(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152872
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】環境試験装置
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024138446
(22)【出願日】2024-08-20
(62)【分割の表示】P 2021131223の分割
【原出願日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004303
【氏名又は名称】弁理士法人三協国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田辺 将利
(57)【要約】
【課題】環境試験装置において電磁シールド効果を高める。
【解決手段】環境試験装置は、試験室12aを含み、電気的に導通可能な断熱パネル23を用いて形成された断熱室12を備える。断熱室12は、出入口を有する室本体20と、出入口を開閉する扉体21と、を有する。室本体20を形成する断熱パネル23は、外パネル23aと、内パネル23bと、を有する。外パネル23aと内パネル23bの間に電波吸収体24が配置される。室本体20を形成する断熱パネル23と扉体21を形成する断熱パネル23とは互いに電気的に導通可能に接続される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験室を含み、電気的に導通可能な断熱パネルを用いて形成された断熱室と、
空調機と、
前記空調機で空調された空気を前記試験室に流入させる気流を生成する送風機と、を備え、
前記断熱室は、出入口を有する室本体と、前記出入口を開閉する扉体と、を有し、
前記室本体を形成する断熱パネルは、外パネルと、前記外パネルの内側に配置された内パネルと、を有し、
前記室本体を形成する前記断熱パネルと前記扉体を形成する断熱パネルとは、互いに電気的に導通可能に接続され、
前記室本体を形成する前記断熱パネルには、前記送風機の軸又は前記空調機の一部を構成する部材の少なくとも一方を挿通させる開口が形成され、
前記開口が形成された前記断熱パネルには、当該断熱パネルと電気的に導通可能にシールドボックスが取り付けられており、前記シールドボックスは、底面部と前記底面部周縁に沿って延びる周面部とを有して一方向に開口するとともに導電性の部材で構成されており、前記断熱パネルの前記開口を覆った状態で前記底面部を前記断熱パネルに対向させて取り付けられている、環境試験装置。
【請求項2】
前記空調機は、冷媒と空気とを熱交換させて冷媒を蒸発させる蒸発器を含み、
前記開口は、前記蒸発器につながる配管を前記断熱室内から引き出す開口であり、
前記シールドボックスは、前記配管の少なくとも一部を覆った状態で前記底面部を前記断熱パネルに対向させて取り付けられている、請求項1に記載の環境試験装置。
【請求項3】
前記シールドボックスと前記開口が形成された前記断熱パネルとによって区画された空間に電波吸収体が配置されている、請求項1又は2に記載の環境試験装置。
【請求項4】
前記室本体を形成する前記断熱パネルには、給水用配管および排水用配管の少なくとも一方を通す開口が形成され、
前記開口が形成された前記断熱パネルには、前記開口を覆うように、当該断熱パネルと電気的に導通可能にシールドボックスが取り付けられている、請求項1から3の何れか1項に記載の環境試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているように、供試体の環境試験を行うための環境試験装置が知られている。環境試験装置は、例えば、恒温槽、恒温恒湿槽、熱サイクル試験装置等として構成される。環境試験装置では、供試体が配置される試験室が、室本体と、室本体の前面開口を開閉する扉体と、によって囲われた空間に構成される。室本体及び扉体は何れも断熱壁で構成される。断熱壁は、内壁を構成する金属板と、外壁を構成する金属板と、両金属板間の空間に配置された断熱材と、からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された環境試験装置では、電磁シールド効果がない。すなわち、室本体を構成する断熱壁と、扉体を構成する断熱壁とには、何れも金属板が用いられるが、金属板が用いられるだけでは、電磁シールド効果は得られない。このため、供試体が外部からの電磁波の影響を受けたり、供試体から発せられた電磁波が外部に漏出することがある。
【0005】
本発明の目的は、環境試験装置において電磁シールド効果を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る環境試験装置は、試験室を含み、電気的に導通可能な断熱パネルを用いて形成された断熱室と、空調機と、前記空調機で空調された空気を前記試験室に流入させる気流を生成する送風機と、を備える。前記断熱室は、出入口を有する室本体と、前記出入口を開閉する扉体と、を有する。前記室本体を形成する断熱パネルは、外パネルと、前記外パネルの内側に配置された内パネルと、を有する。前記外パネルと前記内パネルの間に電波吸収体が配置される。前記室本体を形成する前記断熱パネルと前記扉体を形成する断熱パネルとは、互いに電気的に導通可能に接続されている。
【0007】
本発明では、室本体を形成する断熱パネルと扉体を形成する断熱パネルとは、互いに電気的に導通可能に接続されている。このため、断熱室が全体として導電可能になるため、電磁シールド効果が得られる。しかも、室本体を形成する外パネルと内パネルの間に電波吸収体が配置されるため、外パネル及び内パネル間で繰り返し反射する電波が電波吸収体によって吸収される。したがって、断熱パネル内において電波を減衰させることができる。よって、環境試験装置において電磁シールド効果を高めることができる。また、電波吸収体は、外パネルと内パネルの間に配置されるため、試験室内の空気の状態(温度、湿度)の影響を受けない。したがって、高温試験や高湿試験が行われるとしても、電波吸収体が劣化することを抑制できる。
【0008】
