(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152857
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】シート
(51)【国際特許分類】
A47C 7/74 20060101AFI20241018BHJP
A47C 27/15 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
A47C7/74 C
A47C27/15 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024134219
(22)【出願日】2024-08-09
(62)【分割の表示】P 2023074479の分割
【原出願日】2014-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2013179238
(32)【優先日】2013-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】阿部 龍三郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 祥生
(57)【要約】
【課題】パッド本体に対するカバー部材のずれを抑制することができるシートを提供する。
【解決手段】シートは、通気路1Aと送風口1Bを有するパッドであり、パッド本体200と、送風口1Bが形成されたカバー部材20とを有し、パッド本体200を覆うようにカバー部材20が配置されていることでパッド本体200とカバー部材20との間に通気路1Aが形成されたパッドを備え、通気路1Aおよび送風口1Bを通って空気が流れるように構成されている。パッド本体200は、第1本体部210と、第1本体部210とカバー部材20の間に配置される第2本体部220とを有する。第1本体部210は、上側の面に、第1凹部11と、第1凹部11の周囲に形成された第2凹部12であって、底面が第1凹部11の底面よりも上側に位置する第2凹部12とを有する。第2本体部220は、第1凹部11に配置され、カバー部材20は、第2凹部12に配置されている。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に形成された通気路と着座者側の面に形成された送風口を有するパッドであり、パッド本体と、前記送風口が形成されたカバー部材とを有し、前記パッド本体を覆うように前記カバー部材が配置されていることで前記パッド本体と前記カバー部材との間に前記通気路が形成されたパッドを備え、前記通気路および前記送風口を通って空気が流れるように構成されたシートであって、
前記パッド本体は、第1本体部と、前記第1本体部と前記カバー部材の間に配置される第2本体部とを有し、
前記第1本体部は、着座者側の面に、第1凹部と、前記第1凹部の周囲に形成された第2凹部であって、底面が前記第1凹部の底面よりも着座者側に位置する第2凹部とを有し、
前記第2本体部は、前記第1凹部に配置され、
前記カバー部材は、前記第2凹部に配置されていることを特徴とするシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッションから空気を送風可能に構成されたシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シートクッションから着座者に空気を送風可能に構成された空調機能を有するシートが知られている。例えば、特許文献1には、シートクッションのパッドを上下に2分割し、空気を吹き出すための送風口を有する上側のパッドを、下側のパッドに重ねることで、上下のパッドの間にブロワから空気が送り込まれる通気路が形成されるように構成された車両用シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の構成では、人がシートクッションに座った際にパッドが変形することで、上側のパッドの前端部が浮き上がり、パッド前端部の上下のパッドの境目付近に段差ができる可能性があった。この段差が脚などに当たると着座フィーリングが低下する。そして、このような場合に限らず、シートにおいては、着座フィーリングが低下しないことが望ましい。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、着座フィーリングを向上させることができるシートを提供することを目的とする。
また、パッド本体に対するカバー部材のずれを抑制することを目的とする。
