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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152689
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】発光デバイス
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/19 20230101AFI20241018BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241018BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20241018BHJP
   H10K 101/50 20230101ALN20241018BHJP
【FI】
H10K50/19
H10K59/10
H10K85/60
H10K101:50
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024063911
(22)【出願日】2024-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2023066480
(32)【優先日】2023-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】青山 絵梨子
(72)【発明者】
【氏名】山脇 隼人
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 広美
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊毅
(72)【発明者】
【氏名】長坂 顕
(72)【発明者】
【氏名】大澤 信晴
(72)【発明者】
【氏名】川上 祥子
(72)【発明者】
【氏名】尾坂 晴恵
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC14
3K107CC22
3K107CC45
3K107DD52
3K107DD78
3K107FF19
(57)【要約】
【課題】高効率かつ信頼性が良好な発光デバイスを提供する。
【解決手段】第1の電極および第2の電極の間に有機化合物層を有し、有機化合物層は、第1の発光ユニット、第2の発光ユニット、および中間層を有し、第1の発光ユニットおよび第2の発光ユニットの間に中間層を有し、中間層は有機化合物を有し、有機化合物をスキャン速度が1V/s以上100V/s以下でCV測定した場合、電子酸化のピーク電流を検出し、還元されるピーク電流が検出されない発光デバイスである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極および第2の電極の間に有機化合物層を有し、
前記有機化合物層は、第1の発光ユニット、第2の発光ユニット、および中間層を有し、
前記第1の発光ユニットおよび前記第2の発光ユニットの間に前記中間層を有し、
前記中間層は有機化合物を有し、
前記有機化合物を、スキャン速度が1V/s以上100V/s以下でCV測定した場合、酸化のピーク電流が検出され、還元されるピーク電流が検出されない発光デバイス。
【請求項2】
第1の電極および第2の電極の間に有機化合物層を有し、
前記有機化合物層は、第1の発光ユニット、第2の発光ユニット、および中間層を有し、
前記第1の発光ユニットおよび前記第2の発光ユニットの間に前記中間層を有し、
前記中間層は有機化合物を有し、
前記有機化合物をスキャン速度が1V/s以上100V/s以下でCV測定した場合、初期電位から正方向に電位を掃引した際に負方向の極値の電流が検出された後、負方向に初期電位まで電位を掃引した際に正方向の極値の電流が検出されない発光デバイス。
【請求項3】
第1の電極および第2の電極の間に有機化合物層を有し、
前記有機化合物層は、第1の発光ユニット、第2の発光ユニット、および中間層を有し、
前記第1の発光ユニットおよび前記第2の発光ユニットの間に前記中間層を有し、
前記中間層は有機化合物を有し、
前記有機化合物を、スキャン速度が1V/s以上100V/s以下でCV測定した場合、初期電位から正方向に電位を掃引した際に負方向の極値の電流(電流値|Ipa-Ia0|)を検出した後、負方向に初期電位まで電位を掃引した際に正方向の極値の電流(電流値|Ipc-Ic0|)が電流値|Ipa-Ia0|の1/20以下である発光デバイス。なお、酸化電流のピーク電位の電流値をIpa、正方向に電位を掃引する際の初期電位の電流値をIa0、還元電流のピーク電位をIpc、および負方向に電位を掃引した際に初期電位に戻った時の電流値をIc0とする。
【請求項4】
第1の電極および第2の電極の間に有機化合物層を有し、
前記有機化合物層は、第1の発光ユニット、第2の発光ユニット、および中間層を有し、
前記第1の発光ユニットおよび前記第2の発光ユニットの間に前記中間層を有し、
前記中間層は、m/z値がXmである有機化合物を有する発光デバイスであり、
前記発光デバイスを輝度500cd/m以上で5分以上駆動させた後、前記有機化合物層をLC-MS測定した場合、m/z値がXm-2またはXm-4のシグナルが検出される発光デバイス。
【請求項5】
第1の電極および第2の電極の間に有機化合物層を有し、
前記有機化合物層は、第1の発光ユニット、第2の発光ユニット、および中間層を有し、
前記第1の発光ユニットおよび前記第2の発光ユニットの間に前記中間層を有し、
前記中間層は、m/z値がXmである有機化合物を有する発光デバイスであり、
前記有機化合物を、スキャン速度が1V/s以上100V/s以下でCV測定した場合、酸化のピーク電流が検出され、還元のピーク電流が検出されず、かつ、前記発光デバイスを輝度500cd/m以上で5分以上駆動させた後、前記有機化合物層をLC-MS測定した場合、m/z値がXm-2またはXm-4のシグナルが検出される発光デバイス。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれか一において、
前記第1の電極は陽極として機能し、前記第2の電極は陰極として機能し、
前記第1の発光ユニットは第1の電極側に配置され、
前記第2の発光ユニットは第2の電極側に配置され、
前記有機化合物は、少なくとも前記第1の発光ユニットと接する領域に配置される発光デバイス。
【請求項7】
請求項2乃至請求項5のいずれか一において、
前記有機化合物は、グアニジン骨格を有する発光デバイス。
【請求項8】
請求項2乃至請求項5のいずれか一において、
前記有機化合物は、グアニジン骨格を有し、
前記グアニジン骨格に結合する第1の炭素、および前記第1の炭素と結合する第2の炭素からそれぞれ水素原子が脱離する発光デバイス。
【請求項9】
請求項2乃至請求項5のいずれか一において、
前記有機化合物は、グアニジン骨格を含む環構造を有し、
前記グアニジン骨格に結合する第1の炭素、および前記第1の炭素と結合する第2の炭素からそれぞれ水素原子が脱離する発光デバイス。
【請求項10】
第1の電極および第2の電極の間に有機化合物層を有し、
前記有機化合物層は、第1の発光ユニット、第2の発光ユニット、および中間層を有し、
前記第1の発光ユニットおよび前記第2の発光ユニットの間に前記中間層を有し、
前記中間層は、m/z値がXmである有機化合物を有する、発光デバイスにおいて、
輝度500cd/m以上で5分以上駆動させた後の前記発光デバイスの前記中間層のLC-MS測定の測定結果は、駆動させる前の前記発光デバイスの前記中間層のLC-MS測定の測定結果と比較して、m/z値がXm-2またはXm-4のシグナルのイオン強度が大きくなる発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、有機化合物、発光デバイス、発光装置、受発光装置、表示装置、電子機器、照明装置および電子デバイスに関する。なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の一態様の技術分野は、物、駆動方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、照明装置、蓄電装置、記憶装置、撮像装置、それらの駆動方法、または、それらの製造方法、を一例として挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
有機化合物を用いたエレクトロルミネッセンス(EL:Electroluminescence)を利用する発光デバイス(有機ELデバイス)の実用化が進んでいる。これら発光デバイスの基本的な構成は、一対の電極間に発光材料を含む有機化合物層(EL層)を挟んだものである。この素子に電圧を印加して、キャリアを注入し、当該キャリアの再結合エネルギーを利用することにより、発光材料からの発光を得ることができる。
【0003】
このような発光デバイスは自発光型であるためディスプレイの画素として用いると、液晶に比べ、視認性が高く、バックライトが不要である等の利点があり、フラットパネルディスプレイ素子として好適である。また、このような発光デバイスを用いたディスプレイは、薄型軽量に作製できることも大きな利点である。さらに非常に応答速度が速いことも特徴の一つである。
【0004】
また、これらの発光デバイスは発光層を二次元に連続して形成することが可能であるため、面状に発光を得ることができる。これは、白熱電球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0005】
このように発光デバイスを用いたディスプレイや照明装置はさまざまな電子機器に適用好適であるが、より良好な特性を有する発光デバイスを求めて研究開発が進められている。
【0006】
発光デバイスの製造方法には、様々な方法が知られているが、高精細な発光デバイスを作製する方法の一つとして、ファインメタルマスクを使用することなく、発光層を形成する方法が知られている。その一例としては、絶縁基板の上方に形成された第1及び第2画素電極を含んだ電極アレイの上方にホスト材料とドーパント材料との混合物を含んだ第1ルミネッセンス性有機材料を堆積させて、電極アレイを含む表示領域に亘って広がった連続膜として第1発光層を形成する工程と、第1発光層のうち第1画素電極の上方に位置した部分に紫外光を照射することなしに、第1発光層のうち第2画素電極の上方に位置した部分に紫外光を照射する工程と、第1発光層上にホスト材料とドーパント材料との混合物を含み且つ第1ルミネッセンス性有機材料とは異なる第2ルミネッセンス性有機材料を堆積させて、第2発光層を表示領域に亘って広がった連続膜として形成する工程と、第2発光層の上方に対向電極を形成する工程とを含む、有機ELディスプレイの製造方法がある(特許文献1)。
【0007】
また、有機ELデバイスの一つとして、非特許文献1には、標準的なUVフォトリソグラフィを使用した有機光電子デバイスの製造方法が開示されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-160473号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】B.Lamprecht et al.,“Organic optoelectronic device fabrication using standard UV photolithography” phys.stat.sol.(RRL)2,No.1,p.16-18 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般的に発光デバイスにおける電子注入層には、仕事関数の小さいリチウム(Li)等のアルカリ金属または当該アルカリ金属の化合物が用いられている。そして、上記アルカリ金属またはその化合物を用いる事で、優れた電子注入性を確保できる。また、上記アルカリ金属またはその化合物が電子輸送性材料と相互作用する事で、電荷発生能力が確保でき、電子輸送層へ電子を注入する事ができる。したがって、上記アルカリ金属またはその化合物を電子注入層に用いる事で、デバイスの低電圧化が実現している。
【0011】
しかし、上記アルカリ金属またはその化合物は、酸化されやすく不安定な材料である。したがって、発光デバイスを作製する工程中に、水または酸素等の大気成分等と反応してしまうと、発光デバイスの大幅な駆動電圧の上昇または、著しい発光効率の低下を引き起こしてしまう問題がある。このため、有機ELデバイスを作製する際には、真空もしくは窒素などの不活性ガスの雰囲気で、作製する必要がある。
【0012】
また、特に、タンデム型の発光デバイスは、中間層を挟んで複数の発光層が直列に積層された構造を有しており、当該中間層も、陽極側に接する発光ユニットに電子を注入するために、アルカリ金属または当該アルカリ金属の化合物の層が含まれる構造を有する。一方、シングル型の発光デバイスは、有機化合物層を所定の形状に加工した後、アルカリ金属または当該アルカリ金属の化合物の層が含まれる構造を形成することができる。従って、シングル型の発光デバイスと比較して、タンデム型の発光デバイスは、アルカリ金属または当該アルカリ金属の化合物の層が水または酸素等の大気成分と反応する蓋然性が高い。
【0013】
また、近年、有機化合物層を所定の形状に作製する方法の一つとして、メタルマスクを用いた真空蒸着法(マスク蒸着)が広く用いられている。しかし、高密度化、高精細化が進む昨今、マスク蒸着は、合わせ精度の問題、基板との配置間隔の問題に代表される種々の理由により、これ以上の高精細化は限界に近付いている。一方、リソグラフィ法(例えば、フォトリソグラフィ法、電子線リソグラフィ法など)を用いて有機化合物膜の形状を加工することで、より緻密なパターンを形成することができる。この方法はさらに、大面積化も容易であることから、フォトリソグラフィ法を用いた有機化合物膜の加工に関する研究も進められている。
【0014】
また、タンデム型の発光デバイスをフォトリソグラフィ法により作製する場合、加工する工程中に、中間層が大気、レジスト樹脂、水、または薬液等に暴露されてしまう。中間層のN型層にアルカリ金属または当該アルカリ金属の化合物を含むデバイスは、この工程によって、N型層が劣化し、大幅な特性の悪化が生じていた。つまり、中間層におけるアルカリ金属または当該アルカリ金属の化合物の層がフォトリソグラフィ工程に曝されることによって、大幅な駆動電圧の上昇、および著しい発光効率の低下が引き起こされていた。
【0015】
本発明の一態様は、利便性、有用性または信頼性に優れた新規な有機化合物を提供することを課題の一とする。本発明の一態様は、設計自由度が高い半導体装置を提供することを課題の一つとする。また、本発明の一態様は、製造プロセスにおける設計自由度が高い発光デバイスを提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、信頼性の高い発光デバイスを提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、消費電力の小さい発光デバイス、発光装置、電子機器、表示装置および電子デバイスを各々提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、消費電力が小さく、信頼性の高い発光デバイス、発光装置、電子機器、表示装置および電子デバイスを提供することを課題の一とする。
【0016】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様は、第1の電極および第2の電極の間に有機化合物層を有し、有機化合物層は、第1の発光ユニット、第2の発光ユニット、および中間層を有し、第1の発光ユニットおよび第2の発光ユニットの間に中間層を有し、中間層は有機化合物を有し、有機化合物を、スキャン速度が1V/s以上100V/s以下でサイクリックボルタンメトリ(CV)測定した場合、電子酸化のピーク電流が検出され、還元されるピーク電流が検出されない発光デバイスである。
【0018】
本発明の一態様は、第1の電極および第2の電極の間に有機化合物層を有し、有機化合物層は、第1の発光ユニット、第2の発光ユニット、および中間層を有し、第1の発光ユニットおよび第2の発光ユニットの間に中間層を有し、中間層は有機化合物を有し、有機化合物を、スキャン速度が1V/s以上100V/s以下でCV測定した場合、初期電位から正方向に電位を掃引した際に、負方向の極値の電流が検出された後、負方向に初期電位まで電位を掃引した際に正方向の極値の電流が検出されない発光デバイスである。
【0019】
本発明の一態様は、第1の電極および第2の電極の間に有機化合物層を有し、有機化合物層は、第1の発光ユニット、第2の発光ユニット、および中間層を有し、第1の発光ユニットおよび第2の発光ユニットの間に中間層を有し、中間層は有機化合物を有し、有機化合物を、スキャン速度が1V/s以上100V/s以下でCV測定した場合、初期電位から正方向に電位を掃引した際に、負方向の極値の電流(電流値|Ipa-Ia0|)が検出された後、負方向に初期電位まで電位を掃引した際に正方向の極値の電流(電流値|Ipc-Ic0|)が電流値|Ipa-Ia0|の1/20以下である発光デバイスである。
【0020】
本発明の一態様は、第1の電極および第2の電極の間に有機化合物層を有し、有機化合物層は、第1の発光ユニット、第2の発光ユニット、および中間層を有し、第1の発光ユニットおよび第2の発光ユニットの間に中間層を有し、中間層は、m/z値がXmである有機化合物を有する発光デバイスであり、発光デバイスを輝度500cd/m以上で5分以上駆動させた後、有機化合物層をLC-MS測定(Liquid Chromatography-Mass Spectrometry)した場合、m/z値がXm-2またはXm-4のシグナルが検出される発光デバイスである。
【0021】
なおm/z値とは、イオンの質量を統一原子質量単位で割り,さらにイオンの電荷数で割って得られる無次元量を示す。
【0022】
本発明の一態様は、第1の電極および第2の電極の間に有機化合物層を有し、有機化合物層は、第1の発光ユニット、第2の発光ユニット、および中間層を有し、第1の発光ユニットおよび第2の発光ユニットの間に中間層を有し、中間層は、m/z値がXmである有機化合物を有する発光デバイスであり、有機化合物を、スキャン速度が1V/s以上100V/s以下でCV測定した場合、正方向に電位を掃引した場合に負方向の極値の電流を検出された後、負方向に初期電位まで電位を掃引した場合に正方向の極値の電流が検出されず、かつ、発光デバイスを輝度500cd/m以上で5分以上駆動させた後、有機化合物層をLC-MS測定した場合、m/z値がXm-2またはXm-4のシグナルが検出される発光デバイスである。
【0023】
上記において、第1の電極は陽極として機能し、第2の電極は陰極として機能し、第1の発光ユニットは第1の電極側に配置され、第2の発光ユニットは第2の電極側に配置され、有機化合物は、少なくとも第1の発光ユニットと接する領域に配置される。
【0024】
上記において、有機化合物は、グアニジン骨格を有する。
【0025】
上記において、有機化合物は、グアニジン骨格を有し、グアニジン骨格に結合する第1の炭素、および第1の炭素と結合する第2の炭素からそれぞれ水素原子が脱離する。
【0026】
上記において、有機化合物は、グアニジン骨格を含む環構造を有し、グアニジン骨格に結合する第1の炭素、および第1の炭素と結合する第2の炭素からそれぞれ水素原子が脱離する。
【0027】
本発明の一態様は、第1の電極および第2の電極の間に有機化合物層を有し、有機化合物層は、第1の発光ユニット、第2の発光ユニット、および中間層を有し、第1の発光ユニットおよび第2の発光ユニットの間に中間層を有し、中間層は、m/z値がXmである有機化合物を有する、発光デバイスにおいて、輝度500cd/m以上で5分以上駆動させた後の発光デバイスの中間層のLC-MS測定の測定結果は、駆動させる前の発光デバイスの中間層のLC-MS測定の測定結果と比較して、m/z値がXm-2またはXm-4のシグナルのイオン強度が大きくなる発光デバイスである。
【0028】
また、本発明の一態様は、上記各構成の発光デバイス、トランジスタ、または、基板と、を有する発光装置である。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一態様により、新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様により、良好な効率を有する新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様により、良好な信頼性を有する新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様により、信頼性および効率が良好な新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することができる。
【0030】
または、本発明の一態様は、設計自由度が高い半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様は、製造プロセスにおける設計自由度が高い発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様は、信頼性の高い発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様は、消費電力の小さい発光デバイス、発光装置、電子機器、表示装置および電子デバイスを各々提供することができる。または、本発明の一態様は、消費電力が小さく、信頼性の高い発光デバイス、発光装置、電子機器、表示装置、電子デバイスおよび照明装置を各々提供することができる。
【0031】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1(A)乃至図1(C)は、発光デバイスについて表す図である。
図2図2(A)乃至図2(E)は、本発明の有機化合物を用いた水素脱離のエネルギー計算を説明する図である。
図3図3(A)および図3(B)は、本発明の発光デバイスの駆動メカニズムを説明するバンド図である。
図4図4(A)および図4(B)は、発光装置の上面図および断面図である。
図5図5(A)乃至図5(D)は、発光デバイスについて表す図である。
図6図6(A)乃至図6(E)は、発光装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図7図7(A)乃至図7(E)は、発光装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図8図8(A)乃至図8(C)は、発光装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図9図9(A)乃至図9(C)は、発光装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図10図10(A)乃至図10(C)は、発光装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図11図11(A)乃至図11(C)は、発光装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図12図12(A)乃至図12(C)は、発光装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図13図13(A)乃至図13(G)は、画素の構成例を示す上面図である。
図14図14(A)乃至図14(I)は、画素の構成例を示す上面図である。
図15図15(A)、及び図15(B)は、表示モジュールの構成例を示す斜視図である。
図16図16(A)、及び図16(B)は、発光装置の構成例を示す断面図である。
図17図17は、発光装置の構成例を示す斜視図である。
図18図18(A)は、発光装置の構成例を示す断面図である。図18(B)、及び図18(C)は、トランジスタの構成例を示す断面図である。
図19図19は、発光装置の構成例を示す断面図である。
図20図20(A)乃至図20(D)は、発光装置の構成例を示す断面図である。
図21図21(A)乃至図21(D)は、電子機器の一例を示す図である。
図22図22(A)乃至図22(F)は、電子機器の一例を示す図である。
図23図23(A)乃至図23(G)は、電子機器の一例を示す図である。
図24図24は、試料の構造を説明する図である。
図25図25は、試料の輝度-電流密度特性を表す図である。
図26図26は、試料の電流効率-輝度特性を表す図である。
図27図27は、試料の輝度-電圧特性を表す図である。
図28図28は、試料の電流密度-電圧特性を表す図である。
図29図29は、試料の電界発光スペクトルを表す図である。
図30図30は、試料の規格化した輝度の時間変化を表す図である。
図31図31(A)乃至図31(F)は、試料のLC-MS測定結果を説明する図である。
図32図32は、試料のCV測定結果を説明する図である。
図33図33は、試料のCV測定結果を説明する図である。
図34図34は、試料のCV測定結果を説明する図である。
図35図35は、試料の電流効率-輝度特性を表す図である。
図36図36は、試料の輝度-電圧特性を表す図である。
図37図37は、試料の電流効率-電流密度特性を表す図である。
図38図38は、試料の電流密度-電圧特性を表す図である。
図39図39は、試料の輝度-電流密度特性を表す図である。
図40図40は、試料の電界発光スペクトルを表す図である。
図41図41は、試料のCV測定結果を説明する図である。
図42図42は、試料の輝度-電流密度特性を表す図である。
図43図43は、試料の電流効率-輝度特性を表す図である。
図44図44は、試料の輝度-電圧特性を表す図である。
図45図45は、試料の電流効率-電流密度特性を表す図である。
図46図46は、試料の電流密度-電圧特性を表す図である。
図47図47は、試料の電界発光スペクトルを表す図である。
図48図48は、試料のCV測定結果を説明する図である。
図49図49は、試料のCV測定結果を説明する図である。
図50図50は、試料のCV測定結果を説明する図である。
図51図51は、試料のCV測定結果を説明する図である。
図52図52(A)は、試料の超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)法のフォトダイオードアレイ(PDA)クロマトグラム、図52(B)は、吸収強度面積-通電時間の変化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0034】
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0035】
また、図面において示す各構成の、位置、大きさ、及び、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、及び、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、及び、範囲などに限定されない。
【0036】
本明細書等において、発光デバイス(発光素子ともいう)は、一対の電極間にEL層を有する。EL層は、少なくとも発光層を有する。本明細書等において、受光デバイス(受光素子ともいう)は、一対の電極間に少なくとも光電変換層として機能する活性層を有する。本明細書等では、一対の電極の一方を画素電極と記し、他方を共通電極と記すことがある。
【0037】
なお、本明細書中における発光装置とは、有機ELデバイスを用いた画像表示デバイスを含む。また、有機ELデバイスにコネクター、例えば異方導電性フィルム又はTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、又は有機ELデバイスにCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも発光装置に含む場合がある。さらに、照明器具等は、発光装置を有する場合がある。
【0038】
(実施の形態1)
発光デバイスは、電極間(第1の電極と第2の電極との間)に発光物質を含む有機化合物層を有しており、電極から当該有機化合物層に注入されたキャリア(正孔および電子)を再結合させることによって生じたエネルギーによって、発光を得る構成を有している。
【0039】
図1(A)に、本発明の一態様の発光デバイス130を示した。本発明の一態様の発光デバイスは、陽極を含む第1の電極101と、陰極を含む第2の電極102との間に、第1の発光層113_1を含む第1の発光ユニット501と、第2の発光層113_2を含む第2の発光ユニット502と、中間層116とを有する有機化合物層103を有している、タンデム型の発光デバイスである(なお、発光ユニットはEL層ともいう)。
【0040】
なお、図1(A)では、一つの中間層116と、二つの発光ユニットを有する発光デバイスを示しているが、n(nは1以上の整数)層の中間層と、n+1層の発光ユニットを有する発光デバイスであってもよい。
【0041】
例えば、図1(B)に示す発光デバイス130は、第1の発光ユニット501、第1の中間層116_1、第2の発光ユニット502、第2の中間層116_2および第3の発光ユニット503を有するnが2のタンデム型の発光デバイスの例である。また、中間層116は少なくとも電荷発生領域117(以下、P型層ともいう)、および電子注入バッファ領域119を有している。また、電子注入バッファ領域119と電荷発生領域117との間には、この2領域間における電子の授受を円滑に行うための電子リレー領域118(以下、電子リレー層ともいう)が設けられていてもよい。
【0042】
また、各発光ユニットにおける発光層が呈する光の色域は、同じであっても異なっていてもよい。また、当該発光層は、単層であっても積層構造であってもよい。例えば、第1の発光ユニットおよび第3の発光ユニットにおいて青色領域の発光、第2の発光ユニットにおいて積層構造の発光層から赤色領域の発光および緑色領域の発光を呈するような構成により、白色発光を得ることができる。
【0043】
ここで、少なくとも中間層の電子注入バッファ領域119に、電子酸化に対して不可逆である有機化合物を用いる。なお、通常、発光デバイスなどに代表される有機発光素子(OLED:Organic Light Emitting Device)には、電子酸化、または電子還元に対して、可逆な有機化合物を用いてきた。電子酸化、または電子還元に対して不可逆な有機化合物を用いた場合、劣化物(不可逆反応で生じた物質)が信頼性に影響するためである。しかしながら、本発明の一態様のデバイスに用いる有機化合物は、電子酸化に対して不可逆である性質であるにもかかわらず、中間層の電子注入バッファ領域119に用いることで、良好な発光デバイスとして駆動することができる。むしろ、この電子酸化に対して不可逆である性質によって、この有機化合物を中間層の電子注入バッファ領域119に用いることで、タンデム型の発光デバイスとして良好に機能する。
【0044】
また、電子注入バッファ領域119は、上記電子酸化が不可逆な有機化合物に加えて、1種以上の異なる有機化合物を含む混合層としてもよい。以降、電子酸化が不可逆な有機化合物を第1の有機化合物とし、電子注入バッファ領域119に含まれる第1の有機化合物以外の有機化合物を、第2の有機化合物として説明する。また、混合層に含まれる有機化合物の種類に応じて、当該有機化合物に対し、適宜、序数を付与する場合がある。
【0045】
<第1の有機化合物>
本発明の一態様であるデバイスに用いることができる電子酸化が不可逆な第1の有機化合物として用いることができる有機化合物としては、炭素が1以上20以下のアルキルアミン骨格、炭素が3以上20以下のシクロアルキルアミン骨格および炭素が1以上20以下の非共有電子対がsp3混成軌道にある窒素を含む複素環骨格を用いることができ、具体的には、下記構造式(120)乃至(123)で表されるアセトアミジン骨格、およびグアニジン骨格、およびピロリジン骨格、ピペリジン骨格など、塩基性骨格を有する有機化合物を例として挙げることができる。特に、グアニジン骨格を有する構造式(122)および構造式(123)は塩基性が高く、好ましい。また、これらアルキルアミン骨格、シクロアルキルアミン骨格、または非共有電子対がsp3混成軌道にある窒素を含む複素環骨格を有する第1の有機化合物は、電子輸送性を有する置換基を有することが好ましく、芳香族炭化水素骨格、π電子不足型複素芳香環骨格、または含窒素複素芳香族環骨格のいずれか1以上を有することが好ましい。具体的には、ベンゼン骨格、フルオレン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、フェナントレン骨格、トリフェニレン骨格、ピレン骨格、ポリアゾール骨格、ピリジン骨格、ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ジアジン骨格、トリアジン骨格、キノリン骨格、キナゾリン骨格、キノキサリン骨格、フェナントロリン骨格、ジベンゾキノキサリン骨格を例として挙げることができる。
【0046】
【化1】
【0047】
また、第1の有機化合物は、具体的には、環を構成する元素に2以上の窒素を有するビシクロ環構造と、環を構成する炭素が2乃至30の複素芳香族環または環を形成する炭素が6乃至30の芳香族炭化水素環と、を有する有機化合物、より具体的には、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン骨格と、環を構成する炭素が2乃至30の複素芳香族環または環を形成する炭素が6乃至30の芳香族炭化水素環と、を有する有機化合物であることが好ましい。なお、環を構成する元素に2以上の窒素を有するビシクロ環構造と、環を構成する炭素が2乃至30の複素芳香族環と、を有する有機化合物、より具体的には、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン骨格と、環を構成する炭素が2乃至30の複素芳香族環と、を有する有機化合物が好ましい。また、グアニジン骨格を有する有機化合物が好ましく、環を構成する元素に2以上の窒素を有するビシクロ環構造がグアニジン骨格を含む分子構造である有機化合物が更に好ましい。
【0048】
また、さらに具体的には、下記一般式(G1)で表される有機化合物であることが好ましい。
【0049】
【化2】
【0050】
ただし、上記一般式(G1)で表される有機化合物において、Xは下記一般式(G1-1)で表される基、Yは下記一般式(G1-2)で表される基である。また、RおよびRはそれぞれ独立に水素(重水素を含む)を表し、hは1乃至6の整数を表し、Arは置換または無置換の環を構成する炭素が2乃至30の複素芳香族環または置換もしくは無置換の環を形成する炭素が6乃至30の芳香族炭化水素環を表す。なお、Arは置換もしくは無置換の環を構成する炭素が2乃至30の複素芳香族環が好ましい。
【0051】
また、hを1または2の整数とすることで、昇華性のよい有機化合物を提供することができる。
【0052】
また、Arは芳香環骨格、π電子不足型複素芳香環骨格、または含窒素複素芳香族骨格のいずれか1以上を有することが好ましい。具体的には、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、フェナントレン骨格、ポリアゾール骨格、ピリジン骨格、ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ジアジン骨格、トリアジン骨格、キノリン骨格、キナゾリン骨格、キノキサリン骨格、フェナントロリン骨格、またはジベンゾキノキサリン骨格を有することが好ましい。
【0053】
【化3】
【0054】
ただし、上記一般式(G1-1)および(G1-2)において、R乃至Rはそれぞれ独立に水素(重水素を含む)を表し、mは0乃至4の整数を表し、nは1乃至5の整数を表し、且つm+1≧nである。なお、mまたはnが2以上の場合複数となるR乃至Rはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。また、mが0の場合、上記一般式(G1)において、炭素(C)と、窒素(N)とが結合するとよい。
【0055】
また、上記一般式(G1)で表される有機化合物は、下記一般式(G2-1)乃至(G2-6)のいずれか一であることが好ましい。
【0056】
【化4】
【0057】
ただし、R11乃至R26はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)を表し、hは1乃至6の整数を表し、Arは置換または無置換の環を構成する炭素が2乃至30の複素芳香族環または置換または無置換の環を形成する炭素が6乃至30の芳香族炭化水素環である。なお、Arは置換もしくは無置換の環を構成する炭素が2乃至30の複素芳香族環が好ましい。
【0058】
なお、上記一般式(G1)および一般式(G2-1)乃至(G2-6)において、Arで表される置換または無置換の環を構成する炭素が2乃至30の複素芳香族環または置換または無置換の環を形成する炭素が6乃至30の芳香族炭化水素環としては、具体的には、ピリジン環、ビピリジン環、ピリミジン環、ビピリミジン環、ピラジン環、ビピラジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾキノリン環、フェナントロリン環、キノキサリン環、ベンゾキノキサリン環、ジベンゾキノキサリン環、アゾフルオレン環、ジアゾフルオレン環、カルバゾール環、ベンゾカルバゾール環、ジベンゾカルバゾール環、ジベンゾフラン環、ベンゾナフトフラン環、ジナフトフラン環、ジベンゾチオフェン環、ベンゾナフトチオフェン環、ジナフトチオフェン環、ベンゾフロピリジン環、ベンゾフロピリミジン環、ベンゾチオピリジン環、ベンゾチオピリミジン環、ナフトフロピリジン環、ナフトフロピリミジン環、ナフトチオピリジン環、ナフトチオピリミジン環、アクリジン環、キサンテン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、フェナジン環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環、ピロール環、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、ジメチルフルオレン環、ジフェニルフルオレン環、スピロフルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、テトラセン環、クリセン環、ベンゾ[a]アントラセン環などを挙げることができる。また、中でも、下記構造式(Ar-1)乃至(Ar-27)のいずれか一であることが好ましい。
【0059】
【化5】
【0060】
なお、上記Arが環を構成する元素として窒素を含み、当該Arは、当該窒素または当該窒素に隣接する炭素の結合手によって上記一般式(G1)におけるカッコ内の骨格に結合することが好ましい。
【0061】
上記一般式(G1)および一般式(G2-1)乃至(G2-6)で表される有機化合物としては、具体的には、1,1’-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2,7-ジイル)ビス(1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン)(略称:2,7hpp2SF)(構造式(112))、および1-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(略称:2hppSF)(構造式(113))など、下記構造式(100)乃至構造式(119)で表される有機化合物を例として挙げることができる。
【0062】
【化6】
【0063】
また、第1の有機化合物は、電子酸化に対して不可逆な反応を示す有機化合物である。なお、電子酸化に対する可逆性は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって測定される第1の有機化合物の電気化学特性(還元電位および酸化電位)、または高速液体クロマトグラフ質量分析法を用いたLC-MS測定によって第1の有機化合物の通電前後で検出されるMS値(m/z値)の変化により、判断することができる。電子酸化に対して不可逆性を示すということは、第1の有機化合物が、正孔(ラジカルカチオン)状態になった時に、再び電子を受け取って元の中性状態に戻らないことを示すため、発光デバイスに用いた時に、正孔輸送性がかなり低くなる。
【0064】
[CV測定を用いた電子酸化に対する不可逆性の判断方法]
ここで、CV測定を用いた第1の有機化合物の電子酸化に対して不可逆性の判断について説明する。CV測定により、参照電極に対する作用電極の電位を変化させることで得られる酸化電流のピーク電位の電流値(Ipa)、および還元電流のピーク電位の電流値(Ipc)を測定することにより第1の有機化合物の電子酸化に対しての不可逆性を判断することができる。
【0065】
具体的には、CV測定において、スキャン速度が1V/s以上100V/s以下で、電位を初期電位から正方向に掃引した場合に、負方向の極値(負の電流ピーク)の電流を検出し、続いて、初期電位まで電位を負方向に掃引した場合に、正方向の極値(正の電流ピーク)の電流が検出されない有機化合物は、電子酸化に対して不可逆性を有すると判断する。
【0066】
なお初期電位は、オープンサーキットポテンシャル測定で得られた値、つまり第1の有機化合物に電圧もしくは電流を印加していない状態での、測定前の作用電極と参照電極との電位差とする。
【0067】
CV測定は次の手順で行うとよい。まず、初期電位付近から正電位側へスキャン(行きの走査)し、電子酸化ピークである負の電流ピーク(具体的には酸化電流ピーク、または行きのピーク)が観測されたら、そのままさらに約0.1から0.5Vの高電位側までスキャンした電位を折り返し電位とする。続けて、スキャン方向を負電位側へ逆転し、終了電位として初期電位付近までスキャンし(戻りの走査)、中性状態に戻る時に検出されるピークである、正の電流ピーク(具体的には還元電流ピーク、または戻りのピーク)があるかを確認する。
【0068】
なおCV測定では、まず初期電位から、2サイクル以上測定を行い、1サイクル目のデータは電極などに由来するピーク電位が観測されやすいなどの理由から、2から10サイクル目のいずれかのサイクル特性に再現性のとれたデータを採用すると良い。
【0069】
上述した手順を経て取得したCV測定結果において、負の電流ピーク(負方向の極値)が読み取りにくい場合は、2次微分した電流値が正側に凸のピークを有する場合、その電流値の生データの値を求めることもできる。また、戻りのピーク(この場合は正方向の極値)の有無は、下記の式(1)をxについて求めたとき、xが20以上、好ましくは50以上である場合に、戻りのピークが無く、電子還元が検出されない、つまり電子酸化が不可逆であると判断することができる。なお、下記式中、酸化電流のピーク電位の電流値をIpa、行きの走査における初期電位の電流値をIa0、還元電流の最大値をIpc、および戻りの走査で初期電位に戻った時の電流値をIc0とする。xは変数である。なお還元電流のピーク電位が読み取れる場合は、その電流値をIpcとしても良い。これに対して、xが20未満の場合は、電子酸化に対して可逆な材料であると判断する。
【0070】
【数1】
【0071】
つまり、第1の有機化合物のCV測定の結果が、酸化電流のピーク電位の電流値Ipaと行きの走査における初期電位の電流値Ia0との差の絶対値(|Ipa-Ia0|)が、還元電流の最大値(またはピーク電位の電流値)Ipcと戻りの走査で初期電位に戻った時の電流値Ic0との差の絶対値(|Ipc-Ic0|)よりも、20倍以上、より好ましくは50倍以上大きい場合、第1の有機化合物は、電子酸化に対して不可逆な材料であると判断できる。この様に電子酸化に不可逆な材料は、ホールを注入されても、そのホールを放出しないため、ホール輸送性が抑制されると考えられる。
【0072】
上記CV測定で用いることができる溶媒としては、第1の有機化合物と電解質が溶けるものを選ぶ。例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、またはアセトニトリルがあげられる。
【0073】
[高速液体クロマトグラフ質量分析法を用いたLC-MS測定による電子酸化に対して不可逆性の判断方法]
また、第1の有機化合物の電子酸化に対する不可逆性は、高速液体クロマトグラフ質量分析法を用いたLC-MS測定によっても判断することができる。具体的には、通電前の第1の有機化合物と、通電後の第1の有機化合物とで、検出されるMS値(m/z)の変化により、判断することができる。
【0074】
なお、本明細書における通電後とは、第1の有機化合物を含む発光デバイスに対し、輝度500cd/m以上の条件で、5分以上駆動させた状態とする。なお、発光デバイスにおいて、輝度500cd/m以上とは、発光領域のみの輝度とし、カラーフィルターおよび偏光板を介して測定した輝度でも良い。なお、表示装置を発光させる場合、表示装置としての輝度と当該輝度で駆動させるために必要な電流密度は、画素および副画素の開口率により変化する。そのため、表示装置の輝度から画素および副画素の開口率を除することで、画素および副画素の輝度を算出してもよい。例えば、画素の開口率が10%である表示装置を1000cd/mの輝度で駆動させる場合、画素の輝度は10000cd/mに相当する。
【0075】
第1の有機化合物が、電子酸化に対して不可逆性の場合、通電前の第1の有機化合物のLC-MS測定結果と、通電後の第1の有機化合物のLC-MS測定結果とを比較すると、通電前では検出されなかった、第1の有機化合物に相当するMS値から2または4減少したMS値が、通電後では検出される。または、通電後は、第1の有機化合物に相当するMS値よりも、2または4減少したMS値の検出強度が増加する。
