(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152723
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】積層型キャパシタ用内部電極物質およびこれを含む積層型キャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
H01G4/30 201D
H01G4/30 201L
H01G4/30 311D
H01G4/30 311Z
H01G4/30 515
H01G4/30 516
H01G4/30 517
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024065414
(22)【出願日】2024-04-15
(31)【優先権主張番号】10-2023-0048595
(32)【優先日】2023-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0145895
(32)【優先日】2023-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】呉 泳俊
(72)【発明者】
【氏名】羅 ▲ヒョン▼雄
(72)【発明者】
【氏名】朴 榮圭
(72)【発明者】
【氏名】閔 景基
(72)【発明者】
【氏名】朴 性▲ミン▼
(72)【発明者】
【氏名】朴 ▲スル▼雅
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AH01
5E001AH09
5E001AJ01
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC38
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE28
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG28
5E082LL01
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】本発明の一課題は、キャパシタの製造のための焼成工程時、別途の添加剤がなくても焼結収縮を抑制することができ、酸化雰囲気でも焼成が可能な新しい積層型キャパシタ用内部電極物質およびこれを含む積層型キャパシタを提供することである。
【解決手段】本発明は、誘電体層および内部電極を含むキャパシタボディー;および前記キャパシタボディーの外側に配置される外部電極を含み、前記内部電極は、下記の化学式1に表される化合物を含み、前記化合物のBET比表面積が1.0~2.2m
2/gの積層型キャパシタに関する。
[化学式1]
M1
a+1M2M3
a
前記化学式1中、M1はTi、V、Sc、ZrまたはMoであり、M2はAl、Si、Sn、Cd、In、Ga、Ge、Pb、As、SまたはPであり、M3はCまたはNであり、aは1~3である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1に表される化合物を含み、
前記化合物のBET比表面積が1.0~2.2m2/gである、積層型キャパシタ用内部電極物質:
[化学式1]
M1a+1M2M3a
前記化学式1中、M1はTi、V、Sc、ZrまたはMoであり、M2はAl、Si、Sn、Cd、In、Ga、Ge、Pb、As、SまたはPであり、M3はCまたはNであり、aは1~3である。
【請求項2】
前記化学式1中、M1はTiまたはVであり、M2はAl、SiまたはSnであり、M3はCである、請求項1に記載の積層型キャパシタ用内部電極物質。
【請求項3】
前記化合物は、Ti3AlC2、Ti2AlC、V2AlC、Ti3SiC2またはTi3SnC2である、請求項1に記載の積層型キャパシタ用内部電極物質。
【請求項4】
前記化合物の平均粒径(D50)は、400~700nmである、請求項1に記載の積層型キャパシタ用内部電極物質。
【請求項5】
前記化合物は、熱機械分析(Thermomechanical Analyzer、TMA)で分析する場合、800℃の温度対比1100℃の温度での体積減少率が5%以下である、請求項1に記載の積層型キャパシタ用内部電極物質。
【請求項6】
前記化合物は、電気伝導度が1.05×106S/m以上である、請求項1に記載の積層型キャパシタ用内部電極物質。
【請求項7】
誘電体層および内部電極を含むキャパシタボディー;および
前記キャパシタボディーの外側に配置される外部電極を含み、
前記内部電極は、下記の化学式1に表される化合物を含み、前記化合物のBET比表面積が1.0~2.2m2/gである、積層型キャパシタ:
[化学式1]
M1a+1M2M3a
前記化学式1中、M1はTi、V、Sc、ZrまたはMoであり、M2はAl、Si、Sn、Cd、In、Ga、Ge、Pb、As、SまたはPであり、M3はCまたはNであり、aは1~3である。
【請求項8】
前記化学式1中、M1はTiまたはVであり、M2はAl、SiまたはSnであり、M3はCである、請求項7に記載の積層型キャパシタ。
【請求項9】
前記化合物は、Ti3AlC2、Ti2AlC、V2AlC、Ti3SiC2またはTi3SnC2である、請求項7に記載の積層型キャパシタ。
【請求項10】
前記化合物の平均粒径(D50)は、400~700nmである、請求項7に記載の積層型キャパシタ。
【請求項11】
前記化合物は、熱機械分析(Thermomechanical Analyzer、TMA)で分析する場合、800℃の温度対比1100℃の温度での体積減少率が5%以下である、請求項7に記載の積層型キャパシタ。
【請求項12】
前記化合物は、電気伝導度が1.05×106S/m以上である、請求項7に記載の積層型キャパシタ。
【請求項13】
前記内部電極は、ニッケル(Ni)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、二酸化ケイ素(SiO2)およびタングステン(W)を含まない、請求項7に記載の積層型キャパシタ。
【請求項14】
前記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒を含み、前記誘電体結晶粒は、主成分としてBamTiO3(0.995≦m≦1.010)を含み、副成分としてハフニウム(Hf)と、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、錫(Sn)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項7に記載の積層型キャパシタ。
