(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153142
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 17/04 20060101AFI20241022BHJP
H01M 50/317 20210101ALI20241022BHJP
【FI】
F16K17/04 A
H01M50/317 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066802
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】吉橋 清裕
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 準弥
(72)【発明者】
【氏名】刑部 友敬
(72)【発明者】
【氏名】田口 佑介
(72)【発明者】
【氏名】杉本 遵吉
(72)【発明者】
【氏名】井上 重行
【テーマコード(参考)】
3H059
5H012
【Fターム(参考)】
3H059AA03
3H059BB40
3H059CD04
3H059EE01
3H059FF16
5H012BB08
5H012GG07
(57)【要約】
【課題】ピンがピンガイドから抜けることを抑制できる弁装置の提供。
【解決手段】抜け止め機構60が設けられており、該抜け止め機構60が、抜け止め爪61と、弁部材30が開位置30bにあるときに抜け止め爪61が当接するストッパ62と、を有するため、弁部材30が閉位置30aから開位置30bに移動するときに開位置30bを超えてピン51がピンガイド52から抜けるまで移動してしまうことを抑制できる。よって、ピン51がピンガイド52から抜けることを抑制できる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、弁部材と、バネ部材と、回転規制機構と、抜け止め機構と、を有し、
前記ベース部材は、該ベース部材が取付けられる相手部材に固定して取付けられており、おもて面と裏面を有し、前記おもて面と前記裏面の両方に開放しており前記相手部材に設けられる開口部と連通する排出孔が形成されており、
前記弁部材は、閉位置と、前記ベース部材から離れる方向に前記閉位置から移動した開位置とに、前記ベース部材に対して平行移動可能とされており、
前記バネ部材は、一端部で前記弁部材に設けられる弁部材側バネ係合部に係合されるとともに、他端部で前記ベース部材に設けられるベース側バネ係合部に係合されており、前記弁部材を前記ベース部材に対して前記閉位置側に付勢しており、
前記回転規制機構は、前記ベース部材と前記弁部材の一方に設けられており前記弁部材の移動方向に延びるピンと、前記ベース部材と前記弁部材の他方に設けられており前記ピンの動きを前記弁部材の移動方向のみに規制するピンガイドと、を有しており、
前記抜け止め機構は、前記ピンに設けられる抜け止め爪と、前記ベース部材と前記弁部材の前記他方又は前記ピンガイドに設けられており前記弁部材が前記開位置にあるときに前記抜け止め爪が当接するストッパと、を有する、弁装置。
【請求項2】
前記ピンには、前記弁部材の移動方向に延びる一対のピンスリットが形成されており、
前記抜け止め爪は、前記一対のピンスリットの間に設けられている、請求項1記載の弁装置。
【請求項3】
前記ピンガイドは、前記弁部材の移動方向に延びており前記ピンが挿入される筒形状となっており、
前記ピンガイドの延び方向の少なくとも一部に、前記抜け止め爪が前記弁部材の移動方向に移動することを許容するガイドスリットが形成されている、請求項2記載の弁装置。
【請求項4】
前記ベース部材は、前記弁部材の移動方向に延びており前記バネ部材が挿入される筒形状のバネ挿入部を有する、請求項1記載の弁装置。
【請求項5】
前記ベース部材は、前記弁部材の移動方向から見て前記排出孔の位置に網状リブを有する、請求項1記載の弁装置。
【請求項6】
前記弁部材に設けられる前記弁部材側バネ係合部と、前記ベース部材に設けられる前記ベース側バネ係合部とは、前記弁部材の移動方向から見て互いに逆方向に突出して設けられている、請求項1記載の弁装置。
【請求項7】
前記ベース部材は、前記裏面から前記相手部材に向って突出しており前記相手部材に係合する仮止め係止片を有する、請求項1記載の弁装置。
【請求項8】
前記仮止め係止片は、前記相手部材の前記開口部の縁部に係合可能とされている、請求項7記載の弁装置。
【請求項9】
前記ベース部材には、軸方向両側に開放するナットが固定されており、
前記弁部材は、前記ナットにボルトを螺合させることで、前記相手部材に組付けられている、請求項1記載の弁装置。
【請求項10】
シール部材を、さらに有しており、
前記シール部材は、前記ベース部材のおもて面と前記弁部材との間で全周にわたって連続して設けられるシール部材第1部分を有しており、該シール部材第1部分の内径側に、前記ベース部材の前記排出孔と連通するシール部材排出孔が形成されており、
前記シール部材第1部分は、前記弁部材が前記閉位置にあるとき前記ベース部材のおもて面と前記弁部材とにより挟まれている、請求項1記載の弁装置。
【請求項11】
前記弁部材は、前記閉位置にあるとき、前記シール部材第1部分に接触して前記シール部材排出孔を閉塞しており、前記開位置にあるとき、前記シール部材第1部分から離れて前記シール部材排出孔を開放する、請求項10記載の弁装置。
【請求項12】
前記弁部材は、前記閉位置にあるときに前記シール部材第1部分に接触する弁部材外周部と、該弁部材外周部より内径側にあり前記シール部材第1部分に接触しない弁部材内側部と、を有しており、該弁部材内側部は、前記ベース部材から離れる方向に凹となる凹形状となっており、
前記弁部材側バネ係合部は、前記弁部材内側部の最奥部に設けられている、請求項11記載の弁装置。
【請求項13】
前記シール部材は、前記ベース部材の裏面と前記相手部材との間で全周にわたって連続して設けられるシール部材第2部分を有しており、該シール部材第2部分は、前記ベース部材の裏面と前記相手部材とにより挟まれている、請求項10記載の弁装置。
【請求項14】
前記シール部材は、前記シール部材第1部分から該シール部材第1部分の外径側に延びており前記ベース部材のおもて面を覆うシール部材覆い部と、該シール部材覆い部の外縁部から前記ベース部材の外側を通って前記ベース部材の裏面側に延びており前記シール部材第2部分に連なるシール部材橋渡し部と、を有する、請求項13記載の弁装置。
【請求項15】