【0076】
つまり、第1の有機化合物を通電することで、第1の有機化合物の分子1つにつき、水素原子が2個、または水素原子が4個、解離したことにより、第1の有機化合物に相当するMS値よりも、2または4減少したMS値の検出強度が増加する。つまり、通電による第1の有機化合物に相当するMS値から2または4減少したMS値の検出、およびMS値の検出強度の増加は、通電により第1の有機化合物から水素が解離したことを確認する指標となる。水素原子が2または4解離した第1の有機化合物は、二重結合を形成し化学的に安定な有機化合物となり、解離した水素原子が元に戻りにくいと考えられる。
【0077】
≪プロトン(水素カチオン)転位についての計算結果≫
ここで、hpp骨格を有する1-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(略称:2hppSF)のラジカルカチオン状態から中性状態の2hppSFへプロトン(水素カチオン)が転位する際の活性化障壁を計算した結果を説明する。
【0078】
なお、量子化学計算プログラムとしては、Gaussian 16を使用した。計算は、ハイパフォーマンスコンピュータ(HPE社製、SGI8600)を用いて行った。
【0079】
図2(A)乃至2(C)を用いて説明する。まず、ラジカルカチオン状態である2hppSFのプロトンを、中性状態の2hppSFの窒素に転位させることで、2hppSFの水素脱離ラジカル、および2hppSFのプロトン付加カチオンとし、プロトン転位反応の活性化障壁および安定化エネルギーを算出する。
【0080】
具体的に、2hppSFのラジカルカチオン状態におけるプロトン転位反応について、始状態、遷移状態、および終状態の安定構造を密度汎関数法(DFT)を用いて計算した。
【0081】
DFTの全エネルギーは、ポテンシャルエネルギー、電子間静電エネルギー、電子の運動エネルギー、および電子間の相互作用を全て含む交換相関エネルギーとの和で表される。なお、DFTでは、交換相関相互作用を、電子密度で表現された一電子ポテンシャルの汎関数(関数の関数の意)で近似している。ここでは、混合汎関数であるB3LYPを用いて、交換と相関エネルギーに係る各エネルギーの重みを規定した。また、基底関数として6-311G(d,p)を用いた。
【0082】
また、計算モデルとして、ラジカルカチオン状態の2hppSFと中性状態の2hppSFとの間のプロトン転位を用いた。図2(A)に示した、ラジカルカチオン状態の2hppSFと中性状態の2hppSFの総和のエネルギーを0eVとし、ラジカルカチオン状態の2hppSFのプロトンが転位し中性状態の2hppSFに配位した場合の総和のエネルギーを計算した。具体的には、図2(A)に示した、ラジカルカチオン状態の2hppSFおよび中性状態の2hppSFを、図2(B)に示す2hppSFの水素脱離ラジカルの状態、および図2(C)に示す2hppSF分子のプロトン付加カチオンの状態に変化させることで、プロトン転位反応の活性化障壁、及びプロトン転位後の安定化エネルギーを計算した。
【0083】
計算結果より、ラジカルカチオン状態の2hppSFと中性状態の2hppSFとを用いた計算モデルでは、プロトン転位反応エネルギーにおいて、活性化障壁が0.11eVと小さく、安定化エネルギーが-0.72eVで安定化することが分かった。従って、プロトン転位反応が起こりやすい傾向があることが分かった。
【0084】
そのため上記計算方法で、第1の有機化合物のプロトン転位反応エネルギーは、活性化障壁が0.5eV以下が好ましく、0.2eV以下がより好ましい。また、安定化エネルギーが0.0eV以下が好ましく、-0.2eV以下がより好ましい。
【0085】
また生成した2hppSF分子のプロトン付加カチオンは、カチオン状態が安定なことが分かった。そのため、第1の有機化合物として用いることができる2hppSFは、正孔が注入されてラジカルカチオン状態になると、プロトン(水素カチオン)を蓄積しやすいことがわかった。
【0086】
なお、2hppSFがラジカルカチオン状態になると、図2(C)に示すとおり、プロトン(水素カチオン)は、π電子を有する窒素原子に付加する傾向がある。それは、プロトン(水素カチオン)が電子不足の状態であるため、電子密度の高い上記窒素原子に付加して安定化し、カチオン状態を維持しやすい。したがって、第1の有機化合物は、π電子を有する窒素原子をもつ骨格を有すると好ましい。または、第1の有機化合物と混合または接して、π電子を有する窒素原子をもつ骨格を有する第2の有機化合物があると好ましい。なおπ電子を有する窒素原子をもつ骨格としては、上記グアニジン骨格、およびπ電子不足型複素芳香環骨格、または含窒素複素芳香族環骨格があげられる。
【0087】
≪水素脱離ラジカルから水素が脱離する箇所の計算結果≫
ここで、hpp骨格を有する1-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(略称:2hppSF)の水素脱離ラジカルから、さらにプロトン(水素カチオン)が脱離する際のエネルギーを計算した結果を説明する。
【0088】
なお、量子化学計算プログラムとしては、Gaussian 16を使用した。計算は、ハイパフォーマンスコンピュータ(HPE社製、SGI8600)を用いて行った。
【0089】
具体的には、図2(B)に示す2hppSFの1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン部位(hpp基)において、8位の水素が脱離した化合物(水素脱離ラジカル)に対し、更にプロトン(水素カチオン)を脱離させることで、水素脱離反応における安定化エネルギー(以降、水素脱離の安定化エネルギーともいう)を算出する。
【0090】
なお、中性状態における水素脱離反応について、始状態、および終状態の安定構造は密度汎関数法(DFT)を用いて計算した。
【0091】
DFTの全エネルギーはポテンシャルエネルギー、電子間静電エネルギー、電子の運動エネルギー、および電子間の相互作用を全て含む交換相関エネルギーの和で表される。なお、DFTでは、交換相関相互作用を電子密度で表現された一電子ポテンシャルの汎関数(関数の関数の意)で近似している。ここでは、混合汎関数であるB3LYPを用いて、交換と相関エネルギーに係る各エネルギーの重みを規定した。また、基底関数として6-311G(d,p)を用いた。
【0092】
また、2hppSF分子が有するhpp基において、図2(B)に示す8位の水素が脱離した水素脱離ラジカル状態のエネルギーを0eVとし、さらにプロトン(水素カチオン)が脱離する際の安定化エネルギーを計算した。図2(B)において、さらに水素ラジカルが脱離する位置を矢印2乃至矢印4、および矢印6乃至矢印8で示す。また、計算結果を図2(D)に示す。
【0093】
図2(B)において、矢印8で示す位置のプロトン(水素カチオン)が脱離した場合における水素脱離の安定化エネルギーは、2.97eVであった。矢印7で示す位置の水素が脱離した場合、水素脱離の安定化エネルギーは、2.07eVであった。矢印6で示す位置の水素が脱離した場合、水素脱離の安定化エネルギーは、2.70eVであった。矢印4で示す位置の水素が脱離した場合、水素脱離の安定化エネルギーは、3.55eVであった。矢印3で示す位置の水素が脱離した場合、水素脱離の安定化エネルギーは、2.66eVであった。矢印2で示す位置の水素が脱離した場合、水素脱離の安定化エネルギーは、3.57eVであった。
【0094】
その結果、図2(B)の構造式で表される2hppSFの水素脱離ラジカル、つまり矢印8の炭素(hpp基の8位)からプロトン(水素カチオン)が脱離してそこがラジカルになった有機化合物(水素脱離ビラジカル)から、矢印7の位置(hpp基の7位)の水素ラジカルの脱離が、安定化エネルギーにおいて最小の値であった。つまり、図2(E)の構造式で表される2hppSFは水素脱離体が形成されやすい傾向があると推測できる。
【0095】
つまり、2hppSFにおいて、2電子酸化状態において、グアニジン骨格に結合する第1の炭素、および当該第1の炭素と結合する第2の炭素からそれぞれ水素原子が脱離する傾向および、それらの炭素が二重結合を形成する傾向があることが分かる。つまり、2hppSFに正孔が注入されると、不可逆な化学反応に正孔が消費され、正孔輸送が抑制されることが示唆された。
【0096】
なお、ラジカルカチオン状態の第1の有機化合物から脱離したプロトン(水素カチオン)は、他の中性状態の第1の有機化合物に付加することで、正の電荷を保持することができる。また、図2(C)に示す第1の有機化合物にプロトン(水素カチオン)が付加したプロトン付加カチオンは、第1の有機化合物よりも高いHOMO準位を形成する。これらのことで、第1の有機化合物は、中間層でのホール輸送性を抑制し、電子を注入しやすくし、タンデム型の発光デバイスの中間層として機能すると考えられる。
【0097】
また、第1の有機化合物におけるLUMO準位は、-2.50eV以上-1.00eV以下であることが好ましい。なおLUMO準位は、CV測定によって求めることができる。
【0098】
また、第1の有機化合物は、酸解離定数pKa8以上の強塩基性を有する有機化合物であることが好ましい。pKa8以上の強塩基性を有する有機化合物であることにより、電子(正孔)酸化によって水素カチオン(プロトン)を解離し、プロトンが付加することでカチオンを形成した第1の有機化合物は、正の電荷を蓄積することが可能となる。
【0099】
なお、第1の有機化合物は、酸解離定数pKaが8以上、好ましくはpKaが10より大きい有機化合物であることが好ましい。また、第1の有機化合物の酸解離定数pKaが12以上、好ましくはpKaが13より大きい有機化合物であることがより好ましい。
【0100】
なお、塩基性骨格の酸解離定数pKaには、当該骨格の一部を水素で置換した有機化合物の値を用いることができる。また、塩基性骨格を有する有機化合物の酸性度の指標として、当該塩基性骨格の酸解離定数pKaを用いることができる。また、複数の塩基性骨格を有する有機化合物は、酸解離定数pKaの最も高い塩基性骨格の酸解離定数pKaを当該有機化合物の酸性度の指標として用いることができる。
【0101】
または、有機化合物の酸解離定数pKaは、以下のような計算によって求めてもよい。
【0102】
まず、計算モデルとなる各分子における分子構造の初期構造は、第一原理計算から得られた最安定構造(一重項基底状態)とする。
【0103】
上記第一原理計算としては、シュレディンガー社製量子化学計算ソフトウェアのJaguarを使用し、一重項基底状態における最安定構造を密度汎関数法(DFT)で計算する。基底関数としては6-31G**を用い、汎関数はB3LYP-D3を用いる。量子化学計算を行う構造は、シュレディンガー社製Maestro GUIを用い、Mixed torsional/Low-mode samplingにて立体配座解析を行いサンプリングを行う。
【0104】
pKa計算では各分子の1つ以上の原子を塩基性サイトとして指定し、プロトン化した分子が水中で安定する構造を探索するためMacro Modelを使用し、OPLS2005力場を用いた配座探索を行った結果、最も低エネルギーである配座異性体を使用する。また、JaguarのpKa計算モジュールを使用し、B3LYP/6-31G*で構造最適化した後、cc-pVTZ(+)で一点計算し、官能基に対する経験的補正を用いてpKa値を算出する。1つ以上の原子を塩基性サイトとして指定している分子では、得られた結果のうち最も大きい値をpKa値として採用する。
【0105】
<第2の有機化合物の例>
また、本発明の一態様である第1の有機化合物の他に、第1の有機化合物よりも最低空軌道準位(LUMO準位)が低い第2の有機化合物との混合層を電子注入バッファ領域119に用いることが好ましい。すなわち、強塩基性を有する第1の有機化合物のLUMO準位は、第2の有機化合物のLUMO準位より高いことが好ましい。当該混合層をデバイス構成に用いることで、従来用いられていたアルカリ金属または当該アルカリ金属の化合物に起因する問題の発生を低減することができる。
【0106】
なお、第1の有機化合物は、第2の有機化合物よりも、LUMO準位が0.05eV以上高い有機化合物を用いるとよい。または、第1の有機化合物は、第2の有機化合物よりも、LUMO準位が、好ましくは0.1eV以上、さらに好ましくは0.2eV以上、高い有機化合物であるとよい。この様な差を有する事で、室温のエネルギー、または電界などの影響により、第1の有機化合物が電子を受容する確率を低減する事ができる。
【0107】
また、第2の有機化合物は、電子輸送性を有する有機化合物を用いることができる。電子輸送性の高い物質とは、正孔よりも電子の移動度が高いものを指す。具体的には、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が、1×10-7cm/Vs以上好ましくは1×10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質が好ましい。
【0108】
また、電子輸送性の高い有機化合物としては、例えば複素芳香族化合物を用いることができる。なお、複素芳香族化合物とは、環の中に少なくとも2種類の異なる元素を含む環式化合物である。なお、環構造としては、3員環、4員環、5員環、6員環等が含まれるが、特に5員環、または、6員環が好ましく、含まれる元素としては、炭素の他に窒素、酸素、または硫黄などのいずれか一又は複数を含む複素芳香族化合物が好ましい。特に窒素を含む複素芳香族化合物(含窒素複素芳香族化合物)が好ましく、含窒素複素芳香族化合物、またはこれを含むπ電子不足型複素芳香環を有する有機化合物等の電子輸送性の高い材料(電子輸送性材料)を用いることが好ましい。
【0109】
また、第2の有機化合物は、ホール輸送性骨格を持たないことが好ましい。例えば、アミン骨格、またはカルバゾール骨格を含まない有機化合物がある。
【0110】
また、第2の有機化合物におけるLUMO準位は、-3.25eV以上-2.50eV以下であることが好ましい。また、第2の有機化合物におけるHOMO準位は、-6.5eV以上-5.7eV以下であることが好ましい。
【0111】
また、第2の有機化合物の酸解離定数pKaは、3以上8以下、好ましくは、4以上6以下とすることが好ましい。
【0112】
第2の有機化合物には、電子輸送性を有する骨格が含まれていることが好ましい。電子輸送性を有する材料としては例えば、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体、π電子不足型複素芳香環を有する有機化合物が好ましい。π電子不足型複素芳香環を有する有機化合物としては、例えばポリアゾール骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物およびトリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物を挙げることができる。
【0113】
中でも、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)を有する複素芳香環を含む有機化合物またはピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンまたはピラジン)骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。また、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格は信頼性が良好なため好ましい。
【0114】
π電子不足型複素芳香環骨格を有する有機化合物としては、後述の第1の電子輸送層における電子輸送性を有する有機化合物として挙げた材料を用いることができる。特に、ジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物またはピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンまたはピラジン)骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。中でも、2,2’-(1,3-フェニレン)ビス(9-フェニル-1,10-フェナントロリン)(略称:mPPhen2P)、および2-[3-(2-トリフェニレニル)フェニル]-1,10-フェナントロリン(略称:mpPPhen)、2-[4-(9-フェナントレニル)-1-ナフタレニル]-1,10-フェナントロリン(略称:PnNPhen)などのフェナントロリン骨格を有する有機化合物が好ましく、mPPhen2Pなどのフェナントロリン二量体構造を有する有機化合物が膜質の安定性に優れより好ましい。また、ビピリジン骨格、トリアジン骨格、およびフェナントロリン骨格を有する材料は、電子輸送性が高く好ましい。特に本発明の一態様の発光デバイスにおける第2の有機化合物に用いる電子輸送性材料として好ましい。また、分子中の、ピリジン骨格、ピリミジン骨格、トリアジン骨格、およびフェナントロリン骨格の数が多くなると、更にホール輸送性が低くなり、特に本発明の一態様の発光デバイスにおける第2の有機化合物に用いる電子輸送性材料として好ましい。
【0115】
また、上述の<第1の有機化合物>で記載した有機化合物と、<第2の有機化合物>で記載した有機化合物とを、共蒸着することにより、混合層を形成することができる。当該混合層を中間層の電子注入バッファ領域とすることにより、発光デバイスの信頼性を向上させることができる。
【0116】
<タンデム型の発光デバイスのメカニズム>
ここで、本発明の一態様におけるタンデム型の発光デバイスのメカニズムについて図3を用いて詳細に説明する。
【0117】
通常のタンデム型の発光デバイスにおいて、中間層のN型層に用いられるLi化合物はドナーとしてふるまい、電子輸送性材料との間で電荷分離してキャリアを発生する。しかし本発明の一態様における電子注入バッファ領域119(層1)は電荷分離をせず、キャリアも発生しない、電荷を発生しない層である。
【0118】
一方、電荷発生領域117(層3)では、電子注入バッファ領域119(層1)が電荷を発生しなくても、電圧が印加されることでキャリア(正孔と電子)が発生する。しかし、通常は、電子輸送性を有する材料のLUMO準位(LUMOETM)とアクセプタ性を有する材料のLUMO準位(LUMOAC)の差が大きいことから、電荷発生領域117のアクセプタ性を有する材料と電子注入バッファ領域119の電子輸送性を有する材料のLUMO準位のポテンシャルギャップが大きく、電荷発生領域117で発生した電子を電子注入バッファ領域119に注入させることが困難である(図3(A))。
【0119】
そのため、電荷発生領域117で電子が発生していても、電子注入バッファ領域119が電荷発生しないため、陽極側の発光ユニット(第1の発光ユニット501)の第1の電子輸送層114_1への電子の注入は困難となり、第1の発光ユニット501における第1の発光層113_1から発光を得ることは難しい。なお、電荷発生領域117で発生した正孔は、電荷発生領域117の有する正孔輸送性を有する材料のHOMO準位(HOMOHTM)と第2の発光ユニット502における第2の正孔輸送層112_2の有する正孔輸送性を有する材料のHOMO準位とを同じもしくは近くすることができるため、問題なく第2の発光ユニット502に注入させることが可能な状況である。
【0120】
しかしながら、本発明の一態様のタンデム型の発光デバイスは、電子注入バッファ領域119が電荷発生層として機能しないにもかかわらず、タンデム型の発光デバイスとして機能する結果が得られている。その理由としては、電荷の蓄積による電気双極子の発生、それによる真空準位のシフトという、タンデム型の発光デバイスの駆動メカニズムにより説明することが可能となる。
【0121】
まず、本発明の一態様のタンデム型の発光デバイスは上述のように電圧が印加されても、電子注入バッファ領域119からキャリアは発生しない。一方で、陽極から第1の発光ユニット501に注入された正孔は、電子輸送層がわずかに輸送し、電子注入バッファ領域119における第1の電子輸送層114_1側へ注入される(図3(B)400)。なお、この際、電子注入バッファ領域119の第1の有機化合物が電子酸化し、水素カチオン(プロトン)を解離する。解離した水素カチオン(プロトン)は第1の有機化合物に付加し、カチオンを形成し、正の電荷を蓄積する。また電子注入バッファ領域119は正孔の移動度が著しく低いため、正孔の抜けを防ぎ、効率よく第1の発光ユニット501を光らせることができ、好ましい。
【0122】
電荷発生領域117からは正孔と電子が発生し、電荷発生領域117で発生した電子は、通算通電時間0時間の初期状態では、電荷発生領域117に含まれるアクセプタ性を有する材料と電子注入バッファ領域119に含まれる電子輸送性を有する第2の有機化合物のLUMO準位の差が大きいことから、電子注入バッファ領域119には注入されず、電荷発生領域117における電子注入バッファ領域119側に蓄積する(図3(B)に示す領域401)。蓄積した電子は、電子注入バッファ領域119に蓄積したカチオン(正の電荷)と共に電気二重層を形成し、電気双極子が発生する(図3(B)に示す矢印402)。
【0123】
この結果、真空準位のシフトが起こり(図3(B)に示す領域403)、電荷発生領域117に含まれるアクセプタ性を有する材料と電子注入バッファ領域119の電子輸送性を有する第2の有機化合物とのLUMO準位が近づき、電荷発生領域117で発生した電子が電子注入バッファ領域119に注入されるようになる(図3(B)に示す電子404)。この後、電子注入バッファ領域119に注入された電子が、さらに第1の発光ユニット501に注入され、第1の発光層113_1に到達し再結合することにより第1の発光ユニット501で発光が得られる。従って、本発明の一態様の発光デバイスは、タンデム型の発光デバイスとして機能することが可能となるのである。
【0124】
LiまたはLi酸化物などのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属またはこれらの不安定な元素または化合物は、ドナーとしてふるまう。また、当該元素または当該化合物を含む中間層を用いた発光デバイスは、大気に曝されることによりキャリア発生量が低下する。一方、本発明の一態様の第1の有機化合物を電子注入バッファ領域119に用いる発光デバイスは、大気に曝されることによる劣化が起こりにくく、発光デバイスが完成した後の駆動などにより正の電荷を蓄積することで、タンデム型の発光デバイスとして機能する。このため、加工工程中に大気曝露が存在するフォトリソグラフィ法により加工を行う工程を経た発光デバイスであっても、大気曝露に起因する発光デバイスの劣化は起こりにくく、本発明の一態様の発光デバイスは良好な特性を有する発光デバイスとすることが可能となる。
【0125】
以上のような構成を有する本発明の一態様の発光デバイスは、電流効率が高く、信頼性が良好で、駆動電圧の上昇が抑制された発光デバイスとすることが可能となる。
【0126】
なお、本発明の一態様の発光デバイスは、特にフォトリソグラフィ工程を経た発光デバイスに好適であるが、フォトリソグラフィ工程を経ずに作製された発光デバイスにおいても大気に対する安定性が高いことから、歩留まりが向上し、また、作製工程中において雰囲気管理を必要以上に厳密にしなくてもよくなることでコスト削減に貢献する。
【0127】
<発光デバイスの構成>
以下では、上述した有機化合物を有する発光デバイス130について、上述した構成以外の具体的な構成について説明する。
【0128】
第1の発光ユニット501と第2の発光ユニット502には、発光層以外に他の機能層が含まれていてもよい。図1(A)では、第1の発光ユニット501には、第1の発光層113_1の他に、正孔注入層111、第1の正孔輸送層112_1、および第1の電子輸送層114_1が、第2の発光ユニット502には、第2の発光層113_2の他に、第2の正孔輸送層112_2、第2の電子輸送層114_2および電子注入層115が設けられている構成を図示したが、本発明における有機化合物層103の構成は、これに限られず、いずれかの層が設けられていなくともよいし、他の層が設けられていてもよい。なお、他の層としては、代表的には、キャリアブロック層、励起子ブロック層などがある。
【0129】
また、中間層116が電子注入バッファ領域119を有していることから、当該電子注入バッファ領域119が陽極側の発光ユニットにおける電子注入層の役割を担うため、陽極側の発光ユニット(図1(A)においては第1の発光ユニット501)に電子注入層は、必要に応じて設けるとよい。また、同様に、中間層116が電荷発生領域117を有していることから、当該電荷発生領域117が陰極側の発光ユニットにおける正孔注入層の役割を担うため、陰極側の発光ユニット(図1(A)においては第2の発光ユニット502)に正孔注入層は必要に応じて設けるとよい。
【0130】
[中間層]
以下では、発光デバイス130の中間層116の構成について説明する。
【0131】
電子注入バッファ領域119は、上述したように、第1の有機化合物と電子輸送性を有する第2の有機化合物と、を有する層である。なお、当該層は、金属、金属化合物および金属錯体、金属酸化物のいずれかまたは複数が混合していてもよい。
【0132】
また、電子注入バッファ領域119における第1の有機化合物は、塩基性を有することが好ましい。また、第1の有機化合物は、正孔輸送性が低いことが好ましい。また、第1の有機化合物は、電子酸化に対して不可逆であることが好ましい。そのことで、正孔輸送性を抑制することができる。また、第1の有機化合物は、電子酸化によって水素が解離しやすいことが好ましい。また、第1の有機化合物は、水素が付加しやすいことが好ましい。第1の有機化合物が電子酸化によって水素を解離しやすく、水素カチオン(プロトン)が付加しやすいことから、正の電荷(カチオン)を蓄積できるため、第1の有機化合物が、タンデム型の発光デバイスの中間層としての機能することができる。そのため、水、または酸素などの大気成分に安定な中間層およびタンデム型の発光デバイスを作製することができる。
【0133】
また、電荷発生層である電荷発生領域117は、アクセプタ性を有する材料と、正孔輸送性を有する有機化合物とを含む複合材料により形成することが好ましい。
【0134】
また、電荷発生領域117におけるアクセプタ性を有する材料は、電子受容性を有することが好ましい。また、アクセプタ性を有する材料は、正孔輸送性を有する有機化合物に対する電子受容性を有することが好ましい。アクセプタ性を有する材料が電子受容性を有することで、電荷発生領域117において電荷分離が生じて、電荷発生層として機能することができるため、タンデム型の発光デバイスの中間層として機能することができる。また、電荷発生領域117は、電子スピン共鳴で観測されるシグナルが観測されることが好ましい。例えば、g値2.00付近に観測されるシグナルに起因するスピン密度が1×1016spins/cm以上が好ましく、1×1017spins/cm以上がより好ましく、1×1018spins/cm以上がより好ましく、1×1019spins/cm以上がさらに好ましい。
【0135】
複合材料に用いる正孔輸送性を有する有機化合物としては、芳香族アミン化合物、複素芳香族化合物、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の有機化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる正孔輸送性を有する有機化合物としては、1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する有機化合物であることが好ましい。複合材料に用いられる正孔輸送性を有する有機化合物は、縮合芳香族炭化水素環、または、π電子過剰型複素芳香環を有する化合物であることが好ましい。縮合芳香族炭化水素環としては、アントラセン環、ナフタレン環等が好ましい。また、π電子過剰型複素芳香環としては、ピロール骨格、フラン骨格、チオフェン骨格の少なくともいずれか1を環に含む縮合芳香環が好ましく、具体的にはカルバゾール環、ジベンゾチオフェン環あるいはそれらにさらに芳香環または複素芳香環が縮合した環が好ましい。
【0136】
このような正孔輸送性を有する有機化合物としては、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびアントラセン骨格のいずれかを有していることがより好ましい。特に、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環を含む置換基を有する芳香族アミン、ナフタレン環を有する芳香族モノアミン、または9-フルオレニル基がアリーレン基を介してアミンの窒素に結合する芳香族モノアミンであっても良い。なお、これら正孔輸送性を有する有機化合物が、N,N-ビス(4-ビフェニル)アミノ基を有する物質であると、寿命の良好な発光デバイスを作製することができるため好ましい。
【0137】
以上のような正孔輸送性を有する有機化合物としては、具体的には、N-(4-ビフェニル)-6,N-ジフェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BnfABP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)-6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf)、4,4’-ビス(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:BnfBB1BP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-6-アミン(略称:BBABnf(6))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf(8))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[2,3-d]フラン-4-アミン(略称:BBABnf(II)(4))、N,N-ビス[4-(ジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-4-アミノ-p-ターフェニル(略称:DBfBB1TP)、N-[4-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-N-フェニル-4-ビフェニルアミン(略称:ThBA1BP)、4-(2-ナフチル)-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNB)、4-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNBi)、4,4’-ジフェニル-4’’-(6;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7-フェニル)ナフチル-2-イルトリフェニルアミン(略称:BBAPβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(6;2’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;2’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(4;2’-ビナフチル-1-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(5;2’-ビナフチル-1-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB-02)、4-(4-ビフェニリル)-4’-(2-ナフチル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNB)、4-(3-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:mTPBiAβNBi)、4-(4-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNBi)、4-フェニル-4’-(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBA1BP)、4,4’-ビス(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBB1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-[4’-(カルバゾール-9-イル)ビフェニル-4-イル]トリフェニルアミン(略称:YGTBi1BP)、4’-[4-(3-フェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]トリス(ビフェニル-4-イル)アミン(略称:YGTBi1BP-02)、4-[4’-(カルバゾール-9-イル)ビフェニル-4-イル]-4’-(2-ナフチル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:YGTBiβNB)、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBNBSF)、N,N-ビス(ビフェニル-4-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:BBASF)、N,N-ビス(ビフェニル-4-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-4-アミン(略称:BBASF(4))、N-(ビフェニル-2-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-4-アミン(略称:oFBiSF)、N-(ビフェニル-4-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)ジベンゾフラン-4-アミン(略称:FrBiF)、N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-N-[3-(6-フェニルジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-1-ナフチルアミン(略称:mPDBfBNBN)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-[4-(9-フェニルフルオレン-9-イル)フェニル]トリフェニルアミン(略称:BPAFLBi)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBASF)、N-(ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-4-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-3-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H[フルオレン]-2-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-1-アミン等を挙げることができる。
【0138】
また、正孔輸送性を有する有機化合物としては、その他芳香族アミン化合物として、N,N’-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’-ビス(N-{4-[N’-(3-メチルフェニル)-N’-フェニルアミノ]フェニル}-N-フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を用いることもできる。
【0139】
また、電荷発生領域117に含まれるアクセプタ性を有する材料としては、電子吸引基(ハロゲン基、シアノ基など)を有する有機化合物を用いることができ、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F4-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT-CN)、1,3,4,5,7,8-ヘキサフルオロテトラシアノ-ナフトキノジメタン(略称:F6-TCNNQ)、2-(7-ジシアノメチレン-1,3,4,5,6,8,9,10-オクタフルオロ-7H-ピレン-2-イリデン)マロノニトリル等を挙げることができる。特に、HAT-CNのように複素原子を複数有する縮合芳香環に電子吸引基が結合している化合物が、熱的に安定であり好ましい。また、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基、シアノ基など)を有する[3]ラジアレン誘導体は、電子受容性が非常に高いため好ましく、具体的にはα,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,6-ジクロロ-3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンアセトニトリル]などが挙げられる。アクセプタ性を有する材料としては以上で述べた有機化合物以外にも、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の遷移金属酸化物を用いることができる。
【0140】
電子リレー領域118は、電子輸送性を有する物質を含み、電子注入バッファ領域119と電荷発生領域117との相互作用を防いで電子をスムーズに受け渡す機能を有する。電子リレー領域118に含まれる電子輸送性を有する物質のLUMO準位は、電荷発生領域117におけるアクセプタ性を有する材料のLUMO準位と、第1の電極101側の発光ユニットにおける中間層116に接する層(図1(A)では第1の発光ユニット501における第1の電子輸送層114_1)に含まれる有機化合物のLUMO準位との間であることが好ましい。電子リレー領域118に用いられる電子輸送性を有する物質におけるLUMO準位の具体的なエネルギー準位は-5.0eV以上、好ましくは-5.0eV以上-3.0eV以下、より好ましくは-4.30eV以上-3.00eV以下、より好ましくは-4.30eV以上-3.30eV以下とすると電荷発生領域117で発生した電子を電子注入バッファ領域119へ注入しやすくできるため駆動電圧の上昇を抑制でき好ましい。なお、電子リレー領域118に用いられる電子輸送性を有する物質としてはフタロシアニン系の材料又は金属-酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。
【0141】
具体的には、ジキノキサリノ[2,3-a:2’,3’-c]フェナジン(略称:HATNA)、2,3,8,9,14,15-ヘキサフルオロジキノキサリノ[2,3-a:2’,3’-c]フェナジン(略称:HATNA-F6)、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:PTCDI)、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボキシル-ビス-ベンゾイミダゾール(略称:PTCBI)などのペリレンテトラカルボン酸誘導体、(C60-Ih)[5,6]フラーレン(略称:C60)、(C70-D5h)[5,6]フラーレン(略称:C70)、フタロシアニン(略称:HPc)を用いることができる。また、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、亜鉛フタロシアニン(略称:ZnPc)、コバルトフタロシアニン(略称:CoPc)、鉄フタロシアニン(略称:FePc)、錫フタロシアニン(略称:SnPc)、酸化錫フタロシアニン(略称:SnOPc)、酸化チタンフタロシアニン(略称:TiOPc)、酸化バナジウムフタロシアニン(略称:VOPc)等の銅、亜鉛、コバルト、鉄、クロム、ニッケル、等を有する金属フタロシアニンおよびその誘導体、などを用いることができる。また、特に銅フタロシアニンまたは亜鉛フタロシアニンのような、フタロシアニン系の金属錯体または2,3,8,9,14,15-ヘキサフルオロジキノキサリノ[2,3-a:2’,3’-c]フェナジンが好ましい。中でも、CuPcおよびZnPcは安価で、特性が良好であるため好ましい。さらに、ZnPcはシリコンに対する拡散係数が小さく、半導体への金属の拡散による半導体特性へ影響を与えるおそれが低減されるため、特にシリコン半導体を用いた表示装置への適用に好適である。
【0142】
また、電子リレー領域118の膜厚は1nm以上10nm以下、好ましくは2nm以上5nm以下であることが好ましい。
【0143】
このような中間層116を有するタンデム型の発光デバイスは、有機化合物層103をフォトリソグラフィ法によって加工しても、大幅な駆動電圧の上昇および発光効率の著しい低下が起こらず、良好な特性を有する発光デバイスとすることができる。
【0144】
[電極]
以下では、発光デバイス130の第1の電極101、および第2の電極102の構成について説明する。
【0145】
第1の電極101は、陽極を含む電極である。第1の電極101は、積層構造を有していてもよく、その場合、有機化合物層103に触れる層が陽極として機能する。陽極は、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いて形成することが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム-酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム-酸化スズ、酸化インジウム-酸化亜鉛、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリング法により成膜されるが、ゾル-ゲル法などを応用して作製しても構わない。作製方法の例としては、酸化インジウム-酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1~20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成する方法などがある。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5~5wt%、酸化亜鉛を0.1~1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することもできる。この他に、陽極に用いられる材料は、例えば、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。又は、陽極に用いられる材料として、グラフェンも用いることができる。なお、上記中間層116における電荷発生領域117を構成する複合材料を陽極と接する層(代表的には正孔注入層)として用いることで、仕事関数に関わらず、電極材料を選択することができるようになる。
【0146】
第2の電極102は、陰極を含む電極である。第2の電極102は、積層構造を有していてもよく、その場合、有機化合物層103と接する層が陰極として機能する。陰極を形成する物質としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、リチウム(Li)またはセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等の元素周期表の第1族または第2族に属する元素、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。しかしながら、第2の電極102と電子輸送層との間に、電子注入層を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム-酸化スズ等様々な導電性材料を陰極として用いることができる。
【0147】
なお、第2の電極102を可視光に対し透過性を有する材料で形成した場合、第2の電極102側から光を発する発光デバイスとすることができる。
【0148】
これら導電性材料は、真空蒸着法またはスパッタリング法などの乾式法、インクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することが可能である。また、ゾル-ゲル法を用いて湿式法で形成しても良いし、金属材料のペーストを用いて湿式法で形成してもよい。
【0149】
[発光ユニット]
以下では、発光デバイス130の第1の発光ユニット501、および第2の発光ユニット502の構成について説明する。
【0150】
有機化合物層103は、積層構造を有している。図1(A)では当該積層構造として、第1の発光層113_1を含む第1の発光ユニット501、中間層116および第2の発光層113_2を含む第2の発光ユニット502を有する構造を示した。なお、ここでは、中間層を挟んで二つの発光ユニットが積層された構成を示したが、3つ以上の発光ユニットが積層した構成であってもよい。この際も、発光ユニットと発光ユニットの間には中間層が設けられる。なお、各発光ユニットも積層構造を有している。発光ユニットは、図1(A)で示す構成に限らず、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、キャリアブロック層(正孔ブロック層、電子ブロック層)、励起子ブロック層など、様々な機能層を適宜用いて構成することができる。
【0151】
