(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152838
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】電力需要予測システム及び電力需要予測方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20241018BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20241018BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20241018BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20241018BHJP
【FI】
H02J3/00 130
H02J13/00 301A
G06Q50/06
G06Q10/04
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024133248
(22)【出願日】2024-08-08
(62)【分割の表示】P 2020196129の分割
【原出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真生
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】陳 立
(72)【発明者】
【氏名】夏目 洋明
(72)【発明者】
【氏名】西山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】銀島 孝一
(57)【要約】
【課題】電力需要の予測精度向上に有効なシステムを提供する。
【解決手段】電力需要予測システム10は、売電事業者の複数の顧客グループごとに、電力需要の変動因子の実績データと、電力需要の実績データとを含む教師データをデータベースに蓄積させるデータ蓄積部114と、複数の顧客グループごとに、データベースに蓄積された複数の教師データに基づいて、変動因子データと電力需要データとの関係を表す需要予測モデル118を生成するモデル生成部116と、複数の顧客グループごとに変動因子の予測データを取得する入力情報取得部112と、複数の顧客グループごとに、変動因子の予測データと、需要予測モデル118とに基づいて電力需要の予測データを算出する個別需要予測部121と、複数の顧客グループごとに算出された電力需要の予測データに基づいて、売電事業者に対する総電力需要の予測データを算出する総需要予測部122と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
売電事業者の複数の顧客グループごとに、電力需要の変動因子の実績データと、電力需要の実績データとを含む教師データをデータベースに蓄積させるデータ蓄積部と、
前記複数の顧客グループごとに、前記データベースに蓄積された複数の教師データに基づいて、変動因子データと電力需要データとの関係を表す需要予測モデルを生成するモデル生成部と、
前記複数の顧客グループごとに前記変動因子の予測データを取得する入力情報取得部と、
前記複数の顧客グループごとに、前記変動因子の予測データと、前記需要予測モデルとに基づいて電力需要の予測データを算出する個別需要予測部と、
前記複数の顧客グループごとに算出された前記電力需要の予測データに基づいて、前記売電事業者に対する総電力需要の予測データを算出する総需要予測部と、を備え、
前記モデル生成部は、
1の顧客グループに対して、1の変動因子を含む変動因子データと電力需要データとの関係を表す電力需要予測モデルを生成し、
他の顧客グループに対して、前記1の顧客グループに対する変動因子データには含まれない他の変動因子を含む変動因子データと電力需要データとの関係を表す電力需要予測モデルを生成する、電力需要予測システム。
【請求項2】
売電事業者の複数の顧客グループごとに、電力需要の変動因子の実績データと、電力需要の実績データとを含む教師データをデータベースに蓄積させるデータ蓄積部と、
前記複数の顧客グループごとに、前記データベースに蓄積された複数の教師データに基づいて、変動因子データと電力需要データとの関係を表す需要予測モデルを生成するモデル生成部と、
前記複数の顧客グループごとに前記変動因子の予測データを取得する入力情報取得部と、
前記複数の顧客グループごとに、前記変動因子の予測データと、前記需要予測モデルとに基づいて電力需要の予測データを算出する個別需要予測部と、
前記複数の顧客グループごとに算出された前記電力需要の予測データに基づいて、前記売電事業者に対する総電力需要の予測データを算出する総需要予測部と、を備え、
前記複数の顧客グループは、前記電力需要に影響を及ぼす前記変動因子の違いに応じてグループ分けされ、
前記変動因子データと前記電力需要データとの関係が類似する可能性の高い顧客同士が、同一の顧客グループに属する、電力需要予測システム。
【請求項3】
前記モデル生成部は、少なくともランダムフォレスト法により前記需要予測モデルを生成する、請求項1又は2記載の電力需要予測システム。
【請求項4】
前記モデル生成部は、前記ランダムフォレスト法と、1以上の他の学習手法とを組み合わせたアンサンブル学習により前記需要予測モデルを生成する、請求項3記載の電力需要予測システム。
【請求項5】
前記1以上の他の学習手法は、少なくとも再帰型ニューラルネットワーク法を含む、請求項4記載の電力需要予測システム。
【請求項6】
前記複数の顧客グループは、オフィスにおいて電力を消費する第1グループと、生産工場において電力を消費する第2グループと、を含み、
前記モデル生成部は、
前記第1グループに対して、少なくとも天候を含む変動因子データと、電力需要データとの関係を表す第1需要予測モデルを生成し、
前記第2グループに対して、少なくとも生産状況を含む変動因子データと、電力需要データとの関係を表す第2需要予測モデルを生成する、請求項1~5のいずれか一項記載の電力需要予測システム。
【請求項7】
前記第1グループに含まれる顧客の数が、前記第2グループに含まれる顧客の数より多い、請求項6記載の電力需要予測システム。
【請求項8】
前記複数の顧客グループは、前記第2グループが電力を消費する生産工場とは生産対象物が異なる生産工場において電力を消費する第3グループを更に含み、
前記モデル生成部は、前記第3グループに対して、少なくとも生産状況を含む変動因子データと、電力需要データとの関係を表す第3需要予測モデルを生成する、請求項6又は7記載の電力需要予測システム。
【請求項9】
前記生産状況を含む変動因子データは、前記生産状況をエンコード処理により数値化したデータを含む、請求項6~8のいずれか一項記載の電力需要予測システム。
【請求項10】
前記エンコード処理は、電力需要の大きさを目的変数とするターゲットエンコード処理を含む、請求項9記載の電力需要予測システム。
【請求項11】
前記複数の顧客グループごとに、前記電力需要の予測データと前記電力需要の実績データとの誤差を評価する誤差評価部と、
前記複数の顧客グループごとに、前記誤差の評価結果に基づいて、電力需要の新たな予測データを修正する予測修正部と、を更に備える、請求項1~10のいずれか一項記載の電力需要予測システム。
【請求項12】
前記複数の顧客グループごとに、前記誤差の評価結果を可視化した評価画像をモニタに表示させる評価画像表示部を更に備える、請求項11記載の電力需要予測システム。
【請求項13】
前記予測修正部は、前記複数の顧客グループごとに、前記評価画像の表示後のユーザ入力に基づいて前記電力需要の新たな予測データを修正する、請求項12記載の電力需要予測システム。
【請求項14】
前記評価画像表示部は、前記複数の顧客グループごとに、前記誤差の評価結果の経時変化を可視化した前記評価画像を前記モニタに表示させる、請求項13記載の電力需要予測システム。
【請求項15】
前記評価画像表示部は、前記誤差の評価結果を表す色彩を、前記複数の顧客グループと、評価時とに応じてマッピングした前記評価画像を前記モニタに表示させる、請求項14記載の電力需要予測システム。
【請求項16】
前記複数の顧客グループごとに、前記電力需要の予測データと前記電力需要の実績データとの誤差を評価する誤差評価部と、
前記複数の顧客グループごとに、前記誤差の評価結果に基づいて前記需要予測モデルを修正するモデル修正部と、を更に備える請求項1~10のいずれか一項記載の電力需要予測システム。
