(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153078
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ゴム組成物、及びゴム組成物の利用
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20241022BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20241022BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20241022BHJP
C08L 11/00 20060101ALI20241022BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20241022BHJP
C08L 23/18 20060101ALI20241022BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L7/00
C08L9/00
C08L11/00
C08L23/16
C08L23/18
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122114
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(72)【発明者】
【氏名】城 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】井上 聡
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
3D131BA05
3D131BA20
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC15
4J002AC001
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002BB151
4J002BB181
4J002DE146
4J002DJ016
4J002EN028
4J002EN038
4J002EX087
4J002FD016
4J002FD140
4J002FD147
4J002FD150
4J002FD170
4J002FD208
4J002GQ01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】公知のシランカップリング剤をゴム組成物に用いる際に、より低燃費性、グリップ性に優れたタイヤを可能とするゴム組成物を提供する。
【解決手段】ゴム(A)、無機充填材(B)、式(1)で表されるシランカップリング剤(C)、塩基性化合物(D)を含むゴム組成物であり、ゴム(A)が、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレン共重合体ゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)から選択される1種である。
(R1O)3Si-R2-S-C(=O)-C17H35…(1)
[R1は、独立に、好ましくはメチルまたはエチル、R2は、メチル、エチル、プロピル等、C17H35は分枝鎖または直鎖である]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム(A)、無機充填材(B)、式(1)で表されるシランカップリング剤(C)、塩基性化合物(D)を含むゴム組成物であって、
(R1O)3Si-R2-S-C(=O)-C17H35 …(1)
[式(1)中、R1は互いに独立してHまたは(C1~C8)アルキルを意味し、R2は直鎖(C1~C8)二重結合炭化水素または分枝鎖(C1~C8)二重結合炭化水素、飽和(C1~C8)二重結合炭化水素または不飽和(C1~C8)二重結合炭化水素を意味し、アルキル基C17H35は分枝鎖または直鎖である]
【請求項2】
式(1)中、R1がエチルであり、R2がCH2CH2CH2であり、かつアルキル基C17H35が直鎖のシランカップリング剤である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
上記ゴム(A)が、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレン共重合体ゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)から選択される1種である、又は2種以上である、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
ゴム(A)100重量部に対して、無機充填材(B)を10~150重量部含有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
更に、加硫剤を含有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のゴム組成物を架橋してなる架橋物。
【請求項7】
