(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152836
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】認知障害の予防、緩和、及び/または治療のための装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20241018BHJP
A61N 1/08 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/08
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024133197
(22)【出願日】2024-08-08
(62)【分割の表示】P 2022183307の分割
【原出願日】2018-06-29
(31)【優先権主張番号】62/527,536
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517325113
【氏名又は名称】ラングペーサー メディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LUNGPACER MEDICAL INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】エバンス、ダグラス ジー.
(72)【発明者】
【氏名】タッカー、バイラル エス.
(72)【発明者】
【氏名】ガニ、マシュー ジェイ.
(57)【要約】
【課題】本開示は、脳損傷を予防する、緩和する、及び/または治療する方法ならびにシステムを記載する。
【解決手段】本明細書の方法は、対象の脳の状態を反映する試験結果を得ることと;上記試験結果に基づいて刺激パラメータを決定することと;上記刺激パラメータに基づいて神経を刺激することと;を含み、そこで、上記神経の刺激によって、上記対象の呼吸筋の収縮を補助する、またはそれを生じさせる。本明細書のシステムは、対象の脳の状態を反映している試験結果を受信するように、及び上記試験結果に基づいて刺激パラメータを決定するように、構成されるプロセッサと;上記刺激パラメータに基づいて神経を刺激するように構成される刺激器と;を含むことができ、そこで、上記神経の刺激によって、上記対象の呼吸筋の収縮を補助する、またはそれを生じさせる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムにおいて、
対象の神経活動の試験結果を生成する試験を行うように、及び前記試験結果に基づいて刺激パラメータを決定するように、構成され、前記試験の実行は、磁気共鳴画像、単光子放出コンピュータ断層画像、および/または脳波の生成を含むプロセッサと、
前記刺激パラメータに基づいて神経を刺激するように構成される刺激器であって、前記神経の刺激によって、前記対象の呼吸筋の収縮を補助し、または前記対象の呼吸筋の収縮を生じさせる、刺激器とを備える、前記システム。
【請求項2】
前記神経活動は、迷走神経活動を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記神経活動は、横隔神経活動を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記試験結果は皮膚電位、心拍変動、瞳孔径、眼への血流、末梢血流、音声誘発電位及び体性感覚誘発電位のうちの一つ以上を含む請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記システムは前記対象に呼吸補助を提供するように構成される外部の呼吸補助装置をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記外部の呼吸補助装置はさらに一定の容積と圧力を有した呼吸補助を与え、前記プロセッサはさらに前記呼吸補助の前記容積又は前記圧力を調節する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記刺激器はさらに、迷走神経に信号を送るように構成され、前記信号は、痛み信号、脳からの異常信号またはその両者を遮断する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記外部の呼吸補助装置は人工呼吸器であり、前記システムは前記人工呼吸器によって提供された吸気相の間に、前記刺激器に前記信号を送らせるように構成されるコントローラをさらに備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサはさらに前記神経活動と閾値または範囲とを比較するように構成し、前記試験結果に基づいて前記刺激パラメータを決定することは、前記神経活動と前記閾値または前記範囲との比較に基づいて刺激パラメータを決定することを含むように構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサはさらに呼吸事象の開始および呼吸事象の終了の少なくとも一方を決定するように構成される、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記刺激パラメータは、刺激量、刺激列のパルス数または呼吸速度を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記刺激器は複数の電極を含み、前記プロセッサはさらに、前記神経を最も効果的に刺激する前記複数の電極からなる電極の組み合わせを決定するように構成される、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記刺激器が、右横隔神経を刺激するように構成される第1セットの電極、及び左横隔神経を刺激するように構成される第2セットの電極を有する、血管内カテーテルを備る、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
心イベント、呼吸事象、カテーテル位置、血圧または炎症性物質のレベルを検知するように構成される、センサを更に備える、請求項1~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記刺激器が、横隔神経のシグナル伝達、迷走神経のシグナル伝達、またはそれらの組み合わせに影響を及ぼすように構成される、請求項1~14のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は2017年6月30日出願の米国特許仮出願第62/527,536号に対する優先権を主張するものであり、開示全体がその全体を参照により組み込まれる。
【0002】
原則として、本明細書で言及するすべての出版物、特許出願及び特許は、各個々の文書が参照により組み込まれることを明確かつ個別に指示したかのように、それらの全体が同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示の実施形態は概ね、認知障害(例えば、人工呼吸により誘発された譫妄、脳卒中、脳震盪など)の診断、緩和及び治療のための方法、システムならびに装置に関する。いくつかの例で、本開示は、対象の脳細胞の障害または脳死の発生を減らす方法に関する。1つの代表的な態様は、一時的な脳の低酸素/虚血状態、脳の炎症状態または外傷性脳損傷(TBI)事象によって引き起こされる、脳細胞の損傷または脳死の発生を減らす方法に関する。別の代表的な態様は、人工呼吸の患者の脳及び/または認知障害を減らす装置、システム及び方法に関する。更に別の代表的な態様は、横隔膜筋損傷、肺損傷及び脳損傷を緩和することに関する。
【背景技術】
【0004】
救命治療の患者、特に侵襲的な人工呼吸(MV)を必要としている患者は、多くの場合、より高いレベルの横隔膜、肺、脳及び他の臓器の損傷を経験する。横隔膜筋は、筋肉量及び強度を急速に失う場合がある。肺は、人工呼吸器から外傷を受ける場合がある。認知作用は、異常な神経シグナル伝達及び炎症性反応を含む、いくつかの因子によって引き起こされる場合がある。例えば外傷性(例えば、脳震盪)または虚血性(例えば、脳卒中)脳事象などからの既存の認知障害を示す患者は、一旦MVが行われると、急速な認知の低下に関する危険性が更に高くなり得る。ICU患者、特にMVが行われている患者の横隔膜損傷、肺損傷及び認知障害(例えば、譫妄、認知症及び認知機能障害など)を減らすことができる、費用対効果が高く、実用的で、外科的に単純かつ低侵襲性の装置及び方法が必要とされている。
【0005】
自発呼吸の間、横隔膜筋及び他の呼吸筋は収縮して、肺の外側に陰圧の領域を作成する。肺は圧力を等しくするために拡大して、空気は肺に自然に流れ込む。空気が肺に流れ込むとき、これは吸入(吸い込む行為)である。ほとんどの人工呼吸器は、周期的に肺を加圧する及び/または膨らませるために陽圧を使用して、肺への酸素の吸気ならびに二酸化炭素の呼気を補助することによって患者の呼吸を助ける。多くの点で救命処置である一方、MVは有害でもあり得る。
【0006】
例えばMVは、例えば容量損傷、無気肺損傷及び生物学的損傷を含む、人工呼吸器により誘発された肺損傷(VILI)を誘発する場合がある。容量損傷は肺実質の過剰膨張からの損傷であり、それは高い1回換気量及び/または低い肺コンプライアンスから生じる場合がある。無気肺損傷は、各人工呼吸器サイクル中の虚脱した肺胞の開放-虚脱から、一般には低い1回換気量(Vt)、低圧または不十分なレベルの呼気終末陽圧(PEEP)の結果から生じる場合がある。生物学的損傷は局所的炎症プロセスの発現であり、それは、過剰膨張の1回換気量及び不安定な肺単位の反復開閉のため、炎症メディエータの放出により特徴づけられ得る。
【0007】
肺損傷は、炎症性遺伝子の活性化及び肺の細胞からの炎症メディエータの放出につながることがある。肺組織の周期的伸展(CS)によって、炎症性細胞浸潤(毛細管-肺胞バリア機能の損失の一因となり得る)、腫瘍壊死因子-α及びIL-6を含む炎症誘発性メディエータの増加した発現、ならびに細胞アポトーシスの誘導が生じる場合がある。肺由来の遊離型炎症性メディエータが身体の器官を循環する際、遊離型炎症性メディエータは酸素供給を悪化させる場合があり、臓器不全につながる場合がある。MVは、多臓器不全症候群をもたらす、肺の炎症性反応の限局性に関与し得る。したがって、MVにより誘発された肺の応力及び緊張は、肺胞の炎症性反応、肺実質に対する好中球の漸増、及びサイトカインの産生をもたらす場合がある。そうして、このプロセスは血管内循環システム内に広がることができて、遠位器官(例えば、脳など)に達する場合がある。
【0008】
更に、肺は、MVにより誘発された機械的刺激を機械的受容器によって感知することができ、肺は、自律神経系を介して、脳にこの情報を伝えることができる。横隔膜は、重要な感覚神経支配を有する。
【0009】
通常、人工呼吸の目的は、呼吸変数の精密な制御(例えば、動脈酸素(PaO2)の分圧及び動脈炭酸ガス(PaCO2)の分圧の制御)を提供することである。人工呼吸器は、肺に周期的に圧力を加えて、有効なガス交換を提供できる。肺の伸展を最小化することと、下肺の崩壊を最小化することと、の目的のバランスをとることが重要である。各患者の固有の肺気量、肺コンプライアンス及びガス交換要件は、これらの目的を難しくする場合がある。
【0010】
減少した1回換気量は、高炭酸症(増加したPaCO2)をもたらし得る。高炭酸症は、頭蓋内圧亢進につながり得る。改善した全身酸素飽和は、低酸素脳障害を減らすことができる。しかし、過度に高い人工呼吸器の圧力は、全身性炎症の反応につながり得て、そうして脳の酸素化及び代謝に影響を及ぼし、それによって脳損傷を誘発する場合がある。
【0011】
PEEPは、前に虚脱した肺胞を開放して、動脈の酸素化を改良して、呼吸器系の弾性を低減するために使用できる。しかし、PEEPはガス交換にとって有害な場合もあり、大動脈血流/圧を低減することによって心拍出量を減少させて、気圧外傷につながり得る。
【0012】
プラトー圧<30cmH2Oに制限し、10cmH2O対高VtのPEEP及びPEEPなしを利用する、中程度から低い1回換気量(例えば6mL/kg)での予防人工呼吸は、より少ない肺炎症をもたらし、死亡率を低下させることができる。しかし、1つの換気方法がすべてのシナリオに合うというわけではない。1人の患者に関してでさえ、横隔膜保護、肺保護及び脳保護のバランスをとって、十分なガス交換を患者に提供することは、困難であり得る。したがって臨床医は、別の器官への損傷の可能性を下げつつ、妥協して1つの臓器への損傷の可能性を受け入れる、バランスのとれた方法を使用せざるをえない場合がある。
【0013】
したがって、人工呼吸の患者の肺損傷を制限する、またはそれを逆転させる必要性が残っている。
【0014】
MVは呼吸不全を患っている患者の救命介入であり得るが、長期にわたるMVは、横隔膜萎縮及び収縮不全(VIDD)を促進し得る。この種の横隔膜損傷及び併発する横隔膜萎縮は、MVをはずす難点の一因になり得る。
【0015】
MVで治療する大多数の患者は、呼吸不全の回復または手術からの回復があれば人工呼吸器による補助から直ちに解放されるが、患者のほぼ1/3は、自発呼吸する能力を回復するために試練に直面する。予後は、最初の試みでうまくMVをやめた患者では良好であり得るが、残りの患者では不良である。
【0016】
現在まで、人工呼吸した患者の横隔膜損傷を制限する、またはそれを逆転させる必要性は満たされていない。
【0017】
横隔膜筋は、全身に関する情報の中心地である。それは、一次呼吸筋として機能することに加えて、呼吸に必要な情報ネットワークの一部として身体全体に関連がある。横隔膜は、重要な感覚神経支配を有する。横隔神経及び迷走神経の両方はこのネットワークの一部であり、各神経は感覚線維及び運動線維を含む。例えば、横隔膜の下腿部を支配する迷走神経は、身体の種々の関連症状を生じる、相互張力膜(例えば、硬膜)系に直接影響を及ぼすことができる。類似の機序で、横隔膜機能不全の事象は、シグナル伝達事象のカスケードをもたらす場合があり、それは脳及び他の器官に影響を及ぼす。迷走神経及び横隔神経の両方が横隔膜筋に分布するので、迷走神経または横隔神経の刺激は、他のシグナル伝達カスケードに影響を及ぼし得る。脳、他の身体の器官及び組織への刺激の潜在的意味を、更に後述する。
【0018】
譫妄及び認知機能障害の両方は、それらが侵襲性MVを介して肺の補助と共に提供されるとき、集中治療室(ICU)の87%もの患者で生じる(Ely EW et al.,”Delirium in mechanically ventilated patients:validity and reliability of the confusion assessment method for the intensive care unit(CAM-ICU),”JAMA,2001)。治療方法が進歩した一方で、譫妄及び認知機能障害はMV患者の主要な問題のままである。
