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特開2024-153141摩擦攪拌接合装置及び接合ツールの保持方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153141
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】摩擦攪拌接合装置及び接合ツールの保持方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20241022BHJP
   B23Q 3/12 20060101ALI20241022BHJP
   B23B 31/02 20060101ALI20241022BHJP
   B23B 31/107 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B23K20/12 344
B23Q3/12 Z
B23B31/02 601Z
B23B31/107 C
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066799
(22)【出願日】2023-04-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(71)【出願人】
【識別番号】305022598
【氏名又は名称】株式会社プロテリアルプレシジョン
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石黒 幸一
(72)【発明者】
【氏名】宮部 昇三
(72)【発明者】
【氏名】玉木 豊
(72)【発明者】
【氏名】平野 聡
【テーマコード(参考)】
3C016
3C032
4E167
【Fターム(参考)】
3C016FA13
3C032DD01
4E167BG06
4E167BG22
4E167DC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】接合ツールを固定具により接合ツールホルダに固定する摩擦攪拌接合装置において、固定具の固着が生じ難い摩擦攪拌接合装置及び接合ツールの保持方法を提供する。
【解決手段】接合ツールホールド部とショルダとプローブから構成する接合ツールを目標回転速度で回転させながら被接合部材に目標深度まで挿入し、前記被接合部材の挿入部およびその近傍を軟化させながら前記接合ツールを進行させて前記被接合部材を摩擦攪拌接合する摩擦攪拌接合装置であって、前記接合ツールホールド部を接合ツールホルダの挿入部に挿入して、前記接合ツールホールド部の所定の位置に設けた少なくとも1つのすり鉢形状のくぼみで形成する固定部において、前記固定部の底面部の円周または前記固定部の斜面部に、前記接合ツールホルダに係止された固定具の接触部を局部的に接触させて前記接合ツールを前記接合ツールホルダに保持することを特徴とする。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合ツールホールド部とショルダとプローブから構成する接合ツールを目標回転速度で回転させながら被接合部材に目標深度まで挿入し、前記被接合部材の挿入部およびその近傍を軟化させながら前記接合ツールを進行させて前記被接合部材を摩擦攪拌接合する摩擦攪拌接合装置であって、
前記接合ツールホールド部を接合ツールホルダの挿入部に挿入して、前記接合ツールホールド部の所定の位置に設けた少なくとも1つのすり鉢形状のくぼみで形成する固定部において、前記固定部の底面部の円周または前記固定部の斜面部に、前記接合ツールホルダに係止された固定具の接触部を局部的に接触させて前記接合ツールを前記接合ツールホルダに保持することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項2】
請求項1に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記固定部の底面部の円周の1点または前記固定部の斜面部の1点に、前記固定具の接触部を点接触させて前記接合ツールを前記接合ツールホルダに保持することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項3】
請求項1に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記固定部の底面部の円周または前記固定部の斜面部に、前記固定具の接触部を線接触させて前記接合ツールを前記接合ツールホルダに保持することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項4】
請求項1に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記固定具は、円錐形状または半球形状または円錐台形状の先端部と側面部にねじ山構造を有する胴部とが結合した複合体であり、
中心が前記固定部の底面部の中心に対して前記接合ツールホルダの挿入部の筒底面側にずれた上底面を有する円柱形状で前記接合ツールホルダに配設されて側面部にねじ山構造を有する貫通孔に、前記固定具の胴部のねじ山が接続することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項5】
