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特開2024-152704インクジェット用硬化性組成物、硬化物付き基板及び硬化物付き基板の製造方法
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  • 特開-インクジェット用硬化性組成物、硬化物付き基板及び硬化物付き基板の製造方法 図1
  • 特開-インクジェット用硬化性組成物、硬化物付き基板及び硬化物付き基板の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152704
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】インクジェット用硬化性組成物、硬化物付き基板及び硬化物付き基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20241018BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20241018BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C09D11/30
B41M5/00 120
B41J2/01 501
B41J2/01 129
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024064575
(22)【出願日】2024-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2023064966
(32)【優先日】2023-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】本田 真澄
(72)【発明者】
【氏名】藤田 義人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 貴志
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2C056HA44
2H186AB11
2H186BA08
2H186DA18
2H186FB15
2H186FB34
2H186FB36
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
2H186FB48
2H186FB57
4J039AD21
4J039AE04
4J039BA04
4J039BE01
4J039BE22
4J039BE27
4J039CA01
4J039EA05
4J039EA06
4J039EA40
4J039EA43
4J039EA46
4J039FA01
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】アルカリ耐性を高め、かつ、基板と得られる硬化物との密着性を高めることができるインクジェット用硬化性組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、環化重合性化合物と、光硬化性官能基を有するウレタン化合物と、光重合開始剤と、着色剤とを含み、前記ウレタン化合物が、芳香族骨格を有する第1のウレタン化合物と、芳香族骨格を有さない第2のウレタン化合物とを含むか、又は、3個以下の光硬化性官能基を有しかつ芳香族骨格を有する第3のウレタン化合物と、4個以上の光硬化性官能基を有しかつ芳香族骨格を有する第4のウレタン化合物とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環化重合性化合物と、光硬化性官能基を有するウレタン化合物と、光重合開始剤と、着色剤とを含み、
前記ウレタン化合物が、芳香族骨格を有する第1のウレタン化合物と、芳香族骨格を有さない第2のウレタン化合物とを含むか、又は、3個以下の光硬化性官能基を有しかつ芳香族骨格を有する第3のウレタン化合物と、4個以上の光硬化性官能基を有しかつ芳香族骨格を有する第4のウレタン化合物とを含む、インクジェット用硬化性組成物。
【請求項2】
前記環化重合性化合物が、炭素-炭素二重結合を2個以上有する、請求項1に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項3】
前記環化重合性化合物が、アリルエーテル基を有する、請求項1又は2に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項4】
前記環化重合性化合物が、下記式(1)で表される構造を有する、請求項1又は2に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【化1】

式(1)中、Rは炭素数1~200の有機基を表す。
【請求項5】
前記ウレタン化合物が、前記第1のウレタン化合物と、前記第2のウレタン化合物とを含み、
前記第1のウレタン化合物が、ポリオール骨格を有さない、請求項1又は2に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項6】
前記第1のウレタン化合物が、4個以上6個以下の光硬化性官能基を有する、請求項5に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項7】
前記第1のウレタン化合物の単独重合体のガラス転移温度が、-25℃以上75℃以下である、請求項5に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項8】
前記第2のウレタン化合物が、2個以上4個以下の光硬化性官能基を有しかつ脂肪族骨格を有する、請求項5に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項9】
前記第2のウレタン化合物の単独重合体のガラス転移温度が、-50℃以上110℃以下である、請求項5に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項10】
前記環化重合性化合物の含有量の、前記光硬化性官能基を有するウレタン化合物の含有量に対する重量比が、0.25以上1.25以下である、請求項1又は2に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項11】
インクジェット用硬化性組成物100重量%中、前記光重合開始剤の含有量が、4重量%以上10重量%以下である、請求項1又は2に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項12】
前記着色剤が、カーボンブラックを含む、請求項1又は2に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項13】
インクジェット用硬化性組成物100重量%中、前記着色剤の含有量が、0.5重量%以上2.0重量%以下である、請求項1又は2に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項14】
基板と、
前記基板の第1の表面上に配置された硬化物とを備え、
前記硬化物が、請求項1又は2に記載のインクジェット用硬化性組成物が硬化された硬化物である、硬化物付き基板。
【請求項15】
基板の第1の表面上に、請求項1又は2に記載のインクジェット用硬化性組成物をインクジェット印刷方式により塗布して、硬化性組成物塗布部を形成する工程と、
前記硬化性組成物塗布部を硬化させて、前記基板の前記第1の表面上に硬化物を形成する工程を備える、硬化物付き基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット装置を用いて塗布されて用いられるインクジェット用硬化性組成物に関する。また、本発明は、上記インクジェット用硬化性組成物を用いた硬化物付き基板、及び、上記インクジェット用硬化性組成物を用いる硬化物付き基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば半導体装置や弾性波装置等の種々の電子部品が用いられている。電子部品には、製造年月日及び製品のID等の製造情報を表す文字又は記号などが描かれたマーキング部が形成されることがある。マーキング部を形成する方法として、インクジェット装置を用いて、着色剤を含む組成物をインクジェット印刷方式により塗布する方法が用いられることがある。
【0003】
また、インクジェット印刷方式により塗布される硬化性組成物が知られている。例えば、下記の特許文献1には、(A)酸無水物、(B)環状エーテル基を有する液状の化合物、(C)光反応性希釈剤、及び(D)光重合開始剤を含有し、粘度が25℃で150mPa・s以下であるインクジェット用光硬化性・熱硬化性組成物が開示されている。
【0004】
また、熱硬化を行わず、光硬化のみを行うことが想定されたインクジェット印刷用の硬化性組成物が、下記の特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-068280号公報
【特許文献2】WO2019/189157A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インクジェット印刷方式により塗布される硬化性組成物が知られているが、マーキング部を形成する用途が想定されていないことが多い。
【0007】
特許文献1では、光硬化性化合物と、熱硬化性化合物とを併用することで、硬化物(マーキング部など)と基板(マーキング対象部など)との密着性をある程度高めることができる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のようなインクジェット用硬化性組成物を用いてマーキング部を形成する場合には、電子部品(基板)の表面上にインクジェット用硬化性組成物を塗布した後に、光硬化及び熱硬化の双方が必要である。インクジェット用硬化性組成物を電子部品(基板)の表面上に塗布した後、熱硬化した場合には、電子部品(基板)の一部の部材が劣化することがある。また、熱硬化を要しない製造方法と比べて、熱エネルギーによる環境負荷が懸念され、また、マーキング部の形成に時間がかかるという課題がある。さらに、従来のインクジェット用硬化性組成物では、PETフィルム等の樹脂層を表面に有しない電子部品(基板)に対しては、マーキング部と電子部品(基板)の表面上との密着性を十分に高めることができないという課題がある。また、硬化物と基板との密着性の問題は、マーキング部を形成する用途以外の用途でも生じる問題である。
【0009】
特許文献2に記載のインクジェット印刷用の硬化性組成物は、(A)環状骨格を有し、収縮率が10%未満である光重合性モノマーと、(B)25℃における粘度が100mPa・s以下であり、収縮率が10%以上20%以下である光重合性2官能モノマーと、(C)光重合開始剤とを含有する。
【0010】
特許文献2に記載の硬化性組成物を用いてインクジェット印刷する場合には、光硬化後にフラックスを除去する工程において、高温(例えば、60℃)のアルカリ溶液により、硬化性組成物の硬化物(マーキング部など)が分解され、硬化性組成物の硬化物(マーキング部など)が基板(マーキング対象部など)から剥離することがある。また、硬化性組成物の硬化物は、フラックスを除去する工程以外でも、アルカリ環境下にさらされることがある。
【0011】
従来のインクジェット用硬化性組成物では、高温のアルカリ溶液による分解を抑制し(高温等でのアルカリ耐性を高め)、かつ、基板と得られる硬化物との密着性を高めることは、困難である。
【0012】
本発明の目的は、アルカリ耐性を高め、かつ、基板と得られる硬化物との密着性を高めることができるインクジェット用硬化性組成物を提供することである。また、本発明の目的は、上記インクジェット用硬化性組成物を用いた硬化物付き基板、及び、上記インクジェット用硬化性組成物を用いる硬化物付き基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書において、以下のインクジェット用硬化性組成物、硬化物付き基板及び硬化物付き基板の製造方法を開示する。
【0014】
