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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153250
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】清掃装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 9/051 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
B08B9/051
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067027
(22)【出願日】2023-04-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (刊行物1) ▲1▼ 開催日 令和4年12月16日 ▲2▼ 集会名、開催場所 第23回計測自動制御学会 システムインテグレーション部門講演会 3A2-A11・オンライン開催 千葉県千葉市美浜区中瀬2-1幕張メッセ 国際会議場 ▲3▼公開者 中村太郎、人見峻広、門間洋介、伊藤文臣 ▲4▼公開の内容 「遊星歯車機構を用いたダクト清掃機構の清掃性能向上を目的とした油塵回収ユニットの提案」 (刊行物2) ▲1▼ 発行日 令和4年12月16日 ▲2▼ 刊行物 第23回計測自動制御学会 システムインテグレーション 部門講演会予稿集3A2-A11 ▲3▼ 公開者 中村太郎、人見峻広、門間洋介、伊藤文臣 ▲4▼ 公開の内容 「遊星歯車機構を用いたダクト清掃機構の清掃性能向上を目的とした油塵回収ユニットの提案」 (刊行物3) ▲1▼ 開催日 令和4年12月16日 ▲2▼ 集会名、開催場所 第23回計測自動制御学会 システムインテグレーション部門講演会 部門講演会3A2-A12・オンライン開催 千葉県千葉市美浜区中瀬2-1幕張メッセ 国際会議場 ▲3▼公開者 中村太郎、人見峻広、門間洋介、伊藤文臣 ▲4▼公開の内容 「遊星歯車機構を用いた角ダクト用清掃機構の試作とブラシ軌跡の検証」 (刊行物4) ▲1▼ 発行日 令和4年12月16日 ▲2▼ 刊行物 第23回計測自動制御学会 システムインテグレーション 部門講演会予稿集3A2-A12 ▲3▼ 公開者 中村太郎、人見峻広、門間洋介、伊藤文臣 ▲4▼ 公開の内容 「遊星歯車機構を用いた角ダクト用清掃機構の試作とブラシ軌跡の検証」
(71)【出願人】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】山中 雄太
(72)【発明者】
【氏名】人見 峻広
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文臣
【テーマコード(参考)】
3B116
【Fターム(参考)】
3B116AA13
3B116AB54
3B116BA02
3B116BA15
3B116BA35
(57)【要約】
【課題】管の内壁面に付着した油塵等の付着物を分離可能とする清掃装置を提供する。
【解決手段】壁面に付着した付着物を分離させる清掃体と、前記清掃体を公転させながら自転させる駆動手段と、を備えた清掃装置であって、前記清掃体と接触した状態を維持するように設けられ、前記清掃体の自転によって前記清掃体に付着した付着物を回収する第1の回収手段を備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に付着した付着物を分離させる清掃体と、前記清掃体を公転させながら自転させる駆動手段と、を備えた清掃装置であって、
前記清掃体と接触した状態を維持するように設けられ、前記清掃体の自転によって前記清掃体に付着した付着物を回収する第1の回収手段を備えたことを特徴とする清掃装置。
【請求項2】
前記清掃体から離れた付着物を回収する第2の回収手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の清掃装置。
【請求項3】
前記第1の回収手段は、前記清掃体に向けて延長する平板状とされたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の清掃装置。
【請求項4】
前記清掃体は、自転軸の周りに放射状に延長する繊維群を備え、前記繊維群により付着物を壁面から分離させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の清掃装置。
【請求項5】
前記第1の回収手段は、櫛歯部を備え、櫛歯部が前記繊維群の間に侵入することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の清掃装置。
