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特開2024-152672楽器のネック及び楽器のネックのフレットボードの製造方法
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  • 特開-楽器のネック及び楽器のネックのフレットボードの製造方法 図1A
  • 特開-楽器のネック及び楽器のネックのフレットボードの製造方法 図1B
  • 特開-楽器のネック及び楽器のネックのフレットボードの製造方法 図2A
  • 特開-楽器のネック及び楽器のネックのフレットボードの製造方法 図2B
  • 特開-楽器のネック及び楽器のネックのフレットボードの製造方法 図3A
  • 特開-楽器のネック及び楽器のネックのフレットボードの製造方法 図3B
  • 特開-楽器のネック及び楽器のネックのフレットボードの製造方法 図4
  • 特開-楽器のネック及び楽器のネックのフレットボードの製造方法 図5
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  • 特開-楽器のネック及び楽器のネックのフレットボードの製造方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152672
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】楽器のネック及び楽器のネックのフレットボードの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G10D 3/06 20200101AFI20241018BHJP
   G10D 1/08 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G10D3/06
G10D1/08 100
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024063224
(22)【出願日】2024-04-10
(31)【優先権主張番号】20235414
(32)【優先日】2023-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(71)【出願人】
【識別番号】524137422
【氏名又は名称】フラックスウッド・オサケユフティオ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】コイヴロヴァ,ヘイッキ
(72)【発明者】
【氏名】ラテュ,ミカ
(72)【発明者】
【氏名】ウェルチ,ロデリック
【テーマコード(参考)】
5D002
【Fターム(参考)】
5D002AA05
5D002CC25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】使用時の特性が優れ、かつ信頼性高く製造しやすいの楽器のネック及び楽器のネックのフレットボードを製造する方法を提供する。
【解決手段】木材又は熱可塑性ポリマーと天然繊維とを含むプラスチック材料の複合材であることが好ましいネック(1)は、ネック本体(10)と、ネック本体に取り付けられたフレットボード(20)とによって空間(40)が区切られる。フレットボードは、フレットボードの第1の面(20a)に複数の横方向フレットスロット(21)と、ネック本体とフレットボードとの間に配置され、好ましくは炭素繊維又はガラス繊維である細長い支持バー(30)と、を備える。支持バーは、楽器のネックの長手方向に延びるように配向されている。フレットボードはまた、フレットボードの第2の面に複数の横方向の補強タブ(22)をさらに備える。補強タブはフレットスロットの下方に配置される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネック本体(10)、
前記ネック本体(10)に取り付けられたフレットボード(20)であって、前記ネック本体(10)と前記フレットボード(20)とが空間(40)を画定し、前記フレットボード(20)の第1の面(20a)に複数の横方向フレットスロット(21)を備えたフレットボード(20)、および
前記ネック本体(10)と前記フレットボード(20)との間に配置された細長い支持バー(30)であって、楽器のネック(1)の長手方向に延びるように配向された支持バー(30)、を備え、
前記フレットボード(20)はさらに、
前記フレットボード(20)の第2の面(20b)に設けられた複数の横方向の補強タブ(22)であって、前記フレットスロット(21)の下方に配置される補強タブ(22)を備えた、
楽器のネック(1)。
【請求項2】
前記横方向の補強タブ(22)は、前記横方向の補強タブ(22)の領域における前記フレットボード(20)の厚さ(t1)が、少なくとも前記領域外の前記フレットボード(20)の厚さ(t2)以上となるように形成されている
