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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153245
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
H01R13/42 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067016
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 栄輝
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 卓也
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087EE11
5E087EE14
5E087FF13
5E087GG15
5E087GG24
5E087GG31
5E087GG32
5E087GG35
5E087LL03
5E087LL12
5E087MM05
5E087QQ04
5E087RR25
5E087RR26
(57)【要約】
【課題】端子金具を引き抜く作業に用いられる治具の別途の準備を不要とするコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ1は、端子金具100を係止するランス14が形成されたハウジング10と、ハウジング10に着脱自在であり、ハウジング10に取り付けられているときに端子金具100を係止するリテーナ20とを備える。ランス14は、端子金具100の挿入方向に沿って上流側の先端部14aを自由端として延伸し、キャビティ13から離れる方向に弾性変形する形状を有する。リテーナ20は、外方に露出し、一方向に突出する治具棒部26を有する。治具棒部26は、リテーナ20がハウジング10から取り外されているときに、端子金具100の挿入方向とは反対の方向に沿ってランス14のキャビティ13に面する内面14bの側に内面14bと接触しながら入り込むことで、ランス14をキャビティ13から離れる方向に変形させる。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具を収容するキャビティを有し、当該キャビティに収容された前記端子金具を係止するランスが形成されたハウジングと、
前記ハウジングに着脱自在であり、当該ハウジングに取り付けられているときに前記キャビティに収容された前記端子金具を係止するリテーナと、を備え、
前記ランスは、前記端子金具の挿入方向に沿って上流側の先端部を自由端として延伸し、前記キャビティから離れる方向に弾性変形する形状を有し、
前記リテーナは、外方に露出し、一方向に突出する治具棒部を有し、
前記治具棒部は、前記リテーナが前記ハウジングから取り外されているときに、前記端子金具の前記挿入方向とは反対の方向に沿って前記ランスの前記キャビティに面する内面の側に当該内面と接触しながら入り込むことで、前記ランスを前記キャビティから離れる方向に変形させる、コネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記端子金具の一部であって外方から相手端子が接続される接続部を配置する前記キャビティの先端領域を内部に有する接続端部を有し、
前記ランスは、前記接続端部に設けられ、
前記リテーナは、前記ハウジングに取り付けられているときに前記接続端部を内部空間に収容する形状を有する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記治具棒部は、前記リテーナの一部が切り欠かれた切り欠き領域で、前記リテーナを構成するいずれかの壁部の延長上にある、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記切り欠き領域は、前記リテーナの前記内部空間と貫通し、
前記リテーナが前記ハウジングに取り付けられているとき、前記接続端部の一部は、前記切り欠き領域に進入する、請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記治具棒部の先端の形状は、先細である、請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記ランスは、前記内面に、前記端子金具が前記キャビティに収容されているときに前記端子金具の前記挿入方向に沿って前記端子金具の一部と対向する係止突部を有し、
前記治具棒部は、2つあり、