【請求項15】
誘電体粉末を利用して誘電体グリーンシートを形成する段階;
前記誘電体グリーンシートの表面に下記の化学式1に表され、BET比表面積が1.0~2.2m2/gの化合物を含む導電性ペースト層を形成する段階;
前記導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシートを積層し、誘電体グリーンシート積層体を形成する段階;
前記誘電体グリーンシート積層体を酸化雰囲気で焼成し、誘電体層および内部電極を含むキャパシタボディーを形成する段階;および
前記キャパシタボディーの一面に外部電極を形成する段階を含む、積層型キャパシタの製造方法:
[化学式1]
M1a+1M2M3a
前記化学式1中、M1はTi、V、Sc、ZrまたはMoであり、M2はAl、Si、Sn、Cd、In、Ga、Ge、Pb、As、SまたはPであり、M3はCまたはNであり、aは1~3である。
【請求項16】
前記酸化雰囲気は、空気(air)または酸素(O2)雰囲気である、請求項15に記載の積層型キャパシタの製造方法。
【請求項17】
前記焼成は、ホットプレス(Hot Press)方法で行われる、請求項15に記載の積層型キャパシタの製造方法。
【請求項18】
前記導電性ペースト層は、ニッケル(Ni)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、二酸化ケイ素(SiO2)およびタングステン(W)を含まない、請求項15に記載の積層型キャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型キャパシタ用内部電極物質およびこれを含む積層型キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシタ部品の一つの積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)およびプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォンおよび携帯電話機などの様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電させたり、または放電させる役割を果たすチップ状のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型であり高容量が保障され、実装が容易であるという長所により、多様な電子装置の部品として使用されている。
【0004】
積層セラミックキャパシタは、誘電体セラミック内に内部電極を含む。また、積層セラミックキャパシタは、内部電極物質を含む導電性ペーストとセラミック粉末を含むセラミックグリーンシートをシート法や印刷法などによって積層し、同時焼成して製造することができる。
【0005】
この時、内部電極物質としてニッケル(Ni)粉末が一般的に使用され、誘電体セラミック粉末として主にBaTiO3が使用される。しかし、誘電体層を形成するために、セラミックグリーンシートは約1100℃以上の高温で焼成され、導電性ペーストはより低温で焼結収縮することができる。したがって、セラミックグリーンシートの焼成中に内部電極層の過焼成が発生し、これにより、内部電極にクラック(Crack)が発生したり、剥離(Delamination)するなどの問題が発生する可能性がある。これは積層セラミックキャパシタの性能を低下させる。
【0006】
前記問題を解決するために、従来内部電極導電性ペーストに二酸化ケイ素(SiO2)またはナノチタンバリウム(BaTiO3)などを添加したり、タングステン(W)のような金属を使用して高温焼結収縮を制御しようとした。しかし、二酸化ケイ素またはチタン酸バリウムは不導体であるため、電極の電気伝導率が低下する可能性があり、添加剤による追加工程および追加コストが発生するという問題があった。
【0007】
また、ニッケル粉末は、キャパシタ製造のための焼成時に焼成雰囲気が還元雰囲気に調節する必要があるが、還元雰囲気焼成の場合、工程コストが増加する問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一課題は、キャパシタの製造のための焼成工程時、別途の添加剤がなくても焼結収縮を抑制することができ、酸化雰囲気でも焼成が可能な新しい積層型キャパシタ用内部電極物質およびこれを含む積層型キャパシタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、下記の化学式1に表される化合物を含み、前記化合物のBET比表面積が1.0~2.2m2/gの積層型キャパシタ用内部電極物質を提供する。
[化学式1]
M1a+1M2M3a
前記化学式1中、M1はTi、V、Sc、ZrまたはMoであり、M2はAl、Si、Sn、Cd、In、Ga、Ge、Pb、As、SまたはPであり、M3はCまたはNであり、aは1~3である。
【0010】
前記化学式1中、M1はTiまたはVであり、M2はAl、SiまたはSnであり、M3はCであってもよい。
【0011】
前記化合物は、Ti3AlC2、Ti2AlC、V2AlC、Ti3SiC2またはTi3SnC2-であってもよい。
【0012】
前記化合物の平均粒径(D50)は400~700nmであってもよい。
【0013】
前記化合物は、熱機械分析(Thermomechanical Analyzer、TMA)で分析する場合、800℃の温度対比1100℃の温度での体積減少率が5%以下であることができる。
【0014】
前記化合物は、電気伝導度が1.05×106S/m以上であることができる。
【0015】
本発明の他の一実施形態は、誘電体層および内部電極を含むキャパシタボディー;および前記キャパシタボディーの外側に配置される外部電極を含み、前記内部電極は、下記の化学式1に表される化合物を含み、前記化合物のBET比表面積が1.0~2.2m2/gである積層型キャパシタを提供する。
[化学式1]
M1a+1M2M3a
前記化学式1中、M1はTi、V、Sc、ZrまたはMoであり、M2はAl、Si、Sn、Cd、In、Ga、Ge、Pb、As、SまたはPであり、M3はCまたはNであり、aは1~3である。
【0016】
前記化学式1中、M1はTiまたはVであり、M2はAl、SiまたはSnであり、M3はCであってもよい。
【0017】
前記化合物は、Ti3AlC2、Ti2AlC、V2AlC、Ti3SiC2またはTi3SnC2であってもよい。
【0018】
前記化合物の平均粒径(D50)は、400~700nmであってもよい。
