(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152656
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】寝具用芯材
(51)【国際特許分類】
A47C 27/00 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
A47C27/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024061026
(22)【出願日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2023065659
(32)【優先日】2023-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 充
(72)【発明者】
【氏名】奥野 喜博
(72)【発明者】
【氏名】塩貝 竜平
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AB02
3B096AB04
3B096AD00
(57)【要約】
【課題】寝具用芯材が寝具に用いられた場合の寝心地確保と軽量化とを両立する。
【解決手段】寝具用芯材は、平坦なマット状をなす基部10′と、基部10′に対して基部10′の厚み方向に突出しているとともに中空に設けられた複数の突起部20′と、を備え、基部10′および突起部20′は、ポリエチレンまたはポリプロピレンを材料とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦なマット状をなす基部と、
前記基部に対して前記基部の厚み方向に突出しているとともに中空に設けられた複数の突起部と、を備え、
前記基部および前記突起部は、ポリエチレンまたはポリプロピレンを材料とする
ことを特徴とする寝具用芯材。
【請求項2】
前記突起部は、前記厚み方向に沿って中空の空間の周囲に立設された筒部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の寝具用芯材。
【請求項3】
前記突起部は、前記筒部に対して前記基部とは反対側から中空の前記空間を覆う屋根部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の寝具用芯材。
【請求項4】
前記屋根部は、平坦状である
ことを特徴とする請求項3に記載の寝具用芯材。
【請求項5】
前記屋根部は、ドーム状である
ことを特徴とする請求項3に記載の寝具用芯材。
【請求項6】
前記厚み方向から見て隣接する前記突起部どうしが不連続に配置された
ことを特徴とする請求項3に記載の寝具用芯材。
【請求項7】
前記突起部は、前記筒部のみを有する
ことを特徴とする請求項2に記載の寝具用芯材。
【請求項8】
前記基部は、下側の下基部と上側の上基部とを有し、
前記突起部は、前記下基部から突出しているとともに中空に設けられた複数の下突起部と、前記上基部から突出しているとともに中空に設けられた複数の上突起部とを有し、前記厚み方向から見て前記上突起部および前記下突起部が互いに重ならない位置に配置され、前記下突起部および前記上突起部のそれぞれが千鳥状に配置され、
前記下基部および前記下突起部が一体に成形された下層部に対して、前記上基部および前記上突起部が一体に成形されているとともに前記下突起部の挿通される貫通穴が前記上基部に設けられた上層部が、上側に重ね合わせられた二層構造をなす
ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の寝具用芯材。
【請求項9】
前記下突起部が前記下基部から突出する第一寸法は、前記上突起部が前記上基部から突出する第二寸法よりも前記上基部の厚み寸法分だけ大きい
ことを特徴とする請求項8に記載の寝具用芯材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッドのマットレスや敷布団などの寝具に用いられる寝具用芯材に関する。
【背景技術】
【0002】
