(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152674
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】二重層MEMSデバイスおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
B81B 3/00 20060101AFI20241018BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20241018BHJP
G01P 15/125 20060101ALI20241018BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B81B3/00
B81C1/00
G01P15/125 Z
H01L29/84 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024063243
(22)【出願日】2024-04-10
(31)【優先権主張番号】23167967
(32)【優先日】2023-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】ペッテリ・キルピネン
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ピューサ
(72)【発明者】
【氏名】アンッティ・イーホラ
(72)【発明者】
【氏名】アルッティ・トーケリ
【テーマコード(参考)】
3C081
4M112
【Fターム(参考)】
3C081AA07
3C081AA18
3C081BA11
3C081BA30
3C081BA44
3C081BA48
3C081BA75
3C081BA77
3C081CA03
3C081CA14
3C081CA20
3C081CA32
3C081DA03
3C081DA04
3C081DA26
3C081EA02
3C081EA03
4M112AA02
4M112BA07
4M112CA22
4M112DA03
4M112DA04
4M112DA06
4M112DA18
4M112EA03
4M112EA04
4M112EA06
4M112FA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、微小電気機械システム(MEMS)デバイスおよびそのようなMEMSデバイスを製造する方法に関する。
【解決手段】MEMSデバイスは、下から上への順に、ハンドル層と、第1の電気絶縁層と、堆積多結晶シリコン(poly-Si)の層をパターニングすることによって形成される第1の素子層と、第2の電気絶縁層と、単一結晶シリコン(mono-Si)の層をパターニングすることによって形成される第2の素子層と、キャップ層とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小電気機械システム(MEMS)デバイスであって、下から上への順に、
少なくとも1つのキャビティおよび少なくとも1つの懸架構造を備えるハンドル層と、
第1の電気絶縁層と、
堆積多結晶シリコン(poly-Si)の層をパターニングすることによって形成される第1の素子層であって、前記第1の素子層内の少なくとも1つの構造要素が前記少なくとも1つの懸架構造によって懸架され、前記少なくとも1つの構造要素が任意選択的に少なくとも1つの振動要素を備える、第1の素子層と、
第2の電気絶縁層と、
前記第1の素子層の上方に可動に懸架された少なくとも1つの振動要素を備える第2の素子層であって、単一結晶シリコン(mono-Si)の層をパターニングすることによって形成される、第2の素子層と、
キャップ層と、を備え、
前記ハンドル層、前記第1の素子層、前記第2の素子層、および前記キャップ層、ならびに、前記ハンドル層と前記第1の素子層とを接合する前記第1の電気絶縁層、および前記第1の素子層と前記第2の素子層とを接合する前記第2の電気絶縁層は、前記第2の素子層内の前記少なくとも1つの振動要素と、少なくとも1つの静止電極と、前記少なくとも1つの振動要素の動きを検出および/または引き起こすための少なくとも1つの可動電極とを備える筐体の壁を形成するように構成されており、前記少なくとも1つの静止電極は前記第1の素子層内にある、微小電気機械システム(MEMS)デバイス。
【請求項2】
前記電気絶縁層は、前記第1の素子層の構造要素を前記第2の素子層の構造要素に、および/または、前記キャップ層内に設けられた電気接続部に電気的に結合するために、前記第1の素子層から前記第2の素子層まで延在する少なくとも1つの多結晶シリコン(poly-Si)フィードスルーを備える、請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項3】
前記第2の電気絶縁層内の電気絶縁材料は、前記少なくとも1つのpoly-Siフィードスルーが前記第1の素子層および前記第2の素子層のそれぞれの前記構造要素間の唯一の機械的接点であるように、前記少なくとも1つのpoly-Siフィードスルーの周りで除去されている、請求項2に記載のMEMSデバイス。
【請求項4】
前記第1の素子層は、前記第2の電気絶縁層の厚さよりも小さい距離にわたって前記第2の素子層に向かって延在する少なくとも1つのストッパ構造を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のMEMSデバイス。
【請求項5】
前記MEMSデバイスは、前記第2の素子層と前記キャップ層との間に金属接合層をさらに備え、前記金属接合層は、前記筐体の前記壁の一部を形成するようにさらに構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のMEMSデバイス。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載のMEMSデバイスを製造するための方法であって、
