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  • 特開-電極導体絶縁部を有する電池セル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152714
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】電極導体絶縁部を有する電池セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/54 20210101AFI20241018BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20241018BHJP
   H01M 50/534 20210101ALI20241018BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20241018BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20241018BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20241018BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20241018BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20241018BHJP
【FI】
H01M50/54
H01M10/0585
H01M50/534
H01M50/533
H01M10/04 Z
H01M50/548 101
H01M50/103
H01M50/15
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024064775
(22)【出願日】2024-04-12
(31)【優先権主張番号】10 2023 203 411.5
(32)【優先日】2023-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】596107062
【氏名又は名称】フォルクスヴァーゲン アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
【住所又は居所原語表記】Berliner Ring 2, 38440 Wolfsburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス クウォチェク
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック グラウ
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA03
5H028AA07
5H028AA08
5H028BB04
5H028BB05
5H028BB15
5H028CC05
5H028CC08
5H028CC11
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL07
5H029AL11
5H029BJ12
5H029CJ03
5H029CJ05
5H029CJ28
5H029DJ02
5H029DJ03
5H029DJ05
5H029HJ12
5H043AA19
5H043BA11
5H043BA19
5H043CA04
5H043CA13
5H043EA01
5H043EA22
5H043EA60
5H043HA02E
5H043HA05E
5H043HA11E
5H043JA06E
5H043JA21E
5H043JA21F
5H043KA22E
5H043KA24E
5H043LA21E
5H043LA22E
(57)【要約】      (修正有)
【課題】個々の電極層の導体路が特に簡単に達成可能な形式でケーシングに対して絶縁された電池セル、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】電池セル(1)は、複数のアノード層(An)および対応する複数のカソード層(K)を有する層スタック(2)であって、アノード層(An)およびカソード層(K)が交互に重なり合うように積層されている。アノード導体路(4a)またはカソード導体路(4k)が束状に集束されて、集電体にコンタクト接続されており、絶縁層(IL)は、その第2の自由端部(E2)の箇所で、層スタック(2)から突出し、相互に延在する折り畳み部(24)を形成しながら相互に向き合うように配向されており、絶縁層(IL)は、第1のカバー(8)によって間接的に印加される圧力に対する、絶縁層(IL)のそれぞれの折り畳み部(24)のばね作用によって、所定の位置に保持されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セル(1)であって、
-複数のアノード層(An)および対応する複数のカソード層(K)を有する層スタック(2)であって、
-前記アノード層(An)および前記カソード層(K)が交互に重なり合うように積層されており、かつ各アノード層(An)と各カソード層(K)との間にそれぞれ1つのセパレータ層(S)が配置されており、
-少なくとも前記アノード層(An)のうちの幾つかおよび/または前記カソード層(K)の幾つかから成る前記層スタック(2)の少なくとも第1の端面(F1)において、アノード導体路(4a)またはカソード導体路(4k)が前記層スタック(2)から側方へガイドされている、
層スタック(2)と、
-前記アノード導体路(4a)または前記カソード導体路(4k)と共に前記層スタック(2)を包囲しており、かつ前記層スタック(2)の少なくとも前記第1の端面(F1)に内側アノード集電体(12a)または内側カソード集電体を有する第1のカバー(8)を有する、ケーシング(26)であって、
-前記アノード導体路(4a)または前記カソード導体路(4k)がそれぞれ束状に集束されて、それぞれ前記アノード集電体(12a)または前記カソード集電体にコンタクト接続されている、
ケーシング(26)と、
-第1の端部(E1)でそれぞれ前記層スタック(2)の上面(Fo)もしくは下面(Fu)に固定されている少なくとも2つの絶縁層(IL)と、
を含み、
-前記絶縁層(IL)は、その第2の自由端部(E2)の箇所で、それぞれ前記層スタック(2)から突出し、該第2の端部(E2)は、相互に延在する折り畳み部(24)を形成しながら相互に向き合うように配向されており、これにより、前記アノード導体路(4a)の束(6a)または前記カソード導体路の束がそれぞれ2つの折り畳み部(24)間で引き出されており、
