(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152929
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】端子ユニットおよび端子ユニットにおいて用いられる雌端子
(51)【国際特許分類】
H01R 13/11 20060101AFI20241018BHJP
H01R 13/04 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01R13/11 C
H01R13/11 K
H01R13/04 B
H01R13/04 E
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024140833
(22)【出願日】2024-08-22
(62)【分割の表示】P 2021034511の分割
【原出願日】2021-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】逢澤 勝彦
(57)【要約】
【課題】雌端子に対する雄端子の板幅方向での変位を抑制することができる、端子ユニットおよび当該端子ユニットに用いられる雌端子と雄端子を開示する。
【解決手段】端子ユニット10において、雌端子14は、雄端子12が挿入されて配置される雄端子挿入隙間38を隔てて対向配置された第1壁部26と第2壁部28を有し、雄端子12は、板幅方向の両側に、雄端子12の板厚方向の一方側に傾斜する一対の傾斜部16,16を有し、第1壁部26は、雄端子12の板厚方向の一方側の面に対向し、第2壁部28に向かって突出する弾性接触部40を有し、弾性接触部40は、第2壁部28から離隔する方向に弾性変形可能で雄端子12を第2壁部28に向かって付勢するものであり、第2壁部28は、雄端子12の板厚方向の他方側の面に対向しており、雄端子12の一対の傾斜部16,16にそれぞれ接触する一対の第1突状接点部46,46を有している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状をなす雄端子と、
前記雄端子に接続される雌端子と、を備え、
前記雌端子は、前記雄端子が挿入されて配置される雄端子挿入隙間を隔てて対向配置された第1壁部と第2壁部を有し、
前記雄端子は、前記雄端子挿入隙間への挿入方向に交差する方向である板幅方向の両側に、前記雄端子の板厚方向の一方側に傾斜する一対の傾斜部を有し、
前記第1壁部は、前記雄端子の前記板厚方向の一方側の面に対向し、前記第2壁部に向かって突出する弾性接触部を有し、前記弾性接触部は、前記第2壁部から離隔する方向に弾性変形可能で前記雄端子を前記第2壁部に向かって付勢するものであり、
前記第2壁部は、前記雄端子の前記板厚方向の他方側の面に対向しており、前記雄端子の前記一対の傾斜部にそれぞれ接触する一対の第1突状接点部を有している、
端子ユニット。
【請求項2】
前記雌端子の前記第2壁部は、前記一対の第1突状接点部が突設された一対の側縁部を有し、前記一対の側縁部が前記第1壁部側に屈曲されている、請求項1に記載の端子ユニット。
【請求項3】
前記雄端子は、前記板幅方向で前記一対の傾斜部の間に配置された平坦部を有し、
前記雌端子の前記弾性接触部は、前記雄端子の前記平坦部に接触する第2突状接点部を有している、請求項1または請求項2に記載の端子ユニット。
【請求項4】
前記雄端子は、前記板幅方向で前記一対の傾斜部の間に配置された平坦部を有し、前記一対の傾斜部の前記平坦部に対する傾斜角度がθ1であり、
前記雌端子の前記第2壁部は、前記板幅方向で前記一対の側縁部の間に配置された平板部を有し、前記一対の側縁部の前記平板部に対する傾斜角度がθ2であり、
前記θ1と前記θ2が同一か10°以内の相違を有している、請求項2に記載の端子ユニット。
【請求項5】