2つの前記治具棒部は、互いに離間しつつ並行に配置され、前記ランスの前記内面の側に入り込むときに、互いの間に前記係止突部を通過させつつ、前記内面において前記係止突部が形成されていない面と接触する、請求項1又は2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、治具の使用により、ハウジングのキャビティに取り付けられている端子金具を取り外し自在とするコネクタがある。特許文献1は、キャビティ内で端子金具に係合することで抜けを抑止しているランスを、外部から挿入された治具棒により変位させて係合を解除させることで、端子金具を引き抜くことができる状態とする、コネクタ用の治具に関する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-297522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているような治具は、対応するコネクタごとに準備を要する。したがって、例えば、複数の種類のコネクタに対して端子金具を引き抜く作業を実施する場合、それぞれのコネクタに対応した複数の治具の製作又は購入のための費用を要するとともに、入手した複数の治具を管理するのにも手間がかかる。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、端子金具を引き抜く作業に用いられる治具の別途の準備を不要とするコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係るコネクタは、端子金具を収容するキャビティを有し、キャビティに収容された端子金具を係止するランスが形成されたハウジングと、ハウジングに着脱自在であり、ハウジングに取り付けられているときにキャビティに収容された端子金具を係止するリテーナと、を備え、ランスは、端子金具の挿入方向に沿って上流側の先端部を自由端として延伸し、キャビティから離れる方向に弾性変形する形状を有し、リテーナは、外方に露出し、一方向に突出する治具棒部を有し、治具棒部は、リテーナがハウジングから取り外されているときに、端子金具の挿入方向とは反対の方向に沿ってランスのキャビティに面する内面の側に内面と接触しながら入り込むことで、ランスをキャビティから離れる方向に変形させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、端子金具を引き抜く作業に用いられる治具の別途の準備を不要とするコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るコネクタの斜視図である。
図2】一実施形態に係るコネクタの分解斜視図である。
図3A】一実施形態におけるハウジングの正面図である。
図3B図3AのIIIB部に対応したハウジングの一部拡大図である。
図4図3AのIV-IV部に対応したハウジングの断面図である。
図5】一実施形態におけるリテーナの斜視図である。
図6】一実施形態におけるリテーナの上面図である。
図7】端子抜き作業の第1段階にあるコネクタの斜視図である。
図8】端子抜き作業の第2段階にあるコネクタの斜視図である。
図9】端子抜き作業の第3段階にあるコネクタの斜視図である。
図10】端子抜き作業の第2段階にあるコネクタの正面図である。
図11図10のXI-XI部に対応したコネクタの断面図である。
図12図11のXII部に対応したコネクタの一部拡大図である。
図13図10のXIII-XIII部に対応した第3段階のコネクタの一部断面図である。
図14図11と同様の切断面による第3段階のコネクタの一部断面図である。
図15】端子金具が引き抜かれる状態を示すコネクタの一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて一実施形態に係るコネクタについて詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0010】
図1は、一実施形態に係るコネクタ1の斜視図である。図2は、コネクタ1の分解斜視図である。
【0011】
コネクタ1は、例えば自動車用コネクタとして、電源と機器との間、又は、機器と機器との間など、電気部品の間を電気的に接続するために適用される。コネクタ1は、一方の電気部品に電気的に接続され、他方の電気部品に電気的に接続された不図示の相手コネクタと嵌合する。本実施形態では、相手コネクタがオスコネクタであり、コネクタ1がメスコネクタである場合を想定している。コネクタ1には、電気部品に電気的に接続された電線Wが1つ以上、それぞれ端子金具100を介して接続される。
【0012】
端子金具100は、棒状の導電性部材であり、電線Wの端末部に連結される。端子金具100は、接続部101と、連結部102とを備える。
【0013】
