(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153235
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
A47J27/00 103N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066997
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】志村 悠真
(72)【発明者】
【氏名】蜷川 智也
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA02
4B055BA53
4B055BA61
4B055CA24
4B055CA25
(57)【要約】
【課題】加熱手段の通電と停止を繰り返すことで内釜を目的の温度に維持する炊飯器において、加熱手段を停止した際に蒸気を排出する穴から内釜内に流入する外気を抑制する必要があった。
【解決手段】本開示の炊飯器は、蒸気経路部における蒸気排出口からおねば戻し穴及び蒸気流入口の間に複数の遮蔽壁を設け、且つ上面から見て蒸気経路部の側壁面との間に第一の隙間を形成することにより、加熱手段の停止に伴う内釜内への外気流入を抑制する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した内釜と、前記内釜を収容する内釜収納部を有し当該内釜収容部に収容された前記内釜を加熱する加熱手段を備えた本体と、前記本体の上面を覆う外蓋と前記外蓋の前記本体側となる下面に着脱自在に取り付けられ前記内釜の上面の開口を覆う位置に設置された内蓋とを備えた蓋体と、を有する炊飯器であって、
前記外蓋は、
前記外蓋の前記本体側に形成された窪んだ形状である蒸気経路部と、
前記蒸気経路部の上側壁面で且つ前記本体の後方側に形成され前記蓋体の上面と連通する開口を形成する蒸気排出口と、を有し、
前記内蓋は、
前記蒸気経路部と対向する位置に設けられ、前記内釜側に突出した底面部を有する凹み形状であるおねば溜め部と、
前記蒸気排出口に対し上方から見て前記内釜の中心側にずれた位置の前記底面部に前記内釜内と連通する開口を形成するおねば戻し穴と、
前記蒸気排出口に対し上方から見て前記内釜の中心側にずれた位置で前記おねば戻し穴よりも中心側に位置した蒸気流入口と、
前記蒸気経路部における前記蒸気排出口から前記おねば戻し穴及び前記蒸気流入口の間に複数設置され、上面から見て前記蒸気経路部の側壁面との間に第一の隙間を形成する遮蔽壁と、
を備えた炊飯器。
【請求項2】
前記第一の隙間は、
連続する前記遮蔽壁において重ならない位置に形成される
請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記遮蔽壁は
前記内蓋との間に第二の隙間を形成し、
前記第一の隙間を前記第二の隙間より大きく形成する
請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記遮蔽壁は、
前記蒸気経路部を形成する部材より熱伝導率の高い素材を用いて形成される
請求項3に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記遮蔽壁は、
前記蒸気経路部との間に隙間を形成している側が前記蒸気排出口の方向に曲がった湾曲部を形成する
請求項3に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記遮蔽壁は、
前記蒸気排出口と前記蒸気流入口の間の前記蒸気経路部から見て、前記蒸気流入口の側に偏って配置する
請求項3に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内釜で発生した蒸気を外部に排出する経路を有する炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の炊飯器は、誘導加熱を利用した加熱手段で被加熱物を収納する内釜を加熱する際、加熱手段の通電と停止を繰り返すことで内釜を目的の温度に維持するものがある。加えて、従来の炊飯器には、内釜を加熱した際に発生する蒸気に含まれるおねばを回収する構造を有するものがある(例えば、特許文献1)。
