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特開2024-153148冷媒回収再生充填装置および冷媒回収再生充填方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153148
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】冷媒回収再生充填装置および冷媒回収再生充填方法
(51)【国際特許分類】
F25B 45/00 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
F25B45/00 A
F25B45/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066861
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000109772
【氏名又は名称】デンゲン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100070507
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 俊男
(72)【発明者】
【氏名】樋上 貞夫
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 憲二
(57)【要約】
【課題】冷媒貯蔵方式から直接全量充填方式への移行の実現、冷媒再生回収のみを行った車両が長時間充填を行えない状況でも他の車両の冷媒回収再生充填処理を行える冷媒回収再生充填装置等の提供。
【解決手段】第1モードと第2モードを切り替え可能とするモード選択部を備え、第1モードは、冷媒回収タンク内の全液体冷媒を車両の空調機器に充填し冷媒回収タンク内の液体冷媒をなくし冷媒回収タンク内に気体冷媒が残存するモードであり、第2モードは、冷媒回収前の段階で冷媒回収タンク内部に車両の液体冷媒が貯留することを許容し冷媒充填工程では冷媒回収タンク内の液体冷媒を車両の空調機器に充填しても冷媒回収タンク内の液体冷媒の残留を許容するモードであり、冷媒回収タンクは、液体冷媒を当該冷媒回収タンクの上部から送出するためのサイフォン管を有し、底部に液体冷媒を送出するための管路を備える冷媒回収再生充填装置等。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の空調機器と接続するための接続部と、前記空調機器から冷媒を吸引回収するためのコンプレッサと、前記空調機器からの回収冷媒中のオイルを分離するためのオイルセパレータと、真空ポンプと、冷媒を液化するためのコンデンサと、液化された前記冷媒を計量可能な冷媒回収タンクと、冷媒を補充するための冷媒補充部とを備える冷媒回収再生充填装置において、
第1のモードと第2のモードを切り替え可能とするモード選択部を備え、
前記第1のモードは、冷媒回収前の段階で、前記冷媒回収タンクの内部に前記車両の液体冷媒が貯留しない状態を保持しており、その後に車両の空調機器の冷媒を再生しながら前記冷媒回収タンクに回収し、前記充填工程については、再生冷媒の重量が車両の規定冷媒重量よりも少ない場合には、前記規定冷媒重量から前記再生冷媒の重量の差分となる不足量の冷媒を、前記冷媒補充部から液体冷媒として前記冷媒回収タンクへ補充し、気体冷媒を前記冷媒回収タンクに圧送することによって、前記冷媒回収タンク内の全液体冷媒を車両の空調機器に充填するとともに、前記冷媒回収タンク内の液体冷媒をなくし、前記冷媒回収タンク内に前記気体冷媒が残存するモードであり、
前記第2のモードは、冷媒回収前の段階で、前記冷媒回収タンクの内部に前記車両の液体冷媒が貯留することを許容しており、前記冷媒充填工程については、前記冷媒回収タンク内の液体冷媒を車両の空調機器に充填しても、冷媒回収タンク内に液体冷媒が残留することを許容するモードであり、
前記冷媒回収タンクは、液体冷媒を当該冷媒回収タンクの上部から送出するためのサイフォン管を有するとともに、底部に液体冷媒を送出するための管路を備えていることを特徴とする冷媒回収再生充填装置。
【請求項2】
前記冷媒回収タンクを複数備え、少なくとも一基の冷媒回収タンクは、一定以上の純度の単独冷媒を回収するためのメイン冷媒回収タンクとし、少なくとも他の一基の冷媒回収タンクは、一定未満の純度の単独冷媒を回収するためのサブ冷媒回収タンクとし、前記メイン冷媒回収タンクとサブ冷媒回収タンクを切り替え可能とするタンク選択操作部を備えることを特徴とする請求項1に記載の冷媒回収再生充填装置。
【請求項3】
冷媒回収再生充填処理の全体の工程を連続的に行う自動運転と、冷媒回収再生充填処理を各工程別に行う手動運転とを切り替える運転切り替えスイッチを備えることを特徴とする請求項2に記載の冷媒回収再生充填装置。
【請求項4】
モード選択操作部は、情報携帯端末に設けられ、当該情報携帯端末のモード選択操作部から通信手段を介して、前記第1のモードと前記第2のモードを切り替え可能とすることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の冷媒回収再生充填装置。
【請求項5】
請求項1、2又は3に記載の冷媒回収再生充填装置を用いて、車両の空調機器の冷媒を再生しながら冷媒回収タンクへ回収、再生する冷媒回収再生工程と、真空引き工程と、回収再生した冷媒を前記車両の空調機器へ充填する冷媒充填工程とを備える冷媒回収再生充填方法であって、
第1のモードと第2のモードを切り替え可能とし、
前記第1のモードは、冷媒回収前の段階で、前記冷媒回収タンクの内部に前記車両の液体冷媒が貯留しない状態を保持しており、その後に車両の空調機器の冷媒を再生しながら前記冷媒回収タンクに回収し、前記充填工程については、再生冷媒の重量が車両の規定冷媒重量よりも少ない場合には、前記規定冷媒重量から前記再生冷媒の重量の差分となる不足量の冷媒を、前記冷媒補充部から液体冷媒として前記冷媒回収タンクへ補充し、気体冷媒を前記冷媒回収タンクに圧送することによって、前記冷媒回収タンク内の全部の液体冷媒を車両の空調機器に充填するとともに、前記冷媒回収タンク内の全部の液体冷媒をなくし、前記冷媒回収タンク内に前記気体冷媒が残存するモードであり、
前記第2のモードは、冷媒回収前の段階で、前記冷媒回収タンクの内部に前記車両の液体冷媒が貯留することを許容しており、前記冷媒充填工程については、前記冷媒回収タンク内の液体冷媒を車両の空調機器に充填しても、冷媒回収タンク内に液体冷媒が残留することを許容するモードであり、
第1のモードにおいては、前記気体冷媒を、気体圧送用管路を通じて前記冷媒回収タンクに圧送することによって前記冷媒回収タンクの底部から液体冷媒を送出させ、
第2のモードにおいては、前記サイフォン管又は前記冷媒回収タンクの底部から液体冷媒を送出させることを特徴とすることを特徴とする冷媒回収再生充填方法。
【請求項6】
冷媒回収再生工程より前に、車両の空調機器の冷媒の純度を計測、出力する冷媒ガス分析工程を備え、
前記冷媒回収タンクを複数基備え、少なくとも一基の冷媒回収タンクは、一定以上の純度の単独冷媒を回収するためのメイン冷媒回収タンクとし、少なくとも他の一基の冷媒回収タンクは、一定未満の純度の単独冷媒を回収するためのサブ冷媒回収タンクとし、前記面冷媒回収タンクとサブ冷媒回収タンクを切り替え可能とするタンク選択操作部を備えることを特徴とする請求項5に記載の冷媒回収再生充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として車両の空調機器の冷媒を回収し、当該空調機器へ再生冷媒若しくは新たな冷媒を充填するための装置(以下、冷媒回収再生充填装置という。)および方法(以下、冷媒回収再生充填方法)に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の空調機器に用いる冷媒は、従来HFC(ハイドロフルオロカーボン)-134a(以下、「旧冷媒」という。)が主流であった。しかし、近年、より環境への影響が少ない新冷媒であるHFO(ハイドロフルオロオレフィン)―1234yf(以下、「新冷媒」という。)の普及が進んでいる。このため、一般の車両の空調機器には、旧冷媒を用いるものと新冷媒を用いるものとがある。
