(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152724
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】非晶質炭素膜及びその蒸着方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/26 20060101AFI20241018BHJP
C23C 16/505 20060101ALI20241018BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C23C16/26
C23C16/505
H01L21/31 C
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024065518
(22)【出願日】2024-04-15
(31)【優先権主張番号】10-2023-0048911
(32)【優先日】2023-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】517187614
【氏名又は名称】テス カンパニー、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】キム クァン-キ
(72)【発明者】
【氏名】キム ナム-ソ
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA09
4K030AA14
4K030AA16
4K030AA18
4K030BA27
4K030BB05
4K030FA03
4K030JA05
4K030JA09
4K030JA10
4K030JA16
5F045AA08
5F045AB07
5F045AC11
5F045AC12
5F045AC15
5F045AC16
5F045AC17
5F045AD08
5F045AD09
5F045AD10
5F045AE21
5F045AE23
5F045DA62
5F045DA69
5F045DP03
5F045EF05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い選択比を有しながらも、相対的に低い圧縮応力を有する非晶質炭素膜及びその蒸着方法を提供する。
【解決手段】非晶質炭素膜の蒸着方法は、(a)チャンバ2内に基板Wをローディングする段階と、(b)炭素を含む前駆体、酸素を含む前駆体、及び窒素を含む前駆体を放電して、基板W上に酸素及び窒素ドープされた非晶質炭素膜を蒸着する段階と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)チャンバ内に基板をローディングする段階と、
(b)炭素を含む前駆体、酸素を含む前駆体、及び窒素を含む前駆体を放電して、前記基板上に酸素及び窒素ドープされた非晶質炭素膜を蒸着する段階と、
を含むことを特徴とする、
非晶質炭素膜の蒸着方法。
【請求項2】
前記炭素を含む前駆体は、気体状態の炭素化合物であることを特徴とする、
請求項1に記載の非晶質炭素膜の蒸着方法。
【請求項3】
前記酸素を含む前駆体は、酸素ガスであることを特徴とする、
請求項1に記載の非晶質炭素膜の蒸着方法。
【請求項4】
前記酸素を含む前駆体は、80~500sccmの流量で前記チャンバ内に供給されることを特徴とする、
請求項3に記載の非晶質炭素膜の蒸着方法。
【請求項5】
前記窒素を含む前駆体は、窒素ガスであることを特徴とする、
請求項1に記載の非晶質炭素膜の蒸着方法。
【請求項6】
前記窒素を含む前駆体は、100~1000sccmの流量で前記チャンバ内に供給されることを特徴とする、
請求項5に記載の非晶質炭素膜の蒸着方法。
【請求項7】
上記(b)段階は、3~8Torrの工程圧力、1000~3000Wのプラズマパワー、及び400~650℃の基板温度の条件で行われることを特徴とする、
請求項1に記載の非晶質炭素膜の蒸着方法。
【請求項8】
炭素基地に酸素及び窒素がドープされており、200MPa以下の圧縮応力及び40MPa以上のモジュラスを有することを特徴とする、
非晶質炭素膜。
【請求項9】
前記非晶質炭素膜は、5.0GPa以上のビッカース硬さを有することを特徴とする、
請求項8に記載の非晶質炭素膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程でハードマスクとして主に用いられる非晶質炭素膜の蒸着技術に関する。より具体的には、本発明は、高い選択比を有しながらも、相対的に低い圧縮応力を有する非晶質炭素膜及びその蒸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造工程で適用中であるナンド(NAND)デバイス構造では、水平型ナンド構造と垂直型ナンド構造とがある。より微細なパターンが求められることから、最近は、垂直型ナンド(VNAND)構造に対する研究が多く行われている。
