(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152805
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】圃場確認方法、および圃場確認システム
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20241018BHJP
G01C 7/04 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G01C7/04
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024131037
(22)【出願日】2024-08-07
(62)【分割の表示】P 2023081984の分割
【原出願日】2019-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(74)【代理人】
【識別番号】110003270
【氏名又は名称】工藤・狩野国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石川 彬
(57)【要約】
【課題】飛行装置から作物までの距離に基づいて作物の生育値を算出する構成において、生育値の算出精度の向上を図るために圃場の起伏を確認する圃場確認方法、および圃場確認システムを提供する。
【解決手段】圃場Fにおいて作物Cの生育を開始する前の第1タイミングに飛行装置3が所定の飛行経路Rに沿って飛行し、測距センサ23が圃場F内にて所定間隔毎に第1距離が測定する。第1タイミングにおける飛行装置3の高度から第1距離を減じることで、圃場内Fの各位置における圃場起伏情報Aeが算出される。また、第1タイミングに飛行装置3を飛行させる際に、飛行装置3の位置情報を取得する。圃場起伏情報Aeと位置情報とを関連付けて圃場起伏マップM1を生成して、圃場Fの地面の高度に応じて色分けして表示する。
【選択図】
図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場において作物の生育を開始する前の第1タイミングに飛行装置を所定の飛行経路に沿って飛行させて、前記飛行装置に設けられた距離測定部を用いて、前記圃場内にて所定間隔毎に、前記飛行装置の下方の地面と前記飛行装置との間の第1距離を測定する第1距離測定工程と、
前記第1タイミングにおける前記飛行装置の高度から前記第1距離測定工程において測定された前記第1距離を減じて、前記圃場内の各位置における圃場起伏情報を算出する圃場起伏情報算出工程と、
前記第1タイミングに前記飛行装置を飛行させる際に、前記飛行装置の位置情報を取得する位置情報取得工程と、
前記圃場起伏情報算出工程において算出された前記圃場起伏情報と、前記位置情報取得工程によって取得された前記位置情報とを関連付けて圃場起伏マップを生成する圃場起伏マップ生成工程と、
前記圃場起伏マップを、前記圃場の地面の高度に応じて色分けして表示する表示工程とを含む、圃場確認方法。
【請求項2】
圃場において作物の生育を開始する前の第1タイミングに飛行装置を所定の飛行経路に沿って飛行させて、前記圃場内にて所定間隔毎に、前記飛行装置の下方の地面と前記飛行装置との間の第1距離を測定する第1距離測定部と、
前記第1タイミングにおける前記飛行装置の高度から、前記第1距離測定部によって測定された前記第1距離を減じて、前記圃場内の各位置における圃場起伏情報を算出する圃場起伏情報算出部と、
前記第1タイミングに前記飛行装置を飛行させる際に、前記飛行装置の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記圃場起伏情報算出部において算出された前記圃場起伏情報と、前記位置情報取得部によって取得された前記位置情報とを関連付けて圃場起伏マップを生成する圃場起伏マップ生成部と、
前記圃場起伏マップを、前記圃場の地面の高度に応じて色分けして表示する表示部とを含む、圃場確認システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場確認方法、および圃場確認システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トラクタの進行方向に対して左右両側に設けられたセンサ装置を用いて、作物の生育状況に関する情報である正規化差植生指数(NDVI:Normalized Difference Vegetation Index)や草丈値を求める技術が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示された技術は、トラクタの周囲の正規化差植生指数や草丈値を検出する際には用いることができるものの、圃場においてトラクタが進入することができない箇所で作物が生育されている場合には用いることができない。