【0003】
上記旧冷媒及び新冷媒は、その特性において似通っている面がある。また現状下では新冷媒の価格が旧冷媒の十倍以上となっていることもある。このような事情から、一台の車両の空調機器内に、旧冷媒と新冷媒が混合された混合冷媒が封入されることがある。
【0004】
従来の冷媒回収再生充填装置を用いる冷媒回収再生充填方法(即ち、回収タンクに複数台車両分の冷媒を貯蔵する方式。以下、「冷媒貯蔵方式」という。)においては、混合冷媒が封入された車両を接続すると、冷媒回収再生充填装置の冷媒回収タンク内に貯留された冷媒に、混合冷媒が混合される。このため、その車両の処理が終わったのちに、他の車両を当該冷媒回収再生充填装置に接続して処理を行うと、当該他の車両は、混合冷媒に汚染されることとなる。
【0005】
混合冷媒は、旧冷媒あるいは新冷媒の何れかのみを使用する場合と比較しても空調機器の性能面においてあまり変わらない。このため、車両の所有者の問題意識が希薄となりやすいが、近い将来、混合冷媒の廃棄処理方法について問題を生じる恐れがある。
【0006】
このため、本願の発明者らは、混合冷媒による汚染を拡散させないように、車両側の空調機器から回収タンクへ回収した液体冷媒をすべて車両側の空調機器へ戻し、回収タンク内の液体冷媒をなくすことにより、前記他の車両が混合冷媒に汚染されないようにする、新規な冷媒回収再生充填方法および冷媒回収再生充填装置を開発した(例えば、特許文献1参照。)以下、当該新規な冷媒回収再生充填方法を、「直接全量充填方式」という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
当該冷媒回収再生充填方法および冷媒回収再生充填装置によれば、冷媒回収タンクの上部に、気体冷媒により当該冷媒回収タンク内へ圧力を付与するための気体圧送用管路が接続されており、当該冷媒回収タンクの下部に、液体冷媒を送出可能とする送出部を備えていることから、冷媒回収タンク内の全ての液体冷媒を車両の空調機器へ充填し、冷媒回収タンク内の液体冷媒をなくし、新たな他の車両をその後に当該冷媒回収再生充填装置に接続しても、当該新たな他の車両に混合冷媒が充填されることがなく、混合冷媒による汚染の拡散を防止することができるものである。
【0009】
しかしながら、現在において普及した従来の冷媒貯蔵方式が多く使用されており、直接全量充填方式の移行が速やかに行われない現状がある。当該冷媒貯蔵方式から、直接全量充填方式の冷媒回収再生充填装置へと、速やかに移行できることが望ましい。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、冷媒貯蔵方式から直接全量充填方式への速やかな移行を実現できる冷媒回収再生充填装置の提供を、発明が解決しようとする課題とする。
【0011】
また、一方で、上記従来の冷媒回収再生充填装置は、一台の車両について冷媒回収再生充填処理を行うに際して、その操作をすべて完了しなければ、次の車両について冷媒回収再生充填処理を行うことができない欠点がある。より具体的には、例えば、事故車両等であってその空調機器から冷媒回収を行った後、部品の交換など修理を行う必要のため、冷媒充填が長時間に亘ってされない場合であっても、当該一台の車両の処理を待つ必要があり、改善の余地があった。
【0012】
このため、本発明は、上記冷媒貯蔵方式から直接全量充填方式への速やかな移行を実現させることを前提として、冷媒再生回収のみを行った車両が長時間充填を行えない状況であっても、他の車両の冷媒回収再生充填処理を行うことができる冷媒回収再生充填装置および冷媒回収再生充填方法の提供を、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、車両の空調機器と接続するための接続部と、前記空調機器から冷媒を吸引回収するためのコンプレッサと、前記空調機器からの回収冷媒中のオイルを分離するためのオイルセパレータと、真空ポンプと、冷媒を液化するためのコンデンサと、液化された前記冷媒を計量可能な冷媒回収タンクと、冷媒を補充するための冷媒補充部とを備える冷媒回収再生充填装置において、
第1のモードと第2のモードを切り替え可能とするモード選択部を備え、
前記第1のモードは、冷媒回収前の段階で、前記冷媒回収タンクの内部に前記車両の液体冷媒が貯留しない状態を保持しており、その後に車両の空調機器の冷媒を再生しながら前記冷媒回収タンクに回収し、前記充填工程については、再生冷媒の重量が車両の規定冷媒重量よりも少ない場合には、前記規定冷媒重量から前記再生冷媒の重量の差分となる不足量の冷媒を、前記冷媒補充部から液体冷媒として前記冷媒回収タンクへ補充し、気体冷媒を前記冷媒回収タンクに圧送することによって、前記冷媒回収タンク内の全液体冷媒を車両の空調機器に充填するとともに、前記冷媒回収タンク内の液体冷媒をなくし、前記冷媒回収タンク内に前記気体冷媒が残存するモードであり、
前記第2のモードは、冷媒回収前の段階で、前記冷媒回収タンクの内部に前記車両の液体冷媒が貯留することを許容しており、前記冷媒充填工程については、前記冷媒回収タンク内の液体冷媒を車両の空調機器に充填しても、冷媒回収タンク内に液体冷媒が残留することを許容するモードであり、
前記冷媒回収タンクは、液体冷媒を当該冷媒回収タンクの上部から送出するためのサイフォン管を有するとともに、底部に液体冷媒を送出するための管路を備えていることを特徴とする冷媒回収再生充填装置を、上記課題を解決するための手段とする。
【0014】
また本発明は、上記構成を前提として、前記冷媒回収タンクを複数基備え、少なくとも一基の冷媒回収タンクは、一定以上の純度の単独冷媒を回収するためのメイン冷媒回収タンクとし、少なくとも他の一基の冷媒回収タンクは、一定未満の純度の単独冷媒を回収するためのサブ冷媒回収タンクとし、前記メイン冷媒回収タンクとサブ冷媒回収タンクを切り替え可能とするタンク選択操作部を備えることを特徴とする請求項1に記載の冷媒回収再生充填装置を、上記課題を解決するための手段とする。
【0015】
また本発明は、上記構成を前提として、冷媒回収再生充填処理の全体の工程を連続的に行う自動運転と、冷媒回収再生充填処理を各工程別に行う手動運転とを切り替える運転切り替えスイッチを備えることを特徴とする冷媒回収再生充填装置を、上記課題を解決するための手段とする。
【0016】
また本発明は、上記いずれかの発明において、モード選択操作部は、情報携帯端末に設けられ、当該情報携帯端末のモード選択操作部から通信手段を介して、前記第1のモードと前記第2のモードを切り替え可能とすることを特徴とする冷媒回収再生充填装置を、上記課題を解決するための手段とする。
【0017】
また本発明は、上記いずれかの冷媒回収再生充填装置を用いて、車両の空調機器の冷媒を再生しながら冷媒回収タンクへ回収、再生する冷媒回収再生工程と、真空引き工程と、回収再生した冷媒を前記車両の空調機器へ充填する冷媒充填工程とを備える冷媒回収再生充填方法であって、
第1のモードと第2のモードを切り替え可能とし、
前記第1のモードは、冷媒回収前の段階で、前記冷媒回収タンクの内部に前記車両の液体冷媒が貯留しない状態を保持しており、その後に車両の空調機器の冷媒を再生しながら前記冷媒回収タンクに回収し、前記充填工程については、再生冷媒の重量が車両の規定冷媒重量よりも少ない場合には、前記規定冷媒重量から前記再生冷媒の重量の差分となる不足量の冷媒を、前記冷媒補充部から液体冷媒として前記冷媒回収タンクへ補充し、気体冷媒を前記冷媒回収タンクに圧送することによって、前記冷媒回収タンク内の全部の液体冷媒を車両の空調機器に充填するとともに、前記冷媒回収タンク内の全部の液体冷媒をなくし、前記冷媒回収タンク内に前記気体冷媒が残存するモードであり、
前記第2のモードは、冷媒回収前の段階で、前記冷媒回収タンクの内部に前記車両の液体冷媒が貯留することを許容しており、前記冷媒充填工程については、前記冷媒回収タンク内の液体冷媒を車両の空調機器に充填しても、冷媒回収タンク内に液体冷媒が残留することを許容するモードであり、