正孔注入層111は、陽極に接して設けられ、正孔を有機化合物層103(第1の発光ユニット501)に注入しやすくする機能を有する。正孔注入層111は、フタロシアニン(略称:HPc)等のポルフィリン系の化合物、銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の錯体化合物、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’-ビス(N-{4-[N’-(3-メチルフェニル)-N’-フェニルアミノ]フェニル}-N-フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)等の芳香族アミン化合物、またはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/(ポリスチレンスルホン酸)(略称:PEDOT/PSS)等の高分子等によって形成することができる。
【0152】
また、正孔注入層111は電子のアクセプタ性を有する物質により形成してもよい。アクセプタ性を有する物質としては、上記中間層116における電荷発生領域117を構成する複合材料に用いられるアクセプタ性材料として挙げた物質を同様に用いることができる。
【0153】
また、正孔注入層111は上記中間層116における電荷発生領域117を構成する複合材料を同様に用いて形成してもよい。
【0154】
なお、正孔注入層111においては、複合材料に用いられる正孔輸送性を有する有機化合物はそのHOMO準位が-5.7eV以上-5.4eV以下の比較的低いHOMO準位を有する物質であることがさらに好ましい。複合材料に用いられる正孔輸送性を有する有機化合物が比較的低いHOMO準位を有することによって、正孔輸送層への正孔の注入が容易となり、また、寿命の良好な発光デバイスを得ることが容易となる。また、複合材料に用いられる正孔輸送性を有する有機化合物が比較的低いHOMO準位を有する物質であることによって、正孔輸送性を有する有機化合物の劣化が抑制されさらに寿命の良好な発光デバイスとすることができる。
【0155】
正孔注入層111を形成することによって、正孔の注入性が良好となり、駆動電圧の小さい発光デバイスを得ることができる。
【0156】
なお、アクセプタ性を有する物質の中でもアクセプタ性を有する有機化合物は蒸着が容易で成膜がしやすいため、用いやすい材料である。
【0157】
また、中間層116における電荷発生領域117が正孔注入層の機能を担うため、第2の発光ユニット502には正孔注入層を設けていないが、第2の発光ユニット502に正孔注入層を設けてもよい。
【0158】
正孔輸送層(第1の正孔輸送層112_1、第2の正孔輸送層112_2)は、正孔輸送性を有する有機化合物を含んで形成される。正孔輸送性を有する有機化合物としては、1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有していることが好ましい。
【0159】
上記正孔輸送性を有する有機化合物としては、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:TPD)、N,N’-ビス(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBASF)などの芳香族アミン骨格を有する化合物、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)、9,9’-ビス(ビフェニル-4-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:BisBPCz)、9,9’-ビス(ビフェニル-3-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:BismBPCz)、9-(ビフェニル-3-イル)-9’-(ビフェニル-4-イル)-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:mBPCCBP)、9-(2-ナフチル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:βNCCP)、9-(3-ビフェニル)-9’-(2-ナフチル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:βNCCmBP)、9-(4-ビフェニル)-9’-(2-ナフチル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:βNCCBP)、9,9’-ジ-2-ナフチル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール(略称:BisβNCz)、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:4’,1”-ターフェニル]-3-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-3-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-5’-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:4’,1”-ターフェニル]-4-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-4-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-フェニル-9’-(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール(略称:PCCzTp)、9,9’-ビス(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(4-ビフェニル)-9’-(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(トリフェニレン-2-イル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-4-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、などのカルバゾール骨格を有する化合物、または4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物、または4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)などのフラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物、またはカルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。なお、正孔注入層111の複合材料に用いられる正孔輸送性を有する有機化合物として挙げた物質も正孔輸送層112を構成する材料として好適に用いることができる。
【0160】
発光層(第1の発光層113_1、第2の発光層113_2)は発光物質とホスト材料を有していることが好ましい。なお、発光層は、その他の材料を同時に含んでいても構わない。また、組成の異なる2層の積層であってもよい。
【0161】
発光物質は蛍光発光物質であっても、りん光発光物質であっても、熱活性化遅延蛍光(TADF:Thermally Activated Delayed Fluorescence)を示す物質であっても、その他の発光物質であっても構わない。
【0162】
発光層において、蛍光発光物質として用いることが可能な材料としては、例えば以下のようなものが挙げられる。また、これ以外の蛍光発光物質も用いることができる。
【0163】
5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6-ビス[4’-(10-フェニル-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAPP2BPy)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(略称:TBP)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)ビス(N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン)(略称:DPABPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPPA)、N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、N-[9,10-ビス(ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCABPhA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N-[9,10-ビス(ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10-ビス(ビフェニル-2-イル)-N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-フェニルアントラセン-2-アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9-トリフェニルアントラセン-9-アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン545T、N,N’-ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)、ルブレン、5,12-ビス(ビフェニル-4-イル)-6,11-ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2-(2-{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-6-メチル-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2-{2-メチル-6-[2-(2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)テトラセン-5,11-ジアミン(略称:p-mPhTD)、7,14-ジフェニル-N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)アセナフト[1,2-a]フルオランテン-3,10-ジアミン(略称:p-mPhAFD)、2-{2-イソプロピル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2-{2-tert-ブチル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2-(2,6-ビス{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2-{2,6-ビス[2-(8-メトキシ-1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)、N,N’-ジフェニル-N,N’-(1,6-ピレン-ジイル)ビス[(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン)-8-アミン](略称:1,6BnfAPrn-03)、3,10-ビス[N-(9-フェニル-9H-カルバゾール-2-イル)-N-フェニルアミノ]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10PCA2Nbf(IV)-02)、3,10-ビス[N-(ジベンゾフラン-3-イル)-N-フェニルアミノ]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10FrA2Nbf(IV)-02)などが挙げられる。特に、1,6FLPAPrn、1,6mMemFLPAPrnおよび1,6BnfAPrn-03のようなピレンジアミン化合物に代表される縮合芳香族ジアミン化合物は、ホールトラップ性が高く、発光効率または信頼性に優れているため好ましい。
【0164】
発光層において、発光物質としてりん光発光物質を用いる場合、用いることが可能な材料としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0165】
トリス{2-[5-(2-メチルフェニル)-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル-κN2]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:[Ir(mpptz-dmp)])、トリス(5-メチル-3,4-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz)])、トリス[4-(3-ビフェニル)-5-イソプロピル-3-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrptz-3b)])のような4H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス[3-メチル-1-(2-メチルフェニル)-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1-mp)])、トリス(1-メチル-5-フェニル-3-プロピル-1H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1-Me)])のような1H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体、fac-トリス[1-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-フェニル-1H-イミダゾール]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrpim)])、トリス[3-(2,6-ジメチルフェニル)-7-メチルイミダゾ[1,2-f]フェナントリジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(dmpimpt-Me)])のようなイミダゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2-[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:[Ir(CFppy)(pic)])、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)のような電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属イリジウム錯体が挙げられる。これらは青色のりん光発光を示す化合物であり、450nmから520nmまでの波長域において発光のピークを有する化合物である。
【0166】
また、トリス(4-メチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)])、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)])、(アセチルアセトナト)ビス(6-メチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[6-(2-ノルボルニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(nbppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[5-メチル-6-(2-メチルフェニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(mpmppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(4,6-ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)(acac)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、(アセチルアセトナト)ビス(3,5-ジメチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-Me)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(5-イソプロピル-3-メチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-iPr)(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)])、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(ppy)(acac)])、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bzq)(acac)])、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(bzq)])、トリス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(pq)])、ビス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(pq)(acac)])、[2-d3-メチル-8-(2-ピリジニル-κN)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-κC]ビス[2-(5-d3-メチル-2-ピリジニル-κN2)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:Ir(5mppy-d3)(mbfpypy-d3))、{2-(メチル-d3)-8-[4-(1-メチルエチル-1-d)-2-ピリジニル-κN]ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-7-イル-κC}ビス{5-(メチル-d3)-2-[5-(メチル-d3)-2-ピリジニル-κN]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:Ir(5mtpy-d6)(mbfpypy-iPr-d4))、[2-d3-メチル-(2-ピリジニル-κN)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-κC]ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)(mbfpypy-d3))、[2-(4-メチル-5-フェニル-2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)(mdppy))のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:[Tb(acac)(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは主に緑色のりん光発光を示す化合物であり、500nmから600nmまでの波長域において発光のピークを有する。なお、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性または発光効率にも際だって優れるため、特に好ましい。
【0167】
また、(ジイソブチリルメタナト)ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)(dibm)])、ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)(dpm)])、ビス[4,6-ジ(ナフタレン-1-イル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(d1npm)(dpm)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)(acac)])、ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)(dpm)])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Fdpq)(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(piq)])、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(piq)(acac)])のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)のような白金錯体、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(DBM)(Phen)])、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(TTA)(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは、赤色のりん光発光を示す化合物であり、600nmから700nmまでの波長域において発光のピークを有する。また、ピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、色度の良い赤色発光が得られる。
【0168】
また、以上で述べたりん光性化合物の他、公知のりん光性化合物を選択し、用いてもよい。
【0169】
TADF材料としてはフラーレン及びその誘導体、アクリジン及びその誘導体、エオシン誘導体等を用いることができる。またマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。該金属含有ポルフィリンとしては、例えば、以下の構造式に示されるプロトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Proto IX))、メソポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Meso IX))、ヘマトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル-フッ化スズ錯体(SnF(Copro III-4Me))、オクタエチルポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(OEP))、エチオポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Etio I))、オクタエチルポルフィリン-塩化白金錯体(PtClOEP)等も挙げられる。
【0170】
【化7】
【0171】
また、以下の構造式に示される2-(ビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール-11-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:PIC-TRZ)、9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:PCCzTzn)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、2-[4-(10H-フェノキサジン-10-イル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PXZ-TRZ)、3-[4-(5-フェニル-5,10-ジヒドロフェナジン-10-イル)フェニル]-4,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール(略称:PPZ-3TPT)、3-(9,9-ジメチル-9H-アクリジン-10-イル)-9H-キサンテン-9-オン(略称:ACRXTN)、ビス[4-(9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン(略称:DMAC-DPS)、10-フェニル-10H,10’H-スピロ[アクリジン-9,9’-アントラセン]-10’-オン(略称:ACRSA)、等のπ電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環の一方または両方を有する複素環化合物も用いることができる。該複素環化合物は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子輸送性及び正孔輸送性が共に高く、好ましい。中でも、π電子不足型複素芳香環を有する骨格のうち、ピリジン骨格、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)、およびトリアジン骨格は、安定で信頼性が良好なため好ましい。特に、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格はアクセプタ性が高く、信頼性が良好なため好ましい。また、π電子過剰型複素芳香環を有する骨格の中でも、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格、フラン骨格、チオフェン骨格、及びピロール骨格は、安定で信頼性が良好なため、当該骨格の少なくとも一を有することが好ましい。なお、フラン骨格としてはジベンゾフラン骨格が、チオフェン骨格としてはジベンゾチオフェン骨格が、それぞれ好ましい。また、ピロール骨格としては、インドール骨格、カルバゾール骨格、インドロカルバゾール骨格、ビカルバゾール骨格、3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール骨格が特に好ましい。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環の電子供与性とπ電子不足型複素芳香環の電子受容性が共に強くなり、S1準位とT1準位のエネルギー差が小さくなるため、熱活性化遅延蛍光を効率よく得られることから特に好ましい。なお、π電子不足型複素芳香環の代わりに、シアノ基のような電子吸引基が結合した芳香環を用いても良い。また、π電子過剰型骨格として、芳香族アミン骨格、フェナジン骨格等を用いることができる。また、π電子不足型骨格として、キサンテン骨格、チオキサンテンジオキサイド骨格、オキサジアゾール骨格、トリアゾール骨格、イミダゾール骨格、アントラキノン骨格、フェニルボラン、ボラントレン等の含ホウ素骨格、ベンゾニトリルまたはシアノベンゼン等のニトリル基またはシアノ基を有する芳香環、複素芳香環、ベンゾフェノン等のカルボニル骨格、ホスフィンオキシド骨格、スルホン骨格等を用いることができる。このように、π電子不足型複素芳香環およびπ電子過剰型複素芳香環の少なくとも一方の代わりにπ電子不足型骨格およびπ電子過剰型骨格を用いることができる。
【0172】
【化8】
【0173】
また、TADF材料として、一重項励起状態と三重項励起状態間が熱平衡状態にあるTADF材料を用いてもよい。このようなTADF材料は発光寿命(励起寿命)が短くなるため、発光デバイスにおける高輝度領域での効率低下を抑制することができる。具体的には、下記に示す分子構造のような材料が挙げられる。
【0174】
【化9】
【0175】
なお、TADF材料とは、S1準位とT1準位との差が小さく、逆項間交差によって三重項励起エネルギーから一重項励起エネルギーへエネルギーを変換することができる機能を有する材料である。そのため、三重項励起エネルギーをわずかな熱エネルギーによって一重項励起エネルギーにアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態を効率よく生成することができる。また、三重項励起エネルギーを発光に変換することができる。
【0176】
また、2種類の物質で励起状態を形成する励起錯体(エキサイプレックス、エキシプレックスまたはExciplexともいう)は、S1準位とT1準位との差が極めて小さく、三重項励起エネルギーを一重項励起エネルギーに変換することが可能なTADF材料としての機能を有する。
【0177】
なお、T1準位の指標としては、低温(例えば77Kから10K)で観測されるりん光スペクトルを用いればよい。TADF材料としては、その蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをS1準位とし、りん光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをT1準位とした際に、そのS1とT1の差が0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以下であることがさらに好ましい。
【0178】
また、TADF材料を発光物質として用いる場合、ホスト材料のS1準位はTADF材料のS1準位より高い方が好ましい。また、ホスト材料のT1準位はTADF材料のT1準位より高いことが好ましい。
【0179】
発光層のホスト材料としては、電子輸送性を有する材料および/または正孔輸送性を有する材料、上記TADF材料など様々なキャリア輸送材料を用いることができる。
【0180】
正孔輸送性を有する材料としては、アミン骨格、π電子過剰型複素芳香環骨格などを有する有機化合物が好ましい。例えば、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:TPD)、N,N’-ビス(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBASF)などの芳香族アミン骨格を有する化合物、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)などのカルバゾール骨格を有する化合物、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)などのフラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物またはカルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。また、正孔輸送層における、正孔輸送性を有する材料の例として挙げた有機化合物も用いることができる。
【0181】
電子輸送性を有する材料としては、例えば、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体、π電子不足型複素芳香環を有する有機化合物が好ましい。π電子不足型複素芳香環を有する有機化合物としては、例えば、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs)などのアゾール骨格を有する有機化合物、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)、バソフェナントロリン(略称:Bphen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、2,9-ジ(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBphen)、2,2’-(1,3-フェニレン)ビス(9-フェニル-1,10-フェナントロリン)(略称:mPPhen2P)、2,2’-ビフェニル-4,4’-ジイルビス(1,10-フェナントロリン)(略称:Phen2BP)などのピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3-(3’-ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、2-[4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-3,1’-ビフェニル-1-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mpPCBPDBq)、2-[4-(3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzPDBq-III)、7-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq-II)、及び6-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDBTPDBq-II)、9-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9mDBtBPNfpr)、9-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-4-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9pmDBtBPNfpr)、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス[3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)、4,6-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mCzP2Pm)、9,9’-[ピリミジン-4,6-ジイルビス(ビフェニル-3,3’-ジイル)]ビス(9H-カルバゾール)(略称:4,6mCzBP2Pm)、8-(ビフェニル-4-イル)-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8BP-4mDBtPBfpm)、3,8-ビス[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ベンゾフロ[2,3-b]ピラジン(略称:3,8mDBtP2Bfpr)、4,8-ビス[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4,8mDBtP2Bfpm)、8-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)(ビフェニル-3-イル)]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8mDBtBPNfpm)、8-[(2,2’-ビナフタレン)-6-イル]-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8(βN2)-4mDBtPBfpm)、2,2’-(ピリジン-2,6-ジイル)ビス(4-フェニルベンゾ[h]キナゾリン)(略称:2,6(P-Bqn)2Py)、2,2’-(ピリジン-2,6-ジイル)ビス{4-[4-(2-ナフチル)フェニル]-6-フェニルピリミジン}(略称:2,6(NP-PPm)2Py)、6-(ビフェニル-3-イル)-4-[3,5-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-2-フェニルピリミジン(略称:6mBP-4Cz2PPm)、2,6-ビス(4-ナフタレン-1-イルフェニル)-4-[4-(3-ピリジル)フェニル]ピリミジン(略称:2,4NP-6PyPPm)、4-[3,5-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-2-フェニル-6-(ビフェニル-4-イル)ピリミジン(略称:6BP-4Cz2PPm)、7-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-2-イル)キナゾリン-2-イル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:PC-cgDBCzQz)などのジアジン骨格を有する有機化合物、2-(ビフェニル-4-イル)-4-フェニル-6-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:BP-SFTzn)、2-{3-[3-(ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mBnfBPTzn)、2-{3-[3-(ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-6-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mBnfBPTzn-02)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、9-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-2,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:mPCCzPTzn-02)、2-[3’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)ビフェニル-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mFBPTzn)、5-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-7,7-ジメチル-5H,7H-インデノ[2,1-b]カルバゾール(略称:mINc(II)PTzn)、2-{3-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mDBtBPTzn)、2,4,6-トリス[3’-(ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル]-1,3,5-トリアジン(略称:TmPPPyTz)、2-[3-(2,6-ジメチル-3-ピリジニル)-5-(9-フェナントレニル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mPn-mDMePyPTzn)、11-[4-(ビフェニル-4-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル]-11,12-ジヒドロ-12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール(略称:BP-Icz(II)Tzn)、2-[3’-(トリフェニレン-2-イル)ビフェニル-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mTpBPTzn)、3-[9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-2-ジベンゾフラニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCDBfTzn)、2-(ビフェニル-3-イル)-4-フェニル-6-{8-[(1,1’:4’,1’’-ターフェニル)-4-イル]-1-ジベンゾフラニル}-1,3,5-トリアジン(略称:mBP-TPDBfTzn)などのトリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物が挙げられる。上述した中でも、ジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、またはトリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンまたはピラジン)骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0182】
ホスト材料として用いることが可能なTADF材料としては、先にTADF材料として挙げたものを同様に用いることができる。TADF材料をホスト材料として用いると、TADF材料で生成した三重項励起エネルギーが、逆項間交差によって一重項励起エネルギーに変換され、さらに発光物質へエネルギー移動することで、発光デバイスの発光効率を高めることができる。このとき、TADF材料がエネルギードナーとして機能し、発光物質がエネルギーアクセプターとして機能する。
【0183】
これは、上記発光物質が蛍光発光物質である場合に、非常に有効である。また、このとき、高い発光効率を得るためには、TADF材料のS1準位は、蛍光発光物質のS1準位より高いことが好ましい。また、TADF材料のT1準位は、蛍光発光物質のS1準位より高いことが好ましい。したがって、TADF材料のT1準位は、蛍光発光物質のT1準位より高いことが好ましい。
【0184】
また、蛍光発光物質の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈するTADF材料を用いることが好ましい。そうすることで、TADF材料から蛍光発光物質への励起エネルギーの移動がスムーズとなり、効率よく発光が得られるため、好ましい。
【0185】
また、効率良く三重項励起エネルギーから逆項間交差によって一重項励起エネルギーが生成されるためには、TADF材料でキャリア再結合が生じることが好ましい。また、TADF材料で生成した三重項励起エネルギーが蛍光発光物質の三重項励起エネルギーに移動しないことが好ましい。そのためには、蛍光発光物質は、蛍光発光物質が有する発光団(発光の原因となる骨格)の周囲に保護基を有すると好ましい。該保護基としては、π結合を有さない置換基が好ましく、飽和炭化水素が好ましく、具体的には炭素数3以上10以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上12以下のシクロアルキル基、炭素数3以上10以下のトリアルキルシリル基が挙げられ、保護基が複数あるとさらに好ましい。π結合を有さない置換基は、キャリアを輸送する機能に乏しいため、キャリア輸送またはキャリア再結合に影響をほとんど与えずに、TADF材料と蛍光発光物質の発光団との距離を遠ざけることができる。ここで、発光団とは、蛍光発光物質において発光の原因となる原子団(骨格)を指す。発光団は、π結合を有する骨格が好ましく、芳香環を含むことが好ましく、縮合芳香環または縮合複素芳香環を有すると好ましい。このような発光団としては、例えば、フェナントレン骨格、スチルベン骨格、アクリドン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、フルオレン骨格、クリセン骨格、トリフェニレン骨格、テトラセン骨格、ピレン骨格、ペリレン骨格、クマリン骨格、キナクリドン骨格、ナフトビスベンゾフラン骨格等が挙げられる。特にナフタレン骨格、アントラセン骨格、フルオレン骨格、クリセン骨格、トリフェニレン骨格、テトラセン骨格、ピレン骨格、ペリレン骨格、クマリン骨格、キナクリドン骨格、ナフトビスベンゾフラン骨格を有する蛍光発光物質は蛍光量子収率が高いため好ましい。
【0186】
蛍光発光物質を発光物質として用いる場合、ホスト材料としては、アントラセン骨格を有する材料が好適である。アントラセン骨格を有する物質を蛍光発光物質のホスト材料として用いると、発光効率、耐久性共に良好な発光層を実現することが可能である。ホスト材料として用いるアントラセン骨格を有する物質としては、ジフェニルアントラセン骨格、特に9,10-ジフェニルアントラセン骨格を有する物質が化学的に安定であるため好ましい。また、ホスト材料がカルバゾール骨格を有する場合、正孔の注入・輸送性が高まるため好ましいが、カルバゾール骨格にベンゼン環がさらに縮合したベンゾカルバゾール骨格を含む場合、カルバゾール骨格を有するホスト材料よりもHOMO準位が0.1eV程度高くなり、正孔が入りやすくなるためより好ましい。特に、ホスト材料がジベンゾカルバゾール骨格を含む場合、カルバゾール骨格を有するホスト材料よりもHOMO準位が0.1eV程度高くなり、正孔が入りやすくなる上に、正孔輸送性にも優れ、耐熱性も高くなるため好適である。したがって、さらにホスト材料として好ましいのは、9,10-ジフェニルアントラセン骨格およびカルバゾール骨格(あるいはベンゾカルバゾール骨格またはジベンゾカルバゾール骨格)を同時に有する物質である。なお、上記の正孔注入・輸送性の観点から、カルバゾール骨格に換えて、ベンゾフルオレン骨格またはジベンゾフルオレン骨格を用いてもよい。このような物質の例としては、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:PCzPA)、3-[4-(1-ナフチル)フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPN)、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzPA)、6-[3-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン(略称:2mBnfPPA)、9-フェニル-10-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)ビフェニル-4’-イル]アントラセン(略称:FLPPA)、9-(1-ナフチル)-10-[4-(2-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:αN-βNPAnth)、9-(1-ナフチル)-10-(2-ナフチル)アントラセン(略称:α,βADN)、2-(10-フェニルアントラセン-9-イル)ジベンゾフラン、2-(10-フェニル-9-アントラセニル)ベンゾ[b]ナフト[2,3-d]フラン(略称:Bnf(II)PhA)、9-(2-ナフチル)-10-[3-(2-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:βN-mβNPAnth)、1-[4-(10-ビフェニル-4-イル-9-アントラセニル)フェニル]-2-エチル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:EtBImPBPhA)、等が挙げられる。特に、CzPA、cgDBCzPA、2mBnfPPA、PCzPAは非常に良好な特性を示すため、好ましい選択である。
