(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152954
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】情報提供システム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20241018BHJP
【FI】
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024141889
(22)【出願日】2024-08-23
(62)【分割の表示】P 2023569356の分割
【原出願日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2021209739
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515163313
【氏名又は名称】株式会社メタジェン
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福田 真嗣
(57)【要約】
【課題】現時点で機能性物質への適合性がなくても、腸内環境パターンを変化させるための行動を提案することで、機能性物質への適合性獲得につなげることが可能な情報提供システムを提供すること。
【解決手段】本発明は、ユーザの腸内環境パターンと、特定の機能性物質に対する応答性腸内環境パターンとを比較する比較部と、前記比較の結果に基づいて、前記ユーザの腸内環境パターンを前記応答性腸内環境パターンに近づけるための行動情報を選択する行動選択部と、前記行動情報を提供する情報提供部とを備える、情報提供システムである。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの腸内環境パターンに応じて、特定の機能性物質に対して応答性を獲得するために必要な行動情報を提供する、情報提供システム。
【請求項2】
前記ユーザの腸内環境パターンと、前記特定の機能性物質に対する応答性腸内環境パターンとを比較する比較部と、
前記比較の結果に基づいて、前記ユーザの腸内環境パターンを前記応答性腸内環境パターンに近づけるための行動情報を選択する行動選択部と、
前記行動情報を提供する情報提供部と、を備える、請求項1に記載の情報提供システム。
【請求項3】
前記比較部は、特定の腸内細菌の有無及び過不足、特定の代謝物質の有無及び過不足、特定の便中タンパク質の有無及び過不足、特定の便性状であるか否か、の少なくともいずれかを差分として特定する、請求項2に記載の情報提供システム。
【請求項4】
前記行動情報は、前記差分に係る特定の腸内細菌、代謝物質及び便中タンパク質の少なくともいずれかを増やす若しくは減らす効果、又は便性状を変化させる効果をもたらす行動である、請求項3に記載の情報提供システム。
【請求項5】
前記行動情報は、食品の摂取に関する、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の情報提供システム。
【請求項6】
前記機能性物質と前記効果をもたらす食品とを摂取可能な食事情報をさらに提供する、請求項5に記載の情報提供システム。
【請求項7】
前記情報提供部はさらに、前記ユーザの腸内環境パターンと、前記特定の応答性環境パターンとの近さの指標を2以上のタイミングにおいて判定し、提供することを特徴とする、請求項2に記載の情報提供システム。
【請求項8】
前記比較部は、複数の前記機能性物質について比較を行い、
前記情報提供部は、前記ユーザの腸内環境パターンが前記特定の応答性環境パターンにより近い機能性物質について、前記行動情報を提供することを特徴とする、請求項2に記載の情報提供システム。
【請求項9】
前記特定の機能性物質の形態が、保健機能食品、健康補助食品、機能性表示食品、特定保健用食品又は特別用途食品であることを特徴とする、請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の情報提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康管理における腸内環境の重要性に注目が集まっている。腸内環境は、食生活などの生活習慣に起因して個人ごとに異なっており、腸内細菌叢のバランスや腸内細菌叢由来の代謝物質が、健康維持や様々な疾患に深く関与していることが明らかになりつつある。また、薬剤やサプリメント、食材などの機能性物質を摂取した際の効果は、その人の腸内環境の違いに基づいて個人ごとに異なる例が知られている。
【0003】
特許文献1には、腸内細菌に関する検査結果をもとにユーザを分類し、同一のグループに分類された別のユーザが機能性素材を摂取した場合の評価結果をもとに、ユーザに適合するであろう機能性素材を提示することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した技術は、現時点でユーザに適合した機能性素材を提案するものであり、機能性素材に適合しないケースを考慮したものではなかった。
【0006】
そこで、本発明は、現時点で機能性物質への適合性がなくても、腸内環境パターンを変化させるための行動を提案することで、機能性物質への適合性獲得につなげることが可能な情報提供システムを提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ユーザの腸内環境パターンに応じて、特定の機能性物質に対して応答性を獲得するために必要な行動情報を提供する情報提供システムが得られる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、現時点で機能性物質に対する応答性がなくても、腸内環境パターンを変化させる効果のある行動を提案することによって、将来的に機能性物質に対する応答性を獲得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態によるシステムの構成例を示す図。