寝具用芯材として、スプリングが内蔵されたマットレスや、樹脂フォームが成形された芯材などが知られている。樹脂フォームが成形された寝具用芯材としては、上面に凹凸の成形されたマット状部材が知られている。このように凹凸成形された部材を芯材とする寝具によれば、寝具に寝転がるユーザの体圧が上面の凹凸により分散され、寝心地が向上するとされる。たとえば、比較的柔軟な軟質発泡ウレタンよりなる表面層と、比較的硬い軟質発泡ウレタンよりなる裏面層とが組み合わせられた敷布団が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のようにウレタンを材料とする寝具用芯材は、スプリングが内蔵されたマットレスと比較して、軽量ではあるものの、弾性力や変形後の復元性が不十分であり、へたりやすいという物性を有する。このような物性から、ウレタンを材料とする寝具用芯材を用いた寝具では、ユーザの寝心地を向上させるうえで改善の余地がある。一方、スプリングが内蔵されたマットレスを用いた寝具は、ウレタンを材料とする寝具用芯材と比較して、弾性力や変形後の復元性は十分ではあるものの、軽量化が困難である。
よって、寝具用芯材が寝具に用いられた場合の寝心地確保と軽量化とを両立するうえで、改善の余地がある。
【0005】
本件は、上記の課題に鑑みて創案されたものであり、寝具用芯材が寝具に用いられた場合の寝心地確保と軽量化との両立を目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用および効果であって、従来の技術では得られない作用および効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示の寝具用芯材は、以下に記す(1)~(9)の構成を備えている。
(1)
平坦なマット状をなす基部と、
前記基部に対して前記基部の厚み方向に突出しているとともに中空に設けられた複数の突起部と、を備え、
前記基部および前記突起部は、ポリエチレンまたはポリプロピレンを材料とする
ことを特徴とする寝具用芯材。
(2)
前記突起部は、前記厚み方向に沿って中空の空間の周囲に立設された筒部を有する
ことを特徴とする(1)に記載の寝具用芯材。
(3)
前記突起部は、前記筒部に対して前記基部とは反対側から中空の前記空間を覆う屋根部を有する
ことを特徴とする(2)に記載の寝具用芯材。
(4)
前記屋根部は、平坦状である
ことを特徴とする(3)に記載の寝具用芯材。
(5)
前記屋根部は、ドーム状である
ことを特徴とする(3)に記載の寝具用芯材。
(6)
前記厚み方向から見て隣接する前記突起部どうしが不連続に配置された
ことを特徴とする(1)~(5)の何れか一つに記載の寝具用芯材。
(7)
前記突起部は、前記筒部のみを有する
ことを特徴とする(2)に記載の寝具用芯材。
(8)
前記基部は、下側の下基部と上側の上基部とを有し、
前記突起部は、前記下基部から突出しているとともに中空に設けられた複数の下突起部と、前記上基部から突出しているとともに中空に設けられた複数の上突起部とを有し、前記厚み方向から見て前記上突起部および前記下突起部が互いに重ならない位置に配置され、前記下突起部および前記上突起部のそれぞれが千鳥状に配置され、
前記下基部および前記下突起部が一体に成形された下層部に対して、前記上基部および前記上突起部が一体に成形されているとともに前記下突起部の挿通される貫通穴が前記上基部に設けられた上層部が、上側に重ね合わせられた二層構造をなす
ことを特徴とする(1)~(7)の何れか一つに記載の寝具用芯材。
(9)
前記下突起部が前記下基部から突出する第一寸法は、前記上突起部が前記上基部から突出する第二寸法よりも前記上基部の厚み寸法分だけ大きい
ことを特徴とする(8)に記載の寝具用芯材。
【発明の効果】
【0007】
本件によれば、寝具用芯材が寝具に用いられた場合の寝心地の確保と軽量化とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】第二の寝具用芯材における要部を分解して示す斜視図である。
【
図5】第二の寝具用芯材のおける下層部を示す平面図である。
【
図6】第二の寝具用芯材のおける上層部を示す平面図である。
【
図7】突起部の変形例を説明する要部図(
図4に対応する図)である。
【
図9】第三の寝具用芯材のうち要部(
図8のA-A矢視部分の断面およびその周辺)を示す部分断面図である。
【