請求項1に記載の楽器のネック(1)。
【請求項3】
前記フレットボード(20)は、前記ネックの他の構造によって直接支持されていない領域において、前記フレットボード(20)の前記第2の面(20b)に前記横方向の補強タブ(22)を備える
請求項1に記載の楽器のネック(1)。
【請求項4】
前記細長い支持バー(30)が前記ネック本体(10)および/または前記フレットボード(20)の一体部分として形成されている
請求項1に記載の楽器のネック(1)。
【請求項5】
前記細長い支持バーは、前記ネック本体(10)および前記フレットボード(20)とは別部品として形成されている
請求項1に記載の楽器のネック(1)。
【請求項6】
前記ネック本体(10)は、前記楽器の前記ネック(1)の前記長手方向に配置された第1の位置決め要素(13)を備え、前記第1の位置決め要素(13)は、前記ネック本体(10)内の前記細長い支持バー(30)の座部を形成する
請求項5に記載の楽器のネック(1)。
【請求項7】
前記フレットボード(20)は、前記フレットボード(20)の前記長手方向に配置された前記フレットボード(20)の前記第2の面(20b)に第2の位置決め要素(23)を備え、前記第2の位置決め要素(23)は、前記フレットボード(20)内の前記支持バー(30)の座部を形成する
請求項5に記載の楽器のネック(1)。
【請求項8】
前記支持バー(30)は、Iビームとして形成されている
請求項1に記載の楽器のネック(1)。
【請求項9】
前記支持バー(30)は、炭素繊維またはガラス繊維を含む
請求項1に記載の楽器のネック(1)。
【請求項10】
前記フレットボード(20)は、熱可塑性ポリマーと天然繊維とを含むプラスチック材料化合物を含み、天然繊維の長さは0.5mm~5mmの範囲である
請求項1に記載の楽器のネック(1)。
【請求項11】
前記楽器がエレキギターである
請求項1に記載の楽器のネック(1)。
【請求項12】
(A)フレットボード(20)の複数のフレットスロット(21)に対応する複数の突起(51)を金型(50)の第1の表面(50a)上に備えた前記金型(50)を使用し、前記金型(50)は、前記突起(51)と少なくとも部分的に対応する複数の戻り止め(52)を前記金型(50)の第2の表面(50b)上にさらに備え、
(B)熱可塑性ポリマーと天然繊維とを含む複合溶融塊を、前記金型(50)の前記第1の表面(50a)と前記金型(50)の前記第2の表面(50b)との間の空間において前記金型(50)に導入して前記フレットボード(20)を形成し、前記天然繊維の配向が前記フレットボード(20)の長手方向において前記金型(50)の前記第1の表面(50a)と前記金型(50)の前記第2の表面(50b)の輪郭に沿うようにする
楽器のネック(1)のフレットボード(20)を製造する方法。
【請求項13】
前記金型(50)の前記第2の表面(50b)は、前記金型(50)の前記第1の表面(50a)の反対側に配置され、前記第2の表面(50b)と前記第1の表面(50a)とは互いに向かい合っている
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
各戻り止め(52)の領域における前記金型(50)の前記第1の表面(50a)と前記金型(50)の前記第2の表面(50b)との間の距離は、前記領域外における前記金型(50)の前記第1の表面(50a)と前記金型(50)の前記第2の表面(50b)との間の距離と少なくとも同じ大きさになるように配置される
請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記複合溶融塊は、天然繊維を20~60重量パーセント含み、より好ましくは天然繊維を35~55重量パーセント含む
請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器、特に弦楽器のネック、および楽器のネックのフレットボードを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
楽器は高精度の機器であり、使用するためには一定の音質を出す必要がある。特に、弦楽器のネックの構造は、楽器の音色を決める上で重要な役割を果たす。ネックは、弦の一方の端が固定されている楽器本体と、弦のもう一方の端が固定されている楽器のヘッドストックとを接続する。アンカーポイント間の距離によって弦の発音の長さ(sounding length)が調整される。弦がネックに押し付けられると、新しいアンカーポイントが作成され、弦が2つの振動部分に分割され、弦の発音の長さが効果的に変化する。ほとんどのネックには、正しい音符に対する正しい指の位置をユーザが判断できるようにするためのフレットが付いている。フレットにより、演奏者は楽器を演奏する際に許容できる音調(intonation)の基準を達成しやすくなり、したがって楽器の演奏性に影響を及ぼす。正しい音色を得るにはフレットの位置が重要であり、正しい位置から0.05mm以内でなければ楽器は使用できなくなる。