【請求項17】
前記複数の顧客グループごとに、前記誤差の評価結果を可視化した評価画像をモニタに表示させる評価画像表示部を更に備える、請求項16記載の電力需要予測システム。
【請求項18】
前記モデル修正部は、前記複数の顧客グループごとに、前記評価画像の表示後のユーザ入力に基づいて前記需要予測モデルを修正する、請求項17記載の電力需要予測システム。
【請求項19】
前記評価画像表示部は、前記複数の顧客グループごとに、前記誤差の評価結果と、前記需要予測モデルの修正基準との関係を可視化した前記評価画像を前記モニタに表示させる、請求項18記載の電力需要予測システム。
【請求項20】
前記評価画像表示部は、前記複数の顧客グループごとに、前記誤差の評価結果を表す棒グラフと、前記需要予測モデルの修正基準を表す修正基準ラインとを含む前記評価画像を前記モニタに表示させる、請求項19記載の電力需要予測システム。
【請求項21】
売電事業者の複数の顧客グループごとに、電力需要の変動因子の実績データと、電力需要の実績データとを含む教師データをデータベースに蓄積させることと、
前記複数の顧客グループごとに、前記データベースに蓄積された複数の教師データに基づいて、変動因子データと電力需要データとの関係を表す需要予測モデルを生成することと、
前記複数の顧客グループごとに前記変動因子の予測データを取得することと、
前記複数の顧客グループごとに、前記変動因子の予測データと、前記需要予測モデルとに基づいて電力需要の予測データを算出することと、
前記複数の顧客グループごとに算出された前記電力需要の予測データに基づいて、前記売電事業者に対する総電力需要の予測データを算出することと、を含み、
前記需要予測モデルを生成することは、
1の顧客グループに対して、1の変動因子を含む変動因子データと電力需要データとの関係を表す電力需要予測モデルを生成することと、
他の顧客グループに対して、前記1の顧客グループに対する変動因子データには含まれない他の変動因子を含む変動因子データと電力需要データとの関係を表す電力需要予測モデルを生成することと、
を含む、電力需要予測方法。
【請求項22】
売電事業者の複数の顧客グループごとに、電力需要の変動因子の実績データと、電力需要の実績データとを含む教師データをデータベースに蓄積させることと、
前記複数の顧客グループごとに、前記データベースに蓄積された複数の教師データに基づいて、変動因子データと電力需要データとの関係を表す需要予測モデルを生成することと、
前記複数の顧客グループごとに前記変動因子の予測データを取得することと、
前記複数の顧客グループごとに、前記変動因子の予測データと、前記需要予測モデルとに基づいて電力需要の予測データを算出することと、
前記複数の顧客グループごとに算出された前記電力需要の予測データに基づいて、前記売電事業者に対する総電力需要の予測データを算出することと、を含み、
前記複数の顧客グループは、前記電力需要に影響を及ぼす前記変動因子の違いに応じてグループ分けされ、
前記変動因子データと前記電力需要データとの関係が類似する可能性の高い顧客同士が、同一の顧客グループに属する、電力需要予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力需要予測システム及び電力需要予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電力需要量を変動させる要因となり得る変動要因の実績である変動要因実績データに、電力需要の実績である電力実績データを対応付けた学習データを用いて機械学習を実行することにより、電力需要を予測するモデルを生成するモデル作成部と、モデルを用いて予測対象日における電力需要を予測する予測部と、を備える電力需要予測システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、電力需要の予測精度向上に有効なシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る電力需要予測システムは、売電事業者の複数の顧客グループごとに、電力需要の変動因子の実績データと、電力需要の実績データとを含む教師データをデータベースに蓄積させるデータ蓄積部と、複数の顧客グループごとに、データベースに蓄積された複数の教師データに基づいて、変動因子データと電力需要データとの関係を表す需要予測モデルを生成するモデル生成部と、複数の顧客グループごとに変動因子の予測データを取得する入力情報取得部と、複数の顧客グループごとに、変動因子の予測データと、需要予測モデルとに基づいて電力需要の予測データを算出する個別需要予測部と、複数の顧客グループごとに算出された電力需要の予測データに基づいて、売電事業者に対する総電力需要の予測データを算出する総需要予測部と、を備え、モデル生成部は、1の顧客グループに対して、1の変動因子を含む変動因子データと電力需要データとの関係を表す電力需要予測モデルを生成し、他の顧客グループに対して、1の顧客グループに対する変動因子データには含まれない他の変動因子を含む変動因子データと電力需要データとの関係を表す電力需要予測モデルを生成する。
【0006】
本開示の他の一側面に係る電力需要予測システムは、売電事業者の複数の顧客グループごとに、電力需要の変動因子の実績データと、電力需要の実績データとを含む教師データをデータベースに蓄積させるデータ蓄積部と、複数の顧客グループごとに、データベースに蓄積された複数の教師データに基づいて、変動因子データと電力需要データとの関係を表す需要予測モデルを生成するモデル生成部と、複数の顧客グループごとに変動因子の予測データを取得する入力情報取得部と、複数の顧客グループごとに、変動因子の予測データと、需要予測モデルとに基づいて電力需要の予測データを算出する個別需要予測部と、複数の顧客グループごとに算出された電力需要の予測データに基づいて、売電事業者に対する総電力需要の予測データを算出する総需要予測部と、を備え、複数の顧客グループは、電力需要に影響を及ぼす変動因子の違いに応じてグループ分けされ、変動因子データと電力需要データとの関係が類似する可能性の高い顧客同士が、同一の顧客グループに属する。
【0007】
本開示の更に他の側面に係る電力需要予測方法は、売電事業者の複数の顧客グループごとに、電力需要の変動因子の実績データと、電力需要の実績データとを含む教師データをデータベースに蓄積させることと、複数の顧客グループごとに、データベースに蓄積された複数の教師データに基づいて、変動因子データと電力需要データとの関係を表す需要予測モデルを生成することと、複数の顧客グループごとに変動因子の予測データを取得することと、複数の顧客グループごとに、変動因子の予測データと、需要予測モデルとに基づいて電力需要の予測データを算出することと、複数の顧客グループごとに算出された電力需要の予測データに基づいて、売電事業者に対する総電力需要の予測データを算出することと、を含み、。需要予測モデルを生成することは、1の顧客グループに対して、1の変動因子を含む変動因子データと電力需要データとの関係を表す電力需要予測モデルを生成することと、他の顧客グループに対して、1の顧客グループに対する変動因子データには含まれない他の変動因子を含む変動因子データと電力需要データとの関係を表す電力需要予測モデルを生成することと、を含む。
【0008】
本開示の更に他の側面に係る電力需要予測方法は、売電事業者の複数の顧客グループごとに、電力需要の変動因子の実績データと、電力需要の実績データとを含む教師データをデータベースに蓄積させることと、複数の顧客グループごとに、データベースに蓄積された複数の教師データに基づいて、変動因子データと電力需要データとの関係を表す需要予測モデルを生成することと、複数の顧客グループごとに変動因子の予測データを取得することと、複数の顧客グループごとに、変動因子の予測データと、需要予測モデルとに基づいて電力需要の予測データを算出することと、複数の顧客グループごとに算出された電力需要の予測データに基づいて、売電事業者に対する総電力需要の予測データを算出することと、を含み、複数の顧客グループは、電力需要に影響を及ぼす変動因子の違いに応じてグループ分けされ、変動因子データと電力需要データとの関係が類似する可能性の高い顧客同士が、同一の顧客グループに属する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電力需要の予測精度向上に有効なシステム及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】電力需給調整システムの構成を例示する模式図である。