各前記第1突状接点部が、前記雄端子挿入隙間への前記雄端子の前記挿入方向で連続して延びている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の端子ユニット。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の端子ユニットにおいて用いられる雌端子。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の端子ユニットにおいて用いられる雄端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子ユニットおよび当該端子ユニットに用いられる雌端子と雄端子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タブ状などと表現される板状をなす雄端子と、雄端子に接続される雌端子からなる端子ユニットが開示されている。雌端子は、雄端子挿入隙間を隔てて対向配置された一対の壁部を有し、一方の壁部には雄端子を他方の壁部に押圧する弾性接触片が設けられ、他方の壁部には複数の接点が突設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の端子ユニットでは、平板状の雄端子を雌端子の一対の壁部の間で挟み込む構造であるため、雄端子の板幅方向の外力に対する把持力が小さい。そのため、振動等により雌雄端子間に微摺動摩擦が生じて接触抵抗値が増大することも考えられることから、更なる改良が求められていた。
【0005】
そこで、雌端子に対する雄端子の板幅方向での変位を抑制することができる、端子ユニットおよび当該端子ユニットに用いられる雌端子と雄端子を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の端子ユニットは、板状をなす雄端子と、前記雄端子に接続される雌端子と、を備え、前記雌端子は、前記雄端子が挿入されて配置される雄端子挿入隙間を隔てて対向配置された第1壁部と第2壁部を有し、前記雄端子は、前記雄端子挿入隙間への挿入方向に交差する方向である板幅方向の両側に、前記雄端子の板厚方向の一方側に傾斜する一対の傾斜部を有し、前記第1壁部は、前記雄端子の前記板厚方向の一方側の面に対向し、前記第2壁部に向かって突出する弾性接触部を有し、前記弾性接触部は、前記第2壁部から離隔する方向に弾性変形可能で前記雄端子を前記第2壁部に向かって付勢するものであり、前記第2壁部は、前記雄端子の前記板厚方向の他方側の面に対向しており、前記雄端子の前記一対の傾斜部にそれぞれ接触する一対の第1突状接点部を有している、端子ユニットである。
本開示の雌端子は、本開示の端子ユニットにおいて用いられる雌端子である。
本開示の雄端子は、本開示の端子ユニットにおいて用いられる雄端子である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、雌端子に対する雄端子の板幅方向での変位を抑制することができる、端子ユニットおよび当該端子ユニットに用いられる雌端子と雄端子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る端子ユニットを示す全体斜視図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る端子ユニットを示す正面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の端子ユニットは、
(1)板状をなす雄端子と、前記雄端子に接続される雌端子と、を備え、前記雌端子は、前記雄端子が挿入されて配置される雄端子挿入隙間を隔てて対向配置された第1壁部と第2壁部を有し、前記雄端子は、前記雄端子挿入隙間への挿入方向に交差する方向である板幅方向の両側に、前記雄端子の板厚方向の一方側に傾斜する一対の傾斜部を有し、前記第1壁部は、前記雄端子の前記板厚方向の一方側の面に対向し、前記第2壁部に向かって突出する弾性接触部を有し、前記弾性接触部は、前記第2壁部から離隔する方向に弾性変形可能で前記雄端子を前記第2壁部に向かって付勢するものであり、前記第2壁部は、前記雄端子の前記板厚方向の他方側の面に対向しており、前記雄端子の前記一対の傾斜部にそれぞれ接触する一対の第1突状接点部を有している、端子ユニットである。
【0010】
