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特開2024-153269コンバータ装置、コンバータ装置を備える空気調和装置、コンバータ装置の制御方法
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  • 特開-コンバータ装置、コンバータ装置を備える空気調和装置、コンバータ装置の制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153269
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】コンバータ装置、コンバータ装置を備える空気調和装置、コンバータ装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
H02M7/12 601
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067053
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】久原 正和
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】角藤 清隆
(72)【発明者】
【氏名】小宮 真一
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006BB05
5H006CA01
5H006CA02
5H006CB08
5H006DA04
5H006DB01
5H006DC02
5H006DC05
5H006FA03
(57)【要約】
【課題】特定のスイッチング素子のみが過度に発熱することを抑制するコンバータ装置を提供する。
【解決手段】コンバータ装置は、複数のスイッチング素子Tr1,Tr3を備える第1アーム部arm1と、複数のスイッチング素子Tr2,Tr4を備える第2アーム部arm2とを有し、交流電源4から供給される交流電力を整流するブリッジ回路200と、第1アーム部が備える複数のスイッチング素子及び第2アーム部が備える複数のスイッチング素子のオン/オフを制御する制御部24とを備え、制御部は、交流電源から供給される交流電圧の所定の周期毎に、各アーム部内のスイッチング素子のオン/オフを切替え、各アーム部は、電気的特性が同じである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子を備える第1アーム部と、複数のスイッチング素子を備える第2アーム部とを有し、交流電源から供給される交流電力を整流するブリッジ回路と、
前記第1アーム部が備える複数の前記スイッチング素子及び前記第2アーム部が備える複数の前記スイッチング素子のオン/オフを制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記交流電源から供給される交流電圧の所定の周期毎に、各アーム部内の前記スイッチング素子のオン/オフを切替え、
各アーム部は、電気的特性が同じであるコンバータ装置。
【請求項2】
各アーム部が備える各前記スイッチング素子は、電気的特性が同じである請求項1に記載のコンバータ装置。
【請求項3】
前記制御部は、単一の制御アルゴリズムによって前記各スイッチング素子の駆動状態を切替える請求項2に記載のコンバータ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のコンバータ装置を備える空気調和装置。
【請求項5】
複数のスイッチング素子を備える第1アーム部と、複数のスイッチング素子を備える第2アーム部とを有するブリッジ回路において、交流電源から供給される交流電力を整流する整流工程と、
前記第1アーム部が備える複数の前記スイッチング素子及び前記第2アーム部が備える複数の前記スイッチング素子のオン/オフを制御する制御工程と
を有するコンバータ装置の制御方法であって、
前記制御工程は、前記交流電源から供給される交流電圧の所定の周期毎に、各アーム部内の前記スイッチング素子のオン/オフを切替え、
各アーム部は、電気的特性が同じであるコンバータ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンバータ装置、コンバータ装置を備える空気調和装置、コンバータ装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パワートランジスタによって構成されたブリッジ回路を用いた整流制御及び昇圧制御が広く利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電気的特性が異なるパワートランジスタを用いて構成されるダイオードブリッジ回路を備える直流電源装置が開示されている。また、本直流電源装置は、それぞれが交流電源に接続された第1乃至第4のスイッチング素子からなるダイオードブリッジ回路と交流電源との間にリアクトルが設けられ、リアクトル側のスイッチング素子である第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子は、第3のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子よりもオン抵抗が高いパワートランジスタが用いられていることが開示されている。このような構成によれば、高効率かつ高調波電流の抑制を両立することが可能な直流電源装置を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6798802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているダイオードブリッジ回路は、高速でスイッチングを行う第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子には逆回復特性が良いパワートランスを採用し、低速でスイッチングを行う第3のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子にはオン抵抗が低いパワートランジスタを採用している。しかしながら、このような構成では、PAM(Pulse Amplitude Modulation)制御時において、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子にスイッチング損失が集中し、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子の発熱量が大きくなってしまう。なお、第3のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子は、低速でスイッチングを行うため、発熱量は大きくない。