【0187】
なお、ホスト材料は複数種の物質を混合した材料であっても良く、混合したホスト材料を用いる場合は、電子輸送性を有する材料と、正孔輸送性を有する材料とを混合することが好ましい。電子輸送性を有する材料と、正孔輸送性を有する材料を混合することによって、発光層113の輸送性を容易に調整することができ、再結合領域の制御も簡便に行うことができる。正孔輸送性を有する材料と電子輸送性を有する材料の含有量の重量比は、正孔輸送性を有する材料:電子輸送性を有する材料=1:19~19:1とすればよい。
【0188】
なお、上記混合された材料の一部として、りん光発光物質を用いることができる。りん光発光物質は、発光物質として蛍光発光物質を用いる際に蛍光発光物質へ励起エネルギーを供与するエネルギードナーとして用いることができる。
【0189】
また、これら混合された材料同士で励起錯体を形成しても良い。当該励起錯体は発光物質の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈する励起錯体を形成するような組み合わせを選択することで、エネルギー移動がスムーズとなり、効率よく発光が得られるため好ましい。また、当該構成を用いることで駆動電圧も低下するため好ましい。
【0190】
なお、励起錯体を形成する材料の少なくとも一方は、りん光発光物質であってもよい。そうすることで、三重項励起エネルギーを逆項間交差によって効率よく一重項励起エネルギーへ変換することができる。
【0191】
効率よく励起錯体を形成する材料の組み合わせとしては、正孔輸送性を有する材料のHOMO準位が電子輸送性を有する材料のHOMO準位以上であると好ましい。また、正孔輸送性を有する材料のLUMO準位が電子輸送性を有する材料のLUMO準位以上であると好ましい。なお、材料のLUMO準位およびHOMO準位は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって測定される材料の電気化学特性(還元電位および酸化電位)から導出することができる。
【0192】
なお、励起錯体の形成は、例えば正孔輸送性を有する材料の電界発光スペクトル、電子輸送性を有する材料の電界発光スペクトル、およびこれら材料を混合した混合膜の電界発光スペクトルを比較し、混合膜の電界発光スペクトルが、各材料の電界発光スペクトルよりも長波長シフトする(あるいは長波長側に新たなピークを持つ)現象を観測することにより確認することができる。あるいは、正孔輸送性を有する材料の過渡フォトルミネッセンス(PL)、電子輸送性を有する材料の過渡PL、及びこれら材料を混合した混合膜の過渡PLを比較し、混合膜の過渡PL寿命が、各材料の過渡PL寿命よりも長寿命成分を有する、あるいは遅延成分の割合が大きくなるなどの過渡応答の違いを観測することにより、確認することができる。また、上述の過渡PLは過渡エレクトロルミネッセンス(EL)と読み替えても構わない。すなわち、正孔輸送性を有する材料の過渡EL、電子輸送性を有する材料の過渡EL及びこれらの混合膜の過渡ELを比較し、過渡応答の違いを観測することによっても、励起錯体の形成を確認することができる。
【0193】
電子輸送層(第1の電子輸送層114_1、第2の電子輸送層114_2)は、電子輸送性を有する物質を含む層である。電子輸送性を有する物質としては、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が、1×10-7cm/Vs以上好ましくは1×10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質が好ましい。なお、正孔よりも電子の輸送性が高い物質であれば、これら以外のものを用いることができる。なお、上記有機化合物としてはπ電子不足型複素芳香環を有する有機化合物が好ましい。π電子不足型複素芳香環を有する有機化合物としては、例えばポリアゾール骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物およびトリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物のいずれかまたは複数であることが好ましい。
【0194】
上記電子輸送層に用いることが可能な電子輸送性を有する有機化合物としては、前述の電子輸送性を有する材料、および上記中間層116における電子注入バッファ領域の電子輸送性を有する有機化合物として用いることが可能な有機化合物を同様に用いることができる。中でも、ジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物またはピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンまたはピラジン)骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0195】
また、電子輸送層は電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が1×10-7cm/Vs以上5×10-5cm/Vs以下であることが好ましい。電子輸送層114における電子の輸送性を落とすことにより発光層への電子の注入量を制御することができ、発光層が電子過多の状態になることを防ぐことができる。この構成は、特に正孔注入層を複合材料として形成し、当該複合材料における正孔輸送性を有する材料のHOMO準位が-5.7eV以上-5.4eV以下の比較的低いHOMO準位を有する物質である場合に、寿命が良好となるため特に好ましい。なお、この際、電子輸送性を有する材料は、そのHOMO準位が-6.0eV以上であることが好ましい。
【0196】
電子注入層115としては、上述した塩基性骨格を有する有機化合物の他に、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、8-ヒドロキシキノリナト-リチウム(略称:Liq)、イッテルビウム(Yb)のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、又はそれらの化合物もしくは錯体を含む層を用いることができる。電子注入層115は、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含有させたものまたは、エレクトライドを用いてもよい。エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。
【0197】
なお、電子注入層115として、電子輸送性を有する物質(好ましくはビピリジン骨格を有する有機化合物)に上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物を微結晶状態となる濃度以上(50wt%以上)含ませた層を用いることも可能である。当該層は、屈折率の低い層であることから、より外部量子効率の良好な発光デバイスを提供することが可能となる。
【0198】
また、有機化合物層103の形成方法としては、乾式法、湿式法を問わず、種々の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法またはスピンコート法など用いても構わない。
【0199】
また上述した各電極または各層を異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0200】
図1(C)には、本発明の一態様の発光装置に含まれる、隣り合う二つの発光デバイス(発光デバイス130a、発光デバイス130b)の図を示した。
【0201】
発光デバイス130aは、絶縁層175上に第1の電極101aと第2の電極102との間に有機化合物層103aを有している。有機化合物層103aは第1の発光ユニット501aと、第2の発光ユニット502aとが、中間層116aを挟んで積層した構成を有する。なお、図1(C)では2つの発光ユニットが積層する例を示したが、3つ以上の発光ユニットが積層する構成であってもよい。第1の発光ユニット501aは、正孔注入層111a、第1の正孔輸送層112a_1、第1の発光層113a_1、第1の電子輸送層114a_1を有する。中間層116aは、電荷発生領域117a、電子リレー領域118a、電子注入バッファ領域119aを有する。電子リレー領域118aはあっても無くても構わない。第2の発光ユニット502aは、第2の正孔輸送層112a_2、第2の発光層113a_2、第2の電子輸送層114a_2、電子注入層115を有する。
【0202】
発光デバイス130bは、絶縁層175上に第1の電極101bと第2の電極102との間に有機化合物層103bを有している。有機化合物層103bは第1の発光ユニット501bと、第2の発光ユニット502bとが、中間層116bを挟んで積層した構成を有する。なお、図1(C)では2つの発光ユニットが積層する例を示したが、3つ以上の発光ユニットが積層する構成であってもよい。第1の発光ユニット501bは、正孔注入層111b、第1の正孔輸送層112b_1、第1の発光層113b_1、第1の電子輸送層114b_1を有する。中間層116bは、電荷発生領域117b、電子リレー領域118b、電子注入バッファ領域119bを有する。電子リレー領域118bはあっても無くても構わない。第2の発光ユニット502bは、第2の正孔輸送層112b_2、第2の発光層113b_2、第2の電子輸送層114b_2、電子注入層115を有する。
【0203】
なお、電子注入層115および第2の電極102は発光デバイス130aおよび発光デバイス130bで一続きの共有された層であることが好ましい。また、電子注入層115以外の有機化合物層103aと有機化合物層103bは、第2の電子輸送層114a_2となる層が形成された後と、第2の電子輸送層114b_2となる層が形成された後に各々フォトリソグラフィ法により加工されているため互いに独立している。また、電子注入層115以外の有機化合物層103aの端部(輪郭)は、フォトリソグラフィ法により加工されているため基板に対して垂直方向に概略一致している。また、電子注入層115以外の有機化合物層103bの端部(輪郭)は、フォトリソグラフィ法により加工されているため基板に対して垂直方向に概略一致している。
【0204】
また、第1の電極101aと第1の電極101bとの間の距離dは、有機化合物層をフォトリソグラフィ法により加工することからマスク蒸着を行う際よりも小さくすることができ、2μm以上5μm以下とすることができる。
【0205】
本実施の形態の構成は、他の構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0206】
(実施の形態2)
図4(A)および図4(B)に例示するように、先の実施の形態で説明した発光デバイス130は、絶縁層175上に複数形成することで、発光装置を構成する。本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置について詳しく説明する。
【0207】
発光装置1000は、複数の画素178がマトリクス状に配列された画素部177を有する。画素178は、副画素110R、副画素110G、及び副画素110Bを有する。
【0208】
本明細書等において、例えば副画素110R、副画素110G、及び副画素110Bに共通する事項は、副画素110と呼称して説明する場合がある。また、アルファベットで区別する構成要素について、該当する構造に共通する事項は、アルファベットを省略した符号を用いて説明する場合がある。
【0209】
副画素110Rは赤色の光を呈し、副画素110Gは緑色の光を呈し、副画素110Bは青色の光を呈する。これにより、画素部177に画像を表示することができる。なお、本実施の形態では、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の副画素を例に挙げて説明するが、本発明は当該構成に限らない。つまり、その他の色の副画素の組み合わせを用いてもよい。例えば、副画素は3つに限られず、4つ以上としてもよい。4つの副画素としては、例えば、R、G、B、白色(W)の4色の副画素、R、G、B、黄色(Y)の4色の副画素、及び、R、G、B、赤外光(IR)の4つの副画素、等が挙げられる。
【0210】
本明細書等において、行方向をX方向、列方向をY方向という場合がある。X方向とY方向は交差し、例えば垂直に交差する。
【0211】
図4(A)では、異なる色の副画素がX方向に並べて配置されており、同じ色の副画素が、Y方向に並べて配置されている例を示す。なお、異なる色の副画素がY方向に並べて配置され、同じ色の副画素が、X方向に並べて配置されていてもよい。
【0212】
画素部177の外側には、接続部140および領域141を設けてもよい。例えば、領域141は画素部177と接続部140の間に設けるとよい。領域141には、有機化合物層103を設ける。また、接続部140には、導電層151Cを設ける。
【0213】
図4(A)では、領域141、及び接続部140が画素部177の右側に位置する例を示すが、領域141、及び接続部140の位置は特に限定されない。また、領域141、及び接続部140は、単数であっても複数であってもよい。
【0214】
図4(B)は、図4(A)における一点鎖線A1-A2間の断面図の例である。図4(A)に示すように、発光装置1000は、絶縁層171と、絶縁層171上の導電層172と、絶縁層171上、及び導電層172上の絶縁層173と、絶縁層173上の絶縁層174と、絶縁層174上の絶縁層175と、を有する。絶縁層171は、基板(図示せず)上に設けるとよい。絶縁層175、絶縁層174、及び絶縁層173には、導電層172に達する開口が設けられ、当該開口を埋め込むようにプラグ176を設ける。
【0215】
画素部177において、絶縁層175及びプラグ176上に、発光デバイス130が設けられる。また、発光デバイス130を覆うように、保護層131が設けられている。保護層131上には、樹脂層122によって基板120が貼り合わされている。また、隣り合う発光デバイス130の間には、無機絶縁層125と、無機絶縁層125上の絶縁層127と、を設けてもよい。
【0216】
図4(B)では、無機絶縁層125及び絶縁層127の断面が複数示されているが、発光装置1000を上面から見た場合、無機絶縁層125及び絶縁層127は、それぞれ1つに繋がっていることが好ましい。つまり、無機絶縁層125及び絶縁層127は、第1の電極上に開口部を有する絶縁層とするとよい。
【0217】
図4(B)では、発光デバイス130として、発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bを示している。発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bは、互いに異なる色の光を発するものとする。例えば、発光デバイス130Rは赤色の光を発することができ、発光デバイス130Gは緑色の光を発することができ、発光デバイス130Bは青色の光を発することができる。また、発光デバイス130R、発光デバイス130G、又は発光デバイス130Bは、他の可視光又は赤外光を発してもよい。
【0218】
なお、有機化合物層103は、少なくとも発光層を有し、その他の機能層(正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子輸送層、及び電子注入層等)を有することができる。また、有機化合物層103と共通層104とを合わせて、発光デバイスが備える機能層(正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、発光層、電子ブロック層、電子輸送層、及び電子注入層等)を形成しても良い。
【0219】
本発明の一態様の発光装置は、例えば発光デバイスが形成されている基板とは反対方向に光を射出する上面射出型(トップエミッション型)とすることができる。なお、本発明の一態様の発光装置は、下面射出型(ボトムエミッション型)であってもよい。
【0220】
発光デバイス130(130R、130G、130B)は、実施の形態1に示したような構成を有する。導電層151(151R、151G、151B)と導電層152(152R、152G、152B)とからなる第1の電極(画素電極)と、第1の電極上の有機化合物層103(103R、103G、103B)と、有機化合物層103(103R、103G、103B)上の共通層104と、共通層104上の第2の電極(共通電極)102と、を有する。
【0221】
なお、共通層104は、必ずしも設けなくてもよい。共通層104を設けることで、後工程による有機化合物層103Rへのダメージを低減できる。また、共通層104が設けられている場合、共通層104は、電子注入層としての機能を有していてもよい。共通層104が電子注入層として機能する場合、有機化合物層103Rと共通層104との積層構造は、実施の形態1における有機化合物層103に相当する。
【0222】
発光デバイスが有する画素電極と共通電極のうち、一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。以下では、特に断りが無い場合は、画素電極が陽極として機能し、共通電極が陰極として機能するものとして説明する。
【0223】
有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bは、各々または、発光色毎に、島状に独立している。有機化合物層103を発光デバイス130毎に島状に設けることで、高精細な発光装置においても隣接する発光デバイス130間のリーク電流を抑制できる。これにより、クロストークを防ぐことができ、コントラストの極めて高い発光装置を実現できる。特に、低輝度における電流効率の高い発光装置を実現できる。
【0224】
有機化合物層103は、発光デバイス130の第1の電極(画素電極)の上面及び側面を覆うように設けてもよい。これにより、有機化合物層103の端部が画素電極の端部よりも内側に位置する構成に比べて、発光装置1000の開口率を高めることが容易となる。また、発光デバイス130の画素電極の側面を有機化合物層103で覆うことで、画素電極と第2の電極102とが接することを抑制できるため、発光デバイス130のショートを抑制できる。また、有機化合物層103の発光領域(すなわち、画素電極と重なる領域)と、有機化合物層103の端部との距離を大きくできる。さらに、有機化合物層103の端部は、加工によりダメージを受けている可能性があるため、有機化合物層103の端部から離れた領域を発光領域として用いることで、発光デバイス130の信頼性を高められる。
【0225】
また、本発明の一態様の発光装置では、発光デバイスの第1の電極(画素電極)を、積層構成としてもよい。例えば、図4(B)に示す例では、発光デバイス130の第1の電極を、導電層151と、導電層152と、の積層構成としている。
【0226】
例えば、発光装置1000がトップエミッション型である場合、発光デバイス130の画素電極は、導電層151は可視光に対する反射率が高い層とし、導電層152は可視光の透過性を有し、かつ仕事関数が大きい層とすることが好ましい。画素電極の可視光に対する反射率が高いほど、有機化合物層103が発する光の取り出し効率を高くすることができる。また、画素電極が陽極として機能する場合、画素電極の仕事関数が大きいほど、有機化合物層103への正孔の注入が容易となる。従って、発光デバイス130の画素電極を、可視光に対する反射率が高い導電層151と、仕事関数が大きい導電層152と、の積層構成とすることにより、発光デバイス130を、光取り出し効率が高く、且つ駆動電圧の低い発光デバイスとすることができる。
【0227】
具体的には、導電層151の可視光に対する反射率は、例えば40%以上100%以下とすることが好ましく、70%以上100%以下とすることがより好ましい。また、導電層152は、可視光の透過性を有する電極とする場合、可視光に対する透過率を例えば40%以上とすることが好ましい。
【0228】
また、積層構造を有する画素電極の形成後に成膜した膜を、ウェットエッチング法などにより除去する際にエッチングに用いる薬液が構造体に含浸する場合がある。含浸した薬液が画素電極に接触すると、画素電極を構成する複数の層間においてガルバニック腐食などが発生し、画素電極が変質することがある。
【0229】
そこで、導電層151の上面及び側面を覆うように、導電層152を形成することが好ましい。導電層152で導電層151を覆うことで、含浸した薬液が導電層151に接触することなく、画素電極へのガルバニック腐食の発生を抑制できる。従って、発光装置1000は、歩留まりが高い方法で作製できるため、低価格の発光装置とすることができる。また、発光装置1000に不良が発生することを抑制できるため、発光装置1000は信頼性が高い発光装置とすることができる。
【0230】
導電層151として、例えば金属材料を用いることができる。具体的には、例えばアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)等の金属、及びこれらを適宜組み合わせて含む合金を用いることもできる。
【0231】
導電層152として、インジウム、錫、亜鉛、ガリウム、チタン、アルミニウム、及びシリコンの中から選ばれるいずれか一又は複数を有する酸化物を用いることができる。例えば、酸化インジウム、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを含む酸化亜鉛、酸化チタン、ガリウムを含むインジウム亜鉛酸化物、アルミニウムを含むインジウム亜鉛酸化物、シリコンを含むインジウム錫酸化物、及びシリコンを含むインジウム亜鉛酸化物等のいずれか一又は複数を含む導電性酸化物を用いることが好ましい。特に、シリコンを含むインジウム錫酸化物は仕事関数が大きい、例えば仕事関数が4.0eV以上であるため、導電層152として好適に用いることができる。
【0232】
また、導電層151、および導電層152は、異なる材料を有する複数の層の積層構成であってもよい。この場合、導電層151が、導電性酸化物等の導電層152に用いることができる材料を用いた層を有してもよく、また、導電層152が、金属材料等の導電層151に用いることができる材料を用いた層を有してもよい。例えば、導電層151が2層以上の積層構成である場合は、導電層152と接する層は、導電層152の導電層151と接する層に用いる材料と同じ材料を含む層とすることができる。
【0233】
なお、導電層151の端部は、テーパ形状を有することが好ましい。具体的には、導電層151の端部は、テーパ角90°未満のテーパ形状を有することが好ましい。この場合、導電層151の側面に沿って設けられる導電層152もテーパ形状を有する。導電層152の端部をテーパ形状とすることで、導電層152の側面に沿って設けられる有機化合物層103の被覆性を高めることができる。
【0234】
また、導電層151、または導電層152が積層構造を有する場合、少なくとも1つの側面がテーパ形状を有していることが好ましい。また、各導電層を構成する積層構造において、層毎に異なるテーパ形状であってもよい。
【0235】
図5(A)においては、導電層151が異なる材料を含む複数の層の積層構造である場合の図を示している。図5(A)に示すように、導電層151は、導電層151_1と、導電層151_1上の導電層151_2と、導電層151_2上の導電層151_3と、を有する構成である。つまり、図5(A)に示す導電層151は、3層積層構成である。このように、導電層151が複数の層の積層構成である場合は、導電層151を構成する層のうち少なくとも1つの層の可視光に対する反射率を、導電層152の可視光に対する反射率より高くすればよい。
【0236】
図5(A)に示す例では、導電層151_2が、導電層151_1と導電層151_3により挟まれる構成である。導電層151_1、及び導電層151_3には、導電層151_2より変質しにくい材料を用いることが好ましい。例えば、導電層151_1には、絶縁層175と接することによるマイグレーションの発生が、導電層151_2より起こりにくい材料を用いることができる。また、導電層151_3には、導電層151_2より酸化しにくく、さらに酸化物の電気抵抗率が、導電層151_2に用いる材料の酸化物より低い材料を用いることができる。
【0237】
以上より、導電層151_2を、導電層151_1と導電層151_3で挟む構成とすることで、導電層151_2の材料選択の幅を広げることができる。これにより、例えば導電層151_2を、導電層151_1及び導電層151_3のうち少なくとも一方より、可視光に対する反射率が高い層とすることができる。例えば、導電層151_2としてアルミニウムを用いることができる。なお、導電層151_2には、アルミニウムを含む合金を用いてもよい。また、導電層151_1として、可視光に対する反射率がアルミニウムと比較すると低いが、絶縁層175と接してもアルミニウムよりマイグレーションが発生しにくい材料であるチタンを用いることができる。さらに、導電層151_3として、可視光に対する反射率がアルミニウムと比較すると低いが、アルミニウムより酸化しにくく、また酸化物の電気抵抗率が酸化アルミニウムの電気抵抗率より低い材料であるチタンを用いることができる。
【0238】
また、導電層151_3として、銀、又は銀を含む合金を用いてもよい。銀は、可視光に対する反射率がチタンより高いという特性を有する。さらに、銀は、アルミニウムより酸化しにくく、また酸化銀の電気抵抗率は酸化アルミニウムの電気抵抗率より低いという特性を有する。以上により、導電層151_3として銀、又は銀を含む合金を用いると、導電層151の可視光に対する反射率を好適に高くしつつ、導電層151_2の酸化による画素電極の電気抵抗の上昇を抑制できる。ここで、銀を含む合金として、例えば銀とパラジウムと銅の合金(Ag-Pd-Cu、APCとも記す)を適用できる。なお、導電層151_3として銀、又は銀を含む合金を用い、導電層151_2としてアルミニウムを用いると、導電層151_3の可視光に対する反射率を、導電層151_2の可視光に対する反射率より高くすることができる。ここで、導電層151_2として銀、又は銀を含む合金を用いてもよい。また、導電層151_1に銀、又は銀を含む合金を用いてもよい。
【0239】
一方、チタンを用いた膜は、銀を用いた膜よりエッチングによる加工性に優れる。よって、導電層151_3としてチタンを用いることにより、導電層151_3を容易に形成できる。なお、アルミニウムを用いた膜も、銀を用いた膜よりエッチングによる加工性に優れる。
【0240】
以上のように、導電層151を複数の層の積層構造とすることにより、発光装置の特性を向上させることができる。例えば、発光装置1000を、光取り出し効率が高く、且つ信頼性が高い発光装置とすることができる。
【0241】
ここで、発光デバイス130にマイクロキャビティ構造が適用されている場合は、導電層151_3として、可視光に対する反射率が高い材料である銀、又は銀を含む合金を用いると、発光装置1000の光取り出し効率を好適に高めることができる。
【0242】
また、導電層151の材料選択、または加工方法により、図5(A)に示すように、導電層151_2の側面が、導電層151_1、及び導電層151_3の側面より内側に位置し、突出部を形成する場合がある。これにより、導電層152の導電層151に対する被覆性が低下し、導電層152の段切れが発生する恐れがある。
【0243】
そこで、図5(A)のように絶縁層156を設けることが好ましい。図5(A)では、導電層151_2の側面と重なる領域を有するように、導電層151_1上に絶縁層156が設けられる例を示している。これにより、突出部に起因した導電層152の段切れまたは薄膜化の発生を抑制できるため、接続不良または駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0244】
なお、図5(A)においては、導電層151_2の側面が絶縁層156に全て覆われる構造を図示したが、導電層151_2の側面の一部が絶縁層156に覆われなくてもよい。以降に示す構成の画素電極においても、同様に導電層151_2の側面の一部が絶縁層156に覆われなくてもよい。
【0245】
また、図5(A)に示すように、絶縁層156は、湾曲面を有することが好ましい。これにより、例えば絶縁層156の側面が垂直(Z方向に平行)である場合より、絶縁層156を覆う導電層152における段切れの発生を抑制できる。また、絶縁層156が、側面にテーパ形状、具体的にはテーパ角が90°未満のテーパ形状を有する場合であっても、例えば絶縁層156の側面が垂直である場合より、絶縁層156を覆う導電層152における段切れの発生を抑制できる。以上より、発光装置1000を、歩留まりが高い方法で作製できる。また、不良の発生を抑制し、発光装置1000は信頼性が高い発光装置とすることができる。
【0246】
なお、本発明の一態様はこれに限らない。例えば、図5(B)乃至図5(D)に、第1の電極101のその他の構成を示す。
【0247】
図5(B)は、図5(A)の第1の電極101において、絶縁層156が導電層151_2の側面だけでなく、導電層151_1、導電層151_2および導電層151_3の側面を覆っている構成である。
【0248】
図5(C)は図5(A)の第1の電極101において、絶縁層156が設けられていない構成である。
【0249】
図5(D)は図5(A)の第1の電極101において、導電層151が積層構造を有しておらず、導電層152が積層構造を有している構成である。
【0250】
導電層152_1は、導電層152_2に対する密着性が、例えば絶縁層175より高い層とする。導電層152_1として、例えばインジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、チタン、アルミニウム、及びシリコンの中から選ばれるいずれか一又は複数を有する酸化物を用いることができる。例えば、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを含む酸化亜鉛、酸化チタン、インジウムチタン酸化物、チタン酸亜鉛、アルミニウム亜鉛酸化物、ガリウムを含むインジウム亜鉛酸化物、アルミニウムを含むインジウム亜鉛酸化物、シリコンを含むインジウムスズ酸化物、及びシリコンを含むインジウム亜鉛酸化物等のいずれか一又は複数を含む導電性酸化物を用いることが好ましい。以上により、導電層152_2の膜剥がれを抑制することができる。また、導電層152_2を絶縁層175と接しない構成とすることができる。
【0251】
導電層152_2は、可視光に対する反射率(例えば400nm以上750nm未満の範囲内の所定の波長の光に対する反射率)が、導電層151、導電層152_1、及び導電層152_3より高い層とする。導電層152_2の可視光に対する反射率は、例えば70%以上100%以下とすることができ、好ましくは80%以上100%以下であり、より好ましくは90%以上100%以下である。また、導電層152_2として、例えば銀、又は銀を含む合金を用いることができる。銀を含む合金として、例えば銀、パラジウム、及び銅の合金(APC)が挙げられる。以上により、発光装置1000を、光取り出し効率が高い発光装置とすることができる。なお、導電層152_2として、銀以外の金属を用いてもよい。
【0252】
導電層152_3は、導電層151及び導電層152を陽極として機能させる場合、仕事関数が大きい層とすることが好ましい。導電層152_3は、例えば、導電層152_2より仕事関数が大きい層とする。導電層152_3として、例えば導電層152_1に用いることができる材料と同様の材料を用いることができる。例えば、導電層152_1と導電層152_3に同一種の材料を用いる構成とすることができる。
【0253】
なお、導電層151及び導電層152を陰極として機能させる場合、導電層152_3は、仕事関数が小さい層とすることが好ましい。導電層152_3は、例えば、導電層152_2より仕事関数が小さい層とする。
【0254】
また、導電層152_3は、可視光に対する透過率(例えば400nm以上750nm未満の範囲内の所定の波長の光に対する透過率)が高い層とすることが好ましい。例えば、導電層152_3の可視光に対する透過率は、導電層151、及び導電層152_2の可視光に対する透過率より高いことが好ましい。例えば、導電層152_3の可視光に対する透過率は、60%以上100%以下とすることができ、好ましくは70%以上100%以下であり、より好ましくは80%以上100%以下である。以上により、有機化合物層103が発する光のうち、導電層152_3に吸収される光を少なくすることができる。また、前述のように、導電層152_3下の導電層152_2は、可視光に対する反射率が高い層とすることができる。よって、発光装置1000を、光取り出し効率が高い発光装置とすることができる。
【0255】
続いて図4に示す構成を有する発光装置1000の作製方法例を図6乃至図12を用いて説明する。
【0256】
[作製方法例1]
発光装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、及び、導電膜等)は、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、又はALD法等を用いて形成できる。CVD法としては、プラズマ化学気相堆積(PECVD:Plasma Enhanced CVD)法、及び、熱CVD法等がある。また、熱CVD法のひとつに、有機金属化学気相堆積(MOCVD:Metal Organic CVD)法がある。
【0257】
また、発光装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、及び、導電膜等)は、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、インクジェット、ディスペンス、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ法、スリットコート、ロールコート、カーテンコート、又はナイフコート等の湿式の成膜方法により形成できる。
【0258】
特に、発光デバイスの作製には、蒸着法等の真空プロセス、及び、スピンコート法、インクジェット法等の溶液プロセスを用いることができる。蒸着法としては、スパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、分子線蒸着法、真空蒸着法等の物理蒸着法(PVD法)、及び、化学蒸着法(CVD法)等が挙げられる。特に有機化合物層に含まれる機能層(正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、発光層、電子ブロック層、電子輸送層、及び電子注入層等)については、蒸着法(真空蒸着法等)、塗布法(ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法等)、印刷法(インクジェット法、スクリーン(孔版印刷)法、オフセット(平版印刷)法、フレキソ(凸版印刷)法、グラビア法、又は、マイクロコンタクト法等)等の方法により形成できる。
【0259】
また、発光装置を構成する薄膜を加工する際には、例えばフォトリソグラフィ法を用いて加工できる。又は、ナノインプリント法、サンドブラスト法、リフトオフ法等により薄膜を加工してもよい。また、メタルマスク等の遮蔽マスクを用いた成膜方法により、島状の薄膜を直接形成してもよい。
【0260】
フォトリソグラフィ法としては、代表的には以下の2つの方法がある。1つは、加工したい薄膜上にレジストマスクを形成して、例えばエッチングにより当該薄膜を加工し、レジストマスクを除去する方法である。もう1つは、感光性を有する薄膜を成膜した後に、露光、現像を行って、当該薄膜を所望の形状に加工する方法である。
【0261】
薄膜のエッチングには、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、又はサンドブラスト法等を用いることができる。
【0262】
まず、図6(A)に示すように、基板(図示せず)上に絶縁層171を形成する。続いて、絶縁層171上に導電層172、及び導電層179を形成し、導電層172、及び導電層179を覆うように絶縁層171上に絶縁層173を形成する。続いて、絶縁層173上に絶縁層174を形成し、絶縁層174上に絶縁層175を形成する。
【0263】
基板としては、少なくとも後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有する基板を用いることができる。基板として、絶縁性基板を用いる場合には、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、セラミック基板、又は有機樹脂基板等を用いることができる。また、シリコン又は炭化シリコン等を材料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SOI基板等の半導体基板を用いることができる。
【0264】
続いて、図6(A)に示すように、絶縁層175、絶縁層174、及び絶縁層173に、導電層172に達する開口を形成する。続いて、当該開口を埋め込むように、プラグ176を形成する。
【0265】
続いて、図6(A)に示すように、プラグ176上、及び絶縁層175上に、後に導電層151R、導電層151G、導電層151B、及び導電層151Cとなる導電膜151fを形成する。導電膜151fの形成には、例えば、スパッタリング法又は真空蒸着法を用いることができる。また、導電膜151fとして、例えば金属材料を用いることができる。
【0266】
続いて、図6(A)に示すように、例えば導電膜151f上にレジストマスク191を形成する。レジストマスク191は、感光性材料(フォトレジスト)を塗布し、露光及び現像を行うことで形成できる。
【0267】
続いて、図6(B)に示すように、例えばレジストマスク191と重ならない領域の導電膜151fを、例えばエッチング法、具体的には例えばドライエッチング法を用いて除去する。なお、導電膜151fが、例えばインジウム錫酸化物等の導電性酸化物を用いた層を含む場合は、当該層はウェットエッチング法を用いて除去してもよい。これにより、導電層151が形成される。なお、例えば導電膜151fの一部をドライエッチング法により除去する場合、絶縁層175の導電層151と重ならない領域に凹部(ザグリともいう)が形成される場合がある。
【0268】
続いて、図6(C)に示すように、レジストマスク191を除去する。レジストマスク191は、例えば、酸素プラズマを用いたアッシングにより除去できる。又は、酸素ガスと、CF、C、SF、CHF、Cl、HO、BCl、又はHe等の第18族元素と、を用いてもよい。又は、ウェットエッチングにより、レジストマスク191を除去してもよい。
【0269】
続いて、図6(D)に示すように、導電層151R上、導電層151G上、導電層151B上、導電層151C上、及び絶縁層175上に、後に絶縁層156R、絶縁層156G、絶縁層156B、及び絶縁層156Cとなる絶縁膜156fを形成する。絶縁膜156fの形成には、例えばCVD法、ALD法、スパッタリング法、又は真空蒸着法を用いることができる。
【0270】
絶縁膜156fには、無機材料を用いることができる。絶縁膜156fには、例えば、酸化絶縁膜、窒化絶縁膜、酸化窒化絶縁膜、又は窒化酸化絶縁膜等の無機絶縁膜を用いることができる。例えば、絶縁膜156fとして、シリコンを含む酸化絶縁膜、窒化絶縁膜、酸化窒化絶縁膜、又は窒化酸化絶縁膜等を用いることができる。例えば、絶縁膜156fとして、酸化窒化シリコンを用いることができる。
【0271】
続いて、図6(E)に示すように、絶縁膜156fを加工することにより、絶縁層156R、絶縁層156G、絶縁層156B、及び絶縁層156Cを形成する。例えば、絶縁膜156fの上面に対し、略均一にエッチングを施すことにより、絶縁層156を形成できる。このように均一にエッチングして平坦化することをエッチバック処理ともいう。なお、絶縁層156を、フォトリソグラフィ法を用いて形成してもよい。
【0272】
続いて、図7(A)に示すように、導電層151R上、導電層151G上、導電層151B上、導電層151C上、絶縁層156R上、絶縁層156G上、絶縁層156B上、絶縁層156C上、及び絶縁層175上に、後に導電層152R、導電層152G、導電層152B、及び導電層152Cとなる導電膜152fを形成する。具体的には、例えば導電層151R、導電層151G、導電層151B、導電層151C、絶縁層156R、絶縁層156G、絶縁層156B、及び絶縁層156Cを覆うように、導電膜152fを形成する。
【0273】
導電膜152fの形成には、例えば、スパッタリング法又は真空蒸着法を用いることができる。また、導電膜152fの形成には、ALD法を用いることができる。また、導電膜152fとして、例えば導電性酸化物を用いることができる。又は、導電膜152fとして、金属材料を用いる膜と、当該膜上の導電性酸化物を用いる膜と、の積層構成を適用できる。例えば、導電膜152fとして、チタン、銀、又は銀を含む合金を用いる膜と、当該膜上の導電性酸化物を用いる膜と、の積層構成を適用できる。
【0274】
続いて、図7(B)に示すように、例えばフォトリソグラフィ法を用いて導電膜152fを加工し、導電層152R、導電層152G、導電層152B、及び導電層152Cを形成する。具体的には、例えばレジストマスクの形成後、エッチング法により導電膜152fの一部を除去する。導電膜152fは、例えばウェットエッチング法により除去できる。なお、導電膜152fを、ドライエッチング法により除去してもよい。以上により、導電層151と、導電層152と、を有する画素電極が形成される。
【0275】
続いて、導電層152の疎水化処理を行うことが好ましい。疎水化処理では、処理対象となる表面を親水性から疎水性にすること、又は、処理対象となる表面の疎水性を高めることができる。導電層152の疎水化処理を行うことで、導電層152と、後の工程で形成される有機化合物層103と、の密着性を高め、膜剥がれを抑制できる。なお、疎水化処理は行わなくてもよい。
【0276】
続いて、図7(C)に示すように、後に有機化合物層103Bとなる有機化合物膜103Bfを、導電層152B上、導電層152G上、導電層152R上、及び絶縁層175上に形成する。
【0277】
なお、本発明において、有機化合物膜103Bfは、少なくとも1以上の発光層を有する複数の有機化合物層を有する。具体的には、実施の形態1で説明した発光デバイス130の構造を参照することができる。また、少なくとも1以上の発光層を有する複数の有機化合物層が中間層を介して積層された構造を有してもよい。
【0278】
図7(C)に示すように、導電層152C上には、有機化合物膜103Bfを形成していない。例えば、成膜エリアを規定するためのマスク(ファインメタルマスクと区別して、エリアマスク、又はラフメタルマスク等ともいう)を用いることで、有機化合物膜103Bfを所望の領域にのみ成膜できる。エリアマスクを用いた成膜工程と、レジストマスクを用いた加工工程と、を採用することで、比較的簡単なプロセスにて発光デバイスを作製できる。
【0279】
有機化合物膜103Bfは、例えば、蒸着法、具体的には真空蒸着法により形成できる。また、有機化合物膜103Bfは、転写法、印刷法、インクジェット法、又は塗布法等の方法で形成してもよい。
【0280】
続いて、図7(D)に示すように、有機化合物膜103Bf上に、後に犠牲層158Bとなる犠牲膜158Bfと、後にマスク層159Bとなるマスク膜159Bfと、を順に形成する。
【0281】
犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfの形成には、例えば、スパッタリング法、ALD法(熱ALD法、PEALD法)、CVD法、真空蒸着法を用いることができる。また、前述の湿式の成膜方法を用いて形成してもよい。
【0282】
また、犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfは、有機化合物膜103Bfの耐熱温度よりも低い温度で形成する。犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfを形成する際の基板温度としては、それぞれ、代表的には、200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。
【0283】
なお、本実施の形態では、犠牲膜158Bfとマスク膜159Bfの2層構造でマスク膜を形成する例を示すが、マスク膜は単層構造であってもよく、3層以上の積層構造であってもよい。
【0284】
有機化合物膜103Bf上に犠牲層を設けることで、発光装置の作製工程中に有機化合物膜103Bfが受けるダメージを低減し、発光デバイスの信頼性を高めることができる。
【0285】