前記ベース部材は、前記シール部材第1部分より内径側にある前記おもて面部位に設けられており前記シール部材第1部分が外径側から接触するおもて面側接触部と、前記シール部材第1部分の裏側にある前記おもて面部位に設けられており前記シール部材第1部分側に突出するおもて面側凸部と、前記シール部材第2部分より内径側にある前記裏面部位に設けられており前記シール部材第2部分が外径側から接触する裏面側接触部と、前記シール部材第2部分の裏側にある前記裏面部位に設けられており前記シール部材第2部分側に突出する裏面側凸部と、を有する、請求項14記載の弁装置。
【請求項16】
前記シール部材覆い部に、前記シール部材第1部分より外径側で前記シール部材第1部分を外径側から覆うようにして立ち上がる保護壁が設けられている、請求項14記載の弁装置。
【請求項17】
前記保護壁には、切欠きが少なくとも1個所形成されている、請求項16記載の弁装置。
【請求項18】
前記相手部材は、車両に搭載されており、
前記切欠きは、前記保護壁を車両前後方向に貫通して形成されている、請求項17記載の弁装置。
【請求項19】
前記シール部材第1部分は、前記弁部材側に突出しており全周にわたって連続する第1内側突条と、該第1内側突条より外径側にあり前記弁部材側に突出しており全周にわたって連続する第1外側突条と、を有する、請求項10記載の弁装置。
【請求項20】
前記第1内側突条と前記第1外側突条は、それぞれ、横断面視における径方向内側の側面よりも径方向外側の側面の方が、前記弁部材の移動方向からの傾斜角度が小となっている、請求項19記載の弁装置。
【請求項21】
前記シール部材第2部分は、前記弁部材と反対側に突出しており全周にわたって連続する第2内側突条と、該第2内側突条より外径側にあり前記弁部材と反対側に突出しており全周にわたって連続する第2外側突条と、を有する、請求項13記載の弁装置。
【請求項22】
電池パックのパックケースに形成される開口部を閉塞可能に前記パックケースに取付けられる電池パック用圧力開放弁装置であり、
前記相手部材は、前記パックケースである、請求項1記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックのパックケースに形成される開口部を閉塞可能な電池パック用圧力開放弁装置などの、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
実開昭59-168070号公報は、
図10に示すように、ベース部材2と、ベース部材2に対して閉位置と開位置とに平行移動可能な弁部材3と、バネ4と、弁部材3がベース部材2に対して回転することを規制する回転規制機構5と、を有する弁装置1を開示している。回転規制機構5は、ピン5aと、ピンガイド5bと、を有している。
【0003】
しかし、上記公報開示の技術には、つぎの問題点がある。
ピン5aがピンガイド5bから抜けることを規制する構造が設けられていない。そのため、弁部材3が閉位置から開位置に移動するときに開位置を超えてピン5aがピンガイド5bから抜けるまで移動してしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ピンがピンガイドから抜けることを抑制できる弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) ベース部材と、弁部材と、バネ部材と、回転規制機構と、抜け止め機構と、を有し、
前記ベース部材は、該ベース部材が取付けられる相手部材に固定して取付けられており、おもて面と裏面を有し、前記おもて面と前記裏面の両方に開放しており前記相手部材に設けられる開口部と連通する排出孔が形成されており、
前記弁部材は、閉位置と、前記ベース部材から離れる方向に前記閉位置から移動した開位置とに、前記ベース部材に対して平行移動可能とされており、
前記バネ部材は、一端部で前記弁部材に設けられる弁部材側バネ係合部に係合されるとともに、他端部で前記ベース部材に設けられるベース側バネ係合部に係合されており、前記弁部材を前記ベース部材に対して前記閉位置側に付勢しており、
前記回転規制機構は、前記ベース部材と前記弁部材の一方に設けられており前記弁部材の移動方向に延びるピンと、前記ベース部材と前記弁部材の他方に設けられており前記ピンの動きを前記弁部材の移動方向のみに規制するピンガイドと、を有しており、
前記抜け止め機構は、前記ピンに設けられる抜け止め爪と、前記ベース部材と前記弁部材の前記他方又は前記ピンガイドに設けられており前記弁部材が前記開位置にあるときに前記抜け止め爪が当接するストッパと、を有する、弁装置。
(2) 前記ピンには、前記弁部材の移動方向に延びる一対のピンスリットが形成されており、
前記抜け止め爪は、前記一対のピンスリットの間に設けられている、(1)記載の弁装置。
(3) 前記ピンガイドは、前記弁部材の移動方向に延びており前記ピンが挿入される筒形状となっており、
前記ピンガイドの延び方向の少なくとも一部に、前記抜け止め爪が前記弁部材の移動方向に移動することを許容するガイドスリットが形成されている、(2)記載の弁装置。
(4) 前記ベース部材は、前記弁部材の移動方向に延びており前記バネ部材が挿入される筒形状のバネ挿入部を有する、(1)記載の弁装置。
(5) 前記ベース部材は、前記弁部材の移動方向から見て前記排出孔の位置に網状リブを有する、(1)記載の弁装置。
(6) 前記弁部材に設けられる前記弁部材側バネ係合部と、前記ベース部材に設けられる前記ベース側バネ係合部とは、前記弁部材の移動方向から見て互いに逆方向に突出して設けられている、(1)記載の弁装置。
(7) 前記ベース部材は、前記裏面から前記相手部材に向って突出しており前記相手部材に係合する仮止め係止片を有する、(1)記載の弁装置。
(8) 前記仮止め係止片は、前記相手部材の前記開口部の縁部に係合可能とされている、(7)記載の弁装置。
(9) 前記ベース部材には、軸方向両側に開放するナットが固定されており、
前記弁部材は、前記ナットにボルトを螺合させることで、前記相手部材に組付けられている、(1)記載の弁装置。
(10) シール部材を、さらに有しており、
前記シール部材は、前記ベース部材のおもて面と前記弁部材との間で全周にわたって連続して設けられるシール部材第1部分を有しており、該シール部材第1部分の内径側に、前記ベース部材の前記排出孔と連通するシール部材排出孔が形成されており、
前記シール部材第1部分は、前記弁部材が前記閉位置にあるとき前記ベース部材のおもて面と前記弁部材とにより挟まれている、(1)記載の弁装置。
(11) 前記弁部材は、前記閉位置にあるとき、前記シール部材第1部分に接触して前記シール部材排出孔を閉塞しており、前記開位置にあるとき、前記シール部材第1部分から離れて前記シール部材排出孔を開放する、(10)記載の弁装置。
(12) 前記弁部材は、前記閉位置にあるときに前記シール部材第1部分に接触する弁部材外周部と、該弁部材外周部より内径側にあり前記シール部材第1部分に接触しない弁部材内側部と、を有しており、該弁部材内側部は、前記ベース部材から離れる方向に凹となる凹形状となっており、
