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▶ スガ試験機株式会社の特許一覧

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  • 特開-環境試験機 図1
  • 特開-環境試験機 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153196
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】環境試験機
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066953
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000107583
【氏名又は名称】スガ試験機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】須賀 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】井上 純
(72)【発明者】
【氏名】金原 英司
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050CA03
2G050CA04
2G050EC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】試験精度を向上させることが可能な環境試験機を提供する。
【解決手段】試料の劣化を試験する環境試験機において、前記環境試験機は前記試験を実施する試験槽を備え、前記試験槽の内部に液体タンクを有する環境試験機。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の劣化を試験する環境試験機において、
前記試験を実施する試験槽を備え、
前記試験槽の内部に液体タンクを有する
環境試験機。
【請求項2】
前記試料に液体を噴霧する噴霧試験と、
前記試料を液体に浸漬する浸漬試験とのうち、
少なくとも1つ以上の試験を行う前記環境試験機において、
前記液体タンクは、
内部に前記液体を収容し、
前記液体を前記噴霧およびまたは前記浸漬に用いる
請求項1に記載の環境試験機。
【請求項3】
前記液体タンクは、
内部に液体を収容し、
前記液体を前記試験槽の洗浄に用いる
請求項1に記載の環境試験機。
【請求項4】
前記液体タンクに収容する前記液体の容量は、
1回の前記洗浄に用いる前記液体の使用量と略一致する
請求項3に記載の環境試験機。














【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
製品や材料などの試料の環境による劣化を試験するための環境試験機が知られている。環境試験機としては、例えば噴霧腐食試験などの単一試験のみを行う装置だけでなく、より自然環境に近似した試験として、噴霧腐食試験と、乾燥試験、湿潤試験、浸漬試験および低温試験といった他の試験とを組み合わせて1サイクルとし、このサイクルを繰り返して試験を行う装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-100951
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような環境試験機では一般に、環境試験の際の試験精度の向上が求められている。
【0005】
したがって、環境試験の際の試験精度を向上させることが可能な環境試験機を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)試料の劣化を試験する環境試験機において、
試験を実施する試験槽を備え、
試験槽の内部に液体タンクを有する
環境試験機。
【0007】
(2)試料に液体を噴霧する噴霧試験と、
試料を液体に浸漬する浸漬試験とのうち、
少なくとも1つ以上の試験を行う環境試験機において、
液体タンクは、
内部に液体を収容し、
液体を噴霧およびまたは浸漬に用いる
(1)に記載の環境試験機。
【0008】
(3)液体タンクは、
内部に液体を収容し、