-前記絶縁層(IL)は、前記第1のカバー(8)によって間接的に印加される圧力に対する、前記絶縁層(IL)のそれぞれの折り畳み部(24)のばね作用によって、所定の位置に保持されている、
電池セル(1)。
【請求項2】
前記ケーシング(26)は、
-前記層スタック(2)の前記第1の端面(F1)に、前記2つの絶縁層(IL)の折り畳み部(24)間で引き出された前記アノード導体路(4a)がコンタクト接続されている前記内側アノード集電体(12a)を有する、第1のカバーを有しており、
-前記層スタック(2)の前記第1の端面(F1)とは反対側の第2の端面に、前記第2の端面で前記層スタック(2)から側方へガイドされて、別の2つの絶縁層(IL)の折り畳み部間で引き出されたカソード導体路(4k)がコンタクト接続されている前記内側カソード集電体(12k)を有する、第2のカバーを有している、
請求項1記載の電池セル(1)。
【請求項3】
前記層スタック(2)の前記第1の端面(F1)における前記アノード導体路(4a)および前記カソード導体路(4k)は、前記アノード層または前記カソード層の延在方向に対して相互に平行にオフセットされた状態で、前記層スタック(2)から側方へガイドされており、
前記第1のカバー(8)は前記アノード集電体(12a)および前記カソード集電体を有しており、前記アノード集電体(12a)および前記カソード集電体において、前記アノード導体路(4a)および前記カソード導体路(4k)がそれぞれ、前記2つの絶縁層(IL)の折り畳み部(24)を通して引き出されることによってコンタクト接続されている、
請求項1記載の電池セル(1)。
【請求項4】
前記アノード導体路(4a)の束(6a)および/または前記カソード導体路(4k)の束が、前記層スタック(2)と前記第1のカバー(8)もしくは前記第2のカバーとの間に少なくとも1つのループ(22)を形成しており、
前記2つの絶縁層(IL)のうちの少なくとも1つが、前記ループ(22)内のその折り畳み部(24)の箇所でガイドされている、
請求項1または2記載の電池セル(1)。
【請求項5】
前記アノード導体路(4a)によって形成された束(6a)上の前記アノード集電体(12a)の領域にかつ/または前記カソード導体路(4k)によって形成された束上の前記カソード集電体の領域に、少なくとも1つの付加絶縁層が取り付けられている、請求項4記載の電池セル(1)。
【請求項6】
前記絶縁層(IL)は、それぞれポリオレフィンおよび/またはポリイミドから作製されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の電池セル(1)。
【請求項7】
電池セル(1)を製造する方法であって、
-複数のアノード層(An)および対応する複数のカソード層(K)を交互に積層して層スタック(2)を形成し、各アノード層(An)と各カソード層(K)との間にそれぞれ1つのセパレータ層(S)が配置され、
-少なくとも前記アノード層(An)のうちの幾つかおよび前記カソード層(K)のうちの幾つかにつき、それぞれアノード導体路(4a)またはカソード導体路(4k)を前記層スタック(2)から側方へガイドして束状に集束させ、さらに、前記電池セル(1)のケーシング(26)用の1つのカバー(8)もしくはそれぞれのカバーのアノード集電体(12a)もしくはカソード集電体にコンタクト接続させ、
-前記層スタック(2)が前記絶縁層(IL)から突出するように、前記層スタック(2)の上面(Fo)もしくは下面(Fu)にそれぞれ少なくとも1つの絶縁層(IL)を固定し、
-前記絶縁層(IL)の自由端部(E2)を、それぞれ折り畳み部(24)を形成しながら、上方からもしくは下方から、前記アノード導体路(4a)の束(6a)または前記カソード導体路(4k)の束へ向かってガイドし、
-前記カバー(8)またはそれぞれのカバーを前記層スタック(2)へ向かって押し付け、これにより、それぞれの前記折り畳み部(24)の向こう側で、前記絶縁層(IL)の自由端部(E2)に圧力を印加し、
-前記層スタック(2)を、押し付けられた前記カバー(8)と共に固定して、該固定の際または該固定の後に前記ケーシング(26)内に封入する、
方法。
【請求項8】
-まず、第1の端面(F1)において前記層スタック(2)からガイドされた前記アノード導体路(4a)または前記カソード導体路(4k)を束状に集束させ、前記ケーシング(26)用の第1のカバー(8)の対応するアノード集電体(12a)またはカソード集電体にコンタクト接続させ、
-前記第1のカバー(8)を前記層スタック(2)へ向かって押し付け、前記層スタック(2)を、押し付けられた前記カバー(8)によって固定し、
-続いて、前記層スタック(2)の前記第1の端面(F1)とは反対側の第2の端面からガイドされている前記アノード導体路(4a)または前記カソード導体路(4k)のそれぞれ別の導体路を束状に集束させ、さらに、前記ケーシング(26)用の第2のカバー内に配置された、前記アノード集電体(12a)または前記カソード集電体の対応するそれぞれ別の集電体にコンタクト接続させ、
-前記第2のカバーを前記層スタック(2)へ向かって押し付け、これにより、それぞれの折り畳み部の向こう側で、対応する前記絶縁層の自由端部に圧力を印加し、
-前記層スタックを、固定された前記第1のカバー(8)と押し付けられた前記第2のカバーと共に前記ケーシング(26)内に封入する、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記絶縁層(IL)のうちの少なくとも1つが、ダウンホルダ(20)を通して上方からまたは下方から前記束(6a)へ向かってガイドされ、
関連する前記ダウンホルダ(20)が、対応する前記カバー(20)の押し付け中または押し付け後に除去される、
請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
前記絶縁層(IL)が、ホットプレスステップにおいて前記層スタック(2)の上方もしくは下方に固定される、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記絶縁層(IL)は、それぞれ接着性のストリップ(G1)により、前記層スタック(2)の上面(Fo)もしくは下面(Fu)に固定される、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交互に重なり合うように積層された、複数のアノード層と対応する複数のカソード層とこれらの間に配置されたそれぞれ1つのセパレータ層とを有する層スタックと、当該層スタックから側方へガイドされたアノード導体路もしくはカソード導体路と共に当該層スタックを包囲しておりかつ層スタックの1つの端面に内側アノード集電体もしくは内側カソード集電体を有するカバーを有するケーシングとを含む、電池セルに関する。