【0003】
垂直型NAND構造を達成するためには、高い選択比(Selectivity)を要求するハードマスク(Hard mask)工程が必要とされる。このような要求事項を満たすために、非晶質炭素膜(ACL)が代表的なハードマスクとして用いられてきた。シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜が垂直方向に数十~数百の層に交互に積層された多層絶縁膜に、ハードマスクとして非晶質炭素膜をPECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)工程で蒸着した後、エッチング工程によって多層絶縁膜を垂直に貫通する細長い孔を形成する。
【0004】
垂直型NANDデバイスにおける多層絶縁膜の高い層数を考慮するとき、非晶質炭素膜がハードマスクとして正しい働きをするためには、非晶質炭素膜の選択比が高い必要がある。
【0005】
非晶質炭素膜の選択比を高める方法では、種々の方法が提案されている。例えば、韓国公開特許公報第10-2017-0093003号(2017年8月14日)には、炭化水素前駆体を用いてドーパントが注入されていない炭素膜を蒸着する段階と、炭化水素前駆体及びホウ素前駆体を用いてドーパントが注入された炭素膜を蒸着する段階と、を繰り返して、ホウ素ドープ炭素膜とホウ素非ドープ炭素膜とが交互に積層された多層構造の非晶質炭素膜の蒸着方法が開示されている。
【0006】
一方、非晶質炭素膜の選択比が高くなると、圧縮応力(Compressive Stress)も増加する傾向にある。但し、圧縮応力が増加しすぎると、ウエハ固定(Wafer Chucking)における問題が生じ得、その結果、デバイス収率の低下をもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、PECVD工程の制御によって高い選択比を有しながらも、相対的に低い圧縮応力を有する非晶質炭素膜を蒸着する方法を提供することである。
【0008】
また、本発明が解決しようとする課題は、高い選択比を有しながらも、相対的に低い圧縮応力を有する非晶質炭素膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明の一実施例による非晶質炭素膜の蒸着方法は、(a)チャンバ内に基板をローディングする段階と、(b)炭素を含む前駆体、酸素を含む前駆体、及び窒素を含む前駆体を放電して、前記基板上に酸素及び窒素ドープされた非晶質炭素膜を蒸着する段階と、を含むことを特徴とする。
【0010】
前記炭素を含む前駆体は、気体状態の炭素化合物であってもよい。
【0011】
前記酸素を含む前駆体は、酸素ガスであってもよい。前記酸素ガスは、80~500sccmの流量でチャンバ内に供給されていてもよい。
【0012】
前記窒素を含む前駆体は、窒素ガスを含んでいてもよい。前記窒素ガスは、100~1000sccmの流量でチャンバ内に供給されていてもよい。
【0013】
上記(b)段階は、3~8Torrの工程圧力、1000~3000Wのプラズマパワー、及び400~650℃の基板温度の条件で行うことができる。
【0014】
前記炭素を含む前駆体は、ArまたはHeと共に供給されていてもよい。
【0015】
上記課題を解決するため本発明の一実施例による非晶質炭素膜の炭素基地に酸素及び窒素がドープされており、200MPa以下の圧縮応力及び40MPa以上のモジュラスを有することを特徴とする。
【0016】
前記非晶質炭素膜は、5.0GPa以上のビッカース硬さを示すことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明による非晶質炭素膜の蒸着方法によれば、炭素を含む前駆体と共に、酸素を含む前駆体及び窒素を含む前駆体を用いることにより、酸素及び窒素がドープされた非晶質炭素膜を蒸着することができる。
【0018】
本発明による酸素及び窒素がドープされた非晶質炭素膜は、高い選択比を有しながらも、低い圧縮応力を有することができた。よって、酸素及び窒素がドープされた非晶質炭素膜は、高すぎる圧縮応力によって発生し得るウエハ固定の不良を抑制することができる。
【0019】
