(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152678
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】空気パルス生成デバイス、ウェアラブルサウンドデバイス、ファンレス送風機、及び気流発生方法
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20241018BHJP
F04D 33/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H04R3/00 310
F04D33/00
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024063674
(22)【出願日】2024-04-11
(31)【優先権主張番号】63/458,897
(32)【優先日】2023-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/321,753
(32)【優先日】2023-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/624,105
(32)【優先日】2024-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521287935
【氏名又は名称】エクスメムス ラブズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】ジェム ユエ リヤーン
(72)【発明者】
【氏名】ジュヨンゥラオ ジアーン
【テーマコード(参考)】
3H130
5D220
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB56
3H130AC19
3H130BA24Z
3H130BA48Z
3H130CB18
3H130DD06Z
5D220AA44
(57)【要約】 (修正有)
【課題】空気パルス生成デバイス、ウェアラブルサウンドデバイス、ファンレス送風機及び空気流生成方法を提供する。
【解決手段】空気パルス生成デバイス100は、膜構造10、キャップ構造11及びデバイス層12を含み、膜構造は、超音波パルスレートで複数の空気パルスを生成するように作動する。複数の空気パルスは、1つの単一の方向に向かって正味の空気流を発生させる。膜構造において、(変調)フラップ105及び107を含む変調部分104は、チャンバ115の中に超音波空気/音響波を形成するように作動し、(復調)フラップ101及び103を含む復調部分102は、変調部分と同期して動作し、変調部分が生成する振幅両側波帯抑圧搬送波(DSB-SC)変調されている音響波のスペクトラム成分を、±n×超音波搬送波周波f
UC(nは正の整数)だけシフトさせ、チャンバの中の超音波空気波に従い周囲に向かって複数の空気パルスを発生させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気パルス生成デバイスであって、当該空気パルス生成デバイスは、
超音波パルスレートで複数の空気パルスを生成するように作動させられるように構成される膜構造を含み、
前記複数の空気パルスは、1つの単一の方向に向かって正味の空気流を発生させる、
空気パルス生成デバイス。
【請求項2】
前記膜構造は、フラップ対を含み、前記フラップ対は、互いに対向して配置されている第1のフラップ及び第2のフラップを含み、
前記フラップ対は、差動モード運動を実行して、前記超音波パルスレートに同期している開口レートで開口部を形成するように作動させられる、請求項1に記載の空気パルス生成デバイス。
【請求項3】
前記膜構造は、駆動信号によって作動させられ、
前記駆動信号は、非ゼロの直流(DC)オフセットを含む入力信号にしたがって生成される、請求項1に記載の空気パルス生成デバイス。
【請求項4】
前記複数の空気パルスは、前記DCオフセットが正であることに応答して、第1の方向に向かって第1の正味の空気流を発生させ、
前記複数の空気パルスは、前記DCオフセットが負であることに応答して、第2の方向に向かって第2の正味の空気流を発生させ、
前記第1の方向及び第2の方向は、互いに反対である、請求項3に記載の空気パルス生成デバイス。
【請求項5】
前記膜構造は、共通モード運動を実行するように、変調信号によって作動させられ、
前記変調信号は、非ゼロのDCオフセットを含む入力信号にしたがって生成される、請求項1に記載の空気パルス生成デバイス。
【請求項6】
前記膜構造は、差動モード運動を実行して、前記超音波パルスレートに同期している開口レートで開口部を形成するように、復調信号によって作動させられる、請求項1に記載の空気パルス生成デバイス。
【請求項7】
前記APデバイスが発生させる前記正味の空気流の方向は、変調信号と復調信号との間の位相によって決定される、請求項1に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項8】
前記空気パルス生成デバイスは、空気ポンプとして機能する、請求項1に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項9】
当該空気パルス生成デバイスは、熱源の上に配置されるか、熱源の下に配置されるか、又は、熱源のそばに配置され、前記熱源からの熱を放散させるように構成される、請求項1に記載の空気パルス生成デバイス。
【請求項10】
当該空気パルス生成デバイスは、換気のために構成される、請求項1に記載の空気パルス生成デバイス。
【請求項11】
当該空気パルス生成デバイスは、ウェアラブルサウンドデバイスの中に配置され、外耳道を換気するように構成される、請求項1に記載の空気パルス生成デバイス。
【請求項12】
当該空気パルス生成デバイスは、ホストデバイスの中に配置され、前記ホストデバイスの中の空間を換気するように構成される、請求項1に記載の空気パルス生成デバイス。
【請求項13】
熱放散の方法であって、
熱源の上に、熱源の下に、又は、熱源のそばに、請求項1に記載の空気パルス生成デバイスを配置するステップを含む、熱放散の方法。
【請求項14】
換気の方法であって、
ホストデバイスの中に請求項1に記載の空気パルス生成デバイスを配置するステップを含む、換気の方法。
【請求項15】
外耳道換気の方法であって、
ウェアラブルサウンドデバイスの中に請求項1に記載の空気パルス生成デバイスを配置するステップを含む、外耳道換気の方法。
【請求項16】
空気品質を検知する方法であって、
空気品質検知デバイスの中に請求項1に記載の空気パルス生成デバイスを配置するステップを含む、空気品質を検知する方法。
【請求項17】
ウェアラブルサウンドデバイスであって、当該ウェアラブルサウンドデバイスは、
ハウジングと、
1つの単一の方向に向かって空気流を発生させるように構成される空気流生成デバイスと、を含む、ウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項18】
ユーザが前記ウェアラブルサウンドデバイスを装着するときに、前記空気流生成デバイスは、外耳道に向かう前記空気流又は外耳道から出る前記空気流を発生させる、請求項17に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項19】
前記空気流生成デバイスは、膜構造を含み、
前記膜構造は、駆動信号によって作動させられ、
前記駆動信号は、非ゼロの直流(DC)オフセットを含む入力信号にしたがって生成される、請求項17に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項20】
センサをさらに含み、
前記空気流生成デバイスが発生させる空気流の体積は、前記センサの検知結果にしたがって調整される、請求項17に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項21】
ファンレス送風機であって、当該ファンレス送風機は、
膜構造を含み、
当該ファンレス送風機は、前記空気圧変動にしたがって複数の空気パルスを発生させ、前記複数の空気パルスは、非対称であり、
当該ファンレス送風機が発生させる前記複数の空気パルスは、1つの方向に向かう正味の空気運動又は正味の空気流を構成する、
ファンレス送風機。
【請求項22】
当該ファンレス送風機は、通気口を含むホストデバイスの中に配置される、請求項21に記載のファンレス送風機。
【請求項23】
当該ファンレス送風機は、同時に、オーディオサウンド及び1つの方向に向かう空気流を発生させる、請求項21に記載のファンレス送風機。
【請求項24】
前記複数の空気パルスは、入力オーディオ信号にしたがって生成され、
前記入力オーディオ信号は、非ゼロの直流(DC)オフセットを含む、請求項21に記載のファンレス送風機。
【請求項25】
当該ファンレス送風機が発生させる空気流の体積が、湿度センサの出力に応答して制御される、請求項21に記載のファンレス送風機。
【請求項26】
前記膜構造は、フラップ対を含み、前記フラップ対は、第1のフラップ及び第2のフラップを含み、
前記第1のフラップは、復調駆動信号又は変調駆動信号によって駆動され、
当該ファンレス送風機が発生させる空気流の体積は、前記復調駆動信号又は前記変調駆動信号の振幅によって調整される、請求項21に記載のファンレス送風機。
【請求項27】
空気流を発生させる方法であって、当該方法は、
空気パルス生成デバイスによって、超音波パルスレートで複数の非対称空気パルスを発生させるステップを含み、
前記複数の非対称空気パルスは、単一の方向に向かって正味の空気流を発生させる、
方法。
【請求項28】
駆動信号によって前記空気パルス生成デバイスの膜構造を駆動するステップを含み、
前記駆動信号は、入力信号にしたがって生成され、前記入力信号は、非ゼロの直流(DC)オフセットを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
変調駆動信号によって前記空気パルス生成デバイスの膜構造を駆動して、共通モード運動を実行するステップを含み、
前記変調駆動信号は、入力信号にしたがって生成され、前記入力信号は、非ゼロの直流(DC)オフセットを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
復調駆動信号によって前記空気パルス生成デバイスの膜構造を駆動して、差動モード運動を実行するステップを含み、
前記差動モード運動は、前記超音波パルスレートに同期している開口レートで開口部を形成するように構成される、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[技術分野]
本発明は、空気パルス生成デバイス(air-pulse generating device)、ウェアラブルサウンドデバイス(wearable sound device)、及びそれらのファンレス送風機(fanless blower)に関し、特に、ユーザ体験を改善する空気パルス生成デバイス、ウェアラブルサウンドデバイス、及びそれらのファンレス送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
(例えば、スマートフォン又はタブレット等の)電子デバイスのスリム化に伴って、それらの電子デバイスは、また、ますます複雑な計算を必要とし、したがって、より多くのバッテリ電力を消費する。熱管理は、(手のひらサイズの)電子デバイスの将来的な実行可能性のためにますます重要になっている。
【0003】
加えて、湿った耳の中にヘッドホンを装着する場合に、ヘッドホンの寿命が損なわれ、又は、耳の乾燥が困難になる場合がある。したがって、(例えば、水泳又はサーフィン等の)水関連の活動又はシャワーの後に外耳道を乾燥させることが望ましい場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
1. 米国特許出願第17/553,808号
2. 米国特許出願第17/553,813号
3. 米国特許第US 10,425,732 B2号
4. 米国特許第US 7,736,324 B2号
5. 米国特許出願公開第US 5,109,948 A号
6. 米国特許出願公開第US 4,942,939号
7. 米国特許出願公開第US 4,646,733号
8. 米国特許出願公開第US 2022/0047841 A1号
9. 米国特許出願公開第US 2014/0064036 A1号
10. 米国特許出願公開第US 2013/0279738 A1号
11. 米国特許出願公開第US 2012/0018244 A1号
12. 米国特許出願公開第US 2008/0121220 A1号
13. 米国特許出願公開第US 2005/0235988 A1号
14. 米国特許出願公開第US 2004/0024455 A1号
15. 米国特許出願公開第US 2016/202790 A2号
16. 米国特許出願公開第US 2020/0059719 A1号
17. 米国特許出願公開第US 2019/0116417 A1号
18. 米国特許出願公開第US 2018/0179048 A1号
19. 米国特許出願公開第US 2016/0366521 A1号
20. 米国特許出願公開第US 2012/0032892 A1号