【0002】
電池セルは、今日、通常3つの異なる構造形態で入手可能である。角型セルは、内部に個々のアノード層、カソード層およびセパレータ層が配置された剛性のフレームまたは剛性のケーシングを有している。この場合、これらの層はそれぞれ、層の積層部からガイドされている導体路を介して、ケーシング内に収容されている対応するアノード端子またはカソード端子に接続されている。円筒型セルでは、アノード層およびカソード層のスタックが交互に巻き付けられており、アノード層用の電気的なコンタクト接続またはカソード層用の電気的なコンタクト接続が円筒軸線に沿ってまたは円筒体の外面で行われる。いわゆるパウチセルでは、アノード層およびカソード層は平面状に重なり合うように積層されており、周囲に対する保護のために、アノードまたはカソードの2つの導体路のみが突出した可撓性のフィルムによって封止されている。
【0003】
角型電池セルでは、剛性のケーシングは、セルの機械的安定性を提供するだけでなく、安定な電気端子の使用も可能にし、さらに、周囲への良好な熱結合、ひいてはいっそう良好な放熱を可能にし、このことはセルの寿命に有利に作用する。
【0004】
しかし、この場合、層スタックからそれぞれアノード集電体またはカソード集電体へと束状にガイドされてそこでコンタクト接続される各導体路を、ケーシングに対して電気的に絶縁しなければならない。場合によりここでの束はケーシング内部において層スタックと集電体との間でさらに一種のループを形成するが、このループについても好ましくは同様に絶縁が行われるべきである。
【0005】
このような絶縁部の適用は、製造技術的に達成が困難である。なぜなら、導体路は、多くの場合に、関連する電極層のコーティングされていない銅基板シートもしくはアルミニウム基板シートから形成され、したがって部分的には4μm~15μmの厚さしか有していないからである。このため、これらの導体路は、容易に皺寄りしたり裂断したりする可能性がある。なおこのために、解決手段として、個別の絶縁部を省略できるようにした導体路のガイドも必要となる。しかも、絶縁部の固定は、こうした文脈において容易に行えることではない。
【0006】
したがって、本発明の基礎とする課題は、個々の電極層の導体路が特に簡単に達成可能な形式でケーシングに対して絶縁された電池セルを提供することである。さらに、本発明の基礎とする課題は、このような電池セルを製造する方法を提供することである。
【0007】
最初に挙げた課題は、本発明により、電池セル、特に角型電池セルによって解決され、当該電池セルは、複数のアノード層および対応する複数のカソード層を有する層スタックであって、ここで、アノード層およびカソード層が交互に重なり合うように積層されており、かつ各アノード層と各カソード層との間にそれぞれ1つのセパレータ層が配置されており、少なくともアノード層のうちの幾つかおよび/またはカソード層のうちの幾つかから成る層スタックの少なくとも第1の端面において、アノード導体路またはカソード導体路が層スタックから側方へガイドされている、層スタックを含む。当該電池セルはさらに、アノード導体路またはカソード導体路と共に層スタックを包囲しており、かつ少なくとも層スタックの第1の端面に内側アノード集電体または内側カソード集電体を有する第1のカバーを有する、ケーシングであって、ここで、アノード導体路またはカソード導体路がそれぞれ束状に集束されて、それぞれアノード集電体またはカソード集電体にコンタクト接続されている、ケーシングを含む。当該電池セルはさらに、第1の端部でそれぞれ層スタックの上面もしくは下面に固定されている少なくとも2つの絶縁層を含み、絶縁層は、その第2の自由端部の箇所で、それぞれ層スタックから突出し、当該第2の端部は、相互に延在する折り畳み部を形成しながら相互に向き合うように配向されており、これにより、アノード導体路の束またはカソード導体路の束がそれぞれ2つの折り畳み部間で引き出されており、絶縁層は、第1のカバーによって間接的に印加される圧力に対する、絶縁層のそれぞれの折り畳み部のばね作用によって、所定の位置に保持されている。それ自体で見ると部分的である有利な本発明の課題は、各従属請求項および以下の説明の対象となっている。
【0008】
2番目に挙げた課題は、本発明により、電池セルを製造する方法によって解決され、当該方法では、複数のアノードおよび対応する複数のカソード層が交互に積層されて層スタックが形成され、ここで、各アノード層と各カソード層との間にそれぞれ1つのセパレータ層が配置され、少なくともアノード層のうちの幾つかおよびカソード層のうち幾つかにつき、それぞれのアノード導体路またはカソード導体路が層スタックから側方へガイドされて束状に集束され、さらに、電池セルのケーシング用の1つのカバーもしくはそれぞれのカバーのアノード集電体もしくはカソード集電体にコンタクト接続される。
【0009】
この場合、当該方法では、層スタックが絶縁層から突出するように、層スタックの上面もしくは下面にそれぞれ少なくとも1つの絶縁層が固定され、上記の絶縁層の自由端部が、それぞれ折り畳み部を形成しながら、上方からもしくは下方から、アノード導体路の束またはカソード導体路の束へ向かってガイドされ、上記のカバーまたはそれぞれのカバーが層スタックへ向かって押し付けられ、これにより、それぞれの折り畳み部の向こう側で、絶縁層の自由端部に圧力が印加され、層スタックが押し付けられたカバーと共に固定されて、当該固定の際または当該固定の後にケーシング内に封入される。
【0010】
本発明による電池セルを製造する方法は、本発明による電池セルとその優位性を共有している。電池セルおよびその発展形態につき示された利点は必要な変更を加えたうえで当該方法に有意に適用することができ、またその逆も当てはまる。
【0011】
電池セルは、好ましくは、リチウム(Li)イオン電池セルにより与えられる。ここで、アノード層およびカソード層(以下ではまとめて電極層とも称する)は、好ましくは、それぞれ特にシート状の基板を活性材料でコーティングすることによって得られる。アノード層のためには好ましくは銅基板シートが採用され、この場合、活性材料として好ましくはグラファイトまたはケイ素(Si)もしくはケイ素酸化物(SiOx)から成るコーティングが堆積される。カソード層Kの製造のためには好ましくはアルミニウム基板シートが使用され、この場合、活性材料として好ましくはリン酸鉄リチウム(LFP)または1つもしくは複数のリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト酸化物(Li-NMC)から成るコーティングが堆積される。セパレータ層は、特に、それぞれセラミックコーティングされたプラスチックシートによって得ることができる。
