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  • 特開-双方向走行中給電システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153070
(43)【公開日】2024-10-28
(54)【発明の名称】双方向走行中給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/40 20160101AFI20241021BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20241021BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20241021BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20241021BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20241021BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241021BHJP
   B60L 53/66 20190101ALI20241021BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20241021BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241021BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20241021BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20241021BHJP
【FI】
H02J50/40
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L3/00 N
B60L7/14
B60L50/60
B60L53/66
B60L58/10
H02J7/00 P
H02J50/80
H02J50/10
H02J7/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066779
(22)【出願日】2023-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】512135274
【氏名又は名称】富士ウェーブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121337
【弁理士】
【氏名又は名称】藤河 恒生
(72)【発明者】
【氏名】横井 行雄
【テーマコード(参考)】
5G503
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA04
5G503AA07
5G503BB02
5G503BB03
5G503CA01
5G503CA11
5G503CC02
5G503DA04
5G503DA07
5G503DA08
5G503DA17
5G503DA18
5G503FA06
5G503GB08
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC02
5H105DD10
5H105EE15
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC27
5H125BA00
5H125BC05
5H125BC21
5H125BC24
5H125CB02
5H125CC06
5H125CD10
5H125DD02
5H125EE51
5H125EE55
(57)【要約】
【課題】走行路側の送電手段から電動車両への給電及び電動車両から走行路側の受電手段への給電を効率化できる双方向走行中給電システムを提供する。
【解決手段】この双方向走行中給電システム1は、走行路側送受電装置2は、走行路Rに沿って設けられ電動車両3との間で無線で給電し給電され得る複数個の走行路側送受電部21と、複数個の走行路側送受電部21から給電され得る走行路側電気二重層キャパシタ22とを有し、電動車両3は、走行路側送受電装置2との間で給電され給電し得る車両側送受電部31と、二次電池32と、車両側送受電部31から給電されて一旦蓄電し得、かつ、駆動モータ3bからの回生電力量が給電されて一旦蓄電し該回生電力量を二次電池32に給電し得、該回生電力量の一部を車両側送受電部31に給電し得る車両側電気二重層キャパシタ33と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路側送受電装置から走行中の電動車両に無線で給電し得、かつ、該走行路側送受電装置に該電動車両で発生した回生電力量の一部を無線で給電し得る双方向走行中給電システムであって、