請求項5に記載のゴム組成物を架橋してなるタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物および、ゴム組成物の利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、低燃費性、制動性に優れたシリカ配合タイヤを始めとし、防振ゴムや各種ゴムロールなど様々なシリカ配合ゴム製品が普及しつつある。しかしながら、シリカ配合ゴム組成物はコンパウンド粘度が著しく上昇するため、シランカップリング剤を配合することにより粘度の上昇を緩和する手法が一般的に取られている。また、シランカップリング剤は、シリカ表面のシラノールと反応することによりシリカ同士の相互作用を低減し、ゴムの損失正接や動的弾性率を下げることが知られている。
【0003】
現在、シランカップリング剤の中でも、低燃費タイヤ用途ではポリスルフィド系カップリング剤が多用されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、公知のシランカップリング剤をゴム組成物に用いる際に、より低燃費性、グリップ性に優れたタイヤを可能とするゴム組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意検討の結果、 ゴム(A)、無機充填材(B)、式(1)で表されるシランカップリング剤(C)、塩基性化合物(D)を含むゴム組成物が、上記課題を解決できることを見出した。
(R1O)3Si-R2-S-C(=O)-C17H35 …(1)
[式(1)中、R1は互いに独立してHまたは(C1~C8)アルキルを意味し、R2は直鎖(C1~C8)二重結合炭化水素または分枝鎖(C1~C8)二重結合炭化水素、飽和(C1~C8)二重結合炭化水素または不飽和(C1~C8)二重結合炭化水素を意味し、アルキル基C17H35は分枝鎖または直鎖である]
【0007】
また、本発明は以下のように記載することができる。
項1. ゴム(A)、無機充填材(B)、式(1)で表されるシランカップリング剤(C)、塩基性化合物(D)を含むゴム組成物であって、
(R1O)3Si-R2-S-C(=O)-C17H35 …(1)
[式(1)中、R1は互いに独立してHまたは(C1~C8)アルキルを意味し、R2は直鎖(C1~C8)二重結合炭化水素または分枝鎖(C1~C8)二重結合炭化水素、飽和(C1~C8)二重結合炭化水素または不飽和(C1~C8)二重結合炭化水素を意味し、アルキル基C17H35は分枝鎖または直鎖である]
項2. 式(1)中、R1がエチルであり、R2がCH2CH2CH2であり、かつアルキル基C17H35が直鎖のシランカップリング剤である、項1に記載のゴム組成物。
項3. 上記ゴム(A)が、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレン共重合体ゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)から選択される1種である、又は2種以上である、項1または2に記載のゴム組成物。
項4. ゴム(A)100重量部に対して、無機充填材(B)を10~150重量部含有することを特徴とする項1~3のいずれかに記載のゴム組成物。
項5. 更に、加硫剤を含有することを特徴とする項1~4のいずれかに記載のゴム組成物。
項6. 項5に記載のゴム組成物を架橋してなる架橋物。
項7. 項5に記載のゴム組成物を架橋してなるタイヤ。
【発明の効果】
【0008】
本発明者らは、ゴム組成物中において、特定のシランカップリング剤(C)と塩基性化合物(D)を組み合わせて用いることにより、低燃費性、グリップ性に優れたタイヤを可能とすることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ゴム組成物
本発明のゴム組成物は、ゴム(A)、無機充填材(B)、式(1)で表されるシランカップリング剤(C)、塩基性化合物(D)を含むゴム組成物であって、
(R1O)3Si-R2-S-C(=O)-C17H35 …(1)
[式(1)中、R1は互いに独立してHまたは(C1~C8)アルキルを意味し、R2は直鎖(C1~C8)二重結合炭化水素または分枝鎖(C1~C8)二重結合炭化水素、飽和(C1~C8)二重結合炭化水素または不飽和(C1~C8)二重結合炭化水素を意味し、アルキル基C17H35は分枝鎖または直鎖である]
【0010】
ゴム(A)
本発明に係るゴム組成物に含有されるゴム(A)は、特に限定されるものではなく、天然ゴムであっても、合成ゴムであってもよい。また、合成ゴムとしても、特に限定されるものではないが、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ニトリルゴム(NBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などのジエン系ゴム;ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレンゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、フッ素ゴム(FKM)などのオレフィン系ゴム;シリコーンゴム(Q);ウレタンゴム(AU)などを挙げることができる。
【0011】
上記ゴム(A)は、どのような重合方法によって製造されたものでもよく、乳化重合により製造されたゴムであっても、溶液重合によって製造されたゴムであってもよい。また、上記ゴムは、分子末端が変性された、いわゆる末端変性ゴムであってもよい。
【0012】
上記ゴム(A)は、それぞれ単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
