(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152943
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】植物育成の光照射方法及び照明装置
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
A01G7/00 601C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024141058
(22)【出願日】2024-08-22
(62)【分割の表示】P 2020020485の分割
【原出願日】2020-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】笹井 謙一
(72)【発明者】
【氏名】白坂 勇也
(72)【発明者】
【氏名】石渡 正紀
(72)【発明者】
【氏名】山田 真
(57)【要約】
【課題】植物の育成及び草勢維持、かつ、植物の見栄えを良くすることができる植物育成の光照射方法及び照明装置を提供する。
【解決手段】植物育成の光照射方法は、白色光を発する白色発光ダイオード11と、赤色光を発する赤色発光ダイオード12又は赤色蛍光体とを用いて、白色光及び赤色光を植物に対して照射し、赤色発光ダイオード12又は赤色蛍光体から発する赤色光の放射エネルギーを、白色発光ダイオード11から発する白色光の放射エネルギーの1/2以下となるように制御し、植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つに応じて、白色光及び赤色光の照射範囲、照射方向及び照度の少なくとも1つを制御することで、植物の育成を促しつつ落葉の発生を抑制するモード、植物の草勢を維持するモード、及び、植物の草勢を維持しつつ落葉の発生を抑制するモードの中からいずれかのモードに決定し、決定したモードを実行することを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を鑑賞するための植物育成の光照射方法であって、
白色光を発する白色発光ダイオードと、赤色光を発する赤色発光ダイオード又は赤色蛍光体とを用いて、前記白色光及び前記赤色光を前記植物に対して照射し、
前記赤色発光ダイオード又は前記赤色蛍光体から発する前記赤色光の放射エネルギーを、前記白色発光ダイオードから発する前記白色光の放射エネルギーの1/2以下となるように制御し、
前記植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つに応じて、前記白色光及び前記赤色光の照射範囲、照射方向及び照度の少なくとも1つを制御することで、前記植物の育成を促しつつ落葉の発生を抑制するモード、前記植物の草勢を維持するモード、及び、前記植物の草勢を維持しつつ落葉の発生を抑制するモードの中からいずれかのモードに決定し、決定したモードを実行することを含む
植物育成の光照射方法。
【請求項2】
植物を鑑賞するための植物育成の光照射方法であって、
白色光を発する白色発光ダイオードと、赤色光を発する赤色発光ダイオード又は赤色蛍光体とを用いて、前記白色光及び前記赤色光を前記植物に対して照射し、
前記赤色発光ダイオード又は前記赤色蛍光体から発する前記赤色光の放射エネルギーを、前記白色発光ダイオードから発する前記白色光の放射エネルギーの1/2以下となるように制御し、
前記植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つに応じて、前記白色光及び前記赤色光の照射範囲、照射方向及び照度の少なくとも1つを制御することで、前記植物の育成を促しつつ落葉の発生を抑制するモード、及び、前記植物の草勢を維持しつつ落葉の発生を抑制するモードのうちの少なくともいずれかのモードを行うことを含む
植物育成の光照射方法。
【請求項3】
植物を鑑賞するための植物育成の光照射方法であって、
白色光を発する白色発光ダイオードと、赤色光を発する赤色発光ダイオード又は赤色蛍光体とを用いて、前記白色光及び前記赤色光を前記植物に対して照射し、
前記赤色発光ダイオード又は前記赤色蛍光体から発する前記赤色光の放射エネルギーを、前記白色発光ダイオードから発する前記白色光の放射エネルギーの1/2以下となるように制御し、
前記植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つに応じて、前記白色光及び前記赤色光の照射範囲、照射方向及び照度の少なくとも1つを制御することで、前記植物の育成を促しつつ落葉の発生を抑制するモード、前記植物の草勢を維持するモード、前記植物の草勢を維持しつつ落葉の発生を抑制するモード、及び、前記植物の育成を促すモードの中からいずれかのモードに決定し、決定したモードを実行することを含む
植物育成の光照射方法。
【請求項4】
さらに、前記植物の状態を検知することで、前記植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つを第1検知部が検知し、
前記第1検知部から前記植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つを示す第1情報を取得し、取得した前記第1情報に基づいて、前記植物に照射する前記白色光及び前記赤色光の照射範囲、照射方向及び照度の少なくとも1つを制御する
請求項1から3のいずれか1項に記載の植物育成の光照射方法。
【請求項5】
さらに、前記白色発光ダイオードと、前記赤色発光ダイオード又は前記赤色蛍光体とを有する照明装置によって照射された光による、前記植物の光合成感度を第2検知部が検知し、
前記第2検知部から前記照明装置によって照射された光による、前記植物の光合成感度を第2情報を取得し、前記第2情報に基づいて前記植物の光合成度合いに基づいて、前記植物の育成を促しつつ落葉の発生を抑制するモード、前記植物の草勢を維持するモード、前記植物の草勢を維持しつつ落葉の発生を抑制するモードのうちの少なくともいずれかのモードを行う
請求項1から4のいずれか1項に記載の植物育成の光照射方法。
【請求項6】
植物を鑑賞するための植物育成を行う照明装置であって、
白色光を発する白色発光ダイオードと、赤色光を発する赤色発光ダイオード又は赤色蛍光体とを有し、前記植物の大きさ及び形に応じて、前記白色光及び前記赤色光を照射する光源と、
前記光源の照射方向を変更するように制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記植物よりも高い位置に前記光源が配置される場合、水平方向に対する角度が25°~60°となるように、前記光源が発する前記白色光及び前記赤色光の照射方向を制御し、
前記植物の背の高さの1/2以下の位置に前記光源が配置される場合、水平方向に対する角度が30°~70°となるように、前記光源が発する前記白色光及び前記赤色光の照射方向を制御し、