また、本発明による酸素及び窒素がドープされた非晶質炭素膜は、低い圧縮応力を有しながらも、さらに高いモジュラスを有することができ、非晶質炭素膜の厚みが増加することなく、例えば、垂直型NANDデバイスを製造するためハードマスクとして用いることができる。
【0020】
本発明の効果は、以上で言及した効果に限らず、言及していないさらに他の効果は、下記の詳細な説明から当業者にとって明確に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による非晶質炭素膜の蒸着方法を概略的に示した図である。
【
図2】本発明による非晶質炭素膜の蒸着方法に用いられるPECVD装置の例を概略的に示した図である。
【
図3】実施例及び比較例に従って蒸着した非晶質炭素膜の応力と硬さを示した図である。
【
図4】実施例及び比較例に従って蒸着した非晶質炭素膜の応力とモジュラスを示した図である。
【
図5】実施例及び比較例に従って蒸着した非晶質炭素膜の硬さとモジュラスを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述する実施例を参照すれば明確になる。しかし、本発明は、以下で開示の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態に具現されるものである。但し、本実施例は、本発明の開示を完全なものにして、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範囲によって定義されるだけである。
【0023】
要素又は層が、他の要素又は層の「上部」又は「下部」にあると言及されていることは、他の要素又は層の真上又は真下だけでなく、その間に他の層又は他の要素を介在した場合をいずれも含む。また、ある要素が他の要素に「連結」、「結合」又は「接続」されると記載した場合、上記要素は、互いに直接に連結されるか又は接続されていてもよいものの、各要素の間に他の要素が「介在」するか、各要素が他の要素を介して「連結」、「結合」又は「接続」されていてもよいと理解しなければならない。
【0024】
本明細書で使われている用語は、実施例を説明するためのものであり、よって、本発明を制限するためのものではない。本明細書において、単数の形は、文で特に言及しない限り、複数の形も含む。明細書で使われる「含む」及び/又は「包含する」は、言及した要素、素子、ステップ及び/又は動作は、1以上の他の要素、素子、ステップ及び/又は動作の存在又は追加を排除しない。
【0025】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施例による非晶質炭素膜及びその蒸着方法について詳説すれば、次のとおりである。
【0026】
一般に、非晶質炭素膜は、炭素が規則的に配列された黒鉛とは異なり、炭素が非晶質状態で配列された膜を意味する。非晶質炭素膜は、エッチング選択比が高くて、剛性が高く、半導体製造工程、特に、垂直に深くエッチングする必要のある工程でハードマスクとして用いられるのに好適である。
【0027】
しかしながら、垂直型NANDデバイスの多層絶縁膜のように、エッチングの対象となる材料の厚みが増加すると、エッチングの終了時までハードマスクの働きをするためには、非晶質炭素膜の厚みも増加する必要がある。非晶質炭素膜の厚みの増加は、生産性の低下、かつ、CD(Critical Dimension)特性が低下する問題点を引き起こし得る。このため、高い選択比と共に高いモジュラスを有する非晶質炭素膜が必要であり、これは、圧縮応力を有する非晶質炭素膜により達成することができる。但し、圧縮応力が高すぎる場合、ウエハ固定の不良などの問題点が発生し得る。よって、高い選択比を有しながらも、相対的に低い圧縮応力を有する非晶質炭素膜が必要である。本発明の発明者らは、長い間研究した結果、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)工程を用いた非晶質炭素膜を蒸着するとき、酸素(O2)と窒素(N2)とを共にドープすると、高い選択比を有しながらも、相対的に低い圧縮応力を有する非晶質炭素膜を蒸着できることを見出した。
【0028】
これは、プラズマ工程によって生成される酸素と窒素の解離種が炭化水素、例えば、C3H6から解離した水素と反応して、水素の含量が低減し得、これによって、sp2構造よりもsp3構造の炭素膜の形成の割合が増大し得ることに起因する。
【0029】
その結果、類似する圧縮応力を有しても、sp3構造が増大する効果があるため、相対的にさらに堅く、選択比に優れる非晶質炭素膜が蒸着し得る。同様、類似する選択比を有しても、低い圧縮応力を有する非晶質炭素膜が蒸着し得る。
【0030】