項1.環化重合性化合物と、光硬化性官能基を有するウレタン化合物と、光重合開始剤と、着色剤とを含み、前記ウレタン化合物が、芳香族骨格を有する第1のウレタン化合物と、芳香族骨格を有さない第2のウレタン化合物とを含むか、又は、3個以下の光硬化性官能基を有しかつ芳香族骨格を有する第3のウレタン化合物と、4個以上の光硬化性官能基を有しかつ芳香族骨格を有する第4のウレタン化合物とを含む、インクジェット用硬化性組成物。
【0015】
項2.前記環化重合性化合物が、炭素-炭素二重結合を2個以上有する、項1に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【0016】
項3.前記環化重合性化合物が、アリルエーテル基を有する、項1又は2に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【0017】
項4.前記環化重合性化合物が、下記式(1)で表される構造を有する、項1~3のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【0018】
【化1】
【0019】
式(1)中、Rは炭素数1~200の有機基を表す。
【0020】
項5.前記ウレタン化合物が、前記第1のウレタン化合物と、前記第2のウレタン化合物とを含み、前記第1のウレタン化合物が、ポリオール骨格を有さない、項1~4のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【0021】
項6.前記第1のウレタン化合物が、4個以上6個以下の光硬化性官能基を有する、項5に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【0022】
項7.前記第1のウレタン化合物の単独重合体のガラス転移温度が、-25℃以上75℃以下である、項5に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【0023】
項8.前記第2のウレタン化合物が、2個以上4個以下の光硬化性官能基を有しかつ脂肪族骨格を有する、項5に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【0024】
項9.前記第2のウレタン化合物の単独重合体のガラス転移温度が、-50℃以上110℃以下である、項5に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【0025】
項10.前記環化重合性化合物の含有量の、前記光硬化性官能基を有するウレタン化合物の含有量に対する重量比が、0.25以上1.25以下である、項1~9のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【0026】
項11.インクジェット用硬化性組成物100重量%中、前記光重合開始剤の含有量が、4重量%以上10重量%以下である、項1~10のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【0027】
項12.前記着色剤が、カーボンブラックを含む、項1~11のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【0028】
項13.インクジェット用硬化性組成物100重量%中、前記着色剤の含有量が、0.5重量%以上2.0重量%以下である、項1~12のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【0029】
項14.基板と、前記基板の第1の表面上に配置された硬化物とを備え、前記硬化物が、項1~13のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物が硬化された硬化物である、硬化物付き基板。
【0030】
項15.基板の第1の表面上に、項1~13のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物をインクジェット印刷方式により塗布して、硬化性組成物塗布部を形成する工程と、前記硬化性組成物塗布部を硬化させて、前記基板の前記第1の表面上に硬化物を形成する工程を備える、硬化物付き基板の製造方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、環化重合性化合物と、光硬化性官能基を有するウレタン化合物と、光重合開始剤と、着色剤とを含む。本発明に係るインクジェット用硬化性組成物では、上記ウレタン化合物が、上記第1のウレタン化合物と、上記第2のウレタン化合物とを含むか、又は、上記第3のウレタン化合物と、上記第4のウレタン化合物とを含む。本発明に係るインクジェット用硬化性組成物では、上記の構成が備えられているので、アルカリ耐性を高め、かつ、基板と得られる硬化物との密着性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る硬化物付き基板を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態に係る硬化物付き基板を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0034】
(インクジェット用硬化性組成物)
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物(以下、「硬化性組成物」と略記することがある)は、インクジェット装置を用いて塗布されて用いられる。本発明に係る硬化性組成物は、スクリーン印刷により塗布される硬化性組成物とは異なり、ディスペンサーにより塗布される硬化性組成物とは異なる。
【0035】
本発明に係る硬化性組成物は、(A)環化重合性化合物と、(B)光硬化性官能基を有するウレタン化合物((B)ウレタン化合物)と、(C)光重合開始剤と、(D)着色剤とを含む。
【0036】
本発明に係る硬化性組成物では、(B)ウレタン化合物が、(B1)芳香族骨格を有する第1のウレタン化合物((B1)第1のウレタン化合物)と、(B2)芳香族骨格を有さない第2のウレタン化合物((B2)第2のウレタン化合物)とを含んでいてもよい。本発明に係る硬化性組成物では、(B)ウレタン化合物が、(B3)3個以下の光硬化性官能基を有しかつ芳香族骨格を有する第3のウレタン化合物((B3)第3のウレタン化合物)と、(B4)4個以上の光硬化性官能基を有しかつ芳香族骨格を有する第4のウレタン化合物((B4)第4のウレタン化合物)とを含んでいてもよい。本発明に係る硬化性組成物では、(B)ウレタン化合物が、(B1)第1のウレタン化合物と、(B2)第2のウレタン化合物とを含むか、又は、(B3)第3のウレタン化合物と、(B4)第4のウレタン化合物とを含む。
【0037】
(B3)第3のウレタン化合物、及び(B4)第4のウレタン化合物は、芳香族骨格を有するので、(B1)第1のウレタン化合物である。本発明に係る硬化性組成物が、(B1)第1のウレタン化合物と(B2)第2のウレタン化合物とを含む場合に、(B1)第1のウレタン化合物が、(B3)第3のウレタン化合物、又は(B4)第4のウレタン化合物を含んでいてもよく、(B3)第3のウレタン化合物と(B4)第4のウレタン化合物とを含んでいてもよい。すなわち、本発明に係る硬化性組成物では、(B)ウレタン化合物が、(B3)第3のウレタン化合物と(B2)第2のウレタン化合物とを含んでいてもよく、(B4)第4のウレタン化合物と(B2)第2のウレタン化合物とを含んでいてもよい。
【0038】
(B1)第1のウレタン化合物、(B2)第2のウレタン化合物、(B3)第3のウレタン化合物、及び(B4)第4のウレタン化合物は、光硬化性官能基を有するウレタン化合物である。(B1)第1のウレタン化合物、(B2)第2のウレタン化合物、(B3)第3のウレタン化合物、及び(B4)第4のウレタン化合物は、光硬化性官能基を有する。
【0039】
従来のインクジェット用硬化性組成物では、高温のアルカリ溶液による分解を抑制し(高温アルカリ耐性を高め)、かつ、基板と得られる硬化物との密着性を高めることは、困難である。
【0040】
一方、本発明に係る硬化性組成物では、上記の構成が備えられているので、アルカリ耐性を高め、かつ、基板と得られる硬化物との密着性を高めることができる。硬化物がアルカリ環境下にさらされる可能性があったり、基板と硬化物とが密着されたりする様々な用途において、本発明に係る硬化性組成物を用いることで、本発明の効果を発揮することができる。
【0041】
また、本発明に係る硬化性組成物では、上記の構成が備えられているので、高温アルカリ耐性を高めることもできる。
【0042】
また、本発明に係る硬化性組成物では、熱硬化性化合物を添加しない場合にも、又は熱硬化性化合物を少量添加した場合にも、基板と得られる硬化物との密着性を高めることができる。本発明に係る硬化性組成物では、熱硬化性化合物の添加を要しないため、熱硬化により電子部品の一部の部材が劣化することを抑制することができる。また、熱硬化の熱エネルギーによる環境負荷を防止することができ、硬化物(マーキング部など)を短時間で形成することができる。
【0043】
上記硬化性組成物は、(B)光硬化性官能基を有するウレタン化合物を含むため、光硬化性組成物である。上記硬化性組成物は、光の照射により硬化させて用いられることが好ましい。
【0044】
以下、上記硬化性組成物に含まれる各成分の詳細を説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」と「メタクリロイル」との一方又は双方を意味し、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」と「メタクリレート」との一方又は双方を意味する。また、本明細書において、(メタ)アクリロイル基が有するCH=C(H又はCH)基は、ビニル基に含まれない。
【0045】
<(A)環化重合性化合物>
上記硬化性組成物は、(A)環化重合性化合物を含む。(A)環化重合性化合物は、環化重合可能な化合物である。(A)環化重合性化合物は、環化重合性基を有する。(A)環化重合性化合物は、環状骨格を有する重合体を形成可能である。(A)環化重合性化合物は、主鎖に環状骨格を有する重合体を形成可能であることが好ましい。
【0046】
(A)環化重合性化合物は、ラジカル重合により環化することが好ましい。(A)環化重合性化合物は、ラジカル重合により環状骨格を有する重合体を形成可能であることが好ましく、ラジカル重合により主鎖に環状骨格を有する重合体を形成可能であることがより好ましい。(A)環化重合性化合物では、環化しながらラジカル重合反応が進行することが好ましい。
【0047】
基板と得られる硬化物との密着性をより一層高める観点からは、(A)環化重合性化合物は、5員環構造又は6員環構造を形成可能であることが好ましく、5員環エーテル構造又は6員環エーテル構造を形成可能であることがより好ましい。基板と得られる硬化物との密着性をより一層高める観点からは、(A)環化重合性化合物は、5員環構造を形成可能であることが好ましい。
【0048】
基板と得られる硬化物との密着性をより一層高める観点からは、(A)環化重合性化合物は、光硬化性化合物(環化重合性光硬化性化合物)であることが好ましい。基板と得られる硬化物との密着性をより一層高める観点からは、(A)環化重合性化合物は、光硬化性官能基を有することが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、(A)環化重合性化合物は、光硬化性官能基及び環化重合性基を有する化合物であることが好ましい。(A)環化重合性化合物では、上記光硬化性官能基は、上記環化重合性基の一部であってもよく、上記環化重合性基の側鎖であってもよい。(A)環化重合性化合物では、上記光硬化性官能基と上記環化重合性基とは、一部の原子又は一部の骨格を共有していてもよい。
【0049】
(A)環化重合性化合物は、上記環化重合性基を、1個有していてもよく、2個有していてもよく、2個以上有していてもよく、3個以上有していてもよく、4個以上有していてもよく、5個以上有していてもよく、6個以上有していてもよい。(A)環化重合性化合物は、上記環化重合性基を、12個以下で有していてもよく、8個以下で有していてもよく、6個以下で有していてもよい。
