(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152798
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】正極活物質の作製方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20241018BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20241018BHJP
H01G 11/50 20130101ALI20241018BHJP
【FI】
H01M4/525
H01G11/86
H01G11/50
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024130923
(22)【出願日】2024-08-07
(62)【分割の表示】P 2021510579の分割
【原出願日】2020-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2019072816
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】門馬 洋平
(72)【発明者】
【氏名】落合 輝明
(72)【発明者】
【氏名】三上 真弓
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 丞
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正弘
(57)【要約】
【課題】リチウムイオン二次電池の正極活物質の作製方法を提供する。
【解決手段】加熱炉にリチウム酸化物、フッ化物及びマグネシウム化合物の混合物を入れた第1の容器及び、第1の容器の外にフッ化物を配し、フッ化物が揮発または昇華する温度以上で加熱炉を加熱する、正極活物質の作製方法である。フッ化物がフッ化リチウムであり、前記マグネシウム化合物がフッ化マグネシウムとするとより好ましい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉に、リチウム複合酸化物、第1のフッ化物及びマグネシウム化合物の混合物が入れられた第1の空間と、第2のフッ化物が入れられた第2の空間と、を有する容器を配し、
前記第2のフッ化物が揮発または昇華する温度以上で前記加熱炉を加熱する正極活物質の作製方法であって、
前記容器は、前記第1の空間と前記第2の空間との間に、仕切りを有し、
前記第1のフッ化物は、フッ化リチウムであり、
前記第2のフッ化物は、フッ化リチウムであり、
前記マグネシウム化合物は、フッ化マグネシウム又は塩化マグネシウムである、正極活物質の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記加熱炉を735℃以上1130℃以下で加熱する、正極活物質の作製方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記加熱炉に酸素を導入しながら、前記加熱炉を加熱する、正極活物質の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一様態は、正極活物質の作製方法に関する。または、本発明は、物、プロセス、マシン、マニュファクチャ、又は、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、照明装置、電子機器またはそれらの製造方法に関する。
【0002】
なお、本明細書中において、蓄電装置とは、蓄電機能を有する素子及び装置全般を指すものである。例えば、リチウムイオン二次電池などの蓄電池(二次電池ともいう)、リチウムイオンキャパシタ、全固体電池及び電気二重層キャパシタなどを含む。
【0003】
また、本明細書中において電子機器とは、蓄電装置を有する装置全般を指し、蓄電装置を有する電気光学装置、蓄電装置を有する情報端末装置などは全て電子機器である。
【背景技術】
【0004】
近年、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、空気電池等、全固体電池、種々の蓄電装置の開発が盛んに行われている。特に高出力、高容量であるリチウムイオン二次電池は、携帯電話、スマートフォン、もしくはノート型コンピュータ等の携帯情報端末、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ、医療機器、又は、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、もしくはプラグインハイブリッド車(PHVまたはPHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車など、半導体産業の発展と併せて急速にその需要が拡大し、充電可能なエネルギーの供給源として現代の情報化社会に不可欠なものとなっている。
【0005】
そのため、リチウムイオン二次電池のサイクル特性の向上および高容量化のために、正極活物質の改良が検討されている(特許文献1および特許文献2)。
【0006】
また、蓄電装置に要求されている特性としては、様々な動作環境での安全性、長期信頼性の向上などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-018914号公報
【特許文献2】特開2016-076454号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Toyoki Okumura et al,”Correlation of lithium ion distribution and X-ray absorption near-edge structure in O3-and O2-lithium cobalt oxides from first-principle calculation”, Journal of Materials Chemistry, 2012, 22, p.17340-17348
【非特許文献2】Motohashi, T. et al,”Electronic phase diagram of the layered cobalt oxide system LixCoO2(0.0≦x≦1.0) ”, Physical Review B, 80(16) ;165114
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
リチウムイオン二次電池およびそれに用いられる正極活物質には、容量、サイクル特性、充放電特性、信頼性または安全性といった様々な面で改善が望まれており、LiCoO2の一部を異なる元素に置換したリチウム複合酸化物LiMO2の開発が進められている。また、LiMO2を安価に短時間で作製可能な方法の開発が望まれている。
【0010】
上記に鑑み、本発明の一態様は、正極活物質の作製方法を提供することを課題とする。または、本発明の一態様は、新規な正極活物質を提供することを課題とする。または、本発明の一態様は、新規な蓄電装置を提供することを課題とする。
【0011】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、加熱炉にリチウム酸化物、フッ化物及びマグネシウム化合物の混合物を入れた第1の容器及び、第1の容器の外にフッ化物を配し、フッ化物が揮発または昇華する温度以上で加熱炉を加熱する、正極活物質の作製方法である。
【0013】
また、本発明の別の一態様は、加熱炉にリチウム酸化物、フッ化物及びマグネシウム化合物の混合物を入れた第1の容器及び、フッ化物を入れた第2の容器を配し、フッ化物が揮発または昇華する温度以上で加熱炉を加熱する、正極活物質の作製方法である。
【0014】
上記構成において、フッ化物がフッ化リチウム(LiF)であると好ましい。
【0015】
また、上記構成において、加熱炉を740℃以上1130℃以下で加熱すると好ましい。
【0016】
また、上記構成において、マグネシウム化合物がフッ化マグネシウム(MgF2)であると好ましい。
【0017】
また、上記構成において、加熱炉を酸素置換した後に、加熱炉を加熱すると好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様により、正極活物質の作製方法を提供することができる。また、本発明の一態様により、新規な正極活物質粒子を提供することができる。また、本発明の一態様によって新規な蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は正極活物質の作製方法の一例を説明する図である。
【
図2】
図2はLiFとMgF
2の混合物のDSC測定結果を説明する図である。
【
図3】
図3は本発明の一態様の正極活物質の作製方法を説明する図である。
【
図4】
図4A、
図4Bは本発明の一態様の正極活物質の作製方法を説明する図である。
【
図5】
図5A、
図5Bは、本発明の一態様の正極活物質の作製方法を説明する図である。
【
図6】
図6は正極活物質の作製方法の一例を説明する図である。
【
図7】
図7は正極活物質の作製方法の一例を説明する図である。
【
図8】
図8は正極活物質の作製方法の一例を説明する図である。
【
図9】
図9は正極活物質の結晶構造と磁性を説明する図である。
【
図10】
図10は従来例の正極活物質の結晶構造と磁性を説明する図である。
【
図20】
図20Aはラミネート型の二次電池を説明する上面図であり、
図20Bはラミネート型の二次電池を説明する断面図である。
【
図31】
図31は実施例に係るサイクル特性を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0021】
また、結晶面および方向の表記は、結晶学上、数字に上付きのバーを付すが、本明細書等における結晶面および方向の表記は、出願表記の制約上、数字の上にバーを付す代わりに、数字の前に-(マイナス符号)を付して表現する。また、結晶内の方向を示す個別方位は[ ]で、等価な方向すべてを示す集合方位は< >で、結晶面を示す個別面は( )で、等価な対称性を有する集合面は{ }でそれぞれ表現する。
【0022】
また、本明細書においてフッ化物を含む雰囲気とは、構成する成分の少なくとも一つにフッ化物を含む混合気体の雰囲気または該混合気体の条件下にある雰囲気をいう。
【0023】
(実施の形態1)
図1を用いてリチウム複合酸化物LiMO
2(MはCoを含む2種以上の金属であり、該金属の置換位置に特に限定はない)の作製方法の一例について説明する。以下ではLiMO
2が有するCo以外の金属元素としてMgを有する正極活物質を例にして説明する。
【0024】
まず混合物902の材料として、ハロゲン源を用意する。ハロゲン源としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物を用いることができるが、中でもフッ化物が好ましい。本実施の形態では、ハロゲン源としてフッ素源であるLiFを用意する。LiFはLiCoO2と共通のカチオンを有するため好ましい。LiFはリチウム源としてもフッ素源としても用いることができる。またLiFは融点が848℃と比較的低く、後述するアニール工程で溶融しやすいため好ましい。同様にLiMO2に用いるマグネシウム源としては、フッ素源としても用いることができるMgF2が好ましい。なお、上記ハロゲン源としてLiCl、マグネシウム源としてMgCl2も用いることができる。なお、ハロゲン源とマグネシウム源の組み合わせとしては、後述する融点降下を利用できるため共融点を有する組み合わせが好ましい。また、本発明の一態様に用いることができるハロゲン源はLiF及びLiClに限られない。また、本発明の一態様に用いることができるマグネシウム源は、MgF2及びMgCl2に限られない。
【0025】
本明細書において、共融点とは、2成分の固体相-液体相曲線において2成分が固溶体を形成せずに液体状態で完全に溶けて混ざる点を言う。例えば、2成分の金属元素A、Bが融触する時、A、Bが固溶体を形成せずに、別々に固相を形成するか、分子化合物を形成し、液相ではA,Bが完全に溶け合う場合、A,Bの混合物はAもしくはB単独の融点より低い温度の融点となり、あるA、Bの濃度比を有する混合物の時、最低の融点を示し、この温度を共融点、この混合物を共融混合物とも呼ぶ。2成分に限定されるものではなく、3成分、4成分または5成分以上であってもよい。
【0026】
本実施の形態では、ハロゲン源として、フッ素源であるLiFを用意し、フッ素源およびマグネシウム源としてMgF
2を用意することとする(
図1のステップS11)。LiFとMgF
2のモル比は、LiF:MgF
2=u:1(0≦u≦1.9)であることが好ましく、LiF:MgF
2=u:1(0.1≦u≦0.5)がより好ましく、LiF:MgF
2=u:1(u=0.33近傍)がさらに好ましい。
【0027】
また、次の混合および粉砕工程を湿式で行う場合は、溶媒を用意する。溶媒としてはアセトン等のケトン、エタノールおよびイソプロパノール等のアルコール、エーテル、ジオキサン、アセトニトリル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等を用いることができる。リチウムと反応が起こりにくい非プロトン性溶媒を用いることがより好ましい。本実施の形態では、アセトンを用いることとする(
図1のステップS11参照)。
【0028】
次に、上記の混合物902の材料を混合および粉砕する(
図1のステップS12)。混合は乾式または湿式で行うことができるが、湿式はより小さく粉砕することができるため好ましい。混合には例えばボールミル、ビーズミル等を用いることができる。ボールミルを用いる場合は、例えばメディアとしてジルコニアボールを用いることが好ましい。この混合および粉砕工程を十分に行い、混合物902を微粉化することが好ましい。
【0029】
上記で混合、粉砕した材料を回収し(
図1のステップS13)、混合物902を得る(
図1のステップS14)。
【0030】
混合物902は、例えば平均粒子径(D50)が600nm以上20μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましい。このように微粉化された混合物902ならば、後の工程でコバルト酸リチウムのようなリチウム、遷移金属および酸素を有する複合酸化物と混合したときに、複合酸化物の粒子の表面に混合物902を均一に付着させやすい。複合酸化物の粒子の表面に混合物902が均一に付着していると、加熱後に複合酸化物粒子の表層部にもれなくハロゲンおよびマグネシウムを分布させやすいため好ましい。表層部にハロゲンおよびマグネシウムが含まれない領域があると、充電状態において後述する擬スピネル型の結晶構造になりにくいおそれがある。
【0031】
<ステップS25>
次に、ステップS25に示すようにリチウム源を用意する。ステップS25としてあらかじめ合成されたリチウム、遷移金属および酸素を有する複合酸化物を用いる。
【0032】
あらかじめ合成されたリチウム、遷移金属および酸素を有する複合酸化物を用いる場合、不純物の少ないものを用いることが好ましい。本明細書等では、リチウム、遷移金属および酸素を有する複合酸化物、および正極活物質について主成分をリチウム、コバルト、ニッケル、マンガン、アルミニウムおよび酸素とし、上記主成分以外の元素を不純物とする。例えばグロー放電質量分析法(GD-MS)で分析したとき、不純物濃度があわせて10,000ppm wt以下であることが好ましく、5000ppm wt以下がより好ましい。特に、チタン等の遷移金属やヒ素の不純物濃度があわせて3000ppm wt以下であることが好ましく、1500ppm wt以下であることがより好ましい。
【0033】
例えば、あらかじめ合成されたコバルト酸リチウムとして、日本化学工業株式会社製のコバルト酸リチウム粒子(商品名:セルシードC-10N)を用いることができる。これは平均粒子径(D50)が約12μmであり、グロー放電質量分析法による不純物分析において、マグネシウム濃度およびフッ素濃度が50ppm wt以下、カルシウム濃度、アルミニウム濃度およびシリコン濃度が100ppm wt以下、ニッケル濃度が150ppm wt以下、硫黄濃度が500ppm wt以下、ヒ素濃度が1100ppm wt以下、その他のリチウム、コバルトおよび酸素以外の元素濃度が150ppm wt以下である、コバルト酸リチウムである。
【0034】
ステップS25のリチウム、遷移金属および酸素を有する複合酸化物は欠陥およびひずみの少ない層状岩塩型の結晶構造を有することが好ましい。そのため、不純物の少ない複合酸化物であることが好ましい。リチウム、遷移金属および酸素を有する複合酸化物に不純物が多く含まれると、欠陥またはひずみの多い結晶構造となる可能性が高い。
【0035】
次に、混合物902と、リチウム、遷移金属および酸素を有する複合酸化物と、を混合する(
図1のステップS31)。リチウム、遷移金属および酸素を有する複合酸化物中の遷移金属の原子数TMと、混合物902が有するマグネシウムの原子数MgMix1との比は、TM:MgMix1=1:v(0.005≦v≦0.05)であることが好ましく、TM:MgMix1=1:v(0.007≦v≦0.04)であることがより好ましく、TM:MgMix1=1:0.02程度がさらに好ましい。