【請求項6】
前記清掃体は、可撓性を有する弾性体を備え、該弾性体により付着物を分離させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の清掃装置。
【請求項7】
前記壁面に沿って前記清掃体を移動させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の清掃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃装置に関し、特に、飲食店などに設置された換気ダクト内に付着する粘性の高い油塵の除去を可能とする清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダクト内を清掃する清掃装置の一つとして、例えば、特許文献1に示すように空気を噴射してダクト内に付着した埃を除去するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-152839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、飲食店などに設置された換気ダクト内に付着する粘性の高い油塵等の除去に適したものではない。飲食店では、調理時に発生する油煙を換気するために換気ダクトが設置され、換気扇から吸気された油煙がダクトを通り屋外へ排出される。この油煙は、ダクトを通過する際に油分が埃や塵と混合し冷えて固まることで油塵と呼ばれる物質に変化しながらダクト壁面に付着し、換気設備の長期利用に伴いダクト内壁全体に堆積する。この油塵に何らかの要因で引火した場合,火はダクト内の油塵により伝播し,建物全体に延焼することが問題となる。このようなダクトは、建物の構造上,天井裏や床下に設置されることが多く、ダクト火災における初期消火に困難性を生じさせ、甚大な被害に発展する可能性が高い。ダクト火災を未然に防ぐには、定期的に油塵を除去する必要があるものの、現状では、作業員がダクト内に入り、スクレーパなどを用いて人力で油塵を削ぎ落とす清掃に依存している。また、ダクトによっては、人の侵入不可能な大きさにより清掃が困難なもの、天井裏などの暗く狭い場所での作業となり作業者に危険を生じさせるものがある。また、人による清掃が可能であっても、飲食店が換気ダクトを使用しない営業時間外に清掃作業を行う必要があり,実質的に人によるダクト全体の清掃が困難な場合もある。
【0005】
そこで、本発明では、ダクト等の管の内壁面に付着した油塵等の付着物を分離し、清掃性能を向上可能な清掃装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための清掃装置の構成として、壁面に付着した付着物を分離させる清掃体と、前記清掃体を公転させながら自転させる駆動手段と、を備えた清掃装置であって、前記清掃体と接触した状態を維持するように設けられ、前記清掃体の自転によって前記清掃体に付着した付着物を回収する第1の回収手段を備えた構成とした。
本構成によれば、清掃体の自転によって清掃体に付着した付着物を第1の回収手段により回収することができるので、清掃体に付着した付着物が壁面に再付着することを予防でき、壁面の付着物を効率良く分離することができる。これにより、人手によらずダクト内を清掃することができ、定期的なダクト内の清掃をすることができる。
また、清掃装置の他の構成として、前記清掃体から離れた付着物を回収する第2の回収手段を備えた構成とした。
本構成によれば、清掃体の表面から離れた付着物が壁面に再付着することを防止できる。
また、清掃装置の他の構成として、前記第1の回収手段は、前記清掃体に向けて延長する平板状とされた構成とした。
本構成によれば、清掃体に付着した付着物を第1の回収手段によって効率よく回収することができる。
また、清掃装置の他の構成として、前記清掃体は、自転軸の周りに放射状に延長する繊維群を備え、前記繊維群により付着物を壁面から分離させる構成とした。
本構成によれば、油塵のような付着物を壁面から除去するのに好適である。
また、清掃装置の他の構成として、前記第1の回収手段は、櫛歯部を備え、櫛歯部が前記繊維群の間に侵入する構成とした。
本構成によれば、繊維群を形成する繊維の間に櫛歯が侵入することにより、繊維群を形成する繊維の間に付着した付着物を直接的に擦り取ることができるので、第1の回収手段による付着物の回収率を高めることができる。
また、清掃装置の他の構成として、前記清掃体は、可撓性を有する弾性体を備え、該弾性体により付着物を分離させる構成としても良い。
また、前記壁面に沿って前記清掃体を移動させる移動手段を備えた構成とした。
本構成によれば、人手によらずダクト内を清掃することができ、定期的にダクト内を清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ダクト清掃装置の一実施形態を示す平面図である。