前記弁部材側バネ係合部は、前記弁部材内側部の最奥部に設けられている、(11)記載の弁装置。
(13) 前記シール部材は、前記ベース部材の裏面と前記相手部材との間で全周にわたって連続して設けられるシール部材第2部分を有しており、該シール部材第2部分は、前記ベース部材の裏面と前記相手部材とにより挟まれている、(10)記載の弁装置。
(14) 前記シール部材は、前記シール部材第1部分から該シール部材第1部分の外径側に延びており前記ベース部材のおもて面を覆うシール部材覆い部と、該シール部材覆い部の外縁部から前記ベース部材の外側を通って前記ベース部材の裏面側に延びており前記シール部材第2部分に連なるシール部材橋渡し部と、を有する、(13)記載の弁装置。
(15) 前記ベース部材は、前記シール部材第1部分より内径側にある前記おもて面部位に設けられており前記シール部材第1部分が外径側から接触するおもて面側接触部と、前記シール部材第1部分の裏側にある前記おもて面部位に設けられており前記シール部材第1部分側に突出するおもて面側凸部と、前記シール部材第2部分より内径側にある前記裏面部位に設けられており前記シール部材第2部分が外径側から接触する裏面側接触部と、前記シール部材第2部分の裏側にある前記裏面部位に設けられており前記シール部材第2部分側に突出する裏面側凸部と、を有する、(14)記載の弁装置。
(16) 前記シール部材覆い部に、前記シール部材第1部分より外径側で前記シール部材第1部分を外径側から覆うようにして立ち上がる保護壁が設けられている、(14)記載の弁装置。
(17) 前記保護壁には、切欠きが少なくとも1個所形成されている、(16)記載の弁装置。
(18) 前記相手部材は、車両に搭載されており、
前記切欠きは、前記保護壁を車両前後方向に貫通して形成されている、(17)記載の弁装置。
(19) 前記シール部材第1部分は、前記弁部材側に突出しており全周にわたって連続する第1内側突条と、該第1内側突条より外径側にあり前記弁部材側に突出しており全周にわたって連続する第1外側突条と、を有する、(10)記載の弁装置。
(20) 前記第1内側突条と前記第1外側突条は、それぞれ、横断面視における径方向内側の側面よりも径方向外側の側面の方が、前記弁部材の移動方向からの傾斜角度が小となっている、(19)記載の弁装置。
(21) 前記シール部材第2部分は、前記弁部材と反対側に突出しており全周にわたって連続する第2内側突条と、該第2内側突条より外径側にあり前記弁部材と反対側に突出しており全周にわたって連続する第2外側突条と、を有する、(13)記載の弁装置。
(22) 電池パックのパックケースに形成される開口部を閉塞可能に前記パックケースに取付けられる電池パック用圧力開放弁装置であり、
前記相手部材は、前記パックケースである、(1)記載の弁装置。
【発明の効果】
【0007】
上記(1)の弁装置によれば、抜け止め機構が設けられており、該抜け止め機構が、抜け止め爪と、弁部材が開位置にあるときに抜け止め爪が当接するストッパと、を有するため、弁部材が閉位置から開位置に移動するときに開位置を超えてピンがピンガイドから抜けるまで移動してしまうことを抑制できる。よって、ピンがピンガイドから抜けることを抑制できる。
【0008】
上記(2)の弁装置によれば、抜け止め爪が一対のピンスリットの間に設けられているため、抜け止め爪を弾性変形させることができる。そのため、抜け止め機構が設けられる場合であっても、抜け止め爪を弾性変形させた後に復元させることで、弁装置を組立てることができる。
また、抜け止め爪の両側にピンが位置するため、ピンで抜け止め爪を外力から保護でき、抜け止め爪が破損することを抑制できる。
【0009】
上記(3)の弁装置によれば、ピンガイドが、弁部材の移動方向に延びておりピンが挿入される筒形状となっているため、ピンガイドでピンを外力から保護でき、ピンが破損することを抑制できる。
また、ピンガイドの延び方向の少なくとも一部に、抜け止め爪が弁部材の移動方向に移動することを許容するガイドスリットが形成されているため、ピンガイドが抜け止め爪の移動を阻害することを抑制できる。
【0010】
上記(4)の弁装置によれば、ベース部材が、弁部材の移動方向に延びておりバネ部材が挿入される筒形状のバネ挿入部を有するため、バネ挿入部でバネ部材の動きを弁部材の移動方向のみに規制できる。また、バネ挿入部でバネ部材を外力から保護でき、バネ部材が外力により影響を受けることを抑制できる。
【0011】
上記(5)の弁装置によれば、ベース部材が、排出孔の位置に網状リブを有するため、弁装置を組立てるとき、組立てた弁装置を相手部材への組付場所に搬送するとき、組立てた弁装置を相手部材へ組付けるとき、の少なくともいずれかのときに、人(作業者)の手、指がベース部材の裏側からおもて側に排出孔を通って弁部材に当たってしまうことを抑制できる。そのため、人の手、指が当たって弁部材がベース部材に対して位置ズレしてしまうことを抑制できる。
【0012】
上記(6)の弁装置によれば、弁部材に設けられる弁部材側バネ係合部と、ベース部材に設けられるベース側バネ係合部とが、互いに逆方向に突出して設けられているため、バネ部材の一端部を弁部材側バネ係合部に係合させた状態で、バネ部材の他端部をベース側バネ係合部に係合させるときに、バネ部材の一端部と弁部材側バネ係合部との係合代が大となる方向にバネ部材を変形させながらバネ部材の他端部をベース側バネ係合部に係合させることができる。そのため、バネ部材の他端部をベース側バネ係合部に係合させるときに、バネ部材の一端部が弁部材側バネ係合部から外れることを効果的に抑制できる。
【0013】
上記(7)の弁装置によれば、ベース部材が仮止め係止片を有するため、ベース部材(弁装置)を相手部材に仮止めした状態で、弁装置を相手部材に組付けることができる。よって、弁装置の相手部材への組付け性を向上できる。
【0014】
上記(8)の弁装置によれば、仮止め係止片が相手部材の開口部の縁部に係合可能とされているため、相手部材に、開口部と独立して仮止め係止片のためだけの孔を設ける必要が無く、コスト上有利である。
【0015】
上記(9)の弁装置によれば、弁部材が、軸方向両側に開放するナットを用いて相手部材に組付けられているため、軸方向一側が閉塞されている袋ナットを用いる場合に比べて、コストダウンできる。
【0016】
上記(10)の弁装置によれば、全周にわたって連続して設けられるシール部材第1部分が、弁部材が閉位置にあるときベース部材のおもて面と弁部材とにより挟まれているため、ベース部材と弁部材とをシール部材第1部分でシールできる。
【0017】
上記(11)の弁装置によれば、弁部材が、閉位置にあるとき、シール部材第1部分に接触してシール部材排出孔を閉塞しており、開位置にあるとき、シール部材第1部分から離れてシール部材排出孔を開放するため、弁部材でシール部材排出孔を開閉できる。そのため、シール部材排出孔と連通するベース部材の排出孔および相手部材の開口部を、弁部材で開閉できる。