前記植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つに応じて、前記白色光及び前記赤色光の照射範囲、照射方向及び照度の少なくとも1つを制御することで、前記植物の育成を促しつつ落葉の発生を抑制するモード、前記植物の草勢を維持するモード、及び、前記植物の草勢を維持しつつ落葉の発生を抑制するモードの中からいずれかのモードに決定し、決定したモードを実行する
照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、植物育成の光照射方法及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の特許文献1には、植物に対して光を照射する照射手段と、当該照射手段が発する光の照射エネルギーを制御する制御手段とを備える植物育成用照明装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の植物育成用照明装置を用いた植物育成の光照射方法では、植物の大きさ及び形に応じて、最適な光の照射範囲及び照射時間を調節することができず、光照射によって植物の育成を調節することが困難である。このため、当該植物を育成することによって所望の形態にすることは困難である。また、光が照射された植物の見栄えは変化しないため、人は、植物の鑑賞に飽きを覚えることがある。
【0005】
そこで、本開示は、植物の育成及び草勢維持、かつ、植物の見栄えを良くすることができる植物育成の光照射方法及び照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る植物育成の光照射方法は、植物を鑑賞するための植物育成の光照射方法であって、白色光を発する白色発光ダイオードと、赤色光を発する赤色発光ダイオード又は赤色蛍光体とを用いて、前記白色光及び前記赤色光を前記植物に対して照射し、前記赤色発光ダイオード又は前記赤色蛍光体から発する前記赤色光の放射エネルギーを、前記白色発光ダイオードから発する前記白色光の放射エネルギーの1/2以下となるように制御し、前記植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つに応じて、前記白色光及び前記赤色光の照射範囲、照射方向及び照度の少なくとも1つを制御することで、前記植物の育成を促しつつ落葉の発生を抑制するモード、前記植物の草勢を維持するモード、及び、前記植物の草勢を維持しつつ落葉の発生を抑制するモードの中からいずれかのモードに決定し、決定したモードを実行することを含む。
【0007】
また、本開示の一態様に係る植物育成の光照射方法は、植物を鑑賞するための植物育成の光照射方法であって、白色光を発する白色発光ダイオードと、赤色光を発する赤色発光ダイオード又は赤色蛍光体とを用いて、前記白色光及び前記赤色光を前記植物に対して照射し、前記赤色発光ダイオード又は前記赤色蛍光体から発する前記赤色光の放射エネルギーを、前記白色発光ダイオードから発する前記白色光の放射エネルギーの1/2以下となるように制御し、前記植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つに応じて、前記白色光及び前記赤色光の照射範囲、照射方向及び照度の少なくとも1つを制御することで、前記植物の育成を促しつつ落葉の発生を抑制するモード、及び、前記植物の草勢を維持しつつ落葉の発生を抑制するモードのうちの少なくともいずれかのモードを行うことを含む。
【0008】
また、本開示の一態様に係る植物育成の光照射方法は、植物を鑑賞するための植物育成の光照射方法であって、白色光を発する白色発光ダイオードと、赤色光を発する赤色発光ダイオード又は赤色蛍光体とを用いて、前記白色光及び前記赤色光を前記植物に対して照射し、前記赤色発光ダイオード又は前記赤色蛍光体から発する前記赤色光の放射エネルギーを、前記白色発光ダイオードから発する前記白色光の放射エネルギーの1/2以下となるように制御し、前記植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つに応じて、前記白色光及び前記赤色光の照射範囲、照射方向及び照度の少なくとも1つを制御することで、前記植物の育成を促しつつ落葉の発生を抑制するモード、前記植物の草勢を維持するモード、前記植物の草勢を維持しつつ落葉の発生を抑制するモード、及び、前記植物の育成を促すモードの中からいずれかのモードに決定し、決定したモードを実行することを含む。
【0009】
また、本開示の一態様に係る照明装置は、植物を鑑賞するための植物育成を行う照明装置であって、白色光を発する白色発光ダイオードと、赤色光を発する赤色発光ダイオード又は赤色蛍光体とを有し、前記植物の大きさ及び形に応じて、前記白色光及び前記赤色光を照射する光源と、前記光源の照射方向を変更するように制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記植物よりも高い位置に前記光源が配置される場合、水平方向に対する角度が25°~60°となるように、前記光源が発する前記白色光及び前記赤色光の照射方向を制御し、前記植物の背の高さの1/2以下の位置に前記光源が配置される場合、水平方向に対する角度が30°~70°となるように、前記光源が発する前記白色光及び前記赤色光の照射方向を制御し、前記植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つに応じて、前記白色光及び前記赤色光の照射範囲、照射方向及び照度の少なくとも1つを制御することで、前記植物の育成を促しつつ落葉の発生を抑制するモード、前記植物の草勢を維持するモード、及び、前記植物の草勢を維持しつつ落葉の発生を抑制するモードの中からいずれかのモードに決定し、決定したモードを実行する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の植物育成の光照射方法等によれば、植物の育成及び草勢維持、かつ、植物の見栄えを良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る照明システムの照明装置が植物に光を照射する様子を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る照明システムのブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る照明システムの白色発光ダイオードが出射する白色光、赤色発光ダイオードが出射する赤色光、又は、赤色蛍光体が出射する赤色光のスペクトルを示す図である。
【
図4】
図4のaは、照明装置が配光制御して照射範囲変更及び照度変更する様子を示す模式図であり、
図4のbは、照明装置が配光制御して照射方向変更する様子を示す模式図である。
【
図5】
図5のaは、照明装置が配光制御して成長点に1200lxの光と、植物の下葉に600lxの光とを照射する様子を示す模式図であり、