本開示の端子ユニットによれば、雌端子は、雄端子挿入隙間を隔てて対向配置された第1壁部と第2壁部を有し、第1壁部に設けられた弾性接触部により、雄端子が第2壁部に向かって付勢される構造を有している。そして、雄端子は、雄端子の板幅方向の両側に、雄端子の板厚方向の一方側に傾斜する一対の傾斜部を有している。雌端子は、第2壁部において、雄端子の一対の傾斜部にそれぞれ接触する一対の第1突状接点部を有している。そのため、雄端子挿入隙間に挿入された雄端子が、雌端子の弾性接触部により第2壁部側に押圧されると、雄端子の板幅方向の両側において雄端子の傾斜部が雌端子の第1突状接点部に押圧されて、板幅方向の内方に向かう分力が発生する。その結果、従来構造に比べて、雄端子の板幅方向の外力に対して雄端子の変位を阻止する力を大きくすることができ、雌端子に対する雄端子の板幅方向での変位を抑制することができる。それにより、振動等による雌雄端子間の微摺動摩擦やそれによる接触抵抗値の増大を抑制することができる。
【0011】
(2)前記雌端子の前記第2壁部は、前記一対の第1突状接点部が突設された一対の側縁部を有し、前記一対の側縁部が前記第1壁部側に屈曲されている、ことが好ましい。雌端子の第2壁部において、一対の第1突条接点部が突設された一対の側縁部が、第1壁部側に屈曲されている。雄端子の一対の傾斜部にそれぞれ接触する一対の第1突状接点部からの反力であって、一対の側縁部に垂直な方向に発生する反力も、雄端子の板幅方向の両側において雄端子の板幅方向の内方に向かわせることができる。これにより、第1突条接点部からの反力を一層有利に利用して、雄端子の板幅方向の外力に対して雄端子の変位を阻止する力を大きくできる。それゆえ、雌端子に対する雄端子の板幅方向での変位を抑制することができる。
【0012】
(3)前記雄端子は、前記板幅方向で前記一対の傾斜部の間に配置された平坦部を有し、前記雌端子の前記弾性接触部は、前記雄端子の前記平坦部に接触する第2突状接点部を有している、ことが好ましい。雄端子の板厚方向の一方側から、雄端子の平坦部に雌端子の第2突状接点部が押圧され、雄端子の板厚方向の他方側から、雄端子の一対の傾斜部に雌端子の第1突状接点部が押圧される。これにより、雄端子を雌端子の3つの接点部により安定して保持することができ、接触抵抗の低減を図ることができる。
【0013】
(4)前記雄端子は、前記板幅方向で前記一対の傾斜部の間に配置された平坦部を有し、前記一対の傾斜部の前記平坦部に対する傾斜角度がθ1であり、前記雌端子の前記第2壁部は、前記板幅方向で前記一対の側縁部の間に配置された平板部を有し、前記一対の側縁部の前記平板部に対する傾斜角度がθ2であり、前記θ1と前記θ2が同一か10°以内の相違を有している、ことが好ましい。雄端子と雌端子の第2壁部が対応する形状を有しており、一対の傾斜部の平坦部に対する傾斜角度θ1と一対の側縁部の平板部に対する傾斜角度θ2が同一か10°以内の相違の範囲で設定される。これにより、端子ユニットの小型化を図りつつ、雄端子の板幅方向の外力に対して雄端子の変位を阻止する力を大きくできる。
【0014】
(5)各前記第1突状接点部が、前記雄端子挿入隙間への前記雄端子の前記挿入方向で連続して延びている、ことが好ましい。第1突状接点部が、雄端子の挿入方向で連続して延びていることから、雌雄端子間の接触面積を安定して確保することができ、両端子の接触圧の低減を図ることも可能となる。
【0015】
(6)上記(1)から上記(5)のいずれかに記載の端子ユニットにおいて用いられる雌端子である。本開示の雌端子によれば、上記(1)から上記(5)のいずれかに記載の端子ユニットにおいて用いられることから、上記(1)から上記(5)の端子ユニットが享受しうる作用効果を同様に有することができる。それゆえ、雌端子に対する雄端子の板幅方向での変位を抑制することができ、振動等による雌雄端子間の微摺動摩擦やそれによる接触抵抗値の増大を抑制することができる。
【0016】
(7)上記(1)から上記(5)のいずれかに記載の端子ユニットにおいて用いられる雄端子である。本開示の雄端子によれば、上記(1)から上記(5)のいずれかに記載の端子ユニットにおいて用いられることから、上記(1)から上記(5)の端子ユニットが享受しうる作用効果を同様に有することができる。それゆえ、雌端子に対する雄端子の板幅方向での変位を抑制することができ、振動等による雌雄端子間の微摺動摩擦やそれによる接触抵抗値の増大を抑制することができる。
【0017】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示の端子ユニットおよび当該端子ユニットに用いられる雌端子と雄端子の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1の端子ユニット10について、