【0018】
上記(12)の弁装置によれば、弁部材が凹形状の弁部材内側部を有しており、弁部材側バネ係合部が弁部材内側部の最奥部に設けられているため、弁部材内側部が凹形状となっておらず弁部材が平板形状となっている場合に比べて、弁部材側バネ係合部とベース側バネ係合部との間隔を大にできる。そのため、機能を発揮するのに必要なバネ長さを確保できる。
【0019】
上記(13)の弁装置によれば、全周にわたって連続して設けられるシール部材第2部分が、ベース部材の裏面と相手部材とにより挟まれているため、ベース部材と相手部材とをシール部材第2部分でシールできる。
【0020】
上記(14)の弁装置によれば、シール部材がシール部材覆い部とシール部材橋渡し部とを有するため、シール部材第1部分とシール部材第2部分を連結できる。よって、シール部材を一部品構成とすることができる。
【0021】
上記(15)の弁装置によれば、ベース部材が、おもて面側接触部と、おもて面側凸部と、裏面側接触部と、裏面側凸部と、を有するため、ベース部材のおもて面とシール部材との間を通って弁装置の外側に流体が流出する場合、流体は、おもて面側接触部、おもて面側凸部、裏面側接触部および裏面側凸部の4個を乗り越えなければならない。よって、これらが設けられていない場合に比べて、ベース部材のおもて面とシール部材との間を通って弁装置の外側に流体が流出することを抑制できる。
【0022】
上記(16)の弁装置によれば、シール部材覆い部に、シール部材第1部分より外径側でシール部材第1部分を外径側から覆うようにして立ち上がる保護壁が設けられているため、保護壁で、シール部材第1部分を保護できるだけでなく、閉位置にありシール部材第1部分に接触している弁部材も保護できる。よって、保護壁でシール部材第1部分と弁部材を外力から保護でき、外力でシール部材第1部分と弁部材とのシール性を損なうことを抑制できる。
また、保護壁がシール部材覆い部(シール部材)に設けられているため、弁部材が開位置にあり相手部材の内部の流体が弁部材とシール部材との間を通って弁装置の外側に流れる時に、保護壁が流体によって押されて倒れることができる。よって、保護壁が流体の流れを阻害することを抑制できる。
さらにまた、保護壁を、シール部材覆い部のシール部材第1部分側の端部に、すなわちシール部材第1部分に接近させて設けることで、シール部材第1部分と保護壁との間を省スペース化できる。
【0023】
上記(17)の弁装置によれば、保護壁には、切欠きが少なくとも1個所形成されているため、保護壁が設けられていても、保護壁の内径側に入り込んだ水を切欠きから保護壁の外に抜くことができる。
【0024】
上記(18)の弁装置によれば、切欠きが、保護壁を車両前後方向に貫通して形成されているため、保護壁の内径側に入り込んだ水は、車両走行時に車両前後方向に移動し、移動した先に設けられている切欠きを通って保護壁の外に流れる。そのため、保護壁の内径側に入り込んだ水を切欠きから保護壁の外に効率よく抜くことができる。
【0025】
上記(19)の弁装置によれば、シール部材第1部分が、第1内側突条と第1外側突条を有するため、シール部材第1部分を2重シール構造にでき、シール性能を向上できる。
【0026】
上記(20)の弁装置によれば、第1内側突条と前記第1外側突条が、それぞれ、径方向内側の側面よりも径方向外側の側面の方が、弁部材の移動方向からの傾斜角度が小となっているため、弁部材が開位置にあり相手部材の内部の流体が弁部材とシール部材との間を通って流れる時に、第1内側突条と第1外側突条が流体流れ方向に倒れやすくなり、第1内側突条と第1外側突条が流体の流れを阻害することを抑制できる。
【0027】
上記(21)の弁装置によれば、シール部材第2部分が、第2内側突条と第2外側突条を有するため、シール部材第2部分を2重シール構造にでき、シール性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図3】
図2の、弁部材が閉位置にあるときにおける、A-A線断面図である。なお、図面の明瞭化のために断面表示は省略している。
【
図4】
図2の、弁部材が開位置にあるときにおける、A-A線断面図である。なお、図面の明瞭化のために断面表示は省略している。
【
図5】
図2の、弁部材が閉位置にあるときにおける、B-B線断面図である。なお、図面の明瞭化のために断面表示は省略している。
【
図6】
図2の、弁部材が閉位置にあるときにおける、C-C線断面図である。なお、図面の明瞭化のために断面表示は省略している。
【
図7】
図3のD部拡大断面図である。なお、図面の明瞭化のために断面表示は省略している。
【
図8】本発明実施例の弁装置におけるベース部材を裏面側から見たときの斜視図である。
【
図9】本発明実施例の弁装置におけるピンの部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、図面を参照して、本発明実施例の弁装置10について説明する。
【0030】
弁装置10は、特に限定されるものではないがたとえば、
図1に示すように、電池パック100のパックケース101に形成される開口部102を閉塞可能な電池パック用圧力開放弁装置である。電池パック100は、電気自動車(BEV)やハイブリッド自動車(HEV)等の車両に搭載されており、図示略の複数の電池セルをパックケース101内に収容している。パックケース101に形成される開口部102は、各電池セルからの流体(ガス)の排出による過度なパックケース101内の圧力上昇を防ぐために設けられている。
【0031】
弁装置10は、
図3に示すように、ベース部材20と、弁部材30と、バネ部材40と、回転規制機構50と、抜け止め機構60と、シール部材70と、を有する。
【0032】
ベース部材20は、たとえば樹脂製であり、一部品構成である。ベース部材20は、ベース部材20が取付けられる相手部材であるパックケース101に固定して取付けられている。ベース部材20は、おもて面21と裏面22を有する。おもて面21は、パックケース101と反対側の面であり、裏面22は、パックケース101に対向する面である。
【0033】
ベース部材20には、パックケース101の開口部102と連通する排出孔23が形成されている。排出孔23は、おもて面21と裏面22の両方に開放している。すなわち、排出孔23は、弁部材30がベース部材20に対して移動する方向D1の両方向に開放している。
【0034】
ベース部材20は、バネ挿入部24と、ベース側バネ係合部25と、網状リブ26と、仮止め係止片27と、を有する。
【0035】