図5のbは、照明装置が配光制御して成長点に600lx~1000lxの光と、植物の下葉に600lxの光を照射する様子を示す模式図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1に係る照明システムの照明装置が植物に光を照射した場合の植物の伸長と日数との関係を示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1に係る照明システムの照明装置が植物に光を照射した場合の植物の落葉数と日数との関係を示す図である。
【
図8】
図8は、実施の形態1に係る照明システムの処理を示すフローチャートである。
【
図9A】
図9Aは、実施の形態2に係る照明システムの照明装置を植物の上方側と下方側とのそれぞれに配置した場合の、光を照射する様子を示す模式図である。
【
図9B】
図9Bは、上方側の照明装置が植物に光を照射した場合の見栄えと、下方側の照明装置が植物に光を照射した場合の見栄えとを示す模式図である。
【
図10】
図10は、実施の形態2に係る照明システムの照明装置が植物の成長点に光を照射した場合の、植物の伸長と照度との関係、落葉数と照度との関係、及び、光合成感度と照度との関係を示す図である。
【
図11】
図11は、実施の形態2に係る照明システムの照明装置が植物の下葉に光を照射した場合の、植物の伸長と照度との関係、落葉数と照度との関係、光合成感度と照度との関係を示す図である。
【
図12】
図12は、実施の形態3に係る照明システムのブロック図である。
【
図13】
図13は、実施の形態3に係る照明システムの処理を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、上方側の第1照明装置が植物に光を照射した場合の、光合成感度と照射角度との関係、及び、輝度と照射角度との関係を示す図である。
【
図15】
図15は、下方側の第2照明装置が植物に光を照射した場合の、光合成感度と照射角度との関係、及び、輝度と照射角度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0013】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
<構成:照明システム1>
図1は、実施の形態1に係る照明システム1の照明装置10が植物に光を照射する様子を示す模式図である。
【0015】
図1に示すように、照明システム1では、対象となる植物を育成したり観賞したりするために、光を照射することで植物の育成及び見栄えをよくする。例えば、この照明システム1では、室内等の日当たりの悪い箇所に設置する植物に、照明装置10が光を照射する。植物に照射する光は、白色光及び赤色光である。本実施の形態では、白色光及び赤色光を総称して光ということがある。また、白色光とは、人が白色と認識できる光の色である。また、赤色光とは、人が赤色と認識できる光の色であり、例えば波長610nm~750nmの光である。
【0016】
植物は、例えば観賞用の植物である。観賞用植物は、例えば、主に花を付ける鉢物、花を付けないハーブ類又は観葉植物、トマト及び茄子等の野菜、ミカン及び葡萄といった果物等の実を付ける植物である。また、植物は、これらの例示に限定されず、他の植物であってもよい。
【0017】
図2は、実施の形態1に係る照明システム1のブロック図である。
【0018】
図2に示すように、照明システム1は、1以上の照明装置10と、制御部20と、記憶部30と、操作部40と、電源部50とを備える。
【0019】
[照明装置10]
1以上の照明装置10のそれぞれは、白色光及び赤色光を植物に対して照射する。本実施の形態では、特に言及しない限り1台の照明装置10を用いて植物に光を照射するため、主に1台の照明装置10について説明する。
【0020】
照明装置10は、出射する光の配光及び輝度を変更することが可能である。配光は、照明装置10が照射する光の照射方向及び照射範囲である。例えば光の照射方向を変更する場合、照明装置10が回動したり、照明装置10の光源10aが回動したりすることで、照明装置10は、光の照射方向を変更して植物に照射する箇所を変える。例えば光の照射範囲を変更する場合、光源10aに対する配光制御レンズの位置を変更する等によって、照明装置10は、狭角配光から広角配光まで可変することができる。
【0021】
照明装置10は、白色光を発する白色発光ダイオード11と、赤色光を発する赤色発光ダイオード12又は赤色蛍光体とを有する光源10aを備える。
【0022】
光源10aは、光として白色光及び赤色光を植物に対して照射する。照明装置10は、植物に光を照射する姿勢で、天井、壁等に配置される。また、照明装置10は、主に植物よりも高い位置に配置される。
【0023】
光源10aは、色彩の鮮やかさを示す指数FCI(Feeling of Contrast Index)の指数が例えば約120の光を出射する。FCIは、100を基準とする。また、光源10aは、2色以上の光として、少なくとも白色光及び赤色光を出射する。
【0024】
図3は、実施の形態1に係る照明システム1の白色発光ダイオード11が出射する白色光、赤色発光ダイオード12が出射する赤色光、又は、赤色蛍光体が出射する赤色光のスペクトルを示す図である。
【0025】
図2及び
図3に示すように、白色発光ダイオード11が出射する白色光は、青色領域(青色光)に最大のピーク波長を有する。青色領域とは、例えば、人が青色と認識できる光の波長領域であり、例えば波長430nm~490nmの光である。また、本実施の形態では、白色光の色温度は、約5000Kである。
【0026】
また、光源10aの赤色発光ダイオード12又は赤色蛍光体は、赤色の単色光(赤色光)を出射する。また、光源10aの赤色発光ダイオード12は、レーザ光が赤色蛍光体に波長変換されることで、赤色光を出射してもよい。また、赤色発光ダイオード12又は赤色蛍光体が出射する赤色光は、青色領域及び赤色領域(赤色光)にピーク波長を有し、特に赤色領域に最大のピーク波長を有する。また、赤色蛍光体として、半値幅が50nm以下の狭帯域の蛍光体を用いる。なお、
図2では、赤色発光ダイオード12を用いて例示しているが、赤色蛍光体であってもよいことは言うまでもない。
【0027】
光源10aの白色発光ダイオード11は、COB(Chip On Board)型LED素子で構成され、基板上に実装されたベアチップ(LEDチップ)である複数の青色LEDと、それら青色LEDを封止し、黄色蛍光体を含む封止部材とを有する。白色発光ダイオード11は、青色光と黄色蛍光体で波長変換された光とが合わさることで白色光を出射する。また、光源10aの白色発光ダイオード11は、RGBの3色LED光源10aであり、赤色光、青色光及び緑色光の3色の単色光を出射するとともに、これらの3色の単色光を調光することで得られる白色光を出射してもよい。
【0028】
なお、光源10aは、LEDがパッケージ化された表面実装(SMD:Surface
Mount Device)型のLED素子であってもよく、容器(パッケージ)と、容器内に実装された複数のLEDチップと、複数のLEDチップを封止する封止部材とを有していてもよい。封止部材は、シリコーン樹脂等の透光性の絶縁性樹脂材料である。なお、封止部材には、シリカ等の光拡散材及びフィラー等が分散されていてもよい。
【0029】