【
図2】電力需要予測システムの構成を例示するブロック図である。
【
図3】個別需要の予測結果を例示するテーブルである。
【
図4】電力需要予測システムの変形例を示すブロック図である。
【
図7】需要予測モデルの生成手順を例示するフローチャートである。
【
図8】需要予測手順を例示するフローチャートである。
【
図9】需要予測モデルの修正手順を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
〔電力需給調整システム〕
(全体構成)
図1に示す電力需給調整システム1は、小売電気事業者における電力の需要量と供給量との関係を調整するシステムである。小売電気事業とは、自前の発電設備により生成された電力、卸電力取引所等から仕入れた電力等を顧客(需要家)に供給する事業である。小売電気事業者は、電力会社の電力系統を経て顧客に電力を供給する。顧客の具体例としては、主としてオフィスにおいて電力を消費する顧客、主として生産工場において電力を消費する顧客等が挙げられる。顧客が、電力を消費する設備に特に制限は無いので、オフィス、生産工場には限定されない。例えば、顧客が主として電力を消費する設備は、廃棄物処理設備であってもよく、店舗であってもよい。
【0013】
電力系統の安定性を確保するために、小売電気事業者には、「同時同量」の義務が課される。「同時同量」とは、30分単位で電力の需要量と供給量との乖離を抑制することである。「同時同量」制度の下で,小売電気事業者は事前に電力広域的運営推進機関に30分単位の翌日需給計画を提出する必要がある。小売電気事業者は、提出した翌日需給計画と,需給実績との差異(インバランス)に比例した金額を事後に精算する。電力需給調整システム1は、「同時同量」制度における小売電気事業を支援するシステムである。
【0014】
図1に示すように、電力需給調整システム1は、電力需要予測システム10と、データ収集システム20と、管理者端末30とを有する。電力需要予測システム10と、データ収集システム20と、管理者端末30とは、インターネット等の通信ネットワークNWを介して互いに接続されている。
【0015】
電力需要予測システム10は、小売電気事業者(売電事業者)に対する電力需要を予測するシステムである。例えば電力需要予測システム10は、小売電気事業者に対する翌日の電力需要量を30分単位で予測する。なお、「30分単位」はあくまで一例であり、いかなる時間単位で電力需要量を予測するかに特に制限はない。例えば電力需要予測システム10は、1時間単位、又は15分単位等で電力需要量を予測してもよい。
【0016】
データ収集システム20は、通信ネットワークNWを介して、小売電気事業者の複数の顧客40の電力量計41に接続されており、各電力量計41から電力需要の実績データ(例えば消費した電力の実績データ)を取得する。データ収集システム20は、電力系統を保有する電力会社のサーバから電力需要の実績データを取得してもよい。
【0017】
また、データ収集システム20は、複数の顧客40における変動因子の実績データも取得する。変動因子は、電力需要を変動させ得るあらゆる因子を含む。変動因子の具体例としては、天候、曜日、営業日であるか休日であるかが挙げられる。顧客40が生産工場である場合、生産状況も変動因子となり得る。生産状況は、所定期間における生産対象物の種類・数等を含む。一例として、データ収集システム20は、生産状況を需要家から定期送信により取得する。
【0018】
更に、データ収集システム20は、小売電気事業者の自前の発電設備における発電量の実績データも取得する。例えばデータ収集システム20は、通信ネットワークNWを介して、小売電気事業者の発電設備50の電力量計51に接続されており、電力量計51から発電量の実績データを取得する。データ収集システム20は、電力系統を保有する電力会社のサーバから電力需要の実績データを取得してもよい。
【0019】
管理者端末30は、小売電気事業者の管理者が利用する端末であり、モニタ(ディスプレイ)および入力デバイスを有する。モニタの具体例としては、液晶モニタ又は有機ELモニタ等が挙げられる。入力デバイスの具体例としては、キーボード又はマウス等が挙げられる。入力デバイスは、所謂タッチパネルとしてモニタと一体化されていてもよい。
【0020】
(電力需要予測システム)
以下、電力需要予測システム10の構成を詳細に例示する。電力需要予測システム10は、小売電気事業者の複数の顧客グループごとに、電力需要の変動因子の実績データと、電力需要の実績データとを含む教師データをデータベースに蓄積させることと、複数の顧客グループごとに、データベースに蓄積された複数の教師データに基づいて、変動因子データと電力需要データとの関係を表す需要予測モデルを生成することと、複数の顧客グループごとに変動因子の予測データを取得することと、複数の顧客グループごとに、変動因子の予測データと、需要予測モデルとに基づいて電力需要の予測データを算出することと、複数の顧客グループごとに算出された電力需要の予測データに基づいて、売電事業者に対する総電力需要の予測データを算出することと、を実行するように構成されている。
【0021】
変動因子は、顧客に応じて大きく異なる場合がある。例えば、オフィスにおいて電力を消費する顧客では、天候等が大きな因子となるのに対し、生産工場において電力を消費する顧客では、生産状況が大きな因子となる傾向がある。これに対し、本電力需要予測システムは、複数の顧客グループごとに電力需要予測モデルを生成し、複数の顧客グループごとに電力需要予測モデルに基づいて電力需要の予測データを算出し、複数の顧客グループごとに算出した電力需要の予測データに基づいて売電事業者に対する総電力需要の予測データを算出する。このため、電力需要に影響を及ぼす因子の違いに応じて顧客をグループ分けし、グループごとの電力需要を高い精度で予測し、予測結果を集計して総電力需要を高い精度で予測することができる。従って、電力需要の予測精度向上に有効である。
【0022】
図1に例示するように、電力需要予測システム10は、回路190を有する。回路190は、プロセッサ191と、メモリ192と、ストレージ193と、通信ポート194とを有する。ストレージ193は、コンピュータによって読み取り可能な1以上の不揮発型の記憶媒体(例えばハードディスク又はフラッシュメモリ)を含む。ストレージ193は、小売電気事業者の複数の顧客グループごとに、電力需要の変動因子の実績データと、電力需要の実績データとを含む教師データをデータベースに蓄積させることと、複数の顧客グループごとに、データベースに蓄積された複数の教師データに基づいて、変動因子データと電力需要データとの関係を表す需要予測モデルを生成することと、複数の顧客グループごとに変動因子の予測データを取得することと、複数の顧客グループごとに、変動因子の予測データと、需要予測モデルとに基づいて電力需要の予測データを算出することと、複数の顧客グループごとに算出された電力需要の予測データに基づいて、売電事業者に対する総電力需要の予測データを算出することと、を電力需要予測システム10に実行させるためのプログラムを記憶する。ストレージ193は、上記プログラムを記憶するための領域に加え、上記データベースを記憶するための領域を含んでいてもよい。
【0023】
メモリ192は、1以上の揮発型の記憶媒体(例えばランダムアクセスメモリ)を含む。メモリ192は、ストレージ193からロードされたプログラム及びプロセッサ191による演算結果などを一時的に記憶する。プロセッサ191は、1以上の演算装置を含む。プロセッサ191は、メモリ192と協働して上記プログラムを実行する。通信ポート194は、通信ネットワークNWを介してデータ収集システム20及び管理者端末30と接続されており、プロセッサ191からの指令に応じてデータ収集システム20及び管理者端末30との間で情報通信を行う。なお、ここでの接続は、情報通信が可能となっていることを意味しており、必ずしも有線による物理的な接続を意味するわけではない。以下においても同様である。すなわち通信ネットワークNWの少なくとも一部は無線の通信経路であってもよい。
【0024】
図1においては、電力需要予測システム10が、一セットのコンピュータにより構成される例を示したが、電力需要予測システム10は、通信ネットワークNWを介して互いに接続された複数セットのコンピュータにより構成されていてもよい。