特許文献1には、炊飯器本体の上方を覆い蒸気排出口を有する外蓋およびこの外蓋の下面側に着脱自在に装着される内蓋を有する蓋体を備え、内蓋は分離可能な上板及び下板により囲まれる空間部を有し、加熱手段により内釜内で発生したおねばと蒸気を空間部に導入する蒸気導入穴を下板に形成し、空間部においておねばと分離された蒸気を外部に排出する蒸気排出穴を上板に形成したものが記載されている。特許文献1は、更に、蒸気排出穴の上方に外蓋に形成された蒸気排出部を設け、蒸気排出部の蒸気排出口と蒸気排出穴を直線状に結ぶ位置に下方に向かって垂下したリブとなる目隠しリブを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来技術の炊飯器では、内釜を目的の温度に制御するために加熱手段への通電を停止した際に内釜内の温度が低下して圧力が下がり、蒸気を排出する穴から内釜内に外気が逆流することがあった。すると、内釜内の被加熱物は、この外気によって一部の温度が低下してしまい、全体の温度分布における上下の幅が大きくなる問題が生じることがあった。これにより、従来技術では、ご飯の炊きあがり具合にむらができてしまい、食味が低下するという課題があった。
また、特許文献1のように単に蒸気排出部の蒸気排出口と蒸気排出穴を直線状に結ぶ位置にリブを設けただけでは、内釜への外気の流入を十分に抑制することができなかった。
【0005】
本開示は、かかる課題を解決するためになされたものであり、加熱手段の停止に伴う内釜内への外気流入を抑制する炊飯器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかる炊飯器は、上面が開口した内釜と、前記内釜を収容する内釜収納部を有し当該内釜収容部に収容された前記内釜を加熱する加熱手段を備えた本体と、前記本体の上面を覆う外蓋と前記外蓋の前記本体側となる下面に着脱自在に取り付けられ前記内釜の上面の開口を覆う位置に設置された内蓋とを備えた蓋体と、を有する炊飯器であって、前記外蓋は、前記外蓋の前記本体側に形成された窪んだ形状である蒸気経路部と、前記蒸気経路部の上側壁面で且つ前記本体の後方側に形成され前記蓋体の上面と連通する開口を形成する蒸気排出口と、を有し、前記内蓋は、前記蒸気経路部と対向する位置に設けられ、前記内釜側に突出した底面部を有する凹み形状であるおねば溜め部と、前記蒸気排出口に対し上方から見て前記内釜の中心側にずれた位置の前記底面部に前記内釜内と連通する開口を形成するおねば戻し穴と、前記蒸気排出口に対し上方から見て前記内釜の中心側にずれた位置で前記おねば戻し穴よりも中心側に位置した蒸気流入口と、前記蒸気経路部における前記蒸気排出口から前記おねば戻し穴及び前記蒸気流入口の間に複数設置され、上面から見て前記蒸気経路部の側壁面との間に第一の隙間を形成する遮蔽壁と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示にかかる炊飯器によれば、内釜内部への外気流入を抑制することができるので、炊きムラによる食味の低下を抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る炊飯器の蓋体を閉じた状態での外観斜視図である。
【
図2】実施の形態1に係る炊飯器の蓋体を開いた状態での外観斜視図である。
【
図3】実施の形態1に係る炊飯器の内蓋を取り外した状態で外観斜視図である。
【
図4】実施の形態1に係る炊飯器の縦断面概略図である。
【
図5】実施の形態1に係る炊飯器の内蓋を下面側から見た外観斜視図である。
【
図6】実施の形態1に係る炊飯器の内蓋の下面図である。
【
図7】実施の形態1に係る炊飯器の内蓋の下面の一部拡大図である。
【
図8】実施の形態1に係る炊飯器の内蓋の縦断面図である。
【
図9】実施の形態1に係る炊飯器の蒸気経路周辺の縦断面図である。
【
図10】実施の形態1に係る炊飯器の蒸気経路周辺の横断面図である。
【
図11】実施の形態1に係る炊飯器の蒸気流入口を通過するおねば泡を示す図である。
【
図12】実施の形態1に係る炊飯器の加熱時における蒸気経路部内の流れを示す図である。
【
図13】実施の形態1に係る炊飯器の加熱停止時における蒸気経路部内の流れを示す図である。
【
図14】実施の形態1に係る炊飯器の遮蔽壁の変形例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の技術を有する炊飯器について、図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、その一例であり、実施の形態に説明した構成によって発明が限定されるものではない。また、以下の図面は、本開示の技術を有する構成の一例であり、各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0010】
実施の形態1.