第1のモードにおいては、前記気体冷媒を、前記サイフォン管を通じて前記冷媒回収タンクに圧送することによって前記冷媒回収タンクの底部から液体冷媒を送出させ、
第2のモードにおいては、前記サイフォン管又は前記冷媒回収タンクの底部から液体冷媒を送出させることを特徴とすることを特徴とする冷媒回収再生充填方法を、上記課題を解決するための手段とする。
【0018】
また本発明は、上記例回収再生充填方法を前提として、冷媒回収再生工程より前に、車両の空調機器の冷媒の純度を計測、出力する冷媒ガス分析工程を備え、前記冷媒回収タンクを複数基備え、少なくとも一基の冷媒回収タンクは、一定以上の純度の単独冷媒を回収するためのメイン冷媒回収タンクとし、少なくとも他の一基の冷媒回収タンクは、一定未満の純度の単独冷媒を回収するためのサブ冷媒回収タンクとし、前記面冷媒回収タンクとサブ冷媒回収タンクを切り替え可能とするタンク選択操作部を備えることを特徴とする請求項5に記載の冷媒回収再生充填方法を、上記課題を解決するための手段とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第1のモードと第2のモードを切り替え可能とするモード選択操作部を備え、且つ、液体冷媒を当該冷媒回収タンクの上部から送出するためのサイフォン管を有するとともに、底部に液体冷媒を送出するための管路を備えた特殊な冷媒回収タンクを備えたことによって、冷媒貯蔵方式の冷媒回収再生充填装置としても動作することができ、直接全量充填方式の冷媒回収再生充填装置としても動作することができる、冷媒回収再生充填装置を提供することが可能となる。これによって、例えば、第2のモードを使用し、使い慣れた冷媒貯蔵方式の冷媒回収再生充填装置として導入後、第1のモードに切り替えて使用することで、スムーズに、直接全量充填方式の冷媒回収再生充填装置に移行することができる。
【0020】
また本発明によれば、上記発明の構成を備えた上で、前記冷媒回収タンクを複数基備え、少なくとも一基の冷媒回収タンクは、一定以上の純度の単独冷媒を回収するためのメイン冷媒回収タンクとし、少なくとも他の一基の冷媒回収タンクは、一定未満の純度の単独冷媒を回収するためのサブ冷媒回収タンクとし、前記メイン冷媒回収タンクとサブ冷媒回収タンクを切り替え可能とするタンク選択操作部を備えるものとしたことから、一台の車両の処理の冷媒回収を行った後、充填がされていないような状況であっても、その後において、他の車両の冷媒回収再生充填処理を待つことなく行うことができる。
【0021】
また本発によれば、上記構成を前提として、冷媒回収再生充填処理の全体の工程を連続的に行う自動運転と、冷媒回収再生充填処理を各工程別に行う手動運転とを切り替える運転切り替えスイッチを備えることとしたから、上記発明の作用効果を奏する上に、一台の車両の処理を手動で冷媒回収再生し、その後、他の車両の処理を自動運転で冷媒回収再生充填して処理を完了し、前記一台の車両の処理を手動で冷媒充填して処理を完了することによって、前記一台の車両の処理を待つことなく、前記他の車両の冷媒回収再生充填処理をおこなうことができる。
【0022】
また本発明によれば、モード選択操作部を情報携帯端末に備え、装置本体との通信によって第1のモード、第2のモードの切り替えを行えることによって、利便性を向上させることができる。
【0023】
また本発明によれば、冷媒貯蔵方式としても動作することができ、直接全量充填方式としても動作することができ、これによって、例えば、第2のモードを使用し、使い慣れた冷媒貯蔵方式の冷媒回収再生充填装置として導入後、第1のモードに切り替えて使用することで、スムーズに、直接全量充填方式の冷媒回収再生充填装置に移行することができる。
【0024】
また本発明によれば、上記発明の作用効果を奏する上に、冷媒回収再生工程より前に、車両の空調機器の冷媒の純度を計測、出力する冷媒ガス分析工程を備えることによって、対応する冷媒回収タンクを選択することが容易となり、一台の車両の処理の冷媒回収を行った後、充填がされていないような状況であっても、その後において、他の車両の冷媒回収再生充填処理を待つことなく、円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施例1に係る冷媒回収再生充填装置における処理の概要を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の実施例1に係る冷媒回収再生充填装置の構成を示す説明図であって、冷媒回収・再生を行う状態を示す説明図である。
【
図3】本発明の実施例1に係る冷媒回収再生充填装置の構成を示す説明図であって、真空引き工程を示す説明図である。
【
図4】本発明の実施例1に係る冷媒回収再生充填装置の構成を示す説明図であって、第1のモードにおける、冷媒充填工程を示す説明図である。
【
図5】本発明の実施例1に係る冷媒回収再生充填装置の構成を示す説明図であって、第2のモードにおける、冷媒充填工程を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施例2に係る冷媒回収再生充填装置における処理の概要を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施例2に係る冷媒回収再生充填装置の構成を示す説明図であって、第2のモードにおいて、1台目の車両の冷媒回収・再生を行う状態を示す説明図である。
【
図8】本発明の実施例2に係る冷媒回収再生充填装置の構成を示す説明図であって、第2のモードにおいて、1台目の車両の真空引き工程を示す説明図である。
【
図9】本発明の実施例2に係る冷媒回収再生充填装置の構成を示す説明図であって、第1のモードにおいて、2台目の車両の回収・再生工程を行う状態を示す説明図である。
【
図10】本発明の実施例2に係る冷媒回収再生充填装置の構成を示す説明図であって、第1のモードにおいて、2台目の車両の真空引き工程を示す説明図である。
【
図11】本発明の実施例2に係る冷媒回収再生充填装置の構成を示す説明図であって、第1のモードにおいて、2台目の車両の充填工程を示す説明図である。
【
図12】本発明の実施例2に係る冷媒回収再生充填装置の構成を示す説明図であって、第2のモードにおいて、1台目の車両の充填工程を示す説明図である。
【
図13】本発明の他の実施例に係る冷媒回収再生充填装置の構成を示す説明図である。
【
図14】本発明の各実施例に係る冷媒回収再生充填装置のシステム構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施例1、2に係る冷媒回収再生充填装置Rについて説明する。尚、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、配管等一部の構成が簡略化または模式化して示されたり、電磁弁等一部の構成部品等が省略されたりしている。
【実施例0027】
本発明の実施例1に係る冷媒回収再生充填装置Rは、使用冷媒をHFO-1234YF(単独冷媒)用とした冷媒回収再生充填装置Rである。当該冷媒回収再生充填装置Rは、共通する冷媒(HFO-1234YF)を使用する2台の車両の空調機器に接続可能となっており、添加されるオイルの種類(PAG(ポリアルキレングリコール)、POE(ポリオールエステル))によって選択的にいずれか一方の処理を可能とするため、切替弁V4で冷媒回収再生充填処理を選択できるようになっている(
図2参照。)。
【0028】
そして、当該冷媒回収充填装置Rは、
図2等に示すように、回収冷媒のオイルを分解するための第1オイルセパレータ40と、回収冷媒中の水分を除去するためのドライフィルタ63(水分除去手段)と、コンプレッサ60と、回収冷媒中のオイルを更に分離するための第2オイルセパレータ41A(残留オイルを主として分離するためのもの)、第3オイルセパレータ41B(残留オイルを高い精度で分離するもの)と、コンデンサ62と、計量器2Aを有する1基の冷媒回収タンク1Aと、
図3に示す真空引きを行うための真空ポンプ61と、再生冷媒が不足した場合に使用する補充用冷媒供給缶3と、を備えている。