バネ挿入部24は、ベース部材20を弁部材30の移動方向D1から見て(平面視で)、排出孔23の中心部(その近傍を含む)に設けられており、網状リブ26により支持されている。バネ挿入部24は、移動方向D1に延びる略筒形状であり、バネ部材40が挿入される。バネ挿入部24は、移動方向D1の両方向に開放しており、バネ挿入部24内を流体が流れることができるようになっている。これにより、バネ挿入部24を排出孔23の中心部に設ける場合でも、バネ挿入部24が排出孔23を通る流体の流れを阻害することが抑制されている。
【0036】
ベース側バネ係合部25は、バネ挿入部24の軸方向一端部(パックケース101側の端部)に設けられている。ベース側バネ係合部25には、バネ部材40が係合されている。
【0037】
網状リブ26は、ベース部材20を移動方向D1から見て、排出孔23の位置に設けられている。網状リブ26は、格子状リブといってもよい。網状リブ26は、流体が排出孔23を通って流れることを許容しつつ、人の手、指が排出孔23を通ることを抑制するために設けられている。網状リブ26は、また、バネ挿入部24を支持するためにも、設けられている。
【0038】
仮止め係止片27は、裏面22からパックケース101に向って突出して設けられており、パックケース101に係合する。仮止め係止片27は、パックケース101の開口部102の縁部に弾性変形して復元することで係合する。仮止め係止片27は、ベース部材20(弁装置10)をパックケース101に組付ける際に、ベース部材20(弁装置10)をパックケース101に仮止めするために設けられる。
【0039】
ベース部材20には、
図5に示すように、図示略の雌ねじが形成された金属製のナット28が固定されている。ナット28は、袋ナットではなく軸方向両側に開放するタイプのナットである。ナット28は、特に限定されるものではないが、インサート成形にてベース部材20に固定されている。ベース部材20は、ボルト103をパックケース101の内側からナット28の雌ねじに螺合させることで、パックケース101に締結にて組付けられている。
【0040】
弁部材30は、たとえば樹脂製であり、一部品構成である。弁部材30は、
図3、
図4に示すように、閉位置30a(
図3)と、ベース部材20から離れる方向に閉位置30aから移動した開位置30b(
図4)とに、ベース部材20に対して移動方向D1に平行移動可能とされている。移動方向D1は、ベース部材20のおもて面21および裏面22の面直方向と平行である。弁部材30は、閉位置30aにあるとき、シール部材70のシール部材第1部分71に接触してシール部材第1部分71の内径側に形成されるシール部材排出孔72を閉塞しており、開位置30bにあるとき、シール部材第1部分71から離れてシール部材排出孔72を開放している。
【0041】
弁部材30は、閉位置30aにあるときにシール部材第1部分71に接触する弁部材外周部31と、弁部材外周部31より内径側にありシール部材第1部分71に接触しない弁部材内側部32と、を有する。弁部材外周部31の、シール部材第1部分71に接触する面は、シール部材70とのシール性確保のために平面形状となっている。弁部材内側部32は、移動方向D1にベース部材20から離れる方向に凹となる凹形状(お椀形状)となっている。弁部材30には、弁部材30の剛性を高めるために、リブ34が設けられていてもよい。リブ34は、弁部材30とシール部材第1部分71とのシール性を阻害しないように、シール部材第1部分71との接触面以外に設けられている。
【0042】
弁部材30は、弁部材側バネ係合部33を有する。弁部材側バネ係合部33は、弁部材側内側部32の最奥部32aの、ベース部材20側の面に設けられている。弁部材側バネ係合部33には、バネ部材40が係合されている。弁部材側バネ係合部33にはバネ部材40の一端部41が係合されており、ベース側バネ係合部25にはバネ部材40の他端部42が係合されている。弁部材側バネ係合部33とベース側バネ係合部25とは、
図6に示す例では、移動方向D1から見て同方向に突出して設けられているが、移動方向D1から見て互いに逆方向に突出して設けられていることが望ましい。バネ部材40の弁部材30およびベース部材20への組付け時にバネ40が外れることを抑制できるからである。
【0043】
バネ部材40は、金属製であり、引張コイルスプリングからなる。バネ部材40は、弁部材30の移動方向D1を軸方向として配置されている。バネ部材40は、一端部41で弁部材側バネ係合部33に係合されるとともに、他端部42でベース側バネ係合部25に係合されており、弁部材30をベース部材20に対して閉位置30a側に常時付勢している。
【0044】
回転規制機構50は、弁部材30のベース部材20に対する回転動を規制する機構である。回転規制機構50は、1個のみ設けられていてもよいが、
図3、
図4に示すように移動方向D1から見て互いに異なる位置に複数設けられていることが望ましい。弁部材30のベース部材20に対する回転動を効果的に規制できるからである。
【0045】
回転規制機構50は、ベース部材20と弁部材30の一方に設けられており弁部材30の移動方向D1に延びるピン51と、ベース部材20と弁部材30の他方に設けられておりピン51の動きを弁部材30の移動方向D1のみに規制するピンガイド52と、を有する。なお、本発明実施例および図示例では、ピン51が弁部材30に設けられ、ピンガイド52がベース部材20に設けられる場合を説明する。
【0046】
ピン51は、弁部材30と別体に形成されて弁部材30に固定して取付けられていてもよいが、部品点数削減のため、弁部材30に一体に形成されていることが望ましい。ピン51は、弁部材側バネ係合部33よりも外径側で、弁部材側外周部31よりも内径側の位置に、ベース部材20側に延びて設けられている。
【0047】
ピンガイド52は、ベース部材20と別体に形成されてベース部材20に固定して取付けられていてもよいが、部品点数削減のため、ベース部材20に一体に形成されていることが望ましい。ピンガイド52は、移動方向D1から見て、ベース部材20の排出孔23内でバネ挿入部24より外径側の位置に設けられている。ピンガイド52は、網状リブ26により支持されている。ピンガイド52は、弁部材30の移動方向D1に延びる筒形状となっており、ピン51が挿入されている。ピン51がピンガイド52に挿入されているため、弁部材30のベース部材20に対する回転動を規制できる。
【0048】
抜け止め機構60は、弁部材30が閉位置30aから開位置30bに移動するときに開位置30bを超えて移動してしまうことを抑制することで、ピン51がピンガイド52から抜けることを抑制する機構である。抜け止め機構60は、抜け止め爪61と、ストッパ62と、を有する。
【0049】
抜け止め爪61は、
