(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153075
(43)【公開日】2024-10-28
(54)【発明の名称】レトルトパウチ詰め加工食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 3/00 20060101AFI20241021BHJP
A23L 7/10 20160101ALI20241021BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20241021BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20241021BHJP
【FI】
A23L3/00 101C
A23L7/10 E
A23L7/109 E
A23L35/00
A23L7/109 C
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062364
(22)【出願日】2024-04-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2023062637
(32)【優先日】2023-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390039963
【氏名又は名称】森産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122574
【弁理士】
【氏名又は名称】吉永 貴大
(72)【発明者】
【氏名】島田 弘美
(72)【発明者】
【氏名】山口 孝之
【テーマコード(参考)】
4B021
4B023
4B036
4B046
【Fターム(参考)】
4B021LA05
4B021LP01
4B021LW01
4B021LW09
4B021MQ01
4B023LE15
4B023LG01
4B023LK07
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4B023LK13
4B023LK15
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4B036LE05
4B036LF15
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4B036LK06
4B036LP18
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4B046LA06
4B046LB11
4B046LC01
4B046LG13
4B046LG15
4B046LG20
4B046LG33
4B046LG60
4B046LP67
4B046LP71
(57)【要約】
【課題】開封時にも炊き立ての米飯類や茹でたての麺類の食感が維持されたレトルトパウチ詰め加工食品、主食と主菜を同時に摂食することが可能なレトルトパウチ詰め加工食品並びにレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法を提供する。
【解決手段】主食が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法であって、主食原料としての糊化前の白米又は糊化前のスパゲッティと、調味液と、還元水あめ8.0~17.6重量%とをレトルトパウチに充填し密封する前処理工程と、密封された前記レトルトパウチを加熱及び加圧することで調理及び殺菌を行うレトルト殺菌工程と、を有するレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主食が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品であって、
前記主食が米飯類又は麺類であり、
さらに、DE値8~40のデンプン分解物を含有するレトルトパウチ詰め加工食品。
【請求項2】
さらに、主菜が充填された、請求項1に記載のレトルトパウチ詰め加工食品。
【請求項3】
前記デンプン分解物が、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトデキストリン、粉あめ、還元水あめ、水あめからなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のレトルトパウチ詰め加工食品。
【請求項4】
前記デンプン分解物が、低糖化還元水あめである、請求項1又は2に記載のレトルトパウチ詰め加工食品。
【請求項5】
前記デンプン分解物の含有量が8.0~17.6重量%である、請求項1又は2に記載のレトルトパウチ詰め加工食品。
【請求項6】
前記米飯類が、白米、黒米、赤米、緑米、玄米、麦、雑穀からなる群から選択された少なくとも1種を含むご飯である、請求項1又は2に記載のレトルトパウチ詰め加工食品。
【請求項7】
前記麺類が、パスタ、ラーメン麺、うどん、素麺からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載のレトルトパウチ詰め加工食品。
【請求項8】
前記加工食品が、カレーライス、ハヤシライス、中華丼、牛丼、豚丼、親子丼、麻婆丼、そぼろ丼、スパゲッティ、ラーメン、うどん、素麺、リゾット、あんかけ焼きそば、煮込みうどん、焼きうどん、おしるこ、ぜんざい、雑煮からなる群から選択された少なくとも1種である、請求項2に記載のレトルトパウチ詰め加工食品。