mono-Siハンドルウェハから前記ハンドル層を形成するステップであって、前記ハンドル層を形成する前記ステップは、少なくとも1つのキャビティを形成し、同時に、前記ハンドル層の第1の面上に前記少なくとも1つの懸架構造を形成することと、前記ハンドル層の前記第1の面を第1の電気絶縁層によって被覆することとを含む、前記ハンドル層を形成するステップと、
mono-Siウェハ上に第2の電気絶縁層を形成するステップと、
前記第2の電気絶縁層をパターニングするステップと、
前記パターニングされた第2の電気絶縁層の上にpoly-Si層を堆積させるステップと、
前記第1のpoly-Si層から前記第1の素子層を形成するステップであって、前記第1の素子層を形成する前記ステップは、前記第1のpoly-Si層を第1の厚さまで薄くすることと、ドライエッチングによって前記第1の素子層を貫通して延在する複数の第1のトレンチを形成することとを含む、前記第1の素子層を形成するステップと、
前記ハンドル層の前記第1の面上で前記第1の電気絶縁層上に前記第1の素子層を融着接合するステップと、
前記mono-Siウェハから前記第2の素子層を形成するステップであって、前記第2の素子層を形成する前記ステップは、前記mono-Siウェハを第2の厚さまで薄くすることと、任意選択的に、前記第2のmono-Siウェハ内に少なくとも1つの陥凹領域を形成することと、前記第2のmono-Siウェハを貫通して延在する複数の第2のトレンチをドライエッチングすることとを含む、前記第2の素子層を形成するステップと、
フッ化水素酸(HF)エッチングによって前記第1の電気絶縁層および前記第2の電気絶縁層の厚さまでわたって前記第1の電気絶縁層および前記第2の電気絶縁層の露出部分を除去することによって、前記第1の素子層および前記第2の素子層の構造要素を解放するステップと、
前記キャップ層を前記第2の素子層の上に接合することによって、構造要素を前記筐体内に封入するステップと、
を含む、方法。
【請求項7】
前記第2の電気絶縁層をパターニングする前記ステップは、前記第2の電気絶縁層の厚さ全体にわたって前記第2の電気絶縁層の1つまたは複数の部分を除去することを含み、
前記poly-Si層を堆積させるステップは、前記第2の電気絶縁層の前記除去された部分を堆積されたpoly-Siで充填することによって、前記第1の素子層および前記第2の素子層の1つまたは複数の構造要素を電気的に結合するために、前記第1の素子層から前記第2の電気絶縁層を通じて前記第2の素子層まで延在する1つまたは複数のpoly-Siフィードスルーを生成させる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の電気絶縁層をパターニングする前記ステップは、前記第2の電気絶縁層の厚さの一部にわたって前記第2の電気絶縁層の1つまたは複数の部分を陥凹させることを含み、
poly-Si層を堆積させる前記ステップは、さらに、前記第2の電気絶縁層の前記陥凹した1つまたは複数の部分を充填することによって、前記第2の素子層に向かって延在する1つまたは複数のpoly-Siストッパ構造を生成させる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のpoly-Si層を第1の厚さまで薄くした後で、かつ前記第1のデバイスを通じて延在する複数の第1のトレンチを形成する前に、前記mono-Siウェハ内に少なくとも1つの陥凹領域を形成するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
請求項5に従属する場合、
金属接合層によって前記第2の素子層を前記キャップ層と結合するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMSデバイスおよびMEMSデバイスを生産する方法に関する。より詳細には、本発明は、2つの素子層を備えるMEMSデバイス、および二重層MEMSデバイスを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンベースの技術を使用して製造される微小電気機械システム(MEMS)デバイスが普及している。MEMSデバイスの典型的な用途は、加速度および角速度のうちの少なくとも一方を検出する慣性センサである。このタイプのMEMSデバイスは、消費者、自動車および工業用途に広く使用されている。
【0003】
MEMSデバイスにおける静電容量検知は、2つの電極間の距離の変化によって引き起こされる静電容量の変化を検出することによって実施される。典型的には、静電容量は、可動電極と1つまたは複数の静止電極との間で検知される。
【0004】
慣性検知のための典型的な静電容量MEMSデバイスでは、静止電極が、ハンドルまたはキャップウェハなどの基板上に設けられる。例えば、基板ウェハの表面上に金属電極を設けられ得る。MEMSデバイスは、様々な応力源に晒される。部品のパッケージング中、成形などの製造方法のいくつかのステップが、基板に圧力を加える。異なる材料は異なる熱特性を有し、したがって、基板はまた、MEMSデバイスパッケージ内の材料の熱膨張の差に起因して圧力を受ける可能性がある。MEMSデバイスはまた、基板の形状の変化を引き起こす様々な外力を受ける可能性がある。MEMSデバイスが使用される環境は、大きな温度変化、振動、衝撃などを受ける可能性があり、それらすべてがMEMSデバイスに対する応力を引き起こす。静止電極が基板に取り付けられると、応力によって引き起こされる基板の形態の任意の変化もまた、静止電極とそれぞれの可動電極との間の距離に影響を及ぼし得る。このため、静電容量検知の精度が低下するおそれがある。
【0005】