【0029】
また、本発明の実施例1に係る冷媒回収再生充填装置Rは、冷媒回収再生充填処理の全体の工程を連続的に行う自動運転と、各工程を個別に行うための手動運転とを切り替える運転切り替えスイッチを備えている。
また、当該冷媒回収再生充填装置Rは、第1のモード(直接全量充填方式)と第2のモード(冷媒貯蔵方式)を切り替えるモード切り替え手段を備えている。第1のモードは、車両の空調機器から冷媒回収タンクへ回収、再生した冷媒を全て(その一部が減少した場合には、設定量を満たすまで冷媒が補充される。)を当該車両の空調機器に充填する方式である。また第2のモードは、冷媒回収タンクに冷媒がある程度貯蔵されており、回収された冷媒と貯蔵されている冷媒とが混合され、そのうちの規定量が車両の空調機器に充填される方式である。
【0030】
ここで、第1のモードは、冷媒回収再生工程、充填工程において、次の動作を行う。
即ち、冷媒回収再生工程については、冷媒回収前の段階で、冷媒回収タンクの内部に車両の液体冷媒が貯留しない状態を保持しており、その後に車両の空調機器の冷媒を再生しながら冷媒回収タンクに回収する。また充填工程については、
図4に示すように、再生冷媒の重量が車両の規定冷媒重量よりも少ない場合には、規定冷媒重量から再生冷媒の重量の差分となる不足量の冷媒を、前記冷媒補充部から液体冷媒として冷媒回収タンクへ補充する。そして、冷媒補充部から気体冷媒を前記冷媒回収タンクに圧送することによって、前記冷媒回収タンク内の全液体冷媒を車両の空調機器に充填するとともに、前記冷媒回収タンク内の液体冷媒をなくす動作を行う。
【0031】
また第2のモードは、冷媒回収再生工程、充填工程において、次の動作を行う。即ち、冷媒回収再生工程については、冷媒回収前の段階で、冷媒回収タンクの内部に車両の液体冷媒が貯留しており、冷媒回収再生工程によって、車両の空調機器からの冷媒回収によって、貯留した冷媒と回収再生した冷媒とが混合され、充填工程については、
図5に示すように、冷媒回収タンク内の液体冷媒を車両の空調機器に充填し、冷媒回収タンク内に液体冷媒が残留するものである。
【0032】
図示されない装置本体の外面には、自動運転と手動運転を切り替えるための運転切り替えスイッチと、添加オイル(PAG又はPOE)選択用のレバー式切り替えスイッチと、タッチパネル式の表示部と、車両の空調機器C1と接続するための第1接続部5A、車両の空調機器C2と接続するための第2接続部5Bとを備えている。
モード切り替え手段は、タッチパネル式の表示部に表示させることができる。そしてタッチパネルの操作によって、モードの切り替えを行うことが可能である。
また第1接続部5Aには洗浄手段接続部50A、第2接続部5Bには洗浄手段接続部50Bを備えている。
【0033】
本実施例1に係る冷媒回収再生充填装置を構成する各機器を接続する管路としては、第1共通管路70、回収側管路71、真空引き側管路72、充填側管路73、投入用管路74、第1のモード用充填管路75、気体圧送用管路76、冷媒供給管路77、第2のモード用充填管路78を有する。
【0034】
共通管路70は、第1接続部5A、第2接続部5Bの夫々から第1オイルセパレータ40を経由し、ドライフィルタ63までとなる管路である。
【0035】
回収側管路71は、ドライフィルタ63からコンプレッサ60、第2オイルセパレータ41A、第3オイルセパレータ41B、コンデンサ62を経由し冷媒回収タンク1に至る前の分岐点までの管路である。
【0036】
真空引き側管路72は、ドライフィルタ63から真空ポンプ61を経由する管路である。
【0037】
充填側管路73は、冷媒回収タンクの後方から第1接続部5A、第2接続部5Bに至る管路(このため、共通管路と配管上、一部共通する。)である。
【0038】
回収側管路の終端となる分岐点から、投入用管路74、気体圧送用管路76の2本の管路に分岐している。
【0039】
投入用管路74および気体圧送用管路76は冷媒回収タンク1に接続される。投入用管路74は冷媒回収タンク1の下部から上部に至るサイフォン管10に接続されており、気体圧送用管路76は冷媒回収タンク1の上部に接続される。投入用管路74には、第1電磁弁V6A、第1逆止弁V60Aが設けられる。気体圧送用管路76には第3電磁弁V8A、第3逆止弁V80Aが設けられる。
【0040】
冷媒回収タンク1から充填側管路73に至るまで、第1のモード用充填管路75、第2のモード用充填管路78の2本の管路が設けられている。第1のモード用充填管路75は、冷媒回収タンク1の底部と充填側管路73との間を接続している。第2のモード用充填管路78は、メイン冷媒回収タンク1の下部から上部に至るサイフォン管10と充填側管路73との間を接続している。第1のモード用充填管路75には、第5電磁弁および第5逆止弁V70Aが設けられる。第2のモード用充填管路78には、第6電磁弁V7Bおよび第6逆止弁V70Bが設けられる。
【0041】
また、冷媒供給管路77は、補充用冷媒供給缶3からドライフィルタ63までを接続する管路である。尚、冷媒供給管路77には、冷媒の送出時の量を制御するために、冷媒残量検知装置770を設けている。
【0042】
また装置本体内には、
図14に示すように、バスF7で接続された、制御装置F1と主記憶装置F2と補助記憶装置F3とを備えている。
【0043】
前記補助記憶装置F3には、冷媒の回収、再生、真空引き、充填に関する一連の動作を行うプログラムが格納されている。
当該プログラムは、
図1のフローチャートに示すように、第1のモードにおける処理の実行と、第2のモードにおける処理の実行を、モード選択操作部での切り替え入力によって切り替えることができるように構成されている。
前記制御装置F1が、当該プログラムを主記憶装置F2にロードして、実行することで、冷媒回収再生充填装置Rは、第1のモードにおける処理、第2のモードにおける処理を選択的に実行することとなる。
【0044】
第1のモードが選択されている場合には、冷媒回収タンク内に設定充填量の液体冷媒があるかどうかを、冷媒回収タンク1の計量器2の計測値を参照して制御装置F1が判断する。液体冷媒が設定充填量に満たない場合には、供給缶の冷媒が有るかどうかを冷媒残量検知装置770の検知から制御装置F1が判断する。供給缶の冷媒がない場合には、新たな供給缶の取付が行われ、供給缶の冷媒がある状態まで待ち、供給缶が取付けられ、タンク内に設定充填量があると判断された場合には、充填処理を開始するようになっている。
【0045】
第1のモードが選択されていない場合(即ち、第2のモードが選択されている場合)には、冷媒回収タンク内に設定充填量に加えて少なくともサイフォン管10から冷媒を送出可能とするために必要な量の液体冷媒があるかどうかを、冷媒回収タンク1の計量器2の計測値を参照して制御装置F1が判断する。液体冷媒が予定された充填量に満たない場合には、新たな供給缶の取付がされることを条件として、その供給缶内の冷媒が全て冷媒回収タンク内に移動したことを検知すると、必要な量の液体冷媒があるかどうかを再度確認し、冷媒回収タンク内に予定された充填量があると判断された場合には、充填処理を開始するようになっている。即ち、第2のモードにおいては、供給缶内の冷媒が全て冷媒回収タンク内に移動することを条件とし、多量の冷媒を冷媒回収タンク内に供給する点で、第1のモードとは異なる。
【0046】
第1のモードと第2のモードのいずれかを選択可能とするために、前記表示部には、GUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)を用いた操作ボタン(モード選択操作部)が表示されている。
表示部のタッチパネルへの入力操作によって、選択した操作ボタンを押すことができる。
【0047】
また、前記バスF7は、
図14に示すように、種々の入力機器F4、種々の出力機器F5、種々の通信機器F6と接続されている。
種々の入力機器F4としては、例えば、前記冷媒残量検知装置770のセンサや、表示部のタッチパネル部や、図示されない各種のセンサ類等が該当する。