【0025】
図2は、プロセッサ191がメモリ192と協働して上記プログラムを実行することにより実現される各種機能を、ブロック状の構成要素(以下、「機能ブロック」という。)として表したブロック図である。
図2の例において、電力需要予測システム10は、機能ブロックとして、実績情報取得部111と、エンコード処理部113と、データ蓄積部114と、学習用データベース115と、モデル生成部116と、モデル保持部117と、入力情報取得部112と、個別需要予測部121と、総需要予測部122と、予測結果出力部123とを有する。
【0026】
実績情報取得部111は、複数の顧客グループごとに、電力需要の変動因子の実績データと、これに対応する電力需要の実績データとをデータ収集システム20から取得する。電力需要の実績データが変動因子の実績データに対応することは、電力需要の実績データの対象期間と、変動因子の実績データの対象期間とが少なくとも部分的に重複していることを意味する。複数の顧客グループは、小売電気事業者の複数の顧客を分類するグループである。複数の顧客は、変動因子データと電力需要データとの関係が類似する可能性の高い顧客同士が、同一の顧客グループに属するようにグループ分けされている。複数の顧客グループのそれぞれは、小売電気事業者の1以上の顧客を含む。実績情報取得部111は、複数の顧客グループのいずれに対しても、24時間を30分ごとに分割した48コマの時間枠ごとに消費電力量の実績値を示す実績データを取得する。
【0027】
実績情報取得部111は、複数の顧客グループにおける2以上の顧客グループに対して、異なる変動因子の実績データを取得してもよい。例えば複数の顧客グループは、オフィスにおいて電力を消費する第1グループと、生産工場において電力を消費する第2グループと、を含んでもよい。
【0028】
第1グループにおいては、少なくとも天候を含む変動因子データと、電力需要データとの関係が強くなる傾向がある。そこで、実績情報取得部111は、第1グループについて、少なくとも天候を含む変動因子の実績データを取得してもよい。一例として、実績情報取得部111は、第1グループについて、天候、曜日、及び営業日であるか休日であるかを含む変動因子の実績データを取得する。
【0029】
第2グループにおいては、少なくとも生産状況を含む変動因子データと、電力需要データとの関係が強くなる傾向がある。そこで、実績情報取得部111は、第2グループについて、少なくとも生産状況を含む変動因子の実績データを取得してもよい。一例として、実績情報取得部111は、第2グループについて、天候及び生産状況を含む変動因子の実績データを取得する。生産状況は、例えば生産対象物と生産数量とを表す情報を含む。第2グループにおいては、天候と電力需要データとの関係が弱い場合もある。この場合、第2グループの変動因子は天候を含まなくてもよい。
【0030】
オフィスにおいて電力を消費する顧客同士では、生産工場において電力を消費する顧客同士に比較して、変動因子データと電力需要データとの関係が類似し易い傾向がある。そこで、第1グループに含まれる顧客の数が、第2グループに含まれる顧客の数より多くてもよい。第2グループに含まれる顧客の数は1であってもよい。
【0031】
生産工場において電力を消費する顧客同士では、生産対象物の違いによって、変動因子データと電力需要データとの関係が大きく異なる傾向がある。そこで、複数の顧客グループは、第2グループが電力を消費する生産工場とは生産対象物が異なる生産工場において電力を消費する第3グループを更に含んでもよい。第3グループに含まれる顧客の数は1であってもよい。生産対象物が互いに異なることは、生産対象物同士が同種で互いに仕様が異なることと、生産対象物の種類が互いに異なることとを含む。一例として、実績情報取得部111は、第3グループについても、天候及び生産状況を含む変動因子の実績データを取得する。生産状況は、例えば生産対象物と生産数量とを表す情報を含む。第3グループにおいては、天候と電力需要データとの関係が弱い場合もある。この場合、第3グループの変動因子は天候を含まなくてもよい。
【0032】
エンコード処理部113は、変動因子の実績データがカテゴリ変数を含む場合に、当該カテゴリ変数をエンコード処理により量的変数に変換する。例えば、上記生産状況の実績データは、生産状況を表すカテゴリ変数を含み得る。生産状況を表すカテゴリ変数の具体例としては、生産対象物の種別ごとの生産数量が定められた生産パターンの名称が挙げられる。この場合、エンコード処理部113は、生産状況をエンコード処理により数値化する。例えばエンコード処理部113は、生産状況を表すカテゴリ変数をエンコード処理により量的変数に変更する。
【0033】
この際のエンコード処理は、電力需要の大きさを目的変数とするターゲットエンコード処理を含んでいてもよい。例えば、エンコード処理部113は、予め準備された変換テーブルに基づいて、生産状況を表すカテゴリ変数を、電力需要の大きさを表す量的変数に変更する。変換テーブルは、例えば、複数のカテゴリ変数ごとに、電力需要の大きさを表す数値を定める。以下、電力需要の大きさを表す数値を「電力需要値」という。例えばエンコード処理部113は、生産状況を表すカテゴリ変数に対応付けられた電力需要値を、上記量的変数の値として変換テーブルから抽出する。
【0034】
エンコード処理部113が実行するエンコード処理は、必ずしもターゲットエンコード処理に限られない。エンコード処理部113は、ラベルエンコーディングによりカテゴリ変数を量的変数に変換してもよく、One-hotエンコーディングによりカテゴリ変数を量的変数に変換してもよい。
【0035】
データ蓄積部114は、複数の顧客グループごとに、電力需要の変動因子の実績データと、電力需要の実績データとを含む教師データを学習用データベース115(データベース)に蓄積させる。例えばデータ蓄積部114は、実績情報取得部111がデータ収集システム20から取得した電力需要の変動因子の実績データと、これに対応する電力需要の実績データとを、複数の顧客グループごとに学習用データベース115に蓄積させる。データ蓄積部114は、電力需要の変動因子の実績データがカテゴリ変数を含む場合に、当該カテゴリ変数がエンコード処理部113により量的変数に変換された後の変動因子の実績データを学習用データベース115に蓄積させてもよい。
【0036】
モデル生成部116は、複数の顧客グループごとに、学習用データベース115に蓄積された複数の教師データに基づいて、変動因子データと電力需要データとの関係を表す需要予測モデルを生成する。
【0037】
モデル生成部116は、少なくともランダムフォレスト法により需要予測モデルを生成してもよい。ランダムフォレスト法において、モデル生成部116は、教師データが含む変動因子の実績データに基づいて複数の決定木をランダムに生成し、教師データに基づいて複数の決定木のそれぞれを構築する。例えばモデル生成部116は、構築対象の決定木を次のように構築する。すなわちモデル生成部116は、教師データをランダムにサンプリングし、サンプリングしたデータを決定木の最上位のノードに与え、当該ノードの分岐関数を求める。次に、モデル生成部116は、分岐関数に基づいて、教師データを二系統に分割し、ノードを親とする二つのノードに与え、二つのノードの分岐関数を求める。以後、予め設定された終了条件を満たすまで、モデル生成部116は以上の処理を下位のノードに継続し、決定木の構築を完了する。
【0038】
モデル生成部116は、ランダムフォレスト法と、1以上の他の学習手法とを組み合わせたアンサンブル学習により需要予測モデルを生成してもよい。1以上の他の学習手法は、少なくとも再帰型ニューラルネットワーク法を含んでもよい。再帰型ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network)は、中間層において過去で保存された情報をループさせる再帰的構造を有するニューラルネットワークである。再帰的構造により、ニューラルネットワークに記憶力が付与されるので、時系列データに対する予測精度が向上する。
【0039】
モデル生成部116は、上記第1グループに対して、少なくとも天候を含む変動因子データと、電力需要データとの関係を表す第1需要予測モデルを生成し、上記第2グループに対して、少なくとも生産状況を含む変動因子データと、電力需要データとの関係を表す第2需要予測モデルを生成し、上記第3グループに対して、少なくとも生産状況を含む変動因子データと、電力需要データとの関係を表す第3需要予測モデルを生成してもよい。