【0050】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、(A)環化重合性化合物は、環化重合性基を1個有する光硬化性化合物を含むことが好ましい。上記硬化性組成物の光硬化性をより一層高める観点からは、(A)環化重合性化合物は、環化重合性基を2個以上有する光硬化性化合物を含むことが好ましい。
【0051】
(A)環化重合性化合物は、光硬化性官能基を1個以上有していてもよい。(A)環化重合性化合物における光硬化性官能基は、環化重合されない基であってもよく、(A)環化重合性化合物における光硬化性官能基は、環化後に環構造に含まれない基(環化後に環構造を構成しない基)であってもよい。(A)環化重合性化合物が光硬化性官能基を有する場合に、光硬化性官能基の数は特に限定されない。(A)環化重合性化合物は、光硬化性官能基を1個有していてもよく、光硬化性官能基を2個有していてもよく、光硬化性官能基を2個以上有していてもよく、光硬化性官能基を3個以上有していてもよく、光硬化性官能基を4個以上有していてもよく、光硬化性官能基を5個以上有していてもよい。(A)環化重合性化合物は、光硬化性官能基を10個以下有していてもよい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、(A)環化重合性化合物は、光硬化性官能基を1個有する光硬化性化合物を含むことが好ましい。上記硬化性組成物の光硬化性をより一層高める観点からは、(A)環化重合性化合物は、光硬化性官能基を2個以上有する光硬化性化合物を含むことが好ましい。
【0052】
上記環化重合性基、上記環化重合性基を含む基又は光硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、α-(アリルオキシメチル)アクリロイル基、及びビニル基等が挙げられる。
【0053】
環化重合性を高める観点からは、(A)環化重合性化合物の上記環化重合性基又は上記環化重合性基を含む基は、(メタ)アクリロイル基、又はα-(アリルオキシメチル)アクリロイル基であることが好ましい。上記硬化性組成物の光硬化性を高める観点からは、(A)環化重合性化合物の上記光硬化性官能基は、(メタ)アクリロイル基、又はα-(アリルオキシメチル)アクリロイル基であることが好ましい。環化重合性を高める観点、及び光硬化性を高める観点からは、(A)環化重合性化合物は、(メタ)アクリロイル基、又はα-(アリルオキシメチル)アクリロイル基を有することが好ましい。
【0054】
(A)環化重合性化合物は、(メタ)アクリロイル基、又はα-(アリルオキシメチル)アクリロイル基を1個有していてもよく、(メタ)アクリロイル基、又はα-(アリルオキシメチル)アクリロイル基を2個有していてもよく、(メタ)アクリロイル基、又はα-(アリルオキシメチル)アクリロイル基を2個以上有していてもよい。(A)環化重合性化合物は、(メタ)アクリロイル基、又はα-(アリルオキシメチル)アクリロイル基を3個以上有していてもよく、(メタ)アクリロイル基、又はα-(アリルオキシメチル)アクリロイル基を4個以上有していてもよく、(メタ)アクリロイル基、又はα-(アリルオキシメチル)アクリロイル基を5個以上有していてもよい。(A)環化重合性化合物は、(メタ)アクリロイル基、又はα-(アリルオキシメチル)アクリロイル基を10個以下有していてもよい。
【0055】
(A)環化重合性化合物は、単官能(メタ)アクリレート、又は単官能α-(アリルオキシメチル)アクリル酸であってもよく、多官能(メタ)アクリレート、又は多官能α-(アリルオキシメチル)アクリル酸であってもよい。環化重合性をより一層高め、光硬化性をより一層高める観点からは、(A)環化重合性化合物は、多官能(メタ)アクリレート、又は多官能α-(アリルオキシメチル)アクリル酸を含むことが好ましい。(A)環化重合性化合物は、二官能(メタ)アクリレート化合物、又は二官能α-(アリルオキシメチル)アクリル酸を含んでいてもよく、三官能(メタ)アクリレート化合物、又は三官能α-(アリルオキシメチル)アクリル酸を含んでいてもよい。(A)環化重合性化合物は、四官能(メタ)アクリレート化合物、又は四官能α-(アリルオキシメチル)アクリル酸を含んでいてもよく、五官能(メタ)アクリレート化合物、又は五官能α-(アリルオキシメチル)アクリル酸を含んでいてもよい。(A)環化重合性化合物は、六官能(メタ)アクリレート化合物、又は六官能α-(アリルオキシメチル)アクリル酸を含んでいてもよく、七官能以上の(メタ)アクリレート化合物、又は七官能以上のα-(アリルオキシメチル)アクリル酸を含んでいてもよい。(A)環化重合性化合物は、十官能以下の(メタ)アクリレート化合物、又は十官能以下のα-(アリルオキシメチル)アクリル酸を含んでいてもよい。
【0056】
上記単官能(メタ)アクリレート、又は単官能α-(アリルオキシメチル)アクリル酸としては、メチル-2-(アリルオキシメチル)アクリル酸、2-メトキシエチル-2-(アリルオキシメチル)アクリル酸、テトラヒドロフラン-2-イルメチル-2-(アリルオキシメチル)アクリル酸、2-フェノキシエチル-2-(アリルオキシメチル)アクリル酸、シクロヘキシル-2-(アリルオキシメチル)アクリル酸、及びイソボルニル-2-(アリルオキシメチル)アクリル酸等が挙げられる。
【0057】
上記二官能(メタ)アクリレート、又は二官能α-(アリルオキシメチル)アクリル酸としては、トリプロピレングリコールジ-2-(アリルオキシメチル)アクリル酸、1,6-ヘキサンジオールジ-2-(アリルオキシメチル)アクリル酸、ネオペンチルグリコールジ-2-(アリルオキシメチル)アクリル酸、及びトリシクロデカンジメタノールジ-2-(アリルオキシメチル)アクリル酸等が挙げられる。
【0058】
上記三官能(メタ)アクリレート、又は三官能α-(アリルオキシメチル)アクリル酸としては、トリメチロールプロパントリ-2-(アリルオキシメチル)アクリル酸等が挙げられる。
【0059】
上記六官能(メタ)アクリレート、又は六官能α-(アリルオキシメチル)アクリル酸としては、ジペンタエリスリトールヘキサ-2-(アリルオキシメチル)アクリル酸等が挙げられる。
【0060】
基板と得られる硬化物との密着性をより一層高める観点からは、(A)環化重合性化合物は、炭素-炭素二重結合を2個以上有することが好ましい。(A)環化重合性化合物は、炭素-炭素二重結合を12個以下で有していてもよく、8個以下で有していてもよく、6個以下で有していてもよい。
【0061】
基板と得られる硬化物との密着性をより一層高める観点からは、(A)環化重合性化合物は、アリルエーテル基を有することが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、(A)環化重合性化合物では、上記環化重合性基は、アリルエーテル基であることが好ましい。
【0062】
基板と得られる硬化物との密着性をより一層高める観点からは、上記環化重合性基又は上記環化重合性基を含む基は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、又はα-(アリルオキシメチル)アクリロイル基であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基、又はα-(アリルオキシメチル)アクリロイル基であることがより好ましい。基板と得られる硬化物との密着性をより一層高める観点からは、上記光硬化性官能基は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、又はα-(アリルオキシメチル)アクリロイル基であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基、又はα-(アリルオキシメチル)アクリロイル基であることがより好ましい。基板と得られる硬化物との密着性をより一層高める観点からは、(A)環化重合性化合物は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、又はα-(アリルオキシメチル)アクリロイル基を有することが好ましく、(メタ)アクリロイル基、又はα-(アリルオキシメチル)アクリロイル基を有することがより好ましい。
【0063】
基板と得られる硬化物との密着性をより一層高める観点からは、(A)環化重合性化合物は、下記式(1)で表される構造を有することが好ましい。
【0064】
【化2】
【0065】
式(1)中、Rは炭素数1~200の有機基を表す。
【0066】
(A)環化重合性化合物が、上記式(1)で表される構造を有する場合には、(A)環化重合性化合物は、ラジカル重合により、主鎖に5員環エーテル構造を有する重合体を形成可能である。
【0067】
上記式(1)中、Rの炭素数は、1以上であり、200以下、好ましくは150以下、より好ましくは100以下である。上記式(1)中、Rはアルキル基であることが好ましい。上記式(1)中、Rは直鎖状アルキル基であってもよく、分岐鎖状アルキル基であってもよく、環状アルキル基であってもよい。上記式(1)中、Rはエーテル結合を含んでいてもよい。
【0068】
上記式(1)中、Rとしては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、フェニル基、ペンチル基、ビニル基、アリル基、クロチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、フェノキシエチル基、ビニルオキシエチル基、エポキシ基、イソボルニル基、アダマンチル基、ジシクロペンタジエニル基及びオキセタニル基等が挙げられる。
【0069】
インクジェット装置を用いて硬化性組成物を良好に吐出する観点からは、上記式(1)中、Rはメチル基又はエチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0070】
(A)環化重合性化合物は、脂環式骨格を有していてもよい。(A)環化重合性化合物は、脂環式骨格を有する環化重合性化合物であってもよい。(A)環化重合性化合物は、環化重合性基を有し、かつ、脂環式骨格を有していてもよい。
【0071】
上記脂環式骨格を有する環化重合性化合物としては、シクロヘキシル-2-(アリルオキシメチル)アクリル酸、イソボルニル-2-(アリルオキシメチル)アクリル酸、及びトリシクロデカンジメタノールジ-2-(アリルオキシメチル)アクリル酸等が挙げられる。
【0072】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、(A)環化重合性化合物は、メチル-2-(アリルオキシメチル)アクリル酸(すなわち、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル)を含むことが好ましい。
【0073】
上記インクジェット用硬化性組成物100重量%中、(A)環化重合性化合物の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下、より一層好ましくは65重量%以下、さらに好ましくは60重量%以下、さらに一層好ましくは55重量%以下、特に好ましくは50重量%以下、最も好ましくは45重量%以下である。(A)環化重合性化合物の含有量が上記下限以上であると、基板と得られる硬化物との密着性をより一層高めることができる。また、(A)環化重合性化合物の含有量が上記上限以下であると、高温等でのアルカリ耐性をより一層高めることができる。
【0074】
(A)環化重合性化合物が光硬化性官能基を有する場合に、光硬化性官能基を有する成分100重量%中、(A)環化重合性化合物の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下である。(A)環化重合性化合物の含有量が上記下限以上であると、基板と得られる硬化物との密着性をより一層高めることができる。また、(A)環化重合性化合物の含有量が上記上限以下であると、高温等でのアルカリ耐性をより一層高めることができる。
【0075】
