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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153170
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】端子及び端子付き電線
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
H01R4/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066896
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】井伊 良介
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 知弘
(72)【発明者】
【氏名】河野 新
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB02
5E085BB03
5E085CC03
5E085DD14
5E085EE03
5E085EE07
5E085FF19
5E085JJ03
(57)【要約】
【課題】適正な通電性能を確保することができる端子及び端子付き電線を提供する。
【解決手段】圧着端子1は、電気接続部2と、電線圧着部4と、連結部3とを備える。連結部3は、電気接続部2と電線圧着部4とを連結する。ここで、連結部3は、通電確保部30を有する。この通電確保部30は、底板31及び一対の折り返し片32,32を有する。底板31は、電気接続部2と電線圧着部4とを連結する。一対の折り返し片32,32は、延在方向Xに交差する幅方向Yにおける底板31の両側縁から延設されそれぞれが底板31の導体部W1側の上面に向けて折り返される。このように構成される通電確保部30は、当該通電確保部30の幅方向Yに沿う切断面の断面積が、導体部W1の幅方向Yに沿う切断面の断面積以上であり、かつ、電気接続部2の幅方向Yに沿う切断面の断面積以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性部材と電気的に接続される電気接続部と、
延在方向に沿って延在する電線の導体部と電気的に接続される電線接続部と、
前記電気接続部と前記電線接続部とを連結する連結部と、を備え、
前記連結部は、前記電気接続部と前記電線接続部とを連結する底板、及び、前記延在方向に交差する交差方向における前記底板の両側縁から延設されそれぞれが前記底板の前記導体部側の上面に向けて折り返される一対の折り返し片を含む通電確保部を有し、
前記通電確保部は、当該通電確保部の前記交差方向に沿う切断面の断面積が、前記導体部の前記交差方向に沿う切断面の断面積以上であり、かつ、前記電気接続部の前記交差方向に沿う切断面の断面積以下である端子。
【請求項2】
前記通電確保部は、当該通電確保部の抵抗値が前記導体部の抵抗値以下である請求項1に記載の端子。
【請求項3】
前記通電確保部は、前記電気接続部の前記交差方向の長さ、前記電線接続部の前記交差方向の長さ、及び、前記電線の前記交差方向の長さのうち、最も長い長さよりも当該通電確保部の前記交差方向の長さが短く、かつ、前記電気接続部の前記交差方向及び前記延在方向に交差する厚み方向の長さ、前記電線接続部の前記厚み方向の長さ、及び、前記電線の前記厚み方向の長さのうち、最も長い長さよりも当該通電確保部の前記厚み方向の長さが短い請求項1又は2に記載の端子。
【請求項4】
導体部を有する電線と、
前記導体部に電気的に接続される端子と、を備え、
前記端子は、導電性部材と電気的に接続される電気接続部、延在方向に沿って延在する電線の導体部と電気的に接続される電線接続部、及び、前記電気接続部と前記電線接続部とを連結する連結部を有し、
前記連結部は、前記電気接続部と前記電線接続部とを連結する底板、及び、前記延在方向に交差する交差方向における前記底板の両側縁から延設されそれぞれが前記底板の前記導体部側の上面に向けて折り返される一対の折り返し片を含む通電確保部を有し、