【0003】
バイオリンやギターなどの弦楽器のネックは、ほとんどの場合、木製の無垢(solid)ネックである。木材は重量の割に非常に硬い素材であり、その振動特性は一般に人間の耳に心地よいため、音響工学の観点からは優れた素材である。音の長さは適度に短く、木材は振動を適度に減衰させる。しかし、既知の木製ネックには重大な欠点がある。木材は、要求される正確な形状と仕上げの程度(たとえば、表面の望ましい粗さ)を実現するには手間がかかり、比較的時間がかかる。特に、木製ネックのフレットスロットを形成するには、まずフレットスロットを正確な位置に鋸で切り、次に特殊なやすりで仕上げて満足のいく最終結果を得る必要がある。湿度や温度による膨張と収縮のため、木材ではこのような正確な結果を得るのは困難である。また、どれだけ丁寧に製造しても、気孔による不都合な影響、樹脂ポケットの可能性、木目構造、および、木材の表面にある目に見えない凹凸が、完成した楽器をテストするときに初めて現れることがよくある。
【0004】
木製ネックの問題は、木材を模倣したポリマーで解決しようと試みられてきた。しかし、既知の解決策では、ネックは依然として、フレットを取り付ける前にフレットスロットを鋸で切断して仕上げるという同じ製造手順を必要とする。天然繊維複合材に使用されるマトリックスプラスチックは破損しやすいため、プラスチックの使用は、さらなる問題を引き起こす。つまり、鋸引きプロセスで作成された微小な破損が時間の経過とともに拡大し続け、最終的にネック部分が破損することになる。この欠陥が特に厄介なのは、破損が発生したときにすでにユーザが製品を購入しているため、事前の品質管理で欠陥に気付くことが難しいことである。
【0005】
フレットスロットの鋸引きはまた、フレットボードに使用される木材の種類によっては、おがくずは発がん性があり、吸入するとアスベスト症を引き起こす可能性があるため、深刻な健康被害をもたらす。そのため、ワークステーションではマスク(respirators)や高出力掃除機などの高価な保護具を使用する必要があり、生産コストが増加する。同様に、ポリマーを鋸引きする際にも健康上のリスクがある。ポリマーは摩擦によって溶けやすく、その結果、ネックがのこぎりに引っかかってネックが部屋を横切って飛んでいき、作業者に重大な被害を与える可能性があるからである。
【0006】
したがって、弦楽器のネックを改良することが明らかに求められている。また、楽器のネックの製造工程も多くの点で不十分である。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、上記欠点を解決し、使用時の特性が優れ、かつ信頼性高く製造しやすい楽器のネックを提供することである。これらの目的および他の目的は、独立請求項1に記載のネックおよび独立請求項12に記載の製造方法によって達成される。
【0008】
本発明の好ましい実施形態は従属請求項に開示されている。
【0009】
本発明のさらなる利点および詳細は、以下の説明で詳細に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
以下、本発明を、添付の図面を参照して、実施例によりさらに詳細に説明する。
【0011】
図1A図1Aは、本発明の第1の実施形態の断面の斜視図を示す。
図1B図1B図1Aの断面を示す。
図2A図2Aは、本発明の第2の実施形態の断面の斜視図を示す。
図2B図2B図2Aの断面を示す。
図3A図3Aは、本発明の第3の実施形態の断面の斜視図を示す。
図3B図3B図3Aの断面を示す。
図4図4は、フレットボードの実施形態の斜視図を示す。
図5図5は、フレットボードの実施形態の断面側面図を示す。
図6図6は、フレットボードの金型の実施形態の断面の分解図を示す。
図7図7は、楽器のネックのフレットボードを製造する方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施形態は単なる例である。明細書では複数の場所で「1つの(an)」実施形態について言及している場合もあるが、これは必ずしも、各参照が同じ実施形態を指していること、またはその特徴が単一の実施形態にのみ適用されることを意味するものではない。異なる実施形態の単一の特徴を組み合わせて、他の実施形態を提供することもできる。さらに、「備える(comprising)」および「含む(including)」という語は、記載された実施形態が言及された特徴のみで構成されるように限定するものではなく、そのような実施形態には具体的に言及されていない特徴/構造も含まれる可能性があるものとして理解されるべきである。実施形態の組み合わせは、その組み合わせが構造的または論理的な矛盾をもたらさない限り、すべて可能であるとみなされる。
【0013】