図1は、炊飯器の蓋体を閉じた状態での外観斜視図である。
図2は、蓋体を開いた状態での外観斜視図である。
図3は、
図2で内蓋を取り外した状態での外観斜視図である。
図4は、炊飯器の縦断面概略図である。
図5は、内蓋を下面側から見た外観斜視図である。
図6は、内蓋の下面図である。
図7は、内蓋の下面の一部拡大図である。
図8は、内蓋の縦断面図である。
図9は、蒸気経路周辺の縦断面図である。
図10は、蒸気経路周辺の横断面図である。
図11は、蒸気流入口を通過するおねば泡を示す図である。
図12は、加熱時における蒸気経路内の流れを示す図である。
図13は、加熱停止時における蒸気経路内の流れを示す図である。
図14は、遮蔽壁の変形例を示す横断面図である。
なお、説明の便宜上、
図1にて記載した点線矢印での方向を前・後(背)方向、実線矢印での方向を右・左方向、又は横方向、そして太線矢印での方向を上・下方向として説明する。
【0011】
炊飯器100は、
図1~
図4に示すように、主に本体1と蓋体2で構成する。
【0012】
本体1は、内部に内釜3を収納する構造となっており、内釜3を内部に収納する収納空間を形成する内釜収納部11を備えている。また、本体1は、内釜3を誘導加熱する加熱手段として、内釜収納部11の底面下に設けられた加熱コイル12と、内釜収納部11の側面に設けられた胴ヒータ13と、を備える。
【0013】
更に、本体1は、内釜収納部11の底面の中央に設けられ内釜3の温度を検出する底サーミスタ15と、本体1の内部の後側に設けられ加熱コイル12や胴ヒータ13に商用電源を高周波電力に変換した電力を供給する回路が実装された電源基板17と、を備えている。また、本体1の前面には、蓋体2を本体1の上面を閉じる状態で固定している支持構造の固定を解除するさいに使用される蓋開ボタン16が設けられている。
【0014】
蓋体2は、本体1の上面全体を覆う外蓋20と、外蓋20の本体1側となる下面に着脱自在に取り付けられた内蓋30と、を備えている。外蓋20は、本体1の後方と回転自在に接続され、蓋体2全体を本体1から回転自在に接続させ、本体1の上面を覆った状態で本体1に固定することが出来る支持構造を備えている。また、内蓋30は、蓋体2が本体1の上面を閉じる位置に固定された際、内釜3の上面の開口を覆う位置に設置されている。
【0015】
内釜3は、米などの調理物である被加熱物を保持するものであり、有底筒状である。具体的な形状としては、内釜3は、中央部分がやや上側に凸状となる底部3aと、底部3aと連続する筒状となる外周部3bと、外周部3bの上端部分から外側に広がる段状となる上部外周部3cとからなり、上面側が開口する形状となっている。外周部3bは、底部3a側及び上部外周部3c側より中央の方が円筒の内壁直径が大きくなる構造となっている。また、上部外周部3cは、その円筒の内壁直径が、外周部3bの円筒の内壁直径よりも大きくなるように構成されている。具体的には、上部外周部3cを水平に切った円の内側直径Rbは、外周部3bを水平に切った円の内側直径をRaの1.1Raとなるよう構成されている。つまり、内釜3は、上側から見ると、外周部3bの上側よりも上部外周部3cの開口の方が大きくなる構造となっている。
【0016】
加熱コイル12及び胴ヒータ13は、内釜3を誘導加熱する加熱手段であり、それぞれ円環状に形成されたコイルである。加熱コイル12及び胴ヒータ13は、電源基板17から商用電源を高周波電力に変換した電力の供給を受けて発熱し、内釜3を加熱する。
【0017】
底サーミスタ15は、内釜3の底面に接触する温度センサである。底サーミスタ15は、検出した内釜3の温度に関する情報を、電力信号として電源基板17に伝達する。
【0018】
蓋開ボタン16は、使用者に押されることにより外蓋20と本体1とを係止が解除する。使用者は、蓋開ボタン16を用いて蓋体2を開け、本体1に収納された内釜3を取り出したり、内釜3内のご飯を取り出したり、する。
【0019】
電源基板17は、インバーター回路を構成するスイッチング素子などの部品で構成されており、商用電源から加熱コイル12や胴ヒータ13に供給する高周波電力を生成する。また、電源基板17は、炊飯工程において、底サーミスタ15で検知した内釜3の温度が所定の温度になるように、加熱コイル12や胴ヒータ13の加熱量を調節し、内釜3内の被加熱物に対する加熱量を制御する。具体的には、電源基板17は、加熱コイル12への電力供給のONとOFFを切り替える回数や間隔を調整する間欠加熱運転を実施することで、底サーミスタ15で検知した内釜3の温度が所定の温度を維持するように制御する。