前記通電確保部は、当該通電確保部の前記交差方向に沿う切断面の断面積が、前記導体部の前記交差方向に沿う切断面の断面積以上であり、かつ、前記電気接続部の前記交差方向に沿う切断面の断面積以下であることを特徴とする端子付き電線。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子及び端子付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端子付き電線として、例えば、特許文献1には、端部にて芯線が剥き出しとなった電線と、電線の端部に圧着させることで剥き出しの芯線に対して物理的且つ電気的に接続された端子金具とを備える端子付き電線が記載されている。端子金具は、電線の端部における剥き出しの芯線から被覆に亘って連なる底部及び一対のバレル片部を備える接続部であり、底部に載置された電線の端部に対して一対のバレル片部を互いに重ね合わせて巻き付けた電線接続部を有する。電線接続部は、電線の端部の被覆に圧着された被覆圧着部を有し、被覆圧着部は、被覆への固着に要する要求主圧着力が確保された第1被覆圧着部と、電線が引き出されている側の端部に設け、第1被覆圧着部よりも被覆に対する圧着力が低い第2被覆圧着部とを有する。第2被覆圧着部は、電線の端部における径方向の外側に向けて前記第1被覆圧着部よりも膨出させた膨出部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-145319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に記載の端子付き電線は、電線に接続される電線接続部と相手方端子に接続される端子接続部とを連結する連結部が設けられており、この連結部を介して電線接続部と端子接続部との間で電流が流れる。このとき、端子付き電線は、例えば、大きな電流が流れた際に、連結部で生じる抵抗によって過剰に発熱するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、適正な通電性能を確保することができる端子及び端子付き電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る端子は、導電性部材と電気的に接続される電気接続部と、延在方向に沿って延在する電線の導体部と電気的に接続される電線接続部と、前記電気接続部と前記電線接続部とを連結する連結部と、を備え、前記連結部は、前記電気接続部と前記電線接続部とを連結する底板、及び、前記延在方向に交差する交差方向における前記底板の両側縁から延設されそれぞれが前記底板の前記導体部側の上面に向けて折り返される一対の折り返し片を含む通電確保部を有し、前記通電確保部は、当該通電確保部の前記交差方向に沿う切断面の断面積が、前記導体部の前記交差方向に沿う切断面の断面積以上であり、かつ、前記電気接続部の前記交差方向に沿う切断面の断面積以下である。
【0007】
本発明に係る端子付き電線は、導体部を有する電線と、前記導体部に電気的に接続される端子と、を備え、前記端子は、導電性部材と電気的に接続される電気接続部、延在方向に沿って延在する電線の導体部と電気的に接続される電線接続部、及び、前記電気接続部と前記電線接続部とを連結する連結部を有し、前記連結部は、前記電気接続部と前記電線接続部とを連結する底板、及び、前記延在方向に交差する交差方向における前記底板の両側縁から延設されそれぞれが前記底板の前記導体部側の上面に向けて折り返される一対の折り返し片を含む通電確保部を有し、前記通電確保部は、当該通電確保部の前記交差方向に沿う切断面の断面積が、前記導体部の前記交差方向に沿う切断面の断面積以上であり、かつ、前記電気接続部の前記交差方向に沿う切断面の断面積以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る端子及び端子付き電線は、通電確保部の断面積を電線の導体部の断面積と同等以上とすることにより、連結部の抵抗値を小さくすることができ、連結部の発熱を抑制できる。また、端子及び端子付き電線は、通電確保部の断面積を電気接続部と同等以下の断面積とすることにより、体格の大型化を抑制できる。さらに、端子及び端子付き電線は、通電確保部により表面積を増加させることで温度上昇を抑制することができる。この結果、端子及び端子付き電線は、体格の大型化を抑制しつつ、適正な通電性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る端子付き電線の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る端子付き電線の構成例を示す平面図である。