図1は、本発明による非晶質炭素膜の蒸着方法を概略的に示したものである。
【0031】
図1を参照すると、示された非晶質炭素膜の蒸着方法は、基板ローディング段階(S110)及びONACL(Oxygen-doped and Nitrogen-doped Amorphous Carbon Layer)蒸着段階(S120)を含む。
【0032】
図1に示された非晶質炭素膜の蒸着方法は、例えば、
図2に示されたPECVD装置を用いることができる。
【0033】
図2を参照すると、示されたPECVD装置1は、ガス供給ライン(S)、チャンバ2、シャワーヘッド3、サセプタ4、RF電源5、及び第1電極6を備える。
【0034】
ガス供給ライン(S)は、チャンバ2の外部の反応ガス、不活性ガスなどをチャンバ2の内部に供給する働きをする。
図2には、チャンバ2と連結される1つのガス供給ライン(S)のみ示されている。この場合、複数個のガス供給ラインがチャンバ2と連結される1つのガス供給ラインに連結されていてもよい。他の例では、各々のガス供給ラインがチャンバ2と連結されていてもよい。
【0035】
例えば、炭素を含む前駆体が炭化水素ガスであり、酸素を含む前駆体が酸素ガスである場合、これらは、反応可能性が多少高いことから、それぞれ別途々にチャンバに供給された後、チャンバ2内で互いに接触するのが好ましい。炭化水素ガスと酸素ガスは、シャワーヘッド3とサセプタ4との間で接触するのがより好ましい。
【0036】
1つまたは複数のガス供給ラインを介してチャンバの内部に供給されるガスは、炭素を含む前駆体、酸素を含む前駆体、窒素を含む前駆体、及び不活性ガスなどになり得る。炭素を含む前駆体は、キャリアガスなしにチャンバの内部に独立して供給されるか、キャリアガスとして不活性ガスと共にチャンバの内部に供給されていてもよい。同様、酸素を含む前駆体または窒素を含む前駆体も、チャンバの内部に独立して供給されるか、不活性ガスと共にチャンバの内部に供給されていてもよい。
【0037】
一方、炭素を含む前駆体が液状である場合、気化器を介して気化し、チャンバの内部に供給されていてもよい。
【0038】
不活性ガスは、他の前駆体と共にチャンバ内に供給されるか、別途のガス供給ラインを介してチャンバ内に供給されていてもよい。
【0039】
シャワーヘッド3は、チャンバ2の内部の上側に備えられて、ガス供給ライン(S)を介して注入されたガスをチャンバの内部に噴射させる。
【0040】
チャンバ2の内部の下側には、ウエハのような基板(W)がローディング(支持)されるサセプタ4が備えられる。サセプタ4には、基板の昇温/冷却のため温度調節手段を備えることができる。また、サセプタ4は、
図1に示された例のように、接地電極として機能することができる。接地性をさらに向上させるために、別途の接地ライン8を備えることができる。示してはいないものの、サセプタ4自体に高周波電源またはDC電源を連結して、第2電極(バイアス電極)で構成することもできる。
【0041】
第1電極6は、RF電源5に電気的に連結されて、チャンバ2内でプラズマ放電のため電極に用いられる。
図1に示された例では、シャワーヘッド3が第1電極6と電気的に連結(3a)されて、第1電極6とシャワーヘッド3が共に単一電極として機能するようになっている。これによって、RF電源5で発生したRFパワーは、第1電極6及びシャワーヘッド3を介して工程チャンバ2の内部に印加される。RFフィルタ7は、工程チャンバ2の周辺に発生する信号の干渉を除去する働きをする。
【0042】
本発明による非晶質炭素膜の蒸着方法は、
図2に例示されたPECVD装置を用いるほか、公知の様々なPECVD装置を用いることができる。
【0043】
さらに
図1を参照すると、基板ローディング段階(S110)では、チャンバ内のサセプタ4上に基板(W)をローディングする。その後、外部の真空システム(不図示)を用いて、工程チャンバ2の内部を真空化する。
【0044】
ONACL蒸着段階(S120)では、炭素を含む前駆体、酸素を含む前駆体、及び窒素を含む前駆体を放電して、基板上に酸素及び窒素ドープされた非晶質炭素膜を蒸着する。すなわち、炭素を含む前駆体と不活性ガス、かつ、酸素を含む前駆体及び窒素を含む前駆体の供給を開始しながら、RF電源5から約1000~3000WのRFパワーを印加して、シャワーヘッド3とサセプタ4との間で炭素化合物ガスを放電して、基板上に非晶質炭素膜を蒸着する。
【0045】
炭素を含む前駆体、酸素を含む前駆体、及び窒素を含む前駆体は、
図2に示されたPECVD装置のチャンバ2の内部で放電し得る。他の例では、炭素を含む前駆体、酸素を含む前駆体、及び窒素を含む前駆体のうち少なくとも一部は、チャンバの外部のリモートプラズマシステム(Remote Plasma System;RPS)で放電して、チャンバの内部に供給されていてもよい。
