(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152659
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】汚濁改善用散布剤、汚濁改善方法及び汚濁予防方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20230101AFI20241018BHJP
C02F 1/72 20230101ALI20241018BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20241018BHJP
【FI】
C02F1/32
C02F1/72 101
C02F1/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024061193
(22)【出願日】2024-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2023065374
(32)【優先日】2023-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519261699
【氏名又は名称】株式会社イーサー
(71)【出願人】
【識別番号】506419364
【氏名又は名称】株式会社 近藤工芸
(74)【代理人】
【識別番号】100205914
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 総明
(74)【代理人】
【識別番号】100162189
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 真弓
(72)【発明者】
【氏名】近藤 眞一
【テーマコード(参考)】
4D037
4D050
4D624
【Fターム(参考)】
4D037AA05
4D037AB03
4D037AB15
4D037BA18
4D037BB08
4D037BB09
4D037CA01
4D037CA09
4D037CA11
4D050AA02
4D050AB06
4D050AB20
4D050BC06
4D050BC09
4D050CA06
4D050CA20
4D624AA05
4D624AB07
4D624BA14
4D624BA19
4D624BB01
4D624BB02
4D624BC04
4D624DB10
4D624DB22
4D624DB23
4D624DB29
4D624DB30
(57)【要約】
【課題】対象とする閉鎖性水域における水に含まれる光合成細菌を吸着・沈殿させて汚濁を改善することができ、かつ、光合成細菌の再生が可能であり、環境保全を行うことができる汚濁改善用散布剤、汚濁改善方法及び汚濁予防方法を提供する。
【解決手段】閉鎖性水域における水の汚濁改善用散布剤は、太陽光による光電効果により酸化還元反応を引き起こし光合成細菌を電荷分離するための二酸化チタンと、酸化還元反応を促進させるためのフィブロインと、分離した光合成細菌を吸着して沈殿させるための化石サンゴとを含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光による光電効果により酸化還元反応を引き起こし、光合成細菌を電荷分離するための、微細化された二酸化チタンと、前記酸化還元反応を促進させるためのフィブロインと、分離した光合成細菌を吸着して沈殿させるための化石サンゴとを含有する、閉鎖性水域における水の汚濁改善用散布剤。
【請求項2】
前記化石サンゴが生の化石の粉末であることを特徴とする請求項1に記載の汚濁改善用散布剤。
【請求項3】
前記二酸化チタン、前記フィブロイン及び前記化石サンゴの含有重量比が、78:10:9であることを特徴とする請求項1に記載の汚濁改善用散布剤。
【請求項4】
二酸化ケイ素、有機酸類及び塩化物をさらに含有していることを特徴とする請求項1に記載の汚濁改善用散布剤。
【請求項5】
前記二酸化チタンに結合してアパタイト被覆を形成し、分離した光合成細菌を吸着させるためのリン酸化カルシウムをさらに含有していることを特徴とする請求項1に記載の汚濁改善用散布剤。
【請求項6】
