(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153254
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
G01R15/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067034
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】福原 聡明
(72)【発明者】
【氏名】三輪 恭也
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA05
2G025AB02
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】低コストで省サイズである構成で大電流を測定する。
【解決手段】バスバ110を、両端の間において、上側部分113と、下側部分114と、の2つの部分に分け、磁性体部材120が、底部分121と、一対の壁部分122と、を有するようにし、磁性体部分120の底部分121を、バスバ110の上側部分113と下側部分114との間に配置し、第1の磁気センサ130を、一対の壁部分122の間に配置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスバと、
磁性体部材と、
第1の磁気センサと、を有する電流センサであって、
前記バスバは、両端の間において、上側部分と、下側部分と、の2つの部分に分かれており、
前記磁性体部材は、底部分と、一対の壁部分と、を有し、
前記バスバの長手方向をX軸方向とし、前記バスバの幅方向をY軸方向とし、前記X軸方向および前記Y軸方向に垂直な方向をZ軸方向としたときに、
前記磁性体部分の底部分は、
前記X軸方向および前記Y軸方向に広がっており、
前記バスバの上側部分と下側部分との間に配置されており、
前記一対の磁性体部材の壁部分は、前記バスバの底部の前記Y軸方向の両端に接続されており、
前記一対の磁性体部材の壁部材の各々は、前記Y軸方向および前記Z軸方向に広がっており、
第1の磁気センサは、前記一対の壁部分の間に配置されている、電流センサ。
【請求項2】
前記バスバの下側部分と前記磁性体部材の底部分との間の距離は、前記バスバの上側部分と前記磁性体部材の底部分との間の距離より大きい、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
第2の磁気センサをさらに有し、
前記磁性部材は、一対の対向部分をさらに有し,、
前記一対の壁部分の各々は、
前記第1の磁気センサが配置される部分である第1の壁部分と、
前記第1の壁部分から前記X軸方向にずれて配置された第2の壁部分と、を有し、
前記一対の対向部分の各々は、前記X軸方向および前記Y軸方向に広がっており、前記第2の壁部分の端部に接続されており、当該第2の壁部分の端部から他方の対向部分に向かって延びており、
前記第2の磁気センサは、前記一対の対向部分の間に配置されている、請求項1または2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記第2の壁部分の前記Z軸方向の長さは、前記第1の壁部分より前記Z軸方向の長さが短い、請求項3に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記一対の壁部分の各々において、前記第1の壁部分と前記第2の壁部分との間に、切欠部分が形成されている、請求項3に記載の電流センサ。
【請求項6】
前記第1の磁気センサと前記第2の磁気センサとは、同じ性能を有する磁気センサである、請求項3に記載の電流センサ。
【請求項7】
前記第1の磁気センサと前記第2の磁気センサの前記Z方向の位置は、同じである、請求項3に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、広範囲の電流値を測定することが可能な電流センサを開示している。この電流センサでは、透磁部材が、断面がC字状またはO字状である閉塞部と、断面がU字状である開放部と、閉塞部に配置された磁気センサと、開放部に配置された磁気センサと、を有しており、閉塞部に配置された磁気センサを用いて小電流を測定し、開放部に配置された磁気センサを用いて大電流を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された電流センサでは、透磁部材内に発生する磁束密度が飽和磁束密度を超える電流がバスバを流れたときに、測定精度が低下する。このとき、透磁部材の厚さを大きくすることや、透磁部材とバスバとの間の距離を大きくすることで、透磁部材内に発生する磁束密度を下げることが可能である。