前記室本体を形成する前記断熱パネルには、前記送風機の軸を挿通させる開口が形成されてもよい。この場合、前記開口が形成された前記断熱パネルには、前記開口を覆うように、当該断熱パネルと電気的に導通可能にシールドボックスが取り付けられていてもよい。
【0009】
この態様では、送風機の軸が断熱パネルを通過するように配置させることが可能なだけでなく、開口を通して電磁波が漏れ出たり、電磁波が断熱室内に侵入することを抑制できる。
【0010】
前記室本体を形成する前記断熱パネルには、前記空調機に含まれる蒸発器につながる配管を前記断熱室から引き出す開口が形成されてもよい。この場合、前記開口が形成された前記断熱パネルには、前記開口および前記配管の少なくとも一部を覆うように、当該断熱パネルと電気的に導通可能にシールドボックスが取り付けられていてもよい。
【0011】
この態様では、蒸発器につながる配管が断熱パネルを通過するように配置させることが可能なだけでなく、配管を通すための開口を通して電磁波が漏れ出たり、電磁波が断熱室内に侵入することを抑制できる。
【0012】
本発明に係る環境試験装置は、試験室を含み、電気的に導通可能な断熱パネルを用いて形成された断熱室と、空調機と、前記空調機で空調された空気を前記試験室に流入させる気流を生成する送風機と、を備える。前記断熱室は、出入口を有する室本体と、前記出入口を開閉する扉体と、を有する。前記室本体を形成する断熱パネルは、外パネルと、前記外パネルの内側に配置された内パネルと、を有する。前記室本体を形成する前記断熱パネルと前記扉体を形成する断熱パネルとは、互いに電気的に導通可能に接続されている。前記室本体を形成する前記断熱パネルには、前記送風機の軸を挿通させる開口が形成される。前記開口が形成された前記断熱パネルには、前記開口を覆うように、当該断熱パネルと電気的に導通可能にシールドボックスが取り付けられている。
【0013】
本発明では、室本体を形成する断熱パネルと扉体を形成する断熱パネルとは、互いに電気的に導通可能に接続されている。このため、断熱室が全体として導電可能になるため、電磁シールド効果が得られる。しかも、送風機の軸を挿通させる開口が形成された断熱パネルには、前記開口を覆うように、当該断熱パネルと電気的に導通可能にシールドボックスが取り付けられている。このため、送風機の軸が断熱パネルを通過するように配置させることが可能なだけでなく、開口を通して電磁波が漏れ出たり、電磁波が断熱室内に侵入することを抑制できる。したがって、環境試験装置において電磁シールド効果を高めることができる。
【0014】
本発明に係る環境試験装置は、試験室を含み、電気的に導通可能な断熱パネルを用いて形成された断熱室と、冷媒と空気とを熱交換させて冷媒を蒸発させる蒸発器を含み、空調を行う空調機と、前記空調機で空調された空気を前記試験室に流入させる気流を生成する送風機と、を備える。前記断熱室は、出入口を有する室本体と、前記出入口を開閉する扉体と、を有する。前記室本体を形成する断熱パネルは、外パネルと、前記外パネルの内側に配置された内パネルと、を有する。前記室本体を形成する前記断熱パネルと前記扉体を形成する断熱パネルとは、互いに電気的に導通可能に接続される。前記室本体を形成する前記断熱パネルには、前記蒸発器につながる配管を前記断熱室内から引き出す開口が形成される。前記開口が形成された前記断熱パネルには、前記開口および前記配管の少なくとも一部を覆うように、当該断熱パネルと電気的に導通可能にシールドボックスが取り付けられている。
【0015】
本発明では、室本体を形成する断熱パネルと扉体を形成する断熱パネルとは、互いに電気的に導通可能に接続されている。このため、断熱室が全体として導電可能になるため、電磁シールド効果が得られる。しかも、蒸発器につながる配管を通過させる開口が形成された断熱パネルには、前記開口を覆うように、当該断熱パネルと電気的に導通可能にシールドボックスが取り付けられている。このため、蒸発器につながる配管が断熱パネルを通過するように配置させることが可能なだけでなく、開口を通して電磁波が漏れ出たり、電磁波が断熱室内に侵入することを抑制できる。したがって、環境試験装置において電磁シールド効果を高めることができる。
【0016】
前記シールドボックスと前記開口が設けられた断熱パネルとによって区画された空間に電波吸収体が配置されていてもよい。
【0017】
この態様では、シールドボックスと断熱パネルとの間で繰り返し反射する電波が電波吸収体によって吸収される。したがって、シールドボックスと断熱パネルとによって区画される空間内において電波を減衰させることができる。
【0018】
前記室本体を形成する前記断熱パネルには、給水用配管および排水用配管の少なくとも一方を通す開口が形成されてもよい。この場合、前記開口が形成された前記断熱パネルには、前記開口を覆うように、当該断熱パネルと電気的に導通可能にシールドボックスが取り付けられていてもよい。
【0019】
この態様では、給水用配管および排水用配管の少なくとも一方が断熱パネルを通過するように配置させることが可能なだけでなく、開口を通して電磁波が漏れ出たり、電磁波が断熱室内に侵入することを抑制できる。
【0020】
前記室本体を形成する前記断熱パネルと前記扉体を形成する前記断熱パネルとを互いに電気的に導通可能に接続する導電接続部を備え、前記導電接続部は、前記室本体を形成する前記断熱パネルに接触するように配置された導電性の枠部材と、前記扉体を形成する前記断熱パネルに接触するように配置されるとともに、前記扉体が前記出入口を閉じる位置で前記枠部材に接触する導電性の接触部材と、を含んでもよい。この場合、前記枠部材は、シールドガスケットと、前記シールドガスケットを前記室本体を形成する前記断熱パネルに押し付ける枠状の本体部と、前記本体部に固定され前記接触部材が接触可能な接続部と、を有してもよい。
【0021】
この態様では、枠部材のうち、枠状の本体部は、室本体を形成する断熱パネルにシールドガスケットを押し付ける。これにより、枠部材と室本体の断熱パネルとの間の電気的な導通が確保される。そして、枠部材の接続部には、扉体の断熱パネルに接触する接触部材が接触する。したがって、枠部材は、接触部材を介して扉体を構成する断熱パネルと電気的に導通可能な状態となる。
【0022】