【0020】
次に、外蓋20の構造について更に詳細に説明する。
【0021】
外蓋20は、外蓋20の本体1の後方側に接続部26を備えており、当該接続部26と本体1の後上方にあるヒンジ部14とが回転自在に接続している。外蓋20は、このような構造を備えることで、蓋体2全体を本体1と回転自在に接続している。これにより、本体1は、蓋体2が本体1の上面を覆う位置で固定されることで、その内部にある内釜3の密閉性を高めることが出来る。また、本体1は、蓋体2が本体1の上面を覆わない位置に回動することで、利用者が内釜3を取り付け取り外ししたりや内釜3内のご飯を取り出したりすることが出来る。
【0022】
外蓋20は、その上面の前側に、炊飯ボタンなどの各種操作ボタンを備えた操作パネル21を設けている。また、外蓋20の内部には、各種操作ボタンに対応した各種入力スイッチが実装された操作基板22を設けている。
操作基板22は、各種入力スイッチからの入力に基づいた制御信号を電源基板17に出力する。操作基板22を構成する回路は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし、CPU、マイコンなどの演算装置とその動作を規定するソフトウェアで構成することもできる。
【0023】
また、外蓋20の下面には、内釜3内の温度を検知する蓋センサ23を設けている。蓋センサ23は、検知した信号を電源基板17に出力する。
【0024】
外蓋20は、本体1側となる内側下面に、炊飯器100の上方から見て内釜3の中心付近からヒンジ部14と接続する接続部26のある炊飯器100の後方向に向かって外蓋20の上面側に大きく窪んだ形状の壁面となる蒸気経路部27を形成している。外蓋20の本体1側は、内蓋30との間に、この蒸気経路部27によって大きな空間を形成する構成となっている。また、蒸気経路部27は、蒸気経路部27の上側壁面で且つ本体1の後方側に、炊飯器100の外と連通する開口となる蒸気排出口28を形成している。つまり、蒸気排出口28は、蒸気経路部27と内蓋30との間に形成された大きな空間と、炊飯器100の外と、を連通させる開口となっている。
【0025】
また、蒸気経路部27は、後述する内釜30の内釜3の中心側となる位置に形成した蒸気流入口37及びおねば戻し穴35と、外蓋20の後方側の位置に設けられた蒸気排出口28との間となる上側壁面から、内蓋30側に向かって突出する遮蔽壁29を備えている。
【0026】
遮蔽壁29は、蒸気排出口28と蒸気流入口37及びおねば戻し穴35との間に複数設けられており、実施の形態1の炊飯器では蒸気流入口37側にある遮蔽壁29aと蒸気流入口37及びおねば戻し穴35側にある遮蔽壁29bが設けられている。
【0027】
他には、外蓋20は、内側側面の前面側に内蓋解除レバー24が設けられ、内側側面の後面側に2つの支持部25が間隔を開けて設けられている。内蓋解除レバー24は、利用者が当該レバーを押し込むことで、内蓋30の外蓋20への係止を解除する。
【0028】
次に、内蓋30について、更に
図5~
図8を用いて詳細に説明する。
【0029】
内蓋30は、外蓋20の本体1側となる下面に、着脱自在に取り付けられている。内蓋30は、蓋体2で本体1の上面を閉じた際、内釜3の上部開口を閉塞する位置に設けている。内蓋30は、アルミニウム、ステンレス等の円盤状の板材である板金で主に構成されており、当該板金の周囲に樹脂材料で形成されて取り付けられた第1の凸部31と、第1の凸部31と反対の位置に設けられた第2の凸部32とを有している。内蓋30は、この第1の凸部31を外蓋20の支持部25に差し込み、第2の凸部32を外蓋20の凹部24に止めることで、外蓋20に固定することができる。
【0030】
また、内蓋30の板金部分には、内釜3側に突出した凹み形状のおねば溜め部33と、おねば溜め部33の周囲で平板状の平板部34と、が形成されている。
【0031】