図3図3は、図2のP1-P1断面図である。
図4図4は、図2のP2-P2断面図である。
図5図5は、図2のP3-P3断面図である。
図6図6は、実施形態の変形例に係る端子付き電線の構成例を示す斜視図である。
図7図7は、実施形態の変形例に係る端子付き電線の構成例を示す平面図である。
図8図8は、図7のP1-P1断面図である。
図9図9は、図7のP2-P2断面図である。
図10図10は、図7のP3-P3断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0011】
なお、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、及び、第3方向のうち、第1方向を「延在方向X」といい、第2方向を「幅方向Y」といい、第3方向を「高さ方向Z」という。ここでは、延在方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、相互に交差し、典型的には直交する。延在方向Xは、圧着端子が設けられる電線が延在する方向、当該電線の軸線に沿う方向等に相当する。幅方向Yは、延在方向Xと交差する交差方向等に相当する。高さ方向Zは、圧着端子に設けられる連結部の底板の厚み方向等に相当する。
【0012】
図1図2に示す本実施形態の端子付き電線100は、車両に使用されるワイヤハーネス等に適用されるものである。ここで、ワイヤハーネスは、例えば、車両に搭載される各装置間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線を束にして集合部品とし、コネクタ等で複数の電線を各装置に接続するようにしたものである。端子付き電線100は、例えば、相対的に大きな電流が流れるインバータや給電装置等に適用されるが、これに限定されない。
【0013】
端子付き電線100は、電線Wと、当該電線Wの端末に圧着され導通接続された圧着端子1とを備える。本実施形態の端子付き電線100は、適正な通電性能を確保できるようにしたものである。以下、各図を参照して端子付き電線100の各構成について詳細に説明する。
【0014】
電線Wは、車両に配索され、各装置を電気的に接続するものである。電線Wは、導電性を有する線状の導体部W1と、当該導体部W1の外側を覆う絶縁性を有する絶縁被覆部W2とを含んで構成される。電線Wは、絶縁被覆部W2によって導体部W1を被覆した絶縁電線である。
【0015】
導体部W1は、導電性を有する金属素線を複数束ねた芯線である。導体部W1は、当該複数の金属素線を撚り合わせた撚り芯線であってもよい。絶縁被覆部W2は、導体部W1の外周側を被覆する電線被覆である。絶縁被覆部W2は、例えば、絶縁性の樹脂材料(PPやPVC、架橋PE等。耐摩耗性や耐薬品性、耐熱性等に配慮して適宜選定される。)等を押出成形することによって形成される。
【0016】
電線Wは、延在方向Xに沿って線状に延在し、延在方向Xに対してほぼ同じ径で延びるように形成される。電線Wは、導体部W1の断面形状(延在方向Xと交差する方向の断面形状)が略円形状、絶縁被覆部W2の断面形状が略円環形状となっており、全体として略円形状の断面形状となっている。電線Wは、少なくとも一方の端末において、絶縁被覆部W2が剥ぎ取られており、導体部W1が絶縁被覆部W2から露出している。電線Wは、絶縁被覆部W2から露出している当該導体部W1の端末に圧着端子1が設けられる。
【0017】
圧着端子1は、電線Wが電気的に接続され、導電性を有する導電性部材である相手端子が接続される端子金具である。圧着端子1は、電気接続部2と、連結部3と、電線圧着部4とを備える。電気接続部2と連結部3と電線圧着部4とは、全体が一体で導電性を有する金属部材によって構成される。例えば、圧着端子1は、一枚の板金を、電気接続部2、連結部3、電線圧着部4等の各部に対応した形状にあわせて、打ち抜き加工、プレス加工、折り曲げ加工、打ち出し加工等の各種加工によって成形することで各部が立体的に一体で形成される。圧着端子1は、延在方向Xに沿って一方側から他方側に向かって、電気接続部2、連結部3、電線圧着部4の順で並んで相互に連結される。