[制御部20]
図2に示すように、制御部20は、白色発光ダイオード11、及び、赤色発光ダイオード12又は赤色蛍光体から発する放射エネルギーの増減を制御するための調光回路及び調色回路を有する。具体的には、制御部20は、植物に照射するための光の放射エネルギーを制御するため、白色発光ダイオード11及び赤色発光ダイオード12に流す電流、及び、電流を流す発光ダイオードの数を制御する。
【0030】
また、
図2及び
図3に示すように、制御部20は、赤色発光ダイオード12又は赤色蛍光体から発する赤色光の放射エネルギーを、白色発光ダイオード11から発する白色光の放射エネルギーの1/2以下となるように制御する。これは、植物の光合成を促進するためと、光のスペクトルにおいて、白色光の強度に対して赤色光の強度が多すぎれば、白色系の植物が赤色のように見えてしまい、緑色系の植物が黒色のように見えてしまうという植物の変色を抑制するためとである。なお、制御部20は、赤色光の放射エネルギーを白色光の放射エネルギーの約1/2に制御することが好ましい。
【0031】
制御部20は、植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つに応じて、白色光及び赤色光の照射範囲、照射方向及び照度の少なくとも1つを制御する。
【0032】
また、制御部20は、白色光及び赤色光を照射する対象となる植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つを示す第1情報を取得する。つまり、制御部20は、操作部40を介して植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つを示す第1情報が入力されることで取得する。
【0033】
図4のaは、照明装置10が配光制御して照射範囲及び照度を変更する様子を示す模式図であり、
図4のbは、照明装置10が配光制御して照射方向を変更する様子を示す模式図である。
【0034】
図2及び
図4に示すように、例えば、制御部20は、白色光及び赤色光(つまり光)の照射範囲及び照射方向を制御することで、植物の成長点に光を照射する。成長点は、植物の草冠部分、頂上部及びその近傍である。なお、近傍は、成長点を基準として植物の背の高さHの数%の領域であってもよい。また、制御部20は、植物の背の高さHの1/2H以下の部分(下葉ともいう)に光を照射するよう制御してもよい。
【0035】
制御部20は、照明装置10が出射する光の照射範囲及び照射方向を制御することで、植物の成長点に光を照射する。つまり、制御部20は、照明装置10が出射する光の配光角を制御することで、植物に照射する光の照射範囲を制御する。具体的には、制御部20は、照明装置10に搭載される配光制御レンズと光源10aとの距離を調節することで、出射する光の照射範囲を制御する。
【0036】
また、制御部20は、照明装置10が出射する光を植物の成長点に照射することで、光の照射方向を制御する。照射方向は、例えば、照明装置10が出射する光の光軸方向、又は、照明装置10が出射する光の最大光度の光度方向である。具体的には、制御部20は、
図4のbに示すように、図示しないアクチュエータ等を駆動制御することで、二点鎖線及び実線の照明装置10のように姿勢を調節して照射方向を制御する。また、照射方向は、植物の成長点と交差してもよく、植物の成長点と実質的に交差してもよい。
【0037】
なお、照射範囲及び照射方向の制御は、人が照明装置10の配光制御レンズ等を交換したり、人が照明装置10の照射方向を調節したりすることで実現してもよい。
【0038】
制御部20は、第1モードと、第2モードと、第3モードと、第4モードと及び第5モードとを有する。
【0039】
第1モードは、植物の成長点に光を照射することで、植物の育成を促す効果が期待できるモードである。植物の育成を促す第1モードとして、制御部20は、照明装置10が出射する光の照度を制御することで、植物の成長点に1200lx以上の白色光及び赤色光を照射する。なお、植物の成長点に照射する照度の上限値は、例えば約10000lxである。
【0040】
第2モードは、植物の成長点に光を照射することで、草勢を維持する効果が期待できるモードである。草勢を維持する第2モードとして、制御部20は、照明装置10が出射する光の照度を制御することで、植物の成長点に600lx以上1000lx以下の白色光及び赤色光を照射する。
【0041】
また、第3モードは、植物の背の高さHの1/2以下の部分に光を照射することで、植物の草勢を維持する効果及び落葉の発生を抑制する効果が期待できるモードである。植物の草勢を維持する第3モードとして、制御部20は、照明装置10が出射する白色光及び赤色光の照射範囲及び照射方向を制御して、植物の背の高さHの1/2以下の部分に白色光及び赤色光を照射する。
【0042】
図5のaは、照明装置10が配光制御して成長点に1200lxの光と、植物の下葉に600lxの光とを照射する様子を示す模式図であり、
図5のbは、照明装置10が配光制御して成長点に600lx~1000lxの光と、植物の下葉に600lxの光を照射する様子を示す模式図である。
【0043】
また、第4モードは、第1モードのように植物の育成を促すとともに、第3モードのように植物の落葉の発生を抑制する効果が期待できるモードである。第1モード及び第3モードの両方を同時に実行する第4モードとして、制御部20は、照明装置10が出射する白色光及び赤色光の照射範囲、照射方向及び照度を制御して、植物の成長点に1200lx以上の白色光及び赤色光を照射し、かつ、植物の背の高さHの1/2以下の部分に600lx以上植物の成長点に照射する照度未満の白色光及び赤色光を照射する。
【0044】
また、第5モードは、植物の成長点に光を照射し、かつ、植物の背の高さHの1/2以下の部分に光を照射することで、植物の草勢を維持するとともに、植物の落葉の発生を抑制する効果が期待できるモードである。植物の草勢の維持及び落葉の発生を抑制させる第5モードとして、制御部20は、照明装置10が出射する白色光及び赤色光の照射範囲、照射方向及び照度を制御して、植物の成長点に600lx以上1000lx以下の白色光及び赤色光を照射し、かつ、植物の背の高さの1/2以下の部分に600lx以上の白色光及び赤色光を照射する。
【0045】
このように第4モード及び第5モードでは、植物の上葉から下葉までの範囲に光を照射する。
【0046】
また、制御部20は、
図2に示すように、1以上の計時部21を有する。それぞれの計時部21は、1以上の照明装置10と一対一で対応し、それぞれの照明装置10の点灯時間を制御するためのタイマである。例えば、計時部21は、所定時間が経過すれば、対応する照明装置10の点灯をオン又はオフにしたり、予め設定された照度に変更したりする。
【0047】
また、制御部20は、記憶部30に記憶される点灯スケジュールを読み出すことで、点灯スケジュールに応じてそれぞれの照明装置10を制御する。
【0048】
[記憶部30]