請求項4に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記固定具の頂部は、前記貫通孔を貫通し、前記固定具の先端部の頂部が前記接合ツールホールド部の固定部の頂部に接触しない位置において最大締め付けトルクに到達するように、前記固定具の頭部をスクリュードライバーまたはレンチ等回転工具で右回りにまたは左回りに締め付けることを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項6】
請求項5に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記固定具の前記先端部と前記胴部の接合部位を示す接合部または前記固定具の先端部の斜面部の何れかが前記接触部となり、
前記接合部が前記接触部となる場合は、前記接触部が前記固定部の前記斜面部に点接触し、
前記固定具の先端部の斜面部が前記接触部となる場合は、前記接触部が前記固定部の底面部の外周部に点接触することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項7】
請求項4に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記被接合部材の材質、厚みを含む接合条件または/および被接合部材を固定するクランプ部材を含む作業環境に応じて、前記固定部の配設数と前記貫通孔の直径および前記固定具の直径を決定することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項8】
接合ツールを固定具により接合ツールホルダに固定する接合ツールの保持方法であって、
接合ツールホールド部を前記接合ツールホルダの挿入部に挿入し、
前記接合ツールホールド部の所定の位置に設けた少なくとも1つのすり鉢形状のくぼみで形成する固定部において、前記固定部の底面部の円周または前記固定部の斜面部に、前記固定具の接触部を局部的に接触させて前記接合ツールを接合ツールホルダに係止させた固定具により、前記接合ツールホルダに保持することを特徴とする接合ツールの保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被接合部材同士を摩擦攪拌接合により接合する摩擦攪拌接合装置の接合ツールの構成とその取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円柱状の接合ツールを回転させて発生する摩擦熱で被接合材料を軟化させ、その部分を攪拌することで被接合材料同士を接合する摩擦攪拌接合(FSW:Friction Stir Welding)は、材料以外の素材を用いないため、疲労強度が高く、材料も溶融しないことから溶接変形(ひずみ)の少ない接合が可能であり、航空機や自動車のボディなど、幅広い分野での応用が期待されている。
【0003】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には、「一方の端面に開口する孔を有するホルダと、前記ホルダの前記孔の内部に設けられたショルダ部品と、前記ショルダ部品に設けられた撹拌ピン部品と、を有し、前記ショルダ部品は、内壁に螺旋状の溝が設けられた孔を有し、前記撹拌ピン部品は、側面に、前記ショルダ部品の孔の内壁に設けられた螺旋状の溝に適合する溝を有し、一方の端部が、前記ショルダ部品の、前記ホルダ側とは反対側の端面から突出する撹拌ピンと、前記撹拌ピンの他方の端部が接続され、前記撹拌ピンの断面寸法よりも大きい断面寸法を有し、前記ショルダ部品の、前記ホルダ側の端部に設けられたヘッドと、を有する摩擦撹拌接合ツール」が開示されている。(特許文献1の請求項1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-32635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、接合ツールは、先端部が平面形状のボルトで平坦面を締め付けることで接合ツールホルダに保持されている。(特許文献1の図1及び段落[0022]等)
単に、接合ツールを接合ツールホルダに保持するという点においては、特許文献1に記載された保持方法で問題ない。
【0006】
しかしながら、この保持方法では、接合ツールを回転させて被接合部材に挿入し、連続して接合を繰り返し実施すると、ボルトのねじ部とツールホルダのねじ部との間にかじりや固着する事象が生じ、ボルトを外し難くなることを確認した。
【0007】