【0006】
このように、第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子と、第3のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子とで機能を分けることために、それぞれ異なるパワ―トランスを採用する場合、各スイッチング素子の発熱量に差が生じ、ダイオードブリッジ回路の温度のバランスに不均衡が生じる。また、このように特性に偏りがあり、特定の素子の発熱が大きくなってしまう場合、発熱が大きい素子の出力が制限されてしまうため、直流電源装置の利用において好ましくない。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、特定のスイッチング素子のみが過度に発熱することを抑制するコンバータ装置、コンバータ装置を備える空気調和装置、コンバータ装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の幾つかの実施形態における一態様に係るコンバータ装置は、複数のスイッチング素子を備える第1アーム部と、複数のスイッチング素子を備える第2アーム部とを有し、交流電源から供給される交流電力を整流するブリッジ回路と、前記第1アーム部が備える複数の前記スイッチング素子及び前記第2アーム部が備える複数の前記スイッチング素子のオン/オフを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記交流電源から供給される交流電圧の所定の周期毎に、各アーム部内の前記スイッチング素子のオン/オフを切替え、各アーム部は、電気的特性が同じである。
【0009】
本開示の幾つかの実施形態における一態様に係る空気調和装置は、上記コンバータ装置を備える。
【0010】
本開示の幾つかの実施形態における一態様に係るコンバータ装置の制御方法は、複数のスイッチング素子を備える第1アーム部と、複数のスイッチング素子を備える第2アーム部とを有するブリッジ回路において、交流電源から供給される交流電力を整流する整流工程と、前記第1アーム部が備える複数の前記スイッチング素子及び前記第2アーム部が備える複数の前記スイッチング素子のオン/オフを制御する制御工程とを有するコンバータ装置の制御方法であって、前記制御工程は、前記交流電源から供給される交流電圧の所定の周期毎に、各アーム部内の前記スイッチング素子のオン/オフを切替え、各アーム部は、電気的特性が同じである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、特定のスイッチング素子のみが過度に発熱することを抑制するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施形態に係るモータ駆動装置の構成を示す図である。
図2】本開示の一実施形態に係るコンバータ制御部の構成を示す図である。
図3】本開示の一実施形態に係る制御信号生成部の構成の一例を示す図である。
図4】本開示の一実施形態に係る同期整流制御実行時における、交流電源の電圧と各スイッチング素子の駆動パルスとの各波形の比較図である。
図5】本開示の一実施形態に係るブリッジ回路において、交流電源が正の極性である場合の電流経路を示す図である。
図6】本開示の一実施形態に係るブリッジ回路において、交流電源が負の極性である場合の電流経路を示す図である。
図7】本開示の一実施形態に係るPAM制御実行時における、交流電源の電圧と各スイッチング素子の駆動パルスとの各波形の比較図である。
図8】本開示の一実施形態に係る同期整流制御及びPAM制御実行時における、交流電源の電圧と各スイッチング素子の駆動パルスとの各波形の比較図である。
図9】本開示の一実施形態に係る同期整流制御及びPAM制御実行時における、交流電源の電圧と各スイッチング素子の駆動パルスとの各波形の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一実施形態に係るコンバータ制御装置及びコンバータ制御装置の制御方法について、図面を参照して説明する。
【0014】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。
図1は、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置1の構成を示す図である。モータ駆動装置1は、図1に示すように、コンバータ装置2と、インバータ装置3と、交流電源4と、モータ5とを備える。また、コンバータ装置2は、整流回路21と、入力電流検出部22と、入力電圧検出部23aと、ゼロクロス検出部23bと、コンバータ制御部(制御部)24とを備える。
モータ駆動装置1は、交流電源4からの交流電力をコンバータ装置2によって直流電力に変換し、直流電力をインバータ装置3によって三相交流電力に変換してモータ5に出力する装置である。
【0015】
交流電源4は、例えば、単相の交流電力をコンバータ装置2に供給する。交流電源4は、例えば、電源電圧及び入力電流をコンバータ装置2に供給する。