図2】機構部の分解斜視図である。
図3】機構部における遊星歯車機構の平面図である。
図4】清掃体の動作を示す図である。
図5】除塵体と清掃体の関係を示す平面図である。
図6】除塵体の作用を示す図である。
図7】除塵体と清掃体の他の関係を示す平面図である。
図8】清掃体に対して除塵体を傾けたときの油塵の回収する清掃実験を行ったときの結果を纏めた表である。
【0008】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[ダクト清掃装置の構成]
図1は、ダクト清掃装置1の一実施形態を示す平面図である。図1に示すダクト清掃装置1は、清掃対象として断面形状が円形の所謂円形ダクト、スパイラルダクト等の管の内壁の清掃に好適に構成されたものを示している。なお、本実施形態に係るダクト清掃装置1の概念は、特に清掃対象を管の内壁に限定されるものではない。
図1に示すように、ダクト清掃装置1は、清掃部2と、駆動部(アクチュエータ部)5(駆動手段)とを備える。
【0010】
駆動部5は、例えば、モーター50と、モーター50の回転を減速する減速機構52とを備えた構成とされる。
モーター50には、例えば、回転状態を制御しやすいステッピングモーター等を用いることができる。また、減速機構52には、例えば、モーター50の出力軸(図外)と、該減速機構52の出力軸とを同軸上に配置することができる遊星歯車機構を利用することができる。
【0011】
駆動部5は、モーター50の出力軸が減速機構52の入力部に連結され、減速機構52から突出する出力軸52Aにカップリング54を介して主軸30の一端が連結される。
モーター50及び減速機構52は、カップリング54とともにケース56内に収容される。
【0012】
ケース56は、モーター50、減速機構52及びカップリング54を収容するための空間を形成する円筒状の筒部56Aと、筒部56Aの両端を蓋56B;56Cにより閉鎖される。カップリング54に連結された主軸30は、ケース56の一端側の蓋56Bを貫通する。
【0013】
清掃部2は、ダクト8の内壁面8aに付着した付着物を、内壁面8aから分離するための清掃体10と、清掃体10をダクト8の内壁面8aの円周方向に沿うように移動させながら自転可能とする機構部20とを備える。
【0014】
清掃体10は、例えば、丸棒状に形成された芯部材12と、芯部材12の外周面から放射状に延長する繊維群14を備えた所謂ブラシを用いることができる。
繊維群14は、例えば、芯部材12の外周において一端側から他端側に向けて螺旋を描くように設けられている。清掃体10は、全体として柱状をなしている。
【0015】
繊維群14を構成する繊維は、付着物の特性に応じたものを選べば良い。例えば、付着物が油塵などのような油分を含むものの場合には、弾性係数が小さいナイロン製のものを用いると良い。
発明者らは、ダクト8内に付着した油塵の清掃において、ブラシを利用した清掃に着目した。そして、ブラシを利用した清掃試験を繰り返すことにより、ブラシの油塵に対する清掃性能への影響に関して確認している。その結果、油塵の付着した清掃面に対し、ブラシの接触と非接触とが多く繰り返すほど清掃性能がより向上し、またブラシの表面積が大きいほど吸着性能が高くなるとの知見が得られている。
【0016】
清掃体10は、機構部20に取り付けられることにより、芯部材12の中心軸を回転中心線(自転軸)として回転しつつ、その位置を移動可能とされている。
【0017】
図2は、機構部20の分解斜視図である。図3は、機構部20を構成する遊星歯車機構の平面図である。
図2図3に示すように、機構部20は、例えば、遊星歯車機構を利用することにより、ダクト8内における前述の清掃体10の動作を実現することができる。
【0018】
機構部20は、太陽歯車22、太陽歯車22の周りを自転しつつ公転する遊星歯車24、太陽歯車22に対して遊星歯車24を保持する遊星キャリア26を備えた構成とされる。
【0019】
太陽歯車22は、蓋56Bを貫通する主軸30の軸線と、該歯車22の中心が一致するように主軸30を貫通させて蓋56Bに固定される。なお、太陽歯車22は、主軸30の回転を妨げないように設けられた貫通孔を介して貫通し、主軸30に対して不動に設けられている。
【0020】
遊星歯車24は、遊星キャリア26によって保持され、太陽歯車22と噛み合った状態で太陽歯車22の外周を回転可能に設けられる。本実施形態では、太陽歯車22の外周を2つの遊星歯車24が回転するように構成されている。
【0021】
遊星キャリア26は、主軸30が貫通する孔26Aを備え、例えば、シャフトホルダ28を利用するなどして太陽歯車22に対して所定距離離間して主軸30に固定される。
