(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153151
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/32 20060101AFI20241022BHJP
F16F 9/56 20060101ALI20241022BHJP
B60G 15/07 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
F16F9/32 A
F16F9/32 B
F16F9/56 B
F16F9/56 A
B60G15/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066866
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(72)【発明者】
【氏名】門田 尚
(72)【発明者】
【氏名】久保寺 由香
(72)【発明者】
【氏名】中川 尚
【テーマコード(参考)】
3D301
3J069
【Fターム(参考)】
3D301AA78
3D301DA08
3D301DA33
3D301DA53
3D301DA58
3J069AA50
3J069AA64
3J069CC01
3J069CC02
3J069CC15
3J069DD16
3J069DD17
(57)【要約】
【課題】容易に組み立てを行うことができる緩衝器を提供すること。
【解決手段】緩衝器(10)は、シリンダ(30)と、シリンダ(30)の軸線に沿った方向に移動可能なスライダ(23)と、スライダ(23)を軸線に沿った第1方向に付勢している第1ばね(21)と、第1方向とは逆方向にスライダ(23)を付勢している第2ばね(22)と、シリンダ(30)とスライダ(23)との間に設けられているスリーブ(18)と、スリーブ(18)の一端に当接することにより第1方向への移動を規制している一方側移動規制部(32)と、スリーブ(18)の他端に当接することにより第1方向とは逆方向への移動を規制している他方側移動規制部(40)と、スリーブ(18)を径方向に貫通し、他方側移動規制部(40)の移動を規制している固定部材(28)と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の部材であるシリンダと、
前記シリンダの外周に同軸状に配置され、前記シリンダの軸線に沿った方向に移動可能に設けられている円筒形状のスライダと、
前記スライダに当接し、前記スライダを前記軸線に沿った方向の一方向である第1方向に付勢している第1ばねと、
前記スライダに当接し、前記第1方向とは逆方向に前記スライダを付勢している第2ばねと、
前記シリンダの外周と前記スライダの内周との間に設けられている、略円筒状のスリーブと、
前記シリンダに固定され、前記スリーブの一端に当接することにより前記第1方向への移動を規制している一方側移動規制部と、
前記シリンダの外周に位置し、前記スリーブの他端に当接することにより前記第1方向とは逆方向への移動を規制している他方側移動規制部と、
前記スリーブを径方向に貫通し、前記シリンダに対する前記他方側移動規制部材の移動を規制している固定部材と、を備えている緩衝器。
【請求項2】
前記シリンダは、筒状のシリンダ本体と、このシリンダ本体に開けられているシリンダ穴部と、を含み、
前記スリーブは、筒状のスリーブ本体と、このスリーブ本体に開けられ少なくとも一部が前記シリンダ穴部の外周に位置するスリーブ穴部と、を含み、
前記固定部材は前記スリーブ穴部と前記シリンダ穴部を介して前記他方側移動規制部材に形成された凹部に挿入されている請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記スリーブ穴部は、前記固定部材から離間可能に大きく形成されている、請求項2に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記シリンダ穴部、及び/又は、前記他方側移動規制部に雌ねじ部が形成され、
前記固定部材は、雄ねじ部を有し、前記雄ねじ部が前記雌ねじ部に締結されている、請求項2に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記固定部材は、前記雄ねじ部の先端が前記凹部に食い込むように固定されている、請求項4に記載の緩衝器。
【請求項6】
前記固定部材は、前記スリーブの外周面よりも内側に位置している、請求項2に記載の緩衝器。
【請求項7】
前記スライダは、径方向を基準として、前記固定部材に重なる位置まで移動可能である、請求項6に記載の緩衝器。
【請求項8】