【0019】
異常な神経シグナル伝達は、神経プロセス、細胞プロセス及び炎症プロセスをもたらす場合があり、それは人工呼吸による治療の間及びその後の認知障害につながり得る。
【0020】
MVを行っている対象の迷走神経切除は、対照動物と比較してカバのドーパミン合成酵素の濃度及びアポトーシスの程度の増大を緩和できる。これは、迷走神経が、ドーパミン増加を引き起こすために、信号(MVに関連する)を送ることを意味する。
【0021】
人工呼吸が行われている、既存する脳損傷(例えば、脳卒中、TBI、急性虚血など)を伴う救命治療の患者は、長期の認知欠陥の危険性が増大している。したがって、ヒトに有効な予防治療または神経保護治療の必要性がある。
【0022】
炎症は、急性肺損傷、及び脳ホメオスタシスに影響を及ぼす、急性脳損傷の共通の病理機序である。急性脳損傷後の炎症カスケードは、肺に悪影響を及ぼす場合があるが、エビデンスは逆が同様に生じ得ることを示す。これは、自律神経、神経炎症、神経内分泌と免疫学的経路の間の複雑な相互作用によって生じ得て、それは全身ホメオスタシスを保存するように生理学的にプログラムされるが、特定の状況では遠隔器官及び系への悪影響の原因であり得る。
【0023】
肺は機械的刺激を機械的受容器によって感知し、情報は自律神経系を介して脳に伝えられる。求心性迷走神経は、肺伸展受容器から脳の呼吸中枢まで情報を伝達する。現在まで、効果的な処置が、脳損傷及び肺損傷の両方を治療するまたは緩和するのを助ける必要性が存在している。
【0024】
求心性及び遠心性迷走神経、α7 nAChR発現炎症性細胞、及び脳の中心迷走神経核は、炎症及び免疫を制御できる炎症反射を形成する。感覚神経は、末梢求心性迷走神経終末を介して病原体、障害または損傷を検知し、それから脳幹の孤束核(NTS)にフィードバックを提供できる。情報は処理されて、遠心性迷走神経は、腹腔神経節に、次に身体の他の部分に活動電位によって統合化した情報を送信できる。
【0025】
迷走神経は延髄から生じ、それは4つの核、背核、疑核、NTS及び三叉神経脊髄核からなる。求心性感覚線維のほぼ80%は迷走神経に含まれて、NTSへの情報送信に関わっている。多数の求心性迷走神経終末が、肺及び横隔膜にある。例えば、肺情報はNTS(処理センター)に求心路を介して送信され、それは感染、炎症または損傷の種類を区別できる。迷走神経終末はAchを合成及び放出することができ、それにより、炎症誘発性細胞(例えば、マクロファージ及び好中球または上皮細胞)のα7 nAChRを活性化し、NF-KBを介して炎症誘発性サイトカインの産生を調整する。
【0026】
一過性虚血保護の1つの機序は、求心性迷走神経路を含む。迷走神経は、胸部器官及び腹部器官で生じる求心インパルスの80%を備える、求心性線維ならびに遠心性線維の両方からなる。求心性活動はNTSにリレーされて、それは、ノルエピネフリン(NE)及び5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)の放出を制御する青斑核(LC)への投射を有する。VNSにより活性化するNEは、抗炎症効果を有することができて、5-HTの放出を刺激できる。5-HTアゴニストが脳虚血のグルタミン酸の放出を低減し得ることを示すデータは、グルタミン酸の放出を阻害することによって、5-HTが興奮毒性を減弱させることを示す。これらの求心性神経路の効果は、脳虚血のNVSの効果に関与できる。あるいは、遠心性迷走神経路は、迷走神経の遠心性線維を介して脳の中枢コリン作動系により活性化する、コリン作動性抗炎症経路(CAP)を介して神経保護を誘導することもできる。
【0027】
CAPの活性化につながる迷走神経の電気刺激は、脳の炎症を抑制でき、虚血性脳卒中の神経保護をもたらす。遠心性迷走神経刺激は、遠心性迷走神経線維により支配される、組織及び器官の限局性炎症サイトカインカスケードを阻害することもできる。
【0028】
活性化するとき、中枢神経系(CNS)の常在マクロファージ(小膠細胞)は、神経機能障害または退化を引き起こす分子を分泌できる。遠心性迷走神経線維の刺激が十分なアセチルコリンを放出して、内毒素性ショックで生じるような全身性炎症サイトカインカスケード、または限局性炎症サイトカインカスケードを緩和するということが更に判明した。
【0029】
迷走神経刺激によって、α7 nAChRのアップレギュレーション(発現)が生じる場合がある。抗炎症の細胞及び分子機序は、アセチルコリン(Ach)(迷走神経終末から主に放出される神経伝達物質)に部分的に起因し得る。マクロファージのAchによるα7 nAChRの活性化は、末梢循環の炎症誘発性サイトカインの放出を抑制し、それによりVNの炎症反射を介して組織損傷を防止できる。α7 nAChR受容体は、ニューロン、膠細胞及び内皮細胞を含む脳で通常発現する。これらの受容体の活性化は、虚血性または他の種類の障害に対するニューロン抵抗性を強化できる。
【0030】
侵襲的処置を必要とせずに、神経組織を刺激する代替技術は、一時的に干渉する刺激であり、刺激される特定の脳領域で2つの高周波電気信号を交差させることを含む。2つの信号は互いに干渉し、標的領域で低周波信号になる。低周波信号はニューロンを誘発して興奮させることができるが、一方で高周波信号がそれができず、そのため、周囲組織は活性化しないが、標的領域は活性化し得る。
【発明の概要】
【0031】
本開示の実施形態は、とりわけ脳損傷を予防、緩和及び/または治療するシステム、装置ならびに方法に関する。本明細書に開示する各実施形態は、開示される他の実施形態と関連して記載された1つ以上の特徴を含むことができる。
【0032】
この開示は、対象を治療する方法を含む。いくつかの態様で、前記方法は、対象の脳の状態を反映する試験結果を得ることと;試験結果に基づいて刺激パラメータを決定することと;刺激パラメータに基づいて神経を刺激することと;を含むことができ、そこで、神経の刺激によって、対象の呼吸筋の収縮を補助する、またはそれを生じさせる。いくつかの例で、神経は横隔神経でもよく、呼吸筋は横隔膜筋でもよい。
【0033】
いくつかの例で、神経は第1神経でもよく、方法は第2神経を刺激することを更に含むことができ、そこで、第2神経の刺激は、脳損傷の要因のレベルを低減する、脳の生物学的反応を惹起する。第2神経は、迷走神経でもよい。第2神経の刺激は、対象の第2神経から脳または肺へのシグナル伝達に影響を及ぼすことができる。方法は、第3神経を刺激することを更に含むことができる。この場合、第2神経は左迷走神経でもよく、場合によっては、第3神経は右迷走神経でもよく、神経は第1神経でもよく、方法は、第2神経による異常な信号の送信を阻害することを更に含むことができる。
【0034】
いくつかの例で、第2神経は、神経刺激器によって刺激されることができる。例えば第2神経は、外部の神経刺激器によって刺激されることができる。外部の神経刺激器は、対象の迷走神経に隣接する皮膚領域に配置されることができる。あるいはまたは更に、第2神経は、植込み型神経刺激器により刺激されることができる。第2神経は、手動、機械的、電気、超音波または電磁エネルギーにより刺激されることができる。
【0035】
いくつかの例で、試験結果は、脳を撮像することに基づく。あるいはまたは更に、試験結果は、対象の血液中の炎症に関連するまたは痛みに関連するタンパク質の濃度を含むことができる。方法は、試験結果を提供する試験を実行することを更に含むことができる。
【0036】
いくつかの例で、神経を刺激することは、1つ以上の電極を備えるカテーテルを対象の血管に挿入することと、神経に近接して1つ以上の電極を配置することと、を含むことができる。
【0037】
いくつかの例で、方法は、人工呼吸器により対象に人工呼吸することを更に含むことができる。そのような場合、試験結果は、脳の人工呼吸の効果を含むことができる。方法は、人工呼吸の吸気期間の少なくとも一部の間に第2神経を刺激することを更に含むことができる。
【0038】
いくつかの態様で、対象を治療する方法は、第1刺激器で第1神経を刺激して、対象の呼吸筋の収縮を補助する、またはそれを生じさせることと;第1刺激器または第2刺激器で第2神経を刺激して、脳損傷の要因のレベルを低減することと;を含むことができる。方法は、第1刺激器、第2刺激器または第3刺激器で第3神経を刺激して、対象の呼吸筋の収縮を補助する、または生じさせることを更に含むことができる。脳損傷の要因は、脳の炎症でもよい。第1神経は横隔神経でもよく、第2神経は迷走神経でもよい。呼吸筋は、横隔膜筋でもよい。
【0039】
いくつかの例で、第1神経の刺激は、第3神経の刺激と同時に起きてもよい。あるいはまたは更に、第1神経の刺激は、第2神経の刺激と協調してもよい。第1神経の刺激は、第2神経の刺激と同時に起きてもよい。
【0040】
いくつかの例で、方法は、人工呼吸器により対象に人工呼吸することを更に含むことができる。第2神経は、人工呼吸の吸気期間の少なくとも一部の間に刺激されることができる。
【0041】
いくつかの例で、第1神経が第1刺激器により刺激されない間に、第2神経の刺激を実行できる。第1刺激器は、横隔神経を刺激するように構成される一組の電極を有する血管内カテーテルを含むことができる。第2刺激器は、迷走神経を刺激するように構成される一組の電極を有する血管内カテーテルを含むことができる。
【0042】
いくつかの態様で、対象を治療する方法は、刺激器で第1神経を刺激して、対象の呼吸筋の収縮を補助する、またはそれを生じさせることと;対象の迷走神経活動の試験結果を得ることと;試験結果に基づいて刺激パラメータを作成することと;刺激パラメータに基づいて、第1神経及び第2神経のうちの少なくとも1つを刺激することと;を含むことができる。第2神経は迷走神経でもよく、刺激パラメータに基づいて第1神経及び第2神経のうちの少なくとも1つを刺激することは、刺激パラメータに基づいて第2神経を刺激することを含むことができる。第1神経は第1横隔神経でもよくて、第2神経は第2横隔神経でもよい。場合によっては、試験結果は、心臓血流を試験することと、末梢血流を試験することと、血圧を試験することと、対象の血液の炎症に関連するまたは痛みに関連する分子を撮像することと、またはそれを評価することと、によって得られることが可能である。
【0043】
本開示は、システムも含む。いくつかの態様で、システムは、対象の脳の状態を反映している試験結果を受信するように、及び前記試験結果に基づいて刺激パラメータを決定するように、構成されるプロセッサと;刺激パラメータに基づいて神経を刺激するように構成される刺激器と;を含むことができ、そこで、神経の刺激によって、対象の呼吸筋の収縮を補助する、またはそれを生じさせる。システムは、人工呼吸器を更に含むことができる。システムは、操作可能にプロセッサに接続している1つ以上のスイッチを更に含むことができ、前記1つ以上のスイッチは刺激器への刺激出力を制御するように構成される。
【0044】
いくつかの例で、システムは、心イベント、呼吸事象、カテーテル位置、血圧または炎症性物質のレベルを検知するように構成される、センサを更に含むことができる。刺激器はセンサと接続できる。刺激器は、右横隔神経を刺激するように構成される電極の第1セット、及び左横隔神経を刺激するように構成される電極の第2セットを有する、血管内カテーテルを含むことができる。刺激器は、横隔神経のシグナル伝達、迷走神経のシグナル伝達、またはそれらの組み合わせに影響を及ぼすように構成されることができる。
【0045】
いくつかの態様で、システムは、第1神経を刺激して、対象の呼吸筋の収縮を補助する、またはそれを生じさせるように構成される電極と、第2神経を刺激して、脳損傷の要因のレベルを低減するように構成される刺激器と、を含むことができる。刺激器は、迷走神経を刺激するように構成される、1つ以上の電極を有している血管内カテーテル含むことができる。システムは、血管内挿入のために構成されるカテーテルを更に含むことができ、前記カテーテルは、第1の複数の電極及び第2の複数の電極を備える。
【0046】
いくつかの態様で、システムは、第1神経を刺激するように構成される第1神経刺激器であって、そこで、第1神経の刺激によって、対象の呼吸筋の収縮を補助する、またはそれを生じさせる、前記第1神経刺激器と;対象の迷走神経活動の試験結果を受信するように、及び前記試験結果に基づいて刺激パラメータを生成するように、構成されるプロセッサと;前記刺激パラメータに基づいて第2神経を刺激するように構成される、第2神経刺激器と;を含むことができる。
【0047】
本明細書に組み込まれると共に本明細書の一部である添付の図面は、本開示の非限定的な実施形態を示すものであり、詳細な説明と共に本開示の趣旨を説明するものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】ヒトの頸部、脳、肺及び上部胴体の選択された神経、組織ならびに血管の構造を示す。
【
図2】例示的実施形態による、ヒトの頸部及び上部胴体の選択された神経及び血管の構造、横隔膜筋及び肋間呼吸筋、1つの静脈に置かれる代表的な刺激装置(例えば、カテーテル)、制御装置、センサ(例えば、運動センサ、気流センサ及び/または圧力センサ)、代表的な遠隔制御装置、グラフィカルユーザインターフェース、パルス発生器、ならびに外部の呼吸補助装置、を示す。
【
図3】制御装置に加えて、第1位置(例えば、静脈、動脈、皮膚など)に置かれる第1の代表的な刺激装置(例えば、カテーテル)、及び第2位置(例えば、静脈、動脈、皮膚など)に置かれる第2の代表的な刺激装置(例えば、カテーテル)とともに、ヒトの頸部及び上部胴体の選択された神経及び血管の構造を示す。
【
図4A】例示的実施形態による、カテーテル内の神経刺激電極と位置が合うように配置され得る窓を有する、一対の代表的なカテーテルの腹側図を示し、そこで、前記代表的なカテーテルはヒトの頸部及び上部胴体に挿入されている。
【
図4B】例示的実施形態による、位置固定要素(例えば、アンカー、接着剤、拡張可能なコイル/弦巻線など)を備える、1つの代表的なカテーテルの腹側図を示し、カテーテルは、カテーテル内の神経刺激電極と位置が合うように配置され得る窓を有し、そこで、上記代表的なカテーテルはヒトの頸部及び上部胴体に挿入されている。
【
図5】例示的実施形態による、カテーテルの外側に露出して、流体輸送管腔を含む、導体及び電極を備える、代表的なカテーテルの斜視図を示す。
【
図6】可撓性電気リード線、回路及び電極を備える、代表的な刺激カテーテルを示す。
【