【0018】
電気接続部2は、相手端子と電気的に接続される部分である。電気接続部2は、雄型の端子形状であってもよいし、雌型の端子形状であってもよい。本実施形態の電気接続部2は、雌型の端子形状として図示しており、雄型の端子形状の相手端子と電気的に接続される。電気接続部2は、図2図3に示すように、電気接続部本体21と、スリット22と、溝部23と、複数の凸部24とを有する。
【0019】
電気接続部本体21は、延在方向Xに沿って筒形状に形成され、内側に棒状の相手端子が挿入される部分である。
【0020】
スリット22は、電気接続部本体21に形成された隙間であり、延在方向Xに沿って電気接続部本体21の一端から他端まで延在して形成されている。スリット22は、相手端子が電気接続部本体21に挿入された際に、相手端子の径サイズに応じて当該スリット22の隙間の間隔が調整される。このように、スリット22は、電気接続部本体21の径サイズを調整可能とする。
【0021】
溝部23は、電気接続部本体21の内側に形成された凹部であり、延在方向Xに沿って電気接続部本体21の一端から他端まで延在して形成されている。溝部23は、延在方向Xに沿ってスリット22と平行に設けられ、スリット22と径方向に対向して位置している。溝部23は、スリット22を挟んで一方側に設けられる半筒形状の電気接続部本体21と、スリット22を挟んで他方側に設けられる半筒形状の電気接続部本体21とが、開閉する際の回動軸(ヒンジ)として機能する。
【0022】
複数の凸部24は、電気接続部本体21の内側に形成された突出部である。複数の凸部24は、打ち出し加工により形成され、電気接続部本体21の内面から径方向に沿って内側に突出している。言い換えれば、複数の凸部24は、電気接続部本体21の外面から径方向に沿って内側に窪んで形成されている。凸部24は、スリット22を挟んで一方側に位置する半筒形状の電気接続部本体21と、スリット22を挟んで他方側に位置する半筒形状の電気接続部本体21とにそれぞれ設けられている。複数の凸部24は、相手端子が電気接続部本体21に挿入された際に、当該相手端子に当接する。これにより、電気接続部本体21は、公差を吸収することができ、相手端子と適正に電気的に接続することができる。
【0023】
連結部3は、電気接続部2と電線圧着部4とを連結する部分である。連結部3は、電気接続部2と電線圧着部4との間に介在し、当該電気接続部2と当該電線圧着部4とを連結し導通する。圧着端子1は、電気接続部2と電線圧着部4とが連結部3を介して電気的に接続され、当該電線圧着部4を介して電気接続部2と電線Wの導体部W1とが電気的に接続され導通される。
【0024】
電線圧着部4は、電線Wの導体部W1と電気的に接続される部分である。電線圧着部4は、電線Wの導体部W1に加締められ圧着されることで、電線Wの端末に設けられる。電線圧着部4は、底板41と、一対のバレル片42,42とを有する。
【0025】
底板41は、板状に形成され、延在方向Xに沿って延在する。底板41は、板厚方向が高さ方向Zに沿う。底板41は、延在方向Xの一方側に連結部3を介して電気接続部2が連結される。
【0026】
一対のバレル片42,42は、底板41との間に電線Wの導体部W1を包んで加締められ圧着されるものであり、いわゆるBクリンプと称する加締め圧着がなされる。一対のバレル片42,42は、幅方向Yにおける底板41の両側縁から帯状に延設される。例えば、一方のバレル片42は、底板41から幅方向Yの一方側に帯状に延設され、他方のバレル片42は、底板41から幅方向Yの他方側に帯状に延設される。そして、一対のバレル片42,42は、それぞれが底板41の導体部W1側の上面に向けて折り返されて形成され、底板41との間に電線Wの導体部W1に対して加締められ圧着される。このとき、一対のバレル片42,42は、それぞれが先端を底板41側に向けて巻き込まれるように折り曲げられて折曲部が形成される。電線圧着部4は、一対のバレル片42,42の折曲部が電線Wの導体部W1に食い込んで接触して押しつけられるように加締められ圧着される。
