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特開2024-1528603,5-二置換ベンゼンアルキニル化合物とペムブロリズマブとを用いた癌治療法
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  • 特開-3,5-二置換ベンゼンアルキニル化合物とペムブロリズマブとを用いた癌治療法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152860
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】3,5-二置換ベンゼンアルキニル化合物とペムブロリズマブとを用いた癌治療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20241018BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024134396
(22)【出願日】2024-08-09
(62)【分割の表示】P 2023083174の分割
【原出願日】2020-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2019035603
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019112619
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000207827
【氏名又は名称】大鵬薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米倉 和比古
(72)【発明者】
【氏名】平井 洋
(72)【発明者】
【氏名】松岡 和明
(57)【要約】
【課題】本開示が解決すべき課題は、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を用い、免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する癌患者に対して優れた抗腫瘍効果を示す新たな併用療法を提供することである。
【解決手段】本開示は、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を有効成分として含む、免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する癌患者に対して、ペムブロリズマブと併用投与される抗腫瘍剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を有効成分として含む、免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する癌患者に対して、ペムブロリズマブと併用投与される抗腫瘍剤。
【請求項2】
腫瘍が、FGFR経路における異常を有する、請求項1に記載の抗腫瘍剤。
【請求項3】
FGFR経路における異常が、FGFRの過剰発現、FGFRの遺伝子の異常及びFGFRシグナルの異常状態からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の抗腫瘍剤。
【請求項4】
当該抗腫瘍剤による治療が、治療中止後、個体において持続性応答をもたらす、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗腫瘍剤。
【請求項5】
(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩が、ペムブロリズマブの前に使用、ペムブロリズマブと同時に使用、又はペムブロリズマブの後に使用される、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗腫瘍剤。
【請求項6】
(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩が、連続的に使用又は間欠的に使用される、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗腫瘍剤。
【請求項7】
(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩及びペムブロリズマブが同一治療レジメンでの処置において投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗腫瘍剤。
【請求項8】
免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する腫瘍を対象に、
(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を4mg、8mg、12mg及び16mg、20mgからなる群から選択される用量で1日1回投与し、及びペムブロリズマブを1mg/kg 3週間隔、2mg/kg 3週間隔及び200mg 3週間隔からなる群から選択される用量で投与する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗腫瘍剤。
【請求項9】
免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する腫瘍を対象に、
(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を8mg、12mg、16mg及び20mgからなる群から選択される用量で1日1回投与し、及びペムブロリズマブを200mg 3週間隔からなる用量で投与する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗腫瘍剤。
【請求項10】
免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する腫瘍が食道癌、非小細胞肺癌又は尿
路上皮癌である、請求項9に記載の抗腫瘍剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年2月28日に出願された、日本国特許出願第2019-035603号明細書及び2019年6月18日に出願された、日本国特許出願第2019-112619号明細書(これらの開示全体が参照により本明細書中に援用される)に基づく優先権を主張する。
本開示は、抗腫瘍剤、抗腫瘍効果増強剤及びキット製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
線維芽細胞増殖因子(FGF;fibroblast growth factor)は幅広い組織で発現が見られ、細胞の増殖分化を司る増殖因子の一つである。FGFの生理学的活性は、特異的な細胞表面受容体である線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR;fibroblast growth factor receptor)によって媒介される。FGFRは、受容体型のタンパク質チロシンキナーゼファミリーに属し、細胞外リガンド結合ドメイン、1回膜貫通ドメイン及び細胞内チロシンキナーゼドメインから構成されており、これまでに4種類のFGFRが同定されている(FGFR1、FGFR2、FGFR3及びFGFR4)。FGFRは、FGFの結合によって二量体を形成し、リン酸化により活性化される。受容体の活性化は、下流の特定のシグナル伝達分子の動員及び活性化を誘導し、生理機能を発現する。FGF/FGFRシグナル伝達の異常は、ヒトの各種腫瘍との関連性について報告がある。ヒトの腫瘍におけるFGF/FGFRシグナルの異常な活性化は、FGFRの過剰発現及び/又は遺伝子増幅、遺伝子変異、染色体転座・挿入・逆位、遺伝子融合又はリガンドであるFGFの過剰産生によるオートクリン又はパラクリン機構に起因するとされている(非特許文献1、2、3及び4)。
【0003】
一方、新しい癌治療法の一つとして、癌免疫療法の開発が進められている。
【0004】
適応的免疫反応の活性化は、抗原ペプチド-MHC complexとT細胞受容体(TCR)の結合により始まる。この結合はさらに共刺激分子であるB7 familyとそのレセプターであるCD28 family間の結合によるcostimulation或いはcoinhibitionによって規定される。すなわち、T細胞が抗原特異的に活性化するためには、2つの特徴的なシグナル伝達イベントを必要とし、B7 familyからの共刺激を受けずに抗原刺激のみを受けたT細胞は不応答状態(anergy)となり、免疫寛容が誘導される。
【0005】
癌細胞はこのしくみを利用し、抗原特異的なT細胞の活性化を抑制することで、免疫監視機構から逃避し、増殖し続ける。そのため、Costimulationの強化やCoinhibitionのブロックにより癌患者の生体内における抗腫瘍免疫応答を誘導させ、腫瘍の免疫逃避を制御することは癌治療に有効であると考えられ、Costimulatory分子(刺激性の共刺激分子)或いはCoinhibitory分子(抑制性の共刺激分子)を標的とした癌免疫療法が種々提案されている(非特許文献5)。例えば、PD-1とそのリガンド(PD-L1及びPD-L2)の結合を阻害することによりT細胞を活性化する免疫チェックポイント阻害薬としてニボルマブ(ヒトPD-1に対するヒト型IgG4モノクローナル抗体)が悪性黒色腫等の治療に用いられている(特許文献1、非特許文献6)。また、ニボルマブとは抗体の種類が異なる免疫チェックポイント阻害薬としてペムブロリズマブがあり、悪性黒色腫や非小細胞肺癌等の治療に用いられている(非特許文献6)。
【0006】
3,5-二置換ベンゼンアルキニル化合物である(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩はFGFR阻害剤として知られており、これまでにFGFR阻害剤と他の抗腫瘍剤との組み合わせが報告されている(特許文献2、3)。FGFR阻害剤と免疫チェックポイント阻害薬を併用投与することについては、例えば、特許文献4ではFGFR阻害剤と抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体を併用する方法についての記載がある。