図1A図3Bは、楽器のネック1の実施形態を示す。ネック1は、ネック本体10と、ネック本体10に取り付けられたフレットボード20とを備え、ネック本体10とフレットボード20との間に空間40が画定され、フレットボード20には、フレットボード20の第1の面20aに複数の横方向フレットスロット21が設けられ、ネック本体10とフレットボード20との間に配置された細長い支持バー30とを備え、支持バー30は、楽器のネック1の長手方向に延びるように配向されている。フレットボード20は、さらに、フレットボード20の第2の面20bに複数の横方向の補強タブ22を備え、補強タブ22はフレットスロット21の下に配置される。この中空構成により、ネック1の構造的完全性および楽器の寿命を弱めることなく、ネック1の構造を軽量化できる。中空構造は弦の振動の共鳴器としても機能し、楽器の音を増幅する。ネック1が軽いと楽器の取り扱いも容易になり、演奏中の楽器の操作も容易になる。
【0014】
細長い支持バー30の主な機能は、ネックの剛性を増大させることによってネックを強化および補強することである。これは、ネック1が使用に耐えるのに十分な強度と、弦の張力によって加えられる力に耐えるのに十分な強度があるため、有利である。細長い支持バー30の二次的な機能は、弦の振動をヘッドストックおよびフレットからギターのボディに伝達することである。
【0015】
横方向の補強タブ22は、フレットスロット21の形成により材料の厚さが薄くなるフレットスロット21の領域でフレットボードを補強する。これにより、フレットボード20を過度に弱めることなく、また、ネック1に不必要な材料を追加することなく、ネック1の構造を中空にできる。
【0016】
細長い支持バー30と横方向の補強タブ22との組み合わせは、フレットの下の小型のサウンドポストとして機能する。弦が特定のフレットで停止すると、実際には、フレット(停止した弦)からネックの本体に、そして好ましくは楽器本体まで伸びる細長い支持バー30に沿って振動が伝達される。共鳴振動がネックから楽器本体に伝達されることにより、本体の共鳴応答が増加し、楽器の音の持続性と音色が強化される。
【0017】
ネック1は、図1A図3Bの実施形態に示すように、フレットボード20の真下にデュアルアクショントラスロッド(dual action trussrod)41、42をさらに備えていてもよい。デュアルアクショントラスロッド41、42は、例えば、スチールまたはチタンから作ることができ、フレットボード20の表面にわずかな縦方向の凹凸を作り、弦の張力を相殺し、フレットボード20上の弦の高さを微調整するために使用される。
【0018】
図1A図3Bの実施形態では、図5に示すように、横方向の補強タブ22は、横方向の補強タブ22の領域におけるフレットボード20の厚さt1が、前記領域外のフレットボード20の厚さt2以上となるように形成されている。この寸法設定により、フレットボード20がフレットスロット21の領域で弱くならないことが保証され、したがってフレットボード20の耐久性が向上し、結果としてネック1の耐久性も向上する。
【0019】
図1A図3Bの実施形態では、フレットボード20は、ネックの他の構造によって直接支持されていない領域において、フレットボード20の第2の面20bに横方向の補強タブ22を備える。言い換えれば、ネック本体10および/または細長い支持バー30と直接接触するフレットボードの領域には、横方向の補強タブ22が設けられていない。これにより、コンポーネントの接合形状が簡素化され、特にネック1の組み立てが容易になる。ネック1の有効な複合材料の厚さがこれらの領域でフレットボードを支えるため、ネック1が著しく弱くなることはない。
【0020】
図2A図3Bの実施形態では、細長い支持バー30は、ネック本体10および/またはフレットボード20の一体部分として形成されている。この構成により、ネック1の組み立てと構造が簡素化される。
【0021】
図1Aおよび図1Bの実施形態では、細長い支持バー30は、ネック本体10およびフレットボード20とは別個の部品として形成されている。これにより、細長い支持バー30に異なる材料を使用することが可能になり、ネック1の特性を調整する可能性が向上する。
【0022】
図1Aおよび図1Bの実施形態では、ネック本体10は、楽器のネック1の長手方向に配置された第1の位置決め要素13を備え、第1の位置決め要素13は、ネック本体10内の細長い支持バー30の座部を形成する。第1の位置決め要素13は、ネック本体10と細長い支持バー30との間の接触面積を増加させ、その結果、ネック1を組み立てる際の接着性が向上する。第1の位置決め要素13は、部品の位置決めを容易にし、ネック1の組み立てを容易にする。
【0023】
図1Aおよび図1Bの実施形態では、フレットボード20は、フレットボード20の第2の面20bにフレットボード20の長手方向に配置された第2の位置決め要素23をさらに備え、第2の位置決め要素23は、フレットボード20内の支持バー30の座部を形成する。第2の位置決め要素23は、フレットボード20と細長い支持バー30との間の接触面積を増加させ、その結果、ネック1を組み立てる際の接着性が向上する。第2の位置決め要素23は、部品の位置決めを容易にし、ネック1の組み立てを容易にする。