接続部101は、相手コネクタの相手端子が外方から接続される。接続部101の形状は、例えば、相手端子に設けられているタブ状の相手接続部を挿入し得る箱状である。接続部101の内部には、相手接続部に接触する接点部を有する弾性片が設けられている。接続部101の外面には、後述するランス14の係止突部14cと係合可能な被係止部101a(図12等参照)が外方に向けて突出するように形成されている。連結部102に対向する接続部101の端面の一部は、後述するリテーナ20の係合部25に係止される係止面101b(図11参照)である。
【0014】
連結部102は、電線Wを連結する。連結部102は、例えば、一対の加締め片からなる導体圧着部と、一対の加締め片からなる被覆固定部とを備える。導体圧着部は、一対の加締め片を加締めることにより、電線Wの導体に圧着され、端子金具100が電線Wと電気的に接続される。被覆固定部は、一対の加締め片を加締めることにより、電線Wの被覆に固定され、端子金具100が電線Wに固定される。なお、連結部102と電線Wとの外周には、ゴムなどの弾性材料からなるシール部材110が配置され、キャビティ13と電線Wとの間がシールされる。
【0015】
また、コネクタ1は、ハウジング10と、リテーナ20と、パッキン30とを備える。
【0016】
図3Aは、相手コネクタの接続方向に沿って見た、ハウジング10の正面図である。図3Bは、図3AのIIIB部に対応した、ハウジング10の一部拡大図である。図4は、図3AのIV-IV部に対応した、ハウジング10の断面図である。
【0017】
本実施形態では、ハウジング10に形成されているキャビティ13に端子金具100が挿入される。以下、説明のために、端子金具100がキャビティ13に挿入される方向(以下「挿入方向」という)をX方向と規定する。X方向は、ハウジング10の長さ方向に沿った方向である。Y方向及びZ方向は、各々X方向に対して垂直であり、かつ、互いに垂直である。本実施形態では、Y方向は、ハウジング10の幅方向に沿った方向である。Z方向は、ハウジング10の高さ方向に沿った方向である。本実施形態では、便宜上、Z方向は、下方から上方に向かう方向とする。以下、Z方向に関する当該規定に従い、「上」又は「下」と表記する場合がある。
【0018】
この場合、相手コネクタへのコネクタ1の接続方向がX方向であるので、図3A及び図3Bに関する相手コネクタの接続方向は、X方向とは反対の方向である。図4における切断面は、端子金具100が挿入される1つのキャビティ13においてY方向の中心を通る仮想のXZ平面である。
【0019】
ハウジング10は、例えば合成樹脂等の絶縁性材料で形成され、相手コネクタの相手ハウジングと嵌合する筐体部材である。なお、本実施形態のように、コネクタがメスコネクタである場合のハウジングは、メスハウジングと呼称される場合もある。
【0020】
ハウジング10は、ハウジング本体11と、接続端部12とを有する。ハウジング本体11は、X方向で接続端部12を一体的に支持するとともに、相手ハウジングと嵌合する嵌合口部11a等が形成される。接続端部12は、コネクタ1が相手コネクタと嵌合されるときに、X方向でハウジング本体11よりも相手コネクタに近い位置にあり、相手コネクタの接続口部にリテーナ20を介して接続される。
【0021】
また、ハウジング10は、キャビティ13と、ランス14と、リテーナ開口部15と、ロックアーム16とを有する。
【0022】
キャビティ13は、X方向に沿って形成された長孔状の収容部であり、端子金具100を収容する。端子金具100は、端子金具100の延伸方向をX方向に合わせた姿勢でキャビティ13に挿入される。キャビティ13は、Y方向に沿って複数配置されている。本実施形態では、キャビティ13は4つある。つまり、ハウジング10は、最大で4つの電線Wに対応した4つの端子金具100を接続することができる。キャビティ13のX方向での下流側の開口は、キャビティ13に端子金具100を収容させる収容開口13aである。キャビティ13に端子金具100が収容された後、収容開口13aからは、端子金具100に連結されている電線Wがハウジング10の外部に引き出された状態となる(図11参照)。キャビティ13のX方向での上流側の開口は、コネクタ1が相手コネクタに嵌合されたときに、相手コネクタに設けられている相手端子の相手接続部を挿入させる接続開口13bである。
【0023】
また、キャビティ13において、端子金具100が収容されたときに接続部101が配置される先端領域R1は、接続端部12の内部にある。接続開口13bは、接続端部12の先端面部12aに形成される。接続開口13bの開口縁部は、相手接続部の挿入を容易とするために、外部からキャビティ13に向けて傾斜するテーパ面であってもよい。また、接続端部12のZ方向の下側に、リテーナ20の治具棒部26を挿入させる治具開口13cが設けられている。
【0024】