種々の出力機器F5としては、例えば、制御装置からの指示によって動作する第1電磁弁V1等の各電磁弁等や、真空ポンプ61、コンデンサ62や表示部等が該当する。
種々の通信機器F6としては、例えば、当該冷媒回収再生充填装置Rと通信が可能となるタブレット端末等の携帯情報端末とを接続するWi-Fi(登録商標)やBLUETOOTH(登録商標)等の規格を用いた通信手段等が該当する。
【0048】
以上の構成を備える本実施例1に係る冷媒回収再生充填装置を使用する例を以下に示す。
【0049】
電源の投入後、運転切り替えスイッチについて自動側を選択する。
また、第1のモードと第2のモードを切り替えるモード切り替え手段で、使用するモードを選択する。
次いで、冷媒中に添加する潤滑オイル(PAG又はPOE)をレバー式切り替えスイッチで選択する。尚、いずれも添加しない場合には、レバーを中立状態とすることで添加しない選択を行うことができる。
【0050】
所定の準備作業(例えば、内部洗浄状態の確認、冷媒回収タンクの圧力・温度の確認、冷媒ガス缶、添加オイル缶の取り付け、添加オイル量の設定など)を行ったのち、冷媒回収・再生工程を開始することができる。
【0051】
(回収・再生工程)
車両の空調機器C1と、冷媒回収再生充填装置Rの装置本体における第1接続部5Aのホースとを接続した状態において、制御装置F1は、前記コンプレッサ60を動作させ、車両の空調機器C1中の回収冷媒を前記装置本体内の冷媒回収タンク1へ吸引する。
【0052】
吸引した回収冷媒は、装置本体内の前記第1オイルセパレータ40に送られ回収冷媒中に混在したオイルが分離除去される。更にドライフィルタ63を通過させることによって、当該回収冷媒中の水分が除去される。
【0053】
回収冷媒は、前記コンプレッサ60を経由して、更に第2オイルセパレータ41A、第3オイルセパレータ41Bへ送られる。高温高圧となる当該再生気体冷媒は、第2オイルセパレータ41A、第3オイルセパレータ41Bによって、僅かに残留するオイルが分離され、再生冷媒の純度を高める。
このようにして得られた高温高圧の再生気体冷媒は、コンデンサ62にて液化され、第2電磁弁V6B、第2逆止弁V60Bを経て第2投入側管路74Bから、サイフォン管10を通じて前記サブ冷媒回収タンク1B内へ送られる。
【0054】
(真空引き工程)
その後、車両の空調機器C1の水分を除去するため、
図3に示すように、真空ポンプ61により真空引きを行うことにより、車両の空調機器C1から第1オイルセパレータ40、ドライフィルタ63から真空ポンプ61へ至る経路(即ち、共通管路70及び真空引き側管路72)を、真空乾燥する。
本工程によって、車両の空調機器C1中の水分が除去される。
【0055】
(補充・充填・圧送工程)
選択されたモードが第1のモードのときには、冷媒回収タンク1内に回収された液化再生冷媒に対して、当該液化再生冷媒の内容量の差分の重量分だけ、新規な液体冷媒を補充する。
前記コンプレッサ60を用いることによって、補充用冷媒供給缶3から冷媒供給経路77、ドライフィルタ63、回収側管路71、当該コンプレッサ60、第2オイルセパレータ41A、第3オイルセパレータ41B、コンデンサ62、投入側管路74から更に第1電磁弁V6Aを通じて、冷媒回収タンク1に補充する。
新規な液体冷媒の補充は、本実施例の全工程1サイクル毎に行われる。補充量は、あらかじめ当該冷媒回収再生充填装置Rに設定した規定冷媒重量から前記計測器2で計測された回収冷媒の重量の差分(追加量)とする。
【0056】
追加量の液体冷媒を冷媒回収タンク1に圧送補充後に、車両の空調機器への液体冷媒の充填は、新規な気体冷媒の圧送によって行う。
【0057】
前記追加の冷媒は、この補充用冷媒供給缶3から、新規な液体冷媒として冷媒回収タンク1へ前記追加量を補充する。その後、
図4に示すように、補充用冷媒供給缶3から気体圧送用管路76の第3電磁弁V8A、第3逆止弁V80Aを経由し、気体冷媒を圧送する。当該気体冷媒の圧送により、冷媒回収タンク1内の液体冷媒を当該冷媒回収タンク1の下部から、第1のモード用充填管路75、第2電磁弁V7A、充填側管路73を経由して、車両の空調機器C1へ充填する。車両の空調機器C1への液体冷媒の圧送充填後は、冷媒回収タンク1には圧送後の新規の気体冷媒が残留することとなる。
【0058】
充填に際して、前記冷媒補充部3から、気体冷媒を冷媒回収タンク1の上部から押し込み、当該冷媒回収タンク1内の全ての液体冷媒を、液体の状態で圧送し、前記車両の空調機器C1へ充填する。
【0059】
圧送は、前記コンプレッサ60を用い、第2オイルセパレータ41A、第3オイルセパレータ41B、コンデンサ62を含め、気体圧送用管路76を経由し、冷媒回収タンク1の上部から行う。冷媒回収タンク1まで気体の状態で圧送するため、本実施例1では、コンデンサ62のファン62Aを停止させることで、高圧高温ガスで、液化させないようにしている。
【0060】
そして、当該冷媒回収タンク1内の液体冷媒を前記車両の空調機器C1へ液体の状態で充填し、前記冷媒回収タンク1から規定量となる全部の液体冷媒をなくし、当該規定量となる全部の液体冷媒の圧送に用いた新規な気体冷媒の残りが当該冷媒回収タンク1内に残存するものとする。
【0061】
以上に示した一連の工程によって、冷媒回収タンク1内に液体冷媒が貯留されず、車両の空調機器C1内に当初封入されていた冷媒は、再生された状態で当該車両へ全て充填される。車両に対する冷媒回収再生充填処理の自動運転が終了する。
【0062】
また、選択されたモードが第2のモードのときには、上記したように、冷媒回収タンク内に設定充填量に加えて少なくともサイフォン管10から冷媒を送出可能とするために必要な量の液体冷媒があるかどうかを、冷媒回収タンク1の計量器2の計測値を参照して制御装置F1が判断する。液体冷媒が予定された充填量に満たない場合には、新たな供給缶の取付がされることを条件として、その供給缶内の冷媒が全て冷媒回収タンク内に移動したことを検知すると、必要な量の液体冷媒があるかどうかを再度確認し、冷媒回収タンク内に予定された充填量があると判断された場合には、
図5に示すように、充填処理を開始する。
【0063】
液体冷媒は、当該冷媒回収タンク1内から、サイフォン管10を通して、送出される。規定量の液体冷媒を車両の空調機器C1へ充填後は、冷媒回収タンク1には、液体冷媒が残存することとなる。これによって、車両に対する冷媒回収再生充填処理の自動運転が終了する。
【実施例0064】
本発明の実施例2に係る冷媒回収再生充填装置Rは、実施例1と同様に、使用冷媒をHFO-1234YF用とした冷媒回収再生充填装置Rである。本実施例2は、冷媒回収タンクを2基有しており、その結果、実施例1と同様に第1のモードと第2のモードの切り換えができることはもとより、一方の冷媒回収タンクを使用した状態においても、他の車両の冷媒回収再生充填処理を行うことができ、複数の冷媒回収タンクと直接全量充填方式が選択使用できることとの組み合わせによって、従来の貯蔵方式を選択的に使用しても混合冷媒を発生させない点で、優れたものである。
【0065】
当該実施例2に係る冷媒回収再生充填装置Rは、
図7等に示すように、回収冷媒のオイルを分離するための第1オイルセパレータ40と、回収冷媒中の水分を除去するためのドライフィルタ63(水分除去手段)と、コンプレッサ60と、回収冷媒中のオイルを更に分離するための第2オイルセパレータ41A(残留オイルを主として分離するためのもの)、第3オイルセパレータ41B(残留オイルを高い精度で分離するもの)と、コンデンサ62と、計量器2A、2Bを有する2基の冷媒回収タンク1A、1Bと、真空引きを行うための真空ポンプ61と、再生冷媒が不足した場合に使用する補充用冷媒供給缶3と、を備えている。
【0066】
また、冷媒回収再生充填装置Rは、2基の冷媒回収タンク1A、1Bを選択して切り替えするための冷媒回収タンク切り替え手段を備えている。冷媒回収タンク切り替え手段により、第1電磁弁V6A、第2電磁弁V6B、第3電磁弁V8A、第4電磁弁V8B等の開閉を切り替え、選択した冷媒回収タンクを使用可能とする。
【0067】