モータ5は、インバータ装置3から供給される三相交流電力に応じて駆動する。モータ5は、例えば、空気調和機に用いられる圧縮機モータである。
【0016】
コンバータ装置2は、図1に示すように、整流回路21、入力電流検出部22、入力電圧検出部23a、ゼロクロス検出部23b、コンバータ制御部24を備える。整流回路21は、図1に示すように、ブリッジ回路200と、リアクトルL1と、平滑コンデンサC1とを備える。ブリッジ回路200は、スイッチング素子Tr1~Tr4と、寄生ダイオードD1~D4とを備える。なお、各スイッチング素子Tr1~Tr4のそれぞれには、寄生ダイオードD1~D4が並列接続されている。
【0017】
コンバータ装置2は、同期整流制御及びPAM制御を行い、さらに、電源電圧と電圧指令(すなわち、スイッチング素子の制御信号)との位相差を調整する装置である。コンバータ装置2が電源電圧と電圧指令との位相差を調整することで、PAM制御を行う場合の入力電流の変化に伴う電源電圧の位相の変化を低減することができ、その結果、交流電力から直流電力への変換効率や入力電流の歪み率の特性をよくすることができる。
コンバータ装置2は、交流電力を直流電力へ変換し、その直流電力をインバータ装置3に出力する。
【0018】
整流回路21が備えるブリッジ回路200は、複数のスイッチング素子を備える第1アーム部arm1と、複数のスイッチング素子を備える第2アーム部arm2とを有し、交流電源4から供給される交流電力を整流する。
ブリッジ回路200において、スイッチング素子Tr1~Tr4と、寄生ダイオードD1~D4は、ブリッジ接続される。スイッチング素子Tr1のソースは、スイッチング素子Tr3のドレインに接続され、リアクトルL1を介して交流電源4の一端に接続される。第1アーム部arm1は、スイッチング素子Tr1とスイッチング素子Tr3は、直列接続されて構成される。
同様に、スイッチング素子Tr2のソースは、スイッチング素子Tr4のドレインに接続されている。スイッチング素子Tr2のソースは、交流電源4の一端に接続される。第2アーム部arm2は、スイッチング素子Tr2とスイッチング素子Tr4は、直列接続されて構成されている。
なお、複数のスイッチング素子が接続されて構成されるアーム部の定義は、本実施形態の例に限らず、スイッチング素子Tr1とスイッチング素子Tr2との並列接続を第1アーム部arm1とし、スイッチング素子Tr3とスイッチング素子Tr4との並列接続を第2アーム部arm2と定義してもよい。
【0019】
整流回路21の第1端子は、入力電流検出部22の第1端子、入力電圧検出部23aの第1端子それぞれに接続される。整流回路21の第2端子は、入力電圧検出部23aの第2端子に接続される。整流回路21の第5端子は、コンバータ制御部24の第1端子に接続される。より具体的には、コンバータ制御部24が備えるゲートドライバ24aに接続される。整流回路21の第6端子は、コンバータ制御部24の第2端子に接続される。より具体的には、コンバータ制御部24が備えるゲートドライバ24bに接続される。入力電流検出部22の第2端子は、コンバータ制御部24の第3端子に接続される。入力電圧検出部23aの第3端子は、ゼロクロス検出部23bの第1端子に接続される。ゼロクロス検出部23bの第2端子は、コンバータ制御部24の第4端子に接続される。
【0020】
リアクトルL1は、交流電源4と整流回路21との間に設けられている。リアクトルL1は、交流電源4から供給される電力をエネルギとして蓄え、更にこのエネルギを放出することで昇圧を行う。平滑コンデンサC1は、スイッチング素子Tr1やスイッチング素子Tr2を通して整流された電圧を平滑化して、直流電圧を生成する。
【0021】
平滑コンデンサC1は、ブリッジ回路200の出力側に接続されており、正極側がスイッチング素子Tr1及びスイッチング素子Tr2のドレインに接続され、負極側がスイッチング素子Tr3及びスイッチング素子Tr4のソースに接続される。平滑コンデンサC1は、ブリッジ回路200の出力する直流電力を平滑化するコンデンサである。平滑コンデンサC1によって、電圧値の変動の少ない直流電圧がコンバータ装置2からインバータ装置3へ供給される。平滑コンデンサC1は、例えば、電解コンデンサである。
【0022】
スイッチング素子Tr1~Tr4は、後述するようにコンバータ制御部24からの指令によってオン/オフが制御される。スイッチング素子Tr1~Tr4は、例えば、MOSFETであり、各スイッチング素子の電気的特性は同じである。スイッチング素子Tr1~Tr4を用いることで、コンバータ装置2のスイッチングを高速で行うことができ、更に電圧ドロップの小さいMOSFETに電流を流すことで、同期整流制御を行うことが可能であり、回路の導通損失を低減できる。
ここで、電気的特性とは、絶縁性、誘電性、帯電性等の意味に限らず、電子部品の使用時における耐熱性や印加可能な電圧範囲及び電流範囲等、電子部品の仕様に関わる特性を指すものとする。
【0023】
本実施形態では、ブリッジ回路200が備えるスイッチング素子Tr1~Tr4は、例えば、MOSFETである。MOSFETとして、例えば、オン抵抗(MOSFETが動作している時の動作抵抗)の小さいスーパージャンクション(SJ:Super Junction)構造を採用したMOSFET(以下、SJ-MOSFETという)を採用することができる。また、SJ-MOSFETのうち、高速タイプのSJ-MOSFETを用いることとしてもよい。また、逆回復特性が良いSiC-MOSFET、GaN-MOSFET、Ga-MOSFETなどの次世代半導体を用いることとしてもよい。
【0024】
入力電流検出部22は、交流電源4からコンバータ装置2へ供給される入力電流の電流値を、交流電源4が出力する交流電圧の周期よりも充分に短い周期毎に検出する。例えば、入力電流検出部22は、交流電源4とコンバータ装置2との間に設けられた電流センサを含み、その電流センサの読み取った入力電流の電流値(入力電流に係る物理量の一例)を検出する。また、例えば、入力電流検出部22は、交流電源4とコンバータ装置2との間に設けられたシャント抵抗を含み、そのシャント抵抗の両端の電位差(入力電流に係る物理量の一例)を抵抗値で除算して電流値を検出するものであってもよい。