中でも、式(1)で表されるシランカップリング剤の反応性の観点から、上記ゴム(A)は、ジエン系ゴムであることがより好ましい。とりわけ、上記ゴムは、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)、およびエチレン-プロピレンゴム(EPDM)からなる群より選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。
【0014】
本発明のゴム組成物におけるゴム(A)の含有量は、特に限定されないが、例えば、ゴム組成物全体に対して、20~80質量%であればよい。
【0015】
無機充填剤(B)
本発明に係るゴム組成物は、無機充填剤(B)を含むものである。
【0016】
無機充填材(B)としては、ゴム組成物の混練作業時に通常添加されるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、湿式シリカ、乾式シリカおよび水酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1つを好適に用いることができる。これらの無機充填材(B)を用いることにより、ゴムの補強性をさらに向上させることができるという効果を得ることができる。中でも、シランカップリング剤との反応性の観点から、湿式シリカが無機填材(B)として用いられることが特に好ましい。また、上記湿式シリカ、乾式シリカおよび水酸化アルミニウムのBET比表面積は20~300m2/gであることが好ましく、50~250m2/gであることがより好ましく、100~250m2/gであることがさらに好ましい。上記無機充填材(B)のBET比表面積が20m2/gであれば、無機充填材(B)とゴム(A)とを混ぜ合わせたときの、ゴムの補強性に優れ、ゴムの耐摩耗性が向上する。BET比表面積が300m2/g以下であれば、無機充填材(B)とゴム(A)とを混ぜ合わせたときの、ゴムの粘度上昇を抑えることができ、無機充填材(B)とゴムとを、より均一に混練できる。
【0017】
本発明に係るゴム組成物に含有される無機充填材(B)の含有量はこれに限定されるものではないが、ゴム(A)100重量部に対して、10~150重量部であることが好ましく、20~120重量部であることがより好ましく、60~120重量部であることがさらに好ましい。
【0018】
式(1)で表されるシランカップリング剤(C)
本発明に係るゴム組成物には、式(1)で表されるシランカップリング剤(C)を含有する。
(R1O)3Si-R2-S-C(=O)-C17H35 …(1)
[式(1)中、R1は互いに独立してHまたは(C1~C8)アルキル、好ましくはメチルまたはエチルを意味し、R2は直鎖(C1~C8)二重結合炭化水素または分枝鎖(C1~C8)二重結合炭化水素、飽和(C1~C8)二重結合炭化水素または不飽和(C1~C8)二重結合炭化水素、好ましくはCH2、CH2CH2、CH2CH2CH2、CH2CH2CH2CH2、CH(CH3)、CH2CH(CH3)、C(CH3)2、CH(C2H5)、CH2CH2CH(CH3)、CH2CH(CH3)CH2を意味し、アルキル基C17H35は分枝鎖または直鎖である]
【0019】
本発明に用いる式(1)で表されるシランカップリング剤(C)においては、式(1)中、R1がエチルであってよく、R2がCH2CH2CH2であってよく、かつアルキル基C17H35が直鎖((CH2)16CH3)であってよい。
【0020】
式(1)で表されるシランカップリング剤(C)としては、例えば、下記に例示するシランカップリング剤を上げることができる。
【0021】
(CH3O)3Si-CH2-S-C(=O)-C17H35、
(CH3O)3Si-CH2CH2-S-C(=O)-C17H35、
(CH3O)3Si-CH2CH2CH2-S-C(=O)-C17H35、
(CH3O)3Si-CH2CH2CH2CH2-S-C(=O)-C17H35、
(CH3O)3Si-CH2CH2CH2CH2CH2-S-C(=O)-C17H35、
(CH3CH2O)3Si-CH2-S-C(=O)-C17H35、
(CH3CH2O)3Si-CH2CH2-S-C(=O)-C17H35、
(CH3CH2O)3Si-CH2CH2CH2-S-C(=O)-C17H35、
(CH3CH2O)3Si-CH2CH2CH2CH2-S-C(=O)-C17H35、または、
(CH3CH2O)3Si-CH2CH2CH2CH2CH2-S-C(=O)-C17H35。
【0022】
式(1)で表されるシランカップリング剤(C)は、補助塩基の存在で、適当な溶媒中で、式(2)(R1O)3Si-R2-SHに相応するメルカプトシランをステアリン酸塩化物と反応させ、生成した固体残渣から濾別し、溶媒を留去することにより製造することができる。
【0023】
式(1)で表されるシランカップリング剤(C)の製造に用いる、式(2)(R1O)3Si-R2-SHのメルカプトシランとしては、以下の化合物を例示することができる。
【0024】
(CH3O)3Si-CH2-SH、
(CH3O)3Si-CH2CH2-SH、
(CH3O)3Si-CH2CH2CH2-SH、
(CH3O)3Si-CH2CH2CH2CH2-SH、
(CH3O)3Si-CH2CH2CH2CH2CH2-SH、
(CH3CH2O)3Si-CH2-SH、
(CH3CH2O)3Si-CH2CH2-SH、