図7】例示的実施形態による、代表的な植込み型刺激装置(例えば、カテーテル及びパルス生成器)、制御ボタン、及び無線接続を介して接続した制御装置とともに、ヒトの頸部及び上部胴体の選択された神経及び血管の構造を示す。
【
図8】例示的実施形態による、胴体の呼吸筋の構造、肋間筋上の患者の皮膚に置かれる電極の経皮的呼吸筋刺激アレイ、経食道的刺激電極、及び外部の呼吸補助装置を示す。
【
図9】例示的実施形態による、血管内カテーテル及び制御装置を有する、神経刺激システムのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下の記載にわたって、当業者の理解を目的として具体的な詳細について述べる。以下に記載される本技術の例は、網羅的ではなく、任意の例示の実施形態と同じ態様に本システムを限定するものではない。したがって、以下の説明及び図面は限定的意味ではなく、例示的であるとみなされる。
【0050】
本開示及び例示的実施形態の特徴の更なる態様を、添付の図面の示す、及び/または本明細書の文章に記載する、及び/または添付の特許請求の範囲に記載する。前述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は例示かつ説明に過ぎず、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するものではない。本明細書で使用する場合「備える(comprises)」「含む(comprising)」「含有する(including)」「有する(having)」または他のその変形の用語は、非排他的包摂を指す意味で使用されているので、その結果、プロセス、方法、物品もしくは要素のリストを含む装置がそれらの要素のみを含むのではなく、明確には列挙されていない、または上記のプロセス、方法、物品もしくは装置に固有なものではない、他の要素も含むことができる。更に「代表的」という用語は、「理想の」というよりも「例示の」の意味で本明細書で使用される。本明細書で使用する場合「約」「実質的に」及び「ほぼ」という用語は、表示値の+/-15%以内の範囲の値を示す。
【0051】
次に、上述した本開示の例について詳細に説明するが、それは添付の図面に示されている。可能な限り、これらの図面を通して、同じ参照番号を使用して同じまたは類似する部分に言及する。
【0052】
「近位」及び「遠位」という用語は、代表的な医療装置または挿入器具の構成要素の相対的位置を指すために、本明細書で使用する。本明細書で使用するとき、「近位」は、身体の外側に比較的近い、または医療装置もしくは挿入器具を使用するオペレータに近い位置を指す。これに対して「遠位」は、医療装置もしくは挿入器具を使用するオペレータから比較的離れた、または身体の内部に近い位置を指す。
【0053】
原則として、本開示の実施形態は、患者の神経を電気的に刺激する、及び損傷(例えば、脳、肺または横隔膜筋の損傷)を防ぐ、調整する、制御する、または治療するためのシステム、医療装置ならびに方法に関する。例えば、損傷は、人工呼吸によって生じる、または増強される場合がある。本明細書で使用する場合、「損傷」という用語は、細胞もしくは分子の完全性、活性、レベル、頑健性、状態の変化、または事象までさかのぼる他の変化を指すことができる。例えば、脳損傷は、応力(繰り返し応力)、炎症、酸化応力、疾患、痛み、脳卒中から生じる神経損傷及び/または身体的損傷(例えば、手術または外傷)でもよい。
【0054】
本明細書の方法は、1つ以上の神経(例えば、1つ以上の横隔神経及び/または1つ以上の迷走神経)を刺激することを含むことができる。例えば、前記方法は、1つ以上の神経(例えば、横隔神経)を刺激することによって、1つ以上の呼吸筋(例えば、横隔膜筋)またはその一部を刺激することを含むことができる。1つ以上の横隔神経の刺激は、脳損傷(例えば、人工呼吸によって生じる)を防ぐ、または治療することで役割を果たすことができる。例えば、人工呼吸を行われている患者で、人工呼吸から必要とされる圧力及び時間を低減するように、横隔神経の刺激は横隔膜筋を整調できる。あるいはまたは更に、横隔神経の刺激は、脳の反応を惹起して、脳損傷の要因(例えば、炎症)を低減することができる。1つ以上の迷走神経の刺激は、脳損傷を引き起こしている要因(例えば炎症)を低減するために脳の反応を惹起することもでき、場合によっては、方法は、迷走神経(複数可)が脳に異常な信号(例えば、脳の炎症を誘発する信号)を送信しないように、1つ以上の迷走神経をブロックすることを含むことができる。異常な信号は、人工呼吸から生じる場合がある。
【0055】
方法は、脳の1つ以上の機能、活動または他のパラメータを監視する、検知する及び/または試験することと、検知または試験の結果を得ることと、例えば、脳機能及び/または活動での神経刺激及び/または人工呼吸の効果を決定するために、これらの結果を分析することと、を更に含むことができる。試験結果及びそれらの分析に基づいて、神経刺激のパラメータ(例えば、タイミング、期間及びプロファイル(例えば、強度))は作成される、または修正されることができて、神経の刺激はパラメータに基づいて開始される、またを修正されることができる。脳機能の代表的な試験は、磁気共鳴撮影法(MRI)(例えば、機能的MRI)、コンピュータ断層撮影(CAT)走査、陽電子放射断層撮影(PET)走査、脳磁図(MEG)走査、他の任意の撮像または走査方法、脳波(EEG)試験、心イベント及び/または呼吸事象の検知、及び/または血圧、頭蓋内圧、心肺圧、脳酸素化及び動脈血の二酸化炭素分圧(PaCO2)の測定を含む。脳酸素化は、頸静脈飽和度、近赤外分光法及び/または微小透析カテーテルの評価を介してを含む、いくつかの方法で監視されることができる。脳機能の試験は、1つ以上の体液(例えば、血液、尿、脳を囲む流体など)、または1つ以上の組織の臨床検査も含むことができる。臨床検査は、脳損傷または機能不全(例えば、炎症)を示す分子(例えば、サイトカイン)の濃度を検知できる。脳機能の試験は、神経学的検査(例えば、運動または感覚技術の評価(反射、眼球運動、歩行及びバランス試験など))、及び組織生検を更に含むことができる。試験は、特定のタスクを実行して、いくつかの質問(例えば、今日の日付を言う、または書面による指示に従う)に答えるように患者に依頼することによる、認知評価(例えば、精神状態を評価する)を更に含むことができる。
【0056】
あるいはまたは更に、方法は、1つ以上の神経(例えば、迷走神経)刺激の状態を試験することを含むことができる。場合によっては、方法は、脳機能及び1つ以上の神経刺激の状態を試験することを含むことができる。神経(例えば、迷走神経)刺激の状態の代表的な試験は、皮膚電位の検知、心拍変動、瞳孔径及び眼への血流の制御に関連する反応、末梢血流(例えば、レーザドップラ血流計で測定)、心拍数及び血圧変動分析、ヴァルサルヴァ法、メトロノーム深呼吸、持続的な把握試験、寒冷昇圧試験、顔面冷却試験、能動的及び受動的起立性負荷法、暗算試験に対する血圧反応、薬理学的圧反射試験、温熱発汗試験、定量的軸索反射性発汗試験、磁気共鳴撮影法(MRI)、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)、脳波記録法(EEG)波形の評価、視覚、音声及び体性感覚誘発電位の測定、絶対バイタルサイン値の変化、ならびに痛みの閾値の変化を含む。試験は、血液または他の体液中の化学的成分(例えば、タンパク質または他の分子(例えば、炎症または痛みに関連する分子)の濃度及び活性)を検知することも含むことができる。化学試験は、TNF-α、他のサイトカイン、セロトニン、ガストリン及び/またはノルエピネフリンのレベル及び/または濃度を測定することを含むことができる。
【0057】
脳機能及び/または迷走神経刺激の試験は、人工呼吸の間もしくはその後、または人工呼吸の異なる段階で実行することができる。例えば試験は、人工呼吸の膨張段階の前に、その間に、またはその後に実行することができる。あるいはまたは更に、試験は、神経の刺激の前に、その間に、またはその後に実行することができる。脳機能及び/または迷走神経刺激の状態または活性は、試験結果に基づいて決定されることができる。あるいはまたは更に、異なる時間に実行される試験からの結果は、互いに、または参照閾値もしくは範囲(例えば、正常な脳機能または脳機能の他のレベルを示す閾値または範囲)を比較することができる。そのような場合、脳機能及び/または迷走神経刺激の状態は、比較に基づいて決定され得る。
【0058】
神経刺激治療を受けている、またはそれを受けていた患者に関して、患者の脳機能及び/または迷走神経刺激の状態は検知されて、脳及び/または神経の正常な機能及び/または状態を表すパラメータと比較されることができる。違いが測定された場合、神経刺激の1つ以上のパラメータは、患者に適用される神経刺激治療を調整するために変更されることができる。調整は、患者へ最適かつ個別化した治療を加えるために、連続的に実行され得る(例えば、脳機能及び/または迷走神経刺激状態のリアルタイムの監視に基づいて)。
【0059】
場合によっては、前記方法は、本明細書に記載の神経刺激、整調及び/または人工呼吸処置の間、対象に1つ以上の薬剤を投与することを更に含むことができる。実施形態にて、薬物治療は、上述の試験のいずれかの分析に基づいてもよい。場合によっては、1つ以上の薬剤は、低減した抜管時間に関連し、脳損傷を減らすのに有用なものを含むことができる。例えば、1つ以上の薬剤は、プロポフォール及び/またはデキスメデトミジンを含むことができる。場合によっては、1つ以上の薬剤は、平滑筋の緊張に影響を及ぼすもの、及び/または気管-気管支の緊張度/張力を低減することができるものを含むことができる。このような薬剤は、脳損傷の原因になる、肺伸展受容器により誘発された異常な迷走神経シグナル伝達を低減するのも助けることができる。
【0060】
本明細書のシステムは、本開示に記載の方法を実施するための医療装置を含むことができる。医療装置は、構成要素(例えば、筒状部材及び1つ以上の電極アセンブリを備えるカテーテル、刺激エネルギーを電極アセンブリに提供する信号生成器、患者の状態を検知して、刺激信号を調整する1つ以上のセンサ、及びユーザ(例えば、医師または患者)が神経刺激のパラメータを調整するのを可能にする1つ以上の制御構成要素)を含むことができる。様々な医療装置の構成要素の異なる実施形態は、合理的な任意の構成で組み合わせて、一緒に使用することができる。更に、記載した任意の実施形態の個別の特徴または要素を、他の実施形態の個別の特徴または要素と組み合わせてもよいし、併せて使用してもよい。様々な実施形態を、本明細書に記載する具体的な状況とは異なる状況で更に使用してもよい。例えば、開示する電極構造を、様々な診断及び/または治療用途のために、当技術分野において周知の様々な開発システムと組み合わせてもよい、または併せて使用してもよい。
【0061】
本開示に開示されるシステム及び方法は、患者が以下、脳損傷を防ぐ、調整する、制御する、または治療することと、肺損傷を防ぐ、調整する、制御する、または治療することと、横隔膜筋を動かすこと(例えば、横隔神経を刺激することによって)、または呼吸補助または人工呼吸を提供することと、の少なくとも1つ以上を得るのを助けることができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書のシステム及び方法は、横隔刺激または横隔膜刺激を介して脳損傷(例えば、人工呼吸を受けている、またはそれを受けたことのある患者の)を減らす、及び防止できる。人工呼吸の間の少なくとも1つの横隔神経及び/または半横隔膜の電気刺激は、上肺野の圧損傷(伸展損傷)を減らし、かつ無気肺(肺虚脱損傷)を減らしつつ、有効なO2/CO2ガス交換を提供できる。肺損傷を減らすことは、脳の炎症及び認知機能障害と関連がある事象のカスケードにつながる、刺激を減らすことができる。1つ以上の横隔神経または横隔膜筋の電気刺激は、脳への求心性シグナル伝達を安定させて、脳細胞死に関わる異常な迷走神経シグナル伝達の緩和を引き起こし得る。横隔神経または他の神経/筋肉刺激による横隔膜筋の活動化は、人工呼吸器だけの間に送られるものと比較して、改善したまたは安定した感覚入力を脳受容器に提供できる(例えば、それにより、脳に起因する横隔膜の活動化の間、脳で通常受ける入力(非限定的な例として、横隔、迷走神経または肺伸展受容器のシグナル伝達として)を置き換える)。生物学的構造がわずかな変化を求める場合があるので、刺激の期間は変化できる。刺激(例えば、横隔、迷走神経、筋肉など)は、経血管(例えば、経静脈)カテーテル、カフ電極、埋め込み電極、経皮刺激器、または他の好適な方法によって提供され得る。例えば、迷走神経の刺激は、外部の神経刺激器(例えば、迷走神経に隣接する皮膚領域に配置される刺激器)によって提供されることができる。あるいはまたは更に、迷走神経の刺激は、植込み型神経刺激器によって提供されることができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、本明細書のシステム及び方法は、人工呼吸器で送られた呼吸と協調する迷走神経ブロックを介する、脳損傷を減らすことができる。電気刺激は、例えば、迷走神経を介してキロヘルツ周波数の神経ブロックを使用することにより、異常な痛み信号を防ぐために用いることができ、それはAkt(プロテインキナーゼB)の不活化を低減して、細胞死の緩和を助けることができる。キロヘルツ周波数の電気刺激は、求心性信号を一時的に遮断するために、迷走神経(例えば、迷走神経の分枝を含む)に、またはその近くに配置される電極を介して送られることができる(例えば、40kHzもしくは約40kHzで、または1kHz~100kHzの範囲内で)。遮断信号は、機械的に送られた呼吸の特定の段階(例えば、吸気)と同調して起きて、異常なシグナル伝達を最小化するように設計されることができる。その強度が人工呼吸器が送った呼吸の1つ以上の特徴(例えば、圧力、フロー、1回換気量)により調整されるように、遮断信号を設計できる。迷走神経遮断信号は、経皮電極、最小限に侵襲的に配置した電極、経静脈電極、皮下電極、直接接触電極、または他の適切な送達担体を介して、送達されることができる。遮断信号の刺激プロファイルエンベロープは、例えば肺伸展痛覚受容器によって生じる、脳へ異常な迷走神経シグナル伝達の通過を最小化するように調整されることができる。一実施形態にて、システムは、異常な信号の遮断を最適化するように、神経遮断信号のタイミング、期間及びプロファイルを調節するセンサを含むことができる。センサまたは他の入力は、遮断信号を引き起こすために使用できる。例えば、一実施形態で、呼吸(例えば人工呼吸器からの)の検知は、横隔神経(複数可)の刺激及び/または迷走神経(複数可)の刺激を人工呼吸器と協調/同調させるために使用できる。そのようなセンサの1つは、呼吸が生じるときはいつでも、喉または気管内チューブの「ピンクノイズ」を検知できる、患者の頸部または喉に配置される機械式変換器(例えば、マイクロホン)を含む。あるいは、別の実施形態で、変換器は、気流回路(例えば吸気枝であって、そこで呼吸の吸気相を検知できる)に取り付けられる、または気流回路管の一部に挿入されるもしくは取り付けられることができる。これは、侵襲的または非侵襲的人工呼吸器で使用できる。更に別の実施形態で、気流回路の一部(例えば歪み計)上の機械式変換器は、管(吸気枝、またはY字状部分を気管内チューブに接続する管)に留められる、またはその周囲に巻かれる伸縮性検知器として機能できる。呼吸周期と関連した圧力の変化は、機械式変換器により検知されて、刺激を同調させることができる。