【0003】
そこで、ドローンに設けられたカメラで撮影した画像データに基づいて、NDVI値等を算出して、圃場内の作物の生長度合を観測する技術が提案されている(下記特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-208859号公報
【特許文献2】特開2018-46787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示された技術では、ドローンを用いて圃場内の作物を空撮するため、トラクタが進入することができないような狭い箇所においても画像データの取得が可能である。
ここで、ドローンを用いて作物の生長度合を観測する手法として、特許文献2に開示された技術とは異なり、ドローンに設けられた距離センサを用いる手法が考え得る。ドローンから作物までの距離は、圃場の傾斜や凹凸に影響を受ける。すなわち、作物の草丈が同じ場合であっても、高度が高い地面で生育されている作物からドローンまでの距離は、高度が低い地面で生育されている作物からドローンまでの距離よりも短くなる。
【0006】
特許文献2に開示された技術では、圃場の傾斜や凹凸については考慮されていない。そのため、距離センサによって測定した作物の草丈に基づいて作物の生長度合を観測する場合には、特許文献2に開示された技術を応用することができない。
そこで、この発明の一つの目的は、飛行装置から作物までの距離に基づいて作物の生育値を算出する構成において、生育値の算出精度の向上を図るために圃場の起伏を確認する圃場確認方法、および圃場確認システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一実施形態は、圃場において作物の生育を開始する前の第1タイミングに飛行装置を一定高度で水平飛行させて、前記飛行装置に設けられた距離測定部を用いて、前記圃場内の各位置において、前記飛行装置の下方の地面と前記飛行装置との間の第1距離を測定する第1距離測定工程と、前記第1タイミングにおける前記飛行装置の高度から前記第1距離測定工程において測定された前記第1距離を減じて、前記圃場内の各位置における圃場起伏情報を算出する圃場起伏情報算出工程と、前記第1タイミングに前記飛行装置を飛行させる際に、前記飛行装置の位置情報を取得する位置情報取得工程と、前記圃場起伏情報算出工程において算出された前記圃場起伏情報と、前記位置情報取得工程によって取得された前記位置情報とを関連付けて圃場起伏マップを生成する圃場起伏マップ生成工程と、前記圃場起伏マップを、前記圃場の地面の高度に応じて色分けして表示する表示工程とを含む、圃場確認方法を提供する。
【0008】
この方法によれば、圃場の各位置において、飛行装置の高度から距離測定部によって測定された飛行装置と地面との間の距離を減じて算出された地面の高度に応じて色分けして表す圃場起伏マップを表示することで、容易に圃場の起伏を確認することができる。さらに、圃場起伏マップを生育値の算出に利用することができる。
【0009】
この発明の他の実施形態は、圃場において作物の生育を開始する前の第1タイミングに飛行装置を一定高度で水平飛行させて、前記圃場内の各位置において、前記飛行装置の下方の地面と前記飛行装置との間の第1距離を測定する第1距離測定部と、前記第1タイミングにおける前記飛行装置の高度から、前記第1距離測定部によって測定された前記第1距離を減じて、前記圃場内の各位置における圃場起伏情報を算出する圃場起伏情報算出部と、前記第1タイミングに前記飛行装置を飛行させる際に、前記飛行装置の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記位置情報取得部によって取得された前記位置情報とを関連付けて圃場起伏マップを生成する圃場起伏マップ生成部と、前記圃場起伏マップを、前記圃場の地面の高度に応じて色分けして表示する表示部とを含む、圃場確認システムを提供する。
【0010】
この構成によれば、圃場の各位置において、飛行装置の高度から距離測定部によって測定された飛行装置と地面との間の距離を減じて算出された地面の高度に応じて色分けして表す圃場起伏マップを表示することで、容易に圃場の起伏を確認することができる。さらに、圃場起伏マップを生育値に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る生育値算出システムの構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、前記生育値算出システムに備えられる飛行装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、前記飛行装置が飛行する際の飛行経路の一例を示す模式図である。