【0007】
免疫チェックポイント阻害薬について多くの症例が報告されており、投与を継続することにより薬剤に対する耐性が生じることが明らかとなり、また、そのメカニズムが研究されている(非特許文献9、10、11)。免疫チェックポイント阻害薬とFGFR阻害剤の使用例としては、例えば、Erdafitinib(JNJ-42756493)の尿路上皮癌を対象とした第II相試験(NCT02365597)ではPD-1又はPD-L1の前治療のある対象にFGFR阻害剤を投与した試験が報告されている。また、抗FGFR3抗体であるVofatamabとペムブロリズマブとの併用試験が進行中である(NCT03123055)。連続した投与としては、FGFR阻害作用を持つマルチキナーゼ阻害剤であるパゾパニブとエベロリムスの併用、Vofatamabとドセタキセルとの併用、アテゾリズマブとを連続的に投与した報告がある(非特許文献12)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2004/004771号
【特許文献2】国際公開2013/108809号
【特許文献3】国際公開2017/150725号
【特許文献4】国際公開2016/161239号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Nat.Rev.Cancer 10:116-129(2010)
【非特許文献2】J. Clin. Oncol. 24, 3664-3671 (2006)
【非特許文献3】Mol. Cancer Res. 3, 655-667 (2005)
【非特許文献4】Cancer Res.70, 2085-2094 (2010)
【非特許文献5】Nat.Rev.Cancer,12:252-264(2012)
【非特許文献6】N.Engl.J.Med.,366:2443-2454(2012)
【非特許文献7】The Breast.37,126-133(2018)
【非特許文献8】Oncotarget. 8:16052-16074(2017)
【非特許文献9】Cell. 168:707-723(2017)
【非特許文献10】N.Engl.J.Med.,375:819-829(2016)
【非特許文献11】Sci.Transl.Med.9,eaal3604(2017)
【非特許文献12】JCO Precision Oncology(DOI: 10.1200/P0.18.00117)July 24,2018
【非特許文献13】Cellular Physiology and Biochemistry,33,p.633-645(2014)
【非特許文献14】frontirs in Immunology,9,2018,Article1310.doi:10.3389/fimmu.2018.01310
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示は、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を用い、免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する癌患者に対して、優れた抗腫瘍効果を示す新たな併用療法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、このような現状に鑑み、FGFR阻害活性を有する化合物である(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン(以下、「化合物1」ともいう。)又はその塩を、免疫チェックポイント阻害薬と併用することにより上記課題を解決し得ることを見出した。
【0012】
したがって、本開示は、次の項1~55を提供するものである。
【0013】
項1.(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を有効成分として含む、免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する癌患者に対して、ペムブロリズマブと併用投与される抗腫瘍剤。
【0014】
項2.腫瘍が、FGFR経路における異常を有する、項1に記載の抗腫瘍剤。
【0015】
項3.FGFR経路における異常が、FGFRの過剰発現、FGFRの遺伝子の異常及びFGFRシグナルの異常状態からなる群から選択される少なくとも1種である、項2に記載の抗腫瘍剤。
【0016】
項4.当該抗腫瘍剤による治療が、治療中止後、個体において持続性応答をもたらす、項1~3のいずれか1項に記載の抗腫瘍剤。
【0017】
項5.(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩が、ペムブロリズマブの前に使用、ペムブロリズマブと同時に使用、又は免疫ペムブロリズマブの後に使用される、項1~4のいずれか1項に記載の抗腫瘍剤。
【0018】
項6.(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩が、連続的に使用又は間欠的に使用される、項1~5のいずれか1項に記載の抗腫瘍剤。
【0019】
項7.(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチ
ニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩及びペムブロリズマブが同一治療レジメンでの処置において投与される、項1~6のいずれか1項に記載の抗腫瘍剤。
【0020】
項8.免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する腫瘍を対象に、
(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を、4mg、8mg、12mg、16mg及び20mgからなる群から選択される用量で1日1回投与し、及びニボルマブを1mg/kg 3週間隔、2mg/kg 3週間隔、3mg/kg 3週間隔、80mg 3週間隔、240mg 3週間隔、1mg/kg 2週間隔、2mg/kg 2週間隔、3mg/kg 2週間隔、80mg、2週間隔、及び240mg 2週間隔からなる群から選択される用量で投与するために用いられる、
項1~7のいずれか1項に記載の抗腫瘍剤。
【0021】
項9.免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する腫瘍を対象に、
(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を8mg、12mg、16mg及び20mgからなる群から選択される用量で1日1回投与し、及びペムブロリズマブを200mg 3週間隔からなる用量で投与する、
項1~8のいずれか1項に記載の抗腫瘍剤。
【0022】
項10.免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する腫瘍が食道癌又は非小細胞肺癌である、項1~9に記載の抗腫瘍剤。
【0023】
項11.ペムブロリズマブ及び(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を有効成分として含む医薬組成物。
【0024】
項12.免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する癌を治療するための項11に記載の医薬組成物。
【0025】
項13.免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する癌を治療するための抗腫瘍剤を製造するための、ペムブロリズマブ及び(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩の使用。
【0026】
項14.免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する患者に対し、ペムブロリズマブと併用投与される抗腫瘍剤を製造するための、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩の使用。
【0027】
項15.免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する患者に対し、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩と併用投与される抗腫瘍剤を製造するための、ペムブロリズマブの使用。
【0028】
項16.免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する癌の治療における使用のためのペムブロリズマブと(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩との組合せ。
【0029】
項17.免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する癌の治療におけるペムブロリズマブとの併用療法による使用のための(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩。
【0030】
項18.免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する癌の治療における(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩との併用療法による使用のためのペムブロリズマブ。
【0031】
項19.免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する癌を治療するためのペムブロリズマブ及び(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩の使用。
【0032】
項20.免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する癌をペムブロリズマブとの併用療法により治療するための(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩の使用。