【0036】
ステップS31の混合は、複合酸化物の粒子を破壊しないためにステップS12の混合よりも穏やかな条件とすることが好ましい。例えば、ステップS12の混合よりも回転数が少ない、または時間が短い条件とすることが好ましい。また湿式よりも乾式のほうが穏やかな条件であると言える。混合には例えばボールミル、ビーズミル等を用いることができる。ボールミルを用いる場合は、例えばメディアとしてジルコニアボールを用いることが好ましい。
【0037】
上記で混合した材料を回収し(
図1のステップS32)、混合物903を得る(
図1のステップS33)。
【0038】
次に、混合物903を加熱する(
図1のステップS34)。本工程はアニールという場合がある。アニールを行うことでLiMO
2が生成される。そのため、温度や時間、雰囲気等、アニールを行う混合物903の重量等、ステップS34を行う条件が重要である。また、本明細書ではアニールは混合物903を加熱する場合や、少なくとも混合物903を配した加熱炉を加熱することもその意味に含まれる。
【0039】
S34の条件が適切でない場合、良好な特性を有する正極活物質が得られない場合がある。
【0040】
ここで本発明者らは混合物903に含まれるフッ化物(本実施の形態の場合、LiF)を含む雰囲気においてアニールを行うことで、特性が良好な正極活物質を作製できることを見出した。
【0041】
[フッ化物を含む雰囲気でアニールする効果]
アニール温度は混合物902が溶融する温度以上であることが好ましい。混合物903をアニールすると、混合物902が溶融すると推測される。例えば、MgF2(融点1263℃)及びLiF(融点848℃)の混合物が溶融し、複合酸化物粒子の表層部に分布すると考えられる。MgF2が溶融することで、LiCoO2との反応が促進し、LiMO2が生成すると考えられる。よって、フッ化物とマグネシウム源は共融混合物を形成する組み合わせであると好ましい。
【0042】
また、アニール温度は混合物903が溶融する温度以上であるとより好ましい。フッ化物(例えばLiF)、マグネシウム源(例えばMgF2)及びリチウム酸化物(例えばLiCoO2)が共有混合物を形成することで、LiMO2の生成が促進されると考えられる。
【0043】
また、アニールする温度はLiCoO2の分解温度(1130℃)以下である必要がある。そのため、フッ化物とマグネシウム源との共融点以上、1130℃以下で加熱することが好ましい。
【0044】
なお、後述するが、LiFとMgF2の共融点は735℃付近である。また、LiF、MgF2及びLiCoO2は820℃付近に示差走査熱量測定(DSC測定)による吸熱ピークが観測される。よって、アニール温度としては、735℃以上が好ましく、820℃以上がより好ましい。また、LiCoO2の分解温度は1130℃であるが、その近傍の温度では、微量ではあるがLiCoO2の分解が懸念される。そのため、アニール温度としては、1130℃以下であることが好ましく、1000℃以下であることが好ましい。
【0045】
よって、アニール温度としては、735℃以上1130℃以下が好ましく、735℃以上1000℃以下がより好ましい。また、820℃以上1130℃以下が好ましく、820℃以上1000℃以下がより好ましい。
【0046】
ここで、LiFとMgF2の混合物のDSC測定について説明する。
【0047】
測定装置はRigaku社製、ThermoplusEV02を用いる。温度範囲は25℃から1000℃まで測定し、昇温速度は速度20℃/minで行う。
【0048】
図2にLiFとMgF
2の混合物(LiF/MgF
2=0.33 mol%)のDSC測定結果を示す。
図2より735℃付近に吸熱ピークが観測される。よってLiFとMgF
2の混合物は735℃付近に共融点を有する。
【0049】
また、本実施の形態において、フッ化物であるLiFが融剤として機能すると考えられる。よって、LiFが揮発し、混合物903中のLiFが減少すると、MgF2が溶融しにくくなり、LiMO2の生成が抑制されてしまうことが予想される。よって、LiFの揮発を抑制しつつ、加熱する必要がある。
【0050】
そこで、混合物903をLiFを含む雰囲気で加熱すること、すなわち、加熱炉内のLiFの分圧が高い状態で混合物903を加熱することによって、混合物903中のLiFの揮発を抑制し、LiMO2の生成を効率よく進行させることができる。そのため、特性が良好な正極活物質を作製できる。
【0051】
ここで、LiFとMgF2の混合物(LiF/MgF2=0.33 mol%)を所定の温度で加熱した場合の重量減少率を実験により調べることができる。実験方法はLiFとMgF2の混合物を200℃/hで所定温度まで昇温し、所定の温度を10時間保持する。その後降温は10時間以上かけて行う。また、酸素を5.0L/minの流量で流しながら加熱を行う。重量減少率測定の結果を表1に示す。なお、表1において、加熱前後の混合物の重量差/加熱前の混合物の重量×100により算出した結果を重量減少率(%)として表している。
【0052】
【0053】
表1に示すようにLiFとMgF2の混合物は少なくとも700℃において重量減少が確認される。よって、少なくとも700℃以上の温度では、LiFとMgF2の構成成分が反応系から揮発してしまっていることが分かる。
【0054】
[フッ化物を含む雰囲気化によるアニール1]
加熱炉内をフッ化物を含む雰囲気にし、アニールする方法の一例を、
図3を用いて以下説明する。
【0055】
本明細書において加熱炉とは、ある物質や混合物を熱処理(アニール)するために使用する設備であり、ヒーター部及び、フッ化物を含む雰囲気及び少なくとも600℃に耐える内壁を有する。また、加熱炉には加熱炉内部を減圧及び加圧のうち少なくとも一方の機能を有するポンプが備え付けてあっても構わない。
【0056】
加熱炉100は加熱炉内空間102、熱板104、ヒーター部106、断熱材108、ガス供給ライン110、仕切弁112、ガス排気ライン114を有する。フッ化物を含む雰囲気において混合物903をアニールする方法としては、加熱炉内空間102に混合物903を入れた容器116を配し、ガス供給ライン110から加熱炉内空間102へフッ化物のガスを導入し、アニールする方法が挙げられる。腐食性を有するフッ化物を用いる場合、熱板104、ガス供給ライン110、仕切弁112、ガス排気ライン114、加熱炉内壁及び容器116はフッ化物に侵されず、かつ耐熱性が高い材料で作製または加工されることが好ましい。該材料素材としてはセラミック材料が挙げられ、例えば酸化アルミニウムを用いることができる。なお、反応性が低いLiF等を用いる場合は他の材料、例えば耐熱性が高い金属も用いることができる。
【0057】
フッ化物のガスを導入する場合、加熱炉内空間102を該フッ化物凝固点または凝縮点以上に加熱した状態で該ガスを導入すると好ましい。加熱炉内空間102の温度が低い場合、導入したガスが液体または固体に状態変化する場合がある。
【0058】
また、本発明の一態様によって作製されるLiMO
2中のCo(コバルト)の価数は3価であることが好ましい。Coは2価及び3価をとり得る。そのため、Coの還元を抑制するために、加熱炉内空間102の雰囲気は酸素を含むと好ましく、加熱炉内空間102の雰囲気中の酸素と窒素の比率が大気雰囲気以上であるとより好ましく、加熱炉内空間102の雰囲気における酸素濃度は大気雰囲気以上であるとさらに好ましい。ガス供給ライン110を通して、フッ化物の他に酸素を導入すると好ましい。なお、
図3ではガス供給ラインは1本しか図示していないが、2本以上のラインがあっても構わない。その場合、別々のラインでフッ化物と酸素を加熱炉内空間102へ導入しても構わない。
【0059】
なお、混合物903を入れた容器116を配する工程と、加熱炉内空間102の雰囲気を調整する(フッ化物ガスを導入するまたは酸素濃度を調整する)工程の順番に特に制限はない。すなわち、混合物903を入れた容器116を配した後に、加熱炉内空間102の雰囲気を調整してもよく、その逆でも構わない。容器116を加熱炉内空間102へ配し、加熱炉内空間102の雰囲気を調整した後に加熱炉100を加熱、すなわちは加熱炉内空間102を加熱することによって、フッ化物を含む雰囲気において混合物903をアニールすることができる。
【0060】
また、加熱炉100を加熱し、加熱炉内空間102の雰囲気を調整した後に、混合物903を入れた容器116を配しても構わない。この場合、加熱炉内空間102の雰囲気を調整する工程と加熱炉100を加熱する工程の順番に特に制限はない。
【0061】
また、容器116へ入れた際の混合物903の配し方に特に制限はないが、
図3に示すように、容器116の底面に対して、混合物903の上面が平らになるように、言い換えると混合物903の上面の高さが均一になるように混合物903を配すると好ましい。
【0062】
[フッ化物を含む雰囲気化によるアニール2]
加熱炉内をフッ化物を含む雰囲気にし、アニールする方法の一例を
図4A及び
図4Bを用いて説明する。
図4A及び
図4Bにおいて、
図3に示す符号と同様の機能を有する箇所には、同様のハッチパターンとし、符号を省略する場合がある。また、同様の機能を有する箇所には、同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する場合がある。
【0063】
図4A及び
図4Bに示す加熱炉120は加熱炉内空間102、熱板104、ヒーター部106及び断熱材108を有する。
図4Aにおいて、フッ化物を含む雰囲気において混合物903をアニールする方法としては、加熱炉内空間102に混合物903を入れた容器116を配し、さらに混合物903に用いたフッ化物906を入れた容器122を配し、容器116と容器122を同時に加熱する方法が挙げられる。容器122に入れたフッ化物906が揮発または昇華することで、加熱炉内の雰囲気をフッ化物を含む雰囲気にすることができる。なお、フッ化物906は容器122を用いずに加熱炉内空間102に配置しても構わない。また、加熱炉内空間102をフッ化物906を含む雰囲気にするためには、加熱炉内空間102をフッ化物906が揮発または昇華する温度以上に加熱する必要がある。
【0064】
なお、混合物903に用いるフッ化物と、容器122に入れたフッ化物906とは同じ物質が含まれていればよく、純度が異なっていても、同じであっても構わない。例えば、混合物903のフッ化物としてLiFを用いた場合、混合物903に用いるLiFと容器122に入れるLiFの純度は異なっていても、同じであっても構わない。また、反応を起こさなければ、フッ化物906としてはLiFと他の物質の混合物を用いても構わない。
【0065】
なお、混合物903を入れた容器116とフッ化物906を入れた容器122を加熱炉120に配する順番に特に制限はない。容器116を配した後に容器122を配してもよく、その逆でも構わない。また、容器116と容器122を同時に配しても構わない。
【0066】
また、上述の通り、Coの還元を抑制するため大気圧以上の酸素濃度でアニールを行うことが好ましい。そのため、加熱炉内空間102の酸素濃度を大気圧以上に高めてからアニールを行うことが好ましい。
【0067】
ここで、混合物903を入れた容器116を加熱炉120に配する工程と、フッ化物906を入れた容器122を加熱炉120に配する工程と、加熱炉内空間102の酸素濃度を調整する工程の順番に特に制限はない。すなわち、加熱炉内空間102の酸素濃度を調整した後に容器116及び容器122を加熱炉120に配してもよく、その逆でも構わない。また、容器116を加熱炉120に配した後に、加熱炉内空間102の酸素濃度を調整しさらに、容器122を加熱炉120に配してもよい。また、容器122を加熱炉120に配した後に、加熱炉内空間102の酸素濃度を調整しさらに、容器116を加熱炉120に配してもよい。これらの工程を行った後に、加熱炉120を加熱することによって、フッ化物を含む雰囲気において混合物903をアニールすることができる。なお、これらの工程のうち、加熱炉120を加熱する工程を最後に行うことが好ましい。加熱を最後に行うことで、フッ化物906及び混合物903が急速に加熱されることを抑制できるため、均一な化学反応や状態変化を生じさせることができ、さらに、突沸等の好ましくない事象を抑制することができる。
【0068】
また、加熱炉120を加熱する工程と、加熱炉内空間102の酸素濃度を調整する工程と、フッ化物906を入れた容器122を加熱炉120に配する工程を行った後に、混合物903を入れた容器116を加熱炉120に配しても構わない。容器122をフッ化物906が揮発する温度または昇華点以上で加熱することで、加熱炉内空間102をフッ化物906を含む雰囲気にすることができる。よって、加熱炉内空間102の雰囲気を調整する(酸素濃度が調整されたフッ化物906を含む雰囲気にする)工程を行った後に、混合物903を入れた容器116を加熱炉120に配することで、フッ化物を含む雰囲気において混合物903をアニールすることができる。
【0069】
加熱炉内空間102の雰囲気を調整する工程を行った後に、混合物903を入れた容器116を加熱炉120に配する場合、加熱炉120を加熱する工程と、加熱炉内空間102の酸素濃度を調整する工程と、フッ化物906を入れた容器122を加熱炉120に配する工程の順番に特に制限はない。例えば、加熱炉120を加熱した後に、加熱炉内空間102の酸素濃度を調整し、容器122を加熱炉120に配してもよく、容器122を加熱炉120に配した後に、加熱炉内空間102の酸素濃度を調整し、加熱を行っても構わない。
【0070】
また、
図4Bに示すように、仕切り126を設けた容器124の一方の空間に混合物903を他方の空間にフッ化物906を入れてもよい。該構成とすることで、混合物903及びフッ化物906を同時に加熱炉120へ配することができる。また、該構成とすることで混合物903とフッ化物906が溶融した際に混合することなく、加熱炉内空間102をフッ化物を含む雰囲気にすることができる。
【0071】
なお、上述の通り、混合物903に用いるフッ化物と、フッ化物906とは同じ物質が含まれていればよく、純度が異なっていても、同じであっても構わない。例えば、混合物903のフッ化物としてLiFを用いた場合、混合物903に用いるLiFとフッ化物906として用いるLiFの純度は異なっていても、同じであっても構わない。
【0072】
上記アニールは、適切な温度および時間で行うことが好ましい。適切な温度および時間は、ステップS25のリチウム、遷移金属および酸素を有する複合酸化物の粒子の大きさおよび組成等の条件により変化する。粒子が小さい場合は、大きい場合よりも低い温度または短い時間がより好ましい場合がある。
【0073】
例えばステップS25の粒子の平均粒子径(D50)が12μm程度の場合、アニール時間は例えば3時間以上が好ましく、10時間以上がより好ましい。
【0074】
一方、ステップS25の粒子の平均粒子径(D50)が5μm程度の場合、アニール時間は例えば1時間以上10時間以下が好ましく、2時間程度がより好ましい。
【0075】
アニール後の降温時間は、例えば10時間以上50時間以下とすることが好ましい。
【0076】
上記でアニールした材料を回収し(
図1のステップS35)、正極活物質904を得る(
図1のステップS36)。
【0077】
図5に加熱炉の一例を示す。
図5において、
図3に示す符号と同様の機能を有する箇所には、同様のハッチパターンとし、符号を省略する場合がある。また、同様の機能を有する箇所には、同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する場合がある。
【0078】
<加熱炉の構成>
本発明の一態様に用いる加熱炉は特に限定はなく、バッチ式や連続式の加熱炉等、様々な加熱炉を用いることができる。
図5A及び
図5Bにその一例を示す。
【0079】
図5Aに示す加熱炉130は連続式加熱炉の一例である。加熱炉130はベルトコンベア132を有する。ベルトコンベア132上に混合物903を入れた容器134を配し、加熱炉130で処理を行うことによって、連続的にアニールを行うことができる。ベルトコンベアの移動速度を調整することによって、アニール時間を調整することができる。また、容器134の一つにフッ化物906を配し、混合物903と同時にアニールすることによって、加熱炉内空間102をフッ化物を含む雰囲気にすることができる。加熱炉130によって混合物903をアニールすることによって正極活物質904を得ることができる。
【0080】
図5Bに示す加熱炉140は回転式加熱炉の一例である。加熱炉140は材料投入部142、雰囲気制御部144、回収部146を有する。材料投入部142から加熱炉内空間102へ混合物903を投入する。熱板104が回転する機構を有し、さらに熱板104が回収部146に向かって傾斜させている。該構成とすることによって、混合物903を流動させながらアニールを行うことができる。熱板104の傾斜や回転速度を調整することによってアニール時間を調整することができる。アニールした混合物903を回収部146で回収し、正極活物質904を得ることができる。
【0081】
また雰囲気制御部144によって加熱炉内空間102をフッ化物を含む雰囲気にすることができる。フッ化物を含む雰囲気にする方法は上述のように、フッ化物ガスを導入する方法と、フッ化物を昇華または揮発させる方法が挙げられる。
【0082】
(実施の形態2)
LiMO