【0064】
いくつかの実施形態で、本明細書の方法及びシステムは、横隔刺激を介して横隔膜損傷、肺損傷及び脳損傷を減らすことができて、MVが送る呼吸と協調する迷走神経ブロックを減らすことができる。少なくとも1つの横隔神経を刺激することは、横隔膜を動かすことができ、それは、求心性神経経路を介して脳に送られる異常な信号を安定させることができ、横隔膜萎縮を緩和して、肺損傷を低減する。横隔膜の活動化は、少なくとも1つの迷走神経を刺激して、信号を遮断することも含むことができる。一態様で、左右両方の横隔及び迷走神経を刺激できる。これらの刺激信号は、1つ以上の装置により送られることができる。左(内頸)IJまたは(外頸)EJを介して配置される1つのカテーテルは、左迷走神経、左横隔神経、及び右横隔神経を刺激できる。一態様で、左迷走神経ブロックを送るための電極群は、他の電極群の近位に置くことができる。このような実施形態で、ブロックは、遠位横隔信号が横隔膜筋に到達するのを防ぐことができない。治療は、2つ以上の別個の装置により達成されることもできる。例えば、頸静脈(内頸または外頸)または鎖骨下静脈に置かれる静脈内カテーテルは、頸部カラーに取り付けた外部の迷走神経刺激装置、皮膚取り付け型経皮装置、または経皮的に配置した一組の電極と組み合わせて使用することができる。迷走神経ブロックは、人工呼吸器による呼吸の供給によって、または横隔神経刺激の送達によって生じるように時間を調節することができる。様々なセンサは、患者の呼吸と、または人工呼吸器からの呼吸の供給と刺激を調整するために使用できる。センサは、心拍数、CO2、O2、呼吸、温度、運動、インピーダンス、筋電図、心電図、気流、圧力、またはそれらの任意の組み合わせを検知できる。
【0065】
いくつかの実施形態で、本明細書の方法及びシステムは、横隔刺激及び/または迷走神経刺激を介して横隔膜損傷、肺損傷及び/または脳外傷を減らすことができて、場合によっては、人工呼吸器により送られる呼吸と協調する迷走神経ブロックを低減できる。電気刺激は、迷走神経を介して抗炎症シグナル伝達を送るためにも使用できる。低デューティサイクルシグナル伝達は、長期の大脳の保護を提供することに効果的であり得る。一実施形態にて、迷走神経正パルス列は、横隔刺激パルスの間に送られることができる。あるいはまたは更に、迷走神経への遮断パルスは、迷走神経への刺激正パルスの間に、または同時に、または一部重なり合って送られることができる。例えば、正(不動態化)信号は、呼吸の間の時間中に、迷走神経を介して脳に送られることができ、人工呼吸器が肺を伸展させて、痛み信号が脳に達するのを防ぐとき、迷走神経の神経ブロックは確立されることができる。その強度が人工呼吸器が送った呼吸(例えば、圧力、フロー、1回換気量など)の1つ以上の特徴により調整されるように、遮断信号を設計できる。その強度が人工呼吸が送った呼吸(例えば、圧力への反比例、フロー、1回換気量など)の1つ以上の特徴により調整されるように、迷走神経への正の信号を設計できる。場合によっては、虚血事象の直後の迷走神経刺激は、神経保護でもよい。例えば、患者は、脳虚血事象の後、迷走神経に送られるパルス列を受信できる。人工呼吸器が肺を膨らませるとき、パルス列は神経ブロックを確立するために中断されることができ、そうして正の信号は呼吸の間に再開されることができる。あるいはまたは更に、正の信号は連続的に送られることができ、それは、高周波神経ブロックにより遮断されることができる(例えば、数秒ごとに)。場合によっては、正の信号は、常にまたは長い期間送信される必要はない。例えば、正の信号は、数時間ごとに1回または1日に1回、送られることができる。
【0066】
迷走神経刺激は、経血管的、経皮的、または迷走神経の近くに配置した低侵襲性の電極を介してもよい。技術は、遠心性及び求心性神経路を活性化させる及び/または遮断することを選択的に含むことができる。これは、同時に行われる求心性迷走神経ブロック及び遠心性横隔刺激を含むことができる。他の態様は、人工呼吸の吸気相の間に神経ブロックを、それから他の時間に迷走神経への抗炎症刺激信号を届ける、迷走神経刺激装置を含む(例えば、伸展受容器が活性化するときに高周波ブロックを送り、別のときに抗消炎誘発信号を送る、人工呼吸器と、または横隔神経刺激信号と同調する迷走神経刺激のための頸静脈カテーテル)。
【0067】
いくつかの実施形態で、本明細書の方法及びシステムは、人工呼吸患者の横隔ペーシングを介して、脳損傷を減らすことができる。本開示の態様は、ピークの人工呼吸器圧を低減し、肺炎症を減らすと共に十分な人工呼吸を提供するために終末呼気の肺伸展を制限し、無気肺損傷を減らすためのシステム及び方法を含むことができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書の方法及びシステムは、外部の呼吸補助から必要とされる正圧を低減することと、異常な迷走神経シグナル伝達の効果を阻害することと、によって脳損傷を減らすことができる。複数の手段は正圧を低減するために使用することができ、それは、鉄の肺、体外膜型人工肺(ECMO)ならびに横隔神経及び呼吸筋(例えば横隔膜、肋間など)刺激を含む。異常な迷走神経シグナル伝達は、迷走神経/横隔刺激または神経ブロックを用いるときと同様に、肺伸展受容器の活性化を減らすために使用する、任意の方法によっても緩和されることができる。
【0069】
図1は、頸部及び胸部の構造を示し、特に、左右の横隔神経(PhN)、迷走神経(VN)、内頸静脈(IN)、腕頭静脈(BCV)、鎖骨下静脈(SCV)及び上大静脈(SVC)の相対位置を示す。PhNは、IN/BCV接合部の近くの領域107R及び領域107LのBCVにほぼ垂直に、かつそれに近接して伸びる。各PhNは、2つ以上の分枝を有することができる。分枝は、頸部領域からIN/BCV接合部下方の胸部領域の範囲の可変位置で結合することができる。後者の場合、身体の一方の側のPhNの分枝は、BCVの対向側に進むことができる。右PhNは、SVCの一方の側に進む分枝を含むことができる。左右のPhNは、それぞれ左右の半横隔膜(HD)まで伸びる。延髄を離れると、VNは気管と食道の間の頸部の下方に、胸部、腹部内に伸びて、更に、種々の器官(例えば肺、横隔膜など)及び他の組織との広範囲な情報ネットワークを作成する。右迷走神経は反回神経を生じさせ、それは気管と食道の間の頸部内へ降りていく。
【0070】
図2を参照すると、本明細書に記載のシステムは、1つ以上の電極または電極アセンブリを有する刺激器(例えば、刺激電極(例えば、
図2に示す)を含む経血管的神経刺激カテーテル12、または経皮的刺激アレイ13(
図8))と;刺激エネルギーを電極アセンブリに提供する、信号生成器14と;患者の状態を検知して、刺激信号及び/または外部の呼吸補助に調節を知らせるための、検知用の1つ以上のセンサ16または手段と;電極への刺激信号の送達と関連する、パラメータを管理する制御装置18と;を含む、いくつかの構成要素を含むことができる。いくつかの実施形態で、システムは、遠隔コントローラ20、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)21、タッチスクリーン(例えば、GUI21の一部として)、手持ち式コントローラ(例えば、遠隔コントローラ20)、キーボード、コンピュータ(例えば、制御装置18)、スマートフォン、タブレットまたは他の入力装置を組み込むことができる。
【0071】
いくつかの例で、刺激装置(例えば、カテーテル12)は容易に患者に適用される、または患者内に挿入され、それは一時的であり、あとで手術を必要とせずに容易に患者から取り除かれる。刺激器(例えば、カテーテル12または他の刺激アレイ)は、患者の頸部の経皮的切開を介して、患者の内部に配置されることができる。場合によっては、刺激器は、患者の鎖骨下、大腿または橈骨領域に近接して挿入されてもよい。他の例で、本明細書に記載のとおり、刺激器は患者の外部に配置されることができる。
【0072】
本明細書に記載の種々のシステム構成要素は、合理的な任意の構成で組み合わせて、一緒に使用することができる。更に、記載した任意の例の個別の特徴または要素を、他の実施形態の個別の特徴または要素と組み合わせてもよいし、併せて使用してもよい。様々な例を、本明細書に記載する具体的な状況とは異なる状況で更に使用してもよい。例えば、開示する電極構造を、様々な診断及び/または治療用途のために、当技術分野において周知の様々な開発システムと組み合わせてもよい、または併せて使用してもよい。
【0073】
図2は、頸部及び胸部の構造を示し、特に、左右の横隔神経(L.PhN28及びRPhN28)、迷走神経(L.VN7及びR.VN9)、左右の内頸静脈(L.IJV32及びR.IJV33)、左右の腕頭静脈(L.BCV25及びR.BCV27)、左右の鎖骨下静脈(L.SCV22及びR.SCV23)、上大静脈(SVC24)及び肋間神経(IN29)の相対位置を更に示す。
図2は、横隔膜30及び肋間筋39を更に示す。横隔神経26、28は、鎖骨下静脈22、23にほぼ垂直にかつそれに近接して伸びる、またはいくつかの場合には、内頸静脈32、33と腕頭静脈25、27の間の接合部近くの腕頭静脈25、27にほぼ垂直にかつそれに近接して伸びる。各横隔神経26、28は、2つ以上の分枝を有することができる。分枝は、頸部領域から、内頸静脈32、33と腕頭静脈25、27の間の接合部下方の胸部領域の範囲の可変位置で結合できる。後者の場合、身体の一方の側の横隔神経26、28の分枝は、腕頭静脈25、27の対向側に進むことができる。右横隔神経28は、上大静脈24の一方の側に進む分枝を含むことができる。左右の横隔神経26、28は、それぞれ左右の半横隔膜まで伸びる。
【0074】
図2は、経血管的神経刺激カテーテル12及び制御装置18を含む、医療システム100も示す。カテーテル12は、複数の電極34を含むことができる。カテーテル12は、制御装置18に操作可能に接続(例えば、ケーブル5を介した有線、無線など)接続できる。制御装置18は、システム100に関連して本明細書に記載の機能のいずれかを実行するようにプログラムされることができる。いくつかの実施形態では、制御装置18は、患者または医療従事者職が制御装置18から離れて、制御装置18の操作を制御するのを可能にする、遠隔コントローラ20を含むことができる。遠隔コントローラ20は、
図2で示すように携帯端末を含むことができる。いくつかの例で、遠隔コントローラ20は、ハンドスイッチ、フットスイッチ/ペダル、音声起動式、タッチ起動式もしくは圧力起動式スイッチ、遠隔スイッチ、または遠隔作動装置の他の任意の形を含むことができる。制御装置18は、タッチスクリーンを含むことができ、それはカート41によって支持されることができる。
【0075】
遠隔コントローラ20は、呼吸パターンを制御するために患者または他のユーザにより押されることができる、ボタン17、19を含み得る。一例にて、ボタン17、19の1つを押すことは「呼気」呼吸を開始でき、それによって、前の呼吸を上回る空気を患者の肺に入れることができる。カテーテル12の電極34が、通常の呼吸より高いレベルで横隔神経26、28のうちの1つ以上を刺激するように指示されるとき(例えば、長期間の刺激による、またはより高い振幅、パルス幅もしくは周波数を備えるパルスによる刺激列)、呼気呼吸は生じ得る。高振幅の刺激パルスは、追加の神経線維を動員でき、それにより、追加の筋線維を係合して、より強い及び/またはより深い筋収縮を生じさせることができる。刺激列の伸びたパルス幅または伸びた期間は、より長い期間にわたって刺激を送達して、筋収縮の持続期間を延長できる。横隔膜筋を刺激する場合、刺激(パルスの列)の長いパルス幅または長い期間は、肺の外側周囲に大きいまたは広範囲の陰圧を印加することによって、下肺葉を拡大するのを助ける可能性がある。このような陰圧には、無気肺として知られている低圧肺損傷の形を防止する、または緩和するのを助ける可能性がある。刺激周波数の増大は、横隔膜30の強力な収縮をもたらすことができる。1つ以上の横隔神経26、28の増大した刺激(例えば、より高い振幅、パルス幅、刺激期間または周波数)は、横隔膜30のより強力な収縮をもたらし、患者により大量の空気を吸入させ、それにより、大量の酸素を患者に提供することができる。呼気呼吸は、患者の快適さを増加させることができる。
【0076】
他の例で、ボタン17、19によって、患者または他のユーザが、刺激療法を開始して、それを停止させる、または1回の刺激量(振幅×パルス幅)、刺激列のパルス数または呼吸速度を含む、刺激パラメータを増減するのが可能になる。遠隔コントローラ20または制御装置18のLEDインジケータもしくは小さなLCD画面(図示せず)は、刺激パラメータに関してオペレータを案内するまたはそれに知らせる他の情報、システムセンサからのフィードバック、または患者の状態を提供できる。
【0077】
あるいは制御装置18の機能を有する制御装置は、
図7に示すように、カテーテル12と共に患者に植え込まれることができる。この例で、遠隔コントローラ及びプログラマーは、無線で植込み型制御装置と通信できる。各プログラマー、植込み型制御装置及び遠隔コントローラは、無線トランシーバを含むことができ、その結果、3つの構成要素のそれぞれは互いに無線で通信できる。植込み型制御装置は、本明細書に記載の機能を実行するのに必要なすべての電子機器、ソフトウェア及び機能ロジックを含むことができる。制御装置を植え込むことにより、カテーテル12が永久呼吸ペースメーカーとして機能するのが可能になる。プログラマーは、患者または医療従事者が神経刺激または検知パラメータを修正する、またはプログラムするのを可能にできる。いくつかの例で、遠隔コントローラ20は、
図2、
図3及び
図8に関連して記載されているように使用されることができる。他の例で、遠隔コントローラ20は、スマートフォン、タブレット、腕時計または他の適切な入力装置の形であり得る。
【0078】
更に別の追加のまたは代わりの例で、システム100の制御装置は携帯式でもよい。携帯式制御装置は、
