な消字性が得られ、また消し屑くっつき性も得られる。シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステルの量を重量比で塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体:シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステル=1:1.60以下とすることにより、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体内にシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステルを十分に吸収することができ、得られた消しゴムの表面にシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステルが滲みだすブリード現象を起こすことなく、消去時に紙面を汚さずに消去でき、また良好な消し屑処理性も得られる。使用量は消しゴム組成物全量に対して10重量%以上70重量%以下、好ましくは20重量%以上70重量以下、さらに好ましくは20重量%以上60重量%以下である。
シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステルの具体例としては、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジイソペンチルエステル、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジイソヘプチルエステル、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジイソノニルエステル、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジノニルエステル、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジイソデシルエステル、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸のジ(C7-11)アルキルエステル、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸のジ(C9-11)アルキルエステル、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸のジ(C7-9)アルキルエステル、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸のジ(C8-13)アルキルエステルが挙げられる。上記シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステルは単独でも2種以上併用してもよい。
【0016】
本発明の可塑剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステルに加えて、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステル以外の従来消しゴムに使用されている可塑剤を併用することができ、消し屑処理性の観点からシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステル以外の可塑剤の含有量は、重量比で、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステル:その他可塑剤=1:0.50以下が好ましく、1:0.25以下がより好ましい。これらのなかでも、得られた消しゴム組成物が消し屑処理性の観点から、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステルと併用する可塑剤は極めて少量添加にするか、もしくは全く添加しないようにすることが好ましい。
具体的には、フタル酸エステルとしてフタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジウンデシル、安息香酸エステル系可塑剤としてジエチレングリコールジ安息香酸エステル、トリエチレングリコールジ安息香酸エステル、ポリエチレングリコールジ安息香酸エステル、プロピレングリコールジ安息香酸エステル、ジプロピレングリコールジ安息香酸エステル、トリプロピレングリコールジ安息香酸エステル、1,3-ブタンジオールジ安息香酸エステル、1,4-ブタンジオールジ安息香酸エステル、1,6-ヘキサンジオールジ安息香酸エステル、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ安息香酸エステル、1,8-オクタンジオールジ安息香酸エステルが挙げられ、アジピン酸系可塑剤としてアジピン酸ジ-2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシルが挙げられ、クエン酸系可塑剤としてアセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチルが挙げられ、トリメリット酸系可塑剤としてトリメリット酸トリアルキル、トリメリット酸トリス-2-エチルヘキシルが挙げられ、リシノール酸系可塑剤としてメチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレートが挙げられ、エポキシ系可塑剤としてエポキシ化脂肪酸オクチルエステル、エポキシ化脂肪酸モノエステル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、4,5-エポキシ-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アルキルスルフォン酸フェニルエステル系可塑剤が挙げられる。
【0017】
充填剤は、従来より消しゴムに使用されている充填剤が使用でき、炭酸カルシウム、シリカ、珪藻土、カオリン、クレー、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。この充填剤の量は、消去性の良い消しゴム組成物とするために、重量比で塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体:充填剤=1:0.6以上とすることにより、得られる消しゴム組成物は柔らかくなりすぎず、紙面に押しつけて消しゴム組成物を擦った際に大きく変形しすぎないため十分な消字性を得られ、十分な摩耗性が得られるため消し屑処理性が得られる。重量比で塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体:充填剤=1:1.0以下とすることにより、得られる消しゴム組成物が硬くなすぎず、得られる消しゴム組成物の弾性が十分にあるため十分な消字性が得られる。また、十分な消し屑くっつき性が得られる。使用量は消しゴム組成物全量に対して5重量%以上50重量%以下、好ましくは10重量%以上40重量以下、さらに好ましくは20重量%以上30重量%以下である。具体的には炭酸カルシウムとしてソフトン3200、同2600、同2200、同1800、同1500、同1200、同1000、BF100、同200、同300、同400(以上、備北粉化工業(株)製)、スーパーS、同SS、同SSS、同4S、同#1500、同#1700、同#2000、同#2300、スペシャルライスS、ナノックス#25、同#30、カルテックス5~7、MCコートS-10~23、同P-10~23、スノーライトS~#1500、ナノコートS-25~30、Mホワイト、M-300J(以上、丸尾カルシクム(株)製)MSK-P、同PO、カルファイン200、同200M、同500、同20S、同M-350、同N-40、カーレックス100、同300、N-2、MC-K、CUBE-18HS、同50KAS、同80KAS、ウィスカル、(以上、丸尾カルシウム(株)製)、白艶華PZ、同CC、同CC-R、同U、同A、同AA、同O、同DD、同T-DD、カルモス、Brilliant-15、同1500、ツネックス-E、PC,同-700、同X-850、Vigot-10、同15、Viscolite-SV、Viscoexcle-30、シルバーW、ホモカルD、同DM、ゲルトン50、ホワイトンP-10、同30、同50、同70、ホワイトンH(以上、白石工業(株)製)、サンライトSL-100、同SL-300、同SL-700、同SL-1000、同SL―1500、同SL―2200、ホワイトシリーズWS-K、同WS-KK、同WS-3K、同WS-810、同WS-2200(以上、竹原化学工業(株)製)、HTO-12、同10、同8、同6、KP-700、同300、同200(以上、常陸砕石(株))、シリカとして、トクシールU、同UR、同GU-N、同NR、同PR、同USA、同GU、同NP、同NPS、同315、同233、同255、同255DL、同233G、同255G、同195G、同200G、同USG-T、同315EG、同255EG、同923、同928、同532、同732、ファインシールX-12、同X-35、同X-37、同X-37B、同X-30、同X-40、同X-45、同X-60、同B、同E-50、同T-32、同US-F、OSCC132、同C136、同C152、同C158、同927、同UC116、同UC800、同DT267、同DA95、同BM224、同BM225、同T610(以上、オリエンタルシリカコーポレーション製)、ニップシールAQ、同VN3、同LP、同L-300、同ER、同RS-150、同NS、同NA、同KQ、同EL、同K-500、G-300、N-300A、SP-200、TB-5012(以上、東ソー・シリカ(株)製)、カープレックス#80、同#67、同#101、同#1120、同#XR、カープレックス#FPS-1、同-2、同-101、同-101M、同-500、カープレックスCS-5、同-7、同-8、カープレックスBS-308N、同-510BX、同-303、-306(以上、EVONIK社製)が挙げられる。上記充填剤は単独でも2種以上併用してもよい。
【0018】