(CH3CH2O)3Si-CH2CH2CH2-SH、
(CH3CH2O)3Si-CH2CH2CH2CH2-SH、または、
(CH3CH2O)3Si-CH2CH2CH2CH2CH2-SH。
【0025】
式(1)で表されるシランカップリング剤(C)の製造に用いる、補助塩基としてトリエチルアミンまたは別のアミンを使用してもよい。溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素や、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素や、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素や、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素や、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒や、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶媒や、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒や、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒や、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホン系溶媒等が例示される。また、溶媒はこれらの1種類または2種類以上を用いてもよい。
【0026】
塩基性化合物(D)
本発明に係るゴム組成物には、塩基性化合物(D)を含むものである。
【0027】
塩基性化合物(D)としては、特に制限されないが、第1級アミン化合物(d-1)、第2級アミン化合物(d-2)、及び第3級アミン化合物(d-3)等を例示することができる。なお、本発明の塩基性化合物(D)としては、後述するシランカップリング剤は含まないものとする。
【0028】
第1級アミン化合物(d-1)としては、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、1,2-ジメチルプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、イソアミルアミン、tert-アミルアミン、3-ペンチルアミン、n-アミルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、2-オクチルアミン、tert-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-ノニルアミン、n-アミノデカン、n-アミノウンデカン、n-ドデシルアミン、n-トリデシルアミン、2-トリデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ペンタデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-ヘプタデシルアミン、n-オクタデシルアミン、n-オレイルアミン、ベンジルアミン、2-フェニルエチルアミン、3-フェニルプロピルアミン、エタノールアミン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、等の直鎖又は分岐炭化水素基を有するアルキルアミン等を例示することができる。
【0029】
また、脂環式アミンであるシクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロオクチルアミンや、芳香族アミンであるアニリン等も例示することができる。さらに、3-イソプロポキシプロピルアミン、イソブトキシプロピルアミン、モルフォリン等のエーテルアミンも例示することができる。
【0030】
第2級アミン化合物(d-2)としては、N,N-ジプロピルアミン、N,N-ジブチルアミン、N,N-ジペンチルアミン、N,N-ジヘキシルアミン、N,N-ジペプチルアミン、N,N-ジオクチルアミン、N,N-ジノニルアミン、N,N-ジデシルアミン、N,N-ジウンデシルアミン、N,N-ジドデシルアミン、N,N-ジステアリルアミン、N-メチル-N-プロピルアミン、N-エチル-N-プロピルアミン、N-プロピル-N-ブチルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、(3-(ブチルアミノ)プロピル)トリメトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミン、
等のジアルキルモノアミン、およびピペリジン等の環状アミンを例示することができる。
【0031】
第3級アミン化合物(d-3)としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、キヌクリジン、ジメチルアミノエタノール、ピリジン、(3-(ジメチルアミノ)プロピル)トリメトキシシラン、(3-(ジエチルアミノ)プロピル)トリメトキシシラン等を例示することができる。
【0032】