前記走行路側送受電装置は、
走行路に沿って設けられ前記電動車両に給電し得、かつ、前記電動車両から給電され得る複数個の走行路側送受電部と、
前記複数個の走行路側送受電部から給電され得る走行路側電気二重層キャパシタと、
を有し、
前記電動車両は、
前記走行路側送受電装置から給電され得、かつ、前記走行路側送受電装置に給電し得る車両側送受電部と、
二次電池と、
前記車両側送受電部から給電されて一旦蓄電し得、かつ、駆動モータで発生した回生電力量が給電されて一旦蓄電し該回生電力量を前記二次電池に給電し得、前記二次電池に給電されない該回生電力量の一部を前記車両側送受電部に給電し得る車両側電気二重層キャパシタと、
を有する双方向走行中給電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の双方向走行中給電システムにおいて、
前記走行路側送受電装置は走行路側狭域通信部を有し、前記電動車両は車両側狭域通信部を有し、該走行路側狭域通信部と該車両側狭域通信部は、相互に近づくと無線通信で相手方の位置を検知する双方向走行中給電システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の双方向走行中給電システムにおいて、
前記走行路側送受電装置及び前記電動車両と通信し前記走行路側送受電装置から前記電動車両への給電及び前記電動車両から前記走行路側送受電装置への給電を管理するシステム管理装置を備え、
該システム管理装置は、前記走行路側送受電装置から前記電動車両への給電の電力量と前記電動車両から前記走行路側送受電装置への給電の電力量を相殺して前記電動車両に対する課金情報とする双方向走行中給電システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の双方向走行中給電システムにおいて、
前記走行路側送受電装置及び前記電動車両と通信し前記走行路側送受電装置から前記電動車両への給電及び前記電動車両から前記走行路側送受電装置への給電を管理するシステム管理装置を備え、
前記システム管理装置は、前記電動車両の異常又は前記走行路の異常の情報を受信し、該情報に基づき危険回避情報を送信し得る双方向走行中給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行路側の送電手段から走行中の電動車両に無線(ワイヤレス)で給電し得、かつ、電動車両で発生した回生電力量の一部を無線で走行路側の受電手段に給電し得る双方向走行中給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行路に設けられた送電手段(走行路側の送電手段)から電気自動車などの走行中の電動車両に無線で給電する走行中給電システムが、社会インフラとして実装されることで、その地域のカーボンニュートラル実現に大いなる貢献をすると期待されている(例えば、非特許文献1参照)。この電動車両は、走行路側の送電手段から受電した電力量を二次電池に蓄電して車輪を駆動し、また、下り坂などで回生電力量が発生したときにはそれを二次電池に蓄電する。
【0003】
走行中給電システムの中には、例えば特許文献1及び特許文献2に記載されているように、走行路側の送電手段から電動車両に無線で給電するのに加えて、電動車両で発生した回生電力量によって二次電池の蓄電量が目標上限値を超えるようなときには、回生電力量の一部(余剰電力量)を走行路側の受電手段に無線で給電する双方向走行中給電システムが提案されている。
【0004】
特許文献1の双方向走行中給電システムでは、上り坂の走行路側の送電手段と下り坂の走行路側の受電手段の間に、充放電コントローラにより制御される蓄電手段が設置されている。この蓄電手段は、風力発電システム、太陽光発電パネル、又は系統電源からの電力量も蓄電されるように構成することも可能である。また、特許文献2の双方向走行中給電システムでは、下り坂でない走行路側の複数個の送電手段と下り坂の走行路側の複数個の受電手段の間に、送受電制御装置により制御される共通の蓄電装置が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015―76930号公報
【特許文献2】特開2021―83143号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】堀洋一・横井行雄監修、「電気自動車のモーションコントロールと走行中ワイヤレス給電」、株式会社エヌ・ティー・エス発行、2019年5月17日、p.169―184“走行中給電のためのインフラ技術と国際動向”(高橋俊輔)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、走行路側の送電手段から電動車両への給電及び電動車両から走行路側の受電手段への給電は、走行路側の送電手段又は受電手段と電動車両の位置が重なった短い時間にしか行うことができないため、最大限に効率化することが求められる。しかし、特許文献1及び特許文献2に開示されているような双方向走行中給電システムでは、効率化については考慮されていない。