以下の説明では、慣性MEMSセンサおよびその製造上の問題を参照する。しかしながら、本開示は、一般に、他のタイプのMEMSデバイスにも適用される。例えば、MEMSデバイスは、以下の構造、すなわち、加速度計、ジャイロスコープ、受振器、傾斜計および共振器のうちの1つまたは複数を、単一で、または互いに組み合わせて含んでもよい。また、MEMSデバイスは、MEMSアクチュエータであってもよい。
【0006】
先行技術の説明
米国特許第10830590号明細書は、単結晶シリコンから作成される機械的機能層および電極デバイスを含む基板を有する微小電気機械センサを開示している。導電性配線層が、アルミニウムまたはタングステン配線を有する。
【0007】
米国特許出願公開第20200156930号明細書は、中空体を有する両面静電容量検知MEMSデバイスを開示している。この装置は、ポリシリコン(poly-Si)構造をエピタキシャル成長させることによって製造される。
【0008】
米国特許第9463976号明細書は、各々が多層半導体構造の異なる層内にある垂直に積層された慣性トランスデューサ素子を有する集積MEMSデバイスを生成するための垂直積層MEMSデバイスウェハアセンブリを開示している。異なるMEMSトランスデューサ構造は、周囲環境および互いから気密に遮蔽される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第10830590号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第20200156930号明細書
【特許文献3】米国特許第9463976号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
目的は、素子層間のより広い間隙およびより小さい信号経路を有するMEMSデバイスのロバスト性を改善しながら、MEMSデバイスの材料コストを低減するという問題を解決するための方法および装置を提供することである。本発明の目的は、請求項1に記載のMEMSデバイスによって達成される。本発明の目的は、請求項6に記載の製造方法によってさらに達成される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の好ましい実施形態が、従属請求項に開示されている。
【0012】
第1の態様によれば、微小電気機械システム(MEMS)デバイスが提供される。MEMSデバイスは、下から上への順に、i)少なくとも1つのキャビティおよび少なくとも1つの懸架構造を備えるハンドル層と、ii)第1の電気絶縁層と、iii)堆積多結晶シリコン(poly-Si)の層をパターニングすることによって形成される第1の素子層であって、第1の素子層内の少なくとも1つの構造要素が少なくとも1つの懸架構造によって懸架され、少なくとも1つの構造要素が任意選択的に少なくとも1つの振動要素を備える、第1の素子層と、iv)第2の電気絶縁層と、v)第1の素子層の上方に可動に懸架された少なくとも1つの振動要素を備える第2の素子層であって、単一結晶シリコン(mono-Si)の層をパターニングすることによって形成される、第2の素子層と、vi)キャップ層とを備える。
【0013】
ハンドル層、第1の素子層、第2の素子層、およびキャップ層、ならびに、ハンドル層と第1の素子層との間の第1の電気絶縁層、および第1の素子層と第2の素子層との間の第2の電気絶縁層は、少なくとも1つの振動要素と、少なくとも1つの静止電極と、少なくとも1つの振動要素の動きを検出および/または引き起こすための少なくとも1つの可動電極とを備える筐体の壁を形成するように構成されている。
【0014】
いくつかの態様によれば、第1の素子層は、第1の素子層の構造要素を第2の素子層の構造要素に、および/または、キャップ層内に設けられた電気接続部に電気的に結合するために、第1の素子層から第2の素子層まで延在する少なくとも1つの多結晶シリコン(poly-Si)フィードスルーを備える。
【0015】
いくつかの態様によれば、第2の電気絶縁層内の電気絶縁材料は、少なくとも1つのpoly-Siフィードスルーが第1の素子層および第2の素子層のそれぞれの構造要素間の唯一の機械的接点であるように、少なくとも1つのpoly-Siフィードスルーの周りで除去されている。
【0016】
いくつかの態様によれば、第1の素子層は、第2の電気絶縁層の厚さよりも小さい距離にわたって第2の素子層に向かって延在する少なくとも1つのストッパ構造を備える。
【0017】
いくつかの態様によれば、MEMSデバイスは、第2の素子層とキャップ層との間に金属接合層をさらに備え、金属接合層は、筐体の上記壁の一部を形成するようにさらに構成されている。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、MEMSデバイスを製造するための方法が提供される。製造方法は、i)mono-Siハンドルウェハからハンドル層を形成するステップであって、ハンドル層を形成するステップは、少なくとも1つのキャビティを形成し、同時に、ハンドル層の第1の面上に少なくとも1つの懸架構造を形成することと、ハンドル層の第1の面を第1の電気絶縁層によって被覆することとを含む、ハンドル層を形成するステップと、ii)mono-Siウェハ上に第2の電気絶縁層を形成するステップと、iii)第2の電気絶縁層をパターニングするステップと、iv)パターニングされた第2の電気絶縁層の上にpoly-Si層を堆積させるステップと、v)第1のpoly-Si層から第1の素子層を形成するステップであって、第1の素子層を形成するステップは、第1のpoly-Si層を第1の厚さまで薄くすることと、ドライエッチングによって第1の素子層を貫通して延在する複数の第1のトレンチを形成することとを含む、第1の素子層を形成するステップと、vi)ハンドル層の第1の面上で第1の電気絶縁層上に第1の素子層を融着接合するステップと、vii)mono-Siウェハから第2の素子層を形成するステップであって、第2の素子層を形成するステップは、mono-Siウェハを第2の厚さまで薄くすることと、任意選択的に、第2のmono-Siウェハ内に少なくとも1つの陥凹領域を形成することと、第2のmono-Siウェハを貫通して延在する複数の第2のトレンチをドライエッチングすることとを含む、第2の素子層を形成するステップと、viii)フッ化水素酸(HF)エッチングによって第1の電気絶縁層および第2の電気絶縁層の厚さまでわたって第1の電気絶縁層および第2の電気絶縁層の露出部分を除去することによって、第1の素子層および第2の素子層の構造要素を解放するステップと、ix)キャップ層を第2の素子層の上に接合することによって、構造要素を筐体内に封入するステップとを含む。
