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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152937
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】拭き取りチップ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/16 20060101AFI20241018BHJP
   A61J 15/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61B 90/70 20160101ALI20241018BHJP
【FI】
A61M39/16
A61J15/00 Z
A61B90/70
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024140944
(22)【出願日】2024-08-22
(62)【分割の表示】P 2020061233の分割
【原出願日】2020-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】浮田 純次
(72)【発明者】
【氏名】上原 康賢
(72)【発明者】
【氏名】木村 篤志
(57)【要約】
【課題】オス部材を取り囲むように雌ネジが設けられたオスコネクタを、清浄に清掃することが可能な拭き取りチップを提供する。
【解決手段】拭き取りチップ1は、中空の筒状体10と、筒状体10の先端10a近傍の外周面に設けられた第1拭き取り部21とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のオス部材と、前記オス部材を取り囲む外筒と、前記外筒の前記オス部材に対向する内周面に設けられた雌ネジとを備えたオスコネクタを拭き取り清掃するために使用される拭き取りチップであって、
中空の筒状体と、前記筒状体の先端近傍の外周面に設けられた第1拭き取り部と、前記筒状体の先端の開口を塞ぐ第5拭き取り部とを備え、
前記第5拭き取り部は前記オス部材によって貫通可能であることを特徴とする拭き取りチップ。
【請求項2】
前記第1拭き取り部は、前記筒状体の前記外周面を覆うように、前記筒状体に設けられている請求項1に記載の拭き取りチップ。
【請求項3】
前記第5拭き取り部を貫通するスリットが設けられている請求項1又は2に記載の拭き取りチップ。
【請求項4】
前記オス部材は前記筒状体に挿入可能であり、且つ、前記筒状体は前記オス部材と前記外筒との間の隙間に挿入可能である請求項1~3のいずれか一項に記載の拭き取りチップ。
【請求項5】
前記第1拭き取り部の外径は、前記雌ネジの内径より大きい請求項1~4のいずれか一項に記載の拭き取りチップ。
【請求項6】
前記筒状体の内径は、前記オス部材の外周面の最大外径と同じかこれより大きい請求項1~5のいずれか一項に記載の拭き取りチップ。
【請求項7】
前記筒状体の先端近傍の内周面に設けられた第2拭き取り部を更に備える請求項1~6のいずれか一項に記載の拭き取りチップ。
【請求項8】
前記第1拭き取り部と前記第2拭き取り部とは、前記筒状体の先端を覆う第3拭き取り部を介して連続している請求項7に記載の拭き取りチップ。
【請求項9】
前記第1拭き取り部の外面に凹凸が設けられている請求項1~8のいずれか一項に記載の拭き取りチップ。
【請求項10】
前記第1拭き取り部は、らせん状に設けられている請求項1に記載の拭き取りチップ。
【請求項11】
前記筒状体内に第4拭き取り部が詰められている請求項1~10のいずれか一項に記載の拭き取りチップ。
【請求項12】
前記筒状体に、前記筒状体の先端から前記筒状体の長手方向に沿って延びた切り欠きが設けられている請求項1~11のいずれか一項に記載の拭き取りチップ。
【請求項13】
棒状のロッドを備え、
前記ロッドの端面から、前記ロッドの長手方向に沿って所定長さの孔が設けられており、
前記ロッドのうち前記孔が設けられた部分が前記筒状体である請求項1~12のいずれか一項に記載の拭き取りチップ。
【請求項14】
一端に前記第1拭き取り部が設けられた前記筒状体を備え、他端にハンドルを備える請求項1~13のいずれか一項に記載の拭き取りチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経腸栄養法に好ましく用いられるオスコネクタを清掃するための拭き取りチップに関する。
【背景技術】
【0002】
食事を口から摂れなくなった患者に栄養剤や薬剤等を含む液状物を投与する方法として経腸栄養法が知られている。経腸栄養法では、カテーテルを体外から消化管(例えば胃)内に挿入した状態で患者に留置する。カテーテルとしては、患者の鼻から挿入する経鼻カテーテルや、患者の腹に形成された胃ろうに挿入するPEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)カテーテル等が知られている。カテーテルを介して栄養剤、流動食(一般に「経腸栄養剤」と呼ばれる)、又は薬剤などの液状物が患者に投与される。液状物を貯留した容器と、患者に留置されたカテーテル(経鼻カテーテル、PEGカテーテルなど)とが接続される。異なる部材を接続するために、オスコネクタとメスコネクタとからなる接続具が用いられる。
【0003】
この接続具として、図16A及び図16Bに示すオスコネクタ910及び図17A及び図17Bに示すメスコネクタ920が使用される。
【0004】
図16A及び図16Bのオスコネクタ910は、筒形状のオス部材911と、オス部材911を取り囲む外筒913とを有する。オス部材911と外筒913とは、オス部材911の基端部から半径方向に沿ってフランジ状に突出した底板914を介して連結されている。オス部材911の外周面912は、先端に近づくにしたがって外径が小さくなるテーパ面(いわゆるオステーパ面)である。オス部材911には、その長手方向に沿ってオス部材911を貫通する流路917が設けられている。外筒913のオス部材911に対向する内周面には雌ネジ915が設けられている。雌ネジ915は、右ネジである。
【0005】
図17A及び図17Bのメスコネクタ920は、中空円筒形状の管状部(メス部材)921を有する。管状部921の内周面922は、先端に近づくにしたがって内径が大きくなるテーパ面(いわゆるメステーパ面)である。管状部921の外周面には螺状突起(雄ネジ)925が設けられている。
【0006】
オスコネクタ910とメスコネクタ920とは、オス部材911を管状部921に挿入し、且つ、雌ネジ915と螺状突起925とを螺合させることにより接続される。オス部材911の外周面912と管状部921の内周面922とは、径及びテーパ角度が一致するテーパ面であるから、両者は液密な面接触をする。
【0007】
経腸栄養法では、液状物の流れ方向に関して上流側(容器側)のコネクタとしてメスコネクタ920が、下流側(患者側)のコネクタとしてオスコネクタ910が、それぞれ使用される。
【0008】
オスコネクタ910では、外筒913がオス部材911を取り囲み、外筒913の内周面には雌ネジ915が設けられている。従って、経腸栄養法を行った後、オス部材911と外筒913との間の隙間916内(特に雌ネジ915の溝内)に液状物(経腸栄養剤)が残留しやすい。
【0009】
オスコネクタ910が患者に挿入されたカテーテルの上流側端に設けられている場合には、オスコネクタ910は当該カテーテルとともに患者に長期にわたって留置される。オスコネクタ910が、液状物が残留したままで患者に留置され続けると、オスコネクタ910は不衛生状態に至りうる。また、オスコネクタ910上で液状物が乾燥して固化した固化物は、オスコネクタ910とメスコネクタ920との再接続を妨げる。従って、オスコネクタ910を清浄に清掃することが望まれる。