また、遊星キャリア26は、遊星歯車24の回転軸となる軸25が貫通する孔26Bを備える。孔26Bは、孔26Aを貫通する主軸30の軸線と平行かつ、主軸30を挟んで対向するように2つ形成される。各孔26Bは、該孔26Bに対して軸25が回転自在となるように寸法が設定されている。
【0022】
遊星キャリア26の孔26Bを貫通した軸25の一端側には遊星歯車24が固定され、他端側には清掃体10を取り付けるための保持部材33が固定される。つまり、遊星歯車24及び保持部材33は、軸25とともに一体的に回転する。
【0023】
保持部材33は、清掃体10の芯部材12の一端側を固定可能に構成されている。保持部材33によって一端側が固定された清掃体10は、他端側が主軸30の先端に設けられた補助キャリア32によって保持される。
【0024】
補助キャリア32は、主軸30の先端側に固定され、主軸30とともに回転可能に構成される。補助キャリア32は、清掃体10の他端側を保持する保持部を備える。保持部は、一端側が保持部材33に固定された清掃体10の芯部材12の軸線が主軸30と平行な状態を維持しつつ、芯部材12の回転を可能に支持可能に構成される。
【0025】
上記構成の機構部20によれば、モーター50の回転が減速機構52を介して主軸30を回転させる。主軸30の回転は、該主軸30に固定された遊星キャリア26及び補助キャリア32に回転力を付与し、太陽歯車22に噛み合う遊星歯車24;24を自転させながら太陽歯車の周りを公転させる。したがって、保持部材33を介して遊星歯車24に固定された清掃体10は、太陽歯車22の周りを自転しながら公転する遊星歯車24とともに回転することになる。
【0026】
したがって、機構部20に取り付けられた清掃体10の繊維群14が清掃対象となるダクト8の内壁面8aに接触可能に清掃体10を構成すれば良い。
即ち、清掃体10は、太陽歯車22の外周を一周公転したときに繊維の毛先により描かれる軌跡Tの直径が、清掃対象となるダクト8の内径以上となるように構成すると良い。
なお、清掃体10の外径は、保持部材33及び補助キャリア32に取り付けられた状態において、主軸30に達しないように構成すると良い。
【0027】
換言すれば、図1(b)に示すように、ダクト清掃装置1を軸方向に沿って見たときに、清掃体10が公転したときに繊維の先端が描く軌跡T(図4参照)の内側に収まるように、駆動部5や、清掃部2における機構部20を構成すれば良い。
【0028】
図4は、清掃体の動作を示す図である。図4中の矢印Aは、主軸30の回転方向を示し、矢印Bは、清掃体10の自転方向を示している。図4に示すように、清掃体10は、主軸30が右周りに回転することにより、右周りに自転する。また、主軸30が左周りに回転する場合には、清掃体10も同じく左周りに自転する。
【0029】
つまり、ダクト清掃装置1をダクト8内に配置し、モーター50を駆動することにより、清掃体10は、繊維群14がダクト8の内壁面8aに摺接するように接触した状態を維持しつつ、ダクト8の内壁面8aに沿って移動しながら自転することになる。
【0030】
このように清掃体10が主軸30周りを公転しつつ自転することにより、油塵の付着した清掃面(内壁面8a)に対して繊維群14の接触と非接触とが繰り返されることになり、ダクト8の内壁面8aに付着した油塵を清掃体10によって除去することができる。
【0031】
図5は、除塵体と清掃体10の関係を示す平面図である。
図4図5に示すように、本実施形態に係るダクト清掃装置1では、主軸30に繊維群14に接触する除塵体(第1の回収手段)40を備えた構成とされている。除塵体40は、例えば、主軸30の外周面から所定長さ突出する平板状の板片として主軸30に設けられている。
【0032】
除塵体40は、例えば、主軸30の回転中心線から清掃体10の回転中心線に向かうように主軸30の外周面から突出し、主軸30の回転中心線に沿って延長するように設けられる。除塵体40が主軸30に沿って延長する長さは、軸方向に沿って設けられた繊維群14の全てを含むように設定すると良い。
【0033】
例えば、除塵体40が突出する長さは、清掃体10の繊維群14に接触可能な寸法に設定される。例えば、繊維群14を形成する繊維が清掃対象のダクト8の内壁面8aに接触した範囲を含むように、除塵体40が突出する長さを設定すると良い。また、除塵体40が主軸30から突出する長さは、主軸30の延長方向に沿って一定とされる。
【0034】
図6は、除塵体40の作用を示す図である。
図6(a)に示すように、ダクト8の内壁面8aに付着していた油塵dは、ダクト8の内壁面8aに清掃体10の繊維群14が擦れることにより、ダクト8の内壁面8aから繊維群14に擦り取られ、ダクト8の内壁面8aから繊維群14へと移動する。
【0035】
