(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153236
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】振動デバイス
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
H03B5/32 H
H03B5/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066999
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 学
【テーマコード(参考)】
5J079
【Fターム(参考)】
5J079AA03
5J079BA02
5J079BA43
5J079FA01
5J079HA03
5J079HA05
5J079HA09
5J079HA16
5J079HA23
5J079HA25
5J079HA28
5J079HA30
(57)【要約】
【課題】断熱性を高め周波数安定性に優れた振動デバイスを提供する。
【解決手段】振動デバイス1は、振動素子41を収容している容器30と、容器30が搭載されるベース基板10と、を備え、ベース基板10は、平面視で、容器30と重なり、容器30との間に空間24を形成する凹部23と、平面視で、容器30と重なり、第1接着剤60を介して容器30と接合される第1接合部17と、平面視で、凹部23とともに第1接合部17を挟むように設けられた第1配線パターン18と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動素子を収容している容器と、
前記容器が搭載されるベース基板と、を備え、
前記ベース基板は、
平面視で、前記容器と重なり、前記容器との間に空間を形成する凹部と、
平面視で、前記容器と重なり、第1接着剤を介して前記容器と接合される第1接合部と、
平面視で、前記凹部とともに前記第1接合部を挟むように設けられた第1配線パターンと、を含む、
振動デバイス。
【請求項2】
平面視において、前記容器は、前記第1接着剤を介して前記第1接合部に接合されたコーナー部を有する矩形であり、
前記第1配線パターンは、前記コーナー部に対応して設けられたL字形状のパターンを含む、
請求項1に記載の振動デバイス。
【請求項3】
前記容器は、前記第1接合部に形成されたバンプ部材と、前記バンプ部材に塗布された前記第1接着剤と、を介して前記第1接合部に接合されている、
請求項1又は請求項2に記載の振動デバイス。
【請求項4】
前記容器に電気的に接続される集積回路を含み、
前記ベース基板は、前記集積回路が搭載される底面と、前記底面に形成されて平面視で前記集積回路と重なる収容空間と、を含み、
前記容器は、前記収容空間に収容されている、
請求項1又は請求項2に記載の振動デバイス。
【請求項5】
前記ベース基板は、
平面視で、前記集積回路と重なり、第2接着剤を介して前記集積回路と接合される第2接合部と、
平面視で、前記収容空間とともに前記第2接合部を挟むように設けられた第2配線パターンと、
を含む、
請求項4に記載の振動デバイス。
【請求項6】
平面視において、前記集積回路は、前記第2接着剤を介して前記第2接合部に接合されたコーナー部を有する矩形であり、
前記第2配線パターンは、前記コーナー部に対応して設けられたL字形状のパターンを含む、
請求項5に記載の振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
温度補償型発振器は、振動片と、振動片を発振させるための発振回路と温度補償回路とを有する集積回路と、を備え、集積回路が所定の温度範囲で振動片の発振周波数の所望する周波数からのずれを温度補償することにより、高い周波数精度が得られる。このような温度補償型発振器として、例えば、特許文献1には、振動片と集積回路とを収容した第1容器を第2容器に収容することで、第1容器内の振動片への断熱性を高め、より高い周波数精度が得られる発振器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された発振器は、振動片と集積回路とを収容した第1容器を第2容器の凹部底面から第1容器側に突出した固定部に接着剤で固定している。そのため、第1容器を固定する接着剤が広がり接着面積が増大することにより、断熱性が低下し、出力される発振周波数の周波数安定性が劣化する虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
振動デバイスは、振動素子を収容している容器と、前記容器が搭載されるベース基板と、を備え、前記ベース基板は、平面視で、前記容器と重なり、前記容器との間に空間を形成する凹部と、平面視で、前記容器と重なり、第1接着剤を介して前記容器と接合される第1接合部と、平面視で、前記凹部とともに前記第1接合部を挟むように設けられた第1配線パターンと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る振動デバイスの概略構造を示す平面図。
【
図4】第1実施形態に係る振動デバイスが備えるベース基板の概略構造を示す平面図。
【
図5】第1実施形態に係る振動デバイスが備える振動子の概略構造を示す平面図。
【
図7】第2実施形態に係る振動デバイスの概略構造を示す平面図。
【
図9】第3実施形態に係る振動デバイスが備えるベース基板の概略構造を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1.第1実施形態
先ず、第1実施形態に係る振動デバイス1について、ダブルシール構造の温度補償型発振器を一例として挙げ、
図1~
図6を参照して説明する。
尚、
図1において、振動デバイス1の内部の構成を説明する便宜上、リッド12を取り外した状態を図示している。また、