おねば溜め部33は、内釜3の中央付近から炊飯器100の後方にあたる第1の凸部31側の範囲に形成し、板金を外蓋20とは逆側の本体1側となる下方に突出した凹み形状となっている。おねば溜め部33の凹み形状は、板状の板金材に、金属プレスによる絞り加工を行うことで形成する。おねば溜め部33は、内釜3側に突出した平面となる底面部38と、平板部34から底面部38に向かって傾斜した面となる傾斜部39と、を有した構造となっている。おねば溜め部33は、内蓋30を外蓋20に取り付けた状態において、外蓋20の蒸気経路部27と対向する位置となるように構成されており、蒸気経路部27とおねば溜め部33によって、外蓋20と内蓋30との間に大きな空間を形成している。
【0032】
平板部34は、平板状のままを維持したおねば溜め部33周囲にある周辺部34aと、複数の小さな凹凸を形成した平部34bと、を有した構造となっている。
周辺部34aは、内蓋30を外蓋20に取り付けた状態において、蒸気経路部27の内蓋30側の端面27aと対向する位置に設けられ、外蓋20と内蓋30との間の大きな空間を形成する壁面の一部となる。周辺部34aは、外蓋20と内蓋30との間の大きな空間を形成する壁面となる範囲で、且つ内釜3の中央側に、板状の両面側を連通させる貫通穴となる蒸気流入口37を形成する。
平部34bには、外蓋20と内釜3とを連通する穴であるセンサ穴部34cを形成する。蓋センサ23は、内蓋30を外蓋20に取り付けた際、センサ穴部34cから内釜3内の温度を検知できる位置に設けている。
【0033】
なお、本実施の形態では、周辺部34aと端面27aの間に隙間を設けて内蓋30の熱が外蓋20に伝わるのを抑制する構成となっている。なお、上記構成は熱伝導を抑制しつつ大きな空間の外に蒸気が漏れることを抑制できれば、この構造に限定するものではない。例えば、蒸気経路部27を断熱性の高い素材で形成して周辺部34aと端面27aの間の一部もしくは全部を接続するように構成したり、端面27aの先に断熱性がある材質を設けてその材質を介して接触するように構成したり、しても良い。
【0034】
このように、蓋体2には、外蓋20の蒸気経路部27と、蒸気経路部27と対向する位置に設けられた内蓋30のおねば溜め部33と、によって、内蓋30と外蓋20の間に大きな空間を形成している。そして、当該空間は、内蓋30の蒸気流入口37から内釜3内のおねばを含む蒸気を取り込み、当該空間にておねばの蒸気からの分離を促し、外蓋20の蒸気経路部27に設けられた蒸気排出口28から蒸気を炊飯器100の外に排出するものである。加えて蒸気流入口37から蒸気経路部27に侵入した蒸気は、遮蔽壁29に衝突することになりここでも液化を促される。つまり、当該空間は、内釜3と炊飯器100の外を空間的に連通させながらも、炊飯器100の外の内釜3から排出される蒸気を簡単に排出・流入できないダクトであり、取り込んだ蒸気からおねばを回収して内釜3へ戻すおねば回収構造である。つまり、当該空間は、内釜3と炊飯器100の外を空間的に連通させるためのダクトであり、取り込んだ蒸気からおねばを回収して内釜3へ戻すおねば回収構造である。そこで、以降の本開示では、当該空間のことを、おねば回収空間と称して説明する。
【0035】
ここで、本実施の形態は、おねば回収空間を、蒸気経路部27とおねば溜め部33だけでなく内蓋30の周辺部34aを含めて形成している。しかしながら、周辺部34aは、おねば回収空間を形成するために必須の構成ではない。例えば、蒸気経路部27の端面27aをおねば溜め部33の形状に合わせて形成したり、蒸気経路部27の端面27aをおねば溜め部33の窪んだ空間まで突出する位置まで延設する構成にしたり、することで、周辺部34aを含めずにおねば回収空間を形成することができる。
【0036】
おねば溜め部33は、内釜3側に最も突出した平面となる底面部38に、内釜3内とおねば回収空間を連通させる穴となるおねば戻し穴35を形成する。おねば戻し穴35には、内釜3内の蒸気圧に応じて上下に移動しておねば戻し穴35を開閉する開閉弁36を備えている。開閉弁36は、内釜3内の圧力が大気圧に近い値の時に開き、内釜3内の圧力が大気圧より高い任意の値のときに閉じる、という構造となっている。なお、本実施の形態では、開閉弁36は、耐熱性を有するシリコンゴムで形成しているが、例えば耐加水分解性の高い材料であるシンジオタクチックポリスチレン樹脂(SPS)などで形成してもよい。
【0037】
おねば戻し穴35は、蒸気排出口28に対し炊飯器100の上面から重ならない位置で且つ蒸気排出口28とはおねば回収空間を介して逆側の壁面となる面に設けている。具体的には、おねば戻し穴35は、蒸気排出口28よりも内釜3の中心側となるおねば溜め部33の底面部38に設けている。ここで、内釜3の中心とは、例えば内釜が円筒形状であるならばその中心軸がこれに該当する。ここで、本開示では、このようなおねば戻し穴35と蒸気排出口28との位置関係を「はす向かいの位置」と称し、説明を行う。