太陽光による光電効果により酸化還元反応を引き起こし光合成細菌を電荷分離するための、微細化された二酸化チタンと、前記酸化還元反応を促進させるためのフィブロインと、分離した光合成細菌を吸着して沈殿させるための化石サンゴとを含有する汚濁改善用散布剤の水溶液を、対象とする閉鎖性水域における水に散布し、太陽光及び太陽熱による酸化還元効果を利用して光合成細菌を分離・沈殿させることを特徴とする汚濁改善方法。
【請求項7】
前記水溶液を散布し、散布してから所定期間経過した後に、前記対象とする水域の水の透明度を確認し、確認した結果に応じて前記散布を繰り返すことを特徴とする請求項6に記載の汚濁改善方法。
【請求項8】
前記対象とする水域の水の透明度の確認が、目視による確認であることを特徴とする請求項7記載の汚濁改善方法。
【請求項9】
前記化石サンゴとして、生の化石の粉末を用いることを特徴とする請求項6に記載の汚濁改善方法。
【請求項10】
前記汚濁改善用散布剤の前記二酸化チタン、前記フィブロイン及び前記化石サンゴの含有重量比が、78:10:9であることを特徴とする請求項6に記載の汚濁改善方法。
【請求項11】
前記汚濁改善用散布剤が、二酸化ケイ素、有機酸類及び塩化物をさらに含有していることを特徴とする請求項6に記載の汚濁改善方法。
【請求項12】
前記汚濁改善用散布剤が、前記二酸化チタンに結合してアパタイト被覆を形成し、分離した光合成細菌を吸着させるためのリン酸化カルシウムをさらに含有していることを特徴とする請求項6に記載の汚濁改善方法。
【請求項13】
太陽光による光電効果により酸化還元反応を引き起こし光合成細菌を電荷分離するための、微細化された二酸化チタンと、前記酸化還元反応を促進させるためのフィブロインと、分離した光合成細菌を吸着して沈殿させるための化石サンゴとを含有する汚濁改善用散布剤の水溶液を、対象とする閉鎖性水域における水を抜いて乾燥させた状態の該水域に散布し、その後、前記対象とする水域に水を導入することを特徴とする汚濁予防方法。
【請求項14】
前記汚濁改善用散布剤の前記二酸化チタン、前記フィブロイン及び前記化石サンゴの含有重量比が、78:10:9であることを特徴とする請求項13に記載の汚濁予防方法。
【請求項15】
前記汚濁改善用散布剤が、二酸化ケイ素、有機酸類及び塩化物をさらに含有していることを特徴とする請求項13に記載の汚濁予防方法。
【請求項16】
前記汚濁改善用散布剤が、前記二酸化チタンに結合してアパタイト被覆を形成し、分離した光合成細菌を吸着させるためのリン酸化カルシウムをさらに含有していることを特徴とする請求項13に記載の汚濁予防方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉鎖性水域内における水の汚濁を減少させるための汚濁改善用散布剤、この汚濁改善用散布剤を用いた汚濁改善方法及び汚濁予防方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、湖沼、河川、及び貯水池等の閉鎖性水域においては、近年、富栄養化が進んでシアノバクテリア等が増殖し、汚濁化が進んでいる。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、アオコやバクテリアの発生を抑える水質改善装置として、流紋岩を主体とする天然鉱石の微粉末を焼成してなる二酸化チタン混入セラミックに紫外線を照射することにより、非常に強い酸化力を発生させ、接触する物質を炭酸ガスなどに酸化分解し、アオコやバクテリアを死滅させて水質改善を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3051615号公報
【特許文献2】実用新案登録第3053786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載された従来の水質改善技術は、二酸化チタンの光触媒能力で酸化分解することによって、アオコやバクテリア等を死滅させて水質改善を行うものであり、死滅したアオコやバクテリア等は二度と再生することはできず、自然界の破壊につながり、環境保全を行うことができなかった。
【0006】