【0019】
前記化合物は、熱機械分析(Thermomechanical Analyzer、TMA)で分析する場合、800℃の温度対比1100℃の温度での体積減少率が5%以下であることができる。
【0020】
前記化合物は、電気伝導度が1.05×106S/m以上であることができる。
【0021】
前記内部電極は、ニッケル(Ni)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、二酸化ケイ素(SiO2)およびタングステン(W)を含まなくてもよい。
【0022】
前記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒を含み、前記誘電体結晶粒は、主成分としてBamTiO3(0.995≦m≦1.010)を含み、副成分としてハフニウム(Hf)と、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、錫(Sn)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0023】
本発明のまた他の一実施形態は、誘電体粉末を利用して誘電体グリーンシートを形成する段階;前記誘電体グリーンシートの表面に下記の化学式1に表示され、BET比表面積が1.0~2.2m2/gの化合物を含む導電性ペースト層を形成する段階;前記導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシートを積層して誘電体グリーンシート積層体を形成する段階;前記誘電体グリーンシート積層体を酸化雰囲気で焼成して誘電体層および内部電極を含むキャパシタボディーを形成する段階;および前記キャパシタボディーの一面に外部電極を形成する段階を含む、積層型キャパシタの製造方法を提供する。
【0024】
前記酸化雰囲気は、空気(air)または酸素(O2)雰囲気であることができる。
【0025】
前記焼成は、ホットプレス(Hot Press)方法で行うことができる。
【0026】
前記導電性ペースト層は、ニッケル(Ni)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、二酸化ケイ素(SiO2)およびタングステン(W)を含まなくてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一実施形態によるキャパシタ用内部電極物質は、キャパシタ製造のための焼成工程時、別途の添加剤がなくても焼結収縮を抑制することができ、酸化雰囲気でも焼成が可能である。また、従来内部電極物質として一般に使用されていたニッケルと類似または向上したレベルの電気伝導度を実現することができる。
【0028】
これにより、キャパシタ製造工程コストが節減されると同時に、キャパシタの性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型キャパシタの斜視図である。
【
図2】
図1のI-I’線に沿って切断した積層型キャパシタの断面図である。
【
図3】
図1のキャパシタボディーで内部電極の積層構造を示した分離斜視図である。
【
図4】実験例1によるTMA(Thermomechanical Analyzer)分析結果グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付の図面を参照して、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例を詳細に説明する。図面で本発明を明確に説明するために、説明と関係ない部分は省略し、明細書全体を通じて同一または類似の構成要素については同一の参照符号を付した。また、添付された図面は、本明細書に開示された実施例を容易に理解できるようにするためのものであり、添付された図面によって本明細書に開示された技術的思想が制限されるものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物又は代替物を含むものと理解されるべきである。
【0031】
第1、第2等のような序数を含む用語は、様々な構成要素を説明するために使用することができるが、前記構成要素は前記用語によって限定されない。これらの用語は、ある構成要素を他の構成要素と区別する目的でのみ使用される。
【0032】
ある構成要素が他の構成要素に「連結」または「接続」と記載されている場合、他の構成要素に直接連結または接続されているか、または向き合う可能性があるが、その間に他の構成要素が存在する可能性があると理解するべきである。一方、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結」または「直接接続」と記載されている場合には、間に他の構成要素が存在しないものと理解されるべきである。
【0033】
明細書全体において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数、ステップ、動作、構成要素、部品、またはこれらの組み合わせが存在することを指定するものであって、1つまたは複数の他の特徴、数、ステップ、動作、構成要素、部品、またはこれらの組み合わせの存在または付加の可能性を予め排除するものではないと理解されるべきである。したがって、ある部分がある構成要素を「含む」と記載されている場合、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態による積層型キャパシタの斜視図である。
【0035】
図2は、
図1のI-I’線に沿って切断した積層型キャパシタの断面図である。
【0036】
図3は、
図1のキャパシタボディーで内部電極の積層構造を示した分離斜視図である。
【0037】
本実施形態を明確に説明するために方向を定義すると、図面に示されたL軸、W軸及びT軸は、それぞれコンデンサ本体110の長さ方向、幅方向及び厚さ方向を示す。ここで、厚さ方向(T軸方向)は、シート形状の構成要素の広い面(主面)に垂直な方向であり、一例として、誘電体層111が積層される積層方向と同じ概念で使用することができる。長さ方向(L軸方向)は、シート形状の構成要素の広い面(主面)に平行に延びる方向であり、厚さ方向(T軸方向)と略垂直な方向とすることができ、一例として、両側に第1外部電極131及び第2外部電極132が位置する方向とすることができる。幅方向(W軸方向)は、シート形状の構成要素の広い面(主面)に平行に延びる方向であり、厚さ方向(T軸方向)及び長さ方向(L軸方向)と略垂直な方向とすることができ、シート形状の構成要素の長さ方向(L軸方向)の長さは、幅方向(W軸方向)の長さよりも長くすることができる。