【
図2】本発明の実施の形態によるサーバ装置の構成例を示す図。
【
図3】本発明の実施の形態によるサーバ装置の機能ブロック図。
【
図4】本発明の実施の形態による応答性腸内環境情報記憶部の構成例。
【
図5】本発明の実施の形態による差分リスト記憶部の構成例。
【
図6】本発明の実施の形態による腸内環境変化情報記憶部の構成例。
【
図7】本発明の実施の形態によるユーザ情報記憶部の構成例。
【
図8】本発明の実施の形態による情報処理の例を示したフローチャート図。
【
図9】本発明実施の形態による情報提示例を示した図。
【
図10】本発明実施の形態による情報提示例を示した図。
【
図11】本発明実施の形態による腸内環境変化情報記憶部の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明は、以下のような構成を備える。
[項目1]
ユーザの腸内環境パターンに応じて、特定の機能性物質に対して応答性を獲得するために必要な行動情報を提供する、情報提供システム。
[項目2]
前記ユーザの腸内環境パターンと、前記特定の機能性物質に対する応答性腸内環境パターンとを比較する比較部と、
前記比較の結果に基づいて、前記ユーザの腸内環境パターンを前記応答性腸内環境パターンに近づけるための行動情報を選択する行動選択部と、
前記行動情報を提供する情報提供部と、を備える、項目1に記載の情報提供システム。
[項目3]
前記比較部は、特定の腸内細菌の有無及び過不足、特定の代謝物質の有無及び過不足、特定の便中タンパク質の有無及び過不足、特定の便性状であるか否か、の少なくともいずれかを差分として特定する、項目2に記載の情報提供システム。
[項目4]
前記行動情報は、前記差分に係る特定の腸内細菌、代謝物質及び便中タンパク質の少なくともいずれかを増やす若しくは減らす効果、又は便性状を変化させる効果をもたらす行動である、項目3に記載の情報提供システム。
[項目5]
前記行動情報は、食品の摂取に関する、項目1ないし項目4のいずれか1つに記載の情報提供システム。
[項目6]
前記機能性物質と前記効果をもたらす食品とを摂取可能な食事情報をさらに提供する、項目5に記載の情報提供システム。
[項目7]
前記情報提供部はさらに、前記ユーザの腸内環境パターンと、前記特定の応答性環境パターンとの近さの指標を2以上のタイミングにおいて判定し、提供することを特徴とする、項目2に記載の情報提供システム。
[項目8]
前記比較部は、複数の前記機能性物質について比較を行い、
前記情報提供部は、前記ユーザの腸内環境パターンが前記特定の応答性環境パターンにより近い機能性物質について、前記行動情報を提供することを特徴とする、項目2に記載の情報提供システム。
[項目9]
前記特定の機能性物質の形態が、保健機能食品、健康補助食品、機能性表示食品、特定保健用食品又は特別用途食品であることを特徴とする、項目1ないし項目8のいずれか1つに記載の情報提供システム
【0011】
<実施の形態の詳細>
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
<概要>
本発明は、薬剤やサプリメント、食材などの機能性物質を摂取した際の効果が、その人の腸内環境パターンの違いに基づいて個人ごとに異なるという知見に基づくものである。このような機能性物質を摂取した際に効果が得られる人を「レスポンダー」、効果が得られない人を「ノンレスポンダー」と定義することができる。
【0013】
例えば、大麦を摂取した際、その次の食事による血糖値上昇が抑えられる「セカンドミール効果」があることが知られているが、この効果にはレスポンダーとノンレスポンダーが存在する。このレスポンダーとノンレスポンダーの違いには腸内細菌叢中のプレボテラ属細菌の比率が関係していると考えられており、レスポンダーはノンレスポンダーと比較してプレボテラ属細菌の比率が高い傾向にあることがわかっている。この場合、プレボテラ属細菌の比率が多い人は大麦摂取によってセカンドミール効果が得られる「レスポンダー」であり、少ない人はその効果が得られない「ノンレスポンダー」となる。
【0014】
このような概念は、ヨーグルトのようなプロバイオティクスや機能性表示食品など、摂取する食品などの物質と、それによってもたらされる影響との間で普遍的に存在する概念であると考えられる。医薬品の場合も同様であり、例えば、がん治療薬として近年注目されている免疫チェックポイント阻害剤の効果が、患者の腸内細菌叢のパターンに依存することが報告され、腸内細菌叢のパターンが宿主免疫系に影響を与えることが理由であると考えられている。腸内環境は個々人で異なることから、有益な効果が期待されている食品(特定保健用食品や機能性表示食品などを含む)や医薬品などは、すべての人に一様な効果がもたらされる可能性は低く、レスポンダーとノンレスポンダーが存在することを認識する必要がある。
【0015】
また一方で、一部の食品やサプリメント、医薬品には、特定の腸内細菌や腸内細菌由来の代謝物質を増減させる効果があることが知られている。例えば、乳酸菌やビフィズス菌などを含むヨーグルトやぬか漬け、納豆などの発酵食品や整腸剤などのプロバイオティクスや、食物繊維やオリゴ糖を多く含むプレバイオティクスと呼ばれる食品やサプリメントは、腸内環境を変化させることが知られている。その他、運動習慣やアルコールの摂取、ストレス等の生活習慣によっても、腸内環境が変化することが知られている。
【0016】