図1から
図5を用いて説明する。端子ユニット10は、雄端子12と雌端子14とを備えている。そして、雄端子12が雌端子14に挿入されて相互に接触することで、雄端子12と雌端子14とが電気的に接続されるようになっている。なお、端子ユニット10は、任意の向きで配置することができるが、以下では、上下方向,左右方向,前後方向を、図中に示す上下方向,左右方向および前後方向を基準として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0019】
<雄端子12>
雄端子12は、全体として板状をなしており、図示しない平板金具を用いて構成されている。平板金具は矩形状を有している。雄端子12は、所定の板幅寸法(
図5中の左右方向寸法)および板厚寸法(
図5中の上下方向寸法)を有しており、ストレートに延びている。なお、雄端子12において、挿入方向の先端側の端部(
図4中、後方側)は、先細形状である。雄端子12は、導電性を有しており、例えば銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の電気抵抗の低い金属により形成される。
【0020】
そして、平板金具の板幅方向両端部分を板厚方向の一方側(上方)に屈曲させて傾斜させることで、雄端子12の板幅方向両端部分には、一対の傾斜部16,16が設けられている。すなわち、雄端子12において、後述する雄端子挿入隙間38への挿入方向に対して交差する方向、実施形態1では直交する方向である板幅方向の両側に一対の傾斜部16,16が設けられている。雄端子12の板幅方向で一対の傾斜部16,16の間に位置する板幅方向の中間部には、平坦に広がる平坦部18が設けられている。一対の傾斜部16,16の平坦部18に対する傾斜角度はθ1となっている(
図5参照)。
【0021】
一対の傾斜部16,16の平坦部18に対する傾斜角度θ1は限定されるものではないが、例えば5°以上45°以下とされることが好適であり、より好適には10°以上30°以下とされる。傾斜部16の傾斜角度θ1が5°以上とされることにより、後述するように、雄端子12に板幅方向外方への外力が入力された際に板幅方向内方への分力を効果的に作用させることができて、雄端子12の板幅方向外方への変位を抑制することができる。傾斜部16の傾斜角度θ1が45°以下とされることにより、雄端子12、ひいては端子ユニット10の上下方向寸法を小さく抑えることができる。
【0022】
雄端子12は、後述するように、雄端子12を雌端子14の雄端子挿入隙間38に挿入した状態において、板厚方向一方の面(上面)が雌端子14の第1壁部26と対向する。また、板厚方向他方の面(下面)が雌端子14の第2壁部28と対向する。そして、傾斜部16,16における下面が、第2壁部28に設けられる第1突状接点部46と接触するとともに、平坦部18における上面が第1壁部26に設けられる弾性接触部40の第2突状接点部42と接触するようになっている。
【0023】
雄端子12において、傾斜部16,16の形成領域よりも挿入方向基端側には、図示しないストレートに延びる平板部が設けられている。平板部には、例えばボルト挿通孔が設けられて機器の端子部に固定されたり、電線が固着される。
【0024】
<雌端子14>
雌端子14は、例えば
図2や
図4に示すように、内部に前後方向に開口する雄端子挿入隙間38を有する箱状の本体部20と、図示しない電線の芯線が固着される電線接続部22と、を含んで一体的に構成されている。より詳細には、雌端子14は、導電性を有しており、且つプレス加工や打抜き加工等が可能な種々の金属材料、例えば真鍮や銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を用いて形成されている。
【0025】
<本体部20>
本体部20は略箱状に形成されており、上下方向に対向する第1壁部26,第2壁部28と、左右方向に対向する一対の側壁30,32と、を備えている。加えて、本体部20は、後述する弾性接触部40の突出先端部を前方から覆う保護壁34と、弾性接触部40の上方への過度の変位を防止する防止壁36と、を備えて構成されている。