【0027】
ところで、本実施形態に係る連結部3は、上述のように、電気接続部2と電線圧着部4とを連結するものであるが、電気接続部2と電線圧着部4との適正な導通性能を確保するように構成されている。連結部3は、図1図2図4に示すように、底板31と、一対の折り返し片32,32とを有する。
【0028】
底板31は、電気接続部2と電線圧着部4とを連結するものである。底板31は、板状に形成され、延在方向Xに沿って延在する。底板31は、板厚方向が高さ方向Zに沿う。底板31は、延在方向Xの一方側に電気接続部2が連結され、かつ、延在方向Xの他方側に電線圧着部4が連結される。
【0029】
一対の折り返し片32,32は、幅方向Yにおける底板31の両側縁から帯状に延設される。例えば、一方のバレル片32は、底板31から幅方向Yの一方側に帯状に延設され、他方のバレル片32は、底板31から幅方向Yの他方側に帯状に延設される。そして、一対のバレル片32,32は、それぞれが底板31の導体部W1側の上面31aに向けて折り返されて形成される。このとき、一対のバレル片32,32は、それぞれが先端32a,32aを底板31の上面31a側に向けて巻き込まれるように折り曲げられて折曲部32b,32bが形成される(図4参照)。一対の折り返し片32,32は、それぞれの折曲部32b,32bの幅方向Yに沿う切断面の形状が湾曲状に形成され、折曲部32b,32bの先端32a,32aが、高さ方向Zに沿って底板31の上面31aに対向する(図4参照)。
【0030】
一対の折り返し片32,32は、電気接続部2との間に隙間33が設けられ、かつ、電線圧着部4との間に隙間34が設けられている。つまり、一対の折り返し片32,32は、電気接続部2及び電線圧着部4から延在方向Xに沿って一定の距離をあけて形成されている。なお、一対の折り返し片32,32、及び、底板31の一部は、通電確保部30を構成する。すなわち、通電確保部30は、一対の折り返し片32,32、及び、底板31の一部を含んで構成されている。
【0031】
通電確保部30は、延在方向Xから視た場合、電気接続部2、電線圧着部4、及び、電線Wで形成される輪郭、すなわち最外形の内側に位置する。言い換えれば、通電確保部30は、延在方向Xから視た場合、電気接続部2、電線圧着部4、及び、電線Wで形成される輪郭から外側にはみ出ていない。さらに言えば、通電確保部30は、電気接続部2の幅方向Yの長さ、電線圧着部4の幅方向Yの長さ、及び、電線Wの幅方向Yの長さのうち、最も長い長さよりも当該通電確保部30の幅方向Yの長さが短く、かつ、電気接続部2の高さ方向Zの長さ、電線圧着部4の高さ方向Zの長さ、及び、電線Wの高さ方向Zの長さのうち、最も長い長さよりも当該通電確保部30の高さ方向Zの長さが短い。具体的には、通電確保部30は、幅方向Yに最も長い電線圧着部4の長さよりも当該通電確保部30の幅方向Yの長さが短く、かつ、高さ方向Zに最も長い電線Wの長さよりも当該通電確保部30の高さ方向Zの長さが短い。
【0032】
ここで、通電確保部30は、当該通電確保部30の抵抗値が、導体部W1の抵抗値以下であり、かつ、電気接続部2の抵抗値以上となるように構成されている。すなわち、通電確保部30は、導通性能が導体部W1と同等、または導体部W1よりも高く、かつ、導通性能が電気接続部2と同等、または電気接続部2よりも低い。言い換えれば、通電確保部30は、図3図5に示すように、当該通電確保部30の幅方向Yに沿う切断面35の断面積が、導体部W1の幅方向Yに沿う切断面W1aの断面積以上であり、かつ、電気接続部2の幅方向Yに沿う切断面25の断面積以下である。すなわち、通電確保部30の切断面35の断面積は、以下の式(1)の関係を満たす。
【0033】
導体部W1の切断面W1aの断面積≦通電確保部30の切断面35の断面積≦電気接続部2の切断面25の断面積 ・・・(1)
【0034】
例えば、通電確保部30は、当該通電確保部30の切断面35の断面積が、導体部W1の切断面W1aの断面積と同等であり、かつ、電気接続部2の切断面25の断面積と同等としてもよい。すなわち、通電確保部30の切断面35の断面積は、以下の式(2)の関係を満たすようにしてもよい。
【0035】