【請求項9】
主食が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法であって、
主食原料としての米飯類原料又は麺類原料と、DE値8~40のデンプン分解物とをレトルトパウチに充填し密封する前処理工程と、
密封された前記レトルトパウチを加熱及び加圧することで調理及び殺菌を行うレトルト殺菌工程と、
を有するレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法。
【請求項10】
前記前処理工程において、さらに、主菜原料を前記レトルトパウチに充填する、請求項9に記載のレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法。
【請求項11】
前記デンプン分解物が、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトデキストリン、粉あめ、還元水あめ、水あめからなる群から選択された少なくとも1種である、請求項9又は10に記載のレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法。
【請求項12】
前記デンプン分解物が、低糖化還元水あめである、請求項9又は10に記載のレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法。
【請求項13】
前記デンプン分解物の添加量が8.0~17.6重量%である、請求項9又は10に記載のレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法。
【請求項14】
前記米飯類原料が、糊化前の白米、黒米、赤米、緑米、玄米、麦、雑穀からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項9又は10に記載のレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法。
【請求項15】
前記麺類原料が、糊化前のパスタ、ラーメン麺、うどん、素麺からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項9又は10に記載のレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法。
【請求項16】
前記加工食品が、カレーライス、ハヤシライス、中華丼、牛丼、豚丼、親子丼、麻婆丼、そぼろ丼、スパゲッティ、ラーメン、うどん、素麺、リゾット、あんかけ焼きそば、煮込みうどん、焼きうどん、おしるこ、ぜんざい、雑煮からなる群から選択された少なくとも1種である、請求項10に記載のレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主食又は主食と主菜が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レトルトパウチに食品を詰めたレトルトパウチ詰め加工食品が知られている。多くのレトルトパウチ詰め加工食品は、電子レンジで加熱したり、湯煎にかけるなどの短時間の調理をするだけで手軽に食べることができるため、種類も多く消費者からの人気も高い。また、無菌状態で密封されているため常温で長期間保存することができ、災害時の保存食としても利用価値が高い。
【0003】
従来から市販されているレトルトパウチ詰め加工食品のほとんどは、主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物類に分類される食事の構成のうち、カレールー、パスタソース、中華丼の具、牛丼の具などの主菜のみが封入されたものであり、米飯類や麺類などの主食は含まないものであった。米飯類や麺類はもともとデンプン含有量が多く粘性を有するため、レトルトパウチのような形態の容器に詰める食品としては適していないと考えられていたからである。そのため一般的には、ご飯やパスタ等を別途準備し、その上にカレールーやパスタソースなどのレトルトパウチ詰め加工食品をかけていた。しかし食事を摂取する者としては米飯類や麺類といった主食も同時に摂りたいというニーズがある。そのため、レトルトパウチに米飯類や麺類を充填した加工食品が提案されている。
【0004】
例えば、特開2017-175925号公報には、乳蛋白と穀類を含む加熱調理された容器詰め食品であって、ゼラチンをさらに含み、容器詰めされる食品がリゾット、粥、雑炊、チーズ餅又はスープである容器詰め食品が開示されている(特許文献1)。
【0005】
また、特開2022-145413号公報には、ボイル加熱処理及びスチーム加熱処理に供した麺類を、凍結処理に供することにより、冷凍麺類を得る工程と、前記冷凍麺類と、DE値4~18のデンプン分解物を25質量%~40質量%含有する調味液とを充填した容器を加熱殺菌処理に供することにより、容器詰麺類入り加工食品を得る工程とを含む、容器詰麺類入り加工食品の製造方法が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-175925号公報