さらに、本発明では、ひとつの化合物中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物(d-4)も用いることができる。ジアミン化合物(d-4)としては、エチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジメチル‐1,3‐プロパンジアミン、N,N’‐ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、N,N-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、N,N’-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、N,N-ジエチル-1,4-ブタンジアミン、N,N’-ジエチル-1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、1,6-ヘキサンジアミン、N,N-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、イミダゾール、N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン(プロトンスポンジ)、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等を例示することができる。
【0033】
また、本発明の塩基性化合物(D)として、上述したもの以外に、ジエチレントリアミン、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-о-トリルグアニジン、1,2,3-トリフェニルグアニジン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミン等を例示することができる。
【0034】
本発明のゴム組成物においては、塩基性化合物(D)として、上述したものを単独で、または複数を組み合わせ用いてもよい。
【0035】
中でも、塩基性化合物(D)として、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、キヌクリジン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-о-トリルグアニジン、1,2,3-トリフェニルグアニジン、ヘキサメチレンテトラミンが好ましく、1,3-ジフェニルグアニジンがより好ましい。
【0036】
本発明のゴム組成物における塩基性化合物の配合量は、ゴム100質量部に対して、0.1~10質量部であればよく、0.1~5質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが特に好ましく、0.5~3質量部であることがさらに好ましく、0.5~1.5質量部であることが最も好ましい。
【0037】
式(1)で表されるシランカップリング剤(C)以外のシランカップリング剤
本発明のゴム組成物には、式(1)で表されるシランカップリング剤(C)以外に、通常ゴムに配合されるシランカップリング剤を組み合わせて配合してもよい。式(1)で表されるシランカップリング剤(C)以外のシランカップリング剤として、例えば、ビニル系有機珪素化合物、アルキル系有機珪素化合物、エポキシ系有機珪素化合物、メタクリル系有機珪素化合物、(保護化)メルカプト系有機珪素化合物、(ポリ)スルフィド系有機珪素化合物、及びそれらの縮合物から少なくとも一種を含有してもよい(以下、これらの有機珪素化合物を「他の有機珪素化合物」と総称する場合がある)。
【0038】
本発明のゴム組成物では、他の有機珪素化合物、即ち、ビニル系有機珪素化合物、アルキル系有機珪素化合物、エポキシ系有機珪素化合物、メタクリル系有機珪素化合物、(保護化)メルカプト系有機珪素化合物、(ポリ)スルフィド系有機珪素化合物、及びそれらの縮合物から選択される少なくとも一種を含有する場合には、無機充填材100質量部に対して0.1~20質量部を配合することが好ましく、0.5~15質量部を配合することがより好ましく、0.5~10質量部とすることが更に好ましく、0.5~5.0質量部とすることがより更に好ましい。
【0039】
本発明のビニル系有機珪素化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、トリクロロビニルシラ等が例示される。
【0040】
本発明のアルキル系有機珪素化合物としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトシキシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が例示される。
【0041】
本発明のエポキシ系有機珪素化合物としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が例示される。
【0042】
本発明のメタクリル系有機珪素化合物としては、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が例示される。
【0043】
本発明の(ポリ)スルフィド系有機珪素化合物としては、式(3)で表されるポリスルフィド系シランカップリング剤が例示され、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが特に好ましい。
(R3-O)3-m(R3)m-Si-R4-Sl-R4-Si-(R3)m(O-R3)3-m・・・(3)