前記スリーブの材質はステンレス鋼である、請求項1に記載の緩衝器。
【請求項9】
前記固定部材は、一部が前記スリーブ穴部の内部に位置する長さになっている、請求項2に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両には、車輪が地面から受けた振動等を減衰するために、車輪と車体との間に緩衝器が設けられている。緩衝器に関する従来技術として特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に示されるような、緩衝器は、筒状を呈するアルミニウム製のショックボディと、このショックボディの外周面を囲うように設けられている鉄製のスリーブと、このスリーブの外周面に沿って設けられているプライマリばね、及び、テンダーばねと、これらのプライマリばね、及び、テンダーばねの間に設けられ、これらのプライマリばね、及び、テンダーばねの両方から付勢力を受けていると共にスリーブの外周面に沿って変位可能なスプリングカプラと、を備えている。
【0004】
スリーブは、スリーブの内周面とショックボディの外周面との間に設けられたスナップリングによって、ショックボディの外周に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2021/0300139号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された緩衝器によれば、スリーブの内周面とショックボディの外周面との間にスナップリングを設ける必要がある。スナップリングを2つの筒体の間に設けるため、外部から視認することができず、この点において改善の余地がある。
【0007】
本発明は、容易に組み立てを行うことができる緩衝器の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、スリーブの一端に当接することにより第1方向への移動を規制している一方側移動規制部と、スリーブの他端に当接することにより第1方向とは逆方向への移動を規制している他方側移動規制部と、を設けることにより、容易に組み立てを行うことができる緩衝器を提供できることを知見した。本発明は、当該知見に基づいて完成させた。
【0009】
以下、本開示について説明する。
【0010】
本開示によれば、円筒状の部材であるシリンダと、
前記シリンダの外周に同軸状に配置され、前記シリンダの軸線に沿った方向に移動可能に設けられている円筒形状のスライダと、
前記スライダに当接し、前記スライダを前記軸線に沿った方向の一方向である第1方向に付勢している第1ばねと、
前記スライダに当接し、前記第1方向とは逆方向に前記スライダを付勢している第2ばねと、
前記シリンダの外周と前記スライダの内周との間に設けられている、円筒状のスリーブと、
前記シリンダに固定され、前記スリーブの一端に当接することにより前記第1方向への移動を規制している一方側移動規制部と、
前記シリンダの外周に位置し、前記スリーブの他端に当接することにより前記第1方向とは逆方向への移動を規制している他方側移動規制部と、
前記スリーブを径方向に貫通し、前記シリンダに対する前記他方側移動規制部材の移動を規制している固定部材と、を備えている緩衝器が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、容易に組み立てを行うことができる緩衝器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、添付図に示した形態は本発明の一例であり、本発明は当該形態に限定されない。
【0014】
<実施例>
図1を参照する。緩衝器10は、例えば、サイド・バイ・サイド・ビークルに搭載される緩衝器である。
【0015】
緩衝器10は、例えば、上端が車体に固定されていると共に下端が車輪の側部に設けられるサスペンションアームに固定され、内部に充填されているオイルによって減衰力を発生させる油圧式の緩衝器である。以下、詳細に説明する。
【0016】
図2を併せて参照する。緩衝器10は、上端に位置し車体後部に固定される上部蓋体11と、この上部蓋体11に上端が固定され略筒体に形成されているシリンダ30と、下端に位置し車輪の側方に固定される下端固定部13と、この下端固定部13からシリンダ30の内部まで延びている丸棒状のロッド14と、上部蓋体11に接続されシリンダ30内に圧縮方向の力が加わった際にオイルが流入するサブタンク15と、を有している。
【0017】