【0040】
一例として、モデル生成部116は、天候、曜日、及び営業日であるか休日であるかを含む変動因子データと、電力需要データとの関係を表す第1需要予測モデルを生成する。モデル生成部116は、天候及び生産状況を含む変動因子データと、電力需要データとの関係を表す第2需要予測モデル及び第3需要予測モデルを生成する。
【0041】
上述のように、データ蓄積部114は、カテゴリ変数をエンコード処理部113が量的変数に変換した結果を変動因子の実績データに含めてもよい。この場合、上記生産状況を含む変動因子データは、生産状況をエンコード処理により数値化したデータを含んでもよい。
【0042】
モデル生成部116は、複数の顧客グループごとに生成した需要予測モデル118をモデル保持部117に記憶させる。
【0043】
入力情報取得部112は、複数の顧客グループごとに電力需要の変動因子の予測データを取得する。例えば入力情報取得部112は、複数の顧客グループごとに、電力需要の変動因子の予測データをデータ収集システム20から取得する。例えば入力情報取得部112は、上記変動因子の翌日の予測データをデータ収集システム20から取得する。
【0044】
入力情報取得部112が複数の顧客グループごとに取得する変動因子の予測データの属性は、実績情報取得部111が複数の顧客グループごとに取得する変動因子の実績データの属性に等しい。例えば入力情報取得部112は、第1グループについて、天候、曜日、及び営業日であるか休日であるかを含む変動因子の予測データを取得し、第2グループ及び第3グループについて、天候及び生産状況を含む変動因子の予測データを取得する。生産状況の予測データは、生産計画、又は工場の稼働計画に相当する。エンコード処理部113は、変動因子の予測データがカテゴリ変数を含む場合も、当該カテゴリ変数をエンコード処理により量的変数に変換する。
【0045】
個別需要予測部121は、複数の顧客グループごとに、入力情報取得部112が取得した変動因子の予測データと、モデル保持部117が記憶する需要予測モデル118とに基づいて電力需要の予測データを算出する。個別需要予測部121は、電力需要の変動因子の予測データがカテゴリ変数を含む場合に、当該カテゴリ変数がエンコード処理部113により量的変数に変換された後の変動因子の予測データと、モデル保持部117が記憶する需要予測モデル118とに基づいて電力需要の予測データを算出してもよい。
【0046】
個別需要予測部121が複数の顧客グループごとに生成する電力需要の予測データの形式は、実績情報取得部111が複数の顧客グループごとに取得する電力需要の実績データの形式と同じであってもよい。例えば個別需要予測部121は、
図3に例示するように、24時間を30分ごとに分割した48コマの時間枠ごとに消費電力量の予測値を示す予測データを、複数の顧客グループごとに算出する。図示においては、横方向に沿った一行が、一つの顧客グループに対する電力需要の予測データである。
【0047】
総需要予測部122は、複数の顧客グループごとに算出された電力需要の予測データに基づいて、小売電気事業者に対する総電力需要の予測データを算出する。例えば総需要予測部122は、上述の48コマの時間枠ごとに、複数の顧客グループごとの消費電力量の予測値を合計して、48コマの時間枠ごとに総消費電力量を示す総電力需要の予測データを算出する。
【0048】
予測結果出力部123は、総需要予測部122が算出した総電力需要の予測データを出力する。予測データを出力することは、予測データを表示させることを含む。例えば予測結果出力部123は、予測データを管理者端末30のモニタに表示させる。
【0049】
電力需要予測システム10は、複数の顧客グループごとに、電力需要の予測データと電力需要の実績データとの誤差を評価することを更に実行するように構成されていてもよい。この場合、電力需要予測システム10は、複数の顧客グループごとに、上記誤差の評価結果に基づいて、電力需要の新たな予測データを修正することを更に実行するように構成されていてもよい。
【0050】
電力需要予測システム10は、複数の顧客グループごとに、上記誤差の評価結果に基づいて、需要予測モデルを修正することを更に実行するように構成されていてもよい。例えば電力需要予測システム10は、
図4に示すように、機能ブロックとして、誤差評価部131と、評価画像表示部132と、予測修正部133と、モデル修正部134とを更に有する。
【0051】
誤差評価部131は、複数の顧客グループごとに、電力需要の予測データと電力需要の実績データとの誤差を評価する。例えば誤差評価部131は、単位時間(例えば30分)ごとに予測値と実績値との差分を算出し、1日分の差分の算出結果を合算する。合算すべき期間に特に制限はなく、1日より短くても長くてもよい。例えば誤差評価部131は、上記48コマの時間枠ごとに、消費電力量の予想値と実績値との差分を算出し、48コマの時間枠ごとの差分の算出結果を合算し、合算結果を誤差の評価値として算出する。この算出方式によれば、正の差分と、負の差分とが互いに打ち消し合う。このため、時間枠ごとに、差分の正負がランダムに変わるような場合、評価値の絶対値は小さくなる。一方、時間枠間で、差分の正負が一致する傾向がある場合、評価値の絶対値は大きくなりやすい。需要予測モデル自体の予測精度が低下する場合、時間枠間で、差分の正負は一致し易くなると考えられる。従って、上記算出方式によれば、需要予測モデル自体の予測精度の低下を表し易い評価値を算出することができる。
【0052】
評価画像表示部132は、複数の顧客グループごとに、誤差の評価結果を可視化した評価画像をモニタに表示させる。例えば評価画像表示部132は、評価画像を管理者端末30のモニタに表示させる。例えば評価画像表示部132は、複数の顧客グループごとに、誤差の評価結果の経時変化を可視化した第1評価画像をモニタに表示させてもよい。
【0053】
一例として、評価画像表示部132は、誤差の評価結果を表す色彩を、複数の顧客グループと、評価時とに応じてマッピングした第1評価画像をモニタに表示させてもよい。例えば評価画像表示部132は、
図5に示すように、上述した評価値を色の3属性(色相、明度、彩度)の少なくともいずれかで示すセル141を、複数の顧客グループと、評価時とに応じてマッピングした第1評価画像140をモニタに表示させる。各セル141は、ハッチング又はドット等によって誤差の評価結果を表してもよい。なお、ハッチング又はドットのパターン形状、太さ、大きさ、又は粗密等によっても、セル141の平均的な色彩は変わり得る。このため、ハッチング又はドット等によって誤差の評価結果を表すことは、色彩によって誤差の評価結果を表すことの一例となり得る。
【0054】
図5の例において、横方向に並ぶ一列は、一つの顧客グループに対する評価値を日ごとに示す。この一列に含まれる複数のセル141は、右に向かうほど、評価の日付が新しくなるように配列されている。この配列によって、評価値の日ごとの変化(経時変化の一例)が可視化される。縦方向に並ぶ一列は、一日の評価値を複数の顧客グループごとに示す。
【0055】
また、
図5の例においては、最新の日付けを含む一週間の評価値を含む最新データ表示エリア143と、それ以前の評価値を含む過去データ表示エリア142とに区画されている。最新日付けの列において、評価値がまだ算出されていない箇所にはセル141が配置されていない。
【0056】
評価画像表示部132は、複数の顧客グループごとに、誤差の評価結果と、需要予測モデルの修正基準との関係を可視化した第2評価画像をモニタに表示させてもよい。評価画像表示部132は、複数の顧客グループごとに、誤差の評価結果を表す棒グラフと、需要予測モデルの修正基準を表す修正基準ラインとを含む評価画像をモニタに表示させてもよい。
【0057】
例えば評価画像表示部132は、
図6に示すように、複数の顧客グループごとに、上述の評価値の絶対値を表す棒グラフ151と、需要予測モデルの修正基準を表す修正基準ライン152とを含む第2評価画像150をモニタに表示させてもよい。
図6によれば、棒グラフ151が修正基準ライン152に達しているか否かによって、需要予測モデルの修正要否が複数の顧客グループごとに明示される。一例として、評価画像表示部132は、第1評価画像140及び第2評価画像150の両方を管理者端末30のモニタに表示させる。評価画像表示部132は、修正基準と、誤差の評価結果との関係に基づき、各棒グラフ151の色彩を変化させてもよい。例えば、修正基準(修正基準ライン152)を超えた棒グラフは第1の色彩(例えば赤色)で示し、修正基準を超えそうな(修正基準から所定範囲以内にある)棒グラフは第2の色彩(例えばオレンジ色)で示し、修正基準を所定値以上下回る棒グラフは第3の色彩(例えば青色)で示してもよい。また、