ランス14は、キャビティ13に収容された端子金具100を係止する。ランス14は、接続端部12のZ方向の下側に、治具開口13cの位置に合わせて設けられている。ランス14は、X方向に沿って上流側の先端部14aを自由端として延伸し、外力を受けることでキャビティ13から離れる方向に弾性変形する形状を有する。ランス14が弾性変形していないとき、先端部14aは、X方向で治具開口13cと対向する。本実施形態では、ランス14がキャビティ13から離れる方向は、おおよそZ方向に沿って、上側から下側に向かう方向である。ランス14は、キャビティ13に面する内面14b上で、X方向での先端部14a側に、Z方向に突出した係止突部14cを有する。端子金具100がキャビティ13に収容されているとき、係止突部14cは、端子金具100の一部である被係止部101aとX方向で対向する。なお、係止突部は、ランスビークと呼称される場合もある。
【0025】
係止突部14cは、内面14b上で、Y方向での中心位置に配置される。また、ランス14は、内面14bの一部として、係止突部14cのY方向での両側端に位置し、係止突部14cが形成されていない側端内面14dを有する。つまり、ランス14の幅WLは、側端内面14dが存在する分、係止突部14cの幅W1よりも大きい幅で規定される。
【0026】
また、キャビティ13における先端領域R1は、Y方向では、互いに対向する2つの内側壁13dで挟まれた領域となる。ここで、係止突部14cから各々近接する側の内側壁13dまでの領域は、それぞれ、幅W2で規定される空間領域となる。また、ランス14から各々近接する側の内側壁13dまでの領域は、それぞれ、幅W2よりも側端内面14dの幅分狭い空間領域となる。したがって、ランス14は、弾性変形しても、内側壁13dと干渉しない。
【0027】
ここで、空状態にあるキャビティ13に端子金具100が挿入されるとき、端子金具100が挿入されていくにつれて、接続部101の被係止部101aがランス14の係止突部14cと接触し、キャビティ13から離れるようにランス14が弾性変形する。引き続き、端子金具100が挿入されていき、被係止部101aが係止突部14cを乗り越えて通過することで、キャビティ13に向けてランス14の形状が復元し、最終的に、端子金具100がキャビティ13の正規位置に配置される。当該正規位置では、被係止部101aと係止突部14cとがX方向で近接して対向することで、端子金具100は、キャビティ13に対して抜け止めされた状態で収容される。
【0028】
リテーナ開口部15は、リテーナ20が接続端部12に取り付けられるとき、リテーナ20に設けられている係合部25をY方向とは反対の方向でスライドさせながら進入させる。リテーナ開口部15は、接続端部12におけるランス14の基端側に、Y方向に沿って延伸する溝形で、外部とキャビティ13との間で貫通するように設けられる。
【0029】
ロックアーム16は、ハウジング10の上面と連続する部分を基端とし、相手ハウジングとの嵌合する側を自由端としてX方向に沿って延伸し、外力を受けることでおおよそZ方向に沿って弾性変形する。ロックアーム16は、ハウジング10と相手ハウジングとが嵌合したとき、相手ハウジングの被ロック部と係合して、嵌合状態を維持する。一方、ロックアーム16は、意図的に弾性変形されることで、被ロック部との係合を解除し、ハウジング10と相手ハウジングとの嵌合状態を解除することができる。
【0030】
図5は、治具棒部26を視認し得る方向から見た、リテーナ20の斜視図である。図6は、リテーナ20が接続端部12に取り付けられたときにZ方向の上方から見た場合を想定した、リテーナ20の上面図である。図6では、リテーナ20を取り付けている場合を想定した接続端部12が、概略的に二点鎖線で示されている。
【0031】
リテーナ20は、ハウジング10に着脱自在であり、ハウジング10に取り付けられているときに、キャビティ13に収容された端子金具100を係止する。本実施形態では、リテーナ20は、ハウジング10の接続端部12に着脱自在であり、接続端部12に取り付けられているときに端子金具100を係止する。ここで、コネクタ1では、キャビティ13に収容されている端子金具100は、ランス14により係止される。つまり、リテーナ20は、ランス14とは別の係止部材として、端子金具100の二重係止及び端子金具100の半挿入検知を行う。なお、リテーナは、スペーサと呼称される場合もある。
【0032】
また、リテーナ20は、接続端部12を内部空間Sに収容する形状を有する。つまり、リテーナ20は、接続端部12を覆うように接続端部12に取り付けられることになる。本実施形態では、リテーナ20は、正面壁21と、上面壁22と、底面壁23と、側面壁24とを有するケース状である。
【0033】
正面壁21は、リテーナ20が接続端部12に取り付けられたときに、接続端部12の先端面部12aと近接して対向する。正面壁21は、少なくとも、キャビティ13ごとの接続開口13bと対向する位置に端子挿入口21aを有する。
