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特開2024-152792蓄電デバイス用部材及び蓄電デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152792
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用部材及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20241018BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241018BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20241018BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20241018BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241018BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241018BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241018BHJP
   H01G 11/56 20130101ALI20241018BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M4/13
H01M10/054
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/62 Z
H01M10/0562
H01G11/56
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024130856
(22)【出願日】2024-08-07
(62)【分割の表示】P 2019229302の分割
【原出願日】2019-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 英郎
(72)【発明者】
【氏名】角田 啓
(72)【発明者】
【氏名】角見 昌昭
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 良憲
(57)【要約】
【課題】アルカリ金属イオンをキャリアイオンとし、充放電特性を改善することができる、蓄電デバイス用部材及び蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】アルカリ金属イオン伝導性固体電解質を含む固体電解質層2と、固体電解質層2上に積層されており、アルカリ金属を含むアルカリ金属層3と、アルカリ金属層3上に積層されており、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出可能である材料を含む電極層とを備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属イオン伝導性固体電解質を含む固体電解質層と、
前記固体電解質層上に積層されており、金属ナトリウムからなるアルカリ金属層と、
前記アルカリ金属層上に積層されており、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出可能である材料を含む負極層と、
を備える、蓄電デバイス用部材。
【請求項2】
前記負極層に含まれる負極活物質が、金属、合金、グラファイト及びハードカーボンからなる群から選択される少なくとも一種と、前記アルカリ金属層に含まれるアルカリ金属元素と同種のアルカリ金属元素と、を含む化合物である、請求項1に記載の蓄電デバイス用部材。
【請求項3】
前記負極層の少なくとも一部が、前記アルカリ金属層に含まれるアルカリ金属元素と同種のアルカリ金属元素を含む合金により構成されている、請求項2に記載の蓄電デバイス用部材。
【請求項4】
前記負極層に、前記アルカリ金属層に含まれるアルカリ金属が拡散している、請求項2又は3に記載の蓄電デバイス用部材。
【請求項5】
前記負極活物質がNaを含む化合物である、請求項2~4のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用部材。
【請求項6】
前記負極活物質が、Sn、Bi、Sb及びPbからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用部材。
【請求項7】
前記負極層がバインダを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用部材。
【請求項8】
前記固体電解質層が酸化物を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用部材。
【請求項9】
前記アルカリ金属層の厚みが5nm以上、500μm以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用部材。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用部材を備え、