図9に示すように、ピン51に設けられている。抜け止め爪61は、部品点数削減のため、ピン51に一体に形成されていることが望ましい。抜け止め爪61は、ピン51に連なるアーム部61aと、アーム部61aの先端部に設けられる引っ掛かり部61bと、を有する。ピン51には、弁部材30の移動方向D1に延びる一対のピンスリット51aが形成されており、抜け止め爪61は、一対のピンスリット51aの間(内側)に設けられている。
【0050】
図8に示すように、ストッパ62は、ベース部材20と弁部材30のうちピンガイド52が設けられる方(本実施例ではベース部材20)、又はピンガイド52に設けられている。図示例では、ストッパ62がベース部材20の裏面22に設けられる場合を示している。ストッパ62には、弁部材30が開位置30bにあるときに抜け止め爪61が当接する。ピンガイド52の延び方向の少なくとも一部には、ピンガイド52の延び方向(弁部材30の移動方向D1)に延びており抜け止め爪61が弁部材30の移動方向D1に移動することを許容するガイドスリット52aが形成されており、ストッパ62は、ガイドスリット52aの最奥部にある。
【0051】
シール部材70は、比較的容易に弾性変形可能なシリコーンゴムなどの軟質樹脂製である。シール部材70は、一部品構成である。シール部材70は中空部を有しておらず中実である。シール部材70は、ベース部材20に取付けられる。
【0052】
図7に示すように、シール部材70は、シール部材第1部分71と、シール部材第2部分73と、シール部材覆い部74と、シール部材橋渡し部75と、保護壁76と、を有する。
【0053】
シール部材第1部分71は、ベース部材20のおもて面21と弁部材30との間で全周にわたって連続して設けられている。シール部材第1部分71は、弁部材30が閉位置30aにあるとき、ベース部材20のおもて面21と弁部材外周部31とにより、弁部材30の移動方向D1に挟まれている。シール部材第1部分71の内径側には、ベース部材20の排出孔23と連通するシール部材排出孔72が形成されている。
【0054】
シール部材第1部分71は、弁部材30側に突出しており全周にわたって連続する第1内側突条71aと、第1内側突条71aより外径側にあり弁部材30側に突出しており全周にわたって連続する第1外側突条71bと、を有している。このため、シール部材第1部分71は、ベース部材20のおもて面21には面接触するが、弁部材30にはベース部材20との接触面積に比べて接触面積が小さい線接触または面接触となっている。
【0055】
第1内側突条71aと第1外側突条71bは、それぞれ、自由状態にあるとき、横断面視における径方向内側の側面71a1、71b1よりも、径方向外側の側面71a2,71b2の方が、弁部材30の移動方向D1からの傾斜角度が小となっている。
【0056】
シール部材第2部分73は、ベース部材20の裏面22とパックケース101との間で全周にわたって連続して設けられている。シール部材第2部分73は、常時、ベース部材20の裏面22とパックケース101とにより弁部材30の移動方向D1に挟まれている。
【0057】
シール部材第1部分71がベース部材20のおもて面21側にあり、シール部材第2部分73がベース部材20の裏面22側にあるため、シール部材第1部分71とシール部材第2部分73とでベース部材20を挟み込んでいる。
【0058】
シール部材第2部分73は、弁部材30と反対側(パックケース101側)に突出しており全周にわたって連続する第2内側突条73aと、第2内側突条73aより外周側にあり弁部材30と反対側に突出しており全周にわたって連続する第2外側突条73bと、を有している。このため、シール部材第2部分73は、ベース部材20の裏面22には面接触するが、パックケース101にはベース部材20との接触面積に比べて接触面積が小さい線接触または面接触となっている。
【0059】
第2内側突条73aと第2外側突条73bは、それぞれ、自由状態にあるとき、横断面視における径方向内側の側面73a1、73b1と径方向外側の側面73a2,73b2の、弁部材30の移動方向D1からの傾斜角度が、同じ(ほぼ同じ)となっている。
【0060】
なお、シール部材70とベース部材20との間を流体が流れることを抑制するために、ベース部材20に、シール部材第1部分71より内径側にあるおもて面21部位に設けられておりシール部材第1部分71が外径側から接触するおもて面側接触部29aと、シール部材第1部分71の裏側にあるおもて面21部位に設けられておりシール部材第1部分71側に突出するおもて面側凸部29bと、シール部材第2部分73より内径側にある裏面22部位に設けられておりシール部材第2部分73が外径側から接触する裏面側接触部29cと、シール部材第2部分73の裏側にある裏面22部位に設けられておりシール部材第2部分73側に突出する裏面側凸部29dと、が一体に形成されている。おもて面側接触部29a、おもて面側凸部29b、裏面側接触部29cおよび裏面側凸部29dは、それぞれ、全周にわたって連続して設けられている。
【0061】
シール部材覆い部74は、シール部材第1部分71からシール部材第1部分71の外径側に延びて設けられており、ベース部材20のおもて面21を覆っている。このため、弁装置10の周囲にある雨水などの水が、ベース部材20とシール部材70との間から弁装置10の内部に浸入することを抑制している。
【0062】
シール部材橋渡し部75は、シール部材覆い部74の外縁部からベース部材20の外側を通ってベース部材20の裏面22側に延びておりシール部材第2部分73に連なっている。
【0063】
保護壁76は、シール部材覆い部74に、シール部材第1部分71より外径側でシール部材第1部分71を外径側から覆うようにして弁部材30側に立ち上がって設けられている。保護壁76は、シール部材覆い部74の、シール部材第1部分71側の端部に設けられている。保護壁76の高さ(立ち上がり量)は、第1内側突条71aと第1外側突条71bを有するシール部材第1部分71の高さより、大とされている。
【0064】
保護壁76は、シール部材第1部分71の外径側で全周にわたって連続して設けられていてもよいが、弁装置10の周囲にある雨水などの水が保護壁76の径方向内側に浸入した際に、浸入した水を保護壁76の外径側に排出するために、切欠き76aが少なくとも1箇所形成されていることが望ましい(
図2)。
【0065】
弁装置10が取付けられるパックケース101(電池パック100)が車両に搭載される場合、切欠き76aは、保護壁76を車両前後方向に貫通して形成されている。すなわち、切欠き76aは、車両前後方向から見たときに視認可能な保護壁76部分に形成されており、保護壁76の内径側のスペースを保護壁76の外径側のスペースに車両前後方向に開放させるようにして形成されている。
【0066】
本発明実施例の弁装置10の組立方法は、