【0008】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、走行路側の送電手段から電動車両への給電及び電動車両から走行路側の受電手段への給電を効率化できる双方向走行中給電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の双方向走行中給電システムは、走行路側送受電装置から走行中の電動車両に無線で給電し得、かつ、該走行路側送受電装置に該電動車両で発生した回生電力量の一部を無線で給電し得る双方向走行中給電システムであって、前記走行路側送受電装置は、走行路に沿って設けられ前記電動車両に給電し得、かつ、前記電動車両から給電され得る複数個の走行路側送受電部と、前記複数個の走行路側送受電部から給電され得る走行路側電気二重層キャパシタと、を有し、前記電動車両は、前記走行路側送受電装置から給電され得、かつ、前記走行路側送受電装置に給電し得る車両側送受電部と、二次電池と、前記車両側送受電部から給電されて一旦蓄電し得、かつ、駆動モータで発生した回生電力量が給電されて一旦蓄電し該回生電力量を前記二次電池に給電し得、前記二次電池に給電されない該回生電力量の一部を前記車両側送受電部に給電し得る車両側電気二重層キャパシタと、を有する。
【0010】
請求項2に記載の双方向走行中給電システムは、請求項1に記載の双方向走行中給電システムにおいて、前記走行路側送受電装置は走行路側狭域通信部を有し、前記電動車両は車両側狭域通信部を有し、該走行路側狭域通信部と該車両側狭域通信部は、相互に近づくと無線通信で相手方の位置を検知する。
【0011】
請求項3に記載の双方向走行中給電システムは、請求項1又は2に記載の双方向走行中給電システムにおいて、前記走行路側送受電装置及び前記電動車両と通信し前記走行路側送受電装置から前記電動車両への給電及び前記電動車両から前記走行路側送受電装置への給電を管理するシステム管理装置を備え、該システム管理装置は、前記走行路側送受電装置から前記電動車両への給電の電力量と前記電動車両から前記走行路側送受電装置への給電の電力量を相殺して前記電動車両に対する課金情報とする。
【0012】
請求項4に記載の双方向走行中給電システムは、請求項1又は2に記載の双方向走行中給電システムにおいて、前記走行路側送受電装置及び前記電動車両と通信し前記走行路側送受電装置から前記電動車両への給電及び前記電動車両から前記走行路側送受電装置への給電を管理するシステム管理装置を備え、前記システム管理装置は、前記電動車両の異常又は前記走行路の異常の情報を受信し、該情報に基づき危険回避情報を送信し得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る双方向走行中給電システムによれば、走行路側の送電手段から電動車両への給電及び電動車両から走行路側の受電手段への給電を効率化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る双方向走行中給電システムの概念図である。
図2】同上の双方向走行中給電システムの電動車両の走行に伴って給電される電力の受電電圧及び蓄電電圧の様子を示す概略図である。
図3】同上の双方向走行中給電システムの変形例の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の実施形態に係る双方向走行中給電システム1は、図1に示すように、走行路側送受電装置2と電動車両3とシステム管理装置4を備えるシステムである。なお、図1においては、給電を矢印付き実線で示し、制御又は通信を矢印付き破線で示している。また、無線の給電を太い矢印付き実線で示し、無線通信を太い矢印付き破線で示している。
【0016】
走行路側送受電装置2は、走行中の電動車両3に無線で給電し得、かつ、走行路側送受電装置2は、電動車両3で発生した回生電力量の一部(余剰電力量)が無線で給電され得る。走行路側送受電装置2は、走行路側の送電手段であり、かつ、走行路側の受電手段である。無線の給電は、電磁誘導や共振や電界結合などの方式を用いることができる。
【0017】
走行路側送受電装置2は、複数個の走行路側送受電部21と走行路側電気二重層キャパシタ22と走行路側電力制御部23を有している。
【0018】
走行路側送受電部21の各々は、走行路(図では符号Rで示す)に沿って設けられ電動車両3に給電し得る。ここで、本出願で走行路とは、電動車両3がその上を走行するところを言い、例えば、電動車両3が自動車などの場合は高速道路などの道路を言い、電動車両3が鉄道車両などの場合は、レールが敷かれた鉄道を言う。また、走行路側送受電部21の各々は、走行路上に設けられてもよいし、走行路下に埋設されてもよい。