犠牲膜158Bfには、有機化合物膜103Bfの加工条件に対する耐性の高い膜、具体的には、有機化合物膜103Bfとのエッチングの選択比が大きい膜を用いる。マスク膜159Bfには、犠牲膜158Bfとのエッチングの選択比が大きい膜を用いる。
【0286】
犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfには、ウェットエッチング法により除去できる膜を用いることが好ましい。ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfの加工時に、有機化合物膜103Bfに加わるダメージを低減できる。
【0287】
ウェットエッチング法を用いる場合、水溶性の薬液を用いることが、有機化合物が溶出しづらく、好ましい。特に酸性の薬液を用いることができる。酸性の薬液としては、リン酸、フッ化水素酸、硝酸、酢酸、シュウ酸、および硫酸などのいずれか一を含む薬液、または、2種以上の酸の混合薬液(混酸ともいう)を用いるとよい。アルカリ性の薬液を用いることもできる。アルカリ性の薬液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの四級アンモニウムを用いることができる。
【0288】
犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfとしては、それぞれ、例えば、金属膜、合金膜、金属酸化物膜、半導体膜、有機絶縁膜、及び、無機絶縁膜等のうち一種又は複数種を用いることができる。
【0289】
また、犠牲膜158Bfおよびマスク膜159Bfに、紫外線に対して遮光性を有する材料を含む膜を用いることで、例えば露光工程で有機化合物層に紫外線が照射されることを抑制できる。有機化合物層が紫外線によってダメージを受けることを抑制することで、発光デバイスの信頼性を高めることができる。
【0290】
なお、紫外線に対して遮光性を有する材料を含む膜は、後述する無機絶縁膜125fの材料として用いても、同様の効果を奏する。
【0291】
犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfには、それぞれ、例えば、金、銀、白金、マグネシウム、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、チタン、アルミニウム、イットリウム、ジルコニウム、及びタンタル等の金属材料、又は該金属材料を含む合金材料を用いることができる。特に、アルミニウム又は銀等の低融点材料を用いることが好ましい。
【0292】
また、犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfには、それぞれ、In-Ga-Zn酸化物、酸化インジウム、In-Zn酸化物、In-Sn酸化物、インジウムチタン酸化物(In-Ti酸化物)、インジウムスズ亜鉛酸化物(In-Sn-Zn酸化物)、インジウムチタン亜鉛酸化物(In-Ti-Zn酸化物)、インジウムガリウムスズ亜鉛酸化物(In-Ga-Sn-Zn酸化物)、シリコンを含むインジウムスズ酸化物等の金属酸化物を用いることができる。
【0293】
なお、上記ガリウムに代えて元素M(Mは、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウムから選ばれた一種又は複数種)を用いてもよい。
【0294】
また、犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfとして、例えば、シリコン又はゲルマニウム等の半導体材料を用いることは、半導体の製造プロセスと親和性の高いため好ましい。又、上記半導体材料の酸化物又は窒化物を用いることができる。又は、炭素等の非金属材料、又はその化合物を用いることができる。又は、チタン、タンタル、タングステン、クロム、アルミニウム等の金属、又はこれらの一以上を含む合金が挙げられる。又は、酸化チタンもしくは酸化クロム等の上記金属を含む酸化物、又は窒化チタン、窒化クロム、もしくは窒化タンタル等の窒化物を用いることができる。
【0295】
また、犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfとしては、それぞれ、各種無機絶縁膜を用いることができる。特に、酸化絶縁膜は、窒化絶縁膜に比べて有機化合物膜103Bfとの密着性が高く好ましい。例えば、犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfには、それぞれ、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化シリコン等の無機絶縁材料を用いることができる。犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfとして、例えば、ALD法を用いて、酸化アルミニウム膜を形成できる。ALD法を用いることで、下地(特に有機化合物層)へのダメージを低減できるため好ましい。
【0296】
また、犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfの一方又は双方に、有機材料を用いてもよい。例えば、有機材料として、少なくとも有機化合物膜103Bfの最上部に位置する膜に対して、化学的に安定な溶媒に溶解しうる材料を用いてもよい。特に、水又はアルコールに溶解する材料を好適に用いることができる。このような材料の成膜の際には、水又はアルコール等の溶媒に溶解させた状態で、湿式の成膜方法で塗布した後に、溶媒を蒸発させるための加熱処理を行うことが好ましい。このとき、減圧雰囲気下での加熱処理を行うことで、低温且つ短時間で溶媒を除去できるため、有機化合物膜103Bfへの熱的なダメージを低減でき、好ましい。
【0297】
犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfには、それぞれ、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラル、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、プルラン、水溶性のセルロース、アルコール可溶性のポリアミド樹脂、又は、パーフルオロポリマー等のフッ素樹脂等の有機樹脂を用いてもよい。
【0298】
例えば、犠牲膜158Bfとして、蒸着法又は上記湿式の成膜方法のいずれかを用いて形成した有機膜(例えば、PVA膜)を用い、マスク膜159Bfとして、スパッタリング法を用いて形成した無機膜(例えば、窒化シリコン膜)を用いることができる。
【0299】
続いて、図7(D)に示すように、マスク膜159Bf上にレジストマスク190Bを形成する。レジストマスク190Bは、感光性材料(フォトレジスト)を塗布し、露光及び現像を行うことで形成できる。
【0300】
レジストマスク190Bは、ポジ型のレジスト材料及びネガ型のレジスト材料のどちらを用いて作製してもよい。
【0301】
レジストマスク190Bは、導電層152Bと重なる位置に設ける。レジストマスク190Bは、導電層152Cと重なる位置にも設けることが好ましい。これにより、導電層152Cが発光装置の作製工程中にダメージを受けることを抑制できる。なお、導電層152C上にレジストマスク190Bを設けなくてもよい。また、レジストマスク190Bは、図7(C)のB1-B2間の断面図に示すように、有機化合物膜103Bfの端部から導電層152Cの端部(有機化合物膜103Bf側の端部)までを覆うように設けることが好ましい。
【0302】
続いて、図7(E)に示すように、レジストマスク190Bを用いて、マスク膜159Bfの一部を除去し、マスク層159Bを形成する。マスク層159Bは、導電層152B上と、導電層152C上と、に残存する。その後、レジストマスク190Bを除去する。続いて、マスク層159Bをマスク(ハードマスクともいう)に用いて、犠牲膜158Bfの一部を除去し、犠牲層158Bを形成する。
【0303】
犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfは、それぞれ、ウェットエッチング法又はドライエッチング法により加工できる。犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfの加工は、ウェットエッチングにより行うことが好ましい。
【0304】
ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfの加工時に、有機化合物膜103Bfに加わるダメージを低減できる。ウェットエッチング法を用いる場合、例えば、現像液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)、希フッ酸、シュウ酸、リン酸、酢酸、硝酸、又はこれらの混合液体を用いた薬液等を用いることが好ましい。
【0305】
マスク膜159Bfの加工においては、有機化合物膜103Bfが露出しないため、犠牲膜158Bfの加工よりも、加工方法の選択の幅は広い。具体的には、マスク膜159Bfの加工の際に、エッチングガスに酸素を含むガスを用いた場合でも、有機化合物膜103Bfの劣化をより抑制できる。
【0306】
ウェットエッチング法を用いる場合、特に酸性の薬液を用いることが好ましい。酸性の薬液としては、リン酸、フッ化水素酸、硝酸、酢酸、シュウ酸、および硫酸などのいずれか一を含む薬液、または、2種以上の酸の混合薬液(混酸ともいう)を用いるとよい。
【0307】
また、犠牲膜158Bfの加工においてドライエッチング法を用いる場合は、エッチングガスに酸素を含むガスを用いないことで、有機化合物膜103Bfの劣化を抑制できる。ドライエッチング法を用いる場合、例えば、CF、C、SF、CHF、Cl、HO、BCl、又はHe等の第18族元素を含むガスをエッチングガスに用いることが好ましい。
【0308】
レジストマスク190Bは、レジストマスク191と同様の方法で除去できる。このとき、犠牲膜158Bfが最表面に位置し、有機化合物膜103Bfは露出していないため、レジストマスク190Bの除去工程において、有機化合物膜103Bfにダメージが入ることを抑制できる。また、レジストマスク190Bの除去方法の選択の幅を広げることができる。
【0309】
続いて、図7(E)に示すように、有機化合物膜103Bfを加工して、有機化合物層103Bを形成する。例えば、マスク層159B及び犠牲層158Bをハードマスクに用いて、有機化合物膜103Bfの一部を除去し、有機化合物層103Bを形成する。
【0310】
これにより、図7(E)に示すように、導電層152B上に、有機化合物層103B、犠牲層158B、及び、マスク層159Bの積層構造が残存する。また、導電層152G及び導電層152Bは露出する。
【0311】
有機化合物膜103Bfの加工は、ドライエッチング又は、ウェットエッチングを用いることができる。例えば、ドライエッチング法により加工する場合は、酸素を含むエッチングガスを用いることができる。エッチングガスが酸素を含むことで、エッチングの速度を速めることができる。したがって、エッチング速度を十分な速さに維持しつつ、低パワーの条件でエッチングを行うことができる。このため、有機化合物膜103Bfに与えるダメージを抑制できる。さらに、エッチング時に生じる反応生成物の付着等の不具合を抑制できる。
【0312】
また、酸素を含まないエッチングガスを用いてもよい。例えば、酸素を含まないエッチングガスを用いることで、有機化合物膜103Bfの劣化を抑制できる。
【0313】
以上のように、本発明の一態様では、マスク膜159Bf上にレジストマスク190Bを形成し、レジストマスク190Bを用いて、マスク膜159Bfの一部を除去することにより、マスク層159Bを形成する。その後、マスク層159Bをハードマスクに用いて、有機化合物膜103Bfの一部を除去することにより、有機化合物層103Bを形成する。よって、フォトリソグラフィ法を用いて有機化合物膜103Bfを加工することにより、有機化合物層103Bが形成されるということができる。なお、レジストマスク190Bを用いて、有機化合物膜103Bfの一部を除去してもよい。その後、レジストマスク190Bを除去してもよい。
【0314】
ここで、導電層152Gの疎水化処理を必要に応じて行ってもよい。有機化合物膜103Bfの加工時に、例えば導電層152Gの表面状態が親水性に変化する場合がある。例えば導電層152Gの疎水化処理を行うことで、例えば導電層152Gと後の工程で形成される層(ここでは有機化合物層103G)との密着性を高め、膜剥がれを抑制できる。
【0315】
続いて、図8(A)に示すように、後に有機化合物層103Gとなる有機化合物膜103Gfを、導電層152G上、導電層152R上、マスク層159B上、及び絶縁層175上に形成する。
【0316】
有機化合物膜103Gfは、有機化合物膜103Bfの形成に用いることができる方法と同様の方法で形成できる。また、有機化合物膜103Gfは、有機化合物膜103Bfと同様の構成とすることができる。
【0317】
続いて、図8(B)に示すように、有機化合物膜103Gf上、及びマスク層159B上に、後に犠牲層158Gとなる犠牲膜158Gfと、後にマスク層159Gとなるマスク膜159Gfと、を順に形成する。その後、レジストマスク190Gを形成する。犠牲膜158Gf及びマスク膜159Gfの材料及び形成方法は、犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfに適用できる条件と同様である。レジストマスク190Gの材料及び形成方法は、レジストマスク190Bに適用できる条件と同様である。
【0318】
レジストマスク190Gは、導電層152Gと重なる位置に設ける。
【0319】
続いて、図8(C)に示すように、レジストマスク190Gを用いて、マスク膜159Gfの一部を除去し、マスク層159Gを形成する。マスク層159Gは、導電層152G上に残存する。その後、レジストマスク190Gを除去する。続いて、マスク層159Gをマスクに用いて、犠牲膜158Gfの一部を除去し、犠牲層158Gを形成する。続いて、有機化合物膜103Gfを加工して、有機化合物層103Gを形成する。例えば、マスク層159G及び犠牲層158Gをハードマスクに用いて、有機化合物膜103Gfの一部を除去し、有機化合物層103Gを形成する。
【0320】
これにより、図8(C)に示すように、導電層152G上に、有機化合物層103G、犠牲層158G、及び、マスク層159Gの積層構造が残存する。また、マスク層159B及び導電層152Rは露出する。
【0321】
また、例えば導電層152Rの疎水化処理を行ってもよい。
【0322】
続いて、図9(A)に示すように、後に有機化合物層103Rとなる有機化合物膜103Rfを、導電層152R上、マスク層159G上、マスク層159B上、及び絶縁層175上に形成する。
【0323】
有機化合物膜103Rfは、有機化合物膜103Gfの形成に用いることができる方法と同様の方法で形成できる。また、有機化合物膜103Rfは、有機化合物膜103Gfと同様の構成とすることができる。
【0324】
続いて、図9(B)および図9(C)に示すように、犠牲膜158Rfから犠牲層158、マスク膜159Rfからマスク層159R、または有機化合物膜103Rfから有機化合物層103Rを形成する。レジストマスク190R、犠牲層158R、マスク層159R、有機化合物層103Rの形成方法は、有機化合物層103Gの記載を参酌することができる。
【0325】
なお、有機化合物層103B、有機化合物層103G、有機化合物層103Rの側面は、それぞれ、被形成面に対して垂直又は概略垂直であることが好ましい。例えば、被形成面と、これらの側面との成す角度を、60度以上90度以下とすることが好ましい。
【0326】
上記のように、フォトリソグラフィ法を用いて形成した有機化合物層103B、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Rのうち隣接する2つの間の距離は、8μm以下、5μm以下、3μm以下、2μm以下、又は、1μm以下にまで狭めることができる。ここで、当該距離とは、例えば、有機化合物層103B、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Rのうち、隣接する2つの対向する端部の間の距離で規定できる。このように、島状の有機化合物層の間の距離を狭めることで、高い精細度と、大きな開口率を有する発光装置を提供できる。また、隣り合う発光デバイス間における第1の電極同士の距離も、狭めることができ、例えば10μm以下、8μm以下、5μm以下、3μm以下、2μm以下とすることができる。なお、隣り合う発光デバイス間における第1の電極同士の距離は2μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0327】
次に、図10(A)に示すように、マスク層159B、マスク層159G、及びマスク層159Rを除去する。
【0328】
なお、本実施の形態では、マスク層159B、マスク層159G、及びマスク層159Rを除去する場合を例に挙げて説明するが、マスク層159B、マスク層159G、及びマスク層159Rは除去しなくてもよい。例えば、マスク層159B、マスク層159G、及びマスク層159Rが、前述の、紫外線に対して遮光性を有する材料を含む場合は、除去せずに次の工程に進むことで、有機化合物層を光照射(照明光を含む)から保護することができる。
【0329】
マスク層の除去工程には、マスク層の加工工程と同様の方法を用いることができる。特に、ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、マスク層を除去する際に、有機化合物層103B、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Rに加わるダメージを低減できる。
【0330】
また、マスク層を、水又はアルコール等の溶媒に溶解させることで除去してもよい。アルコールとしては、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、又はグリセリン等が挙げられる。
【0331】
マスク層を除去した後に、有機化合物層103B、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Rに含まれる水、並びに有機化合物層103B、有機化合物層103G、及び有機化合物層103R表面に吸着する水を除去するため、乾燥処理を行ってもよい。例えば、不活性雰囲気又は減圧雰囲気下における加熱処理を行うことができる。加熱処理は、基板温度として50℃以上200℃以下、好ましくは60℃以上150℃以下、より好ましくは70℃以上120℃以下の温度で行うことができる。減圧雰囲気とすることで、より低温で乾燥が可能であるため好ましい。
【0332】
続いて、図10(B)に示すように、有機化合物層103B、有機化合物層103G、有機化合物層103R、犠牲層158B、犠牲層158G、及び犠牲層158Rを覆うように、後に無機絶縁層125となる無機絶縁膜125fを形成する。
【0333】
後述するように、無機絶縁膜125fの上面に接して、後に絶縁層127となる絶縁膜が形成される。このため、無機絶縁膜125fの上面は、絶縁層127となる絶縁膜に用いる材料(例えば、アクリル樹脂を含む感光性の樹脂組成物)に対して親和性が高いことが好ましい。当該親和性を向上させるため、無機絶縁膜125fの上面に表面処理を行ってもよい。具体的には、無機絶縁膜125fの表面を疎水化すること(又は疎水性を高めること)が好ましい。例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等のシリル化剤を用いて処理を行うことが好ましい。このように無機絶縁膜125fの上面を疎水化することにより、絶縁膜127fを密着性良く形成できる。
【0334】
続いて、図10(C)に示すように、無機絶縁膜125f上に、後に絶縁層127となる絶縁膜127fを形成する。
【0335】
無機絶縁膜125f及び絶縁膜127fは、有機化合物層103B、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Rへのダメージが少ない形成方法で成膜することが好ましい。特に、無機絶縁膜125fは、有機化合物層103B、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Rの側面に接して形成されるため、絶縁膜127fよりも、有機化合物層103B、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Rへのダメージが少ない形成方法で成膜することが好ましい。
【0336】
また、無機絶縁膜125f及び絶縁膜127fは、それぞれ、有機化合物層103B、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Rの耐熱温度よりも低い温度で形成する。また、無機絶縁膜125fは成膜する際の基板温度を高くすることで、膜厚が薄くても、不純物濃度が低く、水及び酸素の少なくとも一方に対するバリア性の高い膜とすることができる。
【0337】
無機絶縁膜125f及び絶縁膜127fを形成する際の基板温度としては、それぞれ、60℃以上、80℃以上、100℃以上、又は、120℃以上、かつ、200℃以下、180℃以下、160℃以下、150℃以下、又は140℃以下であることが好ましい。
【0338】
無機絶縁膜125fとしては、上記の基板温度の範囲で、3nm以上、5nm以上、又は、10nm以上、かつ、200nm以下、150nm以下、100nm以下、又は、50nm以下の厚さの絶縁膜を形成することが好ましい。
【0339】
無機絶縁膜125fは、例えば、ALD法を用いて形成することが好ましい。ALD法を用いることで、成膜ダメージを小さくすることができ、また、被覆性の高い膜を成膜可能なため好ましい。無機絶縁膜125fとしては、例えば、ALD法を用いて、酸化アルミニウム膜を形成することが好ましい。
【0340】
そのほか、無機絶縁膜125fは、ALD法よりも成膜速度が速いスパッタリング法、CVD法、又は、PECVD法を用いて形成してもよい。これにより、信頼性の高い発光装置を生産性高く作製できる。
【0341】
絶縁膜127fは、前述の湿式の成膜方法を用いて形成することが好ましい。絶縁膜127fは、例えば、スピンコートにより、感光性材料を用いて形成することが好ましく、より具体的には、アクリル樹脂を含む感光性の樹脂組成物を用いて形成することが好ましい。
【0342】
絶縁膜127fは、例えば、重合体、酸発生剤、及び溶媒を有する樹脂組成物を用いて形成することが好ましい。重合体は、1種又は複数種の単量体を用いて形成され、1種又は複数種の構造単位(構成単位ともいう)が規則的又は不規則に繰り返された構造を有する。酸発生剤としては、光の照射により酸を発生する化合物、及び、加熱により酸を発生する化合物の一方又は双方を用いることができる。樹脂組成物は、さらに、感光剤、増感剤、触媒、接着助剤、界面活性剤、酸化防止剤のうち一つ又は複数を有していてもよい。
【0343】
また、絶縁膜127fの形成後に加熱処理(プリベークともいう)を行うことが好ましい。当該加熱処理は、有機化合物層103B、有機化合物層103G、及び、有機化合物層103Rの耐熱温度よりも低い温度で行う。加熱処理の際の基板温度としては、50℃以上200℃以下が好ましく、60℃以上150℃以下がより好ましく、70℃以上120℃以下がさらに好ましい。これにより、絶縁膜127f中に含まれる溶媒を除去できる。
【0344】
続いて、露光を行って、絶縁膜127fの一部に、可視光線又は紫外線を感光させる。ここで、絶縁膜127fにアクリル樹脂を含むポジ型の感光性の樹脂組成物を用いる場合、後の工程で絶縁層127を形成しない領域に可視光線又は紫外線を照射する。絶縁層127は、導電層152B、導電層152G、及び導電層152Rのいずれか2つに挟まれる領域、及び、導電層152Cの周囲に形成される。このため、導電層152B上、導電層152G上、導電層152R上、及び、導電層152C上に、可視光線又は紫外線を照射する。なお、絶縁膜127fにネガ型の感光性材料を用いる場合、絶縁層127が形成される領域に可視光線又は紫外線を照射する。
【0345】
絶縁膜127fへの露光領域によって、後に形成する絶縁層127の幅を制御できる。本実施の形態では、絶縁層127が導電層151の上面と重なる部分を有するように加工する。
【0346】
ここで、犠牲層158(犠牲層158B、犠牲層158G、及び犠牲層158R)、及び無機絶縁膜125fの一方又は双方として、酸素に対するバリア絶縁層(例えば、酸化アルミニウム膜等)を設けることで、有機化合物層103B、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Rに酸素が拡散することを低減できる。有機化合物層は、光(可視光線又は紫外線)が照射されると、当該有機化合物層に含まれる有機化合物が励起状態となり、雰囲気中に含まれる酸素との反応が促進される場合がある。より具体的には、酸素を有する雰囲気下において、光(可視光線又は紫外線)が有機化合物層に照射されると当該有機化合物層が有する有機化合物に酸素が結合する可能性がある。犠牲層158及び無機絶縁膜125fを島状の有機化合物層上に設けることによって、当該有機化合物層に含まれる有機化合物に雰囲気中の酸素が結合することを低減できる。
【0347】
続いて、図11(A)に示すように、現像を行って、絶縁膜127fの露光させた領域を除去し、絶縁層127aを形成する。絶縁層127aは、導電層152B、導電層152G、及び導電層152Rのいずれか2つに挟まれる領域と、導電層152Cを囲う領域に形成される。ここで、絶縁膜127fにアクリル樹脂を用いる場合、現像液として、アルカリ性の溶液を用いることができ、例えば、TMAHを用いることができる。
【0348】
続いて、図11(B)に示すように、絶縁層127aをマスクとして、エッチング処理を行って、無機絶縁膜125fの一部を除去し、犠牲層158B、犠牲層158G、及び犠牲層158Rの一部の膜厚を薄くする。これにより、絶縁層127aの下に、無機絶縁層125が形成される。なお、以下では、絶縁層127aをマスクに用いた無機絶縁膜125fを加工するエッチング処理を、第1のエッチング処理ということがある。
【0349】
つまり、第1のエッチング処理では、犠牲層158B、犠牲層158G、及び犠牲層158Rを完全に除去せず、膜厚が薄くなった状態でエッチング処理を停止する。このように、有機化合物層103B、有機化合物層103G、及び有機化合物層103R上に、対応する犠牲層158B、犠牲層158G、及び犠牲層158Rを残存させておくことで、後の工程の処理で、有機化合物層103B、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Rが損傷することを防ぐことができる。
【0350】
第1のエッチング処理は、ドライエッチング又はウェットエッチングによって行うことができる。なお、無機絶縁膜125fを、犠牲層158B、犠牲層158G、及び犠牲層158Rと同様の材料を用いて成膜していた場合、無機絶縁膜125fの加工、および露出した犠牲層158の薄膜化を第1のエッチング処理により一括で行うことができるため、好ましい。
【0351】
側面がテーパ形状である絶縁層127aをマスクとしてエッチングを行うことで、無機絶縁層125の側面、及び犠牲層158B、犠牲層158G、及び犠牲層158Rの側面上端部を比較的容易にテーパ形状にすることができる。
【0352】
例えば、第1のエッチング処理をドライエッチングで行う場合、塩素系のガスを用いることができる。塩素系ガスとしては、Cl、BCl、SiCl、及びCCl等を、単独又は2以上のガスを混合して用いることができる。また、上記塩素系ガスに、酸素ガス、水素ガス、ヘリウムガス、及びアルゴンガス等を、単独又は2以上のガスを混合して、適宜添加できる。ドライエッチングを用いることにより、犠牲層158B、犠牲層158G、及び犠牲層158Rの膜厚が薄い領域を、良好な面内均一性で形成できる。
【0353】
また、例えば、第1のエッチング処理をウェットエッチングで行うことができる。ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、有機化合物層103B、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Rに加わるダメージを低減できる。
【0354】
ウェットエッチングは、酸性の薬液を用いることが好ましい。酸性の薬液としては、リン酸、フッ化水素酸、硝酸、酢酸、シュウ酸、および硫酸などのいずれか一を含む薬液、または、2種以上の酸の混合薬液(混酸ともいう)を用いるとよい。
【0355】
また、アルカリ溶液を用いて行うことができる。例えば、酸化アルミニウム膜のウェットエッチングには、アルカリ溶液であるTMAHを用いることができる。この場合、パドル方式でウェットエッチングを行うことができる。
【0356】
続いて、加熱処理(ポストベークともいう)を行う。加熱処理を行うことで、絶縁層127aを、側面にテーパ形状を有する絶縁層127に変形させることができる(図11(C))。当該加熱処理は、有機化合物層の耐熱温度よりも低い温度で行う。加熱処理は、基板温度として50℃以上200℃以下、好ましくは60℃以上150℃以下、より好ましくは70℃以上130℃以下の温度で行うことができる。加熱雰囲気は、大気雰囲気であってもよく、不活性雰囲気であってもよい。また、加熱雰囲気は、大気圧雰囲気であってもよく、減圧雰囲気であってもよい。本工程の加熱処理は、絶縁膜127fの形成後の加熱処理(プリベーク)よりも、基板温度を高くすることが好ましい。
【0357】
加熱処理により、絶縁層127と無機絶縁層125との密着性を向上させ、絶縁層127の耐食性も向上させることができる。また、絶縁層127aが変形することにより、無機絶縁層125の端部を絶縁層127で覆う形状にすることができる。
【0358】
第1のエッチング処理にて、犠牲層158B、犠牲層158G、及び犠牲層158Rを完全に除去せず、膜厚が薄くなった状態の犠牲層158B、犠牲層158G、及び犠牲層158Rを残存させておくことで、当該加熱処理において、有機化合物層103B、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Rがダメージを受けて劣化することを防ぐことができる。したがって、発光デバイスの信頼性を高めることができる。
【0359】
続いて、図12(A)に示すように、絶縁層127をマスクとして、エッチング処理を行って、犠牲層158B、犠牲層158G、及び犠牲層158Rの一部を除去する。なお、この際に、無機絶縁層125の一部も除去される場合がある。当該エッチング処理により、犠牲層158B、犠牲層158G、及び犠牲層158Rに開口が形成され、当該開口から有機化合物層103B、有機化合物層103G、有機化合物層103R、及び導電層152Cの上面が露出する。なお、以下では、絶縁層127をマスクに用い、有機化合物層103B、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Rを露出するエッチング処理を、第2のエッチング処理ということがある。
【0360】
第2のエッチング処理はウェットエッチングで行う。ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、有機化合物層103B、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Rに加わるダメージを低減できる。ウェットエッチングは、第1のエッチング処理と同様に酸性の薬液、またはアルカリ溶液を用いて行うことができる。
【0361】
また、有機化合物層103B、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Rの一部を露出した後、さらに加熱処理を行ってもよい。当該加熱処理により、有機化合物層に含まれる水、及び有機化合物層表面に吸着する水等を除去できる。また、当該加熱処理により、絶縁層127の形状が変化することがある。具体的には、絶縁層127が、無機絶縁層125の端部、犠牲層158B、犠牲層158G、及び犠牲層158Rの端部、及び、有機化合物層103B、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Rの上面のうち、少なくとも一つを覆うように広がることがある。
【0362】
なお、図12(A)では、犠牲層158Gの端部の一部(具体的には、第1のエッチング処理により形成されたテーパ形状の部分)を絶縁層127が覆い、第2のエッチング処理により形成されたテーパ形状の部分は露出している例を示す(図5(A)参照)。
【0363】
また、絶縁層127は、犠牲層158Gの端部全体を覆っていてもよい。例えば、絶縁層127の端部が垂れて、犠牲層158Gの端部を覆う場合がある。また、例えば、絶縁層127の端部が、有機化合物層103B、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Rの少なくとも一つの上面に接する場合がある。
【0364】
続いて、図12(B)に示すように、有機化合物層103B上、有機化合物層103G上、有機化合物層103R上、導電層152C上、及び絶縁層127上に共通電極155を形成する。共通電極155は、スパッタリング法、又は真空蒸着法等の方法で形成できる。又は、蒸着法で形成した膜と、スパッタリング法で形成した膜を積層させて、共通電極155を形成してもよい。
【0365】
続いて、図12(C)に示すように、共通電極155上に保護層131を形成する。保護層131は、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、又はALD法等の方法で形成できる。
【0366】
続いて、樹脂層122を用いて、保護層131上に、基板120を貼り合わせることで、発光装置を作製できる。前述のように、本発明の一態様の発光装置の作製方法では、導電層151の側面と重なる領域を有するように絶縁層156を設け、且つ導電層151及び絶縁層156を覆うように導電層152を形成する。これにより、発光装置の歩留まりを高め、また不良の発生を抑制できる。
【0367】
以上のように、本発明の一態様の発光装置の作製方法では、島状の有機化合物層103B、島状の有機化合物層103G、及び有機化合物層103Rは、ファインメタルマスクを用いて形成されるのではなく、膜を一面に成膜した後に加工することで形成されるため、島状の層を均一の厚さで形成できる。そして、高精細な発光装置又は高開口率の発光装置を実現できる。また、精細度又は開口率が高く、副画素間の距離が極めて短くても、隣接する副画素において、有機化合物層103B、有機化合物層103G、及び、有機化合物層103Rが互いに接することを抑制できる。したがって、副画素間にリーク電流が発生することを抑制できる。これにより、クロストークを防ぐことができ、コントラストの極めて高い発光装置を実現できる。また、フォトリソグラフィ法を用いて作製されたタンデム型の発光デバイスを有する発光装置であっても、良好な特性の発光装置を提供することができる。
【0368】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置について図13(A)乃至図13(G)、及び図14(A)乃至図14(I)を用いて説明する。
【0369】
[画素のレイアウト]
本実施の形態では、主に、図5とは異なる画素レイアウトについて説明する。副画素の配列に特に限定はなく、様々な方法を適用できる。副画素の配列としては、例えば、ストライプ配列、Sストライプ配列、マトリクス配列、デルタ配列、ベイヤー配列、及びペンタイル配列が挙げられる。
【0370】
本実施の形態で図に示す副画素の上面形状は、発光領域の上面形状に相当する。
【0371】
なお、副画素の上面形状としては、例えば、三角形、四角形(長方形、正方形を含む)、五角形等の多角形、これら多角形の角が丸い形状、楕円形、又は円形等が挙げられる。
【0372】
また、副画素を構成する回路レイアウトは、図に示す副画素の範囲に限定されず、その外側に配置されていてもよい。
【0373】
図13(A)に示す画素178には、Sストライプ配列が適用されている。図13(A)に示す画素178は、副画素110R、副画素110G、及び副画素110Bの、3つの副画素から構成される。
【0374】
図13(B)に示す画素178は、角が丸い略台形または略三角形の上面形状を有する副画素110Rと、角が丸い略台形または略三角形の上面形状を有する副画素110Gと、角が丸い略四角形又は略六角形の上面形状を有する副画素110Bと、を有する。また、副画素110Rは、副画素110Gよりも発光面積が広い。このように、各副画素の形状及びサイズはそれぞれ独立に決定できる。例えば、信頼性の高い発光デバイスを有する副画素ほど、サイズを小さくすることができる。
【0375】
図13(C)に示す画素124a、及び画素124bには、ペンタイル配列が適用されている。図13(C)では、副画素110R及び副画素110Gを有する画素124aと、副画素110G及び副画素110Bを有する画素124bと、が交互に配置されている例を示す。
【0376】
図13(D)乃至図13(F)に示す画素124a、及び画素124bは、デルタ配列が適用されている。画素124aは上の行(1行目)に、2つの副画素(副画素110R、及び副画素110G)を有し、下の行(2行目)に、1つの副画素(副画素110B)を有する。画素124bは上の行(1行目)に、1つの副画素(副画素110B)を有し、下の行(2行目)に、2つの副画素(副画素110R、及び副画素110G)を有する。
【0377】
図13(D)は、各副画素が、角が丸い略四角形の上面形状を有する例であり、図13(E)は、各副画素が、円形の上面形状を有する例であり、図13(F)は、各副画素が、角が丸い略六角形の上面形状を有する例である。
【0378】
図13(F)では、各副画素が、最密に配列した六角形の領域の内側に配置されている。各副画素は、その1つの副画素に着目したとき、6つの副画素に囲まれるように、配置されている。また、同じ色の光を呈する副画素が隣り合わないように設けられている。例えば、副画素110Rに着目したとき、これを囲むように3つの副画素110Gと3つの副画素110Bが、交互に配置されるように、それぞれの副画素が設けられている。
【0379】
図13(G)は、各色の副画素がジグザグに配置されている例である。具体的には、上面視において、行方向に並ぶ2つの副画素(例えば、副画素110Rと副画素110G、又は、副画素110Gと副画素110B)の上辺の位置がずれている。
【0380】
図13(A)乃至図13(G)に示す各画素において、例えば、副画素110Rを赤色の光を呈する副画素Rとし、副画素110Gを緑色の光を呈する副画素Gとし、副画素110Bを青色の光を呈する副画素Bとすることが好ましい。なお、副画素の構成はこれに限定されず、副画素が呈する色とその並び順は適宜決定できる。例えば、副画素110Gを赤色の光を呈する副画素Rとし、副画素110Rを緑色の光を呈する副画素Gとしてもよい。
【0381】
フォトリソグラフィ法では、加工するパターンが微細になるほど、光の回折の影響を無視できなくなるため、露光によりフォトマスクのパターンを転写する際に忠実性が損なわれ、レジストマスクを所望の形状に加工することが困難になる。そのため、フォトマスクのパターンが矩形であっても、角が丸まったパターンが形成されやすい。したがって、副画素の上面形状が、多角形の角が丸い形状、楕円形、又は円形等になることがある。
【0382】
さらに、本発明の一態様の発光装置の作製方法では、レジストマスクを用いて有機化合物層を島状に加工する。有機化合物層上に形成したレジスト膜は、有機化合物層の耐熱温度よりも低い温度で硬化する必要がある。そのため、有機化合物層の材料の耐熱温度及びレジスト材料の硬化温度によっては、レジスト膜の硬化が不十分になる場合がある。硬化が不十分なレジスト膜は、加工時に所望の形状から離れた形状をとることがある。その結果、有機化合物層の上面形状が、多角形の角が丸い形状、楕円形、又は円形等になることがある。例えば、上面形状が正方形のレジストマスクを形成しようとした場合に、円形の上面形状のレジストマスクが形成され、有機化合物層の上面形状が円形になることがある。
【0383】
なお、有機化合物層の上面形状を所望の形状とするために、設計パターンと、転写パターンとが、一致するように、あらかじめマスクパターンを補正する技術(OPC(Optical Proximity Correction:光近接効果補正)技術)を用いてもよい。具体的には、OPC技術では、例えばマスクパターン上の図形コーナー部に補正用のパターンを追加する。
【0384】
図14(A)乃至図14(I)に示すように、画素は副画素を4種類有する構成とすることができる。
【0385】
図14(A)乃至図14(C)に示す画素178は、ストライプ配列が適用されている。
【0386】
図14(A)は、各副画素が、長方形の上面形状を有する例であり、図14(B)は、各副画素が、2つの半円と長方形をつなげた上面形状を有する例であり、図14(C)は、各副画素が、楕円形の上面形状を有する例である。
【0387】
図14(D)乃至図14(F)に示す画素178は、マトリクス配列が適用されている。
【0388】
図14(D)は、各副画素が、正方形の上面形状を有する例であり、図14(E)は、各副画素が、角が丸い略正方形の上面形状を有する例であり、図14(F)は、各副画素が、円形の上面形状を有する例である。
【0389】
図14(G)及び図14(H)では、1つの画素178が、2行3列で構成されている例を示す。
【0390】
図14(G)に示す画素178は、上の行(1行目)に、3つの副画素(副画素110R、副画素110G、及び副画素110B)を有し、下の行(2行目)に、1つの副画素(副画素110W)を有する。言い換えると、画素178は、左の列(1列目)に、副画素110Rを有し、中央の列(2列目)に副画素110Gを有し、右の列(3列目)に副画素110Bを有し、さらに、この3列にわたって、副画素110Wを有する。
【0391】
図14(H)に示す画素178は、上の行(1行目)に、3つの副画素(副画素110R、副画素110G、及び副画素110B)を有し、下の行(2行目)に、3つの副画素110Wを有する。言い換えると、画素178は、左の列(1列目)に、副画素110R及び副画素110Wを有し、中央の列(2列目)に副画素110G及び副画素110Wを有し、右の列(3列目)に副画素110B及び副画素110Wを有する。図14(H)に示すように、上の行と下の行との副画素の配置を揃える構成とすることで、例えば製造プロセスで生じうるゴミを効率よく除去することが可能となる。したがって、表示品位の高い発光装置を提供できる。
【0392】
図14(G)及び図14(H)に示す画素178では、副画素110R、副画素110G、及び副画素110Bのレイアウトがストライプ配列となるため、表示品位を高めることができる。
【0393】
図14(I)では、1つの画素178が、3行2列で構成されている例を示す。
【0394】
図14(I)に示す画素178は、上の行(1行目)に、副画素110Rを有し、中央の行(2行目)に、副画素110Gを有し、1行目から2行目にわたって副画素110Bを有し、下の行(3行目)に、1つの副画素(副画素110W)を有する。言い換えると、画素178は、左の列(1列目)に、副画素110R、及び副画素110Gを有し、右の列(2列目)に副画素110Bを有し、さらに、この2列にわたって、副画素110Wを有する。
【0395】
図14(I)に示す画素178では、副画素110R、副画素110G、及び副画素110BのレイアウトがいわゆるSストライプ配列となるため、表示品位を高めることができる。
【0396】
図14(A)乃至図14(I)に示す画素178は、副画素110R、副画素110G、副画素110B、及び副画素110Wの、4つの副画素から構成される。例えば、副画素110Rを赤色の光を呈する副画素とし、副画素110Gを緑色の光を呈する副画素とし、副画素110Bを青色の光を呈する副画素とし、副画素110Wを白色の光を呈する副画素とすることができる。なお、副画素110R、副画素110G、副画素110B、及び副画素110Wのうち少なくとも1つを、シアンの光を呈する副画素、マゼンタの光を呈する副画素、黄色の光を呈する副画素、又は近赤外光を呈する副画素としてもよい。
【0397】
以上のように、本発明の一態様の発光装置は、発光デバイスを有する副画素からなる構成の画素について、様々なレイアウトを適用できる。
【0398】
本実施の形態は、他の実施の形態、又は実施例と適宜組み合わせることができる。また、本明細書において、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0399】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置について説明する。
【0400】
本実施の形態の発光装置は、高精細な発光装置とすることができる。したがって、本実施の形態の発光装置は、例えば、腕時計型、及び、ブレスレット型等の情報端末機(ウェアラブル機器)の表示部、並びに、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)等のVR向け機器、及び、メガネ型のAR向け機器等の頭部に装着可能なウェアラブル機器の表示部に用いることができる。
【0401】