21. 米国特許出願公開第US 2017/0201192 A1号
22. 韓国特許出願公開第10-2019-0116898号
23. 韓国特許第10-1901204号
24. 韓国特許出願公開第10-2019-0043489号
25. 韓国特許第10-2093804号
26. 特開2022-160366号公報
27. 米国特許出願公開第US 2019/0238974 A1号
28. 米国特許出願公開第US 2017/0041708 A1号
29. 米国特許出願公開第US 2014/0084396 A1号
30. 米国特許出願公開第US 2014/0341394 A1号
31. 米国特許出願公開第US 2016/0059206 A1号
32. 米国特許出願公開第US 2012/0081337 A1号
33. 米国特許出願公開第US 5,611,406 A号
34. 米国特許出願公開第US 2019/0020944 A1号
35. 特開2022-160367号公報
36. 特開2022-160368号公報
37. 米国特許出願公開第US 2017/0064457 A1号
38. 米国特許出願公開第US 2020/0211521 A1号
39. 米国特許出願公開第US 2020/0213770 A1号
40. 米国特許出願公開第US 2016/0261941 A1号
41. 米国特許出願公開第US 2016/0381464 A1号
42. 欧州特許出願公開第EP 4 030 782 A1号
43. 米国特許出願公開第US 2019/0141435 A1号
44. 米国特許出願公開第US 2017/0230756 A1号
45. 米国特許出願公開第US 2013/0044904 A1号
46. 米国特許出願公開第US 2010/0278368 A1号
47. 米国特許出願公開第US 2016/0356876 A1号
48. 米国特許出願公開第US 2021/0377652 A1号
49. 米国特許出願公開第US 2020/0100033 A1号
50. 中国特許出願公開第CN 106961651 A号
51. 台湾特許出願公開第201902812号
52. 米国特許出願公開第US 2020/0068281 A1号
53. 米国特許出願公開第US 2017/0255007 A1号
54. 米国特許出願公開第US 4,275,363号
55. 特開2011-160309号公報
【非特許文献】
【0005】
56. TutorialsPoint, "Analog Communication - DSBSC Modulation", captured by web.archive.org on 11/26/2020, retrieved on 12/11/2023 from the Internet (URL: https://web.archive.org/web/20201126095635/https://www.tutorialspoint.com/analog_communication/analog_communication_dsbsc_modulation.htm)
【発明の概要】
【0006】
したがって、この出願の最優先の目的は、空気パルス生成デバイス(air-pulse generating device)、ウェアラブルサウンドデバイス(wearable sound device)、及びそれらのデバイスのファンレス送風機(fanless blower)を提供して、先行技術の欠点を改善することである。
【0007】
この出願のある1つの実施形態は、空気パルス生成デバイスを開示し、その空気パルス生成デバイスは、フィルム構造(film structure)を含み、そのフィルム構造は、超音波パルスレートで(at an ultrasonic pulse rate)複数の空気パルスを生成するように作動させられるように構成され、それらの複数の空気パルスは、1つの単一の方向に向かって(toward one single direction)正味の空気流(net airflow)を発生させる(produce)。
【0008】
この出願のある1つの実施形態は、ウェアラブルサウンドデバイスを開示し、そのウェアラブルサウンドデバイスは、ハウジングと、複数の空気パルスを生成して、外耳道(ear canal)を換気する(ventilate)ように構成される空気パルス生成デバイスと、を含む。
【0009】
この出願のある1つの実施形態は、ファンレス送風機(fanless blower)を開示し、そのファンレス送風機は、空気圧変動にしたがって(according to the air pressure variation)複数の空気パルスを発生させ(produces)、それらの複数の空気パルスは、非対称であり、ファンレス送風機が発生させる複数の空気パルスは、1つの方向に向かう(toward one direction)正味の空気移動(net air movement)又は正味の空気流(net air movement)を構成する。
【0010】
この出願のある1つの実施形態は、空気流を発生させる方法を開示し、その方法は、空気パルス生成デバイスによって、超音波パルスレートで複数の非対称空気パルスを発生させるステップを含み、それらの複数の非対称空気パルスは、単一の方向に向かって(toward a single direction)正味の空気流を発生させる。
【0011】
本発明のこれらの目的及び他の目的は、さまざまな図表及び図面に図示されている好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読めば、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のある1つの実施形態にしたがった空気パルス生成デバイスの概略的な図である。
【
図2】本発明のある1つの実施形態にしたがった復調駆動信号(demodulation-driving signals)及び変調駆動信号(modulation-driving signal)の波形を図示している。
【
図3】
図1のデバイスに対応するシミュレーション結果を図示している。
【
図4】
図1のAPGデバイスの音圧レベル(sound pressure level)のシミュレーションされている周波数応答をプロットしている。
【
図5】
図1のデバイスに対応するシミュレーション結果を図示している。
【
図6】
図1のデバイスに対応するシミュレーション結果を図示している。
【
図7】本発明のある1つの実施形態にしたがった空気パルス生成デバイスの概略的な図である。
【
図8】本発明のある1つの実施形態にしたがった空気パルス生成デバイスの概略的な図である。
【
図9】
図1のデバイスのエネルギー伝達比(energy transfer ratio)の周波数応答を図示している。
【
図10】
図8のデバイスのエネルギー伝達比の周波数応答を図示している。
【
図11】
図8のデバイスの製造方法のプロセスを図示している。
【
図12】本発明のある1つの実施形態にしたがった空気パルス生成デバイスの概略的な図である。
【
図13】本発明の複数の実施形態にしたがった駆動信号配線方式を図示している。
【
図14】
図12のデバイスのSPL測定結果対周波数を図示している。
【
図15】
図12のデバイスのSPL測定結果対ピークトゥピーク電圧(SPL measurement results versus peak-to-peak voltage)を図示している。
【
図16】本発明のある1つの実施形態にしたがった空気パルス生成デバイスの概略的な図である。
【
図17】本発明のある1つの実施形態にしたがった空気パルス生成デバイスの概略的な図である。
【
図18】複数の異なる程度の非対称性を有する(with different degrees of asymmetricity)ある1つの操作サイクルの中のフルサイクルパルス(full-cycle pulses)を図示している。
【
図19】各々の構成要素の機能及びそれらの機能の対応する周波数領域効果のシステム全体図を図示している。
【
図20】本発明のある1つの実施形態にしたがった空気パルスAPの概略的な図である。
【
図21】本発明のある1つの実施形態にしたがった復調信号及び変調信号の波形を図示している。
【
図22】本発明の複数の実施形態にしたがったAPGデバイスの複数の異なる構成の概略的な図である。
【
図23】本発明のある1つの実施形態にしたがったホストデバイスのAPGデバイスの概略的な図である。
【
図24】本発明のある1つの実施形態にしたがったホストデバイスのAPGデバイスの概略的な図である。
【
図25】本発明のある1つの実施形態にしたがったホストデバイスのAPGデバイスの概略的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の基本的な態様は、空気パルス生成デバイスに関し、特に、変調手段(modulating means)及び復調手段(demodulating means)を含む空気パルス生成デバイスに関し、その変調手段は、周波数fUCを有する超音波空気圧波/変動(ultrasonic air pressure wave/variation (UAW))を生成し、UAWの振幅は、サウンド信号SS(sound signal SS)の電気的な(アナログの又はディジタルの)表現である入力オーディオ信号SIN(input audio signal SIN)にしたがって変調される。この振幅変調されている超音波空気圧波/変動(amplitude modulated ultrasonic air pressure wave/variation (AMUAW))は、その次に、その復調手段によって、同期復調され(synchronously demodulated)、それによって、AMUAWの中に埋め込まれているスペクトラム成分(spectral components)は、±n・fUCだけシフトされ、nは、正の整数である。この同期復調の結果として、サウンド信号SSに対応するAMUAWのスペクトラム成分は、部分的に、ベースバンドに転送され(partially transferred to the baseband)、結果として、可聴サウンド信号SS(audible sound signal SS)が再生される。ここでは、振幅変調されている超音波空気圧波/変動AMUAWは、超音波搬送波周波数fUC(ultrasonic carrier frequency fUC)を有する搬送波成分と、入力オーディオ信号SINに対応する変調成分と、に対応してもよい。
【0014】
図1は、本発明のある1つの実施形態にしたがった空気パルス生成(air-pulse generating (APG))デバイス100の概略的な図を図示している。そのデバイス100は、これらには限定されないが、サウンド発生デバイス(sound producing device)として適用されてもよく、そのサウンド発生デバイスは、入力(オーディオ)信号S
INにしたがって音響サウンド(acoustic sound)を発生させる。
【0015】
そのデバイス100は、デバイス層(device layer)12及びチャンバ定義層(chamber definition layer)11を含む。デバイス層12は、壁124L及び124Rと、薄膜層(thin film layer)を支持する支持構造(supporting structures)123R及び123Lと、を含み、その薄膜層は、フラップ101、103、105、及び107にエッチングされる。ある1つの実施形態において、デバイス層12は、例えば、厚さが250[μM]~500[μM]のSi基板を使用して、マイクロ電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems (MEMS))製造プロセスによって製造されてもよく、そのSi基板はエッチングされて、123L/R及び124R/Lを形成する。ある1つの実施形態において、このSi基板の上に、絶縁体SOIの上のシリコン又は絶縁体POI層の上のPOLYからなる厚さが通常3[μM]~6[μM]の薄層がエッチングされて、フラップ101、103、105、及び107を形成するであろう。
【0016】
(また、"キャップ"構造であると考えられてもよく/命名されてもよい)チャンバ定義層11は、一対のチャンバ側壁(chamber sidewalls)110R及び110Lとチャンバ天井(chamber ceiling)117とを含む。ある1つの実施形態において、チャンバ定義層(又は、キャップ構造)11は、MEMS製造技術を使用して製造されてもよい。共振チャンバ(resonance chamber)115は、このチャンバ定義層11とデバイス層12との間に定義される。
【0017】