図6に示すように、各棒グラフの色を、修正基準との関係に基づいて部位ごとに変えてもよい。例えば棒グラフのうち修正基準を超えた部分は第1の色彩で示し、修正基準を超えそうな部分は第2の色彩で示し、修正基準を所定レベル以上下回る部分は第3の色彩で示してもよい。色彩間にグラデーションを付与してもよい。
【0058】
予測修正部133は、複数の顧客グループごとに、誤差の評価結果に基づいて、電力需要の新たな予測データを修正する。予測修正部133は、複数の顧客グループごとに、第1評価画像140の表示後のユーザ入力に基づいて電力需要の新たな予測データを修正してもよい。例えば予測修正部133は、第1評価画像140を管理者端末30のモニタに表示させた後、管理者端末30の入力デバイスによる入力に基づいて電力需要の新たな予測データを修正してもよい。予測修正部133は、誤差の評価結果に基づいて、電力需要の新たな予測データを自動修正してもよい。自動修正の具体例としては、誤差の評価結果を、電力需要の新たな予測データに対して加算又は減算すること等が挙げられる。
【0059】
第1評価画像140によれば、評価値が正になる傾向、又は負になる傾向が複数日に亘って継続しているか否かが示される。評価値が正になる傾向又は負になる傾向が複数日に亘って継続している場合、新たな予測データにも同じ傾向が表れる可能性が高い。そこで、評価値が正になる傾向又は負になる傾向を打ち消すように、新たな予測データを修正することによって、予測データの精度を向上させることが可能となる。
【0060】
モデル修正部134は、複数の顧客グループごとに、誤差の評価結果に基づいて需要予測モデルを修正する。モデル修正部134は、複数の顧客グループごとに、第2評価画像150の表示後のユーザ入力に基づいて需要予測モデルを修正してもよい。例えばモデル修正部134は、第2評価画像150を管理者端末30のモニタに表示させた後、管理者端末30の入力デバイスによる入力に基づいて需要予測モデルを修正してもよい。
【0061】
一例として、モデル修正部134は、管理者端末30の入力デバイスによって需要予測モデルの修正指示が入力された場合、モデル生成部116に、当該需要予測モデルの再生成を要求する。モデル生成部116は、モデル修正部134から需要予測モデルの再生成が要求された場合に、その時点で学習用データベース115に蓄積されている教師データに基づいて、当該需要予測モデルを再生成し、再生成した需要予測モデルをモデル保持部117に記憶させる。モデル修正部134は、誤差の評価結果に基づいて、需要予測モデルを自動修正してもよい。例えばモデル修正部134は、誤差の評価結果に基づいて、モデル生成部116に需要予測モデルの再生成を自動で要求してもよい。
【0062】
〔電力需要予測手順〕
電力需要予測方法の一例として、電力需要予測システム10が実行する電力需要予測手順を例示する。この手順は、小売電気事業者の複数の顧客グループごとに、電力需要の変動因子の実績データと、電力需要の実績データとを含む教師データを学習用データベース115に蓄積させることと、複数の顧客グループごとに、学習用データベース115に蓄積された複数の教師データに基づいて、変動因子データと電力需要データとの関係を表す需要予測モデル118を生成することと、複数の顧客グループごとに変動因子の予測データを取得することと、複数の顧客グループごとに、変動因子の予測データと、需要予測モデル118とに基づいて電力需要の予測データを算出することと、複数の顧客グループごとに算出された電力需要の予測データに基づいて、小売電気事業者に対する総電力需要の予測データを算出することと、を含む。以下、この手順を、需要予測モデルの生成手順と、電力需要の予測データの算出手順と、需要予測モデルの再生成手順とに分けて詳細に例示する。
【0063】
(需要予測モデルの生成手順)
図7に示すように、電力需要予測システム10は、まずステップS01,S02を実行する。ステップS01では、実績情報取得部111が、複数の顧客グループごとに、電力需要の変動因子の実績データと、これに対応する電力需要の実績データとをデータ収集システム20から取得する。ステップS02では、実績情報取得部111が取得した変動因子の実績データがカテゴリ変数を含むか否かをエンコード処理部113が確認する。
【0064】
ステップS02において変動因子の実績データがカテゴリ変数を含むと判定した場合、電力需要予測システム10はステップS03を実行する。ステップS03では、変動因子の実績データが含むカテゴリ変数を、エンコード処理部113がエンコード処理により量的変数に変換する。
【0065】
次に、電力需要予測システム10はステップS04,S05を実行する。ステップS02において変動因子の実績データがカテゴリ変数を含まないと判定した場合、電力需要予測システム10は、ステップS03を実行することなくステップS04,S05を実行する。ステップS04では、データ蓄積部114が、実績情報取得部111がデータ収集システム20から取得した電力需要の変動因子の実績データと、これに対応する電力需要の実績データとを、複数の顧客グループごとに学習用データベース115に蓄積させる。データ蓄積部114は、電力需要の変動因子の実績データがカテゴリ変数を含む場合に、当該カテゴリ変数がエンコード処理部113により量的変数に変換された後の変動因子の実績データを学習用データベース115に蓄積させる。ステップS05では、管理者端末30の入力デバイス等により学習指令が入力されているか否かを、モデル生成部116が確認する。
【0066】
ステップS05において学習指令が入力されていないと判定した場合、電力需要予測システム10は処理をステップS01に戻す。以後、学習指令が入力されるまでは、所定の周期で、複数の顧客グループごとの教師データの蓄積が繰り返される。
【0067】
ステップS05において学習指令が入力されていると判定した場合、電力需要予測システム10はステップS06,S07,S08,S09を実行する。ステップS06では、モデル生成部116が、複数の顧客グループのいずれか一つを、需要予測モデルの生成対象として選択する。以後、ステップS07~S11の説明において、モデル生成部116が需要予測モデルの生成対象として選択している顧客グループを、「選択中のグループ」という。
【0068】
ステップS07では、モデル生成部116が、学習用データベース115に蓄積された教師データから、選択中のグループの教師データを抽出する。ステップS08では、モデル生成部116が、抽出した教師データに基づく機械学習により、選択中のグループに対応する需要予測モデル118を生成し、モデル保持部117に記憶させる。ステップS09では、全ての顧客グループに対して需要予測モデルの生成が完了したか否かを、モデル生成部116が確認する。
【0069】
ステップS09において需要予測モデルが未生成である顧客グループが残っていると判定した場合、電力需要予測システム10はステップS11を実行する。ステップS11では、モデル生成部116が、複数の顧客グループのうち、需要予測モデルが未生成である1以上の顧客グループから、次の顧客グループを選択する。その後、電力需要予測システム10は処理をステップS07に戻す。以後、全ての顧客グループに対して需要予測モデルの生成が完了するまで、顧客グループの選択と、選択中の顧客グループに対する需要予測モデルの生成とが繰り返される。ステップS09において全ての顧客グループに対して需要予測モデルの生成が完了したと判定した場合、需要予測モデルの生成手順が完了する。
【0070】
(電力需要の予測データの算出手順)
図8に示すように、電力需要予測システム10は、まずステップS21,S22,S23を実行する。ステップS21では、入力情報取得部112が、複数の顧客グループごとに電力需要の変動因子の予測データを取得する。ステップS22では、個別需要予測部121が、複数の顧客グループのいずれか一つを、予測データの算出対象として選択する。以後、個別需要予測部121が予測データの算出対象として選択している顧客グループを、「選択中のグループ」という。ステップS23では、個別需要予測部121が取得した変動因子の予測データのうち、選択中のグループに対する変動因子の予測データがカテゴリ変数を含むか否かを、エンコード処理部113が確認する。