また、本実施の形態の発光装置は、高解像度な発光装置又は大型な発光装置とすることができる。したがって、本実施の形態の発光装置は、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用等のモニタ、デジタルサイネージ、及び、パチンコ機等の大型ゲーム機等の比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、及び、音響再生装置の表示部に用いることができる。
【0402】
[表示モジュール]
図15(A)に、表示モジュール280の斜視図を示す。表示モジュール280は、発光装置100Aと、FPC290と、を有する。なお、表示モジュール280が有する発光装置は発光装置100Aに限られず、後述する発光装置100Bおよび発光装置100Cのいずれかであってもよい。
【0403】
表示モジュール280は、基板291及び基板292を有する。表示モジュール280は、表示部281を有する。表示部281は、表示モジュール280における画像を表示する領域であり、後述する画素部284に設けられる各画素からの光を視認できる領域である。
【0404】
図15(B)に、基板291側の構成を模式的に示した斜視図を示している。基板291上には、回路部282と、回路部282上の画素回路部283と、画素回路部283上の画素部284と、が積層されている。また、基板291上の画素部284と重ならない部分に、FPC290と接続するための端子部285が設けられている。端子部285と回路部282とは、複数の配線により構成される配線部286により電気的に接続されている。
【0405】
画素部284は、周期的に配列した複数の画素284aを有する。図15(B)の右側に、1つの画素284aの拡大図を示している。画素284aには、先の実施の形態で説明した各種構成を適用できる。図15(B)では、画素284aが図5に示す画素178と同様の構成を有する場合を例に示す。
【0406】
画素回路部283は、周期的に配列した複数の画素回路283aを有する。
【0407】
1つの画素回路283aは、1つの画素284aが有する複数の素子の駆動を制御する回路である。1つの画素回路283aは、1つの発光デバイスの発光を制御する回路が3つ設けられる構成とすることができる。例えば、画素回路283aは、1つの発光デバイスにつき、1つの選択トランジスタと、1つの電流制御用トランジスタ(駆動トランジスタ)と、容量と、を少なくとも有する構成とすることができる。このとき、選択トランジスタのゲートにはゲート信号が、ソース又はドレインにはビデオ信号が、それぞれ入力される。これにより、アクティブマトリクス型の発光装置が実現されている。
【0408】
回路部282は、画素回路部283の各画素回路283aを駆動する回路を有する。例えば、ゲート線駆動回路、及び、ソース線駆動回路の一方又は双方を有することが好ましい。このほか、演算回路、メモリ回路、及び電源回路等の少なくとも一つを有していてもよい。
【0409】
FPC290は、外部から回路部282にビデオ信号又は電源電位等を供給するための配線として機能する。また、FPC290上にICが実装されていてもよい。
【0410】
表示モジュール280は、画素部284の下側に画素回路部283及び回路部282の一方又は双方が積層された構成とすることができるため、表示部281の開口率(有効表示面積比)を極めて高くすることができる。例えば表示部281の開口率は、40%以上100%未満、好ましくは50%以上95%以下、より好ましくは60%以上95%以下とすることができる。また、画素284aを極めて高密度に配置することが可能で、表示部281の精細度を極めて高くすることができる。例えば、表示部281には、2000ppi以上、好ましくは3000ppi以上、より好ましくは5000ppi以上、さらに好ましくは6000ppi以上であって、20000ppi以下、又は30000ppi以下の精細度で、画素284aが配置されることが好ましい。
【0411】
このような表示モジュール280は、極めて高精細であることから、HMD等のVR向け機器又はメガネ型のAR向け機器に好適に用いることができる。例えば、レンズを通して表示モジュール280の表示部を視認する構成の場合であっても、表示モジュール280は極めて高精細な表示部281を有するためにレンズで表示部を拡大しても画素が視認されず、没入感の高い表示を行うことができる。また、表示モジュール280はこれに限られず、比較的小型の表示部を有する電子機器に好適に用いることができる。例えば腕時計等の装着型の電子機器の表示部に好適に用いることができる。
【0412】
[発光装置100A]
図16(A)に示す発光装置100Aは、基板301、発光デバイス130R、発光デバイス130G、発光デバイス130B、容量240、及び、トランジスタ310を有する。
【0413】
基板301は、図15(A)及び図15(B)における基板291に相当する。トランジスタ310は、基板301にチャネル形成領域を有するトランジスタである。基板301としては、例えば単結晶シリコン基板等の半導体基板を用いることができる。トランジスタ310は、基板301の一部、導電層311、低抵抗領域312、絶縁層313、及び、絶縁層314を有する。導電層311は、ゲート電極として機能する。絶縁層313は、基板301と導電層311の間に位置し、ゲート絶縁層として機能する。低抵抗領域312は、基板301に不純物がドープされた領域であり、ソース又はドレインとして機能する。絶縁層314は、導電層311の側面を覆って設けられる。
【0414】
また、基板301に埋め込まれるように、隣接する2つのトランジスタ310の間に素子分離層315が設けられている。
【0415】
また、トランジスタ310を覆って絶縁層261が設けられ、絶縁層261上に容量240が設けられている。
【0416】
容量240は、導電層241と、導電層245と、これらの間に位置する絶縁層243を有する。導電層241は、容量240の一方の電極として機能し、導電層245は、容量240の他方の電極として機能し、絶縁層243は、容量240の誘電体として機能する。
【0417】
導電層241は絶縁層261上に設けられ、絶縁層254に埋め込まれている。導電層241は、絶縁層261に埋め込まれたプラグ271によってトランジスタ310のソース又はドレインの一方と電気的に接続されている。絶縁層243は導電層241を覆って設けられる。導電層245は、絶縁層243を介して導電層241と重なる領域に設けられている。
【0418】
容量240を覆って、絶縁層255が設けられ、絶縁層255上に絶縁層174が設けられ、絶縁層174上に絶縁層175が設けられている。絶縁層175上に発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び、発光デバイス130Bが設けられている。図16(A)では、発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び、発光デバイス130Bが図4(B)に示す積層構造を有する例を示す。隣り合う発光デバイスの間の領域には、絶縁物が設けられる。例えば図16(A)では、当該領域に無機絶縁層125と、無機絶縁層125上の絶縁層127と、が設けられている。
【0419】
発光デバイス130Rが有する導電層151Rの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Rが設けられ、発光デバイス130Gが有する導電層151Gの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Gが設けられ、発光デバイス130Bが有する導電層151Bの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Bが設けられる。また、導電層151R及び絶縁層156Rを覆うように導電層152Rが設けられ、導電層151G及び絶縁層156Gを覆うように導電層152Gが設けられ、導電層151B及び絶縁層156Bを覆うように導電層152Bが設けられる。さらに、発光デバイス130Rが有する有機化合物層103R上には、犠牲層158Rが位置し、発光デバイス130Gが有する有機化合物層103G上には、犠牲層158Gが位置し、発光デバイス130Bが有する有機化合物層103B上には、犠牲層158Bが位置する。
【0420】
導電層151R、導電層151G、及び導電層151Bは、絶縁層243、絶縁層255、絶縁層174、及び絶縁層175に埋め込まれたプラグ256、絶縁層254に埋め込まれた導電層241、及び、絶縁層261に埋め込まれたプラグ271によってトランジスタ310のソース又はドレインの一方と電気的に接続されている。絶縁層175の上面の高さと、プラグ256の上面の高さは、一致又は概略一致している。プラグには各種導電材料を用いることができる。
【0421】
また、発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び、発光デバイス130B上には保護層131が設けられている。保護層131上には、樹脂層122によって基板120が貼り合わされている。発光デバイス130から基板120までの構成要素についての詳細は、実施の形態2を参照できる。基板120は、図15(A)における基板292に相当する。
【0422】
図16(B)は、図16(A)に示す発光装置100Aの変形例である。図16(B)に示す発光装置は、着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bを有し、発光デバイス130が着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bのうち一つと重なる領域を有する。図16(B)に示す発光装置において、発光デバイス130は、例えば白色光を発することができる。また、例えば着色層132Rは赤色の光を透過し、着色層132Gは緑色の光を透過し、着色層132Bは青色の光を透過できる。
【0423】
[発光装置100B]
図17に、発光装置100Bの斜視図を示し、図18(A)に、発光装置100Bの断面図を示す。
【0424】
発光装置100Bは、基板352と基板351とが貼り合わされた構成を有する。図17では、基板352を破線で明示している。
【0425】
発光装置100Bは、画素部177、接続部140、回路356、及び配線355等を有する。図17では発光装置100BにIC354及びFPC353が実装されている例を示している。このため、図17に示す構成は、発光装置100Bと、IC(集積回路)と、FPCと、を有する表示モジュールということもできる。ここで、発光装置の基板に、FPC等のコネクタが取り付けられたもの、又は当該基板にICが実装されたものを、表示モジュールと呼ぶ。
【0426】
接続部140は、画素部177の外側に設けられる。接続部140は、画素部177の一辺又は複数の辺に沿って設けることができる。接続部140は、単数であっても複数であってもよい。図17では、画素部177の四辺を囲むように接続部140が設けられている例を示す。接続部140では、発光デバイスの共通電極と、導電層とが電気的に接続されており、共通電極に電位を供給できる。
【0427】
回路356としては、例えば走査線駆動回路を用いることができる。
【0428】
配線355は、画素部177及び回路356に信号及び電力を供給する機能を有する。当該信号及び電力は、FPC353を介して外部から、又はIC354から配線355に入力される。
【0429】
図17では、COG(Chip On Glass)方式又はCOF(Chip on Film)方式等により、基板351にIC354が設けられている例を示す。IC354は、例えば走査線駆動回路又は信号線駆動回路等を有するICを適用できる。なお、発光装置100B及び表示モジュールは、ICを設けない構成としてもよい。また、ICを、例えばCOF方式により、FPCに実装してもよい。
【0430】
図18(A)に、発光装置100Bの、FPC353を含む領域の一部、回路356の一部、画素部177の一部、接続部140の一部、及び、端部を含む領域の一部をそれぞれ切断したときの断面の一例を示す。
【0431】
図18(A)に示す発光装置100Bは、基板351と基板352の間に、トランジスタ201、トランジスタ205、赤色の光を発する発光デバイス130R、緑色の光を発する発光デバイス130G、及び、青色の光を発する発光デバイス130B等を有する。
【0432】
発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bは、画素電極の構成が異なる点以外は、それぞれ、図1に示す積層構造のいずれかを有する。発光デバイスの詳細は先の実施の形態を参照できる。
【0433】
発光デバイス130Rは、導電層224Rと、導電層224R上の導電層151Rと、導電層151R上の導電層152Rと、を有する。発光デバイス130Gは、導電層224Gと、導電層224G上の導電層151Gと、導電層151G上の導電層152Gと、を有する。発光デバイス130Bは、導電層224Bと、導電層224B上の導電層151Bと、導電層151B上の導電層152Bと、を有する。ここで、導電層224R、導電層151R、及び導電層152Rの全てをまとめて、発光デバイス130Rの画素電極と呼ぶこともでき、導電層224Rを除いた導電層151R及び導電層152Rを、発光デバイス130Rの画素電極と呼ぶこともできる。同様に、導電層224G、導電層151G、及び導電層152Gの全てをまとめて、発光デバイス130Gの画素電極と呼ぶこともでき、導電層224Gを除いた導電層151G及び導電層152Gを、発光デバイス130Gの画素電極と呼ぶこともできる。また、導電層224B、導電層151B、及び導電層152Bの全てをまとめて、発光デバイス130Bの画素電極と呼ぶこともでき、導電層224Bを除いた導電層151B及び導電層152Bを、発光デバイス130Bの画素電極と呼ぶこともできる。
【0434】
導電層224Rは、絶縁層214に設けられた開口を介して、トランジスタ205が有する導電層222bと接続されている。導電層224Rの端部よりも外側に導電層151Rの端部が位置している。導電層151Rの側面と接する領域を有するように絶縁層156Rが設けられ、導電層151R及び絶縁層156Rを覆うように導電層152Rが設けられる。
【0435】
発光デバイス130Gにおける導電層224G、導電層151G、導電層152G、絶縁層156G、及び発光デバイス130Bにおける導電層224B、導電層151B、導電層152B、絶縁層156Bについては、発光デバイス130Rにおける導電層224R、導電層151R、導電層152R、絶縁層156Rと同様であるため詳細な説明は省略する。
【0436】
導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bには、絶縁層214に設けられた開口を覆うように凹部が形成される。当該凹部には、層128が埋め込まれている。
【0437】
層128は、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bの凹部を平坦化する機能を有する。導電層224R、導電層224G、及び導電層224B及び層128上には、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bと電気的に接続される導電層151R、導電層151G、及び導電層151Bが設けられている。したがって、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bの凹部と重なる領域も発光領域として使用でき、画素の開口率を高めることができる。
【0438】
層128は、絶縁層であってもよく、導電層であってもよい。層128には、各種無機絶縁材料、有機絶縁材料、及び導電材料を適宜用いることができる。特に、層128は、絶縁材料を用いて形成されることが好ましく、有機絶縁材料を用いて形成されることが特に好ましい。層128には、例えば前述の絶縁層127に用いることができる有機絶縁材料を適用できる。
【0439】
発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130B上には保護層131が設けられている。保護層131と基板352は接着層142を介して接着されている。基板352には、遮光層157が設けられている。発光デバイス130の封止には、固体封止構造又は中空封止構造等が適用できる。図18(A)では、基板352と基板351との間の空間が、接着層142で充填されており、固体封止構造が適用されている。又は、当該空間を不活性ガス(窒素又はアルゴン等)で充填し、中空封止構造を適用してもよい。このとき、接着層142は、発光デバイスと重ならないように設けられていてもよい。また、当該空間を、枠状に設けられた接着層142とは異なる樹脂で充填してもよい。
【0440】
図18(A)では、接続部140が、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bと同一の導電膜を加工して得られた導電層224Cと、導電層151R、導電層151G、及び導電層151Bと同一の導電膜を加工して得られた導電層151Cと、導電層152R、導電層152G、及び導電層152Bと同一の導電膜を加工して得られた導電層152Cと、を有する例を示している。また、図18(A)では、導電層151Cの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Cが設けられる例を示している。
【0441】
発光装置100Bは、トップエミッション型である。発光デバイスが発する光は、基板352側に射出される。基板352には、可視光に対する透過性が高い材料を用いることが好ましい。画素電極は可視光を反射する材料を含み、対向電極(共通電極155)は可視光を透過する材料を含む。
【0442】
トランジスタ201及びトランジスタ205は、いずれも基板351上に形成されている。これらのトランジスタは、同一の材料及び同一の工程により作製できる。
【0443】
基板351上には、絶縁層211、絶縁層213、絶縁層215、及び絶縁層214がこの順で設けられている。絶縁層211は、その一部が各トランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁層213は、その一部が各トランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁層215は、トランジスタを覆って設けられる。絶縁層214は、トランジスタを覆って設けられ、平坦化層としての機能を有する。なお、ゲート絶縁層の数及びトランジスタを覆う絶縁層の数は限定されず、それぞれ単層であっても2層以上であってもよい。
【0444】
トランジスタを覆う絶縁層の少なくとも一層に、水及び水素等の不純物が拡散しにくい材料を用いることが好ましい。これにより、絶縁層をバリア層として機能させることができる。このような構成とすることで、トランジスタに外部から不純物が拡散することを効果的に抑制でき、発光装置の信頼性を高めることができる。
【0445】
絶縁層211、絶縁層213、及び絶縁層215としては、それぞれ、無機絶縁膜を用いることが好ましい。無機絶縁膜としては、例えば、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、又は窒化アルミニウム膜等を用いることができる。また、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜、及び酸化ネオジム膜等を用いてもよい。また、上述の絶縁膜を2以上積層して用いてもよい。
【0446】
平坦化層として機能する絶縁層214には、有機絶縁層が好適である。有機絶縁層に用いることができる材料としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、シロキサン樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂、及びこれら樹脂の前駆体等が挙げられる。また、絶縁層214を、有機絶縁層と、無機絶縁層との積層構造にしてもよい。絶縁層214の最表層は、エッチング保護層としての機能を有することが好ましい。これにより、導電層224R、導電層151R、又は導電層152R等の加工時に、絶縁層214に凹部が形成されることを抑制できる。又は、絶縁層214には、導電層224R、導電層151R、又は導電層152R等の加工時に、凹部が設けられてもよい。
【0447】
トランジスタ201及びトランジスタ205は、ゲートとして機能する導電層221、ゲート絶縁層として機能する絶縁層211、ソース及びドレインとして機能する導電層222a及び導電層222b、半導体層231、ゲート絶縁層として機能する絶縁層213、並びに、ゲートとして機能する導電層223を有する。ここでは、同一の導電膜を加工して得られる複数の層に、同じハッチングパターンを付している。絶縁層211は、導電層221と半導体層231との間に位置する。絶縁層213は、導電層223と半導体層231との間に位置する。
【0448】
本実施の形態の発光装置が有するトランジスタの構造は特に限定されない。例えば、プレーナ型のトランジスタ、スタガ型のトランジスタ、又は逆スタガ型のトランジスタ等を用いることができる。また、トップゲート型又はボトムゲート型のいずれのトランジスタ構造としてもよい。又は、チャネルが形成される半導体層の上下にゲートが設けられていてもよい。
【0449】
トランジスタ201及びトランジスタ205には、チャネルが形成される半導体層を2つのゲートで挟持する構成が適用されている。2つのゲートを接続し、これらに同一の信号を供給することによりトランジスタを駆動してもよい。又は、2つのゲートのうち、一方に閾値電圧を制御するための電位を与え、他方に駆動のための電位を与えることで、トランジスタの閾値電圧を制御してもよい。
【0450】
トランジスタに用いる半導体材料の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体、結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、又は一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
【0451】
トランジスタの半導体層は、金属酸化物を有することが好ましい。つまり、本実施の形態の発光装置は、金属酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタ(以下、OSトランジスタ)を用いることが好ましい。
【0452】
結晶性を有する酸化物半導体としては、CAAC(c-axis-aligned crystalline)-OS、又はnc(nanocrystalline)-OS等が挙げられる。
【0453】
又は、シリコンをチャネル形成領域に用いたトランジスタ(Siトランジスタ)を用いてもよい。シリコンとしては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、又は非晶質シリコン等が挙げられる。特に、半導体層に低温ポリシリコン(LTPS(Low Temperature Poly Silicon))を有するトランジスタ(以下、LTPSトランジスタともいう)を用いることができる。LTPSトランジスタは、電界効果移動度が高く、周波数特性が良好である。
【0454】
LTPSトランジスタ等のSiトランジスタを適用することで、高周波数で駆動する必要のある回路(例えばソースドライバ回路)を表示部と同一基板上に作り込むことができる。これにより、発光装置に実装される外部回路を簡略化でき、部品コスト及び実装コストを削減できる。
【0455】
OSトランジスタは、非晶質シリコンを用いたトランジスタと比較して電界効果移動度が極めて高い。また、OSトランジスタは、オフ状態におけるソース-ドレイン間のリーク電流(以下、オフ電流ともいう)が著しく小さく、当該トランジスタと直列に接続された容量に蓄積した電荷を長期間に亘って保持することが可能である。また、OSトランジスタを適用することで、発光装置の消費電力を低減できる。
【0456】
また、画素回路に含まれる発光デバイスの発光輝度を高くする場合、発光デバイスに流す電流量を大きくする必要がある。このためには、画素回路に含まれている駆動トランジスタのソース-ドレイン間電圧を高くする必要がある。OSトランジスタは、Siトランジスタと比較して、ソース-ドレイン間において耐圧が高いため、OSトランジスタのソース-ドレイン間には高い電圧を印加できる。したがって、画素回路に含まれる駆動トランジスタをOSトランジスタとすることで、発光デバイスに流れる電流量を大きくし、発光デバイスの発光輝度を高くすることができる。
【0457】
また、トランジスタが飽和領域で動作する場合において、OSトランジスタは、Siトランジスタよりも、ゲート-ソース間電圧の変化に対して、ソース-ドレイン間電流の変化を小さくすることができる。このため、画素回路に含まれる駆動トランジスタとしてOSトランジスタを適用することによって、ゲート-ソース間電圧の変化によって、ソース-ドレイン間に流れる電流を細かく定めることができるため、発光デバイスに流れる電流量を制御できる。このため、画素回路における階調数を多くすることができる。
【0458】
また、トランジスタが飽和領域で動作するときに流れる電流の飽和特性において、OSトランジスタは、ソース-ドレイン間電圧が徐々に高くなった場合においても、Siトランジスタよりも安定した電流(飽和電流)を流すことができる。このため、OSトランジスタを駆動トランジスタとして用いることで、例えば、発光デバイスの電流-電圧特性にばらつきが生じた場合においても、発光デバイスに安定した電流を流すことができる。つまり、OSトランジスタは、飽和領域で動作する場合において、ソース-ドレイン間電圧を高くしても、ソース-ドレイン間電流がほぼ変化しないため、発光デバイスの発光輝度を安定させることができる。
【0459】
上記のとおり、画素回路に含まれる駆動トランジスタにOSトランジスタを用いることで、「黒浮きの抑制」、「発光輝度の上昇」、「多階調化」、及び「発光デバイスのばらつきの抑制」等を図ることができる。
【0460】
半導体層は、例えば、インジウムと、M(Mは、ガリウム、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、スズ、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、及びマグネシウムから選ばれた一種又は複数種)と、亜鉛と、を有することが好ましい。特に、Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、及びスズから選ばれた一種又は複数種であることが好ましい。
【0461】
特に、半導体層として、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物(IGZOとも記す)を用いることが好ましい。又は、インジウム、スズ、及び亜鉛を含む酸化物を用いることが好ましい。又は、インジウム、ガリウム、スズ、及び亜鉛を含む酸化物を用いることが好ましい。又は、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物(IAZOとも記す)を用いることが好ましい。又は、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物(IAGZOとも記す)を用いることが好ましい。
【0462】
半導体層がIn-M-Zn酸化物の場合、当該In-M-Zn酸化物におけるInの原子数比はMの原子数比以上であることが好ましい。このようなIn-M-Zn酸化物の金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1又はその近傍の組成、In:M:Zn=1:1:1.2又はその近傍の組成、In:M:Zn=2:1:3又はその近傍の組成、In:M:Zn=3:1:2又はその近傍の組成、In:M:Zn=4:2:3又はその近傍の組成、In:M:Zn=4:2:4.1又はその近傍の組成、In:M:Zn=5:1:3又はその近傍の組成、In:M:Zn=5:1:6又はその近傍の組成、In:M:Zn=5:1:7又はその近傍の組成、In:M:Zn=5:1:8又はその近傍の組成、In:M:Zn=6:1:6又はその近傍の組成、In:M:Zn=5:2:5又はその近傍の組成、等が挙げられる。なお、近傍の組成とは、所望の原子数比の±30%の範囲を含む。
【0463】
例えば、原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:3又はその近傍の組成と記載する場合、Inの原子数比を4としたとき、Gaの原子数比が1以上3以下であり、Znの原子数比が2以上4以下である場合を含む。また、原子数比がIn:Ga:Zn=5:1:6又はその近傍の組成と記載する場合、Inの原子数比を5としたときに、Gaの原子数比が0.1より大きく2以下であり、Znの原子数比が5以上7以下である場合を含む。また、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1又はその近傍の組成と記載する場合、Inの原子数比を1としたときに、Gaの原子数比が0.1より大きく2以下であり、Znの原子数比が0.1より大きく2以下である場合を含む。
【0464】
回路356が有するトランジスタと、画素部177が有するトランジスタは、同じ構造であってもよく、異なる構造であってもよい。回路356が有する複数のトランジスタの構造は、全て同じであってもよく、2種類以上あってもよい。同様に、画素部177が有する複数のトランジスタの構造は、全て同じであってもよく、2種類以上あってもよい。
【0465】
画素部177が有するトランジスタの全てをOSトランジスタとしてもよく、画素部177が有するトランジスタの全てをSiトランジスタとしてもよく、画素部177が有するトランジスタの一部をOSトランジスタとし、残りをSiトランジスタとしてもよい。
【0466】
例えば、画素部177にLTPSトランジスタとOSトランジスタとの双方を用いることで、消費電力が低く、駆動能力の高い発光装置を実現できる。また、LTPSトランジスタと、OSトランジスタとを、組み合わせる構成をLTPOと呼称する場合がある。なお、例えば配線の導通、非導通を制御するためのスイッチとして機能するトランジスタにOSトランジスタを適用し、電流を制御するトランジスタにLTPSトランジスタを適用することが好ましい。
【0467】
例えば、画素部177が有するトランジスタの一は、発光デバイスに流れる電流を制御するためのトランジスタとして機能し、駆動トランジスタと呼ぶことができる。駆動トランジスタのソース及びドレインの一方は、発光デバイスの画素電極と電気的に接続される。当該駆動トランジスタには、LTPSトランジスタを用いることが好ましい。これにより、画素回路において発光デバイスに流れる電流を大きくできる。
【0468】
一方、画素部177が有するトランジスタの他の一は、画素の選択、非選択を制御するためのスイッチとして機能し、選択トランジスタとも呼ぶことができる。選択トランジスタのゲートはゲート線と電気的に接続され、ソース及びドレインの一方は、ソース線(信号線)と電気的に接続される。選択トランジスタには、OSトランジスタを適用することが好ましい。これにより、フレーム周波数を著しく小さく(例えば1fps以下)しても、画素の階調を維持できるため、静止画を表示する際にドライバを停止することで、消費電力を低減できる。
【0469】
このように本発明の一態様の発光装置は、高い開口率と、高い精細度と、高い表示品位と、低い消費電力と、を兼ね備えることができる。
【0470】
なお、本発明の一態様の発光装置は、OSトランジスタを有し、且つMML(メタルマスクレス)構造の発光デバイスを有する構成である。当該構成とすることで、トランジスタに流れうるリーク電流、及び隣接する発光デバイス間に流れうるリーク電流(横方向リーク電流、横リーク電流、又はラテラルリーク電流と呼称する場合がある)を、極めて低くすることができる。また、上記構成とすることで、発光装置に画像を表示した場合に、観察者が画像のきれ、画像のするどさ、高い彩度、及び高いコントラスト比のいずれか一又は複数を観測できる。なお、トランジスタに流れうるリーク電流、及び発光デバイス間の横リーク電流が極めて低い構成とすることで、黒表示時に生じうる光漏れ(いわゆる黒浮き)等が限りなく少ない表示とすることができる。
【0471】
特に、MML構造の発光デバイスの中でも、先に示した発光層を作り分ける、または発光層を塗り分ける構造であるSBS(Side By Side)構造を適用することで、発光デバイスの間に設けられる層(例えば、発光デバイスの間で共通して用いる有機層、共通層ともいう)が分断された構成となるため、サイドリークをなくす、又はサイドリークを極めて少なくすることができる。
【0472】
図18(B)及び図18(C)に、トランジスタの他の構成例を示す。
【0473】
トランジスタ209及びトランジスタ210は、ゲートとして機能する導電層221、ゲート絶縁層として機能する絶縁層211、チャネル形成領域231i及び一対の低抵抗領域231nを有する半導体層231、一対の低抵抗領域231nの一方と接続する導電層222a、一対の低抵抗領域231nの他方と接続する導電層222b、ゲート絶縁層として機能する絶縁層225、ゲートとして機能する導電層223、並びに、導電層223を覆う絶縁層215を有する。絶縁層211は、導電層221とチャネル形成領域231iとの間に位置する。絶縁層225は、少なくとも導電層223とチャネル形成領域231iとの間に位置する。さらに、トランジスタを覆う絶縁層218を設けてもよい。
【0474】
図18(B)に示すトランジスタ209では、絶縁層225が半導体層231の上面及び側面を覆う例を示す。導電層222a及び導電層222bは、それぞれ、絶縁層225及び絶縁層215に設けられた開口を介して低抵抗領域231nと接続される。導電層222a及び導電層222bのうち、一方はソースとして機能し、他方はドレインとして機能する。
【0475】
一方、図18(C)に示すトランジスタ210では、絶縁層225は、半導体層231のチャネル形成領域231iと重なり、低抵抗領域231nとは重ならない。例えば、導電層223をマスクとして絶縁層225を加工することで、図18(C)に示す構造を作製できる。図18(C)では、絶縁層225及び導電層223を覆って絶縁層215が設けられ、絶縁層215の開口を介して、導電層222a及び導電層222bがそれぞれ低抵抗領域231nと接続されている。
【0476】
基板351の、基板352が重ならない領域には、接続部204が設けられている。接続部204では、配線355が導電層166及び接続層242を介してFPC353と電気的に接続されている。導電層166は、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bと同一の導電膜を加工して得られた導電膜と、導電層151R、導電層151G、及び導電層151Bと同一の導電膜を加工して得られた導電膜と、導電層152R、導電層152G、及び導電層152Bと同一の導電膜を加工して得られた導電膜と、の積層構造である例を示す。接続部204の上面では、導電層166が露出している。これにより、接続部204とFPC353とを接続層242を介して電気的に接続できる。
【0477】
基板352の基板351側の面には、遮光層157を設けることが好ましい。遮光層157は、隣り合う発光デバイスの間、接続部140、及び、回路356等に設けることができる。また、基板352の外側には各種光学部材を配置できる。
【0478】
基板351及び基板352としては、それぞれ、基板120に用いることができる材料を適用できる。
【0479】
接着層142としては、樹脂層122に用いることができる材料を適用できる。
【0480】
接続層242としては、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)、又は異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)等を用いることができる。
【0481】
[発光装置100H]
図19に示す発光装置100Hは、ボトムエミッション型の発光装置である点で、図18(A)に示す発光装置100Bと主に相違する。
【0482】
発光デバイスが発する光は、基板351側に射出される。基板351には、可視光に対する透過性が高い材料を用いることが好ましい。一方、基板352に用いる材料の透光性は問わない。
【0483】
基板351とトランジスタ201との間、基板351とトランジスタ205との間には、遮光層157を形成することが好ましい。図19では、基板351上に遮光層157が設けられ、遮光層157上に絶縁層153が設けられ、絶縁層153上にトランジスタ201、205などが設けられている例を示す。
【0484】
発光デバイス130Rは、導電層112Rと、導電層112R上の導電層126Rと、導電層126R上の導電層129Rと、を有する。
【0485】
発光デバイス130Bは、導電層112Bと、導電層112B上の導電層126Bと、導電層126B上の導電層129Bと、を有する。
【0486】
導電層112R、112B、126R、126B、129R、129Bには、それぞれ、可視光に対する透過性が高い材料を用いる。共通電極155には可視光を反射する材料を用いることが好ましい。
【0487】
なお、図19では、発光デバイス130Gを図示していないが、発光デバイス130Gも設けられている。
【0488】
また、図19などでは、層128の上面が平坦部を有する例を示すが、層128の形状は、特に限定されない。
【0489】
[発光装置100C]
図20(A)に示す発光装置100Cは、図18(A)に示す発光装置100Bの変形例であり、着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bを有する点で、発光装置100Bと主に相違する。
【0490】
発光装置100Cにおいて、発光デバイス130は、着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bのうち一つと重なる領域を有する。着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bは、基板352の基板351側の面に設けることができる。着色層132Rの端部、着色層132Gの端部、及び着色層132Bの端部は、遮光層157と重ねることができる。
【0491】
発光装置100Cにおいて、発光デバイス130は、例えば白色光を発することができる。また、例えば着色層132Rは赤色の光を透過し、着色層132Gは緑色の光を透過し、着色層132Bは青色の光を透過できる。なお、発光装置100Cは、保護層131と接着層142の間に着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bを設ける構成としてもよい。
【0492】
図18(A)及び図20(A)等では、層128の上面が平坦部を有する例を示すが、層128の形状は、特に限定されない。図20(B)乃至図20(D)に、層128の変形例を示す。
【0493】
図20(B)及び図20(D)に示すように、層128の上面は、断面視において、中央及びその近傍が窪んだ形状、つまり、凹曲面を有する形状を有する構成とすることができる。
【0494】
また、図20(C)に示すように、層128の上面は、断面視において、中央及びその近傍が膨らんだ形状、つまり、凸曲面を有する形状を有する構成とすることができる。
【0495】
また、層128の上面は、凸曲面及び凹曲面の一方又は双方を有していてもよい。また、層128の上面が有する凸曲面及び凹曲面の数はそれぞれ限定されず、一つ又は複数とすることができる。
【0496】
また、層128の上面の高さと、導電層224Rの上面の高さと、は、一致又は概略一致していてもよく、互いに異なっていてもよい。例えば、層128の上面の高さは、導電層224Rの上面の高さより低くてもよく、高くてもよい。
【0497】
また、図20(B)は、導電層224Rに形成された凹部の内部に層128が収まっている例ともいえる。一方、図20(D)のように、導電層224Rに形成された凹部の外側に層128が存在する、つまり、当該凹部よりも層128の上面の幅が広がって形成されていてもよい。
【0498】
本実施の形態は、他の実施の形態、又は実施例と適宜組み合わせることができる。また、本明細書において、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0499】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の電子機器について説明する。
【0500】
本実施の形態の電子機器は、表示部に本発明の一態様の発光装置を有する。本発明の一態様の発光装置は信頼性が高く、また高精細化及び高解像度化が容易である。したがって、様々な電子機器の表示部に用いることができる。
【0501】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用等のモニタ、デジタルサイネージ、パチンコ機等の大型ゲーム機等の比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、等が挙げられる。
【0502】
特に、本発明の一態様の発光装置は、精細度を高めることが可能なため、比較的小さな表示部を有する電子機器に好適に用いることができる。このような電子機器としては、例えば、腕時計型及びブレスレット型の情報端末機(ウェアラブル機器)、並びに、ヘッドマウントディスプレイ等のVR向け機器、メガネ型のAR向け機器、及び、MR向け機器等、頭部に装着可能なウェアラブル機器等が挙げられる。
【0503】
本発明の一態様の発光装置は、HD(画素数1280×720)、FHD(画素数1920×1080)、WQHD(画素数2560×1440)、WQXGA(画素数2560×1600)、4K(画素数3840×2160)、8K(画素数7680×4320)といった極めて高い解像度を有していることが好ましい。特に4K、8K、又はそれ以上の解像度とすることが好ましい。また、本発明の一態様の発光装置における画素密度(精細度)は、100ppi以上が好ましく、300ppi以上が好ましく、500ppi以上がより好ましく、1000ppi以上がより好ましく、2000ppi以上がより好ましく、3000ppi以上がより好ましく、5000ppi以上がより好ましく、7000ppi以上がさらに好ましい。このように高い解像度及び高い精細度の一方又は双方を有する発光装置を用いることで、携帯型又は家庭用途等のパーソナルユースの電子機器において、臨場感及び奥行き感等をより高めることが可能となる。また、本発明の一態様の発光装置の画面比率(アスペクト比)については、特に限定はない。例えば、発光装置は、1:1(正方形)、4:3、16:9、及び16:10等様々な画面比率に対応できる。
【0504】
本実施の形態の電子機器は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)を有していてもよい。
【0505】
本実施の形態の電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像等)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付又は時刻等を表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)を実行する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出す機能等を有することができる。
【0506】
図21(A)乃至図21(D)を用いて、頭部に装着可能なウェアラブル機器の一例を説明する。これらウェアラブル機器は、ARのコンテンツを表示する機能、VRのコンテンツを表示する機能、SRのコンテンツを表示する機能、MRのコンテンツを表示する機能のうち少なくとも一つを有する。電子機器が、AR、VR、SR、及びMR等の少なくとも一つのコンテンツを表示する機能を有することで、使用者の没入感を高めることが可能となる。
【0507】
図21(A)に示す電子機器700A、及び、図21(B)に示す電子機器700Bは、それぞれ、一対の表示パネル751と、一対の筐体721と、通信部(図示しない)と、一対の装着部723と、制御部(図示しない)と、撮像部(図示しない)と、一対の光学部材753と、フレーム757と、一対の鼻パッド758と、を有する。
【0508】
表示パネル751には、本発明の一態様の発光装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0509】
電子機器700A、及び、電子機器700Bは、それぞれ、光学部材753の表示領域756に、表示パネル751で表示した画像を投影できる。光学部材753は透光性を有するため、使用者は光学部材753を通して視認される透過像に重ねて、表示領域に表示された画像を見ることができる。したがって、電子機器700A、及び、電子機器700Bは、それぞれ、AR表示が可能な電子機器である。
【0510】
電子機器700A、及び、電子機器700Bには、撮像部として、前方を撮像することのできるカメラが設けられていてもよい。また、電子機器700A、及び、電子機器700Bは、それぞれ、ジャイロセンサ等の加速度センサを備えることで、使用者の頭部の向きを検知して、その向きに応じた画像を表示領域756に表示することもできる。
【0511】
通信部は無線通信機を有し、当該無線通信機により例えば映像信号を供給できる。なお、無線通信機に代えて、又は無線通信機に加えて、映像信号及び電源電位が供給されるケーブルを接続可能なコネクタを備えていてもよい。