2の作製方法の一例について説明する。以下ではLiMO
2が有するCo以外の金属元素としてさらに複数種の金属元素を用いる場合の作製方法について
図6を用いて説明する。
【0083】
≪正極活物質の作製方法2≫
図6はLiMO
2としてCo以外に、Mg、Ni及びAlを有する複合酸化物の作製工程の一例である。本作製方法はLi及びCo以外の各金属元素源を別々に混合、粉砕処理を行い、その後、微粉化処理を行った各金属元素源をコバルト酸リチウムと混合し、アニールする方法である。S11乃至S36は実施の形態1及び
図1で説明した工程と同様である。すなわちS34の工程において、LiFを含む雰囲気で混合物903-2をアニールすると好ましい。
図6に示す作製工程によって正極活物質904-2を得られる。
【0084】
<ステップS15、ステップS16、ステップS17>
また、ステップS31で混合するために微紛化した水酸化ニッケル(Ni(OH)2)を用意する。微紛化した水酸化ニッケルは、予め水酸化ニッケルとアセトンを混合するステップS15と回収するステップS16を行っておく。ステップS16によって、微紛化した水酸化ニッケルが得られる(ステップS17)
【0085】
<ステップS18、ステップS19、ステップS20>
また、ステップS31で混合するために微紛化した水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を用意する。微紛化した水酸化アルミニウムは、予め水酸化アルミニウムとアセトンを混合するステップS18と回収するステップS19を行っておく。ステップS19によって、微紛化した水酸化アルミニウムが得られる(ステップS20)。
【0086】
上述のステップS15乃至S20において、ニッケル(Ni)源として水酸化ニッケル、アルミニウム(Al)源として水酸化アルミニウムを用いたが、ニッケル源及びアルミニウム源はこれらに限られない。各元素を有する酸化物やハロゲン化物も用いることができる。
【0087】
≪正極活物質の作製方法3≫
図7はLiMO
2としてCo以外に、Mg、Ni及びAlを有する複合酸化物を作製する工程の一例である。本作製方法はLi及びCo以外の各金属元素源を同時に混合、粉砕処理後にコバルト酸リチウムと混合し、アニールする方法である。S31乃至S35は実施の形態1及び
図1で説明した工程と同様である。すなわちS34の工程において、LiFを含む雰囲気で混合物903-3をアニールすると好ましい。
図7に示す作製工程によって正極活物質904-3を得られる。
【0088】
<ステップS22乃至ステップS24>
上述のステップS15乃至ステップS17及びステップS18乃至ステップS20と同様に、微粉化したMgF2、Ni(OH)2、Al(OH)3を用意する。微紛化した水酸化アルミニウムは、予め水酸化アルミニウムとアセトンを混合するステップS22と回収するステップS23を行っておく。ステップS22によって、微紛化した混合物902-3が得られる(ステップS24)。
【0089】
≪正極活物質の作製方法4≫
図8はLiMO
2としてCo以外に、Mg、Ni及びAlを有する複合酸化物を作製する工程の一例である。本作製方法はMgを有するLiMO
2で表される複合酸化物を作製した後、Ni源及びAl源を加え、Mg、Ni及びAlを有する複合酸化物を作製する方法である。S11乃至S14及びS31乃至S36は実施の形態1及び
図1で説明した工程と同様である。すなわちS34の工程において、LiFを含む雰囲気で混合物903をアニールすると好ましい。またステップS15乃至ステップS17は
図6を用いて説明した通りである。
図8に示す作製工程によって正極活物質904-4を得られる。
【0090】
ステップS50に示すように正極活物質904と微紛化した水酸化ニッケルを混合する。そして、混合した材料を回収する(ステップS51)。微紛化した水酸化ニッケルは、予め水酸化ニッケルとアセトンを混合するステップS15と回収するステップS16を行っておく。ステップS16によって、微紛化した水酸化ニッケルが得られる(ステップS17)。
【0091】
ステップS50で混合した材料をステップS51で回収し、混合物908を得る(
図8のステップS52)。
【0092】
次いで、ステップS53乃至ステップS55を経て、Alを添加する。Alの添加は例えば、ゾルゲル法をはじめとする液相法、固相法、スパッタリング法、蒸着法、CVD(化学気相成長)法、PLD(パルスレーザデポジション)法等の方法を適用することができる。
【0093】
図8に示すように、まずステップS52において、金属源を準備する。また、ゾルゲル法を適用する場合には、ゾルゲル法に用いる溶媒を準備する。Al源としては、Alアルコキシド、Al水酸化物、Al酸化物、等を用いることができる。コバルト酸リチウムが有するコバルトの原子数を1とし、金属源が有するアルミニウムの濃度が0.001倍以上0.02倍以下となればよい。
【0094】
ここでは一例として、ゾルゲル法を適用し、金属源としてアルミニウムイソプロポキシドを、溶媒として2-プロパノールを用いる例を示す。
【0095】
次に、アルミニウムアルコキシドを2-プロパノールに溶解させ、さらに混合物905を混合する(
図8のステップS53)。
【0096】
コバルト酸リチウムの粒径によって、金属アルコキシドの必要量は異なる。たとえばアルミニウムイソプロポキシドを用いる場合でコバルト酸リチウムの粒径(D50)が20μm程度ならば、コバルト酸リチウムが有するコバルトの原子数を1とし、アルミニウムイソプロポキシドが有するアルミニウムの濃度が0.001倍以上0.02倍以下となるよう加えることが好ましい。
【0097】
次に、金属アルコキシドのアルコール溶液とコバルト酸リチウムの粒子の混合液を、水分を含む雰囲気下で撹拌する。撹拌はたとえばマグネチックスターラーで行うことができる。撹拌時間は、雰囲気中の水と金属アルコキシドが加水分解および重縮合反応を起こすのに十分な時間であればよく、例えば4時間、25℃、湿度90%RH(Relative Humidity、相対湿度)の条件下で行うことができる。また、湿度制御、および温度制御がされていない雰囲気下、例えばドラフトチャンバー内の大気雰囲気下において攪拌を行ってもよい。そのような場合には攪拌時間をより長くすることが好ましく、例えば室温において12時間以上、とすればよい。
【0098】
雰囲気中の水分と金属アルコキシドを反応させることで、液体の水を加える場合よりもゆっくりとゾルゲル反応を進めることができる。また常温で金属アルコキシドと水を反応させることで、たとえば溶媒のアルコールの沸点を超える温度で加熱を行う場合よりもゆっくりとゾルゲル反応を進めることができる。ゆっくりとゾルゲル反応を進めることで、厚さが均一で良質な被覆層を形成することができる。
【0099】
上記の処理を終えた混合液から、沈殿物を回収する(
図8のステップS54)。回収方法としては、ろ過、遠心分離、蒸発乾固等を適用することができる。沈殿物は金属アルコキシドを溶解させた溶媒と同じアルコールで洗浄することができる。なお、蒸発乾固を適用する場合には、本ステップにおいては溶媒と沈殿物の分離を行なわなくてもよく、例えば次のステップ(ステップS54)の乾燥工程において、沈殿物を回収すればよい。
【0100】
次に、回収した残渣を乾燥し、混合物909を得る(
図8のステップS55)。乾燥工程は例えば、80℃で1時間以上4時間以下、真空または通風乾燥することができる。
【0101】
次に、得られた混合物を加熱する(
図8のステップS56)。
【0102】
加熱時間は、加熱温度の範囲内での保持時間を1時間以上80時間以下とすることが好ましい。
【0103】
加熱温度としては1000℃未満、好ましくは、700℃以上950℃以下が好ましく、850℃程度がさらに好ましい。
【0104】
また、加熱は酸素を含む雰囲気で行うことが好ましい。
【0105】
本実施の形態では、加熱温度を850℃として2時間保持することとし、昇温は200℃/h、酸素の流量は10L/minとする。
【0106】
ステップS56における加熱温度は、ステップS34における加熱温度よりも低いことが好ましい。
【0107】
<ステップS57、ステップS58>
次に、冷却された粒子を回収する(
図8のステップS57)。さらに、粒子をふるいにかけることが好ましい。上記の工程で、正極活物質904-4を作製することができる(
図8のステップS58)。
【0108】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の作製方法によって作製された正極活物質の構造の一例について説明する。
【0109】
[正極活物質の構造]
コバルト酸リチウム(LiCoO2)などの層状岩塩型の結晶構造を有する材料は、放電容量が高く、二次電池の正極活物質として優れることが知られている。層状岩塩型の結晶構造を有する材料として例えば、LiMO2で表される複合酸化物が挙げられる。元素Mの一例としてCoまたはNiより選ばれる一以上が挙げられる。また、元素Mの一例としてCoおよびNiより選ばれる一以上に加えて、AlおよびMgより選ばれる一以上が挙げられる。
【0110】
遷移金属化合物におけるヤーン・テラー効果は、遷移金属のd軌道の電子の数により、その効果の強さが異なることが知られている。
【0111】
ニッケルを有する化合物においては、ヤーン・テラー効果により歪みが生じやすい場合がある。よって、LiNiO2において高電圧における充放電を行った場合、歪みに起因する結晶構造の崩れが生じる懸念がある。LiCoO2においてはヤーン・テラー効果の影響が小さいことが示唆され、高電圧における充放電の耐性がより優れる場合があり好ましい。
【0112】
図9および
図10を用いて、正極活物質について説明する。
図9および
図10では、正極活物質が有する遷移金属としてコバルトを用いる場合について述べる。
【0113】
本発明の一態様で作製される正極活物質は、高電圧の充放電の繰り返しにおいて、CoO2層のずれを小さくすることができる。さらに、体積の変化を小さくすることができる。よって、該化合物は、優れたサイクル特性を実現することができる。また、該化合物は、高電圧の充電状態において安定な結晶構造を取り得る。よって、該化合物は、高電圧の充電状態を保持した場合において、ショートが生じづらい場合がある。そのような場合には安全性がより向上するため、好ましい。特に化学式Li(1-x-y)Co(1-a-b)Ni(x+a)Mg(y+b)O2で表される化合物は0<x+a≦0.015かつ0<y+b≦0.06であると特性が良好であるため好ましい。
【0114】
該化合物では、十分に放電された状態と、高電圧で充電された状態における、結晶構造の変化および同数の遷移金属原子あたりで比較した場合の体積の差が小さい。
【0115】
正極活物質904の充放電前後の結晶構造を、
図9に示す。正極活物質904はリチウムと、コバルトと、酸素と、を有する複合酸化物である。上記に加えてマグネシウムを有することが好ましい。またフッ素、塩素等のハロゲンを有することが好ましい。また、アルミニウム及びニッケルを有することが好ましい。
【0116】
図9の充電深度0(放電状態)の結晶構造は、
図10と同じR-3m(O3)である。一方、正極活物質904は、十分に充電された充電深度の場合、H1-3型結晶構造とは異なる構造の結晶を有する。本構造は、空間群R-3mであり、スピネル型結晶構造ではないものの、コバルト、マグネシウム等のイオンが酸素6配位位置を占め、陽イオンの配列がスピネル型と似た対称性を有する。よって、本構造を本明細書等では擬スピネル型の結晶構造と呼ぶ。なお、
図9に示されている擬スピネル型の結晶構造の図では、コバルト原子の対称性と酸素原子の対称性について説明するために、リチウムの表示を省略しているが、実際はCoO
2層の間にコバルトに対して例えば20原子%以下のリチウムが存在する。また、O3型結晶構造および擬スピネル型の結晶構造のいずれの場合も、CoO
2層の間、つまりリチウムサイトに、希薄にマグネシウムが存在することが好ましい。また、酸素サイトに、ランダムかつ希薄に、フッ素等のハロゲンが存在してもよい。
【0117】
なお、擬スピネル型の結晶構造は、リチウムなどの軽元素は酸素4配位位置を占める場合があり、この場合もイオンの配列がスピネル型と似た対称性を有する。
【0118】
また擬スピネル型の結晶構造は、層間にランダムにLiを有するもののCdCl2型の結晶構造に類似する結晶構造であるということもできる。このCdCl2型に類似した結晶構造は、ニッケル酸リチウムを充電深度0.94まで充電したとき(Li0.06NiO2)の結晶構造と近いが、純粋なコバルト酸リチウム、またはコバルトを多く含む層状岩塩型の正極活物質では通常この結晶構造を取らないことが知られている。
【0119】
層状岩塩型結晶、および岩塩型結晶の陰イオンは立方最密充填構造(面心立方格子構造)をとる。擬スピネル型結晶も、陰イオンは立方最密充填構造をとると推定される。これらが接するとき、陰イオンにより構成される立方最密充填構造の向きが揃う結晶面が存在する。ただし、層状岩塩型結晶および擬スピネル型結晶の空間群はR-3mであり、岩塩型結晶の空間群Fm-3m(一般的な岩塩型結晶の空間群)およびFd-3m(最も単純な対称性を有する岩塩型結晶の空間群)とは異なるため、上記の条件を満たす結晶面のミラー指数は層状岩塩型結晶および擬スピネル型結晶と、岩塩型結晶では異なる。本明細書では、層状岩塩型結晶、擬スピネル型結晶、および岩塩型結晶において、陰イオンにより構成される立方最密充填構造の向きが揃うとき、結晶の配向が概略一致する、と言う場合がある。
【0120】
正極活物質904では、高電圧で充電し多くのリチウムが離脱したときの、結晶構造の変化が、後述する正極活物質100Cよりも抑制されている。例えば、
図9中に点線で示すように、これらの結晶構造ではCoO
2層のずれがほとんどない。
【0121】
より詳細に説明すれば、正極活物質904は、充電電圧が高い場合にも構造の安定性が高い。例えば、正極活物質100CにおいてはH1-3型結晶構造となる充電電圧、例えばリチウム金属の電位を基準として4.6V程度の電圧においてもR-3m(O3)の結晶構造を保持できる充電電圧の領域が存在し、さらに充電電圧を高めた領域、例えばリチウム金属の電位を基準として4.65V乃至4.7V程度の電圧においても擬スピネル型の結晶構造を取り得る領域が存在する。さらに充電電圧を高めるとようやく、H1-3型結晶が観測される場合がある。なお、二次電池において例えば負極活物質として黒鉛を用いる場合には、例えば二次電池の電圧が4.3V以上4.5V以下においてもR-3m(O3)の結晶構造を保持できる充電電圧の領域が存在し、さらに充電電圧を高めた領域、例えばリチウム金属の電位を基準として4.35V以上4.55V以下においても擬スピネル型の結晶構造を取り得る領域が存在する。
【0122】
そのため、正極活物質904においては、高電圧で充放電を繰り返しても結晶構造が崩れにくい。
【0123】
なお擬スピネル型の結晶構造は、ユニットセルにおけるコバルトと酸素の座標を、Co(0,0,0.5)、O(0,0,x)、0.20≦x≦0.25の範囲内で示すことができる。
【0124】
CoO2層間、つまりリチウムサイトにランダムかつ希薄に存在するマグネシウムは、CoO2層のずれを抑制する効果がある。そのためCoO2層間にマグネシウムが存在すると、擬スピネル型の結晶構造になりやすい。そのためマグネシウムは正極活物質100A-1の粒子全体に分布していることが好ましい。またマグネシウムを粒子全体に分布させるために、正極活物質100A-1の作製工程において、加熱処理を行うことが好ましい。
【0125】
しかしながら、加熱処理の温度が高すぎると、カチオンミキシングが生じてマグネシウムがコバルトサイトに入る可能性が高まる。マグネシウムがコバルトサイトに存在すると、R-3mの構造を保つ効果がなくなってしまう。さらに、加熱処理の温度が高すぎると、コバルトが還元されて2価になってしまう、リチウムが蒸散するなどの悪影響も懸念される。
【0126】
そこで、マグネシウムを粒子全体に分布させるための加熱処理よりも前に、コバルト酸リチウムにフッ素化合物等のハロゲン化合物を加えておくことが好ましい。ハロゲン化合物を加えることでコバルト酸リチウムの融点降下が起こる。融点降下させることで、カチオンミキシングが生じにくい温度で、マグネシウムを粒子全体に分布させることが容易となる。さらにフッ素化合物が存在すれば、電解液が分解して生じたフッ酸に対する耐食性が向上することが期待できる。
【0127】
なお、マグネシウム濃度を所望の値以上に高くすると、結晶構造の安定化への効果が小さくなってしまう場合がある。マグネシウムが、リチウムサイトに加えて、コバルトサイトにも入るようになるためと考えられる。本発明の一態様によって作製された正極活物質が有するマグネシウムの原子数は、コバルトの原子数の0.001倍以上0.1倍以下が好ましく、0.01倍より大きく0.04倍未満がより好ましく、0.02程度がさらに好ましい。ここで示すマグネシウムの濃度は例えば、ICP-MS等を用いて正極活物質の粒子全体の元素分析を行った値であってもよいし、正極活物質の作製の過程における原料の配合の値に基づいてもよい。
【0128】
正極活物質904が有するニッケルの原子数は、コバルトの原子数の7.5%以下が好ましく、0.05%以上4%以下が好ましく、0.1%以上2%以下がより好ましい。ここで示すニッケルの濃度は例えば、ICP-MS等を用いて正極活物質の粒子全体の元素分析を行った値であってもよいし、正極活物質の作製の過程における原料の配合の値に基づいてもよい。