【0071】
ステップS23において選択中のグループに対する変動因子の予測データがカテゴリ変数を含むと判定した場合、電力需要予測システム10はステップS24を実行する。ステップS24では、選択中のグループに対する変動因子の予測データが含むカテゴリ変数を、エンコード処理部113がエンコード処理により量的変数に変換する。
【0072】
次に、電力需要予測システム10は、ステップS25,S26を実行する。ステップS23において選択中のグループに対する変動因子の予測データがカテゴリ変数を含まないと判定した場合、電力需要予測システム10は、ステップS24を実行することなくステップS25を実行する。ステップS25では、個別需要予測部121が、選択中のグループに対する変動因子の予測データと、モデル保持部117が記憶する、選択中のグループの需要予測モデル118とに基づいて電力需要の予測データを算出する。個別需要予測部121は、変動因子の予測データがカテゴリ変数を含む場合に、当該カテゴリ変数がエンコード処理部113により量的変数に変換された後の変動因子の予測データと、需要予測モデル118とに基づいて電力需要の予測データを算出する。ステップS26では、全ての顧客グループに対して電力需要の予測データの算出が完了したか否かを、個別需要予測部121が確認する。
【0073】
ステップS26において電力需要の予測データが未算出である顧客グループが残っていると判定した場合、電力需要予測システム10はステップS27を実行する。ステップS27では、個別需要予測部121が、複数の顧客グループのうち、電力需要の予測データが未算出である1以上の顧客グループから、次の顧客グループを選択する。その後、電力需要予測システム10は処理をステップS23に戻す。以後、全ての顧客グループに対して電力需要の予測データの算出が完了するまで、顧客グループの選択と、選択中の顧客グループに対する電力需要の予測データの算出とが繰り返される。
【0074】
ステップS26において全ての顧客グループに対して電力需要の予測データの算出が完了したと判定した場合、電力需要予測システム10はステップS31を実行する。ステップS31では、予測修正部133が、管理者端末30の入力デバイスにより、複数の顧客グループのいずれかに対して電力需要の予測データの修正指令が入力されているか否かを確認する。
【0075】
ステップS31において複数の顧客グループのいずれかに対して電力需要の予測データの修正指令が入力されていると判定した場合、電力需要予測システム10はステップS32を実行する。ステップS32では、予測修正部133が、管理者端末30の入力デバイスによる修正指令入力に基づいて電力需要の新たな予測データを修正する。
【0076】
次に、電力需要予測システム10は、ステップS33を実行する。ステップS31においていずれの顧客グループに対しても電力需要の予測データの修正指令が入力されていないと判定した場合、電力需要予測システム10はステップS32を実行することなくステップS33を実行する。ステップS33では、管理者端末30の入力デバイスにより、総電力需要の予測データの出力指令が入力されているか否かを、総需要予測部122が確認する。
【0077】
ステップS33において総電力需要の予測データの出力指令が入力されていないと判定した場合、電力需要予測システム10は処理をステップS31に戻す。以後、総電力需要の予測データの出力指令が入力されるまでは、修正指示入力に応じて電力需要の新たな予測データを修正することが繰り返される。なお、後述のステップS37において、第1評価画像140が表示されるまでは、誤差の評価結果が可視化されないので、少なくとも最初のサイクルにおいて、ステップS32が実行されることはない。
【0078】
ステップS33において総電力需要の予測データの出力指令が入力されていると判定した場合、電力需要予測システム10はステップS34,S35,S36,S37を実行する。ステップS34では、総需要予測部122が、複数の顧客グループごとに算出された電力需要の予測データに基づいて、小売電気事業者に対する総電力需要の予測データを算出する。ステップS35では、総需要予測部122が算出した総電力需要の予測データを、予測結果出力部123がデータ収集システム20に出力する。
【0079】
ステップS36では、実績情報取得部111が、複数の顧客グループごとに、電力需要の変動因子の実績データと、これに対応する電力需要の実績データとをデータ収集システム20から取得する。ステップS37では、実績情報取得部111が取得した変動因子の実績データがカテゴリ変数を含むか否かを、エンコード処理部113が確認する。
【0080】
ステップS37において変動因子の実績データがカテゴリ変数を含むと判定した場合、電力需要予測システム10はステップS38を実行する。ステップS38では、変動因子の実績データが含むカテゴリ変数を、エンコード処理部113がエンコード処理により量的変数に変換する。
【0081】
次に、電力需要予測システム10は、ステップS39,S41,S42を実行する。ステップS37において変動因子の実績データがカテゴリ変数を含まないと判定した場合、電力需要予測システム10は、ステップS38を実行することなくステップS39,S41,S42を実行する。ステップS39では、データ蓄積部114が、実績情報取得部111がデータ収集システム20から取得した電力需要の変動因子の実績データと、これに対応する電力需要の実績データとを、複数の顧客グループごとに学習用データベース115に蓄積させる。データ蓄積部114は、電力需要の変動因子の実績データがカテゴリ変数を含む場合に、当該カテゴリ変数がエンコード処理部113により量的変数に変換された後の変動因子の実績データを学習用データベース115に蓄積させる。
【0082】
ステップS41では、誤差評価部131が、複数の顧客グループごとに、電力需要の予測データと電力需要の実績データとの誤差を評価する。ステップS42では、評価画像表示部132が、複数の顧客グループごとに、誤差の評価結果を可視化した評価画像をモニタに表示させる。例えば評価画像表示部132は、第1評価画像140及び第2評価画像150を管理者端末30のモニタに表示させる。
【0083】
その後、電力需要予測システム10は処理をステップS21に戻す。以降においては、第1評価画像140及び第2評価画像150が管理者端末30のモニタに表示されているので、誤差の評価結果が可視化された状態となる。これにより、例えば第1評価画像140に基づいて、管理者端末30の入力デバイスにより、電力需要の予測データの修正指令を入力することが可能となる。このため、修正指令入力に応じてステップS32が実行され得る。
【0084】
(需要予測モデルの再生成手順)
図9に示すように、電力需要予測システム10は、ステップS51,S52,S53,S54を順に実行する。ステップS51では、モデル修正部134が、第2評価画像150に基づいて、管理者端末30の入力デバイスにより需要予測モデルの修正指令が入力されるのを待機する。ステップS52では、モデル修正部134が、需要予測モデルの修正指令が入力された顧客グループに対して、需要予測モデルを再生成することをモデル生成部116に要求する。以後、需要予測モデルの修正指令が入力された顧客グループを「修正対象グループ」という。
【0085】
ステップS53では、モデル生成部116が、学習用データベース115に蓄積された教師データから、修正対象グループの教師データを抽出する。ステップS54では、モデル生成部116が、抽出した教師データに基づく機械学習により、修正対象グループに対応する需要予測モデル118を再生成し、モデル保持部117に記憶させる。その後、電力需要予測システム10は処理をステップS51に戻す。
【0086】
〔本実施形態の効果〕
以上に説明したように、電力需要予測システム10は、売電事業者の複数の顧客グループごとに、電力需要の変動因子の実績データと、電力需要の実績データとを含む教師データを学習用データベース115に蓄積させるデータ蓄積部114と、複数の顧客グループごとに、学習用データベース115に蓄積された複数の教師データに基づいて、変動因子データと電力需要データとの関係を表す需要予測モデル118を生成するモデル生成部116と、複数の顧客グループごとに変動因子の予測データを取得する入力情報取得部112と、複数の顧客グループごとに、変動因子の予測データと、需要予測モデル118とに基づいて電力需要の予測データを算出する個別需要予測部121と、複数の顧客グループごとに算出された電力需要の予測データに基づいて、売電事業者に対する総電力需要の予測データを算出する総需要予測部122と、を備える。