【0019】
いくつかの態様によれば、第2の電気絶縁層をパターニングするステップは、第2の電気絶縁層の厚さ全体にわたって第2の電気絶縁層の1つまたは複数の部分を除去することを含み、poly-Si層を堆積させるステップは、第2の電気絶縁層の上記除去された部分を堆積されたpoly-Siで充填することによって、第1の素子層および第2の素子層の1つまたは複数の構造要素を電気的に結合するために、第1の素子層から第2の電気絶縁層を通じて第2の素子層まで延在する1つまたは複数のpoly-Siフィードスルーを生成させる。
【0020】
いくつかの態様によれば、第2の電気絶縁層をパターニングするステップは、第2の電気絶縁層の厚さの一部にわたって第2の電気絶縁層の1つまたは複数の部分を陥凹させることを含み、poly-Si層を堆積させるステップは、さらに、第2の電気絶縁層の上記陥凹した1つまたは複数の部分を充填することによって、第2の素子層に向かって延在する1つまたは複数のpoly-Siストッパ構造を生成させる。
【0021】
いくつかの態様によれば、方法は、第1のpoly-Si層を第1の厚さまで薄くした後で、かつ第1のデバイスを通じて延在する複数の第1のトレンチを形成する前に、mono-Siウェハ内に少なくとも1つの陥凹領域を形成するステップをさらに含む。
【0022】
いくつかの態様によれば、方法は、金属接合層によって第2の素子層をキャップ層と接合するステップをさらに含む。
【0023】
本発明は、MEMSデバイス内に2つの懸架素子層を有するという着想に基づく。これに関連して、本発明者らは、MEMSデバイスの機能における役割を有する要素を構造要素と呼ぶ。これらの構造要素は、支持構造、電気接続部、および静止電極など、固定されてもよい。第1の素子層内の構造要素は、アンカーなどの剛性懸架構造によって、ハンドル層に懸架され、および/または第2の素子層を介してキャップ層に懸架される。第1の素子層は、静止電極として使用される構造要素を備え、第1の素子層は、電気的ルーティングにも使用され得る。両方の素子層は、可動電極として使用される振動質量および/または可動電極に結合される振動質量を含むことができる。第2の素子層はまた、静止電極を備えてもよい。当該技術分野において知られているように、振動質量の懸架は、典型的には、振動質量の1つまたは複数の所望の運動方向を可能にするが、振動質量の任意の望ましくない運動方向を抑制するように設計されたばねおよび梁などの可撓性懸架構造を含む。一方の素子層は単結晶シリコン(mono-Si)から作成され、他方の素子層は多結晶シリコン(poly-Si)から作成される。素子層上のパターンは、素子層内の構造要素を決定するために、エッチング、好ましくは深反応性イオンエッチング(DRIE)などのようなドライエッチングを利用するシリコン・オン・インシュレータSOIプロセスを使用して製造することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、2素子層構造が、応力変形に対して堅牢である機械的に安定した構造をMEMSデバイス内に提供することによってMEMSデバイスの精度を改善し、一方、本発明のデバイス構造はまた、高い設計柔軟性および小さいダイ面積を容易にするという利点を有する。移動電極と静止電極の両方を基板(ハンドル層およびキャップ層)から機械的に分離して実装することができるため、基板に影響を及ぼす応力は、素子層内の構造要素の幾何学的形状の変化を引き起こさない。応力に対する感受性は、両方の素子層を横方向に共通のアンカーロケーション上で懸架することによってさらに改善することができる。いくつかの実施形態によれば、二重シリコン素子層設計は、素子層内の振動要素および/または他の構造要素の穿孔を必要とせずに設計および製造することができ、したがって、そのような穿孔によって引き起こされる静電容量および質量の減少を回避し、それにより、より高い静電容量およびそれによるMEMSデバイスの改善された感受性を促進する。poly-Si素子層は、mono-Si素子層と比較した場合にいくつかの技術的特性が劣ると考えられる場合があるが、poly-Si素子層は、ほとんどの場合、poly-Si層の厚さに応じて製造がより安価である。したがって、本発明の実施形態によるMEMSデバイスは、2つのmono-Si素子層を含むMEMSデバイスよりもコスト効率が高い。さらに、2つの異なるシリコン層の特性は、mono-Si素子層のみの使用と比較して改善された設計自由度を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
以下において、添付の図面を参照しながら、好ましい実施形態に関連して、本発明をより詳細に説明する。
【
図1】第1の実施形態によるMEMSデバイスの断面図である。
【
図2】第2の実施形態によるMEMSデバイスの断面図である。
【
図3】第3の実施形態によるMEMSデバイスの断面図である。
【
図4】第4の実施形態によるMEMSデバイスの断面図である。
【
図5a】MEMSデバイスの製造方法を示す図である。