【0026】
上方に位置する第1壁部26の後端には、舌片状の弾性接触部40が延出して設けられており、
図4に示すように、第1壁部26の後端から本体部20内方に折り返して形成されている。弾性接触部40は、第1壁部26の後端から前方および軸中心に向かって斜め方向に真っ直ぐ延出した後、先端部が上方に屈曲された形状とされている。この結果、弾性接触部40は、雄端子12の平坦部18に接触する第2突状接点部42を有している(
図4,5参照)。そして、弾性接触部40と第2壁部28間の隙間に、雄端子12の先端部が挿入可能となっている。すなわち、弾性接触部40は、後端側が第1壁部26に片持ち梁状に保持されて、前方側に延びるに従い、第2壁部28に向かって次第に接近しつつ突出している。弾性接触部40と第2壁部28間に雄端子12が挿入されることにより、弾性接触部40は、第2壁部28から離隔する方向に弾性変形可能となっている。この結果として弾性接触部40は、雄端子12を第2壁部28に向かって付勢する。
【0027】
上方に位置する第1壁部26の前端には、一対の側壁30,32間の離隔距離よりも小さい幅寸法で第2壁部28に向かって突出する矩形平板状の保護壁34が設けられている。保護壁34の突出先端部と第2壁部28間の隙間から、雄端子12の先端部が挿入可能となっている。
図4に示すように、保護壁34は弾性接触部40の突出先端部を前方から覆うように構成されている。これにより、弾性接触部40は、雄端子12の先端部が弾性接触部40の突出先端部に当接することによる弾性接触部40の異常な変形から保護されている。
【0028】
上方に位置する第1壁部26の前方側の左右方向中央部には、3方をスリットで切り欠かれて片持ち梁状に第2壁部28に向かって突出する矩形平板状の防止壁36が設けられている。防止壁36の突出寸法は、保護壁34の突出寸法よりも小さい。弾性接触部40が防止壁36突出先端部に当接することにより、弾性接触部40が雄端子12によって第1壁部26に向かって過度に変形することが防止されている。
【0029】
下方に位置する第2壁部28は、雄端子12の板幅方向に沿う板幅方向(図中、左右方向)両端部分に一対の側縁部44,44を有する。一対の側縁部44,44には、一対の第1突状接点部46,46が突設されている。一対の側縁部44,44は、上方に位置する第1壁部26側に屈曲されている。また、雌端子14の第2壁部28の板幅方向で一対の側縁部44,44の間に位置する板幅方向中間部には、平坦に広がる平板部48が設けられている。一対の側縁部44,44の平板部48に対する傾斜角度はθ2となっている(
図5参照)。ここで、θ2はθ1と同一か10°以内の相違を有している。
【0030】
この結果、
図5に示すように、第2壁部28の一対の側縁部44,44は、雄端子12の一対の傾斜部16,16の下面にそれぞれ接触する一対の第1突状接点部46,46を有している。また、
図3に示すように、第2壁部28の一対の側縁部44,44の前方側において、各第1突状接点部46は、雄端子挿入隙間38への雄端子12の挿入方向である前後方向に連続して延びている。
【0031】
ところで、このような構造の雌端子14は、以下のような方法で製造することができる。例えば、金属平板をプレス打ち抜きした後、屈曲加工を施すことにより、弾性接触部40,保護壁34,防止壁36を形成する。続いて、底板に当たる第2壁部28から両側壁30,32を対向するように折り曲げ、さらに側壁30から連続した天井板に当たる第1壁部26を第2壁部28と対向するように折り曲げて、前後両端が開放された箱状の本体部20を組み上げる。
【0032】
側壁32の側縁部には、
図1に示すように、係合孔50が貫設されており、第1壁部26の側縁部には、係合孔50に嵌め入れられる係止部52が突設されている。係止部52を係合孔50に嵌め入れた後、側壁32の側縁部を第1壁部26に当接するまで折り曲げることにより、側壁32と第1壁部26が係合固定される。この状態で、本体部20内に、第1壁部26の後端から内方に折り返された弾性接触部40が配置されている。最後に、電線接続部22に図示しない電線の芯線を固着する。
【0033】