【0087】
電力需要に影響を及ぼす因子は、顧客に応じて大きく異なる場合がある。例えば、オフィスにおいて電力を消費する顧客では、天候等が大きな因子となるのに対し、生産工場において電力を消費する顧客では、生産状況が大きな因子となる傾向がある。これに対し、本電力需要予測システム10は、複数の顧客グループごとに需要予測モデル118を生成し、複数の顧客グループごとに需要予測モデル118に基づいて電力需要の予測データを算出し、複数の顧客グループごとに算出した電力需要の予測データに基づいて売電事業者に対する総電力需要の予測データを算出する。このため、電力需要に影響を及ぼす因子の違いに応じて顧客をグループ分けし、グループごとの電力需要を高い精度で予測し、予測結果を集計して総電力需要を高い精度で予測することができる。従って、電力需要の予測精度向上に有効である。
【0088】
モデル生成部116は、少なくともランダムフォレスト法により需要予測モデルを生成してもよい。この場合、予測精度の高い需要予測モデルを容易に生成することができる。
【0089】
モデル生成部116は、ランダムフォレスト法と、1以上の他の学習手法とを組み合わせたアンサンブル学習により需要予測モデルを生成してもよい。この場合、より予測精度の高い需要予測モデルを生成することができる。
【0090】
1以上の他の学習手法は、少なくとも再帰型ニューラルネットワーク法を含んでいてもよい。この場合、より予測精度の高い需要予測モデルを生成することができる。
【0091】
複数の顧客グループは、オフィスにおいて電力を消費する第1グループと、生産工場において電力を消費する第2グループと、を含み、モデル生成部116は、第1グループに対して、少なくとも天候を含む変動因子データと、電力需要データとの関係を表す第1需要予測モデルを生成し、第2グループに対して、少なくとも生産状況を含む変動因子データと、電力需要データとの関係を表す第2需要予測モデルを生成してもよい。この場合、電力需要に影響を及ぼす因子の違いに応じて顧客をグループ分けし、グループごとの電力需要を高い精度で予測し、予測結果を集計して総電力需要を高い精度で予測することができる。
【0092】
第1グループに含まれる顧客の数が、第2グループに含まれる顧客の数より多くてもよい。生産工場において電力を消費する顧客同士では、電力需要の変動因子が相違し易い警告がある。一方、オフィスにおいて電力を消費する顧客同士では、電力需要の変動因子が類似し易い傾向がある。このため、第2グループに含まれる顧客の数より多数の顧客を第1グループにまとめることで、教師データの信頼性を向上させ、第1需要予測モデルの予測精度を向上させることができる。
【0093】
複数の顧客グループは、第2グループが電力を消費する生産工場とは生産対象物が異なる生産工場において電力を消費する第3グループを更に含み、モデル生成部116は、第3グループに対して、少なくとも生産状況を含む変動因子データと、電力需要データとの関係を表す第3需要予測モデルを生成してもよい。この場合、生産対象物の相違する顧客同士をグループ分けすることによって、各グループの需要予測モデル118の予測精度を向上させることができる。
【0094】
生産状況を含む変動因子データは、生産状況をエンコード処理により数値化したデータを含んでいてもよい。この場合、生産工場において電力を消費する顧客を含むグループの需要予測モデル118を更に容易に生成することができる。
【0095】
エンコード処理は、電力需要の大きさを目的変数とするターゲットエンコード処理を含んでいてもよい。この場合、生産工場において電力を消費する顧客を含むグループの電力需要予測モデルの予測精度を更に向上させることができる。
【0096】
電力需要予測システム10は、複数の顧客グループごとに、電力需要の予測データと電力需要の実績データとの誤差を評価する誤差評価部131と、複数の顧客グループごとに、誤差の評価結果に基づいて、電力需要の新たな予測データを修正する予測修正部133と、を更に備えていてもよい。総電力需要においては、予測データと実績データとの誤差に再現性が得られ難いのに対し、各顧客グループにおいては、予測データと実績データとの誤差に再現性が得られ易い。このため、誤差の評価と、誤差の評価結果に基づく電力需要の予測データの修正とを、複数の顧客グループごとに行うことによって、電力需要の予測精度を更に向上させることができる。
【0097】
電力需要予測システム10は、複数の顧客グループごとに、誤差の評価結果を可視化した評価画像をモニタに表示させる評価画像表示部132を更に備え、予測修正部133は、複数の顧客グループごとに、評価画像の表示後のユーザ入力に基づいて電力需要の新たな予測データを修正してもよい。この場合、誤差の評価結果を複数の顧客グループごとに可視化し、複数の顧客グループごとの電力需要の予測データの修正を、ユーザに委ねることによって、ユーザの知見を有効活用して電力需要の予測データを生成することができる。
【0098】
評価画像表示部132は、複数の顧客グループごとに、誤差の評価結果の経時変化を可視化した第1評価画像をモニタに表示させてもよい。この場合、複数の顧客グループごとに、誤差の再現傾向を示し、ユーザによる電力需要の予測データの更に適切な修正を促すことができる。
【0099】
評価画像表示部132は、誤差の評価結果を表す色彩を、複数の顧客グループと、評価時とに応じてマッピングした第1評価画像140をモニタに表示させてもよい。この場合、複数の顧客グループごとに、誤差の再現傾向をより分かり易く示すことができる。
【0100】
電力需要予測システム10は、複数の顧客グループごとに、電力需要の予測データと電力需要の実績データとの誤差を評価する誤差評価部131と、複数の顧客グループごとに、誤差の評価結果に基づいて需要予測モデル118を修正するモデル修正部134と、を更に備えていてもよい。需要予測モデル118の予測精度は、顧客における電力設備の変化等によって低下する場合がある。例えば、顧客における自家発電設備の増設、工作機械の増設、無人化の工程比率の上昇等によって、需要予測モデル118の予測精度は低下し得る。誤差の評価と、誤差の評価結果に基づく需要予測モデルの修正とを、複数の顧客グループごとに行うことによって、需要予測モデルをより適切なタイミングでより的確に修正することができる。これにより、電力需要の高い予測精度を容易に維持することができる。
【0101】
電力需要予測システム10は、複数の顧客グループごとに、誤差の評価結果を可視化した評価画像をモニタに表示させる評価画像表示部132を更に備え、モデル修正部134は、複数の顧客グループごとに、評価画像の表示後のユーザ入力に基づいて需要予測モデル118を修正してもよい。この場合、誤差の評価結果を複数の顧客グループごとに可視化し、複数の顧客グループごとの需要予測モデル118の修正を、ユーザに委ねることによって、ユーザの知見を有効活用して需要予測モデル118をより適切に修正することができる。
【0102】
評価画像表示部132は、複数の顧客グループごとに、誤差の評価結果と、需要予測モデル118の修正基準との関係を可視化した第2評価画像をモニタに表示させてもよい。この場合、需要予測モデル118の修正を行うか否かの判断基準を、複数の顧客グループごとに分かり易く提示することができる。
【0103】
評価画像表示部132は、複数の顧客グループごとに、誤差の評価結果を表す棒グラフ151と、需要予測モデル118の修正基準を表す修正基準ライン152とを含む第2評価画像150をモニタに表示させてもよい。この場合、需要予測モデル118の修正を行うか否かの判断基準を、複数の顧客グループごとに、より分かり易く提示することができる。
【0104】
以上、実施形態について説明したが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0105】
10…電力需要予測システム、112…入力情報取得部、114…データ蓄積部、115…学習用データベース(データベース)、116…モデル生成部、118…需要予測モデル、121…個別需要予測部、122…総需要予測部、131…誤差評価部、132…評価画像表示部、133…予測修正部、134…モデル修正部、140…第1評価画像(評価画像)、150…第2評価画像(評価画像)、151…棒グラフ、152…修正基準ライン。