(A)環化重合性化合物と(B)ウレタン化合物との合計の含有量100重量%中、(A)環化重合性化合物の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下である。(A)環化重合性化合物の含有量が上記下限以上であると、基板と得られる硬化物との密着性をより一層高めることができる。また、(A)環化重合性化合物の含有量が上記上限以下であると、高温等でのアルカリ耐性をより一層高めることができる。なお、(B)ウレタン化合物が、(B1)第1のウレタン化合物と、(B2)第2のウレタン化合物とを含む場合には、(B)ウレタン化合物の含有量は、(B1)第1のウレタン化合物と、(B2)第2のウレタン化合物との合計の含有量を示す。(B)ウレタン化合物が、(B3)第3のウレタン化合物と、(B4)第4のウレタン化合物とを含む場合には、(B)ウレタン化合物の含有量は、(B3)第3のウレタン化合物と、(B4)第4のウレタン化合物との合計の含有量を示す(以下同様)。
【0076】
<(B)光硬化性官能基を有するウレタン化合物>
上記硬化性組成物は、(B)光硬化性官能基を有するウレタン化合物を含む。(B)ウレタン化合物は、光硬化可能なウレタン化合物である。上記硬化性組成物では、(B)ウレタン化合物が、2種以上の光硬化性官能基を有するウレタン化合物を含む。上記硬化性組成物では、(B)ウレタン化合物が、以下の(B1)第1のウレタン化合物と、以下の(B2)第2のウレタン化合物とを含むか、又は、以下の(B3)第3のウレタン化合物と、以下の(B4)第4のウレタン化合物とを含む。
【0077】
(B1)(光硬化性官能基を有しかつ)芳香族骨格を有する第1のウレタン化合物
(B2)(光硬化性官能基を有しかつ)芳香族骨格を有さない第2のウレタン化合物
(B3)3個以下の光硬化性官能基を有しかつ芳香族骨格を有する第3のウレタン化合物
(B4)4個以上の光硬化性官能基を有しかつ芳香族骨格を有する第4のウレタン化合物
【0078】
基板と得られる硬化物との密着性をより一層高め、かつ高温等でのアルカリ耐性をより一層高める観点からは、(B)ウレタン化合物が、(B1)第1のウレタン化合物と、(B2)第2のウレタン化合物とを含むことが好ましい。(B)ウレタン化合物が、(B1)第1のウレタン化合物と、(B2)第2のウレタン化合物とを含む場合に、(B1)第1のウレタン化合物は、(B3)第3のウレタン化合物を含んでいてもよく、(B4)第4のウレタン化合物を含んでいてもよく、(B3)第3のウレタン化合物及び(B4)第4のウレタン化合物を含んでいてもよい。基板と得られる硬化物との密着性をより一層高め、かつ高温等でのアルカリ耐性をより一層高める観点からは、(B1)第1のウレタン化合物は、(B4)第4のウレタン化合物を含むことが好ましい。すなわち、基板と得られる硬化物との密着性をより一層高め、かつ高温等でのアルカリ耐性をより一層高める観点からは、(B)ウレタン化合物が、(B4)第4のウレタン化合物と、(B2)第2のウレタン化合物とを含むことが特に好ましい。
【0079】
上記光硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、及びビニル基等が挙げられる。
【0080】
光硬化性を高める観点からは、(B)ウレタン化合物((B1)第1のウレタン化合物、(B2)第2のウレタン化合物、(B3)第3のウレタン化合物、及び(B4)第4のウレタン化合物)の上記光硬化性官能基は、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。光硬化性を高める観点からは、(B)ウレタン化合物((B1)第1のウレタン化合物、(B2)第2のウレタン化合物、(B3)第3のウレタン化合物、及び(B4)第4のウレタン化合物)は、(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。光硬化性を高める観点からは、(B)ウレタン化合物((B1)第1のウレタン化合物、(B2)第2のウレタン化合物、(B3)第3のウレタン化合物、及び(B4)第4のウレタン化合物)は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
【0081】
(B)ウレタン化合物は、光硬化性官能基を1個有していてもよく、光硬化性官能基を2個有していてもよく、光硬化性官能基を2個以上有していてもよく、光硬化性官能基を3個以上有していてもよく、光硬化性官能基を4個以上有していてもよく、光硬化性官能基を5個以上有していてもよい。(B)ウレタン化合物は、光硬化性官能基を100個以下で有していてもよく、50個以下で有していてもよい。
【0082】
上記硬化性組成物100重量%中、(B)ウレタン化合物の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下である。(B)ウレタン化合物の含有量が上記下限以上であると、高温等でのアルカリ耐性をより一層高めることができる。(B)ウレタン化合物の含有量が上記上限以下であると、基板と得られる硬化物との密着性をより一層高めることができる。
【0083】
光硬化性官能基を有する成分100重量%中、(B)ウレタン化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下である。(B)ウレタン化合物の含有量が上記下限以上であると、高温等でのアルカリ耐性をより一層高めることができる。(B)ウレタン化合物の含有量が上記上限以下であると、基板と得られる硬化物との密着性をより一層高めることができる。
【0084】
(A)環化重合性化合物の含有量の、(B)ウレタン化合物の含有量に対する重量比((A)環化重合性化合物の含有量/(B)ウレタン化合物の含有量)は、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.35以上であり、好ましくは1.25以下、より好ましくは1.2以下、さらに好ましくは1.15以下である。上記重量比((A)環化重合性化合物の含有量/(B)ウレタン化合物の含有量)が上記下限以上であると、基板と得られる硬化物との密着性をより一層高めることができる。上記重量比((A)環化重合性化合物の含有量/(B)ウレタン化合物の含有量)が上記上限以下であると、高温等でのアルカリ耐性をより一層高めることができる。
【0085】
<(B1)芳香族骨格を有する第1のウレタン化合物>
(B1)第1のウレタン化合物は、光硬化性官能基を有しかつ芳香族骨格を有するウレタン化合物である。(B1)第1のウレタン化合物は、光硬化性官能基及び芳香族骨格を有するウレタン化合物である。(B1)第1のウレタン化合物は、芳香族骨格を有する光硬化可能なウレタン化合物である。(B1)第1のウレタン化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0086】
光硬化性をより一層高める観点からは、(B1)第1のウレタン化合物の光硬化性官能基は、好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上、さらに好ましくは4個以上であり、好ましくは8個以下、より好ましくは7個以下、さらに好ましくは6個以下である。光硬化性をより一層高める観点からは、(B1)第1のウレタン化合物は、4個以上6個以下の光硬化性官能基を有することが特に好ましく、4個以上6個以下の(メタ)アクリロイル基を有することが最も好ましい。
【0087】
なお、(B1)第1のウレタン化合物が、3個以下の光硬化性官能基を有する場合には、(B1)第1のウレタン化合物は(B3)第3のウレタン化合物であり、(B1)第1のウレタン化合物が、4個以上の光硬化性官能基を有する場合には、(B1)第1のウレタン化合物は(B4)第4のウレタン化合物である。(B4)第4のウレタン化合物は、光硬化性官能基を10個以下で有していてもよく、8個以下で有していてもよい。
【0088】
上記芳香族骨格としては、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、フェニル骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びビスフェノールA型骨格等が挙げられる。
【0089】
(B1)第1のウレタン化合物((B3)第3のウレタン化合物、及び(B4)第4のウレタン化合物)の上記芳香族骨格は、フェニル骨格であることが好ましい。(B1)第1のウレタン化合物((B3)第3のウレタン化合物、及び(B4)第4のウレタン化合物)は、フェニル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。(B1)第1のウレタン化合物((B3)第3のウレタン化合物、及び(B4)第4のウレタン化合物)が上記の好ましい態様を満足する場合には、基板と得られる硬化物との密着性をより一層高めることができる。
【0090】
上記フェニル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、市販品を使用することができ、例えば、EBECRYL220(ダイセル・オルネクス社製)、及びEBECRYL210(ダイセル・オルネクス社製)等が挙げられる。
【0091】
(B1)第1のウレタン化合物((B3)第3のウレタン化合物、及び(B4)第4のウレタン化合物)は、ポリオール骨格を有していてもよく、有さなくてもよい。高温等でのアルカリ耐性をより一層高める観点からは、(B1)第1のウレタン化合物((B3)第3のウレタン化合物、及び(B4)第4のウレタン化合物)は、ポリオール骨格を有さないことが好ましい。
【0092】
(B1)第1のウレタン化合物((B3)第3のウレタン化合物、及び(B4)第4のウレタン化合物)は、環状エーテル基を有していてもよく、有さなくてもよい。
【0093】
(B1)第1のウレタン化合物((B3)第3のウレタン化合物、及び(B4)第4のウレタン化合物)の単独重合体のガラス転移温度は、好ましくは-25℃以上、より好ましくは0℃以上、さらに好ましくは25℃以上であり、好ましくは75℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは65℃以下である。(B1)第1のウレタン化合物((B3)第3のウレタン化合物、及び(B4)第4のウレタン化合物)の単独重合体のガラス転移温度が上記下限以上及び上記上限以下であると、高温等でのアルカリ耐性をより一層高めることができる。
【0094】
(B1)第1のウレタン化合物((B3)第3のウレタン化合物、及び(B4)第4のウレタン化合物)の単独重合体のガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量測定により測定することができ、リバースヒートフローの変曲点から求めることができる。
【0095】
上記硬化性組成物100重量%中、(B1)第1のウレタン化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上であり、好ましくは75重量%以下、より好ましくは70重量%以下、さらに好ましくは65重量%以下である。(B1)第1のウレタン化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、基板と得られる硬化物との密着性をより一層高めることができる。なお、(B1)第1のウレタン化合物が、(B3)第3のウレタン化合物と、(B4)第4のウレタン化合物とを含む場合には、(B1)第1のウレタン化合物の含有量は、(B3)第3のウレタン化合物と、(B4)第4のウレタン化合物との合計の含有量を示す(以下同様)。
【0096】
(B)ウレタン化合物100重量%中、(B1)第1のウレタン化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下である。(B1)第1のウレタン化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、基板と得られる硬化物との密着性をより一層高めることができる。
【0097】
(A)環化重合性化合物の含有量100重量部に対して、(B1)第1のウレタン化合物の含有量は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、さらに好ましくは20重量部以上であり、好ましくは60重量部以下、より好ましくは50重量部以下、さらに好ましくは45重量部以下である。(B1)第1のウレタン化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、基板と得られる硬化物との密着性をより一層高めることができる。
