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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152923
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/211 20210101AFI20241018BHJP
   H01M 50/178 20210101ALI20241018BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20241018BHJP
   H01M 50/505 20210101ALI20241018BHJP
   H01M 50/503 20210101ALI20241018BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20241018BHJP
   H01M 50/553 20210101ALI20241018BHJP
【FI】
H01M50/211
H01M50/178
H01M50/105
H01M50/505
H01M50/503
H01M50/533
H01M50/553
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024140640
(22)【出願日】2024-08-22
(62)【分割の表示】P 2020049153の分割
【原出願日】2020-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社AESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】雨谷 竜一
(57)【要約】
【課題】単電池の電極タブとバスバとを互いに結合して衝突入力時の位置ずれを規制する。
【解決手段】発電要素が収容される外装体のフィルムが熱封止される辺から外部に突出する正極電極タブ112Pを有する複数の単電池110はスペーサ120で保持されている。スペーサ120には、正極側の第1バスバ122Pが設けられ、第1バスバ122Pは正極電極タブ112Pと電気的に接続される。そして、正極側の第1バスバ122Pには位置規制突起122dが設けられ、正極電極タブ112Pには位置規制孔113が設けられる。位置規制突起と122dが位置規制孔113を貫通して位置規制構造を構成し、両者が機械的に係合される。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の外装体で覆われる発電要素、および前記発電要素に接続され、前記外装体のフィルムが熱封止される辺から外部に突出する正極電極タブおよび負極電極タブを有する複数の単電池と、
前記正極電極タブの少なくとも1つに電気的に接続される正極側の第1バスバと、
前記負極電極タブの少なくとも1つに電気的に接続される負極側の第1バスバと、
前記正極側の第1バスバと前記負極側の第1バスバを支持する支持部材と、
を備え、
前記正極側の第1バスバと前記正極電極タブとを係合する正極側の係合構造、および前記負極側の第1バスバと前記負極電極タブとを係合する負極側の係合構造の少なくとも一方の前記係合構造を備える組電池。
【請求項2】
請求項1に記載の組電池において、
前記正極側係合構造および前記負極側係合構造はそれぞれ一対設けられ、
前記正極電極タブと前記正極側の第1バスバ、および前記負極電極タブと前記負極側の第1バスバは、前記一対の正極側係合構造の間、および前記一対の負極側係合構造の間で電気的に接続されている組電池。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された組電池において、
前記正極側の支持部材と前記第1バスバとの一体化構造は、前記支持部材の長手方向において前記正極側係合構造の外側に設けられ、および前記負極側の支持部材と前記第1バスバとの一体化構造は、前記支持部材の長手方向において前記負極側係合構造の外側に設けられている組電池。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載された組電池において、
前記複数の単電池は積層され、
前記正極側係合構造と前記負極側係合構造のそれぞれは、