図10】第四の寝具用芯材の要部を分解して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態としての寝具用芯材を説明する。
本実施形態の寝具用芯材は、ベッドや蒲団などの寝具に用いられる芯材である。寝具用芯材は、寝床に沿って延在する姿勢で用いられ、マットレスカバーやボックスシーツなどのカバーによって覆われた態様で用いられる。このような寝具用芯材の一例としては、ベッドのマットレスに用いられる芯材(いわば「ベッド芯材」)が挙げられる。
【0010】
[I.一実施形態]
一実施形態の寝具用芯材に係る説明で参照する図面には、互いに直交する三つの座標軸としてX軸,Y軸およびZ軸を付記する。
X軸に沿うX方向とY軸に沿うY方向との双方に沿う平面を「XY平面」とすれば、XY平面は寝床に沿う平面に対応する。X方向およびY方向の何れか一方は、長手方向(たとえば寝床に寝転がるユーザの頭と脚部の爪先とを結ぶ方向)に対応付けられる。X方向およびY方向の何れか他方は、幅方向(たとえば寝床に寝転がるユーザが寝返りを打つ方向)に対応付けられる。Z軸に沿うZ方向は、上下方向に対応し、厚み方向とも言える。
【0011】
下記の一実施形態では、寝具用芯材の構成を項目[1]で述べ、項目[1]の構成による作用および効果を項目[2]で述べる。
[1.構成]
項目[1]では、四種の寝具用芯材を例に挙げる。四種の寝具用芯材を小項目[1-1]~[1-4]で説明し、寝具用芯材に用いられる材料について小項目[1-5]で説明する。
【0012】
[1-1.第一の寝具用芯材]
図1,
図2に示すように、第一の寝具用芯材には、平坦なマット状をなす基部10と、基部10に対して突出した複数の突起部20(
図1には一箇所のみ符号を付す)とが設けられている。
突起部20は、
図2に示すように、基部10の厚み方向(
図2ではZ方向,以下、単に「厚み方向」という)に突設されるほか、中空に成形されている。これに対し、基部10は、突起部20の中空部と連結する部分は中空で、それ以外は中空に成形されていない(いわば中実に成形されている)。
【0013】
図1に示すように、複数の突起部20は、厚み方向から見て(すなわち平面視で)隣接する突起部20どうしが不連続に配置されている。すなわち、複数の突起部20は互いに離間して配置されており、いわば独立した突起部20が林立している。
図1には、六角格子状(千鳥状)に配置された突起部20を例示する。
この突起部20には、
図2に示すように、中空の空間S(
図1では破線で囲まれる領域に対応)の周囲に立設された筒部2Aと、中空の空間Sを覆う屋根部2Bとが設けられている。
【0014】
筒部2Aは、基部10に対して立設された部位である。この筒部2Aは、中空の空間Sを向く内表面3と、中空の空間Sとは反対側を向く外表面4(「外筒面」とも言える)とをもつ。ここで例示の筒部2Aは、いわゆるプロファイル加工された凹凸形状のような上下に対して傾斜した外表面ではなく、厚み方向(換言すれば上下方向)に沿う外表面4が設けられる。
図1,
図2には、円筒状の筒部2Aを例示する。
【0015】
図1に例示する複数の突起部20は、Y方向から見ると(すなわちY方向視では)外表面4(
図1には一箇所のみ符号を付す)が互いに離間する配置に設けられており、X方向から見ると(すなわちX方向視では)外表面4が互いに重複(ラップ)する配置に設けられている。
屋根部2Bは、筒部2Aに対して基部10とは反対側(
図2では上側)から覆う屋根状の部位である。
図2には、ドーム状の屋根部2Bを例示する。
【0016】
そのほか、第一の寝具用芯材は、寝具のサイズに応じて組み合わせられてもよい。具体的な一例を挙げれば、第一の寝具用芯材どうしが
図1に二点鎖線で示す箇所9で貼り合わせられたり溶着されたりして結合させてもよい。更に言えば、互いに結合された寝具用芯材どうしが更に結合されてもよい。
【0017】
上記のように組み合わせられる寝具用芯材は、XY平面に沿って拡張自在な単位ユニットと言え、単位ユニットの組み合わせ数や組み合わせ方向によって寝具のサイズや形状に対応可能である。
第一の寝具用芯材は、上記のようにXY方向に複数が組み合わせられうるものの、厚み方向には一体の部材(一部材)から成形された単層構造をなす。これに対し、つぎに説明する第二の寝具用芯材は、厚み方向に二つ部材が組み合わせられた二層構造をなす。
【0018】