前記導電接続部は、前記接触部材が前記接続部に接触した状態において、前記室本体及び前記扉体間の間隙に隣接する空間である隣接空間を前記試験室内に形成してもよい。この場合、前記隣接空間は、前記試験室内における前記隣接空間以外の空間である主空間から隔離されてもよい。
【0023】
この態様では、室本体及び扉体間の間隙に隣接する隣接空間が、試験室内における隣接空間以外の主空間から隔離されるため、主空間から室本体及び扉体間の間隙への伝熱が抑制される。したがって、導電接続部により、室本体及び扉体間の電気的な導通を確保するだけでなく、主空間から室本体及び扉体間の間隙への伝熱の抑制にも寄与できる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、環境試験装置において電磁シールド効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態に係る環境試験装置を概略的に示す図である。
【
図2】前記環境試験装置の断熱室における室本体及び扉体のヒンジ付近を拡大して示す図である。
【
図3】前記断熱室に設けられた導電接続部を構成する枠部材の斜視図である。
【
図4】(a)は変形例に係る導電接続部を示す図であって、保持部を変位させる前の状態を示し、(b)は保持部を変位させた後の状態を示す。
【
図5】導電接続部のさらなる変形例を示す図である。
【
図6】第2実施形態に係る環境試験装置を概略的に示す図である。
【
図7】(a)は前記環境試験装置に設けられたモータ側のシールドボックスの斜視図であり、(b)は前記シールドボックス内に配置される電波吸収体の斜視図である。
【
図8】(a)は前記環境試験装置に設けられた底面部側のシールドボックスの斜視図であり、(b)は前記シールドボックス内に配置される電波吸収体の斜視図である。
【
図9】第3実施形態に係る環境試験装置を概略的に示す図である。
【
図10】(a)は前記環境試験装置に設けられた背面側のシールドボックスの斜視図であり、(b)は前記シールドボックス内に配置される電波吸収体の斜視図である。
【
図11】その他の実施形態に係る環境試験装置を概略的に示す図である。
【
図12】前記環境試験装置を前後方向に見た状態で概略的に示す図である。
【
図13】その他の実施形態に係る環境試験装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る環境試験装置10は、試験室12a及び空調室12bを含む断熱室12と、試験室12aを空調する空調機14に接続された機器が配設される機械室16と、を備えている。環境試験装置10では、試験室12a内の空気の温度及び湿度が、設定された値に設定時間だけ維持される制御が行われる。これにより、試験室12a内に配置された供試体に所定の熱負荷をかけることができる。なお、環境試験装置10は、温度及び湿度が調整される恒温恒湿槽として構成される場合に限られるものではなく、例えば、温度のみが調整される恒温槽として構成されてもよい。また、環境試験装置10は、熱衝撃試験を実施可能に構成されてもよい。
【0028】
第1実施形態に係る環境試験装置10では、断熱室12が電磁波の透過を抑制するように構成されている。このため、供試体が電磁波を発生するような場合であっても、電磁波が断熱室12の外部に漏洩することが抑制されている。または、外部の電磁波が断熱室12内の供試体に影響することが抑制されている。
【0029】
断熱室12は、出入口20aを有する室本体20と、出入口20aを開閉する扉体21と、を有する。出入口20aは、人が出入り可能な大きさであってもよく、あるいは、それよりも小さく供試体の出し入れに利用できる大きさであってもよい。出入口20aは室本体20の前端に形成される。なお、ここでいう「前端」は、出入口20a側の端部を意味しており、出入口20aが正面に形成される場合には、正面側の端部となり、出入口20aが側面に形成される場合には、側面側の端部となる。
【0030】
室本体20は、底面部20bと、底面部20bの上方に配置される天面部20cと、出入口20a以外の三方を閉塞する側壁部20dと、を有し、出入口20aが開口した六面体形状に形成されている。出入口20aは、断熱室12の例えば正面に位置しており、側壁部20dは、断熱室12の左側面、背面及び右側面を構成している。なお、出入口20aは正面に位置する構成に限られるものではなく、側面に位置していてもよい。
【0031】
室本体20は、電気的に導通可能な材質の断熱パネル23を用いて形成され、また扉体21も、電気的に導通可能な材質の断熱パネル23を用いて形成されている。室本体20の断熱パネル23には、底面部20bを構成する断熱パネル23、天面部20cを構成する断熱パネル23、背面側の側壁部20dを構成する断熱パネル23、左側面の側壁部20dを構成する断熱パネル23及び右側面の側壁部20dを構成する断熱パネル23が含まれる。
【0032】
断熱パネル23は、
図2にも示すように、外パネル23aと、外パネル23aの内側に配置されて断熱室12に面する内パネル23bと、外パネル23a及び内パネル23b間に配置された断熱材23cと、を有する。外パネル23a及び内パネル23bは何れも、電気的に導通可能な金属板で構成され、外パネル23a及び内パネル23bはアース処理されている。断熱材23cは、グラスウール又はウレタン樹脂の発泡材によって構成されている。なお、外パネル23a及び内パネル23bが導電性の金属板で構成されることにより、ファラデーケージが形成されるが、外パネル23a及び内パネル23bの少なくとも一方が導電性の金属板で構成されていれば、ファラデーケージを形成することが可能である。また、外パネル23a及び内パネル23bはアース処理されていなくてもよい。
【0033】
外パネル23aと内パネル23bとの間には、断熱材23cに加えて電波吸収体24が配置されている。電波吸収体24は、例えばウレタン樹脂の発泡材等にカーボン粉を混合したものであり、誘電損失により電波を吸収するように構成されている(誘電性電波吸収体)。すなわち、電波吸収体24は導電性を有している。なお、断熱材23cは電波吸収体24としては機能しない。電波吸収体24は、外パネル23aと内パネル23bとの間の空間に配置されているため、試験室12a内の空気の湿度の影響を受けない。したがって、高湿度試験を行ったとしても、電波吸収体24の劣化は生じ難い。