【0038】
このように、おねば戻し穴35を、蒸気排出口28に対しておねば回収空間におけるはす向かいの位置に設けることで、おねば回収空間という限られた空間内において蒸気排出口28とおねば戻し穴35との間の距離を大きくすることが出来る。これにより、内釜3の温度を所定の温度に維持するために加熱コイル12の電力供給をOFFにした際、一時的に内釜3内部の圧力が下がって開閉弁36が開いても、蒸気排出口28から流入する外気よりも先におねば回収空間内の気体が内釜3内部に流入する形になるので、外気流入による内釜3内部の被加熱物の温度低下を抑制することが出来る。
【0039】
次に、遮蔽壁29について、
図9~
図10を用いて更に説明する。
【0040】
前述のように、遮蔽壁29は、蒸気経路部27とおねば溜め部33によって形成されるおねば回収空間に設けられている。遮蔽壁29は、蒸気経路部27の上壁から内蓋30に向かって突出した板体のものであり、おねば溜め部33によって形成された窪みのエリアまで突出している。また、遮蔽壁29は、おねば回収空間に複数設けられ、実施の形態では蒸気流入口37側にある遮蔽壁29aと蒸気流入口37及びおねば戻し穴35側にある遮蔽壁29bが設けられている。
【0041】
また、遮蔽壁29は、蒸気排出口28と蒸気流入口37及びおねば戻し穴35との間の流れを遮るように設けられているが、蒸気経路部27側と内蓋30側の両方に開口となる隙間を設けている。
具体的には、遮蔽壁29は、蒸気経路部27の側壁との間に、第一の隙間Aを形成している。この第一の隙間Aは、それぞれの遮蔽壁29に設けられているものであるが、蒸気排出口28から見て互いの隙間が重ならない位置に形成している。より具体的に説明すると、遮蔽壁29aは、
図10において、左側の蒸気経路部27の側壁との間で第一の隙間Aを形成している。一方、遮蔽壁29bは、右側の蒸気経路部27の側壁との間で第一の隙間Aを形成している。このような構成にすることにより、互いの遮蔽壁29の間を蒸気排出口28と蒸気流入口37及びおねば戻し穴35との間の流路とすることができる。言い換えると、遮蔽壁29は、蒸気排出口28からみて重ならない位置に第一の隙間Aを形成することにより、おねば回収空間のより広いエリアに気流が流れるようにすることができる。
【0042】
また、遮蔽壁29は、内蓋30との間にも第二の隙間Bを形成している。この第二の隙間Bは、遮蔽壁29と蒸気排出口28との間のおねば回収空間で復水化した液体をおねば戻し穴35に戻すために設けられたものである。したがって、第二の隙間Bの幅は、第一の隙間Aの幅よりも狭くなるように形成している。このように、第一の隙間Aを第二の隙間Bより広くなるように構成することにより、蒸気排出口28と蒸気流入口37及びおねば戻し穴35との間に流れが発生した際に、より多くの気流が遮蔽壁29の間を流れるようにすることができる。
【0043】
加えて、遮蔽壁29は、蒸気経路部27に取り外し可能なように構成されており、蒸気経路部27より熱伝導率の高い素材を用いている。これにより、遮蔽壁29は、蒸気流入口37によって流入する蒸気の熱による蒸気経路部27への影響を抑制するとともに、蒸気排出口28から流入した外気への放熱を促すことができる。
【0044】
また、遮蔽壁29は、炊飯器100の上面から見て、蒸気排出口28よりも、おねば戻し穴35側に配置する。これにより、おねば回収空間を
図9のような横断面で見た際に、本体1の後ろ方向のおねば回収空間が蒸気排出口28方向に高くなっているため、蒸気排出口28付近に広い空間ができる。これにより蒸気排出口28から侵入した外気は、この空間で一時滞留することとなり、内釜3内に流入する外気を減少させることができる。
【0045】
また、遮蔽壁29は、おねば回収空間を構成する内蓋30と外蓋20と、に使用されている材料よりも比熱の高い素材を用いる。これによって、炊飯中、高温の蒸気がおねば回収空間を通る際には、遮蔽壁29にあたる蒸気の熱を、素早く・効率よく蓄積し、外気が流入する際には、遮蔽壁29に蓄積された熱を、素早く・効率よく外気に伝える。
【0046】