[1-2.第二の寝具用芯材]
第二の寝具用芯材は、
図3,
図4に示すように、下層部1′および上層部2′の二部材が重ね合わせられた点が第一の寝具用芯材と相違する。なお、第二の寝具用芯材は、第一の寝具用芯材と比較して、厚み方向から見て単位面積あたりの突起部21′,22′の個数が多く設定されている(いわば密に突起部21′,22′が設けられている)。第二の寝具用芯材に関して、本項目[1-2]で説明する点を除いては、上述の項目[1-1]と同様の構成である。
【0019】
第二の寝具用芯材の基部10′は、下側の下基部11′と上側の上基部12′とに大別される。下基部11′は、基部10′の下半部であり、上方に上基部12′が重ね合わせられる。反対に、上基部12′は、基部10′の上半部であり、下方に下基部11′が重ね合わせられる。
第二の寝具用芯材の突起部20′は、下基部11′から突出して設けられた複数の下突起部21′と、上基部12′から突出して設けられた複数の上突起部22′とに大別される。下突起部21′および上突起部22′は、双方とも中空に設けられている。
【0020】
図5に示すように、複数の下突起部21′(
図5では一箇所のみに符号を付す)は、六角格子状(千鳥状)に配置されている。また、
図6に示すように、複数の上突起部22′(
図6では一箇所のみに符号を付す)は、六角格子状(千鳥状)に配置されている。これらのように格子状に配置された突起部21′,22′は、厚み方向から見て互いに重ならない位置に配置されている。言い換えると、突起部21′,22′は、互い違いに配置されている。
【0021】
図3,
図4,
図5に示すように、下層部1′には、下基部11′および下突起部21′が設けられている。この下層部1′では、下基部11′および下突起部21′が一体に成形されている。
図3,
図4,
図6に示すように、上層部2′には、上基部12′および上突起部22′が設けられている。この上層部2′では、上基部12′および上突起部22′が一体に成形され、下突起部21′が挿通される貫通穴32′(
図6では一点鎖線で示し二箇所のみに符号を付す)が上基部12′に設けられている。
【0022】
図6には、下層部1′および上層部2′の二部材が重ね合わせられた状態において、突起部21′,22′からなる突起部20′どうしが厚み方向から見て不連続に配置されるほか、複数の突起部20が正方格子状(矩形格子状)に配置された例を示す。
図6に例示する複数の突起部21′,22′は、X方向から見ると、X方向に隣接する一方の突起部21′,22′における外表面4′(
図6には三箇所のみ符号を付す,
図7には二箇所のみ符号を付す)のうちY方向の端部(たとえば
図6では上側)と他方の突起部21′,22′における外表面4′のうちY方向の端部(たとえば
図6では上側)とが同一のY方向位置に配置される(すなわちX方向に沿って直線状に並ぶ)とともに、Y方向に隣接する突起部21′,22′どうしが離間するように相対的な配置が設定されている。
【0023】
また、
図6に例示する複数の突起部21′,22′は、Y方向から見ると、X方向に隣接する突起部21′,22′どうしが離間するとともに、Y方向に隣接する一方の突起部21′,22′における外表面4′のうちX方向の端部(たとえば
図6では左側)と他方の突起部21′,22′のうちX方向の端部(たとえば
図6では左側)とが同一のX方向位置に配置される(すなわちY方向に沿って直線状に並ぶ)ように相対的な配置が設定される。
【0024】
図4に示すように、上記の基部11′,12′は、厚さが等しく設けられている。すなわち、下基部11′の厚み寸法を「T1」とし、上基部12′の厚み寸法を「T2」とすれば、等式「T1=T2」が成立する。
これに対し、突起部21′,22′は、突出する寸法が互いに相違する。具体的には、下突起部21′が下基部11′から上方に突出する寸法(第一寸法)は、上突起部22′が上基部12′から上方に突出する寸法(第二寸法)よりも上基部12′の厚み寸法分だけ大きい。すなわち、下突起部21′が下基部11′から上方に突出する寸法を「L1」とし、上突起部22′が上基部12′から上方に突出する寸法を「L2」とすれば、不等式「L1>L2」が成立し、等式「L2=L1-T2」が成立する。
【0025】