図2の制御装置18のすべての機能を含むことができるが、それは、患者または他のユーザによって運ばれて、患者に多くの可動性を提供することができて、カート41から分離されることができる。携帯式制御装置を運ぶことに加えて、患者は、例えば、制御装置をベルトに、他の衣料品上に、または彼(彼女)の頸部の周りに着けることができる。他の例で、携帯式制御装置は、患者のベッドに載置されて、患者周囲の領域のシステム100のフットプリントを最小化できる、または寝たきりの患者が別の場所へ輸送もしくは移動されなければならない事象で移動可能な筋肉刺激を提供できる。
【0079】
カテーテル12の遠位先端部はカテーテル12の先細の遠位端部でもよく、カテーテル12の本体より小さい円周を有することができる。遠位先端部は遠位端で開口して、ガイドワイヤがカテーテル12を通って及びそれを越えて遠位に進むのを可能にし得る。遠位先端部は、カテーテル12の他の部分より柔らかくてもよく、非侵襲的でもよく、丸みのある縁を有してもよい。カテーテル12は、カテーテルの側壁の1つ以上のポートまたは開口部も有することができる。第1開口部はカテーテル12の中央部に位置することができて、他の開口部はカテーテル12の近位端の近くに位置できる。各開口部はカテーテル12の対応する管腔と流体連通することができ、それを通って流体を注入できる、または抽出できる。流体は、血管内に及び/またはそれから送達されるために、ポートから出る及び/またはそれに入ることができる。
【0080】
使用中、カテーテル12の近位部は左鎖骨下静脈22に置かれることができて、カテーテル12の遠位部は上大静脈24に置かれることができる。このように配置されて、カテーテル12の近位部の電極34は左横隔神経26に近接して配置されてもよく、カテーテル12の遠位部の電極34は右横隔神経28に近接して配置されてもよい。他の挿入部位として、カテーテル12は、頸静脈(例えば、左頸静脈32(例えば、左外頸静脈または左内頸静脈)または右頸静脈33(例えば、右外頸静脈または右内頸静脈))及び上大静脈24に挿入されることができて、近位電極は左横隔神経28を刺激するために配置されて、遠位電極は右横隔神経28を刺激するために配置される。
【0081】
左右の横隔神経28、28は、横隔膜30に神経を分布できる。したがって、カテーテル12は、左右の横隔神経26、28の一方または両方を電気的に刺激して、横隔膜筋30(またはその一部)の収縮を引き起こし、患者の呼吸を開始もしくは補助して、人工呼吸器からの圧力を低減するのを助けて、下肺を拡大して、肺伸展/損傷を減らして、及び/または認知障害につながり得る異常な脳のシグナル伝達を低減するためよう、配置されることができる。
【0082】
更なる例にて、カテーテル12は、標的神経(複数可)(例えば、横隔神経)に隣接する位置へのアクセスを提供する他の血管(例えば、頸静脈、腋窩静脈、頭静脈、心膜周囲静脈、上腕静脈または橈骨静脈)内に置かれて、前進することができる。そのうえ、刺激器(例えば、カテーテル12またはアレイ13)は刺激エネルギーの他の形態(例えば、超音波)を使用して、標的神経を活性化することができる。いくつかの例で、システム100は、横隔膜30に加えてまたはその代わりに他の呼吸筋(例えば、肋間)も標的とすることができる。エネルギーは、経皮管的電極、皮下電極、神経と接触して配置されるように構成される電極(例えば、神経カフ)、経皮的電極/刺激、または当分野で既知の他の技術を含む、1つ以上の種類の電極/方法を介して供給されることができる。
【0083】
本明細書に記載の神経刺激システム及び方法は、患者が外部の呼吸補助を受ける必要性を減らすことができる、または除去できる。
図2の外部の呼吸補助88は、血液ガスを補正または強化する及び/または患者の呼吸仕事量を減らすのを助けるための、任意の装置または方法を含むことができる。いくつかの非限定的な例は、後述するように人工呼吸、非侵襲的人工呼吸(NIV)、CPAP、BiPAP、経鼻酸素カニューレ、DPS(Synapse、Averyなど)及びECMOを含む。
【0084】
人工呼吸は、自発呼吸を助ける、または置き換えるための人工呼吸器の使用を指し得る。人工呼吸は、それが口(例えば、気管内チューブ)または皮膚(例えば、気管切開チューブ)を通って貫通する任意の器具を含む場合、「侵襲的」と称される。人工呼吸には2つの主要な種類、陽圧換気(空気(または、別のガス混合物)を、陽圧を介して気管に入れる)、及び陰圧換気(空気を肺(例えば、鉄の肺など)内に取り入れる(例えば、吸い込む))がある。人工呼吸には多くのモードがある。患者の自発呼吸が肺の有効なガス交換を提供することができないとき、人工呼吸は必要であり得る。
【0085】
人工呼吸は喉頭用マスク気道(例えば、喉頭用マスク)を介して提供されることもでき、それは麻酔または無意識の間、患者の気道を開いておくように設計されている。それは多くの場合、一種の声門上の気道と呼ばれる。喉頭用マスクは、カフを備える楕円形マスクと接続する気道管を含むことができ、それは患者の口を通って、気管に挿入される。一旦配置されると、装置は、声門の上部に気密シールを形成して(声門を通過する、気管内チューブとは異なる)、安全または安定した気道を提供できる。
【0086】
非侵襲的人工呼吸(NIV)は、気管内チューブの代わりにフェイス(例えば、経口、経鼻、経鼻-経口)マスク/カニューレを通して施される、気道確保の使用である。吸入ガスは、呼気終末陽圧によって、多くの場合圧力支持によって、または設定した1回換気量及び速度での補助-制御人工呼吸器によって得られる。それが、マスク、または顔または鼻に係着されるが気管内挿管を必要としない他の手段で送られるので、この種の治療は「非侵襲的」と称される。非侵襲的人工呼吸の他の形は、鉄の肺で使用されるような外部陰圧システムの使用を含む。患者の胸部腔または胴体の外側で圧力を低減するために使用する、任意の装置もNIVを効果的に提供できる。
【0087】
持続的気道陽圧(CPAP)は気道陽圧人工呼吸の形態であり、それは、常に適度の空気圧を印加して、連続的に気道を開いておく。CPAPは、単独で自発的に呼吸することが可能であるが、あるレベルの圧力支持を必要とする場合がある、患者のために使うことができる。それは呼気終末陽圧(PEEP)の変形例である。両方の療法は肺の肺胞をステントが開き、そうして人工呼吸のために肺の表面積の多くを補充するのを助ける。「PEEP」とは一般に、呼気の終了時のみに陽圧を加える装置を意味する。CPAP装置は、呼吸周期の全体にわたって持続的気道陽圧を適用する。したがって人工呼吸自体はCPAPの間、循環せず、CPAPのレベルを上回る追加の圧力は加えられず、患者は単独でそれぞれの呼吸を開始しなければならない。
【0088】
バイレベル気道陽圧(BiPAP)治療は、機能及び設計の点でCPAPと非常に類似している。BiPAPは、ヒトが取るべき1分当たりの呼吸量を測定する、呼吸タイミング機能を含むようにも設定されることができる。呼吸間の時間が設定した制限を上回る場合、人工呼吸器は、一時的に空気圧を増加させることによって強制的にヒトに呼吸させることができる。BiPAPとCPAP機器の主な違いは、BiPAP機械が、2つの圧力設定、吸入のための所定の圧力(ipap)及び呼気のための低圧(epap)を通常有するということである。二重設定により、患者がその肺の内外へ多くの空気を移動させるのが可能になる。
【0089】
体外膜型人工肺(ECMO)(体外心肺補助装置(ECLS)としても公知である)は、心臓及び肺が十分な量のガス交換を得ることができない患者に、長期にわたる心臓及び呼吸補助を提供する、体外技術である。ECMOの技術は、人工心肺術の間に使用されるものと類似し、それは通常、短期の補助を提供するために使用する。ECMOの間、血液はヒトの身体から取り出されて、装置を通過し、それは二酸化炭素を除去して、酸素を赤血球に提供する。長期のECMO患者は、筋肉の不活性及び他の原因のため、多くの場合、呼吸筋の低下を呈する場合がある。本明細書に記載の特定の治療方法は、ECMO及び別の形態の外部の呼吸補助を受ける患者に刺激療法を送達することを含むことができる。本開示の特定の治療方法は、刺激アレイを含有するECMO装置を利用して、記載されている治療を実施できる。
【0090】
いくつかの例で、カテーテル12は、患者内に挿入される(及び/または患者に対して固定される)ことができる。多くの実施形態で、カテーテル12は、手術を必要とすることなく、必要に応じて患者の身体から取り外すことができる。例えば
図3のカテーテル12は、一旦患者が自主的に呼吸すれば、引き出されることができる。
【0091】
1つ以上の神経の刺激のタイミングは、人工呼吸のタイミングと協調されてもよい。例えば神経(例えば、迷走神経)は、人工呼吸の吸気期間の少なくとも一部の間に刺激されることができる。
【0092】
あるいはまたは更に、複数の神経の刺激のタイミングも協調され得る。例えば、第1神経がカテーテルの第1の複数の電極のうちの1つ以上の電極により刺激されない一方で、第2神経の刺激は実行される。場合によっては、神経が刺激されないとき(例えば、神経が遮断される、または刺激が提供されないとき)、呼吸筋(例えば、横隔膜筋)の1つ以上の部分を刺激することは、実行され得る。場合によっては、1つ以上の神経刺激電極からの刺激出力は、2つ以上の横隔膜刺激電極からの刺激出力と逆相関で生じることができる。あるいはまたは更に、1つ以上の神経刺激電極からの刺激出力は、2つ以上の横隔膜刺激電極からの刺激出力の間に生じることができる。
【0093】
図3は、2つのカテーテル(12、及び62)を含む、代表的な医療システム300を示し、各カテーテルは1つ以上の管腔を含み、近位電極アセンブリ及び遠位電極アセンブリを含む電極アセンブリ(34、及び64)を備えている。各カテーテルの近位電極アセンブリ及び遠位電極アセンブリはそれぞれ、少なくとも1つの電極セットまたは複数の電極セットを含むことができる。電極アセンブリ34、及び64は、カテーテル12または62の筒状部材またはカテーテル本体上に、またはその中に配置されることができる。カテーテル12、及び62は、患者の外頸静脈もしくは内頸静脈、腕頭静脈、上大静脈、上腕静脈(図示せず)、橈骨静脈(図示せず)及び/または左鎖骨下静脈を通って患者内に配置されることができる。電極セットのうちの少なくとも1つが横隔神経に向かい、電極セットのうちの少なくとも1つが迷走神経に向かうように、カテーテル12、及び62を配置できる。例えば、電極セットのうちの少なくとも1つが左横隔神経に向かい、電極セットのうちの少なくとも1つが横方向に右横隔神経に向かい、電極セットのうちの少なくとも1つが迷走神経に向かうように、カテーテル12、及び62を配置できる。したがって、配置されると、カテーテルは制御装置14からの信号を受信することができ、電極または電極セットを使用して、左横隔神経及び/または右横隔神経及び/または迷走神経の一方または両方を刺激できる。
図3に示すように、カテーテル12は左右の迷走神経を刺激するように構成されることができ、カテーテル62は右迷走神経及び右横隔神経を刺激するように構成されることができる。カテーテルは、患者の外部まで伸びるマニホールド36を更に含むことができる。電気ケーブル及びピグテール管腔は、マニホールド36から伸びることができる。少なくとも1つの電気ケーブル5または6及びピグテール管腔は、外部要素に接続するケーブルコネクタを含むことができ、電気ケーブルはケーブルコネクタを介して電気制御装置14に連結できる。電気ケーブルは、電極アセンブリに接続するリード線から形成されることができる。ケーブルコネクタはケーブルに取り付けられることができて(例えば、はんだ、クリンプ、PCBなどによって)、ケーブルコネクタの一方または両方はねじ切りを含むことができる。あるいはまたは更に、ケーブルコネクタの一方または両方は、プッシュプル圧縮継手またはスリップロック継手(図示せず)を含むことができる。制御装置14及び他の要素は、選択的に電極セットを刺激して及び/または患者及び刺激への任意の反応を監視するために、信号及び/またはデータの送信及び受信の両方のために、カテーテル12、62内の構成要素に電子的に接続していることができる。あるいはまたは更に、ケーブルは、カテーテル12、82の1つ以上の内腔に接続する、1つ以上の管腔または流体ラインを含むことができる。更に、システムは押しボタン17を含み、刺激または検知または制御装置14の他の任意の機能を引き起こすことができる。
【0094】
図4Aに示すように、鎖骨下カテーテル12は、近位孔部または窓の2つの軸方向に延在する群(72a、及び72b)を含むことができる。各軸方向に延在する群は、窓を含む。電極及び対応する窓は、任意の形状(例えば、円形、卵形、三日月形、楕円形、長方形など)であり得る。一実施形態にて、各群内の大部分の窓は、カテーテルの外側周辺の同じ180度の円周位置内に配置され、それによって、180度の円周位置は、第1電極群及び第2電極群の間で異なることができる(例えば、カテーテルの外側に沿って異なる軸位置を有する)。別の実施形態で、窓の2つの群72a、及び72bは、実質的に長手方向に整列配置されることができて(例えば、同じ90度の円周位置内に)、第1群及び第2群の90度の円周位置は異なるが、場合により重複する。例えば、
図4Aに示すように、第1列72aの1つの近位窓は、カテーテル外側周囲の異なる円周位置だが、第2列72bの窓と同じ軸位置に位置する。患者内に置かれるとき、近位窓の2つの列72a、及び72bは、実質的に後方に向いてもよく、少なくとも1つの近位窓は、左横隔神経に向くことができる、それに隣接することができる、またはその付近に配置されることができる。カテーテルは、遠位孔部または窓の2つの軸方向に延在する列(74a、及び74b)も含むことができる。また、各軸方向に延在する列(74a、74b)は、カテーテルの外側に沿った異なる軸位置だが、カテーテルの外側周囲の同じ円周位置に置かれる遠位窓を含む。第1列の1つの遠位ウインドウが第2列の2つの遠位窓の間の軸方向にあるように、遠位窓の2つの列74a、及び74bは整列していなくてもよい。例えば、
図4Aに示すように、第1列74aの1つの遠位窓は異なる軸位置に位置し、及び第2列74bの窓よりカテーテルの外側周囲の異なる円周位置に位置する。患者内に置かれるとき、遠位窓の2つの列74a、及び74bは、実質的に横方向に向いてもよく(患者の右側に)、少なくとも1つの遠位窓は、右横隔神経に向くことができる、それに隣接することができる、またはその付近に配置されることができる。
図4Aに示す例で、腹側に見られるとき、3つの遠位窓の2つの整列していない列(74a、74b)は、1つの列が前方に向き、1つの列が後方に向いているので、6つの遠位窓の1つの列として現れることができる。