【
図4A】
図4Aは、前記飛行装置に備えられる測距センサが当該測距センサと圃場の地面との間の距離を測定するときの様子を説明するための模式図である。
【
図4B】
図4Bは、前記測距センサが当該測距センサと圃場の地面との間の距離を測定するときの様子を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、前記生育値算出システムに備えられる生育値算出サーバの電気的構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、前記生育値算出サーバによって生成される圃場起伏マップの一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、前記生育値算出サーバによって生成される生育値マップの一例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、複数のタイミングで測距センサと作物との間の距離を測定して生育値を算出する方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、この発明の実施の形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る生育値算出システム1の構成を示す模式図である。
図1を参照して、生育値算出システム1は、圃場F内での作物Cの生育状況を把握するために圃場F内の各位置における作物Cの生育度合の指標となる作物Cの背の高さ(草丈値)を生育値として算出するシステムである。
【0013】
生育値算出システム1は、圃場Fの上空を一定高度で水平飛行しながら生育値の算出に必要な情報を取得する飛行装置3と、飛行装置3によって取得された情報に基づいて生育値を算出する生育値算出サーバ4とを含む。
飛行装置3は、通信網6を介して、生育値算出サーバ4と無線通信可能である。生育値算出サーバ4は、生育値算出サーバ4を運営する事業者のセンタ5内に配置されている。生育値算出サーバ4は、センタ5内のオペレータによって操作される。
【0014】
飛行装置3は、ドローン等の遠隔操作可能な無人航空機である。飛行装置3は、飛行機体20と、飛行機体20に取り付けられた複数のプロペラ21と、複数のプロペラ21を駆動する電動モータ等の駆動部22と、飛行装置3の下方に位置する対象物(作物Cや地面)と飛行装置3との間の距離を測定する距離測定部としての測距センサ23とを含む。
図2は、生育値算出システム1の電気的構成を示すブロック図である。
【0015】
図2を参照して、飛行装置3は、飛行装置3の各部を制御する飛行装置制御部40を含む。飛行装置制御部40は、CPUおよびメモリ(ROM、RAM等)41を備えたマイクロコンピュータを含む。飛行装置制御部40には、駆動部22、測位データ算出部24、気圧センサ25、測距センサ23、および通信部26が接続されている。
測位データ算出部24は、飛行機体20に取り付けられた衛星信号受信用アンテナ27に電気的に接続されている。衛星信号受信用アンテナ27は、衛星測位システムを構成する測位衛星からの信号を受信するものである。衛星測位システムは、たとえば、GNSS(Global Navigation Satellite System)である。
【0016】
衛星信号受信用アンテナ27で受信された測位信号は、測位データ算出部24に入力される。測位データ算出部24は、測位信号に基づいて、所定の時間間隔(たとえば、1秒間隔)の飛行装置3の測位データを算出する。測位データには、飛行装置3(厳密には、衛星信号受信用アンテナ27)の位置情報(たとえば緯度・経度情報)と、位置情報に対応する時刻情報とが含まれる。飛行装置制御部40は、測位データ算出部24によって算出された測位データを取得する。
【0017】
気圧センサ25は、飛行機体20に内蔵されている。気圧センサ25は、飛行機体20の周囲の気圧を検出し、検出した気圧に基づいて飛行装置3の高度H(
図1を参照)を算出する。気圧センサ25によって算出される高度Hは、たとえば、海面等の所定の基準位置S(
図1参照)から気圧センサ25までの距離である。詳しくは後述するが、気圧センサ25は、基準位置Sから気圧センサ25までの距離を、基準位置Sから、飛行装置3に備えられる基準部位までの距離に補正した距離を高度Hとしてもよい。飛行装置制御部40は、気圧センサ25によって算出された高度Hと、気圧センサ25の内部時刻(気圧センサ時刻)とを取得する。
【0018】
測距センサ23は、飛行機体20の外面に取り付けられている(
図1も参照)。測距センサ23は、たとえば、超音波測距センサやレーザ測距センサである。測距センサ23は、たとえば、対象物に向けて送信した送信波が対象物により反射して帰ってくるまでの時間を計測し、計測した時間に基づいて測距センサ23から対象物までの距離を算出するTOF方式(Time of Flight方式)のものである。
【0019】
詳しくは後述するが、測距センサ23は、測距センサ23から対象物までの距離を、対象物から、飛行装置3に備えられる基準部位までの距離に補正した距離を算出してもよい。飛行装置制御部40は、測距センサ23によって算出された測定距離と、測距センサ23の内部時刻(測距センサ時刻)とを取得する。
通信部26は、飛行装置制御部40が生育値算出サーバ4と通信するための通信インターフェースである。
【0020】
図3~
図4Bを用いて、生育値の算出に必要な情報を飛行装置3が取得するときの様子を説明する。
飛行装置3は、圃場Fに作物の植え付けを行う前の所定の第1タイミングに、圃場Fの上空を飛行する。
図3は、飛行装置3が飛行する際の飛行経路Rの一例を示す模式図である。飛行経路Rは、飛行装置3が圃場Fの全体の上空を満遍なく飛行できるように、たとえば、所定の方向における圃場Fの一端から他端に向けて蛇行しながら延びている。飛行装置3は、予め設定された飛行経路Rに沿って、一定の高度に飛行機体20を維持しながら水平飛行する。
【0021】
図4Aは、測距センサ23が、飛行装置3と圃場Fの地面との間の距離(第1距離L1)を測定するときの様子を説明するための模式図である。第1タイミングにおいて飛行装置3が飛行経路Rに沿って飛行する間、
図4Aに示すように、測距センサ23は、所定の間隔(たとえば、10cm)毎に第1距離L1を測定する(第1距離測定工程)。測距センサ23は、第1距離測定部の一例である。
【0022】
飛行装置制御部40は、第1タイミングに飛行装置3が飛行経路Rに沿って飛行する間、所定の時間間隔(たとえば、1秒間隔)の測位データ(位置情報および時刻情報)を取得する(第1位置情報取得工程)。飛行装置制御部40は、位置情報取得部の一例である。圃場Fにおいて測距センサ23による測定が行われる箇所を測定点Pという。測定点Pは、平面視で圃場F内に等間隔に設定される(
図3も参照)。
【0023】
飛行装置3は、飛行経路Rに沿って飛行する間、気圧センサ25によって取得される高度H1が一定となるように駆動部22を制御する。高度H1は、圃場Fの地面の高さに関わらず一定である。そのため、第1距離L1は、圃場Fにおいて地面の高度が高い箇所ほど小さくなり、圃場Fにおいて地面の高度が低い箇所ほど大きくなる(
図4Aに二点鎖線で示す飛行装置3を参照)。
図4Aの紙面左側に示す二点鎖線の飛行装置3では、測定された第1距離L1が高度H1と等しい例が示されている。
【0024】
飛行装置制御部40は、第1タイミングにおける飛行の後、飛行装置3の電源がオフされるタイミングで、通信部26を介して、測位データ算出部24から取得した測位データと、気圧センサ25から取得した高度H1および気圧センサ時刻と、測距センサ23から取得した第1距離L1および測距センサ時刻とを、生育値算出サーバ4に向けて送信する。
【0025】
その後、飛行装置3は、圃場Fに作物の生育が開始された後の第2タイミングで、圃場Fの上空を飛行する。飛行装置3は、予め設定された飛行経路Rに沿って、一定の高度Hに飛行機体20を維持しながら水平飛行する。
図4Bは、測距センサ23が、飛行装置3と作物Cとの間の距離(第2距離L2)を測定するときの様子を説明するための模式図である。
図4Bを参照して、第2タイミングにおいて飛行装置3が飛行経路Rに沿って飛行する間、測距センサ23は、測距センサ23が第1距離L1を測定したときと同じ位置(測定点P)で第2距離L2を測定するために、所定の間隔(たとえば、10cm)毎に第2距離L2を測定する(第2距離測定工程)。測距センサ23は、第2距離測定部の一例である。
【0026】
飛行装置制御部40は、飛行装置3が飛行経路Rに沿って飛行する間、所定の時間間隔(たとえば、1秒間隔)の測位データを取得する(第2位置情報取得工程)。
飛行装置3は、第2タイミングにおいて飛行する間、気圧センサ25によって取得される高度H2が一定となるように、駆動部22を制御する。高度H2は、圃場Fの地面の高さに関わらず一定である。そのため、第2距離L2は、仮に、作物Cの生育度合が一定とすれば、圃場Fにおいて地面の高度が高い箇所ほど小さくなり、圃場Fにおいて地面の高度が低い箇所ほど大きくなる(