下層部1′に対して上層部2′が上側に重ね合わせられると、下基部11′に対して上側に上基部12′や上突起部22′が配置され、下突起部21′が貫通穴32′を挿通して上基部12′よりも上方に突出する。このような二層構造をなす第二の寝具用芯材では、下突起部21′が上基部12′に対して上方に突出する寸法「L1-T2」と、上突起部22′が上基部12′に対して上方に突出する寸法「L2」とが既述のように等しくなる。
【0026】
なお、突起部21′,22′は、平坦状の屋根部2B′が設けられている。ただし、
図7に示すように、ドーム状(換言すれば「半球状」)の屋根部2B″を下突起部21″や上突起部22″(突起部20″)に採用してもよい。敷衍して言えば、予め設計された弾性力や復元特性といった寝心地に関する物性をもたせるために、突起部における屋根部の形状にはさまざまな形状を採用することができる。あるいは、突起部の突出寸法,筒部の厚み(XY平面に沿う方向の寸法),中空の空間の大きさといった各種のパラメータについても、所望の物性をもたせるために種々設定されうる。
【0027】
[1-3.第三の寝具用芯材]
第三の寝具用芯材は、
図8,
図9に示すように、上述の屋根部2B,2B′,2B″が設けられていない点で、第一の寝具用芯材や第二寝具用芯材と相違する。また、第三の寝具用芯材は、第二の寝具用芯材と比較して、厚み方向から見て単位面積あたりの突起部20Xの個数が多く設定されている。なお、第三の寝具用芯材は、本項目[1-3]で説明する点を除いては、上述の構成と同様である。
【0028】
第三の寝具用芯材は、第二の寝具用芯材のような下層部1′および上層部2′からなる二層構造ではなく、厚み方向に一体の部材(一部材)から成形された単層構造をなす。
ここで例示する第三の寝具用芯材は、基部10Xから厚み方向に突出して設けられた突起部20Xに、筒部2AXのみが設けられている。言わば、筒部2AXが周囲に立設された中空の空間SXは、厚み方向に貫通している。このように貫設された中空の空間SXは、基部10Xとは反対側(厚み方向の一側,
図9では上側)が開放され、基部10Xの側(厚み方向の他側,
図9では下側)も開放されていると換言できる。
【0029】
上記のように筒部2AXのみを有する複数の突起部20Xは、厚み方向から見て、隣接する突起部20Xどうしが不連続に配置されている点は上述の形態と同様である。
図8に例示する複数の突起部20Xは、XY平面に沿う任意の方向から見て(すなわち立面視で)、隣接する一方の突起部20Xにおける外表面4X(
図8,
図9には二箇所のみ符号を付す)と他方の突起部20Xにおける外表面4Xとが離間しない相対的な配置に設定されている。たとえば、Y方向視では、X方向に隣接する一方の突起部20Xにおける外表面4XのうちX方向の端部(たとえば
図8では左側)と他方の突起部20Xにおける外表面4XのうちX方向の端部(たとえば
図8では左側)とが同一のX方向位置に配置される(すなわちY方向に沿って直線状に並ぶ)ように相対的な配置が設定されている。また、X方向視では、XY平面において任意の方向に隣接する一方の突起部20Xにおける外表面4Xと他方の突起部20Xにおける外表面4Xとが互いに重複(ラップ)する相対的な配置に設定されている。
【0030】
[1-4.第四の寝具用芯材]
第四の寝具用芯材は、
図10,
図11に示すように、上述の屋根部2B,2B′,2B″が設けられていない点では第三の寝具用芯材と同様の構成であるものの、第三の寝具用芯材のように単層構造ではなく、第二寝具用芯材のように二層構造をもつ。なお、第四の寝具用芯材は、本項目[1-4]で説明する点を除いては、上述の構成と同様である。
【0031】
まず、第四の寝具用芯材について、第二の寝具用芯材と類似あるいは共通の構成について説明する。
第四の寝具用芯材の基部10X′には、基部10X′の下半部に配置される下基部11X′と、下基部11X′に対して上側に重ね合わせられるとともに基部10X′の上半部に配置される上基部12X′とが設けられている。また、第四の寝具用芯材の突起部20X′には、下基部11X′から突出して設けられた複数の下突起部21X′と、上基部12X′から突出して設けられた複数の上突起部22X′とが設けられている。
【0032】
下突起部21X′および上突起部22X′のそれぞれは、