また、通気路の断面積を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するためのシートは、内部に形成された通気路と上面に形成された送風口を有するシートクッションパッドを備え、前記通気路内の空気を前記送風口から送風可能に構成されたシートであって、前記シートクッションパッドは、パッド本体と、前記パッド本体の上に配置されて前記パッド本体との間に前記通気路を形成するとともに前記送風口が形成されたカバー部材と、を有し、前記カバー部材の前端部は、前記パッド本体の前端部を覆うように下方に延びていることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、着座時にカバー部材の前端部が浮き上がったとしても、シートクッションパッドの前端部に段差ができないため、着座フィーリングを向上させることができる。
【0008】
前記したシートにおいて、前記パッド本体の上面および前記カバー部材の下面には、一方に凸部が形成され、他方に前記凸部と嵌合する位置決め凹部が形成されている構成とすることができる。
【0009】
これによれば、パッド本体に対するカバー部材のずれを抑制することができる。
【0010】
前記したシートにおいて、前記凸部は前記パッド本体の上面に形成され、前記位置決め凹部は前記カバー部材の下面に形成され、前記凸部および前記位置決め凹部の左右方向の幅は、後側よりも前側の方が大きい構成とすることができる。
【0011】
これによれば、パッド本体に対するカバー部材の前方へのずれを効果的に抑制することができる。
【0012】
また、前記したシートにおいて、前記凸部は前記カバー部材の下面に形成され、前記位置決め凹部は前記パッド本体の上面に形成され、前記凸部および前記位置決め凹部の左右方向の幅は、前側よりも後側の方が大きい構成とすることもできる。
【0013】
これによっても、パッド本体に対するカバー部材の前方へのずれを効果的に抑制することができる。
【0014】
前記したシートにおいて、前記凸部および前記位置決め凹部は、前記シートクッションパッドの前側部分の左右方向中央部に形成されている構成とすることができる。
【0015】
これによれば、凸部と位置決め凹部の形成部分に真上から荷重がかかりにくくなるため、凸部や位置決め凹部の大きな変形を抑制することができる。これにより、凸部と位置決め凹部との係合状態を良好に保つことができるので、パッド本体に対するカバー部材のずれをより抑制することができる。
【0016】
前記したシートにおいて、前記パッド本体および前記カバー部材は、互いに対向して前記通気路を形成する通気凹部をそれぞれ有する構成とすることができる。
【0017】
これによれば、パッド本体およびカバー部材のうちの一方に通気凹部を形成しない構成と比較して、通気路の断面積を確保することができる。
【0018】
そして、前記したシートにおいて、前記パッド本体は、上面に第1凹部が形成され、前記カバー部材は、前記第1凹部に係合して前記パッド本体との間に前記通気路を形成するカバー本体と、前記カバー本体の周縁部のうちの少なくとも1つの辺から前記第1凹部の縁よりも水平方向外側に延びる延出縁部と、を有していてもよい。
【0019】
このような構成によれば、カバー本体とパッド本体との間に隙間ができた場合であっても、延出縁部とパッド本体が接触することで隙間をシールできるため、通気路からの空気漏れを抑制することができる。また、パッド本体とカバー部材との接触面積を大きくできるので、パッド本体とカバー部材との間に隙間自体ができにくく、これによっても通気路からの空気漏れを抑制することができる。
【0020】
前記したシートは、前記シートクッションパッドに被せられる表皮材を備え、前記パッド本体には、前記表皮材に設けられる係合部が係合可能な表皮取付部材が前記第1凹部よりも水平方向外側に設けられ、前記延出縁部は、前記表皮取付部材の近傍まで延びて前記係合部を前記表皮取付部材に係合させるための開口の一部を形成している構成とすることができる。
【0021】
これによれば、表皮取付部材に取り付けられた表皮材によって延出縁部を比較的強固に押さえることができる。これにより、パッド本体とカバー部材との間に隙間がよりできにくくなるため、通気路からの空気漏れをより抑制することができる。
【0022】
前記したシートにおいて、前記延出縁部は、前記カバー本体の周縁部のうちの左右の辺から延びている構成とすることができる。
【0023】
これによれば、着座時に左右の延出縁部が浮き上がるなどした場合であっても、それは着座者から遠い位置で起こることになるため、着座フィーリングの低下を抑制することができる。
【0024】
前記したシートにおいて、前記パッド本体は、前記カバー部材の左右両側に前記カバー部材よりも上に張り出した張出部を有し、前記延出縁部は、前記張出部に対面する位置まで延びている構成とすることができる。
【0025】
これによれば、着座時に左右の延出縁部が浮き上がるなどした場合であっても、着座者に違和感を与えることがないため、着座フィーリングを向上させることができる。
【0026】
また、前記したシートにおいて、前記延出縁部は、前記カバー本体の周縁部のうちの前側の辺から少なくとも前記パッド本体の前端部まで延びている構成とすることができる。
【0027】