前記アルカリ金属層と共に前記固体電解質層を挟むように、前記固体電解質層上に積層されている、正極層をさらに備える、蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス用部材及びその蓄電デバイス用部材を用いた蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、モバイル機器や電気自動車等に不可欠な、高容量で軽量な電源としての地位を確立している。しかし、現行のリチウムイオン二次電池には、電解質として可燃性の有機系電解液が主に用いられているため、発火等の危険性が懸念されている。この問題を解決する方法として、有機系電解液に代えて固体電解質を使用した全固体電池の開発が進められている。また、リチウムは世界的な原材料の高騰等の問題が懸念されているため、その代替として全固体ナトリウムイオン電池の研究が近年行われている。
【0003】
特許文献1には、正極、固体電解質層及び負極がこの順序において積層されてなる全固体ナトリウムイオン電池の一例が開示されている。固体電解質層は、Na1+yZr(SiO(PO3-y(1≦y<3)により表される、酸化物固体電解質からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-015782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
全固体電池においては、固体電解質層と電極層の間でイオン伝導パスを形成し難く、充放電特性に劣る場合がある。
【0006】
本発明の目的は、アルカリ金属イオンをキャリアイオンとし、充放電特性を改善することができる、蓄電デバイス用部材及び蓄電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の蓄電デバイス用部材は、アルカリ金属イオン伝導性固体電解質を含む固体電解質層と、固体電解質層上に積層されており、アルカリ金属を含むアルカリ金属層と、アルカリ金属層上に積層されており、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出可能である材料を含む電極層と、を備えることを特徴とする。
【0008】
電極層が負極層であることが好ましい。この場合、負極層に含まれる負極活物質が、金属、合金、グラファイト及びハードカーボンからなる群から選択される少なくとも一種と、アルカリ金属層に含まれるアルカリ金属元素と同種のアルカリ金属元素と、を含む化合物であることが好ましい。
【0009】
負極層の少なくとも一部が、アルカリ金属層に含まれるアルカリ金属元素と同種のアルカリ金属元素を含む合金により構成されていることが好ましい。
【0010】
負極層に、アルカリ金属層に含まれるアルカリ金属が拡散していることが好ましい。
【0011】
アルカリ金属層に含まれるアルカリ金属元素がNaであり、負極活物質がNaを含む化合物であることがより好ましい。
【0012】
負極活物質が、Sn、Bi、Sb及びPbからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含むことが好ましい。
【0013】
電極層がバインダを含む場合に好適である
固体電解質層が酸化物を含む場合に好適である。
【0014】
アルカリ金属層の厚みが5nm以上、500μm以下であることが好ましい。
【0015】
本発明に係る蓄電デバイスは、上記蓄電デバイス用部材を備え、蓄電デバイス用部材の電極層が第1の電極層であり、アルカリ金属層と共に固体電解質層を挟むように、固体電解質層上に積層されている、第2の電極層をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アルカリ金属イオンをキャリアイオンとし、充放電特性を改善することができる、蓄電デバイス用部材及び蓄電デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係る蓄電デバイス用部材の正面断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態の変形例に係る蓄電デバイス用部材の正面断面図である。
図3】本発明の第2の実施形態に係る蓄電デバイスの正面断面図である。
図4】(a)及び(b)は、本発明の第2の実施形態に係る蓄電デバイスの製造方法の一例を説明するための正面断面図である。
図5】(a)及び(b)は、本発明の第2の実施形態に係る蓄電デバイスの製造方法の一例を説明するための正面断面図である。
図6】(a)及び(b)は、本発明の第2の実施形態に係る蓄電デバイスの製造方法の一例を説明するための正面断面図である。
図7】(a)及び(b)は、本発明の第2の実施形態に係る蓄電デバイスの製造方法の一例を説明するための正面断面図である。
図8】(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る蓄電デバイス用部材を用いた蓄電デバイスの製造方法の一例を説明するための正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0019】
[蓄電デバイス用部材]
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る蓄電デバイス用部材の正面断面図である。図1に示すように、蓄電デバイス用部材1は、固体電解質層2と、アルカリ金属層3と、負極層4とを備える。具体的には、固体電解質層2上にアルカリ金属層3が積層されている。アルカリ金属層3上に負極層4が積層されている。
【0020】