(i)弁部材側バネ係合部33にバネ部材40の一端部41を係合させ、ベース部材20にシール部材70を組付ける、第1工程と、
(ii)バネ部材40を他端部42側からベース部材20のバネ挿入部24に挿入させながら、回転規制機構50のピン51をピンガイド52に挿入する、第2工程と、
(iii)バネ部材40の他端部42を、バネ部材40を引っ張りながらベース側バネ係合部25に係合させる、第3工程と、
をこの順に有する。
【0067】
上記(i)の工程、第1工程について
弁部材側バネ係合部33にバネ部材40の一端部41を係合させる係合工程と、ベース部材20にシール部材70を組付ける組付工程は、どちらが先に行われていてもよく、同時に行われていてもよい。
【0068】
上記(ii)の工程、第2工程について
回転規制機構50のピン51をピンガイド52に挿入する挿入工程で、抜け止め機構60の抜け止め爪61が弾性変形して復元することでストッパ62を乗り越える。
【0069】
上記(iii)の工程、第3工程について
バネ部材40の他端部42をベース側バネ係合部25に係合させる係合工程は、比較的小型のフック(図示略)をバネ部材40の他端部42に引っ掛けてバネ部材40を引っ張りながら行われる。
【0070】
ここで、本発明実施例の作動を説明する。
図3に示すように、パックケース101内の圧力が所定値(閾値)未満のとき、弁部材30は閉位置30aにある。弁部材30は、シール部材70のシール部材第1部分71にバネ部材40の付勢力で圧接されており、シール部材排出孔72を閉塞している。そのため、パックケース101内、ベース部材20の排出孔23内、およびシール部材排出孔72内の流体は弁装置10の外部に流れることが防止されている。
【0071】
パックケース101内の圧力が所定値以上となったとき、
図4に示すように、弁部材30がバネ部材40の付勢力に抗して開位置30b側に移動する。弁部材30が開位置30b側に移動すると、弁部材30とシール部材第1部分71とのシールが無くなり、パックケース101内、排出孔23内、およびシール部材排出孔72内の流体が、
図4の矢印Yに示すように、シール部材70と弁部材30との間から、全周にわたって弁装置10の外部に放射状に流出する。
【0072】
つぎに、本発明実施例の作用、効果を説明する。
(A)抜け止め機構60が設けられており、該抜け止め機構60が、抜け止め爪61と、弁部材30が開位置30bにあるときに抜け止め爪61が当接するストッパ62と、を有するため、弁部材30が閉位置30aから開位置30bに移動するときに開位置30bを超えてピン51がピンガイド52から抜けるまで移動してしまうことを抑制できる。よって、ピン51がピンガイド52から抜けることを抑制できる(
図3、
図4)。
【0073】
(B)抜け止め爪61が一対のピンスリット51aの間に設けられているため、抜け止め爪61を弾性変形させることができる(
図9)。そのため、抜け止め機構60が設けられる場合であっても、抜け止め爪61を弾性変形させた後に復元させることで、弁装置10を組立てることができる。
【0074】
(C)抜け止め爪61の両側にピン51が位置しているため、ピン51で抜け止め爪61を外力から保護でき、抜け止め爪61が破損することを抑制できる(
図9)。
【0075】
(D)ピンガイド52が、弁部材30の移動方向D1に延びておりピン51が挿入される筒形状となっているため、ピンガイド52でピン51を外力から保護でき、ピン51が破損することを抑制できる(
図8)。
【0076】
(E)ピンガイド52の延び方向の少なくとも一部に、抜け止め爪61が弁部材30の移動方向D1に移動することを許容するガイドスリット52aが形成されているため、ピンガイド52が抜け止め爪61の移動を阻害することを抑制できる(
図8)。
【0077】
(F)ベース部材20が、弁部材30の移動方向D1に延びておりバネ部材40が挿入される筒形状のバネ挿入部24を有するため、バネ挿入部24でバネ部材40の動きを弁部材30の移動方向D1のみに規制できる。また、バネ挿入部24でバネ部材40を外力から保護でき、バネ部材40が外力により影響を受けることを抑制できる(
図3、
図4)。
【0078】
(G)ベース部材20が、排出孔23の位置に網状リブ26を有するため、弁装置10を組立てるとき、組立てた弁装置10をパックケース101への組付場所に搬送するとき、組立てた弁装置30をパックケース101へ組付けるとき、の少なくともいずれかのときに、人(作業者)の手、指がベース部材20の裏側からおもて側に排出孔23を通って弁部材20に当たってしまうことを抑制できる(
図1、
図8)。そのため、人の手、指が当たって弁部材30がベース部材20に対して位置ズレしてしまうことを抑制できる。
【0079】
(H)弁部材30に設けられる弁部材側バネ係合部33と、ベース部材20に設けられるベース側バネ係合部25とが、互いに逆方向に突出して設けられている場合、バネ部材40の一端部41を弁部材側バネ係合部33に係合させた状態で、バネ部材40の他端部42をベース側バネ係合部25に係合させるときに、バネ部材40の一端部41と弁部材側バネ係合部33との係合代が大となる方向にバネ部材40を変形させながらバネ部材40の他端部42をベース側バネ係合部25に係合させることができる。そのため、バネ部材40の他端部42をベース側バネ係合部25に係合させるときに、バネ部材40の一端部41が弁部材側バネ係合部33から外れることを効果的に抑制できる。
【0080】
(I)ベース部材20が仮止め係止片27を有するため、ベース部材20(弁装置10)をパックケース101に仮止めした状態で、弁装置10をパックケース101に組付けることができる(
図3、
図4)。よって、弁装置10のパックケース101への組付け性を向上できる。
【0081】
(J)仮止め係止片27がパックケース101の開口部102の縁部に係合可能とされているため、パックケース101に、開口部102と独立して仮止め係止片27のためだけの孔を設ける必要が無く、コスト上有利である(
図3、
図4)。
【0082】
(K)弁部材30が、軸方向両側に開放するナット28を用いてパックケース101に組付けられているため、軸方向一側が閉塞されている袋ナットを用いる場合に比べて、コストダウンできる(
図5)。
【0083】
(L)全周にわたって連続して設けられるシール部材第1部分71が、弁部材30が閉位置30aにあるときベース部材20のおもて面21と弁部材30とにより挟まれているため、ベース部材20と弁部材30とをシール部材第1部分71でシールできる(
図7)。
【0084】
(M)弁部材30が、閉位置30aにあるとき、シール部材第1部分71に接触してシール部材排出孔72を閉塞しており、開位置30bにあるとき、シール部材第1部分71から離れてシール部材排出孔72を開放するため、弁部材30でシール部材排出孔72を開閉できる(
図3、