【
図5b】MEMSデバイスの製造方法を示す図である。
【
図5c】MEMSデバイスの製造方法を示す図である。
【
図5d】MEMSデバイスの製造方法を示す図である。
【
図5e】MEMSデバイスの製造方法を示す図である。
【
図5f】MEMSデバイスの製造方法を示す図である。
【
図5g】MEMSデバイスの製造方法を示す図である。
【
図5h】MEMSデバイスの製造方法を示す図である。
【
図5i】MEMSデバイスの製造方法を示す図である。
【
図5j】MEMSデバイスの製造方法を示す図である。
【
図6a】製造方法におけるストッパ構造の生成を示す図である。
【
図6b】製造方法におけるストッパ構造の生成を示す図である。
【
図6c】製造方法におけるストッパ構造の生成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
単結晶シリコンとしても知られる単一結晶シリコン、mono-Siは、シリコンベースの個別部品および集積回路の周知のベース半導体材料である。mono-Siは、全体が固体の結晶格子が連続したケイ素からなる。mono-Siは、その優れた機械的強度および弾性、ならびに多種多様な利用可能な標準プロセスのために、堅牢なMEMSデバイスのための第1の選択の材料である。MEMSデバイスでは、mono-Si層が導体として使用され、その目的のために導電性にするようにドープされることは、当該技術分野で周知されている。例えば、ホウ素がドープされたP型シリコンウェハが一般的であるが、リン(P)がドープされたN型ウェハもいくつかの特別な用途で使用される。
【0027】
これに関連して、多結晶シリコンまたは複結晶シリコンとしても知られるポリシリコン、poly-Siは、晶子として知られる小さい結晶からなるシリコンを指す。mono-Siと同様に、ポリシリコンもドープされて導電性になる。Poly-Siは、相互に異なる配向の結晶を含む。したがって、その弾性定数は、mono-Siの場合のように幾何学的形状および/または方向に依存しない。Poly-Siは、チョクラルスキー法(CZ)で成長させたmono-Si結晶のように酸素を含まない。さらに、poly-Siの特性は調整がより容易である。例えば、ドーピングによるその導電性の調整が容易であり、特に高濃度ドープpoly-Siは、mono-Siよりも達成が容易である。
【0028】
これに関連して、シリカとしても知られる二酸化ケイ素は、化学式SiO2を有するケイ素の酸化物である。二酸化ケイ素は電気絶縁体である。
【0029】
以下の説明では、便宜上、上方向がz軸正方向を指し、下方向がz軸負方向である。これらの方向は、MEMSデバイスの使用位置を限定するものとして理解されるべきではないことを理解されたい。単純化されたMEMSデバイスは、アンカー、梁、電気接点、質量および/またはリミッタなどの限られた数の構造要素のみを有し、多くの場合、各々1つのみを有する。実際のMEMSデバイスは、任意の組み合わせでそのような構造要素のいずれかのうちの2つ以上を含むことができることが当業者によって理解される。
【0030】
図1は、第1の実施形態によるMEMSデバイスの断面を示す。図面は原寸に比例しない。
【0031】
MEMSデバイス100の底部から出発して、第1の層は、mono-Siから作成されているハンドル層10である。ハンドル層10は、少なくとも1つのキャビティ11を備える。キャビティ11内には、アンカーとしても知られる少なくとも1つの懸架構造12が存在する。少なくとも1つのキャビティ11は、好ましくは、壁13がハンドル層10内で少なくともその外周に設けられるように、ハンドル層10の側面に達しないような受け皿として形成される。少なくとも1つのキャビティ11は、キャビティ11の底部からハンドル層10の上方の第1の素子層20に向かって距離を増大させる。この距離の増大は、第1の素子層20内の振動要素がハンドル層10と機械的に接触するリスクを低減し、ハンドル層10と、重ね合わされた第1の素子層20内の構造要素との間の望ましくない寄生容量を低減する。
【0032】
ハンドル層10と第1の素子層20との間には、電気絶縁層15がある。犠牲電気絶縁層15の大部分は製造プロセス中に除去されるが、
図1に見られるように、電気絶縁層15の一部はハンドル層10と第1の素子層20との間に残る。電気絶縁層は、好ましくは、二酸化ケイ素から作成される。電気絶縁層15は、ハンドル層10と第1の素子層20との間の接合を容易にし、MEMSデバイスのすべての構造要素が封入される筐体の壁の一部を形成し、構造を除去される前に製造プロセス中に支持および保護しながら、製造中に犠牲層としても使用される。
【0033】
poly-Siから作成されている第1の素子層20は、ハンドル層10に設けられた懸架構造12上に、および/または、キャップ層40上に懸架を伝達する第2の素子層30に設けられた懸架構造32によって機械的に懸架された構造要素を含む。第1の素子層20上の構造要素は、固定されていてもよく、または振動してもよい。振動構造要素は、圧力、加速度または角速度などの物理的現象に応答して動くように構成された要素を指す。poly-Si層の厚さは、その中の構造要素の種類によって設定される要件に基づいて設計することができる。第1の素子層10上の構造要素は、有利には、例えば、検知または駆動目的のいずれかに使用され得る静電容量電極対の電極など、固定または振動要素21として使用される。第1の素子層10上の構造要素の別の可能な用途は、信号ルーティングである。これは、第2の素子層30上の振動要素31とキャビティ11との間を移動することができる信号担持梁24によって示されている。振動要素31と信号担持梁24との間の望ましくない静電容量を低減するために、信号担持梁24は、好ましくは、両者の間の重複面積が小さくなるように横(x軸)寸法が狭くされる。
【0034】