このような構造とされた本開示の端子ユニット10によれば、雌端子14は、雄端子挿入隙間38を隔てて対向配置された第1壁部26と第2壁部28を有している。第1壁部26に設けられた弾性接触部40により、雄端子12が第2壁部28に向かって付勢される構造を有している。雄端子12は、雄端子12の板幅方向の両側に、雄端子12の板厚方向の上方側に傾斜する一対の傾斜部16,16を有している。雌端子14は、第2壁部28において、雄端子12の一対の傾斜部16,16にそれぞれ接触する一対の第1突状接点部46,46を有している。これにより、雌端子14に雄端子12が挿入された状態において、雄端子12に板幅方向の外力が入力された場合、その外力は雄端子12を通じて雌端子14に及ぼされる。この結果、雌端子14の第1突状接点部46,46から雄端子12の傾斜部16,16に対して
図5中の矢印F1の向きに外力に対する反力が生じる。この反力F1により、上方への分力F2と、左右方向内方への分力F3とが発生する。すなわち、雄端子12に板幅方向の外力が入力された場合でも、第1突状接点部46,46と傾斜部16,16とにより左右方向内方への力(F3)が発生して、雄端子12の板幅方向の変位が抑制される。それゆえ、車載時の振動等による雌端子14,雄端子12間の微摺動摩擦やそれによる接触抵抗値の増大を抑制することができる。
【0034】
雌端子14の第2壁部28において、一対の第1突状接点部46,46が突設された一対の側縁部44,44が、雌端子14の第1壁部26側に屈曲されている。これにより、雄端子12の一対の傾斜部16,16にそれぞれ接触する一対の第1突状接点部46,46からの反力であって、一対の側縁部44,44に垂直な方向に発生する反力(F1)も、雄端子12の板幅方向の両側において雄端子12の板幅方向の内方に向かわせることができる。それゆえ、第1突状接点部46からの反力を一層有利に利用して、雄端子12の板幅方向の外方に向かう外力に対して雄端子12の変位を阻止する力を大きくできる。したがって、雌端子14に対する雄端子12の板幅方向での変位を抑制することができる。
【0035】
雄端子12の板厚方向の上方側から、雄端子12の平坦部18に雌端子14の第2突状接点部42が押圧され、雄端子12の板厚方向の下方側から、雄端子12の一対の傾斜部16,16に雌端子14の第1突状接点部46,46が押圧される。これにより、雄端子12を雌端子14の3つの接点部42,46,46により安定して保持することができ、接触抵抗の低減を図ることができる。また、雄端子12と雌端子14の第2壁部28が対応する形状を有しており、一対の傾斜部16,16の平坦部18に対する傾斜角度θ1と一対の側縁部44,44の平板部48に対する傾斜角度θ2が同一か10°以内の相違の範囲で設定される。これにより、端子ユニット10の小型化を図りつつ、雄端子12の板幅方向の外方に向かう外力に対して雄端子12の変位を阻止する力(F3)を大きくできる。さらに、第1突状接点部46が、雄端子12の挿入方向で連続して延びていることから、雌端子14,雄端子12間の接触面積を安定して確保することができ、両端子14,12の接触圧の低減を図ることも可能となる。
【0036】
このような構造とされた本開示の雌端子14によれば、上述の端子ユニット10が享受しうる作用効果を同様に有することができる。それゆえ、雌端子14に対する雄端子12の板幅方向での変位を抑制することができ、振動等による雌端子14,雄端子12間の微摺動摩擦やそれによる接触抵抗値の増大を抑制することができる。加えて、このような構造とされた本開示の雄端子12においても、上述の端子ユニット10が享受しうる作用効果を同様に有することができる。
【0037】
<変形例>
以上、本開示の具体例として、実施形態1について詳述したが、本開示はこの具体的な記載によって限定されない。本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれるものである。例えば次のような実施形態の変形例も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0038】
(1)上記実施形態では、雌端子14の第2壁部28は、第1壁部26側に屈曲されている一対の側縁部44,44を有していたが、これに限定されない。例えば、