入力電流検出部22は、検出した入力電流の電流値をコンバータ制御部24に出力する。
【0025】
入力電圧検出部23aは、交流電源4からコンバータ装置2へ供給される入力電圧の電圧値を、交流電源4が出力する交流電圧の周期よりも充分に短い周期毎に検出する。例えば、入力電圧検出部23aは、交流電源4とコンバータ装置2との間に設けられた電圧センサを含み、その電圧センサの読み取った入力電圧の電圧値(入力電圧に係る物理量の一例)を検出する。
入力電圧検出部23aは、検出した入力電圧の電圧値をゼロクロス検出部23bに出力する。
【0026】
ゼロクロス検出部23bは、入力電圧検出部23aによって検出される交流電源4の電圧の値に関して、その正負が切り替わったか否か(ゼロクロス点に達したか否か)を判定する機能を有する。ゼロクロス検出部23bは、交流電源4の電圧の極性を検出する極性検出部であり、ゼロクロス信号をコンバータ制御部24に出力する。例えば、ゼロクロス検出部23bは、交流電源4の電圧が正の期間中にはコンバータ制御部24に「1」の信号を出力し、交流電源4の電圧が負の期間中にはコンバータ制御部24に「0」の信号を出力する。
【0027】
コンバータ制御部24は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0028】
コンバータ制御部24は、ゲートドライバ24a、ゲートドライバ24b及びSW電源トランス24cを備える。
ゲートドライバ24aは、スイッチング素子Tr1のゲート及びスイッチング素子Tr3の各ゲートと接続され、入力電流検出部22及びゼロクロス検出部23bの各出力に基づいて、スイッチング素子Tr1及びスイッチング素子Tr3のそれぞれのオン/オフを切替える制御信号を出力する。
ゲートドライバ24bは、スイッチング素子Tr2のゲート及びスイッチング素子Tr4の各ゲートと接続され、入力電流検出部22及びゼロクロス検出部23bの各出力に基づいて、スイッチング素子Tr2及びスイッチング素子Tr4のオン/オフを切替える制御信号を出力する。
SW電源トランス24cは、コンバータ装置2に供給される交流電圧をコンバータ制御部24において信号処理できる電圧に降下し、コンバータ制御部24を駆動するための電源信号を生成する。
【0029】
コンバータ制御部24は、入力電流検出部22から入力電流の電流値を受取る。また、コンバータ制御部24は、ゼロクロス検出部23bからゼロクロス信号を受取る。そして、コンバータ制御部24は、入力電流検出部22及びゼロクロス検出部23bから受取った信号に基づいて、各スイッチング素子Tr1~Tr4のオン/オフを制御し、コンバータ装置2による同期整流制御及びPAM制御を実行する。
また、コンバータ制御部24は、各アーム部を構成する各スイッチング素子Tr1~Tr4が同じである場合、共通のソフトウェアを用いて、より具体的には、単一の制御アルゴリズムによって各アーム部を制御することとしてもよい。
【0030】
さらに、コンバータ制御部24は、図2に示すように、基準特定部241、入力電流取得部242、制御信号生成部243、記憶部244を備える。
記憶部244は、コンバータ制御部24が行う種々の処理に必要な情報を記憶する。例えば、記憶部244は、電解コンデンサの端子間の電圧値から入力電流の実効値に変換するための変換テーブルを予め記憶している。また、例えば、記憶部244は、データテーブル(不図示)を記憶している。データテーブルは、例えば、入力電流の実効値と、実効値に対応する電源電圧の位相を基準とした電圧指令(すなわち、スイッチング素子の制御信号)の位相の調整量との対応関係を示すデータテーブルである。データテーブルは、例えば、過去の入力電流の歪み率及び交流電力から直流電力への変換効率がよい場合の入力電流の実効値と、その実効値の場合の電源電圧の位相に対する電圧指令の位相の調整量との対応関係を予め記憶部244に記憶したものであってよい。また、データテーブルは、例えば、過去の入力電流の歪み率及び交流電力から直流電力への変換効率の一方を優先してその優先した特性がよい場合の入力電流の実効値と、その実効値の場合の電源電圧の位相に対する電圧指令の位相の調整量との対応関係を予め記憶部244に記憶したものであってよい。
【0031】
基準特定部241は、基準となるタイミングを特定する。例えば、基準特定部241は、ゼロクロス検出部23bからゼロクロス信号を取得する。基準特定部241は、取得したゼロクロス信号の示す基準のタイミングを特定する。基準特定部241は、特定した基準のタイミングを制御信号生成部243に出力する。
【0032】
入力電流取得部242は、入力電流検出部22から入力電流の電流値(すなわち、交流電源4からコンバータ装置2へ入力される入力電流の電流値)を、入力電流検出部22の入力電流の検出タイミング毎に取得する。入力電流取得部242は、取得した電流値を制御信号生成部243に出力する。
【0033】
制御信号生成部243は、基準特定部241から基準のタイミングを取得する。また、制御信号生成部243は、入力電流取得部242から入力電流の電流値を取得する。制御信号生成部243は、基準特定部241から取得した基準のタイミングにおける位相を位相θの基準0度とする。そして、制御信号生成部243は、位相θの基準に基づいて、入力電流の実効値を算出する。
例えば、制御信号生成部243は、位相θの基準からの位相に応じて、入力電流取得部242から取得した入力電流の電流値の積算値を二乗平均して、入力電流の実効値を算出する。
【0034】