(式(3)中、R3は独立して炭素数1~18のアルキル基、CaH2a+1O-((CH2)bO)cで表されaは1~18、bは1~6、cは1~18であるポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル基から選択され、R4は炭素数1~9のアルキレン基又は二価のフェニル基、lは1~9、mは0、1、又は2の整数である。)
【0044】
本発明の(保護化)メルカプト系有機珪素化合物としては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等の、化合物としてメルカプト基を有しているメルカプト系有機珪素化合物、及び、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-プロピオニルチオプロピルトリメトキシシラン等の化合物としてはメルカプト基を有していない(メルカプト基が保護されている)有機珪素化合物であって、熱、薬剤等を加えられることにより、後発的にメルカプト基を有することになる保護化メルカプト系有機珪素化合物を例示することができる。
【0045】
本発明の(保護化)メルカプト系有機珪素化合物としては、以下式(4)で表される化合物であることが好ましい。
R5
n(R6)3-n-Si-R7-SH・・・(4)
R5は、それぞれ独立して、炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~6のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~3のアルキル基である。
R6は、それぞれ独立して、アルコキシ基であり、好ましくは炭素数1~8のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数1~3のアルコキシ基である。
R7は、二価の炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~18の二価の炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~4のアルキレン基である。
nは、0、1または2である。
【0046】
併用される他の有機珪素化合物を具体的に例示すると、前記式[(3)で表される化合物に相当する株式会社大阪ソーダ製のカブラス2とカブラス4、デグサ社製の、前記カブラス-2タイプに相当するSi-75、前記カブラス-4タイプに相当するSi-69、下記式(5)で表されるSi-363、モメンティブ社製の、前記カブラス-4タイプに相当するA-1289、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランであるA-189、3-オクタノイルチオ-プロピルトリエトキシシランであるNXT、式(6)で表されるNXT-LowV、前記カブラス-4タイプに相当する信越化学社製のKBE-846、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独又は混合して使用することもできる。
【0047】
【0048】
【0049】
また、本発明の有機珪素化合物、及びビニル系有機珪素化合物、アルキル系有機珪素化合物、エポキシ系有機珪素化合物、メタクリル系有機珪素化合物、(保護化)メルカプト系有機珪素化合物、(ポリ)スルフィド系有機珪素化合物、及びそれらの縮合物から少なくとも一種は、それらの合計質量がシリカ系充填材100質量部に対し30質量部を超えないことが好ましい。
【0050】
本発明のゴム組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、上記の他に、通常ゴム工業で用いられる配合剤を使用できる。例えば、加硫剤、ステアリン酸などの加工助剤、チタネート系などのカップリング剤、フェニル-α-ナフチルアミンやN-フェニル-N’ -(1、3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミンなどの老化防止剤、カーボンブラック、炭酸カルシウムなどの充填剤、スルフェンアミド系架橋促進剤、亜鉛華(酸化亜鉛)などの架橋促進(助)剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘着付与剤、スコーチ防止剤等を使用できる。
【0051】
かかる加硫剤としては、ゴム組成物の混練作業時に通常添加されるものであれば特に限定されるものではないが、硫黄、セレン、有機過酸化物、モルホリンジスルフィド、チウラム系化合物およびオキシム系化合物から選択される少なくとも一つであることがより好ましい。
【0052】
本発明に係るゴム組成物に含有される上記加硫剤の含有量も特に限定されるものではないが、ゴム100重量部に対して、0.1~20重量部であることが好ましく、0.2~15重量部であることがより好ましく、0.5~10重量部であることがさらに好ましい。
【0053】
上記加硫剤の含有量が、ゴム100重量部に対して、0.1重量部以上であることにより、ゴムを好適に架橋することができるため好ましい。また上記加硫剤の含有量が、ゴム100重量部に対して、20重量部以下であることにより、ゴム状弾性を保つことが可能であるため好ましい。
【0054】
スルフェンアミド系架橋促進剤としては、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N-第三ブチル-2-ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N-第三ブチル-ジ(2-ベンゾチアゾール)スルフェンイミド等が挙げられる。