【0033】
項21.免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する癌を(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩との併用療法により治療するためのペムブロリズマブの使用。
【0034】
項22.免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する癌を治療する方法であって、治療有効量の(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩と、治療有効量のペムブロリズマブとを、それを必要とするヒトに対して投与することを含む、方法。
【0035】
項23.(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を有効成分として含む、免疫チェックポイント阻害剤を投与したことがない癌患者に対して、ペムブロリズマブと併用投与される抗腫瘍剤。
【0036】
項24.ペムブロリズマブ及び(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を有効成分として含む免疫チェックポイント阻害剤を投与したことがない癌患者における癌を治療するための医薬組成物。
【0037】
項25.免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する癌を治療するための項24
に記載の医薬組成物。
【0038】
項26.免疫チェックポイント阻害剤を投与したことがない癌患者における癌を治療するための抗腫瘍剤を製造するための、ペムブロリズマブ及び(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩の使用。
【0039】
項27.免疫チェックポイント阻害剤を投与したことがない癌患者に対し、ペムブロリズマブと併用投与される抗腫瘍剤を製造するための、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩の使用。
【0040】
項28.免疫チェックポイント阻害剤を投与したことがない癌患者に対し、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩と併用投与される抗腫瘍剤を製造するための、ペムブロリズマブの使用。
【0041】
項29.免疫チェックポイント阻害剤を投与したことがない癌患者における癌の治療における使用のためのペムブロリズマブと(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩との組合せ。
【0042】
項30.免疫チェックポイント阻害剤を投与したことがない癌患者における癌の治療におけるペムブロリズマブとの併用療法による使用のための(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩。
【0043】
項31.免疫チェックポイント阻害剤を投与したことがない癌患者における癌の治療における(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩との併用療法による使用のためのペムブロリズマブ。
【0044】
項32.免疫チェックポイント阻害剤を投与したことがない癌患者における癌を治療するためのペムブロリズマブ及び(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩の使用。
【0045】
項33.免疫チェックポイント阻害剤を投与したことがない癌患者における癌をペムブロリズマブとの併用療法により治療するための(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩の使用。
【0046】
項34.免疫チェックポイント阻害剤を投与したことがない癌患者における癌を(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エ
ン-1-オン又はその塩との併用療法により治療するためのペムブロリズマブの使用。
【0047】
項35.免疫チェックポイント阻害剤を投与したことがない癌患者における癌を治療する方法であって、治療有効量の(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩と、治療有効量のペムブロリズマブとを、それを必要とするヒトに対して投与することを含む、方法。
【0048】
項36.腫瘍が、FGFR経路における異常を有する、項11~22のいずれか1項に記載の組成物、使用、組合せ、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン若しくはその塩、ペムブロリズマブ、又は方法。
【0049】
項37.FGFR経路における異常が、FGFRの過剰発現、FGFRの遺伝子の異常及びFGFRシグナルの異常状態からなる群から選択される少なくとも1種である、項36に記載の組成物、使用、組合せ、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン若しくはその塩、ペムブロリズマブ、又は方法。
【0050】
項38.(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を有効成分として含む、免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有し、FGFR経路に異常を有しない癌患者に対して、ペムブロリズマブと併用投与される抗腫瘍剤。
【0051】
項39.ペムブロリズマブ及び(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を有効成分として含むFGFR経路に異常を有しない癌を治療するための医薬組成物。
【0052】
項40.免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する癌を治療するための項24に記載の医薬組成物。
【0053】
項41.FGFR経路に異常を有しない癌を治療するための抗腫瘍剤を製造するための、ペムブロリズマブ及び(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩の使用。
【0054】
項42.FGFR経路に異常を有しない癌患者に対し、ペムブロリズマブと併用投与される抗腫瘍剤を製造するための、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩の使用。
【0055】
項43.FGFR経路に異常を有しない癌患者に対し、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩と併用投与される抗腫瘍剤を製造するための、ペムブロリズマブの使用。
【0056】
項44.FGFR経路に異常を有しない癌の治療における使用のためのペムブロリズマブと(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩との組合せ。
【0057】
項45.FGFR経路に異常を有しない癌の治療におけるペムブロリズマブとの併用療法による使用のための(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩。
【0058】
項46.FGFR経路に異常を有しない癌の治療における(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩との併用療法による使用のためのペムブロリズマブ。
【0059】
項47.FGFR経路に異常を有しない癌を治療するためのペムブロリズマブ及び(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩の使用。
【0060】
項48.FGFR経路に異常を有しない癌をペムブロリズマブとの併用療法により治療するための(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩の使用。
【0061】
項49.FGFR経路に異常を有しない癌を(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩との併用療法により治療するためのペムブロリズマブの使用。
【0062】
項50.FGFR経路に異常を有しない癌を治療する方法であって、治療有効量の(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩と、治療有効量のペムブロリズマブとを、それを必要とするヒトに対して投与することを含む、方法。
【0063】
項51.化合物1又はその塩及びペムブロリズマブによる治療が、治療中止後、個体において持続性応答をもたらす、項11~50のいずれか1項に記載の組成物、使用、組合せ、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン若しくはその塩、ペムブロリズマブ、又は方法。
【0064】
項52.化合物1又はその塩が、ペムブロリズマブの前に使用、ペムブロリズマブと同時に使用、又はペムブロリズマブの後に使用される、項11~51のいずれか1項に記載の組成物、使用、組合せ、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン若しくはその塩、ペムブロリズマブ、又は方法。
【0065】
項53.化合物1又はその塩が、連続的に使用又は間欠的に使用される、項11~52
のいずれか1項に記載の組成物、使用、組合せ、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン若しくはその塩、ペムブロリズマブ、又は方法。
【0066】
項54.(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩及びペムブロリズマブが同一治療レジメンでの処置において投与される、項11~53のいずれか1項に記載の組成物、使用、組合せ、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン若しくはその塩、ペムブロリズマブ又は方法。