これによれば、シートクッションパッドの上面に前側の延出縁部とパッド本体との境目がなくなるため、着座時にシートクッションパッドの上面前部に段差ができない。これにより、着座フィーリングの低下を抑制することができる。
【0028】
前記したシートにおいて、前記パッド本体および前記カバー部材は、互いに対向して前記通気路を形成する通気凹部をそれぞれ有する構成とすることができる。
【0029】
これによれば、パッド本体およびカバー部材のうちの一方に通気凹部を形成しない構成と比較して、通気路の断面積を確保することができる。
【0030】
また、前記したシートにおいて、前記パッド本体は、第1本体部と、前記第1本体部と前記カバー部材の間に配置され、前記第1本体部の上面と重なるとともに前端部が下方へ向けて延びる第2本体部とを有していてもよい。
【0031】
これによれば、パッド本体を第1本体部と第2本体部の二部品で構成した場合にも、着座時に第2本体部の前端部が浮き上がったとしても、シートクッションパッドの上面前部に段差ができないため、着座フィーリングを向上させることができる。
【0032】
前記したシートにおいて、前記第1本体部は、前端部に前側が低くなった段差が設けられ、前記第2本体部の前端部および前記カバー部材の前端部の少なくとも一方は、前記第1本体部の前記段差より前側に配置される上を向く面に接触していてもよい。
【0033】
これによれば、第2本体部またはカバー部材の下方へのずれを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】実施形態に係るシートの一例としての車両用シートの斜視図である。
【
図2】シートクッションパッドの分解斜視図である。
【
図4】下面側から見たカバー部材の破断斜視図である。
【
図5】
図3のX-X断面に相当するシートクッションの断面図である。
【
図6】
図3のY-Y断面に相当するシートクッションパッドの断面図である。
【
図7】実施形態に係る車両用シートの延出縁部の作用効果を説明する図(a)と、比較例を示す図(b)である。
【
図8】実施形態に係る車両用シートの位置決め凸部および位置決め凹部の作用効果を説明する図である。
【
図9】変形例に係るパッド本体と下面側から見たカバー部材の破断斜視図である。
【
図10】変形例に係る車両用シートの位置決め凸部および位置決め凹部の作用効果を説明する図である。
【
図11】第2の変形例に係るシートクッションパッドの分解斜視図である。
【
図12】第2の変形例に係るシートクッションパッドを左右方向に延びる鉛直平面で切った断面図である。
【
図13】第2の変形例に係るシートクッションパッドを前後方向に延びる鉛直平面で切った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るシートは、自動車の運転席や助手席などに使用される車両用シートSとして構成され、乗員が着座するシートクッションS1と、乗員の上体を支持するシートバックS2と、乗員の頭部を支持可能なヘッドレストS3とを主に備えている。
【0036】
シートクッションS1は、図示しない金属製のフレームと、ウレタンフォームなどのクッション材からなるシートクッションパッド1と、合成皮革や布地などからなる表皮材2とを主に備え、フレームにシートクッションパッド1を被せ、さらにシートクッションパッド1に表皮材2を被せることで構成されている。
【0037】
詳細な構成については後述するが、シートクッションパッド1は、内部に形成された通気路1A(
図5参照)と上面に形成された複数の送風口1Bを有し、図示しないブロワなどから通気路1A内に送り込まれた空気を
図1に矢印で示すように送風口1Bから乗員に向けて送風可能に構成されている。なお、図示は省略するが、表皮材2が通気性の低い材料から形成されている場合には、表皮材2の送風口1Bと対応する位置には空気を通すための穴が形成される。
【0038】
図2に示すように、シートクッションパッド1は、シートクッションS1のフレームに被せられるパッド本体10と、上面に複数の送風口1Bが形成されたカバー部材20とを主に有している。なお、パッド本体10とカバー部材20は、材質が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0039】
パッド本体10の上面のうち、左右方向中央部の前側部分には、後側部分である中央後部10Bよりも凹んだ形状をなしてカバー部材20が係合可能な係合凹部10Aが形成されている。
図3に示すように、係合凹部10Aは、第1凹部11と、第1凹部11の周囲で第1凹部11の底部11Aよりも1段高く形成された第2凹部12とから構成されている。第1凹部11内には、底部11Aよりも凹んだ形状の本体側通気凹部15と、底部11Aから上方に突出する本発明における凸部としての位置決め凸部16が主に形成されている。
【0040】
本体側通気凹部15は、後述するカバー部材20のカバー側通気凹部25(