図4Bに二点鎖線で示す飛行装置3を参照)。高度H2は、第1タイミングにおける飛行装置3の高度H1と同じ高度である必要はない。
【0027】
飛行装置制御部40は、第2タイミングにおける飛行の後、飛行装置3の電源がオフされるタイミングで、通信部26を介して、測位データ算出部24から取得した測位データと、気圧センサ25から取得した高度H2および気圧センサ時刻と、測距センサ23から取得した第2距離L2および測距センサ時刻とを、生育値算出サーバ4に向けて送信する。
【0028】
図5は、生育値算出サーバ4の電気的構成を示すブロック図である。
生育値算出サーバ4は、生育値算出サーバ4を制御するサーバ制御部50を含む。サーバ制御部50は、CPUおよびメモリ(ROM、RAM等)51を備えたマイクロコンピュータを含む。サーバ制御部50には、通信部52、操作表示部53、操作部54および記憶部55が電気的に接続されている。
【0029】
通信部52は、サーバ制御部50が飛行装置3と無線通信するための通信インターフェースである。操作表示部53は、たとえば、タッチパネルディスプレイである。操作部54は、たとえば、キーボード、マウス等を含む。記憶部55は、ハードディスク、不揮発性メモリ等の記憶デバイスから構成されている。
サーバ制御部50は、圃場F内の各位置における圃場起伏情報Aeを算出する圃場起伏情報算出部60と、算出された圃場起伏情報Aeと測位データに含まれる位置情報とを関連付けて圃場起伏マップM1を生成する圃場起伏マップ生成部61と、圃場F内の各位置における生育値Ceを算出する生育値算出部62と、算出された生育値Ceと圃場起伏マップM1とに基づいて生育値マップM2を生成する生育値マップ生成部63とを含む。
【0030】
各位置における圃場起伏情報Aeは、第1タイミングにおいて飛行装置3が水平飛行する際の飛行装置3の高度H1から、第1タイミングにおいて飛行装置3が水平飛行する際に各測定点Pにおいて測距センサ23によって取得された第1距離L1を減じることによって算出される(Ae=H1-L1)。このように、圃場起伏情報算出部60によって圃場起伏情報算出工程が実行される。
【0031】
なお、前述したように、
図4Aの紙面左側に示す二点鎖線の飛行装置3では、測定された第1距離L1が高度H1と等しい。この場合、圃場起伏情報Aeは「0」となる(Ae=0)。
ここで、高度H1は、気圧センサ25によって算出される高度であり、第1距離L1は、測距センサ23によって算出される距離である。すなわち、高度H1および第1距離L1として、各センサ23,25によって算出された値を用いた場合、測距センサ23および気圧センサ25の相対高さの影響を受ける。具体的には、算出された圃場起伏情報Aeに、測距センサ23および気圧センサ25の相対高さが加算されてしまう。そのため、高度H1および第1距離L1の少なくとも一方を補正する必要がある。
【0032】
たとえば、測距センサ23は、測距センサ23と圃場Fの地面との間の距離に測距センサ23と気圧センサ25との間の距離を加算した値を、第1距離L1とすることで、第1距離L1を補正してもよい。この場合、第1距離L1は、気圧センサ25と圃場Fの地面との間の距離となる。
逆に、図示しないが、気圧センサ25は、気圧センサ25と基準位置Sとの間の距離から測距センサ23と気圧センサ25との間の距離を減じた値を、高度H1とすることで、高度H1を補正してもよい。この場合、高度H1は、測距センサ23と基準位置Sとの間の距離となる。
【0033】
また、測距センサ23が飛行装置3に備えられる所定の基準部位と対象物との間の距離を算出し、気圧センサ25が飛行装置3に備えられる所定の基準部位と基準位置Sとの間の距離を算出してもよい。
図6は、圃場起伏マップ生成部61によって生成される圃場起伏マップM1の一例である。圃場起伏マップM1では、圃場Fが複数の測定点Pをそれぞれ包含する複数のメッシュmに分割され、各メッシュmに圃場起伏情報Aeが付与される。つまり、圃場Fには、測定点Pと同数のメッシュmが付与される。
【0034】
各メッシュmには、測定点Pにおいて取得された測位データに含まれる時刻情報が示す時刻が早いメッシュmから順に番号が付される。i番目のメッシュmにおける圃場起伏情報には、符号「Aei」を付す。圃場FにメッシュmがN個付与されている場合、iはN以下の自然数である(1≦i≦N)。このように、圃場起伏マップ生成部61によって圃場起伏マップ生成工程が実行される。
【0035】
生育値算出部62は、第2タイミングにおいて飛行装置3が水平飛行する際の飛行装置3の高度H2から、第2タイミングにおいて飛行装置3が水平飛行する際に各測定点Pにおいて測距センサ23によって測定された第2距離L2を減じることによって、圃場F内の各位置における作物Cの高度(作物高度Be)を算出する(Be=H2-L2)。i番目のメッシュmにおける作物高度には、符号「Bei」を付す。