繊維群14のうちダクト8の内壁面8aに接触し、ダクト8の内壁面8aから油塵dを擦り取った繊維は、清掃体10の自転により、ダクト8の内壁面8aから離れ、除塵体40に接触する。
【0036】
図6(b)に示すように、除塵体40に接触した繊維は、自転によってその弾性により自身を撓ませつつ、除塵体40に対して滑るように接触状態を維持することにより、接触位置を繊維の先端方向へと移動させる。これにより、繊維に付着した油塵は、除塵体40によって擦り取られ、繊維から除塵体40へと移動する。
【0037】
図6(c)に示すように、さらに清掃体10が回転し、繊維が除塵体40から離れることにより、繊維の撓みが一気に開放され、弾かれるように元の状態に戻る。
【0038】
このように繊維の撓みが開放され、元の状態に戻る際に、繊維に付着した油塵が繊維から再びダクト8の内壁面8aに向けて振り落とされる場合が考えられる。
そこで、本実施形態のダクト清掃装置1では、繊維から振り落とされた(離れた)油塵の回収を可能とするための塵受け(第2の回収手段)60を備えた構成とされている。
【0039】
塵受け60は、図4に示すように、ダクト清掃装置1を軸方向に沿って見たときに、2つの清掃体10の間に設けられる。塵受け60は、各清掃体10に接触する除塵体40に対応するように、清掃体10:10の間に2つ設けられている。
【0040】
塵受け60は、清掃体10:10の間を覆うように、例えば、断面円弧とされ、清掃体10の繊維群14と除塵体40が接触する範囲を含むように軸方向に沿って延長する樋部62と、樋部62の各端部を塞ぐように立ち上がる扇状の壁部64とを備えた形状とされている。
【0041】
塵受け60は、主軸30とともに回転するように機構部20に設けられている。塵受け60は、例えば、一方の壁部64を主軸30に設けた受け固定部材34(図1(a)参照)に固定し、他方の壁部64を補助キャリア32に固定すれば良い。
【0042】
塵受け60の機構部20への取り付けは、着脱可能すると良い。このように、塵受け60の着脱を容易にすることにより、油塵などで汚れた塵受け60を容易に清掃することができる。
なお、塵受け60の機構部20への取り付けは、これに限定されるものではなく、適宜変更すれば良い。
【0043】
以上説明したように、本実施形態のダクト清掃装置1によれば、ダクト8の内壁面8aに付着した油塵を擦り取った繊維が、次にダクト8の内壁面8aに接触する前に、除塵体40に接触させ、繊維に付着した油塵を繊維から除塵体40へと移動させることにより、次にダクト8の内壁面8aに接触するときにクリーンな状態で内壁面8aに接触させることができるので、清掃効率を向上させることができる。
【0044】
加えて、繊維を用いたことにより、繊維が除塵体40から離れるときの復元力により繊維から油塵を振り落とすことができるので、繊維が次にダクト8の内壁面8aに接触するときに、よりクリーンな状態で内壁面8aに接触させることができるので、清掃効率をより向上させることができる。
【0045】
図7は、除塵体と清掃体の他の関係を示す平面図である。
なお、上記実施形態では、除塵体40が、主軸30の回転中心線から清掃体10の回転中心線に延長するように設けたが、例えば、図7に示すように、清掃体10に対して傾斜するように設けても良い。
【0046】
図8は、清掃体10に対して除塵体40を傾けたときの油塵の回収する清掃実験を行ったときの結果を纏めた表である。
清掃実験は、ダクトを想定し、直径100mm、長さ140mmの管の内壁面の全体に油塵を平均厚さ0.5mm(23.3グラムに相当)で塗布し、前述のダクト清掃装置1を一定の速度で一端側から他端側まで管軸方向に移動させて、除塵体40がないときと、清掃体10に対する除塵体40の角度を変えたときの、油塵の除去率、繊維吸着量、塵受け60に付着した油塵の回収率、除塵体40による油塵の回収率、総回収率などについて調べ、その結果を表にして示した。除塵体40の角度については、図7(a)に示すように傾けたときをプラス側、図7(b)に示すように傾けたときをマイナス側とし、プラス側及びマイナス側に24°を設定した。
油塵の除去率、繊維吸着量、塵受け60に付着した油塵の回収率、除塵体40による油塵の回収率、総回収率は、実験前後の重さを計測して算出した。
図8に示すように、除塵体40の傾斜方向によって、除塵体40による油塵の回収効果と、塵受け60による油塵の回収効果が見られたものの、除塵体40の傾斜方向にかかわらず、清掃体10からの油塵の総回収率はほぼ同じとなり、清掃体10から油塵を確実に除去できていることが確認された。
【0047】
即ち、清掃体10の自転によって該清掃体10に付着した油塵を除塵体40により回収することができるので、清掃体10に付着した油塵の管の内壁面への再付着を予防しつつ、管の内壁面から付着物を効率良く分離することができる。これにより、人手によらずダクト内を清掃することができ、定期的なダクト内の清掃をすることができる。