【0038】
図1~
図3を参照すれば、本発明の一実施形態による積層型キャパシタ100は、キャパシタボディー110、そしてキャパシタボディー110の長さ方向(L軸方向)に対向する両端に配置される第1外部電極131および第2外部電極132を含むことができる。
【0039】
キャパシタボディー110は、一例として、概略六面体形状であってもよい。
【0040】
本実施例では説明の便宜のために、キャパシタボディー110において厚さ方向(T軸方向)に互いに対向する両面を第1面および第2面、第1面および第2面と接続され、長さ方向(L軸方向)に互いに対向する両面を第3面および第4面と、第1面および第2面と連結し第3面および第4面と連結しながら幅方向(W軸方向)に互いに対向する両面を第5面および第6面と定義することにする。
【0041】
一例として、下面の第1面が実装方向を向く面になることができる。また、第1面~第6面は平坦であってもよいが、本実施形態がこれに限定されるものではなく、例えば、第1面~第6面は、中央部が凸の曲面であってもよく、各面の境界である角部はラウンド(round)に形成されてもよい。
【0042】
キャパシタボディー110の形状、サイズおよび誘電体層111の積層数が本実施例の図面に示されたものに限定されるものではない。
【0043】
キャパシタボディー110は、複数の誘電体層111を厚さ方向(T軸方向)に積層した後、焼成したもので、複数の誘電体層111と誘電体層111を間において、厚さ方向(T軸方向)に交互に配置される第1内部電極121および第2内部電極122を含む。
【0044】
この時、キャパシタボディー110の互いに隣接するそれぞれの誘電体層111の間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずに確認することが困難なほど一体化されることがある。
【0045】
また、キャパシタボディー110は、アクティブ領域とカバー領域112、113を含むことができる。
【0046】
アクティブ領域は、積層型キャパシタ100の容量形成に寄与する部分である。一例として、アクティブ領域は、厚さ方向(T軸方向)に沿って積層される第1内部電極121または第2内部電極122がオーバーラップ(overlap)された領域であってもよい。
【0047】
カバー領域112、113は、厚さ方向マージン部として厚さ方向(T軸方向)にアクティブ領域の第1面および第2面側にそれぞれ位置することができる。このようなカバー領域112、113は、単一誘電体層111または二つ以上の誘電体層111がアクティブ領域の上面および下面にそれぞれ積層されたものであってもよい。
【0048】
また、キャパシタボディー110は、側面カバー領域をさらに含むことができる。側面カバー領域は、幅方向マージン部として幅方向(W軸方向)にアクティブ領域の第5面および第6面側にそれぞれ位置することができる。このような側面カバー領域は、誘電体グリーンシートの表面に内部電極形成用導電性ペースト層を塗布する時、誘電体グリーンシートの表面の一部領域にだけ導電性ペースト層を塗布し、誘電体グリーンシートの表面の両側の側面には導電性ペースト層を塗布しない誘電体グリーンシートを積層した後、焼成することによって形成することができる。
【0049】
カバー領域112、113と側面カバー領域は、物理的または化学的ストレスによる第1内部電極121および第2内部電極122の損傷を防止する役割を果たす。
【0050】
この時、本発明による内部電極は、内部電極物質として下記の化学式1に表される化合物を含む。
[化学式1]
M1a+1M2M3a
前記化学式1中、M1はTi、V、Sc、ZrまたはMoであり、M2はAl、Si、Sn、Cd、In、Ga、Ge、Pb、As、SまたはPであり、M3はCまたはNであり、aは1~3である。
【0051】
後述するように、積層型キャパシタは、導電性ペーストとセラミック粉末を含むセラミックグリーンシートをシート法や印刷法などによって積層し、同時焼成して製造することができる。
【0052】
従来は、内部電極物質でニッケル(Ni)粉末が一般に使用され、誘電体セラミック粉末として主にBaTiO3が使用された。しかし、誘電体層を形成するために、セラミックグリーンシートは約1100℃以上の高温で焼成されるのに対し、ニッケル粉末含有導電性ペーストはより低温で焼結収縮する。したがって、セラミックグリーンシートの焼成中に内部電極層の過焼成が発生し、これにより内部電極でクラック(Crack)が発生したり、剥離(Delamination)するなどの問題が発生する可能性があった。これは積層型キャパシタの性能を低下させる。
【0053】
これを解決するために、従来内部電極導電性ペーストに二酸化ケイ素(SiO2)またはナノチタンバリウム(BaTiO3)等を添加したり、タングステン(W)のような金属を使用して高温焼結収縮を制御しようとした。しかし、二酸化ケイ素またはチタン酸バリウムは不導体であるため、電極の電気伝導度が低下する可能性があり、添加剤による追加工程および追加コストが発生する問題があった。
【0054】
また、ニッケル粉末は、キャパシタ製造のための焼成時、焼成雰囲気が還元雰囲気に調節しなければならないが、還元雰囲気で焼成する場合、工程コストが増加する問題があった。
【0055】
一方、本発明による内部電極は、内部電極物質として前記化学式1に表される化合物を含むことによって、別途の添加剤なく、焼結収縮温度が非常に高くなり、高温での焼結収縮率が減少することができる。これにより、内部電極のクラックまたは剥離現象を防止することができ、積層型キャパシタの性能低下を防止することができる。
【0056】
また、化学式1に表される化合物は、キャパシタ製造のための焼成工程時、酸化雰囲気でも焼成が可能である。これにより、還元ガス投入が不要となり、工程コストの減少という利点がある。
【0057】
それだけでなく、化学式1に表される化合物は、イオンの伝導度が従来ニッケル(Ni)と同等なレベルであるか、さらに向上することができる。したがって、本発明による内部電極は、従来ニッケル内部電極と異なり、焼結収縮を制御するための別途の添加剤が不要であるため、電気伝導度の低下なしに内部電極を実現することができ、優れた電気伝導度を実現することができる。
【0058】
これにより、前記化合物は、熱機械分析(Thermomechanical Analyzer、TMA)で分析する場合、800℃の温度対比1100℃の温度での体積減少率が5%以下であることができる。
【0059】