【0012】
層スタックにおけるアノード層およびカソード層(およびそれぞれこれらの間に配置されたセパレータ層)の交互の配置とは、この場合特に、当該層スタックがそれぞれ1つのアノード層、セパレータ層およびカソード層を有する複数の(好ましくは多数の)エレメントセルから構成されていることであると理解される。特にこの場合、アノード層およびカソード層のために基板シートの両側を対応する活性材料でコーティングすることもでき、これにより、この場合には、それぞれの基板シートでのアノード層およびカソード層の交互の列が鏡面対称となる(つまり、例えば、エレメントセルとしてのアノード層-セパレータ層-カソード層の列に、最初にカソード層のアルミニウム基板シートが続き、続いて、対応する後続の銅基板シートを備えたカソード層-セパレータ層-アノード層の列のエレメントセルが相応に続き、このような列の周期的な反復により層スタックが形成される)。
【0013】
層スタックにつき、第1の端面において、少なくともアノード層の幾つかから、好ましくはアノード層の全てからアノード導体路が引き出されて、束へと集束される。この場合アノード導体路は、特にそれぞれコーティングされていない基板(つまり銅基板シート)から直接に形成することができる。同じことが好ましくはカソード導体路にも当てはまる(この場合、相応にアルミニウム基板シートが使用される)。層スタックの同一の(第1の)端面に並んで(もしくは端面の反対側の縁に並んで)ガイドされるかまたは対向する2つの端面(第1の端面および第2の端面)から出るようにガイドされる上記のアノード導体路の束およびカソード導体路の束は、対応するアノード集電体またはカソード集電体に電子的にコンタクト接続されており、これらのアノード集電体またはカソード集電体はそれぞれ、電池セルのケーシング用の1つのカバー(第1のカバー)の内面または電池セルのケーシング用のそれぞれのカバー(第1のカバーおよび第2のカバー)の内面に配置されている。この場合、コンタクト接続は、特に製造方法においては、溶接プロセスによって行うことができる。特に、カバーは、このために、さしあたり、完成したケーシングにおけるその設定位置に対して90°傾けられていてよくまたは旋回されていてよく、押圧によってはじめてその本来の位置へもたらされうる。
【0014】
特に、アノード導体路およびカソード導体路がそれぞれ反対側の端面(第1の端面または第2の端面)において層スタックからガイドされている場合、アノード導体路またはカソード導体路のみを、上述した形式で、層スタックの関連する端面においてその上面もしくは下面に固定された2つの絶縁層を通して引き出すことができ、一方、別の端面におけるそれぞれ他方の導体路を(つまり特には上記の第2の絶縁層の折り畳み部なしに)ケーシングに対して絶縁することができる。なお、代替構成において、アノード導体路およびカソード導体路がそれぞれ反対側の端面(第1の端面もしくは第2の端面)で層スタックからガイドされ、2つの端面の領域で上面もしくは下面にそれぞれ2つの絶縁層が固定され、相応に関連する面のカソード導体路およびアノード導体路が、そこにそれぞれ形成される絶縁層の折り畳み部を通して、第1のカバー内もしくは第2のカバー内の対応する集電体へガイドされてもよい。
【0015】
この場合、第1のカバーの外面にアノード端子および/またはカソード端子が配置されており、このアノード端子および/またはカソード端子は、第1のカバーを通して対応するアノード集電体またはカソード集電体に電気的にコンタクト接続されており、これにより、電池セルのバッテリ出力を、対応する端子を介して外部へ取り出すことができる。
【0016】
それぞれ電極層の層開始部もしくは層終端部によって定められている層スタックの上面および下面では、それぞれの絶縁層の第1の端部が層スタックの上面もしくは下面に固定され、関連する絶縁層の第2の自由端部が好ましくは上記の端面で層スタックから突出するように、それぞれ1つの絶縁層が固定されている。この場合、絶縁層の上記の自由端部は、さしあたりアノード導体路の束もしくはカソード導体路の束の延在方向に追従する。この場合、絶縁層は、まとめられて先細にされた束を取り巻くようにガイドされ、それぞれの自由端部(第2の端部)でそれぞれ1つの折り畳み部を形成する。これは特に、層スタックの上面において(第1の端部の箇所で)固定された絶縁層の自由端部(第2の端部)がまず層スタックの中央平面へ向かって(積層方向に)配向され、アノード導体路が層スタックの端面と上記の絶縁層との間でガイドされ、好ましくは中央平面の領域において、自由端部が中央平面から再び離れるように配向されるよう、当該絶縁層がその自由端部の箇所に折り畳み部を形成することを意味している。類似の構成により(ただし上方および下方の関係が対称に交換されて)、層スタックの下面に固定された絶縁層を形成する。
【0017】
したがって、2つの絶縁層の、特に中央平面の領域に位置決めされて相互に逆向きに配向された2つの折り畳み部が存在する。これら2つの折り畳み部により、アノード導体路束およびカソード導体路の束がガイドされる。完成した電池セルでの第1のカバーが層スタックの端面に押し付けられることにより、絶縁層は、それぞれの折り畳み部と、カバーの圧力に対して少なくとも間接的に生じるばね作用(例えば第1のカバー自体に対する、または第1のカバーの領域における上記のアノード導体路もしくはカソード導体路に対するばね作用)とにより、上記の位置から引き戻されたり滑り戻ったりすることなく、特に上記の束の近傍の折り畳み部と共に留まる。これにより、上記のアノード導体路またはカソード導体路を、層スタックの端面の領域または第1のカバーの端面の領域でケーシングに対して絶縁することができる。絶縁層は、このために、好ましくは適切な強度の絶縁材料から作製されている。
【0018】
この場合、製造方法においては、好ましくは、ケーシングが最終的に閉鎖される前に、電解質が(例えばこのために設けられた、後に閉鎖される第1のカバーの注入開口を通して)電池セル内へ注入されるか、またはその他の手法で添加される。特にこの場合、製造方法では、第1のカバーの対応する集電体におけるアノード導体路またはカソード導体路のコンタクト接続を、層スタックに絶縁層が取り付けられた後にも、さらにそれぞれの折り畳み部の成形後にも行うことができる。
【0019】
