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特開2024-153234投げ込み式水質センサのセンサカバー、および水質センサ
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  • 特開-投げ込み式水質センサのセンサカバー、および水質センサ 図1
  • 特開-投げ込み式水質センサのセンサカバー、および水質センサ 図2
  • 特開-投げ込み式水質センサのセンサカバー、および水質センサ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153234
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】投げ込み式水質センサのセンサカバー、および水質センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/18 20060101AFI20241022BHJP
   A01K 63/04 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
G01N33/18 106E
A01K63/04 Z
G01N33/18 106A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066996
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】518095493
【氏名又は名称】株式会社サイエンス・イノベーション
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(74)【代理人】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】桑原 克己
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104CB41
2B104EF09
(57)【要約】
【課題】投げ込み式水質センサにおいて、比較的汚れがある水を対象としていても、長期間安定的に水質を測定することができる、センサカバーを提供する。
【解決手段】水槽内に投げ込まれ採水用のポンプなしで水質を測定するようになっている投げ込み式の水質センサ(2)を対象とし、そのセンサカバー(1)として構成される。本発明のセンサカバー(1)は、水質センサ(2)を収納する容器からなり、該容器は実質的に全体が水を通すフィルタ素材から形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽内に投げ込まれ採水用のポンプなしで水質を測定するようになっている投げ込み式の水質センサのセンサカバーであって、
前記センサカバーは前記水質センサを収納する容器からなり、該容器は実質的に全体が水を通すフィルタ素材から形成されている、センサカバー。
【請求項2】
前記センサカバーは、合成樹脂繊維を含む繊維の撚糸が円筒状に巻かれたワインドタイプフィルタと、前記ワインドタイプフィルタの底部を閉鎖している底面部とから構成され、前記水質センサは前記ワインドタイプフィルタの上部から挿入されるようになっている、請求項1に記載のセンサカバー。
【請求項3】
前記センサカバーは、合成樹脂の不織布からから形成された円筒部と、前記円筒部の底部を閉鎖している底面部とから構成され、前記水質センサは前記円筒部の上部から挿入されるようになっている、請求項1に記載のセンサカバー。
【請求項4】
前記水質センサは、溶存酸素を測定する溶存酸素センサ、pH計、水温計のいずれかである請求項1または2に記載のセンサカバー。
【請求項5】
水槽内に投げ込まれ採水用のポンプなしで水質を測定するようになっている投げ込み式の水質センサであって、
前記水質センサは、該水質センサ全体を収納する容器からなるセンサカバーに入れられており、前記容器は実質的に全体が水を通すフィルタ素材から形成されている、水質センサ。
【請求項6】
前記センサカバーは、合成樹脂繊維を含む繊維の撚糸が円筒状に巻かれたワインドタイプフィルタと、前記ワインドタイプフィルタの底部を閉鎖している底面部とから構成され、前記円筒部の上部から前記水質センサが挿入され収納されている、請求項5に記載の水質センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投げ込み式の水質センサに設けられるセンサカバーに関するものであり、限定するものではないが、魚介類を養殖する水槽に設けられる投げ込み式の水質センサに好適な、センサカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
色々な水域において、水温、溶存酸素量、pH等の水質の測定が必要になる。例えば、そのような水域として魚介類を養殖する水槽をあげることができる。魚介類を養殖する水槽では、飼育水を適切な水質に維持する必要があり、上にあげた水温、溶存酸素量、pH等を測定して、必要に応じて飼育水を加熱、冷却したり、空気を送り込んで溶存酸素量を上げたり、あるいはpH調整を行ったりしている。水質の測定には、特許文献1に記載されているような水質分析装置を利用することもできる。このタイプの水質分析装置では、ポンプ等の吸引機器が設けられており、測定対象の飼育水を吸い上げて水質センサに送り込み水質が測定される。このような水質分析装置に対し、ポンプを備えていない、いわゆる投げ込み式の水質センサを利用することもできる。投げ込み式の水質センサはポンプ等の動力が不要であり、水槽に投げ込むだけで水質を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-133999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
投げ込み式の水質センサは、比較的安価であり水槽に投げ込むだけで良くポンプ等の動力も不要であり優れている。しかしながら、解決すべき課題も見受けられる。具体的には、測定対象の水が若干汚れている場合に問題が見受けられる。投げ込み式の水質センサは、センサ部分が測定対象の水に直接触れるようになっている。若干汚れがある水に投げ込み式の水質センサを入れておくと、比較的短期間にセンサ部分が汚れてしまい、正しく水質を測定できなくなってしまう。そうすると、例えば数日で水質センサに異常が発生して測定できなくなる。異常を解消するにはセンサ部分を清掃する必要があり煩雑である。
【0005】
本発明は、上記したような問題点を解決することを目的としている。すなわち、投げ込み式水質センサにおいて、比較的汚れがある水を対象としていても、長期間安定的に水質を測定することができる、センサカバーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水槽内に投げ込まれ採水用のポンプなしで水質を測定するようになっている投げ込み式の水質センサを対象とし、そのセンサカバーとして構成される。本発明のセンサカバーは、水質センサを収納する容器からなり、該容器は実質的に全体が水を通すフィルタ素材から形成するようにする。