【特許文献2】特開2022-145413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1のような従来の米飯類や麺類を充填したレトルトパウチ詰め加工食品はレトルトパウチ内部にご飯やスパゲッティなどが残らないように水分含量を高めに設定し流動性を確保しなければならなかった。カレールー、パスタソース、調味液と共に米飯類や麺類を充填する場合も同様である。そのため特許文献1に開示された発明は保存中に米飯類や麺類は水分を過度に吸収し、開封時には米や麺の食感が損なわれるという問題があった。また、特許文献2に記載の発明は、ボイル加熱処理及びスチーム加熱処理に供した麺類を凍結処理し、その後、冷凍保存する必要があり、常温保存できるものではない。また、一般に米飯類や麺類を冷凍処理すると内部の水分が流出するため食感がパサパサになり、炊き立て、茹でたての風味を再現することが難しかった。
【0008】
従って本発明は、開封時に炊き立ての米飯類や茹でたての麺類の食感が維持されたレトルトパウチ詰め加工食品、主食と主菜を同時に摂食することが可能なレトルトパウチ詰め加工食品並びにレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため、デンプン含有食品原料の水分調整の役割を行う原材料について種々検討した結果、デンプン分解物を原材料に加えることで、上記課題を解決することができるとの知見を得た。
【0010】
本発明は係る知見に基づきなされたものであり、主食が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品であって、前記主食が米飯類又は麺類であり、さらに、DE値8~40のデンプン分解物を含有する、レトルトパウチ詰め加工食品を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、主食が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法であって、主食原料としての米飯類原料又は麺類原料と、DE値8~40のデンプン分解物とをレトルトパウチに充填し密封する前処理工程と、密封された前記レトルトパウチを加熱及び加圧することで調理及び殺菌を行うレトルト殺菌工程と、を有するレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、デンプン分解物を原材料の一つとして使用することで、米飯類や麺類の保存期間中の水分の過度な吸収を抑制するため、開封時に炊き立ての米飯類や茹でたての麺類の食感を再現することができる。また、1つのレトルトパウチで、食感が維持された米飯類や麺類などの主食と、おかずとしてのカレールー、パスタソースなどの味付けをするソースと肉・卵・魚介類などの主菜を同時に摂食することができるレトルトパウチ詰め加工食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】レトルトパウチ詰めご飯(ご飯のみ)について各種デンプン分解物が米の食感に及ぼす影響を官能評価により検討した結果を示す図である。
【
図2】レトルトパウチ詰めご飯(ご飯のみ)について各種デンプン分解物が米の外観と風味に及ぼす影響を官能評価により検討した結果を示す図である。
【
図3】レトルトパウチ詰めご飯(ご飯のみ)について各種デンプン分解物が米の食感に及ぼす影響をレオメーター分析評価により検討した結果を示す図である。
【
図4】レトルトパウチ詰めご飯(ご飯のみ)について還元水あめの添加量が米の食感に及ぼす影響を官能評価により検討した結果を示す図である。
【
図5】レトルトパウチ詰めスパゲティ(麺のみ)について還元水あめの添加量が麺の食感に及ぼす影響を官能評価により検討した結果を示す図である。
【
図6】レトルトパウチ詰めペンネ(麺のみ)について還元水あめの添加量が麺の食感に及ぼす影響を官能評価により検討した結果を示す図である。
【
図7】レトルトパウチ詰めカレーご飯について還元水あめの添加量が米の食感に及ぼす影響を官能評価により検討した結果を示す図である。
【
図8】レトルトパウチ詰め中華丼について還元水あめの添加量が米の食感に及ぼす影響を官能評価により検討した結果を示す図である。
【
図9】レトルトパウチ詰め牛丼について還元水あめの添加量が米の食感に及ぼす影響を官能評価により検討した結果を示す図である。
【
図10】レトルトパウチ詰めトマトクリームスパゲッティについて還元水あめの添加量が麺の食感に及ぼす影響を官能評価により検討した結果を示す図である。
【
図11】レトルトパウチ詰めバジルクリームスパゲッティについて還元水あめの添加量が麺の食感に及ぼす影響を官能評価により検討した結果を示す図である。
【
図12】レトルトパウチ詰めボロネーゼスパゲッティについて還元水あめの添加量が麺の食感に及ぼす影響を官能評価により検討した結果を示す図である。
【
図13】レトルトパウチ詰めカレーご飯について還元水あめの添加量が米の食感に及ぼす影響をレオメーター分析評価により検討した結果を示す図である。
【
図14】レトルトパウチ詰め中華丼について還元水あめの添加量が米の食感に及ぼす影響をレオメーター分析により検討した結果を示す図である。
【
図15】レトルトパウチ詰め牛丼について還元水あめの添加量が米の食感に及ぼす影響をレオメーター分析により検討した結果を示す図である。
【
図16】レトルトパウチ詰め(a)トマトクリームスパゲッティ、(b)バジルクリームスパゲッティ、(c)ボロネーゼスパゲッティについて還元水あめの添加量が麺の食感に及ぼす影響をレオメーター分析評価により検討した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
はじめに、本発明の実施形態に係るレトルトパウチ詰め加工食品について説明する。本実施形態に係るレトルトパウチ詰め加工食品は、主食が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品であって、前記主食が米飯類又は麺類であり、さらに、DE値8~40のデンプン分解物を含有する。