また、入力電流検出部22が電流センサ(例えば、カレントトランス)を備える場合には、入力電流は、カレントトランスを介して、ブリッジ回路200で全波整流され、平滑コンデンサC1を充電する。制御信号生成部243は、平滑コンデンサC1によって平滑された状態の電圧レベルを読み取る。そして、制御信号生成部243は、読み取った電圧値をその電圧値に一対一で関連付けられた電流値に変換することで、入力電流の実効値を算出すればよい。なお、電圧値から電流値へ変換する場合には、電圧値と電流値との対応関係を示す変換テーブルを予め作成して記憶部244に記憶させ、制御信号生成部243が、その変換テーブルを用いて読み取った電圧値を電流の実効値に変換すればよい。
【0035】
制御信号生成部243は、算出した入力電流の実効値と、データテーブルにおける入力電流の実効値とを比較する。制御信号生成部243は、比較結果に基づいて、算出した入力電流の実効値に最も近い入力電流の実効値を、データテーブルにおいて特定する。制御信号生成部243は、データテーブルにおいて、特定した入力電流に関連付けられている位相の調整量を特定する。
制御信号生成部243は、電源電圧の位相を基準に(すなわち、ゼロクロス点を基準に)特定した位相の調整量だけ位相を調整する。
そして、制御信号生成部243は、位相を調整した制御信号をスイッチング素子Tr1~Tr4のそれぞれへ出力する。
【0036】
制御信号生成部243は、図3に示すように、比較部、第1特定部、第2特定部、位相調整部、制御信号出力部を含む。
【0037】
比較部は、入力電流取得部242が取得した入力電流の電流値と、データテーブルにおける電流値とを比較する。
第1特定部は、比較部による比較結果に基づいて、入力電流取得部242が取得した電流値に最も近い値の電流値を、データテーブルにおいて特定する。
第2特定部は、第1特定部がデータテーブルにおいて特定した電流値に対応付けられている位相の調整量を特定する。
位相調整部は、交流電圧の位相を基準に、第2特定部が特定した調整量だけ制御信号の位相を調整する。
制御信号出力部は、位相調整部が調整量だけ位相を調整した制御信号を各スイッチング素子Tr1~Tr4に出力する。
また、制御信号出力部は、2つのスイッチング素子の一方(例えば、スイッチング素子Tr1)へ同期整流制御を行う制御信号を出力し、2つのスイッチング素子の他方(例えば、スイッチング素子Tr3)へPAM制御を行う制御信号を出力するものであってもよい。
また、制御信号出力部は、同期整流制御を行う制御信号と、PAM制御を行う制御信号の出力先である2つのスイッチング素子を半周期ごとに切り替えるものであってもよい(例えば、スイッチング素子Tr1からスイッチング素子Tr2へ切替え、スイッチング素子Tr3からスイッチング素子Tr4へ切替る)。
【0038】
図1の説明に戻り、インバータ装置3は、IPM(Intelligent Power Module)31、インバータ制御部32を備える。
IPM31は、インバータ制御部32による制御に基づいて、直流電力から三相交流電力を生成する。IPM31は、生成した三相交流電力をモータに供給する。IPM31は、例えば、6つのスイッチング素子から成るブリッジ回路である。
【0039】
インバータ制御部32は、IPM31を制御する。具体的には、インバータ制御部32は、IPM31に直流電力から三相交流電力を生成させる。例えば、IPM31が6つのスイッチング素子から成るブリッジ回路である場合、インバータ制御部32は、6つのスイッチング素子それぞれのオンとなる期間とオフとなる期間とを切り替えることによって、6つのスイッチング素子それぞれに流れる電流を制御することで、IPM31に直流電力から三相交流電力を生成させる。
【0040】
コンバータ制御部24は、図4図7及び図8にそれぞれ示すように、スイッチング素子Tr1、Tr3にてPAM制御を行い、スイッチング素子Tr2、Tr4にて同期整流制御を行う場合と、スイッチング素子Tr1、Tr3にて同期整流を行い、スイッチング素子Tr2、Tr4にてPAM制御を行う場合とを、交流電源4から供給される電源電圧の半周期毎に切り替える。なお、コンバータ制御部24が行うPAM制御は、入力電流に応じてPAM制御信号を生成するPWM(Pulse Width Modulation)生成技術を用いればよい。
【0041】
(同期整流制御の実行例)
図4は、同期整流制御実行時における、交流電源4の電圧と各スイッチング素子Tr1~Tr4の駆動パルスとの各波形の比較図である。なお、図4(a)は、交流電源4の電圧の瞬時値の波形を示し、図4(b)は、スイッチング素子Tr1の駆動パルスの波形を示し、図4(c)はスイッチング素子Tr3の駆動パルスの波形を示す。図4(d)は、スイッチング素子Tr2の駆動パルスの波形を示し、図4(e)は、スイッチング素子Tr4の駆動パルスの波形を示す。
交流電源4から出力される電圧が正の極性である区間において、各スイッチング素子の状態は、スイッチング素子Tr1、Tr4がオンかつスイッチング素子Tr2、Tr3がオフである。この場合、図5に太線で示されるように、交流電源4の第1端子からリアクトルL1、スイッチング素子Tr1、平滑コンデンサC1、スイッチング素子Tr4、交流電源4の第2端子へと電流が流れる。また、この際に平滑コンデンサC1が充電される。
【0042】
また、交流電源4から出力される電圧が負の極性である区間において、各スイッチング素子の状態は、スイッチング素子Tr2、Tr3がオンかつスイッチング素子Tr1、Tr4がオフである。この場合、図6に太線で示されるように、交流電源4の第2端子からスイッチング素子Tr2、平滑コンデンサC1、スイッチング素子Tr3、リアクトルL1、交流電源4の第1端子へと電流が流れる。また、この際に平滑コンデンサC1が充電される。このように、同期整流制御は、各スイッチング素子Tr1~Tr4の駆動状態を切替えて行なわれる。
【0043】
このように、例えば、交流電源4の電圧が正の極性の場合において、仮にスイッチング素子Tr1,Tr4がオンで無い場合には、電流はスイッチング素子Tr1,Tr4の寄生ダイオードD1,D4を流れる。しかし通常、MOSFETの寄生ダイオードの順方向電圧降下が大きいため、大きな導通損失が発生してしまう。そこで、交流電源4の電圧に同期してスイッチング素子Tr1,Tr4をオンにさせて、スイッチング素子Tr1,Tr4のオン抵抗に電流を流すことで、導通損失の低減を図ることが可能である。以上が、同期整流制御の原理である。