【0010】
特許文献1には、オスコネクタ910を清掃するための拭き取りチップが記載されている。拭き取りチップは、吸水性を有する筒状部を備える。筒状部を、オス部材911と外筒913との間の隙間916に挿入する。隙間内に残留した液状物は、筒状部に吸収され拭き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2017-099738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1には、筒状部は、ウレタンやポリビニルアルコールなどの発泡体や不織布からなり、プレス成型やトランスファー成型などにより製造しうると記載されている。しかしながら、上記材料の発泡体又は不織布を所望する強度の筒状部に成型することは困難である。筒状部が柔らかすぎると、筒状部は、オス部材911と外筒913との間の隙間916に挿入すると容易に変形してしまう。このため、筒状部を隙間916に深く挿入することができない。一方、筒状部が硬すぎると、筒状部はオスコネクタ910に応じて変形できない。このため、例えば雌ネジ915の溝内に付着した液状物を拭き取り除去することが困難である。このように、従来の拭き取りチップは、オスコネクタ910に付着する液状物を残らず拭き取り除去することができないという課題を有している。
【0013】
本発明は、オス部材を取り囲むように雌ネジが設けられたオスコネクタを、清浄に清掃することが可能な拭き取りチップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の拭き取りチップは、中空の筒状体と、前記筒状体の先端近傍の外周面に設けられた第1拭き取り部とを備える。
【発明の効果】
【0015】
筒状体は、第1拭き取り部をオス部材と外筒との間の隙間に深く挿入することを可能にする。筒状体に設けられた第1拭き取り部は、オスコネクタの雌ネジに対向する。このため、本発明によれば、オスコネクタの雌ネジを清浄に清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1Aは、本発明の実施形態1にかかる拭き取りチップの斜視図である。図1Bは、本発明の実施形態1にかかる拭き取りチップの断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態1にかかる拭き取りチップを用いてオスコネクタを清掃する一工程を示した断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態1にかかる拭き取りチップを用いてオスコネクタを清掃する次の一工程を示した断面図である。
図4図4Aは、本発明の実施形態2にかかる拭き取りチップの斜視図である。図4Bは、本発明の実施形態2にかかる拭き取りチップの断面図である。
図5図5は、本発明の実施形態2にかかる拭き取りチップを用いてオスコネクタを清掃する方法を示した断面図である。
図6図6Aは、本発明の実施形態3にかかる拭き取りチップの斜視図である。図6Bは、本発明の実施形態3にかかる拭き取りチップの断面図である。図6Cは、本発明の実施形態3にかかる拭き取りチップの正面図である。
図7図7Aは、本発明の実施形態4にかかる拭き取りチップの斜視図である。図7Bは、本発明の実施形態4にかかる拭き取りチップの断面図である。
図8図8は、本発明の実施形態5にかかる拭き取りチップの断面図である。
図9図9Aは、本発明の実施形態6にかかる拭き取りチップの斜視図である。図9Bは、本発明の実施形態6にかかる拭き取りチップの断面図である。
図10図10は、本発明の実施形態6にかかる拭き取りチップを用いてオスコネクタを清掃する方法を示した断面図である。
図11図11Aは、本発明の実施形態6にかかる別の拭き取りチップの斜視図である。図11Bは、本発明の実施形態6にかかる別の拭き取りチップの断面図である。
図12図12Aは、本発明の実施形態7にかかる拭き取りチップに使用される筒状体の斜視図である。図12Bは、本発明の実施形態7にかかる拭き取りチップの斜視図である。
図13図13は、本発明の実施形態7にかかる拭き取りチップに使用される別の筒状体の斜視図である。
図14図14は、本発明の実施形態8にかかる拭き取りチップの断面図である。
図15図15は、本発明の実施形態9にかかる拭き取りチップの断面図である。
図16図16Aは、経腸栄養法で患者側コネクタとして使用されるオスコネクタの斜視図である。図16Bは、当該オスコネクタの中心軸を含む面に沿った断面図である。
図17図17Aは、経腸栄養法で容器側コネクタとして使用されるメスコネクタの斜視図である。図17Bは、当該メスコネクタの中心軸を含む面に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記の本発明の拭き取りチップにおいて、前記第1拭き取り部は、前記筒状体の前記外周面を覆うように、前記筒状体に設けられていてもよい。かかる態様は、拭き取りチップの構造の簡単化、拭き取りチップの製造の容易化、雌ネジの拭き取り清掃、及び、筒状体による雌ネジの傷付きの防止に有利である。
【0018】
本発明の拭き取りチップは、前記筒状体の先端近傍の内周面に設けられた第2拭き取り部を更に備えていてもよい。第2拭き取り部は、オスコネクタのオス部材の外周面に付着した液状物を拭き取り除去することができる。また、第2拭き取り部は、筒状体がオス部材の外周面を傷付けるのを防止することができる。
【0019】
前記第1拭き取り部と前記第2拭き取り部とは、前記筒状体の先端を覆う第3拭き取り部を介して連続していてよい。第3拭き取り部は、オスコネクタの底板及びその近傍に付着した液状物を拭き取り除去することができる。また、第3拭き取り部は、筒状体が底板を傷付けるのを防止することができる。
【0020】
前記第1拭き取り部の外面に凹凸が設けられていてもよい。かかる態様によれば、オスコネクタの雌ネジを、比較的小さな操作力で、拭き残しを少なく、清浄に拭き取り清掃することができる。
【0021】
前記第1拭き取り部は、らせん状に設けられていてもよい。かかる態様によれば、オスコネクタの雌ネジを、比較的小さな操作力で、清浄に拭き取り清掃することができる。
【0022】
前記筒状体内に第4拭き取り部が詰められていてもよい。かかる態様は、オスコネクタのオス部材の先端を拭き取り清掃するのに有利である。
【0023】
本発明の拭き取りチップは、前記筒状体の先端の開口を塞ぐ第5拭き取り部を更に備えていてもよい。かかる態様は、オスコネクタのオス部材(その先端及び外周面)及び底板を拭き取り清掃するのに有利である。
【0024】
前記第5拭き取り部を貫通するスリットが設けられていてもよい。かかる態様は、第1に、オス部材が第5拭き取り部を突き破るのを容易にし、第2に、オス部材の外周面をむらなく拭き取り清掃するのに有利である。
【0025】
前記筒状体に、前記筒状体の先端から前記筒状体の長手方向に沿って延びた切り欠きが設けられていてもよい。かかる態様は、オスコネクタの拭き取り清掃時に筒状体が破損するのを防止するのに有利である。
【0026】
本発明の拭き取りチップは、棒状のロッドを備えていていもよい。前記ロッドの端面から、前記ロッドの長手方向に沿って所定長さの孔が設けられていてもよい。前記ロッドのうち前記孔が設けられた部分が前記筒状体であってもよい。ロッドの筒状体を除く部分は、中実であり、比較的高強度である。このロッドを備えた拭き取りチップは、清掃作業を効率よく行うのに有利である。
【0027】
本発明の拭き取りチップは、一端に前記第1拭き取り部が設けられた前記筒状体を備え、他端にハンドルを備えていてもよい。かかる態様は、清掃作業効率の向上と、第1拭き取り部の清潔性の確保とに有利である。