【0015】
本実施形態において、主食とは、食品であって、その主たる栄養素が炭水化物であるものをいい、本実施形態において特に好適なのは米飯類又は麺類である。
【0016】
米飯類としては、白米、黒米、赤米、緑米、玄米、麦、雑穀(アワ、ヒエ、キビ、ハト麦、オーツ麦、大豆、小豆、キヌア、そばなど)からなる群から選択された少なくとも1種を含む米飯類、並びにこれらの米飯類に調理を施した米飯類、例えば餅、炒飯、ピラフ、ガーリックライス、バターライス、ケチャップライス、ジャンバラヤ、ガパオライス、ナシゴレン、タコライス、メキシカンライス、ビビンバ、カオパット、ビリヤンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
麺類としては、小麦粉又はその他の穀粉及びその他の原材料を加水混練して製麺したものをいい、例えば、うどん、中華麺(ラーメン麺、焼きそば麺)、皮類、和そば、素麺、冷麦、冷麺、ビーフン、春雨、きしめん、パスタが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
特に、パスタとしては、スパゲッティ、カッペリーニ、リングイネ、フィットチーネ(タリアッテレ)などのロングパスタ;マカロニ、ペンネ、ファルファッレ、リガトーニ、フジッリ(スピラーレ、カール)、コンキリエ(シェル)などのショートパスタ;ラザニア(ラザーニャ)、ニョッキなどのその他のパスタを挙げることができる。
【0019】
本実施形態において、DE値8~40のデンプン分解物を使用する。ここで、デンプン分解物とは、デンプン(加工デンプンを含む)を酵素及び/又は酸を用いて低分子化(加水分解)することにより得ることができる食品材料をいう。「DE値」とは、Dextrose Equivalent値の略称であり、DE値はデンプン分解物の加水分解の程度を示す指標として用いられる。DE値が100に近いほど加水分解が進行し、グルコースに近いことを示すため、それだけ食品に甘味を付与することになる。
【0020】
本実施形態において用いられるデンプン分解物のDE値は、レトルトパウチ詰め加工食品の米飯類及び麺類の適度な食感を維持するという観点から8~40である。本発明において用いられ得るデンプン分解物の具体例としては、マルトトリオース(DE値33)、マルトテトラオース(DE値25)、マルトデキストリン(DE値10~20程度)、粉あめ(DE値20~40程度)、還元水あめ(DE値8~40程度)、水あめ(DE値35~40)等が挙げられ、好ましくはDE値8~40の低糖化還元水あめ、より好ましくはDE値15~20の低糖化還元水あめである。
【0021】
前記還元水あめは、単糖から多糖までの糖アルコールの混合物であり、でん粉を酸や酵素で加水分解することにより得られる水あめを原料とし、水素添加によって水あめのグルコース末端を還元することにより製造される単糖の糖アルコール及び多糖の糖アルコール混合物の総称である。
【0022】
前記還元水あめは、原料となる水あめの糖化度により分類され、糖化度の高い水あめを原料としたものを高糖化還元水あめ(DE値50~65)、糖化度の低い水あめを原料としたものを低糖化還元水あめ(DE値8~40)、中間のものは中糖化還元水あめ(DE値40~50)があり、本発明においては、レトルトパウチ詰め加工食品の米飯類及び麺類の適度な食感を維持するという観点からDE値8~40の低糖化還元水あめを用いることが好ましく、食感に加え風味や外観を考慮すればDE値15~20の低糖化還元水あめを用いることがより好ましい。
【0023】
本実施形態において還元水あめは市販品を使用することができ、例えば、DCP-HL (商標、第一化成社製)を使用することができる。
【0024】
DE値8~40のデンプン分解物の含有量は、米飯類及び麺類の食感を考慮して8.0~17.6重量%であることが好ましい。DE値8~40のデンプン分解物の含有量をかかる範囲に設定することで、柔らかすぎず硬すぎない適度な食感の米飯類及び麺類にすることができる。さらに、この範囲の含有量であれば、食品の風味や外観にも影響を与えない。
【0025】
本実施形態に係るレトルトパウチ詰め加工食品は、本発明の効果を損なわない範囲で、主菜となる食品を使用することができる。本実施形態において、主菜とは、食品であって、その主たる栄養素がタンパク質、脂質、エネルギー、鉄であり、ビタミン・ミネラルなども含む。また、主菜には、肉、魚、大豆、卵のほか、調味料、香辛料も含まれていてもよく、これらの加工調理品、具体的にはカレールー、ハヤシライスルー、パスタソース、ハンバーグソースなどの味付ソースや、ラーメンスープ、リゾットスープ、麺つゆ、鍋つゆなどの調味液、中華丼の具、牛丼の具、豚丼の具、親子丼の具、麻婆丼の具、そぼろ丼の具、あんかけ焼きそばのあん、煮込みうどんの具、焼きうどんの具、おしるこ又はぜんざいの(あんこの)汁、雑煮の具などを挙げることができる。
【0026】
本実施形態に係るレトルトパウチ詰め加工食品は米飯類や麺類の保存期間中の水分の過度な吸収が抑制されるため、開封時に炊き立ての米飯類や茹でたての麺類の食感が維持される。また、1つのレトルトパウチで、米飯類や麺類などの主食と、おかずとしての主菜が混在した状態であっても、米飯類や麺類の食感が損なわれることなく維持されるため、例えば、ご飯とカレールーが一緒になったカレーライスのレトルト食品、ご飯と中華丼の具が一緒になった中華丼のレトルトパウチ詰め加工食品、ご飯と牛丼の具が一緒になった牛丼のレトルトパウチ詰め加工食品や、パスタとパスタソースが一緒になったスパゲッティのレトルトパウチ詰め加工食品など、1つのレトルトパウチで主食と主菜を同時に温めて手軽に食べることができる商品を提供することができる。