また、前記化合物は、電気伝導度が1.05×106S/m以上であることもあって、より具体的には1.5×106S/m、2.0×106S/m、2.5×106S/m、3.0×106S/m、3.5×106S/m以上であることができる。
【0060】
具体的に、前記化学式1中、M1はTiまたはVであり、M2はAl、SiまたはSnであり、M3はCであってもよい。より具体的に、前記化合物は、Ti3AlC2、Ti2AlC、V2AlC、Ti3SiC2またはTi3SnC2-であってもよい。化学式1に表される化合物がこれと同一である時、先に言及した高温焼結収縮率抑制効果およびイオンの伝導度向上効果がより望ましく実現される。
【0061】
また、前記化学式1に表される化合物は、BET比表面積が1.0~2.2m2/gであり、より具体的には1.2~2.1m2/gであることができる。化学式1に表される化合物のBET比表面積が小さすぎると、内部電極厚さの増加、電気伝導度低下の問題がある。化学式1に表される化合物のBET比表面積が大きすぎると、粒子凝集による接続性低下、密度低下の問題がある。
【0062】
本明細書において、「BET比表面積」は、BET法(Surface area and Porosityan alyzer)(Micromeritics、ASAP2020を利用して測定することができる。
【0063】
また、前記化学式1に表される化合物の平均粒径(D50)は、400~700nmであることができる。化学式1に表される化合物の平均粒径が小さすぎると、粒子凝集の問題が発生する可能性がある。化学式1に表される化合物の平均粒径が大きすぎると、内部電極厚みが増加する問題がある可能性がある。
【0064】
本明細書において、「平均粒径(D50)」とは、粒子の粒径分布曲線において、体積累積量の50%に相当する粒径と定義することができる。前記平均粒径(D50)は、例えば、レーザ回折法(laser diffraction method)を利用して測定することができる。前記レーザ回折法は、一般にサブミクロン(submicron)領域から数mm程度の粒径の測定が可能であり、高再現性および高分解性の結果を得ることができる。
【0065】
一方、前記内部電極は、ニッケル(Ni)を含まなくてもよい。即ち、本発明による内部電極物質は、従来ニッケル含有内部電極に対する添加剤あるいは補充剤ではなく、主たる内部電極物質として使用することができる。
【0066】
また、前記内部電極は、チタン酸バリウム(BaTiO3)、二酸化ケイ素(SiO2)およびタングステン(W)を含まなくてもよい。即ち、本発明による内部電極は、内部電極物質として化学式1の化合物を使用することにより、従来ニッケルの高温焼結収縮を制御するための別の添加剤を含まなくてもよい。これにより、添加剤使用による電気伝導度の低下を防止することができ、工程コストを節減することができる。
【0067】
一方、誘電体層111は、複数の誘電体結晶粒1111を含むことができる。
【0068】
誘電体結晶粒1111は、主成分と副成分を含むことができる。
【0069】
主成分は、BamTiO3(0.995≦m≦1.010)、(Ba1-XCax)m(Ti1-yZry)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Bam(Ti1-xZrx)O3(0.995≦m≦1.010、x≦0.10)、(Ba1-XCax)m(Ti1-ySny)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、またはこれらの組み合わせを含む誘電材料であってもよい。
【0070】
副成分は、ハフニウム(Hf)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、錫(Sn)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0071】
また、副成分は、ランタン(La)、イットリウム(Y)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、タービウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0072】
一例として、誘電体層111の平均厚さは、0.5μm~10μmであることができる。
【0073】
一方、第1内部電極121と第2内部電極122は、互いに異なる極性を有する電極であり、誘電体層111を間においてT軸方向に沿って互いに対向するように交互に配置され、一端がキャパシタボディー110の第3および第4面を通してそれぞれ露出することができる。
【0074】
第1内部電極121と第2内部電極122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に絶縁することができる。
【0075】
キャパシタボディー110の第3および第4面を通して交互に露出する第1内部電極121および第2内部電極122の端部は、第1外部電極131および第2外部電極132とそれぞれ接続されて電気的に接続することができる。
【0076】
第1内部電極121および第2内部電極122は、導電性物質を含む導電性ペーストを使用して形成することができる。導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを利用することができる。
【0077】
一例として、第1内部電極121および第2内部電極122の平均厚さは、0.1μm~2μmであることができる。
【0078】
第1外部電極131および第2外部電極132は、互いに異なる極性の電圧が提供され、第1内部電極121および第2内部電極122の露出する部分とそれぞれ接続されて電気的に接続することができる。
【0079】
前記のような構成により、第1外部電極131および第2外部電極132に所定の電圧を印加すると、互いに対向する第1内部電極121および第2内部電極122の間に電荷が蓄積される。この時、積層型キャパシタ100の静電容量は、アクティブ領域でT軸方向に沿って互いに重なる第1内部電極121および第2内部電極122のオーバーラップされた面積と比例するようになる。
【0080】
第1外部電極131および第2外部電極132は、キャパシタボディー110の第3および第4面にそれぞれ配置され、第1内部電極121および第2内部電極122と接続する第1および第2接続部と、キャパシタボディー110の第3および第4面と、第1および第2面または第5および第6面が会う角部に配置される第1および第2バンド部をそれぞれ含むことができる。
【0081】