言い換えると、デバイス100は、膜構造(film structure)10及びキャップ構造11を含み、それらの膜構造10とキャップ構造11との間にチャンバ115が形成されると考えられてもよい。膜構造10は、変調部分(modulating portion)104及び復調部分(demodulating portion)102を含むと考えられてもよい。(変調)フラップ105及び107を含む変調部分104は、チャンバ115の中に超音波空気/音響波(ultrasonic air/acoustic wave)を形成するように作動させられるように構成され、空気/音響波(air/acoustic wave)は、時間的に変化するとともに空間的に変化する一種の空気圧変動(air pressure variation)と考えられてもよい。ある1つの実施形態において、超音波空気/音響波又は空気圧変動は、超音波搬送波周波数fUCを有する振幅両側波帯抑圧搬送波(double-sideband suppress carrier (DSB-SC))変調されている空気/音響波であってもよい。超音波搬送波周波数fUCは、例えば、人間の可聴音の最大周波数よりも有意に大きい160[kHz]から192[kHz]の範囲の中に存在してもよい。
【0018】
空気波(air wave)及び音響波(acoustic wave)の語は、以下では互換的に使用される。
【0019】
(復調)フラップ101及び103を含む復調部分102は、変調部分104と同期して動作し、変調部分104が生成するDSB-SC変調されている音響波のスペクトラム成分を±n×fUCだけシフトさせ、nは正の整数であり、チャンバ115の中の超音波空気波(ultrasonic air wave)にしたがって周囲に向かって複数の空気パルスを発生させるように構成され、それによって、(チャンバ115の中の超音波空気波にしたがって復調部分102が発生させる)複数の空気パルスのベースバンド周波数成分(baseband frequency component)は、入力(オーディオ)信号SINとなり、或いは、入力(オーディオ)信号SINに対応し、又は、入力(オーディオ)信号SINに関連し、複数の空気パルスの低周波数成分(low frequency component)は、(例えば、20[kHz]又は30[kHz]を下回る)可聴スペクトラム(audible spectrum)の中に存在する複数の空気パルスの周波数成分を指してもよい。ここでは、ベースバンドは、これらには限定されないが、通常、可聴スペクトラムと称されてもよい。
【0020】
言い換えると、デバイス100がサウンド発生用途に切り替えられるときに、変調部分104は、入力オーディオ信号SINにしたがって変調されている空気波(modulated air wave)を形成するように作動させられてもよく、復調部分102は、変調部分104と同期して動作して、入力オーディオ信号SINである(又は、入力オーディオ信号SINに対応する/入力オーディオ信号SINに関連する)として、低周波数成分を有する複数の空気パルスを生成する。サウンド発生用途の場合には、fUCは、典型的には、fUC≧96[kHz]≒5×20[kHz]のように人間の可聴周波数のうちの最も高い周波数よりもはるかに高く、複数の空気パルスに対して(壁、床、天井、家具等の物理的環境、超音波等の高い伝搬損失(high propagation loss)、及び、外耳道(ear canal)、鼓膜(eardrum)、ツチ骨(malleus)、キヌタ骨(incus)、アブミ骨(stapes)等の人間の耳系(human ear system)が引き起こす)自然の/環境的なローパスフィルタリング効果(natural/environmental low pass filtering effect)によって、聴者が知覚するものは、入力オーディオ信号SINによって表される可聴音(audible sound)又は音楽のみとなるであろう。
【0021】
例示的に、
図19は、変調操作(復調操作)の前及び後の信号の周波数スペクトラムを示すことによって、変調操作(復調操作)の効果を概念的に/概略的に明示している。
図19において、変調操作は、サウンド信号SSの電気的な(アナログの又はディジタルの)表現である入力オーディオ信号S
INにしたがって、W(f)として示されているスペクトラムを有する振幅変調されている超音波/空気波(amplitude modulated ultrasonic acoustic/air wave)UAWを発生させる。S
IN/SSのスペクトラムは、
図19においてS(f)として表されている。Z(f)として図示されているスペクトラムを有する(複数のパルスを含む)超音波パルスアレイUPAを発生させる同期復調操作は、超音波音響/空気波(ultrasonic acoustic/air wave)UAWのスペクトラム成分を(nが整数である)±n×f
UCだけシフトさせる(ステップを含む)と考えられてもよく、サウンド信号SSに対応する超音波空気波UAWのスペクトラム成分は、部分的に、ベースバンドに転送される。したがって、Z(f)から理解することができるように、超音波パルスアレイ(ultrasonic pulse array)UPAのベースバンド成分は、振幅変調されているUA W(f)と比較して有意となる。超音波パルスアレイUPAは、周囲に向かって伝搬する。自然の/物理的な環境及び人間の聴覚系(human hearing system)の固有のローパスフィルタリング効果(inherent low pass filtering effect)によって、サウンド信号SSに対応する結果として生じるスペクトラムY(f)を再生することが可能である。
【0022】
正弦波搬送波を使用する従来のDSB-SC振幅変調とは異なり、W(f)は、±3×f
UC、±5×f
UC、及び(
図19には示されていない)f
UCの高次高調波(higher order harmonic)の成分を有するということに留意するべきである。その理由は、本発明の変調の搬送波が純粋な正弦波ではないためである。
【0023】
図1に戻ると、同期復調操作のある1つの実施形態として、復調部分102は、変調されている空気波の1つ又は複数のピークに対応する/空気波の1つ又は複数のピークと整列されている時間及び位置において開口部112を形成するように作動させられてもよい。言い換えると、変調されている空気波が開口部112の位置においてピークに達するときに、復調部分102は、開口部112が、また、ピークに達するように作動させられてもよい。
【0024】
図1に示されている実施形態において、復調部分102は、側壁110Lと側壁110Rとの間の中央位置に開口部112を形成し、側壁110Lと側壁110Rとの間には、(概ね)λ
UCの表面から表面までの間隔、すなわち、111Lから111Rまでの間隔を有し、このことは、フラップ101及び103の先端(tips)が、側壁110L及び側壁110R、又は、側壁表面111L及び側壁表面111Rから(概ね)λ
UC/2だけ離れているということを意味し、λ
UCは、超音波搬送波周波数(ultrasonic carrier frequency)f
UCに対応する波長、すなわち、λ
UC=C/f
UCを表し、Cは音速である。
【0025】
ある1つの実施形態において、復調部分102は、超音波搬送波周波数fUCに同期している/と同期している開弁率(valve opening rate)で開口部112を形成するように作動させられてもよい。本発明において、超音波搬送波周波数fUCに同期している/と同期している開弁率は、一般的に、その開弁率が、超音波搬送波周波数fUCに有理数(rational number)を乗じた値、すなわち、fUC×(N/M)となるということを指し、N及びMは整数を表す。ある1つの実施形態において、(開口部112の)開弁率は、超音波搬送波周波数fUCであってもよい。例えば、弁/開口部112(valve/opening 112)は、操作サイクルTCYごとに開いていてもよく、操作サイクルTCYは、超音波搬送波周波数fUCの逆数である、すなわち、TCY=1/fUCである。
【0026】
本発明においては、変調部分102/復調部分104は、また、変調フラップ及び復調フラップの対を示すのに使用される。さらに、開口部112を形成する復調部(又は、フラップ対)102は、仮想的なバルブ(virtual valve)であると考えられてもよく、その仮想的なバルブは、ある特定の弁/復調駆動信号(valve/demodulation driving signals)にしたがって開閉運動(open-and-close movement)を実行し、(周期的に)開口部112を形成する。
【0027】
ある1つの実施形態において、変調部分104は、
図1に図示されている圧力プロファイル(pressure profile)P104及び気流プロファイル(airflow profile)U104のように、共振チャンバ(resonance chamber)115の中に実質的にモード2(又は、2次高調波(2
nd order harmonic))共振(又は、定在波(standing wave))を発生させてもよい。この点に関して、側壁表面111Lと側壁表面111Rとの間の間隔は、実質的に、超音波搬送波周波数f
UCに対応する全波長λ
UC、すなわち、W115≒λ
UC=C/f
UCを定義する。さらに、
図1に示されている実施形態において、変調フラップ105/107の自由端(free end)は、側壁110L/側壁110Rによって配置される(disposed by the sidewall 110L/110R)。
【0028】
変調されている空気波(modulated air wave)を生成する変調と開口部112を形成する復調との間で相互変調(inter-modulation)(又は、クロスカップリング(cross-coupling))が発生する場合があり、その相互変調は、結果として得られる音質を劣化させるであろうということに注意するべきである。音質を高めるためには、相互変調(又は、クロスカップリング)を最小化することが望ましい。そのことを達成する(すなわち、変調と復調との間のクロスカップリングを最小化する)ために、共通モード運動(common mode movement)を有するように変調フラップ105及び107を駆動し、差動モード運動(differential-mode movement)を有するように復調フラップ101及び103を駆動する。共通モード運動を有する変調フラップ105及び107は、同じ方向に向かって運動するようにフラップ105及び107を同時に作動させる/駆動する(simultaneously actuated/driven)ということを意味する。差動モード運動を有する復調フラップ101及び103は、反対方向に向かって運動するようにフラップ101及び103が同時に作動させる(simultaneously actuated)ということを意味する。さらに、ある1つの実施形態において、(実質的に)同じ変位/大きさで(with (substantially) the same displacement/magnitude)反対方向に向かって運動するようにフラップ101及び103を作動させてもよい。
【0029】
復調部分102は、
図1に図示されている復調部分102が形成する圧力プロファイルP102及び気流プロファイルU102となるように、共振チャンバ115の中にモード1(又は、一次高調波(1
st order harmonic))共振(又は、定在波)を実質的に発生させてもよい。したがって、復調部分102は、λ
D_V=C/f
D_Vである場合にW115≒λ
D_V/2となるように、(弁/復調駆動信号に対応する)弁操作/駆動周波数f
D_Vで(at a valve operating/driving frequency f
D_V)動作する必要があり、弁操作/駆動周波数は、超音波搬送波周波数f
UCの半分となる、すなわち、f
D_V=f
UC/2となる必要がある。
【0030】
共通モード運動及び差動モード運動は、変調駆動信号(復調駆動信号)によって駆動されてもよい。
図2は、復調駆動信号S101及びS103と変調駆動信号SMの波形を図示している。変調駆動信号SMは、変調フラップ105及び107を駆動するのに使用される。復調駆動信号(又は、バルブ駆動信号)S101及びS103は、それぞれ、復調フラップ101及び103を駆動するのに使用される。
【0031】
ある1つの実施形態において、変調駆動信号SMは、入力オーディオ信号S
INにしたがって変調されるパルス振幅変調(pulse amplitude modulation (PAM))信号であると考えられてもよい。さらに、従来のPAM信号とは異なり、信号SMの(定電圧に対する)極性(polarity (with respect to a constant voltage))は、1つの操作サイクルT
CYの中で切り替わる(toggles)。一般的に、変調駆動信号SMは、(定電圧に対する)極性が交互になる複数のパルスを含み、それらの複数のパルスの包絡線/振幅(envelope/amplitude)は、入力オーディオ信号S
INの交流(AC)成分と(実質的に)同じであるか又は比例する/対応する。言い換えると、変調駆動信号SMは、パルス振幅変調信号を含むと考えられるか又は定電圧に対する極性が交互になるPAM変調パルスを含むと考えられてもよい。
図2に示されている実施形態において、変調駆動信号SMのトグル率(toggling rate)は、2×f
UCとなり、そのトグル率は、変調駆動信号SMの中の複数のパルスの極性が、1つの操作サイクルT
CYの中で2回交互になる/切り替わる(alternates/toggles twice in one operating cycle T
CY)ということを意味する。
【0032】