【0067】
項55.(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩及びペムブロリズマブが、下記方法により用いられる、項11~54のいずれか1項に記載の組成物、使用、組合せ、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン若しくはその塩又はペムブロリズマブ又は方法:
(a)免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する癌患者に(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を4mg、8mg、12mg、16mg、20mgからなる群から選択される用量で1日1回投与し、及びペムブロリズマブを1mg/kg 3週間隔、2mg/kg 3週間隔及び200mg 3週間隔からなる群から選択される用量で投与する
【発明の効果】
【0068】
本開示によれば、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を用い、免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性を有する癌患者に対して優れた抗腫瘍効果を示す新たな併用療法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】実施例2の結果(骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)に対する化合物1の影響)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
本開示は、FGFR阻害活性を有する化合物と免疫チェックポイント阻害薬の併用、すなわち、FGFR阻害活性を有する化合物を含む、免疫チェックポイント阻害薬と併用投与される抗腫瘍剤、FGFR阻害活性を有する化合物を含む抗腫瘍効果増強剤、FGFR阻害活性を有する化合物と免疫チェックポイント阻害薬との組み合わせ、免疫チェックポイント阻害薬と併用して行われる腫瘍の治療のための医薬の製造におけるFGFR阻害活性を有する化合物の使用等の提供に関する。
【0071】
本開示において、免疫チェックポイント阻害薬との併用により優れた抗腫瘍効果をもたらす(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オンは、下記の構造を有する二置換ベンゼンアルキニル化合物である
。本明細書において、上記化合物を簡便のために「化合物1」と記載する。化合物1は、上記特許文献2において実施例化合物2として記載されている。化合物1又はその塩は、優れたFGFR阻害作用を有し、FGFR1、FGFR3、FGFR4のそれぞれの受容体タンパク質チロシンキナーゼの基質ペプチド配列中チロシンへのリン酸化能を阻害することが報告されている(特許文献2)。
【0072】
【化1】
【0073】
上記の本開示における化合物1又はその薬学的に許容される塩は、特に限定するものではないが、例えば特許文献2に記載の製造方法に基づき合成することができる。
【0074】
本開示において、化合物1はそのまま、又は薬学的に許容される塩の形態で使用することができる。化合物1の薬学的に許容される塩としては、特に限定するものではないが、例えば塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸等の有機酸との付加塩、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アンモニウム塩、エチルアミン塩、アルギニン塩等の有機塩基との塩等が挙げられる。
【0075】
本開示における免疫チェックポイント阻害薬は、免疫チェックポイント分子に作用し、対象の生体内における抗腫瘍免疫応答を誘導させ、腫瘍の免疫逃避を制御する作用を有するものである。
【0076】
このようなものとしては、例えば、costimulatory分子(刺激性の共刺激分子)の機能を促進する物質、或いはcoinhibitory分子(抑制性の共刺激分子)の機能を抑制する物質が挙げられる。免疫チェックポイント分子としては、例えば、B7 family(B7-1、B7-2、PD-L1、PD-L2等)、CD28 family(CTLA-4、PD-1等)、TNF superfamily(4-1B
BL、OX40L)、TNF receptor superfamily(4-1BB
、OX40)分子が挙げられ、免疫チェックポイント阻害薬は免疫チェックポイント分子を標的にした物質を用いることができる。例えば、PD-1経路アンタゴニスト、ICO
S経路アゴニスト、CTLA-4経路アンタゴニスト、CD28経路アゴニスト、BTLA経路アンタゴニスト、4-1BB経路アゴニスト等が挙げられる。
【0077】
PD-1経路アンタゴニストは、T細胞上に発現するPD-1や、そのリガンドであるPD-L1又はPD-L2による免疫抑制シグナルを阻害するものであり、例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、PD-1細胞外ドメイン、PD-L1細胞外ドメイン、PD-L2細胞外ドメイン、PD-1-Ig(PD-1細胞外ドメインとIgのFC領域との融合タンパク質)、PD-L1-Ig、PD-L2-Ig、PD-1 siRNA、PD-L1 siRNA、PD-L2 siRNA等が挙げられる。
【0078】
これらの抗体には、免疫グロブリン(IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、IgY等)、Fabフラグメント、F(ab')2フラグメント、一本鎖抗体フラグメント(scFv)、シングルドメイン抗体、Diabody等(Nat.Rev.Immunol.,6:343-357,2006)が挙げられ、これらはヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、マウス抗体、ラマ抗体、ニワトリ抗体等のモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体が挙げられる。
好ましくは、ヒト化IgGモノクローナル抗体又はヒトIgGモノクローナル抗体である。
【0079】
これらのアゴニストないしアンタゴニストは、通常公知の作製方法により製造できる。
【0080】
また、抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブとして既に販売されており、これを用いることもできる。
【0081】
本開示においては、免疫チェックポイント阻害薬は、1種単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0082】
本開示において、2種以上の免疫チェックポイント阻害薬を用いる場合、例えば、抗PD-1抗体や抗CTLA-4抗体等の免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせて用いることもできるし、異なる免疫チェックポイント分子に結合可能な二重特異性抗体を用いることもできる。二重特異性抗体としては、PD-1及びCTLA-4の両方に結合可能なものとして、例えば、XmAb20717(PD-1×CTLA-4)が挙げられる。
【0083】
本開示における治療とは、疾患の治癒もしくは寛解を目的として、又は病勢の進行もしくは再燃の抑制もしくは症状の緩和を目的として行う処置を含む。治療には、外科的処置の前又は後に行う薬剤の投与、又は放射線治療の間又は前後に行う薬剤の投与が含まれる。
【0084】
治療有効量の免疫チェックポイント分子との間の相互作用を遮断する抗体及び化合物1又はその塩は、限定することなく、癌のステージ及び重症度、同様に、患者の健康に関係のある他の要因を含むいくつかの要因に依存する。当業者であれば、治療有効量を決定する方法を知っている。
【0085】
本開示は、ある態様においては、FGFR経路における異常を有する腫瘍に対して用いられる。ある態様では、FGFRは、FGFR1、FGFR2、FGFR3及びFGFR4からなる群から選択される。
【0086】
本開示が適用される腫瘍においては、ある態様においては、FGFR経路における異常を有する腫瘍が好ましい。FGFR経路における異常には、FGFRの過剰発現、FGF
R遺伝子の異常、FGFRシグナルの異常状態が含まれる。
【0087】
本開示は、ある態様においては、FGF/FGFRの異常の有無を問わないが、好ましくはFGFR経路における異常を有する対象に投与されるものである。FGFR遺伝子異常がないような癌腫であっても、化合物1は免疫チェックポイント阻害剤の抗腫瘍効果を促進することが出来る。癌の免疫チェックポイント阻害剤に対する感受性は、癌の微小環境によっても影響されることが知られている。微小環境には、それに限らないが、cancer associated fibroblast(CAF)などFGF/FGFRパスウエイ活性化によって制御される細胞群があり、これらの細胞群が癌の免疫チェックポイント阻害剤に対する感受性を減弱することが知られている。化合物1投与により、CAFに不活化を含めた微小環境の変化を引き起こすことにより、癌の免疫チェックポイント阻害剤の効果を促進することが考えられる。
【0088】
FGFRの過剰発現には、例えば、遺伝子発現及び遺伝子産物タンパク質の高発現等が含まれる。FGFRの発現の有無は、当業者にとって既知の手法により検出されうる。遺伝子発現及び遺伝子産物タンパク質の高発現の検出は、既知の手法、例えば抗体を用いた手法(免疫組織染色、酵素免疫測定法(ELISA)、フローサイトメトリー、イムノブロッティング等)、核酸を用いた手法(in situ hybridization、PCR、ノーザンブロッティング等)、及びこれらに共通の原理の基礎を置く手法によって行いうる。検出デバイスは、既知のデバイス(Genechip、マイクロアレイ等)によって行いうる。
【0089】