前記正極側および前記負極側の第1バスバに設けられ、前記単電池が積層される方向に延在する突起と、
前記正極電極タブと前記負極電極タブに設けられ、前記突起が貫通する孔とを含む組電池。
【請求項5】
請求項4に記載された組電池において、
前記正極電極タブと前記負極電極タブにそれぞれ設けられた前記孔を貫通する前記突起の先端は折り曲げられている組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層した複数の単電池を有する組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、平面視が長方形とされた薄型の単電池を積層した組電池が知られている(たとえば特許文献1)。特許文献1の単電池は、ラミネートフィルムを折り重ね、周辺を熱封止した外装体(収容部)を有し、この外装体に発電要素が収容されている。発電要素に接続された電極タブが収容部の熱封止辺から外部に突出している。電極タブは、外装体に取り付けられたスペーサによって支持されている。複数の単電池はスペーサと共に積層され、スペーサに通しボルトを挿通させて組み立てられている。
【0003】
スペーサによって支持された電極タブにはバスバが溶接されている。このバスバを介して単電池同士が電気的に接続されて組電池が構成される。
【0004】
このような組電池は、車両などの移動体の構造体(車体フレーム)に締結固定される。移動体が周囲の物体に衝突したときに構造体に作用する衝突入力により、組電池には構造体と相対変位する力が作用し、単電池にはスペーサと相対変位する力が作用する。
特許文献1に開示されている単電池では、上記電極タブが突出する熱封止辺に所定間隔で一対の孔が設けられ、スペーサには、対応する一対の突起が設けられ、突起を孔に係合させて単電池とスペーサを一体化することで、衝突入力時の単電池とスペーサとの相対変位を制限している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/068703号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構成において、電極タブは外装体の熱封止辺から外部に突出されている。電極タブが設けられる辺の長さが短い単電池(たとえば容量の小さい単電池)では、熱封止辺に一対の孔を設けると熱封止性能が悪化することがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による組電池は、フィルム状の外装体で覆われる発電要素、および前記発電要素に接続され、前記外装体のフィルムが熱封止される辺から外部に突出する正極電極タブおよび負極電極タブを有する複数の単電池と、前記複数の単電池を支持する複数のスペーサと、前記スペーサに設けられ、前記正極電極タブに電気的に接続される正極側の第1バスバおよび前記負極電極タブに電気的に接続される負極側の第1バスバと、前記正極側の第1バスバまたはスペーサと前記正極電極タブとを機械的に係合する正極側係合構造、および前記負極側の第1バスバまたはスペーサと前記負極電極タブとを機械的に係合する負極側係合構造の少なくとも一方の係合構造とを備え、前記複数の単電池と前記複数のスペーサは積層されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る組電池を示す斜視図である。
図2】第1図に示す組電池の分解斜視図である。
図3】単電池の斜視図である。
図4】単電池の正極電極タブと負極電極タブをスペーサで保持した単電池ユニットの斜視図である。
図5】第1バスバが取り付けられたスペーサの斜視図である。
図6図5のスペーサと第1バスバの分解斜視図である。
図7】第2バスバの斜視図である。
図8】2並列直列接続電池群の接続状態を示す概念図である。
図9】(A)は電極タブと第1バスバの位置規制構造を示す模式的断面図、(B)はその一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
―第1実施形態-
第1実施形態の組電池100を図1図9を参照して説明する。なお、図1図9において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1図9において、X軸は、単電池110の積層方向と交差し、かつ、単電池110の短手方向に沿った方向を示している。Y軸は、単電池110の積層方向に沿った方向を示し、Z軸は、単電池110の積層方向と交差し、かつ、単電池110の長手方向に沿った方向を示している。