本発明においては、研究・調査により特定の機能性物質に対してレスポンダーである人に共通する腸内環境パターンを見出し、これを「応答性腸内環境パターン」としてデータベース化する。応答性腸内環境パターンを見出す調査方法は既知の方法により行うことができるが、例えば以下のような方法で行うことができる。
【0017】
複数人の被験者に所定期間にわたって機能性物質を摂取させ、摂取後に期待された効果が得られたかをアンケートや検査により調査する。当該調査結果を必要に応じて任意の統計手法を用いて解析し、効果が得られた者(レスポンダー)と効果が得られなかった者(ノンレスポンダー)とを分類する。また、機能性物質の摂取前~摂取後のいずれかの時点における被験者の便検体を採取し、腸内細菌叢又は代謝物質を調べる。そして、レスポンダーとノンレスポンダーとの間で、相対存在比が有意に異なる腸内細菌又は便含量が有意に異なる代謝物質等を測定することによって、レスポンダーに共通する応答性腸内環境パターンを見出すことができる。
【0018】
本発明においては、まずユーザの腸内環境パターンを、特定の機能性物質に対してレスポンダーである人に共通する応答性腸内環境パターンと比較することによって、当該機能性物質に対してレスポンダーであるかノンレスポンダーであるかを判定する。そして、ノンレスポンダーである場合には、ユーザの腸内環境パターンを応答性腸内環境パターンへと変化させるための行動情報を提案するものである。本発明によれば、当初は特定の機能性物質に対してノンレスポンダーであっても、特定の行動をとることによってレスポンダーへと自身の腸内環境パターンを変化させることができる。以下、レスポンダーのことを「応答性」、ノンレスポンダーのことを「非応答性」ということがある。
【0019】
また、本明細書において「腸内環境パターン」とは、特定の腸内細菌の有無、及び相対存在比率、腸内細菌間のバランス、腸内代謝物質の有無、含有量、代謝物質間のバランス、便中タンパク質の有無や含有量、便性状(例えば水分含量、硬さ、色など)およびこれらの組合せを指す。なお、前記腸内細菌はバクテリアに限定されるものではなく、古細菌、真菌、ウイルス(ファージ)を含むものとする。また、前記腸内代謝物質は腸内細菌が産生する代謝物質、腸内細菌の死菌体、食物残渣、宿主が分泌する物質などを含むものであり、主に便中から検出されるが、腸内容物など便以外から検出されてもよい。前記便中タンパク質は、腸内細菌が産生するタンパク質、食物残渣、宿主が分泌する物質(消化酵素、免疫グロブリン、抗菌ペプチド等)を含むものであり、主に便中から検出されるが、腸内容物など便以外から検出されてもよい。
【0020】
また、本明細書において「機能性物質」とは、摂取した場合に所定の効果をもたらすことが期待される食品(飲料も含む。以下同じ)であり、その形態は保健機能食品、健康補助食品、機能性表示食品、特定保健用食品又は特別用途食品である場合を含む。さらに「機能性物質」には、医薬品、サプリメントなども含む。なお、「食品」は、食材や、食材に含まれる特定の栄養素も含む。また、「医薬品」、「サプリメント」は、それらに含まれる有効成分(化合物)であってもよい。また、機能性物質が持つ所定の効果とは、例えば痩せる、太りにくくなる、血糖値が下がる、耐糖能が向上する、便通が良くなる、免疫力が向上する、肌の状態が良くなる、抗鬱作用がある、など、摂取者の身体的・精神的な状態を変化させるものであればよい。なお、本発明における機能性物質の摂取者はヒトに限らず家畜やペット等の動物または蜂やカイコなどの産業動物にも適用可能である。
【0021】
<構成>
本発明の実施の形態によるシステムは、ユーザの腸内環境に関するデータをもとに特定の機能性物質に対して応答性であるかを評価し、応答性でない場合は応答性腸内細菌パターンに近づけるための行動情報をユーザ端末に提供するものである。
図1に示されるように、本発明のシステムは、サーバ1と、サーバ1にインターネット等のネットワークを介して接続されるユーザ端末2を備えている。
図1には、説明の便宜のために、1つのユーザ端末2が図示されているが、複数の端末が本システムのネットワークに接続可能である。
【0022】
<ハードウェア構成>
本実施の形態によるサーバ1とユーザ端末2とは、以下のようなハードウェア構成を有する。なお、以下の構成は一例であり、これ以外の構成を有していても良い。
【0023】
<サーバ1>
図2に示されるように、サーバ1は、ユーザ端末2と通信を介して情報処理を実行することにより、システムの一部を構成する。サーバ1は、例えばワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、或いはクラウド・コンピューティングによって論理的に実現されてもよい。
【0024】
サーバ1は、少なくとも、プロセッサ10、メモリ11、ストレージ12、送受信部13、入出力部14等を備え、これらはバス15を通じて相互に電気的に接続される。
【0025】
プロセッサ10は、サーバ1全体の動作を制御し、各要素間におけるデータの送受信の制御、及びアプリケーションの実行に必要な情報処理等を行う演算装置である。例えばプロセッサ10はCPU(Central Processing Unit)であり、ストレージ12に格納されメモリ11に展開されたプログラム等を実行して各情報処理を実施する。
【0026】
メモリ11は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶装置で構成される主記憶と、フラッシュメモリやHDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性記憶装置で構成される補助記憶と、を含む。メモリ11は、プロセッサ10のワークエリア等として使用され、また、サーバ1の起動時に実行されるBIOS(Basic Input / Output System)、及び各種設定情報等を格納する。
【0027】