記憶部30は、それぞれの照明装置10を点灯又は消灯させるための点灯スケジュールが記憶される。また、記憶部30は、光を照射する対象となる植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つを示す第1情報も記憶する。記憶部30は、HDD(Hard Disk Drive)又は半導体メモリ等で構成される。
【0049】
[操作部40]
操作部40は、制御部20を介してそれぞれの照明装置10の動作を制御する。操作部40は、ユーザの操作による入力を受け付けたり、照明システム1以外の外部機器からの入力を受け付けたりすることで、受け付けた入力に応じた指示を制御部20に出力する。つまり、操作部40は、受け付けた入力に応じて、それぞれの照明装置10の動作を制御する。
【0050】
操作部40は、植物を撮像することで、植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つを示す情報を取得する撮像装置等のセンサであってもよく、ユーザの操作による入力で取得される操作端末であってもよい。
【0051】
[電源部50]
電源部50は、照明装置10を点灯させるための電力を供給する点灯回路を有する電源モジュールである。電源部50は、商用電源等の外部電源から引掛けシーリング及びアダプタを介して供給された交流電流を、整流、平滑及び降圧等して所定レベルの直流電力に変換する。電源部50は、変換した直流電流を、リード線等を介して照明装置10に供給する。なお、電源部50には、調光回路及び昇圧回路等が組み合わされていてもよい。なお、電源部50は、照明装置10に搭載されていてもよく、この場合、本実施の形態の電源部50は、照明装置10に電力を供給しなくてもよい。
【0052】
<実験結果>
以下では、植物に第1照明、第2照明及び第3照明を照射した場合の、植物の育成、草勢維持効果及び総落葉枚数を評価した実験結果である。本実験結果では、植物に1mの背の高さのジャスミンを用いた。
【0053】
第1照明は、本実施の形態の植物育成の光照射方法、照明装置10及び照明システム1によらず、室内に設置される通常の照明装置10によるベース照明の光が植物に照射される場合である。また、第2照明は、ベース照明にさらに第4モードを実行する場合である。つまり、第2照明は、対象の植物に対して、ベース照明による光の照射に加えて、植物の成長点に1200lxの白色光及び赤色光を照射し、かつ、植物の背の高さの1/2以下の部分に600lxの白色光及び赤色光を照射する場合である。第3照明は、ベース照明にさらに第5モードを実行する場合である。つまり、第3照明は、対象の植物に対して、ベース照明による光の照射に加えて、植物の成長点に600lx以上1000lx以下の白色光及び赤色光を照射し、かつ、植物の背の高さの1/2以下の部分に600lxの白色光及び赤色光を照射する。
【0054】
【0055】
図6は、実施の形態1に係る照明システム1の照明装置10が植物に光を照射した場合の植物の伸長と日数との関係を示す図である。
図6では、横軸が植物に光を照射した日数(時間)であり、縦軸が植物に光を照射した場合の植物の伸長を示す。第1照明の場合を実線で示し、第2照明の場合を破線で示し、第3照明の場合を一点鎖線で示す。
【0056】
図6では、第2照明の方が第1照明及び第3照明よりも植物の育成効果が最も高く、日数の経過とともに、植物の背の高さが高くなっていることが判った。また、第1照明及び第3照明では、植物の育成がさほど変わらず、日数の経過とともに、植物の背の高さは高くなるが、第2照明を植物に照射した場合ほど顕著でないことが判った。
【0057】
図7は、実施の形態1に係る照明システム1の照明装置10が植物に光を照射した場合の植物の落葉数と日数との関係を示す図である。
図7では、横軸が植物に光を照射した日数であり、縦軸が植物に光を照射した場合の総落葉枚数である。
【0058】
図7では、第1照明の方が第2照明及び第3照明よりも総落葉枚数が増加することが判った。また、第2照明及び第3照明では、日数が経過しても、さほど落葉数が増加しないことが判った。
【0059】
<処理>
以下、本実施の形態における植物育成の光照射方法、照明装置10及び照明システム1の処理について説明する。
【0060】
図8は、実施の形態1に係る照明システム1の処理を示すフローチャートである。
【0061】
まず、照明システム1の制御部20は、
図8に示すように、光を照射する対象となる植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つを示す第1情報を取得する(S11)。第1情報は、例えば記憶部30に記憶される。
【0062】
次に、制御部20は、第1情報に示される植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つに応じて、照明装置10が出射する光の照射範囲、照射方向及び照度を決定する(S12)。例えば、制御部20は、記憶部30に記憶されるテーブルを読み出すことで、光の照射範囲、照射方向及び照度を決定する、つまり、制御部20は、照明装置10を制御するためのモードを、第1モードから第5モードのうちから決定する。テーブルには、植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つに応じた光の照射範囲、照射方向及び照度に対応するモードが予め設定されている。
【0063】
次に、制御部20は、決定したモードに応じて照明装置10を制御する(S13)。これにより、照明装置10は、決定されたモードに応じた光の照射範囲、照射方向及び照度の光を、対象の植物に照射する。そして制御部20は、処理を終了する。
【0064】
<作用効果>
次に、本実施の形態における植物育成の光照射方法、照明装置10及び照明システム1の作用効果について説明する。
【0065】
以上のように、本実施の形態における植物育成の光照射方法は、白色光を発する白色発光ダイオード11と、赤色光を発する赤色発光ダイオード12又は赤色蛍光体とを用いて、白色光及び赤色光を植物に対して照射し、赤色発光ダイオード12又は赤色蛍光体から発する赤色光の放射エネルギーを、白色発光ダイオード11から発する白色光の放射エネルギーの1/2以下となるように制御し、植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つに応じて、白色光及び赤色光の照射範囲、照射方向及び照度の少なくとも1つを制御することを含む。
【0066】
これによれば、植物の光合成及び花芽形成に有効とされる赤色光を植物に照射することができるため、白色光だけを植物に照射する場合に比べて、植物の育成及び草勢維持に有効な光照射を行うことができる。つまり、植物育成の光照射方法では、植物の状態を所望の状態にすることができる。
【0067】
また、赤色光の放射エネルギーを白色光の放射エネルギーの1/2以下とすることで、光が照射された植物を人が見ても、赤みがかって見えることもない。つまり、植物育成の光照射方法では、植物の見栄えを損ない難い。
【0068】
したがって、この植物育成の光照射方法によれば、植物の育成及び草勢維持、かつ、植物の見栄えを良くすることができる。
【0069】