【0129】
≪粒径≫
正極活物質904の粒径は、大きすぎるとリチウムの拡散が難しくなる、集電体に塗工したときに活物質層の表面が粗くなりすぎる、等の問題がある。一方、小さすぎると、集電体への塗工時に活物質層を担持しにくくなる、電解液との反応が過剰に進む等の問題点も生じる。そのため、平均粒子径(D50:メディアン径ともいう。)が、1μm以上100μm以下が好ましく、2μm以上40μm以下であることがより好ましく、5μm以上30μm以下がさらに好ましい。
【0130】
<分析方法>
ある正極活物質が、高電圧で充電されたとき擬スピネル型の結晶構造を示すか否かは、高電圧で充電された正極を、XRD、電子線回折、中性子線回折、電子スピン共鳴(ESR)、核磁気共鳴(NMR)等を用いて解析することで判断できる。特にXRDは、正極活物質が有するコバルト等の遷移金属の対称性を高分解能で解析できる、結晶性の高さおよび結晶の配向性を比較できる、格子の周期性歪みおよび結晶子サイズの解析ができる、二次電池を解体して得た正極をそのまま測定しても十分な精度を得られる、等の点で好ましい。
【0131】
正極活物質904は、これまで述べたように高電圧で充電した状態と放電状態とで結晶構造の変化が少ないことが特徴である。高電圧で充電した状態で、放電状態との変化が大きな結晶構造が50wt%以上を占める材料は、高電圧の充放電に耐えられないため好ましくない。そして不純物元素を添加するだけでは目的の結晶構造をとらない場合があることに注意が必要である。例えばマグネシウムおよびフッ素を有するコバルト酸リチウム、という点で共通していても、高電圧で充電した状態で擬スピネル型の結晶構造が60wt%以上になる場合と、H1-3型結晶構造が50wt%以上を占める場合と、がある。また、所定の電圧では、擬スピネル型の結晶構造がほぼ100wt%になり、さらに当該所定の電圧をあげるとH1-3型結晶構造が生じる場合もある。そのため、正極活物質904はXRD等により結晶構造が分析されると好ましい。
【0132】
ただし、高電圧で充電した状態または放電状態の正極活物質は、大気に触れると結晶構造の変化を起こす場合がある。例えば擬スピネル型の結晶構造からH1-3型結晶構造に変化する場合がある。そのため、サンプルはすべてアルゴンを含む雰囲気等の不活性雰囲気でハンドリングすることが好ましい。
【0133】
<比較例の正極活物質100C>
図10に示す正極活物質100Cは、後述する作製方法にてハロゲンおよびマグネシウムが添加されないコバルト酸リチウム(LiCoO
2)である。
図10に示すコバルト酸リチウムは、非特許文献1および非特許文献2等で述べられているように、充電深度によって結晶構造が変化する。
【0134】
図10に示すように、充電深度0(放電状態)であるコバルト酸リチウムは、空間群R-3mの結晶構造を有する領域を有し、ユニットセル中にCoO
2層が3層存在する。そのためこの結晶構造を、O3型結晶構造と呼ぶ場合がある。なお、CoO
2層とはコバルトに酸素が6配位した8面体構造が、稜共有の状態で平面に連続した構造をいうこととする。
【0135】
また充電深度1のときは、空間群P-3m1の結晶構造を有し、ユニットセル中にCoO2層が1層存在する。そのためこの結晶構造を、O1型結晶構造と呼ぶ場合がある。
【0136】
また充電深度が0.88程度のときのコバルト酸リチウムは、空間群R-3mの結晶構造を有する。この構造は、P-3m1(O1)のようなCoO
2の構造と、R-3m(O3)のようなLiCoO
2の構造と、が交互に積層された構造ともいえる。そのためこの結晶構造を、H1-3型結晶構造と呼ぶ場合がある。なお、実際にはH1-3型結晶構造は、ユニットセルあたりのコバルト原子の数が他の構造の2倍となっている。しかし
図10をはじめ本明細書では、他の構造と比較しやすくするためH1-3型結晶構造のc軸をユニットセルの1/2にした図で示すこととする。
【0137】
H1-3型結晶構造は一例として、非特許文献3に記載があるように、ユニットセルにおけるコバルトと酸素の座標を、Co(0、0、0.42150±0.00016)、O1(0、0、0.27671±0.00045)、O2(0、0、0.11535±0.00045)と表すことができる。O1およびO2はそれぞれ酸素原子である。このようにH1-3型結晶構造は、1つのコバルトおよび2つの酸素を用いたユニットセルにより表される。一方、後述するように、本発明の一態様の擬スピネル型の結晶構造は好ましくは、1つのコバルトおよび1つの酸素を用いたユニットセルにより表される。これは、擬スピネルの構造の場合とH1-3型構造の場合では、コバルトと酸素との対称性が異なり、擬スピネルの構造の方が、H1-3型構造に比べてO3の構造からの変化が小さいことを示す。正極活物質が有する結晶構造をいずれのユニットセルを用いて表すのがより好ましいか、の選択は例えば、XRDのリートベルト解析において、GOF(goodness of fit)の値がより小さくなるように選択すればよい。
【0138】
充電電圧がリチウム金属の酸化還元電位を基準に4.6V以上になるような高電圧の充電、あるいは充電深度が0.8以上になるような深い深度の充電と、放電とを繰り返すと、コバルト酸リチウムはH1-3型結晶構造と、放電状態のR-3m(O3)の構造と、の間で結晶構造の変化(つまり、非平衡な相変化)を繰り返すことになる。
【0139】
しかしながら、これらの2つの結晶構造は、CoO
2層のずれが大きい。
図10に点線および矢印で示すように、H1-3型結晶構造では、CoO
2層がR-3m(O3)から大きくずれている。このようなダイナミックな構造変化は、結晶構造の安定性に悪影響を与えうる。
【0140】
さらに体積の差も大きい。同数のコバルト原子あたりで比較した場合、H1-3型結晶構造と放電状態のO3型結晶構造の体積の差は3.0%以上である。
【0141】
加えて、H1-3型結晶構造が有する、P-3m1(O1)のようなCoO2層が連続した構造は不安定である可能性が高い。
【0142】
そのため、高電圧の充放電を繰り返すとコバルト酸リチウムの結晶構造は崩れていく。結晶構造の崩れが、サイクル特性の悪化を引き起こす。これは、結晶構造が崩れることで、リチウムが安定して存在できるサイトが減少し、またリチウムの挿入脱離が難しくなるためだと考えられる。
【0143】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の作製方法によって作製された正極活物質を含む二次電池に用いることのできる材料の例について説明する。本実施の形態では、正極、負極および電解液が、外装体に包まれている二次電池を例にとって説明する。
【0144】
[正極]
正極は、正極活物質層および正極集電体を有する。
【0145】
<正極活物質層>
正極活物質層は、正極活物質粒子を有する。また、正極活物質層は、導電助剤およびバインダを有していてもよい。
【0146】
正極活物質粒子としては、本発明の一態様の作製方法によって作製された正極活物質を用いることができる。
【0147】
導電助剤としては、炭素材料、金属材料、又は導電性セラミックス材料等を用いることができる。また、導電助剤として繊維状の材料を用いてもよい。活物質層の総量に対する導電助剤の含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、1wt%以上5wt%以下がより好ましい。
【0148】
導電助剤により、電極中に電気伝導のネットワークを形成することができる。導電助剤により、正極活物質どうしの電気伝導の経路を維持することができる。活物質層中に導電助剤を添加することにより、高い電気伝導性を有する活物質層を実現することができる。
【0149】
導電助剤としては、例えば天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛、炭素繊維などを用いることができる。炭素繊維としては、例えばメソフェーズピッチ系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維を用いることができる。また炭素繊維として、カーボンナノファイバーやカーボンナノチューブなどを用いることができる。カーボンナノチューブは、例えば気相成長法などで作製することができる。また、導電助剤として、例えばカーボンブラック(アセチレンブラック(AB)など)、グラファイト(黒鉛)粒子、グラフェン、フラーレンなどの炭素材料を用いることができる。また、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末や金属繊維、導電性セラミックス材料等を用いることができる。
【0150】
また、導電助剤としてグラフェン化合物を用いてもよい。
【0151】
グラフェン化合物は、高い導電性を有するという優れた電気特性と、高い柔軟性および高い機械的強度を有するという優れた物理特性と、を有する場合がある。また、グラフェン化合物は平面的な形状を有する。グラフェン化合物は、接触抵抗の低い面接触を可能とする。また、薄くても導電性が非常に高い場合があり、少ない量で効率よく活物質層内で導電パスを形成することができる。そのため、グラフェン化合物を導電助剤として用いることにより、活物質と導電助剤との接触面積を増大させることができるため好ましい。また、電気的な抵抗を減少できる場合があるため好ましい。ここでグラフェン化合物として例えば、グラフェンまたはマルチグラフェンまたはReduced Graphene Oxide(以下、RGO)を用いることが特に好ましい。ここで、RGOは例えば、酸化グラフェン(GO:Graphene Oxide)を還元して得られる化合物を指す。
【0152】
粒子径の小さい活物質粒子、例えば1μm以下の活物質粒子を用いる場合には、活物質粒子の比表面積が大きく、活物質粒子同士を繋ぐ導電パスがより多く必要となる。このような場合には、少ない量でも効率よく導電パスを形成することができるグラフェン化合物を用いることが、特に好ましい。
【0153】
以下では一例として、活物質層200に、導電助剤としてグラフェン化合物を用いる場合の断面構成例を説明する。
【0154】
図11Aに、活物質層200の縦断面図を示す。また、
図11Bは
図11Aの点線で囲んだ領域の拡大図である。活物質層200は、粒状の正極活物質101と、導電助剤としてのグラフェン化合物201と、バインダ(図示せず)と、を含む。ここで、グラフェン化合物201として例えばグラフェンまたはマルチグラフェンを用いればよい。ここで、グラフェン化合物201はシート状の形状を有することが好ましい。また、グラフェン化合物201は、複数のマルチグラフェン、または(および)複数のグラフェンが部分的に重なりシート状となっていてもよい。
【0155】
活物質層200の縦断面においては、
図11Aに示すように、活物質層200の内部において概略均一にシート状のグラフェン化合物201が分散する。
図11Aにおいてはグラフェン化合物201を模式的に太線で表しているが、実際には炭素分子の単層又は多層の厚みを有する薄膜である。複数のグラフェン化合物201は、複数の粒状の正極活物質101を包むように、覆うように、あるいは複数の粒状の正極活物質101の表面上に張り付くように形成されているため、互いに面接触している。
【0156】
ここで、複数のグラフェン化合物同士が結合することにより、網目状のグラフェン化合物シート(以下グラフェン化合物ネットまたはグラフェンネットと呼ぶ)を形成することができる。活物質をグラフェンネットが被覆する場合に、グラフェンネットは活物質同士を結合するバインダとしても機能することができる。よって、バインダの量を少なくすることができる、又は使用する必要がないため、電極体積や電極重量に占める活物質の比率を向上させることができる。すなわち、蓄電装置の容量を増加させることができる。
【0157】
ここで、グラフェン化合物201として酸化グラフェンを用い、活物質と混合して活物質層200となる層を形成後、還元することが好ましい。グラフェン化合物201の形成に、極性溶媒中での分散性が極めて高い酸化グラフェンを用いることにより、グラフェン化合物201を活物質層200の内部において概略均一に分散させることができる。均一に分散した酸化グラフェンを含有する分散媒から溶媒を揮発除去し、酸化グラフェンを還元するため、活物質層200に残留するグラフェン化合物201は部分的に重なり合い、互いに面接触する程度に分散していることで三次元的な導電パスを形成することができる。なお、酸化グラフェンの還元は、例えば熱処理により行ってもよいし、還元剤を用いて行ってもよい。
【0158】
従って、活物質と点接触するアセチレンブラック等の粒状の導電助剤と異なり、グラフェン化合物201は接触抵抗の低い面接触を可能とするものであるから、通常の導電助剤よりも少量で粒状の正極活物質101とグラフェン化合物201との電気伝導性を向上させることができる。よって、正極活物質101の活物質層200における比率を増加させることができる。これにより、蓄電装置の放電容量を増加させることができる。
【0159】
バインダとしては、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン-スチレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体などのゴム材料を用いることが好ましい。またバインダとして、フッ素ゴムを用いることができる。
【0160】
また、バインダとしては、例えば水溶性の高分子を用いることが好ましい。水溶性の高分子としては、例えば多糖類などを用いることができる。多糖類としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉などを用いることができる。また、これらの水溶性の高分子を、前述のゴム材料と併用して用いると、さらに好ましい。
【0161】
または、バインダとしては、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、エチレンプロピレンジエンポリマー、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース等の材料を用いることが好ましい。
【0162】
バインダは上記のうち複数を組み合わせて使用してもよい。
【0163】
例えば粘度調整効果の特に優れた材料と、他の材料とを組み合わせて使用してもよい。例えばゴム材料等は接着力や弾性力に優れる反面、溶媒に混合した場合に粘度調整が難しい場合がある。このような場合には例えば、粘度調整効果の特に優れた材料と混合することが好ましい。粘度調整効果の特に優れた材料としては、例えば水溶性高分子を用いるとよい。また、粘度調整効果に特に優れた水溶性高分子としては、前述の多糖類、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉を用いることができる。
【0164】
なお、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は、例えばカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩などの塩とすることにより溶解度が上がり、粘度調整剤としての効果を発揮しやすくなる。溶解度が高くなることにより電極のスラリーを作製する際に活物質や他の構成要素との分散性を高めることもできる。本明細書においては、電極のバインダとして使用するセルロースおよびセルロース誘導体としては、それらの塩も含むものとする。
【0165】
水溶性高分子は水に溶解することにより粘度を安定化させ、また活物質や、バインダとして組み合わせる他の材料、例えばスチレンブタジエンゴムなどを、水溶液中に安定して分散させることができる。また、官能基を有するために活物質表面に安定に吸着しやすいことが期待される。また、例えばカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は、例えば水酸基やカルボキシル基などの官能基を有する材料が多く、官能基を有するために高分子同士が相互作用し、活物質表面を広く覆って存在することが期待される。
【0166】
活物質表面を覆う、または表面に接するバインダが膜を形成する場合には、不動態膜としての役割を果たして電解液の分解を抑える効果も期待される。ここで、不動態膜とは、電気の伝導性のない膜、または電気伝導性の極めて低い膜であり、例えば活物質の表面に不動態膜が形成された場合には、電池反応電位において、電解液の分解を抑制することができる。また、不動態膜は、電気の伝導性を抑えるとともに、リチウムイオンは伝導できるとさらに望ましい。
【0167】
<正極集電体>
正極集電体としては、ステンレス、金、白金、アルミニウム、チタン等の金属、及びこれらの合金など、導電性が高い材料をもちいることができる。また正極集電体に用いる材料は、正極の電位で溶出しないことが好ましい。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。集電体は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。集電体は、厚みが5μm以上30μm以下のものを用いるとよい。
【0168】
[負極]
負極は、負極活物質層および負極集電体を有する。また、負極活物質層は、導電助剤およびバインダを有していてもよい。