図6に示す実施形態1の変形例の端子ユニット54のように、雌端子56の第2壁部58は、屈曲形成された側縁部44を有さず、平板部48のみによって構成されていてもよい。この場合でも、雄端子12の一対の傾斜部16,16が、平板部48の側縁部に設けられた第1突状接点部60に押圧されることにより、雄端子12の一対の傾斜部16,16において板幅方向の内方に向かう分力が発生する。それゆえ、従来構造に比べて、雄端子12の板幅方向の外方に向かう外力に対して雄端子12の変位を阻止する力を大きくすることができ、雌端子56に対する雄端子12の板幅方向での変位を抑制することができる。したがって、振動等による雌端子14,雄端子12間の微摺動摩擦やそれによる接触抵抗値の増大を抑制することができる。
【0039】
(2)上記実施形態では、雄端子12の上面に対する雌端子14の接点部は、雄端子12の平坦部18に対して雌端子14の弾性接触部40の1つの第2突状接点部42のみであったが、これに限定されない。第2突状接点部42が複数あって、平坦部18もしくは傾斜部16に接触するようになっていてもよい。
【0040】
(3)第1突状接点部46,60の形状は、上記実施形態1のような長円形状や、変形例のような半球形状に限定されるものではない。第1突状接点部は、例えば直方体形状や立方体形状を有していてもよい。この場合は、角部を面取りすることが好ましい。
【0041】
(4)上記実施形態では、雄端子12が、一対の傾斜部16,16の間に平坦部18を有していたが、平坦部18は必須なものではなく、本開示に係る雄端子は、傾斜部16同士が雄端子の幅方向中央で連結された形状であってもよい。
【0042】
(5)上記実施形態では、各第1突状接点部46が、雄端子挿入隙間38への雄端子12の挿入方向で連続して延びていたが、これに限定されない。第1突状接点部は、挿入方向で連続して延びていなくてもよいし、挿入方向に離隔して複数設けられていてもよい。
【0043】
(6)上記実施形態では、第1壁部26には舌片状の弾性接触部40が延出して設けられていたが、弾性接触部の構成はこれに限定されない。弾性接触部は、第1壁部26に設けられて第2壁部28に向かって突出しかつ第2壁部28から離隔する方向に弾性変形可能で雄端子12を第2壁部28に向かって付勢するものであればよく、例えば第1壁部26に保持されたコイルばねや板ばね等であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 端子ユニット(実施形態1)
12 雄端子
14 雌端子
16 傾斜部
18 平坦部
20 本体部
22 電線接続部
26 第1壁部
28 第2壁部
30 側壁
32 側壁
34 保護壁
36 防止壁
38 雄端子挿入隙間
40 弾性接触部
42 第2突状接点部
44 側縁部
46 第1突状接点部
48 平板部
50 係合孔
52 係止部
54 端子ユニット(変形例)
56 雌端子
58 第2壁部
60 第1突状接点部
【手続補正書】
【提出日】2024-09-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状をなす雄端子と、
前記雄端子に接続される雌端子と、を備え、
前記雌端子は、前記雄端子が挿入されて配置される雄端子挿入隙間を隔てて対向配置された第1壁部と第2壁部を有し、
前記雄端子は、前記雄端子挿入隙間への挿入方向に交差する方向である板幅方向の両側に、前記雄端子の板厚方向の一方側に傾斜する一対の傾斜部を有し、
前記第1壁部は、前記雄端子の前記板厚方向の一方側の面に対向し、前記第2壁部に向かって突出する弾性接触部を有し、前記弾性接触部は、前記第2壁部から離隔する方向に弾性変形可能で前記雄端子を前記第2壁部に向かって付勢するものであり、
前記第2壁部は、前記雄端子の前記板厚方向の他方側の面に対向しており、前記雄端子の前記一対の傾斜部にそれぞれ接触する一対の第1突状接点部を有しており、
前記弾性接触部は、前記挿入方向となる前後方向の後端側で、前記第1壁部に片持ち梁状に保持されて、前方側に延びるに従い、前記第2壁部に向かって突出しており、
前記第1壁部の前方側には、前記弾性接触部の突出先端部を前方から覆う保護壁が前記第2壁部に向かって突出して設けられている、
端子ユニット。
【請求項2】
前記第1壁部の前記保護壁よりも後方側には、前記弾性接触部に当接して前記弾性接触部の前記第1壁部側への過度の変位を防止する防止壁が前記第2壁部に向かって突出して設けられている、請求項1に記載の端子ユニット。