また、遮蔽壁29は、蒸気経路部27との溝40によって差し込み式に固定されており、遮蔽壁29はそれぞれ独立して取り外し可能な構造となっている。このような構造にすることにより、遮蔽壁29の清掃性が向上する。
【0047】
次に、炊飯器100を用いた炊飯作業における動作について説明する。その際のおねばや気流の流れは、
図11~
図13を用いて説明する。
【0048】
利用者は、最初に内釜3内に米と水とを収容した後、炊飯ボタンを押す。すると炊飯器100は、加熱コイル12、胴ヒータ13を用いて内釜3を加熱してご飯を炊き上げる炊飯工程を開始する。
【0049】
炊飯工程では、加熱手段によって内釜3内の米と水が加熱され、米に保持された成分の一部が熱によって水に溶け込む。その後、更に加熱されて水の蒸発温度以上になると、内釜3内の水が蒸気に変わっていく。その際、水に溶け込んだ米の成分が粘り気を生み、この成分が蒸気を包み込んだおねば泡が内釜3内に発生する。
【0050】
炊飯工程では、蒸気を継続して生成するように加熱を行うので、おねば泡も併せて継続して発生して内釜3内の上部空間を満たすよう内釜3上方に向けて盛り上がっていく。おねば泡は、内釜3の外周部3bの上側部分が外側に段状になった上部外周部3cに至ると内釜3付近の泡の一部が割られ、中央部分が少し盛り上がったような分布状況になる。
【0051】
そして、内蓋30の中央付近まで到達したおねば泡は、内蓋30に形成された蒸気流入口37を通って、内蓋30の上面と蓋体2の間にあるおねば回収空間に侵入する。おねば泡は、
図11に示すように、蒸気流入口37を通過する際に割られて液化され、おねばとしておねば回収空間の下方にあるおねば溜め部33に溜められる。また、おねばと分離した蒸気は、
図12に示すように、遮蔽壁29の間を蛇行するように流れて蒸気排出口28から外部に排出される。
【0052】
ここで、おねばを回収する現象について
図11を用いて更に説明する。
内釜3内の被加熱物が加熱されると、内釜3内のおねば泡が内部の圧力で内釜3内の上部空間を満たしていき(a)、内蓋30に達した後に蒸気流入口37から内蓋30に侵入(b)する。ここで、内釜3内で発生するおねば泡は、状況に応じて変わるが、直径4~5mm以上のものがほとんどであり、大きい場合には数cmというものもある。これに対し、蒸気流入口37は、短径が1.5mmとおねば泡の直径に対して非常に小さい。この大きさの違いにより、おねば泡は、蒸気流入口37を通過する際に上方に押し上げられていくに従っておねば泡の液膜が引き伸ばされて薄化し、やがておねば泡が破れる。おねば泡は、泡が敗れると、内部の蒸気と液状のおねばとが分離される。分離された液状のおねばは、自重にておねば溜め部33に流れこみ、側面部39を経由して底面部38に溜まっていく。そして、おねばは、おねば戻し穴35が開口した際に内釜3内に戻される。
【0053】
また、炊飯工程では、内釜3内で被加熱物を焦げ付かせることなく蒸気を継続して発生させるために、内釜3の温度をある一定の温度帯の範囲に収まるように加熱手段の動作を制御する。具体的には、前述のように、電源基板17は、加熱コイル12への電力供給のONとOFFを切り替える回数や間隔を調整する間欠加熱運転を実施することで、底サーミスタ15で検知した内釜3の温度が所定の温度を維持するように制御する。
【0054】
このように加熱手段が、オンとオフを繰り返す動作を行う場合、炊飯器100内では以下のような現象が発生する。
【0055】
加熱手段がオンの際、内釜3内は、内釜3の温度上昇に伴い圧力が上がり、
図12に示すように内部の蒸気などを外に放出する。その際、おねば回収空間内を流れる蒸気は、遮蔽壁29や蒸気経路部27に熱を与えつつ遮蔽壁29の間を蛇行するように流れる。
【0056】
一方、加熱手段がオンからオフに切り替わった場合、内釜3内は、内釜3の温度低下に伴い圧力が下がり、
図13に示すように蒸気排出口28から外気が流入する。その際、おねば回収空間内を流れる外気は、遮蔽壁29や蒸気経路部27から熱を受け取りつつ遮蔽壁29の間を蛇行するように流れる。また、内釜3内に流れ込む気体は、おねば回収空間内にあった温度の高い気体が外気より先に流れ込む。
【0057】
そして、炊飯工程が終了すると、蒸らし工程を行った後に炊飯処理を完了する。
【0058】
このように、炊飯器100は、蒸気排出口28と蒸気流入口37及びおねば戻し穴35を炊飯器100の上面から見てはす向かいの位置に設けることにより、蒸気排出口28から外気が侵入したとしても、先におねば回収空間内の気体が内釜3内部に流入する形になるので、外気流入による内釜3内部の被加熱物の温度低下を抑制することが出来る。