固体電解質層2は、アルカリ金属イオン伝導性固体電解質を含む。負極層4は、本発明における、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出可能である材料を含む電極層である。もっとも、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出可能である材料を含む電極層は、必ずしも負極層ではなくともよく、正極層であってもよい。
【0021】
アルカリ金属層3には、Li、Na又はK等の適宜のアルカリ金属を用いることができる。アルカリ金属層3の厚みは5nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましく、500nm以上であることがさらに好ましい。それによって、固体電解質層2と負極層4とを、アルカリ金属層3によって好適に接合することができる。アルカリ金属層3の厚みの上限は特に限定されないが、例えば、500μm以下であることが好ましい。アルカリ金属層3が厚すぎると、安全性が損なわれるおそれがある。本実施形態においては、アルカリ金属層3の厚みよりも負極層4の厚みは厚い。この場合には、安全性を好適に高めることができる。
【0022】
負極層4の負極活物質は金属箔系であってもよく、コンポジット系であってもよい。負極層4がコンポジット系である場合には、負極層4は、導電助剤及びバインダを含むことが好ましい。バインダが含まれることにより、負極活物質を構成する粉体間を好適に結着することができる。導電助剤が含まれることにより、導電パスが形成され負極層4の内部抵抗を小さくすることができる。
【0023】
負極層4の少なくとも一部は、アルカリ金属層3に含まれるアルカリ金属元素と同種のアルカリ金属元素を含む化合物により構成されている。具体的には、アルカリ金属層3に含まれるアルカリ金属が、負極層4に拡散している。よって、負極層4における、少なくともアルカリ金属層3に接している面付近の部分は、上記アルカリ金属元素を含む化合物により構成されている。なお、負極層4の負極活物質が金属箔系である場合には、上記アルカリ金属元素を含む化合物は、上記アルカリ金属元素を含む合金である。負極層4の負極活物質が金属を含むコンポジット系である場合も、上記アルカリ金属元素を含む化合物は、上記アルカリ金属元素を含む合金であってもよい。
【0024】
ここで、負極層4は外側主面4aを有する。外側主面4aは、蓄電デバイス用部材1における外側に位置する主面である。本実施形態においては、負極層4における上記アルカリ金属元素の構成比率は、外側主面4aに近づくほど低くなっている。このように、負極層4は、上記アルカリ金属元素の構成比率の勾配を有する。もっとも、負極層4におけるアルカリ金属の構成比率は均一であってもよい。なお、負極層4は、上記アルカリ金属元素を必ずしも含んでいなくともよい。
【0025】
本実施形態の特徴は、蓄電デバイス用部材1において、アルカリ金属層3が、固体電解質層2と負極層4との間に積層されていることにある。固体電解質層2及び負極層4の双方がアルカリ金属層3に接しているため、イオン伝導パスを容易に形成することができる。加えて、アルカリ金属層3は柔軟性が高いため、アルカリ金属層3の表面形状を、固体電解質層2及び負極層4の双方の表面形状に容易に追従させることができる。これにより、アルカリ金属層3と、固体電解質層2及び負極層4の双方との密着性を効果的に高めることができる。よって、イオン導電パスを効果的に増大させることができる。従って、蓄電デバイス用部材1を用いた蓄電デバイスの充放電特性を改善することができる。
【0026】
負極層4上には集電体層5が積層されている。なお、集電体層5は設けられていなくともよい。もっとも、集電体層5が設けられていることにより、効率的に集電することができる。
【0027】
(変形例)
図2は、第1の実施形態の変形例に係る蓄電デバイス用部材の正面断面図である。蓄電デバイス用部材11においては、負極層14の負極活物質は金属箔系である。負極層14は、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出可能である金属と、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出しない金属との合金を含む。このようにすれば、充放電時におけるアルカリイオンの吸蔵・放出に伴う負極層14の体積変化が緩和され、サイクル特性を向上させることができる。なお、負極層14上には集電体層は形成されていない。
【0028】
負極層14に用いられる、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出しない金属の電気抵抗は、負極層14に用いられる、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出可能である金属の電気抵抗よりも低いことが好ましい。この場合には、集電体層を有しなくとも、効率的に集電することができる。
【0029】
本変形例においては、負極層14の少なくとも一部は、アルカリ金属層3に含まれるアルカリ金属元素と同種のアルカリ金属元素を含む化合物により構成されている。具体的には、負極層14の、少なくともアルカリ金属層3に接している面付近の部分が、上記アルカリ金属元素を含む合金により構成されている。負極層14における上記アルカリ金属元素の構成比率は、外側主面14aに近づくほど低くなっている。
【0030】
本発明に係る蓄電デバイス用部材は、例えば、全固体電池等の蓄電デバイスに用いることができる。
【0031】
[蓄電デバイス]