【0034】
上面壁22は、リテーナ20が接続端部12に取り付けられたときに、接続端部12の上部の一部と近接して対向する。上面壁22は、正面壁21の上端部と連続する。
【0035】
底面壁23は、リテーナ20が接続端部12に取り付けられたときに、接続端部12の下部、すなわちキャビティ13ごとのランス14と近接して対向する。底面壁23は、正面壁21の下端部と連続する。また、底面壁23は、正面壁21と連続する固定端側とは反対側の自由端に沿って少なくとも一部が内部空間Sに向かって突出する係合部25を有する。係合部25は、キャビティ13ごとに対応した4つの係止ブロック25a(図8参照)を有する。
【0036】
側面壁24は、リテーナ20が接続端部12に取り付けられたときに、接続端部12の一方の側部と近接して対向する。本実施形態では、リテーナ20が接続端部12に取り付けられている状態を想定すると、側面壁24は、正面壁21、上面壁22及び底面壁23の各々のY方向の上流側の側端部と連続する。
【0037】
リテーナ20では、正面壁21、上面壁22、底面壁23及び側面壁24の各々の内面で概略的に囲まれる空間が内部空間Sとなる。ここで、リテーナ20において、内部空間Sを挟んで正面壁21と対向する壁部は、係合部25以外、存在せず、内部空間Sを挟んで側面壁24と対向する壁部も存在しない。そのため、作業者は、Y方向とは反対の方向で、接続端部12に設けられているリテーナ開口部15に係合部25を進入させつつスライドさせることで、リテーナ20を接続端部12に取り付けることができる。
【0038】
ここで、リテーナ開口部15への係合部25の進入が完了していない状態、すなわち、リテーナ20がいわゆる仮係止位置にある状態では、係止ブロック25aの一部は、接続部101の係止面101bとX方向で対向していない。そのため、リテーナ20は、仮係止位置にある状態では、端子金具100を係止していないことになるので、コネクタ1における端子金具100の二重係止がなされていない。
【0039】
一方、リテーナ開口部15への係合部25の進入が完了した状態、すなわち、リテーナ20がいわゆる本係止位置にある状態では、係止ブロック25aの一部は、接続部101の係止面101bとX方向で対向する。そのため、リテーナ20は、本係止位置にある状態では、端子金具100を係止していることになるので、コネクタ1における端子金具100の二重係止がなされている。
【0040】
また、リテーナ20は、外方に露出した部位に、治具棒部26を有する。治具棒部26は、リテーナ20が接続端部12から取り外されているときに、キャビティ13に収容されている端子金具100を引き抜く際に利用される、いわゆる抜き治具として機能する。
【0041】
以下、説明のために、リテーナ20に関する各方向を次のように規定する。正面壁21において複数の端子挿入口21aが各々向かう方向を長さ方向と規定する。上面壁22と底面壁23とが対向する方向を高さ方向と規定する。また、正面壁21において複数の端子挿入口21aが並ぶ方向を幅方向と規定する。
【0042】
治具棒部26は、リテーナ20の一部が切り欠かれた切り欠き領域R2に含まれるように形成される。本実施形態では、切り欠き領域R2は、正面壁21と側面壁24とが交差する角部にあり、開口部27を介してリテーナ20の内部空間Sと貫通する。リテーナ20が接続端部12に取り付けられているとき、接続端部12の先端面部12aの一部は、図6に示すように、開口部27を通じて切り欠き領域R2に進入する。
【0043】
また、治具棒部26は、切り欠き領域R2において、リテーナ20を構成するいずれかの壁部の延長上にある。本実施形態では、治具棒部26は、側面壁24の延長上にある。そして、治具棒部26は、切り欠き領域R2に面する側面壁24の第1先端面24aから一方向であるリテーナ20の長さ方向に突出するように延伸する。リテーナ20が接続端部12に取り付けられている状態を想定すると、当該一方向は、X方向である。また、治具棒部26の先端26aは、正面壁21の外面を超えない範囲に収まる。更に、治具棒部26は、切り欠き領域R2において、側面壁24の厚み範囲の延長上に収まる。
【0044】
より具体的には、本実施形態では、リテーナ20の高さ方向に沿って互いに離間しつつ並行に配置される、2つの治具棒部26がある。各々の治具棒部26は、互いに同一形状である。治具棒部26の横断面は、矩形である。また、治具棒部26の先端26aの形状は、リテーナ20の高さ方向視で先細である。
【0045】
ここで、リテーナ20の高さ方向に沿った治具棒部26の幅を幅W3と規定する。リテーナ20の高さ方向に沿った2つの治具棒部26の間隔を幅W4と規定する。また、リテーナ20の幅方向に沿った開口部27から治具棒部26までの間隔を幅W5と規定する。
【0046】