図5参照)と対向して通気路1Aを形成する溝であり、平面視略U字形状に形成されている。この本体側通気凹部15の左右方向中央付近には、パッド本体10を上下に貫通する貫通穴15Aが形成されている。貫通穴15Aは、通気路1A内に空気を送り込むための穴である。
【0041】
位置決め凸部16は、底部11Aの前側部分の左右方向中央部付近に配置されている。この位置決め凸部16は、左右方向の幅が後側よりも前側の方が大きくなるようなテーパ面を側面として有する平面視略台形状に形成されている。
【0042】
図3および
図5に示すように、パッド本体10は、係合凹部10A(カバー部材20)や中央後部10Bの左右両側に、カバー部材20や中央後部10Bの上面よりも上に張り出した張出部10Sを有している。また、パッド本体10の左右両端部には、表皮材2に設けられるフック状の係合部2Hが係合可能な表皮取付部材の一例としての表皮取付ワイヤ50がそれぞれ設けられている。より詳細に説明すると、表皮取付ワイヤ50は、前後方向に沿って延び、第1凹部11よりも水平方向(左右方向)外側であって、張出部10Sと係合凹部10Aとの境界付近のパッド本体10内に埋設された状態で配置されている。この表皮取付ワイヤ50は、その一部がパッド本体10に形成された穴10Cから露出しており、この露出した部分に表皮材2の係合部2Hを係合させることで、表皮材2がパッド本体10(シートクッションパッド1)に固定される。
【0043】
図4および
図5に示すように、カバー部材20は、パッド本体10の係合凹部10Aに接着されることなく係合することでパッド本体10の上に配置されてパッド本体10との間に通気路1Aを形成する部材であり、カバー本体21と、延出縁部22と、前端部23(
図6参照)とを主に有している。
図6に示すように、係合凹部10Aに係合したカバー部材20の上面は、パッド本体10の中央後部10Bの上面と略面一となる。なお、
図4は、下面側から見たカバー部材20の斜視図であるが、後述するカバー側通気凹部25や位置決め凹部26を分かりやすく示すため、前端部23を破断した状態で示している。
【0044】
図4および
図5に示すように、カバー本体21は、主にその下部がパッド本体10の第1凹部11に係合してパッド本体10との間に通気路1Aを形成する部分である。このカバー本体21の下面には、カバー側通気凹部25と、位置決め凹部26が形成されている。
【0045】
カバー側通気凹部25は、カバー部材20がパッド本体10の係合凹部10Aに係合したときに本体側通気凹部15と互いに対向してパッド本体10との間に通気路1Aを形成する溝であり、本体側通気凹部15と同様に平面視略U字形状に形成されている。このカバー側通気凹部25の底面には、送風口1Bと連通する複数の連通穴25Aが形成されている。通気路1A内に送り込まれた空気は、この連通穴25Aを通って送風口1Bから送風される。
【0046】
位置決め凹部26は、パッド本体10の位置決め凸部16と嵌合する凹部であり、カバー本体21の下面の前側部分の左右方向中央部付近に配置されている。この位置決め凹部26は、位置決め凸部16と同様に、左右方向の幅が後側よりも前側の方が大きくなるような平面視略台形状に形成されている。
【0047】
図4に示すように、延出縁部22は、カバー本体21の周縁部の各辺の上部から第1凹部11の縁よりも水平方向外側(前後方向外側や左右方向外側)に突出するように延びる部分である。この延出縁部22は、カバー本体21の周縁部のうちの左右の辺から延びている左側縁部22Lおよび右側縁部22Rと、カバー本体21の周縁部のうちの前側の辺から延びている前側縁部22Fと、カバー本体21の周縁部のうちの後側の辺から延びている後側縁部22Bとから構成され、前側縁部22F、左側縁部22L、後側縁部22Bおよび右側縁部22Rが、カバー本体21を取り囲むように連続して略フランジ状に形成されている。カバー部材20が、パッド本体10の係合凹部10Aに係合したとき、延出縁部22は、パッド本体10の第2凹部12に入り込む。
【0048】
図5に示すように、左側縁部22Lおよび右側縁部22Rは、それぞれ、パッド本体10の張出部10Sに対面する位置まで延びている。より詳細に、左側縁部22Lおよび右側縁部22Rは、それぞれ、表皮取付ワイヤ50の近傍まで延びて、その端面が、パッド本体10との間で、表皮材2を吊り込んだり、表皮材2の係合部2Hを表皮取付ワイヤ50に係合させたりするための開口の一例としての吊り込み溝1Cの壁の一部を形成している。また、
図6に示すように、前側縁部22Fは、パッド本体10の前端部10Fよりも前側まで延びている。
【0049】
前端部23は、前側縁部22Fから連続してパッド本体10の前端部10Fに沿うように下方に延びる部分である。言い換えると、前端部23は、パッド本体10の前端部10Fを前側から覆うように下方に延びている。
【0050】
次に、以上のように構成された車両用シートSの作用効果について説明する。
なお、参考として示す