【0044】
(ダイオード整流動作について)
上述の通り、本実施形態のブリッジ回路200は、各スイッチング素子Tr1~Tr4のオン/オフを切替えることにより、同期整流制御を行うことができる。
また、各スイッチング素子Tr1~Tr4をオフとした場合、交流電源4から出力される電流は、各スイッチング素子Tr1~Tr4には流れず、各スイッチング素子Tr1~Tr4に並列接続された寄生ダイオードD1~D4に流れる。より具体的には、交流電源4の電圧が正の極性の場合、交流電源4から出力される電流は、図5に示す経路において、スイッチング素子Tr1,Tr4に代わって、寄生ダイオードD1,D4に流れる。また、交流電源4の電圧が負の極性の場合、交流電源4から出力される電流は、図6に示す経路において、スイッチング素子Tr2,Tr3に代わって、寄生ダイオードD2,D3に流れる。
このように、各スイッチング素子Tr1~Tr4をオフとした場合においても、交流電源4の電圧の極性依らず、交流電源4から出力された電流が寄生ダイオードD1~D4へ流れることにより、整流動作が行われる。
【0045】
(PAM制御の実行例)
図7は、PAM制御実行時における、交流電源4の電圧と各スイッチング素子Tr1~Tr4の駆動パルスとの各波形の比較図である。なお、図7(a)~(e)の各波形は図4(a)~(e)のそれぞれに対応している。
コンバータ制御部24は、スイッチング素子Tr1~Tr4を用いてPAM制御を行うことができる。具体的には、交流電源4から出力される入力電流を交流電源4の出力する交流電圧の周期に近づけるとともに、高調波歪みを所望の歪み率以下にするように、PAM制御を行う。
【0046】
交流電源4から出力される電圧が正の極性である区間において、各スイッチング素子の状態は、スイッチング素子Tr4についてはオン、かつスイッチング素子Tr3については複数回に亘ってオン/オフが切替わる。スイッチング素子Tr3がオンの場合、交流電源4→リアクトルL1→スイッチング素子Tr3→スイッチング素子Tr4→交流電源4、の順で力率改善電流が流れる。このとき、リアクトルL1にはエネルギが蓄えられる。そして、リアクトルL1に蓄えられたエネルギが平滑コンデンサC1に放出されることで、直流電圧Vdの昇圧及び力率の改善がなされる。
【0047】
また、交流電源4から出力される電圧が負の極性である区間において、各スイッチング素子の状態は、スイッチング素子Tr3についてはオン、かつスイッチング素子Tr4については複数回に亘ってオン/オフが切替わる。この場合、交流電源4→スイッチング素子Tr4→スイッチング素子Tr3→リアクトルL1→交流電源4、の順で力率改善電流が流れる。このとき、リアクトルL1にはエネルギが蓄えられる。そして、リアクトルL1に蓄えられたエネルギが平滑コンデンサC1に放出されることで、直流電圧Vdの昇圧及び力率の改善がなされる。
【0048】
このように、PAM制御は、交流電源4から出力される電圧の極性に対応してスイッチング素子Tr3,Tr4の駆動状態を切替えて実行される。
なお、PAM制御において、スイッチング素子Tr1及びTr2はオフであり、回路を流れる電流は寄生ダイオードD1及びD2を流れる。
【0049】
(同期整流制御及びPAM制御を実行する例)
図8は、同期整流制御及びPAM制御実行時における交流電源4の電圧と各スイッチング素子Tr1~Tr4の駆動パルスとの各波形の比較図である。なお、図8(a)~(e)の各波形は図4(a)~(e)に対応する。本実施形態において、図8に示すように、交流電源4から供給される交流電圧の半周期毎に同期整流制御及びPAM制御を行うアーム部を切替えている。
【0050】
例えば、交流電源4の電圧が正の極性である区間において、図8(b)及び図8(c)で示されるスイッチング素子Tr1、Tr3の各駆動パルスは、互いに逆の極性となるように複数回に亘ってオン/オフが切替わる駆動パルスとなる。また、図8(d)に示すようにスイッチング素子Tr2の駆動パルスはオフとなり、図8(e)に示すようにスイッチング素子Tr4の駆動パルスはオンである。
【0051】
コンバータ制御部24は、交流電源4の電圧が正の極性の場合において、第1アーム部arm1側のスイッチング素子Tr1,Tr3のオン/オフを切替える。これにより、整流回路21中に力率改善電流が流れ、PAM制御が行なわれる。また、コンバータ制御部24は、ゲートドライバ24a,24bを介して第2アーム部arm2側のスイッチング素子Tr2,Tr4へ駆動パルスを出力する。これにより、第2アーム部arm2側のスイッチング素子Tr2,Tr4により同期整流制御が行われる。
【0052】
また、交流電源4の電圧が負の極性である区間において、図8(d)及び図8(e)で示されるスイッチング素子Tr2,Tr4の各駆動パルスは、互いに逆の極性となるように複数回に亘ってオン/オフが切替わる。また、図8(b)に示すようにスイッチング素子Tr1の駆動パルスはオフとなり、図8(c)に示すようにスイッチング素子Tr3の駆動パルスはオンである。
【0053】
コンバータ制御部24は、交流電源4の電圧が負の極性の場合において、第2アーム部arm2側のスイッチング素子Tr2,Tr4のオン/オフを切替える。これにより、整流回路21中に力率改善電流が流れ、PAM制御が行なわれる。また、コンバータ制御部24は、ゲートドライバ24a,24bを介して第1アーム部arm1側のスイッチング素子Tr1,Tr3へ駆動パルスを出力する。これにより、第1アーム部arm1側のスイッチング素子Tr1,Tr3により同期整流制御が行われる。
【0054】
このように、コンバータ制御部24は、交流電源4の電圧の極性に対応して、同期整流制御を行うアーム部とPAM制御を行うアーム部とが交互に切替わるように、各スイッチング素子Tr1~Tr4の駆動状態を制御する。