【0019】
走行路側送受電部21の各々は、走行路側送受電器21aを有する(図1参照)。走行路側送受電器21aは、無線の給電の方式に応じて、コイル又は電極板を用いることができる。例えば、無線の給電が電磁誘導や共振などの方式の場合はコイル、無線の給電が電界結合などの方式の場合は電極板を用いることができる。この走行路側送受電器21aを介して、走行路側送受電部21の各々は、電動車両3に給電し得るようにできる。なお、走行路側送受電器21aの長さ(長径の長さ)は、特に限定されることはなく、通常の電動車両3の長さよりも小さくても大きくてもよい。
【0020】
走行路側送受電部21の各々から電動車両3に給電するときは、走行路側送受電部21の各々は、走行路側電力制御部23を介して地域電力網Pから給電されるようにできる。詳細には、走行路側電力制御部23において地域電力網Pの交流の電力を第1AC/DC変換器23aによりDC(直流)に一旦変換し、それから第1DC/AC変換器23bによりAC(交流)に変換して複数個の走行路側送受電器21aに給電する。なお、地域電力網Pは、複数個の走行路側送受電装置2を含むその地域の電力網であり、その交流の周波数は、一般的に、走行路側送受電器21aに流れる交流の周波数よりもかなり低いものである。
【0021】
電動車両3は、車両側送受電部31と二次電池32と車両側電気二重層キャパシタ33を有している。また、電動車両3は、車両側電力制御部34を有し、車両側送受電部31と二次電池32と車両側電気二重層キャパシタ33の以下に述べる給電は、車両側電力制御部34によって制御される。ここで、本出願で電動車両とは、動力源を電気として走行する車両を言い、例えば、電気自動車、電動の鉄道車両(例えば、登山鉄道車両など)を言う。
【0022】
車両側送受電部31は、走行路側送受電装置2から給電され得る。車両側送受電部31は、車両側送受電器31aを有し、それを介して走行路側送受電装置2から給電され得るようにすることができる。車両側送受電器31aは、無線の給電の方式に応じ、また、走行路側送受電器21aに対応して、コイル又は電極板を用いることができる。また、車両側送受電器31aで受電した交流の電力は、車両側電力制御部34においてAC/DC変換器34aによりDC(直流)に変換され、後に詳述する車両側電気二重層キャパシタ33に給電されるようにすることができる。
【0023】
二次電池32は、車両側電力制御部34により蓄電している電力量が検出される。また、二次電池32は、車両側電力制御部34により充電が制御され、また、それにより放電が制御されて車輪3aを駆動する駆動モータ3bに給電する。二次電池32は、例えばリチウムイオン電池などである。
【0024】
車両側電気二重層キャパシタ33は、車両側送受電部31から給電され得、また、電動車両3の減速走行中に駆動モータ3bで発生した回生電力量が給電され得、それらを一旦、蓄電することができる。
【0025】
ここで、車両側送受電部31から給電される電力は、その車両側送受電器31aと複数個の走行路側送受電部21の走行路側送受電器21aとの間の相対位置の変化等により急激に変動する。また、駆動モータ3bで発生した回生電力は、電動車両3の減速状態の変化等により、急激に変動する。二次電池32が化学変化に伴って蓄電を行うのに対し、車両側電気二重層キャパシタ33は、化学変化を伴わない大容量のキャパシタ(コンデンサ)であるため、急激に変動する車両側送受電部31からの給電及び回生電力量の給電に対して、電流値等の制約も少なく、素早く忠実に反応して効率的に蓄電することができる。
【0026】
そして、二次電池32がそのとき蓄電している電力量に応じて、電流値等が車両側電力制御部34によって制御されながら、車両側電気二重層キャパシタ33から二次電池32に給電される。
【0027】
例えば、図2に示すように、車両側送受電部31から給電される電力の受電電圧(詳しくは、AC/DC変換器34aでDCに変換された電力の電圧V34a)は、車両側送受電器31aと複数個の走行路側送受電部21の走行路側送受電器21aとの間の相対位置の変化等により、時間とともに急激に変動する。その変動する電力に素早く忠実に反応して、車両側電気二重層キャパシタ33は、効率的に蓄電して行き、その電圧V33は上昇する。そして、二次電池32は、電流値等が制御されながら車両側電気二重層キャパシタ33から給電されて蓄電して行き、その電圧V32が滑らかな勾配で上昇する。
【0028】