ストレージ12は、アプリケーション・プログラム等の各種プログラムを格納する。各処理に用いられるデータを格納したデータベースがストレージ12に構築されていてもよい。
【0028】
送受信部13は、サーバ1をネットワーク3に接続する。なお、送受信部13は、Bluetooth(登録商標)及びBLE(Bluetooth Low Energy)の近距離通信インタフェースを備えていてもよい。
【0029】
入出力部14は、必要に応じて使用するキーボード・マウス類等の情報入力機器、及びディスプレイ等の出力機器である。
【0030】
バス15は、上記各要素に共通に接続され、例えば、アドレス信号、データ信号及び各種制御信号を伝達する。
【0031】
<ユーザ端末2>
ユーザ端末2は、サーバ1と通信を介して情報処理を実行することにより、情報提供システムの一部を構成する。ユーザ端末2は、例えば、ワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータであってもよいし、スマートフォン等の携帯通信機器等であってもよい。
【0032】
図3は、本発明のシステムにおけるサーバ1のソフトウェア構成例を示す図である。サーバ1は、データ取得部111、比較部112、行動選択部113、情報提供部114、応答性腸内環境情報記憶部121、差分リスト記憶部122、腸内環境変化情報記憶部123、ユーザ情報記憶部124を備えることができる。
【0033】
なお、データ取得部111、比較部112、行動選択部113、情報提供部114は、サーバが備えるプロセッサ10がストレージ12に記憶されているプログラムをメモリ11に読み出して実行することにより実現され、応答性腸内環境情報記憶部121、差分リスト記憶部122、腸内環境変化情報記憶部123、ユーザ情報記憶部124は、メモリ11及びストレージ12の少なくともいずれかにより提供される記憶領域の一部として実現される。
【0034】
応答性腸内環境情報記憶部121は、特定の機能性物質と、当該機能性物質の効果を得ることのできる応答性腸内環境パターンの特徴との組み合わせを含む。すなわち、過去の研究により、機能性物質の効果を得ることができるレスポンダーに共通する腸内環境パターンが明らかになっている場合に、当該レスポンダーに共通する腸内環境パターンの特徴を「応答性腸内環境パターン」としてデータベース化したものである。
【0035】
図4は、応答性腸内環境情報の構成例である。機能性物質ごとに付与されたIDに紐づけて、機能性物質のカテゴリ情報(食品、サプリメント、医薬品など)、機能性物質の摂取によって得られる効果(便秘が解消する、痩せる、耐糖能が上がる、など)、及び応答性腸内環境パターン情報を含むことができる。応答性腸内環境パターン情報とは、特定の腸内細菌の有無又は存在量・相対存在比率、腸内細菌間のバランス(特定の腸内細菌同士の存在比率など)、腸内代謝物質の有無、含有量、代謝物質間のバランス、便中タンパク質の有無や含有量、便性状(例えば水分含量、硬さ、色など)等であってよい。また、腸内細菌はその属(プレボテラ属細菌など)や種(プレボテラ コプリなど)等、特定の方法は問わない。
【0036】
また、腸内細菌の相対存在比率や腸内細菌間バランス、代謝物質の含有量や代謝物質間バランスなどは、レスポンダーであると判断する範囲を数値(閾値)によって規定することができる。閾値は、当該機能性物質を摂取した場合に効果がある群とない群とを判別するためのカットオフ値であり、適宜定めることができる。前記カットオフ値は、決定木、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰等の機械学習アルゴリズムを適宜選択して算出してもよいし、効果がある群とない群の値の分布から適宜判断してもよい。より具体的には、例えば、感度と偽陽性率(1-特異度)の関係を、ROC分析することにより求めることができる。
【0037】
感度とは、例えば、真の状態が増加する群である予測対象を正しく増加する群であると予測している割合である。特異度とは、真の状態が増加しない群である予測対象を正しく増加しない群であると予測している割合である。ROC分析においては、まず、カットオフ値を連続的に変化させたときの、感度と偽陽性率の値を求める。そして、縦軸(Y軸)を感度とし、横軸(X軸)を偽陽性率とするグラフ上に、求めた感度および偽陽性率の値をプロットし、当該プロットした点の中から、感度1、特異度0の点に最も近い点を選択する方法、すなわち(1-感度)2+偽陽性率2が最小になるような感度および特異度の組合せを決定する。このように決定した感度および特異度の組合せに対応するカットオフ値を、最終的なカットオフ値として設定することができる。なお、感度および特異度の組合せの決定の仕方は、前述した(1-感度)2+偽陽性率2が最小になるような組合せに決定するという方法に限定されず、例えば、感度と特異度の積が最大になるような組合せに決定するという方法であってもよいし、(感度+特異度)÷2が最大になるような組合せに決定するという方法であってもよい。
【0038】
差分リスト記憶部122は、ユーザの腸内環境パターンと応答性腸内環境パターンとの間における差分を特定するための情報である。
図5は、差分リスト記憶部122に記憶される差分リストの構成例である。差分リストは、差分ID等の識別情報に紐づけて、差分の内容を含むことができる。差分の内容は、特定の属の菌が不足している/過剰である、特定の代謝物質の量が不足している/過剰である、特定の便中タンパク質が不足している/過剰である、特定の便性状(例えば、水分含量、硬さ、色など)でないこと等で特定することができる。
【0039】
腸内環境変化情報記憶部123は、特定の腸内環境パターンの変化をもたらす行動情報を含む。