【0028】
本発明の拭き取りチップは、筒状のオス部材と、前記オス部材を取り囲む外筒と、前記外筒の前記オス部材に対向する内周面に設けられた雌ネジとを備えたオスコネクタを拭き取り清掃するために使用されてもよい。かかる態様によれば、本発明の拭き取りチップを用いて、経腸栄養法で患者側コネクタとして使用されるオスコネクタを清掃することができる。
【0029】
前記オス部材は前記筒状体に挿入可能であり、且つ、前記筒状体は前記オス部材と前記外筒との間の隙間に挿入可能であってもよい。かかる態様は、外筒の内周面に設けられた雌ネジを第1拭き取り部で拭き取り清掃するのに有利である。
【0030】
前記第1拭き取り部の外径は、前記雌ネジの内径より大きくてもよい。かかる態様は、雌ネジの溝内に付着した液状物を拭き取り除去するのに有利である。
【0031】
前記筒状体の内径は、前記オス部材の外周面の最大外径と同じかこれより大きくてもよい。かかる態様は、第1に、オスコネクタの底板近傍に付着した液状物を拭き取り除去するのを容易にし、第2に、筒状体がオス部材の外周面を傷付ける可能性を低くする。
【0032】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する主要部材を簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、本発明の範囲内において、以下の各図に示された各部材を変更または省略し得る。各実施形態の説明において引用する図面において、先行する実施形態で引用した図面に示された部材に対応する部材には、当該先行する実施形態の図面で付された符号と同じ符号が付してある。そのような部材については、重複する説明が省略されており、先行する実施形態の説明を適宜参酌すべきである。以下の図は、本発明の実施形態を概念的に示したものである。図示された各部材(特に拭き取り部21~27)の形状は、実際の形状を正確に表したものでないことに留意すべきである。
【0033】
(実施形態1)
図1Aは、本発明の実施形態1にかかる拭き取りチップ1の斜視図である。図1Bは、拭き取りチップ1の断面図である。拭き取りチップ1は、まっすぐに延びた細長い棒状の筒状体(ロッド)10と、筒状体10の外周面に設けられた拭き取り部21とを備える。
【0034】
筒状体10は、筒状体10の長手方向に沿って延びた孔11が筒状体10を貫通した、中空の筒形状を有する。孔11は、筒状体10の両端をつなぐ貫通孔である。孔11の内腔は、筒状体10の両端の開口を介して外界と連通している。筒状体10の外周面及び内周面はいずれも円形の断面形状を有する。筒状体10の内径及び外径は、筒状体10の長手方向において一定である。筒状体10は、使用者が指でつまんだり、曲げ力やねじり力を加えたりした程度では実質的に変形しない程度の強度を有する。筒状体10の材料は、制限はないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、スチレンエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ブチレンスチレンブロック共重合体、ポリアセタール、ポリアミド、硬質ポリ塩化ビニル等の樹脂材料を用いることができ、これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が好ましい。筒状体10は、上記樹脂材料を射出成形することにより全体を一部品として一体的に製造されることが好ましい。
【0035】
拭き取り部(第1拭き取り部)21は、毛細管現象を利用して吸水することができる吸水性を有する材料(以下「吸水性材料」という)からなることが好ましい。吸水性材料は、外力によって比較的容易に変形可能であり、且つ、外力を取り除くと直ちに変形前の状態(初期状態)に復元するクッション性(または、弾力性、被圧縮性)を有することが好ましい。クッション性を有する吸水性材料として、具体的には、綿(わた)、フォーム材(スポンジ)を例示することができる。綿は、例えば木綿、レーヨン等の吸水性を有する材料からなる繊維が絡まり合ったものであり、特に脱脂綿を好ましく用いることができる。フォーム材としては、制限はないが、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、シリコーンなどの樹脂からなる公知のフォーム材(スポンジ)を用いることができる。本発明では、拭き取り部21の材料として、綿、特に脱脂綿が好ましい。
【0036】
拭き取り部21は、筒状体10の先端10a近傍に配置されている。より詳細には、拭き取り部21は、筒状体10の先端10aから筒状体10の長手方向に沿った長さL1の領域において、筒状体10の全外周面を覆っている。好ましくは、拭き取り部21は、長さL1の円筒形状をなすように、筒状体10の先端部分に設けられている。拭き取り部21の厚さ(半径方向寸法)は、略一定である。
【0037】
拭き取り部21を筒状体10に取り付ける方法は制限はない。拭き取り部21が綿(わた)からなる場合、例えば綿棒の製造方法と概略同じ方法で拭き取り部21を筒状体10に設けることができる。即ち、所定量の綿状物を筒状体10の先端10a近傍に押し当てながら筒状体10を回転させて綿状物を筒状体10の外周面に巻き付ける。PVA(ポリビニルアルコール)等の接着剤を用いて、拭き取り部21を筒状体10に固定してもよい。接着剤は、例えば綿状物を巻き付ける前の筒状体10の外周面に薄く塗布しておくことができる。筒状体10に固定された拭き取り部21は、柔らかで弾力性を有していることが好ましい。
【0038】
拭き取りチップ1の使用方法を説明する。
【0039】
拭き取りチップ1は、図2に示すオスコネクタ90を清掃するために使用することができる。オスコネクタ90は、図16A及び図16Bのオスコネクタ910と同様に、経腸栄養法における患者側コネクタである。オスコネクタ90を構成する要素のうち、図16A及び図16Bのオスコネクタ910を構成する要素と同じ要素には、図16A及び図16Bと同じ符号が付してあり、それらについての説明を省略する。オスコネクタ90は、オス部材911の流路917と連通する中空の基端部98を備える。基端部98に、柔軟なチューブ99が挿入され接続されている。チューブ99は、患者に留置されたカテーテル(経鼻カテーテル、PEGカテーテルなど)であってもよい。カテーテルは、患者の消化管(例えば胃)内に挿入されている。あるいは、チューブ99は、当該カテーテルに接続されたチューブ(延長チューブ)であってもよい。
【0040】
経腸栄養法を行う場合、オスコネクタ90に、メスコネクタ(図17A及び図17B参照)を接続して、これらを介して患者に液状物(例えば経腸栄養剤)を投与する。その後、メスコネクタをオスコネクタ90から分離する。上述したように、分離後のオスコネクタ90(特に雌ネジ915の溝内)には液状物(図示せず)が付着している。図2のオスコネクタ90は、この状態にある。
【0041】
最初に、図2に示すように、オスコネクタ90に、拭き取りチップ1の先端を対向させる。そして、拭き取りチップ1を、オス部材911と外筒913との間の隙間916に挿入する。オス部材911は、筒状体10の孔11内に挿入される。そして、拭き取りチップ1をオスコネクタ90に対して、拭き取りチップ1側から見て時計回り方向に回転させる。拭き取り部21が、オスコネクタ90の雌ネジ915に沿って移動する。筒状体10に回転力を加えても、筒状体10は実質的に変形しない。拭き取りチップ1が回転するのにしたがって、拭き取りチップ1はオスコネクタ90の隙間916に更に深く進入(前進)していく。図3に示すように、拭き取りチップ1の先端がオスコネクタ90の底板914に接触するまで拭き取りチップ1をオスコネクタ90に挿入する。作業者は、拭き取りチップ1を回転させるのに必要な回転力が大きくなることによって、拭き取りチップ1の先端が底板914に接触したことを認識することができる。