また、緩衝器10は、シリンダ30の下端を閉じている下部蓋体40と、ロッド14の先端に支持されシリンダ30の軸線CLに沿ってシリンダ30内を進退可能なピストン17と、シリンダ30の外周面に沿って設けられている筒体状のスリーブ18と、このスリーブ18の周囲を囲むように設けられているばねである第1ばね21及び第2ばね22と、これらの第1ばね21及び第2ばね22の間に設けられスリーブ18の外周面に沿って変位可能なスライダ23と、シリンダ30の外周に設けられ第2ばね22の上端を受けているばね受け部材26と、を有している。
【0018】
図3を参照する。シリンダ30には、六角穴付き止めねじによって構成され下部蓋体40の軸線方向の移動を規制している固定部材28が締結されている。固定部材28は一部がスリーブ18と重なるように配置されているため、スリーブ18の回転も規制している。固定部材28は、周方向の複数の個所に設けられている。固定部材28の外周の少なくとも一部は、雄ねじ状に形成された雄ねじ部28aを含んでいることが好ましい。
【0019】
固定部材28は、先端が下部蓋体40の外周面より軸線CL(
図2参照)側に位置し、末端がスリーブ18の内周面より径外方に位置している。固定部材28の先端は、下部蓋体40の凹部41aの底部に食い込んでいる。
【0020】
なお、シリンダ30に対して相対的に下部蓋体40の移動を規制することができれば、固定部材28は六角穴付き止めねじに限られるものではない。例えば、皿小ねじや丸皿小ねじ等の異なる種類のねじ、六角穴付きボルトや低頭ボルト等のボルト、中実や中空のピンによっても構成することができる。固定部材28が雄ねじ部28aを有する場合、Cリングでスリーブ18の抜けを防止する場合に比べて抜けにくいため、好ましい。
【0021】
また、固定部材28の数は、1つであっても良く、必ずしも複数設けられる必要は無い。固定部材28が複数設けられる場合、固定部材28の設けられる数は任意に選択することができる。
【0022】
図1を参照する。上部蓋体11は、シリンダ30の上端(一端)を閉じていると共に、シリンダ30から押し出されたオイルをサブタンク15へ導くための流路を有している。
【0023】
図2を参照する。シリンダ30の軸線CLは、ロッド14の軸線CLに一致している。シリンダ30の素材には、例えば、アルミニウム合金が用いられる。アルミニウム合金製のシリンダ30の硬さは、HV45~100である。
【0024】
シリンダ30は、外周にスリーブ18が設けられている円筒状のシリンダ本体31と、このシリンダ本体31の上方に形成されスリーブ18の上方向(一方向)への移動を規制している一方側移動規制部32と、この一方側移動規制部32の上方において外周が雄ねじ状に形成されているシリンダ雄ねじ部33と、シリンダ本体31の下部において複数個所に開けられているシリンダ穴部34と、を含む。
【0025】
一方側移動規制部32は、シリンダ本体31から連続して形成されている。一方側移動規制部32の内径は、シリンダ本体31の内径と同じ大きさである。一方、一方側移動規制部32の外径は、シリンダ本体31の外径よりも大きい。一方側移動規制部32の下面は、スリーブ18の上端に当接している。
【0026】
なお、一方側移動規制部32は、必ずしもシリンダ本体31と同じ部材で一体的に形成されている必要はない。スリーブ18の上方向への移動を規制することができれば、シリンダ本体31の外周面にリング状の別部材を固定する構成を採用することもできる。
【0027】
図3を参照する。シリンダ穴部34は、周方向の一定間隔毎に形成され、シリンダ本体31を貫通している。また、シリンダ穴部34の内周面は、雌ねじ状に形成された雌ねじ部34aとされている。シリンダ穴部34には、固定部材28が締結されている。
【0028】
図1を参照する。下端固定部13の上端には、第1ばね21の下端(他端)を受けているばね受け部13aが形成されている。
【0029】
図3を参照する。下部蓋体40は、シリンダ30の他端を閉じており、中心にはロッド14(
図2参照)が貫通する穴が開けられている。下部蓋体40は、シリンダ30の内周面に当接している小径部41と、この小径部41に一体的に形成され小径部41よりも直径が大きな大径部42と、を有する。
【0030】
小径部41の外周には、周方向にわたって連続して軸線CLに向かって凹む溝状の凹部41aが形成されている。
【0031】
なお、凹部41aは、周方向に連続している必要はなく、シリンダ穴部34に対応させて形成されていても良い。この場合、凹部41aの内周面を雌ねじ状の雌ねじ部とすることもできる。
【0032】
大径部42のうち小径部41との段差となっている段差面42aには、シリンダ30の下端及びスリーブ18の下端が当接している。これにより、スリーブ18は下方向(逆方向)への移動を規制されている。この点において、下部蓋体40は、他方側移動規制部40ということができる。以下、下部蓋体40を他方側移動規制部40ということがある。