図7(b)の比較例は、シートクッションパッド101に表皮材102を被せることで構成されたシートクッションS101である。シートクッションS101のシートクッションパッド101は、パッド本体110と、パッド本体110の上面に形成された凹部110Aに嵌め込まれた平板状のカバー部材120とを有し、パッド本体110とカバー部材120との間に通気路101Aが形成されている。
【0051】
図7(b)に示す比較例では、シートクッションS101に乗員が着座したとき、前から見て、カバー部材120の左右方向中央が沈み込んで弓なりに変形することで、その周縁部分がパッド本体110から浮き上がろうとする。これにより、カバー部材120の端部とパッド本体110との間に段差ができ、この段差が表皮材102を介して乗員に当たることで着座フィーリングが低下する。また、カバー部材120の端部とパッド本体110との間に隙間ができ、この隙間から通気路101A内の空気が漏れる可能性がある。
【0052】
一方、
図6や
図7(a)に示す本実施形態では、カバー部材20がカバー本体21の周縁部から延びる延出縁部22を有することで、仮にカバー本体21の端部とパッド本体10との間に隙間ができたとしても、延出縁部22とパッド本体10が接触することで隙間をシールできるため、通気路1Aからの空気漏れを抑制することができる。また、カバー本体21の周縁部から延びる延出縁部22を有することで、パッド本体10とカバー部材20との接触面積を大きくできるので、パッド本体10とカバー部材20との間に隙間自体ができにくく、これによっても通気路1Aからの空気漏れを抑制することができる。
【0053】
また、延出縁部22のうち左側縁部22Lおよび右側縁部22Rは、表皮取付ワイヤ50の近傍まで延びて表皮材2を係合させるための吊り込み溝1Cの一部を形成しているため、表皮取付ワイヤ50に取り付けられた表皮材2によって比較的強固に押さえられることとなる。これにより、パッド本体10とカバー部材20との間に隙間がよりできにくくなるため、通気路1Aからの空気漏れをより抑制することができる。
【0054】
また、着座フィーリングの観点から言えば、
図6に示すように、延出縁部22のうち前側縁部22Fは、パッド本体10の前端部10Fまで延びているので、シートクッションパッド1の上面に前側縁部22Fとパッド本体10との境目がない。これにより、着座時に仮に前側縁部22Fが浮き上がっても、シートクッションパッド1の上面前部に段差はできないため、着座フィーリングの低下を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、カバー部材20の前端部23がパッド本体10の前端部10Fを覆うように下方にまで延びているので、着座時に前端部23が浮き上がったとしても、シートクッションパッド1の前端部にも段差はできない。これにより、着座フィーリングを向上させることができる。
【0056】
また、
図7(a)に示すように、延出縁部22のうち左側縁部22Lおよび右側縁部22Rは、カバー本体21の周縁部のうちの左右の辺から延びて乗員から遠ざかっているので、着座時に仮に左側縁部22Lおよび右側縁部22Rが浮き上がっても、それは乗員から遠い位置で起こることになるため、着座フィーリングの低下を抑制することができる。
【0057】
さらに言えば、左側縁部22Lおよび右側縁部22Rは、パッド本体10の張出部10Sに対面する位置まで延びているため、着座時に左側縁部22Lおよび右側縁部22Rが浮き上がったとしても、乗員に違和感を与えることはない。これにより、着座フィーリングを向上させることができる。また、上記したとおり、左側縁部22Lおよび右側縁部22Rは、表皮材2によって比較的強固に押さえられるため、そもそも浮き上がりにくくなっており、着座フィーリングをより向上させることができる。
【0058】
なお、
図7(b)に示す比較例では、着座時にカバー部材120の左右方向中央が沈み込むことで、その周縁部分が中央に向けて引っ張られ、カバー部材120の端面とパッド本体110との間に隙間ができやすくなっている。これにより、カバー部材120の端部が浮き上がりやすくなって、段差ができたり、隙間ができたりすることとなる。一方、
図7(a)に示す本実施形態では、位置決め凸部16と位置決め凹部26の形成部分の特に左右両側において、カバー本体21の端面とパッド本体10との間に隙間ができにくくなっている。これは、カバー部材20の左右方向中央が沈み込んでその周縁部分が中央に向けて引っ張られても、位置決め凹部26の側面が位置決め凸部16の側面に当たることで、カバー部材20の周縁部分のうち位置決め凹部26よりも外側の部分が中央に向けて引っ張られにくくなっているためである。これにより、カバー部材20の端部の浮き上がりが抑制されるため、着座フィーリングをより向上させることができるとともに、カバー部材20の端部とパッド本体10との間に隙間ができにくいので通気路1Aからの空気漏れを一層抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態では、パッド本体10の上面に形成された位置決め凸部16と、カバー部材20の下面に形成された位置決め凹部26とが嵌合することで、パッド本体10とカバー部材20を接着剤などで接着しない構成においても、パッド本体10に対するカバー部材20のずれを抑制することができる。