しかしながら、透磁部材の厚さを大きくした場合、製造コストが上昇してしまい、磁性体部材とバスバとの間の距離を大きくした場合、電流センサのサイズが上昇してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、低コストで省サイズである構成で大電流を測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る一実施形態に係る電流センサは、バスバと、磁性体部材と、第1の磁気センサと、を有する電流センサであって、前記バスバは、両端の間において、上側部分と、下側部分と、の2つの部分に分かれており、前記磁性体部材は、底部分と、一対の壁部分と、を有し、前記バスバの長手方向をX軸方向とし、前記バスバの幅方向をY軸方向とし、前記X軸方向および前記Y軸方向に垂直な方向をZ軸方向としたときに、前記磁性体部分の底部分は、前記X軸方向および前記Y軸方向に広がっており、前記バスバの上側部分と下側部分との間に配置されており、前記一対の磁性体部材の壁部分は、前記バスバの底部の前記Y軸方向の両端に接続されており、前記一対の磁性体部材の壁部材の各々は、前記Y軸方向および前記Z軸方向に広がっており、第1の磁気センサは、前記一対の壁部分の間に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低コストで省サイズである構成で大電流を測定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る固定構造を有する電流センサ100を示す図である。
【
図2】バスバ110を流れる電流により発生する磁場の磁束を説明する図である。
【
図3】バスバ110の上側部分113を流れる電流による磁場の方向と下側部分114を流れる電流により発生する磁場の方向との関係を説明する図である。
【
図4】バスバ110を流れる電流により発生する磁場の磁束を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<電流センサ100>
図1は、本発明の一実施形態に係る固定構造を有する電流センサ100を示す図である。電流センサ100は、バスバ110と、磁性体部材120と、第1の磁気センサ130と、を有する。本実施形態では、バスバ110の長手方向を、X軸方向とし、バスバ110の幅方向を、Y軸方向とし、バスバ110の長手方向および幅方向に垂直な方向を、Z軸方向とする。
【0010】
バスバ110は、電気導電体により構成される。バスバ110は、その両端に、第1の接続部111と第2の接続部112と、を有しており、測定対象である経路に第1の接続部111、第2の接続部112が接続され、測定対象の電流が流される。
【0011】
バスバ110は、
図1に示すように、第1の接続部111と第2の接続部112の間において、上側部分113と、下側部分114と、の2つの部分に分かれている。つまり、バスバ110は、両端の間において、上側部分113と、下側部分114と、の2つの部分に分かれている。バスバ110は、
図1に示した例のように、上側部分113を含む上側のバスバと下側部分114を含む下側のバスバの2枚のバスバにより構成されるようにしても良い。
【0012】
磁性体部材120は、例えば、磁性体により構成される。このため、バスバ110を流れる電流による磁場は、磁性体部材120内に集磁される。
【0013】
磁性体部材120は、底部分121と、一対の壁部分122と、を有する。底部分121は、X軸方向およびY軸方向に広がっており、
図1に示されるように、バスバ110の上側部分113と下側部分114との間に配置される。一対の壁部分122は、底部分121のY軸方向の両端に接続されており、一対の壁部分122の各々は、X軸方向およびZ軸方向に広がっている。一対の壁部分122は、
図1、2に示すように、X軸方向およびZ軸方向に広がった面が互いに向き合うように配置されている。
【0014】
このため、バスバ110を流れる電流による磁束は、
図2に示すように、磁性体部材120内に通る。磁性体部材120の底部分121では、磁束は集中し、磁束密度は高くなるが、一対の壁部分122では、磁束は集中することなく、一対の壁部分122の間における磁束密度は低くなる。
図2に示した例において、バスバ110内の電流は、紙面の裏側から表側に向けて流れている。
【0015】
第1の磁気センサ130は、Y軸方向の磁場を測定する磁気センサであり、例えば、ホール素子である。ホール素子は、ホール効果を利用し、磁場に比例した電圧を出力する素子である。
【0016】
第1の磁気センサ130は、外部磁場に影響されることなく、磁性体部材120内に発生した磁場を測定することができる位置に配置される。第1の磁気センサ130は、例えば、
図1に示すように、磁性体部材120の一対の壁部分122の間に配置される。第1の磁気センサ130、例えば、
図1に示すように、基板PB上に設置される。
【0017】
本実施形態では、磁性体部材120の底部分121は、バスバ110の上側部分113と下側部分114との間に配置される。このため、本実施形態では、
図2に示すように、磁性体部材120の近辺では、電流は、バスバ110の上側部分113と下側部分114に分流される。結果、バスバ110に大電流が流れたとしても、磁性体部材120の底部分121の上側を流れる電流(上側部分113を流れる電流)の大きさは抑制され、磁性体部材120の底部分121の上側を流れる電流により磁性体部材120内に発生する磁場の大きさが抑制される。
【0018】
また、本実施形態では、磁性体部材120の底部分121の下側を流れる電流(下側部分114を流れる電流)により磁性体部材120に発生する磁場の方向B2は、