【0027】
次に、本発明の実施形態に係るレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法について説明する。本実施形態に係るレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法は、主食が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法であって、主食原料としての米飯類原料又は麺類原料と、DE値8~40のデンプン分解物とをレトルトパウチに充填し密封する前処理工程と、密封された前記レトルトパウチを加熱及び加圧することで調理及び殺菌を行うレトルト殺菌工程と、を有する。
【0028】
前処理工程は、完成品を想定して必要な原料及び調味料や香辛料を予めレトルトパウチに充填し、常法により密封する工程である。
【0029】
米飯類を主食とするレトルトパウチ詰め加工食品とする場合、米飯類原料は、炊飯前すなわち糊化前の白米、黒米、赤米、緑米、玄米、麦、雑穀(アワ、ヒエ、キビ、ハト麦、オーツ麦、大豆、小豆、キヌア、そばなど)、並びにこれらの米飯類原料に調理を施したもの(例えば餅など)からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
糊化前の米飯類原料を使用することで、所望の食感を有する米飯類とすることができる。なお、糊化は後述するレトルト殺菌工程で行われる。
【0031】
麺類を主食とするレトルトパウチ詰め加工食品とする場合、麺類原料は、茹で前すなわち糊化前の麺類を含むことが好ましい。
【0032】
麺類としては、小麦粉又はその他の穀粉及びその他の原材料を加水混練して製麺した生麺又は糊化前の乾燥麺をいい、例えば、うどん、中華麺(ラーメン麺、焼きそば麺)、皮類、和そば、素麺、冷麦、冷麺、ビーフン、春雨、きしめん、パスタが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
特に、パスタとしては、スパゲッティ、カッペリーニ、リングイネ、フィットチーネ(タリアッテレ)などのロングパスタ;マカロニ、ペンネ、ファルファッレ、リガトーニ、フジッリ(スピラーレ、カール)、コンキリエ(シェル)などのショートパスタ;ラザニア(ラザーニャ)、ニョッキなどのその他のパスタを挙げることができる。
【0034】
糊化前の麺類原料を使用することで、所望の食感を有する麺類とすることができる。なお、糊化は後述するレトルト殺菌工程で行われる。
【0035】
本実施形態においては、前記前処理工程において、さらに、主菜原料を前記レトルトパウチに充填することもできる。
【0036】
主菜原料は、食品であって、その主たる栄養素がタンパク質、脂質、エネルギー、鉄であり、ビタミン・ミネラルなども含む。また、主菜原料には、各種の野菜、鳥獣肉、魚介類、海藻、大豆、卵のほか、調味料、香辛料も含まれていてもよい。具体的には所望の加工食品に応じて適宜決定されるが、レトルトパウチを密封した後は原料や調味料を追加することができないため、予めすべての原料を所望の形、大きさに前処理しておく。なお、主菜原料は生鮮品の他、半乾燥品、乾燥品、加熱加工品、塩漬などの下漬加工品であってもよい。
【0037】
本実施形態において、DE値8~40のデンプン分解物を使用する。ここで、デンプン分解物とは、デンプン(加工デンプンを含む)を酵素及び/又は酸を用いて低分子化(加水分解)することにより得ることができる食品材料をいう。「DE値」とは、Dextrose Equivalent値の略称であり、DE値はデンプン分解物の加水分解の程度を示す指標として用いられる。DE値が100に近いほど加水分解が進行し、グルコースに近いことを示すため、それだけ食品に甘味を付与することになる。
【0038】
本実施形態において用いられるデンプン分解物のDE値は、レトルトパウチ詰め加工食品の米飯類及び麺類の適度な食感を維持するという観点から8~40である。本発明において用いられ得るデンプン分解物の具体例としては、マルトトリオース(DE値33)、マルトテトラオース(DE値25)、マルトデキストリン(DE値10~20程度)、粉あめ(DE値20~40程度)、還元水あめ(DE値8~40程度)、水あめ(DE値35~40)等が挙げられ、好ましくはDE値8~40の低糖化還元水あめ、より好ましくはDE値15~20の低糖化還元水あめである。
【0039】
DE値8~40のデンプン分解物は、主食原料、主菜原料と同時にレトルトパウチに充填する。予め主食原料と混合した後にレトルトパウチに充填しても、主食原料、主菜原料と共に混合してからレトルトパウチに充填してもよい。
【0040】
デンプン分解物の添加量は、米飯類及び麺類の食感を考慮して8.0~17.6重量%であることが好ましい。デンプン分解物の添加量をかかる範囲に設定することで、柔らかすぎず硬すぎない適度な食感の米飯類及び麺類にすることができる。さらに、この範囲の含有量であれば、食品の風味や外観にも影響を与えない。
【0041】
レトルトパウチに充填した後、後述するレトルト殺菌工程に供されるが、レトルト殺菌工程の前に、米飯類又は麺類に水分を含浸させるため、30分以上静置することが好ましい。米飯類又は麺類に水分を含浸させることにより、米飯類及び麺類の食感が良好なものとなる。米飯類又は麺類に水分が十分に含浸した後は効果が頭打ちとなるため、含浸工程は6時間以内とすることが好ましい。なお、米飯類原料に調理を施したものや生麺を使用する場合はこの含浸工程は不要である。