復調駆動信号S101及びS103は、振幅が等しく且つ(定電圧/平均電圧に対する)極性が反対である2つの駆動パルスを含む。言い換えると、ある特定の時刻において、S101は、(定電圧/平均電圧に対する)第1の極性を有する第1のパルスを含み、S103は、(定電圧/平均電圧に対する)第2の極性を有する第2のパルスを含むと仮定すると、第1の極性は、第2の極性とは反対である。
図2に示されているように、復調駆動信号S101/S103のトグル率は、f
UCであり、そのトグル率は、復調駆動信号S101/S103の中のパルスの極性が1つの操作サイクルT
CYの中で1回交互になる/切り替わる(alternates/toggles once in one operating cycle T
CY)ということを意味する。したがって、変調駆動信号(SM)のトグル率は、復調駆動信号S101/S103のトグル率の2倍となる。
【0033】
S101/S103の傾き(及び、関連する斜線部)は、複数の電圧レベルの間の遷移の際のエネルギーリサイクルを表す簡略化されている図である。信号S101及びS103の遷移期間(transition periods)は重複しているということに留意するべきである。フラップ101/103の圧電アクチュエータのほとんどが容量性負荷ということを考慮すると、LC発振器の特性を使用することによって、エネルギーリサイクルを実現してもよい。エネルギーリサイクルの概念の詳細については、米国特許第US 11,057,692号を参照してもよく、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。圧電アクチュエータは、ある1つの実施形態として役立つが、これらには限定されないということに留意するべきである。
【0034】
フラップ対102が差動駆動されるということを強調するために、また、信号S101及びS103を-SV及び+SVと表記してもよく、その表記は、この一対の駆動信号が、同じ波形を有するが、極性が異なるということを意味する。説明のために、
図2に示されているように、これらには限定されないが、-SVは、S101のための表記であり、+SVは、S103のための表記である。ある1つの実施形態において、S101は、+SVであってもよく、S103は、-SVであってもよい。
【0035】
他の実施形態において、駆動信号S101=VBIAS-SV、S103=VBIAS+SVの状況下で、DCバイアス電圧VBIASが存在してもよく、VBIAS≠0である。このような変形は、本開示の範囲の中であると考えられるべきである。
【0036】
加えて、
図2は、変調駆動信号SMと復調駆動信号±SVとの間のトグル率の差を示している。タイミングアラインメント(timing alignment)を意味する変調駆動信号SMと復調駆動信号±SVとの間の相対的な位相遅延(relative phase delay)は、実際の要求にしたがって調整されてもよい。
【0037】
ある1つの実施形態において、信号SM及び±SVを生成するための駆動回路は、サブ回路を含んでもよく、そのサブ回路は、変調駆動信号SMと復調駆動信号±SVとの間に(相対的な)遅延を発生させるように構成される。遅延を生成するサブ回路の詳細は限定されない。サブ回路の中に、知られている技術を組み込んでもよい。サブ回路が、遅延を生成して、(以降で詳細に説明される)タイミングアラインメント要件を満たすことが可能である限り、本発明の要件を満たし、そのサブ回路は、本発明の範囲の中に入るであろう。
【0038】
フラップ101及び103の先端は、実質的に同じ位置(側壁111Lと側壁111Rとの間の中心位置)に存在し、その位置において実質的に同じ空気圧を経験するということに留意するべきである。加えて、フラップ101及び103は差動的に運動する(move differentially)。したがって、フラップ101及び103の先端の運動は、アナログ差動OP増幅回路の分野で知られている共通モード除去(common mode rejection)と同様の共通モード除去の挙動を有し(owns a common mode rejection behavior)、これは、復調フラップ101及び103の先端の変位差、すなわち、|d101-d103|が、変調フラップ105及び107が形成する空気圧によってほとんど影響を受けないということを意味する。
【0039】
図3によって、共通モード除去、すなわち、変調器から復調器への分離(modulator-to-demodulator isolation)を証明することが可能である。
図3は、デバイス100の等価回路モデルから生成されるシミュレーション結果を図示している。曲線d
101及びd
103は、それぞれ、フラップ101及び103の先端の運動/変位を表す。
図3において観測することができるように、変調フラップ105/107(P104)が生成する音圧に起因してd
101及びd
103がかなり有意に変動する場合であっても、
図3の中のd
101-d
103が示す曲線が表す差動運動は、(実質的に)一定に保たれる。すなわち、変調部分104が動作するときであっても、弁開口部112の幅/ギャップは一定となるであろう。言い換えると、変調器の運動は、復調器の機能及び性能に対して無視できる程度の影響を発生させるにすぎず、このことは、"変調器から復調器への分離"が意味することである。
【0040】
これに対して、復調器から変調器への分離(demodulator-to-modulator isolation)に関しては、フラップ101/103は、チャンバ115の中に第1次高調波共振(1
st order harmonic resonance)又は定在波(standing wave)を発生させるので、
図1から理解することができるように、フラップ105及びフラップ107に対してPが及ぼす圧力は、実質的に同じ大きさを有するが反対の極性を有し、フラップ105及びフラップ107の運動が、同様に、同じ大きさを有するが反対の極性を有する(P102に起因する)変化を経験するようにさせるであろう。このことは、同様に、大きさは同じであるが反対の極性を有して変化する(1つは105による超音波であり、もう1つは107による超音波である)2つの超音波を発生させるであろう。これら2つの超音波が(
図1に示されている点線が示す)バルブ開口部112の上の位置まで伝播するときに、それらの2つの超音波は、ある1つの圧力にマージされる(merged into one pressure)。この"マージ(merge)"の位置は、X軸又はX方向に沿ってデバイス100の中心で、105及び107の先端から等しい距離で生じるので、Pによって誘発される変化は、互いに相殺し/補償し、復調器/仮想的なバルブ操作の干渉をほとんど受けない(is largely free from the interference of demodulator/virtual-valve operation)正味の静止(net rest)を発生させるであろう。
【0041】
例示的に、
図4は、S
INが(650~22[kHz]の範囲の中にあり、且つ、等対数スケール間隔を有する)10トーンの等振幅テスト信号(10-tone equal amplitude test signal)であり、デバイス100の等価回路シミュレーションモデルが使用されるという条件の下で、デバイス100から1メートルだけ離れて測定される音圧レベル(SPL)のシミュレーションされている周波数応答をプロットしている。このシミュレーションにおいては、f
UC=192[kHz]となるように超音波搬送波周波数を設定し、且つ、f
D_V=f
UC/2=96[kHz]となるようにバルブ動作周波数を設定する。
【0042】
復調器から変調器への分離は、外部からのスペクトラム成分が(
図4の中のブロック矢印が指している)96[kHz]付近に存在しないことからも明らかであり、高い程度の分離を示している。
【0043】
結果として、これらの2つのフラップ対の運動の(101/103対105/107の)干渉は、(変調器における)共通モード対(復調器における)差動モードの直交性/配置によって最小化される。
【0044】
加えて、バルブが開いたままの時間の割合、すなわち、デューティファクタ(duty factor)は、デバイス100の出力に影響を及ぼす重要なファクタである。駆動電圧S101及びS103の振幅を増加させると、フラップ101及び103の運動の振幅を増加させることが可能であり、バルブ開口部112の最大開口幅(maximum open width)を増加させ、駆動電圧を高くすると、また、バルブ開口部のデューティファクタを高くするであろう。言い換えると、バルブ開口部112のデューティファクタ及びバルブ開口部112の最大開口幅/ギャップは、駆動電圧S101及びS103によって決定されてもよい。
【0045】
バルブの開口デューティファクタが50%に近づくときに、上記で言及されている等価回路シミュレーションモデルのうちの1つから生成される
図5に示されている例のように、V(開口)>0に分類されている曲線として示されている各々のバルブ開口の周期は、(
図1の中の点線領域で示されている)バルブ開口部112の上の位置において振幅変調されている超音波定在波の同じ半周期と重なる。
図5の中でV(p_vlv)に分類されている曲線として図示されているチャンバ内定在波にバルブ開口部112の開閉を同期させ及びタイミングを合わせる(synchronizing and timing-aligning the opening-closing of valve opening 112)ことによって、V(ep_vlv)に分類されている曲線として図示されている良好な形状の出力圧力パルスを発生させる。
【0046】
図5において、V(d2)-V(d3)に分類されている曲線は、フラップ101及び103の変位の差、すなわち、d
101-d
103を表し、V(開口)に分類されている曲線は、仮想的なバルブ112の開放の程度(degree of opening)を表す。|V(d2)-V(d3)|>THであるときに、V(開口)>0となり、THは、フラップ101及び103の厚さ、クラップ101とクラップ103との間のスリットの幅、境界層の厚さ等のパラメータが定義するしきい値である。良好な形状であるV(ep_vlv)は、V(ep_vlv)が図示しているパルスが、高度に対称であるV(p_vlv)とは異なり、高度に非対称であるということを指してもよい。出力圧力パルスの非対称性は、空気パルス生成デバイス、略して、APGデバイスが生成する空気パルスの低周波数成分(すなわち、可聴帯域における周波数成分)を示し、その低周波数成分は、APGデバイスにとって望ましい特徴である。非対称性が高くなるほど、空気パルスのベースバンド周波数成分は、より強くなるであろう。
図6に
図5の拡大図を図示し、1.68[kHz]のベースバンドサウンド信号(baseband sound signal)の包絡線に対応するV(ep_vlv)の非対称性を示す。本発明においては、フラップ101及び103の変位の差が、例えば、|V(d2)-V(d3)|>THとなる、といったように、しきい値よりも大きくなるときに、開口部(112)は、開かれ/形成され、又は、開かれている状態となり、それ以外のときは、閉じられ、又は、閉じられている状態となる。
【0047】
さらに、|V(d2)-V(d3)|>THであると定義されるバルブ開口のデューティファクタが、これらには限定されないが、50%に等しいか、又は、例えば、55%~60%の範囲の中にある、といったように、50%よりもわずかに大きいときに、最大出力が生じるということが観測される。これに対して、バルブ開口のデューティファクタが、例えば、80%~85%といったように、50%よりも有意に高いときに、チャンバ内超音波定在波(in-chamber ultrasonic standing wave)の半周期以上は、バルブを通過し、複数の異なる極性を有する定在波の複数の部分が互いに打ち消し合うことにつながり、デバイス100からのより低い正味SPL出力につながる。したがって、一般的に、バルブ開口のデューティファクタを50%近く、典型的には、50%と70%との間の範囲の中に維持することが望ましい(45%と70%との間の範囲の中のデューティファクタは、本発明の範囲の中にある)。
【0048】
デューティファクタのほかに、変調器から復調器への分離を保証するために、復調フラップ101/103の共振周波数fR_Vは、他の設計ファクタである超音波搬送波周波数fUCから十分に偏位させられる(be sufficiently deviated from the ultrasonic carrier frequency fUC)ことが示唆される。
【0049】
バルブ開口のデューティファクタが50%に等しいという制約の下で、フラップ101/103の任意の与えられている厚さについて、共振対駆動比(fR_V:fD_V又はfR_V/fD_V)が高いほど、バルブがより広く開くことが可能であるということを(等価回路シミュレーションモデルから)観測することが可能である。デバイス100の出力は、バルブ開口の最大幅と正の関係があるので、共振対駆動比を1よりも高くすることが望ましい。
【0050】