【0059】
また、炊飯器100は、おねば回収空間内の蒸気排出口28と蒸気流入口37及びおねば戻し穴35との間に、複数の遮蔽壁29を設けている。そして、遮蔽壁29は、蒸気経路部27との間に第一の隙間Aを形成している。
このような構成にすることにより、蒸気排出口28から侵入した外気が蒸気経路部27の近くを流れることになるので、それら構造体に蓄積した熱によって温められることとなる。したがって、もし、外気が内釜3内に流入してしまったとしても被加熱物との温度差が小さくなるので、被加熱物の温度低下を抑制することが出来る。
【0060】
また、炊飯器100は、連続する遮蔽壁29が形成する第一の隙間Aを、蒸気排出口28からみて重ならない位置に形成することにより、遮蔽壁29の間を蛇行するような流路を形成している。
このような構成にすることにより、炊飯器100は、遮蔽壁29の間にも流れを生じさせることができるので、より多くのおねば回収空間内の気体によって内釜3内への外気流入を抑制することができる。
また、外気は、流路が蛇行することによって蒸気経路部27や遮蔽壁29の近くを流れることになるので、それら構造体に蓄積した熱によって温められることとなる。したがって、もし、外気が内釜3内に流入してしまったとしても被加熱物との温度差が小さくなるので、被加熱物の温度低下を抑制することが出来る。
【0061】
更に、遮蔽壁29と蒸気経路部27の側壁とで形成する第一の隙間Aは、遮蔽壁29と内蓋30とで形成する第二の隙間Bよりも広くなるように形成することにより、遮蔽壁29の間に気流が流れやすいような構造となっている。これにより、より確実に遮蔽壁29の間に外気を流すことができるので、外気流入による内釜3内部の被加熱物の温度低下を抑制する効果を高めることが出来る。
【0062】
また、遮蔽壁29は、蒸気経路部27より熱伝導率の良い素材で形成されているので、前述の遮蔽壁29による外気流入による内釜3内部の被加熱物の温度低下を抑制する効果を高めることが出来る。
加えて、遮蔽壁29は、蒸気経路部27より比熱の高い素材で形成されているので、前述の遮蔽壁29による外気流入による内釜3内部の被加熱物の温度低下を抑制する効果を高めることが出来る。
【0063】
また、遮蔽壁29は、炊飯器100の上面から見て、蒸気排出口28よりもおねば戻し穴35側に配置しているので、蒸気排出口28と第一の隙間Aとの間に流路が拡大するような広い空間を形成している。
このような構成にすることにより、蒸気排出口28から第一の隙間Aへの流れを乱し、また第一の隙間Aに流れ込む際の圧力損失を大きくすることができるので、より多くのおねば回収空間内の気体によって内釜3内への外気流入を抑制することができる。
【0064】
また、遮蔽壁29は、変形例として、
図14に示すように、第一の隙間A側の端部を蒸気排出口28側に向かって湾曲する湾曲部50を形成してもよい。このように遮蔽壁29に湾曲部50を形成することにより、更に蒸気経路部27の側壁近くを外気が流れるようになるので、内釜3内に侵入する外気量を抑えることができるとともに、侵入した外気の温度を蒸気経路部27からの伝熱により上昇させることができる。これにより、単純なおねば回収空間が存在するよりも、より内釜3内部の被加熱物の温度低下を抑制することが出来る。
【0065】
このように、外気の内部への進入による内釜3内部の被加熱物の温度低下を抑制することにより、利用者に美味しいご飯を提供することが出来る。
【符号の説明】
【0066】
1 本体、
2 蓋体、
3 内釜、
3a 底部、
3b 外周部、
3c 上部外周部、
11 内釜収納部、
12 加熱コイル、
13 胴ヒータ、
14 ヒンジ部、
15 底サーミスタ、
16 蓋開ボタン、
17 電源基板、
20 外蓋、
21 操作パネル、
22 操作基板、
23 蓋センサー、
24 内蓋解除レバー、
25 支持部、
26 接続部、
27 蒸気経路部、
27a 端面、
27b 弾性体、
28 蒸気排出口、
29 遮蔽壁、
30 内蓋、
31 第1の凸部、
32 第2の凸部、
33 おねば溜め部、
34、平板部
34a 周辺部、
34b 平部
34c センサー穴部、
35 おねば戻し穴、
36 開閉弁、
37 蒸気流入口、
38 底面部、
39 斜面部、
50 湾曲部、
100 炊飯器。