第1および第2バンド部は、第1および第2接続部からキャパシタボディー110の第1および第2面または第5および第6面の一部までそれぞれ延びることができる。第1および第2バンド部は、第1外部電極131および第2外部電極132の固着強度を向上させる役割を果たすことができる。
【0082】
一例として、第1外部電極131および第2外部電極132は、それぞれ、キャパシタボディー110と接触する焼結金属層、焼結金属層を覆うように配置される伝導性樹脂層、および伝導性樹脂層を覆うように配置されるメッキ層を含むことができる。
【0083】
焼結金属層は、導電性金属およびガラスを含むことができる。
【0084】
一例として、焼結金属層は、導電性金属として、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタニウム(Ti)、鉛(Pb)、これらの合金、またはこれらの組み合わせを含むことができ、例えば、銅(Cu)は銅(Cu)合金を含むことができる。導電性金属が銅を含む場合、銅以外の金属は銅100モル部に対して5モル部以下を含むことができる。
【0085】
一例として、焼結金属層は、ガラスに酸化物が混合された組成を含むことができ、例えば、ケイ素酸化物、ホウ素酸化物、アルミニウム酸化物、遷移金属酸化物、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物からなる群から選択される一つ以上であることができる。遷移金属は、亜鉛(Zn)、チタニウム(Ti)、銅(Cu)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)およびニッケル(Ni)からなる群から選択され、アルカリ金属は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)およびカリウム(K)からなる群から選択され、アルカリ土類金属は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)からなる群から選択される一つ以上であることができる。
【0086】
焼結金属層における導電性金属とガラスの含有量は特に限定されないが、例えば、積層型キャパシタ100の厚さ方向(W軸方向)に垂直な断面(L軸方向およびT軸方向断面)における導電性金属の平均面積は、焼結金属層の全体面積対比30%~90%、または70%~90%であってもよい。
【0087】
選択的に、伝導性樹脂層は焼結金属層の上に形成され、例えば、焼結金属層を完全に覆う形態で形成することができる。一方、第1外部電極131および第2外部電極132は、焼結金属層を含まないことができ、この場合、伝導性樹脂層がキャパシタボディー110と直接接触することができる。
【0088】
伝導性樹脂層は、キャパシタボディー110の第1および第2面または第5および第6面に延び、伝導性樹脂層がキャパシタボディー110の第1および第2面または第5および第6面に延びて配置された領域(即ち、バンド部)の長さは、焼結金属層がキャパシタボディー110の第1面および第2面または第5および第6面に延びて配置された領域(即ち、バンド部)の長さよりも長いこともできる。即ち、伝導性樹脂層は焼結金属層の上に形成され、焼結金属層を完全に覆う形態で形成することができる。
【0089】
伝導性樹脂層は、樹脂および導電性金属を含む。
【0090】
伝導性樹脂層に含まれる樹脂は、接合性および衝撃吸水性を有し、導電性金属粉末と混合してペーストを作ることができるものであれば特に限定されず、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、またはポリイミド樹脂を含むことができる。
【0091】
伝導性樹脂層に含まれる導電性金属は、第1内部電極121および第2内部電極122または焼結金属層と電気的に接続されるようにする役割を果たす。
【0092】
伝導性樹脂層に含まれる導電性金属は、球形、フレーク型、またはこれらの組み合わせの形態を有することができる。即ち、導電性金属はフレーク型のみであったり、球形のみであったり、フレーク型と球形が混合された形態であってもよい。
【0093】
ここで、球形は、完全な球形ではない形態も含むことができ、例えば、長軸と短軸の長さの比率(長軸/短縮)が1.45以下の形態を含むことができる。フレーク型粉末とは、平坦でありながら細長い形状を有する粉末を意味し、特に限定されないが、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短縮)が1.95以上であってもよい。
【0094】
第1外部電極131および第2外部電極132は、伝導性樹脂層の外側に配置されるメッキ層をさらに含むことができる。
【0095】
メッキ層は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、タングステン(W)、チタニウム(Ti)または鉛(Pb)等の単独またはこれらの合金を含むことができる。一例として、メッキ層は、ニッケル(Ni)メッキ層または錫(Sn)メッキ層であることもでき、ニッケル(Ni)メッキ層および錫(Sn)メッキ層が順次積層された形態であってもよく、錫(Sn)メッキ層、ニッケル(Ni)メッキ層および錫(Sn)メッキ層が順次積層された形態であってもよい。また、メッキ層は、複数がニッケル(Ni)メッキ層および/または複数の錫(Sn)メッキ層を含むこともできる。
【0096】
メッキ層は、積層型キャパシタ100の基板との実装性、構造的信頼性、外部に対する耐久性、耐熱性および等価直列抵抗値(Equivalent Series Resistance、ESR)を改善することができる。
【0097】
本発明のまた他の一実施形態は、誘電体粉末を利用して誘電体グリーンシートを形成する段階;前記誘電体グリーンシートの表面に下記の化学式1に表され、BET比表面積が1.0~2.2m2/gの化合物を含む導電性ペースト層を形成する段階;前記導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシートを積層して誘電体グリーンシート積層体を形成する段階;前記誘電体グリーンシート積層体を酸化雰囲気で焼成して誘電体層および内部電極を含むキャパシタボディーを形成する段階;および前記キャパシタボディーの一面に外部電極を形成する段階を含む、積層型キャパシタの製造方法を提供する。
[化学式1]
M1a+1M2M3a
前記化学式1中、M1はTi、V、Sc、ZrまたはMoであり、M2はAl、Si、Sn、Cd、In、Ga、Ge、Pb、As、SまたはPであり、M3はCまたはNであり、aは1~3である。