【0034】
なお、電波吸収体24は、誘電性電波吸収体に限定されず、例えば導電性繊維からなると共に材料内部の抵抗により電波を吸収する導電性電波吸収体や、フェライトコア等の磁気損失により電波を吸収する磁性電波吸収体であってもよい。
【0035】
電波吸収体24は、平板状に形成されており、内パネル23bに沿うように配置されている。すなわち、電波吸収体24は、断熱材23cに対して内パネル23b寄りに配置されている。このため、供試体が電波を放出する構成の場合に、より近い位置で電波を吸収できる。ただし、電波吸収体24は、内パネル23bに沿うように配置される構成に限られるものではなく、これに代え、外パネル23aに沿うように配置されていてもよく、あるいは、断熱材23cと断熱材23cに挟まれる位置に配置されていてもよい。
【0036】
電波吸収体24は、断熱室12の天面部20cを構成する断熱パネル23、底面部20bを構成する断熱パネル23、側壁部20dを構成する断熱パネル23、及び扉体21を構成する断熱パネル23にそれぞれ設けられている。すなわち、六面体形状の断熱室12の各面に電波吸収体24が配置されている。天面部20cにおいては、電波吸収体24がその全体に亘って配設されているが、天面部20cの全体でなくても、少なくとも半分以上に亘って配設されていればよい。電波吸収体24が天面部20cの少なくとも半分以上の範囲に配置されていれば、内パネル23bと外パネル23aとの間で繰り返し反射する電波を吸収して次第に減衰させることができる。底面部20b、側壁部20d及び扉体21においても同様である。なお、電波吸収体24は、天面部20c、底面部20b、側壁部20dの何れかに配置されていればよく、これらの全てに配置されている必要はない。また、扉体21において、電波吸収体24を省略することもできる。
【0037】
図1に示すように、断熱室12内には、仕切板26が配置されており、この仕切板26により、断熱室12内の空間は、試験室12aと空調室12bとに区画されている。試験室12aは、供試体を配置させるための部屋である。
【0038】
空調室12bは、空調機14及び送風機27を配設するための部屋であり、複数の連通孔29を通して試験室12aと繋がっている。空調室12bに配置される空調機14には、空気を加湿するための加湿器14aと、空気を除湿するための除湿器14bと、空気を冷却するための冷却器14cと、空気を加熱するための加熱器14dと、が含まれる。
【0039】
加湿器14aは、空調室12b内において、底面部20bに設けられ、水を溜められるように皿状に形成されている。加湿器14aには、図略のヒータが配置されている。除湿器14b及び冷却器14cは、蒸気圧縮式の冷媒回路を有する冷凍機に設けられた熱交換器(蒸発器14e)によって構成されている。加熱器14dは、例えば電熱線式のヒータによって構成されている。なお、環境試験装置10が恒温槽として構成される場合には、加湿器14a及び除湿器14bは省略される。
【0040】
送風機27は、空調機14で空調された空気を試験室12aに流入させる気流を生成するように構成されている。すなわち、送風機27は、空気の流れ方向において空調機14よりも下流側に配置され、連通孔29を通して試験室12aに向けて空気を吹き出すように構成されている。送風機27から吹き出された空調空気は、一部の連通孔29を通して試験室12a内に流入する。試験室12a内の空気は他の連通孔29を通して空調室12b内に流入する。
【0041】
機械室16は、断熱室12の背面側から断熱室12の下側に亘って形成されている。断熱室12の下側には、例えば冷凍機の熱交換器(凝縮器30)が配置されており、凝縮器30は図略の冷媒配管を通して空調室12b内の蒸発器14eと冷媒が流通可能に接続されている。
【0042】
図2に示すように、室本体20の前端20e(扉体21側の端部)には樹脂部(第1樹脂部33)が形成され、扉体21の周縁部にも樹脂部(第2樹脂部34)が形成されている。また、扉体21が閉じ位置にある状態で第1樹脂部33と第2樹脂部34との間には間隙35が形成される。このため、室本体20を構成する断熱パネル23と扉体21を構成する断熱パネル23との間の熱伝達が抑制されている。ただし、後述する導電接続部38によってファラデーケージが形成されているため、室本体20と扉体21との間に間隙35が形成されているとしても、電磁シールド効果が得られる。
図2は、扉体21を回動可能に支持するヒンジ36側を示しているが、扉体21のこれ以外の部位についても、扉体21の全周に亘って同様の構成となっている。例えば、ヒンジ36とは反対側の扉体21の先端側においても、第1樹脂部33と第2樹脂部34との間に間隙35が形成されている。
【0043】
第1樹脂部33には、第2樹脂部34に向かって延びて第2樹脂部34に接触する第1パッキン33aが設けられ、第2樹脂部34には、第1樹脂部33に向かって延びて第1樹脂部33に接触する第2パッキン34aが設けられている。これにより、試験室12a内の空気が間隙35を通して試験室12a外に漏れることが防止される。
【0044】
環境試験装置10は、扉体21が出入口20aを閉じる位置(閉じ位置)にあるときに、室本体20を形成する断熱パネル23と扉体21を形成する断熱パネル23とを互いに電気的に導通可能に接続する導電接続部38を備えている。導電接続部38が設けられることにより、扉体21が閉じ位置にある断熱室12がファラデーケージを形成でき、これにより、断熱室12の電磁波遮蔽構造が得られる。
【0045】
導電接続部38は、試験室12a内において室本体20と扉体21とが互いに隣接する位置に設けられている。導電接続部38は、室本体20を形成する断熱パネル23に接触するように配置された枠部材39と、扉体21を形成する断熱パネル23に接触するように配置された接触部材40と、を備えている。枠部材39は、試験室12a内に位置するように室本体20の前端20eに取り付けられている。接触部材40は、試験室12a内に位置するように、扉体21の周縁部に取り付けられている。
【0046】