【0169】
<負極活物質>
負極活物質としては、例えば合金系材料や炭素系材料等を用いることができる。
【0170】
負極活物質として、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素を用いることができる。例えば、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウム等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと高い。このため、負極活物質にシリコンを用いることが好ましい。また、これらの元素を有する化合物を用いてもよい。例えば、SiO、Mg2Si、Mg2Ge、SnO、SnO2、Mg2Sn、SnS2、V2Sn3、FeSn2、CoSn2、Ni3Sn2、Cu6Sn5、Ag3Sn、Ag3Sb、Ni2MnSb、CeSb3、LaSn3、La3Co2Sn7、CoSb3、InSb、SbSn等がある。ここで、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素、および該元素を有する化合物等を合金系材料と呼ぶ場合がある。
【0171】
本明細書等において、SiOは例えば一酸化シリコンを指す。あるいはSiOは、SiOxと表すこともできる。ここでxは1またはその近傍の値を有することが好ましい。例えばxは、0.2以上1.5以下が好ましく、0.3以上1.2以下がより好ましい。
【0172】
炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等を用いればよい。
【0173】
黒鉛としては、人造黒鉛や、天然黒鉛等が挙げられる。人造黒鉛としては例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等が挙げられる。ここで人造黒鉛として、球状の形状を有する球状黒鉛を用いることができる。例えば、MCMBは球状の形状を有する場合があり、好ましい。また、MCMBはその表面積を小さくすることが比較的容易であり、好ましい場合がある。天然黒鉛としては例えば、鱗片状黒鉛、球状化天然黒鉛等が挙げられる。
【0174】
黒鉛はリチウムイオンが黒鉛に挿入されたとき(リチウム-黒鉛層間化合物の生成時)にリチウム金属と同程度に低い電位を示す(0.05V以上0.3V以下 vs.Li/Li+)。これにより、リチウムイオン二次電池は高い作動電圧を示すことができる。さらに、黒鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が比較的小さい、安価である、リチウム金属に比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
【0175】
また、負極活物質として、二酸化チタン(TiO2)、リチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)、リチウム-黒鉛層間化合物(LixC6)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タングステン(WO2)、酸化モリブデン(MoO2)等の酸化物を用いることができる。
【0176】
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、Li3N型構造をもつLi3-xMxN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.6Co0.4N3は大きな充放電容量(900mAh/g、1890mAh/cm3)を示し好ましい。
【0177】
リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、正極活物質としてリチウムイオンを含まないV2O5、Cr3O8等の材料と組み合わせることができ好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させることで、負極活物質としてリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
【0178】
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウムとの合金を作らない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応が生じる材料としては、さらに、Fe2O3、CuO、Cu2O、RuO2、Cr2O3等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn3N2、Cu3N、Ge3N4等の窒化物、NiP2、FeP2、CoP3等のリン化物、FeF3、BiF3等のフッ化物があげられる。
【0179】
負極活物質層が有することのできる導電助剤およびバインダとしては、正極活物質層が有することのできる導電助剤およびバインダと同様の材料を用いることができる。
【0180】
<負極集電体>
負極集電体には、正極集電体と同様の材料を用いることができる。なお負極集電体は、リチウム等のキャリアイオンと合金化しない材料を用いることが好ましい。
【0181】
[電解液]
電解液は、溶媒と電解質を有する。電解液の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましく、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テトラヒドロフラン、スルホラン、スルトン等の1種、又はこれらのうちの2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。
【0182】
また、電解液の溶媒として、難燃性および難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つ又は複数用いることで、蓄電装置の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、蓄電装置の破裂や発火などを防ぐことができる。イオン液体は、カチオンとアニオンからなり、有機カチオンとアニオンとを含む。電解液に用いる有機カチオンとして、四級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、および四級ホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオンや、イミダゾリウムカチオンおよびピリジニウムカチオン等の芳香族カチオンが挙げられる。また、電解液に用いるアニオンとして、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレートアニオン、パーフルオロアルキルボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、またはパーフルオロアルキルホスフェートアニオン等が挙げられる。
【0183】
また、上記の溶媒に溶解させる電解質としては、例えばLiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiAlCl4、LiSCN、LiBr、LiI、Li2SO4、Li2B10Cl10、Li2B12Cl12、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C4F9SO2)(CF3SO2)、LiN(C2F5SO2)2等のリチウム塩を一種、又はこれらのうちの二種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。
【0184】
蓄電装置に用いる電解液は、粒状のごみや電解液の構成元素以外の元素(以下、単に「不純物」ともいう。)の含有量が少ない高純度化された電解液を用いることが好ましい。具体的には、電解液に対する不純物の重量比を1%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.01%以下とすることが好ましい。
【0185】
また、電解液にビニレンカーボネート、プロパンスルトン(PS)、tert-ブチルベンゼン(TBB)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、またスクシノニトリル、アジポニトリル等のジニトリル化合物などの添加剤を添加してもよい。添加剤の濃度は、例えば溶媒全体に対して0.1wt%以上5wt%以下とすればよい。
【0186】
また、ポリマーを電解液で膨潤させたポリマーゲル電解質を用いてもよい。
【0187】
ポリマーゲル電解質を用いることで、漏液性等に対する安全性が高まる。また、二次電池の薄型化および軽量化が可能である。
【0188】
ゲル化されるポリマーとして、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド系ゲル、ポリプロピレンオキサイド系ゲル、フッ素系ポリマーのゲル等を用いることができる。例えばポリエチレンオキシド(PEO)などのポリアルキレンオキシド構造を有するポリマーや、PVDF、およびポリアクリロニトリル等、およびそれらを含む共重合体等を用いることができる。例えばPVDFとヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であるPVDF-HFPを用いることができる。また、形成されるポリマーは、多孔質形状を有してもよい。
【0189】
また、電解液の代わりに、硫化物系や酸化物系の無機物材料等を有する固体電解質や、ポリエチレンオキシド(PEO)系の高分子材料等を有する固体電解質を用いることができる。固体電解質を用いる場合には、セパレータやスペーサの設置が不要となる。また、電池全体を固体化できるため、漏液のおそれがなくなり安全性が飛躍的に向上する。
【0190】
よって、本発明の一態様の作製方法によって作製された正極活物質は全固体電池にも応用が可能である。全固体電池に該正極活物質を応用することによって、安全性が高く、特性が良好な全固体電池を得ることができる。
【0191】
(実施の形態5)
本実施の形態では、先の実施の形態で説明した作製方法によって作製された正極活物質を有する二次電池の形状の例について説明する。本実施の形態で説明する二次電池に用いる材料は、先の実施の形態の記載を参酌することができる。
【0192】
[コイン型二次電池]
まずコイン型の二次電池の一例について説明する。
図12Aはコイン型(単層偏平型)の二次電池の外観図であり、
図12Bは、その断面図である。
【0193】
コイン型の二次電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶302とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。正極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層306により形成される。また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けられた負極活物質層309により形成される。
【0194】
なお、コイン型の二次電池300に用いる正極304および負極307は、それぞれ活物質層は片面のみに形成すればよい。
【0195】
正極缶301、負極缶302には、電解液に対して耐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えばステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接続する。
【0196】
これら負極307、正極304およびセパレータ310を電解質に含浸させ、
図12Bに示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して圧着してコイン形の二次電池300を製造する。
【0197】
正極304に、先の実施の形態で説明した正極活物質粒子を用いることで、劣化が少なく、安全性の高いコイン型の二次電池300とすることができる。
【0198】
[セパレータ]
また二次電池は、セパレータを有することが好ましい。セパレータとしては、例えば、紙をはじめとするセルロースを有する繊維、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。セパレータは袋状に加工し、正極または負極のいずれか一方を包むように配置することが好ましい。
【0199】
セパレータは多層構造であってもよい。例えばポリプロピレン、ポリエチレン等の有機材料フィルムに、セラミック系材料、フッ素系材料、ポリアミド系材料、またはこれらを混合したもの等をコートすることができる。セラミック系材料としては、例えば酸化アルミニウム粒子、酸化シリコン粒子等を用いることができる。フッ素系材料としては、例えばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン等を用いることができる。ポリアミド系材料としては、例えばナイロン、アラミド(メタ系アラミド、パラ系アラミド)等を用いることができる。
【0200】
セラミック系材料をコートすると耐酸化性が向上するため、高電圧充放電の際のセパレータの劣化を抑制し、二次電池の信頼性を向上させることができる。またフッ素系材料をコートするとセパレータと電極が密着しやすくなり、出力特性を向上させることができる。ポリアミド系材料、特にアラミドをコートすると、耐熱性が向上するため、二次電池の安全性を向上させることができる。
【0201】
例えばポリプロピレンのフィルムの両面に酸化アルミニウムとアラミドの混合材料をコートしてもよい。また、ポリプロピレンのフィルムの、正極と接する面に酸化アルミニウムとアラミドの混合材料をコートし、負極と接する面にフッ素系材料をコートしてもよい。
【0202】
多層構造のセパレータを用いると、セパレータ全体の厚さが薄くても二次電池の安全性を保つことができるため、二次電池の体積あたりの容量を大きくすることができる。
【0203】
[円筒型二次電池]
円筒型の二次電池の例について
図13A乃至
図13Dを参照して説明する。円筒型の二次電池600は、
図13Aに示す円筒型の二次電池600は、
図13Bの断面模式図に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面および底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
【0204】
中空円柱状の電池缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。電池缶602の内側において、正極、負極およびセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、コイン型の二次電池と同様のものを用いることができる。
【0205】
円筒型の二次電池に用いる正極および負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成することが好ましい。正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603および負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構612に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構612は、PTC素子(Positive Temperature Coefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構612は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
【0206】
また、
図13Cのように複数の二次電池600を、導電板613および導電板614の間に挟んでモジュール615を構成してもよい。複数の二次電池600は、並列接続されていてもよいし、直列接続されていてもよいし、並列に接続された後さらに直列に接続されていてもよい。複数の二次電池600を有するモジュール615を構成することで、大きな電力を取り出すことができる。
【0207】
図13Dはモジュール615の上面図である。図を明瞭にするために導電板613を点線で示した。
図13Dに示すようにモジュール615は、複数の二次電池600を電気的に接続する導線616を有していてもよい。導線616上に導電板613を重畳して設けることができる。また複数の二次電池600の間に温度制御装置617を有していてもよい。二次電池600が過熱されたときは、温度制御装置617により冷却し、二次電池600が冷えすぎているときは温度制御装置617により加熱することができる。そのためモジュール615の性能が外気温に影響されにくくなる。
【0208】
正極604に、先の実施の形態で説明した作製法により作製した正極活物質を用いることで、劣化が少なく、安全性の高い円筒型の二次電池600とすることができる。
【0209】
[蓄電装置の構造例]
蓄電装置の別の構造例について、
図14乃至
図18を用いて説明する。
【0210】
図14A及び
図14Bは、蓄電装置の外観図を示す図である。蓄電装置は、回路基板900と、二次電池913と、を有する。二次電池913には、ラベル910が貼られている。さらに、