【0042】
その後、オスコネクタ90に対して拭き取りチップ1を、上記とは逆方向(反時計回り方向)に回転させる。拭き取り部21が、オスコネクタ90の雌ネジ915に沿って移動する。拭き取りチップ1が回転するのにしたがって、拭き取りチップ1はオスコネクタ90の隙間916から徐々に後退する。そして、拭き取りチップ1をオスコネクタ90から分離する。使用済みの拭き取りチップ1は廃棄される。
【0043】
上記のように拭き取りチップ1をオスコネクタ90に挿入し、その後、オスコネクタ90から抜き取ることによって、オスコネクタ90の外筒913の内周面(雌ネジ915)に付着していた液状物を拭き取り部21で拭き取り除去することができる。液状物は、拭き取り部21に吸い込まれ、拭き取り部21に保持された状態で、オスコネクタ90から除去される。液状物に含まれる固形物も、液状物とともに拭き取り部21によって拭き取られ除去される。
【0044】
上述した従来の拭き取りチップは、オスコネクタの隙間916に挿入される筒状部の全体が吸水性を有する材料で構成される。したがって、所望する強度を有する筒状部を製造することは困難である。筒状部が柔らかすぎても硬すぎても、液状物を残らず拭き取り除去することはできない。
【0045】
これに対して、本実施形態1の拭き取りチップ1は、中空の筒状体10に拭き取り部21が設けられている。
【0046】
作業者は、芯としての筒状体10を把持して、拭き取りチップ1をオスコネクタ90に対して挿抜することができる。筒状体10を、所望する強度を有する材料で構成することができる。これにより、拭き取りチップ1をオスコネクタ90に対して回転させながら前進及び後退させても、筒状体10は実質的に変形しない。拭き取り部21を、隙間916内に深く挿入することが容易である。
【0047】
拭き取り部21は、オスコネクタ90の雌ネジ915の表面形状に応じて容易に変形できる。拭き取り部21の一部は、雌ネジ915のネジ山により圧縮され、拭き取り部21の別の一部は、雌ネジ915の溝に入り込む。このようにして、拭き取り部21は、雌ネジ915に密着する。オスコネクタ90に対して拭き取りチップ1を回転させながら前進及び後退させる過程で、拭き取り部21は、雌ネジ915の溝内に残留した液状物に接触し、これを拭き取る。このため、拭き取りチップ1は、特に清掃が困難である雌ネジ915を清浄に拭き取り清掃することができる。
【0048】
筒状体10は、単純な中空の円筒形状を有する。拭き取り部21は、例えば綿棒と概略同じ要領で筒状体10の端部に巻き付けることができる。このため、拭き取りチップ1は、構造が簡単で、製造が容易である。拭き取りチップ1は、低コストで大量に製造することが可能である。
【0049】
拭き取り部21が筒状体10の外周面をほぼ一様に覆っている。これにより、拭き取り部21と雌ネジ915との接触面積が増大するので、雌ネジ915を清浄に拭き取り清掃することができる。また、拭き取り部21は、筒状体10が雌ネジ915に直接接触する可能性を低下させるので、雌ネジ915が筒状体10によって傷付けられるのを防止する。
【0050】
オスコネクタ90を清掃する前(未使用状態)の拭き取り部21の外径D21図1B参照)は、オスコネクタ90の雌ネジ915の内径より大きいことが好ましく、更には雌ネジ915の谷径よりも大きいことが好ましい。拭き取り部21を、雌ネジ915の溝内に入り込ませることができるからである。拭き取り部21の外径D21が雌ネジ915の内径以下であると、雌ネジ915の溝内の液状物を拭き取り除去する能力が低下する。具体的には、外径D21は、D21≧8.55mmを満足することが好ましい。拭き取り部21の外径D21の上限は、限定されないが、D21≦12mmを満足することが好ましい。外径D21が大きすぎると、拭き取りチップ1を、その先端が底板914に当接するまで隙間916に挿入することが困難になるので、特に底板914近傍に付着した液状物を拭き取り除去する能力が低下する。
【0051】
拭き取り部21は、筒状体10の先端10aから長さL1図1B参照)の領域において、筒状体10の外周面に設けられている。拭き取り部21の先端の筒状体10の長手方向の位置は、筒状体10の先端10aと一致する。このため、雌ネジ915の底板914近傍に付着した液状物も拭き取り除去することができる。
【0052】
拭き取り部21の末端(筒状体10の先端10aから最も遠い箇所)の、筒状体10の先端10aからの距離L1は、オスコネクタ90の隙間916の深さ(底板914から外筒913先端までの距離)と同じかこれより大きいことが好ましい。長さL1がこれより短いと、雌ネジ915の溝内及び底板914近傍に付着した液状物を拭き取り除去する能力が低下する。具体的には、長さL1は、L1≧6.82mmを満足することが好ましい。
【0053】
筒状体10の外径D10図1B参照)は、オスコネクタ90の雌ネジ915の内径と同じかこれより小さいことが好ましく、雌ネジ915の内径より小さいことがより好ましい。筒状体10の外径D10が雌ネジ915の内径より大きいと、拭き取りチップ1をオスコネクタ90の隙間916に挿入することが困難になるので、拭き取りチップ1でオスコネクタ90を清掃することができない。但し、筒状体10の外径D10が、雌ネジ915の内径に比べて小さすぎると、拭き取り部21を雌ネジ915の溝内に入り込ませにくくなるので、雌ネジ915の溝内の液状物を拭き取り除去する能力が低下する。
【0054】
筒状体10の孔11の内径D11図1B参照)は、オスコネクタ90のオス部材911の外周面912の最大外径と同じかこれより大きいことが好ましく、外周面912の最大外径より大きいことがより好ましい。筒状体10の内径D11が外周面912の最大外径より小さいと、以下の2つの問題が生じうる。第1に、拭き取りチップ1を、その先端が底板914に当接するまで隙間916に挿入することが困難になるので、特に底板914近傍に付着した液状物を拭き取り除去する能力が低下する。第2に、筒状体10が、オス部材911に直接接触して、オス部材911の外周面912を傷付ける可能性が高くなる。具体的には、内径D11は、内径D11≧5.59mmを満足することが好ましい。
【0055】
拭き取り部21に洗浄液が含浸されていてもよい。洗浄液としては、制限はないが、例えば、アルコールや滅菌精製水などを用いることができる。液状物が乾燥してオスコネクタ90に固着した固化物等も、洗浄液により綺麗に除去することができる。
【0056】
拭き取り部21が筒状体10の両端に設けられていてもよい。この場合、例えば、最初に、一方の拭き取り部21でオスコネクタ90に付着した液状物の大部分を拭き取り、その後、他方の拭き取り部21で依然として残留するわずかな液状物をきれいに拭き取ることができる。少ない数の拭き取りチップ1でオスコネクタ90を清浄に清掃することができる。
【0057】
両端の拭き取り部21は、対称であってもよいが、非対称であってもよい。例えば、拭き取りチップ1の一端の拭き取り部21が、他端の拭き取り部21より肉厚に設けられていてもよい。これは、例えば、寸法が異なる複数種類のオスコネクタ90を、共通する拭き取りチップで拭き取り清掃するのに有利である。
【0058】
拭き取り部21は、筒状体10の先端10aから長さL1図2参照)の領域において、筒状体10の全外周面を覆っている必要はない。
【0059】
例えば、拭き取り部21は、筒状体10の周方向に環状に連続している必要はない。拭き取り部21が周方向に分断されていても、拭き取りチップ1をオスコネクタ90に挿入した状態でオスコネクタ90に対して回転させれば、拭き取り部21で雌ネジ915に付着した液状物を拭き取ることは可能である。
【0060】