【0010】
(組電池)
図1は、第1実施形態に係る組電池100の全体斜視図、図2は組電池100の分解斜視図である。組電池100の基本的な構成要素は、主に、図3に示す単電池(セル)110と、図4に示すように一対のスペーサ120で単電池110を支持して構成される単電池ユニット115と、第1バスバ122P,122Nと、第2バスバ130である。
組電池100は、積層された複数個の単電池ユニット115の組立体である単電池群150と、単電池群150の両脇に配設された第2バスバ130,131P,131Nを保持するバスバホルダ130A,130Bとを含んで構成される。
【0011】
単電池群150は、複数個の単電池ユニット115を積層方向の両端に配置した2枚のエンドプレート101と中央1枚の中間プレート102で挟持し、2枚のエンドプレート101の4隅で複数のスペーサ120を4本の通しボルト103aとナット103bからなる締結部材103で締め付けて組み立てられる。組電池100は、エンドプレート101の3箇所に設けた車両取り付け部101aに不図示のボルトで車両に設置される。
組電池100の詳細説明は図2の分解斜視図により後述する。
なお、複数の単電池110は、上下に隣接する単電池110の間に弾性シートや接着剤が介在されて積層されている。
【0012】
(単電池)
図3に示すように、単電池110は平面視が長方形であり、長手方向がZ軸に沿った方向、短手方向がX軸に沿った方向、厚さ方向がY軸に沿った方向である。単電池110は、発電要素を内部に収容する外装体111と、この外装体111の相対向する一対の短辺111a,111bからZ軸に沿う方向に突出する正負極タブ112P、112Nとを有する。外装体111は、ラミネートフィルムを折り重ね、4辺111a~111dを熱封止した収容部であり、この外装体111に発電要素が収容されている。発電要素に対する充放電電流の入出力端子としての電極タブ112P,112Nが外装体111の熱封止辺111a、111bから外部に突出している。電極タブ112P,112Nには、X軸方向に所定間隔をあけて一対の位置規制用孔113が設けられている。電極タブ112P,112Nは後述するように、スペーサ120P,120Nに取付けられた第1バスバ122P,122N(図4図5参照)にレーザ溶接される。図3の符号114はその接合位置を示すが、電極タブ112P,112に予め目印が記されているものではない。すなわち、位置規制用孔113の間で、電極タブ112P,112Nは第1バスバ122P,112Nにそれぞれレーザ溶接される。
【0013】
なお、以下の説明において、正極側構成要素には大文字Pを付し、負極側構成要素には大文字Nを付して説明し、同一または共通する構造を有する要素には、大文字P,Nを省略して同じ数字を付して説明する。たとえば、正極側電極タブには符号112Pを付し、負極側電極タブには符号112Nを付し、単に電極タブを示すときには符号112を付して説明する。
【0014】
(発電要素)
図示はしないが、発電要素は、正極活物質が塗付された複数枚の正極シートと負極活物質が塗付された複数枚の負極シートとがセパレータを介して積層された発電体(図示せず)と、外装体111内で発電体が浸漬される電解液とを含んで構成される。正極シートには正極タブ112Pが接続され、負極シートには負極タブ112Nが接続されている。単電池110は、たとえば、リチウムイオンが正負極活物質間を移動して放電と充電を繰り返すリチウムイオン二次電池である。一例として、正極タブ112Pはアルミニウム系金属、負極タブ112Nは銅系金属である。
【0015】
(単電池ユニット)
図4は、単電池110と一対のスペーサ120P,120Nとで構成される単電池ユニット115の斜視図である。
スペーサ120は、図1図2図9などに示すように、複数の単電池110を積層するために使用される。
単電池110の正極タブ112Pと負極タブ112Nはスペーサ120に支持されている。単電池110の一対の短辺の一方の辺111aから突出する正極タブ112Pは、スペーサ120Pに設けられた第1バスバ122Pに接合部114でレーザ溶接により電気的に接続されている。他方の辺111bから突出する負極タブ112Nは、スペーサ120Nに設けられた第1バスバ122Nに接合部114でレーザ溶接により電気的に接続されている。それぞれの接合部114は、所定の溶接幅で、辺111a,111bと平行な方向に沿って、すなわち正極タブ112Pと負極タブ112Nの幅方向に沿って線状に延びている。