しかしながら、fR_VがfUC±max(fSOUND)の範囲の中に入るときに、フラップ101/103は、AM超音波定在波との間での共振を開始し、フラップ101/103の共通モード変形(common mode deformation)へと超音波エネルギーの一部を変換し、max(fSOUND)は、入力オーディオ信号SINの最大周波数を表してもよい。フラップ101/103のそのような共通モード変形は、フラップ101/103の上の体積を変化させ、その結果、影響を受ける周波数範囲にわたって、バルブ開口部112の近傍においてチャンバ115の内側の圧力の変動をもたらし、SPL出力を低下させることにつながるであろう。
【0051】
弁の共振によって誘導される周波数応答の変動(valve resonance induced frequency response fluctuations)を回避するために、(fUC±max(fSOUND))×Mの範囲の外にある共振周波数を有するようにフラップ101/103を設計することが望ましく、Mは、これらには限定されないが、製造公差(manufacturing tolerance)、温度(temperature)、標高(elevation)等のファクタを取り扱う(covering)ための安全マージンである。経験則として、一般的に、fR_V≦(fUC―20[kHz])×0.9におけるようにfUCよりも有意に低いfR_Vを有するか、又は、fR_V≧(fUC+20[kHz])×1.1におけるようにfUCよりも有意に高いfR_Vを有することが望ましい。20[kHz]は、人間の最も高い可聴周波数として受け入れられているため、ここでは、20[kHz]が使用されるということに留意するべきである。HD-/Hi-Res Audio等の用途においては、30[kHz]又は40[kHz]は、max(fSOUND)として採用されてもよく、上記の式は、それにしたがって修正される必要がある。
【0052】
加えて、w(t)及びz(t)は、振幅変調されている超音波音響波/空気波(amplitude-modulated ultrasonic acoustic/air wave (UAW))及び(複数のパルスを含む)超音波パルスアレイ(ultrasonic pulse array (UPA))の時間の関数を表すと仮定する。開口部112は、超音波搬送波周波数fUCの開口レートで周期的に形成されるので、w(t)に対するz(t)の比関数は、r(t)と表され、r(t)=z(t)/w(t)と表現されてもよく、超音波搬送波周波数fUCの開口レートに対して周期的である。言い換えると、z(t)は、時間領域におけるw(t)及びr(t)の乗算、すなわち、z(t)=r(t)・w(t)であると考えられてもよく、UAWに対して実行される同期復調操作は、時間領域におけるr(t)によるw(t)に対する乗算であると考えられてもよい。その乗算は、Z(f)が、周波数領域におけるW(f)及びR(f)の畳み込みであると考えられてもよい、すなわち、Z(f)=R(f)*W(f)となるということを意味し、*は、畳み込み演算子を示し、UAWに対して実行される同期復調は、周波数領域におけるR(f)とのW(f)の畳み込みであると考えられてもよい。r(t)が周波数fUCの割合で(with the rate of the frequency fUC)時間領域において周期的であるときに、R(f)は、周波数領域においては離散的となり、R(f)の周波数成分/スペクトラム成分は、fUCだけ等しく間隔を空けられる。したがって、R(f)とのW(f)の畳み込み、すなわち、同期復調操作は、(整数nによって)±n×fUCだけW(f)(又は、UAWのスペクトラム成分)をシフトさせるステップを伴う。ここでは、r(t)/w(t)/z(t)及びR(f)/W(f)/Z(f)は、フーリエ変換対を形成する。
【0053】
図12は、本発明のある1つの実施形態にしたがったAPGデバイス400の概略的な図である。デバイス400は、米国特許出願第17/553,806号の
図7から修正されているデバイスであり、本発明の
図1に示されているデバイス100と同様である。デバイス100と異なり、デバイス400は、フラップ対102のみを含む(フラップ対104を含まない)。フラップ対102は、(超音波搬送波周波数f
UCによって振幅変調されている空気圧変動を形成することである)変調操作を実行するとともに、(周波数f
UCでその振幅変調されている超音波搬送波に同期して開口部112を形成して、その振幅変調されている超音波空気圧変動の包絡線にしたがって空気パルスを発生させることである)復調操作を実行するように構成される。
【0054】
図12において、U104及びP104は、変調駆動信号SMに応答してフラップ対102が形成する圧力プロファイル及び気流プロファイルを表し、U102及びP102は、復調駆動信号±SVに応答してフラップ対102が形成する圧力プロファイル及び気流プロファイルを表す。ここでは、復調駆動信号は、フラップ対102が、(復調駆動信号+SV及び-SVが、大きさは同じで極性が反対であるということを意味する)差動駆動されて、復調操作を実行するということを強調するように、±SVによって表記される。例えば、上記のS101及び/又はS103は、-SV及び/又は+SVによって表わされてもよい。
【0055】
言い換えると、変調器及び復調器は、フラップ対102と同じ位置に配置されている(are co-located)。デバイス100と同様に、デバイス400のフラップ対102の膜構造(film structure)10は、変調を実行する共通モード運動のみならず復調を実行する差動モード運動を有するように作動させられる。
【0056】
言い換えると、"変調操作"及び"復調操作"は、同時に同じフラップ対102によって実行される。"変調操作"及び"復調操作"のこの併存は、
図13に示されている変調操作及び復調操作のような新たな駆動信号配線方式によって達成される。デバイス400は、フラップ101/103に配置されているアクチュエータ101A/103Aを含んでもよく、アクチュエータ101A/103Aは、上部電極(top electrode)及び下部電極(bottom electrode)を含んでもよいということを考慮すると、上部電極及び下部電極の双方は、変調駆動信号SM及び復調駆動信号±SVを受信してもよい。
【0057】
ある1つの実施形態において、アクチュエータ101A/103Aのうちの一方の電極は、共通モード変調駆動信号(common mode modulation-driving signal)SMを受信してもよく、他方の電極は、差動モード復調駆動信号S101(differential mode demodulation-driving signal)(-SV)/S103(+SV)を受信してもよい。例えば、
図13に示されている部分431乃至部分433は、
図12に示されている領域430の細部を図示している。部分431及び部分432に示されているように、アクチュエータ101A/103Aの下部電極は、共通モード変調駆動信号SMを受信し、一方で、アクチュエータ101A/103Aの上部電極は、差動モード復調駆動信号S101(-SV)/S103(+SV)を受信する。(部分432が示しているように)下部電極又は(部分433が示しているように)上部電極のうちのいずれかに適切なバイアス電圧V
BIASを印加してもよく、そのバイアス電圧V
BIASは、実際の要求にしたがって決定されてもよい。
【0058】
(部分433に示されている)ある1つの実施形態において、アクチュエータ101A/103Aのうちの一方の電極は、共通モード変調駆動信号SM及び差動モード復調駆動信号S101(-SV)/S103(+SV)の双方を受信してもよく、他方の電極は、適切にバイアスされる。部分433に示されている実施形態において、下部電極は、共通モード変調駆動信号SM及び差動モード復調駆動信号S101(-SV)/S103(+SV)を受信し、上部電極はバイアスされる。
【0059】
図13に示されている駆動信号配線方式は、(V
BIASを考慮することなく)(例えば、101A等の)一方のアクチュエータの印加される信号が、-SM-SVであり、(例えば、103A等の)他方のアクチュエータの印加される信号が、-SM+SVであるか又は-SM+SVを含むという目標を達成する。駆動信号配線方式は、実際の状況/要求にしたがって修正されてもよく又は変更されてもよいということに留意するべきである。フラップ対102に対して印加される2つの印加信号の間の共通モード信号成分が、変調駆動信号SM(+V
BIAS)を含み、フラップ対102に対して印加される2つの印加信号の間の差動モード信号成分が、復調駆動信号SVを含む限り、本発明の要件は満たされ、本発明の範囲の中に存在する。ここでは(又は、一般的に)、2つの任意の信号a及びbの間の共通モード信号成分は、(a+b)/2として表現され、2つの任意の信号a及びbの間の差動モード信号成分は、(a-b)/2として表現される。
【0060】
さらに、(駆動信号SMの結果としての)変調操作と(駆動信号±SVの結果としての)復調操作との間のクロスカップリングを最小化するために、ある1つの実施形態において、フラップ101及び103は、それらのフラップの機械的構成(mechanical construct)、寸法(dimension)、及び電気的特性(electrical characteristics)のいずれにおいてもミラー/対称対(mirrored/symmetric pair)となるように作成されるということに留意するべきである。例えば、フラップ101の片持ち梁の長さは、フラップ103の片持ち梁の長さと等しくなる必要があり、フラップ101の薄膜構造(membrane structure)は、フラップ103の薄膜構造と同じである必要があり、仮想的なバルブ112の位置は、フラップ101及びフラップ103の2つの支持壁(supporting walls)110の間の中央に、又は、それらの2つの支持壁から等しく間隔を空けて位置している必要があり、フラップ101に配置されるアクチュエータのパターンは、フラップ103のアクチュエータのパターンの鏡面配置されている必要があり(should mirror)、フラップ101及び103に配置されるアクチュエータへの金属配線は、対称となっている必要がある。ここでは、いくつかのアイテムは、これらには限定されないが、鏡面配置されている/対称な対(又は、フラップ101及び103は、鏡面配置されている/対称となっている)の呼び名となっている。
【0061】
図14は、IEC711ふさがれている耳エミュレータ(IEC711 occluded ear emulator)におけるデバイス400のある1つの物理的な実施形態の周波数応答測定結果のセットを図示し、部分431に示されている駆動方式は、デバイス400を駆動させるのに使用され、下部電極のための変調駆動信号SMのVrmsは、6[Vrms]であり、上部電極のための復調駆動信号±SVのVpp(ピークトゥピーク電圧)は、5[Vpp]から30[Vpp]まで掃引され、GRAS RA0401耳シミュレータ(GRAS RA0401 ear simulator)は、音響結果を測定するのに使用される。デバイス400の動作周波数(すなわち、超音波搬送波周波数f
UC)は、160[kHz]であり、デバイス寸法は、(例えば、C=336[m/s]の場合に、W115≒λ
UC=C/f
UC≒2.10[mm]となる、といったように)それらにしたがって設計される。
図14から理解することができるように、デバイス400は、(100[Hz]よりも小さな周波数について少なくとも99[dB]となる、といったように)低周波数帯域において高いSPLの音声を発生させることが可能である。
【0062】
さらに、
図15は、
図14に示されているデバイス400の測定結果の分析を図示している。
図15において、
図14の(太い破線で示されている)100[Hz]におけるSPL及び(太い実線で示されている)19[Hz]におけるSPLは、Vvtop(Vpp)に対してプロットされ、Vvtop(Vpp)は、部分431との関連で示されているように、上部電極に対して印加される復調駆動信号のピークトゥピーク電圧である。SPLは、Vvtopが増加するにつれて、増加するということを
図14及び
図15から理解することが可能である。加えて、デバイス100の等価集中回路モデルのシミュレーション結果は、また、(バルブ駆動信号又は)復調駆動信号の振幅が増加するにつれて、SPLが増加するということで一致している。したがって、本発明の空気パルス生成デバイスが発生させる音量は、復調駆動信号の振幅によって制御されてもよいということを理解することが可能である。
【0063】
図14及び
図15の結果に基づいて、同じ位置にある変調器復調器(modulator-demodulator co-location)の概念が有効であるということを結論付けることが可能であり、このことは、デバイス400が実行する(振幅変調されている超音波空気圧変動を形成する)変調及び(同期して開口を形成して、非対称の空気パルスを発生させる)復調が、APPS効果を発生させることに成功しているということを意味する。したがって、(例えば、デバイス100のW115等の)チャンバ幅を縮小することが可能である。
【0064】
図17は、本発明のある1つの実施形態にしたがったAPGデバイスC00の概略的な図である。そのデバイスC00は、フラップ101及び103を含む上記で説明されているAPGデバイスと同様である。フラップ101及び103は、また、
図13に示されている駆動方式によって駆動されてもよい。
【0065】