また、筒状体10の先端10a及びその近傍部分には拭き取り部21が設けられていなくてもよい(後述する図9A及び図9Bの拭き取り部21を参照)。
【0061】
(実施形態2)
図4Aは、本発明の実施形態2にかかる拭き取りチップ2の斜視図である。図4Bは、拭き取りチップ2の断面図である。
【0062】
拭き取りチップ2は、筒状体10の外周面に設けられた拭き取り部(第1拭き取り部)21に加えて、筒状体10の内周面に設けられた拭き取り部(第2拭き取り部)22を備える。第2拭き取り部22は、筒状体10の先端10aから筒状体10の長手方向に沿った長さL2図4B参照)の領域において、筒状体10の全内周面を覆っている。好ましくは、第2拭き取り部22は、長さL2の円筒形状をなすように、筒状体10の内周面に設けられている。第2拭き取り部22の厚さ(半径方向寸法)は、略一定である。第1拭き取り部21と第2拭き取り部22とは、筒状体10の先端10aを覆う拭き取り部(第3拭き取り部)23を介して連続している。第3拭き取り部23は、先端10aに沿って環状に延びている。第1拭き取り部21は、実施形態1の拭き取り部21と同じである。拭き取り部21,22,23の材料は、制限はないが、実施形態1の拭き取り部21と同じ材料を用いることができる。
【0063】
拭き取りチップ2は、例えば以下のようにして製造しうる。
【0064】
拭き取り部21,22,23が綿(わた)からなる場合を説明する。シート状に広げた綿状物を、筒状体10の先端10aに、筒状体10の開口を塞ぐように押し当てる。そして、筒状体10を回転させて綿状物を筒状体10の外周面に巻き付ける。外周面に巻き付けられた綿状物は、第1拭き取り部21を構成する。この段階では、筒状体10の開口は綿状物で塞がれている。
【0065】
次いで、細長い棒を筒状体10の先端の開口に突き刺し、筒状体10の開口を塞ぐ綿状物を突き破る。破られた綿状物は、棒と筒状体10との間に挟まれるように筒状体10の孔11内へ折り曲げられる。折り曲げられた綿状物は、第2拭き取り部22を構成する。棒を筒状体10から引き抜く。かくして、拭き取りチップ2が得られる。
【0066】
綿状物を筒状体10に固定するために、筒状体10に綿状物を設けるよりも前に、筒状体10の外周面、先端10a、内周面のうちの少なくとも一つに接着剤を薄く塗布しておいてもよい。筒状体10に固定された第1、第2及び第3拭き取り部21,22,23は、柔らかで弾力性を有していることが好ましい。
【0067】
拭き取りチップ2は、実施形態1の拭き取りチップ1と同様に、オスコネクタ90を清掃するために使用することができる。
【0068】
図5は、拭き取りチップ2をオスコネクタ90に挿入した状態を示した断面図である。図5を、実施形態1にかかる図3と比較すれば分かるように、第2拭き取り部22が、オス部材911と筒状体10との間に挟まれている。第2拭き取り部22は、オス部材911に密着するように、オス部材911の表面形状に応じて変形している。拭き取りチップ2をオスコネクタ90に対して回転させながら挿抜すると、第2拭き取り部22はオス部材911の外周面912上を摺動し外周面912に付着した液状物を拭き取る。更に、第3拭き取り部23は、底板914と筒状体10との間に挟まれている。第3拭き取り部23も、適宜変形して底板914に密着している。第3拭き取り部23は、底板914及びその近傍に付着した液状物を拭き取る。第1拭き取り部21は、実施形態1と同様に、外筒913の内周面(雌ネジ915)に付着した液状物を拭き取る。
【0069】
以上のように、本実施形態2の拭き取りチップ2は、雌ネジ915に付着した液状物に加えて、オス部材911の外周面912及び底板914に付着した液状物をも拭き取ることができる。このため、拭き取りチップ2は、オスコネクタ90をより清浄に拭き取り清掃することができる。
【0070】
また、第2拭き取り部22は、筒状体10がオス部材911に直接接触するのを防止し、また、第3拭き取り部23は、筒状体10が底板914に直接接触するのを防止する。このため、拭き取りチップ2は、オスコネクタ90の清掃の際に、オス部材911や底板914が筒状体10によって傷付けられる可能性を低下させる。
【0071】
拭き取りチップ2をオスコネクタ90に挿入する前、または、拭き取りチップ2をオスコネクタ90から引き抜いた後、第3拭き取り部23をオス部材911の先端に接触させて、オス部材911の先端に付着した液状物を拭き取ることができる。
【0072】
オスコネクタ90を清掃する前(未使用状態)の第2拭き取り部22の内径D22図4B参照)は、オス部材911の外径より小さいことが好ましい。第2拭き取り部22を、オス部材911の外周面912に確実に密着させることができるからである。これは、オス部材911の外周面912に付着した液状物を拭き取り除去するのに有利である。具体的には、内径D22は、D22≦5.59mmを満足することが好ましい。
【0073】
第2拭き取り部22の末端(筒状体10の先端10aから最も遠い箇所)の、筒状体10の先端10aからの距離L2図4B参照)は、オス部材911の長さ(底板914からオス部材911の先端までの距離)と同じかこれより大きいことが好ましい。これは、オス部材911に付着した液状物を拭き取り除去するのに有利である。具体的には、長さL2は、L2≧6.82mmを満足することが好ましい。
【0074】
第2拭き取り部22は、筒状体10の先端10aから長さL2の領域において、筒状体10の全内周面を覆っている必要はない。
【0075】
例えば、第2拭き取り部22は、筒状体10の周方向に環状に連続している必要はない。第2拭き取り部22が周方向に分断されていても、拭き取りチップ2をオスコネクタ90に挿入した状態でオスコネクタ90に対して回転させれば、第2拭き取り部22でオス部材911に付着した液状物を拭き取ることは可能である。
【0076】
拭き取りチップ2の製造方法は、上記に限定されない。例えば、予め略円筒形状に形成した吸水性材料を筒状体10の孔11に挿入して、筒状体10の内周面に第2拭き取り部22を設けてもよい。この場合、第3拭き取り部23を省略してもよい。筒状体10の先端10a及びその近傍部分には第2拭き取り部22が設けられていなくてもよい。
【0077】
実施形態1で説明した洗浄液が、拭き取り部21,22,23に含浸されていてもよい。
【0078】
本実施形態2は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態2にも適宜適用される。
【0079】
(実施形態3)
図6Aは、本発明の実施形態3にかかる拭き取りチップ3の斜視図である。図6Bは、拭き取りチップ3の断面図である。図6Cは、拭き取りチップ3の正面図である。
【0080】
拭き取りチップ3は、実施形態1の拭き取りチップ1と同様に、筒状体10の先端10a近傍の外周面に設けられた拭き取り部(第1拭き取り部)24を備える。但し、実施形態1と異なり、拭き取り部24の厚さ(半径方向寸法)は、一定ではなく、周方向において周期的に変化する。拭き取り部24の外面には、平歯車のように、周期的な凹凸24aが周方向に繰り返し設けられている。図6Cに示されているように、拭き取りチップ3の軸方向に沿って見たとき、拭き取り部24の外面は、三角形(二等辺三角形または正三角形)を周方向に順次並べたように、山と谷とが比較的明確なジグザグ状の凹凸を有している。ただし、周期的な凹凸24aは、これに限定されず、例えば正弦波状の凹凸であってもよい。拭き取り部24の材料は、制限はないが、実施形態1の拭き取り部21と同じ材料を用いることができる。
【0081】