図10に示すように、千鳥状に配置され、厚み方向から見て下突起部21X′と上突起部22X′とが互いに重ならない位置に配置されている。なお、第四の寝具用芯材に用いられる突起部21X′,22X′の配置には、厚み方向から見て少なくとも重ならなければ、六角格子状の配置や正方格子状の配置といったさまざまな配置を採用できる。
下層部1X′には、下基部11X′および下突起部21X′が一体に設けられている。また、上層部2X′には、上基部12X′および上突起部22X′が一体に設けられ、下突起部21X′が挿通される貫通穴32X′が上基部12X′に設けられている。
【0033】
図11に示すように、下基部11X′の厚み寸法を「TX1′」とし、上基部12X′の厚み寸法を「TX2′」とすれば、等式「TX1′=TX2′」が成立する。
また、下突起部21X′が下基部11X′から上方に突出する寸法を「LX1′」とし、上突起部22X′が上基部12X′から上方に突出する寸法を「LX2′」とすれば、不等式「LX1′>LX2′」が成立し、等式「LX2′=LX1′-TX2′」が成立する。
下層部1X′に対して上層部2X′が上側に重ね合わせられた二層構造をなす第四の寝具用芯材では、下突起部21X′が上基部12X′に対して上方に突出する寸法「LX1′-TX2′」と、上突起部22X′が上基部12X′に対して上方に突出する寸法「LX2′」とが既述のように等しくなる。
【0034】
つぎに、第四の寝具用芯材について、第三の寝具用芯材と類似あるいは共通の構成について説明する。
第四の寝具用芯材の突起部21X′,22Y′には、上述のような屋根部2B,2B′,2B″が設けられておらず、筒部2AX′のみが設けられている。
具体的に言えば、筒部2AX′のうち下突起部21X′をなす下筒部21AX′によって周囲が囲繞される中空の空間SX′は、基部10X′とは反対側(
図10,
図11では上側,厚み方向の一側)が開放され、基部10X′の側(
図10,
図11では下側,厚み方向の他側)も開放されている。
【0035】
一方、筒部2AX′のうち上突起部22X′をなす上筒部22AXによって周囲が囲繞される中空の空間SX′は、基部10X′とは反対側が開放される。一方、中空の空間SX′と上基部12X′において連通する部分(すなわち上基部12X′の中空部分)は、下基部11X′によって閉鎖されている。
ただし、下基部11X′において上記のように上基部12X′の中空部分(中空の空間SX′と連通する部分)を閉鎖する部位を省略し、言わば厚み方向に貫通して設けられた中空の空間SX′を採用してもよい。
【0036】
[1-5.材料]
上述の寝具用芯材には、ポリオレフィンが用いられている。ポリオレフィンは、内部に炭化水素の二重結合を持った樹脂の総称である。ポリオレフィンには、ポリエチレン(「PE」とも略称される)やポリプロピレン(「PP」とも略称される)などが含まれる。
本実施形態に係る寝具用芯材の基部および突起部は、ポリエチレンまたはポリプロピレンを材料としている。
【0037】
ポリエチレンおよびポリプロピレンは、以下に例を挙げる共通の物性を有する。
・炭素と水素からなるポリマー(高分子)である。
・熱可塑性樹脂で射出成形,押出成形,真空成形,圧空成形,ブロー成形といった金型を用いた種々のプラスチック成形に対応し、安価に量産可能である。
・絶縁体である。
・比重が1以下である(軽量である)。
・水を吸いにくい(吸水率が0.01%以下)ため、寸法安定性に優れる。
・無臭で無毒である。
【0038】
ポリエチレンおよびポリプロピレンは、ポリウレタン(単に「ウレタン」とも称される)と比較して、弾性力が大きく,変形後の復元性に優れ,へたりにくいといった物性を有する。なお、本実施形態に係る寝具用芯材の材料に用いられるポリエチレンやポリプロピレン(すなわちポリオレフィン)は、ポリウレタンと比較すると、リサイクルが容易で環境負荷が低い。
また、ポリエチレンおよびポリプロピレンは、コイルスプリングに用いられる金属と比較して、軽量であるという物性を有する。
【0039】
金型による発泡ビーズ成形材料としてポリエチレンまたはポリプロピレンを用いて寝具用芯材を製造する場合には、発泡ビーズ成形材料の発泡倍率や銘柄によって弾性力をはじめとした物性が調整可能である。このような製法的あるいは材料的な物性調整は、上述のように突起部における屋根部の形状,突起部の突出寸法,筒部の厚み,中空の空間の大きさといった構造的な各種のパラメータを勘案して調整される。