また、本実施形態では、側面壁24は、外面側に、第1溝部24bと、2つの第2溝部24cとを有する。第1溝部24bは、リテーナ20の長さ方向に沿って2つの治具棒部26で挟まれた空間に向かうように形成された直線状の溝部である。第1溝部24bは、2つの治具棒部26が治具開口13cからランス14側に挿入されたときに、端子金具100における接続部101の下部の一部を受け入れて、当該部分との干渉を回避させる。一方、2つの第2溝部24cは、第1溝部24bをリテーナ20の高さ方向で挟み込むように配置され、それぞれリテーナ20の長さ方向に沿って治具棒部26に向かうように形成された直線状の溝部である。各々の第2溝部24cは、2つの治具棒部26が治具開口13cからランス14側に挿入されたときに、接続端部12の先端面部12aの一部を受け入れて、当該部分との干渉を回避させる。第1溝部24b及び2つの第2溝部24cの各々の深さは、目的物との干渉を回避し得る範囲で適宜決定される。同様に、第1溝部24bと連続しつつ切り欠き領域R2に面する側面壁24の第2先端面24dの形成位置は、目的物との干渉を回避し得る範囲で、リテーナ20の長さ方向で、第1先端面24aの形成位置と異なっていてもよい。
【0047】
パッキン30は、ハウジング10において嵌合口部11aと対向する接続端部12の基部に取り付けられる環状の弾性体である。パッキン30が設けられていることで、コネクタ1が相手コネクタと嵌合されたとき、ハウジング本体11は、相手ハウジングに対してより密に嵌合される。
【0048】
次に、ハウジング10からの端子金具100の取り外し作業(以下「端子抜き作業」という)について説明する。
【0049】
図7は、端子抜き作業の第1段階にあるコネクタ1の斜視図である。図8は、図7に示す第1段階に続く、端子抜き作業の第2段階にあるコネクタ1の斜視図である。図9は、図8に示す第2段階に続く、端子抜き作業の第3段階にあるコネクタ1の斜視図である。
【0050】
端子抜き作業に先立ち、コネクタ1は、図1に示す完成状態にあるものとする。このとき、ある1つのキャビティ13には、電線Wの端末部に接続された1つの端子金具100が予め収容されている。また、ハウジング10の接続端部12には、リテーナ20が本係止位置に取り付けられており、当該端子金具100は、コネクタ1において二重係止されている。
【0051】
まず、第1段階として、作業者は、図7に示すように、図1に示すコネクタ1の完成状態からリテーナ20をY方向にスライドさせることで、接続端部12から取り外す。これにより、リテーナ20の係合部25による端子金具100の係止が解除され、端子金具100は、接続端部12のランス14によって係止されているのみである。
【0052】
次に、第2段階として、作業者は、図8に示すように、リテーナ20の治具棒部26が、端子金具100を収容しているキャビティ13の治具開口13cを向くように、リテーナ20の姿勢を変化させる。具体的には、図3Bに示すように、二点鎖線で示される2つの治具棒部26が、ランス14の係止突部14cと、係止突部14cに近接して対向するキャビティ13の内側壁13dとの間に各々挿入されるように、治具開口13cに向く。
【0053】
次に、第3段階として、作業者は、図9に示すように、X方向とは反対の方向に沿って治具棒部26を治具開口13cに挿入しながら、接続端部12に対してリテーナ20を押し付ける。
【0054】
図10は、第2段階にあるコネクタ1をX方向とは反対の方向で見た正面図である。図11は、図10のXI-XI部に対応した、コネクタ1の断面図である。図11における切断面は、端子金具100を収容している1つのキャビティ13においてY方向の中心を通る仮想のXZ平面である。図12は、図11のXII部に対応した、コネクタ1の一部拡大図である。
【0055】
第2段階から第3段階へ移行するとき、2つの治具棒部26は、図11及び図12においてそれぞれ矢印で示す方向で、治具開口13cに向けて移動する。
【0056】
図13は、図10のXIII-XIII部に対応した、第3段階におけるランス14に対する治具棒部26の接触状態を示すコネクタ1の一部断面図である。図13における切断面は、一方の治具棒部26を通る仮想のXZ平面である。図14は、図11と同様の切断面による、第3段階におけるランス14に対する治具棒部26の接触状態を示すコネクタ1の一部断面図である。図13及び図14では、互いに同一のタイミングにおける接触状態が示されている。
【0057】
ここで、図3B及び図5を参照すると、治具棒部26の幅W3は、ランス14の係止突部14cから各々近接する側の内側壁13dまでの距離として規定される幅W2よりも小さい。また、2つの治具棒部26の間隔として規定される幅W4は、係止突部14cの幅として規定される幅W1よりも大きい。そのため、2つの治具棒部26は、治具開口13cに挿入されたとき、図3Bにおいて二点鎖線で示されるように進入することができる。