液体を試験槽の洗浄に用いる
(1)に記載の環境試験機。
【0009】
(4)液体タンクに収容する液体の容量は、
1回の洗浄に用いる液体の使用量と略一致する
(3)に記載の環境試験機。
【発明の効果】
【0010】
本発明の環境試験機によれば、環境試験機の試験槽の内部に液体タンクを備えるようにしたため、環境試験の際に用いる液体の温度を試験槽内の温度と略一致させることができ、簡易的な構造で試験精度を向上することができる。また、液体タンクからの放熱を防止でき、省エネルギー化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態に係る環境試験機1の概略を示す概略図である。
図2図2は、変形例1に係る環境試験機1Aの概略を示す概略図である。
図3図3は、環境試験機1Aにおける浸漬試験時の説明図である。
図4図4は、変形例2に係る環境試験機1Bの概略を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(環境試験機1の実施形態)
図1を参照して、実施形態に係る環境試験機1の概略について説明する。図1は、実施形態に係る環境試験機1の概略を示す概略図である。
【0014】
実施形態に係る環境試験機1は、試験槽2と噴霧部3と液体タンク4と試料載置台5とを含む。
【0015】
環境試験機1は、試験槽2の内部の試料載置台5に載置した試料Sに対し噴霧部3から液体を噴霧させ、試料Sの耐食性を試験する噴霧腐食試験を行う。噴霧腐食試験に用いる液体は、例えば塩水が用いられるが、当該技術分野で一般的に使用されている液体であれば特に制限はない。
【0016】
試験槽2は、その内部に試料Sおよび噴霧部3を収容する容器であり、噴霧部3によって噴霧される液体を試料Sの上に自由落下させる空間を有する。
【0017】
噴霧部3は、試験槽2の内部に立設する噴霧塔31と、その噴霧塔31の内部に設けられた噴霧器32とを有する。図1に示す例では、噴霧塔31は、試験槽2の側壁付近に配置されているが、例えば噴霧塔31は試験槽2の中央付近に配置されてもよい。
【0018】
図1に示す例では、噴霧器32は、液ノズルと、空気ノズルとを有し、空気ノズルから噴出する圧縮空気により、液ノズルから噴霧液が吸い上げられ微粒子となって、噴霧塔31の上方から試験槽2内に噴霧として放出され、試料Sに自然落下するようになっているが、噴霧器32は、液体を噴霧できるものであれば特に制限はない。
【0019】
液体タンク4は、試験槽2内に備えられており、噴霧器32の液ノズルと接続され、内部に液体を収容し、この液体が噴霧器32に供給されることで、試験槽2内に噴霧が行われる。図1に示す例では、液体タンク4は、試験槽2の底部の端に配置されているが、試験槽2の中央付近や壁際に配置されてもよい。また、液体タンク4は、内部に液体を貯蓄できるものであれば、形状、数量など特に制限はなく、試験槽2の外部から液体タンク4に液体を供給されるようにしてもよい。
【0020】
(環境試験機1の動作)
環境試験機1は、試験槽2の内部に立設する噴霧塔31を備え、図示していない外部の圧縮空気供給部から供給される圧縮空気が、所定の空気圧力で空気ノズルに供給され、噴霧塔31の内部の噴霧器32の空気ノズルから噴出される。これに伴い、液体タンク4と接続されている液ノズルの内部の液体が、空気ノズルから噴出される圧縮空気により吸引され、液体が試験槽2内に噴霧される。試験槽2内に噴霧された霧状の液体は試験槽2内の試料S上に自然落下することで噴霧試験を行う。また、試験槽2内は、図示していない加熱装置や冷却装置、加湿装置を備え、これらを制御することで試験槽2内の雰囲気を所望の温湿度に維持している。したがって、試料Sは所望の温湿度下で噴霧環境に晒されることとなる。
【0021】
(環境試験機1の効果)