【0048】
また、ダクト内における移動を可能とする移動手段をダクト清掃装置1が備えた構成とすることにより、ダクト清掃装置1をダクトの軸線に沿って移動させることができるので、ダクト内の清掃を容易にすることができる。
【0049】
また、図示しないが移動手段は、例えば、ダクト内にダクト清掃装置1を配置するときに、主軸30の中心軸がダクトの中心線に一致するように構成することで、ダクトの内壁面を円周方向について均一に清掃することができる。
【0050】
また、移動手段は、電力などのエネルギーの供給により推進可能とすることで、人手によることなく、また、時間を気にすることなく、ダクト内を定期的に清掃することが可能となる。
【0051】
なお、上記実施形態では、清掃体10における繊維群14の形態を螺旋状として説明したが、これに限定されない。例えば、繊維群14は、芯部材12の外周の全域に繊維を設けたものであっても良く、また、芯部材12の延長方向に沿うように複数の繊維で構成された列からなる繊維群を円周方向に均等、不均等な間隔で設けたものであっても良い。また、前述の螺旋状とは、等ピッチ、不当ピッチの螺旋、2重螺旋、3重螺旋等の意味を含む。
【0052】
また、清掃体10の数量は、上述の2つに限定されず、1つ、或いは2つ以上としても良い。この場合、利用したい清掃体10の数量に応じて太陽歯車22の外周を公転する遊星歯車24を設ければ良い。
【0053】
また、上記実施形態では、除塵体40を平板状として説明したが、その形状は限定されない。前述のように清掃体10に繊維群14のものを用いた場合、例えば、除塵体40は、櫛歯部を備えた構成とし、櫛歯部が前記繊維群の間に侵入するように構成しても良い。櫛歯部は、人の髪をとく、いわゆる櫛のように複数の櫛歯を所定の間隔で整列して構成される。除塵体40が櫛歯部を有する構成とすることにより、除塵体40における櫛歯が繊維群14の間に入り込み、繊維間に付着した油塵を直接的に擦り取ることができるので、除塵体40による油塵の回収率を高めることができる。なお、除塵体40そのものを櫛状として構成しても良い。
【0054】
また、上記実施形態では、清掃体10をダクト8の内壁面8aに沿って公転させながら自転させる機構を、公転方向に沿うように自転させるものとして構成したが、例えば、公転方向に逆らうように逆向きにブラシを自転させるように遊星歯車機構を構成しても良く、また、それらを組み合わせても良い。
【0055】
上述のように、ダクト8の内壁面8aからの粘性の高い油塵の分離に清掃体10として繊維群14を用いるものとして説明したがこれに限定されない。例えば、繊維群14に代えて、スポンジやゴム等の可撓性を有する弾性体をダクトの内壁面に接触させるようにしても良い。この場合、清掃体10の素材や形状に基づいて、清掃体10に付着した油塵などの付着物を除去すべく除塵体40を平板状や櫛状のものから適宜変更すれば良い。
【0056】
また、ダクト清掃装置1に清掃体を複数設ける場合、ダクトの内壁面に接触する素材で構成された清掃体を組み合わせてダクト清掃装置1に取り付けるようにしても良い。
【0057】
また、上記実施形態では、ダクト清掃装置1について、断面形状が円形の所謂円形ダクト、スパイラルダクト等を清掃対象として構成されたものを用いて説明したが、ダクト清掃装置1の構成はこれに限定されない。
例えば、清掃対象が断面矩形状である場合には、清掃体が矩形状の内壁面に沿うように移動しつつ自転するようにダクト清掃装置1を構成すれば良い。
【0058】
また、清掃対象を管の内壁面として本実施形態に係るダクト清掃装置1の利用について説明したが、管の内壁面に限定されず、平面状や曲面状の壁面の清掃に利用しても良い。
【0059】
以上説明したように、ダクト清掃装置1は、油塵などの付着物が付着した清掃面(壁面)に対し、清掃体10の異なる部分(前述の説明では繊維群14)が清掃面に接触と非接触を繰り返すように、清掃体10が公転(移動)しつつ自転するように構成され、さらに、自転する接触体10に対して常時接触するように除塵体40を設けることにより、清掃面から清掃体10に付着(移動)した付着物を、清掃体10から除塵体40に移動するように構成されていれば良い。
さらに、ダクト清掃装置1は、清掃体10に付着し、清掃体10から脱落した(離れた)付着物を清掃面などに再付着させないように塵受け60を備えた構成とすると良い。
【符号の説明】
【0060】
1 ダクト清掃装置、2 清掃部、5 駆動部、8 ダクト、8a 内壁面、
10 清掃体、14 繊維群、20 機構部、30 主軸、
40 除塵体(第1の回収手段)、60 塵受け(第2の回収手段)。

図1
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図7
図8