図6は、腸内環境変化情報記憶部123に格納される腸内環境変化情報の構成例である。一例として、上述した差分IDに紐づけて対応する行動情報を記憶する。各行動情報は、行動情報IDなどの識別情報を付してもよい。腸内環境パターンの変化とは、例えば特定の腸内細菌を増やすこと/減らすこと、特定の腸内細菌同士の存在比率を調整すること、特定の代謝物質を増やすこと/減らすこと、特定の代謝物質同士の存在比率を調整すること、等又はこれらの組合せが含まれる。
【0040】
行動情報は、特定の腸内環境パターンの変化をもたらすことが知られているものであって、特定の食品を摂取すること、もしくは摂取を控えること等に関する食事行動、特定のサプリメントを摂取すること、もしくは摂取を控えること等に関するサプリメント行動、特定の医薬品を摂取すること、もしくは摂取を控えること等に関する服薬行動、及び、運動量を増やす、睡眠時間を増やす、たばこを控える、ストレスを軽減する、アルコール摂取を控える、等の生活習慣に関する生活習慣行動、が含まれ得るが、これに限られず、腸内環境パターンを変化させる効果を有する行動であれば含まれてよい。特定の腸内環境パターンの変化に対して、効果があることが知られている複数の行動情報が対応付けられてもよい。また行動情報の種類(食事行動、サプリメント行動、服薬行動、生活習慣行動など)を付与してもよい。腸内環境変化情報は、特定の腸内環境パターンの変化に効果があることが明らかになった行動について、随時行動情報を追加することができる。
【0041】
また、より効果が期待できる行動情報に重み付け情報を付与したり、優先順位を付与したりしてもよい。その場合、各行動情報について、過去の成功確率や効率の良さに関する情報を含むと好ましい。過去の成功確率は、当該行動を実行した場合に期待していた腸内環境パターンの変化が生じた確率であり、実行したすべての人を母集団とし、そのうち効果があった人の割合でもよいし、対象ユーザの腸内環境パターンと類似する腸内環境パターンを持つ人を母集団として、そのうち効果があった人の割合でもよい。
【0042】
なお、腸内環境パターンが類似する、とは、任意の基準に基づいて適宜設定することができる。例えば、腸内細菌叢プロファイルの違いを距離として計算した値であるUniFrac distanceの値や、相関係数、ユークリッド距離等を指標とすることもできる。また、腸内細菌叢データ間の距離を統計的手法(例えば、Jensen Shannon Divergence等)に基づいて計算し、続いてクラスタリングを行うことによって(例えば、k-medoid法など)、いわゆる「エンテロタイプ」でグルーピングし、同じエンテロタイプの人を類似する、と定義することもできる。なお、エンテロタイプは、特定の細菌の比率に基づく分類であり、代表的なものとしてバクテロイデス属が優位なバクテロイデスエンテロタイプ、プレボテラ属が優位なプレボテラエンテロタイプ、ルミノコッカス属が優位なルミノコッカスエンテロタイプの3タイプに分類できる場合があることが知られている。
【0043】
また、行動情報の変化効率の良さ、については、当該行動の実施回数・実施期間・摂取量等に対して、期待した腸内環境パターンの変化がどれくらい得られるか、に関する指標である。腸内環境パターンの変化量は、例えば対象の腸内細菌が行動実施前と比較して何割増加/減少したか、といった存在量の増加率/減少率で表すことができる。例えば、行動情報が、「食品Aを1日100g摂取すること」であった場合は、食品Aを摂取した所定期間(例えば1か月)での腸内環境パターンの変化量を測定することで、所定期間あたりの変化効率を算出する。行動情報の効率の良さについても、上記と同様に、実行した人すべてを母集団として平均値等をとってもよいし、対象ユーザに腸内環境パターンが類似する者を母集団としてもよい。
【0044】
さらに、上記の成功確率と変化効率の指標を総合した指標を設定してもよい。例えば双方の指標の平均をとってもよい。また、それぞれの指標に適宜係数をかけて重み付けを変えてもよい。
【0045】
ユーザ情報記憶部124は、ユーザの情報を記憶する。
図7は、ユーザ情報記憶部124に格納されるユーザ情報の構成例である。ユーザ情報は、ユーザIDに紐づけられてよく、またユーザ基本情報とユーザの腸内環境パターン情報とを含むことができる。ユーザ基本情報とは、ユーザの氏名、年齢、性別、住所、職業、出身地などの属性に関する情報や、持病、既往歴、アレルギー、体質(肥満、虚弱など)、処方薬、常用薬等の体調に関する情報、食生活、飲酒、喫煙、運動習慣等の生活習慣に関する情報等を含んでもよい。
【0046】
また、ユーザの腸内環境パターン情報とは、ユーザの便を解析することによって取得したユーザの腸内環境パターン情報であり、サンプリング日とともに記憶される。複数回にわたってサンプリング、解析を行っている場合は、複数セットの腸内環境パターン情報を有することができる。腸内環境パターン情報は、特定の腸内細菌の有無、又は相対存在比率、腸内細菌間のバランス、腸内代謝物質の有無、含有量、代謝物質間のバランス、便中タンパク質、便性状(例えば、水分含量、硬さ、色など)およびこれらの組合せであってよく、他にユーザの糞便サンプルから抽出した遺伝子の配列データ、及び定量データそのものを含んでもよい。また、過去に特定の機能性物質に対するレスポンダー判定を行っている場合に、その結果(レスポンダー・ノンレスポンダー)や、ノンレスポンダーであった場合に提案した行動情報などについても記憶することができる。
【0047】