図14Bに示すように、蓄電装置は、端子951と、端子952と、アンテナ914と、アンテナ915と、を有する。
【0211】
回路基板900は、端子911と、回路912と、を有する。端子911は、端子951、端子952、アンテナ914、アンテナ915、及び回路912に接続される。なお、端子911を複数設けて、複数の端子911のそれぞれを、制御信号入力端子、電源端子などとしてもよい。
【0212】
回路912は、回路基板900の裏面に設けられていてもよい。なお、アンテナ914及びアンテナ915は、コイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。又は、アンテナ914若しくはアンテナ915は、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能することができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、アンテナ914若しくはアンテナ915を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だけでなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
【0213】
アンテナ914の線幅は、アンテナ915の線幅よりも大きいことが好ましい。これにより、アンテナ914により受電する電力量を大きくできる。
【0214】
蓄電装置は、アンテナ914及びアンテナ915と、二次電池913との間に層916を有する。層916は、例えば二次電池913による電磁界を遮蔽する機能を有する。層916としては、例えば磁性体を用いることができる。
【0215】
【0216】
【0217】
図15Aに示すように、二次電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914が設けられ、
図15Bに示すように、二次電池913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ915が設けられる。層917は、例えば二次電池913による電磁界を遮蔽する機能を有する。層917としては、例えば磁性体を用いることができる。
【0218】
上記構造にすることにより、アンテナ914及びアンテナ915の両方のサイズを大きくすることができる。
【0219】
【0220】
図15Cに示すように、二次電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914及びアンテナ915が設けられ、
図15Dに示すように、二次電池913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ918が設けられる。アンテナ918は、例えば、外部機器とのデータ通信を行うことができる機能を有する。アンテナ918には、例えばアンテナ914及びアンテナ915に適用可能な形状のアンテナを適用することができる。アンテナ918を介した蓄電装置と他の機器との通信方式としては、NFCなど、蓄電装置と他の機器との間で用いることができる応答方式などを適用することができる。
【0221】
又は、
図16Aに示すように、
図14A及び
図14Bに示す二次電池913に表示装置920を設けてもよい。表示装置920は、端子919を介して端子911に電気的に接続される。なお、表示装置920が設けられる部分にラベル910を設けなくてもよい。なお、
図14A及び
図14Bに示す蓄電装置と同じ部分については、
図14A及び
図14Bに示す蓄電装置の説明を適宜援用できる。
【0222】
表示装置920には、例えば充電中であるか否かを示す画像、蓄電量を示す画像などを表示してもよい。表示装置920としては、例えば電子ペーパー、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(ELともいう)表示装置などを用いることができる。例えば、電子ペーパーを用いることにより表示装置920の消費電力を低減することができる。
【0223】
又は、
図16Bに示すように、
図14A及び
図14Bに示す二次電池913にセンサ921を設けてもよい。センサ921は、端子922を介して端子911に電気的に接続される。なお、
図14A及び
図14Bに示す蓄電装置と同じ部分については、
図14A及び
図14Bに示す蓄電装置の説明を適宜援用できる。
【0224】
センサ921としては、例えば、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい、又は赤外線を測定することができる機能を有すればよい。センサ921を設けることにより、例えば、蓄電装置が置かれている環境を示すデータ(温度など)を検出し、回路912内のメモリに記憶しておくこともできる。
【0225】
さらに、二次電池913の構造例について
図17及び
図18を用いて説明する。
【0226】
図17Aに示す二次電池913は、筐体930の内部に端子951と端子952が設けられた捲回体950を有する。捲回体950は、筐体930の内部で電解液に含浸される。端子952は、筐体930に接し、端子951は、絶縁材などを用いることにより筐体930に接していない。なお、
図17Aでは、便宜のため、筐体930を分離して図示しているが、実際は、捲回体950が筐体930に覆われ、端子951及び端子952が筐体930の外に延在している。筐体930としては、金属材料(例えばアルミニウムなど)又は樹脂材料を用いることができる。
【0227】
なお、
図17Bに示すように、
図17Aに示す筐体930を複数の材料によって形成してもよい。例えば、
図17Bに示す二次電池913は、筐体930aと筐体930bが貼り合わされており、筐体930a及び筐体930bで囲まれた領域に捲回体950が設けられている。
【0228】
筐体930aとしては、有機樹脂など、絶縁材料を用いることができる。特に、アンテナが形成される面に有機樹脂などの材料を用いることにより、二次電池913による電界の遮蔽を抑制できる。なお、筐体930aによる電界の遮蔽が小さければ、筐体930aの内部にアンテナ914やアンテナ915などのアンテナを設けてもよい。筐体930bとしては、例えば金属材料を用いることができる。
【0229】
さらに、捲回体950の構造について
図18に示す。捲回体950は、負極931と、正極932と、セパレータ933と、を有する。捲回体950は、セパレータ933を挟んで負極931と、正極932が重なり合って積層され、該積層シートを捲回させた捲回体である。なお、負極931と、正極932と、セパレータ933と、の積層を、さらに複数重ねてもよい。
【0230】
負極931は、端子951及び端子952の一方を介して
図14に示す端子911に接続される。正極932は、端子951及び端子952の他方を介して
図14に示す端子911に接続される。
【0231】
正極932に、先の実施の形態で説明した正極活物質粒子を用いることで、劣化が少なく、安全性の高い二次電池913とすることができる。
【0232】
[ラミネート型二次電池]
次に、ラミネート型の二次電池の例について、
図19乃至
図24を参照して説明する。ラミネート型の二次電池は、可撓性を有する構成とすれば、可撓性を有する部位を少なくとも一部有する電子機器に実装すれば、電子機器の変形に合わせて二次電池も曲げることもできる。
【0233】
図19A乃至
図19Cを用いて、ラミネート型の二次電池980について説明する。ラミネート型の二次電池980は、
図19Aに示す捲回体993を有する。捲回体993は、負極994と、正極995と、セパレータ996と、を有する。捲回体993は、
図18で説明した捲回体950と同様に、セパレータ996を挟んで負極994と、正極995とが重なり合って積層され、該積層シートを捲回したものである。
【0234】
なお、負極994、正極995およびセパレータ996からなる積層の積層数は、必要な容量と素子体積に応じて適宜設計すればよい。負極994はリード電極997およびリード電極998の一方を介して負極集電体(図示せず)に接続され、正極995はリード電極997およびリード電極998の他方を介して正極集電体(図示せず)に接続される。
【0235】
図19Bに示すように、外装体となるフィルム981と、凹部を有するフィルム982とを熱圧着などにより貼り合わせて形成される空間に上述した捲回体993を収納することで、
図19Cに示すように二次電池980を作製することができる。捲回体993は、リード電極997およびリード電極998を有し、フィルム981と、凹部を有するフィルム982とに囲まれた空間の内部は電解液に含浸される。
【0236】
フィルム981と、凹部を有するフィルム982は、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。フィルム981および凹部を有するフィルム982の材料として樹脂材料を用いれば、外部から力が加わったときにフィルム981と、凹部を有するフィルム982を変形させることができ、可撓性を有する二次電池を作製することができる。
【0237】
また、
図19B及び
図19Cでは2枚のフィルムを用いる例を示しているが、1枚のフィルムを折り曲げることによって空間を形成し、その空間に上述した捲回体993を収納してもよい。
【0238】
正極995に、先の実施の形態で説明した正極活物質粒子を用いることで、劣化が少なく、安全性の高い二次電池980とすることができる。
【0239】
また
図19A乃至
図19Cでは外装体となるフィルムにより形成された空間に捲回体を有する二次電池980の例について説明したが、例えば
図20のように、外装体となるフィルムにより形成された空間に、短冊状の複数の正極、セパレータおよび負極を有する二次電池としてもよい。
【0240】
図20Aに示すラミネート型の二次電池500は、正極集電体501および正極活物質層502を有する正極503と、負極集電体504および負極活物質層505を有する負極506と、セパレータ507と、電解液508と、外装体509と、を有する。外装体509内に設けられた正極503と負極506との間にセパレータ507が設置されている。また、外装体509内は、電解液508で満たされている。電解液508には、実施の形態4で示した電解液を用いることができる。
【0241】
図20Aに示すラミネート型の二次電池500において、正極集電体501および負極集電体504は、外部との電気的接触を得る端子の役割も兼ねている。そのため、正極集電体501および負極集電体504の一部は、外装体509から外側に露出するように配置してもよい。また、正極集電体501および負極集電体504を、外装体509から外側に露出させず、リード電極を用いてそのリード電極と正極集電体501、或いは負極集電体504と超音波接合させてリード電極を外側に露出するようにしてもよい。
【0242】
ラミネート型の二次電池500において、外装体509には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のラミネートフィルムを用いることができる。
【0243】
また、ラミネート型の二次電池500の断面構造の一例を
図20Bに示す。
図20Aでは簡略のため、2つの集電体で構成する例を示しているが、実際は、複数の電極層で構成する。
【0244】
図20Bでは、一例として、電極層数を16としている。なお、電極層数を16としても二次電池500は、可撓性を有する。
図20Bでは負極集電体504が8層と、正極集電体501が8層の合計16層の構造を示している。なお、
図20Bは負極の取り出し部の断面を示しており、8層の負極集電体504を超音波接合させている。勿論、電極層数は16に限定されず、多くてもよいし、少なくてもよい。電極層数が多い場合には、より多くの容量を有する二次電池とすることができる。また、電極層数が少ない場合には、薄型化でき、可撓性に優れた二次電池とすることができる。
【0245】
ここで、ラミネート型の二次電池500の外観図の一例を
図21及び
図22に示す。
図21及び
図22は、正極503、負極506、セパレータ507、外装体509、正極リード電極510及び負極リード電極511を有する。
【0246】
図23Aは正極503及び負極506の外観図を示す。正極503は正極集電体501を有し、正極活物質層502は正極集電体501の表面に形成されている。また、正極503は正極集電体501が一部露出する領域(以下、タブ領域という)を有する。負極506は負極集電体504を有し、負極活物質層505は負極集電体504の表面に形成されている。また、負極506は負極集電体504が一部露出する領域、すなわちタブ領域を有する。正極及び負極が有するタブ領域の面積や形状は、
図23Aに示す例に限られない。
【0247】
[ラミネート型二次電池の作製方法]
ここで、
図21に外観図を示すラミネート型二次電池の作製方法の一例について、
図23B及び
図23Cを用いて説明する。
【0248】
まず、負極506、セパレータ507及び正極503を積層する。
図23Bに積層された負極506、セパレータ507及び正極503を示す。ここでは負極を5組、正極を4組使用する例を示す。次に、正極503のタブ領域同士の接合と、最表面の正極のタブ領域への正極リード電極510の接合を行う。接合には、例えば超音波溶接等を用いればよい。同様に、負極506のタブ領域同士の接合と、最表面の負極のタブ領域への負極リード電極511の接合を行う。
【0249】
次に外装体509上に、負極506、セパレータ507及び正極503を配置する。
【0250】
次に、
図23Cに示すように、外装体509を破線で示した部分で折り曲げる。その後、外装体509の外周部を接合する。接合には例えば熱圧着等を用いればよい。この時、後に電解液508を入れることができるように、外装体509の一部(または一辺)に接合されない領域(以下、導入口という)を設ける。
【0251】
次に、外装体509に設けられた導入口から、電解液508を外装体509の内側へ導入する。電解液508の導入は、減圧雰囲気下、或いは不活性雰囲気下で行うことが好ましい。そして最後に、導入口を接合する。このようにして、ラミネート型の二次電池である二次電池500を作製することができる。
【0252】
正極503に、先の実施の形態で説明した正極活物質粒子を用いることで、劣化が少なく、安全性の高い二次電池500とすることができる。
【0253】
[曲げることのできる二次電池]
次に、曲げることのできる二次電池の例について
図24及び
図25を参照して説明する。
【0254】
図24Aに、曲げることのできる電池250の上面概略図を示す。
図24B、
図24C及び
図24Dにはそれぞれ、
図24A中の切断線C1-C2、切断線C3-C4、切断線A1-A2における断面概略図である。電池250は、外装体251と、外装体251の内部に収容された正極211aおよび負極211bを有する。正極211aと電気的に接続されたリード212a、および負極211bと電気的に接続されたリード212bは、外装体251の外側に延在している。また外装体251で囲まれた領域には、正極211aおよび負極211bに加えて電解液(図示しない)が封入されている。
【0255】
電池250が有する正極211aおよび負極211bについて、
図25を用いて説明する。
図25Aは、正極211a、負極211bおよびセパレータ214の積層順を説明する斜視図である。
図25Bは正極211aおよび負極211bに加えて、リード212aおよびリード212bを示す斜視図である。
【0256】
図25Aに示すように、電池250は、複数の短冊状の正極211a、複数の短冊状の負極211bおよび複数のセパレータ214を有する。正極211aおよび負極211bはそれぞれ突出したタブ部分と、タブ以外の部分を有する。正極211aの一方の面のタブ以外の部分に正極活物質層が形成され、負極211bの一方の面のタブ以外の部分に負極活物質層が形成される。
【0257】
正極211aの正極活物質層の形成されていない面同士、および負極211bの負極活物質層の形成されていない面同士が接するように、正極211aおよび負極211bは積層される。
【0258】
また、正極211aの正極活物質層が形成された面と、負極211bの負極活物質層が形成された面の間にはセパレータ214が設けられる。
図25では見やすくするためセパレータ214を点線で示す。
【0259】
また
図25Bに示すように、複数の正極211aとリード212aは、接合部215aにおいて電気的に接続される。また複数の負極211bとリード212bは、接合部215bにおいて電気的に接続される。
【0260】
【0261】
外装体251は、フィルム状の形状を有し、正極211aおよび負極211bを挟むように2つに折り曲げられている。外装体251は、折り曲げ部261と、一対のシール部262と、シール部263と、を有する。一対のシール部262は、正極211aおよび負極211bを挟んで設けられ、サイドシールとも呼ぶことができる。また、シール部263は、リード212a及びリード212bと重なる部分を有し、トップシールとも呼ぶことができる。
【0262】
外装体251は、正極211aおよび負極211bと重なる部分に、稜線271と谷線272が交互に並んだ波形状を有することが好ましい。また、外装体251のシール部262及びシール部263は、平坦であることが好ましい。