有利な一構成では、ケーシングは、層スタックの第1の端面に、上記の2つの絶縁層の折り畳み部間で引き出されたアノード導体路がコンタクト接続されている内側アノード集電体を有する、第1のカバーを有している。ケーシングはさらに、層スタックの第1の端面とは反対側の第2の端面に、当該第2の端面で層スタックから側方へガイドされて、別の2つの絶縁層の折り畳み部間で引き出されたカソード導体路がコンタクト接続されている内側カソード集電体を有する、第2のカバーを有している。これは特に、電池セルのアノード端子およびカソード端子がそれぞれ2つの対向する端面を有することを意味する。上記の端子のコンタクト接続、ひいては対応する集電体とそれぞれのアノード層またはカソード層の対応するアノード導体路またはカソード導体路とのコンタクト接続は、それぞれ、2つの絶縁層ごとに2つずつの相互に配向された折り畳み部を通して上述した引き出しを行うことによって行われる。
【0020】
このことは、層スタックの第1の端面において、アノード導体路がそこに固定されている2つの絶縁層(および第1のカバーによる圧力によってそこに形成される折り畳み部)を通してアノード集電体へとガイドされていることを意味する。層スタックの第2の端面においては、カソード導体路は、そこに固定されている2つの絶縁層(および第2のカバーによる圧力によってそこに形成される折り畳み部)を通してカソード集電体へとガイドされている。
【0021】
好ましくは、このような電池セルの製造時には、まず、第1の端面において層スタックからガイドされたアノード導体路が束状に集束され、第1のカバーの対応するアノード集電体にコンタクト接続可能となり、第1のカバーが層スタックへ向かって押し付けられ、これにより、特に対応する2つの絶縁層において形成された2つの折り畳み部に圧力が印加されて、層スタックが押し付けられたカバーと共に固定され、続いて(好ましくは、層スタックとアノード側のカバーとから成る複合体がケーシングに導入された後に)第1の端面とは反対側の第2の端面において層スタックからガイドされたカソード導体路が束状に集束されてカソード集電体にコンタクト接続可能となり、当該カソード集電体はケーシング用の第2のカバー内に配置されており、当該第2のカバーが層スタックへ向かって押し付けられ、これにより、それぞれの折り畳み部の向こう側で、対応する絶縁層の自由端部に圧力が印加され、層スタックが、固定された第1のカバーと押し付けられた第2のカバーと共に、ケーシング内に封入される。この場合、層スタックにおける第1のカバーの固定は、例えば保護フィルム、保護カバーなどによって行うことができる。
【0022】
特に、順序に従って、まずカソード導体路が対応するカバー内のカソード集電体にコンタクト接続可能となり、上記のカバー(対応する絶縁層の自由端部に圧力が印加されている状態で、絶縁層の折り畳み部間でカソード導体路が引き出されている)が層スタックに押し付けられ、そこに固定可能となり、その後、アノード導体路が対応する別のカバーにおけるアノード集電体にコンタクト接続可能となり、上記のカバー(対応する絶縁層の自由端部に圧力が印加されている状態で、絶縁層の折り畳み部間でアノード導体路が引き出されている)が層スタックに押し付けられ、そこに固定可能となるかまたはケーシング内に封入可能となる。
【0023】
同様に有利な代替構成では、層スタックの第1の端面におけるアノード導体路およびカソード導体路は、アノード層またはカソード層の延在方向に対して相互に平行にオフセットされた状態で、層スタックから側方へガイドされており、第1のカバーはアノード集電体およびカソード集電体を有しており、これらのアノード集電体およびカソード集電体において、アノード導体路およびカソード導体路がそれぞれ上記の2つの絶縁層の折り畳み部を通して引き出されることによってコンタクト接続されている。したがって、当該構成では、バッテリ電力を外部へ取り出すための2つの端子、すなわちアノード端子およびカソード端子が、第1のカバーの同じ端面に配置される。相応に、アノード導体路およびカソード導体路は同じ端面で層スタックからガイドされ、この端面の上面および下面にそれぞれ絶縁層が固定され、この絶縁層の折り畳み部を通して、アノード導体路およびカソード導体路がその対応する集電体へとガイドされる。
【0024】
好ましくは、電池セル内では、アノード導体路の束および/またはカソード導体路の束が、層スタックと第1のカバーもしくは第2のカバーとの間に少なくとも1つのループを形成しており、2つの絶縁層のうちの少なくとも1つが、ループ内のその折り畳み部の箇所でガイドされている。このことは特に、上記の束が、(積層方向を基準として)層スタックを側面から見たとき、好ましくは単純なU字状に、または2重U字状に曲げられている(特に層スタックの上述した中央平面をそれぞれ完全に横断している)ことを意味している。上記のループは、ここでは特に、アノード導体路またはカソード導体路がカバー内の対応する集電体とのコンタクト接続の際にもしくはコンタクト接続のためにある程度の余剰長さを有し、これにより、第1のカバー(または第2のカバー)が層スタックへ向かって押し付けられるときに上記のU字状のターン部が形成される(生じる)ように、形成される。この場合、好ましくは関連する折り畳み部がU字状のターン部の内側の頂点領域に位置決めされるように、2つの絶縁層のうちの少なくとも1つが上記のU字状のターン部へとガイドされる。
【0025】
特にこのために、製造する方法において、上記の絶縁層のうちの少なくとも1つ、好ましくは同じ側のそれぞれ2つの絶縁層ともが、対応するダウンホルダを通して上方からまたは下方から束へ向かってガイドされ、この場合、関連するダウンホルダが(もしくは2つのダウンホルダとも)対応するカバーの押し付け中または押し付け後に除去される。このように、ダウンホルダは、それぞれの絶縁層を束状に集束させ、さらに絶縁層を層スタックの中央平面へ向かって束を取り巻くように集束させるものであり、ここでは特に、ダウンホルダが(例えば上方から)絶縁層へ印加する圧力によって、また(例えば下方から)アノード導体路の束またはカソード導体路の束を通してダウンホルダの向こう側にかかる逆圧によって、絶縁層の折り畳み部も形成することができる。対応するカバーによって印加される圧力、または束を通して絶縁層へ、特に絶縁層の折り畳み部へと伝達される圧力により、それぞれの折り畳み部は、ダウンホルダの除去後にも、その位置、特に上述したループのU字状のターン部の内側頂点の領域に留まる。
【0026】
有利には、アノード導体路によって形成された束上のアノード集電体の領域にかつ/またはカソード導体路によって形成された束上のカソード集電体の領域に、少なくとも1つの付加絶縁層が取り付けられている。