なお、腸内細菌に関するデータは、ユーザから提供された糞便サンプルから全DNAを抽出し、それらの配列を読み取り、その配列と遺伝子のデータベース(例えば、KEGG)をもとに定量することが可能である。微生物の定量は、例えば、糞便サンプルから全DNAを抽出し、それらの配列を読取り、その配列と16SリボソームRNAデータベース(例えば、SILVA)に登録されている塩基配列を比較することにより行うことができる。腸内細菌の相対存在比は、配列解読の結果、全DNA量が4であり、とあるA属のDNA量が3であり、B属のDNA量が1である場合、A属の相対存在比は0.75となり、B属の相対存在比は0.25となる。また、全DNAを抽出した後に、PCRにより16SリボソームRNA遺伝子のみを増幅し、それらの配列を読取ってもよい。あるいは、全DNAを抽出した後に、定量PCR法により、特定の微生物の遺伝子を増幅することによって、前記特定の微生物の相対定量値または絶対定量値を得てもよい。もしくは、特定の微生物(またはそのタンパク質等)に結合する抗体を用いて微生物量を定量してもよいし、特定の微生物のみが生育可能な選択培地を用いて微生物量を測定してもよい。
【0048】
また、代謝物質またはタンパク質に関するデータは、ユーザの腸内環境中の代謝物質またはタンパク質に関するデータであり、腸内環境中の各化合物の種別及びこれらの定量データを含む。代謝物質は、例えばユーザの糞便サンプルからCE-MS、LC-MS、GC-MS等の質量分析計を備えた分析装置等を用いることにより網羅的に定量することができる。代謝物質またはタンパク質の量は、所定量の便検体中における含量で規定してもよいし、複数の便検体間の相対値とすることもできる。また、HPLCのように質量分析装置を備えない分析装置を用いてもよいし、特定の物質に対する抗体を用いたELISA法や、特定の物質との酵素反応に基づく比色法等により代謝物質またはタンパク質の量を決定してもよい。
【0049】
データ取得部111は、ユーザの腸内環境パターンに関するデータを取得する。データ取得部111は、解析済みの腸内細菌パターン情報をユーザ端末2やサーバ1内、若しくは別のデータサーバを介して入手してもよい。
【0050】
比較部112は、取得したユーザの腸内環境パターンを、特定の機能性物質の応答性腸内環境パターンと比較する。比較部112は、ユーザによって指定された機能性物質について、対応する応答性腸内環境パターンを読み出して比較してもよいし、すべての機能性物質の対応する応答性腸内環境パターンを読み出して比較してもよい。比較部112は、ユーザの腸内環境パターンが、特定の機能性物質の応答性腸内環境パターンに合致している場合は、ユーザは当該機能性物質に対して応答性(レスポンダー)であると判断することができる。一方で、応答性腸内環境パターンに合致していない場合は、非応答性(ノンレスポンダー)であると判断し、さらに差分を抽出する。
【0051】
例えば、ある機能性物質の応答性腸内環境パターンが、A属の腸内細菌の相対存在比が0.5以上であり、かつB属の腸内細菌の相対存在比が0.2以上である、というパターンであり、ユーザの腸内環境パターンにおけるA属の腸内細菌の相対存在比が0.55、B属の相対存在比が0.1であったとすると、当該ユーザの腸内環境パターンは、A属に関する条件は満たしているが、B属に関する条件を満たさない。したがって比較部112は、B属の細菌の相対存在比が不足していること、を差分として見出す。また、応答性腸内環境パターンが、A属の腸内細菌:B属の腸内細菌=1:1~1:2である、というパターンであり、ユーザの腸内環境パターンにおけるA属の腸内細菌:B属の腸内細菌=1:3であったとすると、当該ユーザの腸内環境パターンは、A属の腸内細菌の相対存在比が不足していること、及び/又はB属の腸内細菌が過剰であること、を差分として見出す。
【0052】
比較部112は、差分リスト記憶部122から、比較の結果抽出した差分に対応する差分IDを選択する。例えば、上記の1つ目の例において、B属の細菌の相対存在比が不足していること、が差分である場合は、差分IDとして00003を選択する。また、上記の2つ目の例において、A属の腸内細菌の相対存在比が不足していること、及び/又はB属の腸内細菌が過剰であること、が差分である場合は、差分IDとして00001、及び/又は00004を選択する。比較部112は、抽出した差分を行動選択部113に伝える。
【0053】
行動選択部113は、抽出された差分に基づいて、ユーザの腸内環境パターンを応答性腸内環境パターンに近づけるための行動を選択する。差分が差分IDとして選択されている場合は、当該差分IDに紐づけられている行動情報を選択可能である。1つの差分IDに対して複数の行動情報が登録されている場合や、複数の差分IDが抽出されている場合は、2以上の行動情報を選択することができる。また、選択可能な行動情報の数をあらかじめ設定しておき、設定数よりも多い行動情報がヒットした場合には、設定数以下になるように行動情報を絞り込むこともできる。その場合は、行動情報の中から所定の優先度に応じて順位付けをし、優先順位の高いものから設定数分を選択することができる。
【0054】
行動選択部113は、各行動の成功確率の高いものから、または変化効率が高いものから選択してもよい。また、成功確率と変化効率を総合した指標に基づいて選択してもよい。また、ユーザ等が特定の行動情報の種類(食事行動、サプリメント行動、服薬行動、生活習慣行動など)を指定したときは、当該指定された種類に該当する行動情報だけを選択する。例えば、ユーザが「食事行動」を指定しているときは、「サプリメント行動」や「服薬行動」、「生活習慣行動」は選択しない。行動選択部113は選択した行動情報を情報提供部114に伝える。
【0055】
情報提供部114は、特定の機能性物質に対する応答性判定(レスポンダーか、ノンレスポンダーか)の結果と、ノンレスポンダーの場合には行動選択部113が選択した行動情報とを、ユーザ端末2に提供する。必要に応じて、各行動情報に付加情報を追加してもよい。例えば食事行動である場合は、当該食材が含まれる食品や、食材を使ったレシピ情報、レストラン情報等を追加してもよい。さらに、これらの食材や食品を購入可能なECサイトへのリンクを含んでもよい。また、サプリメント行動や服薬行動である場合は、当該サプリメントや医薬品の用量・用法などの使用上の注意、及び購入可能なECサイトへのリンクなどを含んでもよい。生活習慣行動である場合には、禁煙を支援するアプリの紹介、おすすめの運動の種類やスポーツジムの紹介、睡眠の質を向上させるために有益な情報、当該生活習慣を継続させるコツなどの情報を提供してもよい。