【0042】
レトルト殺菌工程は、上述した主食原料、主菜原料、デンプン分解物を充填し密封したレトルトパウチを加熱及び加圧することで調理及び殺菌を行う工程である。
【0043】
加熱及び加圧条件は原料に応じて適宜設定されるが、105~125℃、0.02~0.131MPaで20~50分間とすることが好ましい。
【0044】
レトルト殺菌工程により、主食原料、主菜原料が加熱調理される。また、還元水あめが米飯類や麺類をコーティングし、保存中の米飯類や麺類が水分を過度に吸収することを防止し、開封時にも米飯類や麺類の食感が維持されるようになる。同時に加熱殺菌も行われるため加工食品の長期間の保存も可能となる。
【0045】
食べる際は、レトルトパウチ詰め加工食品をそのまま、又は湯煎、電子レンジ加熱等により温めてから開封して食べることができる。
【実施例0046】
1.デンプン分解物が米の食感や外観・風味に及ぼす影響の検討
(1)食感の官能評価
デンプン分解物が米の食感に及ぼす影響を検討するため、以下の要領で官能評価試験を実施した。米(群馬県産のあさひの夢)を洗米した後、その米30g、還元水あめ(第一化成社製のDCP-HL(商標)、低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品、DE値19.5)33g、水13.2gを混合した後、200ml容レトルトパウチ(チューエツ社製)に充填し、シーラーにて密封した。その後、約30分間米に水を含浸させた後、レトルト殺菌装置(日阪製作所社製のRCS-120/30SPXGS)を用いて、122℃、0.11MPaで20分間加圧加熱殺菌を行い、サンプルを調製した。
【0047】
また、還元水あめ(DCP-HL(商標))に代えて、同量のデキストリン(松谷化学工業社製の難消化デキストリンファイバーソル2(商標)の固形物25gに水を添加して33gに調製したもの、DE値10未満)、水あめ(群栄化学工業社製の特選水あめSS、DE値20~40)、他社還元水あめ(物産フードサイエンス社製のエスイー600(商標)、高糖化還元水あめ)、水を用いて同様にサンプルを調製した。
【0048】
サンプルは、A:デキストリン、B:水あめ、C:還元水あめ(DCP-HL(商標))、D:他社還元水あめ、E:水とし、サンプルCを基準試料とした。そして、サンプル調製後、14日間サンプルを常温で保存した。
【0049】
評価は食品開発室の8名で実施し、米の食感(硬さ、粘性、歯ざわり、噛みごたえ)について基準試料を基に2点試験法で順位を決めた。すなわち、Cの米の食感(硬さ)を基準として、C:A、C:B、C:D 、C:Eで比較した。
【0050】
結果を
図1に示す。食感については、
図1に示すように、還元水あめ(DCP-HL(商標))、及び水あめが良好な食感が得られることが判明した。一方、デキストリンは硬すぎるという評価であり、他社還元水あめと水については柔らかすぎて十分な食感が得られないという評価であった。これらの結果を総合すると、食感の順位は次のとおりであった。
(硬い)A > C (基準)= B > D > E(軟らかい)
【0051】
以上の結果から、DE値8~40のデンプン分解物を含有するレトルトパウチ詰め加工食品が米の良好な食感を維持することができると判明した。
【0052】
(2)外観と風味の官能評価
前述のサンプルA~Eを用いて、米の外観(大きさ、形状、色調、つや、ボリューム感)と風味(基本五味:塩味、甘味、苦味、酸味、旨味)の官能評価を実施した。
図2に、外観と風味の評価結果を示す。外観と風味については、
図2に示すように、サンプルC(還元水あめ、DCP-HL(商標))及びサンプルD(他社還元水あめ)の場合は若干薄黄色がかっていたものの、問題のないレベルであった。一方、サンプルA(デキストリン)、サンプルB(水あめ)の場合は明確な黄色又はオレンジ色に着色してしまい本来のご飯の色とはかけ離れてしまうことが判明した。風味については、サンプルCはほとんど甘さを感じず問題のないレベルであったが、サンプルDはご飯の甘さとは別に還元水あめの甘さを感じた。
【0053】
以上の結果から、還元水あめ(低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品、DE値19.5)は、ご飯の外観や風味に影響を与えず、あらゆるレトルトパウチ詰め加工食品に適用できることが判明した。一方、高糖化還元水あめ、デキストリン、水あめはご飯の着色や甘味が付与されるため、適用できるレトルトパウチ詰め加工食品の種類が一部制限されることが判明した。
【0054】
(3)食感のレオメーター分析評価
前述のサンプルA~Eを用いて、レオメーター(山電社製のRE2-33005C)分析による食感の評価を行った。結果を
図3に示す。
【0055】
横軸は時間(1/100秒)、縦軸は荷重(N)を示し、時間の経過とともにかかる荷重が高いほど米飯が硬いことを示す。
図3に示すように、デキストリンを添加したレトルトパウチ詰めご飯(A)が時間の経過とともに最も荷重が高くなり、次いで還元水あめを添加したレトルトパウチ詰めご飯(C)と水あめを添加したレトルトパウチ詰めご飯(B)、そして他社還元水あめ(D)及び水(E)を添加したご飯という結果が得られた。これは、上記の官能評価試験で得られた食感の順位(A>C=B>D>E)を裏付けるものであった。
【0056】
2.還元水あめの添加量の検討