一般的に環境試験において、規定された試験条件(例えば試験槽2内の温度が35℃)の環境で液体を噴霧する際に、試験槽2内の温度と液体の温度に差があると、試験槽2内の温度と異なる温度の液体が噴霧され、試験槽2内の温度が変動し、環境試験の劣化度合いにばらつきが生じ、試験精度が低下する恐れがあった。そのため従来は、試験槽2の外部に液体タンク4を設け、加熱装置等で液体タンク4内の液体を加熱し、噴霧器32に配管を通じて送水していた。本実施形態に係る環境試験機1では、試験槽2内の液体タンク4に収容された液体を噴霧試験に用いるようにしたので、液体タンク4に収容された液体の温度が試験槽2内の雰囲気温度に略一致し、試験槽2内の温度を一定に保つことができ、試験精度の向上が実現できる。また、液体タンク4に収容された液体の温度が試験槽2内の雰囲気温度に略一致するようにしたので、試験槽2の外部に液体タンク4を設け、その液体タンク4内の加熱装置で加熱する場合と比較して、試験槽2の外部に設けた液体タンク4からの放熱を防止でき、環境試験機1の構造を簡略化できるとともに、省エネルギー化が実現できる。更に試験槽2内に液体タンク4を設けたので、配管を液体が通過する際の配管からの放熱を防止でき、省エネルギー化が実現できる。
【0022】
(環境試験機1の変形例1)
続いて、本発明の変形例1について説明する。なお、実施形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0023】
図2は、変形例1に係る環境試験機1Aの概略を示す概略図である。
【0024】
本変形例の環境試験機1Aは、液体タンク4Aと浸漬バット6とを含む。図3は、環境試験機1Aにおける浸漬試験時の説明図である。
【0025】
図2に示す例では、浸漬バット6は、試料載置台5を囲う箱状の容器であり、その容器内を液体で満たすことで、試料載置台5に載置された試料Sを浸漬状態にするものである。浸漬バット6は、液体供給配管61と液体排出配管62を通じて後述する液体タンク4Aに接続され、液体供給配管61と液体排出配管62により液体の供給と排出が行われる。浸漬バット6は、試料Sを浸漬することが出来れば、形状、数量など特に制限はなく、試験槽2自体が浸漬バット6の役割をするようにしてもよい。
【0026】
液体タンク4Aは、試験槽2内に備えられており、液体供給配管61と液体排出配管62を通じて浸漬バット6と接続され、内部に液体を収容する。この液体が浸漬バット6に供給されることで、図3に示したように、試料載置台5に載置された試料Sの浸漬試験を行う。液体タンク4Aから浸漬バット6への液体の供給は、液体供給配管61を通じてポンプ等で供給するようにすればよい。一方、浸漬バット6から液体タンク4Aへの液体の排水は、液体排出配管62と通じて重力を使用して排水すればよい。液体タンク4Aは、内部に液体を貯蓄できるものであれば、形状、数量など特に制限はなく、液体の供給や排出方法に特に制限はない。
【0027】
(環境試験機1Aの動作)
環境試験機1Aは、試験槽2内に備えた液体タンク4Aの内部に収容された液体が、浸漬試験の開始時に液体供給配管61を通じて浸漬バット6に供給され、試料Sが液体で浸漬されることで浸漬試験を行う(図3)。所定の期間、浸漬試験を行った後に、液体排出配管62を通じて浸漬バット6から液体タンク4Aに液体が排出されることで浸漬試験が終了となる。浸漬試験は単独試験でもよいし、前述の噴霧試験や、低湿度環境の乾燥試験、高湿度環境の湿潤試験等を繰り返すサイクル試験を行うようにしても良い。
【0028】
(環境試験機1Aの効果)
浸漬試験を行う際に、液体タンク4Aが試験槽2の外部に備えられている場合、外気温によって、液体タンク4A内の液体の温度が試験槽2内の雰囲気温度よりも低い可能性があり、試験条件よりも液体温度が低いため加熱装置等で液体を加熱する必要があった。変形例1に係る環境試験機1Aでは、試験槽2内の液体タンク4Aに収容された液体を浸漬試験に用いるようにしたので、液体タンク4Aに収容された液体の温度が、試験槽2内の雰囲気温度に略一致し、試験槽2の外部に液体タンク4を設け、その液体タンク4A内の加熱装置で加熱する場合と比較して、試験槽2の外部に設けた液体タンク4Aからの放熱を防止でき、環境試験機1Aの構造を簡略化できるとともに、省エネルギー化が実現できる。更に試験槽2内に液体タンク4Aを設けたので、配管を液体が通過する際の配管からの放熱を防止でき、省エネルギー化が実現できる。また、雰囲気によって液体タンク4A内の液体を加熱しているため、加熱装置近傍が高温になったり、高温の液体が上方に移動するなどに起因した液体の温度ムラが低減し、試験精度の向上が実現できる。なお、試験槽2内の雰囲気温度よりも浸漬試験の液体温度が高い試験条件である場合であっても、液体タンク4A内の液体を図示しない専用の加熱装置で加熱する際に、液体タンク4Aが試験槽2の外部に備えられている場合と比較して加熱量を減少させることができるため、省エネルギー化が実現できる。