図5において、振動子40の内部の構成を説明する便宜上、リッド33を取り外した状態を図示している。
【0008】
また、説明の便宜上、以降の各図には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、及びZ軸を図示している。また、X軸に沿った方向を「X方向」、Y軸に沿った方向を「Y方向」、Z軸に沿った方向を「Z方向」と言う。また、各軸方向の矢印先端側を「プラス側」、基端側を「マイナス側」とも言う。
【0009】
本実施形態に係る振動デバイス1は、
図1、
図2、及び
図3に示すように、容器30に振動素子41を収容した振動子40と、振動素子41を発振させるための発振回路と温度補償回路とを有する集積回路50と、振動子40と集積回路50とを収容するベース基板10と、を有する。
【0010】
振動子40は、
図5及び
図6に示すように、振動素子41と、振動素子41を収容する容器30と、を有する。
【0011】
振動素子41は、板状の基板42の表裏主面に励振電極43と、パッド電極44と、励振電極43とパッド電極44とを電気的に接続するリード電極45と、が形成されている。
【0012】
励振電極43は、基板42の中央部で表主面の励振電極43と裏主面の励振電極43とが重なるように配置されている。
【0013】
パッド電極44は、基板42のX方向マイナス側の端部の表裏主面に配置されている。また、表主面の励振電極43とリード電極45を介して電気的に接続するパッド電極44は、Y方向マイナス側の端部に配置され、裏主面の励振電極43とリード電極45を介して電気的に接続するパッド電極44は、Y方向プラス側の端部に配置されている。尚、表裏主面に形成されたパッド電極44は、図示しない側面電極によって電気的に接続されている。
【0014】
また、振動素子41は、容器30内に収容され、振動素子41の一方の端部であるパッド電極44部分のみで接合された片持ち梁構造で接合されている。
【0015】
容器30は、矩形であり、セラミック等からなるベース31と、金属、セラミック、ガラス等からなるリッド33と、ベース31とリッド33とを接合するシールリングや低融点ガラス等の接合材32と、を有する。また、
図1及び
図2に示すように、容器30の4隅に対応する4つのコーナー部39が第1接着剤60を介して、ベース基板10に接合されている。
【0016】
ベース31は、Z方向マイナス側に開口する凹部34と、凹部34の底面35にZ方向マイナス側に開口する凹部36と、を有し、凹部34と凹部36とにより、振動素子41を収容する収容空間31aを構成している。凹部34の底面35には、内部端子37が形成されており、ベース31のリッド33側とは反対側の面には、外部端子38が形成されている。尚、内部端子37と外部端子38とは、図示しない貫通電極等により電気的に接続されている。また、収容空間31aは、気密空間であり、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが封入されているが、収容空間31aの雰囲気は、特に限定されず、例えば、減圧状態であってもよいし、加圧状態であってもよい。
【0017】
また、内部端子37には、導電性の接合材64を介して振動素子41が接合されている。より具体的には、導電性接着剤等の接合材64によって、振動素子41のパッド電極44が接合されている。そのため、内部端子37とパッド電極44とが電気的に接続し、外部端子38に電圧を印加することで、振動素子41を発振させることができる。
尚、本実施形態では、容器30として、セラミック等からなるベース31と、金属、セラミック、ガラス等からなるリッド33を用いているが、これに限定することはなく、シリコンからなるベース31と、シリコンからなるリッド33でも構わない。
【0018】
集積回路50は、矩形であり、振動素子41を発振させるための発振回路と、所定の温度範囲で振動素子41の発振周波数の所望する周波数からのずれを温度補償する温度補償回路と、を有する。また、
図1及び
図3に示すように、集積回路50の4隅に対応する4つのコーナー部51が第2接着剤61を介して、ベース基板10に接合されている。
【0019】
ベース基板10は、セラミック等からなり、金属、セラミック、ガラス等からなるリッド12と共に振動子40と集積回路50とを収容するパッケージを構成している。また、ベース基板10とリッド12とは、シールリングや低融点ガラス等の接合材11を介して接合されている。
【0020】
ベース基板10は、
図1、
図2、
図3、及び
図4に示すように、Z方向プラス側に開口する凹部13と、凹部13の底面14にZ方向プラス側に開口する凹部15と、を有し、凹部13と凹部15とにより、振動子40と集積回路50とを収容する収容空間26を構成している。従って、収容空間26は、平面視で、振動子40の容器30及び集積回路50と重なっている。また、凹部15の底面16の容器30と重なる位置に、Z方向プラス側に開口する凹部23が設けられている。凹部23は、平面視で、容器30と重なり、容器30との間に空間24を形成している。容器30とベース基板10との間に空間24を設けることで、ベース基板10から容器30への熱伝達が抑制され、容器30の断熱性を高めることができる。
【0021】
凹部13の底面14に集積回路50が搭載されており、平面視で、底面14の集積回路50のコーナー部51と重なる第2接合部19に第2接着剤61を介して、集積回路50が接合されている。尚、底面14には、平面視で、容器30と重なる収容空間26、具体的には凹部15とともに第2接合部19を挟むように第2配線パターン20が設けられている。第2配線パターン20は、集積回路50のコーナー部51に対応するL字形状のパターンであり、グランド電極と電気的に接続されている。第2配線パターン20は、集積回路50のコーナー部51に対応して形成されているので、集積回路50を搭載する際の位置合わせに用いることができ、且つ、第2接着剤61の接着面積のばらつきを抑制することができる。