図4)。そのため、シール部材排出孔72と連通するベース部材20の排出孔23およびパックケース101の開口部102を、弁部材30で開閉できる。
【0085】
(N)弁部材30が凹形状の弁部材内側部32を有しており、弁部材側バネ係合部33が弁部材内側部32の最奥部32aに設けられているため、弁部材内側部32が凹形状となっておらず弁部材30が平板形状となっている場合に比べて、弁部材側バネ係合部33とベース側バネ係合部25との間隔を大にできる(距離を稼ぐことができる)。そのため、バネ部材40の、機能を発揮するのに必要なバネ長さを確保できる(
図3、
図4、
図6)。
【0086】
(O)全周にわたって連続して設けられるシール部材第2部分73が、ベース部材20の裏面22とパックケース101とにより挟まれているため、ベース部材20とパックケース101とをシール部材第2部分73でシールできる(
図3、
図4,
図7)。
【0087】
(P)シール部材70がシール部材覆い部74とシール部材橋渡し部75とを有するため、シール部材第1部分71とシール部材第2部分73を連結できる(
図3、
図4,
図7)。よって、シール部材70を一部品構成とすることができる。
【0088】
(Q)ベース部材20が、おもて面側接触部29aと、おもて面側凸部29bと、裏面側接触部29cと、裏面側凸部29dと、を有するため、ベース部材20のおもて面21とシール部材70との間を通って弁装置10の外側に流体が流出する場合、流体は、おもて面側接触部29a、おもて面側凸部29b、裏面側接触部29cおよび裏面側凸部29dの4個を乗り越えなければならない。よって、これらが設けられていない場合に比べて、ベース部材20のおもて面21とシール部材70との間を通って弁装置10の外側に流体が流出することを抑制できる(
図7)。
【0089】
(R)シール部材覆い部74に、シール部材第1部分71より外径側でシール部材第1部分71を外径側から覆うようにして立ち上がる保護壁76が設けられているため、保護壁76で、シール部材第1部分71を保護できるだけでなく、閉位置30aにありシール部材第1部分71に接触している弁部材30も保護できる。よって、保護壁76でシール部材第1部分71と弁部材30を外力から保護でき、外力でシール部材第1部分71と弁部材30とのシール性を損なうことを抑制できる(
図2-
図4,
図7)。
【0090】
(S)保護壁76がシール部材覆い部74(シール部材70)に設けられているため、弁部材30が開位置30bにありパックケース101の内部の流体が弁部材30とシール部材70との間を通って弁装置10の外側に流れる時に、保護壁76が流体によって押されて倒れることができる。よって、保護壁76が流体の流れを阻害することを抑制できる(
図2-
図4,
図7)。
【0091】
(T)保護壁76を、シール部材覆い部74のシール部材第1部分71側の端部に、すなわちシール部材第1部分71に接近させて設けることで、シール部材第1部分71と保護壁76との間を省スペース化できる(
図2-
図4,
図7)。
【0092】
(U)保護壁76には、切欠き76aが少なくとも1個所形成されているため、保護壁76が設けられていても、保護壁76の内径側に入り込んだ水を切欠き76aから保護壁76の外に抜くことができる(
図2)。
【0093】
(V)弁装置10が取付けられるパックケース101(電池パック100)が車両に搭載される場合、切欠き76aが、保護壁76を車両前後方向に貫通して形成されているため、保護壁76の内径側に入り込んだ水は、車両走行時に車両前後方向に移動し、移動した先に設けられている切欠き76aを通って保護壁76の外に流れる。そのため、保護壁76の内径側に入り込んだ水を切欠き76aから保護壁76の外に効率よく抜くことができる。
【0094】
(W)シール部材第1部分71が、第1内側突条71aと第1外側突条71bを有するため、シール部材第1部分71を2重シール構造にでき、シール性能を向上できる(
図7)。
【0095】
(X)第1内側突条71aと第1外側突条71bが、それぞれ、径方向内側の側面71a1、71b1よりも径方向外側の側面71a2,71b2の方が、弁部材30の移動方向D1からの傾斜角度が小となっているため、弁部材30が開位置30bにありパックケース101の内部の流体が弁部材30とシール部材70との間を通って流れる時に、第1内側突条71aと第1外側突条71bが流体流れ方向に倒れやすくなり、第1内側突条71aと第1外側突条71bが流体の流れを阻害することを抑制できる(
図7)。
【0096】
(Y)シール部材第2部分73が、第2内側突条73aと第2外側突条73bを有するため、シール部材第2部分73を2重シール構造にでき、シール性能を向上できる(
図7)。
【0097】
(Z)ピンガイド52が、ピン51の動きを弁部材30の移動方向D1のみに規制するため、回転規制機構50により、弁部材30の回転動を規制できるだけでなく、弁部材30が移動方向D1以外の方向に動くことも抑制できる(
図1、
図8)。
【0098】
(A1)弁部材30がベース部材20に対して移動方向D1に平行移動可能とされているため、弁部材30がフラップ式であるなど平行移動しない場合に比べて、弁部材30が弁装置10の内側から外側への流体の通り道を限定することを抑制できる(
図3,
図4)。
【0099】
(B1)シール部材70がベース部材20に取付けられているため、弁部材30が移動する際に弁部材30とシール部材70の両方を動かす必要が無くなり、可動する部材の重量を軽量化できる(
図3,
図4)。
【0100】
(C1)バネ部材40が設けられているため、弁装置10の内側と外側の差圧が所定の圧力差に到達したときにのみ弁部材30を閉位置30aから開位置30bに移動させることができる(
図3,
図4)。
【符号の説明】
【0101】
10 弁装置
20 ベース部材
21 おもて面
22 裏面
23 排出孔
24 バネ挿入部
25 ベース側バネ係合部
26 網状リブ
27 仮止め係止片
28 ナット
30 弁部材
30a 閉位置
30b 開位置
31 弁部材外周部
32 弁部材内側部
32a 弁部材内側部の最奥部
33 弁部材側バネ係合部
40 バネ部材
41 バネ部材の一端部
42 バネ部材の他端部
50 回転規制機構
51 ピン
51a ピンスリット
52 ピンガイド
52a ガイドスリット
60 抜け止め機構
61 抜け止め爪
62 ストッパ
70 シール部材
71 シール部材第1部分
71a 第1内側突条
71b 第1外側突条
72 シール部材排出孔
73 シール部材第2部分
73a 第2内側突条
73b 第2外側突条
74 シール部材覆い部
75 シール部材橋渡し部
76 保護壁
76a 切欠き
100 電池パック
101 パックケース
102 開口部
103 ボルト
D1 弁部材の移動方向