【請求項3】
前記雄端子は、前記板幅方向で前記一対の傾斜部の間に配置された平坦部を有し、
前記雌端子の前記弾性接触部は、前記雄端子の前記平坦部に接触する第2突状接点部を有している、請求項1または請求項2に記載の端子ユニット。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の端子ユニットにおいて用いられる雌端子。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本開示の端子ユニットは、板状をなす雄端子と、前記雄端子に接続される雌端子と、を備え、前記雌端子は、前記雄端子が挿入されて配置される雄端子挿入隙間を隔てて対向配置された第1壁部と第2壁部を有し、前記雄端子は、前記雄端子挿入隙間への挿入方向に交差する方向である板幅方向の両側に、前記雄端子の板厚方向の一方側に傾斜する一対の傾斜部を有し、前記第1壁部は、前記雄端子の前記板厚方向の一方側の面に対向し、前記第2壁部に向かって突出する弾性接触部を有し、前記弾性接触部は、前記第2壁部から離隔する方向に弾性変形可能で前記雄端子を前記第2壁部に向かって付勢するものであり、前記第2壁部は、前記雄端子の前記板厚方向の他方側の面に対向しており、前記雄端子の前記一対の傾斜部にそれぞれ接触する一対の第1突状接点部を有しており、前記弾性接触部は、前記挿入方向となる前後方向の後端側で、前記第1壁部に片持ち梁状に保持されて、前方側に延びるに従い、前記第2壁部に向かって突出しており、前記第1壁部の前方側には、前記弾性接触部の突出先端部を前方から覆う保護壁が前記第2壁部に向かって突出して設けられている、端子ユニットである。
本開示の雌端子は、本開示の端子ユニットにおいて用いられる雌端子である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
(2)前記雌端子の前記第2壁部は、前記一対の第1突状接点部が突設された一対の側縁部を有し、前記一対の側縁部が前記第1壁部側に屈曲されている、ことが好ましい。雌端子の第2壁部において、一対の第1突状接点部が突設された一対の側縁部が、第1壁部側に屈曲されている。雄端子の一対の傾斜部にそれぞれ接触する一対の第1突状接点部からの反力であって、一対の側縁部に垂直な方向に発生する反力も、雄端子の板幅方向の両側において雄端子の板幅方向の内方に向かわせることができる。これにより、第1突状接点部からの反力を一層有利に利用して、雄端子の板幅方向の外力に対して雄端子の変位を阻止する力を大きくできる。それゆえ、雌端子に対する雄端子の板幅方向での変位を抑制することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
上方に位置する第1壁部26の前方側の左右方向中央部には、3方をスリットで切り欠かれて片持ち梁状に第2壁部28に向かって突出する矩形平板状の防止壁36が設けられている。防止壁36の突出寸法は、保護壁34の突出寸法よりも小さい。弾性接触部40が防止壁36の突出先端部に当接することにより、弾性接触部40が雄端子12によって第1壁部26に向かって過度に変形することが防止されている。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
(1)上記実施形態では、雌端子14の第2壁部28は、第1壁部26側に屈曲されている一対の側縁部44,44を有していたが、これに限定されない。例えば、
図6に示す実施形態1の変形例の端子ユニット54のように、雌端子56の第2壁部58は、屈曲形成された側縁部44を有さず、平板部48のみによって構成されていてもよい。この場合でも、雄端子12の一対の傾斜部16,16が、平板部48の側縁部に設けられた第1突状接点部60に押圧されることにより、雄端子12の一対の傾斜部16,16において板幅方向の内方に向かう分力が発生する。それゆえ、従来構造に比べて、雄端子12の板幅方向の外方に向かう外力に対して雄端子12の変位を阻止する力を大きくすることができ、雌端子56に対する雄端子12の板幅方向での変位を抑制することができる。したがって、振動等による雌端子
56,雄端子12間の微摺動摩擦やそれによる接触抵抗値の増大を抑制することができる。