【0263】
図24Bは、稜線271と重なる部分で切断した断面であり、
図24Cは、谷線272と重なる部分で切断した断面である。
図24B及び
図24Cは共に、電池250及び正極211aおよび負極211bの幅方向の断面に対応する。
【0264】
ここで、負極211bの幅方向の端部、すなわち負極211bの端部と、シール部262との間の距離を距離Laとする。電池250に曲げるなどの変形を加えたとき、後述するように正極211aおよび負極211bが長さ方向に互いにずれるように変形する。その際、距離Laが短すぎると、外装体251と正極211aおよび負極211bとが強く擦れ、外装体251が破損してしまう場合がある。特に外装体251の金属フィルムが露出すると、当該金属フィルムが電解液により腐食されてしまう恐れがある。したがって、距離Laを出来るだけ長く設定することが好ましい。一方で、距離Laを大きくしすぎると、電池250の体積が増大してしまう。
【0265】
また、積層された正極211aおよび負極211bの合計の厚さが厚いほど、負極211bと、シール部262との間の距離Laを大きくすることが好ましい。
【0266】
より具体的には、積層された正極211aおよび負極211bの合計の厚さを厚さtとしたとき、距離Laは、厚さtの0.8倍以上3.0倍以下、好ましくは0.9倍以上2.5倍以下、より好ましくは1.0倍以上2.0倍以下であることが好ましい。距離Laをこの範囲とすることで、コンパクトで、且つ曲げに対する信頼性の高い電池を実現できる。
【0267】
また、一対のシール部262の間の距離を距離Lbとしたとき、距離Lbを正極211aおよび負極211bの幅(ここでは、負極211bの幅Wb)よりも十分大きくすることが好ましい。これにより、電池250に繰り返し曲げるなどの変形を加えたときに、正極211aおよび負極211bと外装体251とが接触しても、正極211aおよび負極211bの一部が幅方向にずれることができるため、正極211aおよび負極211bと外装体251とが擦れてしまうことを効果的に防ぐことができる。
【0268】
例えば、一対のシール部262の間の距離Lbと、負極211bの幅Wbとの差が、正極211aおよび負極211bの厚さtの1.6倍以上6.0倍以下、好ましくは1.8倍以上5.0倍以下、より好ましくは、2.0倍以上4.0倍以下であることが好ましい。
【0269】
言い換えると、距離Lb、幅Wb、及び厚さtが、下記数式1の関係を満たすことが好ましい。
【0270】
【0271】
ここで、aは、0.8以上3.0以下、好ましくは0.9以上2.5以下、より好ましくは1.0以上2.0以下である。
【0272】
また、
図24Dはリード212aを含む断面であり、電池250、正極211aおよび負極211bの長さ方向の断面に対応する。
図24Dに示すように、折り曲げ部261において、正極211aおよび負極211bの長さ方向の端部と、外装体251との間に空間273を有することが好ましい。
【0273】
図24Eに、電池250を曲げたときの断面概略図を示している。
図24Eは、
図24A中の切断線B1-B2における断面に相当する。
【0274】
電池250を曲げると、曲げの外側に位置する外装体251の一部は伸び、内側に位置する他の一部は縮むように変形する。より具体的には、外装体251の外側に位置する部分は、波の振幅が小さく、且つ波の周期が大きくなるように変形する。一方、外装体251の内側に位置する部分は、波の振幅が大きく、且つ波の周期が小さくなるように変形する。このように、外装体251が変形することにより、曲げに伴って外装体251にかかる応力が緩和されるため、外装体251を構成する材料自体が伸縮する必要がない。その結果、外装体251は破損することなく、小さな力で電池250を曲げることができる。
【0275】
また、
図24Eに示すように、電池250を曲げると、正極211aおよび負極211bとがそれぞれ相対的にずれる。このとき、複数の積層された正極211aおよび負極211bは、シール部263側の一端が固定部材217で固定されているため、折り曲げ部261に近いほどずれ量が大きくなるように、それぞれずれる。これにより、正極211aおよび負極211bにかかる応力が緩和され、正極211aおよび負極211b自体が伸縮する必要がない。その結果、正極211aおよび負極211bが破損することなく電池250を曲げることができる。
【0276】
また、正極211aおよび負極211bと外装体251との間に空間273を有していることにより、曲げた時、内側に位置する正極211aおよび負極211bが、外装体251に接触することなく、相対的にずれることができる。
【0277】
図24及び
図25で例示した電池250は、繰り返し曲げ伸ばしを行っても、外装体の破損、正極211aおよび負極211bの破損などが生じにくく、電池特性も劣化しにくい電池である。電池250が有する正極211aに、先の実施の形態で説明した正極活物質粒子を用いることで、さらに劣化が少なく、安全性の高い二次電池とすることができる。
【0278】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様である二次電池を電子機器に実装する例について説明する。
【0279】
まず実施の形態4の一部で説明した、曲げることのできる二次電池を電子機器に実装する例を
図26に示す。曲げることのできる二次電池を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン 受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0280】
また、フレキシブルな形状を備える二次電池を、家屋やビルの内壁または外壁や、自動車の内装または外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
【0281】
図26Aは、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、二次電池7407を有している。
【0282】
図26Bは、携帯電話機7400を湾曲させた状態を示している。携帯電話機7400を外部の力により変形させて全体を湾曲させると、その内部に設けられている二次電池7407も湾曲される。また、その時、曲げられた二次電池7407の状態を
図26Cに示す。二次電池7407は薄型の二次電池である。二次電池7407は曲げられた状態で固定されている。なお、二次電池7407は集電体と電気的に接続されたリード電極を有している。
【0283】
図26Dは、バングル型の表示装置の一例を示している。携帯表示装置7100は、筐体7101、表示部7102、操作ボタン7103、及び二次電池7104を備える。また、
図26Eに曲げられた二次電池7104の状態を示す。二次電池7104は曲げられた状態で使用者の腕への装着時に、筐体が変形して二次電池7104の一部または全部の曲率が変化する。なお、曲線の任意の点における曲がり具合を相当する円の半径の値で表したものを曲率半径と呼び、曲率半径の逆数を曲率と呼ぶ。具体的には、曲率半径が40mm以上150mm以下の範囲内で筐体または二次電池7104の主表面の一部または全部が変化する。二次電池7104の主表面における曲率半径が40mm以上150mm以下の範囲であれば、高い信頼性を維持できる。
【0284】
図26Fは、腕時計型の携帯情報端末の一例を示している。携帯情報端末7200は、筐体7201、表示部7202、バンド7203、バックル7204、操作ボタン7205、入出力端子7206などを備える。
【0285】
携帯情報端末7200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
【0286】
表示部7202はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示部7202はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表示部7202に表示されたアイコン7207に触れることで、アプリケーションを起動することができる。
【0287】
操作ボタン7205は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯情報端末7200に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン7205の機能を自由に設定することもできる。
【0288】
また、携帯情報端末7200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
【0289】
また、携帯情報端末7200は入出力端子7206を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子7206を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子7206を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0290】
携帯情報端末7200の表示部7202には、本発明の一態様の二次電池を有している。例えば、
図26Eに示した二次電池7104を、筐体7201の内部に湾曲した状態で、またはバンド7203の内部に湾曲可能な状態で組み込むことができる。
【0291】
携帯情報端末7200はセンサを有することが好ましい。センサとして例えば、指紋センサ、脈拍センサ、体温センサ等の人体センサや、タッチセンサ、加圧センサ、加速度センサ、等が搭載されることが好ましい。
【0292】
図26Gは、腕章型の表示装置の一例を示している。表示装置7300は、表示部7304を有し、本発明の一態様の二次電池を有している。また、表示装置7300は、表示部7304にタッチセンサを備えることもでき、また、携帯情報端末として機能させることもできる。
【0293】
表示部7304はその表示面が湾曲しており、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示装置7300は、通信規格された近距離無線通信などにより、表示状況を変更することができる。
【0294】
また、表示装置7300は入出力端子を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0295】
次に、
図27A及び
図27Bに、2つ折り可能なタブレット型端末の一例を示す。
図27A及び
図27Bに示すタブレット型端末9600は、筐体9630a、筐体9630b、筐体9630aと筐体9630bを接続する可動部9640、表示部9631、表示モード切り替えスイッチ9626、電源スイッチ9627、省電力モード切り替えスイッチ9625、留め具9629、操作スイッチ9628、を有する。表示部9631には、可撓性を有するパネルを用いることで、より広い表示部を有するタブレット端末とすることができる。
図27Aは、タブレット型端末9600を開いた状態を示し、
図27Bは、タブレット型端末9600を閉じた状態を示している。
【0296】
また、タブレット型端末9600は、筐体9630aおよび筐体9630bの内部に蓄電体9635を有する。蓄電体9635は、可動部9640を通り、筐体9630aと筐体9630bに渡って設けられている。
【0297】
表示部9631は、一部をタッチパネルの領域とすることができ、表示された操作キーにふれることでデータ入力をすることができる。また、タッチパネルのキーボード表示切り替えボタンが表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部9631にキーボードボタン表示することができる。
【0298】
また、表示モード切り替えスイッチ9626は、縦表示又は横表示などの表示の向きを切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイッチ9625は、タブレット型端末9600に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
【0299】
図27Bは、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9633、DCDCコンバータ9636を含む充放電制御回路9634有する。また、蓄電体9635として、本発明の一態様に係る二次電池を用いる。
【0300】
なお、タブレット型端末9600は2つ折り可能なため、非使用時に筐体9630aおよび筐体9630bを重ね合せるように折りたたむことができる。折りたたむことにより、表示部9631を保護できるため、タブレット型端末9600の耐久性を高めることができる。また、本発明の一態様の二次電池を用いた蓄電体9635は高容量、良好なサイクル特性を有するため、長期間に渡って長時間の使用ができるタブレット型端末を提供できる。
【0301】
また、この他にも
図27A及び
図27Bに示したタブレット型端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力によって操作又は編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
【0302】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、又は映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐体9630の片面又は両面に設けることができ、蓄電体9635の充電を効率的に行う構成とすることができる。
【0303】
また、
図27Bに示す充放電制御回路9634の構成、および動作について
図27Cにブロック図を示し説明する。
図27Cには、太陽電池9633、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示しており、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、
図27Bに示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
【0304】
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、蓄電体9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧又は降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧又は降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、スイッチSW1をオフにし、スイッチSW2をオンにして蓄電体9635の充電を行う構成とすればよい。
【0305】
なお太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段による蓄電体9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
【0306】
図28に、他の電子機器の例を示す。
図28において、表示装置8000は、本発明の一態様に係る二次電池8004を用いた電子機器の一例である。具体的に、表示装置8000は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体8001、表示部8002、スピーカ部8003、二次電池8004等を有する。本発明の一態様に係る二次電池8004は、筐体8001の内部に設けられている。表示装置8000は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池8004に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る二次電池8004を無停電電源として用いることで、表示装置8000の利用が可能となる。
【0307】
表示部8002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
【0308】
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0309】
図28において、据え付け型の照明装置8100は、本発明の一態様に係る二次電池8103を用いた電子機器の一例である。具体的に、照明装置8100は、筐体8101、光源8102、二次電池8103等を有する。
図28では、二次電池8103が、筐体8101及び光源8102が据え付けられた天井8104の内部に設けられている場合を例示しているが、二次電池8103は、筐体8101の内部に設けられていても良い。照明装置8100は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池8103に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る二次電池8103を無停電電源として用いることで、照明装置8100の利用が可能となる。
【0310】
なお、
図28では天井8104に設けられた据え付け型の照明装置8100を例示しているが、本発明の一態様に係る二次電池は、天井8104以外、例えば側壁8105、床8106、窓8107等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上型の照明装置などに用いることもできる。