これらのデバイスとは異なり、デバイスC00は、キャップ構造を含まない。上記で説明されているAPGデバイスと比較して、デバイスC00は、非常に単純な構造を有し、より少ないフォトリソグラフィエッチングステップを必要とし、複雑な導管製造ステップを排除し、そして、2つのサブ構成要素又はサブアセンブリを結合する必要を回避する。デバイスC00の製造コストは、有意に減少させられる。
【0066】
キャップ構造の下に形成されて圧縮されるべきチャンバが存在しないので、デバイスC00が生成する音圧は、主として、フラップ(101及び103)の運動の加速度から生じる。(変調駆動信号SMに応答する)フラップ101及び103の共通モード運動の加速度のタイミングに(復調駆動信号±SVに応答する)仮想的なバルブ112の開放のタイミングを合わせることによって、デバイスC00は、非対称の空気(圧力)パルスを発生させることが可能となるであろう。
【0067】
フラップ101及び103を囲む空間は、2つの部分空間に分割され、それらの2つの部分空間のうちの1つの部分空間は、Z>0又は+Zの部分空間であり、もう1つの部分空間は、Z<0又は-Zの部分空間である。フラップ101及び103のいずれかの共通モード運動については、音圧波の対が生成され、2つの部分空間のうちの1つの部分空間は、+Zの部分空間であり、もう1つの部分空間は、-Zの部分空間である。これら2つの音圧波は、大きさは同じであるが極性は反対である音圧波となるであろう。結果として、仮想的なバルブ112が開放されるときに、仮想的なバルブ112の近傍にある2つの空気量の間の圧力差は、互いを中和するであろう。したがって、差動モード運動がピークに達するタイミング、すなわち、VV112が最大開口に達するタイミングが、共通モード運動の加速度がピークに達するタイミングと整列されるときに、共通モード運動が生成すると考えられる音圧は、仮想的なバルブ112の開放に起因して、抑制される/排除されることとなり(shall be subdued/eliminated)、フラップ101及び103の2つの対向する側における2つの音圧(two acoustic pressures on the two opposite sides of the flaps 101 and 103)の間の自己中和(auto-neutralization)を引き起こし、2つの音圧は、同じ大きさを有するが、反対の極性を有するであろう。その自己中和は、仮想的なバルブ112が開放されるときに、デバイスC00は、(ほぼ)正味ゼロの空気圧を発生させるであろうということを意味する。したがって、仮想的なバルブ112の開放期間(opened period)が、共通モードのフラップの運動の加速度の(2つの)極性のうちの1つの時間期間と重複するときに、デバイスC00は、極めて非対称なシングルエンド(SE)空気圧波形/パルス又はSEに似ている空気圧波形/パルスを発生させることとなる。
【0068】
本発明において、SE(SEに似ている)波形は、その波形があるレベルに関して(実質的に)単極であるということを指してもよい。SE音圧波は、(例えば、1ATM等の)周辺圧力に関して(実質的に)単極である波形を指してもよい。
【0069】
仮想的なバルブ112の開放は、音圧パルスの強度/振幅を決定するのではなく、"ほぼ正味ゼロの圧力"(又は、自己中和(auto-neutralization))の効果がどの程度強いかを決定するということに留意するべきである。仮想的なバルブ112の開放が広いときに、"正味ゼロの圧力"の効果は強く、自己中和は完全であり、非対称性は強く/明白になり、その結果、強い/有意なベースバンド信号又はAPPS効果をもたらすであろう。反対に、仮想的なバルブ112の開放が狭いときには、"正味ゼロの圧力"の効果は弱く、自己中和は不完全であり、非対称性が低下し、その結果、弱いベースバンド信号又は弱いAPPS効果をもたらす。
【0070】
FEMシミュレーションにおいては、デバイスC00は、20[Hz]で145[dB]のSPLを発生させることが可能である。そのFEMシミュレーションから、デバイスC00が発生させるSPLが、デバイス600が発生させるSPL(20[Hz]で約157[dB]のSPL)よりも約12[dB]低いにもかかわらず、同じ駆動条件の下で、デバイスC00の全高調波歪(total harmonic distortion (THD))は、デバイス600のTHDよりも10[dB]~20[dB]低いということが観測される。したがって、そのシミュレーションは、キャップ構造を有しない又は内部に形成されるチャンバを有しないAPGデバイスであるデバイスC00の有効性を検証する。
【0071】
VV開口のタイミングが、チャンバの中のピーク圧力のタイミング又は共通モード薄膜運動(common mode membrane movement)のピーク速度/加速度のタイミングに整列されるという記述は、黙示的に、±e%の公差(tolerance)が許容可能であるということを意味するということに留意するべきである。すなわち、VV開口のタイミングがチャンバの中のピーク圧力又は共通モード薄膜運動のピーク速度/加速度の(1±e%)に整列される場合は、また、本発明の範囲の中にあり、e%は、実際の要求に応じて、1%、5%、又は10%であってもよい。
【0072】
パルス非対称性に関して、
図18は、非対称性の程度が異なる(1つの操作サイクルT
CYの中の)複数のフルサイクルパルス(full-cycle pulses)を図示している。本発明において、非対称性の程度は、p
1に対するp
2の比によって評価されてもよく、p
1>p
2であり、p
1は、あるレベルに対して第1の極性を有する(with a first polarity with respect to a level)第1の半サイクルパルス(first half-cycle pulse)のピーク値を表し、p
2は、そのレベルに対して第2の極性を有する第2の半サイクルパルスのピーク値を表す。音響領域において、そのレベルは、周辺条件(ambient condition)、すなわち、周辺圧力(ゼロ音圧(zero acoustic pressure))又はゼロ音圧空気流(zero acoustic airflow)のうちのいずれかに対応してもよく、本発明における空気パルスは、空気流パルス又は空気圧パルスのうちのいずれかを指してもよい。
【0073】
図18(a)は、r=p
2/p
1>80%の比を有するフルサイクルパルスを図示している。
図18(a)に示されているフルサイクルパルス又はr=p
2/p
1≒1の比を有するフルサイクルパルスは、非対称性の程度が低い。
図18(b)は、40%≦r=p
2/p
1≦60%の比を有するフルサイクルパルスを図示している。
図18(b)に示されているフルサイクルパルス又はr=p
2/p
1≒50%の比を有するフルサイクルパルスは、非対称性の程度が中程度である。
図18(c)は、r=p
2/p
1<30%の比を有するフルサイクルパルスを図示している。
図18(c)に示されているフルサイクルパルス又はr=p
2/p
1→0の比を有するフルサイクルパルスは、非対称性の程度が高い。
【0074】
上記で説明されているように、非対称性の程度が高いほど、超音波空気パルスのAPPS効果及びベースバンドスペクトラム成分が強くなる。本発明において、非対称空気パルスは、非対称性の程度が少なくとも中程度である空気パルスを指し、r=p2/p1≦60%を意味する。
【0075】
本発明のAPGデバイスの復調操作は、変調操作によって発生させられる超音波空気圧変動の振幅にしたがって非対称空気パルスを発生させることであるということに留意するべきである。ある1つの見解によれば、本発明の復調操作は、無線通信システムにおける振幅変調(AM)包絡線検波器の中の整流器と同様である。
【0076】
無線通信システムにおいては、本発明の技術分野において知られているように、無線AM(非コヒーレント)復調器の一種である包絡線検波器は、整流器及びローパスフィルタを含む。その包絡線検波器は、その入力振幅変調信号(input amplitude modulated signal)に対応する包絡線を発生させるであろう。包絡線検波器の入力振幅変調信号は、通常、r=p2/p1→1の比を有して対称性が高い。その整流器の目的の1つは、対称な振幅変調信号を変換し、それによって、整流されている振幅変調信号がr=p2/p1→0の比を有して非対称性が高くなるようにすることである。非対称性が高い整流されているAM信号をローパスフィルタリングした後に、振幅変調信号に対応する包絡線を再生する。
【0077】
(r=p2/p1→0の比を有する)非対称な空気パルスへと(r=p2/p1→1の比を有する)対称な超音波空気圧変動を変換する本発明の復調操作は、AM復調器としての包絡線検波器の整流器と同様であり、自然環境及び人間の聴覚系(又は、マイクロホン等のサウンド検知デバイス)にローパスフィルタリング操作を任せ、それによって、入力オーディオ信号SINに対応するサウンド/音楽を再生し、聴取者が知覚し、又は、サウンド検知機器によって入力オーディオ信号SINに対応するサウンド/音楽を測定することが可能である。
【0078】
APGデバイスの復調操作が非対称性を作成することが極めて重要である。本発明においては、パルス非対称性は、超音波空気圧変動を生成する薄膜(フラップ)の運動に整列される開放の適切なタイミングに依存する。複数の異なるAPGの構成は、タイミングアラインメント(timing alignment)の異なる方法を有する。言い換えると、開口部112を形成するタイミングを指定し、それによって、APGデバイスが発生させる複数の空気パルスは、非対称となる。
【0079】
非対称の空気パルスを発生させるAPGデバイスは、また、空気ポンプ/運動用途にも適用されてもよく、その空気ポンプ/運動用途は、熱放散(heat dissipation)及び換気(ventilation)に適用されてもよく、或いは、冷却、乾燥、又は他の機能を有してもよい。この点に関して、本発明のAPGデバイスは、また、空気流生成デバイス(の一種)であると考えられてもよい。
【0080】
物理的な表面運動を使用して音響波を生成する(例えば、ダイナミックドライバ等の)従来のスピーカは、前方放射波/後方放射波相殺(front-/back-radiating wave cancellation)の問題に直面しているということに留意するべきである。物理的な表面が、空気の塊の運動(airmass movement)を引き起こすように運動するときに、一対の音波、すなわち、前方放射波(front-radiating wave)及び後方放射波(back-radiating wave)が生成される。それらの2つの音波は、互いの大部分を相殺し、前方放射波/後方放射波を単独で測定する場合よりもはるかに低くなる正味のSPLをもたらすであろう。
【0081】
前方放射波/後方放射波相殺の問題のために共通して採用される解決方法は、後方筐体(back enclosure)又は開放型バッフル(open baffle)のうちのいずれかを利用することである。双方の解決方法は、例えば、波長が1.5[m]であり周波数が230[Hz]である等の対象となる最も低い周波数の波長に匹敵する物理的なサイズ/寸法を必要とする。
【0082】
従来のスピーカと比較して、本発明のAPGデバイスは、(従来のスピーカよりもはるかに小さい)わずか数十平方ミリメートルを占有するにすぎず、特に、低周波数において驚異的なSPLを発生させる。
【0083】
本発明の上記の利点は、非対称の振幅変調されている空気パルス(asymmetric amplitude modulated air pulses)を発生させることによって達成され、変調部分は、薄膜運動によって対称の振幅変調されている空気圧変動(symmetric amplitude modulated air pressure variation)を発生させ、復調部分は、仮想的なバルブによって非対称の振幅変調されている空気パルス(asymmetric amplitude modulated air pulses)を発生させる。変調部分及び復調部分は、同じ製造層の中に製造されるフラップ対によって実現され、そのフラップ対は、製造/生産の複雑さを減少させる。変調操作は、フラップ対の共通モード運動によって実行され、復調操作は、フラップ対の差動モード運動によって実行され、(共通モード運動による)変調操作及び(差動モード運動による)復調操作は、単一のフラップ対によって実行されてもよい。差動モード運動と共通モード運動との間の適切なタイミングアラインメントは、出力空気パルスの非対称性を高める。
【0084】
上記で言及されているように、この出願のAPGデバイスは、(小型の)空気ポンプとして機能することが可能であり、非対称の空気パルスを発生させることが可能であり、冷却、乾燥、除湿、熱放散、及び/又は換気の用途に適用されてもよく、(非対称の)空気パルスは、1つの方向に絶えず正味の空気移動を形成するように発生させられる。
【0085】
さらに、空気流用途のための本発明のAPGデバイスは、例えば、空気中での(例えば、(PM: 粒子状物質(Particulate Matter))等の)PM2.5又はPM10、或いは、(例えば、オゾン(O3)、二酸化窒素(NO2)、二酸化硫黄(SO2)、及び一酸化炭素(CO)等の)化合物等の)特定の粒子の密度を検知する空気品質検知デバイスの中に配置されてもよい。したがって、空気品質検知デバイスのサイズを有意に減少させることが可能である。