本実施例2において、切り替え可能となる2基の冷媒回収タンクのうち一方の冷媒回収タンク1Aは、冷媒の純度が一定以上の冷媒であるメイン冷媒回収タンク1Aとし、他方の冷媒回収タンクは、例えば冷媒の純度が一定未満となるサブ冷媒回収タンク1Bとする。尚、本実施例においては、メイン冷媒回収タンク1A、サブ冷媒回収タンク1Bのいずれもタンク容量を4L程度としている。
【0068】
また、本発明の実施例2に係る冷媒回収再生充填装置Rは、冷媒回収再生充填処理の全体の工程を連続的に行う自動運転と、各工程を個別に行うための手動運転とを切り替える運転切り替えスイッチを備えている。
また、当該冷媒回収再生充填装置Rは、第1のモード(直接全量充填方式)と第2のモード(冷媒貯蔵方式)を切り替えるモード切り替え手段を備えている。第1のモードは、車両の空調機器から冷媒回収タンクへ回収、再生した冷媒を全て(その一部が減少した場合には、設定量を満たすまで冷媒が補充される。)を当該車両の空調機器に充填する方式である。また第2のモードは、冷媒回収タンクに冷媒がある程度貯蔵されており、回収された冷媒と貯蔵されている冷媒とが混合され、そのうちの規定量が車両の空調機器に充填される方式である。
【0069】
ここで、第1のモードは、実施例1と同様に、冷媒回収再生工程、充填工程において、次の動作を行う。即ち、冷媒回収再生工程については、冷媒回収前の段階で、冷媒回収タンクの内部に車両の液体冷媒が貯留しない状態を保持しており、その後に車両の空調機器の冷媒を再生しながら冷媒回収タンクに回収する。また充填工程については、再生冷媒の重量が車両の規定冷媒重量よりも少ない場合には、規定冷媒重量から再生冷媒の重量の差分となる不足量の冷媒を、前記冷媒補充部から液体冷媒として冷媒回収タンクへ補充する。そして、冷媒補充部から気体冷媒を前記冷媒回収タンクに圧送することによって、前記冷媒回収タンク内の全液体冷媒を車両の空調機器に充填するとともに、前記冷媒回収タンク内の液体冷媒をなくす動作を行う。
【0070】
また第2のモードは、実施例1と同様に、冷媒回収再生工程、充填工程において、次の動作を行う。即ち、冷媒回収再生工程については、冷媒回収前の段階で、冷媒回収タンクの内部に車両の液体冷媒が貯留しており、冷媒回収再生工程によって、車両の空調機器からの冷媒回収によって、貯留した冷媒と回収再生した冷媒とが混合され、充填工程については、冷媒回収タンク内の液体冷媒を車両の空調機器に充填し、冷媒回収タンク内に液体冷媒が残留するものである。
【0071】
図示されない装置本体の外面には、自動運転と手動運転を切り替えるための運転切り替えスイッチと、添加オイル(PAG又はPOE)選択用のレバー式切り替えスイッチと、タッチパネル式の表示部と、車両の空調機器C1と接続するための第1接続部5A、車両の空調機器C2と接続するための第2接続部5Bとを備えている。
冷媒回収タンク切り替え手段と、モード切り替え手段は、タッチパネル式の表示部に表示させることができる。そしてタッチパネルの操作によって、冷媒回収タンクの切り替え、モードの切り替えをそれぞれ行うことが可能である。
また第1接続部5Aには洗浄手段接続部50A、第2接続部5Bには洗浄手段接続部50Bを備えている。
【0072】
本実施例に係る冷媒回収再生充填装置を構成する各機器を接続する管路としては、第1共通管路70、回収側管路71、真空引き側管路72、充填側管路73、第1投入用管路74A、第2投入用管路74B、第1のモード用メイン側充填管路75A、第1のモード用サブ側充填管路75B、第1気体圧送用管路76A、第2気体圧送用管路76B、冷媒供給管路77、第2のモード用メイン側充填管路78A、第2のモード用サブ側充填管路78Bを有する。
【0073】
共通管路70は、第1接続部5A、第2接続部5Bの夫々から第1オイルセパレータ40を経由し、ドライフィルタ63までとなる管路である。
【0074】
回収側管路71は、ドライフィルタ63からコンプレッサ60、第2オイルセパレータ41A、第3オイルセパレータ41B、コンデンサ62を経由し冷媒回収タンク1に至る前の分岐点までの管路である。
【0075】
真空引き側管路72は、ドライフィルタ63から真空ポンプ61を経由する管路である。
【0076】
充填側管路73は、2基の冷媒回収タンクの後方の合流部分から第1接続部5A、第2接続部5Bに至る管路(このため、共通管路と配管上、一部共通する。)である。
【0077】
回収側管路の終端となる分岐点から、第1投入用管路74A、第2投入用管路74B、第1気体圧送用管路76A、第2気体圧送用管路76Bの4本の管路が分岐している。
【0078】
第1投入用管路74Aおよび第1気体圧送用管路76Aはメイン冷媒回収タンク1Aに接続される。第1投入用管路74Aはメイン冷媒回収タンク1Aの下部から上部に至るサイフォン管10Aに接続されており、第1気体圧送用管路76Aはメイン冷媒回収タンク1Aの上部に接続される。第1投入用管路74Aには、第1電磁弁V6A、第1逆止弁V60Aが設けられる。第1気体圧送用管路76Aには第3電磁弁V8A、第3逆止弁V80Aが設けられる。
【0079】
第2投入用管路74Bおよび第2気体圧送用管路76Bはサブ冷媒回収タンク1Bに接続される。第2投入用管路74Bはサブ冷媒回収タンク1Bの下部から上部に至るサイフォン管10Bに接続されており、第2気体圧送用管路76Bはサブ冷媒回収タンク1Bの上部に接続される。第2投入用管路74Bには、第2電磁弁V6B、第2逆止弁V60BBが設けられる。第2気体圧送用管路76Bには、第4電磁弁V8B、第4逆止弁V80Bが設けられる。
【0080】
メイン冷媒回収タンク1Aから充填側管路73に至るまで、第1のモード用メイン側充填管路75A、第2のモード用メイン側充填管路78Aの2本の管路が設けられている。第1のモード用メイン側充填管路75Aは、メイン冷媒回収タンク1Aの底部と充填側管路73との間を接続している。第2のモード用メイン側充填管路78Aは、メイン冷媒回収タンク1Aの下部から上部に至るサイフォン管10Aと充填側管路73との間を接続している。第1のモード用メイン側充填管路75Aには、第5電磁弁および第5逆止弁V70Aが設けられる。第2のモード用メイン側充填管路78Aには、第6電磁弁V7Bおよび第6逆止弁V70Bが設けられる。
【0081】
サブ冷媒回収タンク1Bから充填側管路73に至るまで、第1のモード用サブ側充填管路75B、第2のモード用サブ側充填管路78Bの2本の管路が設けられている。第1のモード用サブ側充填管路75Bはサブ冷媒回収タンク1Bの底部と充填側管路73との間を接続している。第2のモード用サブ側充填管路78Bは、サブ冷媒回収タンク1Bの下部から上部に至るサイフォン管10Bと充填側管路73との間を接続している。
第1のモード用サブ側充填管路78Aには、第7電磁弁V9Aおよび第7逆止弁V90Aが設けられる。第2のモード用サブ側充填管路78Bには、第8電磁弁V9Bおよび第8逆止弁V90Bが設けられる。
【0082】
また、冷媒供給管路77は、補充用冷媒供給缶3からドライフィルタ63までを接続する管路である。尚、冷媒供給管路77には、冷媒の送出時の量を制御するために、冷媒残量検知装置770を設けている。
【0083】
また装置本体内には、
図14に示すように、バスF7で接続された、制御装置F1と主記憶装置F2と補助記憶装置F3とを備えている。
【0084】
前記補助記憶装置F3には、冷媒の回収、再生、真空引き、充填に関する一連の動作を行うプログラムが格納されている。実施例1と比較して、冷媒回収タンク(メイン冷媒回収タンク1A、サブ冷媒回収タンク1B)の選択を行うフローが追加されている。
当該プログラムは、
図6のフローチャートに示すように、第1のモードにおける処理の実行と、第2のモードにおける処理の実行を、モード選択操作部での切り替え入力によって切り替えることができるように構成されている。
前記制御装置F1が、当該プログラムを主記憶装置F2にロードして、実行することで、冷媒回収再生充填装置Rは、第1のモードにおける処理、第2のモードにおける処理を選択的に実行することとなる。
【0085】