【0027】
好都合なことに、絶縁層はそれぞれ、ポリオレフィン、例えばポリプロピレン(PP)もしくはポリエチレン(PE)、および/またはポリイミドから作製される。これらの絶縁材料は、折り畳み部の成形性に関する特に有利な特性を有する。
【0028】
層スタックは、好ましくは少なくとも上面および下面において、絶縁層がそれぞれその第1の端部に固定された保護フィルム内へパッケージングされている。この場合、保護フィルムは、完成した電池セルにおいて、任意の活性材料を有する層スタックがケーシングに接触することを防止し、これにより電気的絶縁のためにも役立つ。保護フィルムは特にPPから作製可能である。これに代えてもしくはこれに加えて、層スタックが上面および下面においてそれぞれセパレータ層で終端していてもよい。
【0029】
有利には、絶縁層は、それぞれその第1の端部で、層スタックとの固定のために、特に接着性のストリップ、好ましくは自己接着性のストリップを用いて接着されている。上記の接着性のストリップ、好ましくは自己接着性のストリップは、好ましくは、関連する絶縁層が層スタックに固定される領域のみを覆い、特に層スタックから突出する領域は切り欠かれる。
【0030】
好都合なことに、上記の絶縁層は、ホットプレスステップにおいて、層スタックの上方もしくは下方に固定することができる。このようなホットプレスステップ(“hot press”)は、層スタックの個々の電極層とセパレータ層とをコンパクトに接合するために、バッテリセルの製造において頻繁に適用される。こうしたホットプレスステップの枠組みにおいて、絶縁層を層スタックに固定することもできる。この場合には特に上述した接着性のストリップを省略することができる。
【0031】
以下に、本発明の実施例を図面に基づき詳しく説明する。図面には次のことが概略的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】電極導体絶縁体を備えた電池セルを製造する方法を示す一連の断面図である。
【0033】
図1には、製造中の上記の電池セル1の一連の断面図に即して、電池セル1を製造する方法が概略的に示されている。電池セル1は、この場合、Liイオン電池セルにより得られる。
【0034】
第1の方法ステップS1では、複数のアノード層Anおよび対応する複数のカソード層Kが電極層として用意される。アノード層Anおよびカソード層Kは、セパレータ層Sと共に交互に、1つのアノード層Anと1つのカソード層Kとの間に常に1つのセパレータ層Sが続くように積層されて、層スタック2が形成される。
【0035】
アノード層Anは、例えば、銅基板シート上にグラファイトまたはSiもしくはSiOxから成る層を堆積させることによって製造することができる。ここでのコーティングは、完成した電池セル1の動作時にアノード層Anの活性材料を形成する。カソード層Kの製造のためには、好ましくは、アルミニウム基板シート上にLFPまたはLi-NMCから成るコーティングが設けられ、このコーティングが、完成した電池セル1の動作時にカソード層Kの活性材料を形成する。各コーティングは特に、アノード層Anのためにまたはカソード層Kのために、対応する基板シートの両側にそれぞれ堆積されうる。
【0036】
セパレータ層Sは、特にそれぞれ、セラミックコーティングされたプラスチックシートによって与えられうる。セパレータ層Sは、層スタック2の形成に際してそれぞれアノード層Anとカソード層Kとの間に配置される。ここで、実質的に直方体状の幾何学形状を有する層スタック2が、上面Foと下面Fuとにおいて好ましくはそれぞれセパレータ層Sによって閉鎖される。これに代えてもしくはこれに加えて、層スタック2を、少なくとも上面Foまたは下面Fuにおいてさらに、例えばPPから作製可能な保護フィルム(図示せず)内へと堆積させることもできる。セパレータ層Sもしくは保護フィルムによる、上面Foおよび下面Fuにおける層スタックSの閉鎖により、層スタック2のうちのいずれかの電極層An,Kの活性材料が完成した電池セル1のケーシングに接触することが防止される。また、層スタック2は、セパレータ層Sと隣接するアノード層またはカソード層Kとをよりコンパクトに接合させるために、ホットプレスにかけることもできる。この場合、ホットプレスは、好ましくは60℃~90℃、特に好ましくは70℃~80℃の温度で行われる。
【0037】
図1に示されている実施形態では、層スタック2から、端面F1において、アノード層Anの個々のアノード導体路4aおよびカソード層Kの個々のカソード導体路4kが引き出されている。アノード導体路4aとカソード導体路4kとは、ここでは、それぞれ画像平面を基準として相互に側方へオフセットされており、すなわち、アノード導体路4aが、画像平面を基準としてカソード導体路4kよりもさらに前方で(またはさらに後方で)層スタックから側方へガイドされている。この場合、アノード導体路4aまたはカソード導体路4kは、それぞれ非コーティング基板から(つまり、アノード層を銅基板シートから、またはカソード層をアルミニウム基板シートから)直接に形成することができる。第2の方法ステップS2では、アノード層Anのアノード導体路4aが1つの束6aへと集束される。当該アノード導体路4aの束6aは、完成した電池セル1のケーシングの第1のカバー8に電気的にコンタクト接続される。このために、(完成した電池セル1における第1のカバー8の後の位置決めに関する)内面10にアノード集電体12aが配置され、このアノード集電体12aが、第1のカバー8を通して、第1のカバー8の外面14に配置されたアノード端子16aに電気的に接続される。アノード端子16aは、完成した電池セル1を後にバッテリシステムにおいて使用するために、外部から(電気的に)接続可能である。
【0038】
アノード集電体12aにおけるアノード導体路4aの上記のコンタクト接続のために、第1のカバー8は最初、後の完成した電池セル1での位置に対して90°傾けられており、これにより、アノード導体路4aの上記の溶接のために、端面F1に対して垂直な方向18から(かつ層スタック2での積層方向に対して平行な方向18から)、アノード集電体12aへのアクセスが可能となる。
【0039】
画像平面での後方に位置するために特に示されていないが、カソード層Kのカソード導体路4kについても、図1のステップS2において、同等のことが当てはまる。カソード導体路4kも束状に集束され、第1のカバー8の内面10の対応するカソード集電体において電気的にコンタクト接続され、このカソード集電体は、第1のカバーの外面14に設けられた(バッテリシステムにおける完成した電池セル1を接続するための)対応するカソード端子に電気的に接続される。説明しているコンタクト接続は、場合によっては層スタック2のホットプレスの前に行うこともできる。