これにより、接合ツールを交換するときに作業性が悪くなる等の問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、接合ツールを固定具により接合ツールホルダに固定する摩擦攪拌接合装置において、固定具の固着が生じ難い摩擦攪拌接合装置及び接合ツールの保持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、接合ツールホールド部とショルダとプローブから構成する接合ツールを目標回転速度で回転させながら被接合部材に目標深度まで挿入し、前記被接合部材の挿入部およびその近傍を軟化させながら前記接合ツールを進行させて前記被接合部材を摩擦攪拌接合する摩擦攪拌接合装置であって、前記接合ツールホールド部を接合ツールホルダの挿入部に挿入して、前記接合ツールホールド部の所定の位置に設けた少なくとも1つのすり鉢形状のくぼみで形成する固定部において、前記固定部の底面部の円周または前記固定部の斜面部に、前記接合ツールホルダに係止された固定具の接触部を局部的に接触させて前記接合ツールを前記接合ツールホルダに保持することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、接合ツールを固定具により接合ツールホルダに固定する接合ツールの保持方法であって、接合ツールホールド部を前記接合ツールホルダの挿入部に挿入し、前記接合ツールホールド部の所定の位置に設けた少なくとも1つのすり鉢形状のくぼみで形成する固定部において、前記固定部の底面部の円周または前記固定部の斜面部に、前記固定具の接触部を局部的に接触させて前記接合ツールを接合ツールホルダに係止させた固定具により、前記接合ツールホルダに保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接合ツールを固定具により接合ツールホルダに固定する摩擦攪拌接合装置において、固定具の固着が生じ難い摩擦攪拌接合装置及び接合ツールの保持方法を実現することができる。
【0012】
これにより、接合ツールを交換する等、接合ツールを抜き取るときの作業効率を向上することができる。
【0013】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1に係る摩擦攪拌接合装置の全体概要を示す図である。
図2A】接合ツールを接合ツールホルダに挿入し固定した状態を示す図である。(固定部が1点の場合)
図2B】接合ツールを接合ツールホルダに挿入し固定した状態を示す図である。(固定部が2点の場合)
図3A】接合ツールホールド部の構成を示す図である。(上面図)
図3B】接合ツールホールド部の構成を示す図である。(側面図)
図4A】すり鉢形状の固定部を示す図である。
図4B】すり鉢形状の固定部を示す図である。
図5】固定具の構成を示す図である。
図6A】固定具の先端部形状を示す図である。
図6B】固定具の先端部形状を示す図である。
図6C】固定具の先端部形状を示す図である。
図7】固定具と固定部が接触した状態を示す図である。
図8】本発明の実施例2に係る固定具と固定部が接触した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例0016】
図1から図7を参照して、本発明の実施例1に係る摩擦攪拌接合装置及び接合ツールの保持方法について説明する。
【0017】
図1は、本実施例の摩擦攪拌接合装置1の全体概要を示す図である。
【0018】
本実施例の摩擦攪拌接合装置1は、図1に示すように、主要な構成として、装置本体2と、Z軸上下動駆動機構部3を介して装置本体2に接続される主軸支持部4と、主軸支持部4により保持される主軸ホルダ15と、主軸ホルダ15により保持される接合ツールホルダ5と、接合ツールホルダ5により保持される接合ツール6とを備えて構成されている。
【0019】
Z軸上下動駆動機構部3には、図1に例示するように、例えばボールスクリュー、リニアガイドなどが用いられ、Z軸上下動駆動モータ17により装置本体2に対して主軸支持部4をZ軸方向(上下方向)に駆動させる。
【0020】
接合ツール6はショルダ部7およびプローブ部(接合ピン)8で構成され、主軸16を介して、主軸モータ14に連結されている。主軸モータ14は、接合ツール6を所定方向に回転させる。
【0021】
装置本体2は、Z軸上下動駆動機構部3を介して主軸支持部4を支持し、装置本体2に搭載(付属)された制御部(制御装置)11から主軸モータ14に駆動信号を付与して接合ツール6を回転させながら接合線に沿って進行させる。つまり、装置本体2は、主軸支持部4と、主軸ホルダ15と、接合ツールホルダ5を保持し、接合ツール6を回転させると共に、接合ツール6を図1のX軸方向およびZ軸方向に移動させる。
【0022】
接合ツール6を所定の回転数で回転させながら、載置台10上に載置された被接合部材9(9a,9b)表面の接合線上にショルダ部7とプローブ部8とを押し付けることにより摩擦熱を発生させて被接合部材9を軟化させ、ショルダ部7とプローブ部8とを被接合部材9に必要量挿入し、当該回転数を保持することで塑性流動が生じ、挿入部が攪拌される。接合ツール6を引き抜く、又は移動することで攪拌部(接合部)が冷却され、被接合部材9は接合される。
【0023】
主軸ホルダ15は、主軸モータ14と、主軸モータ14に直結した主軸16と主軸16に直結した接合ツール6から構成し、接合ツール6を所定の回転速度を示す目標回転速度で回転しながら被接合部材9(第1の被接合部材9aと第2の被接合部材9bとを付け合せたもの)の接合線(第1の被接合部材9aと第2の被接合部材9bとを突き合せた部位を示す線)に目標とする深度を示す目標深度まで挿入し、その位置において、接合ツール6近傍の被接合部材9の温度を示す接合温度が所望の値に上昇するまで入熱処理を行い、その後、接合線に沿って所定の進行速度を示す目標進行速度で接合ツール6を摩擦攪拌接合終端部まで進行させて被接合部材9を摩擦攪拌接合する。