【0056】
<動作フロー>
以下、本発明におけるサーバ1の動作フローについて
図8をもとに説明する。
【0057】
まず、データ取得部111は、ユーザの腸内環境データを取得する(S101)。腸内環境データは、新たにユーザの便をサンプリングして解析を行うことによって取得してもよいし、すでにユーザ若しくはサーバが保有しているデータを取得してもよい。
【0058】
比較部112は、ユーザの腸内環境パターンと、特定の機能性物質にかかる応答性腸内環境パターンとを比較する(S102)。比較部112は、ユーザの腸内環境パターンが、応答性腸内環境パターンに該当している場合(S103=No)、ユーザは当該機能性物質に対するレスポンダーであると判断し、必要に応じてユーザ端末2にその旨の情報を出力するとともに、処理を終了する。一方で、応答性腸内環境パターンに該当しない場合(S103=Yes)、差分を抽出する。差分は、差分リストにおける差分IDとして特定してもよい。
【0059】
行動選択部113は、抽出された差分に基づいて、腸内環境変化情報記憶部123から適切な行動情報を選択する(S104)。すなわち、差分IDに対応付けられた行動情報を選択することができる。情報提供部114は、行動選択部113が選択した行動情報をユーザ端末2に提供する(S105)。必要に応じて、行動情報に関連する付加情報を追加することが好ましい。
【0060】
以上が、本発明の情報提供システムの基本的な説明である。本発明によれば、ユーザの腸内環境データに基づいてユーザが特定の機能性物質の効果を得られるレスポンダーであるか否かを判定し、ノンレスポンダーであった場合であっても、レスポンダーに近づくための行動情報をユーザに提供することができる。ユーザは、提示された行動を採用し、継続することによって自身の腸内環境パターンを変化させ、将来的にレスポンダーになることができる。
【0061】
<変形例1:食事レコメンド機能>
本変形例は、サーバ1が食事選択部をさらに備えている点以外の構成は上記と同様である。
【0062】
本変形例には、特定の機能性物質が食品であり、さらに提案する行動情報が特定の食品を摂取する旨の食事行動であった場合に、双方の食品を含むレシピ情報をさらに提供するものである。すなわち、機能性物質と、当該機能性物質に対してレスポンダーになるための食品とを同時に摂取可能なレシピを提示することができる。
【0063】
食事選択部は、特定の機能性物質と、提案した食事行動が指定する食品とが含まれるレシピを、任意の方法により検索する。例えば、インターネット上において提供されるレシピ情報サイトにアクセスし、材料として所定の食品を含むものを検索してもよい。また、サーバ1において、特定の機能性物質や食事行動に含まれる食品を含むレシピ情報を格納する記憶部をあらかじめ用意し、検索してもよい。食事選択部は、食事情報として、レシピや献立、コース料理メニュー等を提案可能である。すなわち1つの料理において機能性物質である食品と、提案する食事行動である食品とがともに摂取可能なレシピを選択してもよいし、複数の料理からなる献立において、これらの食品が摂取できるような料理の組み合わせであってもよい。
【0064】
情報提供部114は、食事選択部が選択した食事情報を、行動情報に追加して、ユーザへ提供することができる。
【0065】
<変形例2:ノンレスポンダー度判定の推移>
本変形例は、サーバ1がノンレスポンダー度判定部をさらに備える点以外の構成は上記と同様である。
【0066】
ノンレスポンダー度判定部は、ユーザの腸内細菌パターンが、特定の機能性物質の応答性腸内細菌パターンにどれくらい近いかを評価するものであり、一例としてノンレスポンダー度という指標で判定することができる。ノンレスポンダー度の特定方法は特に制限しないが、例えばパーセンテージ等の数字で表現してもよいし、低・中・高など、任意の指標を用いて表現してもよい。また、数値や指標が高いほどレスポンダーに近い(例えば数値が100の時はレスポンダーである)こととしてもよいし、数値や指標が高いほどノンレスポンダーに近い(例えば数値が0の時はレスポンダーである)こととしてもよい。
【0067】
ノンレスポンダー度の評価は、任意の方法により適宜行うことができる。例えば、「A属の菌の相対存在比」について、「相対存在比80」がレスポンダー判断の閾値である場合(80以上であればレスポンダー、80より低い場合はノンレスポンダー)に、80を最大とした百分率をノンレスポンダー度としてもよい(例えば、相対存在比40であればノンレスポンダー度は50%、相対存在比20であればノンレスポンダー度は25%)。また、レスポンダーとノンレスポンダーとを区別する閾値と同様に、ノンレスポンダーの中でさらにいくつか閾値を設定することによってノンレスポンダー度を定義してもよい。例えば50、30などの中間値をノンレスポンダー度判断の閾値として設定し、50~79をノンレスポンダー度高、30~49をノンレスポンダー度中、0~29をノンレスポンダー度低と段階的な評価を行ってもよい。
【0068】
また、応答性腸内細菌パターンが複数の条件(A属の菌の相対存在比とB属の菌の相対存在比と代謝物質Cの量、など)で規定される場合には、条件を満たしている項目の数でノンレスポンダー度を評価してもよい。すなわち、3つの条件のうち2つを満たしている場合は、ノンレスポンダー度が66%である、などとしてもよい。また、それぞれのノンレスポンダー度の平均をとってもよい。