【0036】
作物高度を算出する際にも、測距センサ23および気圧センサ25の相対高さの影響をなくすために、高度H1および第1距離L1と同様に、高度H2および第2距離L2の少なくとも一方を補正する必要がある。
生育値算出部62は、作物高度Beを圃場起伏情報Aeで補正した値を生育値Ceとして算出する。詳しくは、生育値算出部62は、作物高度Beから圃場起伏情報Aeを減じた値を生育値Ceとする(Ce=Be-Ae)
図7は、生育値マップ生成部63によって生成される生育値マップM2の一例である。このように生育値算出部62によって生育値算出工程が実行される。i番目のメッシュmにおける作物高度には、符号「Cei」を付す。
【0037】
記憶部55は、飛行装置3から送信された情報(測位データ、高度、第1距離、第2距離等)を記憶する飛行情報記憶部56と、生成された圃場起伏マップM1を記憶する起伏マップ記憶部57と、生成された生育値マップM2を記憶する生育値マップ記憶部58とを含む。
この実施形態によれば、飛行装置3の高度H2から第2距離L2を減じて算出された作物高度Beが作物の生育値とされるのではなく、当該作物高度Beが圃場起伏情報Aeに基づいて補正された値が生育値Ceとされる。具体的には、飛行装置3の高度H2から第2距離L2を減じた値から、圃場起伏情報Aeを減じた値が生育値Ceとされる。そのため、生育値Ceに与える圃場Fの傾斜や凹凸の影響を低減できる。その結果、生育値Ceの算出精度の向上を図れる。
【0038】
また、この実施形態によれば、圃場起伏マップ生成部61は、圃場起伏情報Aeと測位データ(飛行装置制御部40によって取得された位置情報)とを関連付けて圃場起伏マップM1を生成する。そのため、第2距離L2を測定が作物Cの生育中のいずれのタイミングで行われる場合であっても、第2タイミングで飛行するときの飛行装置3の高度H2が一定である限り、圃場起伏マップM1を生育値Ceの算出に利用することができる。
【0039】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに他の形態で実施することができる。
たとえば、圃場Fに作物の生育が開始された後の複数のタイミングで、飛行装置3と作物との間の距離を測定して、生育値Ceを複数回算出してもよい。生育値Ceを複数回測定することで所定の期間の生育量Deを算出することもできる。
【0040】
具体的には、
図8を参照して、第2タイミングよりも後の第3タイミングに、飛行装置3を所定の高度H3で水平飛行させて、測定点Pにおいて測距センサ23に飛行装置3と作物Cとの間の距離(第3距離L3)を測定させる。そして、生育値算出部62が、第3タイミングにおいて飛行装置3が水平飛行する際の飛行装置3の高度H3から、第3距離L3を減じることによって、圃場F内の各位置における作物Cの作物高度Beを算出する。そして、生育値算出部62が、算出された作物高度Beを圃場起伏情報Aeで補正して第3タイミングにおける生育値Ceを算出する。
【0041】
第3タイミングにおける生育値Ceから第2タイミングにおける生育値Ceを減じることによって、第2タイミングから第3タイミングの間における作物Cの生育量Deを算出することができる。
また、第2タイミングにおける飛行装置3の高度H2と第3タイミングにおける飛行装置3の高度H3が等しい場合には、生育値Ceを算出することなく、第2距離L2から第3距離L3を減じることで生育量Deを算出することもできる。
【0042】
上述の実施形態では、圃場起伏マップM1および生育値マップM2における各メッシュmには、それぞれ、圃場起伏情報Aeおよび生育値Ceが数値で表示される。しかしながら、圃場起伏マップM1では、たとえば、地面の高度が高いメッシュmほど色が濃くされていていてもよいし、地面の高度に応じてメッシュmが色分けされていてもよい。同様に、生育値マップM2では、生育値Ceが大きいメッシュmほど色が濃くされていてもよいし、生育値Ceに応じてメッシュmが色分けされていてもよい。
【0043】
その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0044】
1 :生育値算出システム
3 :飛行装置
60 :圃場起伏情報算出部
61 :圃場起伏マップ生成部
62 :生育値算出部
Ae :圃場起伏情報
Aei :圃場起伏情報
Be :作物高度
Bei :作物高度
C :作物
Ce :生育値
Cei :生育値
F :圃場
H :高度
H1 :高度
H2 :高度
H3 :高度
L1 :第1距離
L2 :第2距離
M1 :圃場起伏マップ
P :測定点