第1の素子層20は、好ましくは、第1の素子層20の構造要素を取り囲み、MEMSデバイスの構造要素を備える筐体の外壁の一部を形成するフレーム部分23を備える。
【0035】
第1の素子層20上の構造要素は、別個の懸架構造12、32によってハンドル層10に対して、かつ/または第2の素子層30を介してキャップ層40に対して支持されるのみであるため、第1の素子層20上の構造要素は、MEMSデバイス100に影響を及ぼす応力の影響を受けにくく、応力に起因するキャップ層40またはハンドル層10の変形は、第1の素子層20上の構造要素の変形または変位を少なくし、したがって、MEMSデバイス100に影響を及ぼす機械的応力に起因して第1の素子層の構造要素と第2の素子層30の構造要素との間に生じる距離の変化が少ない。
【0036】
第1の素子層20の上方には、MEMSデバイス100の振動要素31を備える第2の素子層30がある。振動運動を促進するために、第2の素子層30を第1の素子層20よりも厚くすることによって、振動要素31の質量を増大させることができる。
【0037】
第1の素子層20と第2の素子層30との間には、電気絶縁層25が存在する。電気絶縁層25の大部分は製造プロセスにおいて除去されるが、
図1に見られるように、電気絶縁層25の一部は第1の素子層20と第2の素子層30との間に残る。電気絶縁層は、好ましくは、二酸化ケイ素から作成される。電気絶縁層25は、第1の素子層20と第2の素子層30との間の接合を容易にし、MEMSデバイスのすべての構造要素が封入される筐体の壁の一部を形成し、構造を除去される前に製造プロセス中に支持および保護しながら、製造中に犠牲層としても使用される。
【0038】
第1の素子層20から延在するpoly-Siフィードスルー28は、第1の素子層20と第2の素子層30との間の電気絶縁層25を越えた電気接続を提供し、第1の素子層20との間で電気信号を搬送することを可能にする。
【0039】
第2の素子層30は、mono-Siから作成され、第1の素子層20を介して、ハンドル層10に設けられた懸架構造12上に、および/または、キャップ層40上に懸架された第2の素子層30内の剛性懸架構造32によって間接的に懸架された振動要素を含む。当該技術分野で知られているように、振動要素31の移動を可能にするために、その懸架はばねおよび/または可撓性梁(図示せず)によって実施される。
【0040】
第2の素子層30は、好ましくは、第2の素子層30の構造要素を取り囲み、MEMSデバイス100の構造要素を備える筐体の外壁の一部を形成するフレーム部分33を備える。
【0041】
第1の素子層20および第2の素子層30の構造部分は、ハンドルウェハ10と、第2の素子層30の上に接合されるキャップ層40との間の筐体内に封入される。ハンドルウェハ10の壁13、第1の素子層20および第2の素子層30のフレーム部分23、33は、絶縁体層15、25とともに筐体の壁を形成する。
【0042】
図示の例では、キャップ層40は、キャップ層40の底面上に、支持構造32を機械的および電気的に結合する金属化接点41を備える。任意選択的に、静止電極42として動作するために、キャップ層40の底面上に金属化パターンも設けてもよい。金属化接点41および静止電極42は、キャップ層40を通じてキャップ層40の上面上の金属化接点パッド43に電気的に結合される。支持構造32とキャップ層40との間に電気的接触が必要とされない場合、支持構造32は、陽極接合によってキャップ層40に機械的に接合されてもよい。最大の応力ロバスト性のために、第1の素子層10のみが静止電極21に使用されるべきであり、キャップ層40は使用されるべきではない。キャップ層40上にさらなる静止電極42を実装することにより、MEMSデバイスは応力の影響をより受けやすくなる。
【0043】
任意選択的に、キャップ層40には、1つまたは複数の振動質量31がキャップ層40の底面上の静止電極42または他の金属化パターンと直接接触するのを防止する1つまたは複数のバンプ44が設けられてもよい。バンプ44は、好ましくは、SiO2またはSi4N4などの電気絶縁材料から作成されることが好ましい。
【0044】
図2は、第2の実施形態によるMEMSデバイスの断面を示す。図面は原寸に比例しない。
【0045】
第2の実施形態における素子層は、第1の実施形態に対応する。主な違いは、電極または別の振動質量などの構造要素22が、振動質量31’の動きの静電容量検出のために振動質量31’の下方で第1の素子層20に設けられることである。この場合、構造要素22の側方面積は、エッチングによって犠牲酸化ケイ素を除去するための製造方法ステップが振動質量31’と構造要素22との間の犠牲絶縁体層15を完全には除去しないような大きさである必要があり得る。振動質量31’を穿孔することによって、犠牲層の効率的な除去が、振動質量31’の質量の低減と引き換えに容易になる。しかしながら、これは、MEMSデバイス設計に応じて許容可能であり得る。
【0046】
図3は、第3の実施形態によるMEMSデバイスの断面を示す。図面は原寸に比例しない。
【0047】
底層10および第2の素子層30は、第2の実施形態と同様である。第2の層のレイアウトと厚さの両方は、第1の素子層20内の構造要素21、22の所望の質量を達成するように設計することができる。質量の増大は、振動要素において特に有益である。当業者には理解されるように、第1の実施形態および第3の実施形態を含む本明細書に記載の設計のいずれかは、第1の素子層20の厚さを増大させることによってより多くの質量を有することから利益を得る1の素子層20内の構造要素、特に第振動要素を有し得る。
【0048】
図4は、第4の実施形態によるMEMSデバイスの断面を示す。図面は原寸に比例しない。
【0049】