【0055】
例えば、交流電源4の電圧が正の極性の場合、直流電圧の昇圧及び力率の改善を行うためには、スイッチング素子Tr3をオンにし、かつスイッチング素子Tr1をオフにすることにより、力率改善電流を通流させる。更に、交流電源4の電圧Vacに同期させてスイッチング素子Tr2をオフにし、スイッチング素子Tr4をオンにしている。そして、スイッチング素子Tr1をオンからオフにした後、スイッチング素子Tr3をオンにする。すなわち、スイッチング素子Tr4は交流電源4の電圧Vacに同期させてオンにし、かつ、スイッチング素子Tr1、スイッチング素子Tr3は交互にスイッチングさせている。
このような制御により、導通損失の低減を図るとともに、直流電圧の昇圧及び力率の改善を行うことができる。
なお、交流電源4の電圧が負の極性の場合も同様に、スイッチング素子Tr3は交流電源4の電圧Vacに同期させてオンにし、かつ、スイッチング素子Tr2、スイッチング素子Tr4は交互にスイッチングさせている。
【0056】
ここで、交流電源4から供給される交流電圧の半周期毎にスイッチング素子のオン/オフを切替えない場合、すなわち、第1アーム部arm1(スイッチング素子Tr1及びスイッチング素子Tr3)又は第2アーム部arm2(スイッチング素子Tr2及びスイッチング素子Tr4)のいずれか一方のみによって同期整流制御及びPAM制御を行う場合と比較する。
図9は、同期整流制御及びPAM制御実行時における、交流電源4の電圧と各スイッチング素子Tr1~Tr4の駆動パルスとの各波形の比較図である。なお、図9(a)~(e)の各波形は図4(a)~(e)に対応する。また、図9に示すように、交流電源4の電圧の位相に関わらず、同期整流制御及びPAM制御を行うアーム部は1つである。
【0057】
整流回路の構成において、例えば、高速動作を行う第1アーム部arm1を逆回復特性が良いスイッチング素子により構成し、低速動作を行う第2アーム部arm2をオン抵抗が低いスイッチング素子によりを構成する場合がある。すなわち、第1アーム部arm1を構成するスイッチング素子と、第2アーム部arm2を構成するスイッチング素子との電気的特性をそれぞれ異なるものとする場合がある。このような場合、同期整流制御及びPAM制御を行うためには、高速スイッチングを行うことができる第1アーム部arm1が駆動し続けることとなる。
【0058】
第1アーム部arm1と第2アーム部arm2の電気的特性が異なる際に同期整流制御及びPAM制御を行う場合、図9に示すように、交流電源4の電圧の位相に関わらず、常に第1アーム部arm1のスイッチング素子であるスイッチング素子Tr1及びスイッチング素子Tr3のオン/オフが切替わるように制御される。これにより、スイッチング素子Tr1及びスイッチング素子Tr3に発熱が集中する一方で、スイッチング素子Tr2及びスイッチング素子Tr4の発熱が抑えられる。したがって、ブリッジ回路200において、スイッチングによる損失のバランスは悪化するとともに、第1アーム部arm1を構成するスイッチング素子に発熱が集中してしまい出力が制限されてしまう。
【0059】
図9に示す制御によれば、第1アーム部arm1及び第2アーム部arm2の電気的特性を同じにすることにより、交流電源4から供給される交流電圧の半周期毎に同期整流制御及びPAM制御を行うアーム部を切替えることができる。このため、同期整流制御及びPAM制御際の各スイッチング素子の発熱による損失を分配することができる。これにより、ブリッジ回路200の損失のバランスを改善することができる。
なお、本実施形態では、4つのスイッチング素子により第1アーム部arm1及び第2アーム部arm2を構成し、交流電源4から供給される交流電圧の半周期毎に駆動するアーム部を切替えることしたが、スイッチング素子の数、アーム部の数、駆動するアーム部の切替タイミングとなる周期等は、目的とする制御内容に応じて適宜変更されてもよい。
【0060】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
本実施形態のブリッジ回路200において、第1アーム部arm1及び第2アーム部arm2は電気的特性が同じである。すなわち、何れのアーム部も同期整流制御及びPAM制御を行う能力を備える。
仮に、第1アーム部arm1と第2アーム部arm2の電気的特性が異なる場合において、高速でスイッチングを行う必要がある場合、高速動作に適した一方のアーム部のみがスイッチングを行うこととなる。このように、一方のアーム部のみが駆動することにより、高速動作可能なアーム部が備えるスイッチング素子に発熱が集中し、本スイッチング素子は、より不利な条件(具体的には、高温時動作)で、駆動することとなる。その結果、特定のアーム部の発熱ロスが大きくなり、スイッチング素子の発熱量をさらに増加してしまう。
本実施形態によれば、コンバータ制御部24は、交流電源4から供給される交流電圧の所定の周期に応じて駆動するアーム部を交互に切替えるように、各ゲートドライバ24a、24bを介して各スイッチング素子Tr1~Tr4のオン/オフを切替えることができる。これにより、特定のアーム部の駆動を継続し、特定のスイッチング素子に発熱が集中することを抑制することができる。
また、各アーム部が備えるスイッチング素子Tr1~Tr4の発熱を抑制することができるため、スイッチング素子Tr1~Tr4の発熱による損失が抑えられ、スイッチング素子Tr1~Tr4の高効率化を図ることができる。
さらに、スイッチング素子Tr1~Tr4の発熱を抑制することができることにより、本コンバータ装置2を備える機器において放熱フィン等の放熱部材を小型化することができる。
【0061】
本実施形態のブリッジ回路200において、第1アーム部arm1及び第2アーム部arm2は電気的特性が同じ、より具体的には、電気的特性が同じスイッチング素子で各アーム部が構成される場合、コンバータ制御部24は、共通のソフトウェアを用いて各アーム部を制御することができる。これにより、コンバータ装置2駆動におけるソフトウェアを簡素化することができ、メモリ消費等の計算コストを削減することができる。