【0060】
特に本実施形態では、
図8に示すように、位置決め凸部16と位置決め凹部26は、左右方向の幅が後側よりも前側の方が大きくなるような平面視略台形状に形成されているため、互いに嵌合したときに左右の面がいわば噛み合うことで、特にパッド本体10に対するカバー部材20の前方へのずれを効果的に抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、位置決め凸部16と位置決め凹部26がシートクッションパッド1の前側部分の左右方向中央部、言い換えれば、乗員の左右の大腿部の間に対応する位置付近に形成されているので、位置決め凸部16と位置決め凹部26の形成部分に真上から荷重がかかりにくくなっている。そのため、位置決め凸部16や位置決め凹部26の大きな変形を抑制できるので、位置決め凸部16と位置決め凹部26との係合状態を良好に保つことができ、パッド本体10に対するカバー部材20のずれをより抑制することができる。
【0062】
また、
図5に示すように、本実施形態では、パッド本体10とカバー部材20の両方が通気路1Aを形成するための通気凹部15,25を有するので、どちらか一方だけが通気凹部を有する構成と比較して、通気路1Aの断面積を確保することができる。これにより、乗員の着座によって変形するシートクッションパッド1内において、空気を通すためのスペースを確保することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、下記のように本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0064】
前記実施形態では、パッド本体10の上面に位置決め凸部16が形成され、カバー部材20の下面に位置決め凹部26が形成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、
図9に示すように、パッド本体10の上面に位置決め凹部17が形成され、カバー部材20の下面に位置決め凸部27が形成されていてもよい。この場合、位置決め凹部17および位置決め凸部27の左右方向の幅は、前記実施形態とは逆に、前側よりも後側の方が大きくなるように形成されていることが望ましい。これによれば、
図10に示すように、互いに嵌合したときに左右の面が噛み合うことで、パッド本体10に対するカバー部材20の前方へのずれを効果的に抑制することができる。
【0065】
なお、前記実施形態や
図9に示した形態では、位置決め凸部16,27や位置決め凹部26,17は、その左右の面が略平面状の傾斜面として形成されていたが、これに限定されず、例えば、1段以上の段差を有する階段状の面として形成されていてもよい。また、前記実施形態や
図9に示した形態では、位置決め凸部16,27と位置決め凹部26,17がシートクッションパッド1の前側部分の左右方向中央部に1組形成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、位置決め凸部と位置決め凹部は、シートクッションパッドの前側部分の左右方向中央部以外に形成されていてもよいし、2組以上形成されていてもよい。
【0066】
前記実施形態では、延出縁部22が、カバー本体21を取り囲むように、カバー本体21の周縁部の各辺から延びるように形成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、延出縁部は、カバー本体の周縁部のうち左右の辺だけから延びるように形成されていてもよいし、カバー本体の周縁部のうち前側の辺だけから延びるように形成されていてもよい。
【0067】
前記実施形態では、パッド本体10とカバー部材20の両方に通気路1Aを形成する通気凹部15,25が形成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、通気凹部は、パッド本体だけに形成されていてもよいし、カバー部材だけに形成されていてもよい。
【0068】
前記実施形態では、パッド本体10が一つの部品で構成されていたが、パッド本体の構成はこれに限定されるものではない。例えば、
図11に示すように、パッド本体200は、第1本体部210と、第1本体部210とカバー部材20の間に配置される第2本体部220との二つの部品で構成されていてもよい。
【0069】