枠部材39及び接触部材40は何れも導電性であり、接触部材40は、扉体21が出入口20aを閉じる位置(閉じ位置)で枠部材39に接触する。したがって、扉体21が閉じ位置にあるときには、室本体20と扉体21と導電接続部38とによって、導電体の閉回路が形成される。
【0047】
枠部材39は、
図3にも示すように、シールドガスケット39aと、シールドガスケット39aを室本体20を形成する断熱パネル23に押し付ける枠状の本体部39bと、本体部39bに固定され接触部材40が接触可能な接続部39cと、を有する。
【0048】
シールドガスケット39aは、柔軟で且つ導電性を有する金属部材(金属メッシュ)によって構成され、出入口20aの周縁に沿って延びるように配置されている。シールドガスケット39aが、本体部39bによって室本体20を形成する断熱パネル23の内パネル23bに押し付けられることにより、本体部39bと室本体20を形成する断熱パネル23との導電性が確保される。なお、シールドガスケット39aは、金属部材によって構成されるのではなく、導電性を有するゴム系パッキン(例えばシリコンゴムに導電性粒子が分散された構成)であってもよい。
【0049】
本体部39bは、断熱パネル23に固定される固定部39fと、固定部39fに保持されつつシールドガスケット39aを保持する保持部39eと、を含む。保持部39eは、板金を中空状に折り曲げ加工し且つ一方向に延びる部材を4つ組合せることにより、枠状に形成されている。本体部39bは、出入口20aの周縁に沿って延びるように配置される。固定部39fは、保持部39eの外周部に設けられ、扉体21を構成する断熱パネル23の内パネル23bに固定される。シールドガスケット39aは、固定部39fが内パネル23bに固定された状態で、本体部39bと内パネル23bとの間に挟持される。なお、固定部39fを内パネル23bに固定する際には、ネジによる締結、溶接による固定、その他の固定方法を採用できる。固定部39fが断熱パネル23に締結されることにより、保持部39eに保持されたシールドガスケット39aを当該内パネル23bに押圧する。
【0050】
接続部39cは、本体部39bから扉体21に向けて突出した部位であり、シールドフィンガー39dが取り付けられている。シールドフィンガー39dは、扉体21が閉じ位置に移動することによって扉体21側の接触部材40がはまり込むように構成されている。
【0051】
接触部材40は、扉体21の周縁部に沿って枠状に配置され、断熱パネル23の内パネル23bに接触するように扉体21に固定されている。
【0052】
接触部材40が枠部材39の接続部39cに接触した状態では、試験室12a内の空間が、主空間S1と隣接空間S2とに区分けされる。隣接空間S2は、室本体20と扉体21との間の間隙35に隣接する空間であり、主空間S1は、導電接続部38に対して隣接空間S2とは反対側に位置する空間である。すなわち、導電接続部38は、接触部材40が接続部39cに接触した状態において、室本体20及び扉体21間の間隙35に隣接する空間である隣接空間S2を試験室12a内に形成する。この隣接空間S2は、主空間S1から隔離される。したがって、室本体20及び扉体21間の間隙35と導電接続部38との間に空気層が形成され、主空間S1内から間隙35への伝熱を抑制できる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態では、室本体20を形成する断熱パネル23と扉体21を形成する断熱パネル23とを互いに電気的に導通可能に接続する導電接続部38が設けられている。このため、断熱室12が全体として導電可能になるため、電磁シールド効果が得られる。しかも、断熱パネル23の外パネル23aと内パネル23bの間に電波吸収体24が配置されるため、外パネル23a及び内パネル23b間で繰り返し反射する電波が電波吸収体24によって吸収される。したがって、断熱パネル23内において電波を減衰させることができる。よって、環境試験装置10において電磁シールド効果を高めることができる。また、電波吸収体24は、外パネル23aと内パネル23bの間に配置されるため、試験室12a内の空気の状態(温度、湿度)の影響を受けない。したがって、高温試験や高湿試験が行われるとしても、電波吸収体24が劣化することを抑制できる。
【0054】
また本実施形態では、導電接続部38の枠部材39のうち、枠状の本体部39bは、室本体20を形成する断熱パネル23にシールドガスケット39aを押し付ける。これにより、枠部材39と室本体20の断熱パネル23との間の電気的な導通が確保される。そして、枠部材39の接続部39cには、扉体21の断熱パネル23に接触する接触部材40が接触する。したがって、枠部材39は、接触部材40を介して扉体21を構成する断熱パネル23と電気的に導通可能な状態となる。
【0055】
さらに、室本体20及び扉体21間の間隙35に隣接する隣接空間S2が、導電接続部38によって、試験室12a内における隣接空間S2以外の主空間S1から隔離されるため、室本体20及び扉体21間の間隙35から主空間S1への伝熱が抑制される。したがって、導電接続部38により、室本体20及び扉体21間の電気的な導通を確保するだけでなく、主空間S1から室本体20及び扉体21間の間隙35への伝熱の抑制にも寄与できる。
【0056】
また、断熱パネル23内に電波吸収体24が配置されるとともに、室本体20を構成する断熱パネル23と扉体21を構成する断熱パネル23とを導電可能に接続する導電接続部38が試験室12a内に配置される構成である。このため、従来の環境試験装置に大きな加工を施さなくても、電波吸収体24及び導電接続部38を追加するだけで、電磁シールド効果を得ることができる。
【0057】
なお、導電接続部38の枠部材39の構成は、
図2に示す構成に限られるものではない。枠部材39の保持部39eは、固定部39fに対して変位することによってシールドガスケット39aを押圧してもよい。具体的には、