拭き取りチップ3の製造方法は、任意である。拭き取り部24が綿(わた)からなる場合を説明する。一製造例では、拭き取り部24の周期的な凹凸24aに対応する凹凸が内周面に設けられた雌型に筒状体10を挿入し、筒状体10と雌型との間の隙間に綿状物を詰め込む。筒状体10の外周面には、雌型に挿入する前に接着剤を塗布してもよい。別の製造例では、筒状体10の外周面に、実施形態1の拭き取り部21と同様の、略一定厚さの拭き取り部を設ける。次いで、当該拭き取り部に、周期的な凹凸が設けられた型(例えば、ラックギア又はピニオンギアに類似した形状の型)を押し付けて、当該凹凸を拭き取り部に転写することができる。
【0082】
拭き取りチップ3は、実施形態1の拭き取りチップ1と同様に、オスコネクタ90を清掃するために使用することができる。即ち、拭き取りチップ3をオスコネクタ90に対して回転させながら挿入し、その後、逆方向に回転させながらオスコネクタ90から分離する。
【0083】
拭き取り部24は、オスコネクタ90の雌ネジ915の表面形状に応じて変形される。拭き取り部24の外面が凸である部分(凸部分)の一部は、雌ネジ915のネジ山により圧縮され、凸部分の他の一部は、雌ネジ915の溝に入り込む。一方、拭き取り部24の外面が凹である部分(凹部分)は、雌ネジ915による変形が少なく、雌ネジ915の溝に凸部分ほど深く入り込まないかも知れない。
【0084】
このように、拭き取り部24の凸部分が雌ネジ915に選択的に強く密着する。拭き取り部24のうち雌ネジ915に密着する領域は、比較的小さい。このため、比較的小さな回転力で、拭き取りチップ3をオスコネクタ90に対して回転させることができる。また、凸部分は、雌ネジ915に強く密着しながら移動するので、雌ネジ915に付着した液状物を確実に拭き取り除去することができる。拭き取り部24の凹部分は、雌ネジ915による圧縮変形が比較的小さいので、凸部分が拭き取った液状物を保持することができる。更に、凹部分は、液状物に含まれる固形物も保持することができる。このため、本実施形態3の拭き取りチップ3は、オスコネクタ90の雌ネジ915を、比較的小さな操作力で、拭き残しを少なく、清浄に拭き取り清掃することができる。
【0085】
凹凸24aは、周期的である必要はない。凹凸24aの繰り返し方向は、周方向である必要はなく、例えば、筒状体10の長手方向であってもよい。
【0086】
実施形態1で説明した洗浄液が、拭き取り部24に含浸されていてもよい。
【0087】
本実施形態3は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態3にも適用される。実施形態2の拭き取り部21の外面に、本実施形態3の拭き取り部24と同様の凹凸を設けてももよい。
【0088】
(実施形態4)
図7Aは、本発明の実施形態4にかかる拭き取りチップ4の斜視図である。図7Bは、拭き取りチップ4の断面図である。本実施形態4では、筒状体10の外周面に、拭き取り部(第1拭き取り部)25がらせん状に設けられている。拭き取り部25は、紐状に形成した吸水性材料を、筒状体10の外周面にらせん状に巻き付けたものである。吸水性材料を巻き付ける前に、筒状体10の外周面に接着剤を塗布してもよい。拭き取り部25の材料は、制限はないが、実施形態1の拭き取り部21と同じ材料を用いることができる。
【0089】
拭き取り部25は、雄ネジを構成している。当該雄ネジのピッチ及びリードは、オスコネクタ90の雌ネジ915のそれらと同じである。雄ネジ(拭き取り部25)の外径は、雌ネジ915の谷径と同じかこれより大きいことが好ましい。
【0090】
拭き取りチップ4は、実施形態1の拭き取りチップ1と同様に、オスコネクタ90を清掃するために使用することができる。図示を省略するが、拭き取り部25からなる雄ネジをオスコネクタ90の雌ネジ915に螺入するように、拭き取りチップ4をオスコネクタ90に対して回転させながらオスコネクタ90に挿入する。拭き取りチップ4の先端がオスコネクタ90の底板914に接触するまで拭き取りチップ4をオスコネクタ90に挿入する。その後、拭き取りチップ4をオスコネクタ90に対して上記とは逆方向(反時計回り方向)に回転させて、オスコネクタ90から分離する。
【0091】
拭き取り部25が、雌ネジ915に螺合する雄ネジを構成するので、拭き取り部25は雌ネジ915の溝に確実に入り込む。このため、拭き取りチップ4は、特に清掃が困難である雌ネジ915を清浄に拭き取り清掃することができる。
【0092】
拭き取りチップ4をオスコネクタ90に挿入したときの拭き取り部25の変形は比較的小さい。このため、比較的小さな回転力で、拭き取りチップ4をオスコネクタ90に対して回転させることができる。
【0093】
実施形態1で説明した洗浄液が、拭き取り部25に含浸されていてもよい。
【0094】
筒状体10の先端10a近傍の内周面に、実施形態2の第2拭き取り部22を設けてもよい。
【0095】
本実施形態4は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態4にも適用される。
【0096】
(実施形態5)
図8は、本発明の実施形態5にかかる拭き取りチップ5の断面図である。本実施形態5では、筒状体10の孔11内に、孔11を塞ぐように第4拭き取り部26が詰められている。第4拭き取り部26は、塊状(例えば略球形)に形成した吸水性材料を、筒状体10の先端10a側の開口から孔11内に押し込んだものである。第4拭き取り部26が筒状体10内で移動しないように、接着剤で第4拭き取り部26を筒状体10の内周面に固定してもよい。第4拭き取り部26の材料は、制限はないが、拭き取り部21と同じ材料を用いることができる。第4拭き取り部26は、筒状体10の開口の近傍に設けられている。筒状体10の先端10aから第4拭き取り部26までの距離は、オスコネクタ90のオス部材911の長さ(底板914からのオス部材911の突出長)より短い。
【0097】
拭き取りチップ5は、実施形態1の拭き取りチップ1と同様に、オスコネクタ90を清掃するために使用することができる。
【0098】
本実施形態5では、オスコネクタ90のオス部材911が筒状体10の孔11内に進入すると、オス部材911の先端が第4拭き取り部26に当接する。拭き取りチップ5を回転させながらオスコネクタ90に向かって前進させると、オス部材911は第4拭き取り部26に対して回転しながら第4拭き取り部26を徐々に圧縮しまたは移動させる。この過程で、オス部材911の先端に付着していた液状物は、第4拭き取り部26によって拭き取り除去される。
【0099】
第4拭き取り部26の形状は、任意であり、例えば、ラグビーボール状、円柱形状などであってもよい。第4拭き取り部26は、筒状体10の先端10a近傍のみではなく、筒状体10のほぼ全長にわたって孔11内に連続して詰められていてもよい。
【0100】
実施形態1で説明した洗浄液が、第4拭き取り部26に含浸されていてもよい。
【0101】
本実施形態5は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態5にも適用される。実施形態2~4の拭き取りチップに、本実施形態5の第4拭き取り部を適用してもよい。
【0102】
(実施形態6)
図9Aは、本発明の実施形態6にかかる拭き取りチップ6の斜視図である。図9Bは、拭き取りチップ6の断面図である。拭き取りチップ6は、筒状体10の外周面に設けられた拭き取り部(第1拭き取り部)21に加えて、筒状体10の先端10aの開口を塞ぐ第5拭き取り部27を備える。第5拭き取り部27は、薄い円板状に形成した吸水性材料を、接着剤により筒状体10の先端10aに固定したものである。第5拭き取り部27の材料は、制限はないが、第1拭き取り部21と同じ材料を用いることができる。
【0103】
拭き取りチップ6は、実施形態1の拭き取りチップ1と同様に、オスコネクタ90を清掃するために使用することができる。
【0104】