【0022】
また、底面14には、内部配線パターン21と内部配線パターン22とが設けられている。内部配線パターン21は、容器30に形成された外部端子38とボンディングワイヤー62を介して電気的に接続され、内部配線パターン22は、集積回路50に形成された端子52とボンディングワイヤー63を介して電気的に接続されている。尚、内部配線パターン21と内部配線パターン22とは、図示しない電極パターンにより電気的に接続されている。また、内部配線パターン22は、図示しない貫通電極によりベース基板10のリッド12側とは反対側の面に設けられた外部端子25と電気的に接続されている。
【0023】
凹部15の底面16に容器30が搭載されており、平面視で、底面16の容器30のコーナー部39と重なる第1接合部17に第1接着剤60を介して、容器30が接合されている。尚、底面16には、平面視で、凹部23とともに第1接合部17を挟むように第1配線パターン18が設けられている。第1配線パターン18は、容器30のコーナー部39に対応するL字形状のパターンであり、グランド電極と電気的に接続されている。容器30を接合する第1接合部17を凹部23と第1配線パターン18とが囲んでいるので、第1接着剤60の広がりを抑制し、第1接着剤60の接着面積を一定とすることができ、容器30の断熱性をより高めることができる。
【0024】
本実施形態の振動デバイス1は、平面視で、容器30と重なる位置に凹部23が形成されているため、容器30との間に空間24を設けることができ容器30の断熱性を高めることができる。また、容器30を接合する第1接合部17が凹部23と第1配線パターン18とで囲まれているので、第1接着剤60の広がりを抑制することができる。そのため、第1接着剤60の接着面積を一定とすることができ、容器30の断熱性をより高めることができる。従って、より高い周波数精度を有する振動デバイス1を得ることができる。
【0025】
また、容器30や集積回路50のコーナー部39,51に沿ってL字形状の第1配線パターン18や第2配線パターン20が設けられているので、第1配線パターン18や第2配線パターン20を容器30や集積回路50の搭載時の位置合わせに用いることができ、容器30や集積回路50を高精度に搭載することができる。
【0026】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係る振動デバイス1aについて、
図7及び
図8を参照して説明する。尚、
図7は、説明する便宜上、リッド12を取り外した状態を図示している。
【0027】
本実施形態の振動デバイス1aは、第1実施形態の振動デバイス1に比べ、容器30を接合する第1接着剤60aの形状が異なること以外は、第1実施形態の振動デバイス1と同様である。尚、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0028】
振動デバイス1aは、
図7及び
図8に示すように、容器30が第1接合部17に形成されたバンプ部材60bと、バンプ部材60bに塗布された第1接着剤60aと、を介して第1接合部17に接合されている。
【0029】
本実施形態の振動デバイス1aは、容器30と第1接合部17との間にバンプ部材60bが配置されているため、第1実施形態の振動デバイス1に比べ、容器30と第1接合部17との間を広くすることができる。そのため、容器30の断熱性をより高めることができる。また、L字形状の第1配線パターン18と第2配線パターン20とが設けられているので、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0030】
3.第3実施形態
次に、第3実施形態に係る振動デバイス1bについて、
図9を参照して説明する。
【0031】
本実施形態の振動デバイス1bは、第1実施形態の振動デバイス1に比べ、容器30と重なる位置に配置された凹部23a,23bの形状が異なること以外は、第1実施形態の振動デバイス1と同様である。尚、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0032】
振動デバイス1bは、
図9に示すように、容器30と重なる位置に配置された凹部23a,23bの形状が、平面視で、五角形である。凹部23aは、X方向の一辺が三角形状であり、凹部23bの形状は、Y方向の一辺が三角形状である。また、凹部23a,23bの三角形状は、それぞれ、ベース基板10bの中心側に配置されている。
そのため、対角上の第1接合部17同士が底面16で連続しているので、ベース基板10bのそり、つまり、Z方向への変形に対する強度を向上させることができる。
【0033】
本実施形態の振動デバイス1bは、容器30と重なる位置に配置された凹部23a,23bにより、対角上の第1接合部17同士が底面16で連続しているので、ベース基板10bのZ方向への変形に対する強度を向上させることができる。また、L字形状の第1配線パターン18と第2配線パターン20とが設けられているので、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0034】
1,1a,1b…振動デバイス、10…ベース基板、11…接合材、12…リッド、13…凹部、14…底面、15…凹部、16…底面、17…第1接合部、18…第1配線パターン、19…第2接合部、20…第2配線パターン、21,22…内部配線パターン、23…凹部、24…空間、25…外部端子、26…収容空間、30…容器、31…ベース、31a…収容空間、32…接合材、33…リッド、34…凹部、35…底面、36…凹部、37…内部端子、38…外部端子、39…コーナー部、40…振動子、41…振動素子、42…基板、43…励振電極、44…パッド電極、45…リード電極、50…集積回路、51…コーナー部、52…端子、60…第1接着剤、61…第2接着剤、62,63…ボンディングワイヤー、64…接合材。