【0098】
(B)ウレタン化合物100重量%中、(B3)第3のウレタン化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上であり、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは45重量%以下である。(B3)第3のウレタン化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、基板と得られる硬化物との密着性をより一層高めることができる。
【0099】
(B)ウレタン化合物100重量%中、(B4)第4のウレタン化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上であり、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは45重量%以下である。(B4)第4のウレタン化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、基板と得られる硬化物との密着性をより一層高めることができる。
【0100】
<(B2)芳香族骨格を有さない第2のウレタン化合物>
(B2)第2のウレタン化合物は、光硬化性官能基を有しかつ芳香族骨格を有さないウレタン化合物である。(B2)第2のウレタン化合物は、芳香族骨格を有さない光硬化可能なウレタン化合物である。(B2)第2のウレタン化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0101】
光硬化性をより一層高める観点からは、(B2)第2のウレタン化合物の光硬化性官能基は、好ましくは1個以上、より好ましくは2個以上であり、好ましくは6個以下、より好ましくは5個以下、さらに好ましくは4個以下である。光硬化性をより一層高める観点からは、(B2)第2のウレタン化合物は、2個以上6個以下の光硬化性官能基を有することが好ましく、2個以上6個以下の(メタ)アクリロイル基を有することがより好ましい。光硬化性をさらに一層高める観点からは、(B2)第2のウレタン化合物は、2個以上4個以下の光硬化性官能基を有することが特に好ましく、2個以上4個以下の(メタ)アクリロイル基を有することが最も好ましい。
【0102】
(B2)第2のウレタン化合物は、脂肪族骨格を有していてもよく、有さなくてもよい。基板と得られる硬化物との密着性をより一層高める観点からは、(B2)第2のウレタン化合物は、脂肪族骨格を有することが好ましい。基板と得られる硬化物との密着性をより一層高める観点からは、(B2)第2のウレタン化合物は、脂肪族骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
【0103】
光硬化性をより一層高め、高温等でのアルカリ耐性をより一層高める観点からは、(B2)第2のウレタン化合物は、2個以上4個以下の光硬化性官能基を有しかつ脂肪族骨格を有することが好ましく、2個以上4個以下の(メタ)アクリレート基を有しかつ脂肪族骨格を有することがより好ましい。
【0104】
上記脂肪族骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、市販品を使用することができ、例えば、EBECRYL4740(ダイセル・オルネクス社製)、EBECRYL4738(ダイセル・オルネクス社製)、及びEBECRYL4265(ダイセル・オルネクス社製)等が挙げられる。
【0105】
(B2)第2のウレタン化合物は、ウレタン結合とイソシアネート基との反応により形成されるアロファネート結合(-NH-CO-N-CO基)を有していてもよい。高温等でのアルカリ耐性をより一層高める観点からは、(B2)第2のウレタン化合物は、アロファネート結合を有するウレタン化合物を含むことが好ましい。
【0106】
上記アロファネート結合を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、市販品を使用することができ、例えば、EBECRYL4740(ダイセル・オルネクス社製)、及びEBECRYL4738(ダイセル・オルネクス社製)等が挙げられる。
【0107】
(B2)第2のウレタン化合物は、ポリオール骨格を有していてもよく、有さなくてもよい。高温等でのアルカリ耐性をより一層高める観点からは、(B2)第2のウレタン化合物は、ポリオール骨格を有さないことが好ましい。
【0108】
(B2)第2のウレタン化合物は、環状エーテル基を有していてもよく、有さなくてもよい。
【0109】
(B2)第2のウレタン化合物の単独重合体のガラス転移温度は、好ましくは-50℃以上、より好ましくは-25℃以上、さらに好ましくは0℃以上であり、好ましくは110℃以下、より好ましくは90℃以下、より一層好ましくは80℃以下、さらに好ましくは75℃以下、さらに一層好ましくは70℃以下、特に好ましくは65℃以下、最も好ましくは60℃以下である。(B2)第2のウレタン化合物の単独重合体のガラス転移温度が上記下限以上及び上記上限以下であると、高温等でのアルカリ耐性をより一層高めることができる。
【0110】
(B2)第2のウレタン化合物の単独重合体のガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量測定により測定することができ、リバースヒートフローの変曲点から求めることができる。
【0111】
上記硬化性組成物100重量%中、(B2)第2のウレタン化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上であり、好ましくは75重量%以下、より好ましくは70重量%以下、さらに好ましくは65重量%以下である。(B2)第2のウレタン化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、基板と得られる硬化物との密着性をより一層高めることができる。
【0112】
(B)ウレタン化合物100重量%中、(B2)第2のウレタン化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下である。(B2)第2のウレタン化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、基板と得られる硬化物との密着性をより一層高めることができる。
【0113】
(B1)第1のウレタン化合物の含有量100重量部に対して、(B2)第2のウレタン化合物の含有量は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上、さらに好ましくは30重量部以上であり、好ましくは200重量部以下、より好ましくは190重量部以下、さらに好ましくは180重量部以下である。(B2)第2のウレタン化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、基板と得られる硬化物との密着性をより一層高めることができる。
【0114】
(A)環化重合性化合物の含有量100重量部に対して、(B2)第2のウレタン化合物の含有量は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上、さらに好ましくは30重量部以上であり、好ましくは200重量部以下、より好ましくは180重量部以下、さらに好ましくは160重量部以下である。(B2)第2のウレタン化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、基板と得られる硬化物との密着性をより一層高めることができる。
【0115】
<(C)光重合開始剤>
上記硬化性組成物は、(C)光重合開始剤を含む。(C)光重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0116】
(C)光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤等が挙げられる。(C)光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0117】
上記光ラジカル重合開始剤は、光の照射によりラジカルを発生し、ラジカル重合反応を開始するための化合物である。
【0118】
上記光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン化合物;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン等のアルキルフェノン化合物;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン化合物;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアミノアセトフェノン化合物;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン等のアントラキノン化合物;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン化合物;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)-2-(o-ベンゾイルオキシム)]、エタノン、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(o-アセチルオキシム)等のオキシムエステル化合物;ビス(シクロペンタジエニル)-ジ-フェニル-チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ジ-クロロ-チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(ピロール-1-イル)フェニル)チタニウムなどのチタノセン化合物等が挙げられる。上記光ラジカル重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0119】
上記光ラジカル重合開始剤とともに、光重合開始助剤を用いてもよい。該光重合開始助剤としては、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン及びトリエタノールアミン等が挙げられる。これら以外の光重合開始助剤を用いてもよい。上記光重合開始助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0120】
また、可視光領域に吸収があるCGI-784等(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)のチタノセン化合物などを、光反応を促進するために用いてもよい。
【0121】
上記光カチオン重合開始剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、メタロセン化合物及びベンゾイントシレート等が挙げられる。上記光カチオン重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0122】
上記硬化性組成物100重量%中、(C)光重合開始剤の含有量は、好ましくは4重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは6重量%以上であり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは9重量%以下、さらに好ましくは8重量%以下である。(C)光重合開始剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、光硬化性をより一層高めることができることができる。
【0123】
光硬化性官能基を有する成分の含有量100重量部に対して、(C)光重合開始剤の含有量は、好ましくは6重量部以上、より好ましくは8重量部以上、さらに好ましくは10重量部以上であり、好ましくは35重量部以下、より好ましくは30重量部以下、さらに好ましくは25重量部以下である。(C)光重合開始剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、光硬化性をより一層高めることができる。(C)光重合開始剤の含有量が上記上限以下であると、基板と得られる硬化物との密着性をより一層高めることができる。