また、本実施の形態における照明装置10は、白色光を発する白色発光ダイオード11と、赤色光を発する赤色発光ダイオード12又は赤色蛍光体とを有し、白色光及び赤色光を植物に対して照射する光源10aと、赤色発光ダイオード12又は赤色蛍光体から発する赤色光の放射エネルギーを、白色発光ダイオード11から発する白色光の放射エネルギーの1/2以下となるように制御し、かつ、植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つに応じて、白色光及び赤色光の照射範囲、照射方向及び照度の少なくとも1つを制御する制御部20とを備える。
【0070】
この照明装置10においても、上述の植物育成の光照射方法と同様の作用効果を奏する。
【0071】
また、本実施の形態における照明システム1は、白色光を発する白色発光ダイオード11と、赤色光を発する赤色発光ダイオード12又は赤色蛍光体とを有し、白色光及び赤色光を植物に対して照射する照明装置10と、赤色発光ダイオード12又は赤色蛍光体から発する赤色光の放射エネルギーを、白色発光ダイオード11から発する白色光の放射エネルギーの1/2以下となるように制御し、かつ、植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つに応じて、白色光及び赤色光の照射範囲、照射方向及び照度の少なくとも1つを制御する制御部20とを備える。
【0072】
この照明システム1においても、上述の植物育成の光照射方法と同様の作用効果を奏する。
【0073】
また、本実施の形態における植物育成の光照射方法は、白色光及び赤色光の照射範囲及び照射方向を制御して、植物の成長点に白色光及び赤色光を照射する。
【0074】
これによれば、植物の育成を促すことができるため、植物の状態を所望の状態にすることができる。
【0075】
また、本実施の形態における照明装置10において、制御部20は、白色光及び赤色光の照射範囲及び照射方向を制御して、植物の成長点に白色光及び赤色光を照射する。
【0076】
この照明装置10においても、上述の植物育成の光照射方法と同様の作用効果を奏する。
【0077】
また、本実施の形態における植物育成の光照射方法では、白色光及び赤色光の照射範囲及び照射方向を制御して、植物の背の高さの1/2以下の部分に白色光及び赤色光を照射する。
【0078】
これによれば、植物を草勢維持することで植物の状態を所望の状態に保ちやすくなるため、植物の鑑賞期間(見栄えのよい期間)を長くすることができる。また、植物の落葉の発生を抑制することができる。
【0079】
また、本実施の形態における植物育成の光照射方法は、植物の成長点に1200lx以上の白色光及び赤色光を照射し、植物の背の高さの1/2以下の部分に、植物の成長点に照射する白色光及び赤色光の照度よりも小さく、600lx以上の白色光及び赤色光を照射する。
【0080】
これによれば、植物の成長を促すとともに、植物の落葉の発生を抑制することができる。このため、落葉による植物の見栄えが悪化し難く、落葉の清掃を行う頻度が上昇し難くなる。
【0081】
また、本実施の形態における植物育成の光照射方法は、植物の成長点に600lx以上1000lx以下の白色光及び赤色光を照射し、植物の背の高さの1/2以下の部分に、600x以上の白色光及び赤色光を照射する。
【0082】
これによれば、植物を草勢維持しつつ、植物の落葉の発生を抑制することができる。このため、植物の状態を所望の状態に保ちやすくなり、植物の鑑賞期間(見栄えのよい期間)を長くすることができる。
【0083】
また、本実施の形態における植物育成の光照射方法は、植物の成長を促す場合に、植物の成長点に1200lx以上の白色光及び赤色光を照射し、植物の草勢を維持する場合に、植物に白色光及び赤色光を照射し、植物の成長点に600lx以上1000lx以下の白色光及び赤色光を照射し、かつ、植物の背の高さの1/2以下の部分に白色光及び赤色光を照射する。
【0084】
これによれば、所望のタイミングで、植物の育成を促したり、植物を草勢維持したりすることができる。このため、植物の状態を所望の状態に保ちやすくなり、植物の鑑賞期間(見栄えのよい期間)を長くすることができる。
【0085】
(実施の形態2)
<構成>
本実施の形態における植物育成の光照射方法、照明装置10及び照明システム1の構成を説明する。
【0086】
図9Aは、実施の形態2に係る照明システム1の照明装置10を植物の上方側と下方側とのそれぞれに配置した場合の、光を照射する様子を示す模式図である。
図9Bは、上方側の照明装置10が植物に光を照射した場合の見栄えと、下方側の照明装置10が植物に光を照射した場合の見栄えとを示す模式図である。
【0087】
本実施の形態では、複数の照明装置10を用いる点で実施の形態1と相違する。
【0088】
本実施の形態における他の構成は、特に明記しない場合は、実施の形態1と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0089】
本実施の形態では、
図2、
図9A及び
図9Bに示すように、植物よりも高い位置に照明装置10である第1照明装置10b1が配置され、植物の背の高さHの1/2以下の位置に照明装置10である第2照明装置10b2が配置される。
【0090】
また、第1照明装置10b1は、植物に対して上方側から下方側に白色光及び赤色光を照射する姿勢で配置される。具体的には、第1照明装置10b1は、照射する白色光及び赤色光の照射方向が水平方向に対して角度θが25°~60°となる姿勢で配置される。第1照明装置10b1は、例えば、天井、壁、スタンド等によって支持される。
【0091】
また、第2照明装置10b2は、植物に対して下方側から上方側に白色光及び赤色光を照射する姿勢で配置される。具体的には、第2照明装置10b2は、照射する白色光及び赤色光の照射方向が水平方向に対して角度θが30°~70°となる姿勢で配置される。第2照明装置10b2は、例えば、床、壁等によって支持される。
【0092】
このように、上方側と下方側とから植物に光が照射されることで、植物の奥に存在する葉にまで光が照射される。つまり、植物の奥に存在する葉にも光が照射される。また、
図9Bに示すように、植物の葉のそれぞれに光が照射されるため、それぞれの葉で光が反射されて植物全体が輝くように見える。
【0093】
制御部20は、第1照明装置10b1及び第2照明装置10b2を制御することで、植物の大きさ及び形に応じて、白色光及び赤色光の照射方向を変更する。
【0094】
また、制御部20は、第1照明装置10b1及び第2照明装置10b2を用いて、植物に照射する白色光及び赤色光の照度及び点消灯を制御する。
【0095】
<実験結果>
以下では、植物の成長点と下葉とに光を照射した場合の、植物の育成、草勢維持効果、総落葉枚数及び光合成感度を評価した実験結果である。本実験結果では、植物に1mの背の高さHのジャスミンを用いて、300lxから1500lxまで照度を変化させて、30日間植物を育成させた。また、光合成感度を測定する手段として、メイワフォーシスの測定装置(LI-6400XT)を用いた。また、光合成感度は、20葉の平均を算出した。