【0055】
本発明のゴム組成物における架橋促進(助)剤の配合量は、ゴム100質量部に対して
0.1~15質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、3~9質量部であることが特に好ましい。架橋促進(助)剤の配合量とは、架橋促進剤及び架橋促進助剤に該当するものの合計配合量であり、架橋促進剤及び架橋促進助剤を両方使用する場合には、それらの合計配合量を表す。
【0056】
加工助剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの高級脂肪酸アミド;オレイン酸エチルなどの高級脂肪酸エステル、ステアリルアミン、オレイルアミンなどの高級脂肪族アミンなどが挙げられる。
【0057】
本発明のゴム組成物における加工助剤の配合量は、ゴム100質量部に対して、例えば、300質量部以下、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。
【0058】
軟化剤としては、カルナバワックス、セレシンワックスなどの石油系ワックス;エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールなどのポリグリコール;ワセリン、パラフィン、ナフテンなどの脂肪族炭化水素;シリコーン系オイルなどが挙げられる。
【0059】
本発明のゴム組成物における軟化剤の配合量は、ゴム100質量部に対して、例えば、300質量部以下、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、特に好ましくは30質量部以下である。
【0060】
本発明のゴム組成物における老化防止剤の配合量は、ゴム100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0061】
本発明のゴム組成物は、更にカーボンブラックを含有してもよい。カーボンブラックとしては、以下のものに限定されないが、例えば、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが挙げられる。
【0062】
カーボンブラックの配合量は、ゴム100質量部に対して、0.5~100質量部含有することが好ましく、1~90質量部含有することがより好ましく、2~80質量部含有することが特に好ましい。
【0063】
ゴム組成物の製造方法
以下に本発明に係るゴム組成物の製造方法について説明する。
【0064】
本発明に係るゴム組成物の製造方法は、上記無機充填剤を、上記ゴムに混練する第1混練工程を含んでいればよい。本発明に係るゴム組成物の製造方法は、更に、任意で、上記第1混練工程で得られた混練物に加硫剤を混練する第2混練工程、成形工程および架橋工程から選ばれる少なくとも1つの工程を含んでいてもよい。
【0065】
第1混練工程
第1混練工程では、上記無機充填剤と上記式(1)で表されるシランカップリング剤(C)を、上記ゴムに混練して、本発明のゴム組成物を得る。
【0066】
本第1混練工程は、加硫剤を混練する第2混練工程の前に行うことが好ましい。すなわち、本第1混練工程では、上無機充填剤および上記式(1)で表されるシランカップリング剤(C)を、加硫剤を混練する前の工程にて、上記ゴムに混練する。
【0067】
本第1混練工程では、上無機充填剤および上記式(1)で表されるシランカップリング剤(C)を、80~250℃で混練することが好ましく、80~200℃で混練することがより好ましい。かかる温度範囲で上記成分を混練することにより、混練物をゲル化やスコーチさせること無く無機充填剤等を均一に分散せしめ好適に各成分を混練することができる。また、本第1混練工程では、加硫剤が添加されていないため、架橋の形成を気にすることなく、比較的高温で混練を行うことが可能となる。本第1混練工程の混練時間は特に制限はないが、例えば1分~1時間である。
【0068】
本第1混練工程における混練には、通常ゴム工業にて使用されるロール、加圧ニーダー、インターミキサー、バンバリーミキサーなどの各種混合機械を用いることができる。
【0069】
第2混練工程
第2混練工程では、上記第1混練工程で得られた混練物に上記塩基性化合物(D)と加硫剤を混練して、加硫剤を添加後の組成物、すなわち、架橋用ゴム組成物を得る。本第2混練工程では、上記第1混練工程で得られた混練物に上記加硫剤を100℃以下で混練することが好ましい。これにより、上記加硫剤により架橋が形成されるのを防ぐことができる。本第2混練工程の混練時間は特に制限はないが、例えば1分~1時間である。
【0070】
本第2混練工程における混練には、通常ゴム工業にて使用されるロール、加圧ニーダー、インターミキサー、バンバリーミキサーなどの各種混合機械を用いることができる。
【0071】
成形工程
成形工程では、第2混練工程で調製された架橋用ゴム組成物を、カレンダーロール、プレスなどにより意図する形状に成形する。
【0072】
架橋工程
架橋工程では、上記成形工程で成形された成形体を、好ましくは120~230℃で、1分~3時間加熱して架橋物を得る。また、架橋の際には金型を用いても良い。
【0073】
なお、成形工程と、架橋工程とは、別個の工程としてもよいし、同時に進行する1つの工程としてもよい。