すなわち、単電池ユニット115は、単電池110と一対のスペーサ120P,120Nで構成される。
【0016】
(スペーサと第1バスバ)
図5は、第1バスバ122P,122Nが一体化されたスペーサ120の斜視図、図6は、スペーサ120と第1バスバ122の分解斜視図である。図6(A)はスペーサ120を斜め上方から見た斜視図、図6(B)はスペーサ120を斜め下方から見た斜視図である。
正極側スペーサ120Pは、絶縁材料で形成されたスペーサ本体121と、スペーサ本体121に設けられ、正極タブ112Pに電気的に接続される第1バスバ122Pとを有する。負極側スペーサ120Nは、絶縁材料で形成されたスペーサ本体121と、スペーサ本体121に設けられ、負極タブ112Nに電気的に接続される第1バスバ122Nとを有する。正極側の第1バスバ122Pはアルミニウム系金属、負極側の第2バスバ122Nは銅系金属である。
【0017】
第1バスバ122P,122Nが固定されるスペーサ本体121P,121Nは同一の形状であり、同じ符号121で説明し、また、第1バスバ122P,122Nも同一の形状であり、同じ符号122で説明することもある。
スペーサ本体121は、第1バスバ122P,122Nが取り付けられるX軸に沿った方向に延在するバスバ取付部121aと、バスバ取付部121aの両端に一体的に設けられている積層部121bとを有する。積層部121bには、通しボルト113aが挿通される貫通孔121eが設けられている。バスバ取付部121aには、一対のバスバ係合部121cが所定間隔で設けられている。第1バスバ122P,122Nの係合板122bがバスバ係合部121cに係合されて、第1バスバ122P,122Nがスペーサ本体121aに一体化して固定される。スペーサ本体121の一対のバスバ係合部121cは、スペーサ120の長手方向に沿って、第1バスバ122の一対の位置規制用突起122dの外側に設けられている。
【0018】
(第1バスバ)
図6に示すように、第1バスバ122は、スペーサ本体121のバスバ取付部121aの側面に沿って配設される細長い帯状の側板122aと、側板122aの両端部と対向して設けられる矩形形状の一対の係合板122bと、側板122aと係合板122bを接続する天板122cと、天板122cからY軸に沿った方向に突出する一対の位置規制用突起122dとを有する。位置規制用突起122dは、電極タブ112P,112Nに設けられている位置規制用孔113に挿入されて電極タブ112と係合し、スペーサ120に対する単電池110の位置規制構造を構成する。一対の係合板122bは、スペーサ120の長手方向に沿って一対の位置規制用突起122dの外側に設けられている。
【0019】
(第2バスバ)
図7を参照して第2バスバ130を説明する。
第1実施形態では、複数の単電池110は、第1バスバ122に第2バスバ130を接続して電気的に2並列直列接続される。すなわち、一対の単電池110は、第2バスバ130の一方の極性の端子部130Pまたは130Nで並列接続されて単電池対110C(図8図9参照)を構成する。この単電池対110Cが複数の第2バスバ130で直列接続される。
第2バスバ130は、アルミニウム系金属を素材とする正極端子部130Pと、銅系金属を素材とする負極端子部130Nとを一体化したクラッド材で形成されている。なお、図2図8に示すように、インバータの正極端子に強電ケーブなどで接続される外部正極端子131Pと、インバータの負極端子に強電ケーブなどで接続される外部負極端子131Nはクラッド材ではなく、アルミニウム系金属と銅系金属で製作される。
【0020】
(2並列直列接続型電源)
第1実施形態の組電池100は、2つの単電池110を並列接続した一組の単電池対110Cを複数組、直列に接続した2並列直列接続型電源である。
図8は、2並列直列接続型電源の概念図である。図8の最上部の単電池対110C-1、その下方に接続される単電池対110C-2、…最下段の単電池対110C-NのN個の単電池対が第2バスバ130で直列接続されている。2並列直列接続型電源は、外部正極端子131Pと外部負極端子131Nを有し、外部負荷と電源との間における充電電流と放電電流は、それらの外部正負極端子131P,131Nを介して入出力される。外部正極端子131P、複数の第2バスバ130、外部負極端子131Nは第1バスバ122P,122Nとレーザ溶接されている。