【0096】
図10は、実施の形態2に係る照明システム1の第1照明装置10b1が植物の成長点に光を照射した場合の、植物の伸長と照度との関係、落葉数と照度との関係、及び、光合成感度と照度との関係を示す図である。
図10では、成長点に光を照射した場合を示す。
図10では、横軸が植物に照射した光の照度であり、縦軸(実線に対応)が植物の成長した長さ(伸長cm)であり、縦軸(間隔の小さい破線に対応)が植物の総落葉枚数であり、縦軸(間隔の大きい破線に対応)が植物の光合成感度(μmolCO
2m
-2s
-
1)である。
【0097】
植物が成長した長さは、植物に照射する照度が高くなるほど、植物の伸長が大きくなるため、植物を成長させる効果があることが判った。また、植物の総落葉枚数は、照度が高くなるほど植物の総落葉枚数が低下し、照度600lx以上の総落葉枚数は、照度600lx未満の総落葉枚数に比べて激減することが判った。また、植物の光合成感度は、照度が高くなるほど植物の光合成感度が高くなることが判った。
【0098】
特に、照度600lx~1000lx(草勢維持照度)では、植物の伸長が鈍化するとともに、落葉数が少なく、照度600lx未満よりも光合成感度の上昇率が鈍化しているため、植物の草勢維持効果があることが判った。
【0099】
また、照度1200lx以上(育成照度)では、植物の伸長が進むとともに、落葉数が少なく、照度1200lx未満よりも光合成感度が高いため、植物の育成効果があることが判った。
【0100】
図11は、実施の形態2に係る照明システム1の第2照明装置10b2が植物の下葉に光を照射した場合の、植物の伸長と照度との関係、落葉数と照度との関係、光合成感度と照度との関係を示す図である。
図11では、下葉に光を照射した場合を示す。
図11の縦軸の縮尺は、
図10の縦軸の縮尺と同様である。
図11では、横軸が植物に照射した光の照度であり、縦軸(実線に対応)が植物の成長した長さ(伸長cm)であり、縦軸(間隔の小さい破線に対応)が植物の総落葉枚数であり、縦軸(間隔の大きい破線に対応)が植物の光合成感度(μmolCO
2m
-2s
-1)である。
【0101】
植物が成長した長さは、植物に照射する照度が高くなるほど僅かに植物の伸長が大きくなることが判った。下葉に光を照射した場合では、植物の成長点に光を照射する場合ほどの植物の育成効果がなく、植物の草勢維持されることが判った。また、植物の総落葉枚数も、照度が高くなるほど植物の総落葉枚数が低下し、照度600lx以上の総落葉枚数は、照度600lx未満の総落葉枚数よりも激減することが判った。また、植物の光合成感度は、照度が高くなるほど、概ね植物の光合成感度が高くなることが判った。しかし、下葉に光を照射した場合では、植物の成長点に光を照射する場合よりも、光合成感度の上昇効果が緩やかであり、植物の草勢維持の効果があることが判った。
【0102】
<作用効果>
次に、本実施の形態における植物育成の光照射方法、照明装置10及び照明システム1の作用効果について説明する。
【0103】
以上のように、本実施の形態における植物育成の光照射方法は、植物の大きさ及び形に応じて、白色光及び赤色光の照射方向を変更し、植物よりも高い位置に、白色発光ダイオード11、及び、赤色発光ダイオード12又は赤色蛍光体を有する照明装置10が配置される場合、照明装置10が照射する白色光及び赤色光の照射方向は、水平方向に対する角度が25°~60°であり、植物の背の高さの1/2以下の位置に照明装置10が配置される場合、照明装置10が照射する白色光及び赤色光の照射方向は、水平方向に対する角度が30°~70°である。
【0104】
これによれば、植物の上方側から植物に光を照射するとともに、植物の下方側から植物に光を照射することで、植物の奥に存在する葉にまで光を照射することができる。つまり、植物の奥に存在する葉が光合成を行い易くなるため、落葉の発生を抑制することができる。また、
図9Bに示すように、植物の葉のそれぞれに光が照射されるため、それぞれの葉で光が反射されるため、植物全体が輝くように見えるため、見栄えがよくなる。
【0105】
また、本実施の形態における植物育成の光照射方法は、植物よりも高い位置と、植物の背の高さの1/2以下の位置とのそれぞれに配置した複数の照明装置10を用いて、植物に照射する白色光及び赤色光の照度及び点消灯を制御する。
【0106】
これによれば、植物の上方側から植物に光を照射するとともに、植物の下方側から植物に光を照射することで、植物に効率的に光合成を行わせることができる。
【0107】
また、照明装置10の点灯及び消灯を制御したり、照明装置10が出射する光の照度を制御したりすることができる。このため、効率よく植物の育成及び草勢維持を行うことができるとともに、植物の見栄えをよりよくすることができる。
【0108】
このような、本実施の形態においても、実施の形態1と同様の作用効果を奏する。
【0109】
(実施の形態3)
<構成>
本実施の形態における照明システム1aの構成を説明する。
【0110】
図12は、実施の形態3に係る照明システム1aのブロック図である。
【0111】
図12に示すように、植物の状態を検知する第1検知部61及び第2検知部62を有する点で、実施の形態1と相違する。
【0112】
本実施の形態における他の構成は、特に明記しない場合は、実施の形態1と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0113】
照明システム1aは、1以上の照明装置10、制御部20、記憶部30、操作部40及び電源部50の他に、第1検知部61と、第2検知部62とを備える。
【0114】
第1検知部61は、植物の状態を検知することで、植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つを示す第1情報を取得する。第1検知部61は、例えば撮像装置、輝度センサ等であり、植物を撮像することで植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つを認識し、植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つを示す第1情報を取得する。第1検知部61は、検知した第1情報を制御部20に出力する。第1検知部61は、検知部の一例である。
【0115】
第2検知部62は、照明装置10によって照射された光による、植物の光合成感度を示す第2情報を取得する。第2検知部62は、例えば植物のクロロフィル蛍光の強度を測定する光合成センサである。第2検知部62は、検知した第2情報を制御部20に出力する。
【0116】
制御部20は、取得した第1情報及び第2情報に基づいて、植物に照射する白色光及び赤色光の配光、照射方向及び照度の少なくとも1つを制御する。
【0117】
例えば、制御部20は、第1情報に基づいて植物の育成が進んでいるか否かを判定できる。制御部20は、植物の育成が進んでいると判定できれば、植物の草勢維持するため第3モード、第3モード又は第5モードを実行する。また、制御部20は、第1情報に基づいて植物の育成が進んでいないと判定できれば、植物の育成を促すため第1モード又は第4モードを実行する。