【0095】
図4Aに示すように、別個の頸静脈カテーテル62は、左頸静脈または右頸静脈に挿入されることができる。頸静脈カテーテルは、孔部または窓の群66を含むことができ、その結果、患者内に置かれるとき、少なくとも1つの窓は迷走神経に向くことができる、それに隣接することができる、またはその付近に配置されることができる。
【0096】
カテーテル上の窓は、電極を露出させ、電極セットまたは電極対と周囲組織の間の導電路を可能にして、カテーテルが挿入される血管腔を含むことができる。あるいは、電極は、いくつかの周知の手段(例えば、導電性インク、ポリマーなど)の1つによって、カテーテルの表面上へ印刷されることができる。更に、電極は、フレキシブルなプリント基板内に一体化されることができ、それは、カテーテルに取り付けられる、またはそれに組み込まれることができる。当技術分野で周知の絶縁手段を使用して、患者と直接接触するために電極を露出させ、及びそのために任意の不必要な電気素子を露出させないことを確実にする。
【0097】
図4Bは、頸静脈を通って上大静脈内に配置される1つのカテーテル12を示す。カテーテル12は、近位、中位及び遠位に置かれる孔部または窓の列86を含むことができ、その結果、カテーテル12が患者内に置かれるとき、少なくとも1つの窓は左横隔神経に向く、それに接する、またはその付近に配置されることができ、少なくとも1つの窓は右横隔神経に向く、それに接する、またはその付近に配置されることができ、及び/または少なくとも1つの窓は迷走神経に向く、それに接する、またはその付近に配置されることができる。カテーテル上の窓86は、電極を露出させ、電極セットまたは電極対と周囲組織の間の導電路を可能にして、カテーテルが挿入される血管腔を含むことができる。カテーテル12は、患者内のカテーテル及び/または指定位置の電極を固定する、または安定させる特徴を含むことができる。一実施形態にて、カテーテル12は、遠位端または近位端または両方に螺旋形状を有することができる。この形状は、ポリマーシースまたは管を熱処理して、または成形したステンレス鋼線もしくは形状記憶ニチノールワイヤまたは他の任意の形状記憶合金を加えることにより形成されることができる。形状記憶合金は、30℃~45℃(例えば、37℃)の温度に加熱したとき、螺旋形状を活性化することができる。この螺旋形状は、血管壁への並置を付加することを助けることができて、そうしてカテーテルを現在の位置に取り付けるのを助けることができる。螺旋形状は、血管の半径方向の電極の適用範囲を増加させることもできる。この1つのカテーテルは、横隔神経(PN)及び/または迷走神経(VN)を刺激するために使用できる。
【0098】
図4Bに示す一例にて、カテーテル12の遠位部または近位部は、神経刺激の間、血管壁にカテーテル12を固定するのを助ける、またはカテーテル12を安定させるために、患者内に配置されるときに、螺旋形状を呈するように構成されることができる。螺旋形状は、容器内に及び標的神経に対して、異なる半径方向位置に電極34を配置することができる。容器内の異なる半径方向位置の(任意の螺旋形状によるか否かを問わず)、または標的神経からから異なる距離の(任意の螺旋形状によるか否かを問わず)電極34を選択することは、神経刺激に有用であり得る。例えば、特定の例で、神経に近い電極34で神経を刺激することが望ましくてもよく(例えば、強い呼吸筋応答を得るために)、他の例で、神経から更に離れている電極34で神経を刺激することが望ましくてもよい(例えば、弱い呼吸筋応答を得る、または不必要な神経の刺激を防ぐために)。
【0099】
図5を参照すると、カテーテル12は、複数の電極34または他のエネルギー送達要素を備える、刺激アレイを含むことができる。一例で、電極34は、カテーテル12の外壁に位置する表面電極でもよい。別の例で、電極34は、カテーテル12の外壁に対して半径方向に内向きに配置されることができる(例えば、外壁の開口部または窓を通って露出する)。更に別の例で、電極34は、米国特許第9,242,088号に記載されているように、印刷した電極を含むことができ、それは本明細書に参照により組み込まれる。
【0100】
電極34は、カテーテル12の周囲に部分的に延在することができる。この「部分的」電極構成によって、電極34が刺激のための所望の神経を標的化することが可能になり、その一方で、患者の解剖学的構造の望ましくない領域(例えば、他の神経または心臓)への電荷の適用を最小化する。
図5に示すように、カテーテル12は、左横隔神経26付近に配置されて、それを刺激するように構成される電極34の近位セット35と、右横隔神経28付近に配置されて、それを刺激するように構成される電極34の遠位セット37と、を含むことができる。電極34は、カテーテル12の長さに沿って延在する群に配置されることができる。一例にて、近位セット35はカテーテル12の長手方向軸に平行に延在する2列の電極34を含むことができ、遠位セット37はカテーテル12の長手方向軸に平行に延在する2列の電極34を含むことができる。
【0101】
更に、本明細書に記載のカテーテルは、米国特許第8,571,662号(2013年10月29日発行の表題”Transvascuiar Nerve Stimulation Apparatus and Methods”);米国特許第9,242,088号(2016年1月26日発行の表題”Apparatus and Methods for Assisted Breathing by Transvascuiar Nerve Stimulation”);米国特許第9,333,363号(2016年5月10日発行の、表題”Systems and Related Methods for Optimization of Multi-Electrode Nerve Pacing”);米国特許出願第14/383,285号(2014年9月5日出願の表題”Transvascuiar Nerve Stimulation Apparatus and Methods”);米国特許出願第14/410,022号(2014年12月19日出願の表題”Transvascuiar Diaphragm Pacing Systems and Methods of Use”);米国特許出願第15/606,867号(2017年5月26日出願の表題”Apparatus And Methods For Assisted Breathing By Transvascuiar Nerve Stimulation”);または米国特許出願第15/666,989号(2017年8月2日出願の表題”Systems And Methods For intravascular Catheter Positioning and/or Nerve Stimulation”)の文書に記載されている神経刺激装置及び検知装置の任意の特徴を含むことができ、その全体がすべて本明細書に参照により組み込まれる。そのうえ、本明細書に記載の制御装置は、上述した特許文献に記載の制御装置の機能のいずれかを有することができる(例えば、本明細書に記載の制御装置は、組み込まれた文書に記載されている神経刺激の方法を実施できる)。
【0102】
神経刺激の間、1つ以上の電極34は、左横隔神経26の刺激のために近位セット35から選択されることができて、1つ以上の電極34は、右横隔神経28の刺激のために遠位セット37から選択されることができる。カテーテル12は、単極、両極、または三極電極の組み合わせを使用して、または電極34の任意の他の好適な組み合わせを使用して、神経を刺激できる。いくつかの例で、電極の第2グループまたは第3グループは、他の呼吸筋を刺激するために使用することができる。一般に、刺激器または刺激アレイは、電極の複数のセットを含むことができ、そこで各セットは、同じまたは異なる神経もしくは筋肉を刺激するように構成されている。複数の神経または筋肉が刺激されるとき、本明細書に記載のコントローラ及びセンサは、刺激を協調して、所望の筋肉の活性化、呼吸または呼吸補助のレベルを得るために使用できる。
【0103】
図5に示すように、カテーテル12は、1つ以上の管腔を更に含むことができる。各管腔は、カテーテル12の近位端からカテーテル12の遠位端に、またはカテーテル12の遠位端に近接する位置に伸びることができる。いくつかの例で、管腔は、センサ(例えば、血液ガスセンサ、電気センサ、運動センサ、フローセンサまたは圧力センサ)を含むことができる、またはそれと流体連通していることができる。いくつかの例で、カテーテル12は、ハブ36から近位に伸びる拡張管腔38、40、42と連結することができる、3つの管腔(図示せず)を含むことができる。カテーテル12内の任意の管腔は、カテーテル12の遠位端の、またはカテーテル12の側壁の1つ以上の遠位ポート52、50、48で終端できる。一例にて、管腔は、患者へ及びそこから流体を輸送するために(例えば、薬物を送達する、または血液もしくは他の体液を取り出す、CO2を除去する、酸素を注入するなど)使用できる。他の例で、これらの管腔は、ガイドワイヤ、補強ワイヤ、光ファイバカメラ、センサまたは他の医療装置を保持するために使用できる。例えば、
図5は、管腔38に嵌入される光ファイバカメラ46を示し、対応する内腔を通って延在して、遠位ポート48から出る。電極34は、患者からの生理学的情報(例えば血液の特性、神経活動、ECGまたは電気インピーダンス)を検知するように構成されることができる。
【0104】
カテーテル12または本開示の他の刺激装置は、その外部の標識または他のインジケータを組み込んで、装置の位置決め及び配向を導くのを助けることができる。カテーテル12または本開示の他の刺激器は、X線、超音波または刺激器を所望の位置に配置することを助けるための他の撮像技術による、可視的な内部インジケータ(例えば、放射線不透過性マーカー、硫酸バリウムなどの造影剤、エコー源性マーカーなど)を含むこともできる。カテーテル12は、本明細書に記載の特徴の任意の組み合わせを含むことができる。したがって、カテーテル12の特徴は、
図5に示す特定の組み合わせに限定されない。
【0105】
更に
図5に関連して、ハブ36は、カテーテル12の近位端に接続することができる。ハブ36は導電面を含んでもよく、それは単極刺激または検知の間の基準電極として作用できる。いくつかの実施形態で、ハブ36は、患者の皮膚に縫合されることができる。更にハブ36は、ECGまたは他の基準電極として使用されることができる。
【0106】
図5で示す実施形態は、20個の近位窓35(10個の窓の2つの列)及び8個の遠位窓37(4個の窓の2つの列)を有するカテーテル12を含む。しかし、他の実施形態で、カテーテルはこれより少ないまたはこれより多い列及び種々の数の近位窓もしくは遠位窓を有し得る。例えば、他の実施形態で、カテーテルは、1、2、3つ以上の列に配置した2、4、8、10、12個以上の近位窓、及び/または1、2、3つ以上列に配置した2、4、6、10、12個以上の遠位窓を含むことができる。窓の数は、奇数でもよい。窓は、カテーテル12の外壁を切除(例えば、レーザー、手作業による切削、穿孔、打ち抜きなど)することによって形成され得る、または窓は、押出成形、3D印刷もしくは他の製造工程中の任意の他の好適な方法によって形成してもよい。窓は、長方形、楕円形、正方形または他の形状であってよい。窓は、電気信号がカテーテルの内腔からカテーテルの外側に移動できるように構成された孔部であり得る。各窓は、窓を通って露出して、制御装置に対して他の電極に独立して電気接続される、電極を含むことができる。米国特許出願第15/606,867号(参照により組み込まれる)は、このような接続について記載している。更なるまたは代替的実施形態で、窓は、電気信号の通過を可能にする材料によって被覆されることができる。
【0107】
カテーテル12の寸法は、特定の患者の解剖学的構造(例えば、ヒト、ブタ、チンパンジーなどの異なるサイズ)に合わせてカスタマイズできる。しかし、いくつかの実施形態で、近位窓を含むカテーテルの部分の長さは、16cm以下、3cmと5cmの間、または1cmと3cmの間であり得る。遠位窓を含むカテーテルの部分の長さは、12cm以下、2cmと4cmの間、または1cmと2cmの間であり得る。2つの隣接する窓(窓が、窓の同じ列の周囲方向に隣接する、またはその長手方向に隣接するかを問わず)の間の距離は、5cm以下または3cm以下でもよく、約1cmでもよく、または1cm未満でもよい。カテーテルの寸法は例示に過ぎず、カテーテルは上記の範囲及び特定の実寸と異なる寸法を有していてもよい。そのうえカテーテル12は、上述とは異なる構成の窓を含むことができる。
【0108】
カテーテルの遠位先端部は、カテーテル12の先細の遠位端部でもよい。遠位先端部は遠位端で開口して、ガイドワイヤがカテーテルを通って及びそれを越えて遠位に進むのを可能にし得る。遠位先端部は、カテーテルの本体より小さい円周を有することができ、それは、カテーテルの他の部分より柔らかくてもよく、非侵襲的でもよく、丸みのある縁を有してもよい。
【0109】
カテーテルは、個々の管48、50、52に近位に接続しているポート38a、40a、42aも有することができ、異なる流体を注入するのを助けるための1つ以上の別個の血管ライン(
図5で示すように、3つ)として作用することができる。
【0110】
図6は、カテーテル12の別の例を示す。
図6に示されるカテーテル12は、電極34以外は
図5のカテーテルと類似しており、それは、米国特許第9,242,088号(本明細書に参照により組み込まれる)に記載のように、カテーテル12の表面上に印刷される導電性インク(例えば、銀、金、グラフェン、またはポリマーもしくは他の媒体中に浮遊する炭素フレーク)により形成されることができる。これらの導電性インクは、カテーテル12上に直接載置されて接着され得て、露出した電極34を除いて、外側ポリウレタンまたは他の可撓性かつ絶縁性を有するフィルム/材料によって封止される。電極は、リード線、カテーテルまたは別の表面に取り付けられる、またはその中にもしくはその上に組み込まれる可撓性固相回路の形であり得る。露出した電極34は、電気的特性(例えば、導電性や表面積)の向上、耐食性の付与、有毒となり得る銀酸化物形成の可能性の低減などの目的のうちのいくつかのために被覆される(例えば、窒化チタンで被覆される)。
図6に示すように、遠位電極の導電性インクトレースは、カテーテル12に沿って、より近位の電極34を越えて近位側に進むことができる。
図6は、カテーテル12の遠位端で、超音波変換器54または他のセンサを有する、カテーテル12を更に示す。
【0111】
図7は、