【0124】
(A)環化重合性化合物と(B)ウレタン化合物との合計の含有量100重量部に対して、(C)光重合開始剤の含有量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、さらに好ましくは15重量部以上であり、好ましくは45重量部以下、より好ましくは40重量部以下、さらに好ましくは35重量部以下である。(C)光重合開始剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、光硬化性をより一層高めることができる。(C)光重合開始剤の含有量が上記上限以下であると、基板と得られる硬化物との密着性をより一層高めることができる。
【0125】
(A)環化重合性化合物の含有量100重量部に対して、(C)光重合開始剤の含有量は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、さらに好ましくは20重量部以上であり、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、さらに好ましくは50重量部以下である。(C)光重合開始剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、光硬化性をより一層高めることができる。(C)光重合開始剤の含有量が上記上限以下であると、基板と得られる硬化物との密着性をより一層高めることができる。
【0126】
(B)ウレタン化合物の含有量100重量部に対して、(C)光重合開始剤の含有量は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、さらに好ましくは20重量部以上であり、好ましくは150重量部以下、より好ましくは100重量部以下、さらに好ましくは50重量部以下である。(C)光重合開始剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、光硬化性をより一層高めることができる。(C)光重合開始剤の含有量が上記上限以下であると、基板と得られる硬化物との密着性をより一層高めることができる。
【0127】
<(D)着色剤>
上記硬化性組成物は、(D)着色剤を含む。
【0128】
(D)着色剤としては、無機粒子、染料及び顔料等が挙げられる。(D)着色剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0129】
上記無機粒子としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、酸化鉄粒子、酸化亜鉛粒子、炭酸カルシウム粒子、アルミナ粒子、カオリンクレー粒子、珪酸カルシウム粒子、酸化マグネシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、水酸化アルミニウム粒子、炭酸マグネシウム粒子、タルク粒子、長石粉粒子、マイカ粒子、バライト粒子、炭酸バリウム粒子、酸化チタン粒子、シリカ粒子及びガラスビ-ズ等が挙げられる。上記無機粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0130】
上記染料としては、ピレン系染料、アミノケトン系染料、アントラキノン系染料、及びアゾ系染料等が挙げられる。上記染料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0131】
上記ピレン系染料としては、Solvent Green5(CAS79869-59-3)及びSolvent Green7(CAS6358-69-6)等が挙げられる。
【0132】
上記アミノケトン系染料としては、Solvent Yellow98(CAS12671-74-8)、Solvent Yellow85(CAS12271-01-1)、Solvent Red179(CAS8910-94-5)、及びSolvent Red135(CAS71902-17-5)等が挙げられる。
【0133】
上記アントラキノン系染料としては、Solvent Yellow163(CAS13676091-0)、Solvent Red207(CAS15958-69-6)、Disperse Red92(CAS12236-11-2)、Solvent Violet13(CAS81-48-1)、Disperse Violet31(CAS6408-72-6)、Solvent Blue97(CAS61969-44-6)、Solvent Blue45(CAS37229-23-5)、Solvent Blue104(CAS116-75-6)、及びDisperse Blue214(CAS104491-84-1)等が挙げられる。
【0134】
上記アゾ系染料としては、Solvent Yellow30(CAS3321-10-4)、Solvent Red164(CAS70956-30-8)、及びDisperse Blue146(CAS88650-91-3)等が挙げられる。
【0135】
上記顔料は、有機顔料であってもよく、無機顔料であってもよい。上記有機顔料は、金属原子を有する有機顔料であってもよく、金属原子を有さない有機顔料であってもよい。上記顔料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0136】
上記有機顔料としては、フタロシアニン化合物、キナクリドン化合物、アゾ化合物、ペンタフェン化合物、ペリレン化合物、インドール化合物、及びジオキサジン化合物等が挙げられる。
【0137】
インクジェット印刷濃度を高める観点から、(D)着色剤は、カーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックは、Fe、Niなどの金属不純物を含んでいてもよい。
【0138】
カーボンブラックとしては、ケッチェンブラックなどのオイルファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、及びサーマルブラック等が挙げられる。カーボンブラックは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0139】
カーボンブラックの一次粒子径は、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上であり、好ましくは75nm以下、より好ましくは70nm以下、さらに好ましくは55nm以下、特に好ましくは50nm以下である。カーボンブラックの一次粒子径が上記下限以上であると、カーンボンブラックの分散安定性を高めることができる。カーボンブラックの一次粒子径が上記上限以下であると、カーボンブラックの着色性が向上し、得られる硬化物(マーキング部など)の視認性をより一層高めることができる。
【0140】
カーボンブラックの一次粒子径は、平均一次粒子径であることが好ましく、該平均一次粒子径は数平均粒子径を示す。カーボンブラックの一次粒子径は、例えば、任意のカーボンブラック50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各カーボンブラックの一次粒子径の平均値を算出することや、レーザー回折式粒度分布測定を行うことにより求められる。
【0141】
カーボンブラックは、酸性であってもよく、中性であってもよく、塩基性であってもよい。カーボンブラックの分散安定性を高める観点からは、カーボンブラックは、酸性又は中性であることが好ましく、酸性であることがより好ましい。
【0142】
カーボンブラックのpHは、好ましくは1.0以上、より好ましくは3.0以上であり、好ましくは7.0以下、より好ましくは6.0以下、さらに好ましくは5.0以下、特に好ましくは4.0以下である。カーボンブラックのpHが上記下限以上及び上記上限以下であると、カーボンブラックの分散安定性を高めることができる。
【0143】
カーボンブラックの分散安定性を高める観点からは、カーボンブラックのDBP吸油量は、好ましくは10cm/100g以上、より好ましくは20cm/100g以上であり、好ましくは300cm/100g以下、より好ましくは200cm/100g以下である。
【0144】
カーボンブラックのDBP吸油量は、JIS K6217-4に準拠して測定することができる。カーボンブラックのDBP吸油量は、例えば、吸収量測定器(あさひ総研社製「S-500」)を用いて測定することができる。
【0145】
上記硬化性組成物100重量%中、(D)着色剤の含有量は、好ましくは0.4重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは0.6重量%以上であり、好ましくは2.0重量%以下、より好ましくは1.8重量%以下、さらに好ましくは1.6重量%以下である。(D)着色剤の含有量が上記下限以上であると、インクジェット印刷濃度を高めることができ、得られる硬化物(マーキング部など)の視認性を高めることができる。(D)着色剤の含有量が上記上限以下であると、(D)着色剤の分散安定性を高めることができる。
【0146】
上記硬化性組成物100重量%中、カーボンブラックの含有量は、好ましくは0.4重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは0.6重量%以上であり、好ましくは2.0重量%以下、より好ましくは1.8重量%以下、さらに好ましくは1.6重量%以下である。カーボンブラックの含有量が上記下限以上であると、インクジェット印刷濃度を高めることができ、得られる硬化物(マーキング部など)の視認性を高めることができる。カーボンブラックの含有量が上記上限以下であると、(D)着色剤の分散安定性を高めることができる。
【0147】
(A)環化重合性化合物と(B)ウレタン化合物との合計100重量部に対して、(D)着色剤の含有量は、好ましくは0.4重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上、さらに好ましくは0.6重量部以上であり、好ましくは2.0重量部以下、より好ましくは1.8重量部以下、さらに好ましくは1.6重量部以下である。(D)着色剤の含有量が上記下限以上であると、インクジェット印刷濃度を高めることができ、得られる硬化物(マーキング部など)の視認性を高めることができる。(D)着色剤の含有量が上記上限以下であると、(D)着色剤の分散安定性を高めることができる。
【0148】
<分散剤>
上記硬化性組成物は、分散剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0149】
(D)着色剤の分散安定性を高める観点から、上記硬化性組成物は、分散剤を含むことが好ましい。
【0150】
上記分散剤は、芳香族アミン、又は窒素原子を含む芳香族ヘテロ環化合物を含むことが好ましい。上記分散剤は、芳香族アミンを含んでいてもよく、窒素原子を含む芳香族ヘテロ環化合物を含んでいてもよい。窒素原子を含む芳香族ヘテロ環化合物は、塩の形態であってもよい。上記分散剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0151】
上記窒素原子を含む芳香族ヘテロ環化合物(窒素原子を含む芳香族複素環化合物)は、窒素原子を含む芳香族ヘテロ環を有する化合物である。上記窒素原子を含む芳香族ヘテロ環化合物は、芳香族ヘテロ環の骨格内に、窒素原子を含む。上記窒素原子を含む芳香族ヘテロ環化合物は、ヘテロ原子として、窒素原子を含む。上記窒素原子を含む芳香族ヘテロ環化合物は、窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。上記窒素原子を含む芳香族ヘテロ環化合物では、ヘテロ原子は、窒素原子のみであってもよく、窒素原子と窒素原子以外のヘテロ原子とであってもよい。
【0152】