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係る蓄電デバイスの正面断面図である。図3に示すように、蓄電デバイスとしての全固体電池20は、正極層26と、第1の実施形態の蓄電デバイス用部材1とを備える。蓄電デバイス用部材1の固体電解質層2上に、正極層26が積層されている。具体的には、正極層26は、アルカリ金属層3と共に固体電解質層2を挟むように、固体電解質層2上に積層されている。なお、本実施形態においては、負極層4は本発明における第1の電極層であり、正極層26は本発明における第2の電極層である。正極層26上には集電体層27が積層されている。もっとも、集電体層27は設けられていなくともよい。
【0032】
本実施形態の特徴は、蓄電デバイス用部材1において、アルカリ金属層3が、固体電解質層2と負極層4との間に積層されていることにある。固体電解質層2及び負極層4の双方がアルカリ金属層3に接しているため、イオン伝導パスを容易に形成することができる。加えて、アルカリ金属層3は柔軟性が高いため、アルカリ金属層3の表面形状を、固体電解質層2及び負極層4の双方の表面形状に容易に追従させることができる。これにより、アルカリ金属層3と、固体電解質層2及び負極層4の双方との密着性を効果的に高めることができる。よって、イオン導電パスを効果的に増大させることができる。従って、蓄電デバイスの充放電特性を改善することができる。
【0033】
なお、負極層4が有機系バインダ、P又はSiO等を含む場合には、イオンの伝導経路において、イオンが存在しない欠乏層が生じ、キャリアイオンが欠乏層にトラップされることがある。その結果、放電容量やサイクル特性が低下するおそれがある。これに対して、蓄電デバイス用部材1においては、アルカリ金属層3によりキャリアイオンを供給することができる。よって、充放電効率及びサイクル特性を改善することもできる。このように、本発明は、負極層4が、欠乏層を生じ得る材料である有機系バインダ等を含む場合に特に好適である。
【0034】
さらに、アルカリ金属層3を介して固体電解質層2と負極層4とが接合されているため、負極層4が剥離し難い。よって、サイクル特性を効果的に改善することができる。加えて、負極活物質の担持量を多くしても負極層4が剥離し難いため、容量を効果的に大きくすることができる。
【0035】
ところで、負極層4の負極活物質がSnO等の酸化物を含む場合には、初回の充電時において、コンバージョン反応が生じる。アルカリ金属がLiであり、酸化物がSnOである場合、コンバージョン反応の反応式は、SnO+2Li+2e→Sn+LiOにより表される。コンバージョン反応によりSnOから還元されたSnは、Sn+4.4Li+4.4e→SnLi4.4により表されるように、Liと合金化する。なお、この合金化は可逆的であり、放電に際しLi及び電子が放出される。他方、コンバージョン反応は基本的に不可逆反応である。そのため、放電に際し、LiOにおけるLiは放出されず、コンバージョン反応においてSnOを還元した分の電子も放出されない。よって、コンバージョン反応により電子が消費されることとなるため、初回の充放電効率が劣化し易い。
【0036】
ここで、本実施形態のように、負極層4は、アルカリ金属層3に含まれるアルカリ金属元素と同種のアルカリ金属元素を含む化合物であることが好ましい。この場合には、例えば、負極活物質がSnを含み、アルカリ金属元素がLiである場合には、負極層4はSn及びLiの合金も含む。そのため、最初の放電において、該合金におけるLi及び電子が放出される。よって、最初の充電においてコンバージョン反応が生じたとしても、電子の消費を相殺することができる。従って、充放電効率を改善することができる。このように、本実施形態は、負極層4の負極活物質が酸化物を含む場合に特に好適である。
【0037】
以下において、全固体電池20に用いられるアルカリ金属イオンを吸蔵・放出可能である材料を含む電極層としての負極層4、固体電解質層2、正極層26、集電体層5及び集電体層27の詳細を説明する。
【0038】
負極層(アルカリ金属イオンを吸蔵・放出可能な電極層);
負極層4の負極活物質が金属箔系である場合、負極活物質は金属又は合金を含む。具体的には、負極活物質は、例えば、Al、Si、Ge、Sn、Bi、Sb及びPbからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含むことが好ましい。アルカリ金属層3にLiを用いる場合には、負極活物質は、特に、Al、Si、Ge、Sn、Sb及びPbからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含むことが好ましい。他方、アルカリ金属層3にNaを用いる場合には、負極活物質は、特に、Sn、Bi、Sb及びPbからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含むことが好ましい。
【0039】
なお、負極層4は、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出しない金属元素を含んでいてもよい。具体的には、Liを吸蔵・放出しない金属元素としては、Zn、Cu、Ni、Co、Mg及びMo等を挙げることができる。アルカリ金属イオンを吸蔵・放出しない金属元素としては、Zn、Cu、Ni、Co、Si、Al、Mg、Mo及びFe等を挙げることができる。
【0040】
負極層4の負極活物質が金属箔系である場合、負極層4の形成方法としては、例えば、蒸着又はスパッタリング等の物理的気相法や、熱CVD、MOCVD、プラズマCVD等の化学的気相法が挙げられる。負極層4のその他の形成方法として、めっき、ゾルゲル法、スピンコートによる液相成膜法が挙げられる。アルカリ金属イオンを吸蔵・放出しない金属元素を含む金属層上に、上記の方法によりアルカリ金属イオンを吸蔵・放出可能な金属層を積層した後、合金化してもよい。