(1)米飯類、麺類
(1-1)米飯類
表1に示す原料を用いてレトルトパウチ詰めご飯(ご飯のみ)を製造した。その際、添加する還元水あめ(DCP-HL(商標)、第一化成社製の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品)の添加量を0重量%、7.1重量%、8.3重量%、9.5重量%、10.7重量%、12.0重量%、13.1重量%、14.3重量%としたものをそれぞれ製造した。一例として、還元水あめ10.7重量%の場合の配合例を示す。なお、還元水あめの添加量に応じて、原料の水の配合量を調整した。レトルト殺菌の条件は前記1に記載の手順に準じて行った。
【0057】
【0058】
(1-2)麺類
表2に示す原料を用いてレトルトパウチ詰めスパゲッティ(麺のみ)を製造した。その際、添加する還元水あめ(DCP-HL(商標)、第一化成社製の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品)の添加量を0重量%、7.8重量%、10.1重量%、12.6重量%、15.1重量%、17.6重量%、20.1重量%としたものをそれぞれ製造した。一例として、還元水あめ12.6重量%の場合の配合例を示す。なお、還元水あめの添加量に応じて、原料の水の配合量を調整した。レトルト殺菌の条件は前記1に記載の手順に準じて行った。
【0059】
【0060】
表3に示す原料を用いてレトルトパウチ詰めペンネ(麺のみ)を製造した。その際、添加する還元水あめ(DCP-HL(商標)、第一化成社製の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品)の添加量を0重量%、7.8重量%、10.1重量%、12.6重量%、15.1重量%、17.6重量%、20.1重量%としたものをそれぞれ製造した。一例として、還元水あめ10.1重量%の場合の配合例を示す。なお、還元水あめの添加量に応じて、原料の水の配合量を調整した。レトルト殺菌の条件は前記1に記載の手順に準じて行った。
【0061】
【0062】
(2)各種レトルトパウチ詰め加工食品の製造
(2-1)カレーご飯
表4に示す原料を用いてレトルトパウチ詰めカレーご飯を製造した。その際、添加する還元水あめ(DCP-HL(商標)、第一化成社製の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品)の添加量を4.4重量%、6.6重量%、8.8重量%、13.2重量%、17.6重量%、19.8重量%、22.0重量%としたものをそれぞれ製造した。一例として、還元水あめ13.2重量%の場合の配合例を示す。なお、還元水あめの添加量に応じて、原料の水の配合量を調整した。レトルト殺菌の条件は前記1に記載の手順に準じて行った。
【0063】
【0064】
(2-2)中華丼
表5に示す原料を用いてレトルトパウチ詰め中華丼を製造した。その際、添加する還元水あめ(DCP-HL(商標)、第一化成社製の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品)の添加量を4.2重量%、8.5重量%、10.6重量%、12.7重量%、14.8重量%、17.0重量%、21.2重量%としたものをそれぞれ製造した。一例として、還元水あめ12.7重量%の場合の配合例を示す。なお、還元水あめの添加量に応じて、原料の水の配合量を調整した。レトルト殺菌の条件は前記1に記載の手順に準じて行った。
【0065】
【0066】
(2-3)牛丼
表6に示す原料を用いてレトルトパウチ詰め牛丼を製造した。その際、添加する還元水あめ(DCP-HL(商標)、第一化成社製の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品)の添加量を3.2重量%、6.4重量%、8.0重量%、9.6重量%、11.2重量%、12.8重量%、16.0重量%としたものをそれぞれ製造した。一例として、還元水あめ9.6重量%の場合の配合例を示す。なお、還元水あめの添加量に応じて、原料の水の配合量を調整した。レトルト殺菌の条件は前記1に記載の手順に準じて行った。
【0067】
【0068】
(2-4)スパゲッティ(トマトクリームスパゲッティ等)
表7に示す原料を用いてレトルトパウチ詰めトマトクリームスパゲッティを製造した。その際、添加する還元水あめ(DCP-HL(商標)、第一化成社製の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品)の添加量を0重量%、4.2重量%、8.5重量%、12.7重量%、14.8重量%、16.9重量%、21.2重量%としたものをそれぞれ製造した。主菜をバジルクリームパスタソース、ボロネーゼパスタソースにしたものについても同様に製造した。一例として、トマトクリームスパゲッティの還元水あめ12.7重量%の場合の配合例を示す。なお、還元水あめの添加量に応じて、原料の水の配合量を調整した。レトルト殺菌の条件は前記1に記載の手順に準じて行った。
【0069】
【0070】
(3)食感の官能評価
得られた各レトルトパウチ詰め加工食品について、前記1に記載の手順に準じて8名あるいは6名のパネラーにより米飯類又は麺類の食感、風味、外観について官能評価試験を実施した。
【0071】
なお、ご飯のみのレトルトパウチ詰め加工食品は、食感、風味、外観とともにカレー用のご飯としての適性も併せて評価するため、官能評価を実施するにあたり、市販のカレールー(ハウス食品社製カリー屋カレー(商標))を湯煎で5分加熱してご飯にかけたものを評価に用いた。比較として、市販のパックご飯(サトウ食品社製サトウのごはん(商標)新潟県産コシヒカリ 200g)についてもパッケージに記載のとおりに加熱して試験に供した。