図10は、拭き取りチップ6をオスコネクタ90に挿入した状態を示した断面図である。図10に示されているように、オス部材911が第5拭き取り部27を突き破り、筒状体10の孔11内に挿入されている。破られた第5拭き取り部27は、オス部材911と筒状体10との間に挟まれるように筒状体10の孔11内へ折り曲げられている。
【0105】
オス部材911が第5拭き取り部27を突き破る過程で、第5拭き取り部27は、オス部材911の先端に付着した液状物を拭き取る。実施形態2の拭き取りチップ2(図4A図4B参照)でオス部材911の先端を清掃するためには、第3拭き取り部23をオス部材911の先端に意識して接触させる必要がある。これを忘れると、オス部材911の先端の液状物を拭き取ることができない。これに対して、本実施形態6では、単に拭き取りチップ6をオスコネクタ90に向かって押し込むだけで、第5拭き取り部27がオス部材911の先端を拭き取り清掃する。
【0106】
第5拭き取り部27は、吸水性材料からなる薄膜であるから、オス部材911によって比較的容易に突き破られる。オス部材911によって破られた第5拭き取り部27は、筒状体10の孔11内へ折り曲げられ、オス部材911と筒状体10との間に挟まれる。第5拭き取り部27は、オス部材911に密着するように、オス部材911の表面形状に応じて変形する。拭き取りチップ6をオスコネクタ90に対して回転させながら挿抜すると、第5拭き取り部27はオス部材911の外周面912上を摺動し外周面912に付着した液状物を拭き取る。
【0107】
図10のように、拭き取りチップ6をオスコネクタ90の隙間916にもっとも深くまで挿入すると、第5拭き取り部27の筒状体10の先端10aに固定された環状の部分が底板914に接触する。第5拭き取り部27のこの環状の部分は、適宜変形して底板914に密着し、底板914及びその近傍に付着した液状物を拭き取る。
【0108】
第1拭き取り部21は、実施形態1と同様に、外筒913の内周面(雌ネジ915)に付着した液状物を拭き取る。
【0109】
以上のように、本実施形態6の拭き取りチップ6は、雌ネジ915に付着した液状物に加えて、オス部材911(その先端及び外周面912)及び底板914に付着した液状物をも拭き取ることができる。このため、拭き取りチップ6は、オスコネクタ90をより清浄に拭き取り清掃することができる。
【0110】
第5拭き取り部27の外周縁が筒状体10の外周面より半径方向外側に突出するように、オスコネクタ90を清掃する前(未使用状態)の第5拭き取り部27の外径は、筒状体10の外径よりわずかに大きいことが好ましい。これにより、図10のように拭き取りチップ6をオスコネクタ90に挿入したとき、第5拭き取り部27の外周縁は、底板914と外筒913の内周面(雌ネジ915)との境界に確実に密着する。これは、オスコネクタ90の当該境界に付着した液状物を拭き取り除去するのに有利である。
【0111】
図11A及び図11Bに、本実施形態6の別の拭き取りチップ6’を示す。拭き取りチップ6’は、第5拭き取り部27にスリット28が形成されている点で、図9A及び図9Bの拭き取りチップ6と異なる。スリット28は、「-」(マイナス)字状の平面視形状を有する直線状の切り込みであり、円形の第5拭き取り部27の中心を通る。スリット28は、第5拭き取り部27を貫通している。スリット28は、鋭利なナイフ等で容易に形成することができる。スリット28の形成は、第5拭き取り部27を筒状体10の先端10aに固定する前、または、固定した後のいずれであってもよい。
【0112】
オスコネクタ90のオス部材911の先端を第5拭き取り部27に押し付けると、第5拭き取り部27はスリット28(特にその両端)を起点として破れる。これは、以下の効果を有する。第1に、第5拭き取り部27が容易に破れる。このため、比較的小さな力を加えるだけで、オス部材911は第5拭き取り部27を貫通する。不慣れな作業者であっても、拭き取りチップ6’をオスコネクタ90の隙間916に容易に挿入することができる。第2に、第5拭き取り部27は、例えば第5拭き取り部27が略二等分割される等、常に安定した破れ方をする。オス部材911が第5拭き取り部27の中心からわずかに外れた位置に押し当てられても、破れ方のばらつきが少ない。オス部材911が筒状体10内に挿入されると、破られた第5拭き取り部27は、オス部材911の外周面912を周方向に略均等に取り囲む。これは、外周面912に付着した液状物をむらなく拭き取り除去するのに有利である。スリット28の形状は、本実施形態に限定されず、任意に変更しうる。
【0113】
本実施形態6では、第1拭き取り部21は、第5拭き取り部27から筒状体10の長手方向にわずかに離間して設けられているが、第5拭き取り部27に接触していてもよい。
【0114】
実施形態1で説明した洗浄液が、第5拭き取り部27に含浸されていてもよい。
【0115】
本実施形態6は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態6にも適用される。実施形態2~5の拭き取りチップに、本実施形態6の第5拭き取り部を適用してもよい。
【0116】
(実施形態7)
図12Aは、本発明の実施形態7にかかる拭き取りチップ7に使用される筒状体10の斜視図である。図12Bは、本発明の実施形態7にかかる拭き取りチップ7の斜視図である。図12Aに示されているように、筒状体10に、筒状体10の先端10aから筒状体10の長手方向に沿って延びた切り欠き13が設けられている。図12Bに示されているように、実施形態1と同様に、拭き取り部21が筒状体10の先端10a近傍に設けられている。
【0117】
拭き取りチップ7は、実施形態1の拭き取りチップ1と同様に、オスコネクタ90を清掃するために使用することができる。
【0118】
筒状体10に切り欠き13が設けられているので、筒状体10の先端10a近傍部分は、拡径又は縮径するように弾性変形することが比較的容易である。これにより、オスコネクタ90の拭き取り清掃時に筒状体10が破損するのを防止することができる。
【0119】
例えば拭き取りチップ7をオスコネクタ90に挿入した状態で拭き取りチップ7をオスコネクタ90の軸に対して傾かせるような横方向の力が拭き取りチップ7に加えられた場合、筒状体10の先端10a近傍部分が拡径又は縮径するように弾性変形するので、拭き取りチップ7はオスコネクタ90の軸に対して容易に傾くことができる。このため、このような予期しない横方向の力によって筒状体10が破損するのを防止することができる。
【0120】
また、相対的に大きな外径を有するオス部材911を備えたオスコネクタ90や、相対的に小さな内径を有する雌ネジ915を備えたオスコネクタ90に拭き取りチップ7を挿入した場合、筒状体10の先端10a近傍部分が拡径又は縮径するように弾性変形することにより、筒状体10が破損するのを防止することができる。このため、拭き取りチップ7は、サイズが異なる複数種類のオスコネクタ90を拭き取り清掃することができる。
【0121】
切り欠き13の、筒状体10の先端10aから筒状体10の長手方向に沿った長さは、任意に設定できる。一般には、切り欠き13の長さは、オス部材911の長さ(底板914からオス部材911の先端までの距離)と同じかこれより大きいことが好ましい。これは、筒状体10の破損を防止するという上記の効果を発現するのに有利である。
【0122】
図12A及び図12Bに示した例では、拭き取りチップ7を半径方向に沿って見たとき切り欠き13が見えないように、拭き取り部21が切り欠き13を覆っているが、本発明はこれに限定されない。例えば、切り欠き17の先端10a近傍部分、及び/又は、切り欠き17の基端(切り欠き17の先端10aから最も遠い部分)近傍部分が、半径方向に露出されていてもよい。
【0123】