【0041】
負極層4の負極活物質がコンポジット系である場合、負極活物質は、金属粉末、合金粉末、ガラス粉末、グラファイト、ハードカーボン、複合酸化物及び金属酸化物からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。なお、ガラス粉末としては、例えば、酸化物系のガラス又は硫化物系のガラスを挙げることができる。複合酸化物としては、例えば、P2-Na0.66[Li0.22Ti0.78]O又はLiTi12を挙げることができる。金属酸化物としては、例えば、SnO、Bi又はFeを挙げることができる。ここで、グラファイトやハードカーボン等の炭素材料は固体電解質層2と密着させることが困難であり、固体電解質層2と負極層4の間にイオン伝導パスを形成することが困難である。そのような場合であっても、本実施形態では固体電解質層2と負極層4を、アルカリ金属層3を介して密着させることができるため、良好な電池特性を得ることができる。
【0042】
バインダとしては、例えば、ポリアクリル酸又はカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)等を用いることができる。
【0043】
導電助剤としては、例えば、導電性炭素を用いることができる。導電性炭素としては、例えば、アセチレンブラック又はカーボンブラック等を挙げることができる。
【0044】
固体電解質層;
本実施形態において、固体電解質層2は、アルカリ金属イオン伝導性酸化物から形成されている。アルカリ金属イオン伝導性酸化物としては、例えば、アルカリ金属イオン伝導性に優れるベータアルミナまたはNASICON結晶が挙げられる。このような酸化物固体電解質は熱処理により軟化流動し難いため、負極層4と密着させることが困難であり、固体電解質層2と負極層4の間にイオン伝導パスを形成することが困難である。そのような場合であっても、本実施形態では固体電解質層2と負極層4を、アルカリ金属層3を介して密着させることができるため、良好な電池特性を得ることができる。
なお、以下においては、キャリアイオンとして用いられるアルカリ金属イオンの一例として、ナトリウムイオンが用いられる場合に好適な材料を示す。
【0045】
ベータアルミナは、β-アルミナ(理論組成式:NaO・11Al)とβ”-アルミナ(理論組成式:NaO・5.3Al)の2種類の結晶型が存在する。β”-アルミナは準安定物質であるため、通常、LiOやMgOを安定化剤として添加したものが用いられる。β-アルミナよりもβ”-アルミナの方が、ナトリウムイオン伝導度が高いため、β”-アルミナ単独、またはβ”-アルミナとβ-アルミナの混合物を用いることが好ましく、LiO安定化β”-アルミナ(Na1.7Li0.3Al10.717)またはMgO安定化β”-アルミナ((Al10.32Mg0.6816)(Na1.68O))を用いることがより好ましい。
【0046】
NASICON結晶としては、NaZrSiPO12、Na3.2Zr1.3Si2.20.710.5、NaZr1.6Ti0.4SiPO12、NaHfSiPO12、Na3.4Zr0.9Hf1.4Al0.6Si1.21.812、NaZr1.7Nb0.24SiPO12、Na3.6Ti0.20.7Si2.8、NaZr1.880.12SiPO12、Na3.12Zr1.880.12SiPO12、Na3.6Zr0.13Yb1.67Si0.112.912等が挙げられ、特にNa3.12Zr1.880.12SiPO12がナトリウムイオン伝導性に優れるため好ましい。
【0047】
固体電解質層2は、原料粉末を混合し、混合した原料粉末を成形した後、焼成することにより製造することができる。例えば、原料粉末をスラリー化してグリーンシートを作製した後、グリーンシートを焼成することにより製造することができる。また、ゾルゲル法により製造してもよい。
【0048】
原料粉末としての固体電解質粉末の平均粒子径は、0.05μm以上、3μm以下であることが好ましく、0.05μm以上、1.8μm未満であることがより好ましく、0.05μm以上、1.5μm以下であることがさらに好ましく、0.1μm以上、1.2μm以下であることが特に好ましい。固体電解質粉末の平均粒子径が小さすぎると、正極活物質前駆体粉末とともに均一に混合することが困難となるだけでなく、吸湿や炭酸塩化することによりイオン伝導性が低下したり、正極活物質前駆体粉末との過剰反応を助長する恐れがある。その結果、正極材料層の内部抵抗が高くなり、電圧特性及び充放電容量が低下する傾向にある。一方、固体電解質粉末の平均粒子径が大きすぎると、正極活物質前駆体粉末の軟化流動を著しく阻害するため、得られる正極材料層の平滑性に劣って機械的強度が低下したり、内部抵抗が大きくなる傾向がある。
【0049】
正極層;
正極層26は、アルカリイオンを吸蔵・放出可能な正極活物質を含み、正極層26として機能するものであれば特に限定されない。なお、以下においては、キャリアイオンとして用いられるアルカリ金属イオンの一例として、ナトリウムイオンが用いられる場合に好適な材料を示す。
【0050】