第1のモードが選択されている場合には、タンク内に設定充填量の液体冷媒があるかどうかを、メイン冷媒回収タンク1Aの計量器2Aの計測値を参照して制御装置F1が判断する。液体冷媒が設定充填量に満たない場合には、供給缶の冷媒が有るかどうかを冷媒残量検知装置770の検知から制御装置F1が判断する。供給缶の冷媒がない場合には、新たな供給缶の取付が行われ、供給缶の冷媒がある状態まで待ち、供給缶が取付けられ、タンク内に設定充填量があると判断された場合には、充填処理を開始するようになっている。
【0086】
第1のモードが選択されていない場合(即ち、第2のモードが選択されている場合)には、タンク内に設定充填量に加えて少なくともサイフォン管10Aから冷媒を送出可能とするために必要な量の液体冷媒があるかどうかを、メイン冷媒回収タンク1Aの計量器2Aの計測値を参照して制御装置F1が判断する。液体冷媒が予定された充填量に満たない場合には、新たな供給缶の取付がされることを条件として、その供給缶内の冷媒が全てメイン冷媒回収タンク内に移動したことを検知すると、必要な量の液体冷媒があるかどうかを再度確認し、タンク内に予定された充填量があると判断された場合には、充填処理を開始するようになっている。即ち、第2のモードにおいては、供給缶内の冷媒が全てメイン冷媒回収タンク内に移動することを条件とし、多量の冷媒をメイン冷媒回収タンク内に供給する点で、第1のモードとは異なる。
【0087】
第1のモードと第2のモードのいずれかを選択可能とするために、前記表示部には、GUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)を用いた操作ボタン(モード選択操作部)が表示されている。
表示部のタッチパネルへの入力操作によって、選択した操作ボタンを押すことができる。
【0088】
また、前記バスF7は、実施例1と同様に、
図14に示すように、種々の入力機器F4、種々の出力機器F5、種々の通信機器F6と接続されている。
種々の入力機器F4としては、例えば、前記冷媒残量検知装置770のセンサや、表示部のタッチパネル部や、図示されない各種のセンサ類等が該当する。
種々の出力機器F5としては、例えば、制御装置からの指示によって動作する第1電磁弁V1等の各電磁弁等や、真空ポンプ61、コンデンサ62や表示部等が該当する。
種々の通信機器F6としては、例えば、当該冷媒回収再生充填装置Rと通信が可能となるタブレット端末等の携帯情報端末とを接続するWi-Fi(登録商標)やBLUETOOTH(登録商標)等の規格を用いた通信手段等が該当する。
【0089】
以上の構成を備える本実施例2に係る冷媒回収再生充填装置を使用する例を以下に示す。
【0090】
先ず、車両の空調機器に充填されている回収冷媒(HFO-1234YF)が、一定以上の純度を有しているか否かについて、冷媒回収を行う前に、車両の空調機器の冷媒の純度を計測、出力する冷媒ガス分析器を用いて、計測を行う。冷媒ガス分析器としては、例えば、ニュートロニクス社製の冷媒ガス分析器Ultima ID(商品名)を用いることができる。そして、冷媒ガス分析の計測の結果、1台目の車両が、冷媒の純度が一定未満の混合冷媒を有していることが判明した場合には、冷媒回収タンク1のうちサブ冷媒回収タンク1B(第2タンク)を選択することができる。
【0091】
以下の例では、1台目車両の冷媒の純度が低く、2台目車両の冷媒の純度が高い場合について説明する。
【0092】
電源の投入後、運転切り替えスイッチについて手動側を選択する。手動側を選択する理由は、1台目の車両については、冷媒の充填までを連続的に行わないためである。
また、第1のモードと第2のモードを切り替えるモード切り替え手段で、使用するモードを選択する。
次いで、冷媒中に添加する潤滑オイル(PAG又はPOE)をレバー式切り替えスイッチで選択する。尚、いずれも添加しない場合には、レバーを中立状態とすることで添加しない選択を行うことができる。
その後、メイン冷媒回収タンク1Aとサブ冷媒回収タンク1Bのいずれを使用するか、冷媒回収タンク切り替え手段によって選択する。
【0093】
所定の準備作業(例えば、内部洗浄状態の確認、冷媒回収タンクの圧力・温度の確認、冷媒ガス缶、添加オイル缶の取り付け、添加オイル量の設定など)を行ったのち、冷媒回収・再生工程を開始することができる。
【0094】
一例として、選択するモードを第2のモード、選択する冷媒回収タンクをサブ冷媒回収タンク1Bとして、1台目車両(故障車)の空調機器C1から純度の低い冷媒について、回収・再生、真空引きを手動にて行う(
図2、
図3参照。)。手動操作は、タッチパネル式の表示部を用いて、行うことができる。
【0095】
(回収・再生工程)
1台目車両の空調機器C1と、冷媒回収再生充填装置Rの装置本体における第1接続部5Aのホースとを接続した状態において、制御装置F1は、前記コンプレッサ60を動作させ、
図7に示すように、車両の空調機器C1中の回収冷媒を前記装置本体内のサブ冷媒回収タンク1Bへ吸引する。
【0096】
吸引した回収冷媒は、装置本体内の前記第1オイルセパレータ40に送られ回収冷媒中に混在したオイルが分離除去される。更にドライフィルタ63を通過させることによって、当該回収冷媒中の水分が除去される。
【0097】
回収冷媒は、前記コンプレッサ60を経由して、更に第2オイルセパレータ41A、第3オイルセパレータ41Bへ送られる。高温高圧となる当該再生気体冷媒は、第2オイルセパレータ41A、第3オイルセパレータ41Bによって、僅かに残留するオイルが分離され、再生冷媒の純度を高める。
このようにして得られた高温高圧の再生気体冷媒は、コンデンサ62にて液化され、第2電磁弁V6B、第2逆止弁V60Bを経て第2投入側管路74Bから、サイフォン管10Bを通じて前記サブ冷媒回収タンク1B内へ送られる。
【0098】
(真空引き工程)
その後、
図8に示すように、1台目車両の空調機器C1の水分を除去するため、真空ポンプ61により真空引きを行うことにより、1台目車両の空調機器C1から第1オイルセパレータ40、ドライフィルタ63から真空ポンプ61へ至る経路(即ち、共通管路70及び真空引き側管路72)を、真空乾燥する。
本工程によって、1台目車両の空調機器C1中の水分が除去される。
この状態で1台目の車両の処理を中断する。
【0099】
次に2台目車両の空調機器C2の冷媒回収再生充填処理を行うものとする。運転切り替えスイッチについて自動運転側を選択する。また、選択するモードを第1のモード、選択する冷媒回収タンクをメイン冷媒回収タンク1Aとし、純度の高い冷媒を、
図9、
図10に示すように、回収、再生、真空引きを自動運転にて行う。
【0100】
(回収・再生工程)
2台目車両の空調機器C2と、冷媒回収再生充填装置Rの装置本体における第2接続部5Bのホースとを接続した状態において、制御装置F1は、前記コンプレッサ60を動作させ、車両の空調機器C2中の回収冷媒を前記装置本体内のメイン冷媒回収タンク1Aへ吸引する。
【0101】
吸引した回収冷媒は、装置本体内の前記各オイルセパレータ40、41A、41Bに送られ回収冷媒中に混在したオイルが分離除去される。更にドライフィルタ63を通過させることによって、当該回収冷媒中の水分が除去される。
【0102】
回収冷媒は、前記コンプレッサ60を経由して、更に第2オイルセパレータ41A、第3オイルセパレータ41Bへ送られる。高温高圧となる当該再生気体冷媒は、第2オイルセパレータ41A、第3オイルセパレータ41Bによって、僅かに残留するオイルが分離され、再生冷媒の純度を高める。
このようにして得られた高温高圧の再生気体冷媒は、コンデンサ62にて液化され、第1電磁弁V6A、第1逆止弁V60Aを経て第1投入側管路74Aから、サイフォン管10Aを通じて前記メイン冷媒回収タンク1A内へ送られる(
図9参照。)。
【0103】
冷媒回収タンク1に付設された計量器2によって、当該冷媒回収タンク1内に回収された再生液体冷媒の内容量が計測される。
【0104】
(真空引き工程)
その後、2台目車両の空調機器C2の水分を除去するため、真空ポンプ61により真空引きを行うことにより、2台目車両の空調機器C2から第1オイルセパレータ40、ドライフィルタ63から真空ポンプ61へ至る経路(即ち、共通管路70及び真空引き側管路72)を、真空乾燥する(