具体的に、第1本体部210は、前記実施形態におけるパッド本体10と同様に、第1凹部11を有する係合凹部10A、中央後部10Bおよび張出部10Sを有している。第1本体部210は、第1凹部11の後部に、上下に貫通した貫通穴211が形成されている。そして、第1凹部11の底面212は、貫通穴211以外に凹凸が設けられておらず、略平面状に形成されている。
【0070】
また、第1本体部210は、前端部に前側が低くなった段差の一例としての前側段差213が設けられている。具体的に、第1本体部210は、前端部の下部に、前側に突出する突出部230が設けられている。突出部230は、第1本体部210の左端から右端にわたって設けられている。この突出部230は、第1凹部11の底面212よりも低い位置に設けられた上を向く当接面231を有している。そして、第1本体部210の第1凹部11の底面212と当接面231との間の部分が、前側段差213となっている。
【0071】
第2本体部220は、第1本体部210の上面、詳しくは、第1凹部11の底面212と重なる矩形状の通気路形成部220Aと、通気路形成部220Aから前側下方へ向けて延びる前端部220Bとを有している。この第2本体部220は、第1本体部210またはカバー部材20と材質が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0072】
通気路形成部220Aは、上下に貫通した通気溝221が形成されている。この通気路形成部220Aは、第1凹部11上に配置されることで、
図12に示すように、通気溝221と第1凹部11の底面212で本体側通気凹部15を形成している。
【0073】
図11に戻り、通気溝221は、平面視略U字形状に形成された第1通気溝221Aと、第2本体部220の貫通穴211に重なる位置から延びて第1通気溝221Aに繋がる第2通気溝221Bとを有している。
【0074】
そして、
図13に示すように、第2本体部220の前端部220Bは、第1本体部210の前側段差213の一部を覆うように設けられ、下端が、突出部230の当接面231に接触している。また、第2本体部220の後端部(通気路形成部220Aの後端部222)は、第1本体部210の第1凹部11と中央後部10Bの間の段差である後側段差214に接触している。
【0075】
図12に示すように、カバー部材20は、前記実施形態と異なり、下面にカバー側通気凹部を有しておらず、略平板状に形成されている。このカバー部材20は、その下面が、本体側通気凹部15とともに通気路1Aを形成している。そして、カバー部材20は、本体側通気凹部15と重なる位置に、複数の送風口1Bが形成されている。なお、カバー部材20は、前記実施形態と同様に、下面にカバー側通気凹部を有していてもよい。
【0076】
そして、
図13に示すように、カバー部材20の前端部23は、第2本体部220の前端部220Bに重なり、下端が第1本体部210の当接面231に接触している。
【0077】
以上のように、第1本体部210とカバー部材20の間に、通気路1Aを形成する第2本体部220を設けたことにより、前記実施形態のようにパッド本体10の本体側通気凹部15とカバー部材20のカバー側通気凹部25によって通気路1Aを形成する場合よりも、車両用シートSに乗員が着座したときの通気路1Aの変形を抑えることができる。
【0078】
また、第2本体部220の前端部220Bが下方に向けて延びているので、着座時に第2本体部220の前端部220Bが浮き上がったとしても、パッド本体10の上面前部には段差ができないので、着座フィーリングの低下を抑制することができる。
【0079】
そして、第2本体部220の前端部220Bは、突出部230の当接面231に接触しているので、第2本体部220の下方へのずれを抑えることができる。また、第2本体部220の前端部220Bが、前側段差213に接触し、第2本体部220の後端部(通気路形成部220Aの後端部222)が、後側段差214に接触しているので、第2本体部220の後方へのずれを抑えることができる。
【0080】
また、本変形例においては、カバー部材20の前端部23が、突出部230の当接面231に接触しているので、カバー部材20の下方へのずれを抑えることができる。
【0081】
なお、本変形例では、第2本体部220の前端部220Bとカバー部材20の前端部23の両方が突出部230の当接面231に接触していたが、第2本体部220の前端部220Bとカバー部材20の前端部23の一方のみを突出部230の当接面231に当接させる構成であってもよい。
【0082】
前記実施形態では、本発明を自動車で使用されるシート(車両用シートS)に適用した例を示したが、これに限定されず、その他の乗物、例えば、鉄道車両や船舶、航空機などで使用されるシートに適用することもできる。また、本発明は、乗物用シートに限定されず、例えば、映画館などの公共施設や家庭などで使用されるシートに適用することもできる。
【符号の説明】
【0083】
1 シートクッションパッド
1A 通気路
1B 送風口
10 パッド本体
10F 前端部
20 カバー部材
23 前端部
S 車両用シート