【0040】
第3の方法ステップS3では、層スタック2の上面Fo上もしくは下面Fu上に、それぞれ絶縁層ILが被着される。絶縁層ILは、好ましくは、ポリオレフィン、例えばPPもしくはPE、またはポリイミドから作製されている。この場合、絶縁層ILは、第1の端部E1の箇所で、層スタック2の関連する上面Foまたは下面Fuに(セパレータ層Sまたは保護フィルムに)固定されるが、このために、絶縁層ILの第1の端部E1に自己接着層G1を設けることができる。これに代えてもしくはこれに加えて、それぞれの絶縁層ILは、上述したホットプレスサブステップ(このために、方法ステップS3においてはじめて実行される)においてはじめて、層スタックの上面Foもしくは下面Fuに、すなわち好ましくはセパレータ層Sもしくはポリマー保護フィルムのプラスチックシートに固定されてもよい。絶縁層ILは、それぞれ、層スタック2から突出してアノード導体路4aもしくはカソード導体路4kに沿ってガイドされる、第2の自由端部E2を有する。
【0041】
当該絶縁層ILの第2の自由端部E2は、第4の方法ステップS4において、方向18でまたは方向18とは逆方向で、層スタック2の側方に導入されるダウンホルダ20によって、アノード導体路4aの束6aまたは対応するカソード導体路4kの束へとガイドされる。上記の束6a(図1では見えない、カソード導体路4kの束についても同様である)は、軽微な2重ターン部を有しかつ上方からもしくは下方から絶縁層ILが各ダウンホルダ20を通して押し込まれるループ22を形成し、これにより、絶縁層ILの第2の端部E2が当該ループ22内にそれぞれ1つずつの折り畳み部24を形成する。この場合、ダウンホルダ20は相互に僅かにオフセットされた状態で導入可能であるので、束6aとして形成されたループ22の絶縁層ILはそれぞれ上方からもしくは下方から良好に適応化可能である。
【0042】
第5の方法ステップS5では、第1のカバー8が設定された位置において90°傾けられ、層スタックがケーシング26内へ封入される。このために、ダウンホルダ20は、アノード導体路4aの束6a(もしくは対応するカソード導体路4kの束)のループ22から再び除去され、これにより、第1のカバーをケーシング26上に(例えば溶接によって)固定することができる。第1のカバー8を上記のように固定する前にさらに電解質をケーシング26内へ注入することもできるが、当該注入は、第1のカバー8が固定された後に、第1のカバー8の、後に閉鎖される相応の注入開口を通して行うこともできる。このようにして、最終的な閉鎖後に、電池セル1が完成する。
【0043】
ここで、ダウンホルダ20が除去される際にも、絶縁層ILは、第2の自由端部E2の折り畳み部24を通して、屈曲されたアノード導体路またはカソード導体路によって第1のカバーから間接的にループ22を介して印加される圧力によって、ループ22内の所定の位置に留まる。ここで重要なのは、傾けられることで端面F1へ向かって変位する、第1のカバー8の位置のみである。折り畳み部24によって絶縁層ILの第2の自由端部E2の引き戻りまたは滑り戻りを防止できることにより、ループ22は十分に密となる。
【0044】
代替変形形態では、層スタックの第1の端面F1においてアノード導体路4aのみがガイドされるのに対し、第1の端面F1とは反対側の第2の端面(図示せず)においてカソード導体路4kが層スタック2からガイドされる。アノード導体路4aの固定は、ステップS2~ステップS4に即して説明したように、第1のカバー8のアノード集電体12aにおける、絶縁層IL間の引き出しによって行われる。続いて、第1のカバー8が層スタック2に押し付けられ、ここで(例えばその保護フィルムを用いて)固定される。続いて、第2のカバー(図示せず)の対応するカソード集電体にカソード導体路4を固定するためにステップS2~ステップS4が反復され、その際に、第2の端面の領域において層スタック2に固定された絶縁層(図示せず)に形成された折り畳み部間で、カソード導体路4kが引き出される。最終的に、第2のカバーが層スタック2に押し付けられ、この層スタック2がケーシング内に封入される。
【0045】
本発明の詳細を好ましい実施例によって詳しく例示および説明したが、本発明は開示した例によって限定されるものではなく、当業者は、本発明の保護範囲から逸脱することなく、こうした例から他の変形形態を導き出すことができる。
【符号の説明】
【0046】
1 電池セル
2 層スタック
4a/4k アノード導体路/カソード導体路
6a (アノード導体路の)束
8 カバー
10 (カバーの)内面
12a アノード集電体
14 カバーの外面
16a アノード端子
18 (端面に対して垂直な)方向
20 ダウンホルダ
22 ループ
24 折り畳み部
26 ケーシング
An アノード層
E1/E2 (絶縁層の)第1の端部/第2の端部
F1 (層スタックの)端面
Fo/Fu (層スタックの)上面/下面
G1 自己接着層
K カソード層
IL 絶縁層
S セパレータ層
S1~S5 方法ステップ
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セル(1)であって、
-複数のアノード層(An)および対応する複数のカソード層(K)を有する層スタック(2)であって、
-前記アノード層(An)および前記カソード層(K)が交互に重なり合うように積層されており、かつ各アノード層(An)と各カソード層(K)との間にそれぞれ1つのセパレータ層(S)が配置されており、
-少なくとも前記アノード層(An)のうちの幾つかおよび/または前記カソード層(K)の幾つかから成る前記層スタック(2)の少なくとも第1の端面(F1)において、アノード導体路(4a)またはカソード導体路(4k)が前記層スタック(2)から側方へガイドされている、
層スタック(2)と、
-前記アノード導体路(4a)または前記カソード導体路(4k)と共に前記層スタック(2)を包囲しており、かつ前記層スタック(2)の少なくとも前記第1の端面(F1)に内側アノード集電体(12a)または内側カソード集電体を有する第1のカバー(8)を有する、ケーシング(26)であって、
-前記アノード導体路(4a)または前記カソード導体路(4k)がそれぞれ束状に集束されて、それぞれ前記アノード集電体(12a)または前記カソード集電体にコンタクト接続されている、
ケーシング(26)と、