【0040】
ポリエチレンとポリプロピレンとでは、つぎに例示するような物性の相違を有する。
・ポリエチレンよりもポリプロピレンのほうが硬い。
・ポリエチレンよりもポリプロピレンのほうが速乾性に優れる。
・ポリプロピレンよりもポリエチレンのほうが耐薬品性に優れる。
・ポリエチレンのほうがポリプロピレンよりも粘る物性を有する傾向にある。
なお、ポリエチレンのほうがポリプロピレンよりも粘る物性を有する傾向にあることから、基部および突起部の材料には、ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0041】
[2.作用および効果]
本実施形態の寝具用芯材は、上述の構成を備えているため、寝具に用いられた場合に下記のような作用および効果を得ることができる。
(1)ポリエチレンやポリプロピレンは、従来の寝具用芯材に広く用いられているポリウレタンと比較して、弾性力が大きく,変形後の復元性に優れ,へたりにくいといった物性を有する材料である。このような物性を有する材料が基部10,10′,10X,10X′および突起部20,20′,20″,20X,20X′に用いられているため、表面に凹凸加工の施されたポリウレタン製マットレス(いわゆるプロファイル加工のマットレス)と比較して、復元性に優れ、へたりにくい寝具用芯材を提供することができる。延いては、本発明の寝具用芯材を用いた寝具によって、寝具に寝転がるユーザの寝心地を確保することができる。
【0042】
また、ポリエチレンまたはポリプロピレンを材料とする突起部20,20′,20″,20X,20X′は、中空に設けられているため、弾性力が過剰に強くなるのを抑制することができ、適度な復元性に調節することができ、軽量化にも有効である。そのため、ボンネルコイルマットレスやポケットコイルマットレスなどのスプリングマットレスよりも軽量でありながら、スプリングマットと同等の復元効果(いわばスプリング効果)を得ることができる。
よって、寝具用芯材が寝具に用いられた場合の寝心地確保と軽量化とを両立することができる。
【0043】
(2)厚み方向に沿って筒部2A,2AX,2AX′が立設されていることから、上方から筒部2A,2AX,2AX′に印加される体圧(荷重)は、筒部2A,2AX,2AX′で受け止られつつ、中空の空間S,SX,SX′によって筒部2A,2AX,2AX′での対抗力が過剰に強くなることが抑制される。よって、筒部2A,2AX,2AX′が設けられている構造からも、弾性力を確保しつつ弾性力が過剰に強くなるのを抑制することができ、適度な復元性に調節することができる。
【0044】
(3)さらに、中空の空間Sの周囲に立設された筒部2Aに加えて、中空の空間Sを覆う屋根部2B,2B′,2B″が設けられていれば、上方から印加される体圧(荷重)が屋根部2B,2B′,2B″から筒部2Aへ伝達され、筒部2Aで上方からの体圧を受け止めつつ、中空の空間Sによって筒部2Aでの対抗力が過剰に強くなることが抑制される。よって、筒部2Aおよび屋根部2B,2B′,2B″をもつ構造によれば、弾性力を確保しつつ弾性力が過剰に強くなるのを抑制することができ、適度な復元性に調節することができる。
【0045】
(4)平坦状の屋根部2B′によれば、上方から印加される体圧が面状に分散されるため、寝具用芯材が用いられた寝具に寝転がるユーザへの刺激が一層抑えられ(単位面積あたりの反力が抑えられ)、寝心地の向上に資する。
(5)ドーム状の屋根部2B,2B″によれば、上方から印加される体圧が大きくなるほど分散される構造であるため、寝具用芯材が用いられた寝具に寝転がるユーザへいわゆるツボ押しのような反力(好適な刺激)を作用させることができ、寝心地の向上に資する。
【0046】
(6)複数の突起部20,20′,20″,20X,20X′は、厚み方向から見て隣接する突起部20,20′,20″,20X,20X′どうしが不連続に配置されている。そのため、上方からの体圧が印加された突起部20,20′,20″,20X,20X′のみを変形させることができる。すなわち、荷重の印加された突起部20,20′,20″,20X,20X′に連動して、荷重の印加されていない突起部20,20′,20″,20X,20X′の変形を抑制可能である。平たく言えば、寝具用芯材が用いられた寝具のユーザが寝転んでいる領域だけで突起部20,20′,20″,20X,20X′を沈み込ませることができる。この点からも、寝心地の向上に資する。