【0512】
また、電子機器700A、及び、電子機器700Bには、バッテリが設けられており、無線及び有線の一方又は双方によって充電できる。
【0513】
筐体721には、タッチセンサモジュールが設けられていてもよい。タッチセンサモジュールは、筐体721の外側の面がタッチされることを検出する機能を有する。タッチセンサモジュールにより、使用者のタップ操作又はスライド操作等を検出し、様々な処理を実行できる。例えば、タップ操作によって動画の一時停止又は再開等の処理を実行することが可能となり、スライド操作により、早送り又は早戻しの処理を実行すること等が可能となる。また、2つの筐体721のそれぞれにタッチセンサモジュールを設けることで、操作の幅を広げることができる。
【0514】
タッチセンサモジュールとしては、様々なタッチセンサを適用できる。例えば、静電容量方式、抵抗膜方式、赤外線方式、電磁誘導方式、表面弾性波方式、又は光学方式等、種々の方式を採用できる。特に、静電容量方式又は光学方式のセンサを、タッチセンサモジュールに適用することが好ましい。
【0515】
光学方式のタッチセンサを用いる場合には、受光素子として、光電変換デバイス(光電変換素子ともいう)を用いることができる。光電変換デバイスの活性層には、無機半導体及び有機半導体の一方又は双方を用いることができる。
【0516】
なお、本発明の一態様であるデバイスは、2段以上のタンデムの有機薄膜太陽電池(OPV)、および有機光ダイオード(OPD)など光電変換素子に用いることができる。具体的には、2つの光電変換層に挟まれた中間層の電荷発生領域に、電子酸化が不可逆な第1の有機化合物を適用することができる。また例えば、発光層と光電変換層とに挟まれた中間層の電荷発生領域に適用してもよい。このとき、透明電極側を発光素子、反射電極側を光電変換素子とすると、発光層に対する光電変換層の光吸収のロスを低減でき、好ましい。
【0517】
図21(C)に示す電子機器800A、及び、図21(D)に示す電子機器800Bは、それぞれ、一対の表示部820と、筐体821と、通信部822と、一対の装着部823と、制御部824と、一対の撮像部825と、一対のレンズ832と、を有する。
【0518】
表示部820には、本発明の一態様の発光装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0519】
表示部820は、筐体821の内部の、レンズ832を通して視認できる位置に設けられる。また、一対の表示部820に異なる画像を表示させることで、視差を用いた3次元表示を行うこともできる。
【0520】
電子機器800A、及び、電子機器800Bは、それぞれ、VR向けの電子機器ということができる。電子機器800A又は電子機器800Bを装着した使用者は、レンズ832を通して、表示部820に表示される画像を視認できる。
【0521】
電子機器800A、及び、電子機器800Bは、それぞれ、レンズ832及び表示部820が、使用者の目の位置に応じて最適な位置となるように、これらの左右の位置を調整可能な機構を有していることが好ましい。また、レンズ832と表示部820との距離を変えることで、ピントを調整する機構を有していることが好ましい。
【0522】
装着部823により、使用者は電子機器800A又は電子機器800Bを頭部に装着できる。なお、例えば図21(C)においては、メガネのつる(ジョイント、又はテンプル等ともいう)のような形状として例示しているがこれに限定されない。装着部823は、使用者が装着できればよく、例えば、ヘルメット型又はバンド型の形状としてもよい。
【0523】
撮像部825は、外部の情報を取得する機能を有する。撮像部825が取得したデータは、表示部820に出力できる。撮像部825には、イメージセンサを用いることができる。また、望遠、及び広角等の複数の画角に対応可能なように複数のカメラを設けてもよい。
【0524】
なお、ここでは撮像部825を有する例を示したが、対象物の距離を測定することのできる測距センサ(以下、検知部ともよぶ)を設ければよい。すなわち、撮像部825は、検知部の一態様である。検知部としては、例えばイメージセンサ、又は、ライダー(LIDAR:Light Detection and Ranging)等の距離画像センサを用いることができる。カメラによって得られた画像と、距離画像センサによって得られた画像とを用いることにより、より多くの情報を取得し、より高精度なジェスチャー操作を可能とすることができる。
【0525】
電子機器800Aは、骨伝導イヤフォンとして機能する振動機構を有していてもよい。例えば、表示部820、筐体821、及び装着部823のいずれか一又は複数に、当該振動機構を有する構成を適用できる。これにより、別途、ヘッドフォン、イヤフォン、又はスピーカ等の音響機器を必要とせず、電子機器800Aを装着しただけで映像と音声を楽しむことができる。
【0526】
電子機器800A、及び、電子機器800Bは、それぞれ、入力端子を有していてもよい。入力端子には映像出力機器等からの映像信号、及び、電子機器内に設けられるバッテリを充電するための電力等を供給するケーブルを接続できる。
【0527】
本発明の一態様の電子機器は、イヤフォン750と無線通信を行う機能を有していてもよい。イヤフォン750は、通信部(図示しない)を有し、無線通信機能を有する。イヤフォン750は、無線通信機能により、電子機器から情報(例えば音声データ)を受信できる。例えば、図21(A)に示す電子機器700Aは、無線通信機能によって、イヤフォン750に情報を送信する機能を有する。また、例えば、図21(C)に示す電子機器800Aは、無線通信機能によって、イヤフォン750に情報を送信する機能を有する。
【0528】
また、電子機器がイヤフォン部を有していてもよい。図21(B)に示す電子機器700Bは、イヤフォン部727を有する。例えば、イヤフォン部727と制御部とは、互いに有線接続されている構成とすることができる。イヤフォン部727と制御部とをつなぐ配線の一部は、筐体721又は装着部723の内部に配置されていてもよい。
【0529】
同様に、図21(D)に示す電子機器800Bは、イヤフォン部827を有する。例えば、イヤフォン部827と制御部824とは、互いに有線接続されている構成とすることができる。イヤフォン部827と制御部824とをつなぐ配線の一部は、筐体821又は装着部823の内部に配置されていてもよい。また、イヤフォン部827と装着部823とがマグネットを有していてもよい。これにより、イヤフォン部827を装着部823に磁力によって固定でき、収納が容易となり好ましい。
【0530】
なお、電子機器は、イヤフォン又はヘッドフォン等を接続できる音声出力端子を有していてもよい。また、電子機器は、音声入力端子及び音声入力機構の一方又は双方を有していてもよい。音声入力機構としては、例えば、マイク等の集音装置を用いることができる。電子機器が音声入力機構を有することで、電子機器に、いわゆるヘッドセットとしての機能を付与してもよい。
【0531】
このように、本発明の一態様の電子機器としては、メガネ型(電子機器700A、及び、電子機器700B等)と、ゴーグル型(電子機器800A、及び、電子機器800B等)と、のどちらも好適である。
【0532】
また、本発明の一態様の電子機器は、有線又は無線によって、イヤフォンに情報を送信できる。
【0533】
図22(A)に示す電子機器6500は、スマートフォンとして用いることのできる携帯情報端末機である。
【0534】
電子機器6500は、筐体6501、表示部6502、電源ボタン6503、ボタン6504、スピーカ6505、マイク6506、カメラ6507、及び光源6508等を有する。表示部6502はタッチパネル機能を備える。
【0535】
表示部6502に、本発明の一態様の発光装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0536】
図22(B)は、筐体6501のマイク6506側の端部を含む断面概略図である。
【0537】
筐体6501の表示面側には透光性を有する保護部材6510が設けられ、筐体6501と保護部材6510に囲まれた空間内に、表示パネル6511、光学部材6512、タッチセンサパネル6513、プリント基板6517、及びバッテリ6518等が配置されている。
【0538】
保護部材6510には、表示パネル6511、光学部材6512、及びタッチセンサパネル6513が接着層(図示しない)により固定されている。
【0539】
表示部6502よりも外側の領域において、表示パネル6511の一部が折り返されており、当該折り返された部分にFPC6515が接続されている。FPC6515には、IC6516が実装されている。FPC6515は、プリント基板6517に設けられた端子に接続されている。
【0540】
表示パネル6511には本発明の一態様の発光装置を適用できる。このため、極めて軽量な電子機器を実現できる。また、表示パネル6511が極めて薄いため、電子機器の厚さを抑えつつ、大容量のバッテリ6518を搭載することもできる。また、表示パネル6511の一部を折り返して、画素部の裏側にFPC6515との接続部を配置することにより、狭額縁の電子機器を実現できる。
【0541】
図22(C)にテレビジョン装置の一例を示す。テレビジョン装置7100は、筐体7171に表示部7000が組み込まれている。ここでは、スタンド7173により筐体7171を支持した構成を示している。
【0542】
表示部7000に、本発明の一態様の発光装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0543】
図22(C)に示すテレビジョン装置7100の操作は、筐体7171が備える操作スイッチ、及び、別体のリモコン操作機7151により行うことができる。又は、表示部7000にタッチセンサを備えていてもよく、指等で表示部7000に触れることでテレビジョン装置7100を操作してもよい。リモコン操作機7151は、当該リモコン操作機7151から出力する情報を表示する表示部を有していてもよい。リモコン操作機7151が備える操作キー又はタッチパネルにより、チャンネル及び音量の操作を行うことができ、表示部7000に表示される映像を操作できる。
【0544】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機及びモデム等を備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができる。また、モデムを介して有線又は無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)又は双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者同士等)の情報通信を行うことも可能である。
【0545】
図22(D)に、ノート型パーソナルコンピュータの一例を示す。ノート型パーソナルコンピュータ7200は、筐体7211、キーボード7212、ポインティングデバイス7213、及び外部接続ポート7214等を有する。筐体7211に、表示部7000が組み込まれている。
【0546】
表示部7000に、本発明の一態様の発光装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0547】
図22(E)及び図22(F)に、デジタルサイネージの一例を示す。
【0548】
図22(E)に示すデジタルサイネージ7300は、筐体7301、表示部7000、及びスピーカ7303等を有する。さらに、LEDランプ、操作キー(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子、各種センサ、マイクロフォン等を有することができる。
【0549】
図22(F)は円柱状の柱7401に取り付けられたデジタルサイネージ7400である。デジタルサイネージ7400は、柱7401の曲面に沿って設けられた表示部7000を有する。
【0550】
図22(E)及び図22(F)において、表示部7000に、本発明の一態様の発光装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0551】
表示部7000が広いほど、一度に提供できる情報量を増やすことができる。また、表示部7000が広いほど、人の目につきやすく、例えば、広告の宣伝効果を高めることができる。
【0552】
表示部7000にタッチパネルを適用することで、表示部7000に画像又は動画を表示するだけでなく、使用者が直感的に操作でき、好ましい。また、路線情報もしくは交通情報等の情報を提供するための用途に用いる場合には、直感的な操作によりユーザビリティを高めることができる。
【0553】
また、図22(E)及び図22(F)に示すように、デジタルサイネージ7300又はデジタルサイネージ7400は、使用者が所持するスマートフォン等の情報端末機7311又は情報端末機7411と無線通信により連携可能であることが好ましい。例えば、表示部7000に表示される広告の情報を、情報端末機7311又は情報端末機7411の画面に表示させることができる。また、情報端末機7311又は情報端末機7411を操作することで、表示部7000の表示を切り替えることができる。
【0554】
また、デジタルサイネージ7300又はデジタルサイネージ7400に、情報端末機7311又は情報端末機7411の画面を操作手段(コントローラ)としたゲームを実行させることもできる。これにより、不特定多数の使用者が同時にゲームに参加し、楽しむことができる。
【0555】
図23(A)乃至図23(G)に示す電子機器は、筐体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9008、等を有する。
【0556】
図23(A)乃至図23(G)に示す電子機器は、様々な機能を有する。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像等)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付又は時刻等を表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して処理する機能、等を有することができる。なお、電子機器の機能はこれらに限られず、様々な機能を有することができる。電子機器は、複数の表示部を有していてもよい。また、電子機器にカメラ等を設け、静止画又は動画を撮影し、記録媒体(外部又はカメラに内蔵)に保存する機能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有していてもよい。
【0557】
図23(A)乃至図23(G)に示す電子機器の詳細について、以下説明を行う。
【0558】
図23(A)は、携帯情報端末9171を示す斜視図である。携帯情報端末9171は、例えばスマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9171は、スピーカ9003、接続端子9006、又はセンサ9007等を設けてもよい。また、携帯情報端末9171は、文字及び画像情報をその複数の面に表示できる。図23(A)では3つのアイコン9050を表示した例を示している。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部9001の他の面に表示することもできる。情報9051の一例としては、電子メール、SNS、電話等の着信の通知、電子メール又はSNS等の題名、送信者名、日時、時刻、バッテリの残量、電波強度等がある。又は、情報9051が表示されている位置にはアイコン9050等を表示してもよい。
【0559】
図23(B)は、携帯情報端末9172を示す斜視図である。携帯情報端末9172は、表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、情報9053、情報9054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9172を収納した状態で、携帯情報端末9172の上方から観察できる位置に表示された情報9053を確認することもできる。使用者は、携帯情報端末9172をポケットから取り出すことなく表示を確認し、例えば電話を受けるか否かを判断できる。
【0560】
図23(C)は、タブレット端末9173を示す斜視図である。タブレット端末9173は、一例として、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲーム等の種々のアプリケーションの実行が可能である。タブレット端末9173は、筐体9000の正面に表示部9001、カメラ9002、マイクロフォン9008、スピーカ9003を有し、筐体9000の左側面には操作用のボタンとしての操作キー9005、底面には接続端子9006を有する。
【0561】
図23(D)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末9200は、例えばスマートウォッチ(登録商標)として用いることができる。また、表示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、携帯情報端末9200は、例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006により、他の情報端末と相互にデータ伝送を行うこと、及び、充電を行うこともできる。なお、充電動作は無線給電により行ってもよい。
【0562】
図23(E)乃至図23(G)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図である。また、図23(E)は携帯情報端末9201を展開した状態、図23(G)は折り畳んだ状態、図23(F)は図23(E)と図23(G)の一方から他方に変化する途中の状態の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末9201が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000に支持されている。例えば、表示部9001は、曲率半径0.1mm以上150mm以下で曲げることができる。
【0563】
本実施の形態は、他の実施の形態、又は実施例と適宜組み合わせることができる。また、本明細書において、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【実施例0564】
本実施例では、本発明の一態様である発光デバイスを作製し、その特性を評価した結果について説明する。また、当該発光デバイスに用いた、電子酸化が不可逆な有機化合物の電気化学的特性(酸化反応特性)を評価した結果について説明する。
【0565】
なお、電子酸化が不可逆な有機化合物として、1-(2’,7’-ジ-tert-ブチル-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(略称:2’,7’tBu-2hppSF)、8,8’-ピリジン-2,6-ジイル-ビス(5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリミジン)(略称:2,6tip2Py)、および2-(1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-1-イル)-9-フェニル-1,10-フェナントロリン(略称:9Ph-2hppPhen)、を採択し、発光デバイスを作製した。各有機化合物の構造式を下記に示す。
【0566】
また、比較例として、電子酸化が可逆な有機化合物である2-[4-(1,3-ジメチル-2H-ベンゾイミダゾール-2-yl)フェニル]-1,3-ジメチル-2H-ベンゾイミダゾール(略称:Dhbi2P)の構造式を下記に併記する。
【0567】
【化10】
【0568】
<発光デバイス1A:2’,7’tBu-2hppSFを用いたデバイス>
発光デバイス1Aには、1-(2’,7’-ジ-tert-ブチル-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(略称:2’,7’tBu-2hppSF)を中間層として用いた。
【0569】
発光デバイス1Aに用いた有機化合物の構造式を以下に示す。
【0570】
【化11】
【0571】
なお、発光デバイス1Aは、図24に示すように、ガラス基板である基板900上に形成された第1の電極901上に、第1のEL層903、中間層905、第2のEL層904、第2の電極902が積層されたタンデム構造を有する。
【0572】
第1のEL層903は、正孔注入層910、第1の正孔輸送層911、第1の発光層912、及び第1の電子輸送層913、が順次積層された構造を有する。中間層905は、電子注入バッファ領域914と、電子リレー領域および電荷発生領域を含む層915を有する。また、第2のEL層904は、第2の正孔輸送層916、第2の発光層917、および第2の電子輸送層918、および電子注入層919が順次積層された構造を有する。
【0573】
≪発光デバイス1Aの作製方法≫
はじめに、ガラス基板である基板900上に、反射電極として、銀(Ag)をスパッタリング法により、100nmの膜厚で成膜した後、透明電極として酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法により、10nmの膜厚で成膜して第1の電極901を形成した。なお、その電極面積は4mm(2mm×2mm)とした。
【0574】
次に、第1のEL層903を設けた。まず、基板上に発光デバイス1Aを形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した。その後、1×10-4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った。その後、30分程度自然冷却させた。
【0575】
次に、第1の電極901が形成された面が下方となるように、第1の電極901が形成された基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、第1の電極901上に、抵抗加熱を用いた蒸着法によりN-(ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)と、分子量672でフッ素を含む電子アクセプタ材料(OCHD-003)と、をPCBBiF:OCHD-003=1:0.03(重量比)となるように10nm共蒸着し、正孔注入層910を形成した。
【0576】
次に、正孔注入層910上に、PCBBiFを膜厚20nmとなるように蒸着して、第1の正孔輸送層911を形成した。
【0577】
次に、第1の正孔輸送層911上に第1の発光層912を形成した。抵抗加熱を用いた蒸着法により、8-(1,1’:4’,1’’-テルフェニル-3-イル)-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8mpTP-4mDBtPBfpm)と、9-(2-ナフチル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:βNCCP)と、[2-d3-メチル-8-(2-ピリジニル-κN)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-κC]ビス[2-(5-d3-メチル-2-ピリジニル-κN2)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:Ir(5mppy-d(mbfpypy-d))と、を8mpTP-4mDBtPBfpm:βNCCP:Ir(5mppy-d(mbfpypy-d)=5:5:1(重量比)となるように、40nm共蒸着し、第1の発光層912を形成した。
【0578】
次に、第1の発光層912上に、3,6-ビス(ジフェニルアミノ)-9-[4-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:DACT-II)を膜厚10nmとなるように蒸着し、第1の電子輸送層913を形成した。
【0579】
次に、中間層905を設けた。まず、第1の電子輸送層913上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、2,2’-(1,3-フェニレン)ビス(9-フェニル-1,10-フェナントロリン)(略称:mPPhen2P)と、1-(2’,7’-ジ-tert-ブチル-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(略称:2’,7’tBu-2hppSF)と、をmPPhen2P:2’,7’tBu-2hppSF=1:1(重量比)となるように、膜厚5nm共蒸着して、電子注入バッファ領域914となる層を形成した。
【0580】
続いて、電子リレー領域として、銅フタロシアニン(略称:CuPc)を2nmの膜厚となるように成膜した。次に、電荷発生領域として、抵抗加熱を用いた蒸着法によりN-(ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)と、分子量672でフッ素を含む電子アクセプタ材料(OCHD-003)と、をPCBBiF:OCHD-003=1:0.15(重量比)となるように10nm共蒸着し、電荷発生領域を含む層915を形成した。
【0581】
次に、第2のEL層904を設けた。まず、PCBBiFを膜厚55nmとなるように蒸着し、第2の正孔輸送層916を形成した。
【0582】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、8-(1,1’:4’,1’’-テルフェニル-3-イル)-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8mpTP-4mDBtPBfpm)と、9-(2-ナフチル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:βNCCP)と、[2-d3-メチル-8-(2-ピリジニル-κN)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-κC]ビス[2-(5-d3-メチル-2-ピリジニル-κN2)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:Ir(5mppy-d(mbfpypy-d))と、を8mpTP-4mDBtPBfpm:βNCCP:Ir(5mppy-d(mbfpypy-d)=5:5:1(重量比)となるように、40nm共蒸着し、第2の発光層917を形成した。
【0583】
次に、第2の発光層917上に、2-{3-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mPCCzPDBq)を膜厚20nmとなるように蒸着した後、2,2’-(1,3-フェニレン)ビス(9-フェニル-1,10-フェナントロリン)(略称:mPPhen2P)を膜厚20nmとなるように蒸着し、第2の電子輸送層918を形成した。
【0584】
次に、第2の電子輸送層918上に、フッ化リチウム(LiF)とイッテルビウム(Yb)を、LiF:Yb=2:1(体積比)で膜厚1.5nmとなるように共蒸着して、電子注入層919を形成した。
【0585】
次に、電子注入層919上に、Agと、Mgと、をAg:Mg=1:0.1(体積比)となるように、15nm共蒸着し、第2の電極902を形成した。なお、第2の電極902は光を反射する機能と光を透過する機能とを有する半透過・半反射電極である。
【0586】
その後、キャップ層として、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)を70nmの厚さで蒸着した。
【0587】
以上の工程により、発光デバイス1Aを作製した。また、発光デバイス1Aのデバイス構造を以下の表にまとめた。
【0588】
【表1】
【0589】
≪発光デバイス1Aのデバイスの特性≫
上記発光デバイス1Aを、窒素雰囲気のグローブボックス内において、デバイスが大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(シール材を素子の周囲に塗布し、封止時にUV処理、80℃にて1時間熱処理)を行った後、発光デバイス1Aの発光特性について測定を行った。
【0590】
発光デバイス1Aの輝度-電流密度特性を図25に、電流効率-輝度特性を図26に、輝度-電圧特性を図27に、電流密度-電圧特性を図28に、電界発光スペクトルを図29に示す。また、発光デバイス1Aの輝度が1000cd/m付近における主要な特性を下表に示す。なお、輝度、CIE色度、電界発光スペクトルの測定には分光放射計(トプコン社製、SR-UL1R)を用いた。
【0591】
【表2】
【0592】
図25乃至図28および上記表より、発光デバイス1Aは、電流効率が高く、第1の発光層と第2の発光層から発光を呈するタンデム型の発光デバイスとして機能していることが分かった。そのため、2’,7’tBu-2hppSFを用いた電子注入バッファ領域の層は、電荷発生領域で生成した電子を第1の電子輸送層へ効率よく注入できることがわかった。つまり、2’,7’tBu-2hppSFを用いた電子注入バッファ領域の層は中間層の一部として効率的に機能していることがわかった。
【0593】
また、図29に示すように、発光デバイス1Aの電界発光スペクトルにおいてピーク波長が520nm付近である緑色の発光を示した。
【0594】
≪発光デバイス1Aの信頼性試験結果≫
さらに、発光デバイス1Aについて、信頼性試験を行った。定電流密度(50[mA/cm])駆動時の規格化した輝度の時間変化を図30に示す。図30では縦軸が発光開始した時点での輝度を100%として規格化した輝度(%)、横軸が時間(h)を示す。
【0595】
図30より、発光デバイス1Aは、測定輝度が初期輝度の90%に低下するまでの経過時間であるLT90(h)の値は約169時間であった。
【0596】
従って、発光デバイス1Aは高い信頼性のデバイスであることが分かった。
【0597】
<2’,7’tBu-2hppSFのLC-MS測定結果>
ここで、電流密度50[mA/cm]で5分通電させた発光デバイス1A、および500時間通電させた発光デバイス1Aに対し、液体クロマトグラフ質量分析(Liquid Chromatography Mass Spectrometry,略称:LC-MS分析)によって分析した。なお電流密度50[mA/cm]の輝度は約65000cd/mだった。
【0598】
また、LC-MS分析に用いる発光デバイス1Aの試料は、第1の電極上の発光領域(2mm×2mm)を含む約4mm×24mmの領域で切り出し、5分間通電させた発光デバイス1Aおよび500時間通電した発光デバイス1Aを混合したものと、アセトニトリル:クロロホルム=8:2である0.1mlの混合液とを、褐色瓶に入れ、10分の超音波処理を行った後、当該溶液を孔径0.2μmの多孔質フィルターでろ過したものを用いた。
【0599】
また、比較用として、2’,7’tBu-2hppSFの単膜の試料を作製した。2’,7’tBu-2hppSFの蒸着膜を約2cm×2cmで切り出し、当該蒸着膜と、アセトニトリル:クロロホルム=8:2である混合液とを、褐色瓶に入れ、10分の超音波処理を行った。当該溶液を、通電後の発光デバイス1Aの2’,7’tBu-2hppSFの濃度と合わせるために、アセトニトリルで45倍に希釈した後、当該溶液を孔径0.2μmの多孔質フィルターでろ過した。
【0600】
なお、液体クロマトグラフィー質量分析装置は、ACQUITY H-class(Waters製)、Xevo G2 TOF MS(Waters製)で構成され、カラムにはACQUITY UPLC HSS T3 1.8μm 2.1mm×100mm Column(Waters製、以下カラムと記す)を用いた。
【0601】
また、カラム温度は40℃とした。移動相は移動相Aをアセトニトリル、移動相Bを0.1%のギ酸水溶液とした。通電後の発光デバイスAの試料、および比較用の2’,7’tBu-2hppSFの単膜の試料の注入量は5μLとした。
【0602】
LC分離には移動相の組成を変化させるグラジエント法を用い、測定開始後0分から1分までが、移動相A:移動相B=50:50、その後組成を変化させ、70分における移動相Aと移動相Bとの比が移動相A:移動相B=99:1となるようにした。組成の変化はリニアに変化させた。
【0603】
図31(A)乃至図31(C)に、通電後の発光デバイス1Aの測定結果を示す。図31(D)乃至図31(F)に、2’,7’tBu-2hppSFの単膜の測定結果を示す。また、図31(A)、および図31(D)に各試料のm/z 562、図31(B)、および図31(E)に各試料のm/z 564、図31(C)、および図31(F)に、各試料のm/z 566付近の抽出イオンクロマトグラムをそれぞれ示す。
【0604】
m/z 566は、2’,7’tBu-2hppSFの質量数にプロトンの質量数である1を加えた値である。このプロトンは、移動相のギ酸由来のプロトンも含まれる。2’,7’tBu-2hppSFの単膜の蒸着膜と比較して、通電後の発光デバイス1Aにおいて、m/z 562のシグナルのイオン強度、およびm/z 564のシグナルのイオン強度が増加することが分かった。m/z 562は、2’,7’tBu-2hppSFから水素原子が4個脱離した物質にプロトンの質量数である1を加えた値である。m/z 564は、2’,7’tBu-2hppSFから水素原子が2個脱離した物質にプロトンの質量数である1を加えた値である。このプロトンは、移動相のギ酸由来のプロトンも含まれる。
【0605】
従って、2’,7’tBu-2hppSFは通電すると、分子1つ当たりから2または4個の水素原子を放出していると考えられる。後述の電子酸化反応でも同様のm/zの増加が確認されていることから、素子駆動中に、2’,7’tBu-2hppSFに正孔が注入され、電子酸化したものによると考えられる。
【0606】
従って、電子酸化が不可逆な有機化合物は、m/z値が、2、または4減少する傾向があることが分かった。これは、当該有機化合物から、分子1つ当たり水素原子が2個、または水素原子が4個、解離することで、二重結合を形成し安定な有機化合物となり、水素が元に戻りにくいためと考えられる。また、解離した水素カチオン(プロトン)は、他の電子酸化が不可逆な有機化合物に付加することで、正の電荷を保持・蓄積すると考えられる。また、高いHOMO準位を形成し、正孔輸送性を抑制する。これらのことで、電子酸化が不可逆な有機化合物はタンデム型発光デバイスの中間層として機能すると考えられる。
【0607】
<2’,7’tBu-2hppSFの電気化学的特性(酸化反応特性)の評価>
ここで、発光デバイス1Aに用いた2’,7’tBu-2hppSFの電気化学特性を測定した。具体的には、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定を用いて、参照電極に対する作用電極の電位を変化させることで得られる酸化電流ピーク電流(Ipa)、および還元電流ピーク電流(Ipc)を測定した。
【0608】
≪2’,7’tBu-2hppSFのサンプル作成≫
第1のサンプル作成は、溶媒として、脱水であるN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(富士フィルム和光純薬(株)、製品番号:043-32361)を用い、支持電解質である過塩素酸テトラ-n-ブチルアンモニウム(n-BuNClO)((株)東京化成製、製品番号:T0836)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象である2’,7’tBu-2hppSFを2mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した後、作成した溶液をアルゴン(Ar)で30分間のバブリングを行った。
【0609】
また、第2のサンプル作成は、溶媒として、超脱水であるアセトニトリル(富士フィルム和光純薬(株)、製品番号:018-22901)を用い、支持電解質である過塩素酸テトラ-n-ブチルアンモニウム(n-BuNClO)((株)東京化成製、製品番号:T0836)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象である2’,7’tBu-2hppSFを2mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した後、作成した溶液を、アルゴン(Ar)を用いて30分間のバブリングを行った。
【0610】
≪電気化学的特性(酸化反応特性)の測定方法≫
電気化学的特性(酸化反応特性)をサイクリックボルタンメトリ(CV)によって測定した。なお、測定には、電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製 ALSモデル600)を用いた。
【0611】
また、作用電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、Ptカウンター電極(5cm))を、参照電極としてはAg/Ag電極(ビー・エー・エス(株)製、RE7非水溶媒系参照電極)をそれぞれ用いた。なお、測定は室温、アルゴン気流下で行った。
【0612】
また、スキャン測定の条件は、スキャン速度を1.0V/sに設定した。初期電位から0.6Vまでスキャンし(行きの走査)、続けて、スキャン方向を負電位側へ逆転し、終了電位(上記初期電位)までスキャンし(戻りの走査)、正の電流ピーク(還元電流ピーク、または戻りのピーク)があるかを確認した。なお初期電位は、オープンサーキットポテンシャル測定で得られた電圧値(作用電極と対極の間を遮断した状態での、作用電極と参照電極との電位差)とした。なお2サイクル以上測定を行い、2サイクル目のデータを採用した。
【0613】
≪2’,7’tBu-2hppSFの酸化反応特性の測定結果≫
2’,7’tBu-2hppSFの酸化反応特性の測定結果として、溶媒としてDMFを用いた測定結果を図32、また溶媒としてアセトニトリルを用いた測定結果を図33に示す。また、リファレンスとして脱水であるN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)と過塩素酸テトラ-n-ブチルアンモニウム(n-BuNClO)との混合溶液の測定結果を図34に示す。
【0614】
図34の結果より、過塩素酸テトラ-n-ブチルアンモニウム(n-BuNClO)のDMF溶液は、行きの走査で1.0Vまで測定しても、電子酸化に由来する目立ったピーク(極値)はみられなかった。なお初期電位は-0.5Vであった。
【0615】
図32より、溶媒としてDMFを用いた2’,7’tBu-2hppSFの測定の結果において、行きの走査では、0.45V付近に2’,7’tBu-2hppSF由来の酸化ピーク(負方向の極値)を確認した。一方、戻りの走査では2’,7’tBu-2hppSF由来の還元ピーク(正方向の極値)は検出されなかった。なお初期電位は0.0Vであった。
【0616】
また、図33より、溶媒としてアセトニトリルを用いた2’,7’tBu-2hppSFの測定の結果において、行きの走査では、0.65V付近に2’,7’tBu-2hppSF由来の酸化ピークを確認した。一方、戻りの走査では2’,7’tBu-2hppSF由来の還元ピークは検出されなかった。なお初期電位は0.0Vであった。
【0617】
また、戻りの走査におけるピーク(極値)の有無は、下記式(1)においてxが20以上の場合に、戻りの走査におけるピークが無く、行きの走査で生じた酸化反応は不可逆であると判断した。なお、下記式(1)中、行きの走査(酸化側)のピーク電流値、または2次微分した正のピーク電流のある電位から読みとったピークの電流値をIpa、行きの走査(酸化側)における初期電位の電流値をIa0、戻りの走査(還元側)の電流の最大値をIpc、および戻りの走査で初期電位に戻った時の電流値をIc0とする。xは変数である。
【0618】
【数2】
【0619】
図32の結果より、溶媒としてDMFを用いた2’,7’tBu-2hppSFの測定結果において、行きの走査におけるピーク電位の電流値Ipaと、行きの走査における初期電位の電流値Ia0の差の絶対値は、13.0μAであった。また、戻りの走査で初期電位に戻った時の電流値をIc0とした時、戻りの走査におけるピーク電位の電流値Ipcと戻りの走査で初期電位に戻った時の電流値Ic0との差の絶対値は、0.0μAであった。つまり、式(1)を満たす左辺の値は無限大となり、xが20以上であることがわかった。
【0620】
また、図33の結果より、溶媒としてアセトニトリルを用いた場合の2’,7’tBu-2hppSFの酸化電位測定結果において、行きの走査におけるピーク電位の電流値Ipaと、行きの走査における初期電位の電流値Ia0の差の絶対値は、11.5μAであった。また、戻りの走査における還元電流の最大値Ipcと戻りの走査で初期電位に戻った時の電流値Ic0との差の絶対値は、0.0μAであった(還元電流の最大値の電位が、初期電位の電位であった)。つまり、式(1)を満たす左辺の値は無限大となり、xが20以上であることがわかった。
【0621】
従って、溶媒としてアセトニトリルを用いた場合の2’,7’tBu-2hppSFは、CVの酸化電位測定において、スキャン速度が1.0V/sの場合、戻りの走査におけるピーク電位が確認できなかった。つまり本発明の一態様の有機化合物である2’,7’tBu-2hppSFは、電子酸化に対して不可逆な材料であることがわかった。
【0622】
また、溶媒としてDMFを用いた場合の2’,7’tBu-2hppSFの溶液を、約0.6V付近で電子酸化反応を行った後、発光デバイス1Aに対して行ったLC-MS測定と同様のLC-MS測定を行った。その結果は後述の実施例2に示す。実施例2の結果より、電子酸化反応を行った2’,7’tBu-2hppSFの溶液は、通電した発光デバイス1Aと同様に、電子酸化反応を行う前の溶液と比較してm/z 564のシグナルのイオン強度の増加を確認した。実施例2に示すように、2’,7’tBu-2hppSFのDMF溶液の酸化反応が不可逆なため、水素の解離反応が起こり、m/z 564が増加したと考えられる。先述の発光デバイス1Aでも、駆動による2’,7’tBu-2hppSFの酸化(ホールの注入)によって、CV測定時の酸化反応と同様の反応が起こり、水素が解離しm/z 564が増加したと考えられる。
【0623】
<発光デバイス1B:2,6tip2Pyを用いたデバイス>
発光デバイス1Bに用いた有機化合物である8,8’-ピリジン-2,6-ジイル-ビス(5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリミジン)(略称:2,6tip2Py)の構造式を以下に示す。
【0624】
【化12】
【0625】
なお、発光デバイス1Bは、発光デバイス1Aと同様に図24に示すように、ガラス基板である基板900上に形成された第1の電極901上に、第1のEL層903、中間層905、第2のEL層904、第2の電極902が積層されたタンデム構造を有する。
【0626】
第1のEL層903は、正孔注入層910、第1の正孔輸送層911、第1の発光層912、及び第1の電子輸送層913、が順次積層された構造を有する。中間層905は、電子注入バッファ領域914と、電子リレー領域および電荷発生領域を含む層915を有する。また、第2のEL層904は、第2の正孔輸送層916、第2の発光層917、および第2の電子輸送層918、および電子注入層919が順次積層された構造を有する。
【0627】
≪発光デバイス1Bの作製方法≫
はじめに、ガラス基板である基板900上に、反射電極として、銀(Ag)とパラジウム(Pd)と銅(Cu)を含む合金をスパッタリング法により、100nmの膜厚で成膜した後、透明電極として酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法により、100nmの膜厚で成膜して第1の電極901を形成した。なお、その電極面積は4mm(2mm×2mm)とした。
【0628】
次に、第1のEL層903を設けた。まず、基板上に発光デバイス1Bを形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した。その後、1×10-4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った。その後、30分程度自然冷却させた。
【0629】
次に、第1の電極901が形成された面が下方となるように、第1の電極901が形成された基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、第1の電極901上に、抵抗加熱を用いた蒸着法によりPCBBiFと、分子量672でフッ素を含む電子アクセプタ材料(OCHD-003)と、をPCBBiF:OCHD-003=1:0.03(重量比)となるように10nm共蒸着し、正孔注入層910を形成した。
【0630】
次に、正孔注入層910上に、PCBBiFを膜厚60nmとなるように蒸着して、第1の正孔輸送層911を形成した。
【0631】
次に、第1の正孔輸送層911上に第1の発光層912を形成した。抵抗加熱を用いた蒸着法により、4,8mDBtP2Bfpmと、βNCCPと、Ir(ppy)(mbfpypy-d)と、を4,8mDBtP2Bfpm:βNCCP:Ir(ppy)(mbfpypy-d)=5:5:1(重量比)となるように、40nm共蒸着し、第1の発光層912を形成した。
【0632】