また本発明では消去性の観点から炭酸カルシウムとシリカを併用することが好ましく、シリカの量は重量比で炭酸カルシウム:シリカ=1:0.03以上0.14以下であり、好ましくは炭酸カルシウム:シリカ=1:0.05以上0.11以下、より好ましくは炭酸カルシウム:シリカ=1:0.06以上0.09以下である。シリカの量が重量比で炭酸カルシウム:シリカ=1:0.03以上の場合、得られる消しゴム組成物は十分な硬さが得られ、紙面に押しつけて消しゴム組成物を擦った際に大きく変形しすぎないため十分な消字性が得られる。シリカの量が重量比で炭酸カルシウム:シリカ=1:0.14以下の場合、得られる消しゴム組成物は硬くなりすぎず、紙面に押しつけて消しゴム組成物を擦った際に十分に摩耗するため十分な消字性を得られ、充填剤の添加量が大きく増えないため消し屑くっつき性が得られる。
【0019】
安定剤は、ポリ塩化ビニル、プラスチック製品等に使用されるものが使用できる。ポリ塩化ビニル用の熱安定剤としては、金属石鹸系安定剤としてバリウム、亜鉛、カルシウムなどとステアリン酸、ラウリン酸、リシノール酸、ナフテン酸、2-エチルヘキソイン酸などとの金属石鹸が挙げられ、金属石鹸系安定剤と安定化助剤を組み合わせた複合安定剤としてバリウム-亜鉛系複合安定剤、カルシウム-亜鉛系複合安定剤等があり、有機スズ系安定剤として無毒タイプのジオクチルスズ化合物があり、エポキシ系可塑剤も熱安定剤効果を持つ。成形温度が120℃以上140℃以下で液状であるエポキシ化大豆油が分散がよく、熱安定剤として好ましい。
【0020】
色材は、消しゴム組成物に所望の色にするために使用できる。ポリ塩化ビニル、熱可塑性エラストマー、ゴム、プラスチック等に従来から用いられている着色剤が使用でき、酸化チタンやカーボンブラック等の無機顔料、アゾ系やフタロシアニン系やスレン系やジオキサジン系やイソインドリン系やレーキ系といった有機顔料、染料、特殊顔料として、着色樹脂粒子や蛍光顔料など従来公知のものが使用可能である。
【0021】
本実施形態の消しゴム組成物は、従来公知の方法で製造することができる。例えば、前述した各成分を所定量配合して得た原料組成物を、混合・攪拌し、脱泡してペーストを作成した後、所定の形状になるよう加熱成形し、冷却することにより得られる。ペーストは混合・攪拌した後に脱泡することもできるし、減圧下で混合・攪拌することで同時に脱泡することもできる。ペースト作成は5℃以上から可能で、25℃以上40℃以下で作成することが好ましい。加熱成形も所望の形状により従来公知の方法を選択できる。例えば脱泡したペーストを金型に流し込み、金型を加熱して成形したり、ペーストを押出成形機、射出成形機に入れて加熱、成形する事により作成する事ができる。消しゴム組成物を成形する温度として、120℃以上140℃以下で成形でき、125℃以上135℃以下が好ましい。
【実施例0022】
以下に、実施例および比較例を示すが、本発明を何ら制限するものではない。
【0023】
(実施例1)
リューロンペースト850(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、平均重合度1600、酢酸ビニル含有量5重量%、東ソー(株)製) 28.8重量部
ヘキサモールDINCH(シクロヘキサン-1,2-ジイソノニルエステル、BASF製) 41.0重量部
HTO-10(炭酸カルシウム) 27.3重量部
エポキシ化大豆油(安定剤) 2.9重量部
上記成分をミキサーにて混合し、減圧脱泡してペーストを作成した。ペーストは長さ44mm、幅17mm、高さ12mmの形状に成形できる金型にペーストを流し込み130℃で30分加熱して消しゴムを得た。
【0024】
(実施例2)
PCH-175(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、平均重合度1650、酢酸ビニル含有量5重量%、(株)カネカ製) 28.8重量部
ヘキサモールDINCH(シクロヘキサン-1,2-ジイソノニルエステル、BASF製) 41.0重量部
HTO-10(炭酸カルシウム) 27.3重量部
エポキシ化大豆油(安定剤) 2.9重量部
上記成分を実施例1と同様の方法を用い消しゴムを得た。
【0025】
(実施例3)
リューロンペースト850(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、平均重合度1600、酢酸ビニル含有量5重量%、東ソー(株)製) 28.8重量部
ヘキサモールDINCH(シクロヘキサン-1,2-ジイソノニルエステル、BASF製) 41.0重量部
HTO-10(炭酸カルシウム) 26.0重量部
トクシールU(シリカ) 1.3重量部
エポキシ化大豆油(安定剤) 2.9重量部
上記成分を実施例1と同様の方法を用い消しゴムを得た。
【0026】
(実施例4)
リューロンペースト850(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、平均重合度1600、酢酸ビニル含有量5重量%、東ソー(株)製) 28.5重量部
ヘキサモールDINCH(シクロヘキサン-1,2-ジイソノニルエステル、BASF製) 41.0重量部