【0024】
なお、図1では、接合ツールホルダ5及び接合ツール6が、主軸ホルダ15及び主軸支持部4、Z軸上下動駆動機構部3を介して装置本体2に接続(保持)される構成を示しているが、これに限定されるものではなく、例えば、Z軸上下動駆動機構部3のみを介して装置本体2に接続(保持)される構成や、他の可動手段を介して装置本体2に接続(保持)される構成、接合ツールホルダ5及び接合ツール6が直接装置本体2に接続(保持)される構成、或いは、図1の構成に、さらに接合ツールホルダ5と装置本体2の間にC型フレームを設ける構成、多軸ロボットアームを有する装置本体2に接続(保持)される構成なども本実施例の範囲に含むものとする。
【0025】
また、ショルダ部7とプローブ部(接合ピン)8とが同一である接合ツール(つまりプローブを有さず、ショルダのみ)であっても良く、また、ショルダ部7が回転しない構造であっても良い。
【0026】
装置本体2には、摩擦攪拌接合装置1の動作を制御する制御部(制御装置)11が設置(付属)されている。制御部(制御装置)11は、接合ツール6による接合条件を決定する接合条件信号やZ軸上下動駆動機構部3による接合ツール6の鉛直方向(Z方向)の保持位置(接合ピン8の挿入量)を決定する保持位置決定信号などの接合パラメータ(FSW接合条件)を記憶する記憶部(図示せず)を備えている。なお、制御部11は、制御装置として装置本体2とは別に構成してもよい。
【0027】
また、装置本体2には、X軸方向に駆動可能なX軸前後駆動機構部12が設けられており、X軸前後駆動モータ13により装置本体2の上部をX軸方向に設けられたリニアガイドのレールに沿って移動させることで、接合ツールホルダ5及び接合ツール6をX軸方向(接合方向)へ移動させることができる。
【0028】
図2A及び図2Bを用いて、接合ツール6(ショルダ部7及びプローブ部8)の接合ツールホルダ5への固定方法について説明する。図2Aは、接合ツール6を接合ツールホルダ5に挿入し固定した状態を示す図であり、固定部が1点の場合を示している。図2Bは、接合ツール6を接合ツールホルダ5に挿入し固定した状態を示す図であり、固定部が2点の場合を示している。
【0029】
接合ツール6(ショルダ部7及びプローブ部8)は、固定具(止めネジ)22によって接合ツールホルダ5に着脱可能に保持されている。例えば、最初に接合ツール6を接合ツールホルダ5に保持する際には、接合ツール6の接合ツールホール部19を接合ツールホルダ5の挿入部18に挿入して、接合ツールホールド部19の所定位置に配設された固定部20を固定具22で保持する。接合ツール6のプローブ部8が摩耗したり損傷したり、他の被接合部材9を摩擦攪拌接合するために接合ツール6の型式を変えたりするときは、固定具22を外して接合ツール6を接合ツールホルダ5の挿入部18から抜き取り、新たな接合ツール6を接合ツールホルダ5に挿入して、固定部20を固定具22で保持することになる。
【0030】
本発明では、従来技術(特許文献1)のように、固定具の先端部を平面にして平坦面の固定部に当接して面接触で保持するのではなく、固定具22を固定部20に局部的に接触(点接触または線接触)することにより接合ツール6を接合ツールホルダ5に保持するものである。以下、詳細に説明する。
【0031】
図2A及び図2Bに示すように、接合ツール6(ショルダ部7及びプローブ部8)は、接合ツールホールド部19を接合ツールホルダ5の挿入部18に、接合ツールホールド部19の筒底面が接合ツールホルダ5の筒底面に接触するまで挿入して、接合ツールホールド部19の所定の位置に配設され少なくとも1つ以上の固定部20を固定具22で保持する構造となっている。
【0032】
本発明においては、接合ツールホルダ5に係止された固定具22と固定部20とを平坦面接触とせず、局部的に接触(点接触または線接触)する構造とする。
【0033】
図3Aから図4Bを用いて、接合ツールホールド部19及び固定部20について説明する。
【0034】
図3Aは、接合ツールホールド部19の構成を示す上面図である。図3Bは、接合ツールホールド部19の構成を示す側面図である。図4A及び図4Bは、すり鉢形状の固定部20を示す図である。
【0035】
本発明においては、固定部20の形状を、底面部23から頂部25に向かって側面が平坦面ではなく斜面(斜面部24)となるすり鉢形状とする。図4A及び図4Bに示すように、円錐形状または半球形状となるようにする。側面が斜面(斜面部24)であれば、円錐形状及び半球形状以外に、頂部25が平坦の円錐台形状であってもよい。加工作業面の観点から、円錐形状または半球形状が好適である。
【0036】
図5に固定具22の構造を示し、図6Aから図6Cに固定具22の先端部形状を示す。
【0037】