本開示は、ある態様においては、FGFR遺伝子の異常を有している腫瘍に対して用いられる。FGFR経路における遺伝子の異常には、遺伝子増幅、遺伝子変異、染色体転座・挿入・逆位、遺伝子融合、遺伝子の再構成等が含まれる。腫瘍におけるFGFR遺伝子の異常は、既にいくつかが当業者にとって利用可能な文献に報告されている(非特許文献7、8)。FGFR遺伝子の異常は、当業者にとって既知の方法、例えばパイロシークエンス、NGS(次世代シーケンシング)を含むDNAシーケンシング、アレル特異的PCR連鎖反応を含むPCRに基づく方法、マイクロアレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)、蛍光in situ hybridization法(FIS
H)や発色in situ hybridization法 (CISH)等によって検出しうる。
【0090】
また本開示は、ある態様においては、FGFRシグナルが活性化している腫瘍に対して用いられる。FGFRは、FGFの結合によって二量体を形成し、リン酸化により活性化され、これにより下流の特定のシグナル伝達分子の動員及び活性化を誘導し、生理機能を発現する。
【0091】
FGFRシグナルの活性化は、当業者にとって既知の手法により検出されうる。シグナル活性化の検出は、例えばFGFRの基質であるFGFの検出、リン酸化酵素であるFGFRの直接的なリン酸化状態又は酵素活性を含む生物学的活性、FGFRシグナルカスケード下流に存在する細胞内基質及び細胞内タンパク質のリン酸化状態、酵素活性を含む生物学的活性の検出、もしくは遺伝子産物又は遺伝子転写産物の検出によって行いうる。
【0092】
本開示が適用される腫瘍としては、別の態様においては、FGFR経路に異常を有しない腫瘍も挙げられる。
【0093】
本開示において、化合物1又はその塩の投与日における1日あたりの好ましい投与量としては、例えば、4mg~160mg、4mg~24mg、12~24mg、16~24mg、20mg等が挙げられる。より具体的には、投与日における1日あたりの投与回数
、投与量としては、1日1回、4mg、8mg、12mg、16mg、20mg等が挙げられる。別の態様において投与日における1日あたりの好ましい投与回数、投与量としては、8mg、12mg、16mg、20mg等が挙げられる。別の態様において投与日における1日あたりの好ましい投与回数、投与量としては、12mg、16mg、20mg等が挙げられる。別の態様において投与日における1日あたりの好ましい投与回数、投与量としては、20mg等が挙げられる。
【0094】
本開示は、ある態様においては、より強い効果の望まれる癌種(例えば脳腫瘍)の場合には化合物1又はその塩の投与量は1日1回20mgより多い投与量となることを含む。
【0095】
化合物1又はその塩の1日あたりの投与量を間歇投与する場合、その投与量は、例えば、1日あたり化合物1又はその塩として約2~1000mgであり、好ましくは1日あたり10~500mgであり、より好ましくは1日あたり20~200mgであり、さらに好ましくは1日あたり50~160mgである。
【0096】
また、化合物1又はその塩の投与スケジュールは、連日投与、又は間歇投与が挙げられる。
【0097】
本開示において、「連日投与」とは、例えば、21日間連続して投与するスケジュールを1サイクルとした投与スケジュールが挙げられ、1サイクルが終了する毎に休薬期間を設けてもよい。
【0098】
本開示において「間歇投与」とは、1週間に2回以上かつ投与間隔(ある投与日と次の投与日との間隔の日数)を1日以上空ける条件を満たす限り、特に限定されない。
【0099】
例えば、1週間で1サイクルの投与スケジュールであって、化合物1又はその塩が、1サイクル当り1~3日おき(ある投与日と次の投与日との間隔が1~3日)に2回以上投与され、当該サイクルが1回又は2回以上繰り返して実施される、投与スケジュール;
14日間で1サイクルの投与スケジュールであって、化合物1又はその塩が、1サイクル当り1~3日おき(ある投与日と次の投与日との間隔が1~3日)に4~7回投与され、当該サイクルが1回又は2回以上繰り返して実施される、投与スケジュール;
14日間で1サイクルの投与スケジュールであって、1サイクルに含まれる14日間のうち、化合物1又はその塩が、第1日目、第4日目、第8日目及び第11日目に投与される、投与スケジュール;
14日間で1サイクルの投与スケジュールであって、1サイクルに含まれる14日間のうち、化合物1又はその塩が、第1日目、第3日目、第5日目、第7日目、第9日目、第11日目及び第13日目に投与される、投与スケジュール;
14日間で1サイクルの投与スケジュールであって、1サイクルに含まれる14日間のうち、化合物1又はその塩が、第1日目、第3日目、第5日目、第8日目、第10日目及び第12日目に投与される、投与スケジュール等が挙げられる。
【0100】
本開示の一実施形態において、化合物1又はその塩の1日1回160mgを第1日目、第3日目、第5日目、第8日目、第10日目及び第12日目に投与される、投与スケジュールが挙げられる。化合物1又はその塩は120mg、80mg、56mg、36mg、24mg、16mg、8mgまで、減量することができる。
【0101】
本開示において、ペムブロリズマブの投与日における1日あたりの投与量としては、化合物1又はその塩によるペムブロリズマブの抗腫瘍効果の増強作用の観点から、ペムブロリズマブを単独で投与する場合における推奨用量の30~100%が好ましく、より好ましくは50~100%であり、より好ましくは70~100%であり、より好ましくは8
0~100%であり、より好ましくは90~100%であり、さらに好ましくは100%である。
【0102】
ペムブロリズマブを単独で投与する場合の好ましい用量としては、1回100~200mg、1回200、又は400mg等が挙げられる。また、別の実施形態において、ペムブロリズマブを単独で投与する場合の好ましい用量としては、1回1.0~2.0mg/kg(体重)、1回2.0mg/kg(体重)等が挙げられる。
【0103】
本開示におけるペムブロリズマブの投与日における1日あたりの好ましい投与量としては、1回100~400mg、1回200、又は400mg等が挙げられる。また、別の実施形態において、本開示におけるペムブロリズマブの投与日における1日あたりの好ましい投与量としては、1回1.0~2.0mg/kg(体重)、1回2.0mg/kg(体重)等が挙げられる。また、ペムブロリズマブの投与間隔は3~4週間隔が好ましく、さらに好ましくは3週間隔である。
【0104】
本開示における化合物1又はその塩の投与日における1日あたりの投与量、ならびにペムブロリズマブの1日あたりの用量、又は用法及び用量の好ましい組合せとしては、以下のものが挙げられる:
本開示における化合物1又はその塩を4mg~160mg及びペムブロリズマブを1回100~400mg。
本開示における化合物1又はその塩を4mg~160mg及びペムブロリズマブを1回100~200mg。
本開示における化合物1又はその塩を4mg~160mg及びペムブロリズマブを1回200mg。
本開示における化合物1又はその塩を4mg~160mg及びペムブロリズマブを1回400mg。
本開示における化合物1又はその塩を4mg~160mg及びペムブロリズマブを1回1.0~2.0mg/kg(体重)。
本開示における化合物1又はその塩を4mg~160mg及びペムブロリズマブを1回2.0mg/kg(体重)。
本開示における化合物1又はその塩を4mg~160mg及びペムブロリズマブを200mg 3週間隔。
本開示における化合物1又はその塩を4mg~160mg及びペムブロリズマブを400mg 3週間隔。
本開示における化合物1又はその塩を4mg~24mg及びペムブロリズマブを1回100~400mg。
本開示における化合物1又はその塩を4mg~24mg及びペムブロリズマブを1回100~200mg。
本開示における化合物1又はその塩を4mg~24mg及びペムブロリズマブを1回200mg。
本開示における化合物1又はその塩を4mg~24mg及びペムブロリズマブを1回400mg。
本開示における化合物1又はその塩を4mg~24mg及びペムブロリズマブを1回1.0~2.0mg/kg(体重)。
本開示における化合物1又はその塩を4mg~24mg及びペムブロリズマブを1回2.0mg/kg(体重)。
本開示における化合物1又はその塩を4mg~24mg及びペムブロリズマブを200mg 3週間隔。
本開示における化合物1又はその塩を4mg~24mg及びペムブロリズマブを400mg 3週間隔。
本開示における化合物1又はその塩を12~24mg及びペムブロリズマブを1回100~400mg。
本開示における化合物1又はその塩を12~24mg及びペムブロリズマブを1回100~200mg。
本開示における化合物1又はその塩を12~24mg及びペムブロリズマブを1回200mg。
本開示における化合物1又はその塩を12~24mg及びペムブロリズマブを1回400mg。
本開示における化合物1又はその塩を12~24mg及びペムブロリズマブを1回1.0~2.0mg/kg(体重)。
本開示における化合物1又はその塩を12~24mg及びペムブロリズマブを1回2.0mg/kg(体重)。
本開示における化合物1又はその塩を12~24mg及びペムブロリズマブを200mg
3週間隔。
本開示における化合物1又はその塩を12~24mg及びペムブロリズマブを400mg
3週間隔。
本開示における化合物1又はその塩を16~24mg及びペムブロリズマブを1回100~400mg。
本開示における化合物1又はその塩を16~24mg及びペムブロリズマブを1回100~200mg。
本開示における化合物1又はその塩を16~24mg及びペムブロリズマブを1回200mg。
本開示における化合物1又はその塩を16~24mg及びペムブロリズマブを1回400mg。
本開示における化合物1又はその塩を16~24mg及びペムブロリズマブを1回1.0~2.0mg/kg(体重)。
本開示における化合物1又はその塩を16~24mg及びペムブロリズマブを1回2.0mg/kg(体重)。
本開示における化合物1又はその塩を16~24mg及びペムブロリズマブを200mg
3週間隔。
本開示における化合物1又はその塩を16~24mg及びペムブロリズマブを400mg
3週間隔。
【0105】
本開示における化合物1又はその塩の投与日における1日あたりの投与回数、投与量及びペムブロリズマブの1日あたりの用量、又は用法及び用量の組合せとしては、以下のものが挙げられる:
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で4mg及びペムブロリズマブを1回100~400mg。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で4mg及びペムブロリズマブを1回100~200mg。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で4mg及びペムブロリズマブを1回200mg。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で4mg及びペムブロリズマブを1回400mg。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で4mg及びペムブロリズマブを1回1.0~2.0mg/kg(体重)。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で4mg及びペムブロリズマブを1回2.0mg/kg(体重)。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で4mg及びペムブロリズマブを200mg 3週間隔。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で4mg及びペムブロリズマブを400mg 3週間隔。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で8mg及びペムブロリズマブを1回100~400mg。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で8mg及びペムブロリズマブを1回100~200mg。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で8mg及びペムブロリズマブを1回200mg。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で8mg及びペムブロリズマブを1回400mg。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で8mg及びペムブロリズマブを1回1.0~2.0mg/kg(体重)。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で8mg及びペムブロリズマブを1回2.0mg/kg(体重)。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で8mg及びペムブロリズマブを200mg 3週間隔。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で8mg及びペムブロリズマブを400mg 3週間隔。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で12mg及びペムブロリズマブを1回100~400mg。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で12mg及びペムブロリズマブを1回100~200mg。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で12mg及びペムブロリズマブを1回200mg。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で12mg及びペムブロリズマブを1回400mg。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で12mg及びペムブロリズマブを1回1.0~2.0mg/kg(体重)。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で12mg及びペムブロリズマブを1回2.0mg/kg(体重)。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で12mg及びペムブロリズマブを200mg 3週間隔。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で12mg及びペムブロリズマブを400mg 3週間隔。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で16mg及びペムブロリズマブを1回100~400mg。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で16mg及びペムブロリズマブを1回100~200mg。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で16mg及びペムブロリズマブを1回200mg。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で16mg及びペムブロリズマブを1回400mg。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で16mg及びペムブロリズマブを1回1.0~2.0mg/kg(体重)。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で16mg及びペムブロリズマブを1回2.0mg/kg(体重)。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で16mg及びペムブロリズマブを200mg 3週間隔。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で16mg及びペムブロリズマブを400mg 3週間隔。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で20mg及びペムブロリズマブを1回100~400mg。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で20mg及びペムブロリズマブを1回100~200mg。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で20mg及びペムブロリズマブを1回200mg。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で20mg及びペムブロリズマブを1回400mg。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で20mg及びペムブロリズマブを1回1.0~2.0mg/kg(体重)。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で20mg及びペムブロリズマブを1回2.0mg/kg(体重)。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で20mg及びペムブロリズマブを200mg 3週間隔。
本開示における化合物1又はその塩を1日1回で20mg及びペムブロリズマブを400mg 3週間隔。
【0106】
本開示における化合物1又はその塩とペムブロリズマブとの使用割合は特に限定されないが、好ましくは、100質量部の化合物1又はその塩に対し、ペムブロリズマブを10~10000質量部、より好ましくは100~1000質量部の範囲で設定できる。
【0107】
本開示において、化合物1又はその塩を含む剤形中の当該化合物1又はその塩の配合割合は特に限定されないが、例えば、100~100000質量%、好ましくは1000~10000質量%の範囲で適宜設定することができる。本開示において、免疫チェックポイント阻害薬を含む剤形中の当該免疫チェックポイント阻害薬の配合割合は特に限定されないが、例えば、100~100000質量%、好ましくは1000~10000質量%の範囲で適宜設定することができる。ここで、抗腫瘍剤を複数の剤形に分けて製剤化した実施形態において、上記好ましい配合割合は、有効成分を含む剤形と有効成分を含まない剤形との合計量に対する有効成分の配合割合ではなく、有効成分を含む剤形の質量に対する有効成分の配合割合を意味する。例えば、化合物1又はその塩の配合割合の場合、化合物1又はその塩を含む剤形のみの質量に対する化合物1又はその塩の質量%を意味する。
【0108】
本開示の一実施形態において、本発明の併用療法は、それ以前にホルモン療法、免疫療法(癌ペプチドワクチン療法等)、外科的手術、放射線治療、化学療法剤で治療を受けていない患者、すなわち、治療未経験患者に投与される。他の実施形態において、併用療法は、化学療法剤を用いた、それ以前の治療の後に、持続性の応答を達成するのに失敗した患者に投与される。
【0109】
本開示の一実施形態において、本発明の併用療法は、それ以前の免疫チェックポイント阻害剤の治療経験のない患者に投与される。また、他の実施形態において、併用療法は、FGFR阻害剤による治療経験のある患者に投与される。
【0110】
本開示の一実施形態において、持続性応答とは免疫チェックポイント阻害薬等の免疫療法を対象に行うことにより、癌に対する免疫応答が拡大して維持されることである。持続性応答については例えば、Tリンパ球の免疫チェックポイント阻害剤の結合の測定により行いうる。
【0111】
なお、本開示において「推奨用量」とは、臨床試験等により決定された、重篤な副作用を発症せずに安全に使用できる範囲で、最大の治療効果をもたらす投与量であり、具体的には、日本独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA;Pharmaceutic
als and Medical Devices Agency)、米国食品医薬品局(FDA;Food and Drug Administration)、欧州医薬品庁(EMA;European Medicines Agency)等の公的機関や団体により承認・推奨・勧告され、添付文書・インタビューフォーム・治療ガイドライン等に記載された投与量が挙げられ、PMDA、FDA又はEMAのいずれかの公的機関により承認された投与量が好ましい。
【0112】
本開示の抗腫瘍剤の投与スケジュールは、癌種や病期等に応じて適宜選択しうる。
【0113】