換言すると、実施形態の組電池100は次のように構成された電源である。一対の単電池110の一対の正極側電極タブ112Pは正極端子部130Pで、一対の負極側電極タブ112Nは負極端子部130Nで並列接続されて、単電池対110Cを形成する。並列接続された単電池対110Cの複数組110C-1、110C-2…110C-Nは、第2バスバ130で直列接続される。このような接続形態により、第1実施形態の組電池110は、複数の単電池110が2並列直列接続された電源として使用される。
【0021】
(位置規制構造)
図9(A)は、電極タブ112の位置規制孔113に第1バスバ122の位置規制突起122dを係合させてなる位置規制構造を示す断面図、(B)はその一部拡大図である。図5で説明したように、第1バスバ122はスペーサ本体121にスナップフィットされて一体化されている。位置規制孔113を有する電極タブ111は、一対の位置規制孔113に第1バスバ122の一対の位置規制突起122dが係合するようにスペーサ120の第1バスバ122上に載置される。電極タブ112は図3に示す2箇所の接合部114で第1バスバ122にレーザ溶接される。第1実施形態では、接合部114は、それら位置規制孔113の間に設けられている。
【0022】
以上説明した組電池100は次のように製作される。
図2を参照して説明する。
(1)単電池110(図3)を準備する。
(2)第1バスバ122P,122Nがそれぞれ一体化されたスペーサ120P,120N(図5)を準備する。
(3)正極電極タブ112Pの位置規制孔113に正極側第1バスバ122Pの位置規制突起122dを挿入し、負極電極タブ112Nの位置規制孔113に、負極側の第1バスバ122Nの位置規制突起122dを挿入し、そののち、電極タブ112P,112Nを第1バスバ122P,122Nにレーザ溶接して単電池ユニット115(図4)を製作する。
(4)図2を参照する。複数の単電池ユニット115をそれらのスペーサ積層部121bで積層する。スペーサ積層部121bのボルト貫通孔121eに通しボルト103aを挿通し、ナット103bで締結して複数の単電池ユニット115を含む単電池群150を製作する。
【0023】
(5)図2を参照する。第2バスバユニット130Aと130Bを準備する。ホルダー130aは第2バスバ130,131P,131Nを保持し、ホルダー130bは第2バスバ130を保持する。このようにして第2バスバユニット130Aと130Bが製作される。第2バスバユニット130Aと130Bは、単電池群150の両側部に取り付けられる。
(6)第2バスバ130、131P,131Nを、対応する第1バスバ122にそれぞれレーザ溶接する。
(7)上記(1)~(6)の工程により組立てられた組電池100は2並列直列接続型の電源であり、この電源は、図示しない車両の電池収容部に固定ボルトにより固定設置される。
【0024】
(位置規制構造の効果)
車両が物体と衝突すると組電池100に衝撃力が入力される。このとき、組電池100の構成要素にも衝撃力が作用するが、単電池110とスペーサ120は、位置規制孔113と位置規制突起122dを含んで構成される位置規制構造により機械的に結合されており、単電池110がスペーサ120と相対変位することはなく、衝突に伴う単電池110の破損が防止される。また、電極タブ112は第1バスバ122とレーザ溶接で接合されているが、電極タブ112と第1バスバ122との溶接接合力よりも位置規制構造による機械的結合力は衝撃入力に対して有効である。第1実施形態では、溶接による接合と機械的結合の双方で衝撃入力を受けることができ、たとえば車両の衝突による単電池110とスペーサ120との相対変位が防止される。これにより、単電池110の破損を防止できる。
また、第1実施形態の組電池100では、従来例のように熱封止辺に位置規制孔を設けないので、熱封止辺における封止が不十分になる畏れがない。
【0025】
(従来に対する利点)
従来構造は、単電池110の外装体111の熱封止辺のうちの電極タブ112が突出する熱封止辺に設けた位置規制孔と、スペーサ本体121に設けた位置規制突起とを係合する位置規制構造である。そのため、位置規制孔を設けた領域だけ熱封止辺の接合面積が小さくなり、熱封止が不十分となる惧れがある。外装体111は、樹脂製のラミネート材を折りたたん内部に発電要素を収容する。そして、熱封止辺は重なり合う2枚のラミネートが熱溶着され、ラミネート材内部を密閉する。