回生電力量については、二次電池32の電力量が上限に達した場合、車両側電気二重層キャパシタ33は、二次電池32に給電されない回生電力量の一部(余剰電力量)を蓄電しておいて、車両側電力制御部34により制御されて上記の車両側送受電部31に給電することができる。詳細には、車両側電気二重層キャパシタ33からの余剰電力量は、車両側電力制御部34においてDC/AC変換器34bにより電力がAC(交流)に変換され、上記の車両側送受電器31aに給電される。車両側送受電部31(詳細には、車両側送受電器31a)は、上記の走行路側送受電装置2に給電することができる。
【0029】
走行路側送受電装置2においては、上記の走行路側送受電部21の各々は、上記の走行路側送受電器21aを介して、電動車両3から給電され得る。走行路側送受電部21の各々に給電された交流の電力は、走行路側電力制御部23において第2AC/DC変換器23cによりDC(直流)に変換され、走行路側電気二重層キャパシタ22に給電されるようにすることができる。
【0030】
ここで、複数個の走行路側送受電部21に給電される電力は、その走行路側送受電器21aと車両側送受電部31の車両側送受電器31aとの間の相対位置の変化等により急激に変動する。走行路側電気二重層キャパシタ22は、車両側電気二重層キャパシタ33と同様に化学変化を伴わない大容量のキャパシタ(コンデンサ)であるため、急激に変動する複数個の走行路側送受電部21からの給電に対して、電流値等の制約も少なく、素早く忠実に反応して効率的に蓄電することができる。
【0031】
そして、走行路側電気二重層キャパシタ22に蓄電された電力量は、第2DC/AC変換器23dにより電力がAC(交流)に変換され、安定的に地域電力網Pに給電されるようにすることが可能となる。つまり、電動車両3の回生電力量は、地域電力網Pの電力構成に組み込まれ、他の電動車両3に給電される電力の一部ともなり得る。こうして、地域電力網Pは、総合的かつ安定的な地域の電力網となり得る。
【0032】
このようにして、以上説明した双方向走行中給電システム1は、電動車両3においては車両側電気二重層キャパシタ33が車両側送受電部31から給電される電力量及び回生電力量を一旦蓄電し、走行路側送受電装置2においては走行路側電気二重層キャパシタ22が電動車両3の回生電力量を一旦蓄電するので、走行路側送受電装置2(走行路側の送電手段及び走行路側の受電手段)から電動車両3への給電及び電動車両3から走行路側送受電装置2への給電を効率化できる。
【0033】
双方向走行中給電システム1は、例えば、50個の走行路側送受電器21aが敷設され、各々の走行路側送受電器21aの長さ(長径の長さ)が40mとし、互いの隙間が無視できる程小さいとする。そうすると、40m×50=2000mの区間に50個の走行路側送受電器21aが敷設されていることになる。
【0034】
そして、走行路側送受電装置2から走行中の電動車両3に給電する場合、各々の走行路側送受電器21aから80kWの電力を送電可能とし、その90%を車両側送受電器31aが受電可能とすると、時速80kmで走行している電動車両3は50個の走行路側送受電器21aを90秒で通過し、その電動車両3には、他の電力ロスがないとすると、50個の走行路側送受電器21aにより1800Whの給電が可能となる。
【0035】
この90秒間の1800Whの電力量を一旦、車両側電気二重層キャパシタ33に蓄電し、それから二次電池32に給電する。
【0036】
そうすると、2000mの区間を電動車両3が時速80kmで移動するのに必要なエネルギーが1800Whの場合には、二次電池32が蓄電している電力量は減少しない。もし必要なエネルギーが1800Whよりも小さい場合には、二次電池32が蓄電している電力量は上昇する。もし必要なエネルギーが1800Whよりも大きい場合には、二次電池32が蓄電している電力量は減少することになるが、給電のない場合に比べて可能な走行距離が延びる。
【0037】
一方、車両側送受電器31aから10kWの回生電力を送電可能とし、その90%を50個の走行路側送受電器21aで受電可能とすると、回生電力量の余剰電力量が発生した場合、時速80kmで走行している電動車両3は50個の走行路側送受電器21aを90秒で通過し、電動車両3から50個の走行路側送受電器21aを介して走行路側電気二重層キャパシタ22に225Whの給電が可能となる。
【0038】
この90秒間の225Whの電力量は走行路側電気二重層キャパシタ22に蓄電される。他の電動車両3についても同様であり、所定のタイミングで走行路側電気二重層キャパシタ22から地域電力網Pに送電することが可能である。
【0039】
次に、双方向走行中給電システム1における走行路側送受電装置2と電動車両3の変形例について説明する。
【0040】
走行路側送受電部21の各々は、走行路側送受電器21aの代わりに、図3に示すように、走行路側送電器21bと走行路側受電器21cを有するようにすることができる。この走行路側送電器21bを介して走行路側送受電部21の各々は、電動車両3に給電し得るようにでき、かつ、この走行路側受電器21cを介して走行路側送受電部21の各々は、電動車両3から給電され得るようにできる。このとき、走行路側受電器21cから上記のように走行路側電力制御部23を介して走行路側電気二重層キャパシタ22に給電される。