導体部W1の切断面W1aの断面積=通電確保部30の切断面35の断面積=電気接続部2の切断面25の断面積 ・・・(2)
【0036】
また、通電確保部30は、当該通電確保部30の切断面35の断面積が、導体部W1の切断面W1aの断面積よりも大きく、かつ、電気接続部2の切断面25の断面積よりも小さくなるようにしてもよい。すなわち、通電確保部30の切断面35の断面積は、以下の式(3)の関係を満たすようにしてもよい。
【0037】
導体部W1の切断面W1aの断面積<通電確保部30の切断面35の断面積<電気接続部2の切断面25の断面積 ・・・(3)
【0038】
なお、電線Wの導体部W1は、上述のように、金属素線を複数束ねた芯線であり、導体部W1の切断面W1aの断面積は、各金属素線の断面積の合計である。図5に示す導体部W1の切断面W1aは、金属素線を複数束ねた芯線の切断面を簡略化して図示している。
【0039】
以上のように、実施形態に係る圧着端子1は、電気接続部2と、電線圧着部4と、連結部3とを備える。電気接続部2は、相手側の導電性部材と電気的に接続される。電線圧着部4は、延在方向Xに沿って延在する電線Wの導体部W1と電気的に接続される。連結部3は、電気接続部2と電線圧着部4とを連結する。ここで、連結部3は、通電確保部30を有する。この通電確保部30は、底板31及び一対の折り返し片32,32を有する。底板31は、電気接続部2と電線圧着部4とを連結する。一対の折り返し片32,32は、延在方向Xに交差する幅方向Yにおける底板31の両側縁から延設され、それぞれが底板31の導体部W1側の上面31aに向けて折り返される。このように構成される通電確保部30は、当該通電確保部30の幅方向Yに沿う切断面35の断面積が、導体部W1の幅方向Yに沿う切断面W1aの断面積以上であり、かつ、電気接続部2の幅方向Yに沿う切断面25の断面積以下である。
【0040】
この構成により、圧着端子1は、通電確保部30の断面積を電線Wの導体部W1の断面積と同等以上とすることにより、連結部3の抵抗値を小さくすることができ、連結部3の発熱を抑制できる。また、圧着端子1は、通電確保部30の断面積を電気接続部2と同等以下の断面積とすることにより、体格の大型化を抑制できる。さらに、圧着端子1は、通電確保部30により表面積を増加させることで温度上昇を抑制することができる。この結果、圧着端子1は、体格の大型化を抑制しつつ、電気接続部2と電線圧着部4との間で適正な通電性能を確保することができる。
【0041】
圧着端子1において、通電確保部30は、当該通電確保部30の抵抗値が導体部W1の抵抗値以下である。この構成により、圧着端子1は、電気接続部2と電線圧着部4との間で適正な通電性能を確保することができる。
【0042】
圧着端子1において、通電確保部30は、電気接続部2の幅方向Yの長さ、電線圧着部4の幅方向Yの長さ、及び、電線Wの幅方向Yの長さのうち、最も長い長さよりも当該通電確保部30の幅方向Yの長さが短く、かつ、電気接続部2の幅方向Y及び延在方向Xに交差する高さ方向Zの長さ、電線圧着部4の高さ方向Zの長さ、及び、電線Wの高さ方向Zの長さのうち、最も長い長さよりも当該通電確保部30の高さ方向Zの長さが短い。この構成により、圧着端子1は、当該圧着端子1をハウジングに収容する際に、ハウジングの大型化を抑制できる。
【0043】
実施形態に係る端子付き電線100は、導体部W1を有する電線Wと、導体部W1に電気的に接続される圧着端子1とを備える。この構成により、端子付き電線100は、体格の大型化を抑制しつつ、電気接続部2と電線Wとの間で適正な通電性能を確保することができる。
【0044】
次に、実施形態の変形例について説明する。なお、変形例では、実施形態と同等の構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。図6は、実施形態の変形例に係る端子付き電線100Aの構成例を示す斜視図である。変形例に係る端子付き電線100Aは、電線Wの導体部W1に加締められ圧着される電線圧着部4の代わりに、超音波によって電線Wの導体部W1を接合した電線接合部4Aを備える点で、実施形態に係る端子付き電線100とは異なる。
【0045】
変形例に係る端子付き電線100Aは、電線Wと、当該電線Wの端末に圧着され導通接続された金属端子1Aとを備える。