化合物1又はその塩の場合は、1日目~21日間[例えば、3週間(21日間)]連日
投与スケジュールが好ましいが、その後休薬期間があってもよく、より好ましくは3週間(21日間)連日投与である。免疫チェックポイント阻害薬の投与スケジュールは、例えば、2週間~4週間間隔が好ましい。ペムブロリズマブの場合は、2週間、3週間、4週間間隔で投与する投与スケジュールが好ましく、より好ましくは3週間間隔である。本開示において、薬剤AのX日間隔での投与とは、薬剤Aを投与した日を day1とし、そ
の翌日をday2、さらにその翌日をday3・・・とした場合に、次に薬剤Aを投与するのがday X+1となることを意味する。また、投与スケジュールを計算する際、「1週間」、「2週間」、「3週間」、「4週間」とは、それぞれ、「7日」、「14日」、「21日」、「28日」を意味する。従って、本開示において、薬剤Aの3週間間隔での投与とは、薬剤Aを投与した日をday1とした場合に、次に薬剤Aを投与するのがday22となることを意味する。
【0114】
本開示の抗腫瘍剤の1日の投与回数は、癌種や病期等に応じて適宜選択しうる。ペムブロリズマブと併用して投与される場合は、1日1回が好ましい。
【0115】
化合物1又はその塩及びペムブロリズマブの投与順序は、癌種や病期等に応じて適宜選択しうるが、一治療レジメンにおいて、どちらを先に投与しても、同時に投与しても構わない。
【0116】
本開示の一実施形態において、化合物1又はその塩は、ペムブロリズマブの効果を増強する。また、他の実施形態においては、ペムブロリズマブは化合物1又はその塩の作用を増強する。
【0117】
本開示の一実施形態では、PD-L1の発現の有無を問わないが、好ましくはPD-L1を1%以上発現している対象に投与されるものであり、さらに好ましくは50%以上発現している対象に投与されるものである。
【0118】
本開示の一実施形態では、PD-L1発現について陽性の検査結果が出ている腫瘍を有する対象に実施される。PD-L1発現は、患者から採取された腫瘍試料のFFPE又は凍結組織切片上でのIHCアッセイにおいて診断用の抗ヒトPD-L1抗体、又はその抗原結合断片を使用して検出することが可能である。通常、医師は、免疫チェックポイント阻害薬及びFGFR阻害剤の併用投与開始前に対象から採取された腫瘍組織試料を用いてPD-L1発現を判定するための診断検査を指示すると考えられるが、医師は、例えば、治療サイクルの終了時など、治療開始後に、治療開始前の又は治療開始後の診断検査を指示することができると想定されている。
【0119】
本開示において、「癌」ないし「腫瘍」とは、無秩序な細胞増殖を特徴とする哺乳動物の生理状態を表す。「癌」及び「腫瘍」は本明細書において同意味であり、互換的に使用される。癌には、固形癌及び血液癌が含まれる。例として、癌腫、リンパ腫、白血病、芽腫、肉腫、境界悪性腫瘍(カルチノイド)が含まれるが、これらに限定されない。
【0120】
本開示の併用方法の対象となる癌には、例えば、頭頚部癌、消化器癌(食道癌、胃癌、十二指腸癌、肝臓癌、胆道癌(胆嚢・胆管癌等)、膵臓癌、尿路上皮癌、小腸癌、大腸癌(結腸直腸癌、結腸癌、直腸癌等))、肺癌(非小細胞肺癌、小細胞肺癌、中皮腫(悪性胸膜中皮腫、腹膜中皮腫、心膜中皮腫等))、乳癌、生殖器癌(卵巣癌、子宮癌(子宮頚癌、子宮体癌、子宮内膜癌等)等)、腎癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍、皮膚癌(悪性黒色腫、表皮癌等)、血液癌(多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病等)、骨・軟部腫瘍、横紋筋肉腫、脳腫瘍、悪性神経鞘腫、神経内分泌腫瘍、甲状腺癌等が挙げられる。
ある実施形態においては、膀胱癌、尿路上皮癌、消化器癌(食道癌、胃癌、十二指腸癌、肝臓癌、胆道癌(胆嚢・胆管癌等)、膵臓癌、小腸癌、大腸癌(結腸直腸癌、結腸癌、直腸癌等)、卵巣癌、頭頚部癌、子宮癌(子宮頚癌、子宮体癌等)が対象となる。好ましくは、尿路上皮癌、食道癌、非小細胞肺癌であり、さらに好ましくは食道癌、非小細胞肺癌である。なお、ここで癌には、原発巣のみならず、他の臓器(肝臓等)に転移した癌をも含む。また、本開示の抗腫瘍剤は、腫瘍を外科的に摘出した後に再発防止のために行われる術後補助化学療法に用いるものであっても、腫瘍を外科的に摘出するために事前行われる術前補助化学療法に用いるものであってもよい。
【0121】
本開示の一実施形態では、併用方法の対象となる癌には、悪性黒色腫、非小細胞肺癌、ホジキシリンパ腫、尿路上皮癌、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌、腎細胞癌、頭頸部癌、食道癌、胃癌である。
【0122】
本明細書で使用される場合、「併用(療法)」という用語は、2つ以上の化合物/薬剤(上記で定義した)の組み合わせの使用を含む療法を定義することを意図している。 従
って、本出願における「併用(療法)」、「組み合わせ」及び「組み合わせて」の化合物/薬剤の使用は、同じ全体的な治療レジメンの一部として投与される化合物/薬剤を意味
し得る。2つ以上の化合物/薬剤のそれぞれの薬量は異なり得る:それぞれは、同時に、又は異なる時間に投与され得る。 したがって、組み合わせの化合物/薬剤は、同一の医
薬製剤(すなわち一緒に)又は異なる医薬製剤(すなわち別々に)のいずれかにおいて、連続して(例えば、前又は後に)又は同時に投与され得ることが理解される。 同じ製剤
では同時に、単一の製剤としてであるが、同時に異なる医薬製剤では非一体的である。
【0123】
本明細書において「レジメン」、「治療レジメン」とは、薬物治療における薬剤の種類や量、期間、手順などを時系列で示した計画のことであり、各薬剤の投与量や投与方法、投与順、投与日を示すものである。一治療レジメンでの処置としては、例えば、1サイクルの初日に併用する薬剤を同時又は実質的に同時期に投与開始する方法が挙げられる。また、例えば、3週間を1サイクルとして、薬剤Aを先に投与を開始し、一週間後に薬剤Bの投与を開始するが、1サイクルとして実質的に同時に投与する形態も一治療レジメンでの処置に包含される。
【0124】
本開示の化合物1又はその塩とペムブロリズマブの治療レジメンにおいては、化合物1又はその塩とペムブロリズマブだけでなく、さらに他の薬剤を含むことも可能である。
【0125】
本開示の抗腫瘍剤の投与形態としては特に制限は無く、治療目的に応じて適宜選択でき、具体的には経口剤(錠剤、被覆錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤等)、注射剤、坐剤、貼付剤、軟膏剤等が例示できる。化合物1又はその塩の場合は経口剤が好ましい。ペムブロリズマブの場合は、上記の投与形態が挙げられ、注射剤が好ましい。
【0126】
本開示の抗腫瘍剤は、有効成分であるペムブロリズマブ及び化合物1又はその塩そのものを抗腫瘍剤として用いてもよいし、その投与形態に応じて、薬学的に許容される担体を用いて、通常公知の方法により調製した医薬組成物としてもよい。斯かる担体としては、
通常の薬剤に汎用される各種のもの、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、pH調整剤、緩衝剤、安定化剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を例示できる。
【0127】
本開示の抗腫瘍剤は、各有効成分の投与形態や投与スケジュールに基づき、各有効成分を複数の剤形に分けて製剤化してもよく、一つの剤形にまとめて製剤化してもよい。また、各製剤を併用投与に適した1個のパッケージにまとめて製造販売してもよく、また各製剤を別個のパッケージに分けて製造販売してもよい。医薬組成物の実施形態においても同様である。従って、「ペムブロリズマブ及び化合物1又はその塩を有効成分として含む医薬組成物」には、各有効成分を複数の剤形に分けて製剤化したものも、一つの剤形にまとめて製剤化したものも含まれる。各有効成分を複数の剤形に分けて製剤化した当該医薬組成物には、各製剤を併用投与に適した1個のパッケージにまとめたものも、各製剤を別個のパッケージに分けたものも包含される。
【0128】
本開示は化合物1又はその塩を含む抗腫瘍剤と、癌患者に対して化合物1又はその塩とペムブロリズマブが併用投与されることを記載した使用説明書を含むキット製剤に関する。ここで「使用説明書」とは、上記投与量が記載されたものであればよく、法的拘束力の有無を問わないが、上記投与量が推奨されているものが好ましい。具体的には、添付文書、パンフレット等が例示される。また、使用説明書を含むキット製剤とは、キット製剤のパッケージに使用説明書が印刷・添付されているものであっても、キット製剤のパッケージに抗腫瘍剤とともに使用説明書が同封されているものであってもよい。
【0129】
FGFR阻害剤による作用メカニズム、及び免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性の発現を検出する方法として、腫瘍免疫微小環境の調節を調べる方法(非特許文献13)が挙げられるが、方法は限定されない。
【0130】
免疫チェックポイント阻害薬の薬効にはがん周囲の微小環境が重要であり、その中の1つにCAF (Cancer Associated fibroblast)が重要な役割を果たすことが知られている。FGFはFibroblast細胞の増殖を制御する因子であり、そのレセプターであるFGFRはFGFによるシグナルを細胞で受け取り細胞増殖を推進する分子である。骨髄由来陽性細胞(MDSC(Myeoloid-derived suppressor cells))は、病的な条件で腫瘍組織、リンパ節、末梢血に増加する未熟な骨髄細胞であり、強力な免疫抑制活性を有することが知られている。
【0131】
MDSCは免疫チェックポイント阻害薬の効果予測マーカーとなり得る指標、免疫チェックポイント阻害薬に対する患者の耐性に寄与し得ることが報告されている(非特許文献14)。
【0132】