図4(a)(b)に示すように、枠部材39の固定部39fは、内パネル23bの内面に沿うように配置される外端部39f1と、外端部39f1から内パネル23bから離れる方向に張り出す延出部39f2と、延出部39f2の内端から張り出す内端部39f3と、を一体的に有する。内端部39f3は、延出部39f2に対して交差する方向に、延出部39f2から突出している。一方、保持部39eは、固定部39fの内端部39f3の内側(内パネル23bから離れた側)に位置する内端部39e1と、内端部39e1から内パネル23bに向けて張り出す延出部39e2と、延出部39e2の外端から内パネル23bに沿う方向に張り出す押圧部39e3と、を一体的に有する。保持部39eの内端部39e1には、固定部39fの内端部39f3に締結される締結部材であるネジ41を挿通させる挿通孔が形成されている。このネジ41によって、保持部39eが固定部39fに連結される。なお、締結部材としては、ネジ41に代えて、クランプ等が採用されてもよい。
【0058】
保持部39eには、前述した接続部39cが固定されている。接続部39cには、保持部39eに保持されたシールドガスケット39aを横から押圧する押圧部39gが一体的に設けられている。押圧部39gには、保持部39eの延出部39e2に締結されるネジ42を挿通させる挿通孔が形成されている。ネジ42を介して押圧部39gが本体部39bの保持部39eに固定されることにより、接続部39cも保持部39eに固定された状態となる。つまり、接続部39cは押圧部39gを介して本体部39bに固定される。
【0059】
なお、
図4(b)では、押圧部39gが接続部39cと一体的に形成された例を示すが、代替的に、
図5に示すように、押圧部39gが接続部39cと別体に構成されてもよい。この場合、押圧部39gは、締結部材であるネジ42の締め込みによって、保持部39eに対して変位可能である。なお、締結部材としては、ネジ42に代えて、クランプ等が採用されてもよい。一方、接続部39cは、図略のネジまたはこれ以外の方法で保持部39eに固定される。押圧部39gを省略することも可能である。
【0060】
図4(a)の状態では、保持部39eの内端部39e1と固定部39fの内端部39f3とが互いに離間した状態にあり、この状態では、保持部39eの押圧部39e3はまだシールドガスケット39aを押圧していない。つまり、シールドガスケット39aはまだ完全には固定されておらず、保持部39eから抜け落ちないように仮止めされているに過ぎない。そして、この状態からネジ41を締め込むと、
図4(b)に示すように、保持部39eの内端部39e1が固定部39fの内端部39f3に近づく方向に、保持部39eが変位する。これに伴い、保持部39eの押圧部39e3が内パネル23bに近づき、これにより、シールドガスケット39aは保持部39eによって内パネル23bに押圧されて変形する。また、ネジ42を締め込むと、押圧部39gが、保持部39eの押圧部39e3によって押圧されて保持部39eからはみ出たシールドガスケット39aを横から押圧する。このように、シールドガスケット39aは二段階で押圧されるため、断熱パネル23への密着を強固なものとすることができる。
【0061】
室本体20と扉体21とが電気的に互いに直接導通可能である場合には、導電接続部38を省略することも可能である。
【0062】
(第2実施形態)
図6は本発明の第2実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0063】
第2実施形態では、室本体20を形成する断熱パネル23に、送風機27の軸27bを挿通させる開口が形成されていて、この開口を覆うようにシールドボックス47,52が設けられている。
【0064】
具体的に、送風機27は、クロスフローファンによって構成されており、送風機27は、羽根車27aと、羽根車27aを支持する軸27bとを有する。軸27bは羽根車27aの両端からそれぞれ延出している。なお、
図6では、空調室12b内に配置された空調機14(加湿器14a以外)の図示を省略している。
【0065】
軸27bの一端部は、室本体20において左側面(又は右側面)を構成する側壁部20dに形成された開口(モータ側開口20f)に挿通されている。この軸27bの一端部には、送風機27を駆動するためのモータ44が取り付けられている。モータ側開口20fは断熱パネル23を貫通している。
【0066】
軸27bの他端部は、室本体20において右側面(又は左側面)を構成する側壁部20dに形成された開口(ベアリング側開口20g)に挿通されている。この軸27bの他端には、軸27bを回転自在に支持するベアリング45が設けられている。ベアリング側開口20gは断熱パネル23を貫通している。
【0067】
モータ側開口20fは、シールドボックス47によって覆われている。シールドボックス47は、
図7(a)に示すように、底面部47aと、底面部47aの周縁に沿って延びる周面部47bと、を有し、一方向に開口している。シールドボックス47は、開放された側がモータ側開口20f(断熱パネル23)を向くように、モータ側開口20fが形成された断熱パネル23に取り付けられている。つまり、シールドボックス47は、底面部47aが断熱パネル23に対向するように配置されている。
【0068】
シールドボックス47は、金属等の導電性の部材で構成されており、断熱パネル23の外パネル23aに電気的に導通可能となっている。したがって、断熱パネル23にモータ側開口20fが形成されているとしても、このモータ側開口20fを通して電磁波が漏れ出ること、電磁波が断熱室12内に侵入することが防止される。しかも、シールドボックス47を断熱パネル23に取り付けるだけで済む。
【0069】
シールドボックス47内には、電波吸収体48が配置されている。電波吸収体48は
図7(b)に示すように平板状であり、シールドボックス47の底面部47aに沿うように配置されている。電波吸収体48は、断熱パネル23の外パネル23aとシールドボックス47の底面部47aとの間で繰り返し反射する電波を吸収しつつ減衰させる。
【0070】
シールドボックス47には、冷却用の開口47cが形成されている。この開口47cは、極小さなものであり、シールド効果を低下させるような大きさではない。
【0071】
モータ側開口20f及びモータ44を覆うシールドボックス47は、
図6に示すように、断熱室12の側方に配置された制御ボックス50内に収容されている。このため、このシールドボックス47は外部から認識できない。なお、制御ボックス50は、前面に図略の操作部が設けられるとともに、図略の制御機器を収容するものである。