【0072】
また、スパゲッティのみ、ペンネのみのレトルトパウチ詰め加工食品は、官能評価を実施するにあたり、市販のパスタソース(日清製粉ウェルナ社製青の洞窟カルボナーラ(商標))を湯煎で3分加熱してスパゲッティ又はペンネにかけたものを評価に用いた。比較として、市販のスパゲッティ(はごろもフーズ社製ポポロスパ(商標)7分結束)と市販のペンネ(コルッシ・グループ社製アントニオデニーロ ペンネリガーテ(商標))についてもパッケージに記載のとおりに茹でて試験に供した。
【0073】
結果を
図4~
図12に示す。官能評価の結果、良好な食感を示す還元水あめの添加量の範囲は、レトルトパウチ詰めご飯では9.5~12.0重量%(
図4)であった。還元水あめの添加量が0重量%又は一定量以下の場合は、食感が柔らかすぎであり、風味も悪くなる傾向が認められた。一方、還元水あめの添加量が一定量以上の場合は、風味は比較的良好であったものの、食感が硬すぎるという評価であった(
図4)。なお、市販品のご飯は、還元水あめを添加しない試験区と同様、カレー用のご飯としては食感が柔らかすぎであり、風味も好ましくないという結果となった(ネガディブコントロール:
図4)。
【0074】
また、スパゲッティ及びペンネでは、良好な食感を示す還元水あめの添加量の範囲は、レトルトパウチ詰めスパゲッティでは10.1~15.1重量%(
図5)、レトルトパウチ詰めペンネでは10.1~12.6重量%(
図6)であった。還元水あめの添加量が0重量%又は一定量以下の場合は、食感が柔らかすぎであり、風味も悪くなる傾向が認められた。一方、還元水あめの添加量が一定量以上の場合は、風味は比較的良好であったものの、食感が硬すぎるという評価であった(
図5、
図6)。なお、市販のスパゲッティやペンネは、従来の一般的な食べ方に従って調理したものであるため、食感及び風味ともに良好であることを確認した(ポジティブコントロール:
図5、
図6)。
【0075】
次に、主食と主菜を同時に封入したレトルトパウチ詰め加工食品について官能評価を実施した。その結果、良好な食感を示す還元水あめの添加量の範囲は、レトルトパウチ詰めカレーご飯は8.8~17.6重量%(
図7)、レトルトパウチ詰め中華丼は10.6~14.8重量%(
図8)、レトルトパウチ詰め牛丼は8.0~11.2重量%(
図8)という結果となった。
【0076】
還元水あめの添加量が0重量%又は一定量以下の場合は、食感が柔らかすぎであり、風味及び外観も悪くなる傾向が認められた。一方、還元水あめの添加量が一定量以上の場合は、風味や外観は比較的良好であったものの、食感が硬すぎるという評価であった(
図7~
図9)。
【0077】
レトルトパウチ詰めトマトクリームスパゲッティは、良好な食感を示す還元水あめの添加量の範囲が8.5~14.8重量%(
図10)、レトルトパウチ詰めバジルクリームスパゲッティも8.5~14.8重量%(
図11)、レトルトパウチ詰めボロネーゼは9.6~16.8重量%(
図12)、という結果になった。
【0078】
還元水あめの添加量が0重量%又は一定量以下の場合は、食感が柔らかすぎであり、風味及び外観も悪くなる傾向が認められた。一方、還元水あめの添加量が一定量以上の場合は、風味や外観は比較的良好であったものの、食感が硬くなる傾向があった(
図10~
図12)。
【0079】
以上のように、主食の種類や主菜の種類によって若干の範囲の相違はあったものの、いずれのレトルトパウチ詰め加工食品も還元水あめの添加量の適正範囲は8.0~17.6重量%の範囲内であることが判明した。
【0080】
(4)食感のレオメーター分析評価
前記官能評価試験に用いた主食と主菜を同封した各レトルトパウチ詰め加工食品の米飯類又は麺類について、レオメーター(山電社製のRE2-33005C)分析による食感の評価を行った。結果を
図13~16に示す。
【0081】
いずれの場合も、還元水あめの添加量が一定量よりも少ない場合は柔らかい食感であり、還元水あめの添加量が一定量よりも多い場合は硬い食感となる傾向が認められ、先述の官能評価の結果を裏付けるものとなった。これらの結果から、還元水あめを原材料の一つとして使用することで、レトルトパウチ詰め加工食品における米飯類や麺類の保存期間中の水分の吸収を制御できることが明らかとなった。これにより、食事のメニューに応じて米飯類や麺類の食感を適当なものに調整したり、摂食する者の好みに応じて食感を調整することも可能である。
前記米飯類が、白米、黒米、赤米、緑米、玄米、麦、雑穀からなる群から選択された少なくとも1種を含むご飯である、請求項1又は2に記載のレトルトパウチ詰め加工食品。
前記加工食品が、カレーライス、ハヤシライス、中華丼、牛丼、豚丼、親子丼、麻婆丼、そぼろ丼、スパゲッティ、ラーメン、うどん、素麺、リゾット、あんかけ焼きそば、煮込みうどん、焼きうどん、おしるこ、ぜんざい、雑煮からなる群から選択された少なくとも1種である、請求項2に記載のレトルトパウチ詰め加工食品。
前記加工食品が、カレーライス、ハヤシライス、中華丼、牛丼、豚丼、親子丼、麻婆丼、そぼろ丼、スパゲッティ、ラーメン、うどん、素麺、リゾット、あんかけ焼きそば、煮込みうどん、焼きうどん、おしるこ、ぜんざい、雑煮からなる群から選択された少なくとも1種である、請求項8に記載のレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法。