上記窒素原子を含む芳香族ヘテロ環化合物中の芳香族ヘテロ環は、5員環であってもよく、6員環であってもよい。高温等でのアルカリ耐性をより一層高める観点からは、上記窒素原子を含む芳香族ヘテロ環化合物中の芳香族ヘテロ環は、5員環又は6員環であることが好ましい。上記窒素原子を含む芳香族ヘテロ環化合物は、芳香族ヘテロ環を1個有していてもよく、2個有していてもよく、2個以上有していてもよく、3個以上有していてもよく、10個以下で有していてもよく、8個以下で有していてもよく、5個以下で有していてもよい。上記窒素原子を含む芳香族ヘテロ環化合物中の芳香族ヘテロ環は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0153】
上記窒素原子を含む芳香族ヘテロ環化合物中の芳香族ヘテロ環としては、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、及びイソチアゾールなどの五員環芳香族ヘテロ環;ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、及びトリアジンなどの六員環芳香族ヘテロ環;キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、ブテリジン、ベンゾジアゼピン、インドール、ベンズイミダゾール、プリン、アクリジン、フェノキサジン、及びフェノチアジンなどの多環芳香族ヘテロ環等が挙げられる。上記窒素原子を含む芳香族ヘテロ環化合物は、ピリジン骨格を有する化合物であってもよく、ピロール骨格を有する化合物であってもよく、ピリミジン骨格を有する化合物であってもよく、インドール骨格を有する化合物であってもよく、及びイミダゾール骨格を有する化合物であってもよい。
【0154】
上記芳香族アミンとしては、アニリン、α-ナフチルアミン、m-フェニレンジアミン、1,8-ジアミノナフタレン、ベンジルアミン、N-メチルアニリン、N-メチルベンジルアミン、1,3-ジアミノトルエン、1,4-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノトルエン、3,5-ジエチル-2,4-ジアミノトルエン、3,5-ジエチル-2,6-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノアニソール、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-メチレン-ビス[2-クロロアニリン]、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス[4-[4-アミノフェノキシ]フェニル]プロパン、ビス[4-[4-アミノフェノキシ]フェニル]スルホン、1,3-ビス[4-アミノフェノキシ]ベンゼン、メチレンビス-(2-エチル-6メチルアニリン)、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、及び3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
【0155】
上記分散剤は、窒素原子を含む芳香族ヘテロ環化合物を含むことが好ましく、ピリジン骨格を有する化合物、ピロール骨格を有する化合物、又はピリミジン骨格を有する化合物を含むことがより好ましく、ピリジン骨格を有する化合物を含むことがさらに好ましい。上記分散剤が上記の好ましい態様を満足する場合には、(D)着色剤と上記分散剤との吸着作用をより一層高め、(D)着色剤の分散安定性を高めることができる。
【0156】
上記硬化性組成物では、上記分散剤が、ポリアクリル酸系分散剤であることが好ましい。上記硬化性組成物では、芳香族アミンがポリアクリル酸系分散剤であってもよく、窒素原子を含む芳香族ヘテロ環化合物がポリアクリル酸系分散剤であってもよく、窒素原子を含む芳香族ヘテロ環化合物の塩がポリアクリル酸系分散剤であってもよい。
【0157】
上記分散剤のアミン価は、好ましくは10KOHmg/g以上、より好ましくは20KOHmg/g以上、さらに好ましくは30KOHmg/g以上であり、好ましくは100KOHmg/g以下、より好ましくは90KOHmg/g以下、さらに好ましくは80KOHmg/g以下である。上記分散剤のアミン価が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性組成物のインクジェット装置内での循環安定性を高めることができる。
【0158】
上記分散剤の酸価は、好ましくは10KOHmg/g未満、より好ましくは8KOHmg/g以下、さらに好ましくは5KOHmg/g以下、最も好ましくは0KOHmg/gである。上記分散剤の酸価が上記上限未満(以下)であると、硬化性組成物のインクジェット装置内での循環安定性を高めることができる。上記分散剤の酸価は、0KOHmg/g以上であってもよく、5KOHmg/g以上であってもよい。
【0159】
上記硬化性組成物では、上記分散剤のアミン価が10KOHmg/g以上であり、かつ、上記分散剤の酸価が10KOHmg/g未満であることが好ましく、上記分散剤のアミン価が10KOHmg/g以上であり、かつ、上記分散剤の酸価が0KOHmg/gであることがより好ましい。上記分散剤のアミン価及び酸価が上記範囲内であると、硬化性組成物のインクジェット装置内での循環安定性を高めることができる。
【0160】
上記分散剤のアミン価は、JIS K7237に準拠して測定することができる。上記分散剤の酸価は、JIS K0070に準拠して測定することができる。
【0161】
上記硬化性組成物100重量%中、上記分散剤の含有量は、(D)着色剤を十分に分散させることができるように適宜設定することができ、特に限定されない。上記硬化性組成物100重量%中、上記分散剤の含有量は、0.3重量%以上であってもよく、0.4重量%以上であってもよく、0.6重量%以上であってもよく、5重量%以下であってもよく、3重量%以下であってもよく、1.5重量%以下であってもよい。
【0162】
(A)環化重合性化合物100重量部に対して、上記分散剤の含有量は、(D)着色剤を十分に分散させることができるように適宜設定することができ、特に限定されない。(A)環化重合性化合物100重量部に対して、上記分散剤の含有量は、0.1重量部以上であってもよく、0.2重量部以上であってもよく、0.3重量部以上であってもよく、2重量部以下であってもよく、1.9重量部以下であってもよく、1.8重量部以下であってもよい。
【0163】
(A)環化重合性化合物及び(B)ウレタン化合物の合計の含有量100重量部に対して、上記分散剤の含有量は、(D)着色剤を十分に分散させることができるように適宜設定することができ、特に限定されない。(A)環化重合性化合物及び(B)ウレタン化合物の合計の含有量100重量部に対して、上記分散剤の含有量は、0.1重量部以上であってもよく、0.2重量部以上であってもよく、0.3重量部以上であってもよく、2重量部以下であってもよく、1.9重量部以下であってもよく、1.8重量部以下であってもよい。
【0164】
上記分散剤の含有量の、(D)着色剤の含有量に対する重量比(分散剤の含有量/(D)着色剤の含有量)は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.0以下である。上記重量比(分散剤の含有量/(D)着色剤の含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性組成物のインクジェット装置内での循環安定性を高めることができる。
【0165】
<溶剤>
上記硬化性組成物は、溶剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記溶剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0166】
上記溶剤としては、有機溶剤等が挙げられる。
【0167】
基板と得られる硬化物との密着性をより一層高める観点からは、上記溶剤は、有機溶剤であることが好ましい。
【0168】
上記有機溶剤としては、エタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類、並びに石油エーテル、ナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。
【0169】
乾燥工程を不要にし、かつ、基板と得られる硬化物との密着性をより一層高める観点からは、上記硬化性組成物における溶剤の含有量は少ないほどよい。
【0170】
上記硬化性組成物は、上記硬化性組成物100重量%中、上記溶剤を5重量%以下の含有量で含むか、又は上記溶剤を含まないことが好ましい。上記硬化性組成物が上記溶剤を含む場合に、上記硬化性組成物100重量%中、上記溶剤の含有量は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。上記硬化性組成物は、上記溶剤を含まないことが最も好ましい。
【0171】
<他の成分>
上記硬化性組成物は、上述した成分以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、熱硬化性化合物、熱硬化剤、カップリング剤、硬化促進剤、難燃剤、フィラー、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、及び重合禁止剤等が挙げられる。
【0172】
上記硬化性組成物は、上記硬化性組成物100重量%中、上記熱硬化性化合物を5重量%以下の含有量で含むか、又は上記熱硬化性化合物を含まないことが好ましい。上記硬化性組成物が上記熱硬化性化合物を含む場合に、上記硬化性組成物100重量%中、上記熱硬化性化合物の含有量は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。上記硬化性組成物は、上記熱硬化性化合物を含まないことが最も好ましい。
【0173】
(インクジェット用硬化性組成物の他の詳細)
上記硬化性組成物は、インクジェット装置を用いて塗布されるので、一般に25℃で液状である。上記硬化性組成物の25℃及び10rpmでの粘度は、好ましくは3mPa・s以上、より好ましくは5mPa・s以上、より一層好ましくは10mPa・s以上、さらに好ましくは30mPa・s以上であり、好ましくは1000mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下、さらに好ましくは160mPa・s以下である。インクジェット装置を用いて硬化性組成物を良好に吐出する観点からは、上記硬化性組成物の25℃及び10rpmでの粘度は10mPa・s以上160mPa・s以下であることが特に好ましい。
【0174】
上記粘度は、JIS K2283に準拠して、E型粘度計(例えば、東機産業社製「TVE22L」)を用いて、25℃で測定される。
【0175】
上記硬化性組成物は、マーキング部、外装材又は隔壁を形成するために使用することができる。上記硬化性組成物は、マーキング部を形成するために用いられてもよく、外装材を形成するために用いられてもよく、隔壁を形成するために用いられてもよい。上記インクジェット用硬化性組成物は、インクジェット用マーキング材、インクジェット用外装材、インクジェット用隔壁形成材であることが好ましい。
【0176】
マーキング部による製造情報等を正確に表示することができるので、上記インクジェット用硬化性組成物は、インクジェット用マーキング材であることが好ましい。上記硬化性組成物は、マーキング部を形成するために用いられることが好ましく、電子部品におけるマーキング部を形成するために用いられることがより好ましい。なお、インクジェット印刷方式により塗布される硬化性組成物が知られているが、マーキング部を形成する用途が想定されていないことが多い。マーキング部を形成する用途が想定されていない硬化性組成物では、マーキング部による製造情報等を正確に表示するような課題自体が存在しない。従来のインクジェット用硬化性組成物では、マーキング部による製造情報等を正確に表示することは、困難である。本発明に係る硬化性組成物が、マーキング部を形成するために用いられる場合には、マーキング部による製造情報等を正確に表示することができる。
【0177】
硬化物及びマーキング部の視認性をより一層高める観点からは、上記硬化性組成物は、着色硬化性組成物であることが好ましく、黒色硬化性組成物であることが好ましい。
【0178】
(硬化物付き基板及び硬化物付き基板の製造方法)
本発明に係る硬化物付き基板は、基板と、上記基板の第1の表面上に配置された硬化物とを備える。上記硬化物付き基板では、上記硬化物が、上述したインクジェット用硬化性組成物が硬化された硬化物である。