従って本発明の目的は、対象とする閉鎖性水域における水に含まれる光合成細菌を吸着・沈殿させて汚濁を改善することができ、かつ、光合成細菌の再生が可能であり、環境保全を行うことができる汚濁改善用散布剤、汚濁改善方法及び汚濁予防方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、太陽光による光電効果により酸化還元反応を引き起こし、光合成細菌を電荷分離するための、微細化された二酸化チタンと、酸化還元反応を促進させるためのフィブロインと、分離した光合成細菌を吸着して沈殿させるための化石サンゴとを含有する、閉鎖性水域における水の汚濁改善用散布剤が提供される。
【0008】
二酸化チタンは、太陽光による光電効果により酸化還元反応を引き起こし、光合成細菌を電荷分離する。フィブロインは、酸化還元反応を促進させる。化石サンゴは、光合成細菌に吸着して沈殿させる。本発明の汚濁改善用散布剤は、水に溶解して水溶液として使用されるが、水溶液となった際に、二酸化チタンの含有量が、光合成細菌が死滅することなく電荷分離される含有量(製造者の試験によって規定されている)となるように希釈して使用する。その結果、二酸化チタンによって分離された光合成細菌は化石サンゴによって吸着・沈殿されるが、その際に、光合成細菌を死滅させること無しに、対象とする水の汚濁を改善することができる。また、光合成細菌は、死滅しないので再生が可能であり、環境保全が可能となる。
【0009】
化石サンゴが生の化石の粉末であることも好ましい。
【0010】
二酸化チタン、フィブロイン及び化石サンゴの含有重量比が、78:10:9であることも好ましい。
【0011】
二酸化ケイ素、有機酸類及び塩化物をさらに含有していることも好ましい。
【0012】
二酸化チタンに結合してアパタイト被覆を形成し、分離した光合成細菌を吸着させるためのリン酸化カルシウムをさらに含有していることも好ましい。
【0013】
本発明によれば、さらに、太陽光による光電効果により酸化還元反応を引き起こし光合成細菌を電荷分離するための、微細化された二酸化チタンと、酸化還元反応を促進させるためのフィブロインと、分離した光合成細菌を吸着して沈殿させるための化石サンゴとを含有する汚濁改善用散布剤の水溶液を、対象とする閉鎖性水域における水に散布し、太陽光及び太陽熱による酸化還元効果を利用して光合成細菌を分離・沈殿させる汚濁改善方法が提供される。なお、本明細書においては、完全に溶解しておらず混合したものも、「溶液」と記載することとする。
【0014】
散布された水溶液中の二酸化チタンが、太陽光による光電効果により酸化還元反応して光合成細菌を電荷分離する。フィブロインは、酸化還元反応を促進させる。分離された光合成細菌は化石サンゴに吸着されて沈殿する。本発明の汚濁改善用散布剤の水溶液は、二酸化チタンの含有量が、光合成細菌が死滅することなく電荷分離される含有量(製造者の試験によって規定されている)となるように希釈して使用する。その結果、二酸化チタンによって分離された光合成細菌は化石サンゴによって吸着・沈殿されるが、その際に、光合成細菌を死滅させること無しに、対象とする水の汚濁を改善することができる。また、光合成細菌は、死滅しないので再生が可能であり、環境保全が可能となる。
【0015】
水溶液を散布し、散布してから所定期間経過した後に、対象とする水域の水の透明度を確認し、確認した結果に応じて散布を繰り返すことも好ましい。
【0016】
この場合、対象とする水域の水の透明度の確認が、目視による確認であることがより好ましい。
【0017】
化石サンゴとして、生の化石の粉末を用いることも好ましい。
【0018】
汚濁改善用散布剤の二酸化チタン、フィブロイン及び化石サンゴの含有重量比が、78:10:9であることも好ましい。
【0019】
汚濁改善用散布剤が、二酸化ケイ素、有機酸類及び塩化物をさらに含有していることも好ましい。
【0020】
汚濁改善用散布剤が、二酸化チタンに結合してアパタイト被覆を形成し、分離した光合成細菌を吸着させるためのリン酸化カルシウムをさらに含有していることも好ましい。
【0021】
本発明によれば、さらにまた、太陽光による光電効果により酸化還元反応を引き起こし光合成細菌を電荷分離するための、微細化された二酸化チタンと、酸化還元反応を促進させるためのフィブロインと、分離した光合成細菌を吸着して沈殿させるための化石サンゴとを含有する汚濁改善用散布剤の水溶液を、対象とする水域の水を抜いて乾燥させた状態の水域に散布し、その後、対象とする水域に水を導入する汚濁予防方法が提供される。