【0118】
また、制御部20は、第2情報に基づいて植物の光合成度合いが所定値より大きいか否かを判定できる。制御部20は、植物の光合成度合いが所定値より大きい場合、植物の草勢を維持したければ第3モード又は第5モードを実行し、植物の育成を促したければ第1モード又は第4モードを実行又は現状の制御処理を実行する。また、制御部20は、植物の光合成度合いが所定値未満の場合、植物の草勢を維持したければ第2モード、第3モード又は第5モードを実行し、植物の育成を促したければ第1モード又は第4モードを実行する。
【0119】
<処理>
以下、本実施の形態における植物育成の光照射方法、照明装置10及び照明システム1aの処理について説明する。
【0120】
図13は、実施の形態3に係る照明システム1aの処理を示すフローチャートである。
【0121】
まず、
図13に示すように、第1検知部61は、植物の状態を検知する。つまり、第1検知部61は、植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つを検知することで、植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つを示す第1情報を取得する(S21)。第1検知部61は、検知した第1情報を制御部20に出力する。そして、ステップS12以降、
図8と同様の処理を行う。
【0122】
<実験結果>
以下では、植物の成長点と下葉とに光を照射した場合の、植物の育成、草勢維持、総落葉枚数及び光合成感度を評価した実験結果である。本実験結果では、植物に1mの背の高さのジャスミンを用いて、水平面に対する照明装置10の光軸の照射角度を0°~80°に変化させて光を照射した。また、光合成感度を測定する手段として、メイワフォーシスの測定装置(LI-6400XT)を用い、輝度を測定する手段として、コミカミノルタの測定装置(CA-2500)を用いた。また、光合成感度は、20葉の平均を算出した。
【0123】
図14は、上方側の第1照明装置10b1が植物に光を照射した場合の、光合成感度と照射角度との関係、及び、輝度と照射角度との関係を示す図である。
【0124】
図14では、植物よりも高い位置に配置した第1照明装置10b1を用いて、植物に光を照射した。
図14では、横軸が上方側から下方側に向けて植物に光を照射した場合の水平面に対する第1照明装置10b1の光軸の照射角度であり、左側縦軸(実線に対応)が植物の光合成感度(μmolCO
2m
-2s
-1)であり、右側縦軸(破線に対応)
が輝度(cd/m
2)である。
【0125】
実線でも破線でも、照射角度が20°~70°で光合成感度及び輝度が上昇していることが判った。特に、照射角度が25°~60°で光合成感度及び輝度が高くなることが判った。
【0126】
図15は、下方側の第2照明装置10b2が植物に光を照射した場合の、光合成感度と照射角度との関係、及び、輝度と照射角度との関係を示す図である。
【0127】
図15では、植物の背の高さの1/2以下の位置に配置した第2照明装置10b2を用いて、植物に光を照射した。
図15では、横軸が下方側から上方側に向けて植物に光を照射した場合の水平面に対する第2照明装置10b2の光軸の照射角度であり、左側の縦軸(実線に対応)が植物の光合成感度(μmolCO
2m
-2s
-1)であり、右側の
縦軸(破線に対応)が輝度(cd/m
2)である。
【0128】
実線でも破線でも、照射角度が25°~75°で光合成感度及び輝度が上昇していることが判った。特に、照射角度が30°~70°で光合成感度及び輝度が高くなることが判った。
【0129】
<作用効果>
次に、本実施の形態における照明システム1aの作用効果について説明する。
【0130】
以上のように、本実施の形態における照明システム1aは、さらに、植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つを検知する第1検知部61を備える。そして、制御部20は、第1検知部61から植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つを示す第1情報を取得し、取得した第1情報に基づいて、植物に照射する白色光及び赤色光の照射範囲、照射方向及び照度の少なくとも1つを制御する。
【0131】
これによれば、植物の状態である植物の大きさ、形及び生育段階の少なくとも1つに基づいて植物に照射する白色光及び赤色光の配光、照射方向及び照度の少なくとも1つを制御することができる。このため、植物の見栄えを最適化したり、植物に加わる負荷抑制することで植物の状態を最適化したりすることができる。
【0132】
このような、本実施の形態においても、実施の形態1等と同様の作用効果を奏する。
【0133】
(その他変形例等)
以上、本開示について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これら実施の形態等に限定されるものではない。
【0134】
例えば、上記実施の形態1~3に係る植物育成の光照射方法、照明装置及び照明システムにおいて、制御部は、照明装置と別の装置として設けられるが、照明装置に搭載されていてもよい。
【0135】
また、上記実施の形態1~3に係る植物育成の光照射方法は、コンピュータを用いたプログラムによって実現され、このようなプログラムは、記憶装置に記憶されてもよい。
【0136】
また、上記実施の形態1~3に係る植物育成の光照射方法、照明装置及び照明システムに含まれる各処理部は、典型的に集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。
【0137】
また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0138】
なお、上記実施の形態1~3において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0139】
また、上記で用いた数字は、全て本開示を具体的に説明するために例示するものであり、本開示の実施の形態は例示された数字に制限されない。
【0140】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0141】
また、フローチャートにおける各ステップが実行される順序は、本開示を具体的に説明するために例示するためであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
【0142】
その他、実施の形態1~3に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態1~3における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0143】
1、1a 照明システム
10 照明装置
10a 光源
11 白色発光ダイオード
12 赤色発光ダイオード
20 制御部
61 第1検知部(検知部)