本明細書において免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性(抵抗性、難治性ともいう)とは、免疫チェックポイント阻害薬を投与された後に、治療効果が見込まれなくなり、少なくとも一つの臨床評価において病勢の進行が確認された対象の状態、免疫チェックポイント阻害剤に対する不耐応、免疫チェックポイント阻害剤の投与後の再発、又は免疫チェックポイント阻害薬の治療経験はないが、免疫チェックポイント阻害薬による治療効果が見込めまれない対象の状態も含む。ある実施形態においては、薬理試験における免疫チェックポイント阻害薬に対して有効な効果を示さないこと、例えば、有効性を示さないと考えられる細胞株の反応も含むものである。耐性には治療の初めから抗癌剤が有効性を示さない自然耐性と、治療を続けていくうちに最初は有効であった抗癌剤が効かなくなり癌の増悪につながる獲得耐性がある。本明細書において、耐性は自然耐性と獲得耐性の両方の意味を包含する。
【0133】
本明細書において免疫チェックポイント阻害薬に対する不応とは、免疫チェックポイント阻害剤を投与された後に、免疫チェックポイント阻害剤が効果を示さなくなり、効果を発揮しないことを示す。不応を示す原因の一つとして、耐性が原因と考えられる。
【0134】
本開示の抗腫瘍剤は、癌の治療に用いることができる。本明細書に記載される併用療法等の治療レジメンによる治療を受ける癌患者に言及する場合の「抗腫瘍効果」は、例えば、PFS(無増悪生存期間)、DCR(病勢コントロール率)、DOR(奏効期間)、OS(全生存期間)、ORR(客観的奏効率)、DCR(病勢コントロール率)、TTR(初回奏効に至るまでの期間)、PROs(Patient-Reported Outcomes)等の、少なくとも1つの評価を意味する。一実施形態において、固形癌を対象とした場合には本明細書に記載される併用療法に対する腫瘍評価が、RECIST1.1基準(固形癌効果判定基準)で評価され、抗腫瘍効果はSD(安定)、PR(部分奏効)、CR(完全奏効)、PD(進行)で示される。脳腫瘍の腫瘍評価の場合にはGd-MRI(ガドリウム(Gd)キレート造影剤を用いた増強前及び増強後を含む標準的な脳腫瘍MRIにより実施することもできる。
【実施例0135】
次に実施例及び参考例を挙げて本開示をさらに詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本開示の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0136】
(実施例1)(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩とペムブロリズマブの併用による、癌免疫療法耐性癌(例えば、非小細胞肺癌、食道癌、尿路上皮癌)患者の臨床試験
本研究は、日本医薬情報センターにJapicCTI‐195063として登録されている臨床試験に基づき、FGFR過剰発現癌患者(例えば、非小細胞肺癌、食道癌、、尿路上皮癌)において、化合物1又はその塩及びペムブロリズマブの併用の有効性及び安全性を評価する。具体的には、患者を所定の期間(例えば、24週間)、化合物1又はその塩を経口により様々な用量(例えば、20mg)を21日間投与し、ペムブロリズマブ(例えば、1回200mg)を点滴静注により3週毎(21日毎)に投与する。1サイクルを21日間として、これを繰り返す。場合によってはプラセボを対照に実施してもよく、付加的にさらなる患者に対し化合物1若しくはその塩及び/又はペムブロリズマブを投与してもよい。また、ペムブロリズマブの治療経験がある患者に化合物1又はその塩と併用投与してもよい。
【0137】
化合物1又はその塩とペムブロリズマブとの併用は、これらの単独療法から予想し得ない治療効果をもたらし得る。例えば、本開示のある実施形態においては、当該併用は、どちらか単独による治療の測定結果のうち少なくとも1つと比べ、効果が高いことが見いだされ得る。また、例えば、本開示のある実施形態においては、化合物1又はその塩とペムブロリズマブとを併用することにより、相乗効果が得られ得る。
【0138】
以下の測定結果のうちの少なくとも1つに従えば、化合物1又はその塩及びペムブロリズマブの併用が、いずれかの一方のみよりも効果的であり得る:癌細胞数の減少、腫瘍サイズの引下げ、末梢臓器中への癌細胞浸潤の速度の低下、腫瘍転移又は腫瘍増殖の速度の低下、全奏効率、又は無増悪生存もしくは生存全体の延長。
【0139】
(実施例2)マウス乳癌細胞4T1皮下移植腫モデルにおける腫瘍免疫に対する影響
マウス乳癌株4T1を6週齢の雄性BALB/cAJclマウス皮下に移植した。細胞
移植日をDay0とし翌日(Day1)より化合物1を15mg/kg/日の用量にて1
4日間連日経口投与を行った。最終投与翌日(Day15)に、腫瘍、脾臓及び末梢血からリンパ球細胞画分を単離し、セルソーターを用いて骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)(CD11b+/Gr-1+細胞)、CD4陽性T細胞及びCD8陽性T細胞を測定した。
また、化合物1の用量を30mg/kg/日とする以外、上記と同様にしてマウス乳癌細
胞4T1皮下移植腫モデルの作製、薬物投与及び各細胞の測定を行った。Controlとして、化合物1を投与しない以外、上記と同様の操作を行った。結果を図1に示す。
【0140】
化合物1の投与は、いずれの用量においても薬剤無投与Controlに比して有意(
Student t-test, P<0.01)に脾臓リンパ球細胞画分中のMDSCを減少させた。末梢血リンパ球細胞画分中のMDSCについては、Controlに比して用量依存的な減少傾向を示した。末梢血リンパ球細胞画分中のCD4陽性T細胞、脾臓
リンパ球細胞画分及び末梢血リンパ球細胞画分中のCD8陽性T細胞について、Controlに比して用量依存的な増加傾向を示した。
【0141】
これらの結果よりin vivoモデルにおいて化合物1のMDSCに対する抑制効果
が確認されたことから、化合物1が免疫抑制メカニズムを介した抗腫瘍効果を示す可能性が示された。さらに化合物1投与によりCD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞の増加が認められたことから化合物1により担がんマウスにおける免疫活性の活性化が確認された。以上から、化合物1又はその塩と免疫チェックポイント阻害薬を併用することで、抗腫瘍効果を増強することが示唆された。
【0142】
実施例2で用いたマウス乳癌株4T1はFGFR遺伝子異常を有しない乳癌細胞であるが、化合物1投与によりMDSCに対する抑制効果が確認され、CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞の増加が認められ、化合物1が免疫抑制メカニズムを介した抗腫瘍効果を示すことが示された。また尿路上皮癌患者に抗FGFR3抗体Vofatamabを投与することにより、癌が免疫チェックポイント阻害剤に対して低感受性の”コールド”から高感受性の“ホット”状態に変わることにより、FGFR遺伝子異常が無い患者でもペムブロリズマブ併用によるレスポンスが見られている(W. Choiら、Presented at AACR Bladder cancer: Transforming the Field Special Conference, May 18 -21,
2019, Denver, USA)。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を有効成分として含む、癌患者に対して、ペムブロリズマブと併用投与される抗腫瘍剤。
【請求項2】
当該抗腫瘍剤による治療が、治療中止後、個体において持続性応答をもたらす、請求項1に記載の抗腫瘍剤。
【請求項3】
(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩が、ペムブロリズマブの前に使用、ペムブロリズマブと同時に使用、又はペムブロリズマブの後に使用される、請求項1に記載の抗腫瘍剤。
【請求項4】
(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩が、連続的に使用又は間欠的に使用される、請求項1に記載の抗腫瘍剤。
【請求項5】
(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩及びペムブロリズマブが同一治療レジメンでの処置において投与される、請求項1に記載の抗腫瘍剤。
【請求項6】
(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を4mg、8mg、12mg及び16mg、20mgからなる群から選択される用量で1日1回投与し、及びペムブロリズマブを1mg/kg 3週間隔、2mg/kg 3週間隔及び200mg 3週間隔からなる群から選択される用量で癌患者に投与する、請求項1に記載の抗腫瘍剤。
【請求項7】
(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を8mg、12mg、16mg及び20mgからなる群から選択される用量で1日1回投与し、及びペムブロリズマブを200mg 3週間隔の用量で癌患者に投与する、請求項1に記載の抗腫瘍剤。
【請求項8】
(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)- 1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその塩を20mgの用量で1日1回投与し、及びペムブロリズマブを200mg 3週間隔の用量で癌患者に投与する、請求項1に記載の抗腫瘍剤。
【請求項9】
腫瘍が食道癌、非小細胞肺癌又は尿路上皮癌である、請求項1~8のいずれか1項に記載の抗腫瘍剤。
【請求項10】
腫瘍が食道癌である、請求項9に記載の抗腫瘍剤。
【請求項11】
癌患者が、免疫チェックポイント阻害剤を投与したことがない癌患者である、請求項1~8のいずれか1項に記載の抗腫瘍剤。
【請求項12】
癌患者が、免疫チェックポイント阻害剤に対する耐性を有する癌患者である、請求項1~8のいずれか1項に記載の抗腫瘍剤。
【請求項13】
腫瘍が食道癌、非小細胞肺癌又は尿路上皮癌である、請求項11に記載の抗腫瘍剤。
【請求項14】
腫瘍が食道癌である、請求項11に記載の抗腫瘍剤。
【請求項15】
腫瘍が食道癌、非小細胞肺癌又は尿路上皮癌である、請求項12に記載の抗腫瘍剤。
【請求項16】
腫瘍が食道癌である、請求項12に記載の抗腫瘍剤。