【0022】
対象とする水域に水を導入すると、散布された水溶液中の二酸化チタンが、太陽光による光電効果により酸化還元反応して光合成細菌を電荷分離する。フィブロインは、酸化還元反応を促進させる。分離された光合成細菌は化石サンゴに吸着されて沈殿する。本発明の汚濁改善用散布剤の水溶液は、二酸化チタンの含有量が、光合成細菌が死滅することなく電荷分離される含有量(製造者の試験によって規定されている)となるように希釈して使用する。その結果、二酸化チタンによって分離された光合成細菌は化石サンゴによって吸着・沈殿されるが、その際に、光合成細菌を死滅させること無しに、対象とする水の汚濁を改善することができる。また、光合成細菌は、死滅しないので再生が可能であり、環境保全が可能となる。
【0023】
汚濁改善用散布剤の二酸化チタン、フィブロイン及び化石サンゴの含有重量比が、78:10:9であることも好ましい。
【0024】
汚濁改善用散布剤が、二酸化ケイ素、有機酸類及び塩化物をさらに含有していることも好ましい。
【0025】
汚濁改善用散布剤が、二酸化チタンに結合してアパタイト被覆を形成し、分離した光合成細菌を吸着させるためのリン酸化カルシウムをさらに含有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、散布された水溶液中の二酸化チタンが、太陽光による光電効果により酸化還元反応して光合成細菌を電荷分離する。フィブロインは、酸化還元反応を促進させる。分離された光合成細菌は化石サンゴに吸着されて沈殿する。その結果、二酸化チタンによって分離された光合成細菌は化石サンゴによって吸着・沈殿されるが、その際に、光合成細菌を死滅させること無しに、対象とする水の汚濁を改善することができる。また、光合成細菌は、死滅しないので再生が可能であり、環境保全が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の汚濁改善用散布剤を用いた汚濁改善方法の流れを示すフローチャートである。
【
図2】本発明の汚濁改善用散布剤を用いた汚濁予防方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、本発明の第1の実施形態としての汚濁改善用散布剤について説明する。本実施形態における汚職改善用散布剤は、水溶液であり、例えば、湖沼、河川、貯水池、及び沿岸付近等の閉鎖性水域内、河川等の流れがある流域から流れ着いた先の滞留水域、河川と海洋とをつなげる運河の滞留水域、河口の滞留水域、浅瀬の海岸の滞留水域、湖の汽水域付近の滞留水域等の閉鎖性滞留水域内における水の汚濁を減少させるために用いられる。また、赤潮対策にも用いられる。
【0029】
本実施形態の水溶液は、対象とする閉鎖性水域の水の汚濁改善という特定の用途に用いる。この水溶液の概略的な組成は、以下の通りである。
水 :88~92重量%、
二酸化チタン :5~9重量%、
ヒドロキシアパタイト(リン酸化カルシウム):1~3重量%、
フィブロイン(シルク) :0.2重量%以下、
化石サンゴ :1重量%以下、
エタノール :0.1~2.0重量%、
シクロデキストリン(オリゴ糖) :0.2重量%以下。
【0030】
二酸化チタンは、太陽光及び太陽熱による光電効果によって酸化還元反応を引き起こし、閉鎖性水域における富栄養化された水に含まれるアオコ、藻類、シアノバクテリア類等の光合成細菌を死滅させることなく電荷分離させる。
【0031】
ヒドロキシアパタイト(リン酸化カルシウム)は、二酸化チタンに結合してその表面にアパタイト被覆を形成する。このアパタイト被覆は、分離した光合成細菌を死滅させることなく吸着する。
【0032】
フィブロイン(シルク)は、動物性繊維によるタンパク質であり、酸化還元反応を促進させる。また、分離した光合成細菌を死滅させることなく付着させる。また、赤潮の原因である海洋の「紅色植物性プランクトン」及び「餌になる有毒の植物性プランクトン」等にフィブロインが絡んで付着し、太陽光に基づく電荷により光電応答を引き起こして分離し増殖を抑制することが可能である。
【0033】