【0029】
(環境試験機1の変形例2)
続いて、本発明の変形例2について説明する。なお、実施形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0030】
図4は、変形例2に係る環境試験機1Bの概略を示す概略図である。
【0031】
本変形例の環境試験機1Bは、液体タンク4Bと洗浄ノズル7とを含む。
【0032】
洗浄ノズル7は、試験槽2内の洗浄を行うものである。液体タンク4Bと接続され、液体タンク4B内の液体を洗浄ノズル7に供給することで、洗浄ノズル7から液体を噴射し、洗浄を行う。図4に示す例では、一例として洗浄ノズル7は試験槽2の壁面に対して液体を噴射するようになっている。洗浄ノズル7は試験槽2内を洗浄するものであれば、位置、数量など特に制限は無い。
【0033】
液体タンク4Bは、試験槽2内に備えられており、洗浄ノズル7と接続され、ポンプ等により液体タンク4Bから洗浄ノズル7に液体を供給するようになっている。液体タンク4Bに液体を収容できる容量は、1回の洗浄に使用する液体の量と同等にしても良い。
【0034】
(環境試験機1Bの動作)
環境試験機1Bは、試験槽2内に備えた液体タンク4Bの内部に収容された液体が、洗浄工程において洗浄ノズル7に供給され、洗浄ノズル7から液体を噴射することで、試験槽2内の洗浄を行う。洗浄工程は、例えば前述の噴霧試験や乾燥試験、湿潤試験、浸漬試験等を繰り返すサイクル試験における、各試験の移行の際に行うようにしても良いし、所定の時間ごとや、試験終了時に行うようにしても良い。
【0035】
(環境試験機1Bの効果)
変形例2に係る環境試験機1Bでは、試験槽2内の液体タンク4Bに収容された液体を用いて試験槽2内の洗浄を行うようにしたので、例えば環境試験で試料Sに作用させる液体(例えば塩水)が試験槽2内の壁面や床面等に付着した後に、乾燥して塩化物等が固着することを防止できる。また、洗浄に用いる液体タンク4Bに収容された液体の温度が、試験槽2内の雰囲気温度に略一致しているため、試験中の試験槽2内の温度の変動を防止でき、試験精度の向上が実現できる。また、試験槽2の外部に液体タンク4Bを設け、その液体タンク4B内の加熱装置で加熱する場合と比較して、試験槽2の外部に設けた液体タンク4Bからの放熱を防止でき、環境試験機1の構造を簡略化できるとともに、省エネルギー化が実現できる。更に試験槽2内に液体タンク4Bを設けたので、配管を液体が通過する際の配管からの放熱を防止でき、省エネルギー化が実現できる。また、液体タンク4Bに液体を収容できる容量を、1回の洗浄に使用する液体の量と同等にすることにより、1回の洗浄に用いる液体の温度が、試験槽2内の雰囲気温度に略一致しているため、試験槽2内の洗浄の途中で液体の温度が変動せず試験槽2内の温度の乱れを防止できる。
【0036】
(その他の変形例)
以上、実施の形態および応用例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0037】
例えば、上記実施の形態では、液体タンクを有する環境試験機における各機器の構成(形状、配置、個数など)を具体的に挙げて説明したが、これらの構成については、上記実施の形態などで説明したものには限られず、他の形状や配置、個数などであってもよい。
【0038】
本発明の液体タンクを有する環境試験機は、液体を噴霧や浸漬、試験槽の洗浄に用いるようにしたが、これに限らず、試料の洗浄や噴霧器の洗浄、試験槽内の温度調節に用いる加温装置や冷却装置、送風機の洗浄、また、試験槽内の温度、湿度、放射照度を測定するセンサー類の洗浄等に用いるようにしても良い。
【符号の説明】
【0039】
1、1A、1B…環境試験機、2…試験槽、3…噴霧部、31…噴霧塔、32…噴霧器、4、4A、4B…液体タンク、5…試料載置台、6…浸漬バット、61…液体供給配管、62…液体排出配管、7…洗浄ノズル、S…試料
図1
図2
図3
図4