第1実施形態では、電極タブ112に位置規制孔113を設け、スペーサ本体121に一体化する第1バスバ122に位置規制突起122dを設け、位置規制孔113に位置規制突起122dを係合する位置規制構造を採用する。したがって、熱封止領域が狭くなることがなく、位置規制構造に伴う熱封止が不十分になることもない。
【0026】
図4を参照して単電池ユニット115の各部の構造について説明する。
(1)単電池とスペーサのユニット構造
図4を参照する。スペーサ120は長尺形状である。単電池110は、スペーサ120の長手方向がラミネート外装材111から突出する電極タブ112の幅方向(X方向)と一致するようにスペーサ120に組みつけられ、単電池ユニット115が構成されている。
(2)スペーサと第1バスバの一体化構造
図6を参照する。正極側のスペーサ120Pと第1バスバ122Pおよび負極側のスペーサ120Nと第1バスバ122Nは、一対の位置規制構造の外側でスナップフィット結合されている。すなわち、位置規制用突起122dの外側に設けた係合板122bがスペーサ120のバスバ係合部121cに係合して第1バスバ122P、122Nがスペーサ120に一体化されている。
(3)電極タブと第1バスバの位置規制構造
図4図9を参照する。正極側の電極タブ112Pと第1バスバ122Pおよび負極側の電極タブ112Nと第1バスバ122Nは次のようにして係合されて一体化されている。すなわち、第1バスバ122Pの位置規制用突起122dが電極タブ112Pの位置規制孔113に挿入され、第1バスバ122Nの位置規制用突起122dが電極タブ112Nの位置規制孔113に挿入され、一対の位置規制構造とされている。
(4)電極タブと第1バスバの接合構造
正極側の電極タブ112Pと第1バスバ122Pおよび負極側の電極タブ112Nと第1バスバ122Nは、一対の位置規制構造の間の位置に設定した一対の接合部114でそれぞれレーザ溶接されている。接合部114は電極タブ112P,112Nの長手方向、すなわち電極タブ112P,112Nが突出するラミネート封止辺111a、111bの長手方向に延在する。
【0027】
上記(1)~(4)の構造を採用することにより、スペーサ120の長手方向に沿って、一対の接合部114と、一対の位置規制構造と、一対のスナップフィット構造が一列に(整列して)並ぶことにより、電極タブ112の突出方向において、電極タブ112とバスバ122とスペーサ本体121との接合構造、位置規制構造、一体化構造を極力小さく抑えることができる。
【0028】
第1実施形態の組電池100の作用効果は次の通りである。
(1)第1実施形態の組電池100は、フィルム状の外装体111で覆われる発電要素、および発電要素に接続され、外装体111のフィルムが熱封止される辺112P,112Nから外部に突出する正極電極タブ112Pおよび負極電極タブ112Nを有する複数の単電池110と、複数の単電池110を保持する複数のスペーサ120P,120Nと、スペーサ120P,120Nに設けられ、正極電極タブ112Pに電気的に接続される正極側の第1バスバ122Pおよび負極電極タブ112Nに電気的に接続される負極側の第1バスバ122Nと、正極側の第1バスバ122Pと正極電極タブ112Pとを機械的に係合する正極側係合構造(位置規制孔113と位置規制突起122d)、および負極側の第1バスバ122Nと負極電極タブ112Nとを機械的に係合する負極側係合構造(位置規制孔113と位置規制突起122d)を備え、複数の単電池110とスペーサ120とは積層されている。
第1実施形態の組電池100は、正極側の電極タブ112Pと第1バスバ120P、負極側の電極タブ112Nと第1バスバ120Nとを機械的に係合させ、衝突入力による両者の相対変位を防止するようにした。そのため、従来構造に比べて外装体111の熱封止性能の悪化を防止できる。
【0029】
(2)第1実施形態の組電池100では、正極電極タブ112Pと負極電極タブ112Nは単電池110の相対向する熱封止辺111a,111bから外部に突出し、正極側係合構造と負極側係合構造の双方を有する。したがって、衝突入力に伴う単電池110とスペーサ120との相対変位をより一層効果的に防止できる。