【0311】
また、光源8102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
【0312】
図28において、室内機8200及び室外機8204を有するエアコンディショナーは、本発明の一態様に係る二次電池8203を用いた電子機器の一例である。具体的に、室内機8200は、筐体8201、送風口8202、二次電池8203等を有する。
図28では、二次電池8203が、室内機8200に設けられている場合を例示しているが、二次電池8203は室外機8204に設けられていても良い。或いは、室内機8200と室外機8204の両方に、二次電池8203が設けられていても良い。エアコンディショナーは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池8203に蓄積された電力を用いることもできる。特に、室内機8200と室外機8204の両方に二次電池8203が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る二次電池8203を無停電電源として用いることで、エアコンディショナーの利用が可能となる。
【0313】
なお、
図28では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディショナーに、本発明の一態様に係る二次電池を用いることもできる。
【0314】
図28において、電気冷凍冷蔵庫8300は、本発明の一態様に係る二次電池8304を用いた電子機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫8300は、筐体8301、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303、二次電池8304等を有する。
図28では、二次電池8304が、筐体8301の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫8300は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池8304に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る二次電池8304を無停電電源として用いることで、電気冷凍冷蔵庫8300の利用が可能となる。
【0315】
また、電子機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、二次電池に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑えることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫8300の場合、気温が低く、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われない夜間において、二次電池8304に電力を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われる昼間において、二次電池8304を補助電源として用いることで、昼間の電力使用率を低く抑えることができる。
【0316】
上述の電子機器の他、本発明の一態様の二次電池はあらゆる電子機器に搭載することができる。本発明の一態様により、劣化が少なく、安全性の高い二次電池とすることができる。そのため本発明の一態様である二次電池を、本実施の形態で説明した電子機器に搭載することで、より長寿命で、より安全性の高い電子機器とすることができる。本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0317】
(実施の形態7)
本実施の形態では、車両に本発明の一態様である二次電池を搭載する例を示す。
【0318】
二次電池を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHVまたはPHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。
【0319】
図29において、本発明の一態様である二次電池を用いた車両を例示する。
図29Aに示す自動車8400は、走行のための動力源として電気モーターを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モーターとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。本発明の一態様である二次電池を用いることで、航続距離の長い車両を実現することができる。また、自動車8400は二次電池を有する。二次電池は電気モーター8406を駆動するだけでなく、ヘッドライト8401やルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給することができる。
【0320】
また、二次電池は、自動車8400が有するスピードメーター、タコメーターなどの表示装置に電力を供給することができる。また、二次電池は、自動車8400が有するナビゲーションシステムなどの半導体装置に電力を供給することができる。
【0321】
図29Bに示す自動車8500は、自動車8500が有する二次電池8024にプラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。
図29Bに、地上設置型の充電装置8021から自動車8500に搭載された二次電池8024に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充電方法やコネクター等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の規格を適宜採用すればよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車8500に搭載された二次電池8024を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
【0322】
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、車両どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時に二次電池の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
【0323】
また、
図29Cは、本発明の一態様の二次電池を用いた二輪車の一例である。
図29Cに示すスクータ8600は、二次電池8602、サイドミラー8601、方向指示灯8603を備える。二次電池8602は、方向指示灯8603に電気を供給することができる。
【0324】
また、
図29Cに示すスクータ8600は、座席下収納8604に、二次電池8602を収納することができる。二次電池8602は、座席下収納8604が小型であっても、座席下収納8604に収納することができる。
【0325】
本発明の一態様によれば、劣化が少なく、安全性の高い二次電池とすることができる。そのため、車両に搭載することで、航続距離や加速性能などの低下を抑えることができる。また、安全性の高い車両とすることができる。また、車両に搭載した二次電池を車両以外の電力供給源としても用いることもできる。この場合、例えば電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避することができる。電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避できれば、省エネルギー、および二酸化炭素の排出の削減に寄与することができる。また、劣化が少なく、安全性の高い二次電池を長期に渡って使用できるため、コバルトをはじめとする希少金属の使用量を減らすことができる。
【0326】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例0327】
本実施例では、本発明の一態様の作製方法によって作製したLiMO
2について説明する。作製方法は
図1、
図4A及び表2を用いて説明する。
【0328】
<LiMO2の各サンプルの作製>
まずマグネシウムおよびフッ素を有する混合物902を作製した(ステップS11乃至ステップS14)。LiFとMgF2のモル比が、LiF:MgF2=1:3となるよう秤量し、溶媒としてアセトンを加えて湿式で混合および粉砕をした。混合および粉砕はジルコニアボールを用いたボールミルで行い、400rpm、12時間行った。処理後の材料を回収し、混合物902とした。
【0329】
次に、リチウムおよびコバルトを有する複合酸化物として、コバルト酸リチウムを準備した。より具体的には、日本化学工業株式会社製のセルシードC-10Nを準備した(ステップS25)。
【0330】
次に、ステップS31において、コバルト酸リチウムが有するコバルトの原子量に対して、混合物902が有するマグネシウムの原子量が0.5mol%となるように秤量した。混合は、乾式で混合した。混合はジルコニアボールを用いたボールミルで行い、150rpm、1時間行った。
【0331】
次に、混合物903をアルミナ坩堝(酸化アルミニウム坩堝)に入れ、マッフル炉でアニールした(ステップS34)。アニール条件は各サンプルによって異なり、表2に示す通りである。昇温は200℃/hとし、降温は10時間以上かけて行った。加熱処理後の材料を回収し、ふるいにかけ(ステップS35)、各サンプル(比較サンプル1及びサンプル2)を得た(ステップS36)。また実際に用いたアルミナ坩堝を
図30に示す。
図30Aはアルミナ坩堝に蓋をつける前の様子を表し、
図30Bはアルミナ坩堝に蓋をした時の様子を表している。
【0332】
サンプル2は本発明の一態様の作製方法によって作製された。比較サンプル1及びサンプル2はLiFを含む雰囲気の条件が異なる。
【0333】
【0334】
<LiMO
2の各サンプルのアニール方法>
S33までは全てのサンプルで同様である。S34のアニール方法がサンプルによって異なる。アニールを行った際の概念図は、
図4Aに示す通りである。
【0335】
表2中、「サンプル重量」はアニールした混合物903の重量である。
【0336】
表2中、「アニール温度」はアニールを行った際の温度であり、「アニール時間」はアニール温度を保持した時間である。
【0337】
表2中、「O2条件」は加熱炉内空間102へのO2の導入方法であり、「フロー」は流量10L/minでO2を導入しながらアニールを行ったことを示す。
【0338】
表2中、「LiFを含む雰囲気」は混合物903をアニールする際に容器122及びフッ化物906(本実施例ではLiF)を同時に加熱したか否かを表し、「なし」は容器122及びフッ化物906を用いず、混合物903のみをアニールした場合を表し、「あり」は容器122及びフッ化物906を混合物903と同時に加熱した場合を表している。なお、「あり」では加熱炉内空間102にLiF1gを入れた容器122を4つ配した。
【0339】
<電池セルの作製>
次に、上記で得られた比較サンプル1及びサンプル2をそれぞれ、正極活物質として用い、各々の正極を作製した。正極活物質、ABおよびPVDFを活物質:AB:PVDF=95:3:2(重量比)で混合したスラリーを集電体に塗工したものを用いた。スラリーの溶媒としてNMPを用いた。
【0340】
集電体にスラリーを塗工した後、溶媒を揮発させた。その後、210kN/mで加圧を行った後、さらに1467kN/mで加圧を行った。以上の工程により、正極を得た。正極の担持量はおよそ7mg/cm2、電極密度は>3.8g/ccとした。
【0341】
作製した正極を用いて、CR2032タイプ(直径20mm高さ3.2mm)のコイン型の電池セルを作製した。
【0342】
対極にはリチウム金属を用いた。
【0343】
電解液が有する電解質には、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を用い、電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)がEC:DEC=3:7(体積比)で混合されたものを用いた。なお、充放電効率の評価を行った二次電池については、電解液にビニレンカーボネート(VC)を2wt%添加した。
【0344】
セパレータには厚さ25μmのポリプロピレンを用いた。
【0345】
正極缶及び負極缶には、ステンレス(SUS)で形成されているものを用いた。
【0346】
<充放電効率の測定>
得られた比較サンプル及びサンプル2をそれぞれ用いて作製した電池セルのサイクル特性を測定した。充電をCCCV(1.0C、4.6V、終止電流0.1C)、放電をCC(1.0C、2.5V)として25℃においてサイクル特性を評価した。その結果を
図31に示す。
【0347】
図31より、本発明の一態様によって作製したサンプル2は比較サンプル1よりも良好なサイクル特性を示すことが分かった。よって、LiFを含む雰囲気でアニールを行うことによって、良好な特性を示す正極活物質を作製できることが分かった。
100:加熱炉、101:正極活物質、100A-1:正極活物質、100C:正極活物質、102:加熱炉内空間、104:熱板、106:ヒーター部、108:断熱材、110:ガス供給ライン、112:仕切弁、114:ガス排気ライン、116:容器、120:加熱炉、122:容器、124:容器、130:加熱炉、132:ベルトコンベア、134:容器、140:加熱炉、142:材料投入部、144:雰囲気制御部、146:回収部、200:活物質層、201:グラフェン化合物、211a:正極、211b:負極、212a:リード、212b:リード、214:セパレータ、215a:接合部、215b:接合部、217:固定部材、250:電池、251:外装体、261:折り曲げ部、262:シール部、263:シール部、271:稜線、272:谷線、273:空間、300:二次電池、301:正極缶、302:負極缶、303:ガスケット、304:正極、305:正極集電体、306:正極活物質層、307:負極、308:負極集電体、309:負極活物質層、310:セパレータ、500:二次電池、501:正極集電体、502:正極活物質層、503:正極、504:負極集電体、505:負極活物質層、506:負極、507:セパレータ、508:電解液、509:外装体、510:正極リード電極、511:負極リード電極、600:二次電池、601:正極キャップ、602:電池缶、603:正極端子、604:正極、605:セパレータ、606:負極、607:負極端子、608:絶縁板、609:絶縁板、611:PTC素子、612:安全弁機構、613:導電板、614:導電板、615:モジュール、616:導線、617:温度制御装置、900:回路基板、902:混合物、902-3:混合物、903:混合物、903-2:混合物、903-3:混合物、904:正極活物質、904-2:正極活物質、904-3:正極活物質、904-4:正極活物質、905:混合物、906:フッ化物、908:混合物、909:混合物、910:ラベル、911:端子、912:回路、913:二次電池、914:アンテナ、915:アンテナ、916:層、917:層、918:アンテナ、919:端子、920:表示装置、921:センサ、922:端子、930:筐体、930a:筐体、930b:筐体、931:負極、932:正極、933:セパレータ、950:捲回体、951:端子、952:端子、980:二次電池、981:フィルム、982:フィルム、993:捲回体、994:負極、995:正極、996:セパレータ、997:リード電極、998:リード電極、7100:携帯表示装置、7101:筐体、7102:表示部、7103:操作ボタン、7104:二次電池、7200:携帯情報端末、7201:筐体、7202:表示部、7203:バンド、7204:バックル、7205:操作ボタン、7206:入出力端子、7207:アイコン、7300:表示装置、7304:表示部、7400:携帯電話機、7401:筐体、7402:表示部、7403:操作ボタン、7404:外部接続ポート、7405:スピーカ、7406:マイク、7407:二次電池、8000:表示装置、8001:筐体、8002:表示部、8003:スピーカ部、8004:二次電池、8021:充電装置、8022:ケーブル、8024:二次電池、8100:照明装置、8101:筐体、8102:光源、8103:二次電池、8104:天井、8105:側壁、8106:床、8107:窓、8200:室内機、8201:筐体、8202:送風口、8203:二次電池、8204:室外機、8300:電気冷凍冷蔵庫、8301:筐体、8302:冷蔵室用扉、8303:冷凍室用扉、8304:二次電池、8400:自動車、8401:ヘッドライト、8406:電気モーター、8500:自動車、8600:スクータ、8601:サイドミラー、8602:二次電池、8603:方向指示灯、8604:座席下収納、9600:タブレット型端末、9625:スイッチ、9626:スイッチ、9627:電源スイッチ、9628:操作スイッチ、9629:留め具、9630:筐体、9630a:筐体、9630b:筐体、9631:表示部、9633:太陽電池、9634:充放電制御回路、9635:蓄電体、9636:DCDCコンバータ、9637:コンバータ、9640:可動部