【0098】
以下、本発明のまた他の一実施形態による積層型キャパシタの製造方法をより詳しく説明する。
【0099】
まず、キャパシタボディーの製造について説明する。
【0100】
キャパシタボディーの製造工程では、焼成後に誘電体層となる誘電体用ペーストと、焼成後に内部電極となる導電性ペーストを準備する。
【0101】
誘電体用ペーストは、例えば次のような方法で製造する。誘電体粉末を湿式混合などの手段により均一に混合し、乾燥させた後、所定の条件で熱処理することにより、可塑粉末を得る。得られた可塑粉末に、有機ビヒクルまたは水系ビヒクルを加えて混練し、誘電体用ペーストを調製する。
【0102】
得られた誘電体用ペーストをドクターブレード法などの技法によりシート化することによって、誘電体グリーンシートを得る。また、誘電体用ペーストには、必要に応じて、各種分散剤、可塑剤、誘電体、副成分化合物、またはガラスなどから選択される添加物が含まれている場合がある。
【0103】
内部電極用導電性ペーストは、化学式1に表される化合物、即ち、内部電極物質粉末とバインダーや溶剤を、混練して調製する。
【0104】
この時、内部電極用導電性ペーストは、ニッケル(Ni)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、二酸化ケイ素(SiO2)およびタングステン(W)を含まなくてもよい。即ち、本発明による積層型キャパシタは、内部電極物質として化学式1の化合物を使用するため、従来の内部電極物質であるニッケルを含まないことができ、ニッケルの焼結収縮を制御するために使用される別途の添加剤を含まなくてもよい。これにより、添加剤使用による電気伝導度低下を防止することができ、工程コストが節減することができる。
【0105】
誘電体グリーンシートの表面に、スクリーン印刷などの各種印刷法や転写法によって、内部電極用導電性ペーストを所定のパターンで塗布する。そして、内部電極パターンを形成した誘電体グリーンシートを複数層にわたって積層した後、積層方向にプレスすることにより、誘電体グリーンシート積層体を得る。この時、誘電体グリーンシート積層体の積層方向の上面および下面には、誘電体グリーンシートが位置するように、誘電体グリーンシートと内部電極パターンを積層することができる。
【0106】
選択的に、得られた誘電体グリーンシート積層体をダイシングなどにより所定のサイズに切断することができる。
【0107】
また、誘電体グリーンシート積層体は、必要に応じて可塑剤などを除去するために固化乾燥することができ、固化乾燥後に、水平遠心バレル機などを利用してバレル研磨することができる。バレル研磨では、誘電体グリーンシート積層体をメディアおよび研磨液とともに、バレル容器内に投入し、そのバレル容器に対して回転運動や振動などを付与することにより、切断時に発生したバリなどの不要部分を研磨することができる。またバレル研磨後、誘電体グリーンシート積層体は水などの洗浄液で洗浄し、乾燥されることができる。
【0108】
誘電体グリーンシート積層体を脱バインダー処理および焼成処理してキャパシタボディーを得る。
【0109】
脱バインダー処理の条件は、誘電体層の主成分組成や内部電極の主成分組成に応じて適切に調節することができる。例えば、脱バインダー処理時の昇温速度は、5℃/時間~300℃/時間、支持温度は180℃~400℃、温度維持時間は0.5時間~24時間であってもよい。脱バインダー雰囲気は、空気または還元性雰囲気であることができる。
【0110】
焼成処理の条件は、誘電体層の主成分組成や内部電極の主成分組成に応じて適切に調節することができる。例えば、焼成の時の温度は、1200℃~1350℃、または1220℃~1300℃であることもでき、時間は0.5時間~8時間、または1時間~3時間であってもよい。
【0111】
特に、前記焼成時雰囲気は、酸化雰囲気であることができる。従来の内部電極物質としてニッケルを使用する場合には、還元性雰囲気で焼成を行った。例えば、従来は窒素ガス(N2)と水素ガス(H2)の混合ガスを加湿した雰囲気として、酸素分圧が1.0×10-14MPa~1.0×10-10MPaに制御された雰囲気で焼成を行った。一方、本発明による積層型キャパシタは、内部電極物質として、化学式1の化合物を使用することによって、酸化雰囲気で行うことができる。これにより、工程コストを減少できる利点がある。
【0112】
例えば、前記酸化雰囲気は、空気(air)または酸素(O2)雰囲気であることができる。
【0113】
また、前記焼成は、ホットプレス(Hot Press)方法で行うことができる。内部電極物質として化学式1の化合物を使用する場合、ホットプレス方法で焼成を行う場合、高温焼成によるガス離脱を防止し、内部電極のクラックを防止することができる。
【0114】
選択的に、得られたキャパシタボディーの第3および第4面に対して、サンドブラスティング処理、レーザ照射、またはバレル研磨などの表面処理を行うことができる。このような表面処理を実施することによって、第3および第4面の最表面に第1内部電極および第2内部電極の端部を露出させることができ、これにより、第1外部電極および第2外部電極と第1内部電極および第2内部電極の電気的接合が良好になり、合金部が形成されやすくなる。
【0115】
得られたキャパシタボディーの外面に、外部電極で焼結金属層形成用ペーストを塗布した後、焼結させて、焼結金属層を形成することができる。
【0116】
焼結金属層形成用ペーストは、導電性金属とガラスを含むことができる。導電性金属とガラスに対する説明は上述と同様であるため、繰り返しの説明は省略する。また、焼結金属層形成用ペーストは、選択的に、バインダー、溶剤、分散剤、可塑剤、または酸化物粉末などの副成分を含むことができる。例えば、バインダーは、エチルセルロース、アクリル、またはブチラール(butyral)などを使用することができ、溶剤は、テルピオネール、ブチルカルビトール、アルコール、メチルエチルケトン、アセトン、またはトルエンなどの有機溶剤や、水系溶剤を使用することができる。
【0117】
焼結金属層形成用ペーストをキャパシタボディー外面に塗布する方法としては、ディップ法、またはスクリーン印刷などの各種印刷法、ディスペンサーなどを利用した塗布法、またはスプレーを利用した噴霧法などを使用することができる。焼結金属層用ペーストは、少なくともキャパシタボディーの第3および第4面に塗布され、選択的に第1外部電極および第2外部電極のバンド部が形成される第1面、第2面、第5面、または第6面の一部にも塗布することができる。
【0118】