【0024】
図1Aおよび図1Bの実施形態では、支持バー30はIビームとして形成されている。
【0025】
ネック1の構成要素は、好ましくはエポキシ接着剤を使用して接着され、剛性の高いネック構造を形成する。
【0026】
フレットボード20の材料は、好ましくは、熱可塑性ポリマーと天然繊維とを含むプラスチック材料化合物から成り、天然繊維の長さは0.5mm~5mmの範囲である。天然繊維としては、例えば木材由来のセルロース、麻繊維、亜麻繊維などが挙げられる。この素材の選択により、木製の高級弦楽器に似た音色が得られる。
【0027】
好ましくは、プラスチック材料化合物の天然繊維は、フレットボード20の長手方向においてフレットボード20の輪郭に沿う。この向きにすると、繊維の向きが異なっている場合よりも、音がフレットボード内でより速く伝わる。これにより、楽器の音質が大幅に向上する。
【0028】
ネック本体の材質は、木材、または前述のプラスチック材料の複合材であることが好ましい。
【0029】
支持バー30の材質は、好ましくは炭素繊維またはガラス繊維である。
【0030】
好ましくは、楽器は弦楽器である。特に、前記弦楽器はエレキギターであり、前記ネック1はエレキギター用のネックであることが好ましい。
【0031】
図7は、楽器のネック1のフレットボード20を製造するための製造方法の実施形態のフローチャートを示す。この方法は、例えば、図1A図5に示すフレットボード20を製造するために実施できる。例えば、射出成形機は製造工程の実行に使用できる。
【0032】
この方法は、ステップAにおいて、フレットボード20の複数のフレットスロット21に対応する複数の突起51を金型50の第1の表面50a上に備えた金型50を使用し、金型50は、突起51に少なくとも部分的に対応する複数の戻り止め52を金型50の第2の表面50b上にさらに備え、ステップBにおいて、熱可塑性ポリマーおよび天然繊維を含む複合溶融塊を、金型50の第1の表面50aと金型50の第2の表面50bとの間の空間において金型50に導入してフレットボード20を形成し、天然繊維の配向がフレットボード20の長手方向において金型50の第1の表面50aおよび金型50の第2の表面50bの輪郭に沿うようにする。
【0033】
表面50a、50bの輪郭に沿った天然繊維は、フレットボード20の強度を向上させ、フレットボード20の音質を向上させる。これにより、フレットスロット21と横方向の補強タブ22を備えたフレットボード20を製造することも可能となり、フレットボード20の天然繊維が損なわれることはない。従来知られている解決策では、フレットスロットの領域で繊維が切断されるため、フレットボード20の構造的完全性と音質が損なわれる。
【0034】
この方法はまた、フレットボード20の製造のスループット時間(throughput time)を大幅に短縮し、製造の精度を向上させる。この方法は、製造業者の労働条件を改善し、製造プロセスの労働安全性も向上させる。
【0035】
フローチャートに示す手順では、フレットボード20の金型50が必要となる。金型50の実施形態を図6に示す。金型50が所定の位置に配置されたら、金型50の一端から複合溶融塊を金型50に充填して、金型50内の空隙を埋めることができる。金型50が充填されたら、金型50を開いて金型50からフレットボード20を取り出す前に、フレットボード20を硬化させる。
【0036】
複合溶融体を金型50の一端から注入することにより、複合溶融体の繊維がフレットボード20の長手方向に整列し、繊維が金型50の第1の表面50aおよび第2の表面50bの輪郭に沿うようになる。
【0037】
好ましくは、金型50の第2の表面50bは、金型50の第1の表面50aの反対側に配置され、第2の表面50bと第1の表面50aとは互いに向かい合う。
【0038】
好ましくは、各戻り止め52の領域における金型50の第1の表面50aと金型50の第2の表面との間の距離は、前記領域外における金型50の第1の表面50aと金型50の第2の表面50bとの間の距離と少なくとも同じ大きさになるように配置される。この寸法設定により、フレットボード20の特性が意図したとおりになり、フレットボード20の硬化が均一になることが保証される。
【0039】
好ましくは、複合溶融体は、天然繊維を20~60重量パーセント含み、より好ましくは天然繊維を35~55重量パーセント含む。この範囲では、複合溶融体の流動特性はフレットボード20の製造に最も適している。
【0040】
上記の説明および添付の図は、本発明を例示することのみを意図していることは理解されるべきである。本発明は、その範囲から逸脱することなく変更および修正できることは、当業者には明らかであろう。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】