【0179】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。なお、以下の図面において、大きさ、厚み、及び形状等は、図示の便宜上、実際の大きさ、厚み、及び形状等と異なる場合がある。
【0180】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る硬化物付き基板を模式的に示す断面図である。
【0181】
図1に示す硬化物付き基板1は、基板11と、基板11の第1の表面11a上に配置された硬化物12と、基板11の第1の表面11a上に配置された電子部品本体13とを備える。硬化物付き基板1では、硬化物12が、上述したインクジェット用硬化性組成物が硬化された硬化物である。本実施形態では、硬化物12は、マーキング部である。硬化物付き基板1は、電子部品である。
【0182】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る硬化物付き基板を模式的に示す断面図である。
【0183】
図2に示す硬化物付き基板1Aは、基板11Aと、基板11Aの第1の表面11Aa上に配置された硬化物12Aと、基板11Aの第1の表面11Aa上に配置された電子部品本体13Aとを備える。硬化物付き基板1Aは、硬化物12A(隔壁)の内壁面上に反射膜14Aをさらに備える。硬化物付き基板1Aでは、硬化物12Aが、上述したインクジェット用硬化性組成物が硬化された硬化物である。本実施形態では、硬化物12Aは、隔壁である。本実施形態では、電子部品本体13Aは、LEDチップである。硬化物付き基板1Aは、電子部品であり、LEDモジュールである。なお、硬化物付き基板は、反射膜を備えていなくてもよい。
【0184】
硬化物付き基板1Aでは、硬化物12A(隔壁)が、基板11Aの第1の表面11Aa上にて、電子部品本体13Aを囲むように配置されている。電子部品本体13Aの外側面と、硬化物12A(隔壁)の内側面とは間隔を隔てている。電子部品本体13Aの外側面と、硬化物12A(隔壁)の内側面との間には空間が存在する。硬化物12A(隔壁)は、電子部品本体13Aの表面上には配置(形成)されていない。電子部品本体13Aの上面は、硬化物12A(隔壁)により覆われていない。硬化物12A(隔壁)の形状は、枠状である。
【0185】
本発明に係る硬化物付き基板の製造方法は、以下の工程を備える。基板の第1の表面上に、上述したインクジェット用硬化性組成物をインクジェット印刷方式により塗布して、硬化性組成物塗布部を形成する工程(塗布工程)。上記硬化性組成物塗布部を硬化させて、上記基板の上記第1の表面上に硬化物を形成する工程(光硬化工程などの硬化工程)。
【0186】
上述した各工程を経て、図1,2に示す硬化物付き基板1,1Aを得ることができる。
【0187】
本発明に係る硬化物付き基板及び硬化物付き基板の製造方法では、上記の構成が備えられているので、アルカリ耐性を高め、かつ、基板と得られる硬化物との密着性を高めることができる。本発明に係る硬化物付き基板及び硬化物付き基板の製造方法では、上記の構成が備えられているので、高温アルカリ耐性を高めることもできる。
【0188】
上記硬化物付き基板は、電子部品であってもよい。上記硬化物付き基板は、上記第1の表面上に配置された電子部品本体を備えていてもよい。
【0189】
上記硬化物付き基板では、上記硬化物は、マーキング部であることが好ましい。上記マーキング部は、製造情報を含むことが好ましい。上記製造情報としては、製造年月日及び製品のID等が挙げられる。
【0190】
上記マーキング部は、文字、記号又は図形を含むことが好ましく、文字又は記号を含むことがより好ましい。上記マーキング部は、文字を含んでいてもよく、記号を含んでいてもよく、図形を含んでいてもよい。上記マーキング部は、文字、記号及び図形からなる群から選択された2以上の組み合わせを含んでいてもよい。また、上記図形としては、円形状、三角形状、四角形状及び点形状等の図形が挙げられる。上記マーキング部は、バーコード及び二次元コード等を有していてもよい。上記二次元コードとしては、QRコード(登録商標)等が挙げられる。
【0191】
硬化物の視認性をより一層高める観点からは、上記硬化物は、着色硬化物であることが好ましく、黒色硬化物であることが好ましい。マーキング部の視認性をより一層高める観点からは、上記マーキング部は、着色マーキング部であることが好ましく、黒色マーキング部であることが好ましい。
【0192】
上記硬化物付き基板では、上記硬化物は、隔壁であることが好ましい。
【0193】
上記硬化性組成物により、硬化物を隔壁として形成する場合に、上記隔壁の幅及び高さ等は、適宜変更可能である。
【0194】
上記隔壁の幅は、30μm以上であってもよく、50μm以上であってもよく、70μm以上であってもよく、1000μm以下であってもよく、800μm以下であってもよく、700μm以下であってもよい。
【0195】
上記電子部品本体がLEDチップである場合に、LEDチップから生じた光の取出効率をより一層高める観点からは、上記LEDチップの高さは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは50μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。
【0196】
上記電子部品本体がLEDチップである場合に、LEDチップから生じた光の取出効率をより一層高める観点からは、上記隔壁の高さは、好ましくは100μm以上、より好ましくは300μm以上、さらに好ましくは600μm以上であり、好ましくは3000μm以下、より好ましくは2000μm以下、さらに好ましくは1500μm以下である。
【0197】
上記電子部品本体がLEDチップである場合に、LEDチップから生じた光の取出効率をより一層高める観点からは、上記隔壁の高さは、上記LEDチップの高さより50μm以上高いことが好ましく、100μm以上高いことがより好ましく、200μm以上高いことがさらに好ましい。
【0198】
上記隔壁のアスペクト比(高さの幅に対する比(高さ/幅))は、好ましくは5以上、より好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上である。上記隔壁のアスペクト比(高さの幅に対する比(高さ/幅))は、100以下であってもよく、50以下であってもよく、25以下であってもよく、15以下であってもよい。
【0199】
上記基板は、透明部材であってもよく、透明部材でなくてもよい。上記基板としては、回路基板、及びシリコン基板等が挙げられる。
【0200】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0201】
以下の材料を用意した。なお、以下の材料中に記載のガラス転移温度は、材料の単独重合体のガラス転移温度である。
【0202】
(A)環化重合性化合物:
2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル(日本触媒社製「AOMA」、光硬化性官能基数2)
【0203】
(B)光硬化性官能基を有するウレタン化合物:
(B1)芳香族骨格を有する第1のウレタン化合物:
ウレタンアクリレートA(ダイセル・オルネクス社製「EBECRYL210」、(B3)3個以下の光硬化性官能基を有しかつ芳香族骨格を有する第3のウレタン化合物、光硬化性官能基数2、ポリオール骨格を有する、ガラス転移温度-19℃)
ウレタンアクリレートB(ダイセル・オルネクス社製「EBECRYL220」、(B4)4個以上の光硬化性官能基を有しかつ芳香族骨格を有する第4のウレタン化合物、光硬化性官能基数6、ポリオール骨格を有さない、ガラス転移温度49℃)
【0204】
(B2)芳香族骨格を有さない第2のウレタン化合物:
ウレタンアクリレートC(ダイセル・オルネクス社製「EBECRYL4740」、光硬化性官能基数3、脂肪族骨格及びアロファネート結合を有しかつポリオール骨格を有さない、ガラス転移温度35℃)
ウレタンアクリレートD(ダイセル・オルネクス社製「EBECRYL4738」、光硬化性官能基数3、脂肪族骨格及びアロファネート結合を有しかつポリオール骨格を有さない、ガラス転移温度105℃)
ウレタンアクリレートE(ダイセル・オルネクス社製「EBECRYL4265」、光硬化性官能基数3~4、脂肪族骨格を有しかつポリオール骨格を有さない、ガラス転移温度75℃)
ウレタンアクリレートF(ダイセル・オルネクス社製「KRM9465」、光硬化性官能基数2、脂肪族骨格を有しかつポリオール骨格を有する、ガラス転移温度-45℃)
ウレタンアクリレートG((ダイセル・オルネクス社製「EBECRYL1291」、光硬化性官能基数6、脂肪族骨格を有しかつポリオール骨格を有さない、ガラス転移温度80℃)
【0205】
他の光硬化性化合物:
1,9-ノナンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業社製「A-NOD-N」、二官能(メタ)アクリレート化合物、ガラス転移温度68℃)
【0206】
(C)光重合開始剤:
2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(IGM社製「Omnirad379」)
【0207】
(D)着色剤:
カーボンブラック(三菱ケミカル社製「MA14」、一次粒子径40nm、DBP吸油量67cm/100g、pH3.0)
【0208】
分散剤:
BASF社製「PX4701」(窒素原子を含む芳香族ヘテロ環化合物、アミン価40KOHmg/g、酸価0KOHmg/g)
【0209】
(実施例1~14及び比較例1~3)
表1~4に示す成分を、表1~4に示す配合量(重量%)で配合し、均一に混合して、インクジェット用硬化性組成物(硬化性組成物)を得た。
【0210】
(評価)
(1)高温アルカリ耐性
アルミニウム製基板の表面上に、得られた硬化性組成物を、紫外線照射装置付きピエゾ方式インクジェットプリンター(ヘッド温度:80℃)のインクジェットヘッドから吐出して塗工し、パターン状に描画した。基板の表面上に塗工された硬化性組成物(厚み20μm)に波長365nmの紫外線を、照射エネルギーが1000mJ/cmとなるように照射し、硬化物(マーキング部)を得た。硬化物(マーキング部)を有する基板を、60℃に加温したアルカリ溶液(pH9.5)に入れ、40kHzの超音波を10分間当てた。高温アルカリ耐性を、以下の基準で判定した。
【0211】
[高温アルカリ耐性の判定基準]
○○:マーキング部が全く剥離していない
○:マーキング部がわずかに剥離したが、マーキング内容を読み取ることができる
×:マーキング部がほとんど剥離し、マーキング内容を読み取ることができない
【0212】
(2)基板と得られる硬化物との密着性
アルミニウム製基板の表面上に、得られた硬化性組成物を、紫外線照射装置付きピエゾ方式インクジェットプリンター(ヘッド温度:60℃)のインクジェットヘッドから吐出して塗工し、パターン状に描画した。基板の表面上に塗工された硬化性組成物(厚み10μm)に波長365nmの紫外線を、照射エネルギーが1000mJ/cmとなるように照射し、硬化物(マーキング部)を得た。その後、硬化物(マーキング部)にセロハンテープ(JIS Z1522)を十分に貼りつけて、テープの一端を45度の角度で強く引き剥がして剥離状態を確認した。基板と得られる硬化物との密着性を、以下の基準で判定した。
【0213】
[基板と得られる硬化物との密着性の判定基準]
○○:マーキング部が全く剥離していない
○:マーキング部がわずかに剥離したが、マーキング内容を読み取ることができる
△:マーキング部が多く剥離したが、マーキング内容を読み取ることができる
×:マーキング部がほとんど剥離し、マーキング内容を読み取ることができない
【0214】
組成及び結果を下記の表1~4に示す。
【0215】
【表1】
【0216】
【表2】
【0217】
【表3】
【0218】
【表4】
【符号の説明】
【0219】
1,1A…硬化物付き基板(電子部品)
11,11A…基板
11a,11Aa…第1の表面
12…硬化物(マーキング部)
12A…硬化物(隔壁)
13,13A…電子部品本体
14A…反射膜
図1
図2