【0030】
(3)第1実施形態の組電池100では、位置規制孔113と位置規制突起122dからなる正極側係合構造、および位置規制孔113と位置規制突起122dからなる負極側係合構造がそれぞれ、電極タブ112の幅方向に離間して一対設けられ、正極電極タブ112Pと正極側の第1バスバ122Pおよび負極電極タブ112Nと負極側の第1バスバ122Nは、一対の係合構造の間の2箇所においてレーザ溶接で電気的に接続されている。
突起122dを避けた幅広い領域でレーザ溶接することにより、電極タブ112と第1バスバ122との電気的接合も良好である。
(4)第1実施形態の組電池100では、正極側のスペーサ120Pと第1バスバ122Pとの一体化構造は、スペーサ120Pの長手方向において正極側係合構造の外側に設けられ、および負極側のスペーサ120Nと第1バスバ120Nとの一体化構造は、スペーサ120Nの長手方向において負極側係合構造の外側に設けられている。また、正極側の電極タブ112Pと第1バスバ122Pとは、一対の正極側係合構造の間でレーザ溶接され、負極側の電極タブ112Nと第1バスバ122Nとは、一対の負極側係合構造の間でレーザ溶接されている。
このように、スペーサ120と第1バスバ122とを一体化する一対のスナップフィット構造と、電極タブ112と第1バスバ122を一対の接合部114でレーザ溶接する接合構造と、電極タブ112と第1バスバ122の位置を規制する一対の位置規制構造とがスペーサ120の長手方向に沿って一列に(整列して)並ぶ。これにより、電極タブ112の突出方向の狭い領域において、電極タブ112とバスバ122とスペーサ本体121との接合構造、位置規制構造、一体化構造を配置することができる。
【0031】
(5)第1実施形態の組電池100では、単電池110の対向する一対の辺111a,111bにそれぞれ設けた一対のスペーサ120で単電池110が保持されて積層され、一対の辺111a,111bのそれぞれの側に複数の第2バスバ130,131P、131Nを保持する第2バスバユニット130A,130Bを設け、第2バスバ130,131P,131Nを第1バスバ122P,122Nにレーザ溶接し、これにより複数の単電池110が2並列直列接続された電源を構成している。
図8によく示されているように、正極電極タブ112Pと負極電極タブ112Nが互い違いに配置されるように単電池対110C-1、110C-2、…110C-Nが積層されている。第1実施形態では2並直列接続の電源とする構成としたが、第2バスバ130など形状、大きさなどに変更することで、3並列直列接続の電源としたり、すべての単電池110を直接接続した電源としたり、電源構成の設計自由度が増し、一つの共通する単電池を多くの車種に用いることができ、コスト低減に寄与する。
【0032】
-第2実施形態-
第2実施形態は、第1バスバ122の位置規制突起122dを電極タブ112の位置規制孔113に貫通させた後にかしめ、その後、レーザ溶接で電極タブ112と第1バスバ122とを電気的に接合して、単電池ユニット115を製作するものです。
手順として、電極タブ112の位置規制孔113に位置規制突起122dの先端を挿通して貫通させる工程と、位置規制突起12dの先端を折り曲げてかしめ工程と、レーザ溶接で電極タブ112と第1バスバ122とを電気的に接合する工程とを有する。位置規制突起122dを電極タブ112にかしめることにより、電極タブ112と第1バスバ122の機械的結合性が向上する。
【0033】
(変形例1)
実施形態の組電池では、正極側の第1バスバ122Pと正極電極タブ112Pを機械的に係合する正極側係合構造および負極側の第1バスバ122Nと負極電極タブ112Nを機械的に係合する負極側係合構造を設けた。しかし、正極電極タブ112Pと正極側の第1バスバ122Pにのみ、または、負極電極タブ112Nと負極側の第1バスバ12Nにのみ係合構造を設けてもよい。
(変形例2)
実施形態の組電池100では、電極タブ112に一対の位置規制孔113を設け、第1バスバ122に一対の位置規制突起122dを設け、電極タブ112の2箇所で位置規制を行っている。しかし、位置規制は1カ所でも3カ所以上でも良い。
【0034】
(変形例3)