【0033】
なお、他方側移動規制部40は、スリーブ18の下方向への移動を規制できれば、下部蓋体40によって構成されていなくても良い。例えば、シリンダ30の外周にリング状の別部材を固定しても良い。
【0034】
図2を参照する。ピストン17は、シリンダ30内を昇降可能である。ピストン17がシリンダ30内を昇降する際に、ピストン17の内部をオイルが通過し、減衰力を発生させることができる。
【0035】
スリーブ18は、一方側移動規制部32と他方側移動規制部40とによって挟み込まれることにより、軸線方向の移動を規制されている。スリーブ18は、内径及び外径が全体にほぼ均一であり、スリーブ18の軸線CLは、シリンダ30の軸線CLに一致している。スリーブ18の素材には、例えば、ステンレス鋼が用いられる。ステンレス鋼製のスリーブの硬さは、HV180~650である。
【0036】
シリンダ30の保護性能を高めるために、スリーブ18の方がシリンダ30よりも硬い素材によって構成されている。シリンダ30の摩耗防止による強度低下および外観商品性劣化を抑制できる。
【0037】
図3を参照する。スリーブ18は、筒状のスリーブ本体18aと、シリンダ穴部34に対応した位置に開いているスリーブ穴部18bと、を含む。スリーブ穴部18bは、シリンダ穴部34よりも大きく、且つ、固定部材28の外径よりも大きい。
図4を併せて参照する。スリーブ穴部18bは、周方向よりも軸線方向に長い長円形状を呈する。
【0038】
図2を参照する。第1ばね21は、圧縮コイルばねであり、ばね受け部13a(
図1参照)を下方に向かって付勢していると共に、スライダ23を上方に向かって付勢している。第1ばね21の付勢力は、第2ばね22の付勢力よりも大きく、第1ばね21が主要なばねの役割を果たす。
【0039】
第2ばね22は、圧縮コイルばねであり、スライダ23を下方に向かって付勢していると共に、ばね受け部材26を上方に向かって付勢している。第2ばね22の付勢力は、第1ばね21の付勢力よりも小さい。
【0040】
スライダ23は、スリーブ18の外周面に沿って設けられている円筒状のスライダ本体23aと、スライダ本体23aから径外方に突出しているスライダ突出部23bと、を有している。スライダ突出部23bは、スライダ本体23aの外周面の全周に亘って形成されており、下面及び上面のそれぞれで第1ばね21及び第2ばね22を受けている。
【0041】
ばね受け部材26は、内周面が雌ねじ状に形成されシリンダ30の外周面に締結されているばね受け部材支持部26aと、このばね受け部材支持部26aに支持され第2ばね22を受けているばね受け部材本体26bと、を有している。
【0042】
図3及び
図4を参照する。スリーブ18に回転方向の力が加わった際に、スリーブ穴部18bが固定部材28に当接し、スリーブ18が回転することが抑制される。
【0043】
以上に説明した緩衝器について、以下に纏める。
【0044】
図2を参照する。第1に、緩衝器10は、円筒状の部材であるシリンダ30と、シリンダ30の外周に同軸状に配置され、シリンダ30の軸線CLに沿った方向に移動可能に設けられている円筒形状のスライダ23と、スライダ23に当接し、スライダ23を軸線CLに沿った方向の一方向である第1方向に付勢している第1ばね21と、スライダ23に当接し、第1方向とは逆方向にスライダ23を付勢している第2ばね22と、シリンダ30の外周とスライダ23の内周との間に設けられている、円筒状のスリーブ18と、シリンダ30の外周に位置し、スリーブ18の一端に当接することにより第1方向への移動を規制している一方側移動規制部32と、シリンダ30の外周に固定され、スリーブ18の他端に当接することにより第1方向とは逆方向への移動を規制している他方側移動規制部40と、を有している。
【0045】
図3を併せて参照する。緩衝器10は、スリーブ18を径方向に貫通し、シリンダ30に対する他方側移動規制部40の移動を規制している固定部材28をさらに備えている。
【0046】
スリーブ18は、一方側移動規制部32と他方側移動規制部40とによって挟み込まれるようにして軸線方向への移動が規制されている。軸線方向に挟み込む構成とすることにより、外周側から視認しながらスリーブ18の軸線方向の位置決めを行うことができる。また、他方側移動規制部40は、固定部材28によってシリンダ30に対しての軸線方向の移動が規制されている。換言すれば、他方側移動規制部40は固定部材28によって抜け止めされている。固定部材28は、スリーブ18を径方向に貫通しており、外周側から視認しながら取り付けを行うことができる。外周側から視認しながらの作業を行うことができるため、緩衝器10の組立性を向上させることができる。また、スリーブ18が正しい位置に配置されていることを容易に確認することができる。