【0086】
例えば、
図20は、本発明のある1つの実施形態にしたがった空気パルスAPの概略的な図を図示している。それらの空気パルスは、(例えば、10等の)膜構造(film structure)を含むこの出願の(例えば、C00、500、又は100等の)APGデバイスによって生成されてもよい。上記で言及されているように、APGデバイスの膜構造は、(例えば、96[kHz]又は192[kHz]等の)超音波パルスレートf
pulseで空気パルスAPを生成する運動を実行するように作動させられてもよく、その超音波パルスレートf
pulseは、例えば、超音波搬送波周波数f
UCの操作サイクルT
CYの逆数であってもよい。この場合には、超音波パルスレートf
pulseは、超音波搬送波周波数f
UCであってもよい。空気パルスAPは、単一の方向に向かって正味の空気流を発生させることが可能である。結果として、そのAPGデバイスは、(小型の)空気ポンプとして機能することが可能である。
【0087】
ある1つの実施形態において、第1の空気パルスAP1は、例えば、絶えず、第1の方向D1等のある1つの単一の方向に向かって第1の正味の空気流を発生させてもよい。ある1つの例として
図20を利用すると、第1の時間的な期間T1(first period of time T1)の間に、空気パルスAPのすべては、第1の方向D1に向かう。第1の時間期間T1(first time period T1)が、少なくとも、最小可聴周波数の逆数であるか又は最小可聴周波数の逆数よりも大きいときに、第1の空気パルスAP1が発生させる第1の正味の空気流は、常に1つの単一の方向D1に向かっていると考えられてもよい。例えば、最小可聴周波数が10[Hz]であると認識されている場合には、第1の時間期間T1が、少なくとも、0.1[s]以上であるときに、第1の正味の空気流は、常に1つの単一の方向D1に向かっていると考えられてもよい。第1の方向D1に向かう第1の空気パルスAP1に対応する第1の振幅は、同じであってもよく又は同じでなくてもよい。
【0088】
これに対して、APGデバイスは、第2の空気パルスAP2を発生させてもよく、それらの第2の空気パルスAP2は、絶えず、第1の方向D1とは反対の第2の方向D2に向かって第2の正味の空気流を発生させてもよい。ある1つの実施形態において、APGデバイスが、有意な空気流又は空気の運動を発生させ、第1の方向D1と第2の方向D2との間で切り替わる空気パルスが、識別できないときに、第1の正味の空気流は、期間T1(period T1)の間に、絶えず方向D1に向かっていると考えられてもよく、及び/又は、第2の正味の空気流は、期間T2(period T2)の間に、絶えず方向D2に向かっていると考えられてもよい。
【0089】
膜構造(film structure)は、(例えば、±SV等の)復調駆動信号及び(例えば、SM等の)変調駆動信号によって作動させられてもよい。この出願において、SMは、また、駆動信号の一種である変調信号を指してもよい。同様に、±SVは、また、駆動信号の一種である復調信号を指してもよい。
【0090】
図2は別にして、
図21は、それらの信号の高電圧/低電圧の間の遷移を無視して、本発明の他の実施形態にしたがった復調信号±SV及び変調信号SMの概略的な波形を図示している。
図21に示されているように、変調/駆動信号SMは、(非ゼロの)直流(DC)オフセットを含む(例えば、S
IN等の)入力信号にしたがって生成されてもよい。言い換えると、その入力信号は、これらには限定されないが、単に、DC信号であってもよい。
【0091】
ある1つの実施形態において、DCオフセットは、正味の空気流の方向に関連していてもよい。例えば、第1の時間的な期間T1(first period of time T1)の間に、空気パルス(AP)は、DCオフセットが正であることに応答して、絶えず第1の方向D1に向かって第1の正味の空気流を発生させてもよい。これに対して、第2の時間的な期間T2の間に、APGデバイスが生成する空気パルスは、DCオフセットが負であることに応答して、絶えず第1の方向D1とは反対の第2の方向D2に向かって第2の正味の空気流を発生させてもよい。この点に関して、本発明のAPGデバイス又は空気流生成デバイスは、電圧を空気流へと変換することが可能である電圧から空気流への変換器(voltage-to-airflow converter)であると考えられてもよい。
【0092】
DCオフセットの極性のほかに、また、変調信号(SM)と復調信号(±SV)との間の位相を使用して正味の空気流の方向を決定し/制御してもよい。例えば、
図21において、復調信号±SVの遷移は、変調信号SMが低レベルとなっている間隔に整列されている(aligned to interval of the modulation signal SM being low)。この場合には、APGデバイスは、例えば、第3の方向に向かって空気流を発生させてもよい。復調信号±SV(の位相)がシフトされ、それによって、復調信号±SVの遷移が、変調信号SMが高レベルとなっている間隔に整列される(aligned to interval of the modulation signal SM being high)ときに、APGデバイスは、第3の方向とは反対の第4の方向に向かって空気流を発生させるであろう。要するに、APGデバイスが発生させる正味の空気流の方向は、変調信号と復調信号との間の位相(差)を使用して決定され/制御されてもよい。
【0093】
正味の空気流の強さ/体積は、DCオフセットの大きさに関連してもよく又はDCオフセットの大きさの関数であってもよい。(第1の方向又は第2の方向のいずれかである)空気流の方向を維持することによって、APGデバイスは、熱を放散し、除湿し、換気を提供し、又は空気循環を促進することが可能である。この場合には、APGデバイスは、ファンレス送風機であると考えられてもよい。すなわち、特に、そのAPGデバイスに適用される駆動信号又は変調駆動信号が、非ゼロのDC成分/DCオフセットを含む入力信号にしたがって生成されるときに、C00、500、又は100は、また、ファンレス送風機であると考えられてもよい。本発明において、APGデバイス、空気流生成デバイス、及び送風機の語は、互換的に使用されてもよく、そのような互換的な使用は、デバイス100、500、C00、又はK00が、また、例えば、空気流生成デバイス又は送風機であると考えられてもよいということを意味する。
【0094】
代替的に、
図2に示されているように、入力オーディオ信号S
INは、音楽等のオーディオサウンド信号の電気的表現であってもよい。交流(AC)オーディオ成分を含む入力オーディオ信号S
INは、非ゼロのDC電圧/DCオフセットをさらに含んでもよいということに留意するべきである。変調信号SMは、DCオフセットを含む入力(オーディオ)信号S
INにしたがって生成されてもよい。この場合には、APGデバイス又はファンレス送風機は、同時に単方向の正味の空気流を生成しながらサウンドを発生させてもよい。
【0095】
ある1つの実施形態において、APGデバイス、空気流生成デバイス、又はファンレス送風機は、以降で説明される(イヤホン等の)ウェアラブルサウンドデバイスの中に配置されてもよい。ウェアラブルサウンドデバイスの中にAPGデバイス、空気流生成デバイス、又はファンレス送風機を配置するときに、APGデバイス、空気流生成デバイス、又はファンレス送風機は、同時に外耳道の乾燥/冷却及び音楽再生を実現することが可能である。
【0096】
上記で言及されているように、空気流生成デバイス、APGデバイス、又はファンレス送風機は、熱放散用途に使用されてもよい。熱源からの熱を放散させるために、熱源の近くに戦略的にAPGデバイスを配置してもよい。例えば、
図22は、本発明のある1つの実施形態にしたがったAPGデバイスG00の複数の異なる構成の概略的な図である。
図23(a)、(b)、及び(c)は、それぞれ、熱源HSの上に、熱源HSの下に、又は熱源HSのそばに配置されているAPGデバイスG00を図示している。熱源HSは、CPU、GPU、又は熱を生成する任意の構成要素であってもよい。APGデバイスG00及び/又は熱源HSは、(例えば、ホストコンピュータ、ウェアラブルサウンドデバイス、ラップトップ、タブレット、携帯電話、拡張現実感デバイス、仮想現実感デバイス、又は複合的な現実感デバイス等の)電子デバイス/ホストデバイスのハウジングの中に配置されてもよい。
【0097】
図23は、本発明のある1つの実施形態にしたがったホストデバイス23HDのAPGデバイスH00の概略的な図である。ホストデバイス23HDの中に統合されているAPGデバイスH00が空気流を発生させるために、ホストデバイス23HDは、そのような空気流を確立するための適切な通気口VNTを含んでもよい。通気口VNTは、ホストデバイス23HDの縁/側面に沿った複数の穴であってもよく、望ましい(冷却/乾燥)空気流を促進するように戦略的に配置されてもよい。ある1つの実施形態において、ホストデバイス23HDは、これらには限定されないが、パーソナル電話/携帯電話等のパーソナルデバイス/携帯デバイスであってもよい。
【0098】
チャンバ(又は、ホストデバイス23HD)の中に(例えば、H00等の)1つのAPGデバイスが存在するときに、そのAPGデバイス(H00)は、注入モード(pump-in mode)で動作してもよい。その注入モードにおいて、空気は、APGデバイスH00を通ってホストデバイス23HDに入り、通気口VNTは、確立されている空気流のための出口として機能してもよい。APGデバイスH00によって水が検出されるときに、水害防止用のAPGデバイスH00は、直ちに注入を停止して、ホストデバイス23HDへの水の浸入を防止してもよい。代替的に、APGデバイスH00は、排出モード(pump-out mode)で動作してもよく、ホストデバイス23HDの内部空間を低圧状態にして、通気口VNTを通じてホストデバイス23HDの中に正味の空気流を引き込んでもよい。
【0099】
ホストデバイスは、そのホストデバイスの中に配置される1つ又は複数のAPGデバイスを含んでもよい。例えば、
図24は、本発明のある1つの実施形態にしたがったホストデバイス24HDのAPGデバイスJ00a及びJ00bの概略的な図である。ホストデバイス24HDの中に配置される2つのAPGデバイスJ00a及びJ00bは、ホストデバイス24HDの中の空間を換気するように構成される。ある1つの実施形態において、ホストデバイス24HDは、ホストコンピュータであってもよく、そのホストコンピュータの(例えば、幅/長さ/高さ等の)寸法は、限定されない。
【0100】
ホストデバイス24HDの内側の空間は、整理されていない/分割されていない(unorganized/undivided)空間であってもよい。ホストデバイス24HDは、気流を導くように設計されている特定のパターンを有していなくてもよい。しかしながら、APGデバイスJ00a及びJ00bの配置は、適切な通風(adequate cross ventilation)のために不可欠である。
【0101】
図24(a)に示されているように、APGデバイスJ00a及びJ00bは、これらには限定されないが、ホストデバイス24HDの(例えば、Wa、Wb等の)対向面/非隣接面(opposite/nonadjacent faces)に/対向面/非隣接面の近傍に、斜めに配置されてもよく、非対向配置されてもよく、整列されないで配置されてもよい。そのような配置の理由は、互いに直接的に対向してはいないが、互いに真向かいにAPGデバイスJ00a及びJ00bを配置すると(placing the APG devices J00a and J00b across from, but not directly opposite, each other)、空気がホストデバイス24HDを通って進む経路を最適化する(optimize the path air follows through the host device 24HD)ことが可能であるためである。したがって、冷却空気が最も必要とされる場所に空気流を導くことが可能である。そのほかに、APGデバイスJ00a及びJ00bのそれぞれの前方波を打ち消す可能性のあるAPGデバイスJ00a及びJ00bの後方波は、ホストデバイス24HDの(例えば、Wa、Wb等の)対向面/壁のおかげで互いを通じて漏れる可能性が低くなるので、APGデバイスJ00a及びJ00bを通過することなく、低周波音を遮断することが可能である。
【0102】
ある1つの実施形態において、APGデバイスJ00a及びJ00bからの音圧の間での直接的な混合が起こらないこと(the absence of direct mixing between sound pressure from the APG devices J00a and J00b)は、ホストデバイス24HDが、適応補償アルゴリズム(adaptive compensation algorithm)を採用することを可能とし、その適応補償アルゴリズムは、リアルタイムのチャンバ圧力データを利用して、APGデバイスJ00a及びJ00bの動作を操ってもよく(may manipulate the operation)、APGデバイスJ00a及びJ00bによる予期しないエラーを適応補償アルゴリズムに導入することなく最適な性能を保証する。