化石サンゴは、本実施形態においては、柔らかく、溶けやすい特性を有する生の化石の粉末からなり、吸着性が強い。このため、分離した光合成細菌を死滅させることなく吸着し、粒状のものや質量が大きくなったものは、沈殿させる。また、光が入射された際に酸化還元反応が促進され、溶出しているリンと結合してリン酸化カルシウムとなり、既に溶出しているリンイオンを結合固定することにより、水底の泥質改善を行うこともできる。
【0034】
以上説明したように、この汚濁改善用散布剤によれば、湖沼、河川、及び貯水池等の閉鎖性水域内における水に含まれる光合成細菌は、二酸化チタンが太陽光による光電効果により酸化還元反応することにより、死滅することなく電荷分離される。フィブロインは、この酸化還元反応を促進させ、分離された光合成細菌は化石サンゴに吸着されて沈殿する。ただし、この汚濁改善用散布剤の水溶液は、二酸化チタンの含有量が、光合成細菌が死滅することなく電荷分離される含有量となるように希釈して使用する。この含有量は、製造者の試験によって規定されており、例えば、希釈された水溶液に含有される二酸化チタンの含有量は、1g/L以下である。その結果、二酸化チタンによって分離された光合成細菌は化石サンゴによって吸着・沈殿されるが、その際に、光合成細菌を死滅させること無しに、対象とする水の汚濁を改善することができる。また、光合成細菌は、死滅しないので再生が可能であり、環境保全が可能となる。
【0035】
次に、本発明の第2の実施形態としての汚濁改善用散布剤について説明する。本実施形態における汚濁改善用散布剤は、粉末であり、これを水に溶解させて水溶液とし、例えば、湖沼、河川、貯水池、及び沿岸付近等の閉鎖性水域内、河川等の流れがある流域から流れ着いた先の滞留水域、河川と海洋とをつなげる運河の滞留水域、河口の滞留水域、浅瀬の海岸の滞留水域、湖の汽水域付近の滞留水域等の閉鎖性滞留水域内における水の汚濁を減少させるために用いられる。また、赤潮対策にも用いられる。
【0036】
本実施形態の汚濁改善用散布剤は、対象とする閉鎖性水域の水の汚濁改善という特定の用途に用いる。この散布剤の概略的な組成は、以下の通りである。
二酸化チタン :78重量%、
フィブロイン(シルク) :10重量%、
化石サンゴ : 9重量%、
二酸化ケイ素 : 1重量%、
有機酸類 : 1重量%、
塩化物 : 1重量%。
【0037】
このように、本実施形態においては、第1の実施形態において用いた汚濁改善用散布剤のうち、水、エタノール、ヒドロキシアパタイト(リン酸化カルシウム)、及びシクロデキストリン(オリゴ糖)を含んでおらず、二酸化チタン、フィブロイン、化石サンゴ、二酸化ケイ素、有機酸類及び塩化物を含んでいる。これにより、本実施形態の汚濁改善用散布剤は、粉末形態であり、重量の軽減、輸送費の削減、及び物性の安定性に基づく保存期限の延長が図ることができた。
【0038】
二酸化チタンは、太陽光及び太陽熱による光電効果によって酸化還元反応を引き起こし、閉鎖性水域における富栄養化された水に含まれるアオコ、藻類、シアノバクテリア類等の光合成細菌を死滅させることなく電荷分離させる。
【0039】
フィブロイン(シルク)は、動物性繊維によるタンパク質であり、化還元反応を促進させる。また、分離された光合成細菌を死滅させることなく付着させる。また、赤潮の原因である海洋の「紅色植物性プランクトン」及び「餌になる有毒の植物性プランクトン」等にフィブロインが絡んで付着し、太陽光に基づく電荷により光電応答を引き起こして分離し増殖を抑制することが可能である。
【0040】
化石サンゴは、本実施形態においては、柔らかく、溶けやすい特性を有する生の化石の粉末からなり、吸着性が強い。このため、分離された光合成細菌を死滅させることなく吸着し、粒状のものや質量が大きくなったものは、沈殿させる。また、光が入射された際に酸化還元反応が促進され、溶出しているリンと結合してリン酸化カルシウムとなり、水底の泥質改善を行うこともできる。
【0041】
二酸化ケイ素は、シリカゲルであり、複数の光触媒により酸化還元反応した水について、浮揚時間を延長させ沈殿時間を延長させる触媒として作用する。これにより、分離・付着時間が延長される。
【0042】
有機酸類は、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸等からなり、クエン酸回路効果を促進し、分離促進効果もある。また、水質によって乳酸菌のような発酵効果もあり、水質改善に有効である。さらに、pH調整効果もあり、フィブロインとの相性も良好である。