-第1の端部(E1)でそれぞれ前記層スタック(2)の上面(Fo)もしくは下面(Fu)に固定されている少なくとも2つの絶縁層(IL)と、
を含み、
-前記絶縁層(IL)は、その第2の自由端部(E2)の箇所で、それぞれ前記層スタック(2)から突出し、該第2の端部(E2)は、相互に延在する折り畳み部(24)を形成しながら相互に向き合うように配向されており、これにより、前記アノード導体路(4a)の束(6a)または前記カソード導体路の束がそれぞれ2つの折り畳み部(24)間で引き出されており、
-前記絶縁層(IL)は、前記第1のカバー(8)によって間接的に印加される圧力に対する、前記絶縁層(IL)のそれぞれの折り畳み部(24)のばね作用によって、所定の位置に保持されている、
電池セル(1)。
【請求項2】
前記ケーシング(26)は、
-前記層スタック(2)の前記第1の端面(F1)に、前記2つの絶縁層(IL)の折り畳み部(24)間で引き出された前記アノード導体路(4a)がコンタクト接続されている前記内側アノード集電体(12a)を有する、第1のカバーを有しており、
-前記層スタック(2)の前記第1の端面(F1)とは反対側の第2の端面に、前記第2の端面で前記層スタック(2)から側方へガイドされて、別の2つの絶縁層(IL)の折り畳み部間で引き出されたカソード導体路(4k)がコンタクト接続されている前記内側カソード集電体(12k)を有する、第2のカバーを有している、
請求項1記載の電池セル(1)。
【請求項3】
前記層スタック(2)の前記第1の端面(F1)における前記アノード導体路(4a)および前記カソード導体路(4k)は、前記アノード層または前記カソード層の延在方向に対して相互に平行にオフセットされた状態で、前記層スタック(2)から側方へガイドされており、
前記第1のカバー(8)は前記アノード集電体(12a)および前記カソード集電体を有しており、前記アノード集電体(12a)および前記カソード集電体において、前記アノード導体路(4a)および前記カソード導体路(4k)がそれぞれ、前記2つの絶縁層(IL)の折り畳み部(24)を通して引き出されることによってコンタクト接続されている、
請求項1記載の電池セル(1)。
【請求項4】
前記アノード導体路(4a)の束(6a)および/または前記カソード導体路(4k)の束が、前記層スタック(2)と前記第1のカバー(8)もしくは前記第2のカバーとの間に少なくとも1つのループ(22)を形成しており、
前記2つの絶縁層(IL)のうちの少なくとも1つが、前記ループ(22)内のその折り畳み部(24)の箇所でガイドされている、
請求項1または2記載の電池セル(1)。
【請求項5】
前記アノード導体路(4a)によって形成された束(6a)上の前記アノード集電体(12a)の領域にかつ/または前記カソード導体路(4k)によって形成された束上の前記カソード集電体の領域に、少なくとも1つの付加絶縁層が取り付けられている、請求項4記載の電池セル(1)。
【請求項6】
前記絶縁層(IL)は、それぞれポリオレフィンおよび/またはポリイミドから作製されている、請求項1または2記載の電池セル(1)。
【請求項7】
電池セル(1)を製造する方法であって、
-複数のアノード層(An)および対応する複数のカソード層(K)を交互に積層して層スタック(2)を形成し、各アノード層(An)と各カソード層(K)との間にそれぞれ1つのセパレータ層(S)が配置され、
-少なくとも前記アノード層(An)のうちの幾つかおよび前記カソード層(K)のうちの幾つかにつき、それぞれアノード導体路(4a)またはカソード導体路(4k)を前記層スタック(2)から側方へガイドして束状に集束させ、さらに、前記電池セル(1)のケーシング(26)用の1つのカバー(8)もしくはそれぞれのカバーのアノード集電体(12a)もしくはカソード集電体にコンタクト接続させ、
-前記層スタック(2)が前記絶縁層(IL)から突出するように、前記層スタック(2)の上面(Fo)もしくは下面(Fu)にそれぞれ少なくとも1つの絶縁層(IL)を固定し、
-前記絶縁層(IL)の自由端部(E2)を、それぞれ折り畳み部(24)を形成しながら、上方からもしくは下方から、前記アノード導体路(4a)の束(6a)または前記カソード導体路(4k)の束へ向かってガイドし、
-前記カバー(8)またはそれぞれのカバーを前記層スタック(2)へ向かって押し付け、これにより、それぞれの前記折り畳み部(24)の向こう側で、前記絶縁層(IL)の自由端部(E2)に圧力を印加し、
-前記層スタック(2)を、押し付けられた前記カバー(8)と共に固定して、該固定の際または該固定の後に前記ケーシング(26)内に封入する、
方法。
【請求項8】
-まず、第1の端面(F1)において前記層スタック(2)からガイドされた前記アノード導体路(4a)または前記カソード導体路(4k)を束状に集束させ、前記ケーシング(26)用の第1のカバー(8)の対応するアノード集電体(12a)またはカソード集電体にコンタクト接続させ、
-前記第1のカバー(8)を前記層スタック(2)へ向かって押し付け、前記層スタック(2)を、押し付けられた前記カバー(8)によって固定し、
-続いて、前記層スタック(2)の前記第1の端面(F1)とは反対側の第2の端面からガイドされている前記アノード導体路(4a)または前記カソード導体路(4k)のそれぞれ別の導体路を束状に集束させ、さらに、前記ケーシング(26)用の第2のカバー内に配置された、前記アノード集電体(12a)または前記カソード集電体の対応するそれぞれ別の集電体にコンタクト接続させ、
-前記第2のカバーを前記層スタック(2)へ向かって押し付け、これにより、それぞれの折り畳み部の向こう側で、対応する前記絶縁層の自由端部に圧力を印加し、
-前記層スタックを、固定された前記第1のカバー(8)と押し付けられた前記第2のカバーと共に前記ケーシング(26)内に封入する、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記絶縁層(IL)のうちの少なくとも1つが、ダウンホルダ(20)を通して上方からまたは下方から前記束(6a)へ向かってガイドされ、
関連する前記ダウンホルダ(20)が、対応する前記カバー(20)の押し付け中または押し付け後に除去される、
請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
前記絶縁層(IL)が、ホットプレスステップにおいて前記層スタック(2)の上方もしくは下方に固定される、請求項7または8記載の方法。
【請求項11】
前記絶縁層(IL)は、それぞれ接着性のストリップ(G1)により、前記層スタック(2)の上面(Fo)もしくは下面(Fu)に固定される、請求項7または8記載の方法。
【外国語明細書】