図4では、底層10、第1の素子層20、および第2の素子層30は第2の実施形態によるものであるが、この実施形態は第1の実施形態および第3の実施形態にも同様に適用可能である。上述の実施形態のいずれかとの主な違いは、第2の素子層30とキャップ層40との間に追加の金属接合層35があることである。その結果、金属接合層35は、第2の素子層30、特にその中の振動質量31とキャップ層40との間に追加の距離を導入するため、第2の素子層は、製造プロセス中にキャップ層40の側で陥凹する必要がない。陥凹処理の概念は、典型的な製造方法に関連して下記にさらに説明される。
【0050】
図5a~
図5jは、第1の実施形態によるMEMSデバイスの典型的な製造方法を示す。このプロセスは、第1の実施形態に関連して示されているが、他の実施形態によるデバイスの製造を可能にするために、必要に応じて容易に調整することができる。
【0051】
図5aは、最終的に第2の素子層になるデバイスウェハ430を示す。デバイスウェハ430は、mono-Siウェハである。電気絶縁層25、好ましくは二酸化ケイ素が、デバイスウェハ430の一方の面上に構築される。任意選択的に、デバイスウェハ430の他方の面もまた、最初に電気絶縁層525によって保護される。電気絶縁層25、525は、典型的にはデバイスウェハ430のすべての面上に酸化物層(二酸化ケイ素層)を生成する熱酸化を使用してウェハの表面上に生成される。
【0052】
図5bは、電気絶縁層25のパターニングを示す。電気絶縁層25は、エッチングによってパターニングされる。適用可能なエッチング方法の例は、例えば、緩衝フッ酸(BHF)によるウェットエッチングおよび反応性イオンプラズマエッチングである。この例では、第2の素子層と第1の素子層とを電気的に接続するために、プロセスにおいてさらにpoly-Siフィードスルーを生成する目的で電気絶縁層25の部分26を除去するためにエッチングが使用される。
【0053】
ウェットエッチングを使用するとき、電気絶縁層525が残っているとフォトレジストによる追加の裏面保護が必要になるため、電気絶縁層525は、好ましくは第1のデバイスウェハ430の裏面から除去される。poly-Si層の正味の応力は小さくする必要があり、場合によっては優先的に引張である必要がある。熱成長した二酸化ケイ素は圧縮応力を有するため、電気絶縁層525を除去すると、そのような場合、ウェハの上面に対する正味応力が小さくなり、これは、処理中のウェハの取り扱いを容易にするためにウェハの湾曲を最小限に抑えるのに役立つ。
【0054】
図5cは、パターニングされた電気絶縁層25の上に第1の素子層20が堆積される次のステップを示す。第1の素子層20は、poly-Si層である。この堆積ステップ中に、第1の素子層と第2の素子層とを電気的に接続するためのPoly-Siプラグ28が生成される。
【0055】
poly-Si層を堆積させる典型的なステップは、以下を含む。
【0056】
1)薄いin-situドープpoly-Si層を堆積させること。これは、典型的には、低圧化学気相成長(LPCVD)プロセスによって実施される。
【0057】
2)厚いin-situドープpoly-Si層を堆積させること。これは、典型的には、「epi-poly」とも呼ばれるエピタキシャルシリコン堆積ツールを使用した大気圧化学気相成長(APCVD)によって実施される。
【0058】
3)化学機械研磨(CMP)を使用してpoly-Si層を研磨すること。
【0059】
場合によっては、CMPによって研磨することができるようになる前に、poly-Si層の研削が必要な場合がある。
【0060】
LPCVDを使用してステップ1および2を組み合わせることができるが、LPCVDはAPCVDよりも堆積速度が100~1000倍低いため、機能性MEMSデバイス層に必要な厚さを有する層を堆積することは実用的ではない。例えば、ステップ1および2で堆積されたpoly-Si層の厚さは、5μm程度であり得る。
【0061】
代替的なドーピング方法は、非ドープ堆積、および、ドープされた酸化物などの固体源からのイオン注入または拡散によるpoly-Si層のドーピング、その後のアニーリングである。
【0062】
LPCVD中、デバイスウェハ430の裏面上へのpoly-Siの堆積が起こり得る。しかしながら、デバイスウェハ430の裏面がプロセスにおいて後に研削され、その上の望ましくない堆積が除去されるため、これは無視することができる。
【0063】
poly-Si層の正味の応力は小さい必要がある。
【0064】
図5dは、第1の素子層20のパターニングを示す。第1の素子層は、好ましくは、リソグラフィおよびDRIEエッチングなどのエッチングを使用してパターニングされる。パターニング中に、第1の素子層20を貫通して第2の電気絶縁層25まで延在する複数のトレンチによって、第1の素子層20内に構造要素21、24が形成される。
【0065】
図5eは、第1の素子層20を、少なくとも1つの酸化キャビティ11’を備えるハンドル層10と融着接合した後の段階を示す。この目的のために、第1の素子層20が下向きになり、第2のデバイスウェハ430が上になるように、加工アイテムが上下逆さまに反転される。
【0066】
図5fは、第2のデバイスウェハ430が、例えば研削および/またはエッチングを使用することによって少なくともほぼ第2の素子層30の厚さまで薄くされた後のステップを示す。化学機械研磨(CMP)が、滑らかな表面を提供し、薄くした後の粗さおよび研削による残留表面損傷を除去するために使用される。厚い第2の素子層30は、より重く、したがってより敏感な振動質量を促進する。
【0067】
図5gは、第2の素子層30の上面上の凹部330を示す。凹部330の陥凹化は、シリコン局所酸化(LOCOS)プロセスを使用して実施することができ、このプロセスでは、SiO
2が第2の素子層30の上面上の選択された領域に形成され、続いて、形成されたSiO