【0058】
また、2つの側端内面14dを含むランス14の幅WLは、2つの治具棒部26の間隔として規定される幅W4よりも大きく設定される。そのため、図13に示すように、2つの治具棒部26が進み続けると、互いの間に係止突部14cを通過させつつ、治具棒部26の先端26aがランス14の側端内面14dと接触しながら内面14bの側に入り込む。これにより、ランス14は、白抜きの矢印で示される、キャビティ13から離れる方向に弾性変形する。
【0059】
同時に、図14に示すように、2つの治具棒部26が進み続けると、2つの治具棒部26で挟まれる空間には、端子金具100の接続部101に設けられている被係止部101aが位置する。このとき、ランス14が弾性変形することで、2つの治具棒部26で挟まれる空間にある係止突部14cも、キャビティ13から離れる方向に変位する。したがって、ランス14の弾性変形前では被係止部101aとX方向で対向していた係止突部14cは、もはや被係止部101aとはX方向で対向しないので、係止突部14cによる端子金具100の係止が解除される。
【0060】
更に、リテーナ20において開口部27から治具棒部26までの間隔として規定される幅W5は、弾性変形した後のランス14がリテーナ20と干渉して治具棒部26の挿入を妨げることがないように設定される。
【0061】
図15は、図14と同一部分に関し、キャビティ13から端子金具100が引き抜かれる状態を示すコネクタ1の一部断面図である。
【0062】
そして、第3段階に続く最終段階として、作業者は、図15に示すように、キャビティ13から端子金具100を引き抜き、端子抜き作業が完了する。
【0063】
なお、作業者は、端子抜き作業後、再びいずれかのキャビティ13に端子金具100が収容されたときにリテーナ20を接続端部12に取り付けることで、二重係止機能等を目的としてリテーナ20を再利用することができる。
【0064】
次に、コネクタ1の効果について説明する。
【0065】
まず、コネクタ1は、端子金具100を収容するキャビティ13を有し、キャビティ13に収容された端子金具100を係止するランス14が形成されたハウジング10を備える。また、コネクタ1は、ハウジング10に着脱自在であり、ハウジング10に取り付けられているときにキャビティ13に収容された端子金具100を係止するリテーナ20を備える。ランス14は、端子金具100の挿入方向に沿って上流側の先端部14aを自由端として延伸し、キャビティ13から離れる方向に弾性変形する形状を有する。リテーナ20は、外方に露出し、一方向に突出する治具棒部26を有する。治具棒部26は、端子金具100の挿入方向とは反対の方向に沿ってランス14のキャビティ13に面する内面14bの側に内面14bと接触しながら入り込むことで、ランス14をキャビティ13から離れる方向に変形させる。ただし、治具棒部26がランス14の内面14bの側に入り込ませられるのは、リテーナ20がハウジング10から取り外されているときである。
【0066】
ここで、キャビティ13に対する端子金具100の挿入方向は、上記例示のX方向に相当する。
【0067】
このような構成を有するコネクタ1によれば、作業者が端子抜き作業を実施するとき、上記詳説した手順により、治具棒部26を用いて容易に所望の端子金具100を引き抜くことができる。そして、治具棒部26を有するリテーナ20は、コネクタ1の一構成要素である。つまり、本実施形態では、製品としてのコネクタ1自体に、端子金具100をキャビティ13から取り外すための抜き治具が備わっているので、別途、抜き治具を準備する必要がない。
【0068】
以上のように、本実施形態によれば、端子金具100を引き抜く作業に用いられる治具の別途の準備を不要とするコネクタ1を提供することができる。このようなコネクタ1によれば、例えば、コネクタごとに対応した複数の単体治具の製作又は購入のための費用を不要としたり、複数の単体治具を管理する手間を省いたりするのに有利となり得る。
【0069】
また、コネクタ1では、ハウジング10は、端子金具100の一部であって外方から相手端子が接続される接続部101を配置するキャビティ13の先端領域R1を内部に有する接続端部12を有してもよい。ランス14は、接続端部12に設けられ、リテーナ20は、ハウジング10に取り付けられているときに接続端部12を内部空間Sに収容する形状を有してもよい。
【0070】
このコネクタ1によれば、リテーナ20の概略形状が、接続端部12を覆うように接続端部12に取り付けられるようなケース状となるので、リテーナ20の一部に治具棒部26を設ける部分を確保しやすい。
【0071】
また、コネクタ1では、治具棒部26は、リテーナ20の一部が切り欠かれた切り欠き領域R2で、リテーナ20を構成するいずれかの壁部の延長上にあってもよい。