【0062】
以上、本開示について実施形態を用いて説明したが、本開示の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。本開示の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれる。また、上記実施形態を適宜組み合わせてもよい。
なお、本実施形態では、単相(2相)の場合を例に挙げて説明したが、この例に限られない。例えば、3相交流電源から3相交流電力が供給される場合にも適用可能である。この場合、上述のブリッジ回路200において、第1アーム部arm1及び第2アーム部arm2と同様の電気的特性を有する第3アーム部が、第1アーム部arm1及び第2アーム部arm2と並列接続される。そして、コンバータ制御部24によって、交流電源4から供給される交流電圧の1/3周期毎に各アーム部が備える各スイッチング素子のオン/オフが切り替えられ、同期整流制御および/またはPAM制御を適宜実行することとしもよい。また、アーム部の数は、本開示の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更されてもよい。
【0063】
(付記事項)
上述した実施形態に記載のコンバータ装置、これを備えた空気調和装置及びコンバータ装置の制御方法は、例えば以下のように把握される。
本開示の第1態様に係るコンバータ装置は、複数のスイッチング素子(Tr1,Tr3)を備える第1アーム部(arm1)と、複数のスイッチング素子(Tr2,Tr4)を備える第2アーム部(arm2)とを有し、交流電源(4)から供給される交流電力を整流するブリッジ回路(200)と、第1アーム部が備える複数のスイッチング素子及び第2アーム部が備える複数のスイッチング素子のオンオフを制御する制御部(24)とを備え、制御部は、交流電源から供給される交流電圧の所定の周期毎に、各アーム部内のスイッチング素子のオンオフを切替え、各アーム部は、電気的特性が同じである。
【0064】
本開示のコンバータ装置によれば、制御部は、複数のスイッチング素子をそれぞれ備える第1アーム部及び第2アーム部を備え、かつ、各アーム部の電気的特性が同じであるブリッジ回路において、交流電源から供給される電圧の所定の周期毎に、各アーム部内の各スイッチング素子のオン/オフを切替える。これにより、各アーム部の発熱負荷を分散させることにより、特定のスイッチング素子のみが過度に発熱することを抑制することができる。すなわち、発熱によるスイッチング素子のスイッチング損失を抑制し、スイッチング素子の高効率化及び長寿命化を図ることができる。また、スイッチング素子の発熱を抑制することができることにより、本コンバータ装置を備える機器において放熱部材を小型化することができる。
制御部は、例えば、交流電源から入力される交流電圧の1周期において、各スイッチング素子のオンデューティがほぼ等しくなるように、各スイッチング素子をオンオフ制御することが好ましい。
【0065】
本開示の第2態様に係るコンバータ装置は、前記第1態様において、各アーム部が備える各スイッチング素子は、電気的特性が同じである。
【0066】
本開示のコンバータ装置によれば、各アーム部が備える各スイッチング素子は、電気的特性が同じである。各スイッチング素子の電気的特性が同じであることにより、各スイッチング素子の電気的特性が異なる場合と比べて、スイッチング素子の温度ドリフトを把握することが容易となるため、安全に大電流を流すことができる。さらに、本電気回路を備える機器の運転可能範囲を拡張することができる。
【0067】
本開示の第3態様に係るコンバータ装置は、前記第1態様又は前記第2態様において、制御部は、単一の制御アルゴリズムによって各スイッチング素子の駆動状態を切替える。
【0068】
本開示のコンバータ装置によれば、単一の制御アルゴリズムによって各スイッチング素子の駆動状態を切替える。各スイッチング素子の電気的特性が異なる場合、スイッチング素子毎に駆動制御に対応した制御アルゴリズムが必要であるが、各スイッチング素子の電気的特性が同じである場合、単一の制御アルゴリズムによって各スイッチング素子を制御することができる。これにより、制御アルゴリズムの簡素化及び計算コストの低減を図ることができる。
【0069】
本開示の第1態様に係る空気調和装置は、前記第1態様から前記第3態様のいずれかのコンバータ装置を備える。
【0070】
本開示の第1態様に係るコンバータ装置の制御方法は、複数のスイッチング素子を備える第1アーム部と、複数のスイッチング素子を備える第2アーム部とを有するブリッジ回路において、交流電源から供給される交流電力を整流する整流工程と、第1アーム部が備える複数のスイッチング素子及び第2アーム部が備える複数のスイッチング素子のオン/オフを制御する制御工程とを有するコンバータ装置の制御方法であって、制御工程は、交流電源から供給される交流電圧の所定の周期毎に、各アーム部内のスイッチング素子のオン/オフを切替え、各アーム部は、電気的特性が同じである。
【符号の説明】
【0071】
1 モータ駆動装置
2 コンバータ装置
3 インバータ装置
4 交流電源
5 モータ
21 整流回路
22 入力電流検出部
23a 入力電圧検出部
23b ゼロクロス検出部
24 コンバータ制御部
24a、24b ゲートドライバ
24c SW電源トランス
31 IPM
32 インバータ制御部
200 ブリッジ回路
241 基準特定部
242 入力電流取得部
243 制御信号生成部
244 記憶部
arm1 第1アーム部
arm2 第2アーム部
C1 平滑コンデンサ
D1~D4 寄生ダイオード
L1 リアクトル
Tr1~Tr4 スイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9