【0043】
塩化物は、臭化物イオンを69%以下に抑えたナトリウムからなる精製塩である。この塩化物は、無機物汚濁の原因が水中静電気による吸着であるため、これを電離するために用いている。塩化物を微量に配合することによって水生生物の除菌塩浴効果も得られる。なお、汚濁水域が明らかに有機物汚濁している場合は、有機酸類による電離を行うことが望ましい。アルカリ性のアオコ化した汚濁水域では、富栄養化が行われており、さえらに、塩化物が栄養塩になりかねないので、水域のpHや有機汚濁の状況次第で、有機酸の配合が検討される。
【0044】
以上説明したように、この汚濁改善用散布剤の水溶液によれば、湖沼、河川、及び貯水池等の閉鎖性水域内における水に含まれる光合成細菌は、二酸化チタンが太陽光による光電効果により酸化還元反応することにより、死滅することなく電荷分離される。フィブロインは、この酸化還元反応を促進させ、分離された光合成細菌は化石サンゴに吸着されて沈殿する。ただし、この汚濁改善用散布剤の水溶液は、二酸化チタンの含有量が、光合成細菌が死滅することなく電荷分離される含有量となるように希釈して使用する。この含有量は、製造者の試験によって規定されており、例えば、希釈された汚濁改善用水溶液に含有される二酸化チタンの含有量は、1g/L以下である。その結果、二酸化チタンによって分離された光合成細菌は化石サンゴによって吸着・沈殿されるが、その際に、光合成細菌を死滅させること無しに、対象とする水の汚濁を改善することができる。また、光合成細菌は、死滅しないので再生が可能であり、環境保全が可能となる。
【0045】
次に、対象とする閉鎖性水域における水の汚濁改善方法について説明する。この汚濁改善方法においては、第2の実施形態における汚濁改善用散布剤の水溶液を使用する。
図1は上述した組成の汚濁改善用散布剤を用いた、対象とする閉鎖性水域における水の汚濁改善方法の流れを示している。
【0046】
同図に示すように、まず、前述した汚濁改善用散布剤を水に溶解して汚濁改善用水溶液を用意する(ステップS1)。この場合、粉末の汚濁改善用散布剤1~1.2gを0.1~0.3リットルの水に溶解させた水溶液を作製する。なお、水溶液としては、最大、汚濁改善用散布剤10gを0.5~1リットルの水に溶解させて作製する。
【0047】
次いで、この汚濁改善用水溶液を対象とする閉鎖性水域の水に散布する(ステップS2)。この水溶液散布によって、二酸化チタンが、太陽光の光電効果により酸化還元反応して光合成細菌を死滅させることなく電荷分離させ、分離された光合成細菌は化石サンゴに吸着されて沈殿するが、散布された二酸化チタンによって閉鎖性水域の水は一時的に白濁状態となり、遮熱効果が得られる。即ち、この白濁によって、水中で光散乱が生じ、赤外線が30%以上カットされ、閉鎖性水域の水の蓄熱が一時的に抑止される。実際に、晴天で気温が40℃を超えた際に、1~2℃の水温低下が確認されている。
【0048】
その後、散布から所定期間経過したか否かを判別する(ステップS3)。所定期間としては、例えば30日を設定する。この所定期間は、4月~10月の場合であり、天候及び気温によって適宜設定される。理想的には、気温が25℃以上で晴天であり、5時間以上/日で太陽光の照射がある日が10日以上連続する場合を想定している。曇天や雨季は想定していない。ステップS3において、所定期間経過と判別した場合(YESの場合)、散布回数が所定回数に達したか否かを判別する(ステップS4)。
【0049】
ステップS4において、散布が所定回数に達しないと判別した場合(NOの場合)、ステップS2~S4の処理を繰り返す。散布が所定回数に達したと判別した場合(YESの場合)、次のステップS5において、その水域の水の透明度を観察し、透明度がOKかどうか判別する。なお、散布の所定回数としては、例えば夏季においては3回を設定する。この所定回数も季節、天候及び気温によって適宜設定される。
【0050】
ステップS5における透明度がOKかどうかの判別は、対象とする閉鎖性水域の水深50cm以内の水を容器で採取し、無色透明であるか、黄緑色透明であるか等を目視で確認することで行われる。ステップS5において、水の透明度がOKではないと判別した場合(NOの場合)、ステップS2~S5の処理を繰り返す。水の透明度がOKであると判別した場合(YESの場合)、この汚濁改善処理を終了する。