【0072】
ここで、リテーナ20において治具棒部26が延長上に存在する壁部は、上記例示の側面壁24に相当する。
【0073】
このコネクタ1によれば、リテーナ20に治具棒部26を設けたとしても、リテーナ20の外形が、仮に切り欠き領域R2を有しない場合のリテーナ20の外形と比較して大型化されない。したがって、コネクタ1の一構成要素に治具棒部26を備えたとしても、コネクタ1の大型化を抑えることができる。
【0074】
また、コネクタ1では、切り欠き領域R2は、リテーナ20の内部空間Sと貫通し、リテーナ20がハウジング10に取り付けられているとき、接続端部12の一部は、切り欠き領域R2に進入してもよい。
【0075】
ここで、接続端部12の一部は、上記例示の先端面部12aに相当する。
【0076】
端子抜き作業においてハウジング10の治具開口13cに治具棒部26が挿入されたとき、ランス14がリテーナ20の一部と干渉して挿入を妨げないように、リテーナ20には、図6において幅W5で示されるような空間を要する。ここで、端子抜き作業時には、リテーナ20は、ハウジング10の接続端部12から取り外された状態にあるため、リテーナ20の内部空間Sに収容されているものはない。そこで、図6に示すように、リテーナ20が接続端部12に取り付けられているときに接続端部12の一部が存在する内部空間Sの一部を、端子抜き作業時には、上記の幅W5で規定される空間として活用されるものとしてもよい。このコネクタ1によれば、治具棒部26を有するリテーナ20の外形をよりコンパクトに設定することができる。
【0077】
また、コネクタ1では、治具棒部26の先端26aの形状は、先細であってもよい。
【0078】
このコネクタ1によれば、ハウジング10の治具開口13cに対する位置決めの点で、治具棒部26を挿入させやすくすることができる。また、治具棒部26が治具開口13cに挿入された後は、治具棒部26をランス14の内面14bの側に入り込ませやすくすることができる。更に、治具棒部26が内面14bと接触した後は、治具棒部26の進行に合わせてランス14を徐々に弾性変形させることができるので、ランス14に対する負荷を軽減させることができる。
【0079】
更に、コネクタ1では、ランス14は、内面14bに、端子金具100がキャビティ13に収容されているときに端子金具100の挿入方向に沿って端子金具100の一部と対向する係止突部14cを有してもよい。治具棒部26は、2つあってもよい。2つの治具棒部26は、互いに離間しつつ並行に配置され、ランス14の内面14bの側に入り込むときに、互いの間に係止突部14cを通過させつつ、内面14bにおいて係止突部14cが形成されていない面と接触してもよい。
【0080】
ここで、各々の治具棒部26が接触する、内面14bにおいて係止突部14cが形成されていない面は、上記例示の側端内面14dに相当する。
【0081】
このコネクタ1によれば、ランス14の形状が上記例示のように内面14b上に係止突部14cを有するような場合に、治具棒部26が直接的に係止突部14cと接触してランス14を弾性変形させる構造とはならない。そのため、例えば、ハウジング10においてランス14を設置する部位、又は、リテーナ20において治具棒部26を設置する部位をよりコンパクトにし得る点で有利となる。
【0082】
なお、上記説明では、このように、2つの治具棒部26が互いに並列に設けられ、ランス14における係止突部14cの側部にある側端内面14dと接触する場合を例示した。これに対して、コネクタ1の種類によっては、ハウジング10におけるランス14が設けられる部位又はランス14自体の形状が、上記例示と異なる場合もあり得る。その場合、治具棒部26の形状又は設置数等は、適宜変更されてもよい。
【0083】
また、上記説明では、ハウジング10に4つのキャビティ13が設けられ、そのうちの1つのキャビティ13に端子金具100が接続されている場合を例示した。しかし、ハウジング10に設けられるキャビティ13の数、又は、それらのキャビティ13に対して端子金具100が接続される数は、それぞれ任意である。
【0084】
以上、一実施形態を説明したが、実施形態はこれらに限定されるものではなく、実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 コネクタ
10 ハウジング
12 接続端部
12a 先端面部
13 キャビティ
14 ランス
14a 先端部
14b 内面
14c 係止突部
14d 側端内面
20 リテーナ
24 側面壁
26 治具棒部
26a 先端
100 端子金具
101 接続部
101a 被係止部
R1 先端領域
R2 切り欠き領域
S 内部空間
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15