【0046】
炭素を含む前駆体は、メタノール(CH3OH)のような液体状態の炭素化合物や、アセチレン(C2H2)や、プロピレン(C3H6)といった気状の炭化水素のような気体状態の炭素化合物を用いることができる。このうち、液体状態の炭素化合物は、別途の気化器を必ず伴う必要があり、気体状態の炭素化合物が高い選択比を有する非晶質炭素膜の蒸着により有利であり得る。本発明における選択比は、他に言及しない限り、SiO2に対する選択比である。よって、炭素を含む前駆体は、気体状態の炭素化合物を用いるのがより好ましい。
【0047】
炭素を含む前駆体の供給量は、蒸着する非晶質炭素膜の厚み、工程チャンバ温度などによって異なって設定することができ、例えば、500~1500sccmの流量で供給されていてもよい。
【0048】
また、炭素を含む前駆体は、ヘリウムガス(He)、アルゴンガス(Ar)などの不活性ガスと共にチャンバの内部に供給されていてもよい。不活性ガスは、それぞれ約4000sccm以下の流量で工程チャンバの内部に供給されていてもよい。一例に、アルゴンガスは、2000~4000sccm、ヘリウムガスは、200~1000sccmの流量でチャンバの内部に供給されていてもよいものの、これに制限されるものではない。
【0049】
一方、気体状態の炭素化合物のみ用いて、高い選択比の非晶質炭素膜を蒸着する場合、圧縮応力が過度に増加し得る。本発明では、このような問題を解決すべく、炭素を含む前駆体と共に、酸素を含む前駆体及び窒素を含む前駆体を用いて、酸素及び窒素ドープされた非晶質炭素膜を蒸着した。
【0050】
酸素を含む前駆体は、酸素ガス(O2)、オゾンガス(O3)など、酸素を含むガスであってもよく、このうち、酸素ガスを用いるのがより好ましい。前記窒素を含む前駆体は、窒素ガス(N2)、アンモニアガス(NH3)など、窒素を含むガスであってもよく、このうち、窒素ガスを用いるのがより好ましい。
【0051】
一方、NO、NO2、N2Oなどの窒素酸化物のように、酸素と窒素をいずれも含む前駆体も考えられる。但し、窒素酸化物を用いる場合、酸素ガス及び窒素ガスを個別に用いた場合に比べて、非晶質炭素膜の蒸着率が過度に低くなり得る。
【0052】
酸素を含む前駆体は、80~500sccmの流量でチャンバ内に供給されていてもよい。窒素を含む前駆体は、100~1000sccmの流量でチャンバ内に供給されていてもよい。酸素を含む前駆体または窒素を含む前駆体の流量が低すぎる場合、酸素及び/または窒素のドープの不足により、目標とした高い選択比と低い圧縮応力とを同時に達成しにくいことがある。逆に、酸素を含む前駆体または窒素を含む前駆体の流量が高すぎる場合、それ以上の効果がなく、非晶質炭素膜のモジュラスなどの特性を低下させ得る。
【0053】
ONACL蒸着段階(S120)は、通常の非晶質炭素膜の蒸着条件下で行うことができる。例えば、ONACL蒸着段階(S120)は、3~8Torrの工程圧力、1000~3000Wのプラズマパワー、及び400~650℃の基板温度の条件で行うことができる。すなわち、本発明の場合、通常のPECVD工程で非晶質炭素膜を蒸着するものの、チャンバ内に炭素を含む前駆体と共に、酸素を含む前駆体及び窒素を含む前駆体が供給される。
【0054】
以上のような本発明による非晶質炭素膜の蒸着方法によれば、炭素を含む前駆体と共に、酸素を含む前駆体及び窒素を含む前駆体を用いることにより、酸素及び窒素がドープされた非晶質炭素膜を蒸着することができる。
【0055】
本発明による非晶質炭素膜は、炭素基地に酸素及び窒素がドープされている。本発明による非晶質炭素膜は、酸素及び窒素がドープされていることから、200MPa以下の圧縮応力及び40MPa以上のモジュラスを有することができる。気体炭化水素を用いた高温PECVD工程で蒸着した非晶質炭素膜の場合も、40MPa以上のモジュラスを有することができるが、この場合、ほとんど200MPa以上の高い圧縮応力を有する。これに反して、本発明による非晶質炭素膜は、40MPa以上のモジュラスを有しながらも、珍しいことに200MPa以下の相対的に低い圧縮応力を有する。これは、
図4から確認することができる。
【0056】
これによって、本発明による酸素及び窒素がドープされた非晶質炭素膜は、低い圧縮応力を有しながらも、高いモジュラスを有することができ、非晶質炭素膜の厚みが増加することなく、例えば、垂直型NANDデバイスを製造するためハードマスクとして用いることができる。
【0057】