【0051】
以上説明したように、この汚濁改善方法によれば、散布された水溶液中の二酸化チタンが、太陽光による光電効果により酸化還元反応して光合成細菌を死滅させることなく電荷分離させる。フィブロインは、酸化還元反応を促進させる。分離された光合成細菌は化石サンゴに吸着されて沈殿する。このような水溶液が散布されるので、分離された光合成細菌は死滅せずに吸着・沈殿され、対象とする水の汚濁が改善される。また、光合成細菌は死滅することなく再生できるので、環境保全が可能となる。
【0052】
次に、対象とする閉鎖性水域における水の汚濁予防方法について説明する。
図2は前述した組成の第2の実施形態における汚濁改善用散布剤を用いた、対象とする閉鎖性水域における水の汚濁防止方法の流れを示している。
【0053】
同図に示すように、まず、前述した汚濁改善用散布剤を水に溶解して汚濁改善用水溶液を用意する(ステップS11)。この場合、粉末の汚濁改善用散布剤1~1.2gを0.1~0.3リットルの水に溶解させた水溶液を作製する。なお、水溶液としては、最大、汚濁改善用散布剤10gを0.5~1リットルの水に溶解させて作製する。
【0054】
次いで、この汚濁改善用水溶液を、水を抜いた対象とする閉鎖性水域に散布する(ステップS12)。
【0055】
その後、散布から所定期間経過したか否かを判別する(ステップS13)。所定期間としては、例えば30日を設定する。この所定期間は、4月~10月の場合であり、天候及び気温によって適宜設定される。理想的には、気温が25℃以上で晴天であり、5時間以上/日で太陽光の照射がある日が10日以上連続する場合を想定している。曇天や雨季は想定していない。ステップS13において、所定期間経過と判別した場合(YESの場合)、散布回数が所定回数に達したか否かを判別する(ステップS14)。
【0056】
ステップS14において、散布が所定回数に達しないと判別した場合(NOの場合)、ステップS12~S14の処理を繰り返す。散布が所定回数に達したと判別した場合(YESの場合)、次のステップS15において、その水域に水を導入する。なお、散布の所定回数としては、例えば夏季においては3回を設定する。この所定回数も季節、天候及び気温によって適宜設定される。
【0057】
ステップS15において、水を導入した後、この汚濁予防処理を終了する。
【0058】
以上説明したように、この汚濁予防方法によれば、対象とする水域に水を導入すると、散布された水溶液中の二酸化チタンが、太陽光による光電効果により酸化還元反応して導入された水に含まれる光合成細菌を死滅させることなく電荷分離させる。フィブロインは、酸化還元反応を促進させる。分離された光合成細菌は化石サンゴに吸着されて沈殿する。分離された光合成細菌は死滅せずに吸着・沈殿され、対象とする水の汚濁が改善される。また、光合成細菌は、死滅することなく再生できるので、環境保全が可能となる。
【実施例0059】
第2の実施形態における汚濁改善用散布剤を用いて元検体に混合(散布)して汚濁改善効果を試験した。元検体としては、長野県で採取の汚濁水、霞ケ浦で採取の汚濁水、及びで多摩川採取の汚濁水を混合したものを用いた。採取から2日経過している。この混合した汚濁水(元検体)8リットルに対して、第2の実施形態における汚濁改善用散布剤8gを直接的に混合して撹拌したものを検体A及び検体Bとした。元検体、汚濁改善用散布剤混合後の検体A及び汚濁改善用散布剤混合後の検体Bについて、透視度及び浮遊物質について測定した。なお、検体Aと検体Bとは、同一の検体について取得する位置のみが相違したものである。透視度については、「JIS K 0102 9の目視法」に基づいて測定し、浮遊物質については、「昭和46年環境庁告示第59号付表9」に基づいて測定した。測定は、株式会社ニチユ・テクノによって行われた。測定日時は2023年12月15日であった。測定結果を表1に示す。
【0060】
【0061】
表1から分かるように、元検体に対して、第2の実施形態の汚濁改善用散布剤を混合(散布)することによって、透明度が著しく改善されると共に、浮遊物質が大幅に減少した。
【0062】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。