【0072】
ベアリング側開口20gはシールドボックス52によって覆われている。このシールドボックス52は、モータ側開口20fを覆うシールドボックス47と同じ形状に形成されている。シールドボックス52は、開放された側がベアリング側開口20g(断熱パネル23)を向くように、ベアリング側開口20gが形成された断熱パネル23に取り付けられている。なお、シールドボックス52にも、シールドボックス47と同様に、冷却用の開口(図示省略)が形成されていてもよい。
【0073】
ベアリング側開口20gを覆うシールドボックス52内には、電波吸収体53が配置されている。この電波吸収体53は、モータ44側のシールドボックス47内に配置された電波吸収体48と同様の構成である。
【0074】
加湿器14aには、給水用配管55が接続されており、この給水用配管55は、室本体20において底面部20bを形成する断熱パネル23に形成された開口(底面開口20h)に挿通されている。底面開口20hは断熱パネル23を貫通している。
【0075】
底面開口20hはシールドボックス56によって覆われている。シールドボックス56は、
図8(a)に示すように、底面部56aと、底面部56aの周縁に接続された周面部56bと、を有し、一方向が開口している。シールドボックス56は、開放された側が断熱室12の底面部20bを向くように、底面開口20hが形成された断熱パネル23に取り付けられている。つまり、シールドボックス56は、底面部56aが断熱パネル23に対向するように配置されている。
【0076】
周面部56bには、給水用配管55を通過させるための切欠き56cが設けられている。なお、加湿器14aには、給水用配管55とともに、或いは給水用配管55に代えて排水用配管(図示省略)が接続され、シールドボックス56は排水用配管を覆ってもよい。
【0077】
シールドボックス56内には、電波吸収体57が配置されている。電波吸収体57は、
図8(b)に示すように平板状であり、シールドボックス56の底面部56aに沿うように配置されている。電波吸収体57は、断熱パネル23の外パネル23aとシールドボックス56の底面部56aとの間で繰り返し反射する電波を吸収しつつ減衰させる。
【0078】
本実施形態では、室本体20を形成する断熱パネル23と扉体21を形成する断熱パネル23とを互いに電気的に導通可能に接続する導電接続部38が設けられている。このため、断熱室12が全体として導電可能になるため、電磁シールド効果が得られる。しかも、送風機27の軸27bを挿通させる開口20f,20gが形成された断熱パネル23には、当該開口20f,20gを覆うように、当該断熱パネル23と電気的に導通可能にシールドボックス47,52が取り付けられている。このため、送風機27の軸27bが断熱パネル23を貫通するように配置させることが可能なだけでなく、開口20f,20gを通して電磁波が漏れ出たり、電磁波が断熱室12内に侵入することを抑制できる。したがって、環境試験装置10において電磁シールド効果を高めることができる。
【0079】
しかも、シールドボックス47,52と外パネル23aとによって区画された空間に電波吸収体48,53が配置されているため、シールドボックス47,52と外パネル23aとの間で繰り返し反射する電波が電波吸収体48,53よって吸収される。したがって、シールドボックス47,52と外パネル23aとによって区画される空間内において電波を減衰させることができる。
【0080】
また、断熱室12の底面部20bを構成する断熱パネル23に底面開口20hが形成されることにより、給水用配管55(又は排水用配管)が断熱パネル23を通過するように配置させることが可能となっており、しかも、シールドボックス56により、底面開口20hが覆われている。したがって、底面開口20hを通して電磁波が漏れ出たり、電磁波が断熱室12内に侵入することを抑制できる。
【0081】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、前記第1実施形態の説明を第2実施形態に援用することができる。
【0082】
(第3実施形態)
図9は本発明の第3実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0083】
第3実施形態では、背面側の側壁部20dを形成する断熱パネル23に、蒸発器14eにつながる冷媒配管60を断熱室12内から引き出す開口(配管用開口20i)が形成されている。冷媒配管60は、機械室16内における断熱室12の背面側の部位を下方に向けて延びるとともに、断熱室12の下側に配置された凝縮器30まで延びている。
【0084】
配管用開口20iが形成された断熱パネル23には、シールドボックス62が取り付けられている。シールドボックス62は、当該断熱パネル23の外パネル23aと電気的に導通可能であり、配管用開口20iおよび冷媒配管60の一部を覆っている。断熱パネル23に配管用開口20iが形成されているとしても、シールドボックス62により、配管用開口20iを通して電磁波が漏れ出ること、電磁波が断熱室12内に侵入することが防止される。しかも、シールドボックス62を断熱パネル23に取り付けるだけで済む。なお、シールドボックス62は機械室16内に配置されているため、外部からは認識できない。
【0085】
シールドボックス62は、
図10(a)に示すように、底面部62aと、底面部62aの周縁に沿って延びる周面部62bと、を有し、一方向に開口している。シールドボックス62は、開放された側が断熱室12を向くように、配管用開口20iが形成された断熱パネル23に取り付けられている。つまり、シールドボックス62は、底面部62aが断熱パネル23に対向するように配置されている。周面部62bには、冷媒配管60を通過させるための切欠き62cが設けられている。
【0086】
シールドボックス62内には、電波吸収体63が配置されている。電波吸収体63は
図10(b)に示すように平板状であり、シールドボックス62の底面部62aに沿うように配置されている。電波吸収体63は、断熱パネル23の外パネル23aとシールドボックス62の底面部62aとの間で繰り返し反射する電波を吸収しつつ減衰させる。