また、本発明による非晶質炭素膜は、5.0GPa以上のビッカース硬さを示すことができる。同様、本発明による非晶質炭素膜は、5.0GPa以上の高い硬さを示し、かつ、200MPa以下の相対的に低い圧縮応力を有する。これは、
図3から確認することができる。
【0058】
実施例
以下では、本発明の好ましい実施例によって本発明の構成及び作用をより詳説することとする。但し、これは、本発明の好ましい例示として提示されたものであり、如何なる意味でも、これによって本発明が制限されるとは解釈されない。
【0059】
ここに記載のない内容は、この技術分野における熟練者であれば、技術的に十分類推できるものであるため、その説明を省略することとする。
【0060】
表1に記載の条件で、実施例1~14による非晶質炭素膜を蒸着し、表2に記載の条件で、比較例1~8による非晶質炭素膜を蒸着した。
【0061】
【0062】
【0063】
図3は、実施例に従って蒸着した非晶質炭素膜(ONACL)と、比較例に従って蒸着した非晶質炭素膜(ACL)の応力と硬さを示したものである。
図4は、実施例及び比較例に従って蒸着した非晶質炭素膜の応力とモジュラスを示したものである。
図5は、実施例及び比較例に従って蒸着した非晶質炭素膜の硬さとモジュラスを示したものである。
図3~
図5における実施例に従って蒸着した非晶質炭素膜は、ONACLと表されており、比較例に従って蒸着した非晶質炭素膜は、ACLと表されている。
【0064】
図3を参照すると、実施例に従って蒸着した非晶質炭素膜と、比較例に従って蒸着した非晶質炭素膜は、例外的なケースを除いては、略5.0GPa以上のビッカース硬さを示すことが分かる。特に、実施例に従って蒸着した非晶質炭素膜は、比較例に従って蒸着した非晶質炭素膜に類似するビッカース硬さを有するものの、比較例に従って蒸着した非晶質炭素膜の場合、相対的に大きい圧縮応力を有することに比べて、実施例に従って蒸着した非晶質炭素膜は、相対的に小さい圧縮応力を有することが分かる。
【0065】
図4を参照すると、実施例に従って蒸着した非晶質炭素膜と、比較例に従って蒸着した非晶質炭素膜は、例外的なケースを除いては、略40MPa以上のモジュラスを示すことが分かる。特に、実施例に従って蒸着した非晶質炭素膜は、比較例に従って蒸着した非晶質炭素膜に類似するモジュラスを有するものの、比較例に従って蒸着した非晶質炭素膜の場合、相対的に大きい圧縮応力を有することに比べて、実施例に従って蒸着した非晶質炭素膜は、相対的に小さい圧縮応力を有することが分かる。
【0066】
一方、
図5を参照すると、実施例に従って蒸着した非晶質炭素膜と、比較例に従って蒸着した非晶質炭素膜の場合、硬さが増加すると、モジュラスも増加する傾向が見られる。
【0067】
表3は、比較例9、10及び実施例15、16に従って製造された非晶質炭素膜の特性を示したものである。比較例9、10及び実施例15、16において、表3に示された条件を除いては、同様の工程条件が適用されている。
【0068】
【0069】
表3における選択比は、SiO2に対する選択比であって、比較例9による非晶質炭素膜の選択比を100%とし、その他の非晶質炭素膜の相対的な選択比を示した。
【0070】
表3を参照すると、O2、N2の供給なしに蒸着速度が非常に遅い比較例10による非晶質炭素膜の場合、比較例9による非晶質炭素膜に比べて高い選択比を示しているが、圧縮応力も非常に増加することが分かる。
【0071】
これに反して、C3H6と共に、O2及びN2が併せて供給された実施例15、16による非晶質炭素膜の場合、比較例10による非晶質炭素膜に類似する高い選択比を示すにもかかわらず、圧縮応力が相対的に低く、蒸着速度も比較例10よりは早いことが分かる。
【0072】
また、実施例15、16による非晶質炭素膜の場合、比較例9に比べて相対的に高い吸光係数を示した。吸光係数が高いほど、非晶質炭素膜は、黒い色に近くなり、膜の密度が増加していることを示す。
【0073】
したがって、表3の結果からみると、気体状態の炭化水素と共に、酸素を含む前駆体と窒素を含む前駆体を用いることは、高い選択比と低い圧縮強さを有する非晶質炭素膜を蒸着するのにより有利であると言える。
【0074】
以上では、本発明の実施例を中心に説明したが、当業者の水準における様々な変更や変形を加えることができる。これらの変更と変形は、本発明の範囲を外れない限り、本発明に属すると言える。よって、本発明の権利範囲は、以下に記載する請求の範囲によって判断すべきである。
【符号の説明】
【0075】
1 PECVD装置
2 チャンバ
3 シャワーヘッド
4 サセプタ
5 RF電源
6 第1電極
7 RFフィルタ
8 接地ライン