固定具22は、接合ツールホールド部19の固定部20に入り込む先端部27と、ねじ山構造を有する胴部26と、頂部30により構成する。先端部27は、頂部30に向かって狭くなるような斜面(斜面部29)を有する円錐形状または円錐台形状または半球形状とする。
【0038】
頂部30は、右回りまたは左回りして接合ツールホルダ5に配設したねじ山構造を有する貫通孔21にねじ山接続するように、スクリュードライバーやレンチ等の回転工具で締め付けられる構造とする。
【0039】
固定具22で固定部20を保持する方法について詳細に説明する。
【0040】
図7は、固定具22と固定部20が接触した状態を示す図である。図7は、固定具22の先端部27と胴部26との接合部位を示す接合部が接触部33となり、固定部20の斜面部に局部的に接触(点接触または線接触)することで、接合ツール6を接合ツールホルダ5に保持するケースである。
【0041】
このケースでは、接触部33は固定部20の底面部より深く固定部20に入り込み、固定部20の斜面部に接触部33が局部的に接触(点接触または線接触)する。なお、貫通孔21の底面部の中心軸32は固定部20の頂部25の中心軸31と一致しないように、接合ツールホールド部19の挿入部18の筒底面側に若干ずらす。このような貫通孔21に固定具22をねじ山接続で、最大締め付けトルクに到達するように、スクリュードライバーやレンチ等の回転工具で固定具22を締め付ける。
【0042】
これにより、最大締め付けトルクに到達したときには、接触部33は固定部20の斜面を接合ツールホールド部19の筒底面側に押し付けて接合ツール6を接合ツールホルダ5に保持し、接触部33と反対側にはクリアランス(間隙)34が生じる。
【0043】
なお、貫通孔21の上底面の中心は、固定部20の頂部25の中心部より接合ツールホールド部19の筒底面側にずらすものであって、逆に、貫通孔21の上底面の中心を固定部20の頂部の中心部より接合ツールホールド部19の筒底面と反対側にずらすと、接触部33は接合ツールホールド部19の筒底面側と反対側のショルダ部7側で固定部20の斜面部に接触部が局部的に接触(点接触または線接触)することとなり、接合ツールホールド部9を接合ツールホルダ5の挿入部18から引き出す方向に力が働くこととなり好ましくない。
【実施例0044】
図8を参照して、本発明の実施例2に係る摩擦攪拌接合装置及び接合ツールの保持方法について説明する。
【0045】
図8は、本実施例の固定具22と固定部20が接触した状態を示す図であり、実施例1(図7)の変形例に相当する。
【0046】
本実施例(図8)は、固定具22の先端部27の斜面部29が接触部となり、固定部20の底面部の外周部に局部的に接触(点接触または線接触)することで、接合ツール6を接合ツールホルダ5に保持するケースである。
【0047】
このケースでは、実施例1(図7)のように固定具22の先端部27が固定部20に深く入り込むことはなく、接触部33が固定部20の底面部の外周部に局部的に接触(点接触または線接触)した位置が固定具22に最大締め付けトルクが発生することになる。
【0048】
なお、このケースも、貫通孔21の上底面の中心部32は固定部20の頂部の中心部31より接合ツールホールド部19の筒底面側にずらす必要がある。理由は図7の場合と同様である。
【0049】
固定部20の配設数と固定具22の上底面の直径について説明する。通常は、固定部20は1つ配設し、そこを固定具22で保持すればよい。しかしながら、被接合部材9の材質が固いものや、厚みが厚い場合などは、さらに強く保持する必要がある。その方法としては、貫通孔21の上底面の直径及び固定具22の胴部26の直径を大きくすることが考えられる。
【0050】
しかしながら、固定具22の直径を大きくすると接合ツールホルダ5の強度低下が生じる場合や、寸法上の物理的な制約があり被接合部材9をクランプする部材等との干渉などの問題で太い接合ツールホルダ5が使用できない場合などにおいては、固定具22の直径を大きくするのではなく固定具22の数を増やして接合ツール6を保持する方が合理的である。
【0051】
この場合、第1の固定具22と第2の固定具22の配設位置は、特にピッチ角度に影響を受けることはないが、作業効率を考慮すると接合ツール6の中心に対して90度、120度、180度がよい。
【0052】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…摩擦攪拌接合装置、2…装置本体、3…Z軸上下動駆動機構部、4…主軸支持部、5…接合ツールホルダ、6…接合ツール、7…ショルダ部、8…プローブ部(接合ピン)、9,9a,9b…被接合部材、10…載置台、11…制御部(制御装置)、12…X軸前後駆動機構部、13…X軸前後駆動モータ、14…主軸モータ、15…主軸ホルダ、16…主軸、17…Z軸上下動駆動モータ、18…挿入部、19…接合ツールホールド部、20…(すり鉢形状の)固定部、21…貫通孔、22…固定具(止めネジ)、23…底面部、24…斜面部、25…頂部、26…胴部、27…先端部、28…底面部、29…斜面部、30…頂部、31…固定部20の中心、32…貫通孔21(固定具22)の中心、33…接触部、34…クリアランス(間隙)。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8