正極活物質として作用する活物質結晶としては、Na、M(MはCr、Fe、Mn、Co、V及びNiから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素)、P及びOを含むナトリウム遷移金属リン酸塩結晶が挙げられる。具体例としては、NaFeP、NaFePO、Na(PO、NaNiP、Na3.64Ni2.18(P、NaNi(PO(P)、NaCoP、Na3.64Co2.18(P等が挙げられる。当該ナトリウム遷移金属リン酸塩結晶は、高容量で化学的安定性に優れるため好ましい。なかでも空間群P1またはP-1に属する三斜晶系結晶、特に一般式Na(1.2≦x≦2.8、0.95≦y≦1.6、6.5≦z≦8)で表される結晶がサイクル特性に優れるため好ましい。その他に正極活物質として作用する活物質結晶としては、NaCrO、Na0.7MnO、NaFe0.2Mn0.4Ni0.4等の層状ナトリウム遷移金属酸化物結晶が挙げられる。なお、正極層に含まれる正極活物質結晶は、1種類の結晶のみが析出した単相であってもよく、複数種類の結晶が析出した混相であってもよい。
【0051】
なお、正極層26は、上記負極層4と同様のバインダ及び導電助剤を含んでいてもよい。
【0052】
正極層26は、例えば、ガラス粉末等の活物質前駆体粉末を焼成して形成してもよい。活物質前駆体粉末を焼成することにより、活物質結晶が析出し、この活物質結晶が正極活物質として作用する。
【0053】
集電体層;
集電体層5及び集電体層27の材料としては、特に限定されないが、アルミニウム、チタン、銀、銅、ステンレス鋼又はこれらの合金などの金属材料を用いることができる。上記金属材料は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0054】
集電体層5及び集電体層27の形成方法としては、特に限定されず、例えば、蒸着又はスパッタリング等の物理的気相法や、熱CVD、MOCVD、プラズマCVD等の化学的気相法が挙げられる。集電体層5及び集電体層27のその他の形成方法として、めっき、ゾルゲル法、スピンコートによる液相成膜法が挙げられる。もっとも、集電体層5及び集電体層27は、スパッタリング法により形成することが、密着性に優れるため好ましい。
【0055】
[製造方法]
(第2の実施形態に係る蓄電デバイス)
以下において、第2の実施形態に係る蓄電デバイスとしての全固体電池20の製造方法の例を説明する。なお、蓄電デバイス用部材1を単独で製造する場合には、正極層26及び集電体層27の形成の工程を省略すればよい。
【0056】
図4(a)及び図4(b)は、第2の実施形態に係る蓄電デバイスの製造方法の一例を説明するための正面断面図である。図5(a)及び図5(b)は、第2の実施形態に係る蓄電デバイスの製造方法の一例を説明するための正面断面図である。
【0057】
まず、図4(a)に示すように、固体電解質層2を用意する。次に、固体電解質層2上に正極層26を形成する。これにより、正極層-固体電解質層部材32Aを得る。次に、正極層-固体電解質層部材32Aにおける正極層26上に、集電体層27を形成する。一方で、図4(b)に示すように、集電体層5を用意する。次に、集電体層5上に、負極層4を形成する。
【0058】
次に、図5(a)に示すように、正極層-固体電解質層部材32Aにおける固体電解質層2上に、アルカリ金属層3を積層する。具体的には、固体電解質層2の表面に、別途用意したアルカリ金属層3を圧着する。上述したように、アルカリ金属層3は柔軟性が高いため、アルカリ金属層3の形状を、固体電解質層2の表面形状に好適に追従させることができる。よって、イオン伝導パスを容易に形成することができる。なお、アルカリ金属層3は、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法等により固体電解質層2上に形成してもよい。この場合においても、アルカリ金属層3の形状を固体電解質層2の表面形状に追従させることができる。
【0059】
次に、図5(b)に示すように、正極層-固体電解質層部材32A上に設けられたアルカリ金属層3と、負極層4とを圧着する。次に、正極層-固体電解質層部材32A、アルカリ金属層3及び負極層4を積層した状態において、アニール処理を行う。これにより、アルカリ金属層3に含まれるアルカリ金属が負極層4中に拡散する。以上により、全固体電池20を得られる。
【0060】
ここで、正極層-固体電解質層部材32A、アルカリ金属層3及び負極層4を積層する方法は上記に限定されない。上記積層の方法の他の例を示す。
【0061】
図6(a)及び図6(b)は、第2の実施形態に係る蓄電デバイスの製造方法の一例を説明するための正面断面図である。図7(a)及び図7(b)は、第2の実施形態に係る蓄電デバイスの製造方法の一例を説明するための正面断面図である。
【0062】
まず、図6(a)に示すように、負極層4上にアルカリ金属層3を積層する。これにより、アルカリ金属層3の形状を、負極層4の表面形状に好適に追従させることができる。よって、イオン伝導パスを容易に形成することができる。次に、図6(b)に示すように、負極層4上に設けられたアルカリ金属層3と、正極層-固体電解質層部材32Aにおける固体電解質層2とを圧着する。以上により、全固体電池20を得られる。
【0063】
他の例としては、まず、図7(a)に示すように、正極層-固体電解質層部材32Aにおける固体電解質層2上に、アルカリ金属薄膜33Bを積層する。一方で、図7(b)に示すように、負極層4上にアルカリ金属薄膜33Aを積層する。アルカリ金属薄膜33A及びアルカリ金属薄膜33Bは、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法等により形成することができる。
【0064】