次に、第1の発光層912上に、2mPCCzPDBqを膜厚10nmとなるように蒸着した後、mPPhen2Pを膜厚15nmとなるように蒸着し、第1の電子輸送層913を形成した。
【0633】
次に、中間層905を設けた。まず、第1の電子輸送層913上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、mPPhen2Pと、2,6tip2Pyと、をmPPhen2P:2,6tip2Py=1:0.5(重量比)となるように、膜厚5nm共蒸着して、電子注入バッファ領域914となる層を形成した。
【0634】
続いて、電子リレー領域として、銅フタロシアニン(略称:CuPc)を2nmの膜厚となるように成膜した。次に、電荷発生領域として、抵抗加熱を用いた蒸着法によりPCBBiFと、分子量672でフッ素を含む電子アクセプタ材料(OCHD-003)と、をPCBBiF:OCHD-003=1:0.15(重量比)となるように10nm共蒸着し、電荷発生領域を含む層915を形成した。
【0635】
次に、第2のEL層904を設けた。まず、PCBBiFを膜厚40nmとなるように蒸着し、第2の正孔輸送層916を形成した。
【0636】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、4,8mDBtP2Bfpmと、βNCCPと、Ir(ppy)(mbfpypy-d)と、を4,8mDBtP2Bfpm:βNCCP:Ir(ppy)(mbfpypy-d)=5:5:1(重量比)となるように、40nm共蒸着し、第2の発光層917を形成した。
【0637】
次に、第2の発光層917上に、2mPCCzPDBqを膜厚20nmとなるように蒸着した後、mPPhen2Pを膜厚20nmとなるように蒸着し、第2の電子輸送層918を形成した。
【0638】
ここで、発光デバイス1Bは、大気開放した後、膜厚30nmの酸化アルミニウム(略称:AlOx)膜を、ALD法を用いて成膜した後、インジウム、ガリウム、亜鉛を含む酸化物(略称:IGZO)を膜厚50nmになるようスパッタリング法にて成膜した。その後、フォトレジストを用いて、レジストを形成し、リソグラフィ法(ドライエッチング)を用いて、当該IGZOを所定の形状に加工した。具体的には、3μmの幅を備えるスリットを、第1の電極901の端部から3.5μm離れた位置に形成した。
【0639】
次に、上記IGZOをマスクとして、酸化アルミニウム膜、第1のEL層903、中間層905、第2の正孔輸送層916、第2の発光層917、および第2の電子輸送層918からなる積層構造を所定の形状に加工した後、IGZO、および酸化アルミニウム膜を除去した。当該IGZO、及び酸化アルミニウム膜は、塩基性の薬液を用いたウェットエッチングにより、除去した。
【0640】
続いて、真空下にて、110℃で1時間の加熱処理を行った。当該加熱処理により、上述の加工処理、または大気暴露などにより付着した水分などを除去することができる。
【0641】
続いて、第2の電子輸送層918上に、フッ化リチウム(LiF)とイッテルビウム(Yb)を、LiF:Yb=2:1(体積比)で膜厚1.5nmとなるように共蒸着して、電子注入層919を形成した。
【0642】
次に、電子注入層919上に、Agと、Mgと、をAg:Mg=1:0.1(体積比)となるように、15nm共蒸着し、第2の電極902を形成した。なお、第2の電極902は光を反射する機能と光を透過する機能とを有する半透過・半反射電極である。
【0643】
その後、キャップ層として、DBT3P-IIを70nmの厚さで蒸着した。
【0644】
以上の工程により、大気開放を伴うMMLプロセスにて発光デバイス1Bを作製した。また、発光デバイス1Bのデバイス構造を以下の表にまとめた。
【0645】
【表3】
【0646】
≪発光デバイス1Bの特性≫
上記発光デバイス1Bを、窒素雰囲気のグローブボックス内において、デバイスが大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(シール材を素子の周囲に塗布し、封止時にUV処理、80℃にて1時間熱処理)を行った後、発光デバイス1Bを50mA/cmの電流密度で20時間駆動させた。その後、発光デバイス1Bの発光特性について測定を行った。
【0647】
発光デバイス1Bの輝度-電流効率特性を図35に、電圧-輝度特性を図36に、電流密度-電流効率特性を図37に、電圧-電流密度特性を図38に、電流密度-輝度特性を図39に、電界発光スペクトルを図40に示す。また、発光デバイス1Bの電流密度が50mA/cmにおける主要な特性を下表に示す。なお、輝度、CIE色度、電界発光スペクトルの測定には分光放射計(トプコン社製、SR-UL1R)を用いた。
【0648】
【表4】
【0649】
図35乃至図39および上記表より、発光デバイス1Bは、電流効率が高く、第1の発光層と第2の発光層から発光を呈するタンデム型の発光デバイスとして機能していることが分かった。そのため、2,6tip2Pyを用いた電子注入バッファ領域の層は、電荷発生領域で生成した電子を第1の電子輸送層へ効率よく注入できることがわかった。つまり、中間層として効率的に機能していることがわかった。
【0650】
また、図40に示すように、発光デバイス1Bの電界発光スペクトルにおいてピーク波長が550nm付近である緑色の発光を示した。
【0651】
またこの発光デバイス1Bは、第1の正孔輸送層911から第2の電子輸送層918の端面のリソグラフィ法を用いた加工および、第2の電子輸送層918の表面と第1の正孔輸送層911から第2の電子輸送層918の端面のウェットエッチングによる加工を経ている。それにもかかわらず、2mm×2mmの発光領域は目立ったシュリンクが起きることなく均一に発光することを確認した。そのため本発明の一態様の発光デバイスは、パターニング工程にも好適に用いることができることがわかった。
【0652】
後述の様に、2,6tip2Pyは電子酸化に不可逆な有機化合物である。この様に、電子酸化が不可逆である有機化合物である2,6tip2Pyを含む膜は、大気暴露、リソグラフィ工程、またはウェットエッチング工程を経ていても、タンデム型の発光デバイスの中間層として機能し、良好な特性が得られることがわかった。
【0653】
≪2,6tip2Pyの酸化反応特性の測定結果≫
発光デバイス1Bに用いた2,6tip2Pyの電気化学特性を測定した。なお、測定方法は先に述べた≪電気化学的特性(酸化反応特性)の測定方法≫を参酌することができる。
【0654】
≪2,6tip2Pyのサンプル作成≫
サンプル作成は、溶媒として脱水であるN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)((株)アルドリッチ製、99.8%)を用い、支持電解質である過塩素酸テトラ-n-ブチルアンモニウム(n-BuNClO)((株)東京化成製)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象である2,6tip2Pyを2mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した後、アルゴン(Ar)を用いて30分間のバブリングを行った。
【0655】
≪2,6tip2Pyの酸化反応特性の測定結果≫
2,6tip2Pyの測定結果を図41に示す。また、リファレンスとして脱水であるN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)と過塩素酸テトラ-n-ブチルアンモニウム(n-BuNClO)との混合溶液の測定結果を図34に示す。
【0656】
測定の結果、行きの走査では、0.47V付近に2,6tip2Py由来の酸化ピークを確認した。一方、戻りの走査では2,6tip2Py由来の明確な還元ピークは検出されなかった。
【0657】
また、戻りのピークの有無は、上述の式(1)の式を満たす場合に、戻りのピークが無く、行きの走査で生じた酸化反応は不可逆であると判断した。
【0658】
図41の結果より、行きの走査におけるピーク電位の電流値Ipaと、行きの走査における初期電位の電流値Ia0の差の絶対値は、13.7μAであった。また、戻りの走査における還元電流の最大値Ipcと戻りの走査で初期電位に戻った時の電流値Ic0との差の絶対値は、0.1μAであった。つまり、式(1)を満たすxの値は136となり、xの値は20以上であることがわかった。従って、2,6tip2Pyは、CVの酸化電位測定において、スキャン速度が1.0V/sの場合、戻りの走査においてピーク電位が確認できなかった。つまり本発明の一態様の有機化合物は、電子酸化に対して不可逆な材料であることがわかった。
【0659】
<発光デバイス1Cおよび発光デバイス1C-S(比較例):Dhbi2Pを用いたデバイス>
比較例である発光デバイス1Cおよび発光デバイス1C-Sに用いた有機化合物である2-[4-(1,3-ジメチル-2H-ベンゾイミダゾール-2-yl)フェニル]-1,3-ジメチル-2H-ベンゾイミダゾール(略称:Dhbi2P)の構造式を以下に示す。
【0660】
【化13】
【0661】
なお、発光デバイス1Cは、発光デバイス1Aと同様に図24に示すように、ガラス基板である基板900上に形成された第1の電極901上に、第1のEL層903、中間層905、第2のEL層904、第2の電極902が積層されたタンデム構造を有する。
【0662】
第1のEL層903は、正孔注入層910、第1の正孔輸送層911、第1の発光層912、及び第1の電子輸送層913、が順次積層された構造を有する。中間層905は、電子注入バッファ領域914と、電子リレー領域および電荷発生領域を含む層915を有する。また、第2のEL層904は、第2の正孔輸送層916、第2の発光層917、および第2の電子輸送層918、および電子注入層919が順次積層された構造を有する。
【0663】
また、発光デバイス1C-Sは、発光デバイス1Cのシングル構造であり、発光デバイス1Cから中間層の一部、および第2のEL層904を除いた構造を有する。つまり、発光デバイス1C-Sは、第1の電極と、第1の電極上の第1のEL層、第1のEL層上に電子注入バッファ領域914に相当する電子注入層、電子注入層上に第2の電極が順次積層された構造である。
【0664】
≪発光デバイス1Cの作製方法≫
はじめに、ガラス基板である基板900上に、反射電極として、銀(Ag)とパラジウム(Pd)と銅(Cu)を含む合金をスパッタリング法により、100nmの膜厚で成膜した後、透明電極として酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法により、85nmの膜厚で成膜して第1の電極901を形成した。なお、その電極面積は4mm(2mm×2mm)とした。
【0665】
次に、第1のEL層903を設けた。まず、基板上に発光デバイス1Cを形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した。その後、1×10-4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った。その後、30分程度自然冷却させた。
【0666】
次に、第1の電極901が形成された面が下方となるように、第1の電極901が形成された基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、第1の電極901上に、抵抗加熱を用いた蒸着法によりPCBBiFと、分子量672でフッ素を含む電子アクセプタ材料(OCHD-003)と、をPCBBiF:OCHD-003=1:0.03(重量比)となるように10nm共蒸着し、正孔注入層910を形成した。
【0667】
次に、正孔注入層910上に、PCBBiFを膜厚70nmとなるように蒸着して、第1の正孔輸送層911を形成した。
【0668】
次に、第1の正孔輸送層911上に第1の発光層912を形成した。抵抗加熱を用いた蒸着法により、2-[4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-3,1’-ビフェニル-1-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mpPCBPDBq)と、PCBBiFと、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tBuppm))と、を2mpPCBPDBq:PCBBiF:Ir(tBuppm)=0.8:0.2:0.06(重量比)となるように、40nm共蒸着し、第1の発光層912を形成した。
【0669】
次に、第1の発光層912上に、2,9-ジ(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBPhen)を膜厚10nmとなるように蒸着し、第1の電子輸送層913を形成した。
【0670】
次に、中間層905を設けた。まず、第1の電子輸送層913上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、NBPhenと、Dhbi2Pと、をNBPhen:Dhbi2P=0.5:0.5(重量比)となるように、膜厚10nm共蒸着して、電子注入バッファ領域914となる層を形成した。
【0671】
続いて、電子リレー領域として、銅フタロシアニン(略称:CuPc)を2nmの膜厚となるように成膜した。次に、電荷発生領域として、抵抗加熱を用いた蒸着法によりPCBBiFと、分子量672でフッ素を含む電子アクセプタ材料(OCHD-003)と、をPCBBiF:OCHD-003=1:0.15(重量比)となるように10nm共蒸着し、電荷発生領域を含む層915を形成した。
【0672】
次に、第2のEL層904を設けた。まず、PCBBiFを膜厚40nmとなるように蒸着し、第2の正孔輸送層916を形成した。
【0673】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、2mpPCBPDBqと、PCBBiFと、Ir(tBuppm)と、を2mpPCBPDBq:PCBBiF:Ir(tBuppm)=0.8:0.2:0.06(重量比)となるように、40nm共蒸着し、第2の発光層917を形成した。
【0674】
次に、第2の発光層917上に、2mPCCzPDBqを膜厚10nmとなるように蒸着した後、NBPhenを膜厚10nmとなるように蒸着し、第2の電子輸送層918を形成した。
【0675】
ここで、発光デバイス1Cは、大気開放した後、膜厚30nmの酸化アルミニウム(略称:AlOx)膜を、ALD法を用いて成膜した後、インジウム、ガリウム、亜鉛を含む酸化物(略称:IGZO)を膜厚50nmになるようスパッタリング法にて成膜した。その後、フォトレジストを用いて、レジストを形成し、リソグラフィ法を用いて、当該IGZOを所定の形状に加工した。具体的には、3μmの幅を備えるスリットを、第1の電極901の端部から3.5μm離れた位置に形成した。
【0676】
次に、上記IGZOをマスクとして、酸化アルミニウム膜、第1のEL層903、中間層905、第2の正孔輸送層916、第2の発光層917、および第2の電子輸送層918からなる積層構造を所定の形状に加工した後、IGZO、および酸化アルミニウム膜を除去した。当該IGZO、及び酸化アルミニウム膜は、塩基性の薬液を用いたウェットエッチングにより、除去した。
【0677】
続いて、真空下にて、110℃で1時間の加熱処理を行った。当該加熱処理により、上述の加工処理、または大気暴露などにより付着した水分などを除去することができる。
【0678】
続いて、第2の電子輸送層918上に、フッ化リチウム(LiF)を膜厚1.0nmとなるように蒸着して、電子注入層919を形成した。
【0679】
次に、電子注入層919上に、Agと、Mgと、をAg:Mg=1:0.1(体積比)となるように、15nm共蒸着し、第2の電極902を形成した。なお、第2の電極902は光を反射する機能と光を透過する機能とを有する半透過・半反射電極である。
【0680】
その後、キャップ層として、DBT3P-IIを70nmの厚さで蒸着した。
【0681】
以上の工程により、大気開放を伴うMMLプロセスにて発光デバイス1Cを作製した。また、発光デバイス1Cのデバイス構造を以下の表にまとめた。
【0682】
【表5】
【0683】
≪発光デバイス1C-Sの作製方法≫
また、発光デバイス1C-Sは、発光デバイス1Cと同じ第1のEL層があり、第2のEL層がない、シングル構造である。したがって、発光デバイス1C-Sは、電子注入層に相当する電子注入バッファ領域914までは、発光デバイス1Cと同様に作成した。
【0684】
電子注入バッファ領域914(電子注入層)上に、Agと、Mgと、をAg:Mg=1:0.1(体積比)となるように、15nm共蒸着し、第2の電極902を形成した。なお、第2の電極902は光を反射する機能と光を透過する機能とを有する半透過・半反射電極である。
【0685】
その後、キャップ層として、DBT3P-IIを70nmの厚さで蒸着した。
【0686】
以上の工程により、大気開放を伴うMMLプロセスにて発光デバイス1C-Sを作製した。また、発光デバイス1C-Sのデバイス構造を以下の表にまとめた。
【0687】
【表6】
【0688】
≪発光デバイス1Cおよび発光デバイス1C-Sの特性≫
上記発光デバイス1Cを、窒素雰囲気のグローブボックス内において、デバイスが大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(シール材を素子の周囲に塗布し、封止時にUV処理、80℃にて1時間熱処理)を行った後、発光デバイス1Cを50mA/cmの電流密度で20時間駆動させた。その後、発光デバイス1Cの発光特性について測定を行った。
【0689】
発光デバイス1Cの輝度-電流密度特性を図42に、電流効率-輝度特性を図43に、輝度-電圧特性を図44に、電流効率-電流密度特性を図45に、電流密度-電圧特性を図46に、電界発光スペクトルを図47に示す。また、発光デバイス1Cおよび発光デバイス1C-Sの輝度1000cd/m2付近における主要な特性を下表に示す。なお、輝度、CIE色度、電界発光スペクトルの測定には分光放射計(トプコン社製、SR-UL1R)を用いた。
【0690】
【表7】
【0691】
図42乃至図46および上記表より、n-dopantとされているDhbi2Pを中間層に用いた発光デバイス1Cは、電流密度0.9mA/cmでの輝度、および電流効率が、シングル素子である発光デバイス1C-Sと同程度、最大電流効率でも104cd/Aとなり、タンデム型の発光デバイスとして機能していないことが分かった。これは、Dhbi2Pは後述のCV測定において電子酸化が可逆的であり、電子酸化(正孔状態)で水素カチオン(プロトン)を放出しにくいためと考えられる。そのため2,6tip2Pyを用いた電子注入バッファ領域の層は、電荷発生領域で生成した電子を第1の電子輸送層へ注入できていないと考えられる。その結果、発光デバイス1Cは、主に第2の発光層が発光しており、第1の発光層が発光していないと考えられる。
【0692】
また、図47に示すように、発光デバイス1Cの電界発光スペクトルにおいてピーク波長が550nm付近である緑色の発光を示した。
【0693】
≪Dhbi2Pの電気化学的特性(酸化反応特性)の評価≫
発光デバイス1Cに用いたDhbi2Pの電気化学特性を測定した。サンプル作成は、2’,7’tBu-2hppSF、または2,6tip2Pyと同様に、溶媒にDMFを用いて作成した。なお、測定方法は先に述べた≪電気化学的特性(酸化反応特性)の測定方法≫を参酌することができる。
【0694】
≪Dhbi2Pの酸化反応特性の測定結果≫
Dhbi2Pの測定結果を図48に示す。また、リファレンスとして脱水であるN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)と過塩素酸テトラ-n-ブチルアンモニウム(n-BuNClO)との混合溶液の測定結果である図34を参照する。
【0695】
Dhbi2Pの測定結果を図48に示す。測定の結果、行きの走査では、0.03V付近にDhbi2P由来の酸化ピークを確認した。また、戻りの走査ではDhbi2P由来の還元ピークは-0.09V付近に検出された。
【0696】
図48の結果より、行きの走査におけるピーク電位の電流値Ipaと、行きの走査における初期電位の電流値Ia0の差の絶対値は、17.8μAであった。戻りの走査におけるピーク電位の電流値Ipcと、戻りの走査で初期電位に戻った時の電流値Ic0の差の絶対値は、2.3μAであった。つまり、式(1)を満たすxの値は7以下となり、xが20未満であることがわかった。従って、Dhbi2Pは、CVの酸化電位測定において、スキャン速度が1.0V/sの場合、戻り走査においてピーク電位が確認された。つまりDhbi2Pは、電子酸化に対して可逆な材料であることがわかった。
【0697】
<本発明の一態様である発光デバイスに用いることができる有機化合物の電気化学的特性(酸化反応特性)の評価>
本発明の一態様である発光デバイスに用いることができる有機化合物である2-(1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-1-イル)-9-フェニル-1,10-フェナントロリン(略称:9Ph-2hppPhen)、および1-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(略称:2hppSF)の電気化学特性を測定した。具体的には、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定を用いて、参照電極に対する作用電極の電位を変化させることで得られる酸化電流ピーク電流(Ipa)、および還元電流ピーク電流(Ipc)を測定した。なお、測定方法は先に述べた≪電気化学的特性(酸化反応特性)の測定方法≫を参酌することができる。
【0698】
また、リファレンスとしては、脱水であるN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)と過塩素酸テトラ-n-ブチルアンモニウム(n-BuNClO)との混合溶液の測定結果である図34を参照する。
【0699】
≪各サンプル作成≫
本発明の一態様である発光デバイスに用いることができる有機化合物である9Ph-2hppPhen、および2hppSFは、脱水であるN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)((株)アルドリッチ製、99.8%)を用い、各サンプルを作成した。具体的に各サンプルは、溶媒として脱水であるN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)((株)アルドリッチ製、99.8%)を用い、支持電解質である過塩素酸テトラ-n-ブチルアンモニウム(n-BuNClO)((株)東京化成製)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象である9Ph-2hppPhen、2hppSF、またはDhbi2Pのいずれかを2mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した後、作成した溶液を、アルゴン(Ar)を用いて30分間のバブリングを行った。
【0700】
また、2hppSFを使用したサンプルとしては、上述したDMFを溶媒としたサンプル以外に、溶媒としてアセトニトリルを用いたサンプルを作成した。具体的には、溶媒としてアセトニトリルを用い、支持電解質である過塩素酸テトラ-n-ブチルアンモニウム(n-BuNClO)((株)東京化成製)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象である2’,7’tBu-2hppSFを2mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した後、作成した溶液を、アルゴン(Ar)を用いて30分間のバブリングを行った。
【0701】
≪9Ph-2hppPhenの酸化反応特性の測定結果≫
溶媒としてDMFを用いた9Ph-2hppPhenのサンプルの測定結果を図49に示す。測定の結果、行きの走査では、0.62V付近に9Ph-2hppPhen由来の酸化ピークを確認した。一方、戻りの走査では9Ph-2hppPhen由来の還元ピークは検出されなかった。なお初期電位は-0.3Vであった。
【0702】
図49の結果より、行きの走査におけるピーク電位の電流値Ipaと、行きの走査における初期電位の電流値Ia0の差の絶対値は、17.6μAであった。また、戻りの走査における電流の最大値Ipcと、戻りの走査で初期電位に戻った時の電流値Ic0との差の絶対値は、0.0μAであった(還元電流の最大値の電位が、初期電位の電位であった)。つまり、式(1)を満たすxの値は無限大となった。従って、xは20以上であることがわかり、9Ph-2hppPhenは、CVの酸化電位測定において、スキャン速度が1.0V/sの場合、戻りの走査においてピーク電位が確認できなかった。つまり本発明の一態様の有機化合物である9Ph-2hppPhenは、電子酸化に対して不可逆な材料であることがわかった。
【0703】
≪2hppSFの酸化反応特性の測定結果≫
2hppSFの測定結果は、溶媒としてDMFを用いた測定結果を図50、また溶媒としてアセトニトリルを用いた測定結果を図51に示す。
【0704】
図50に示した様に、溶媒にDMFを用いた測定の結果、行きの走査では、0.47V付近に2hppSF由来の酸化ピークを確認した。一方、戻りの走査では2hppSF由来の還元ピークは検出されなかった。なお初期電位は-0.4Vであった。
【0705】
図50の結果より、行きの走査におけるピーク電位の電流値Ipaと、行きの走査における初期電位の電流値Ia0の差の絶対値は、19.3μAであった。また、戻りの走査におけるピーク電位の電流値Ipcと、戻りの走査で初期電位に戻った時の電流値Ic0との差の絶対値は、0.0μAであった(還元電流の最大値の電位が、初期電位の電位であった)。つまり、式(1)を満たすxの値は無限大となり、xが20以上であることがわかった。従って、2hppSFは、CVの酸化電位測定において、スキャン速度が1.0V/sの場合、戻り走査においてピーク電位が確認できなかった。つまり本発明の一態様の有機化合物は、電子酸化に対して不可逆な材料であることがわかった。
【0706】
また、図51に示した様に、溶媒にアセトニトリルを用いた測定の結果、行きの走査では、0.53V付近に2hppSF由来の酸化ピークを確認した。一方、戻りの走査では2hppSF由来の還元ピークは検出されなかった。なお初期電位は0.0Vであった。
【0707】
図51の結果より、行きの走査におけるピーク電位の電流値Ipaと、行きの走査における初期電位の電流値Ia0の差の絶対値は、15.6μAであった。また、戻りの走査におけるピーク電位の電流値Ipcと、戻りの走査で初期電位に戻った時の電流値Ic0との差の絶対値は、0.0μAであった(還元電流の最大値の電位が、初期電位の電位であった)。つまり、式(1)を満たすxの値は無限大となり、xは20未満であることがわかった。従って、2hppSFは、CV測定において、スキャン速度が1.0V/sの場合、戻り走査におけるピーク電位が確認できなかった。
【0708】
つまり、図50、および図51より、本発明の一態様の有機化合物である2hppSFは、電子酸化に対して不可逆な材料であることがわかった。
【0709】
<電気化学的特性(酸化反応特性)の測定結果>
2’,7’tBu-2hppSFの測定結果である図32、2,6tip2Pyの測定結果である図41、9Ph-2hppPhenの測定結果である図49、2hppSFの測定結果である図50、および比較例のDhbi2Pの測定結果である図48より、溶媒にDMFを用いた、2’,7’tBu-2hppSF、2,6tip2Py、9Ph-2hppPhen、および2hppSFの各有機化合物の測定結果について、行きの走査におけるピーク電位の電流値Ipaと、行きの走査における初期電位の電流値Ia0の差の絶対値、また、戻りの走査におけるピーク電位Ipcと戻りの走査で初期電位に戻った時の電流値Ic0との差の絶対値を下表に示す。単位はμAである。これら本発明の一態様の発光デバイスに用いることができる有機化合物について、上記式(1)のxの値が20以上、より好ましくは50以上を満たすことを確認した。
【0710】
【表8】
【0711】
また、2’,7’tBu-2hppSF、および2hppSFの、溶媒にアセトニトリルを用いた測定結果について、行きの走査におけるピーク電位の電流値Ipaと、行きの走査における初期電位の電流値Ia0の差の絶対値と、戻りの走査におけるピーク電位Ipcと戻りの走査で初期電位に戻った時の電流値Ic0との差の絶対値を下表に示す。単位はμAである。これら本発明の一態様の発光デバイスに用いることができる有機化合物について、上記式(1)のxの値が20以上、より好ましくは50以上を満たすことを確認した。この様に、溶媒を変えても、不可逆な電子酸化反応であり、同様の結果が得られることを確認した。
【0712】
【表9】
【0713】
通常、発光デバイスなどに代表されるOLED素子には、電子酸化、または電子還元に対して、可逆な有機化合物を用いる。電子酸化、または電子還元に対して不可逆な有機化合物を用いた場合、劣化物(不可逆反応で生じた物質)が信頼性に影響すると考えられるためである。一方、本発明の一態様の発光デバイスに用いた有機化合物は、電子酸化に対して不可逆な反応を示した。
【0714】
また、2’,7’tBu-2hppSFをこの電子酸化反応を行った後にLC-MS測定を行ったところ、m/z 562、およびm/z 564の検出強度が増加していることが分かった。つまり本発明の一態様の発光デバイスに用いた有機化合物は、電子酸化する事で水素カチオン(プロトン)が解離しやすいと考えられる。
【0715】
また、2’,7’tBu-2hppSF、2,6tip2Py、および9Ph-2hppPhenを発光デバイスの中間層として用いた場合、当該発光デバイスは適切に駆動した。
【0716】
上記より、スキャン速度を1.0V/sとしたCVの酸化電位測定において、戻りの走査におけるピーク電位が確認できない、2’,7’tBu-2hppSF、2,6tip2Py、および9Ph-2hppPhenは、発光デバイスの中間層として用いることで、良好な発光デバイスを提供することができた。
【実施例0717】
本実施例では、本発明の一態様である発光デバイスに用いることができる有機化合物である1-(2’,7’-ジ-tert-ブチル-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(略称:2’,7’tBu-2hppSF)が、通電による変化を、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC ;Ultra High Performance Liquid Chromatography)法を用いて分析した。また、2’,7’tBu-2hppSFの構造式を下記に示す。
【0718】
【化14】
【0719】
<2’,7’tBu-2hppSFのLC-MS測定>
測定に使用する溶媒は、極性溶媒であるN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)とし、吸湿しやすいため超脱水(富士フィルム和光純薬(株)、製品番号:043-32361)を用いた。電解質には、過塩素酸テトラ-n-ブチルアンモニウム(東京化成工業(株)、製品番号:T0836)を用いた。
【0720】
測定装置は、ビー・エー・エス株式会社の電気化学測定装置ALS600Aを用いて、参照電極には銀-銀イオン参照電極、作用電極には白金電極、補助電極には白金電極を用いた3電極法にて測定を行った。作用電極の白金(Pt)電極の径は3. 0mmΦのものを使用した。
【0721】
溶液調整は、第1のサンプルと同様、測定材料2’,7’tBu-2hppSFの濃度が2mmol/Lになるように調整した。調整した溶液のうち、1mLをあらかじめ遮光瓶に保管してリファレンス溶液(サンプル2A)とした。調整した溶液のうち4mLを測定溶液として、CV測定用のセルに入れて、上記3電極をセットし30分間不活性ガス(Arガス)にてバブリング処理を行い、CV測定を始めた。
【0722】
CV酸化電位測定では、まず初期電位から、1.5Vまでの広範囲にて測定を行った。4セグメント(2サイクル)測定を行い、1~2セグメント(1サイクル目)のデータは電極などに由来するピーク電位が観測されやすいなどの理由から、3~4セグメント(2サイクル目)のデータを採用した。上記CV酸化電位測定の結果、0.4V(vs. Ag/Ag)に行きの走査におけるピーク電位が観測されたが、戻りの走査におけるピーク電位が観測されず、電子酸化に対して不可逆な波形が得られた。
【0723】
続けて、上記測定溶液4mLに所定の電位をかけながら、不活性ガス(Arガス)気流下にて攪拌し、電解酸化を行った。電解酸化の電位は、上記CV酸化電位測定結果より、行きの走査におけるピーク電位よりやや高い(+0.05V~+0.15V)、0.5V~0.6V(vs. Ag/Ag)の範囲をサイクルスキャンした。この時のスキャン速度は、0.1V/secとした。
【0724】
上記通電中に、上記測定溶液から数回サンプリングした。サンプリングの際は、サイクルスキャンを一時止め、サンプリングが終わったらサイクルスキャンを再開した。サンプリングの詳細を以下に示す。通電開始から、1.5時間後、3.0時間後、20.5時間後に、それぞれ0.05mLを取り出して遮光瓶に保管し、それぞれサンプル2B、サンプル2C、サンプル2Dとした。サンプルの一覧を下表に示す。
【0725】
【表10】
【0726】
上記通電前、通電後の計4サンプルを、アセトニトリルで10倍希釈してフィルターろ過したものを、液体クロマトグラフィー質量分析装置(LC-MS)にて分析を行った。なお、装置は、ACQUITY H-class(Waters製)、Xevo G2 TOF MS(Waters製)で構成され、カラムにはACQUITY UPLC HSS T3 1.8μm 2.1mm×100mm Column(Waters製、以下カラムと記す)を用いた。
【0727】
また、カラム温度は40℃とした。移動相は移動相Aをアセトニトリル、移動相Bを0.1%のギ酸水溶液とした。通電後の発光デバイスAの試料、および比較用の2’,7’tBu-2hppSFの単膜の試料の注入量は5μLとした。
【0728】
LC分離には移動相の組成を変化させるグラジエント法を用い、測定開始後0分から1分までが、移動相A:移動相B=50:50、その後組成を変化させ、25分における移動相Aと移動相Bとの比が移動相A:移動相B=67:23となるようにした。組成の変化はリニアに変化させた。
【0729】
フォトダイオードアレイ(PDA)の波長は、254nmを用いて分析を行った。
【0730】
<2’,7’tBu-2hppSFのLC-MS測定結果>
LC-MSのフォトダイオードアレイ(PDA)クロマトグラムを図52(A)に示す。また、フォトダイオードアレイ(PDA)クロマトグラムの吸収強度面積(ピーク面積ともいう)比率(各ピークの面積の合計を100%とした時の比率)-通電時間のグラフを図52(B)に示す。なお、図52(B)に示すように、m/z 566に由来するピーク(サンプル2A、サンプル2B、サンプル2Cはリテンションタイム12分付近のピーク、サンプル2Dは12.5分付近のピーク)のフォトダイオードアレイ(PDA)クロマトグラムのピーク面積比率、m/z 564に由来するピーク(サンプル2A、サンプル2B、サンプル2Cはリテンションタイム11.5分付近のピーク、サンプル2Dは11分から12分付近のピーク)のフォトダイオードアレイ(PDA)クロマトグラムのピーク面積比率をそれぞれプロットした。
【0731】
図52(B)より、通電することにより電子酸化反応が起こり、電解酸化反応時間が長くなるにつれm/z 566が減少し、また、m/z 564が増加することを確認した。また特に、通電後のサンプル2Dは、m/z 566由来のPDAピーク面積比率が56%に減少し、m/z 564由来のPDAピーク面積比率が42%へ増加しており、他に目立って大きな吸収ピークがみられなかった。したがって、2’,7’tBu-2hppSFが電子酸化することで、2’,7’tBu-2hppSFから水素が2個解離した化合物が生成していると考えられる。
【0732】
(参考合成例1)
本参考合成例では、下記構造式(102)として示した、2-(1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン-1-イル)-9-フェニル-1,10-フェナントロリン(略称:9Ph-2hppPhen)の合成方法について具体的に説明する。9Ph-2hppPhenの構造を以下に示す。
【0733】
【化15】
【0734】
<9Ph-2hppPhenの合成>
2-クロロ-9-フェニル-1,10-フェナントロリン6.1g(21mmol)、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン6.7g(48mmol)、トルエン100mLを200mL三口フラスコに入れ、窒素雰囲気下100℃で11時間攪拌した。所定時間経過後、反応溶液を濃縮し、固体にメタノールを加えて、吸引濾過し、不溶物を取り除いた。得られた濾液を濃縮後、トルエンを加えて加熱した。加熱した溶液を熱時濾過し、不溶物を取り除いた。得られた濾液を濃縮し、固体を得た。得られた固体に酢酸エチルを加えて、吸引濾過し、黄白色固体を5.3g、収率64%で得た。得られた固体5.0gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。圧力3.0Pa、アルゴン流量12mL/minの条件で、220℃で18時間加熱して行った。昇華精製後、黄白色固体を2.54g、回収率51%で得た。合成スキーム(s1-1)を以下に示す。
【0735】
【化16】
【0736】
なお、上記合成スキーム(s3-1)で得られた、9Ph-2hppPhenの黄白色固体のプロトン(H)を核磁気共鳴法(NMR)により測定した。以下に得られた値を示す。
【0737】
H NMR.δ(CDCl,500MHz):1.92-1.96(m,2H),2.16-2.21(m,2H),3.28-3.32(m,4H),3.49(t,J=5.73Hz,2H),4.34(t,J=5.73Hz,2H),7.46(t,J=7.45Hz,1H),7.55(d,J=7.45Hz,2H),7.61(d,J=8.59Hz,1H),7.68(d,J=8.59Hz,1H),7.97(d,J=9.16Hz,1H),8.06(d,J=8.02Hz,1H),8.17(d,J=9.16Hz,1H),8.25(d,J=8.02Hz,1H),8.39(d,J=6.87Hz,2H).
【符号の説明】
【0738】
100A:発光装置、100B:発光装置、100C:発光装置、100H:発光装置、101:第1の電極、101a:第1の電極、101b:第1の電極、102:第2の電極、103:有機化合物層、103a:有機化合物層、103B:有機化合物層、103b:有機化合物層、103Bf:有機化合物膜、103G:有機化合物層、103Gf:有機化合物膜、103R:有機化合物層、103Rf:有機化合物膜、104:共通層、110:副画素、110B:副画素、110G:副画素、110R:副画素、110W:副画素、111:正孔注入層、111a:正孔注入層、111b:正孔注入層、112:正孔輸送層、112_1:第1の正孔輸送層、112_2:第2の正孔輸送層、112a_1:第1の正孔輸送層、112a_2:第2の正孔輸送層、112B:導電層、112b_1:第1の正孔輸送層、112b_2:第2の正孔輸送層、112R:導電層、113:発光層、113_1:第1の発光層、113_2:第2の発光層、113a_1:第1の発光層、113a_2:第2の発光層、113b_1:第1の発光層、113b_2:第2の発光層、114:電子輸送層、114_1:第1の電子輸送層、114_2:第2の電子輸送層、114a_1:第1の電子輸送層、114a_2:第2の電子輸送層、114b_1:第1の電子輸送層、114b_2:第2の電子輸送層、115:電子注入層、116:中間層、116_1:第1の中間層、116_2:第2の中間層、116a:中間層、116b:中間層、117:電荷発生領域、117a:電荷発生領域、117b:電荷発生領域、118:電子リレー領域、118a:電子リレー領域、118b:電子リレー領域、119:電子注入バッファ領域、119a:電子注入バッファ領域、119b:電子注入バッファ領域、120:基板、122:樹脂層、124a:画素、124b:画素、125:無機絶縁層、125f:無機絶縁膜、126B:導電層、126R:導電層、127:絶縁層、127a:絶縁層、127f:絶縁膜、128:層、129B:導電層、129R:導電層、130:発光デバイス、130a:発光デバイス、130B:発光デバイス、130b:発光デバイス、130G:発光デバイス、130R:発光デバイス、131:保護層、132B:着色層、132G:着色層、132R:着色層、140:接続部、141:領域、142:接着層、151:導電層、151_1:導電層、151_2:導電層、151_3:導電層、151B:導電層、151C:導電層、151f:導電膜、151G:導電層、151R:導電層、152:導電層、152_1:導電層、152_2:導電層、152_3:導電層、152B:導電層、152C:導電層、152f:導電膜、152G:導電層、152R:導電層、153:絶縁層、155:共通電極、156:絶縁層、156B:絶縁層、156C:絶縁層、156f:絶縁膜、156G:絶縁層、156R:絶縁層、157:遮光層、158:犠牲層、158B:犠牲層、158Bf:犠牲膜、158G:犠牲層、158Gf:犠牲膜、158R:犠牲層、158Rf:犠牲膜、159B:マスク層、159Bf:マスク膜、159G:マスク層、159Gf:マスク膜、159R:マスク層、159Rf:マスク膜、166:導電層、171:絶縁層、172:導電層、173:絶縁層、174:絶縁層、175:絶縁層、176:プラグ、177:画素部、178:画素、179:導電層、190B:レジストマスク、190G:レジストマスク、190R:レジストマスク、191:レジストマスク、201:トランジスタ、204:接続部、205:トランジスタ、209:トランジスタ、210:トランジスタ、211:絶縁層、213:絶縁層、214:絶縁層、215:絶縁層、218:絶縁層、221:導電層、222a:導電層、222b:導電層、223:導電層、224B:導電層、224C:導電層、224G:導電層、224R:導電層、225:絶縁層、231:半導体層、231i:チャネル形成領域、231n:低抵抗領域、240:容量、241:導電層、242:接続層、243:絶縁層、245:導電層、254:絶縁層、255:絶縁層、256:プラグ、261:絶縁層、271:プラグ、280:表示モジュール、281:表示部、282:回路部、283:画素回路部、283a:画素回路、284:画素部、284a:画素、285:端子部、286:配線部、290:FPC、291:基板、292:基板、301:基板、310:トランジスタ、311:導電層、312:低抵抗領域、313:絶縁層、314:絶縁層、315:素子分離層、351:基板、352:基板、353:FPC、354:IC、355:配線、356:回路、501:第1の発光ユニット、501a:第1の発光ユニット、501b:第1の発光ユニット、502:第2の発光ユニット、502a:第2の発光ユニット、502b:第2の発光ユニット、503:第3の発光ユニット、700A:電子機器、700B:電子機器、721:筐体、723:装着部、727:イヤフォン部、750:イヤフォン、751:表示パネル、753:光学部材、756:表示領域、757:フレーム、758:鼻パッド、800A:電子機器、800B:電子機器、820:表示部、821:筐体、822:通信部、823:装着部、824:制御部、825:撮像部、827:イヤフォン部、832:レンズ、900:基板、901:第1の電極、902:第2の電極、903:第1のEL層、904:第2のEL層、905:中間層、910:正孔注入層、911:第1の正孔輸送層、912:第1の発光層、913:第1の電子輸送層、914:電子注入バッファ領域、915:層、916:第2の正孔輸送層、917:第2の発光層、918:第2の電子輸送層、919:電子注入層、1000:発光装置、6500:電子機器、6501:筐体、6502:表示部、6503:電源ボタン、6504:ボタン、6505:スピーカ、6506:マイク、6507:カメラ、6508:光源、6510:保護部材、6511:表示パネル、6512:光学部材、6513:タッチセンサパネル、6515:FPC、6516:IC、6517:プリント基板、6518:バッテリ、7000:表示部、7100:テレビジョン装置、7151:リモコン操作機、7171:筐体、7173:スタンド、7200:ノート型パーソナルコンピュータ、7211:筐体、7212:キーボード、7213:ポインティングデバイス、7214:外部接続ポート、7300:デジタルサイネージ、7301:筐体、7303:スピーカ、7311:情報端末機、7400:デジタルサイネージ、7401:柱、7411:情報端末機、8600:SGI、9000:筐体、9001:表示部、9002:カメラ、9003:スピーカ、9005:操作キー、9006:接続端子、9007:センサ、9008:マイクロフォン、9050:アイコン、9051:情報、9052:情報、9053:情報、9054:情報、9055:ヒンジ、9171:携帯情報端末、9172:携帯情報端末、9173:タブレット端末、9200:携帯情報端末、9201:携帯情報端末
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