【0047】
更に、スリーブ18の両端部を挟み込んで規制するため、一方側移動規制部32と他方側移動規制部40の高さを調整すればスリーブ18の内径がバラついた際も確実に規制が可能となる為、組立性が良くなる。また、従来のスナップリングでの位置規制よりも軸線方向のガタが軽減できる。さらに、円筒状のスリーブ18の両端部が一方側移動規制部32と他方側移動規制部40に当接するため、スナップリングで固定する場合や、イモネジなどで直接スリーブ18を移動規制する場合と比較して接触面積を確保することが可能となり、接触面圧を下げられて一方側移動規制部32と他方側移動規制部40への部分的な衝撃荷重が軽減され、スリーブ18をより確実に固定することができる。
【0048】
第2に、第1の緩衝器10であって、シリンダ30は、筒状のシリンダ本体31と、このシリンダ本体31に開けられているシリンダ穴部34と、を含む。また、スリーブ18は、筒状のスリーブ本体18aと、このスリーブ本体18aに開けられ少なくとも一部がシリンダ穴部34の外周に位置するスリーブ穴部18bと、を含む。固定部材28はスリーブ穴部18bとシリンダ穴部34を介して他方側移動規制部40に形成された凹部41aに挿入されている。固定部材28によって他方側移動規制部40の軸線方向への移動を規制することができる。
【0049】
図4を参照する。第3に、第2の緩衝器10であって、スリーブ穴部18bは、固定部材28から離間可能に大きく形成されている。
図2を併せて参照する。各部品には、不可避的に寸法誤差が生じる。固定部材28をスリーブ穴部18bに対して離間可能とすることにより、確実にスリーブ18を一方側移動規制部32と他方側移動規制部40に当接させることができる。また、スリーブ18の軸線方向の両端で位置規制しているため、固定部材28にせん断荷重がかからない。
【0050】
図3を参照する。第4に、第2又は第3の緩衝器10であって、シリンダ穴部34、及び/又は、他方側移動規制部40に雌ねじ部34aが形成され、固定部材28は、雄ねじ部28aを有し、雄ねじ部28aが雌ねじ部34aに締結されている。固定部材28をより確実に固定することができる。
【0051】
第5に、第4の緩衝器10であって、固定部材28は、雄ねじ部28aの先端が凹部41aに食い込むように固定されている。これにより他方側移動規制部40を強固に固定できる。また、食い込ませるように固定することで、凹部41aに雌ネジを切る必要なく、他方側移動規制部40の周方向位置がどの場所であっても良くなるため組立性が良くなる。
【0052】
第6に、第1乃至第5いずれかの緩衝器10であって、固定部材28は、スリーブ18の外周面よりも内側に位置している。固定部材28がスライダ23に干渉することを防ぎ、スライダ23の可動範囲を長く確保することができる。
【0053】
第7に、第1乃至第6いずれかの緩衝器10であって、スライダ23は、径方向を基準として、固定部材28に重なる位置まで移動可能である。緩衝器10を軸線方向に短くすることができ、小型化することができる。
【0054】
第8に、第1乃至第7いずれかの緩衝器10であって、スリーブ18の材質はステンレス鋼である。安価な素材によってシリンダ30を保護することができる。また、スライダ23が接触した場合であっても表面に傷がつきにくく、高い外観性を長期間にわたって保つことができる。
【0055】
第9に、第1乃至第8いずれかの緩衝器10であって、固定部材28は、一部が前記スリーブ穴部18bの内部に位置する長さになっている。スリーブ18に回転方向の力が加わった際に、スリーブ穴部18bが固定部材28に当接し、スリーブ18が回転することが抑制される。
【0056】
なお、本発明による緩衝器は、サイド・バイ・サイド・ビークルを例に説明したが、鞍乗り型車両のフロントフォークやリヤクッション、鞍乗り型車両以外の乗り物や建機等にも、本発明を適用することは可能であり、これらの形式のものに限られるものではない。即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の緩衝器は、サイド・バイ・サイド・ビークルに好適である。
【符号の説明】
【0058】
10…緩衝器
18…スリーブ、18a…スリーブ本体、18b…スリーブ穴部
21…第1ばね
22…第2ばね
23…スライダ
28…固定部材、28a…雄ねじ部
30…シリンダ
31…シリンダ本体
32…一方側移動規制部
34…シリンダ穴部、34a…雌ねじ部
40…下部蓋体(他方側移動規制部)
41a…凹部
CL…軸線。