図3に示すように、磁性体部材120の底部分121の上側を流れる電流(上側部分113を流れる電流)により磁性体部材120に発生する磁場の方向B1とは逆方向である。このため、磁性体部材120の底部分121の下側を流れる電流により磁性体部材120に発生する磁場によって、磁性体部材120の底部分121の上側を流れる電流により磁性体部材120内に発生する磁場の強さが弱められ、磁性体部材120内に発生する磁場の磁束密度が抑制される。このため、本実施形態では、磁性体部材の厚さを大きくすることや、磁性体部材とバスバとの間の距離を大きくすることなく、大電流を測定することが可能である。よって、本実施形態では、低コストで省サイズである構成で大電流を測定することが可能である。
図3に示した例において、バスバ110内の電流は、紙面の裏側から表側に向けて流れている。
【0019】
バスバ110の下側部分114と磁性体部材120の底部分121との間の距離は、例えば、バスバ110の上側部分113と磁性体部材120の底部分121との間の距離と同等以上にする。例えば、バスバ110の下側部分114と磁性体部材120の底部分121との間の距離は、バスバ110の上側部分113と磁性体部材120の底部分121との間の距離より大きくすると良い。このとき、バスバ110の上側部分113と磁性体部材120の底部分121との間の距離と、バスバ110の下側部分114と磁性体部材120の底部分121との間の距離と、の差は、バスバ110を流れる電流の考慮し、適宜決定するようにすると良い。
【0020】
<小電流用の磁気センサ>
電流センサ100は、小電流を測定するために、第2の磁気センサ140をさらに有するようにしても良い。
【0021】
このとき、磁性体部材120の壁部分122の各々は、第1の磁気センサ130が配置される部分である第1の壁部分1221の他に、第2の壁部分1222をさらに有するようにすると良い。第2の壁部分1222は、第1の壁部分1221からX軸方向にずれて配置されており、第1の壁部分1221よりZ軸方向の長さが短い。このとき、磁性体部材120の壁部分122の各々は、第1の壁部分1221と第2の壁部分1222との間に形成された切欠部分1223をさらに有するようにすると良い。そして、磁性体部材120は、一対の対向部分123をさらに有するようにする良い。
【0022】
一対の対向部分123の各々は、X軸方向およびY軸方向に広がっている。このとき、一対の対向部分123の各々は、第2の壁部分1222の端部に接続されており、この端部から他方の対向部分123に向かって延びている。つまり、一対の対向部分123は、互いに向き合う方向に、2つの第2の壁部分1222の端部から延びている。
【0023】
このため、バスバ110を流れる電流による磁束は、
図4に示すように、磁性体部材120内を通る。磁性体部材120の底部分121に加え、一対の壁部分122、一対の対向部分123においても、磁束は集中し、磁束密度は高くなる。このため、一対の対向部分123の間における磁束密度は、一対の壁部分122の第1の壁部分1221の間における磁束密度より高くなる。
図4に示した例において、バスバ110内の電流は、紙面の裏側から表側に向けて流れている。
【0024】
第2の磁気センサ140は、Y軸方向の磁場を測定する磁気センサであり、例えば、ホール素子である。第2の磁気センサ140は、磁性体部材120の底部分121、第2の壁部分1222、対向部分123内を通る磁場を測定でき、外部磁場の影響が少ない位置に配置される。第1の磁気センサ130は、例えば、
図1に示すように、磁性体部材120の一対の対向部分123の間に配置される。
【0025】
このため、第2の磁気センサ140は、第1の磁気センサ130よりも小さい電流により発生した磁場も測定することが可能になる。このため、電流センサ100は、大電流に加え、小電流も測定することが可能になる。
【0026】
第2の磁気センサ140は、例えば、第1の磁気センサ130と同じ性能を有する磁気センサとすると良い。このようにすることで、部品の種類の増加を抑制することが可能になり、コストを抑制することが可能である。
【0027】
第2の磁気センサ140は、例えば、第1の磁気センサ130と同じ高さに設置するようにすると良い。つまり、第1の磁気センサ130と第2の磁気センサ140のZ軸方向の位置を同じにすると良い。このようにすることで、第1の磁気センサ130が設置された基板に、第2の磁気センサ140も設置することが可能になる。
【0028】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に記載した本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更が可能である。
【符号の説明】
【0029】
100 電流センサ
110 バスバ
111 第1の接続部
112 第2の接続部
113 上側部分
114 下側部分
120 磁性体部材
121 磁性体部材120の底部
122 磁性体部材120の壁部
1221 壁部分122の第1の壁部分
1222 壁部分122の第2の壁部分
1223 壁部分122の切欠部分
123 対向部分
130 第1の磁気センサ
140 第2の磁気センサ