次に、図7(c)に示すように、負極層4上に積層したアルカリ金属薄膜33Aと、正極層-固体電解質層部材32A上に積層したアルカリ金属薄膜33Bとを圧着し、一体化させることによって、アルカリ金属層3を形成する。この場合には、アルカリ金属層3の形状を、負極層4及び固体電解質層2の双方の表面形状に好適に追従させることができる。よって、イオン伝導パスを容易に増大させることができる。以上により、全固体電池20を得られる。
【0065】
以下において、第1の実施形態の変形例に係る蓄電デバイス用部材11を有する蓄電デバイスとしての全固体電池の製造方法の例を説明する。
【0066】
図8(a)及び図8(b)は、第1の実施形態の変形例に係る蓄電デバイス用部材を用いた蓄電デバイスの製造方法の一例を説明するための正面断面図である。
【0067】
まず、図8(a)に示すように、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出しない金属からなる第1の金属層34Aを形成する。次に、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出可能な金属からなる第2の金属層34Bを、第1の金属層34A上に積層する。次に、第1の金属層34A及び第2の金属層34Bの積層体のアニール処理を行い、合金化することにより、図8(b)に示すように、負極層14を形成する。
【0068】
一方で、図4(a)に示した方法と同様にして、正極層-固体電解質層部材32Aを用意する。次に、図5(a)及び図5(b)、図6(a)及び図6(b)又は図7(a)及び図7(b)に示した方法と同様にして、正極層-固体電解質層部材32A、アルカリ金属層3及び負極層14を積層する。
【0069】
次に、正極層-固体電解質層部材32A、アルカリ金属層3及び負極層14を積層した状態において、アニール処理を行う。これにより、アルカリ金属層3に含まれるアルカリ金属が負極層14中に拡散する。以上により、蓄電デバイス用部材11を有する全固体電池を得られる。
【0070】
[実施例]
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0071】
(実施例1)
(a)正極層-固体電解質層部材の作製
活物質前駆体となる2NaO-Fe-2Pガラスを溶融法により作製した。得られた2NaO-Fe-2Pガラスをボールミルにより粗粉砕した後、遊星ボールミルにより湿式粉砕することによって、D50:0.6μmのガラス粉末を作製した。
【0072】
β”-アルミナ(Ionotec社製)をボールミルにより粗粉砕した後、空気分級することによって、D50:1.7μmの固体電解質粉末を作製した。
【0073】
正極層における導電助剤には、アセチレンブラック(Timcal社製、「SuperC65」)を用いた。活物質前駆体となるガラス粉末、固体電解質粉末及び導電助剤を、重量比72:25:3として混合し、混合物を得た。次に、得られた混合物に、バインダとしてポリプロピレンカーボネートを、上記混合物100重量部に対して10重量部添加し、さらに、溶媒としてN-メチル-2-ピロリドンを加えることにより、ペースト化した。
【0074】
一方で、固体電解質層には、β”-アルミナ板(Ionotec社製)を用いた。固体電解質層上に上記ペーストを塗布し、乾燥させた。なお、正極活物質の担持量が4.5mg/cmとなるようにペーストを塗布した。正極活物質の担持量が4.5mg/cmである場合、形成した正極層の単位面積当たりの容量は0.44mAh/cmとなる。次に、N/H=96/4 v/v%の混合ガス中において、500℃、30分間焼成することにより、正極層-固体電解質層部材を作製した。
【0075】
次に、正極層-固体電解質層部材における正極層の表面に、スパッタ装置を用いて、Alからなる集電体層を形成した。集電体層の厚みは500nmとした。
【0076】
(b)負極層の作製
負極活物質には、ハードカーボン(ATエレクトロード社製、「BELLFINE LN0001))を用いた。導電助剤には、アセチレンブラック(Timcal社製、「SuperC65」)を用いた。バインダには、カルボキシメチルセルロースナトリウム(ダイセルファインケム社製)を用いた。負極活物質、導電助剤及びバインダを、重量比80:10:10として混合し、混合物を得た。次に、得られた混合物に純水を加えて、自転・公転ミキサを用いて混合することにより、スラリー化した。次に、得られたスラリーを厚み18μmのAl箔上に塗工した。なお、負極活物質の担持量が8mg/cmとなるように、スラリーの厚みを300μmとした。負極活物質の担持量が8mg/cmである場合、形成した負極層の単位面積当たりの容量は2.4mAh/cmとなる。次に、スラリーを70℃において乾燥させることにより、混合物乾燥体を得た。次に、Al箔上に混合物乾燥体を配置した状態において、一対の回転ローラを用いてプレスすることにより、電極シートを得た。次に、得られた電極シートを、電極打ち抜き機により直径11mmの円形のシートとなるように打ち抜いた。次に、減圧下140℃、6時間乾燥させることにより、円形の負極層を作製した。
【0077】
(c)全固体電池の作製
金属ナトリウムを圧延成形することにより、金属ナトリウム箔を得た。次に、得られた金属ナトリウム箔を、電極打ち抜き機により直径11mmの円形となるように打ち抜いた。次に、円形とした金属ナトリウム箔を負極層の表面に貼り付けた。これにより、アルカリ金属層としての金属ナトリウム箔及び負極層の積層体を得た。なお、金属ナトリウムの担持量を10mg/cmとした。次に、上記正極層-固体電解質層部材における固体電解質層の表面に、負極層上に貼り付けられた金属ナトリウム層を圧着した。以上により、全固体電池を得た。