【0041】
そして、車両側送受電部31は、車両側送受電器31aの代わりに、車両側受電器31bと車両側送電器31cを有するようにすることができる。この車両側受電器31bを介して車両側送受電部31は、走行路側送受電装置2から給電され得るようにすることができ、かつ、この車両側送電器31cを介して走行路側送受電装置2に給電し得るようにすることができる。
【0042】
次に、走行路側送受電装置2と電動車両3の間の通信(狭域通信)について説明する。この狭域通信のために、走行路側送受電装置2は、走行路側狭域通信部24を有し、電動車両3は、車両側狭域通信部35を有するようにすることができる。走行路側狭域通信部24と車両側狭域通信部35は、相互に近づくと、電磁界や電磁波などによる無線通信で相手方の位置を検知することができ、走行路側送受電装置2から電動車両3に及び電動車両3から走行路側送受電装置2に、より容易に効率的に給電するようにすることができる。また、走行路側送受電装置2は、走行路側狭域通信部24を介して電動車両3の固有のIDを検知することができる。なお、走行路側狭域通信部24は、各々の走行路側送受電部21毎に設けることができ(図1及び図3参照)、又は、複数個の走行路側送受電部21毎に設けることもできる。
【0043】
次に、走行路側送受電装置2とシステム管理装置4の間及び電動車両3とシステム管理装置4の間の通信(広域通信)について説明する。この広域通信のために、走行路側送受電装置2は、走行路側広域通信部25を有し、電動車両3は、車両側広域通信部36を有するようにすることができる。広域通信は、ローカル5Gなどの電磁波を用いた無線通信を用いることができる。
【0044】
システム管理装置4は、電動車両3を固有のIDで管理し、また、走行路側送受電装置2から電動車両3への給電及び電動車両3から走行路側送受電装置2への給電を管理することができる。システム管理装置4には、管理要員を配置しておくことも可能である。
【0045】
例えば、電動車両3に給電が必要な場合、システム管理装置4は、電動車両3から必要な電力量等の情報を受け、走行路側送受電装置2に給電を指示することができる。
【0046】
また、走行路側送受電装置2から電動車両3への給電の後及び電動車両3から走行路側送受電装置2への給電後、システム管理装置4は、その給電の電力量の情報を走行路側送受電装置2及び/又は電動車両3から受信するようにすることができる。システム管理装置4は、走行路側送受電装置2から受信した給電の電力量の情報及び/又は電動車両3から受信した給電の電力量の情報に基づき、走行路側送受電装置2から電動車両3への給電の電力量と電動車両3から走行路側送受電装置2への給電の電力量を相殺して電動車両3に対する課金情報とすることができる。課金情報の具体的な計算方法は、特に限定されるものではないが、例えば、走行路側送受電装置2から電動車両3への給電の電力量は、電動車両3から受信した情報を用い、電動車両3から走行路側送受電装置2への給電の電力量は、走行路側送受電装置2から受信した情報を用い、それらを予め決められた計算式を用いて相殺することが可能である。
【0047】
また、システム管理装置4は、電動車両3の異常又は走行路の異常(異物の存在や事故など)の情報を電動車両3から受信するようにすることも可能である。その情報に基づき、システム管理装置4は、危険回避情報等を当該電動車両3、他の電動車両3又は走行路側送受電装置2などに送信することが可能である。
【0048】
以上、本発明の実施形態に係る双方向走行中給電システムについて説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 双方向走行中給電システム
2 走行路側送受電装置
21 走行路側送受電部
21a 走行路側送受電器
21b 走行路側送電器
21c 走行路側受電器
22 走行路側電気二重層キャパシタ
23 走行路側電力制御部
23a 第1AC/DC変換器
23b 第1DC/AC変換器
23c 第2AC/DC変換器
23d 第2DC/AC変換器
24 走行路側狭域通信部
25 走行路側広域通信部
3 電動車両
3a 車輪
3b 駆動モータ
31 車両側送受電部
31a 車両側送受電器
31b 車両側受電器
31c 車両側送電器
32 二次電池
33 車両側電気二重層キャパシタ
34 車両側電力制御部
34a AC/DC変換器
34b DC/AC変換器
35 車両側狭域通信部
36 車両側広域通信部
4 システム管理装置
P 地域電力網
R 走行路
V32 二次電池の蓄電電圧
V33 車両側電気二重層キャパシタの蓄電電圧
V34a 受電電圧(AC/DC変換器でDCに変換された電力の電圧)
図1
図2
図3