実施形態の組電池100では、単電池110の長手方向の一対の辺111a,111bから正極電極タブ112Pと負極電極タブ112Nが突出しているが、長手方向の一辺、たとえば辺111aから正極電極タブ112Pと負極電極タブ112Nが離間して突出している単電池にも本発明を適用できる。この場合、スペーサには、正極側の第1バスバ122Pと負極側の第1バスバ122Nがスペーサ本体と一体化され、正極側の第1バスバ122Pに正極電極タブ112Pが溶接され、負極側の第1バスバ122Nに負極電極タブ112Nが溶接される。
変形例3では、組電池の同一側に設けられた正負極電極タブ112P,112Nのそれぞれに位置規制孔113を設けるとともに、第1バスバ122Pと122Nにそれぞれ位
置規制突起122dを設ける。一方の極性側にのみ位置規制構造を設けてもよい。
【0035】
(変形例4)
実施形態の組電池100では、第1バスバ122をスナップフィット構造としてスペーサ本体121に取り付けたが、そのほかの取り付け構造で第1バスバ122をスペーサ本体121に一体化してもよい。たとえば、第1バスバ122を樹脂モールド成型したスペーサ120であってもよい。
【0036】
(変形例5)
実施形態の組電池100では、電極タブ112P,112Nを第1バスバ122P,122Nに接合し、それら第1バスバ122P,122Nに第2バスバ130を接合して単電池群を構成した。しかし、電極タブ112P,112Nにそれぞれ接合した一種類のバスバで組電池を構成してもよい。
(変形例6)
実施形態の組電池100は、長手方向の一対の辺111a,111bから正極電極タブ112Pと負極電極タブ112Nが突出する単電池110を2つ並列接続して単電池対110Cを形成し、この単電池対110Cを複数直列接続して2並列直接接続電源とした。このような2並列直列接続電源は一例であり、たとえば、複数の単電池110のすべてを直列接続した電源としてもよい。
【0037】
(変形例7)
実施形態の組電池100では、正極側の第1バスバ122Pと正極電極タブ112Pを機械的に係合する正極側係合構造および負極側の第1バスバ122Nと負極電極タブ112Nを機械的に係合する負極側係合構造を設けた。すなわち、単電池ごとにスペーサで保持する構造である。しかし、複数の単電池110を一つのスペーサ120で保持することもできる。たとえば、単電池対110Cを一つのスペーサ120で保持する構成でもよい。
【0038】
(変形例8)
実施形態の組電池100では、正負極側の第1バスバ122P,122Nの突起122dと正負極電極タブ112P,112Nの位置規制孔113で位置規制構造を構成した。しかし、第1バスバ122の突起122dに代えて、スペーサ本体121の上面(電極タブ載置面)から樹脂である突起を突設させ、この突起を電極タブの係合孔113に挿通させた位置規制構造でもよい。この場合、電極タブ112と第1バスバ122とが重なりあう領域、すなわち、レーザ溶接される領域内にスペーサ本体121から突起を設けるのが好ましい。具体的な構成の一例として、第1バスバ122に樹脂突起が通過する孔を設け、樹脂突起が第1バスバ122を貫通して電極タブ112の位置規制孔113に挿入される。
【0039】
(変形例9)
実施形態の組電池100では、電極タブ112に位置規制孔113を設け、第1バスバ122に位置規制突起122dを設けたが、電極タブ112に位置規制突起を設け、第1バスバ122に位置規制孔を設けてもよい。
(変形例10)
実施形態の組電池100では、位置規制孔113と位置規制突起122dにより位置規制構造を構成するようにした。しかし、単電池110とスペーサ120の相対位置の変動を抑制する機能の一部を電極タブが有する位置規制構造であれば、位置規制構造は、位置規制孔113と位置規制突起122dによらない位置規制構造を採用してもよい。
【0040】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
100:組電池 110:単電池 110C:単電池対
111:外装体 111a~111d:熱封止辺
112,112P,112N:電極タブ 113:位置規制孔
114:接合部 115:単電池ユニット
120,120P,120N:スペーサ 121:スペーサ本体
122,122P,122N:第1バスバ 122d:位置規制突起
130,131P,131N:第2バスバ
132a,132b:第2バスバホルダ 150:単電池群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9