図2の医療システムと同様の要素を備える、代替的医療システムを示す。この医療システムは、制御装置14’からカテーテル12までの無線接続と、押しボタン(複数可)から無線制御装置14’までの無線接続と、を含む。この代替的システム10で、制御装置14’は、カテーテル12と共に患者に植え込まれる。システム10は、制御装置14’と無線で接続する、遠隔コントローラ18及びプログラマー98を更に含むことができる。この実施形態で、プログラマー98、制御装置14’及び遠隔コントローラ18のそれぞれは、無線トランシーバ92、94、96をそれぞれ含むことができ、その結果、3つの構成要素のそれぞれは、互いに無線で接続できる。制御装置14’は、本明細書に記載の機能を実行するのに必要なすべての電子機器、ソフトウェア及び機能ロジックを含むことができる。
図7で示すように制御装置14’を植え込むことにより、カテーテル12が永久呼吸ペースメーカーとして機能するのを可能にする。プログラマー98により、患者または医療従事者が神経刺激または検知パラメータを修正する、またはプログラムするのが可能になる。遠隔コントローラ16は、
図2及び
図3に関連して記載されているように使用されることができる。他の例で、遠隔コントローラ16は、スマートフォン、タブレット、腕時計または他の装着型装置の形であり得る。カテーテル12または複数のカテーテルは、
図2、
図3、
図4A及び
図4Bに関連して記載されているように、挿入されて、配置されることができる。
【0112】
カテーテルが患者内に完全に挿入されると、種々の電極または電極の組み合わせを試験して、目的の神経の位置を特定し、どの電極が最も効果的に目的の神経を刺激するかを判断する。例えば、一実施形態で、右横隔神経の位置を特定し、右横隔神経を最も効果的に刺激するのは遠位電極アセンブリの遠位電極のどの群なのかを判定するために、試験が行われる。同様に、左横隔神経の位置を特定し、左横隔神経を最も効果的に刺激するのは近位電極アセンブリの近位電極のどの群なのかを判定するために、試験が行われる。同様に、迷走神経の位置を特定すると共に、迷走神経を最も効果的に刺激するのは電極アセンブリの電極のどの群なのかを判定するために、試験が行われる。
【0113】
この試験及び神経位置は、制御装置14または14’を介して制御されることができ及び/または監視されることができ、それは、試験プログラミング及び/またはアプリケーションを含むことができる。例えば、制御装置14または14’は、電極のどの組み合わせ(例えば、二極、三極、四極、多極)が標的神経(例えば、右横隔神経、左横隔神経及び/または迷走神経)を最も効果的に刺激するか判定するために、電極及び電極の組み合わせを試験することができる。
【0114】
非限定例として、選択された電極に電気的インパルスを系統的に送る信号生成器を使用して、試験が行われる。患者の状態を観察することによって、またはセンサ(カテーテル内の、またはそれから分離した)を使用することにより、所望の刺激電極を確認できる。電極は、刺激電極として及び感知電極としての両方で機能することができ、医療システムは、人工呼吸器内に一体化されることができ、それは患者の状態を検知するために使用され得る。更に、例えば制御装置は、プログラムされる及び/または作動されて、(a)左横隔神経を刺激するように、電極アセンブリから電極の第1刺激群を選択する、(b)右横隔神経を刺激するように、電極アセンブリから電極の第2刺激群を選択する、(c)迷走神経を刺激するように、電極アセンブリから電極の第3刺激群を選択する、(d)左横隔神経を刺激するように、電極の第1刺激群用の第1刺激電流を選択する、(e)右横隔神経を刺激するように、電極の第2刺激群用の第2刺激電流を選択する、及び(f)迷走神経を刺激するように、電極の第3刺激群用の第3刺激電流を選択する、ことができる。電極及び電流レベルの選択は、患者の特徴に基づいて予めプログラムされることができる、もしくは入力されることができる、または制御装置は、異なる電極群及び電流レベルを試験することができ、患者の応答を監視して、電極対及び電流レベルを決定できる。
【0115】
場合によっては、本明細書のシステムは、迷走神経を刺激するための経皮的な非侵襲的迷走神経刺激器(nVNS)及び/または経皮的な呼吸筋刺激器を含むことができる。例えば、頸部または耳たぶの神経を刺激するために、小型携帯装置または皮膚取り付け型装置からの電流を使用する装置は、迷走神経を刺激する、または胴体の神経/筋肉を刺激して、呼吸筋を動かすために使用できる。あるいはまたは更に、種々の他の方法は神経を刺激するために使用できる(例えば、制御装置に接続している、皮下電極または神経カフ)。
【0116】
電荷が横隔神経に送達されるとき、横隔膜筋は収縮して、胸腔の陰圧を生じさせることができる。次に肺は、空気量を引き込むために拡大する。横隔膜筋のこの収縮は、
図2に示すように、触診によって、または手を胸腔に置くことによって手動で検知できる。あるいは、呼吸活動は、
図2に示すように、気流または気道圧センサを呼吸回路に置く、またはセンサ16(例えば、加速度計またはジャイロスコープ)を胸部領域の皮膚の表面に配置することにより検知できる。センサ18は、制御装置18に有線接続されることができる、または無線伝送器及び受信器を用いて接続されることができる。
【0117】
図8は、
図1と同様に、頸部及び胸部構造を示す。
図8は、経皮的な電極アレイ13を含む、代表的な医療システム200を更に示す。アレイ13は、肋間筋のすぐ近位の患者の皮膚表面に配置される、一連の電極44を含む。電極44は、任意の好適な形及びサイズを有することができ、様々な機能(例えば、皮膚を通して電気的活性を検知すること、及び筋肉または神経を刺激すること)の助けになることができる。電極44は、ステンレス鋼、導電性炭素繊維入りABSプラスチック、銀/塩化銀イオン化合物、もしくは任意の他の好適な材料、または材料の任意の組み合わせを含むことができる。各電極44は、電極44を皮膚に取り付けるための接着剤を含むことができる、ポリマーフィルムまたはエラストマーフィルムによって覆われることができる。あるいは電極フィルムは、信号のより良好な伝導のために電解質ゲルを含むことができる。いくかの実施形態で、電極の他の形態(例えば、皮下または針電極)は、肋間筋を刺激するために使用できる、またはシステムは、刺激エネルギー(例えば、超音波)の他の形態を使用して、標的神経または筋肉を活性化することができる。
【0118】
図8は、管上の(例えば、管に一体化される)及び/または管46のすべてまたは一部を取り囲んでいる膨張可能バルーン上の電極48を備える、経食道管46を更に示す。電極48は、導電性インク(例えば、銀インク、金インク、グラフェンインクまたは炭素ベースインク)を使用して、管46(または、バルーン)の表面に印刷されることができる。あるいは、接着剤を使用して、電極材料(例えば、プラチナイリジウム、ステンレス鋼、チタンまたは類似の材料)を管46に固定すること、及び1つ以上の導線で電極48と制御装置18に接続することにより、電極48は形成され得る。電極48は、横隔神経もしくは迷走神経、またはいくつかの他の神経学的要素からの信号を検出するために使用できる。電極48は、神経(例えば、迷走神経、横隔神経、交感神経節のうちの少なくとも1つ)または食道括約筋を刺激するためにも使用できる。
【0119】
あるいはまたは更に、
図8のシステム200は、
図2で記載するように電極及び/またはセンサを備えるカテーテルを含むことができる。陰圧換気を回復させるために、システム200は一方または両方の横隔神経を刺激して、肋間筋を刺激すると共に横隔膜筋を動かして(電極44を介して示されるように)、胸腔の陰圧または胸部腔への圧縮力を作成できる。システムは、血管内カテーテル(使用する場合)または経食道管46上の電極の1つから横隔神経または迷走神経の活性を検知することによって、フィードバックを受け取ることができる。神経活性からのフィードバックは、適切な人工呼吸を維持するために必要な刺激パラメータ、刺激パラメータの調節が必要かどうかについて判定するために使用できる。システムは、任意の他の適切なセンサからフィードバックを受け取って、適切な刺激パラメータを決定することもできる。以下のセンサのそれぞれ、気流センサ、気道圧センサ、加速度計、ジャイロスコープ、血液ガスセンサまたは炎症性物質を検知するためのセンサのうちの1つ以上は、システム100またはシステム200のいずれかに含まれ得る。いくつかの例で、システム100またはシステム200は、炎症性物質を検知するためのセンサを含むことができる。このような炎症性物質の例は、赤血球沈降速度(ESR)、サイトカイン、C反応性タンパク質(CRP)、血漿粘度(PV)、ヘモグロビンA1C、血清フェリチン、赤血球幅、インスリン、一酸化窒素、または炎症性疾患(例えば、炎症性腸疾患、アルツハイマー、クローン病、関節炎、がん、糖尿病)の他のバイオマーカーを含むが、これらに限定されない。
【0120】
図9は、システムの種々の要素のブロック図を示す。電極、ハブ及び管腔は、本明細書に記載のカテーテルの一部であり得る。カテーテルは、任意の数の電極及び任意の数の管腔を有し得る。5つの管腔が
図9に示されるが、異なる例で、カテーテルは1、2、3、4つまたは5つ以上の管腔を含むことができる。一例で、カテーテルは3つの管腔(例えば、拡張管腔及び対応する内部管腔)を有することができ、そこで、それぞれは、ガイドワイヤまたは光ファイバカメラのうちの1つ以上を保持することができる、または流体送達または血液サンプル抽出のために使用され得る。別の例で、カテーテルは4つの管腔を含むことができ、1つの管腔は、圧力センサを保持する、またはそれと流体連通しており、1つの管腔は、血液ガスセンサを保持する、またはそれと流体連通しており、及び他の2つの管腔は、ガイドワイヤまたは光ファイバカメラを保持する、及び/または流体送達もしくは血液試料の抽出のために使用される。システムの任意の管腔は、本明細書に記載の装置(例えば、センサ、ガイドワイヤ、光ファイバカメラ)のいずれかを含むことができる、またはそれと流体連通していることができる、及び/または本明細書に記載の機能(例えば、流体送達、血液試料の抽出)のいずれかのために使用され得る、ことを理解すべきである。
【0121】
システムはコントローラを含むことができ、それは、本明細書に記載の制御装置のいずれかの一部でもよい。システムの構成要素のそれぞれは、コントローラに操作可能に連結することができ、コントローラは、神経刺激の間、電極の動作を管理することができ、各種センサ及び電極による情報の収集を制御することができ、流体送達または抽出を制御できる。本明細書に記載の種々のモジュールがコンピュータシステムの一部でもよく、例示目的のためだけに
図9で切り離されており、モジュールが物理的に分離されている必要はない、ことを理解すべきである。
【0122】
電極は、スイッチング電子機器に電子的に連結でき、それはコントローラと通信可能に連結できる。
図9に示すように、電極の一部は遠位電極でもよく、電極の一部は近位電極でもよい。いくつかの電極は、別個のカテーテルに配置されることができる。ハブも、スイッチング電子機器に接続することができ、電極として使用され得る。
【0123】
電極は、電気的に神経を刺激することと、生理学的情報を収集することと、の両方のために使用できる。神経刺激のために使用されるとき、第1の電極の組み合わせ(例えば、1、2、3つ以上の電極)は、第1神経(例えば、右横隔神経)の刺激のための第1刺激モジュールチャネルに電気的に結合されることができ、第2の電極の組み合わせ(例えば、1、2、3つ以上の電極)は、第2神経(例えば、迷走神経)の刺激のための第2刺激モジュールチャネルに電気的に結合されることができる。より多くの神経または筋肉を刺激するために、第3または第4のチャネルもあってよい。電気信号は、電極に神経を刺激させるために、第1及び第2刺激モジュールチャネルから電極の組み合わせまで送られることができる。他の例で、2つ超の電極の組み合わせ(例えば、3つ、4つ以上)は、1つ以上の標的神経を刺激するために使用でき、システムは、2つ超の刺激モジュールチャネルを含むことができる。
【0124】
電極は、更に後述するように、患者からの生理学的情報(例えば神経活動、ECGまたは電気インピーダンス)を検知するように更に構成されることができる。検知のために使用されるとき、1つ以上の電極は信号獲得モジュールに電子的に連結できる。信号獲得モジュールは、電極からの信号を受け取ることができる。
【0125】
スイッチング電子機器は、電極を、第1の刺激モジュールチャネル、第2の刺激モジュールチャネルまたは信号獲得モジュールに選択的に連結できる。スイッチング電子機器は、どの電極を刺激のために使用するか、どれを任意の所定時間で検知のために使用するかを変えることができる。一例にて、任意の電極を神経刺激のために使用でき、任意の電極を本明細書に記載の検知機能のために使用できる。すなわち、各電極は神経を刺激するように構成されることができ、各電極は生理学的情報を検知するように構成されることができる。
【0126】
信号獲得モジュールは、患者から生理学的情報を収集するように構成される1つ以上のセンサに、更に連結できる。例えば、システムは、血液ガスセンサまたは圧力センサのうちの1つ以上を含むことができる。これらのセンサは、カテーテルの管腔中に、管腔と流体連通して患者の外側に、カテーテルの外面上に、または他の任意の好適な位置に置かれることができる。一例にて、血液ガスセンサは、管腔中に収納される、またはそれと流体連通することができ、一方で圧力センサは別の管腔中に収納される、またはそれと流体連通することができる。血液ガスセンサは、患者の血液中のO2またはCO2の量を計測できる。圧力センサは、患者の中心静脈圧(CVP)を測定できる。
【0127】
信号獲得モジュールは、電極、血液ガスセンサ及び/または圧力センサのうちの1つ以上から受信される信号をシステムの適切な処理/フィルタリングモジュールに送ることができる。例えば、圧力センサからの信号は、中心静脈圧信号処理/フィルタリングモジュールに送られることができ、そこで信号は、CVP情報の解釈に役立つように処理されて、フィルタリングされる。同様に、血液ガスセンサからの信号は、血液ガスレベルを決定する処理及びフィルタリングのために、血液ガス信号処理/フィルタリングモジュールに送られることができる。検知のために使用されるとき、電極からの信号は、必要に応じて、神経信号処理/フィルタリングモジュール、ECG信号処理/フィルタリングモジュールまたはインピーダンス信号処理/フィルタリングモジュールに送られることができる。電極または他のセンサからの信号は増幅モジュールに送られて、必要に応じて、適切な処理/フィルタリングモジュールに送られる前に信号を増幅できる。
【0128】
脳損傷を防ぐ、またはそれを治療する代表的な方法