【0078】
(d)試験電池の作製
上記工程により得られた全固体電池をコインセルの下蓋の上に載置した後、上蓋を被せてCR2032型試験電池を作製した。なお、(c)工程における金属ナトリウム層の形成及び(d)工程は、露点-70℃以下のアルゴン雰囲気下において行った。
【0079】
(実施例2)
(c)工程において、金属ナトリウム層を、真空蒸着法により形成したこと以外においては、実施例1と同様にして全固体電池及び試験電池を作製した。
【0080】
具体的には、正極層-固体電解質層部材における固体電解質層の表面に真空蒸着法により、金属ナトリウム薄膜を形成した。なお、金属ナトリウム薄膜は、直径11mmの円形とし、金属ナトリウムの担持量を0.25mg/cmとした。
【0081】
一方で、実施例1と同様にして形成した負極層の表面にも、真空蒸着法により金属ナトリウム薄膜を形成した。なお、金属ナトリウム薄膜は、直径11mmの円形とし、金属ナトリウムの担持量を0.25mg/cmとした。その後、負極層上に形成した金属ナトリウム薄膜と、正極層-固体電解質層部材上に形成した金属ナトリウム薄膜とを圧着し、一体化させることにより、金属ナトリウム層を形成し、かつ全固体電池を得た。なお、実施例2においては、金属ナトリウムの担持量は、上記各金属ナトリウム薄膜における金属ナトリウムの担持量の合計の、0.5mg/cmである。実施例2においても、金属ナトリウム層の形成は、露点-70℃以下のアルゴン雰囲気下において行った。その後、実施例1と同様にして、試験電池を作製した。
【0082】
(実施例3)
金属ナトリウムの担持量を1mg/cm(0.5mg/cm+0.5mg/cm)としたこと以外においては、実施例2と同様にして全固体電池及び試験電池を作製した。
【0083】
(実施例4)
金属ナトリウムの担持量を5mg/cmとしたこと以外は、実施例1と同様にして全固体電池及び試験電池を作製した。
【0084】
(実施例5)
SnO 72モル%、P 28モル%となるように、主原料としてピロリン酸第一スズSnを用い、各種酸化物、リン酸塩原料、炭酸塩原料、還元剤としての金属Sn粉末原料、炭素原料等により原料粉末を調整した。次に、原料粉末を石英るつぼに投入し、電気炉を用いて窒素雰囲気下において950℃、40分間加熱することにより溶融し、溶融物とした。次に、この溶融物を成形することにより、フィルム状のガラスを得た。得られたガラスをボールミルにより粗粉砕した後、空気分級することによって、平均粒子径2μmの負極活物質粉末を作製した。なお、得られた負極活物質粉末を粉末X線回折測定すると、非晶質であり、結晶は検出されなかった。
【0085】
次に、負極活物質粉末、導電助剤及びバインダを、重量比80:5:15として混合し、混合物を得た。なお、導電部材及びバインダには実施例1と同様のものを用いた。次に、得られた混合物に純水を加えて、自転・公転ミキサを用いて混合することにより、スラリー化した。その後、金属ナトリウムの担持量を3mg/cmとしたこと以外においては、実施例1と同様にして全固体電池及び試験電池を作製した。
【0086】
(実施例6)
硫酸第一スズに硫酸及び半光沢用の添加剤を加えた硫酸浴において、Cu箔に電気めっき処理を行った。半光沢めっきは、光沢めっきに比べて応力が小さい膜を形成することができる。硫酸浴においては、硫酸第一スズは20g/Lとし、硫酸は150g/Lとした。これにより、Cu箔上にSn層を形成し、電極シートを得た。実施例6においては、負極活物質はSnである。なお、Cu箔の厚みは20μmとし、Sn層の厚みは7μm、Snの担持量は5mg/cmとした。負極活物質としてのSnの担持量が5mg/cmである場合、形成した負極層の単位面積当たりの容量は4.5mAh/cmとなる。次に、得られた電極シートを、電極打ち抜き機により直径11mmの円形のシートとなるように打ち抜いた。次に、減圧下120℃、6時間乾燥させることにより、円形の負極層を作製した。その後、金属ナトリウムの担持量を3mg/cmとしたこと以外においては、実施例1と同様にして全固体電池及び試験電池を作製した。
【0087】
(比較例)
実施例1と同様にして作製した負極層及び正極層-固体電解質層部材を、金属ナトリウム層を介さずに直接的に貼り合わせたこと以外においては、実施例1と同様にして全固体電池及び試験電池を作製した。
【0088】
(充放電試験)
作製した実施例1~6及び比較例の試験電池について、30℃で開回路電圧から5VまでのCC(定電流)充電を行った。次に、30℃で5Vから2VまでのCC放電を行った。充電及び放電において、Cレートは0.05Cとした。
【0089】
充放電特性の結果を表1に示す。表1の「充放電結果」においては、充放電できたものは○、できなかったものは×としている。「放電電圧」は、初回放電時の平均作動電圧を意味する。
【0090】
【表1】
【0091】
表1に示すように、実施例1~6は、2.57V以上において充放電可能であった。一方で、金属ナトリウム層を形成しなかった比較例においては、電池が作動しなかった。
【符号の説明】
【0092】
1…蓄電デバイス用部材
2…固体電解質層
3…アルカリ金属層
4…負極層
4a…外側主面
5…集電体層
11…蓄電デバイス用部材
14…負極層
14a…外側主面
20…全固体電池
26…正極層
27…集電体層
32A…正極層-固体電解質層部材
33A…アルカリ金属薄膜
33B…アルカリ金属薄膜
34A…第1の金属層
34B…第2の金属層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8