【0074】
ゴム組成物の利用
上記のようにして、本発明のゴム組成物を架橋してなる架橋物は、ゴム製品として様々な用途に利用することができる。それゆえ、ゴム組成物を架橋してなる架橋物も本発明に含まれる。
【0075】
かかる架橋物の形状は特に限定されるものではなく、タイヤ、チューブ、ベルト、ホース、工業用品などとして利用することができる。
【0076】
本発明のゴム組成物を架橋してなる架橋物は、上述したように、ヒステリシスロスが小さいため、例えば、タイヤとして用いたときに、タイヤ走行時のエネルギーロスを小さくすることができ、転がり抵抗を低減させることができる。それゆえ、とりわけ、タイヤ(特にトレッド部分)などの動的に使用されるゴム部品で好適に使用することができる。
【0077】
【実施例0078】
(合成例)式(1)で表されるシランカップリング剤の製造((EtO)
3
Si-(CH
2
)
3
-S-C(=O)-C
17
H
35
の製造)
石油エーテル(沸点範囲50~70℃)1300ml中の3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン98.66gの溶液に、5℃でトリエチルアミン48.15gを添加した後、加熱可能な滴下漏斗を用いてステアリン酸塩化物125.35gを滴加した。90分還流で加熱した後、冷却した懸濁液を濾過し、フィルターケーキを石油エーテルで二回再洗浄し、得られた濾液をまとめ、溶剤を除去した。1H-NMR分析により同定される式(1)で表されるシランカップリング剤186.71gを得た。物性値を以下に示す。
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ3.8(q、J=6.8Hz、6H)、2.9(t、J=7.2Hz、2H)、2.5(t、J=8.0Hz、2H)、1.7-1.6(m、4H)、1.4-1.2(m、28H)、1.2(t、J=6.8Hz、9H)、0.9(t、J=6.8Hz、3H)、0.8-0.6(m、2H)
【0079】
〔ゴム組成物の製造〕
250ccバンバリーミキサータイプのアタッチメントBR-250を備えたラボプラストミル10C100(東洋精機株式会社製)にて混練試験を行った。装置温度は100℃のオイル循環加熱とし、ミキサーのロータ回転速度は80rpm一定とした。配合はゴム100gベースにて試験を行った。手順はゴム成分を30秒間素練りした後、表1の配合(I)に示される薬剤を添加し、30秒間混練した。次いで表1の配合(II)に示される薬剤を添加して3分間混練後、混練物を排出した。尚、実施例・比較例の有機珪素化合物の量は、実施例・比較例における有機珪素化合物中の珪素量が同じになるように調整した。また、実施例・比較例で添加する硫黄の量は系内の硫黄量が同じになるように調整した。排出した混練物は室温の6インチロールにて冷却後、表1の配合(III)に示される架橋剤成分を添加し6分間混練して、約2mmの厚みのシート(未架橋シート)を得た。翌日、残りのコンパウンドを160℃で20分間熱プレス架橋し、試験用サンプル(架橋シート)を得た。
【0080】
<動的粘弾性試験>
試験用サンプル(架橋シート)から幅4mm×長さ25mm×厚み2mmの試験片を打ち抜き、株式会社ユービーエム製Rheogel-4000にて、チャック間距離20mm、初期歪10%、動振幅1%、10Hzの加振条件下で、tanδを測定した。なお測定温度範囲は60℃で一定とした。
【0081】
<加工性試験>
未架橋シートを東洋精機製作所製ムーニー粘度計AM-3にセットし、JIS K6300に従い125℃にてL型ロータを用い、ML1+4とスコーチ時間(t5)を測定した。
【0082】
以下に実施例及び比較例で用いた配合剤を示す。
*1 JSR株式会社製 SL552
*2 東ソーシリカ株式会社製 Nipsil AQ(BET比表面積215m2/g)
*3 日本石油株式会社製 Sunthene415
*4 日油株式会社製 ステアリン酸さくら
*5 大内新興化学工業株式会社製 ノクラック6C
*6 株式会社大阪ソーダ製 CABRUS-2((ポリ)スルフィド系有機珪素化合物)
*7 堺化学工業株式会社製 酸化亜鉛2種
*8 大内新興化学工業株式会社製 1,3-ジフェニルグアニジン
*9 大内新興化学工業株式会社製 ノクセラーCZ
*10 細井化学工業株式会社製 コロイド硫黄
【0083】
【0084】
実施例1、2、比較例1で得られた試験用サンプル(架橋シート)について、動的粘弾性試験を行った結果を表2に示す。
【0085】
【0086】
実施例1、実施例2および比較例2で得られた試験用サンプル(未架橋シート)について、加工性試験を行った結果を表3に示す。
【0087】
表2に示される通り、本願発明の有機珪素化合物を用いた実施例1、2は、最も汎用されているポリスルフィド系有機珪素化合物を用いた比較例1と比較して、0℃のtanδは大きくグリップ性も優れることが示唆され、60℃のtanδが小さく燃費性に優れることが示唆された。通常、60℃のtanδの値が小さくなると、0℃のtanδの値も小さくなる傾向があるが、本願発明の有機珪素化合物を用いた実施例1、2は、グリップ性と燃費性の両方で優れる点でも好ましい。
本発明にある有機珪素化合物を使用することにより、グリップ性、低燃費性に優れたゴム組成物およびゴム材料を提供することができる。従って、特にタイヤのトレッドや防振ゴム、ベルトなどの動的に使用されるゴム部品の製造には好適である。