【0007】
他の発明は、センサカバーは、合成樹脂繊維を含む繊維の撚糸が円筒状に巻かれたワインドタイプフィルタと、このワインドタイプフィルタの底部を閉鎖している底面部とから構成し、水質センサはワインドタイプフィルタの上部から挿入されるようにする。または、センサカバーは、合成樹脂の不織布からから形成された円筒部と、円筒部の底部を閉鎖している底面部とから構成し、水質センサは円筒部の上部から挿入されるようにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、センサカバーは、水質センサを収納する容器からなり、該容器は実質的に全体が水を通すフィルタ素材から形成するように構成されている。このようなセンサカバーに水質センサが収納されると、比較的汚れがある水に投げ込まれても、センサカバーの内側にはフィルタ素材を通って汚れが除去された水が入り込む。つまり水質センサには汚れが除去された水が接することになる。したがって水質センサへの汚れの付着を防止でき、長期間安定して精度良く水質を測定することができる。
【0009】
他の発明によると、センサカバーは、合成樹脂繊維を含む繊維の撚糸が円筒状に巻かれたワインドタイプ¥フィルタと、このワインドタイプフィルタの底部を閉鎖している底面部とから構成されている。ワインドタイプフィルタはろ過フィルタとして市販されており安価にフィルタカバーを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係るセンサカバーと、このセンサカバーに入れられている投げ込み式の水質センサとを示す図で、その(A)はその正面図であり、その(B)は正面断面図である。
図2】投げ込み式の水質センサであるpH計に、本実施の形態に係るセンサカバーを装着する様子を示す写真である。
図3】本実施の形態に係るセンサカバーが装着された投げ込み式の水質センサが、養鰻用の水槽に投げ込まれている様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本実施の形態>
以下、本実施の形態を説明する。
本実施の形態に係るセンサカバー1と、このセンサカバー1に入れられている水質センサ2は、図1の(A)、(B)に示されている。センサカバー1は、筒状の容器になっており、円筒部5と、この円筒部5の底面を閉鎖している底面部6と、上面を閉鎖している上面部7と、から構成されている。
【0012】
センサカバー1の円筒部5は、本実施の形態において、いわゆるワインドタイプフィルタからなる。ワインドタイプフィルタは、ポリプロピレン等の合成樹脂から多数の孔が空いた円筒状に形成されているコア10と、このコア10の外周に巻かれているフィルタ体11とから構成されている。フィルタ体11は、ポリプロピレン、ポリエステル等の合成樹脂繊維を含んだ繊維からなる撚糸が糸巻き状に巻かれたものになっている。撚糸の繊維には、コットン等の天然繊維や、グラスファイバー、カーボンファイバー等の繊維を含んでいてもよい。このように構成されているので、円筒部5は汚れを含んだ水をろ過することができ、センサカバー1の内部には汚れが除去された比較的きれいな水が流れ込むことになる。ワインドタイプフィルタは、市販されているものを利用することができる。
【0013】
底面部6は、合成樹脂等から構成され、円筒部5の底面を液密的に閉鎖している。本実施の形態において底面部6はフィルタとしての作用はないが、底面部6をフィルタ素材から形成するようにしてもよい。上面部7も合成樹脂等から構成され、円筒部5の上面を液密的に閉鎖している。上面部7には、水質センサ2に設けられているケーブル13を通す孔が空けられているが、図には示されていない。
【0014】
水質センサ2は、投げ込み式になっており、水温計、pH計、溶存酸素量計、等、センサの種類は問わず、どのようなセンサでも利用できる。本実施の形態において、センサカバー1は水質センサ2を収納し、実質的に全体がフィルタ素材から形成されている。したがって、ポンプ等によって強制的に水を送り込まないでも、センサカバー1の周囲の水は大きな抵抗なくろ過されてセンサカバー1内に侵入して水質センサ2に到達し、そしてセンサカバー1内の水は大きな抵抗なく、センサカバー1の外に排出される。つまり、センサカバー1が設けられていても、投げ込み式の水質センサ2による水質の測定に影響を与えない。
【実施例0015】
本実施の形態に係るセンサカバー1が設けられている水質センサ2が、比較的汚れのある水に投げ込まれていても長期間正常に測定ができることを確認する実験を行った。
実験内容:
実施例A、Bとして、水質センサ2としてpH計と溶存酸素量計とを用意し、それぞれ本実施の形態に係るセンサカバー1を装着した。図2にはpH計からなる水質センサ2が本実施の形態に係るセンサカバー1に入れられる様子が示されている。これらの実施例A、Bに係るセンサカバー1、1付きの水質センサ2、2を、図3に示されているように、養鰻用の水槽に投げ込んで測定を開始した。
比較例C、DとしてpH計と溶存酸素量計の水質センサを用意して、これらにはセンサカバー1を装着せず、同じ養鰻用の水槽に投げ込んで測定を開始した。
実験結果:
測定の開始後3日目に比較例Dに係る溶存酸素量計が測定不能になり、4日後に比較例Cに係るpH計が測定不能になった。測定不能になったと判断した理由は、他の計測手段により測定した溶存酸素量、pHが正常範囲になっているにもかかわらず、これら比較例C、Dによって測定された測定値が正常範囲の数値から逸脱していたからである。
一方、実施例A、Bに係るpH計と溶存酸素量計は3ヶ月経過しても正常に測定できていた。
本実施の形態に係るセンサカバー1が装着された水質センサ2は、比較的汚れがある水に投げ込まれても長期間安定的に水質の測定が可能であることが確認できた。
【0016】
<変形例>
本実施の形態は色々な変形が可能である。例えば、センサカバー1について円筒部2を変形することができる。円筒部2はワインドタイプフィルタから構成されるように説明したが、他のフィルタ素材から形成するようにしてもよい。例えば、合繊樹脂の不織布から円筒部2を形成してもよい。さらには、センサカバー1を円筒状ではない他の形状から形成してもよい。例えば、センサカバー1を不織布から球状の容器に形成してもよい。このような容器に水質センサ2を入れても同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0017】
1 センサカバー 2 水質センサ
5 円筒部 6 底面部
7 上面部 10 コア
11 フィルタ体 13 ケーブル
図1
図2
図3