切り欠き13の数や幅(筒状体10の周方向に沿った寸法)も、任意に設定できる。例えば、図13に示すように、筒状体10の先端に、2つの広幅の切り欠き13を、筒状体10の軸に対して対称位置に設けてもよい。
【0124】
本実施形態7は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態7にも適用される。実施形態2~6の拭き取りチップを構成する筒状体に、本実施形態7の切り欠きを設けてもよい。
【0125】
(実施形態8)
図14は、本発明の実施形態8にかかる拭き取りチップ8の断面図である。実施形態1~7では、拭き取りチップ1~7の芯に相当する棒状のロッドの全体が中空の筒状体10で構成された。これに対して、本実施形態8の拭き取りチップ8では、棒状のロッドの一部(端部)のみが中空の筒状体で構成される。即ち、まっすぐに延びた細長い棒状のロッド15の端面から、ロッド15の長手方向に沿って孔16が延びている。孔16は、ロッド15を貫通していない非貫通孔である。ロッド15のうち孔16が設けられた部分10’が、本発明の「筒状体」に相当する。ロッド15のうち、筒状体10’を除く部分は、中実の柱状体である。実施形態1と同様に、筒状体10’の先端10a近傍の外周面に拭き取り部21が設けられている。ロッド15は、制限はないが、実施形態1で筒状体10の材料として例示した材料を用いて、射出成形法により全体を一部品として一体的に製造されることが好ましい。
【0126】
本実施形態8の拭き取りチップ8は、本実施形態1の拭き取りチップ1と同様に、オスコネクタ90を清掃するために使用することができる。オス部材911は、筒状体10’の孔16内に挿入される。孔16の深さは、オスコネクタ90のオス部材911の長さ(底板914からのオス部材911の突出長)より深い。
【0127】
ロッド15は、孔16が形成された部分を除いて中実の柱状体であるので、比較的高強度である。このため、拭き取り清掃作業時に加えられる力によって、ロッド15が直径方向に押しつぶされたり、曲がったりすることがない。清掃作業を効率よく行うことができる。
【0128】
ロッド15の中実の柱状体の部分が、筒状体10’より大きな外径を有していてもよい。
【0129】
本実施形態8は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態8にも適用される。実施形態2~7の拭き取りチップに、本実施形態8を適用してもよい。
【0130】
(実施形態9)
図15は、本発明の実施形態9にかかる拭き取りチップ9の断面図である。本実施形態9では、筒状体10が比較的短い。筒状体10の一端(先端)10a近傍に拭き取り部21が設けられ、筒状体10の他端(基端)には、ハンドル30が設けられている。ハンドル30は、筒状体10より大きな外径を有する塊状物である。ハンドル30は、作業者が加える力によって容易に変形しない程度の強度を有することが好ましい。ハンドル30の材料は、制限はないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、スチレンエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ブチレンスチレンブロック共重合体、ポリアセタール、ポリアミド、硬質ポリ塩化ビニル等の樹脂材料を用いることができる。
【0131】
本実施形態9の拭き取りチップ9は、本実施形態1の拭き取りチップ1と同様に、オスコネクタ90を清掃するために使用することができる。
【0132】
作業者は、ハンドル30を掴んで拭き取り清掃作業をすることができる。ハンドル30は、比較的大きく、変形しにくいので、作業者はハンドル30をしっかりと掴むことができる。拭き取りチップ9に回転力を加えるのも容易である。従って、清掃作業効率が向上する。更に、作業者が拭き取り部21に触れる可能性が低くなるので、拭き取り部21の清潔性が保たれる。
【0133】
筒状体10は、ハンドル30に対して、分離できないように一体化されていてもよい。筒状体10とハンドル30とを一体化させる方法としては、制限はないが、筒状体10とハンドル30とをそれぞれ別個に製造し、その後、両者を接着剤や溶着などの方法により一体的に接続する方法、または、筒状体10及びハンドル30のうちの一方を製造し、その後、二色成形法により他方を一方に一体化させる方法などであってもよい。あるいは、筒状体10とハンドル30とを同一材料を用いて一度に一部品として一体的に成型してもよい。
【0134】
筒状体10は、ハンドル30に対して、着脱可能であってもよい。この場合、拭き取り部21が設けられた筒状体10は使い捨てされるのに対して、ハンドル30は繰り返し使用できる。ハンドル30に加えた回転力が筒状体10に確実に伝達されるように、ハンドル30及び筒状体10のそれぞれの相手方との接続部分に、互いに嵌合し合う嵌合形状(例えば凸と凹)が設けられていてもよい。
【0135】
図15では、ハンドル30の一部が筒状体10の孔11に嵌入しているが、筒状体10とハンドル30との接続構造はこれに限定されない。例えば、筒状体10がハンドル30に設けられた孔に嵌入していてもよい。
【0136】
図15では、筒状体10がハンドル30に接続されているが、本発明はこれに限定されない。実施形態8のロッド15のように筒状体に一体的に設けられた中実の柱状体が、ハンドルに接続されていてもよい。
【0137】
本実施形態9は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態9にも適用される。実施形態2~9の拭き取りチップに、本実施形態9を適用してもよい。
【0138】
実施形態1~9は例示に過ぎない。本発明は、実施形態1~9に限定されず、適宜変更することができる。
【0139】
上記の実施形態では、筒状体の外周面及び内周面はいずれも円形の断面形状を有していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、外周面及び内周面のうちの一方又は両方が、正多角形(例えば正八角形等)の断面形状を有していてもよい。外周面がこのような断面形状を有することは、拭き取りチップに回転力を加えるのに有利である。
【0140】
上記の実施形態では、筒状体の内周面は、その内径が長手方向において一定である円筒面であったが、本発明はこれに限定されない。オス部材911が挿入される部分において、筒状体の内周面が、開口に向かって内径が大きくなるようなメステーパ面(例えば、オス部材911の外周面912と同じテーパ角度のメステーパ面)であってもよい。
【0141】
本発明の拭き取りチップは、オスコネクタを清掃するたびに捨てられる使い捨てタイプであってもよいし、オスコネクタを清掃した後、水などで洗浄し乾燥させることでオスコネクタの清掃に繰り返し使用される繰り返し使用タイプであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の利用分野は、制限はないが、オス部材と、雌ネジが設けられた外筒とを備えたオスコネクタの清掃具として好ましく利用することができる。特に、経腸栄養法を行うために患者の体内に挿入されたカテーテルの上流側端に設けられたオスコネクタの清掃具として好適である。
【符号の説明】
【0143】
1,2,3,4,5,6,6’,7,8,9 拭き取りチップ
10,10’ 筒状体
10a 筒状体の先端
11,16 孔
13 切り欠き
15 ロッド
21,24,25 第1拭き取り部
22 第2拭き取り部
23 第3拭き取り部
24a 凹凸
26 第4拭き取り部
27 第5拭き取り部
28 スリット
30 ハンドル
90 オスコネクタ
911 オス部材
912 オス部材の外周面
913 外筒
915 雌ネジ
916 オス部材と外筒との間の隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17