HTO-10(炭酸カルシウム) 26.0重量部
トクシールU(シリカ) 1.6重量部
エポキシ化大豆油(安定剤) 2.9重量部
上記成分を実施例1と同様の方法を用い消しゴムを得た。
【0027】
(実施例5)
PBM-6(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、平均重合度900、酢酸ビニル含有量3重量%、(株)カネカ) 31.5重量部
ヘキサモールDINCH(シクロヘキサン-1,2-ジイソノニルエステル、BASF製) 41.0重量部
ソフトン1000(炭酸カルシウム、備北粉化工業(株)製) 22.5重量部
ニップシールLP(シリカ) 2.0重量部
エポキシ化大豆油(安定剤) 3.0重量部
上記成分を実施例1と同様の方法を用い消しゴムを得た。
【0028】
(実施例6)
ソルバインCN(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、平均重合度750、酢酸ビニル含有量11重量%、信越化学工業(株)製) 28.0重量部
ヘキサモールDINCH(シクロヘキサン-1,2-ジイソノニルエステル、BASF製) 37.0重量部
ソフトン1000(炭酸カルシウム、備北粉化工業(株)製) 32.0重量部
エポキシ化大豆油(安定剤) 3.0重量部
上記成分を実施例1と同様の方法を用い消しゴムを得た。
【0029】
(比較例1)
ZEST P21(ポリ塩化ビニル、平均重合度1550、新第一塩ビ(株)製)
28.8重量部
ヘキサモールDINCH(シクロヘキサン-1,2-ジイソノニルエステル、BASF製) 41.0重量部
HTO-10(炭酸カルシウム、白石工業(株)製) 27.3重量部
エポキシ化大豆油(安定剤) 2.9重量部
実施例1において加熱温度130℃を140℃とした。他は実施例1と同様になして消しゴムを得た。
【0030】
(比較例2)
リューロンペースト850(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、平均重合度1600、酢酸ビニル含有量5重量%、東ソー(株)製) 28.8重量部
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル 41.0重量部
HTO-10(炭酸カルシウム、白石工業(株)製) 27.3重量部
エポキシ化大豆油(安定剤) 2.9重量部
実施例1において加熱温度130℃を120℃とした。他は実施例1と同様になして消しゴムを得た。
【0031】
以上の実施例1~実施例6及び比較例1、比較例2により得られた消しゴムについて、消去性、消し屑くっつき性、消し屑処理性について確認試験を行った。
【0032】
消字率 JIS S6050(2002)「プラスチック字消し」の6.4消し能力(消字率)の試験方法に準拠して消字率を測定した。消字率が80%以上あれば実用上問題なく使用でき、85%以上であれば消去性が良いと感じられ、90%以上であれば消去性は非常に良い。
【0033】
消し屑くっつき性 JIS S6050(プラスチック字消し)の消字率試験に準じ、試験片を50往復させた。つまり試料を厚さ5mmの板状に切り、試験紙との接触部分を半径6mmの円弧に仕上げたものを試験片とした。そして試験片を紙に対して垂直に接触させ、試験片におもりとホルダの質量の和が0.5kgとなるようにおもりを載せ、150±10cm/minの速さで50往復摩消させた。50往復後、試験片を手で持ち上げ、試験紙から離し、試験片に消し屑がくっついているか確認した。下記の基準によって消し屑くっつき性を評価した。
○…消し屑が試験片にくっついている。
×…消し屑が試験片にくっつかず排出されている。
【0034】
消し屑処理性 消し屑くっつき性試験後の試験片にくっついている消し屑の端を指でつまみ、試験片から消し屑を取り除いた。この時、消し屑が試験片に残らず取り除くことができたかを目視により確認した。下記の基準によって消し屑処理性を評価した。
○…消し屑が試験片から完全に除去できた。
△…消し屑が試験片からやや剥がれ難いが、消し屑が残ることは無かった。
×…消し屑が途中で切れ試験片に消し屑が残った。
【0035】
【表1】

【0036】
実施例1~実施例6は文字を消去した際の消し屑が消しゴム本体にくっついて離れず、くっついた消し屑が手で簡単に除去できるものである。なかでも実施例1~実施例4は文字の消去性、消し屑くっつき性、消し屑処理性のいずれも良好なものである。
比較例1は消し屑のまとまり性を向上させる配合であるが、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体が使用されていないため、まとまって生成した消し屑の一部が消しゴム本体と繋がらず、消し屑が消しゴム本体とくっつかずに排出されてしまう。比較例2はシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸系エステルではなく、フタル酸ジ-2-エチルヘキシルであるため、消し屑は消しゴム本体にくっつくが、まとまった状態で消し屑をつまんで取り除くことができず、消し屑が途中で切れてしまい消し屑処理性が悪い。