【0103】
ある1つの実施形態において、APGデバイスJ00a及びJ00bは、実質的に平行な状態にあってもよい。ある1つの実施形態において、APGデバイスJ00a及びJ00bが位置する(例えば、Wa、Wb等の)面は、最も離れていてもよい。ある1つの実施形態において、APGデバイスJ00a及びJ00bは、上面図(
図24(a))では整列されていなくてもよいが、側面図(
図24(b))では整列されていてもよい。
【0104】
APGデバイスJ00aのDCオフセット及びAPGデバイスJ00bのDCオフセットは、反対の極性を有していてもよい。この極性の対照(polarity contrast)は、プッシュプル方式のアクティブな空気流冷却経路(push-pull active airflow cooling pathway)を作成するのに役立つ。
【0105】
空気流入口への塵埃の蓄積(dust accumulation on the airflow inlet)は、時間の経過とともに増加する傾向があり、空気流を徐々に詰まらせる(gradually clog up airflow)場合がある。ある1つの実施形態において、自己洗浄目的のために、APGデバイスJ00aのDCオフセットは、(例えば、正の又はそれ以上の)第1の値と(例えば、負の又はそれ以下の)第2の値との間で切り替わり/交互に入れ替わって(switch/alternate)、(例えば、数分毎に)規則的に/不規則に空気流を反転させてもよく、それにより、塵埃の蓄積を最小化する。同様に、APGデバイスJ00aのDCオフセットは、APGデバイスJ00aの切り替えと同期して、(例えば、第2の値、負の値、又はしきい値を下回る値等の)第3の値と(例えば、第1の値、正の値、又はしきい値を上回る値等の)第4の値との間で切り替わってもよい。結果として、蓄積されている塵埃は、ほとんどが吹き飛ばされ、空気流を維持することが可能である。この自己洗浄メカニズムは、高熱発生用途が延長されている時間にわたって持続的な空気流を必要とする(例えば、アクション映画の鑑賞又はダンジョンゲームをすること等の)状況に特に適している。
【0106】
ある1つの実施形態において、自己洗浄の目的のために、時折、"吐き出す(puff)"操作を採用してもよい。例えば、APGデバイスJ00aは、(第1のタイムスロットにおいて継続的に)中程度の速度で空気を注入してもよく(may pump in)、APGデバイスJ00bは、(第1のタイムスロットにおいて(例えば、2回~3回といったように)断続的に)高速で空気を排出してもよい(may pump out)。その次に、役割は反対になり、APGデバイスJ00bは、(第2タイムスロットにおいて継続的に)中程度の速度で空気を注入してもよく、APGデバイスJ00aは、(第2のタイムスロットにおいて(例えば、2回~3回といったように)断続的に)高速で空気を排出してもよい。全体的なサイクルは、約1秒かかる場合がある。そのような吐き出す操作(puffing operation)は、ホストデバイスの電源ボタンが押されるたびごとに頻繁に有効化されてもよく、(例えば、"ポン(pon)"、"ポン"、"ポン"、"ポン"等の)モーターバイクの始動音を再生することによって偽装されてもよい(may be disguised)。結果として、蓄積されている塵埃をほとんど除去することが可能であり、気流を維持することが可能である。
【0107】
APGデバイスは、(例えば、内耳サウンドデバイス、イヤホン、ヘッドホン、又は補聴器等の)ウェアラブルサウンドデバイスの中に配置されて、外耳道を換気してもよい。外耳道換気/乾燥は、長期使用による細菌及び真菌の増殖が引き起こす感染を防止することができる。
【0108】
例えば、
図25は、本発明のある1つの実施形態にしたがったホストデバイス25HDの空気流生成デバイスK00の概略的な図である。ホストデバイス25HDは、イヤホン又は補聴器等のウェアラブルサウンドデバイスであってもよい。ウェアラブルサウンドデバイス25HDは、空気流生成デバイスK00を含む。空気流生成デバイスK00は、外耳道の乾燥/除湿/換気を達成するために、ユーザがそのウェアラブルサウンドデバイス25HDを装着するときに外耳道に向かって又は外耳道の外側に向かって一定の空気流又は(正味の)空気運動を提供するように構成される。
図25(a)は、ホストデバイス25HDを図示しており、
図25(b)及び(c)は、それぞれ、空気流生成デバイス(又はAPG)デバイスK00の正面図及び背面図を提供する。
【0109】
ホストデバイス25HD(すなわち、ウェアラブルサウンドデバイス)の中の空気流生成デバイス(又は、APGデバイス)K00は、ホストデバイス25HDの内部に、ホストデバイス25HDの中に、又はホストデバイス25HDの外部に一定の空気流を発生させてもよく、外耳道の冷却又は乾燥を促進し、長時間の使用による細菌及び真菌の増殖が引き起こす感染を防止することが可能である。
【0110】
加えて、ホストデバイス25HDは、(例えば、そのホストデバイス25HDのハウジングK04に)少量の空気流に起因する圧力の解放を可能にする適切な通気口を含んでもよく、その通気口は、ホストデバイス25HD又は外耳道の中の空気を絶えず新しくし、より快適な長時間の装着体験をもたらすことが可能である。ある1つの実施形態において、その通気口は、これらには限定されないが、恒久的に開いたままであるように設計されてもよい。加えて、ハウジングK04の寸法、形状、又は場所は、限定されず、実際の要求にしたがって設計されてもよい。
【0111】
ウェアラブルサウンドデバイスの中に配置される(例えば、K00等の)空気流生成デバイスは、APGデバイスには限定されない。ウェアラブルサウンドデバイスの中に配置されるとともに一定の気流を発生させることが可能である任意のデバイスは、本発明の要件を満足すればよく、本発明の範囲の中に入る。
【0112】
正味の空気流の強さ/体積は、ホストデバイス25HDの中に配置される(例えば、湿度センサ又は温度計等の)センサの出力に応答して、動的に、プログラム的に、自動的に、制御され/調整されてもよく、又は、ユーザが手動で制御し/調整してもよい。
【0113】
言い換えると、ホストデバイス25HD又はウェアラブルサウンドデバイス25HDは、(例えば、
図25の中のK02等の)センサを含んでもよく、空気流生成デバイス(又は、APGデバイス)K00が発生させる気流の体積は、センサ(K02)の検知結果にしたがって調整されてもよい。ある1つの実施形態において、センサK02は、湿度/温度センサであってもよく、空気流生成デバイス(又は、APGデバイス)K00が発生させる空気流の体積は、これらには限定されないが、センサK02の検知結果にしたがって調整されてもよい。ホストデバイス25HDの中のセンサK02の位置は、これらには限定されないが、実際の要求にしたがって最適化されてもよいということに留意するべきである。
【0114】
ユーザは、手動でウェアラブルサウンドデバイスを制御することによって、正味の空気流の強さ/体積を変更し/調整してもよく、代替的に、ホストデバイス25HDの中に配置されるか又は無線接続/有線接続を介して空気流生成デバイスK00に通信可能に結合されるセンサからの指示信号にしたがって、空気流生成デバイスK00をトリガし/起動してもよい。正味の空気流の強さ/体積は、(例えば、±SV等の)復調(駆動)信号及び/又は(例えば、SM等の)変調(駆動)信号の振幅を使用して調整されてもよい。
【0115】
一定の振幅の空気パルスを生成する(例えば、K00等の)APGデバイスは、上記に記載されているエネルギーリサイクルを利用することによって、低い消費電力を有するように設計される。
【0116】
要するに、オーディオが必要ではない用途において、(送風機モードで動作させられる)ホストデバイス25HDは、バッテリによって給電されてもよく又は給電されなくてもよく、空気パルス(AP)は、絶えず1つの方向に向かって正味の空気の運動を発生させて、外耳道を乾燥させてもよい(又は、ホストデバイス25HDが以前に生成した熱を放散させてよい)。1つの(単一の)方向に空気を移動させる能力を欠く電気力学的な又は静電的な等の伝統的なスピーカ技術とは異なり、単方向の空気流が可能である本発明のAPGデバイス又は(例えば、K00等の)空気流生成デバイスは、換気のための解決方法を提供する。
【0117】
ウェアラブルサウンドデバイス、サウンド発生デバイス、APGデバイス、及びエネルギーリサイクルのための回路の細部又は修正は、米国特許出願第62/572,405号、米国特許出願第62/575,672号、米国特許出願第62/579,088号、米国特許出願第62/579,914号、及び米国特許出願第63/437,371号の中に開示され、それらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。
【0118】
要約すると、本発明の空気パルス生成デバイスは、超音波パルスレートで非対称の空気パルスを生成し、空気ポンプとして機能することが可能である。それらの複数の空気パルスは、絶えず1つの単一の方向に向かって正味の空気流を発生させ、その正味の空気流は、冷却、乾燥、除湿、熱放散、及び/又は換気用途等の空気運動用途に適用されてもよい。
【0119】
当業者は、本発明の教示を保持しつつ、デバイス及び方法の数多くの修正及び変更を行うことが可能であるということを容易に理解するであろう。したがって、上記の開示は、添付の特許請求の範囲の境界によってのみ限定されると解釈されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
1. 米国特許出願第17/553,808号
2. 米国特許出願第17/553,813号
3. 米国特許第US 10,425,732 B1号
4. 米国特許第US 7,736,324 B1号
5. 米国特許出願公開第US 5,109,948 A号
6. 米国特許出願公開第US 4,942,939号
7. 米国特許出願公開第US 4,646,733号
8. 米国特許出願公開第US 2022/0047841 A1号
9. 米国特許出願公開第US 2014/0064036 A1号
10. 米国特許出願公開第US 2013/0279738 A1号
11. 米国特許出願公開第US 2012/0018244 A1号
12. 米国特許出願公開第US 2008/0121220 A1号
13. 米国特許出願公開第US 2005/0235988 A1号
14. 米国特許出願公開第US 2004/0024455 A1号
15. 国際公開第WO 2016/202790 A2号
16. 米国特許出願公開第US 2020/0059719 A1号
17. 米国特許出願公開第US 2019/0116417 A1号
18. 米国特許出願公開第US 2018/0179048 A1号
19. 米国特許出願公開第US 2016/0366521 A1号
20. 米国特許出願公開第US 2012/0032892 A1号
21. 米国特許出願公開第US 2017/0201192 A1号
22. 韓国特許出願公開第10-2019-0116898号
23. 韓国特許第10-1901204号
24. 韓国特許出願公開第10-2019-0043489号
25. 韓国特許第10-2093804号
26. 特開2022-160366号公報
27. 米国特許出願公開第US 2019/0238974 A1号
28. 米国特許出願公開第US 2017/0041708 A1号
29. 米国特許出願公開第US 2014/0084396 A1号
30. 米国特許出願公開第US 2014/0341394 A1号
31. 米国特許出願公開第US 2016/0059206 A1号
32. 米国特許出願公開第US 2012/0081337 A1号
33. 米国特許出願公開第US 5,611,406 A号
34. 米国特許出願公開第US 2019/0020944 A1号
35. 特開2022-160367号公報
36. 特開2022-160368号公報
37. 米国特許出願公開第US 2017/0064457 A1号
38. 米国特許出願公開第US 2020/0211521 A1号
39. 米国特許出願公開第US 2020/0213770 A1号
40. 米国特許出願公開第US 2016/0261941 A1号
41. 米国特許出願公開第US 2016/0381464 A1号
42. 欧州特許出願公開第EP 4 030 782 A1号
43. 米国特許出願公開第US 2019/0141435 A1号
44. 米国特許出願公開第US 2017/0230756 A1号
45. 米国特許出願公開第US 2013/0044904 A1号
46. 米国特許出願公開第US 2010/0278368 A1号
47. 米国特許出願公開第US 2016/0356876 A1号
48. 米国特許出願公開第US 2021/0377652 A1号
49. 米国特許出願公開第US 2020/0100033 A1号
50. 中国特許出願公開第CN 106961651 A号
51. 台湾特許出願公開第201902812号
52. 米国特許出願公開第US 2020/0068281 A1号
53. 米国特許出願公開第US 2017/0255007 A1号
54. 米国特許出願公開第US 4,275,363号
55. 特開2011-160309号公報
【外国語明細書】