図10参照。)。
本工程によって、2台目車両の空調機器C2中の水分が除去される。
【0105】
(補充・充填・圧送工程)
次に、メイン冷媒回収タンク1A内に回収された液化再生冷媒に対して、当該液化再生冷媒の内容量の差分の重量分だけ、新規な液体冷媒を補充する。
前記コンプレッサ60を用いることによって、補充用冷媒供給缶3から冷媒供給経路77、ドライフィルタ63、回収側管路71、当該コンプレッサ60、第2オイルセパレータ41A、第3オイルセパレータ41B、コンデンサ62、投入側管路74から更に第1電磁弁V6Aを通じて、メイン冷媒回収タンク1Aに補充する。
新規な液体冷媒の補充は、本実施例の全工程1サイクル毎に行われる。補充量は、あらかじめ当該冷媒回収再生充填装置Rに設定した規定冷媒重量から前記計測器2で計測された回収冷媒の重量の差分(追加量)とする。
【0106】
追加量の液体冷媒をメイン冷媒回収タンク1Aに圧送補充した後に、車両の空調機器への液体冷媒の充填を、新規な気体冷媒の圧送によって行う。
【0107】
前記追加の冷媒は、この補充用冷媒供給缶3から、新規な液体冷媒としてメイン冷媒回収タンク1Aへ前記追加量を補充する。その後、補充用冷媒供給缶3から第1気体圧送用管路76Aの第3電磁弁V8A、第3逆止弁V80Aを経由し、気体冷媒を圧送する。当該気体冷媒の圧送により、メイン冷媒回収タンク1A内の液体冷媒を当該メイン冷媒回収タンク1Aの下部から、第1のモード用メイン側充填管路75A、第2電磁弁V7A、充填側管路73を経由して、2台目車両の空調機器C2へ充填する。2台目車両の空調機器C2への液体冷媒の圧送充填後は、メイン冷媒回収タンク1Aには圧送後の新規の気体冷媒が残留することとなる。
【0108】
充填に際して、前記冷媒補充部3から、気体冷媒をメイン冷媒回収タンク1Aの上部から押し込み、当該メイン冷媒回収タンク1A内の全ての液体冷媒を、液体の状態で圧送し、前記2台目車両の空調機器C2へ充填する。
【0109】
圧送は、前記コンプレッサ60を用い、第2オイルセパレータ41A、第3オイルセパレータ41B、コンデンサ62を含め、第1気体圧送用管路76Aを経由し、メイン冷媒回収タンク1Aの上部から行う。メイン冷媒回収タンク1Aまで気体の状態で圧送するため、本実施例1では、コンデンサ62のファン62Aを停止させることで、高圧高温ガスで、液化させないようにしている。
【0110】
そして、当該メイン冷媒回収タンク1A内の液体冷媒を前記2台目車両の空調機器C2へ液体の状態で充填し、前記メイン冷媒回収タンク1Aから規定量となる全部の液体冷媒をなくし、当該規定量となる全部の液体冷媒の圧送に用いた気体冷媒の残りが該メイン冷媒回収タンク1A内に残存するものとする。
【0111】
以上に示した一連の工程によって、メイン冷媒回収タンク1A内に液体冷媒が貯留されず、2台目車両の空調機器C2内に当初封入されていた冷媒は、再生された状態で当該車両へ全て充填される。2台目車両に対する冷媒回収再生充填処理の自動運転が終了する。
【0112】
2台目の車両の空調機器C2への冷媒回収再生充填処理が終了した後、中断していた1台目の車両の空調機器C1への充填処理を手動運転にて行う。
【0113】
(補充・充填工程)
次に、サブ冷媒回収タンク1B内に回収された液化再生冷媒が車両に対して十分な量(即ち、設定充填量と、サイフォン管10Bを通して充填するために必要な予備量との合計量)がない場合には、補充用冷媒供給缶3から、新規な液体冷媒を補充する。
【0114】
サブ冷媒回収タンク1Bへの液体冷媒の補充は、前記コンプレッサ60を用いることによって、補充用冷媒供給缶3から冷媒供給経路77、ドライフィルタ63、回収側管路71、当該コンプレッサ60、第2オイルセパレータ41A、第3オイルセパレータ41B、コンデンサ62、第2投入側管路74Bから、サイフォン管10Bを通して行う。
サブ冷媒回収タンク1B内に十分な量の再生冷媒がある場合には、補充は行わないものとすることができる。
【0115】
充填に際しては、コンプレッサ60を用いることによって、サブ冷媒回収タンク1B内の再生冷媒を、サイフォン管10Bを通じて、車両に対して充填する(
図12参照。)。
第2のモードにおいては、サブ冷媒回収タンク1B内に再生冷媒が残留することが許容される。これによって、手動運転が終了する。
【0116】
尚、第2のモードにおいては、サイフォン管から液体冷媒を送出させる場合以外に、冷媒回収タンクの底部から液体冷媒を送出させることも可能である。
【0117】
尚、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば、冷媒回収再生充填装置Rの構成について、添加するオイル(PAG又はPOE)を必要に応じて選択して添加する構成(例えば、
図13に示すオイル供給ボトル8A、8B、オイル用計量器80A、80B)とすることもできる。
また、例えば、オイルを添加した冷媒を選択して別途供給する構成(例えば、
図13のオイル入り冷媒供給缶9A、9Bの構成を追加することもできる。
【0118】
上記実施例2においても、モード選択操作部は、タッチパネル式の表示部に表示され、タッチパネルの操作によって操作することができるものとしている。しかしながら、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、物理的なスイッチを装置本体の外面に別途設けた構成とすることもできる。
【0119】
また、前記モード選択操作部は、外部の携帯情報端末に備えていてもよい。この場合には当該携帯情報端末のモード選択操作部からの入力により、前記通信手段を介して、第1のモードと第2のモードを切り替え可能とすることもできる。ここで、通信手段は、無線を利用するものであっても有線を利用するものであってもよい。
【0120】
また、上記実施例1、2においては、HFO-1234yf単独の冷媒を基本として示したが、他の冷媒を単独で使用するものであってもよいことは勿論、複数の冷媒に対応し、それぞれの冷媒に対して複数の冷媒回収タンクを設ける構成とすることもできる。
【0121】
また、上記実施例2においては、冷媒回収再生充填処理の全体の工程を連続的に行う自動運転と、冷媒回収再生充填処理を各工程ごとに個別に行う手動運転とを切り替える運転切り替えスイッチを設けることにより、一の車両の処理を完了させないうちに他の車両の処理を完了させるようにしているが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば、一の車両の処理を中断した時点の条件をデータとして補助記憶装置に記憶させ、その処理の再開の際に、当該データを読み出して、処理を継続するようにすることも可能である。また、回収から真空引きまでを前半自動運転、充填を後半自動運転として、タイミングに応じて後半自動運転を行うようにすることもできる。
【0122】
尚、上記実施例2では、1台目車両の冷媒の純度が低く、2台目車両の冷媒の純度が高い場合について説明したが、例えば、サブ冷媒回収タンクに回収した1台目の車両の冷媒の純度が低く、2台目の車両の冷媒の純度が同様に低い場合には、例外的に空になっているメイン冷媒回収タンクに回収・再生し、直接全量充填方式で充填することで、混合冷媒と純度の高い冷媒との混合を防止することもできるし、あるいは別途、第2のサブ冷媒回収タンクを設けて、切り換え可能としておき、当該第2のサブ冷媒回収タンクに回収することもできる。また、1台目、2台目の車両の冷媒の純度が高い場合には、一方の車両の冷媒をメイン冷媒回収タンク、他方の車両の冷媒を空のサブ冷媒回収タンクに回収して使用しても、何ら問題を生じない。
【0123】
また上記実施例2においては、車両の空調機器の冷媒の純度を計測、出力する冷媒ガス分析器を、本発明に係る冷媒回収再生充填装置とは別に設け、使用するものとしているが、本発明においては、冷媒ガス分析器を、冷媒回収再生充填装置の構成部材として設けることも可能である。
【0124】
また、本発明は以上の実施例1、2に限定されるものではなく、本発明の開示する技術的思想の範囲内において、構成の一部が設計変更されたものについても及ぶ。