2がエッチングによって除去されて、表面上に凹部330が形成される。エッチングなどの他の代替形態が存在する。この陥凹の1つの目的は、キャップ層が上に配置された後にもz軸方向の動きの余地を有するように、振動質量の上方に自由空間を形成することである。LOCOSプロセスの代わりに、シリコンウェットエッチングまたはプラズマエッチングを使用して凹部を作成することができる。
図4に示す第4の実施形態を参照して上述したように、キャップ層を取り付けるために金属接合が使用される場合、金属接合層が振動質量とキャップ層との間の距離を増大させ、これらの間の機械的接触を回避するのに役立つため、凹部330の生成を省略することができる。
【0068】
図5hは、DRIEなどのドライエッチングを使用してmono-Si層をパターニングおよびエッチングすることによる、第2の素子層30内の支持構造32および振動質量31a、31bなどの構造要素の形成を示す。第2の素子層の構造要素は、第1の素子層20を貫通して第2の電気絶縁層25まで延在する複数のトレンチによって決定される。図示されていないが、第2の素子層内の支持構造はまた、振動質量の動きを制御するばねおよび/または梁を含む。DRIEエッチング中、エッチングされない第2の素子層30の部分は、例えば二酸化ケイ素(図示せず)のマスキングパターンによって保護される。
【0069】
図5iは、埋め込まれたSiO
2を除去することによって第1の素子層20および第2の素子層30内の構造要素を解放する結果を示す。これは、フッ化水素酸(HF)エッチングを使用して実施することができる。制御されたHF放出において、規定量のSiO
2が全方向において除去される。HF放出はまた、キャビティ11から電気絶縁層を除去し、懸架構造12上および側壁13上のハンドル層10と第1の素子層20との間、支持構造32と第1の素子層20上の構造要素との間、ならびに第1の素子層20および第2の素子層10のフレーム部分23、33の間の電気絶縁層の一部を除去する。必要に応じてハンドル層10、第1の素子層20および第2の素子層30の間の接触を維持するために十分な面積の電気絶縁層15、25が残る。
【0070】
いくつかの実施形態によれば、1つまたは複数の支持構造32は、電気絶縁層が1つまたは複数の支持構造32と第1の素子層20との間で完全に除去されるように、より小さい側方寸法を有するように設計されてもよい。第1の素子層20と第2の素子層30との間の横方向に小さい機械的結合38の例が、
図5iに示されている。第1の素子層20の構造要素と第2の素子層30の構造要素との間の電気絶縁層25の全部分の除去は、それぞれの構造要素の少なくとも1つを、側方面積が小さくなるように設計することによって可能となる。この非限定的な例では、第2の素子層30内の構造要素37は、電気絶縁層25のエッチング中にすべての電気絶縁材料がこのロケーションで除去されるように、小さい側方寸法を有する。このようにして、第2の素子層30内の任意の構造要素と第1の素子層20内の構造要素との間の機械的接続は、明確に小さい側方領域を有することができ、複数のアンカーを有するデバイスのサイズをより小さくすることを容易にする。この機械的接続はpoly-Siに基づいており、2つの構造要素間の電気接続を提供することもできる。
【0071】
図5lは、キャップ層40を第2の素子層30の上に固定することによって構造要素が筐体内に封入された後のMEMSデバイス100を示す。この例では、キャップ層40は、ガラス46絶縁シリコンおよび金属化接点41、43と、任意選択の静止電極42とを備え、キャップ層40は、陽極接合を使用し、陽極接合およびその後のバックエンドプロセスを使用して取り付けられる。ガラス絶縁シリコンキャップ層の代わりに、任意の他の適切なタイプのキャップ層を開示された実施形態のいずれかで使用することができる。例えば、キャップ層は、電極を有する集積回路(IC)ウェハであってもよい。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、キャップ層40は、
図4に示すように金属接合を使用して第2の素子層30の上に接合されてもよい。そのような場合、
図5gに示される陥凹化ステップは、ステップ5fにおいて、第1の素子層30が、パターニングおよびエッチングによってその中に構造要素を形成する前にその所望の厚さまで単純に薄くされるように省略されてもよい。
【0073】
図6a~
図6cは、第1の素子層20から延出する「バンプ」と呼ばれることが多いストッパ構造の生成を示す。そのようなストッパ構造は、電極またはさらには別の振動要素などの重ね合わせ構造への振動要素の付着を回避するために、第1の素子層20と第2の素子層30との間で有益であり得る。単純にするために、MEMSデバイスの種々の材料層および構造の一部のみが示されている。
【0074】
図6aは、
図5bのような電気絶縁層25のパターニングを示す。フィードスルーを生成するためにデバイスウェハ430が露出するように部分26を除去することに加えて、電気絶縁層25内に1つまたは複数の浅い凹部626が生成される。これらの凹部626は、電気絶縁層25の厚さの一部にわたってのみ延在する。
【0075】
図6bは、堆積され、同時にフィードスルー28およびストッパ構造628を作成する第1の素子層20を示す。
【0076】
図6cは、
図5iに示すように構造要素を解放した後の典型的なフィードスルー28およびストッパ構造628の外観を示す。この単純化された図では、第1の素子層20も第2の素子層30も任意の他の構造要素を有するものとして示されていないが、当業者によって理解されるように、これは
図5iに示されているような場合であり、また、底層10もこの段階で加工片に既に含まれている。
【0077】
技術の進歩とともに、本発明の基本的な着想を様々な方法で実施することができることが、当業者には明らかである。それゆえ、本発明およびその実施形態は上述の例には限定されず、特許請求項の範囲内で様々に変化してもよい。
【外国語明細書】