その後、焼結金属層形成用ペーストが塗布されたキャパシタボディーを乾燥させ、700℃~1000℃の温度で0.1時間~3時間焼結させて、焼結金属層を形成する。
【0119】
選択的に、得られたキャパシタボディーの外面に、伝導性樹脂層形成用ペーストを塗布した後、硬化して、伝導性樹脂層を形成することができる。
【0120】
伝導性樹脂層形成用ペーストは、樹脂、および選択的に導電性金属または非伝導性フィラーを含むことができる。導電性金属と樹脂に対する説明は、上述と同様であるため、繰り返しの説明は省略する。また、伝導性樹脂層形成用ペーストは、選択的に、バインダー、溶剤、分散剤、可塑剤、または酸化物粉末などの副成分を含むことができる。例えば、バインダーは、エチルセルロース、アクリル、またはブチラール(butyral)などを使用することができ、溶剤は、テルピオネール、ブチルカルビトール、アルコール、メチルエチルケトン、アセトン、またはトルエンなどの有機溶剤や、水系溶剤を使用することができる。
【0121】
一例として、伝導性樹脂層の形成方法は、伝導性樹脂層形成用ペーストにキャパシタボディー110をディッピングして形成した後に硬化させたり、伝導性樹脂層形成用ペーストをキャパシタボディー110の表面にスクリーン印刷法またはグラビア印刷法などで印刷したり、伝導性樹脂層形成用ペーストをキャパシタボディー110の表面に塗布した後に硬化させて形成することができる。
【0122】
次に、伝導性樹脂層の外側にメッキ層を形成する。
【0123】
一例として、メッキ層は、メッキ法によって形成されることができ、スパッタまたは電解メッキ(Electric Deposition)によって形成することもできる。
【0124】
以下、実施例を通して本発明の具現例をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明の望ましい一実施例にすぎず、本発明が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0125】
実施例1:Ti3AlC2内部電極物質製造
固形状法(ボールミリング(Ball milling))でTi3AlC2粉末を製造した。
【0126】
実施例2:Ti2AlC内部電極物質製造
固形状法(ボールミリング(Ball milling))でTi2AlC粉末を製造した。
【0127】
実施例3:V2AlC内部電極物質製造
固形状法(ボールミリング(Ball milling))でV2AlC粉末を製造した。
【0128】
実施例4:Ti3SiC2内部電極物質製造
固形状法(ボールミリング(Ball milling))でTi3SiC2粉末を製造した。
【0129】
実施例5:Ti3SnC2内部電極物質製造
固形状法(ボールミリング(Ball milling))でTi3SnC2粉末を製造した。
【0130】
比較例1:Ni内部電極物質用意
ニッケル粉末(Guangbo社)を準備した。
【0131】
比較例2
固形状法(ボールミリング(Ball milling))でMo2GaC粉末を製造した。
【0132】
比較例3
固形状法(ボールミリング(Ball milling))でZr2TiC粉末を製造した。
【0133】
比較例4
固形状法(ボールミリング(Ball milling))でCr2AlC粉末を製造した。
【0134】
比較例5
固形状法(ボールミリング(Ball milling))でTa4AlC3粉末を製造した。
【0135】
比較例6
固形状法(ボールミリング(Ball milling))でNb4AlC3粉末を製造した。
【0136】
比較例7
固形状法(ボールミリング(Ball milling))でHf2InC粉末を製造した。
【0137】
実験例1:内部電極物質BET比表面積評価
実施例および比較例により製造された内部電極物質粉末に対して、BET法(Surface area and Porosity analyzer)(Micromeritics、ASAP2020)を利用して比表面積を測定した。その結果を表1に示した。
【0138】
実験例2:内部電極物質高温焼成収縮特性評価
実施例および比較例により製造された内部電極物質に対して、高温焼成時収縮特性を評価するために熱処理温度に応じた体積減少率を測定した。
【0139】
より具体的に、熱機械分析(Thermomechanical Analyzer、TMA)を利用して、800℃の温度対比1100℃の温度での体積減少率を測定した。
その結果を表1および
図4に示した。
【0140】
実験例3:内部電極物質電気伝導度評価
実施例および比較例により製造された内部電極物質に対して電気伝導度を評価し、その結果を表1に示した。
【0141】
より具体的に、四探針メーター(Four Point Probe meter)を利用して電気伝導度を測定した。
【0142】
実験例4:密度比(Density Ratio)評価
実施例および比較例により製造された内部電極物質に対して、密度比(Density Ratio)を評価し、その結果を表1に示した。
【0143】
より具体的に、アルキメデス法を利用して密度比(実験/理論、%)(Density Ratio(experimental/theoretical、%))を測定した。
【0144】
【0145】
表1を参照すれば、内部電極物質化合物の種類が適切に選択され、BET比表面積が適切に制御された実施例1~5の場合、体積減少率が小さく、電気伝導度が良好であることが確認できた。一方、比較例1の場合、電気伝導度は良好であるが、体積減少率が大きすぎることが確認できた。
【0146】
また、比較例2の場合、内部電極物質化合物の種類が適切に選択されても、BET比表面積が大きすぎる結果、密度が小さすぎることが確認できた。
【0147】
また、比較例5の場合、内部電極物質化合物の種類が適切に選択されても、BET比表面積が小さすぎる結果、電気伝導度が低いことが確認できた。
【0148】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明及び添付した図面の範囲内で様々な変形を加えて実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属することは当然である。
【0149】
したがって、本発明の実質的な権利範囲は、添付された特許請求の範囲とその均等物によって定義されるといえる。
【符号の説明】
【0150】
100 積層型キャパシタ
110 キャパシタボディー
111 誘電体層
112、113 カバー領域
121 第1内部電極
122 第2内部電極
131 第1外部電極
132 第2外部電極