【0047】
(7)第三の寝具用芯材や第四の寝具用芯材によれば、筒部2AX,2AX′のみが突起部20X′に設けられていることから、中空の空間SX,SX′の少なくとも基部10X′とは反対側が開放されている。そのため、第三の寝具用芯材や第四の寝具用芯材に厚み方向の通気性が確保される。そのため、第三の寝具用芯材や第四の寝具用芯材が用いられた寝具に寝転んでいるユーザの寝汗などによる湿気が籠もるのを抑制することができる。この点からも、寝心地の向上に資する。
【0048】
また、屋根部2B,2B′,2B″が設けられておらず筒部2AX,2AX′のみが設けられた突起部20X,20X′によれば、第一の寝具用芯材や第二の寝具用芯材の突起部20,20′と比較して簡素な構成である。そのため、単位面積あたりの突起部20Xの個数を多く設定しやすく、突起部20X,20X′の個数設定に係る自由度を一層高めることができ、寝具用芯材の成形性を向上させることにも資する。
【0049】
(8)第二の寝具用芯材によれば、下層部1′および上層部2′の二部材が重ね合わせられた二層構造により、成形性を確保することができ、成形自由度を高めることも可能である。
具体的に言えば、突起部21′,22′が下層部1′および上層部2′に分散して配置されている。そのため、下層部1′および上層部2′を重ね合わせて分散された突起部21′,22′を組み合わせることにより、厚み方向から見て単位面積あたりの突起部21′,22′の個数を確保することができる。たとえば、隣接する突起部21′,22′どうしの間隔が第一の寝具用芯材のように厚み方向には一体の部材では成形が困難な間隔であったとしても、二層構造をなす第二の寝具用芯材であれば成形することができる。第四の寝具用芯材によっても、第二の寝具用芯材と同様の効果を得ることができる。
【0050】
(9)下突起部21′が下基部11′から上方に突出する寸法「L1」は、上突起部22′が上基部12′から上方に突出する寸法「L2」よりも上基部12′の厚み寸法「T2」分だけ大きい。そのため、下突起部21′が上基部12′に対して上方に突出する寸法「L1-T2」と、上突起部22′が上基部12′に対して上方に突出する寸法「L2」とを揃えることができる。第四の寝具用芯材も同様に、下突起部21X′が上基部12X′に対して上方に突出する寸法「LX1′-TX2′」と、上突起部22X′が上基部12X′に対して上方に突出する寸法「LX2′」とを揃えることができる。この点からも寝心地の向上に資する。
【0051】
[II.変形例]
上述の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
たとえば、寝具用芯材における各部位の寸法は、任意に設定可能である。具体的に言えば、下突起部が下基部から突出する寸法,上突起部が上基部から突出する寸法,下基部の厚み寸法,上基部の厚み寸法は、上述の寸法に限られない。
【0052】
また、突起部の形状も任意であり、隣接する突起部どうしが連続して配置されていてもよい。突起部の屋根部についても、平坦状やドーム状に限らず、任意の形状に成形されていてもよい。
なお、突起部は、少なくとも中空に設けられていればよく、六角格子状に限られず正方格子状や三角格子といった任意の千鳥状に配置することができ、筒部や屋根部を有する構造に限られず、種々の中空構造を適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
10,10′,10X,10X′ 基部
11,11′,11X′ 下基部
12,12′,12X′ 上基部
1′,1X′ 下層部
20,20′,20″,20X,20X′ 突起部
21,21′,21″,21X′ 下突起部
22,22′,22″,22X′ 上突起部
2′,2X′ 上層部
2A,2AX,2AX′ 筒部
3 内表面
4,4′,4X 外表面
2B,2B′,2B″ 屋根部
32′ 貫通穴
9 二点鎖線で示す箇所
L1,LX1′ 下突起部が下基部から突出する厚み方向の寸法(第一寸法)
L2,LX2′ 上突起部が上基部から突出する厚み方向の寸法(第二寸法)
S,SX,SX′ 中空の空間
T1,TX1′ 下基部の厚み寸法
T2,TX2′ 上基部の厚み寸法