本明細書に記載のシステム及び方法は、横隔膜を整調すると共に、脳損傷を防ぐ、調整する、制御する、または治療することができる。脳外傷は、人工呼吸によって生じる場合がある。システム及び方法は、脳機能及び/または迷走神経刺激の状態の試験を実行できる。試験の結果に基づいて、1つ以上の横隔神経及び/または迷走神経を刺激できる。神経の刺激は、脳の炎症を低減することができる。あるいはまたは更に、1つ以上の神経(例えば、迷走神経)は電極からの信号を使用して遮断されて、脳からの異常なシグナル伝達を遮断することができる。
【0129】
1つの代表的な治療セッションで、カテーテル12は、左右の横隔神経26、28に隣接して、またはそれ全体に延在するために、血管構造に置かれることができる。適切な遠位及び近位電極対は、呼吸筋(例えば、左右両方の半横隔膜筋)の収縮が生じるように選択されることができる。オペレータ(例えば、医師または患者)は、約1.2秒の刺激パルス列長、パルス振幅を閾値の約100%に、及び初期パルス幅を閾値の約100%に設定することができる。パルスパラメータは、外部呼吸補助装置88からの肺陽圧で、所望のレベルの筋収縮及び減少を達成するように調節されることができる。パルス幅は、刺激パルス列の刺激パルスの間に調整されることができる。場合によっては、パルス振幅は、刺激パルス列の刺激パルスの間に調整されることができる。遠隔手持ち式コントローラ20を使用して、オペレータは、10個の刺激パルス列の治療セットを提供できる。いくつかの例で、刺激パルス列のそれぞれは、人工呼吸器または患者の自発呼吸によって送られる呼吸と一致するようにタイミングを合わせることができる。
【0130】
いくつかの実施形態では、システムは、人工呼吸器または他の外部呼吸補助システム(例えば、外部の呼吸支援88)と直接通信して、外部装置により提供される補助による治療送達と協調できる。上述したように、横隔膜筋、神経(例えば横隔神経、迷走神経など)または他の患者監視装置、または呼吸補助装置からのセンサが検知する活動は、人工呼吸器からの刺激及び/または呼吸送達を誘発するために使用できる。更に非限定的な例として、本明細書に記載のシステムは、患者への呼吸の開始を示す人工呼吸器からの信号を受信するために、操作可能に接続されることができて(例えば、有線、無線など)、システムは、刺激パルス列の送達を同期させて、所望の呼吸相と協調できる。別の例で、オペレータは、刺激パラメータを設定して、患者にそれらの呼吸筋を動かすように求めることができる。それから、オペレータは、電気刺激のトリガーを患者の努力と協調させて、筋肉の最大運動を提供できる。別の例で、外部の呼吸補助88は、刺激セットもしくは刺激セッションの送達の一部もしくはその全体の間、低減される、または排除されることさえできる。
【0131】
いくつかの例で、10個の刺激パルス列が提供される。パルス列は、10回の連続する呼吸にタイミングを合わせることができる、またはオペレータは、1つ以上の呼吸をスキップして、患者が刺激の間に周期的に休むのを可能にし得る。10個の刺激パルス列が送られた後、患者はしばらくの間(例えば、30秒~5分)間休むことが可能になる。適切な安静の後、オペレータは、第2セット(例えば、10回の呼吸)を開始して、再び休止時間が続くことができる。オペレータは、それぞれが10回の刺激を含む、いくつかのセット(例えば、4セット)を送達できる。各刺激は、1~15分間にわたって全体で40回の筋収縮を引き起こすことができる。セッションの間の刺激の所望の数は、必要に応じて単一セットで送達されることができる。それから、患者は、別の治療セッションを開始する前に、安静(例えば、1時間以上)を許可され、場合によっては最低3時間、潜在的には24時間または48時間の長さの安静を許可され得る。いくつかの例で、2~3つ以上の治療セッションが毎日行われる。それとは関係なく、呼吸筋に提供される刺激の数は、毎日患者によって必要とされる呼吸のごくわずかな部分でもよい。上述した40回の刺激/日の例で、送達される刺激の数は、1日当たり患者によって行われる呼吸、または患者に送達される呼吸のほぼ0.2%未満または約0.2%である。
【0132】
一例にて、刺激パラメータは、筋収縮を引き起こす1回の刺激から次の刺激まで、1つの治療セットから次の治療セットまで、1つのセッションから次のセッションまで、またはある日から翌日まで同じに保たれてよい。他の例にて、パラメータ(例えば、刺激振幅、刺激周波数、刺激保持時間または呼吸回路の抵抗)のうちの1つは、筋収縮を引き起こす2回の刺激の間、2セットの間、2つのセッションの間、または2日間の間で増減されることができる。パラメータを変える際に考慮する要因は、患者の許容範囲、他の構造の意図しない刺激、疲労または増加した強度に対する欲求でもよい。
【0133】
治療セッションの別の例で、刺激信号は、1つ以上の治療セッションの間、2時間以下の全体期間の間、24時間の間の期間のほぼ2時間以下の全体期間にわたって送達されることができる。別の例で、刺激信号は、24時間の間の5時間以下の全体期間にわたって送達されることができる。
【0134】
治療セッションの他の例で、刺激信号は、1つ以上の呼吸筋に、24時間中に患者によって行われる、またはそれに送達される呼吸の20%を超えない、24時間中に患者によって行われる、またはそれに送達される呼吸の10%を超えない、24時間中に患者によって行われる、またはそれに送達される呼吸の2%を超えない、または24時間中に患者によって行われる、またはそれに送達される呼吸の0.2%を超えない収縮を生じさせるように送達されることができる。
【0135】
別の例で、ほぼ3~10分続く短い刺激治療セッションは、24時間にわたって12~24回、24時間にわたって8~12回、または24時間に1回、送達されることができる。
【0136】
別の例では、患者が外部の呼吸補助を必要としないときまで、または患者が外部の呼吸補助を必要としない、もしくはそれを受けていない時間の後の最高48時間まで、治療セッションは行うことができる。
【0137】
患者が外部の呼吸補助(例えば、人工呼吸)を使用して、呼吸筋の強度及び/または耐久性の喪失の低減を助け始めたすぐ後、本開示の種々の例を実施できる。本開示の種々の例は、患者の肺、心臓、脳及び/または身体の他の器官の損傷のレベルを低減するのに役立つために使用できる。毎回の呼吸、あるいは大部分の呼吸と一致する刺激が所望のレベルの保護を提供できると想到されている。
【0138】
本明細書に記載のシステムは、刺激パルス列のプロファイルを随時変化させるようにプログラムされることができる。例えば、各10個の刺激パルス列は、より深いまたはより長い呼吸(例えば、呼気呼吸)を生成するために、他より長くなるようにプログラムされることができる。この場合、2つの隣接するパルス列の間の刺激パルス列の期間は変化する。
【0139】
いくつかの例で、MIPが所定の値に達するまで、治療は続けられることができ、刺激装置を起動させること、及び刺激装置の起動を中止することに関連する工程は、繰り返されることができる。
【0140】
更に、本明細書に記載の任意の治療処置の工程は、1つ超の神経及び1つ超の呼吸筋に対して実行されることができる。患者の筋肉(複数可)が同時に刺激されるように、複数の神経(及び、1つ以上の呼吸筋)の刺激は同期化され得る。この同期化を成し遂げるために、選択された電極の2つ以上の組み合わせは、治療セッションの間、同時に起動できる。例えば、第1セットの電極が最高100回の電気信号を発する場合、第2セットの電極は最高100回の電気信号を発することができ、第2セットの各放出は第1セットの電極の放出に対応する。一例にて、第1セット及び第2セットの電極は、左右の横隔神経を刺激して、左右の半横隔膜の同期化した収縮を引き起こすために使用できる。別の例で、第1セットは横隔膜を刺激するために用いることができ、第2セットは肋間筋を刺激するために用いることができる。横隔膜及び肋間筋を、同時に刺激できる。あるいは、横隔膜及び肋間筋は、相を変えて刺激されることができる。例えば、外肋間筋が刺激されるとき、横隔膜は外肋間筋と同時に刺激されることができる。内肋間筋が刺激されるとき、横隔膜と内肋間筋は相を変えて刺激されることができる。両方の刺激は、患者の呼吸サイクルと同時に行うことができる。更に別の例で、患者の神経/筋肉は、患者の人工呼吸器または他の外部の呼吸補助の吸気期間の間に刺激されることができる。
【0141】
本明細書に記載のほとんどの例は、治療セッションが医療従事者により行われる一方で、また不定期に呼吸筋の刺激を供給して、強度を構築する治療送達の他の方法を利用できることが考えられる。非限定的な例として、本開示のシステムの閉ループ自動化の例は、特定のデューティサイクル(例えば、X呼吸ごとに1回の刺激)で刺激を呼吸筋に送るように設計されていることができ、そこで、Xは10~1000の範囲であり得る。この方法は、合間に所定の数の安静呼吸を含む、周期的筋肉刺激を提供できる。Xは、種々の例で1と同程度小さくなり得て、10,000と同程度に大きくなり得る。本明細書に記載のシステム及び方法を用いて呼吸筋萎縮症ならびに肺損傷及び脳損傷を防ぐとき、刺激は、潜在的に各呼吸と同程度に頻繁に提供されることができる。
【0142】
種々の電極は、本開示で説明したように、神経及び/または筋肉を刺激するために使用できる。例として、本明細書に記載の刺激器は、神経刺激電極、気管内電極、食道内電極、血管内電極、経皮的電極、皮内電極、電磁ビーム電極、バルーン型電極、バスケット型電極、傘型電極、テープ型電極、吸引型電極、ねじ式電極、棘型電極、双極電極、単極電極、金属電極、ワイヤ電極、パッチ電極、カフ電極、クリップ電極、ニードル電極またはプローブ電極のうちの1つ以上を含むことができる。更に刺激エネルギーは、機械、電気、超音波、光子または電磁エネルギーのうちの少なくとも1つを含むエネルギー形態により送達されることができる。
【0143】
本開示の趣旨が、特定の出願の例示の実施形態に関連して本明細書で記載されると共に、前記開示がそれらに限定されないことを理解すべきである。当技術分野で周知の技術及び本明細書で提供する教示へのアクセスを有する者であれば、追加の変更、用途、実施形態及び等価物の置換のすべてが本明細書に記載の実施形態の範囲内にあることを理解するであろう。したがって本発明は、上述の説明によって制限されるとみなされるべきではない。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1神経を刺激し、かつ第2神経を刺激する刺激するように構成された刺激装置であって、前記第1神経の刺激によって、対象の胸腔の陰圧を生じさせ、前記第2神経の刺激によって、炎症を軽減し、迷走神経信号を調整し、または脳損傷の要因のレベルを低減する、刺激装置と、
前記第1神経及び前記第2神経を刺激するように刺激装置を誘発するように構成されたプロセッサと、を備えるシステム。
【請求項2】
前記プロセッサはさらに、刺激パラメータにより特徴づけられる刺激信号で前記第1神経を刺激するように前記刺激装置を誘発するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサはさらに、刺激パラメータにより特徴づけられる刺激信号で前記第2神経を刺激するように前記刺激装置を誘発するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記刺激パラメータは、刺激量、刺激列のパルス数または呼吸速度を含む、請求項2または請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサはさらに、試験結果を受信し、かつ前記試験結果に基づいて前記刺激パラメータを決定するように構成される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記試験結果は対象の脳の状態または迷走神経活動を反映する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記試験結果に基づいて前記刺激パラメータを決定することは、前記試験結果を参照閾値もしくは範囲と比較することを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記システムはさらに、前記試験結果を生成する試験を実行するように構成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
前記試験は、磁気共鳴撮影法、コンピュータ断層撮影、脳磁図、脳波記録法、血流測定、血圧測定、頭蓋内圧測定、脳酸素化測定、瞳孔径測定、眼への血流の測定、体液中の脳損傷または機能不全を示す分子の濃度測定、またはこれらの組み合わせを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記試験は、対象の脳を囲む流体の近赤外分光法による脳酸素化の測定を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記刺激装置は迷走神経からの信号を受信するように構成され、前記プロセッサは前記信号から前記試験結果を決定するように構成される、請求項5~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記システムはさらに人工呼吸器を含み、前記試験結果は前記人工呼吸器による人工呼吸が脳に及ぼす効果を含む、請求項5~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記人工呼吸器は、容積および圧力を有した呼吸補助を提供するように構成され、前記プロセッサは、前記人工呼吸器によって補助された呼吸の吸気相の一部の間に、前記刺激装置に前記第2神経を刺激させるように刺激するように構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記プロセッサはさらに、前記人工呼吸器によって提供される前記呼吸補助の容積または圧力を調整するように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記プロセッサはさらに、呼吸事象の開始、前記呼吸事象の終了、またはその両方を決定するように構成され、前記呼吸事象に関連して前記第1神経を刺激するタイミング、前記第2神経を刺激するタイミング、またはその両方を刺激するタイミングを決定するように構成される、請求項1~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記第2神経の刺激は前記迷走神経信号を調整し、前記迷走神経信号の調整は迷走神経による異常信号の送信を阻害することを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1神経は横隔神経であり、前記第2神経は迷走神経である、請求項1~16のいずれか一項に記載のシステム。