【0046】
金属端子1Aは、電線Wが電気的に接続され、導電性を有する相手端子が接続される端子金具であり、電気接続部2と、連結部3と、電線接合部4Aとを備える。
【0047】
電線接合部4Aは、電線Wの導体部W1と電気的に接続される部分である。電線接合部4Aは、図7に示すように、底板43を有し、超音波によって電線Wの導体部W1を底板43に接合することで、電線Wの端末に設けられる。
【0048】
底板43は、板状に形成され、延在方向Xに沿って延在する。底板43は、板厚方向が高さ方向Zに沿う。底板43は、延在方向Xの一方側に連結部3を介して電気接続部2が連結される。
【0049】
電線接合部4Aは、超音波接合機(図示省略)により、底板43の上面に載置された電線Wの導体部W1を加圧しながら超音波振動を印加することで、導体部W1の複数の金属素線を固めて単線化した単線化部W1bが形成され、当該単線化部W1bが底板43に接合される。
【0050】
金属端子1Aの連結部3は、一対の折り返し片32,32及び底板31の一部を含む通電確保部30を有する。
【0051】
通電確保部30は、電気接続部2の幅方向Yの長さ、電線接合部4Aの幅方向Yの長さ、及び、電線Wの幅方向Yの長さのうち、最も長い長さよりも当該通電確保部30の幅方向Yの長さが短く、かつ、電気接続部2の高さ方向Zの長さ、電線接合部4Aの高さ方向Zの長さ、及び、電線Wの高さ方向Zの長さのうち、最も長い長さよりも当該通電確保部30の高さ方向Zの長さが短い。具体的には、通電確保部30は、幅方向Yに最も長い電線接合部4Aの長さよりも当該通電確保部30の幅方向Yの長さが短く、かつ、高さ方向Zに最も長い電線Wの長さよりも当該通電確保部30の高さ方向Zの長さが短い。
【0052】
ここで、金属端子1Aにおいて、通電確保部30は、当該通電確保部30の抵抗値が、導体部W1の抵抗値以下であり、かつ、電気接続部2の抵抗値以上となるように構成されている。言い換えれば、通電確保部30は、図8図10に示すように、当該通電確保部30の幅方向Yに沿う切断面35の断面積が、導体部W1の幅方向Yに沿う切断面W1aの断面積以上であり、かつ、電気接続部2の幅方向Yに沿う切断面25の断面積以下である。すなわち、金属端子1Aにおいて、通電確保部30の切断面35の断面積は、上述の式(1)の関係を満たす。
【0053】
以上のように、変形例に係る金属端子1Aは、電気接続部2と、電線接合部4Aと、連結部3とを備える。電線接合部4Aは、超音波接合により電線Wの導体部W1と電気的に接続される。連結部3は、電気接続部2と電線接合部4Aとを連結する。ここで、連結部3は、通電確保部30を有する。通電確保部30は、当該通電確保部30の幅方向Yに沿う切断面35の断面積が、導体部W1の幅方向Yに沿う切断面W1aの断面積以上であり、かつ、電気接続部2の幅方向Yに沿う切断面25の断面積以下である。この構成により、金属端子1Aは、体格の大型化を抑制しつつ、電気接続部2と電線接合部4Aとの間で適正な通電性能を確保することができる。
【0054】
なお、上記説明では、通電確保部30は、延在方向Xから視た場合、電気接続部2、電線圧着部4(電線接合部4A)、及び、電線Wで形成される輪郭の内側に位置する例について説明したが、これに限定されず、例えば、当該輪郭の外側にはみ出てもよい。
【0055】
また、電線圧着部4は、いわゆるBクリンプと称する加締め圧着がなされる例について説明したが、こに限定されず、例えば、いわゆるオーバーラップクリンプと称する加締め圧着がなされてもよい。電線圧着部4は、オーバーラップクリンプでは、一対のバレル片42,42が電線Wに対して巻き付けられて加締められ、圧着された状態で、先端側が互いに重なり合う(オーバーラップする)ように構成される。
【符号の説明】
【0056】
1 圧着端子(端子)
1A 金属端子(端子)
2 電気接続部
3 連結部
30 通電確保部
31 底板
31a 上面
32 一対の折り返し片
4 電線圧着部(電線接続部)
4A 電線接合部(電線接続部)
25,35,W1a 切断面
W 電線
W1 導体部
X 延在方向
Y 幅方向(交差方向)
Z 高さ方向(厚み方向)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10