【0069】
ノンレスポンダー度の判定は、比較部112が応答性腸内細菌パターンとの比較を行う際に行うことができる。また、本変形例においては、ノンレスポンダー度の判定結果と、提供された行動情報とを、適宜ユーザ情報記憶部124に格納することが好ましい。したがって、便検体のサンプリングごとに、腸内環境パターン情報とともに、所定の機能性物質のノンレスポンダー度判定結果、及び本システムにおいて提案した行動情報とを記憶しておく。
【0070】
また、本変形例においては、情報提供部114は、過去のノンレスポンダー度判定結果の経過を合わせてユーザ端末2に出力することが好ましい。
図9は、ユーザ端末2に出力する表示例である。図のように、過去の便検体のサンプリング日とともに、ノンレスポンダー度を数値やグラフで表示することで、ユーザがよりレスポンダーに近づいていることを明確に把握することができ、また提案された行動情報の効果を実感することができる。なお、過去の便検体は、ユーザが指定する任意の期間に含まれるもののみを対象としてもよいし、ユーザ情報記憶部124に格納されている全てのものを対象としてもよい。
【0071】
<変形例3:ノンレスポンダー度の比較>
本変形例は、サーバ1がノンレスポンダー度判定部を備える場合の別の変形例である。
本変形例においては、ノンレスポンダーであった機能性物質のうち、上述したノンレスポンダー度に基づいてレスポンダーになりやすいものを選択することができる。まず、同種の機能性物質をグルーピングしてもよい。グルーピングの観点としては例えば、効果が共通又は類似であること(痩せる効果が共通する、便通が良くなる効果が共通する、免疫力が向上する効果が共通する、等)、生物学的または化学的に近いこと(例えば、ビフィズス菌、ブルガリア菌、ヘルベティカス菌を「乳酸菌」グループとする、等)や、食品を適宜カテゴリ分けしたときの同一カテゴリであること(「穀物」、「果物」などのカテゴリ分けや、「主食」、「デザート」などのカテゴリ分け)、または、機能性物質を提供する製造者や販売者などの提供者が同じであること、等を基準にしてもよい。
【0072】
比較部112は、複数の機能性物質についてレスポンダー判定を行い、さらにノンレスポンダーであった機能性物質が複数ある場合にはさらにこれらのノンレスポンダー度を判定する。そして、同一グループ内でノンレスポンダー度を比較し、ノンレスポンダー度が最も高い(レスポンダーに近い)機能性物質を選択することができる。行動選択部113は、ノンレスポンダー度に基づいて選択された機能性物質に対応する差分により行動を選択する。ユーザは、同じグループの機能性物質の中から、最もレスポンダーになりやすいものについて、行動情報の提供を受けることができる。また、行動選択部113は、グループのすべての機能性物質について行動情報を選択し、情報提供部114は、それぞれの機能性物質について、行動情報とともにそのノンレスポンダー度を提供することもできる。ユーザは、ノンレスポンダー度を目安にして、グループの中からレスポンダーになれる可能性が高い機能性物質を選ぶことができる。
【0073】
図10は、本変形例におけるユーザ端末の画面表示例である。一例として複数の乳酸菌についてノンレスポンダー度を判定した場合を記載している。乳酸菌A、B、Cのそれぞれについてノンレスポンダー度の高さをオススメ度(★の数)で表示している。また、乳酸菌Bが最もノンレスポンダー度が高い旨を表示したうえで、乳酸菌Bのレスポンダーになるための行動情報「○○を積極的に摂りましょう」を表示している。なお、画面表示例はこれに限定されない。
【0074】
<変形例4:行動選択の変形例>
本変形例は、行動選択部113がユーザの腸内環境パターンに基づいて、複数の行動情報の中から最もユーザに効果のある行動情報を選択することができるものである。
【0075】
本変形例においては、
図11に示すように、腸内環境変化情報記憶部123において、各行動について期待される効果を得ることのできる第二の応答性腸内環境パターンをさらに記憶しておく。すなわち、「○○を食べる」という行動によって「A属の菌を増やす」という効果を得ることのできる(若しくは得やすい)人に共通する腸内環境パターンを、「第二の応答性腸内環境パターン」として対応付ける。第二の応答性腸内環境パターンとしては、上記で述べたように特定の腸内細菌の有無、及び相対存在比率、腸内細菌間のバランス、腸内細菌由来の代謝物質の有無、含有量、代謝物質間のバランス、およびこれらの組合せであってよい。
【0076】
行動選択部113は、差分00001「A属の菌を増やす」に対応する行動を選択する場合に、複数の行動情報「○○を食べる」、「運動量を上げる」に係る第二の応答性腸内環境パターンを読み出す。そして、ユーザの腸内環境パターンと当該第二の応答性腸内環境パターンとを比較する。ユーザの腸内環境パターンが、特定の行動情報の第二の応答性腸内環境パターンに合致している場合は、ユーザは当該行動情報に対して効果を得やすいと判断することができる。一方で、第二の応答性腸内環境パターンに合致していない場合は、効果を得にくいと判断する。そして、行動選択部113は、複数の行動情報のうち、腸内環境パターンに基づいて、効果を得やすいと判断した行動情報を選択することができる。
【0077】
本変形例によれば、複数の行動情報の中から、ユーザの腸内環境パターンに基づいた絞込が可能となり、よりユーザの体質に合った提案をすることができる。
【0078】
上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができると共に、本発明にはその均等物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0079】
1 サーバ
2 ユーザ端末
3 ネットワーク