【0087】
断熱室12の底面部20bには、加湿器14aから溢れた水や空調室12b内で生じた結露水を溜める貯留部65が形成されており、この貯留部65には、結露水を外部に排出する排出管66が接続されている。この排出管66は、加湿器14aに接続された排水用配管に接続されるか、排水用配管とともに、シールドボックス56の切欠き56c(
図8(a))を通して、シールドボックス56の外側に引き出されている。底面部20bには、排出管66を貯留部65から引き出す開口(排出管用開口)20jが形成されている。
【0088】
本実施形態では、室本体20を形成する断熱パネル23と扉体21を形成する断熱パネル23とを互いに電気的に導通可能に接続する導電接続部38が設けられている。このため、断熱室12が全体として導電可能になるため、電磁シールド効果が得られる。しかも、蒸発器14eにつながる冷媒配管60を通過させる配管用開口20iが形成された断熱パネル23には、配管用開口20iを覆うように、当該断熱パネル23と電気的に導通可能にシールドボックス62が取り付けられている。このため、蒸発器14eにつながる冷媒配管60が断熱パネル23を通過するように配置させることが可能なだけでなく、配管用開口20iを通して電磁波が漏れ出たり、電磁波が断熱室12内に侵入することを抑制できる。したがって、環境試験装置10において電磁シールド効果を高めることができる。
【0089】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、前記第1及び第2実施形態の説明を第3実施形態に援用することができる。
【0090】
(その他の実施形態)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、送風機27がクロスフローファンによって構成されるとともに、送風機27の軸27bが断熱室12の側壁部20dを貫通する構成となっている。これに対し、
図11に示す形態では、送風機27の軸27bが断熱室12の天面部20cを貫通しており、モータ44が天面部20cの上側に配置されている。送風機27は、例えばシロッコファンによって構成されている。この場合、
図12に示すように、2つの送風機27が設けられてもよい。
【0091】
シールドボックス47は、天面部20cを形成する断熱パネル23に設けられた開口を覆うように、当該断熱パネル23に取り付けられている。この場合、シールドボックス47は外部から認識できる。
図12に示すように、シールドボックス47は、2つのモータ44を覆うように配置されている。この場合でも、シールドボックス47内に電波吸収体48が設けられるのが好ましい。なお、
図12の形態において、シールドボックス47に、冷却用の開口(図示省略)が形成されていてもよい。
【0092】
図13に示すように、送風機27の軸27bは、断熱室12の背面側の側壁部20dを貫通し、モータ44が側壁部20dの背面に配置されていてもよい。送風機27は、例えばシロッコファンによって構成されている。この場合、シールドボックス47は、機械室16内に収容されるため、外部から認識できない。この場合でも、シールドボックス47内に電波吸収体48が設けられるのが好ましい。なお、
図13の形態において、シールドボックス47に、冷却用の開口(図示省略)が形成されていてもよい。
【0093】
第2実施形態及び第3実施形態においては、断熱パネル23内に配置された電波吸収体24が省略されてもよい。また、シールドボックス47,52,56,62内の電波吸収体48,53,57,63が省略されてもよい。また、第2実施形態及び第3実施形態においては、シールドボックス47,52,56,62内の電波吸収体48,53,57,63が、断熱パネル23に対向する底面部47a、56a、62aの全面に設けられているが、これに限られるものではない。電波吸収体48,53,57,63は、底面部47a、56a、62aの少なくとも一部(例えば半分以上)に設けられていればよい。また、電波吸収体48,53,57,63は、底面部47a、56a、62aに配置される場合に限られるものではなく、シールドボックス47,52,56,62を形成する少なくとも一つの面を形成する部位に設けられていればよい。
【0094】
第2実施形態及び第3実施形態において、加湿器14a及び貯留部65が設けられない場合には、シールドボックス56及び電波吸収体57が省略される。
【0095】
前記各実施形態では、導電接続部38が試験室12a内に設けられたが、これに限られるものではない。扉体21が閉じ位置にある断熱室12がファラデーケージを形成できるのであれば、導電接続部38は試験室12aの外側に配置されてもよい。
【0096】
前記各実施形態では、断熱パネル23が、外パネル23a、内パネル23b及び断熱材23cを有し、この断熱パネル23内に電波吸収体24が配置されているが、この構成に限られるものではない。例えば、断熱材23cが省略されるとともに、外パネル23a及び内パネル23b間に配置された電波吸収体24が断熱機能を有する構成としてもよい。なお、断熱材23cが設けられる場合においては、電波吸収体24は、断熱機能を有していてもよいし、断熱機能を有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0097】
10 :環境試験装置
12 :断熱室
12a :試験室
14 :空調機
14e :蒸発器
20 :室本体
20a :出入口
20f :モータ側開口
20g :ベアリング側開口
20h :底面開口
20i :配管用開口
21 :扉体
23 :断熱パネル
23a :外パネル
23b :内パネル
23c :断熱材
24 :電波吸収体
27 :送風機
27b :軸
35 :間隙
38 :導電接続部
39 :枠部材
39a :シールドガスケット
39b :本体部
39c :接続部
40 :接触部材
47 :シールドボックス
48 :電波吸収体
52 :シールドボックス
53 :電波吸収体
55 :給水用配管
56 :シールドボックス
57 :電波吸収体
60 :冷媒配管
62 :シールドボックス
63 :電波吸収体
S1 :主空間
S2 :隣接空間